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特開2023-152556アナログ-デジタル変換装置および固体撮像装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152556
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】アナログ-デジタル変換装置および固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/78 20230101AFI20231010BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H04N5/378
H03M1/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062675
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 睦
(72)【発明者】
【氏名】マホムテ ブリブリ
(72)【発明者】
【氏名】島本 行博
【テーマコード(参考)】
5C024
5J022
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024GX02
5C024HX23
5C024HX35
5J022AA01
5J022BA02
(57)【要約】
【課題】アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減することができるアナログ-デジタル変換装置等を提供する。
【解決手段】アナログ-デジタル変換装置は、Mは2以上の自然数であるものとして、M個のアナログ信号に対して、読出符号行列に対応するM回以上のアナログ演算を行うアナログ演算部と、M回以上のアナログ演算の結果としてのM個以上のアナログ情報をアナログ-デジタル変換し、M個以上のデジタル信号を出力するアナログ-デジタル変換部と、M個以上のデジタル信号に対して、読出符号行列に対応しかつ各行ベクトルが0とは異なる2個以上の成分を含む復号符号行列を用いた復号演算を行う復号演算部と、を備え、アナログ演算部は、M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて、M個のアナログ信号の全てを利用し得るように構成されており、読出符号行列および復号符号行列は、アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減するように設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mは2以上の自然数であるものとして、
M個のアナログ信号に対して、読出符号行列に対応するM回以上のアナログ演算を行うアナログ演算部と、
前記M回以上のアナログ演算の結果としてのM個以上のアナログ情報をアナログ-デジタル変換し、M個以上のデジタル信号を出力するアナログ-デジタル変換部と、
前記M個以上のデジタル信号の信号値に対して、前記読出符号行列に対応しかつ各行ベクトルが0とは異なる2個以上の成分を含む復号符号行列を用いた復号演算を行う復号演算部と、を備え、
前記アナログ演算部は、前記M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて、前記M個のアナログ信号の全てを利用し得るように構成されており、
前記読出符号行列および前記復号符号行列は、前記アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減するように設定されている、
アナログ-デジタル変換装置。
【請求項2】
前記アナログ演算部は、前記読出符号行列として、M行M列の読出符号行列を用いて、前記M回以上のアナログ演算として、M回のアナログ演算を行い、
前記アナログ-デジタル変換部は、前記M個以上のデジタル信号として、M個のデジタル信号を出力し、
前記復号演算部は、前記復号符号行列として、M行M列の復号符号行列を用いて前記復号演算を行う、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項3】
前記アナログ演算部は、前記M個のアナログ信号に対して、前記M回以上のアナログ演算を並列に行う、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項4】
前記復号符号行列の各行ベクトルの各成分の2乗の総和の平方根が1未満である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項5】
前記アナログ-デジタル変換部は、M個のアナログ-デジタル変換回路を含み、
前記M個のアナログ-デジタル変換回路は、それぞれ、前記M個のアナログ信号を前記M個のデジタル信号に変換する、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項6】
前記読出符号行列は、アダマール行列である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項7】
前記アナログ演算部は、前記M回以上のアナログ演算のうちの前記アダマール行列の行成分の全てが+1である行ベクトルの1つのアナログ演算の結果としての前記M個以上のアナログ情報のうちの1つのアナログ情報がオーバーフローを引き起こさないように、前記M個のアナログ信号のそれぞれに所定オフセット信号を付与し、
前記復号演算部は、前記所定オフセット信号に対応する所定オフセット値を用いて、前記復号演算の結果として得られたM個のデジタル値のそれぞれを補正する、請求項6に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項8】
Xは2以上の自然数であるものとして、
前記アナログ演算部は、M行M列の前記アダマール行列の各成分が+1である行ベクトルの全成分をX回に時間分割して読み出すことによって、前記読出符号行列としての(M+X-1)行M列の読出符号行列を用いて、前記M回以上のアナログ演算として(M+X-1)回のアナログ演算を行い、
前記アナログ-デジタル変換部は、前記M個以上のデジタル信号として、(M+X-1)個のデジタル信号を出力し、
前記復号演算部は、前記(M+X-1)個のデジタル信号に対して、前記復号符号行列として前記(M+X-1)行M列の読出符号行列に対応するM行(M+X-1)列の復号符号行列を用いて、前記復号演算を行う、請求項6に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項9】
前記読出符号行列は、各成分が+1または-1で構成されるM系列行列である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項10】
前記読出符号行列は、各成分が+1または0で構成されるM系列行列である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項11】
前記復号符号行列は、前記読出符号行列の逆行列である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項12】
前記読出符号行列は、アダマール行列の各成分が+1である行ベクトルの各成分の絶対値が1より小さい値に置き換えられた行列である、請求項11に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項13】
前記復号符号行列と前記読出符号行列との内積は、単位行列の+1成分以外の成分が-1/(M-1)または-1/Mに置き換えられた行列である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項14】
前記読出符号行列は、アダマール行列の各成分が+1である行ベクトルの各成分が0に置き換えられた行列である、請求項13に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項15】
前記読出符号行列は、各成分が+1または-1で構成されるM系列行列であり、かつ、
前記復号符号行列は、係数が-1/Mの前記読出符号行列の転置行列である、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項16】
前記アナログ演算部は、M行M列のアダマール行列の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルの+1成分に対応するアナログ信号と、前記M行M列のアダマール行列の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルの-1成分に対応するアナログ信号と、を分割して読み出すことによって、前記読出符号行列としての(2M-1)行M列の読出符号行列を用いて、前記M回以上のアナログ演算として(2M-1)回のアナログ演算を行い、
前記アナログ-デジタル変換部は、前記M個以上のデジタル信号として、(2M-1)個のデジタル信号を出力し、
前記復号演算部は、
前記(2M-1)個のデジタル信号に対して、前記復号符号行列としての前記(2M-1)行M列の読出符号行列に対応するM行(2M-1)列の復号符号行列を用いて、前記復号演算を行い、
前記復号演算において、
前記M行M列のアダマール行列の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルのそれぞれについて、前記+1成分に対応する(M-1)個のデジタル信号の加算によって生成された+デジタル結果ADpと、前記-1成分に対応する(M-1)個のデジタル信号の加算によって生成された-デジタル結果ADmと、を用いて、前記+デジタル結果ADpと前記-デジタル結果ADmとの(M-1)個の差分ADp-ADmを算出し、
前記M行M列のアダマール行列の全てが+1成分のみからなる行ベクトルに対応する1つのデジタル信号および前記(M-1)個の差分ADp-ADmを、前記M個のアナログ信号にそれぞれ対応するM個のデジタル値として出力する、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項17】
前記アナログ演算部は、M行M列のM系列行列の-1成分を有するM個の行ベクトルの+1成分に対応するアナログ信号と、前記M行M列のM系列行列の-1成分を有するM個の行ベクトルの-1成分に対応するアナログ信号と、を分割して読み出すことによって、前記読出符号行列としての2M行M列の読出符号行列を用いて、前記M回以上のアナログ演算として2M回のアナログ演算を行い、
前記アナログ-デジタル変換部は、前記M個以上のデジタル信号として、2M個のデジタル信号を出力し、
前記復号演算部は、
前記2M個のデジタル信号に対して、前記復号符号行列としての前記2M行M列の読出符号行列に対応するM行2M列の復号符号行列を用いて、前記復号演算を行い、
前記復号演算において、
前記M行M列のアダマール行列の-1成分を有するM個の行ベクトルのそれぞれについて、前記+1成分に対応するM個のデジタル信号の加算によって生成された+デジタル結果ADpと、前記-1成分に対応するM個のデジタル信号の加算によって生成された-デジタル結果ADmと、を用いて、前記+デジタル結果ADpと前記-デジタル結果ADmとのM個の差分ADp-ADmを算出し、
前記M個の差分ADp-ADmを、前記M個のアナログ信号にそれぞれ対応するM個のデジタル値として出力する、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項18】
前記アナログ演算部は、
前記アナログ-デジタル変換部の出力に固定ノイズが含まれており、かつ、前記復号演算によって前記固定ノイズがキャンセルされずに、前記復号演算の結果としてのデジタル値に前記固定ノイズが含まれる場合に、
前記固定ノイズがキャンセルされていない前記デジタル値が、前記固定ノイズがキャンセルされた他のデジタル値で置き換えられるように、前記M回以上のアナログ演算とは異なる他のM回以上のアナログ演算を行い、
前記復号演算部は、前記固定ノイズがキャンセルされていない前記デジタル値を出力することなく、前記固定ノイズがキャンセルされた前記他のデジタル値を出力する、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項19】
前記アナログ演算部は、
前記アナログ-デジタル変換部の出力に固定ノイズが含まれており、かつ、前記復号演算によって前記固定ノイズがキャンセルされずに、前記復号演算の結果としてのデジタル値に前記固定ノイズが含まれる場合に、
前記固定ノイズがキャンセルされていない前記デジタル値が、前記固定ノイズがキャンセルされた他のデジタル値で置き換えられるように、前記M回以上のアナログ演算とは異なる他のM回以上のアナログ演算を行い、
前記復号演算部は、
前記固定ノイズがキャンセルされていない前記デジタル値と前記固定ノイズがキャンセルされた前記他のデジタル値との差分を算出し、
前記固定ノイズがキャンセルされていない前記デジタル値から前記差分を減算する、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項20】
前記アナログ演算部は、
前記M個のアナログ信号を逐次読み出す通常読出および前記M個のアナログ信号を同時に読み出す並列読出の双方を行うことが可能であり、
前記並列読出によれば前記アナログ演算部にオーバーフローが生じる場合、前記通常読出によって読み出された前記M個以上のアナログ情報を用いて前記M回以上のアナログ演算を行う、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項21】
前記アナログ演算部は、少なくとも1つの信号電荷保持用キャパシタを含み、前記M個のアナログ信号の信号値を前記少なくとも1つの信号電荷保持用キャパシタに電荷として保持する、請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項22】
M個の画素と、
請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置と、を備え、
前記M個の画素から出力された前記M個のアナログ信号の全てが、前記アナログ-デジタル変換装置の前記M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて利用され得る、固体撮像装置。
【請求項23】
前記アナログ演算部は、前記M個のアナログ信号のうちの予め検出された真値を示さない欠陥アナログ信号が無入力に設定されており、それにより、前記欠陥アナログ信号を用いずに、前記M回以上のアナログ演算を行い、
前記復号演算部は、前記復号演算の後に、前記欠陥アナログ信号に対応する欠陥画素に隣接する複数の画素にそれぞれ対応する複数のアナログ信号から得られた複数のデジタル信号の値を用いて、前記欠陥アナログ信号に対応するデジタル信号の値を補間する、請求項22に記載の固体撮像装置。
【請求項24】
前記M個の画素は、所定の領域内に一群の画素として設けられ、
前記M個の画素からそれぞれ出力された前記M個のアナログ信号の全てが、前記M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて利用され得る、請求項22に記載の固体撮像装置。
【請求項25】
前記M個の画素は、互いの間に前記M個の画素とは異なる他の画素が配置されるように、離散して配置され、
前記M個の画素からそれぞれ出力された前記M個のアナログ信号の全てが、前記M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて利用され得る、請求項22に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アナログ-デジタル変換装置および固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、たとえば、アナログ-デジタル変換装置を内蔵した固体撮像装置の開発が行われている。このアナログ-デジタル変換装置によれば、M個のアナログ信号は、それぞれ、M個のデジタル値に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-80937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示された技術においては、アナログ-デジタル変換で得られるM個のデジタル値に含まれる量子化ノイズが問題になる場合がある。
【0005】
本開示は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減することができるアナログ-デジタル変換装置および固体撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のアナログ-デジタル変換装置は、Mは2以上の自然数であるものとして、M個のアナログ信号に対して、読出符号行列に対応するM回以上のアナログ演算を行うアナログ演算部と、前記M回以上のアナログ演算の結果としてのM個以上のアナログ情報をアナログ-デジタル変換し、M個以上のデジタル信号を出力するアナログ-デジタル変換部と、前記M個以上のデジタル信号に対して、前記読出符号行列に対応しかつ各行ベクトルが0とは異なる2個以上の成分を含む復号符号行列を用いた復号演算を行う復号演算部と、を備え、前記アナログ演算部は、前記M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて、前記M個のアナログ信号の全てを利用し得るように構成されており、前記読出符号行列および前記復号符号行列は、前記アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減するように設定されている。
【0007】
本開示の固体撮像装置は、M個の画素と、前述のアナログ-デジタル変換装置と、を備え、前記M個の画素から出力された前記M個のアナログ信号の全てが、前述のアナログ-デジタル変換装置の前記M回以上のアナログ演算のそれぞれにおいて利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置の機能ブロック図である。
図2】実施の形態1の変形例のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置の機能ブロック図である。
図3】実施の形態1の読出符号行列および復号符号行列を用いてアナログ信号をデジタル信号に変換する方法を説明するための図である。
図4】実施の形態1のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図5】実施の形態2のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図6】実施の形態3のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図7】実施の形態4のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図8】実施の形態5のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図9】実施の形態6のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図10】実施の形態7のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図11】実施の形態8のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図12】実施の形態9のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図13】実施の形態10のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図14】実施の形態11のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図15】実施の形態12のアナログ-デジタル変換方法を説明するための第1図である。
図16】実施の形態12のアナログ-デジタル変換方法を説明するための第2図である。
図17】実施の形態13のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
図18】実施の形態14のアナログ-デジタル変換方法を説明するための第1図である。
図19】実施の形態14のアナログ-デジタル変換方法を説明するための第2図である。
図20】実施の形態15のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置の機能ブロック図である。
図21】実施の形態16のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置の機能ブロック図である。
図22】各実施の形態のアナログ-デジタル変換装置のアナログ演算部を構成する第1例の電子回路を示す図である。
図23】各実施の形態1アナログ-デジタル変換装置のアナログ演算部を構成する第2例の電子回路を示す図である。
図24】各実施の形態の変形例のアナログ-デジタル変換装置のアナログ演算部を構成する電子回路を示す図である。
図25】各実施の形態の変形例のアナログ-デジタル変換装置の加減算回路の一部のリセット状態を示す図である。
図26】各実施の形態の変形例のアナログ-デジタル変換装置の加減算回路の一部の積分時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置を、図面を参照しながら説明する。なお、各図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
図1を用いて、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100の機能ブロック図である。
【0012】
以下、Mは、2以上の自然数であるものとする。固体撮像装置100は、一群の画素PXと、アナログ-デジタル変換装置10と、を備えている。一群の画素PXは、M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMを含んでいる。M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMのそれぞれは、光電変換素子(図22図24のフォトダイオードPD)を含んでいる。本実施の形態の固体撮像装置100は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Silicon)イメージセンサと呼ばれるものである。
【0013】
一群の画素PXは、光電変換により発生した一群のアナログ信号を出力する。具体的には、M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMは、それぞれ、M個の光電変換素子(図22図24のフォトダイオードPD)により発生したM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mを出力する。
【0014】
アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]に対応するアナログ演算によって、M個のアナログ情報を生成する電子回路を有する(図22図24参照)。電子回路については、後に詳述される。
【0015】
アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号の全てがM回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mのそれぞれにおいて利用され得るように構成されている。本実施の形態においては、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号に対して、M行M列の読出符号行列[R]に対応するM回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mを行う。M行M列の読出符号行列[R]については、後に詳述される。本実施の形態においては、読出符号行列[R]は、M行M列であるが、これに限定されない。
【0016】
M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mの結果としてのM個のアナログ情報は、後述される少なくとも1つの信号電荷保持用キャパシタ(たとえば、図22および図23の+電荷加算用容量+AC、-電荷加算用容量-AC)に電荷として蓄積される。アナログ演算部AOは、セレクタSを介して、M回のアナログ演算の結果としてのM個のアナログ情報をアナログ-デジタル変換部ADへ送信する。
【0017】
セレクタSは、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mのそれぞれの結果をアナログ-デジタル変換部ADに順次送信するように、アナログ演算部AOとアナログ-デジタル変換部ADとの回路接続を切り替えるスイッチである。それにより、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mの結果としてのM個のアナログ情報が、アナログ-デジタル変換部ADへ順次出力される。
【0018】
アナログ-デジタル変換部ADは、セレクタSの切り替え動作により、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mの結果としてのM個のアナログ情報を順次受信する。アナログ-デジタル変換部ADは、M個のアナログ情報のそれぞれを順次アナログ-デジタル変換し、M個のデジタル信号を順次出力する電子回路により構成されている。
【0019】
プロセッサPは、記憶部MEおよび復号演算部DOを含んでいる。プロセッサPは、内蔵されたプログラムに基づいて、アナログ演算部AO、セレクタS、記憶部MEおよび復号演算部DOを制御する。記憶部MEは、アナログ-デジタル変換部ADにより生成されたM個のデジタル信号の信号値を一次的に記憶する。記憶部MEは、記憶されたM個のデジタル信号の信号値を復号演算部DOへ送信する。
【0020】
復号演算部DOは、記憶部MEから送信されたM個のデジタル信号の信号値を用いて、M行M列の復号符号行列[D]に対応する復号演算を行うことによって、M個のアナログ信号の信号値にそれぞれ対応するM個のデジタル値を生成する。本実施の形態においては、復号演算部DOが、M個のデジタル信号の信号値に対して、読出符号行列[R]の逆行列であるM行M列の復号符号行列[D]に対応する復号演算を行う。M行M列の復号行列[D]は、後に詳述される。復号演算部DOは、M個のデジタル値を他の部分または他の機器へ送信する。
【0021】
本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10によれば、後述されるアナログ信号の信号値に対応するデジタル値に含まれる量子化ノイズを低減することができる。量子ノイズが低減できる理由については、後に詳細に説明する。
【0022】
また、上記のアナログ-デジタル変換装置10は、M個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mに対して、M行M列の読出符号行列[R]を用いてM回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mを行う。アナログ-デジタル変換装置10は、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mの結果としてのM個のアナログ情報のそれぞれを、アナログ-デジタル変換部ADにおいて順次アナログ-デジタル変換する。その後、アナログ-デジタル変換装置10は、M個のデジタル信号の信号値に対して、M行M列の復号符号行列[D]を用いて復号演算を行う。
【0023】
図1に示されるアナログ-デジタル変換装置10のアナログ演算部AOの信号処理の流れは、次のようなものである。なお、この信号処理の流れは、M=4であるものとして記載されている。また、時間は、Time1からTime4へ経過するものとする。
【0024】
(1) Time1において、アナログ演算部AOは、アナログ演算1として、(アナログ信号1+アナログ信号2+アナログ信号3+アナログ信号4=アナログ情報1)を行う。アナログ-デジタル変換部ADは、アナログ演算1の結果としてのアナログ情報1に対応するデジタル信号の信号値AD1を記憶部MEに記憶させる。
【0025】
(2) Time2において、アナログ演算部AOは、アナログ演算2として、(アナログ信号1-アナログ信号2+アナログ信号3-アナログ信号4=アナログ情報2)を行う。アナログ-デジタル変換部ADは、アナログ演算2の結果としてアナログ情報2に対応するデジタル信号の信号値AD2を記憶部MEに記憶させる。
【0026】
(3) Time3において、アナログ演算部AOは、アナログ演算3として、(アナログ信号1+アナログ信号2-アナログ信号3-アナログ信号4=アナログ情報3)を行う。アナログ-デジタル変換部ADは、アナログ演算3の結果としてのアナログ情報3に対応するデジタル信号の信号値AD3を記憶部MEに記憶させる。
【0027】
(4) Time4において、アナログ演算部AOは、アナログ演算4として、(アナログ信号1-アナログ信号2-アナログ信号3+アナログ信号4=アナログ情報4)を行う。アナログ-デジタル変換部ADは、アナログ演算4の結果としてのアナログ情報4に対応するデジタル信号の信号値AD4を記憶部MEに記憶させる。
【0028】
(5)Time5において、復号演算部DOは、次の復号演算を行う。なお、デジタル値Q1_calcは、アナログ信号1の信号値に対応するデジタル値である。デジタル値Q2_calcは、アナログ信号2の信号値に対応するデジタル値である。デジタル値Q3_calcは、アナログ信号3の信号値に対応するデジタル値である。デジタル値Q4_calcは、アナログ信号4の信号値に対応するデジタル値である。
【0029】
デジタル値Q1_calc=1/4×(AD1+AD2+AD3+AD4)・・・<1>
デジタル値Q2_calc=1/4×(AD1-AD2+AD3-AD4)・・・<2>
デジタル値Q3_calc=1/4×(AD1+AD2-AD3-AD4)・・・<3>
デジタル値Q4_calc=1/4×(AD1-AD2-AD3+AD4)・・・<4>
上記の<1>~<4>で示される連立方程式を解くことにより、デジタル値Q1_calc、Q2_calc、Q3_calc、およびQ4_calcのそれぞれを算出することができる。
【0030】
なお、図1に示されるアナログ-デジタル変換部10においては、上記の(1)~(4)のアナログ演算1~4は、時間が経過するごとに、順次行われる。しかしながら、上記の(1)~(4)の全てのアナログ演算1~4が、同時に、たとえば、Time1において行われてもよい。この場合、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号の全てがアナログ演算部AOに含まれるM個のアナログ演算回路(図示せず)のそれぞれに入力され得るように構成されている。
【0031】
図2は、本実施の形態の変形例のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100の機能ブロック図である。
【0032】
変形例のアナログ-デジタル変換装置10は、セレクタSを備えていない点において、前述の実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10と異なる。また、変形例においては、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mの演算結果としてM個のアナログ情報が、それぞれ、1対1の関係で、M個のアナログ-デジタル変換回路1,2,3,4,・・・,Mに入力される。M個のアナログ-デジタル変換部1,2,3,4,・・・,Mは、それぞれ、M個のアナログ-デジタル変換回路を有する。前述の点以外においては、変形例のナログ-デジタル変換装置10は、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10と同様である。
【0033】
図1に示されるアナログ-デジタル変換装置10は、1つのアナログ-デジタル変換部ADのみが設けられており、M回のアナログ演算の結果としてのM個のアナログ情報を、順次アナログ-デジタル変換し、記憶部MEへ順次送信する。しかしながら、図2に示される変形例のアナログ-デジタル変換装置10によれば、M個のアナログ-デジタル変換部1,2,3,4,・・・,Mが設けられているため、M回のアナログ-デジタル変換を並列に(同時に)行うことができる。その結果、M個のアナログ信号からM個のデジタル値をより短時間で生成することができる。
【0034】
図3は、本実施の形態の読出符号行列[R]および復号符号行列[D]を用いてアナログ信号をデジタル値に変換する方法を説明するための図である。
【0035】
図3において、[Q]は、M行1列のM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,MからなるM個の信号値である。[R]は、M行M列の読出符号行列である。[AD]は、M回のアナログ演算の結果としてのM個のアナログ情報にそれぞれ対応するM個のデジタル信号の信号値であり、[D]は、M行M列の復号符号行列である。
【0036】
本実施の形態においては、[D]=[R]-1である。すなわち、[D]は、[R]の逆行列である。つまり、M行M列の復号符号行列[D]は、M行M列の読出符号行列[D]の逆行列である。そのため、符号化および復号化のための演算に起因した誤差が生じることなく、アナログ信号をデジタル信号へ変換することができる。なお、以下の実施の形態においては、特に異なることが記載されていないかぎり、[D]は、[R]の逆行列である。
【0037】
図4は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0038】
図4においては、8個のアナログ信号の信号値Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8は、8個のアナログ情報にそれぞれ対応する8個のデジタル信号の信号値AD1,AD2,AD3,AD4,AD5,AD6,AD7,AD8に変換されている。そのために、アナログ演算部AOは、図4に示される読出符号行列[R]に対応する8回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,8を行う。
【0039】
図4においては、読出符号行列[R]は、アダマール行列[H]である。アダマール行列[H]とは、行列の成分が1または-1のいずれかであり、かつ各行が互いに直交であるような正方行列である。アダマール行列[H]を用いたM回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mにおいては、読出符号行列[R]の+成分に対応するアナログ信号の読出しと読出符号行列[R]の-成分に対応するアナログ信号の読出しとを分離して行うことができる。つまり、アナログ演算部AOは、複数のアナログ信号の加算と複数のアナログ信号の減算とを分離して行うことができる。そのため、読出符号行列[R]に対応するアナログ演算部AOの構成および制御をシンプルにすることができる。
【0040】
復号符号行列[D]行は、前述のように、アダマール行列[H]の逆行列である。また、図4に示されるように、復号符号行列[D]行列の各行ベクトルの各成分の2乗の総和の平方根は、1より小さい。そのため、読出符号行列[R]として単位行列を用いたアナログ演算部AOを有するアナログ-デジタル変換装置10に比較して、量子化ノイズを低減することができる。
【0041】
復号符号行列[D]の各行ベクトルは、0ではない成分を2個以上含んでいる。
【0042】
なお、図4において、[D]*[R]は、単位行列であるものとする。言い換えると、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列である。単位行列は、対角成分が全て1であり、かつ、対角成分以外の成分が全て0である行列である。また、図4に記載のように復号符号行列[D]の各行ベクトルの各成分の2乗の総和の平方根が0.354になるということは、量子化ノイズの影響が0.354倍に低減されることを意味している。
【0043】
上記したように、本実施の形態の固体撮像装置100においては、アナログ演算部AOがM個の画素P1,P2,P3,P4,・・・, PMからM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mを受信する。M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・, PMから出力されたM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mの全てがそれぞれにおいて利用される。また、読出符号行列[R]および復号符号行列[D]は、アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減するように設定されている。その結果、固体撮像装置100のアナログ-デジタル変換装置10で生じる量子化ノイズを低減することが可能になる。
【0044】
また、復号演算部DOは、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mを用いた復号演算を並列(同時)に行うことができる。そのため、短時間で量子化ノイズが低減されたデジタル値を取得することができる。その結果、固体撮像装置100の低消費電力化を図ることができる。したがって、本実施の形態の固体撮像装置100は、低消費電力化が求められるIoT(Internet of Things)デバイスなどに適用されることが好ましい。
【0045】
(実施の形態2)
図5を用いて、実施の形態2のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0046】
図5は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。図5においては、M個のアナログ演算部1,2,3,4, ・・・,Mの数が8個である場合、すなわち、M=8である場合のM行M列の行列演算式が示されている。
【0047】
図5から分かるように、本実施の形態の読出符号行列[R]は、図4に示された実施の形態1の読出符号行列[R]行列とは異なり、アダマール行列[H]の行成分の全てが+1である行ベクトルの各成分の絶対値が+1より低減されている。具体的には、アダマール行列[H]の1行目、すなわち、最上行の各成分が、1ではなく、0.5に低減されている。読出符号行列の各成分の0.5は、アナログ演算部1,2,3,4, ・・・,Mの利得(ゲイン)を半分(0.5)にすることを意味している。たとえば、後述される図25および図26に示される例では、読出符号行列の各成分の0.5は、信号電荷保持用キャパシタの容量値を2倍にして電荷を保持することを意味する。なお、図25および図26の構成は、後述される。信号電荷保持用キャパシタの容量値を2倍にすることにより、アナログ演算結果(出力電圧)は半分になる。信号電荷保持用キャパシタの容量値を2倍にすることにより、アナログ演算部AOから出力されるアナログ演算結果(出力電圧)のオーバーフローの発生の可能性を低減し得る。この信号電荷保持用キャパシタについては、後述される。なお、本明細書では、信号電荷保持用キャパシタは、FD(Floating Diffusion)を含むものとする。
【0048】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、[D]*[R]、すなわち、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列であるものとする。
【0049】
本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10によっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができる。
【0050】
(実施の形態3)
図6を用いて、実施の形態3のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0051】
図6は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。図6においては、アナログ演算信号の数が8である場合、すなわち、M=8である場合のM行M列の行列演算式が示されている。
【0052】
図6から分かるように、本実施の形態の読出符号行列[R]は、図4に示された実施の形態1の読出符号行列[R]とは異なり、アダマール行列[H]の行成分の全てが+1である行ベクトルの各成分が0である。行成分のすべてが+1の場合には、アナログ信号の信号値Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8のすべてが同符号で足し算される。そのため、アナログ信号の信号値Q1~Q8の値が同符号のアナログ信号値である場合には、アナログ演算結果が最も大きくなる。本実施の形態においては、行成分のすべてが+1である行ベクトルの各成分を0にしているため、最も大きくなるアダマール行列[H]の最上行を用いた演算の結果としてのデジタル信号の信号値AD1が0になる。したがって、前述したアナログ演算部AOで生じるオーバーフローを防止できる場合がある。より具体的には、デジタル信号の信号値AD1に対応するアナログ情報を蓄積する信号電荷保持用キャパシタ(図22の+成分加算用容量+AC)の容量を大きくすることなく、その信号電荷保持用キャパシタからの電荷のオーバーフローを防止することができる。
【0053】
実施の形態1および2においては、[D]*[R]、すなわち、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列である。しかしながら、本実施の形態においては、[D]*[R]は、対角成分以外の成分が-0.143(=-1/7)である。これを一般化すると、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列の+1成分以外の成分が-1/(M-1)に置き換えられた行列である。これは、1つのアナログ信号の信号値の本来あるべき理想的な復号演算の結果としてのデジタル値に、別のアナログ信号の信号値に対応するデジタル値が含まれていることを意味している。つまり、ある1つのアナログ信号の信号値がQ1である場合に、実際の復号演算の結果においては、そのある1つのアナログ信号の信号値に対応するデジタル値が「Q1-1/7(Q2+Q3+・・・+Q8)」になっている。つまり、実際のデジタル値「Q1-1/7(Q2+Q3+・・・+Q8)」は、理想的なデジタル値Q1とは、「-1/7(Q2+Q3+・・・+Q8)」だけ異なっている。
【0054】
実施の形態1および2においては、デジタル信号の信号値AD1は、全アナログ信号1,2,3,4, ・・・,8の信号値を加算した値であり、(Q1+Q2+Q3+…+Q8)である。しかしながら、本実施の形態では、デジタル信号の信号値AD1は0に置き換えられている。このことは、本来あるべきデジタル信号の信号値AD1に、全てのアナログ信号1,2,3,4, ・・・,8の信号値が減算された値である-(Q1+Q2+Q3+・・・+Q8)に比例するノイズの値が付加されていることと等価である。言い換えると、この復号演算は、全アナログ信号1,2,3,4, ・・・,8のそれぞれの信号値に対応する電圧の値に-(Q1+Q2+Q3+…+Q8)に比例する電圧の値が加えられていることと等価である。
【0055】
言い換えると、本実施の形態の復号演算部DOによる復号演算のそれぞれにおいて、次のことと等価なことが起こっている。
【0056】
全アナログ信号1,2,3,4, ・・・,8のそれぞれの信号値が減算された値である-(Q1+Q2+Q3+・・・+Q8)に比例する誤差成分がアナログ演算結果1(AD1)に付加されている。各アナログ信号を求めるときの復号演算において、アナログ演算結果1(AD1)の用いるため、各アナログ信号の復号演算結果には、-(Q1+Q2+Q3+・・・+Q8)に比例する誤差成分が加算されている。
【0057】
本実施の形態においては、読出符号行列[R]として8行8列のアダマール行列[H]が用いられている。これを一般化すると、読出符号行列[R]としてM行M列のアダマール行列[H]が用いられる場合、[D]*[R]行の対角成分は1であり、[D]*[R]行の対角成分以外の成分は-1/(M-1)となる。
【0058】
本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10が上記した誤差成分による悪影響が問題にならない用途で用いられる場合には、復号演算部DOが前述の復号演算を行ってもよい。
【0059】
本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10によっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができる。
【0060】
(実施の形態4)
図7を用いて、実施の形態4のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0061】
図7は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。図7においては、アナログ演算部の数が8個である場合、すなわち、M=8である場合のM行M列の行列演算式が示されている。
【0062】
本実施の形態のアナログ演算部AOは、M個のアナログ信号1,2,3,4・・・,8のそれぞれに所定オフセット信号を印加する。このオフセット信号の印加は、図25および図26に示される構成において実現される。図25および図26の構成は、後述される。それにより、読出符号行列[R]としてのアダマール行列[H]の行成分の全てが+1である行の1つのアナログ演算の結果としての1つのアナログ情報のオーバーフローの発生の可能性を低減し得る。このアナログ情報は、アナログ信号の信号値Q1~Q8の値が同符号のアナログ信号値である場合には、アナログ演算部AOから出力されるアナログ演算結果(出力電圧)が最も大きな電荷量となる。これらアナログ演算については、後述される。また、復号演算部DOは、所定オフセット信号に対応する所定オフセット量を補正する。
【0063】
読出符号行列[R]として、図7に示されるようなアマダール行列[H]が用いられる場合、読出符号行列[H]の1行目、すなわち最上行の各成分は、+1であるため、デジタル信号の信号値AD1=Q1+Q2+Q3+・・・+Q8となる。つまり、デジタル信号の信号値AD1は、他のデジタル信号の値信号に比較して、アナログ信号の信号値Q1~Q8の値が同符号のアナログ信号値である場合には、大きな値となってしまう。そのため、このデジタル信号の信号値AD1に対応するアナログ情報を蓄積する信号電荷保持用キャパシタ(たとえば、図22の+成分加算容量+AC)の容量が小さいと、その信号電荷保持用キャパシタに蓄積された電荷がオーバーフローするおそれがある。一方、信号電荷保持用キャパシタの容量を大きくすることが困難な場合がある。そのため、信号電荷保持用キャパシタの容量を大きくすることなく、前述のオーバーフローを抑制するために、アナログ-デジタル変換装置10は、次の演算を行う。
【0064】
本実施の形態においては、M個のアナログ演算部1,2,3,4,・・・,8のそれぞれは、アナログ信号1,2,3,・・・,8の信号値Q1,Q2,Q3,・・・,Q8のそれぞれからオフセット値Qfixを減算する。その後、アナログ演算部AOは、オフセットされたアナログ信号M’の信号値QM’(=QM-Qfix:M=1,2,3,・・・,8)をアナログ演算する。これらのアナログ演算は、図25および図26に示される構成によって実現される。図25および図26の構成は、後述される。
【0065】
次に、復号演算部DOは、オフセットされたアナログ信号1,2,3,4・・・,8の信号値Q1’,Q2’,Q3’,・・・,Q8’にそれぞれ対応するオフセットされたデジタル信号の信号値AD1’,AD2’,AD3’ ,・・・,AD8 ’を用いて復号演算を行う。その後、復号演算部DOは、QM=QM’+Qfix(M=1,2,3,・・・,8)の演算を行うことにより、アナログ信号1,2,3,4・・・,8の信号値Q1,Q2,Q3,・・・,Q8にそれぞれ対応するデジタル信号の信号値を取得することができる。
【0066】
ただし、オフセットによる悪影響が問題にならない用途では、QM=QM’+Qfix(M=1,2,3,・・・,8)の復号演算を行わなくてもよい。
【0067】
なお、デジタル信号の信号値AD2’~AD8’に関しては、そのアナログ演算に用いられる読出符号行列[R]の各行における+1の成分の数と-1の成分の数が同一である。そのため、オフセット信号(Qfix)を印加したことに起因した悪影響は理論的には相殺(キャンセル)される。
【0068】
たとえば、デジタル信号の信号値AD2’
=(Q1-Qfix)-(Q2-Qfix)+(Q3-Qfix)-(Q4-Qfix)+(Q5-Qfix)-(Q6-Qfix)+(Q7-Qfix)-(Q8-Qfix)
=Q1-Q2+Q3-Q4+Q5-Q6+Q7-Q8
=AD2(これは、前述の実施の形態1のAD2と同じ値である)
オフセット値(-Qfix)が影響を与えるのは、デジタル信号の信号値AD1’だけである。そのため、デジタル信号の信号値AD2’~ADM ’(M’は2以上の自然数)を求める演算においては、オフセット信号(Qfix)の印加は行われなくてもよい。
【0069】
以上から分かるように、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号に対応する電圧のそれぞれに所定オフセット信号を印加する。それにより、アダマール行列[H]の行成分の全てが+1である行のアナログ演算により算出されたアナログ情報が、オーバーフローする可能性を低減し得る。また、復号演算部DOは、所定オフセット電圧に対応する所定オフセット値を用いて、復号演算の結果として得られたM個のデジタル値のそれぞれを補正する。これによっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができるとともに、前述のオーバーフローを抑制することができる。
【0070】
(実施の形態5)
図8を用いて、実施の形態5のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0071】
図8は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。以下、Xは2以上の自然数であるものとする。
【0072】
本実施の形態のアナログ演算部AOは、M行M列のアダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルのM個の成分をX回に時間分割して読み出す。それによって、アナログ演算部AOは、(M+X-1)行M列の読出符号行列[R]を用いて、(M+X-1)回のアナログ演算を行う。また、アナログ-デジタル変換部ADは、(M+X-1)個のデジタル信号を出力する。復号演算部DOは、(M+X-1)個のデジタル信号に対して、(M+X-1)行M列の読出符号行列[R]に対応するM行(M+X-1)列の復号符号行列[D]を用いて、復号演算を行う。
【0073】
これによっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができる。また、前述のオーバーフローを抑制することができる。
【0074】
上記のことを、以下、具体的に説明する。
【0075】
図8は、実施の形態1で示したアダマール行列[H]の上から1行目のアナログ演算の結果としてのアナログ情報が、オーバーフローすると仮定したときの一例の読出符号行列[R]を示している。本実施の形態の読出符号行列[R]は、実施の形態1の8行8列のアダマール行列[H]が9行8列の行列に変更されている。具体的には、実施の形態1で示したアダマール行列[H]の上から1行目が、本実施の形態の読出符号行列[R]の上から1行目および2行目に分割されている。また、実施の形態1で示したアダマール行列[H]の上から2行目~8行目が、それぞれ、本実施の形態の読出符号行列[R]の上から3行目~9行目に対応している。
【0076】
なお、実施の形態1で示したアダマール行列[H]の上から2行目(Q1-Q2+Q3-Q4+Q5-Q6+Q7-Q8)のアナログ情報が、オーバーフローする場合がある。この場合、アダマール行列[H]の上から2行目が次のAD2_1stおよびAD2_2ndに分割されてもよい。
【0077】
AD2_1st=+Q1-Q2+Q3-Q4
AD2_2nd=+Q5-Q6+Q7-Q8
これにより、アダマール行列[H]の上から2行目の演算結果としてアナログ情報に対応するデジタル信号の信号値AD2が取得されてもよい。
【0078】
本実施の形態においては、M行M列のアダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルのアナログ演算の結果としてのアナログ情報が、オーバーフローすると予想される。そのため、アナログ演算部AOが、M行M列のアダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルの全成分を2回に時間分割して読み出す。しかしながら、アナログ演算部AOは、オーバーフローが生じると予想されるM行M列のアダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルの全成分を3回以上に時間分割して読み出してもよい。また、アナログ演算部AOは、オーバーフローが生じたときにのみ、読出符号行列[R]のいずれかの行ベクトルの全成分を自動的に時間分割して読み出してもよい。
【0079】
(実施の形態6)
図9を用いて、実施の形態6のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0080】
図9は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0081】
図9に示されるように、読出符号行列[R]として、M系列(Maximal Length Sequence)を利用して生成された各成分が+1または-1で構成されるM系列行列[M]が用いられている。これによっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができる。M系列を利用して生成された+1の成分の数と-1の成分の数の差が常に1であるために、前述のような各成分が+1である行ベクトルが存在しない。そのために、アナログ演算部AOにおけるオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0082】
(実施の形態7)
図10を用いて、実施の形態7のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0083】
図10は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0084】
図10から分かるように、本実施の形態においては、読出符号行列[R]として、M系列法を利用して生成された各成分が+1または0で構成されるM系列行列[M]が用いられている。つまり、読出符号行列[R]のいずれの成分も-符号を有していない。そのため、アナログ演算部AOで減算を行う必要がない。したがって、アナログ演算部AOの構成をシンプルにすることができる(たとえば、図23の+成分加算容量+AC参照)。また、固定ノイズを低減することができる。以下、+1または0で構成されるM系列行列[M]を読出符号行列[R]として用いれば、固定ノイズを低減することができることを具体的に説明する。
【0085】
たとえば、アナログ演算の結果としてのアナログ情報にそれぞれ対応するデジタル信号の信号値AD1~AD7のそれぞれに、真のデジタル値SadX(X=1~7)と固定ノイズNfixが含まれている場合、アナログ信号の信号値に対応するデジタル値Q1_calcは、たとえば、次の式で算出される。
【0086】
デジタル値Q1_calc
=1/4×(-AD1+AD2-AD3+AD4+AD5+AD6-AD7)
=1/4×(-(Sad1+Nfix)+(Sad2+Nfix)-(Sad3+Nfix)+(Sad4+Nfix)+(Sad5+Nfix)+(Sad6+Nfix)-(Sad7+Nfix))
=1/4×(-Sad1+Sad2-Sad3+Sad4+Sad5+Sad6-Sad7+Nfix)
=1/4×(4Q1+Nfix)
=Q1+Nfix/4
上記の式において、デジタル値Q1_calcは、復号演算の結果として得られたアナログ信号1,2,3,・・・,7の信号値Q1,Q2,Q3,Q4,・・・,Q7に対応する値である。また、真のデジタル値SadX(X=1~7)は、アナログ演算部AOに入力されたアナログ信号の信号値QX(X=1~7)から固定ノイズNfixの信号値を除いた値である。
【0087】
アナログ信号1,2,3,・・・,7の信号値Q1,Q2,Q3,Q4,・・・,Q7の復号演算においては、加算用のデジタル信号の信号値ADX(X=1~7)の数が4個であり、減算用のデジタル信号の信号値ADX(X=1~7)の数が3個である。そのため、固定ノイズは低減される。
【0088】
なお、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10によっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができることは、前述の実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10と同様である。
【0089】
(実施の形態8)
図11を用いて、実施の形態8のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0090】
図11は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0091】
図11から分かるように、本実施の形態においては、読出符号行列[R]として、M系列法を利用して生成された各成分が+1または-1で構成されるM系列行列が用いられる。また、復号符号行列[D]として、係数が1/M(M=7)の読出符号行列[R]の転置行列が用いられる。転置行列とは、ある行列の行と列を、1行目を1列目に、2行目を2列目に、3行目を3列目に・・・といったように、全てを入れ替えた行列である。本実施の形態においては、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列の+1成分以外の成分が-1/Mに置き換えられた行列である。この場合においても、量子化ノイズを抑制する効果が高く、かつ、固定ノイズを低減することができる。
【0092】
固定ノイズが低減されることをより具体的に説明すると、以下のようになる。
【0093】
前述の実施の形態においては、 [D]*[R]、すなわち、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列である。しかしながら、本実施の形態においては、 [D]*[R]は、その対角成分は全て1であるが、その対角成分以外の値が-0.143(=-1/7)である。これは、ある1つのアナログ信号に対応する本来あるべき理想的な復号演算の結果としてのデジタル値に、別のアナログ信号の信号値に対応するデジタル値が含まれていることを意味している。具体的には、本来のアナログ信号1の信号値がQ1である場合に、そのアナログ信号の信号値Q1に対応するデジタル値がQ1-1/7(Q2+Q3+…+Q7)になっている。
【0094】
全アナログ信号1,2,3,・・・,7の信号値の加算値(Q1+Q2+Q3+・・・+Q7)の平均値に比例する値が誤差成分として復号演算の結果としてのデジタル値に含まれていると解釈される。すなわち、その誤差成分がノイズ電圧値としてアナログ信号の信号値に対応する電圧値に加えられていると解釈できる。
【0095】
しかしながら、アナログ-デジタル変換装置10が上記した誤差成分による悪影響が問題にならない用途で用いられる場合には、復号演算部DOが前述の復号演算を行ってもよい。
【0096】
上記したように、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10によれば、前述の実施の形態と同様に、固定ノイズを低減する効果が得られる。なお、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10によっても、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することができることは、前述の実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10と同様である。
【0097】
(実施の形態9)
図12を用いて、実施の形態9のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置と異なる。
【0098】
図12は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0099】
図12に示されるように、アナログ演算部AOは、次の2種類のアナログ信号(1)および(2)を分割して読み出す。本実施の形態では、M=8である。
【0100】
(1) M行M列のアダマール行列[H]の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルの+1成分に対応するアナログ信号
【0101】
(2) M行M列のアダマール行列[H]の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルの-1成分に対応するアナログ信号
具体的には、アダマール行列[H]の全ての成分が+1である行以外の行における+1成分および-1成分を2つの行に分ける。本実施の形態では、2つに分けられた8行8列のアダマール行列[H]の-1成分は、+1成分に置き換えられている。
【0102】
デジタル信号の信号値AD1は、前述の実施の形態のデジタル信号の信号値と同一である。実施の形態1のデジタル信号の信号値AD2~AD8は、本実施の形態においては、デジタル信号の信号値AD2p~AD8pとデジタル信号の信号値AD2m~AD8mとに分けられている。
【0103】
それにより、アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]としての(2M-1)行M列の読出符号行列を用いて、(2M-1)回のアナログ演算を行う。本実施の形態では、アナログ演算部AOは、15行8列の読出符号行列を用いて、15回のアナログ演算を行う。
【0104】
アナログ-デジタル変換部ADは、M個以上のデジタル信号として、(2M-1)個のデジタル信号を出力する。本実施の形態では、アナログ-デジタル変換部ADは、15個のデジタル信号を出力する。
【0105】
復号演算部DOは、(2M-1)個のデジタル信号に対して、復号符号行列[D]としての(2M-1)行M列の読出符号行列[R]に対応するM行(2M-1)列の復号符号行列[D]を用いて、復号演算を行う。本実施の形態においては、復号演算部DOは、15個のデジタル信号に対して、復号符号行列[D]としての15行8列の読出符号行列[R]に対応する8行15列の復号符号行列[D]を用いて、復号演算を行う。
【0106】
復号演算部DOは、復号演算において、(M-1)個の差分ADp-ADmを算出する。(M-1)個の差分ADp-ADm(たとえば、pは、p2~p8:mは、m2~m8)は、M行M列のアダマール行列[H]の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルのそれぞれについて算出される。(M-1)個の差分ADp-ADmのそれぞれは、次の(3)および(4)に基づいて算出される。
【0107】
(3) +1成分に対応する(M-1)個のデジタル信号の加算によって生成された+デジタル結果ADp(ここで、pは、p2~p8である。)
【0108】
(4) -1成分に対応する(M-1)個のデジタル信号の加算によって生成された-デジタル結果ADm(ここで、mは、m2~m8である)
本実施の形態では、復号演算部DOは、7個の差分(ADp2-ADm2), (ADp3-ADm3), (ADp4-ADm4),・・・,(AD8p-ADm8)を算出する。
【0109】
復号演算部DOは、M行M列のアダマール行列[H]の全てが+1成分のみからなる行ベクトルに対応する1つのデジタル信号および(M-1)個の差分ADp-ADmを、M個のアナログ信号にそれぞれ対応するM個のデジタル値として出力する。具体的には、復号演算部DOは、8行8列のアダマール行列[H]の全ての成分が+1である行ベクトルに対応する1つのデジタル信号AD1および7個の差分ADp-ADmを、8個のアナログ信号にそれぞれ対応する8個のデジタル値として出力する。
【0110】
上記の構成によれば、読出符号行列[R]は、-成分を有していない。そのため、アナログ演算部AOにおけるアナログ演算によって減算を行うことが困難である場合に、復号演算部DOにおけるデジタル演算によって減算を行うことによって、所望のデジタル値を得ることができる。
【0111】
(実施の形態10)
図13を用いて、実施の形態10のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置と異なる。
【0112】
図13に示されるように、アナログ演算部AOは、次の2種類の信号(i)および(ii)を分割して読み出する。
【0113】
(i) M行M列のM系列行列[M]の-1成分を有するM個の行ベクトルの+1成分に対応するアナログ信号
【0114】
(ii) M行M列のM系列行列[M]の-1成分を有するM個の行ベクトルの-1成分に対応するアナログ信号
それにより、アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]としての2M行M列の読出符号行列[R]を用いて、M回以上のアナログ演算として2M回のアナログ演算を行う。
【0115】
また、アナログ-デジタル変換部ADは、M個以上のデジタル信号として、2M個のデジタル信号を出力する。
【0116】
復号演算部DOは、2M個のデジタル信号に対して、復号符号行列[D]としての2M行M列の読出符号行列[R]に対応するM行2M列の復号符号行列[D]を用いて、復号演算を行う。
【0117】
この復号演算において、復号演算部DOは、次の2種類のデジタル結果を用いる。
【0118】
(i) M行M列のM系列行列[M]の-1成分を有するM個の行ベクトルのそれぞれについて、+1成分に対応するM個のデジタル信号の加算によって生成された+デジタル結果ADp
【0119】
(ii) -1成分に対応するM個のデジタル信号の加算によって生成された-デジタル結果ADm
それにより、復号演算部DOは、+デジタル結果ADpと-デジタル結果ADmとのM個の差分ADp-ADmを算出する。この場合、復号演算部DOは、M個の差分ADp-ADmを、M個のアナログ信号にそれぞれ対応するM個のデジタル値として出力する。
【0120】
上記の構成によっても、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nによる減算が困難である場合に、デジタル演算による減算を用いて、所望のデジタル値を得ることができる。
【0121】
(実施の形態11)
図14を用いて、実施の形態11のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0122】
図14は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0123】
図14に示されるように、アナログ演算部AOは、M個(M=8)のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mのうちの予め検出された真値を示さない欠陥アナログ信号が無入力に設定されている。欠陥アナログ信号の無入力は、読出符号行列[R]の欠陥アナログ信号に該当する列成分の全てを0にすることによって実現される。
【0124】
そのため、たとえば、図14に示されるように、読出符号行列[R]は、アダマール行列[H]の左から3列目の全ての成分が0になっている行列である。それにより、アナログ演算部AOは、欠陥アナログ信号(アナログ信号3の信号値Q3)をアナログ演算に利用せずに、M回のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mを行う。
【0125】
復号演算部DOは、復号演算の後に、欠陥アナログ信号に対応する欠陥画素に隣接する複数の画素にそれぞれ対応する複数のアナログ信号から得られた複数のデジタル値を用いて、欠陥アナログ信号に対応するデジタル値を補間する。そのため、欠陥画素に起因したノイズの悪影響を低減することができる。
【0126】
(実施の形態12)
図15および図16を用いて、実施の形態12のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0127】
図15および図16は、それぞれ、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための第1図および第2図である。
【0128】
図15に示されるように、本実施の形態のアナログ演算部AOによって実行されるアナログ演算に対応する読出符号行列[R]は、前述のアダマール行列[H]と同一である。
【0129】
一般に、アナログ-デジタル変換部ADの出力に固定ノイズが含まれる場合があり、かつ、復号演算によって固定ノイズがキャンセルされずに、復号演算の結果としてのデジタル値に固定ノイズが含まれている場合がある。本実施の形態においては、このような場合に、図16に示されるように、アナログ演算部AOは、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,N(たとえば、1回目)とは異なる他のM回以上のアナログ演算(たとえば、2回目)を行う。それにより、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(たとえば、1回目のk+7)が、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(2回目のk+7)で置き換えられる。
【0130】
この場合、復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(たとえば、1回目のk+7)を出力することなく、固定ノイズがキャンセルされた他のデジタル値(たとえば、2回目のk+7)を出力する。これによれば、固定ノイズを低減することができる。
【0131】
具体的には、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法は、次のようなものである。M=8であるものとして、次の説明を行う。
【0132】
デジタル信号の信号値AD1~AD8のそれぞれに固定ノイズNfixが含まれている場合を考える。この場合、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8の復号演算は、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8にそれぞれ対応する真のデジタル信号の信号値をSad1~Sad8とすると、以下のようなものである。
【0133】
アナログ信号1の信号値Q1に対応するデジタル値Q1_calc
=1/8×(AD1+AD2+AD3+AD4+AD5+AD6+AD7+AD8)
=1/8×((Sad1+Nfix)+(Sad2+Nfix)+(Sad3+Nfix)+(Sad4+Nfix)+(Sad5+Nfix)+(Sad6+Nfix)+(Sad7+Nfix)+(Sad8+Nfix))
=1/8×(Sad1+Sad2+Sad3+Sad4+Sad5+Sad6+Sad7+Sad8+8Nfix)
=1/8×(8Q1+8Nfix)
=Q1+Nfix
一方、アナログ信号の信号値Q2~Q8にそれぞれに対応するデジタル値Q2_calc~Q8_calcの復号演算では、加算を行うデジタル値のデータ数が4個であり、かつ、減算を行うデジタル値のデータ数が4個である。そのため、固定ノイズは相殺(キャンセル)される。
【0134】
以上から分かるように、復号演算の後、アナログ信号の信号値Q1のみに固定ノイズが含まれているという結果が得られる。そのため、固定ノイズが相殺(キャンセル)されないアナログ信号Q1に対応するデジタル値を、別のアナログ演算を行うことによって特定する。
【0135】
以下、上記のことをさらに具体的に説明する。
【0136】
たとえば、アナログ信号4の信号値Q4=2.0pC,アナログ信号3の信号値Q3=1.9pC,アナログ信号2の信号値Q2=2.2pC、かつ、アナログ信号1の信号値Q1=2.1pCの場合を考える。次の読み出しおよび取得は、アナログ-デジタル変換装置10によって行われる。
【0137】
アナログ信号の信号値Q4+Q3+Q2+Q1がTime1のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD1(8.2pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0138】
アナログ信号の信号値Q4-Q3+Q2-Q1がTime2のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD2(0.2pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0139】
アナログ信号の信号値Q4+Q3-Q2-Q1がTime3のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD3(-0.4pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0140】
アナログ信号の信号値Q4-Q3-Q2+Q1がTime4のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD4(0.0pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0141】
その後、復号演算部DOは、上記したデジタル信号の信号値AD1~AD4および復号符号行列[D]を用いて復号演算を行う。それにより、復号演算部DOは、各アナログ信号1、2、3、および4の信号値Q1,Q2,Q3,およびQ4に対応するデジタル値Q1_calc1、Q2_calc1、Q3_calc1、およびQ4_calc1を算出する。復号演算部DOによる復号演算は、次のようなものである。
【0142】
デジタル値Q4_calc1=1/4×(AD1+AD2+AD3+AD4)=1/4×((8.2pC)+(0.2pC)+(-0.4pC)+(0.0pC))=2.0pC
デジタル値Q3_calc1=1/4×(AD1-AD2+AD3-AD4)=1/4×((8.2pC)-(0.2pC)+(-0.4pC)-(0.0pC))=1.9pC
デジタル値Q2_calc1=1/4×(AD1+AD2-AD3-AD4)=1/4×((8.2pC)+(0.2pC)-(-0.4pC)-(0.0pC))=2.2pC
デジタル値Q1_calc1=1/4×(AD1-AD2-AD3+AD4)=1/4×((8.2pC)-(0.2pC)-(-0.4pC)+(0.0pC))=2.1pC
次に、アナログ信号7の信号値Q7=2.1pC、アナログ信号6の信号値Q6=2.0pC、アナログ信号5の信号値Q5=2.3pC、かつ、アナログ信号4の信号値Q4=2.0pCの場合を考える。
【0143】
アナログ信号の信号値Q7+Q6+Q5+Q4がTime5のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD5(8.4pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0144】
アナログ信号の信号値Q7-Q6+Q5-Q4がTime6のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD6(0.4pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0145】
アナログ信号の信号値Q7+Q6-Q5-Q4がTime7のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD7(-0.2pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0146】
アナログ信号の信号値Q7-Q6-Q5+Q4がTime8のときにアナログ演算部AOによって読み出され、デジタル信号の信号値AD8(-0.2pC相当の値)が復号演算部DOによって取得される。
【0147】
その後、復号演算部DOは、上記したデジタル信号の信号値AD5~AD8および復号符号行列[D]を用いた復号演算を行う。それにより、復号演算部DOは、各アナログ信号4、5、6、および7の信号値に対応するデジタル値Q4_calc2、Q5_calc2、Q6_calc2、およびQ7_calc2を算出する。復号演算部DOによる復号演算は、次のようなものである。
【0148】
デジタル値Q7_calc2=1/4×(AD5+AD6+AD7+AD8)=1/4×((8.4pC)+(0.4pC)+(-0.2pC)+(-0.2pC))=2.1pC
デジタル値Q6_calc2=1/4×(AD5-AD6+AD7-AD8)=1/4×((8.4pC)-(0.4pC)+(-0.2pC)-(-0.2pC))=2.0pC
デジタル値Q5_calc2=1/4×(AD5+AD6-AD7-AD8)=1/4×((8.4pC)+(0.4pC)-(-0.2pC)-(-0.2pC))=2.3pC
デジタル値Q4_calc2=1/4×(AD5-AD6-AD7+AD8)=1/4×((8.4pC)-(0.4pC)-(-0.2pC)+(-0.2pC))=2.0pC
上記の演算の結果、次のデジタル値が算出される。
【0149】
デジタル値Q7_calc2=2.1pC、デジタル値Q6_calc2=2.0pC、デジタル値Q5_calc2=2.3pC、デジタル値Q4_calc2=2.0pC
デジタル値Q4_calc1=2.0pC、デジタル値Q3_calc1=1.9pC、デジタル値Q2_calc1=2.2pC、デジタル値Q1_calc1=2.1pC
次に、仮にデジタル信号の信号値AD1~AD4のそれぞれに+0.1pCの固定ノイズが含まれている場合を考える。
【0150】
デジタル値Q4_calc1f=1/4×(AD1+AD2+AD3+AD4)=1/4×((8.3pC)+(0.3pC)+(-0.3pC)+(0.1pC))=2.1pC
デジタル値Q3_calc1f=1/4×(AD1-AD2+AD3-AD4)=1/4×((8.3pC)-(0.3pC)+(-0.3pC)-(0.1pC))=1.9pC
デジタル値Q2_calc1f=1/4×(AD1+AD2-AD3-AD4)=1/4×((8.3pC)+(0.3pC)-(-0.3pC)-(0.1pC))=2.2pC
デジタル値Q1_calc1f=1/4×(AD1-AD2-AD3+AD4)=1/4×((8.3pC)-(0.3pC)-(-0.3pC)+(0.1pC))=2.1pC
+0.1pCの固定ノイズがデジタル信号の信号値AD1~AD4のそれぞれに含まれている場合の演算結果、および、デジタル信号の信号値AD1~AD4に固定ノイズが含まれていない(理想的な)場合の演算結果から、次のようなデジタル値が得られる。
【0151】
デジタル値Q4_calc1f=Q4_calc1+0.1pC=2.1pC
デジタル値Q3_calc1f=Q3_calc1=1.9pC
デジタル値Q2_calc1f=Q2_calc1=2.2pC
デジタル値Q1_calc1f=Q1_calc1=2.1pC
つまり、アナログ信号4の信号値Q4に対応するQ4_calc1fのみに固定ノイズの影響が残る。
【0152】
また、次のデジタル値が得られる。
【0153】
デジタル値Q7_calc2f=1/4×(AD5+AD6+AD7+AD8)=1/4×((8.5pC)+(0.5pC)+(-0.1pC)+(-0.1pC))=2.2pC
デジタル値Q6_calc2f=1/4×(AD5-AD6+AD7-AD8)=1/4×((8.5pC)-(0.5pC)+(-0.1pC)-(-0.1pC))=2.0pC
デジタル値Q5_calc2f=1/4×(AD5+AD6-AD7-AD8)=1/4×((8.5pC)+(0.5pC)-(-0.1pC)-(-0.1pC))=2.3pC
デジタル値Q4_calc2f=1/4×(AD5-AD6-AD7+AD8)=1/4×((8.5pC)-(0.5pC)-(-0.1pC)+(-0.1pC))=2.0pC
上記したデジタル信号の信号値AD1~AD8のそれぞれに+0.1pCの固定ノイズが含まれている結果、および、デジタル信号の信号値AD1~AD8に+0.1pCの固定ノイズが含まれていない(理想的な)結果から、次のような値が得られる。
【0154】
デジタル値Q7_calc2f=Q7_calc2+0.1pC=2.2pC
デジタル値Q6_calc2f=Q6_calc2=2.0pC
デジタル値Q5_calc2f=Q5_calc2=2.3pC
デジタル値Q4_calc2f=Q4_calc2=2.0pC
つまり、アナログ信号7の信号値Q7に対応するデジタル値Q7_calc2fのみに固定ノイズの影響が残る。
【0155】
上記の復号演算の結果としてのデジタル値をまとめて書き直すと、次のようになる。
【0156】
(1)固定ノイズ(0.1pC)がない場合の復号演算の結果としてのデジタル値
デジタル値Q7_calc2=2.1pC
デジタル値Q6_calc2=2.0pC
デジタル値Q5_calc2=2.3pC
デジタル値Q4_calc2=2.0pC
デジタル値Q4_calc1=2.0pC
デジタル値Q3_calc1=1.9pC
デジタル値Q2_calc1=2.2pC
デジタル値Q1_calc1=2.1pC
【0157】
(2)固定ノイズ(0.1pC)がキャンセルされていない場合の復号演算の結果としてのデジタル値
デジタル値Q7_calc2f=2.2pC ← +0.1pCのノイズあり
デジタル値Q6_calc2f=2.0pC
デジタル値Q5_calc2f=2.3pC
デジタル値Q4_calc2f=2.0pC
デジタル値Q4_calc1f=2.1pC ← +0.1pCのノイズあり
デジタル値Q3_calc1f=1.9pC
デジタル値Q2_calc1f=2.2pC
デジタル値Q1_calc1f=2.1pC
上述のように、デジタルQ7_calc2fおよびQ4_calc1fの復号演算の結果には固定ノイズの影響が残るが、その他の復号演算の結果としてのデジタル値には固定ノイズの影響が残らない。
【0158】
Q4_calc1fおよびデジタル値Q7_calc2fを算出するための復号符号行列[D]の行の成分はすべて+1である。そのため、固定ノイズの影響はキャンセルされない。一方、Q4_calc1fおよびデジタル値Q7_calc2f以外のデジタル値を算出するための演算においては、演算に用いられる+1成分の数および-1成分の数がそれぞれ2個ずつであるため、固定ノイズの影響は相殺(キャンセル)されている。
【0159】
上述のように、固定ノイズがキャンセルされないデジタル値に対応するアナログ信号(1回目の復号演算の結果ではQ4であり、2回目の復号演算の結果ではQ7ある)を予め把握することができる。
【0160】
上記の復号演算の例においては、Q4_calc1fおよびデジタル値Q7_calc2fおよびがノイズの影響が相殺(キャンセル)されないため、アナログ信号4および7の信号値Q4およびQ7のそれぞれが二重に読み出される。また、アナログ信号4の信号値Q4の復号演算の結果としては、デジタル値Q4_calc1fが採用されずに、デジタル値Q4_calc2fの復号演算の結果が採用される。アナログ信号7の信号値Q7の復号演算の結果としては、デジタル値Q7_calc2fが採用されずに、デジタル値Q7_calc3f(別途算出)の復号演算の結果が採用される。
【0161】
要するに、n回目の演算において、固定ノイズがキャンセルされていないアナログ信号1の信号値Q1に対応するデジタル値は、n+1回目の演算においては、固定ノイズがキャンセルされたアナログ信号8の信号値Q8に対応するデジタル値になるようにする。以下、このことを具体的に説明する。この信号値Q1およびQ8は、前述の実施の形態の行列式の信号値Q1およびQ8に対応する。
【0162】
kが自然数であるものとする。図16に示されるように、復号演算部DOは、1回目の復号演算では、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8に対応するデジタル値(k+0)~(k+7)のうち、固定ノイズが含まれている信号値Q1に対応するデジタル値(k+7)を採用しない。復号演算部DOは、1回目の復号演算では、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8に対応するデジタル値(k+0)~(k+7)のうち、固定ノイズがキャンセルされた信号値Q2~Q8に対応するデジタル値(k+0)~(k+6)のみを採用する。なお、信号値Q2~Q8に対応するデジタル値(k+0)~(k+6)は、復号演算において、固定ノイズが相殺(キャンセル)されているが、信号値Q1に対応するデジタル値(k+7)は、復号演算において、固定ノイズがキャンセルされていない。
【0163】
復号演算部DOは、2回目の演算では、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8である(k+7)~(k+14)のうち、固定ノイズがキャンセルされていない信号値Q1に対応するデジタル値(k+14)を採用しない。復号演算部DOは、2回目の復号演算では、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8に対応するデジタル値(k+7)~(k+14)のうち、固定ノイズがキャンセルされている信号値Q2~Q8に対応するデジタル値(k+7)~(k+13)のみを採用する。この場合、1回目の復号演算で採用されなかったアナログ信号1の信号値Q1に対応するデジタル値(k+7)は、2回目の復号演算ではアナログ信号8の信号値Q8に対応するデジタル値(k+7)として採用されている。
【0164】
上記のように、アナログ-デジタル変換部ADの出力に固定ノイズが含まれており、かつ、復号演算によって固定ノイズがキャンセルされずに、復号演算の結果としてのデジタル値に固定ノイズが含まれる場合がある。この場合、M回のアナログ演算(1回目)とは異なる他のM回のアナログ演算(2回目)を行う。それにより、アナログ演算部AOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)が、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(2回目のk+7)で置き換えられる。復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)を出力することなく、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(2回目のk+7)を出力する。これにより、固定ノイズを低減することができる。
【0165】
復号演算部DOは、3回目の演算でも、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8に対応するデジタル値(k+14)~(k+21)のうち、固定ノイズが含まれている信号値Q1に対応するデジタル値(k+21)を採用しない。復号演算部DOは、3回目の復号演算でも、アナログ信号1~8の信号値Q1~Q8に対応するデジタル値(k+14)~(k+21)のうち、固定のノイズがキャンセルされた信号値Q2~Q8に対応するデジタル値(k+14)~(k+20)のみを採用する。この場合、2回目の復号演算で採用されなかったアナログ信号1の信号値Q1に対応するデジタル値(k+14)は、3回目の復号演算ではアナログ信号8の信号値Q8に対応するデジタル値(k+14)として採用されている。
【0166】
上記のように、アナログ-デジタル変換部ADの出力に固定ノイズが含まれており、かつ、復号演算によって固定ノイズがキャンセルされずに、復号演算の結果としてのデジタル値に固定ノイズが含まれる場合がある。この場合、アナログ演算部AOは、M回のアナログ演算(2回目)とは異なる他のM回のアナログ演算(3回目)を行う。それにより、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(2回目のk+14)が、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(3回目のk+14)で置き換えられる。復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(2回目のk+14)を出力することなく、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(3回目のk+14)を出力する。これにより、固定ノイズを低減することができる。
【0167】
(実施の形態13)
図17を用いて、実施の形態13のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0168】
図17は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための図である。
【0169】
本実施の形態においては、実施の形態12と同様に、アナログ演算部AOは、M回のアナログ演算(1回目)とは異なる他のM回のアナログ演算(2回目)を行う。それにより、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)が、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(2回目のk+7)で置き換えられる。一方、本実施の形態においては、復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)と固定ノイズがキャンセルされた他のデジタル値(2回目のk+7)との差分を算出する。その後、復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)から差分を減算する。これによっても、実施の形態12と同様に、固定ノイズを低減することができる。
【0170】
以下、上記の方法により固定ノイズが低減できる理由を具体的に説明する。
【0171】
量子化ノイズは平均化処理によって、ばらつき量が低減される。しかしながら、固定ノイズは平均化処理によって低減されない。本実施の形態においては、図17から分かるように、n回目のアナログ信号の信号値Q1に対応する復号演算の結果と(n+1)回目のアナログ信号の信号値Q8に対応する復号演算の結果との間には、固定ノイズ(+量子化ノイズ)分の差がある。なお、nは自然数である。
【0172】
平均化処理などによって量子化ノイズの影響を低減すれば、固定ノイズを推定することが可能になる。また、アナログ信号の信号値Q1に対応する復号演算の結果から、固定ノイズを減算することによって、固定ノイズの影響を低減することができる。具体的には、1回のアナログ信号の信号値Q1であるk+7から固定ノイズを減算することにより、固定ノイズが除去された信号値Q1を取得する。2回のアナログ信号の信号値Q1であるk+14から固定ノイズを減算することにより、固定ノイズが除去された信号値Q1を取得する。3回のアナログ信号の信号値Q1である(k+21)から固定ノイズを減算することにより、固定ノイズが除去された信号値Q1を取得する。
【0173】
図17に示されるように、固定ノイズの影響度が判明している場合、または、固定ノイズの影響度が判明した後においては、n回目とアナログ信号の信号値Q1と(n+1)回目のアナログ信号の信号値Q8を重複して読み出す必要はない。
【0174】
本実施の形態においては、前述の実施の形態12と同様に、0.1pC相当の固定ノイズの影響が及ぼされる場合を考える。前述の実施の形態12で説明したように、デジタル値Q4_calc2f=2.0pCについては、固定ノイズの影響が及ぼされていないが、デジタル値Q4_calc1f=2.1pCについては、固定のノイズの影響が及ぼされている。したがって、固定ノイズの影響が及びされるか否かおよび固定ノイズの影響が及ぼされる程度ことは予め分かる。
【0175】
上記のことから、実施の形態12で示された固定ノイズ=Q4_calc1f-Q4_calc2fという式を用いて、0.1pCの固定ノイズがアナログ信号Q4に含まれていると推定することができる。
【0176】
固定ノイズ量を把握した後は、固定ノイズの影響が及ぼされているデジタル値Q4_calc1fから固定ノイズの差分(0.1pC)を減算(2.1pC-0.1pC=2.0pC)する。この差分(0.1pC)の減算分だけで、固定ノイズの影響が及ぼされていない復号演算の結果としてのデジタル値(2.0pC)を取得することができる。
【0177】
(実施の形態14)
図18および図19を用いて、実施の形態14のアナログ-デジタル変換装置を含む固体撮像装置を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0178】
図18および図19は、それぞれ、本実施の形態のアナログ-デジタル変換方法を説明するための第1図および第2図である。
【0179】
図18および図19に示されるように、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号を逐次読み出す通常読出およびM個のアナログ信号を同時に読み出す並列読出の双方を行うことが可能である。アナログ演算部AOは、並列読出によればM個のアナログ演算部AOに前述のオーバーフローが生じる場合、通常読出によって読み出されたM個のアナログ情報を用いてアナログ演算を行う。
【0180】
本実施の形態においては、読出符号行列[R]は、8行8列の単位行列と8行8列のアダマール行列[H]とが上下に並ぶように組み合わせられたものである。デジタル信号の信号値AD_q1~q8は、単位行列を用いて、つまり、通常読出によって得られたデジタル信号の信号値である。ADデジタル信号の信号値AD1~AD8は、アダマール行列[H]を用いて、つまり、並列読出によって得られたデジタル信号の信号値である。
【0181】
このように、アナログ演算部AOは、単位行列とアダマール行列[H]との組合せに対応するアナログ演算を実行する。それにより、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号1,2,3,4,・・・Mを逐次読み出す通常読出およびM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・Mを同時に読み出す並列読出の双方を行うことが可能である。
【0182】
たとえば、上から10番目のデジタル信号の信号値AD2に対応するアナログ演算部2がオーバーフローする場合を考える。この場合に、復号演算部DOは、オーバーフローによって適切な値ではなくなっていると推定されるデジタル信号の信号値AD2を用いずに、デジタル信号の信号値AD_q1~q8を用いて、あらたにデジタル信号の信号値AD2を決定する。
【0183】
これによれば、オーバーフローが生じても、適切なデジタル信号の信号値AD2を得ることができる。たとえば、アナログ演算部1,2,3,4,・・・,Mは、オーバーフローが生じる場合にのみ、通常読出を行うように構成されていてもよい。
【0184】
(実施の形態15)
図20を用いて、実施の形態15のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0185】
図20は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100の機能ブロック図である。
【0186】
M個の画素P1,P2,P3,P4 ・・・PMは、それぞれが長方形をなし、所定の領域、たとえば、長方形の領域内に、一群の画素として設けられている。つまり、M個の画素P1,P2,P3,P4, ・・・,PMが配置されている領域内において、他の所定の領域内のM個の画素に含まれる画素が全く含まれていない。
【0187】
M個の画素P1,P2,P3,P4, ・・・,PMからそれぞれ出力されたM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mの全てが、アナログ演算1,2,3,4, ・・・,Mのそれぞれにおいて利用される。具体的には、M個の画素P1,P2,P3,P4 ・・・PMは、所定の領域内においてベイヤー配列されている。
【0188】
一般に、所定の領域内の一群の画素P1,P2,P3,・・・,PMの輝度は、似たような値になる傾向がある。そのため、読出符号行列[R]の行ベクトルの+成分の数と-成分の数とが同程度であれば、前述のアナログ演算におけるオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0189】
(実施の形態16)
図21を用いて、実施の形態16のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100は、以下の点で、実施の形態1のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と異なる。
【0190】
図21は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100の機能ブロック図である。
【0191】
本実施の形態の固体撮像装置100は、画素の配置に特徴を有する。具体的には、M個(M=16)の画素P1,P2,P3,P4 ,・・・,PMは、互いの間にM個の画素P1,P2,P3,P4 ・・・,PMとは異なる他の画素(図21中の白抜きの四角形)が配置されるように、離散して配置されている。言い換えると、互いに隣接しないM個の画素P1,P2,P3,P4 ,・・・,PMからそれぞれ出力されたM個のアナログ信号1,2,3,・・・,Mが、アナログ演算1,2,3,4,・・・,Mのそれぞれにおいて利用される。
【0192】
このように、アナログ演算部AOは、互いに隣接しないM個の画素のM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mを読出対象にしている。そのため、M個の画素P1,P2,P3,P4 ,・・・,PMの中に欠陥画素が存在する場合に、その欠陥画素に起因した悪影響を固体撮像装置100の画素領域内において離散させることができる。この場合、ISP(Image Signal Processor)で欠陥画素に対応するデジタル値を欠陥画素の周辺の画素の複数のデジタル値を用いて補間することができる。その結果、欠陥画素に起因した悪影響を低減することができる。
【0193】
たとえば、遮光されたオプティカルブラックの画素をM個のアナログ演算部M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,Mが読み出す対象の画素とする。これによれば、オプティカルブラックに対応するデジタル値は、常に黒に相当するレベルである。そのため、一定のデジタル値を出力すると予想されるオプティカルブラックの画素を読み出し対象のM個の画素1,2,3,4 ,・・・,Mに含める。それにより、M個の画素1,2,3,4 ,・・・,Mの中に欠陥画素が存在するか否かを判定することが容易になる。
【0194】
(実施の形態の具体例)
図22図24を用いて、実施の形態16のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100を説明する。なお、下記において前述の各実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の説明は、前述の実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10を含む固体撮像装置100のアナログ演算部AO等の具体例を示すものである。
【0195】
図22図24を用いて、上記した実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10のアナログ演算部AOの具体例を説明する。図22図24において、フォトダイオードPD、キャパシタC、トランジスタTr、配線、および配線同士の接点等は、一般的な電子回路において用いられる記号で示されている。図22図24のそれぞれは、4個の画素P1,P2,P3,P4のそれぞれに蓄積された電荷の読出を行う電子回路を示している。すなわち、M=4である。したがって、読出符号行列[R]は、4行4列である。
【0196】
図22は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10のアナログ演算部AOを構成する第1例の電子回路を示す図である。
【0197】
図22に示されるように、4個の画素P1,P2,P3,P4のそれぞれは、光電変換素子としてのフォトダイオードPD、トランジスタTr、およびキャパシタCを含んでいる。アナログ演算部AOは、信号電圧保持用キャパシタ(+成分加算容量+AC,-成分加算容量-AC)を含み、アナログ演算の結果としてのアナログ情報を信号電圧保持用キャパシタの電圧の値として保持する。
【0198】
図1および図2のプロセッサPが、画素P1,P2,P3,P4からそれぞれ出力されたアナログ信号1,2,3,4に対して、前述の読出符号行列[R]に対応するアナログ演算1,2,3,4を実現するように、図22の各トランジスタTrを制御する。
【0199】
それにより、図22に示されるように、+成分信号経路+SPを流れる電荷は、+成分加算容量+ACに蓄積され、+成分加算容量+ACの+成分信号電圧に変換される。-成分信号経路-SPを流れる電荷は、-成分加算容量-ACに蓄積され、-成分加算容量-ACの-成分信号電圧に変換される。つまり、フォトダイオードPDで光電変換によって生成された電荷が、プロセッサPによる画素P1,P2,P3,P4の各トランジスタTrおよび演算部AOの各トランジスタTrのオン/オフ制御により、信号電荷保持用キャパシタに蓄積される。具体的には、フォトダイオードPDで光電変換によって生成された電荷が、+成分加算容量+ACおよび-成分加算容量-ACのいずれかに蓄積される。
【0200】
つまり、+成分加算容量+ACおよび-成分加算容量-ACのそれぞれが、アナログ演算の結果としてのアナログ情報を蓄積している。ここで、蓄積された+成分の合計値は、たとえば、読出符号行列[R]としてのアダマール行列[H]の+成分の加算の合計値に対応する。また、-成分信号経路-SPを流れる電荷は、-成分加算容量-ACに蓄積され、-成分信号電圧に変換される。蓄積された-成分の合計値は、読出符号行列[R]としてのアダマール行列[H]の-成分の加算の合計値に対応する。
【0201】
図22に示されるアナログ演算部AOの電子回路は、たとえば、アダマール行列[H]またはM系列行列[M]が+成分および-成分の双方を有している図4図9図11、および図14図19に示されるアナログ演算部AOの電子回路に適用され得る。
【0202】
なお、図22においては、アナログ演算部AOは、+成分加算容量+ACおよび-成分加算容量-ACの1つ組合せによって、4つのアナログ信号1,2,3,4の加減算を逐次、すなわち時系列的に実行する。しかしながら、アナログ演算部AOは、+成分加算容量+ACおよび-成分加算容量-ACの4つ組合せ(図示せず)によって、4つのアナログ信号1,2,3,4の加算を並列に、すなわち、1対1の関係で同時に実行する電子回路を有していてもよい。つまり、アナログ演算部AOは、4つの画素P1,P2,P3,P4に対して、4組の+成分加算容量+ACおよび-成分加算容量-ACが設けられたものであってもよい。
【0203】
図23は、本実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10のアナログ演算部AOを構成する第2例の電子回路を示す図である。
【0204】
図1および図2のプロセッサPが、画素P1,P2,P3,P4からそれぞれ出力されたアナログ信号1,2,3,4に対して、前述の読出符号行列[R]に対応するアナログ演算1,2,3,4を実現するように、図23の各トランジスタTrを制御する。それにより、図23に示されるように、+成分信号経路+SPを流れる電荷は、+成分加算容量+ACに蓄積され、+成分信号電圧に変換される。ここで、蓄積された+成分は、読出符号行列[R]としてのアダマール行列[H]またはM系列行列[M]等の+成分の加算の合計値である。第2例のアナログ演算部AOは、第1例と異なり、+成分の蓄積に関するキャパシタを有する電子回路のみで構成され、-成分の電荷に関するキャパシタを有する電子回路を含んでいない。図23に示される電子回路は、たとえば、-成分を有していない図10および図12に示される読出符号行列[R]に対応するアナログ演算を行うアナログ演算部AOに適用され得る。
【0205】
なお、図23においては、アナログ演算部AOは、1つの+成分加算容量+ACによって、4つのアナログ信号1,2,3,4の加算を逐次、すなわち時系列的に実行する。しかしながら、アナログ演算部AOは、4つの+成分加算容量+AC(図示せず)によって、4つのアナログ信号1,2,3,4の加算を並列に、すなわち、1対1の関係で同時に実行する電子回路(図示せず)を有していてもよい。つまり、アナログ演算部AOは、4つの画素P1,P2,P3,P4に対して、4つの+成分加算容量+ACが設けられたものであってもよい。
【0206】
図24は、本実施の形態の変形例のアナログ-デジタル変換装置10のアナログ演算部AOを構成する電子回路を示す図である。
【0207】
図1および図2のプロセッサPが、画素P1,P2,P3,P4からそれぞれ出力されたアナログ信号1,2,3,4に対して、前述の読出符号行列[R]に対応するアナログ演算1,2,3,4を実現するように、図24の各トランジスタTrを制御する。それにより、4画素P1,P2,P3,P4のそれぞれのフォトダイオードPDで発生した電荷は、電荷保持キャパシタCに蓄積される。
【0208】
図24に示される電子回路は、加減算回路50において、+成分の加算および-成分の減算を行う。加減算回路50は、一般的に用いられている加減算回路であってもよい。4画素P1,P2,P3,P4の4つの電荷保持キャパシタCに蓄積された4種類の電荷に相当する電圧がそれぞれ、P1用信号経路P1SP、P2用信号経路P2SP、P3用信号経路P3SP、P4用信号経路P4SPに伝達される。このとき、4種類の電荷は、それぞれ、P1用信号電圧P1SV、P2用信号電圧P2SV、P3用信号電圧P3SV、P4用信号電圧P4SVに対応している。
【0209】
図24に示される電子回路は、たとえば、後述の図25および図26に示される加減算回路50が接続される。加減算回路50によって、+成分の加算および-成分の減算のそれぞれが行われる。つまり、P1用信号電圧P1SV、P2用信号電圧P2SV、P3用信号電圧P3SV、P4用信号電圧P4SVが、それぞれ、図25および図26に示される加減算回路50の入力端子に印加される。図24に示される電子回路は、前述の実施の形態のいずれのアナログ演算部AOにも適用され得る。
【0210】
図24では、4つの画素P1,P2,P3,P4から出力された4つのアナログ信号1,2,3,4が、それぞれ、P1用信号経路P1SP、P2用信号経路P2SP、P3用信号経路P3SP、P4用信号電圧P4SPを経由して、加減算回路50へ導かれる。
【0211】
図25は、図24に示される変形例のアナログ-デジタル変換装置10の加減算回路50のリセット時(スイッチSW1がON、スイッチSW2がOFF、スイッチSW3がON)の状態を示す図である。図26は、本実施の形態の変形例のアナログ-デジタル変換装置10の加減算回路50の積分時の状態(スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がON、スイッチSW3がOFF)を示す図である。
【0212】
図25および図26には、容量がC1、C2、Cp1、Cp2、Cintで示されており、電圧がVc、ΔV、Vpa、Vpb、Vma、Vmb、Voutで示されている。
【0213】
C1は、+成分のアナログ信号aおよびアナログ信号bのそれぞれに対応する電荷を蓄積するキャパシタの容量である。C2は、-成分のアナログ信号aおよびアナログ信号bのそれぞれに対応する電荷を蓄積するキャパシタの容量である。Cpは寄生容量である。
【0214】
Vcが、オペアンプAmpの基準電圧であって、リセット時に、オペアンプAmpの+入力端子および-入力端子のそれぞれに生じる電圧である。ΔVは、積分時に、基準電圧Vcに加えて、オペアンプAmpの+入力端子および-入力端子のそれぞれに生じる電圧である。図25に示されるリセット状態では、オペアンプAmpの+入力端子の電圧および-入力端子の電圧のいずれも、Vcであるが、図26に示される積分時には、オペアンプAmpの+入力端子の電圧および-入力端子の電圧のいずれもが、Vc+ΔVになる。
加算演算の対象になる電圧として、(Vc+Vpa)および(Vc+Vpb)の電圧を印加し、減算演算の対象となる電圧として(Vc+Vma)および(Vc+Vmb)の電圧に印加する。それにより、{(Vpa+Vpb)-(Vma+Vmb)}に比例した出力をVoutの電圧として得ることができる。
【0215】
図25および図26を用いて、上記演算の詳細について説明する。
【0216】
オペアンプAmp+入力での電荷保存則より、次の式(1)が成り立つ。
【0217】
(1):C1(Vc+Vpa+Vc+Vpb)+Cp1Vc=(2C1+Cp1)×(Vc+ΔV)+Cint(ΔV+Vout/2)
オペアンプAmp-入力での電荷保存則より、次の式が成り立つ。
【0218】
(2):C2(Vc+Vma+Vc+Vmb)+Cp2Vc=(2C2+Cp2)(Vc+ΔV)+Cint(ΔV-Vout/2)
また、以下の式(3)および(4)が成り立つ。
【0219】
(3):ΔV=(C1×(Vpa+Vpb)+C2×(Vma+Vmb))/(2C1+2C2+Cp1+Cp2+2Cint)
【0220】
(4):Vout={(C1×(Vpa+Vpb)-C2×(Vma+Vmb)-(2C1-2C2+Cp1-Cp2)ΔV}/Cint
さらに、たとえば、C1=C2=C、かつ、Cp1=Cp2とすると、次の式(5)が成り立つ。
【0221】
(5):Vout=C×{(Vpa+Vpb)-(Vma+Vmb)}/Cint
上記の加減算回路50において、たとえば、(Vc+Vpa)としてP1用信号電圧P1SV、(Vc+Vpb)としてP2用信号電圧P2SV、(Vc+Vma)としてP3用信号電圧P3SV、(Vc+Vmb)としてP4用信号電圧P4SVを印加した場合を検討する。この場合、式(5)により、
Vout=C×{(P1SV-Vc)+(P2SV-Vc)―(P3SV-Vc)―(P4SV-Vc)}/Cint=C×{(P1SV+P2SV)-(P3SV+P4SV)}/Cint
の出力を得ることができる。
【0222】
図25および図26は、図面の簡略化のため、加算演算の対象になる電圧は2個で、減算演算の対象になる電圧は2個の場合の加減算回路50を示している。C1およびC2という容量のキャパシタの数をM個にすれば、アナログ信号1,2,3,4,・・・,M個の加減算を行うことができる。たとえば、C1およびC2という容量のキャパシタのそれぞれの個数が4個の場合について説明する。C1の容量のキャパシタに印加される電圧が(Vc+Vpa)、(Vc+Vpb)、(Vc+Vpc)、(Vc+Vpd)であり、C2の容量のキャパシタに印加される電圧が(Vc+Vma)、(Vc+Vmb)、(Vc+Vmc)、(Vc+Vmd)であり、C1=C2=C、かつ、Cp1=Cp2とすると、
(6):Vout=C×{(Vpa+Vpb+Vpc+Vpd)-(Vma+Vmb+Vmc+Vmd)}/Cint
となる。つまり、加算演算対象のアナログ信号の信号値をオペアンプAmpの+入力側(C1側)に入力させ、かつ、減算演算対象のアナログ信号の信号値をオペアンプAmpの-入力側(C2側)に入力させること、Voutの電圧として加減算された結果を得ることができる。
【0223】
CMOSイメージセンサでは、露光した状態で画素から得られた信号(Vsig)と露光していない状態で画素から得られた基準としての黒レベル(Vref)の信号との差分を真の信号として扱う場合がある。露光した状態で画素P1から得られたP1用信号電圧をP1SVとする。露光していない状態で画素P1から得られた基準としてのP1用基準電圧をP1RVとする。露光した状態で画素P2から得られたP2用信号電圧をP2SVとする。露光していない状態で画素P2から得られた基準としてのP2用基準電圧をP2RVとする。露光した状態で画素P3から得られたP3用信号電圧をP3SVとする。露光していない状態で画素P3から得られた基準としてのP3用基準電圧をP3RVとする。露光した状態で画素P4から得られたP4用信号電圧をP4SVとする。露光していない状態で画素P4から得られた基準としてのP4用基準電圧をP4RVとする。
【0224】
たとえば、次の場合を検討する。(Vc+Vpa)としてP1SVが印加される。(Vc+Vpb)としてP2SVが印加される。(Vc+Vpc)としてP3RVが印加される。(Vc+Vpd)としてP4RVが印加される。(Vc+Vma)としてP1RVが印加される。(Vc+Vmb)としてP2RVが印加される。(Vc+Vmc)としてP3SVが印加される。(Vc+Vmd)としてP4SVが印加される。この場合、C1=C2=C、かつ、Cp1=Cp2とすると
【0225】
(7):Vout=C×{(P1SV-P1RV)+(P2SV-P2RV)―(P3SV-P3RV)―(P4SV-P4RV)}/Cint
の出力を得ることができる。これにより、相関二重サンプリング(CDS)演算((露光して得られた)信号値-基準値(黒レベル))を含む加減算を行うことができる。
【0226】
また、アナログ演算部AOにおいて、M個の加減算回路50がM個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMに対して設けられていてもよい。この場合、アナログ演算部AOは、M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMから出力されたM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mを並列に、つまり、同時にアナログ演算することができる。
【0227】
(特徴的構成および効果)
以下、上記した実施の形態のアナログ-デジタル変換装置10および固体撮像装置100の特徴的構成およびそれにより得られる効果は、以下のようなものである。
【0228】
(1) Mは2以上の自然数であるものとする。図1および図2に示されるように、アナログ-デジタル変換装置10は、アナログ演算部(回路)AO、アナログ-デジタル変換部(回路)AD、および復号演算部(プロセッサ)DOを備えている。アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mに対して、読出符号行列[R]に対応するM回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,N(NはM以上の自然数)を行う。アナログ-デジタル変換部ADは、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nの結果としてのM個以上のアナログ情報をアナログ-デジタル変換し、M個以上のデジタル信号を出力する。復号演算部DOは、M個以上のデジタル信号の信号値に対して、読出符号行列[R]に対応しかつ各行ベクトルが0とは異なる2個以上の成分を含む復号符号行列[D]を用いた復号演算を行う。アナログ演算AOは、M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mの全てがM回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nのそれぞれにおいて利用され得るように構成されている。また、読出符号行列[R]および復号符号行列[D]は、アナログ-デジタル変換で生じる量子化ノイズを低減するように設定されている。
【0229】
上記の構成によれば、アナログ信号をデジタル信号に変換するときに生じる量子化ノイズを低減することが可能になる。
【0230】
(2) たとえば、図4に示されるように、アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]として、M行M列の読出符号行列[R]を用いてもよい。この場合、アナログ演算部AOは、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nとして、M回のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,Mを行ってもよい。アナログ-デジタル変換部ADは、M個以上のデジタル信号として、M個のデジタル信号を出力してもよい。復号演算部DOは、復号符号行列[D]として、M行M列の復号符号行列[D]を用いて復号演算を行ってもよい。
【0231】
上記の構成によれば、アナログ演算部AOは、M行M列の読出符号行列[R]を用いたM回のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,Mを行った後、M個のデジタル信号に対して、M行M列の復号符号行列[D]を用いて復号演算を行う。
【0232】
(3) 図24図26に示される電子回路の場合には、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mに対して、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nを並列に行ってもよい。これによれば、M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mに対してM回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nを時系列的に行う場合に比較して、全てのアナログ演算に要する時間を短縮することができる。
【0233】
(4) 上記した全ての実施の形態に記載したように、復号符号行列[D]の各行ベクトルの各成分の2乗の総和の平方根が1未満であってもよい。これによれば、読出符号行列[R]として単位行列を用いたアナログ演算部を有するアナログ-デジタル変換装置に比較して、量子化ノイズを低減することができる。
【0234】
(5) 図2に示されるように、アナログ-デジタル変換部AOは、M個のアナログ-デジタル変換回路1,2,3,4, ・・・,Mを含んでいてもよい。M個のアナログ-デジタル変換回路1,2,3,4, ・・・,Mは、それぞれ、M個のアナログ信号をM個のデジタル信号に変換してもよい。これによれば、M回のアナログ-デジタル変換を、並列に、すなわち、同時に行うことができるため、アナログ-デジタル変換を短時間で実現することができる。
【0235】
(6) 図4に示されるように、読出符号行列[R]は、アダマール行列[M]であってもよい。これによれば、読出符号行列[R]にM行M列アダマール行列[M]を用いた場合、復号符号行列[D]は、M行M列アダマール行列[M]に1/Mの係数を乗算したものである。簡単化のため、1/Mの係数を無視して考えると、復号符号行列[D]は+1と-1のみで形成されることになる。これは単純な加減算演算のみで復号演算を行うことが可能なことを意味している。係数を考慮する必要がある場合においても、Mの値は2のべき乗になるため、1/Mの係数を乗算することをビットシフトのみで行うことができる。また、復号符号行列[D]の各行ベクトルの各成分の2乗の総和の平方根が1未満になる。これによれば、読出符号行列[R]として単位行列を用いたアナログ演算部を有するアナログ-デジタル変換装置と比較して、量子化ノイズを低減することができる。
【0236】
(7) 図7に示されるように、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mのそれぞれに所定オフセット信号(-Qfix)を付与してもよい。それにより、M回以上のアナログ演算のうちのアダマール行列[H]の行成分の全てが+1である行ベクトルの1つのアナログ演算の結果としてのM個以上のアナログ情報のうちの1つのアナログ情報がオーバーフローする可能性を低減し得る。復号演算部DOは、所定オフセット信号に対応する所定オフセット値を用いて、復号演算の結果として得られたM個のデジタル値のそれぞれを補正してもよい。これによれば、アナログ演算部AOでのM回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nの結果がオーバーフローする可能性を低減し得る。
【0237】
(8) 以下、Xは、2以上の自然数であるものとする。図8に示されるように、アナログ演算部AOは、M行M列のアダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルの全成分をX回に時間分割して読み出してもよい。それによって、アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]としての(M+X-1)行M列の読出符号行列を用いて、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nとして(M+X-1)回のアナログ演算を行ってもよい。アナログ-デジタル変換部ADは、M個以上のデジタル信号として、(M+X-1)個のデジタル信号を出力してもよい。復号演算部DOは、(M+X-1)個のデジタル信号に対して、復号符号行列[D]として(M+X-1)行M列の読出符号行列[R]に対応するM行(M+X-1)列の復号符号行列を用いて、復号演算を行ってもよい。これによっても、前述のオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0238】
(9) 図9に示されるように、読出符号行列[R]は、各成分が+1または-1で構成されるM系列(Maximal Length Sequence)行列[M]であってもよい。M系列を利用して生成された+1の成分の数と-1の成分の数との差が常に1であるために、前述のような各成分が+1である行ベクトルがない。そのために、アナログ演算部AOにおけるオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0239】
(10) 図10に示されるように、読出符号行列[R]は、各成分が+1または0で構成されるM系列行列であってもよい。これによれば、アナログ演算部AOで減算を行う必要がないため、アナログ演算部AOの構成をシンプルにすることができる。また、固定ノイズを低減することができる。
【0240】
(11) 図3に示されるように、復号符号行列[D]は、読出符号行列[R]の逆行列であってもよい。これによれば、符号化および復号化のための演算に起因した誤差が生じることなく、アナログ信号をデジタル信号へ変換することができる。
【0241】
(12) 図5に示されるように、読出符号行列[R]は、アダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルの各成分の絶対値が1より小さい値に置き換えられた行列であってもよい。これによっても、前述のオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0242】
(13) 図6に示されるように、読出符号行列[R]は、アダマール行列[H]の各成分が+1である行ベクトルの各成分が0に置き換えられた行列であってもよい。これによっても、前述のオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0243】
(14) 図6に示されるように、復号符号行列[D]と読出符号行列[R]との内積は、単位行列の+1成分以外の成分が-1/(M-1)または-1/Mに置き換えられた行列であってもよい。これにより、復号符号行列の成分が+1/(M-1)と-1/(M-1)で構成されるために容易な演算で復号が可能となる。簡単化のため、±1/(M-1)の係数を無視して考えると、復号符号行列[D]は+1と-1のみで形成されることになる。これは単純な加減算のみで復号演算を行うことが可能なことを意味している。
【0244】
(15) 図11に示されるように、読出符号行列[R]は、各成分が+1または-1で構成されるM系列行列であり、かつ、復号符号行列[D]は、係数が-1/Mの読出符号行列の転置行列であってもよい。簡単化のため、±1/Mの係数を無視して考えると、復号符号行列[D]は+1と-1のみで形成されることになる。これは単純な加減算演算のみで復号演算が行うことが可能なことを意味している。また、復号符号行列[D]の各行ベクトルの+1の成分の数と-1の成分の数との差が常に1であるために、固定ノイズを低減することができる。また、復号符号行列[D]の各行ベクトルの各成分の2乗の総和の平方根が1未満になる。これによれば、読出符号行列[R]として単位行列を用いたアナログ演算部を有するアナログ-デジタル変換装置に比較して、量子化ノイズを低減することができる。
【0245】
(16) 図12に示されるように、アナログ演算部AOは、次の2種類の信号(i)および(ii)を分割して読み出してもよい。
【0246】
(i) M行M列のアダマール行列[H]の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルの+1成分に対応するアナログ信号
【0247】
(ii) M行M列のアダマール行列[H]の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルの-1成分に対応するアナログ信号
それにより、アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]としての(2M-1)行M列の読出符号行列[R]を用いて、M回以上のアナログ演算として(2M-1)回のアナログ演算を行ってもよい。
【0248】
また、アナログ-デジタル変換部ADは、M個以上のデジタル信号として、(2M-1)個のデジタル信号を出力してもよい。
【0249】
復号演算部DOは、(2M-1)個のデジタル信号に対して、復号符号行列[D]としての(2M-1)行M列の読出符号行列[R]に対応するM行(2M-1)列の復号符号行列[D]を用いて、復号演算を行ってもよい。
【0250】
この復号演算において、復号演算部DOは、次の2種類のデジタル結果を用いる。
【0251】
(i) M行M列のアダマール行列[H]の-1成分を有する(M-1)個の行ベクトルのそれぞれについて、+1成分に対応する(M-1)個のデジタル信号の加算によって生成された+デジタル結果ADp
【0252】
(ii) -1成分に対応する(M-1)個のデジタル信号の加算によって生成された-デジタル結果ADm
それにより、復号演算部DOは、+デジタル結果ADpと-デジタル結果ADmとの(M-1)個の差分ADp-ADmを算出してもよい。この場合、復号演算部DOは、M行M列のアダマール行列[H]の全てが+1成分のみからなる行ベクトルに対応する1つのデジタル信号および(M-1)個の差分ADp-ADmを、M個のアナログ信号にそれぞれ対応するM個のデジタル値として出力してもよい。
【0253】
上記の構成によれば、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nによる減算が困難である場合に、デジタル演算による減算を用いて、所望のデジタル値を得ることができる。
【0254】
(17) 図13に示されるように、アナログ演算部AOは、次の2種類の信号(i)および(ii)を分割して読み出してもよい。
【0255】
(i) M行M列のM系列行列[M]の-1成分を有するM個の行ベクトルの+1成分に対応するアナログ信号
【0256】
(ii) M行M列のM系列行列[M]の-1成分を有するM個の行ベクトルの-1成分に対応するアナログ信号
それにより、アナログ演算部AOは、読出符号行列[R]としての2M行M列の読出符号行列[R]を用いて、M回以上のアナログ演算として2M回のアナログ演算を行ってもよい。
【0257】
また、アナログ-デジタル変換部ADは、M個以上のデジタル信号として、2M個のデジタル信号を出力してもよい。
【0258】
復号演算部DOは、2M個のデジタル信号に対して、復号符号行列[D]としての2M行M列の読出符号行列[R]に対応するM行2M列の復号符号行列[D]を用いて、復号演算を行ってもよい。
【0259】
この復号演算において、復号演算部DOは、次の2種類のデジタル結果を用いる。
【0260】
(i) M行M列のM系列行列[M]の-1成分を有するM個の行ベクトルのそれぞれについて、+1成分に対応するM個のデジタル信号の加算によって生成された+デジタル結果ADp
【0261】
(ii) -1成分に対応するM個のデジタル信号の加算によって生成された-デジタル結果ADm
それにより、復号演算部DOは、+デジタル結果ADpと-デジタル結果ADmとのM個の差分ADp-ADmを算出してもよい。この場合、復号演算部DOは、M個の差分ADp-ADmを、M個のアナログ信号にそれぞれ対応するM個のデジタル値として出力してもよい。
【0262】
上記の構成によれば、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nによる減算が困難である場合に、デジタル演算による減算を用いて、所望のデジタル値を得ることができる。
【0263】
アナログ-デジタル変換部ADの出力に固定ノイズが含まれており、かつ、復号演算によって固定ノイズがキャンセルされずに、復号演算の結果としてのデジタル値に固定ノイズが含まれている場合がある。この場合に、図16に示されるように、アナログ演算部AOは、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,N(たとえば、1回目)とは異なる他のM回以上のアナログ演算(たとえば、2回目)を行ってもよい。それにより、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(たとえば、1回目のk+7)が、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(2回目のk+7)で置き換えられてもよい。この場合、復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(たとえば、1回目のk+7)を出力することなく、固定ノイズがキャンセルされた他のデジタル値(たとえば、2回目のk+7)を出力する。これによれば、固定ノイズを低減することができる。
【0264】
(18) アナログ-デジタル変換部ADの出力に固定ノイズが含まれており、かつ、復号演算によって固定ノイズがキャンセルされずに、復号演算の結果としてのデジタル値に固定ノイズが含まれている場合がある。この場合に、図17に示されるように、アナログ演算部AOは、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,N(たとえば、1回目)とは異なる他のM回以上のアナログ演算(たとえば、2回目)を行ってもよい。それにより、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(たとえば、1回目のk+7)が、固定ノイズがキャンセルされたデジタル値(2回目のk+7)で置き換えられてもよい。復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)と固定ノイズがキャンセルされた他のデジタル値(2回目のk+7)との差分を算出してもよい。復号演算部DOは、固定ノイズがキャンセルされていないデジタル値(1回目のk+7)から差分を減算してもよい。これによっても、固定ノイズを低減することができる。
【0265】
(19) 図18および図19を用いて説明されるように、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号を逐次読み出す通常読出およびM個のアナログ信号を同時に読み出す並列読出の双方を行うことが可能であってもよい。この場合、アナログ演算部AOは、並列読出によればアナログ演算部AOにオーバーフローが生じる場合、通常読出によって読み出されたM個以上のアナログ情報を用いてM回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nを行ってもよい。これによれば、オーバーフローが生じても、適切なデジタル値を得ることができる。
【0266】
(20) アナログ演算部AOは、少なくとも1つの信号電荷保持用キャパシタ(図22および図23の+成分加算容量+AD,-成分加算容量-AD参照)を含んでいてもよい。アナログ演算部AOは、M個以上のアナログ信号の信号値を少なくとも1つの信号電荷保持用キャパシタに電荷として保持してもよい。これによれば、アナログ信号の加算を容易に行うことができる。
【0267】
(21) 図1および図2に示されるように、固体撮像装置100は、M個の画素P1,P2,P3,・・・PMと、前述のアナログ-デジタル変換装置10と、を備えていてもよい。M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mは、M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMから出力されてもよい。M個のアナログ信号1,2,3,4, ・・・,Mの全てが、アナログ-デジタル変換装置10のM回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nのそれぞれにおいて利用されてもよい。これによれば、量子化ノイズが低減されたデジタル値を取得することができる。量子化雑音の低減の手法の1つとして、繰り返しアナログ-デジタル変換を行い、読み出したデジタル値を平均化処理する方法がある。この方法では処理時間か多くなり、消費電力も大きくなるといった課題がある。一方で本開示の手法を用いた場合、固体撮像装置100の低消費電力化を図ることができる。したがって、固体撮像装置100を低消費電力化が求められるIoT(Internet of Things)デバイスなどに用いることができる。
【0268】
(22) 図14を用いて説明したように、アナログ演算部AOは、M個のアナログ信号のうちの予め検出された真値を示さない欠陥アナログ信号が無入力(読出行列[R]の欠陥アナログ信号に該当する列の全ての成分が0である)に設定されていてもよい。それにより、欠陥アナログ信号を用いずに、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nを行ってもよい。ISP(Image Signal Processor)は、復号演算の後に、欠陥アナログ信号に対応する欠陥画素に隣接する複数の画素にそれぞれ対応する複数のアナログ信号から得られた複数のデジタル信号の値を用いて、欠陥アナログ信号に対応するデジタル信号の値を補間してもよい。これによれば、真値を示さない欠陥アナログ信号に起因したノイズの悪影響を低減することができる。
【0269】
(23) 図20に示されるように、固体撮像装置100は、M個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMは、所定の領域内に一群の画素として設けられていてもよい。この場合、M個の画素P1,P2,P3,・・・,PMからそれぞれ出力されたM個のアナログ信号1,2,3,・・・,Mの全てが、M回以上のアナログ演算1,2,3,4,・・・,Mのそれぞれに利用されてもよい。一般に、所定の領域内の一群の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMの輝度は、近似値になる傾向がある。そのため、読出符号行列[R]の行ベクトルの+成分の数と-成分の数とが同程度であれば、加減算の結果は概ねゼロ付近の値になる。その結果、前述のオーバーフローの可能性を低減し得る。
【0270】
(24) 図21に示されるように、M個の画素P1,P2,P3,・・・,PMは、互いの間にM個の画素P1,P2,P3,・・・,PMとは異なる他の画素(図21中の白抜きの四角形)が配置されるように、離散して配置されていてもよい。M個の画素P1,P2,P3,・・・,PMからそれぞれ出力されたM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mの全てが、M回以上のアナログ演算1,2,3,4, ・・・,M,・・・,Nのそれぞれにおいて利用されてもよい。
【0271】
上記の構成によれば、互いに隣接しないM個の画素P1,P2,P3,P4,・・・,PMのM個のアナログ信号1,2,3,4,・・・,Mを読出対象にする。そのため、一群の画素の中に欠陥画素が存在する場合に、その欠陥画素に起因した悪影響を固体撮像装置100の画素領域内において離散させることができる。また、ISP(Image Signal Processor)で欠陥画素に対応するデジタル値を欠陥画素の周辺の画素の複数のデジタル値を用いて補間することができる。その結果、欠陥画素に起因した悪影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0272】
1,2,3,4,・・・,M アナログ信号
10 アナログ-デジタル変換装置
100 固体撮像装置
AD アナログ-デジタル変換部
AO アナログ演算部
DO 復号演算部
PX(P1,P2,P3,P4,・・・,PM) 画素
[D] 復号符号行列
[H] アダマール行列
[M] M系列行列
[R] 読出符号行列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図26