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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152557
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
H03F3/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062676
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】魚津 悠介
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓輔
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC11
5J500AC65
5J500AF01
5J500AF10
5J500AH10
5J500AH19
5J500AH25
5J500AK05
5J500AK12
5J500AK18
5J500AK47
5J500AM21
5J500AT01
5J500DN01
5J500DN22
5J500DP01
(57)【要約】
【課題】PBTIによる差動増幅回路の特性変動を抑制可能な差動増幅回路を提供する。
【解決手段】本開示に係る差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12と、電圧検出回路13と、電圧シフト回路14と、を備え、電圧シフト回路14は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位よりも第1ドレイン側に位置しないように、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位よりも第2ドレイン側に位置しないように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの第1ゲート及び前記第2MOSトランジスタの第2ゲートに接続されている電圧検出回路と、
入力側で前記電圧検出回路に接続され、出力側で前記第1MOSトランジスタの第1バックゲート及び前記第2MOSトランジスタの第2バックゲートに接続されている電圧シフト回路と、
を備え、
前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位よりも前記第1MOSトランジスタの第1ドレイン側に位置しないように、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位よりも前記第2MOSトランジスタの第2ドレイン側に位置しないように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加する、
差動増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の差動増幅回路であって、
前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタは、PMOSトランジスタであり、
前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位以上となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位以上となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加する、
差動増幅回路。
【請求項3】
請求項2に記載の差動増幅回路であって、
前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに接続されている第3MOSトランジスタと、前記第3MOSトランジスタ及び前記電圧検出回路に接続されている第4MOSトランジスタと、を有する、
差動増幅回路。
【請求項4】
請求項3に記載の差動増幅回路であって、
前記第3MOSトランジスタはPMOSトランジスタであり、
前記第4MOSトランジスタはNMOSトランジスタであり、
前記第3MOSトランジスタの第3ソースが、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに接続され、
前記第4MOSトランジスタの第4ソースが、前記電圧検出回路に接続され、
前記第3MOSトランジスタの第3ゲート及び第3ドレイン、並びに前記第4MOSトランジスタの第4ゲート及び第4ドレインが互いに接続されている、
差動増幅回路。
【請求項5】
請求項2に記載の差動増幅回路であって、
前記電圧シフト回路は、電流源と、一端が前記電流源並びに前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに接続され、他端が前記電圧検出回路に接続されている抵抗と、を有する、
差動増幅回路。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の差動増幅回路であって、
前記電圧検出回路は、NMOSトランジスタである第5MOSトランジスタ及び第6MOSトランジスタを有し、
前記第1ゲートは、前記第5MOSトランジスタの第5ゲートに接続され、
前記第2ゲートは、前記第6MOSトランジスタの第6ゲートに接続され、
前記第5MOSトランジスタの第5ソース及び前記第6MOSトランジスタの第6ソースが互いに接続されている、
差動増幅回路。
【請求項7】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の差動増幅回路であって、
前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位及び前記第1MOSトランジスタの第1ソースの電位以上となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位及び前記第2MOSトランジスタの第2ソースの電位以上となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加する、
差動増幅回路。
【請求項8】
請求項1に記載の差動増幅回路であって、
前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタは、NMOSトランジスタであり、
前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位以下となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位以下となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加する、
差動増幅回路。
【請求項9】
請求項8に記載の差動増幅回路であって、
前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位及び前記第1MOSトランジスタの第1ソースの電位以下となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位及び前記第2MOSトランジスタの第2ソースの電位以下となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加する、
差動増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOS(Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタを用いた差動増幅回路に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、MOSトランジスタを有する増幅器が開示されている。このような増幅器は、2つのMOSトランジスタのバックゲートに互いに逆相となる所定の電圧を印加することで基板バイアス効果を利用し、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5871599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MOSトランジスタにおいて、通常であれば、バックゲート電位は、他の3つの端子の電位よりも高くなるか、又は低くなる。しかしながら、MOSトランジスタのソースとバックゲートとの間の電位差により生じる基板バイアス効果を避けるために、バックゲートをソースに接続した状態でMOSトランジスタを差動増幅回路に用いることがある。この場合、動作状態によっては、MOSトランジスタのゲート電位がバックゲート電位を高電位側又は低電位側に超えることがある。
【0005】
このような状態になると、PBTI(Positive Bias Temperature Instability)という現象が発生し、MOSトランジスタの特性が変化して、差動増幅回路の特性が変動してしまうという問題があった。特許文献1に記載の増幅器では、このようなPBTIによる差動増幅回路の特性変動を抑制することについて十分に考慮されていなかった。
【0006】
本開示は、PBTIによる差動増幅回路の特性変動を抑制可能な差動増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る差動増幅回路は、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタと、前記第1MOSトランジスタの第1ゲート及び前記第2MOSトランジスタの第2ゲートに接続されている電圧検出回路と、入力側で前記電圧検出回路に接続され、出力側で前記第1MOSトランジスタの第1バックゲート及び前記第2MOSトランジスタの第2バックゲートに接続されている電圧シフト回路と、を備え、前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位よりも前記第1MOSトランジスタの第1ドレイン側に位置しないように、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位よりも前記第2MOSトランジスタの第2ドレイン側に位置しないように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加する。
【0008】
これにより、PBTIによる差動増幅回路の特性変動を抑制可能である。差動増幅回路は、所定条件を満たすように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加する電圧シフト回路を有する。これにより、差動増幅回路は、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタにおいてゲート電位とバックゲート電位との高低関係が通常の関係と逆転することを回避可能である。差動増幅回路は、入力平衡状態及び入力非平衡状態のいずれの場合であっても、ゲート電位とバックゲート電位との間の逆転を回避可能である。差動増幅回路は、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタにおいて、ゲート電位がバックゲート電位を高電位側又は低電位側に超えることを回避可能である。したがって、差動増幅回路は、PBTIの発生を回避可能であり、差動増幅回路の特性変動を抑制可能である。結果として、差動増幅回路のデバイスとしての信頼性が向上する。
【0009】
一実施形態における差動増幅回路では、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタは、PMOSトランジスタであり、前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位以上となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位以上となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加してもよい。
【0010】
これにより、差動増幅回路は、ソースからドレインに向けて電流が流れ、かつ通常であればバックゲート電位が他の3つの端子の電位以上となるような回路系を用いて動作を実行可能である。差動増幅回路は、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタにおいて、ゲート電位がバックゲート電位よりも高い状態になることを回避可能である。したがって、差動増幅回路は、バックゲート電位がゲート電位以上となる状態とすることができ、PBTIの発生を回避可能である。結果として、差動増幅回路の特性変動を抑制することが可能である。
【0011】
一実施形態における差動増幅回路では、前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに接続されている第3MOSトランジスタと、前記第3MOSトランジスタ及び前記電圧検出回路に接続されている第4MOSトランジスタと、を有してもよい。
【0012】
これにより、差動増幅回路は、電圧検出回路で検出した入力レベルを、MOSトランジスタを用いて、一定レベルで電圧シフトさせて出力することが可能である。MOSトランジスタが用いられていることで、差動増幅回路は、このような動作を、きわめて速い動作速度で、かつ精密な制御に基づいて行うことができる。
【0013】
一実施形態における差動増幅回路では、前記第3MOSトランジスタはPMOSトランジスタであり、前記第4MOSトランジスタはNMOSトランジスタであり、前記第3MOSトランジスタの第3ソースが、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに接続され、前記第4MOSトランジスタの第4ソースが、前記電圧検出回路に接続され、前記第3MOSトランジスタの第3ゲート及び第3ドレイン、並びに前記第4MOSトランジスタの第4ゲート及び第4ドレインが互いに接続されていてもよい。これにより、差動増幅回路は、第3MOSトランジスタの第3ソースから第4MOSトランジスタの第4ソースに向けて電流が流れるような回路系を用いて動作を実行可能である。
【0014】
一実施形態における差動増幅回路では、前記電圧シフト回路は、電流源と、一端が前記電流源並びに前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに接続され、他端が前記電圧検出回路に接続されている抵抗と、を有してもよい。これにより、差動増幅回路は、電圧シフト回路がMOSトランジスタを有するときの構成と比較して、より簡素な回路構成を実現可能である。したがって、差動増幅回路の製品コストを下げることが可能である。
【0015】
一実施形態における差動増幅回路では、前記電圧検出回路は、NMOSトランジスタである第5MOSトランジスタ及び第6MOSトランジスタを有し、前記第1ゲートは、前記第5MOSトランジスタの第5ゲートに接続され、前記第2ゲートは、前記第6MOSトランジスタの第6ゲートに接続され、前記第5MOSトランジスタの第5ソース及び前記第6MOSトランジスタの第6ソースが互いに接続されていてもよい。
【0016】
これにより、差動増幅回路は、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタへの電圧入力レベルを電圧検出回路のMOSトランジスタを用いて検出することが可能である。MOSトランジスタが用いられていることで、差動増幅回路は、このような動作を、きわめて速い動作速度で、かつ精密な制御に基づいて行うことができる。
【0017】
一実施形態における差動増幅回路では、前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位及び前記第1MOSトランジスタの第1ソースの電位以上となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位及び前記第2MOSトランジスタの第2ソースの電位以上となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加してもよい。これにより、所定条件がソース電位との関係も含むことで、差動増幅回路は、PBTIの発生を回避しつつ、PMOSトランジスタにおいてバックゲート電位が他の3つの端子の電位以上となるような通常の動作状態で動作可能である。
【0018】
一実施形態における差動増幅回路では、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタは、NMOSトランジスタであり、前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位以下となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位以下となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加してもよい。
【0019】
これにより、差動増幅回路は、ドレインからソースに向けて電流が流れ、かつ通常であればバックゲート電位が他の3つの端子の電位以下となるような回路系を用いて動作を実行可能である。差動増幅回路は、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタにおいて、ゲート電位がバックゲート電位よりも低い状態になることを回避可能である。したがって、差動増幅回路は、バックゲート電位がゲート電位以下となる状態とすることができ、PBTIの発生を回避可能である。結果として、差動増幅回路の特性変動を抑制することが可能である。
【0020】
一実施形態における差動増幅回路では、前記電圧シフト回路は、前記第1バックゲートの電位が前記第1ゲートの電位及び前記第1MOSトランジスタの第1ソースの電位以下となり、かつ前記第2バックゲートの電位が前記第2ゲートの電位及び前記第2MOSトランジスタの第2ソースの電位以下となるように、前記第1バックゲート及び前記第2バックゲートに対して同一の電位を印加してもよい。これにより、差動増幅回路は、PBTIの発生を回避しつつ、NMOSトランジスタにおいてバックゲート電位が他の3つの端子の電位以下となるような通常の動作状態で動作可能である。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、PBTIによる差動増幅回路の特性変動を抑制可能な差動増幅回路を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態に係る差動増幅回路の概略構成図である。
図2図1の差動増幅回路の詳細構成図である。
図3図2の差動増幅回路の第1変形例を示す詳細構成図である。
図4図1の差動増幅回路の第2変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0024】
従来技術における差動増幅回路の一態様として、後述の図1に示されている電圧検出回路13と電圧シフト回路14とが省略された回路が考えられる。このとき、ゲートへの第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2の電位差により、PMOS(Positive-channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタである第1MOSトランジスタ11に流れる第1ドレイン電流Id1と、PMOSトランジスタである第2MOSトランジスタ12に流れる第2ドレイン電流Id2と、が定まる。増幅出力回路16は、これらの電流に応じた電圧Voutを出力する。
【0025】
一般的に、PMOSトランジスタのドレイン電流Idは、Vsg-Vthの関数で表される。ここで、Vsgは、ソース及びゲート間の電位差であり、Vsをソース電位、Vgをゲート電位とすると、Vs-Vgで表される。Vthは、ゲート閾値電圧である。MOSがオンする方向を正の値とする。
【0026】
Vsg-Vthが増加すると、ドレイン電流Idが増加する。Vsg-Vthが減少すると、ドレイン電流Idが減少する。ここで、第1MOSトランジスタ11の第1ソース電位Vs1及び第2MOSトランジスタ12の第2ソース電位Vs2は互いに同一であり、まとめてVsと表記する。ゲート閾値電圧Vthも、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12において互いに同一であるとする。
【0027】
電位差Vin1-Vin2によって、第1MOSトランジスタ11のVsg1(=Vs-Vin1)及び第2MOSトランジスタ12のVsg2(=Vs-Vin2)が変化し、第1ドレイン電流Id1及び第2ドレイン電流Id2が決定する。第1ドレイン電流Id1及び第2ドレイン電流Id2の総和は、電流源15から一定となるように出力される電流I1と等しくなる。第1ドレイン電流Id1及び第2ドレイン電流Id2は、以下のような関係となる。
【0028】
第1に、Vin1=Vin2のとき、Vsg1=Vsg2となり、Id1=Id2となる。第2に、Vin1>Vin2のとき、Vsg1<Vsg2となり、Id1<Id2となる。第3に、Vin1<Vin2のとき、Vsg1>Vsg2となり、Id1>Id2となる。
【0029】
ここで、第1入力電位Vin1と第2入力電位Vin2との電位差が大きくなると、一方のMOSトランジスタについてVsg-Vthが0以下になり、他方のMOSトランジスタのみに電流I1が流れる。例えば、Vin1>Vin2の状態で第1入力電位Vin1と第2入力電位Vin2との電位差が大きくなると、第1MOSトランジスタ11のVsg1は小さくなり、第2MOSトランジスタ12のVsg2は大きくなる。第1MOSトランジスタ11のVsg1がさらに小さくなってVsg1-Vthが0以下になると、第2MOSトランジスタ12のみに電流I1が流れる。
【0030】
第2MOSトランジスタ12のVsg2は、第2ドレイン電流Id2=電流I1となる値となり、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のソース電位Vsは、Vin2+Vsg2によって定まる。第1入力電位Vin1と第2入力電位Vin2との電位差がさらに大きくなると、第1MOSトランジスタ11のVsg1が0よりも小さくなり、その第1ゲート電位Vg1>第1ソース電位Vs1となる。
【0031】
ところで、PMOSトランジスタにおいて、通常であれば、バックゲート電位は、他の3つの端子の電位以上となる。このような関係を満たすために、PMOSトランジスタのバックゲートは、例えば図1の電源20に接続される。
【0032】
PMOSトランジスタのバックゲートが電源20に接続されると、ソースとバックゲートとの間に電位差が生じる。この電位差により、基板バイアス効果と呼ばれるVthの変動が生じる。この電位差は、電源20の電位及びゲートへの入力電位に依存して変化する。したがって、基板バイアス効果によるVth変動も電源20の電位及びゲートへの入力電位に依存して変化する。
【0033】
通常、素子ばらつきが存在するため、第1MOSトランジスタ11と第2MOSトランジスタ12との間で、基板バイアス効果によるVth変動が完全に一致することは稀である。すなわち、第1MOSトランジスタ11と第2MOSトランジスタ12との間で、Vthの変動量に差が生じる。このVthの変動量の差は、差動増幅回路におけるオフセット電圧の変動となって表れる。したがって、例えば電源20の変動によってオフセット電圧の変動が生じ、PSRR(Power Supply Rejection Ratio)特性が悪化する。また、第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2のコモンモード電圧の変動によりオフセット電圧の変動が生じ、CMRR(Common Mode Rejection Ratio)特性が悪化する。
【0034】
このような基板バイアス効果による問題点を避けるために、PMOSトランジスタのバックゲートをソースに接続した状態でPMOSトランジスタを差動増幅回路に用いることがある。例えば第1MOSトランジスタ11の第1ソースと第1バックゲートとが接続されていると、上記の第1ゲート電位Vg1>第1ソース電位Vs1という関係式は、第1ゲート電位Vg1>第1バックゲート電位Vb1となる。
【0035】
この状態になると、PBTIという現象が発生し、PMOSトランジスタの特性が変化する。PBTIは、PMOSトランジスタのゲート電位がバックゲート電位よりも高い状態にあることで、ゲート閾値電圧Vthなどのトランジスタ特性が経時変化する現象である。PBTIによるトランジスタ特性の変化は、PBTIの状態が解消された後も残る。したがって、PBTIによりトランジスタ特性が変化すると、第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2と、第1ドレイン電流Id1及び第2ドレイン電流Id2との関係が変動し、差動増幅回路の特性が変動してしまうという問題があった。
【0036】
以上のような問題点は、Vin2>Vin1の状態で第2入力電位Vin2と第1入力電位Vin1との電位差が大きくなる場合、並びに第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12がNMOS(Negative-channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタである場合においても同様に生じる。
【0037】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、PBTIによる差動増幅回路の特性変動を抑制可能な差動増幅回路を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0038】
図1は、本開示の一実施形態に係る差動増幅回路10の概略構成図である。図1を参照しながら、一実施形態に係る差動増幅回路10の構成について主に説明する。
【0039】
図1において、第1MOSトランジスタ11の第1ソース電位Vs1及び第2MOSトランジスタ12の第2ソース電位Vs2は互いに同一であり、まとめてソース電位Vsと表記する。第1MOSトランジスタ11の第1バックゲート電位Vb1及び第2MOSトランジスタ12の第2バックゲート電位Vb2は互いに同一であり、まとめてバックゲート電位Vbと表記する。第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12において、ゲート閾値電圧Vthも互いに同一であるとする。
【0040】
差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12を有する。第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12は、PMOSトランジスタである。
【0041】
差動増幅回路10は、差動増幅回路10として働く第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12を含むPMOS差動対と、PMOS差動対のバックゲート電位を決定するための電圧検出回路13及び電圧シフト回路14と、を有する。第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2はそれぞれ分岐して、PMOS差動対及び電圧検出回路13の第1入力端子IN1及び第2入力端子IN2に印加される。
【0042】
電圧検出回路13は、第1MOSトランジスタ11の第1ゲート及び第2MOSトランジスタ12の第2ゲートに接続されている。電圧検出回路13は、差動増幅回路10の差動入力に備わる。電圧検出回路13の第1入力端子IN1は第1ゲートに接続されている。電圧検出回路13の第2入力端子IN2は第2ゲートに接続されている。電圧検出回路13は、第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2のうち高い方の電位に追従した電圧を出力する。
【0043】
電圧シフト回路14は、電圧検出回路13、並びに第1MOSトランジスタ11の第1バックゲート及び第2MOSトランジスタ12の第2バックゲートに接続されている。電圧シフト回路14は、入力側で電圧検出回路13に接続され、出力側で第1バックゲート及び第2バックゲートに接続されている。電圧シフト回路14の入力端子INは電圧検出回路13の出力端子OUTに接続されている。電圧シフト回路14の出力端子OUTは、第1バックゲート及び第2バックゲートに接続されている。電圧シフト回路14の出力端子OUTが第1バックゲート及び第2バックゲートに対して共通に接続されている。
【0044】
電圧シフト回路14は、所定条件を満たすように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加する。所定条件は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位よりも第1MOSトランジスタ11の第1ドレイン側に位置せず、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位よりも第2MOSトランジスタ12の第2ドレイン側に位置しないことを含む。第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12がPMOSトランジスタである場合、所定条件は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位以上となり、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位以上となることを含む。
【0045】
電圧シフト回路14は、電圧検出回路13で検出した入力レベルを、一定レベルで電圧シフトさせて出力する。電圧シフト回路14は、第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2のうち高い方の電位に応じた一定のシフト量を当該電位に対して与える。これにより、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbは、当該電位との間の電位差を一定に維持しながら、当該電位の変動に応じて変動する。したがって、バックゲート電位Vbは、第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2のいずれに対しても下回らない。
【0046】
差動増幅回路10は、電源20に接続されている電流源15を有する。電流源15から一定の電流I1が出力される。差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11の第1ドレイン及び第2MOSトランジスタ12の第2ドレインに接続されている増幅出力回路16を有する。増幅出力回路16は、不図示の任意の電源に接続されている。
【0047】
差動増幅回路10は、第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2を差動入力として第1MOSトランジスタ11の第1ゲート及び第2MOSトランジスタ12の第2ゲートでそれぞれ受けて、増幅出力回路16から電圧Voutを出力する。
【0048】
図2は、図1の差動増幅回路10の詳細構成図である。図2は、図1の電圧検出回路13及び電圧シフト回路14の構成をより具体的に示したものである。図2を参照しながら、図1の電圧検出回路13及び電圧シフト回路14の構成についてより詳細に説明する。
【0049】
電圧シフト回路14は、第1バックゲート及び第2バックゲートに接続されている第3MOSトランジスタ141と、第3MOSトランジスタ141及び電圧検出回路13に接続されている第4MOSトランジスタ142と、を有する。第3MOSトランジスタ141はPMOSトランジスタであり、第4MOSトランジスタ142はNMOSトランジスタである。
【0050】
第3MOSトランジスタ141の第3ソースが、第1バックゲート及び第2バックゲートに接続されている。第4MOSトランジスタ142の第4ソースが、電圧検出回路13に接続されている。第3MOSトランジスタ141の第3ゲート及び第3ドレイン、並びに第4MOSトランジスタ142の第4ゲート及び第4ドレインが互いに接続されている。
【0051】
電圧シフト回路14は、第3MOSトランジスタ141の第3ソース及び電源20に接続されている電流源143を有する。電流源143から一定の電流I2が出力される。
【0052】
電圧検出回路13は、第5MOSトランジスタ131及び第6MOSトランジスタ132を有する。第5MOSトランジスタ131及び第6MOSトランジスタ132は、NMOSトランジスタである。
【0053】
第1MOSトランジスタ11の第1ゲートは、第5MOSトランジスタ131の第5ゲートに接続されている。第2MOSトランジスタ12の第2ゲートは、第6MOSトランジスタ132の第6ゲートに接続されている。第5MOSトランジスタ131の第5ソース及び第6MOSトランジスタ132の第6ソースが互いに接続されている。第5MOSトランジスタ131の第5ソース及び第6MOSトランジスタ132の第6ソースは、電圧シフト回路14の第4MOSトランジスタ142の第4ソースにも接続されている。第5MOSトランジスタ131の第5ドレイン及び第6MOSトランジスタ132の第6ドレインが電源20に接続されている。
【0054】
電圧検出回路13は、第5MOSトランジスタ131の第5ソース及び第6MOSトランジスタ132の第6ソースに接続されている電流源133を有する。電流源133から一定の電流I3が出力される。
【0055】
以下では、図2を参照しながら、差動増幅回路10の動作について主に説明する。例えば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vb、すなわち第3MOSトランジスタ141の第3ソース電位Vs3の算出方法について説明する。
【0056】
第1に入力平衡状態での動作について説明する。差動増幅回路10において入力平衡状態であるため、第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2は互いに同一である。Vin1=Vin2=Vcmとする。
【0057】
第5MOSトランジスタ131の第5ゲート電位Vg5及び第5ソース電位Vs5に基づいて、第5ゲート及び第5ソース間の電位差がVgs5=Vg5-Vs5で算出される。第4MOSトランジスタ142の第4ゲート電位Vg4及び第4ソース電位Vs4に基づいて、第4ゲート及び第4ソース間の電位差がVgs4=Vg4-Vs4で算出される。第3MOSトランジスタ141の第3ソース電位Vs3及び第3ゲート電位Vg3に基づいて、第3ソース及び第3ゲート間の電位差がVsg3=Vs3-Vg3で算出される。
【0058】
このとき、バックゲート電位Vbは、Vcm-Vgs5+Vgs4+Vsg3となる。したがって、-Vgs5+Vgs4+Vsg3が第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2からの電位シフト量である。-Vgs5+Vgs4+Vsg3≧0となっていれば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2を下回らない。
【0059】
例えば、Vgs4とVgs5とが互いに等しくなるように設定すると、-Vgs5+Vgs4=0となる。加えて、Vsg3が、第1MOSトランジスタ11のVsg1(=Vs-Vin1)と等しくなるように設定すると、Vsg3=Vsg1となることから、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbは、入力平衡状態でソース電位Vsと等しくなる。すなわち、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12を含むPMOS差動対単独でソースとバックゲートとを互いに接続した場合と同一の動作点が得られる。
【0060】
第2に入力非平衡状態であって、かつVsg1≧0であるときの動作について説明する。以下では、Vin1>Vin2として説明するが、以下と同様の説明がVin1<Vin2のときにも当てはまる。
【0061】
Vin1>Vin2であり、第5MOSトランジスタ131の第5ゲート電位Vg5と第6MOSトランジスタ132の第6ゲート電位Vg6とは、Vg5>Vg6の関係を満たす。このとき、第5MOSトランジスタ131及び第6MOSトランジスタ132を含むNMOS差動対の電流I3のうち、より大きな電流が第5MOSトランジスタ131側に流れる。すなわち、NMOS差動対の電流が第5MOSトランジスタ131側に偏る。
【0062】
このとき、NMOS差動対のソース電位は、第6MOSトランジスタ132ではなく第5MOSトランジスタ131の電位差Vgs5により定まり、Vin1-Vgs5となる。したがって、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbは、Vin1-Vgs5+Vgs4+Vsg3となる。-Vgs5+Vgs4+Vsg3≧0となっていれば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2を下回らない。
【0063】
第3に入力非平衡状態であって、かつVsg1<0であるときの動作について説明する。以下では、Vin1>Vin2として説明するが、以下と同様の説明がVin1<Vin2のときにも当てはまる。
【0064】
Vsg1≧0の場合と同様に、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12を含むPMOS差動対のバックゲート電位Vbは、Vin1-Vgs5+Vgs4+Vsg3となる。Vsg1<0、すなわち第1ゲート電位よりも第1ソース電位が低い場合であっても、-Vgs5+Vgs4+Vsg3≧0となっていれば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2を下回らない。
【0065】
以上のような一実施形態に係る差動増幅回路10によれば、PBTIによる差動増幅回路10の特性変動を抑制可能である。差動増幅回路10は、所定条件を満たすように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加する電圧シフト回路14を有する。これにより、差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12においてゲート電位とバックゲート電位との高低関係が通常の関係と逆転することを回避可能である。差動増幅回路10は、入力平衡状態及び入力非平衡状態のいずれの場合であっても、ゲート電位とバックゲート電位との間の逆転を回避可能である。差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12において、ゲート電位がバックゲート電位を高電位側又は低電位側に超えることを回避可能である。したがって、差動増幅回路10は、PBTIの発生を回避可能であり、差動増幅回路10の特性変動を抑制可能である。結果として、差動増幅回路10のデバイスとしての信頼性が向上する。
【0066】
第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12は、PMOSトランジスタである。これにより、差動増幅回路10は、ソースからドレインに向けて電流が流れ、かつ通常であればバックゲート電位が他の3つの端子の電位以上となるような回路系を用いて動作を実行可能である。差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12において、ゲート電位がバックゲート電位よりも高い状態になることを回避可能である。したがって、差動増幅回路10は、バックゲート電位がゲート電位以上となる状態とすることができ、PBTIの発生を回避可能である。結果として、差動増幅回路10の特性変動を抑制することが可能である。
【0067】
電圧シフト回路14が、第3MOSトランジスタ141及び第4MOSトランジスタ142を有することで、差動増幅回路10は、電圧検出回路13で検出した入力レベルを、MOSトランジスタを用いて、一定レベルで電圧シフトさせて出力することが可能である。MOSトランジスタが用いられていることで、差動増幅回路10は、このような動作を、きわめて速い動作速度で、かつ精密な制御に基づいて行うことができる。
【0068】
第3MOSトランジスタ141は、PMOSトランジスタであり、第4MOSトランジスタ142は、NMOSトランジスタである。これにより、差動増幅回路10は、第3MOSトランジスタ141の第3ソースから第4MOSトランジスタ142の第4ソースに向けて電流が流れるような回路系を用いて動作を実行可能である。
【0069】
電圧検出回路13は、NMOSトランジスタである第5MOSトランジスタ131及び第6MOSトランジスタ132を有する。これにより、差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12への電圧入力レベルを電圧検出回路13のMOSトランジスタを用いて検出することが可能である。MOSトランジスタが用いられていることで、差動増幅回路10は、このような動作を、きわめて速い動作速度で、かつ精密な制御に基づいて行うことができる。
【0070】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0071】
例えば、上述した各構成部の配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0072】
上記実施形態では、電圧検出回路13は、NMOSトランジスタである第5MOSトランジスタ131及び第6MOSトランジスタ132を有すると説明したが、これに限定されない。電圧検出回路13は、PMOSトランジスタを有してもよいし、MOSトランジスタ以外の任意の他の回路素子を有してもよい。
【0073】
上記実施形態では、電圧シフト回路14において、第3MOSトランジスタ141はPMOSトランジスタであり、第4MOSトランジスタ142はNMOSトランジスタであると説明したが、これに限定されない。第3MOSトランジスタ141がNMOSトランジスタであり、第4MOSトランジスタ142がPMOSトランジスタであってもよい。
【0074】
このとき、第3MOSトランジスタ141の第3ゲート及び第3ドレインが第1バックゲート及び第2バックゲート、並びに電流源143に接続される。第4MOSトランジスタ142の第4ゲート及び第4ドレインが電圧検出回路13に接続される。第3MOSトランジスタ141の第3ソース及び第4MOSトランジスタ142の第4ソースが互いに接続される。
【0075】
以上に限定されず、第3MOSトランジスタ141及び第4MOSトランジスタ142は、電圧シフト量が上記の所定条件を満たすのであれば、共にNMOSトランジスタであってもよいし、共にPMOSトランジスタであってもよい。
【0076】
図3は、図2の差動増幅回路10の第1変形例を示す詳細構成図である。
【0077】
上記実施形態では、電圧シフト回路14は、第3MOSトランジスタ141及び第4MOSトランジスタ142を有すると説明したが、これに限定されない。電圧シフト回路14は、MOSトランジスタを有する構成に代えて、電流源143と、一端が電流源143並びに第1バックゲート及び第2バックゲートに接続され、他端が電圧検出回路13に接続されている抵抗R1と、を有してもよい。
【0078】
このとき、差動増幅回路10が入力平衡状態にあるとすると、バックゲート電位Vbは、Vcm-Vgs5+I2・R1となる。したがって、-Vgs5+I2・R1が第1入力電位Vin1及び第2入力電位Vin2からの電位シフト量である。-Vgs5+I2・R1≧0となっていれば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2を下回らない。以上のことは、差動増幅回路10が入力非平衡状態にあるときにも同様に当てはまる。
【0079】
差動増幅回路10は、図3のような電圧シフト回路14の構成を有することで、電圧シフト回路14がMOSトランジスタを有するときの構成と比較して、より簡素な回路構成を実現可能である。したがって、差動増幅回路10の製品コストを下げることが可能である。
【0080】
上記実施形態では、電圧シフト回路14は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位以上となり、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位以上となるように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加すると説明したが、これに限定されない。電圧シフト回路14は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2に加えて、ソース電位Vs以上となるように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加してもよい。
【0081】
このとき、所定条件は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位及び第1ソースの電位以上となり、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位及び第2ソースの電位以上となることを含む。
【0082】
このような場合であっても、電位差Vsg1<0のときは、上記と同様に-Vgs5+Vgs4+Vsg3≧0となっていれば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2、並びに第1ソース電位Vs1及び第2ソース電位Vs2を下回らない。
【0083】
一方で、Vsg1≧0のときは、上記と異なり、-Vgs5+Vgs4+Vsg3≧Vsg1となっていれば、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12のバックゲート電位Vbが第1ゲート電位Vg1及び第2ゲート電位Vg2、並びに第1ソース電位Vs1及び第2ソース電位Vs2を下回らない。
【0084】
以上のように、所定条件がソース電位Vsとの関係も含むことで、差動増幅回路10は、PBTIの発生を回避しつつ、PMOSトランジスタにおいてバックゲート電位が他の3つの端子の電位以上となるような通常の動作状態で動作可能である。
【0085】
図4は、図1の差動増幅回路10の第2変形例を示す概略構成図である。
【0086】
上記実施形態では、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12は、PMOSトランジスタであると説明したが、これに限定されない。第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12は、NMOSトランジスタであってもよい。
【0087】
このとき、電圧シフト回路14は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位以下となり、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位以下となるように、第1バックゲート及び第2バックゲートに対して同一の電位を印加してもよい。所定条件は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位以下となり、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位以下となることを含んでもよい。
【0088】
これにより、差動増幅回路10は、ドレインからソースに向けて電流が流れ、かつ通常であればバックゲート電位が他の3つの端子の電位以下となるような回路系を用いて動作を実行可能である。差動増幅回路10は、第1MOSトランジスタ11及び第2MOSトランジスタ12において、ゲート電位がバックゲート電位よりも低い状態になることを回避可能である。したがって、差動増幅回路10は、バックゲート電位がゲート電位以下となる状態とすることができ、PBTIの発生を回避可能である。結果として、差動増幅回路10の特性変動を抑制することが可能である。
【0089】
さらに、所定条件は、第1バックゲートの電位が第1ゲートの電位及び第1ソースの電位以下となり、かつ第2バックゲートの電位が第2ゲートの電位及び第2ソースの電位以下となることを含んでもよい。これにより、差動増幅回路10は、PBTIの発生を回避しつつ、NMOSトランジスタにおいてバックゲート電位が他の3つの端子の電位以下となるような通常の動作状態で動作可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 差動増幅回路
11 第1MOSトランジスタ
12 第2MOSトランジスタ
13 電圧検出回路
131 第5MOSトランジスタ
132 第6MOSトランジスタ
133 電流源
14 電圧シフト回路
141 第3MOSトランジスタ
142 第4MOSトランジスタ
143 電流源
15 電流源
16 増幅出力回路
20 電源
R1 抵抗
図1
図2
図3
図4