(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152561
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ミシンの送り機構
(51)【国際特許分類】
D05B 27/08 20060101AFI20231010BHJP
D05B 27/24 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
D05B27/08
D05B27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062682
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000113229
【氏名又は名称】株式会社PEGASUS
(72)【発明者】
【氏名】千賀 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千博
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA05
3B150AA08
3B150CB03
3B150CE01
3B150CE04
3B150CE23
3B150CE24
3B150CE27
3B150DE06
3B150DE12
3B150DE17
3B150DE19
3B150DE27
3B150GE01
3B150JA03
3B150JA33
3B150LA15
3B150LA17
3B150NA14
3B150NA16
3B150NB05
3B150NC03
(57)【要約】
【課題】
、人の手を用いずとも主・差動送り量や差動比を変更、調節することができるミシンの送り機構を提供する。
【解決手段】
ミシン本体1に取り付けられるブラケット33に主送り調節モータ13と差動送り調節モータ12が固定される。主送り調節モータ13の駆動軸13aが主送り駆動ギア16、タイミングベルト24、主送り従動ギア17、主送り用従動軸26を介して主送り量調節クランク29に接続される。差動送り調節モータ12の駆動軸12aが差動送り駆動ギア14、タイミングベルト23、差動従動ギア15、差動送り用従動軸を介して差動送りレバー19に接続される。図示しない制御部の制御されて主送り調節モータ13および差動送り調節モータが駆動することによって、主送り量、差動送り量(差動比)が自動的に変更、調節される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主送り歯と、主送り歯が取り付けられる主送り台と、主送り台の前後方向の駆動量(主送り量)を調節する主送り調節機構と、差動送り歯と、差動送り歯が取り付けられる差動送り台と、差動送り台の前後方向の駆動量(差動送り量)を調節する差動送り調節機構を備えたミシンの送り機構において、主送り調節機構は回動によって主送り量を調節する主送り量調節部材と主送り量調節部材に連結されて主送り量調節部材を回動させる主送り調節モータを備え、差動送り調節機構は回動によって差動送り量を調節する差動送り量調節部材と差動送り量調節部材に連結されて差動送り量調節部材を回動させる差動送り調節モータと、主送り調節モータと差動送り調節モータの駆動を制御する制御部を備えていることを特徴とする、ミシンの送り機構。
【請求項2】
主送り調節モータの駆動軸に取り付けられる主送り駆動ギアと、主送り駆動ギアとタイミングベルトを介して連結される主送り従動ギアと、主送り従動ギアに固定される主送り用従動軸と、差動送り調節モータの駆動軸に取り付けられる差動送り駆動ギアと、差動駆動ギアとタイミングベルトを介して連結される差動送り従動ギアと、差動送り従動ギアに固定される差動送り用従動軸とを備え、主送り用従動軸が前記主送り量調節部材と連結され、差動送り用従動軸が前記差動送り量調節部材と連結されていることを特徴とする、請求項2の記載のミシンの送り機構。
【請求項3】
前記主送り調節モータおよび差動送りモータがミシン本体の下方に位置すると共にブラケットを介してミシン本体に取り付けられ、ブラケットはミシン本体の左側面に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のミシンの送り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンの送り機構に関するもので、詳しくはオーバーロックミシンや二重環縫いミシンなど差動送り機構を備えたミシンの送り機構に関する。
本発明において、前後左右とはミシンを正面から見たときの前後左右方向をいう。また上下とはミシンの上下方向をいう。
【背景技術】
【0002】
この種のミシンの送り機構として主・差動送り歯の前後方向の駆動量(主・差動送り量)を個別に調節できるものが従来より知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
主送り歯が取り付けられる主送り台が主送り量調節機構に連結され、差動送り歯が取り付けられるし差動送り第が差動送り量調節機構に連結されている。特許文献1では詳述されていないが、主送り量調節機構はミシンの主軸に取り付けられる偏心部材と偏心部材と離接可能なプッシュボタンとを備えている。プッシュボタンを押して偏心部材に当接させながら主軸を手で回動させると、主軸に対する偏心部材の回転位置が変化して主送り台の前後の駆動量すなわち主送り量が変更される。主送り量が変更されると、差動送り台の前後の駆動量すなわち差動送り量も併せて変更される。
【0003】
差動送り量調節機構は差動調節レバーを備えており、差動調節レバーを手で操作することによって差動送り量が調節できる。差動調節レバーの操作では主送り量は変更されないので、主送り量に対する差動送り量の比(差動比)を変更することができる。
布帛など伸縮性の小さな生地を縫製する場合は、一般に主送り量と差動送り量の比(差動比)を1:1もしくは差動送り量を主送り量より小さくする(差動比:小)ようにして縫製する(伸ばし縫い)。ニット生地など伸縮性の大きな生地を縫製する場合は、一般に差動送り量を主送り量より大きくする(差動比:大)ようにして縫製する。
【0004】
【特許文献1】中国特許公開公報第109487446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
縫製の仕様、例えば生地の種類や厚み、1縫い目あたりの長さ(運針)が変更される度に主送り量や差動比を変更、調節する必要がある。しかし、上記した従来技術による主・差動送り量や差動比の調節は人の手によって操作されるもので、その調節には縫製の知識や経験が必要であった。また、また、縫製の途中で運針や差動比を変更する場合、一旦ミシンの運転を止めて主送り量や差動送り量を手で調節する必要があった。
【0006】
従って、本発明の課題は、人の手を用いずとも主・差動送り量や差動比を変更、調節することができるミシンの送り機構を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成する為に、請求項1の発明は、主送り歯と、主送り歯が取り付けられる主送り台と、主送り台の前後方向の駆動量(主送り量)を調節する主送り調節機構と、差動送り歯と、差動送り歯が取り付けられる差動送り台と、差動送り台の前後方向の駆動量(差動送り量)を調節する差動送り調節機構を備えたミシンの送り機構において、主送り調節機構は回動によって主送り量を調節する主送り量調節部材と主送り量調節部材に連結されて主送り量調節部材を回動させる主送り調節モータを備え、差動送り調節機構は回動によって差動送り量を調節する差動送り量調節部材と差動送り量調節部材に連結されて差動送り量調節部材を回動させる差動送り調節モータと、主送り調節モータと差動送り調節モータの駆動を制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、主送り調節モータの駆動軸に取り付けられる主送り駆動ギアと、主送り駆動ギアとタイミングベルトを介して連結される主送り従動ギアと、主送り従動ギアに固定される主送り用従動軸と、差動送り調節モータの駆動軸に取り付けられる差動送り駆動ギアと、差動駆動ギアとタイミングベルトを介して連結される差動送り従動ギアと、差動送り従動ギアに固定される差動送り用従動軸とを備え、主送り用従動軸が前記主送り量調節部材と連結され、差動送り用従動軸が前記差動送り量調節部材と連結されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、前記主送り調節モータおよび差動送りモータがミシン本体の下方に位置すると共にブラケットを介してミシン本体に取り付けられ、ブラケットはミシン本体の左側面に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、制御部に入力されたデータに基づいて主・差動調節モータがそれぞれ駆動することによって主送り量、差動送り量(差動比)が自動的に変更、調節される。生地の種類などの縫製条件と主・送り量を予め紐づけておけば、縫製条件を入力することによって主・差動送り量の設定を自動的に呼び出すことが可能となる。また、縫製中に主・差動送り量を変更するように制御部で制御すれば、例えば生地の段部で主送り量が大きくなるようにしたり、縫製の一定区間だけ差動比を変更するといった制御が可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、主・差動調節モータの取り付け位置の自由度を上げることができる。
請求項3の発明によれば、主・差動送り調節機構を構成する部材がミシン本体の前後や左にほとんどはみ出さずに配置されるから、生地の生地送り方向の搬送を邪魔しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るミシンの送り機構を備えたオーバーロックミシンの全体斜視図。
【
図4】
図2の送り機構について、主送り量を大、差動送り量を大に設定したときの各部品の位置を示す左側面図。
【
図5】
図2の送り機構について、主送り量を小、差動送り量を小に設定したときの各部品の位置を示す左側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、送り機構2を構成する主送り調節機構34、差動送り調節機構35の一部がミシン本体1の外部に設けられている。生地を積載するクロスプレート36の下方、ミシン本体1の左側面にブラケット33が取り付けられ、ブラケット33の右側面の下部に差動送り調節モータ12、主送り調節モータ13が前後に並列されてブラケット33に固定されている。差動送り調節モータ12、主送り調節モータ13はミシン本体1の下方に位置している。上記のように送り装置2を構成する各部材はクロスプレート33の前後左右、左側にほとんどはみ出さないから、クロスプレート33上に積載された生地を生地送り方向Fに送る際に送り機構2の各部材が障害とならない。
ミシン本体1の右側面に駆動モータ3が固定されている。駆動モータ3は主軸4に連結されており、主軸4は軸線方向が左右水平となるように配置されると共に軸回りに回転可能にミシン本体1に支持されている。駆動モータ3の駆動によって主軸4が回転しミシン本体1の各機構が駆動する。
【0013】
差動送り台5と主送り台9はミシン本体1の内部で左右に並べられて配置されている。差動送り台5と主送り台9の前端はミシン本体1の前面から手前側に突出しており、差動送り台5の前端に差動送り歯6が、主送り台9の前端には主送り歯10が夫々取り付けられている。差動送り台5の二股部5aおよび主送り台9の二股部9aには角駒8が嵌挿されている。角駒8の内孔には主軸4の返信部4aが嵌挿され、角駒8は差動送り台5および主送り台9の前部を前後の摺動可能に支持している。また、主軸4には偏心部材7が主軸4の軸回りに回動可能に嵌挿されいる。偏心部材7の二股部7aには駒30が嵌挿されている駒30には二股部30aが併設されており、この二股部30aに送り駆動軸27が嵌挿されている。送り駆動軸27はミシン本体に軸回りに回動可能に支持されており、中途に差動送りクランク28の基端が固定されている。差動送りクランク28に突設される軸部28aは駒30の内孔に軸方向の摺動可能に嵌挿されている。また差動クランク28に設けられる案内部28bにスライダー20が、案内部28の長手方向に摺動可能に嵌挿されている。スライダー20はその左側において差動レバー19(差動送り量調節部材)の先端と互いに回動可能に連結し、その右側において角駒21と互いに回動可能に連結している。角駒21は差動送り台5の案内溝5cに上下方向に摺動可能に嵌挿されている。
【0014】
送り駆動軸27の右端には主送りクランク18の基端が固定されている。主送りクランク18にピン部18aが取り付けられており、ピン部18aは主送りクランク18に設けられた長溝の範囲で取付位置が調節可能となっている。主送りクランク18のピン部18はリンク22を介して主送り台9に接続されている。
【0015】
ミシン本体1に偏心ピン11が軸回りに回動可能に支持されている。偏心ピン11の偏心する軸部11aに角駒32が軸回りの回動可能に嵌挿されている。角駒12は差動送り台5、主送り台9の二股部5b、9bに嵌挿それぞれ嵌挿されており、差動送り台5および主送り台9の後部を前後動可能に支持している。
【0016】
図2に示すように、差動送り調節モータ12、主送り調節モータ13の各駆動軸12a、13bは軸線が左右水平方向に沿うように配置されると共にその先端がブラケット33の貫通穴33a、33aを通じて左側に突出している。差動送り調節モータ12の駆動軸12aの先端に駆動ギア14が取り付けられている。駆動ギア14の上方に従動ギア15が配置され、駆動ギア14と従動ギア15はタイミングベルト23で担架されている。従動ギア15の一部はブラケット33の貫通穴33bを通じて右側に突出しており、従動ギア15はブラケット33の右側において差動送り用従動軸25が取り付けられている。差動送り用従動軸25の右端は差動レバー19の基端に取り付けられている。
【0017】
主送り調節モータ13の駆動軸13aの先端に駆動ギア16が取り付けられている。駆動ギア15の上方に従動ギア17が配置され駆動ギア16と従動ギア17はタイミングベルト24で担架されている。従動ギア17の伊津部はブラケット33の貫通案33bを通じて右側に突出しており、従動ギア17はブラケット33の右側において主送り用従動軸26が取り付けられている。主送り用従動軸26の右端には主送り量調節クランク29(主送り量調節部材)の基端が取り付けられており、主送り調節クランク29の先端は駒30に互いの回動可能に連結されている。
【0018】
ブラケット33の左側面にはアイドラー31、31およびセンサ37、37が設けられている。アイドラー31,31はタイミングベルト23、24の張りを調節する。センサ37、37は差動送り調節モータ12の駆動軸12a、主送り調節モータ13の駆動軸13aの原点位置をモニターするためのセンサで、図示しない制御部によって両駆動軸12a,13aを原点位置に復帰させることができる。また、制御部に入力、保持されるデータに基づいて両駆動軸12a、13aの軸回り方向の駆動が制御される。
【0019】
以上のように構成された送り機構2についてその作用を
図4、
図5に基づいて説明する。上述した両駆動軸12a、13aが原点位置にあるときの主送り量、差動送り量を基準とする。
主送り量を基準よりも大きくするときは、
図4に示すように主送り調節モータ13の駆動軸13aを原点位置から反時計回りに回転させる。そうすると駒30が左方に移動することによって送り駆動軸の揺動角が基準より大きくなり、主送りクランク18の前後揺動量が大きくなり、主送り台9の前後揺動つまり主送り量が大きくなる。このとき差動送り調節モータ12の駆動軸12aが原点位置にすれば主送り量の増大に合わせて差動送り量も増大し、主送り量に対する差動送り量の比(差動比)は保持される。主送り量に対して差動送り量を大きくしたい、すなわち差動比を大きくしたい場合は、
図4に示すように差動送り調節モータ12の駆動軸12aを原点位置から時計回りに回転させる。そうするとスライダー20が差動送りクランク28の案内部を上方に移動することによって角駒21の前後揺動量が大きくなり、差動送り台5の前後揺動量つまり差動送り量のみが大きくなり差動比が増大する。
【0020】
主送り量を基準よりも小さくするときは、
図5に示すように主送り調節モータ13の駆動軸13aを原点位置から時計回りに回転させる。そうすると駒30が右方に移動することによって送り駆動軸の揺動角が基準より小さくなり、主送りクランク18の前後揺動量が小さくなり、主送り台9の前後揺動つまり主送り量が小さくなる。主送り量に対して差動送り量を小さくする、すなわち差動比を小さく場合は、
図5に示すように差動送り調節モータ12の駆動軸12aを原点位置から反時計回りに回転させる。そうするとスライダー20が差動送りクランク28の案内部を下方に移動することによって角駒21の前後揺動量が小さくなり、差動送り台5の前後揺動量つまり差動送り量のみが小さくなり差動比が減少する。。
【0021】
上述した主・差動送り量の変更、調節は縫製中に行うこともできる。
図1に示すような段検知装置39をミシン本体に取り付けて押え40の下方にある生地の厚みを検知してそのデータを制御部にフィードバックしてやる。フィードバックされた生地の厚みデータに基づいて送り量を調節するよう制御部で制御すると、例えば生地の段部が押えを通過するときに主・差動送り量を大きくするよう駆動軸12a、駆動軸13aを駆動させることによって、生地の段部における縫い詰まりを防止するといったことが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
F 生地送り方向
1 ミシン本体
2 送り機構
4 主軸
5 差動送り台
6 差動送り歯
9 主送り台
10 主送り歯
12 差動送り調節モータ
12a 駆動軸
13 主送り調節モータ
13a 駆動軸
14 差動送り駆動ギア
15 差動送り従動ギア
16 主送り駆動ギア
17 主送り従動ギア
19 差動送り量レバー
23 タイミングベルト
24 タイミングベルト
25 差動送り用従動軸
26 主送り用従動軸
27 送り駆動軸
28 差動送りクランク
29 主送り量調節クランク
33 ブラケット
34 主送り調節機構
35 差動送り調節機構