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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152583
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】防火ガラススクリーン
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231010BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/66 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100440
(22)【出願日】2022-06-22
(62)【分割の表示】P 2022062357の分割
【原出願日】2022-04-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】502059803
【氏名又は名称】パイロシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 信行
【テーマコード(参考)】
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E016AA04
2E016BA09
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016EA00
2E239CA01
2E239CA02
2E239CA11
2E239CA30
2E239CA43
2E239CA52
2E239CA66
(57)【要約】
【課題】複数枚の耐火ガラスを対向して配置することにより複層ガラス構造の防火ガラススクリーンを構成する際に、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる防火ガラススクリーンを提供する。
【解決手段】防火ガラススクリーン10は、2枚の耐火ガラス20A、20Bと3枚の耐火ガラス21A~21Cとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンである。防火ガラススクリーン10では、2枚の耐火ガラス20A、20Bと3枚の耐火ガラス21A~21Cは、2枚の耐火ガラス20A、20Bにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置(目地材16の位置)と、3枚の耐火ガラス21A~21Cにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置(目地材17、18の位置)とが、横幅方向において異なるように配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の第1の耐火ガラスと複数枚の第2の耐火ガラスとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンであって、
前記複数枚の第1の耐火ガラスと前記複数枚の第2の耐火ガラスとにより形成された中空層において、前記複数枚の第1の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置と、前記複数枚の第2の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置との間に、前記第1及び第2の耐火ガラスと比較して横幅方向の長さが短い第3の耐火ガラスが配置されている、
防火ガラススクリーン。
【請求項2】
前記第3の耐火ガラスが前記中空層において配置されていることにより、防火試験において前記縦目地に設けられた目地材が脱落して亀裂が発生した場合でも当該亀裂を通して反対側を目視できないような構造となっている請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項3】
前記縦目地に設けられた目地材が、難燃性のシリコーン成形品により構成されている請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項4】
前記複数枚の第1、第2及び第3の耐火ガラスは、それぞれ、2枚の耐熱結晶化ガラスの間に樹脂フィルムを挟んで密着されることにより構成された合わせガラス構造であることを特徴とする請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項5】
前記複数枚の第1、第2及び第3の耐火ガラスは、それぞれ、1枚の耐熱結晶化ガラスで構成される請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項6】
前記耐熱結晶化ガラスは、30~750℃の温度範囲において-10~10×10-7/Kの平均線膨張係数となるよう構成されている請求項4又は5記載の防火ガラススクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラス構造の防火ガラススクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のガラス板が中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス(2重ガラス)構造のガラススクリーンは、遮音性、断熱性が優れていることにより、部屋を区切る際のパーティションとして使用されることが多い(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このような複層ガラス構造のパーティションでは、横方向に複数連結して使用する連窓構造で使用する場合でも、デザイン性を良くするために連結部の縦目地に方立材を設けないで使用されることが多い。
【0003】
そして、近年では、このような複層ガラス構造のパーティションを、百貨店等の商業施設、学校等の教育施設、病院等の医療施設、駅等の交通施設、大型オフィスビル等の大型建物において、火災時に火炎や煙を遮断して延焼を防止するために設けられる防火区画においても使用したいという要求がある。しかし、ガラススクリーンを防火区画において使用するためには、性能評価機関において定められた防火試験に合格して、防火設備又は特定防火設備としての認定を受ける必要がある。また、避難階段や避難通路等の防火区画に面する間仕切壁としてガラススクリーンを使用する場合には、1時間の遮炎性能と1時間の遮熱性能を有する1時間耐火間仕切壁として認定を受ける必要がある。
【0004】
ここで、防火設備とは、建築基準法に規定されている建物内において延焼を防止するために開口部に設置される設備であって、火炎を受けても非加熱面側を20分間遮炎する遮炎性能を有し、性能評価機関において定められた試験に合格し、性能評価を受けて国土交通大臣の認定を取得したものをいう。そして、防火設備のうち、火炎を受けても非加熱面側を1時間遮炎する遮炎性能を有し、性能評価機関において定められた試験に合格し、性能評価を受けて国土交通大臣の認定を取得したものを特定防火設備という。
【0005】
上述したような防火試験に合格しようとして従来の複層ガラス構造のガラススクリーンにおいて、ガラス板を耐火ガラスとしただけでは防火試験に合格することはできない。
【0006】
このような従来の複層ガラス構造のガラススクリーンにおいてガラス板を耐火ガラスに置き換えた構造の一例である防火ガラススクリーン100の正面図を図13に示す。
【0007】
防火ガラススクリーン100は、図13に示されるように、左右の縦枠111、112と、上枠113と、下枠114により構成された枠体と、この枠体により固定される4枚の耐火ガラス120A、120B、121A、121Bとから構成されている。なお、耐火ガラス121A、121Bは、それぞれ、耐火ガラス120A、120Bの裏側に配置されているため、図13の正面図では図示されていない。そして、耐火ガラス120Aと耐火ガラス120Bとの間には目地材116が設けられている。なお、裏面側においては、耐火ガラス121Aと耐火ガラス121Bとの間には目地材117が設けられているが図13では図示されていない。
【0008】
図13に示した従来の防火ガラススクリーン100のE-E断面における横断面図を図14に示す。なお、図14では、切断部における端面のみを示した端面図が示されている。以降の説明においても、説明を分かり易くするために断面図という場合、切断面の端面図を示して説明する。
【0009】
図14を参照すると、防火ガラススクリーン100では、左右の縦枠111、112の間に4枚の耐火ガラス120A、120B、121A、121Bが中空層を形成するようにそれぞれ対向して配置される複層ガラス構造となっているのが分かる。そして、耐火ガラス120Aと耐火ガラス120Bとの間には目地材116が設けられ、耐火ガラス121Aと耐火ガラス121Bとの間には目地材117が設けられている様子が示されている。この目地材116、117は、例えば、難燃性シリコーン成形品により構成されている。
【0010】
この図13図14に示した従来の防火ガラススクリーン100に対して防火試験を実施した場合の様子を図15に示す。防火試験では、予め定められた方法により加熱炉により試験体の一方の面に火炎を当てて加熱し、反対面の非加熱面側における遮炎性が評価される。そして、この防火試験の評価方法では、「非加熱面での火炎及び火炎が通る亀裂等の発生の有無について目視観察する。ここで、火炎が通る亀裂等とは、これらを通して、火炎が非加熱面へ出てくるか、又は加熱炉内が目視できるものとをいう。」と規定され、「火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を生じないこと。」という評価基準が定められている。
【0011】
しかし、図13図14に示した従来の防火ガラススクリーン100では、防火試験における加熱により接着性がなくなり難燃性シリコーン成形品等の目地材116、117が脱落してしまうことが想定される。そして、目地材116、117が脱落してしまうと、図15に示されるように、耐火ガラス120Aと耐火ガラス120Bとの間の亀裂、及び、耐火ガラス121Aと耐火ガラス121Bとの間の亀裂を通して非加熱面から加熱面側、つまり加熱炉内を目視できてしまい防火試験に合格することができない。
【0012】
そのため、従来の複層ガラス構造の防火ガラススクリーンでは、防火試験をクリアするためには防火試験において脱落しないような金属製の方立材を用いる必要がある。
【0013】
このような金属製の方立材を用いた構造の一例である防火ガラススクリーン200の正面図を図16に示す。
【0014】
防火ガラススクリーン200は、図16に示されるように、図13に示した従来の防火ガラススクリーン100に対して、耐火ガラス120Aと耐火ガラス120Bとの連結部、及び、耐火ガラス121Aと耐火ガラス121Bとの連結部において、目地材116、117が設けられる代わりに、方立材216、217が設けられた構造となっている。なお、方立材217は裏面側に設けられているため図16では図示されていない。
【0015】
図16に示した従来の防火ガラススクリーン200のF-F断面における横断面図を図17に示す。また、図17に示した横断面図の中央部分の拡大図を図18に示す。
【0016】
図17を参照すると方立材216、217が、防火ガラススクリーン200の両面においてそれぞれ設けられているのが分かる。また、図18を参照すると、耐火ガラス120A、120Bと、耐火ガラス121A、121Bとの間の中空層には、方立材63が設けられている。そして、方立材216、217と、耐火ガラス120A、120B、121A、121Bとの間には、それぞれ、シーリング材61、バックアップ材62が設けられている。また、方立材63と、耐火ガラス120A、120B、121A、121Bとの間には、難燃性シリコーン成形品64がそれぞれ設けられている。このシーリング材61は、例えば、防火戸用シリコーン系シーリング材であり、バックアップ材62は、例えば、塩化ビニル発泡材である。
【0017】
そして、方立材216、217、及び、方立材63は、防火試験において脱落しないように、例えば、いわゆる角パイプと呼ばれるような角形鋼管等の金属材料により構成されている。
【0018】
このような構造の従来の防火ガラススクリーン200によれば、防火試験において少なくとも方立材63が脱落しなければ加熱炉内を目視できるような亀裂が発生することはなく、防火試験に合格することができる可能性が高い。
【0019】
なお、特許文献2には、隣接する耐火ガラス間の連結部に耐火シール材を挟み込むことにより防火試験において亀裂の発生を防ぐような構造の防火ガラススクリーンも提案されている。しかし、耐火シール材はブランケット状であり人が触ると変形や脱落する可能性があるため耐火シール材を隠すための中間方立等の方立材が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2017-214753号公報
【特許文献2】特許第6813208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したような従来構造の防火ガラススクリーン200では、図16に示すように、防火試験において脱落しないような金属製の方立材216、217が設けられているためデザイン性が悪くなってしまうという問題点を有している。また、上記の特許文献2に開示されている防火ガラススクリーンにおいても方立材が設けられており、複層ガラス構造において同様な構造とした場合でも方立材が必要となってしまう。
【0022】
本発明は、複数枚の耐火ガラスを対向して配置することにより複層ガラス構造の防火ガラススクリーンを構成する際に、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる防火ガラススクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一態様の防火ガラススクリーンは、複数枚の第1の耐火ガラスと複数枚の第2の耐火ガラスとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンであって、
前記複数枚の第1の耐火ガラスと前記複数枚の第2の耐火ガラスは、前記複数枚の第1の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置と、前記複数枚の第2の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置とが、横幅方向において異なるように配置されている。
【0024】
なお、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記複数枚の第1の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置と、前記複数枚の第2の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置とが、横幅方向において異なるように配置されていることにより、防火試験において前記縦目地に設けられた目地材が脱落して亀裂が発生した場合でも当該亀裂を通して反対側を目視できないような構造となっている。
【0025】
そのため、本発明の一態様の防火ガラススクリーンによれば、防火試験の際に縦目地に設けられた目地材が脱落して亀裂が発生したとしても、非加熱側からこの亀裂を通して加熱側を視認することができないため、防火試験に合格することができる。つまり、本発明の一態様の防火ガラススクリーンによれば、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる。
【0026】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記縦目地に設けられた目地材が、難燃性のシリコーン成形品により構成されていてもよい。
【0027】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記複数枚の第1及び第2の耐火ガラスが、それぞれ、2枚の耐熱結晶化ガラスの間に樹脂フィルムを挟んで密着されることにより構成された合わせガラス構造であってもよい。
【0028】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記複数枚の第1及び第2の耐火ガラスが、それぞれ、1枚の耐熱結晶化ガラスで構成されていてもよい。
【0029】
さらに、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記耐熱結晶化ガラスが、30~750℃の温度範囲において-10~10×10-7/Kの平均線膨張係数となるよう構成されていてもよい。
【0030】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンは、複数枚の第1の耐火ガラスと複数枚の第2の耐火ガラスとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンであって、
前記複数枚の第1の耐火ガラスと前記複数枚の第2の耐火ガラスとにより形成された中空層において、前記複数枚の第1の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置と、前記複数枚の第2の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置との間に、前記第1及び第2の耐火ガラスと比較して横幅方向の長さが短い第3の耐火ガラスが配置されている。
【0031】
なお、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記第3の耐火ガラスが前記中空層において配置されていることにより、防火試験において前記縦目地に設けられた目地材が脱落して亀裂が発生した場合でも当該亀裂を通して反対側を目視できないような構造となっている。
【0032】
そのため、本発明の一態様の防火ガラススクリーンによれば、防火試験の際に縦目地に設けられた目地材が脱落して亀裂が発生したとしても、第3の耐火ガラスの存在により非加熱側からこの亀裂を通して加熱側を視認することができないため、防火試験に合格することができる。つまり、本発明の一態様の防火ガラススクリーンによれば、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる。
【0033】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記縦目地に設けられた目地材が、難燃性のシリコーン成形品により構成されていてもよい。
【0034】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記複数枚の第1、第2及び第3の耐火ガラスが、それぞれ、2枚の耐熱結晶化ガラスの間に樹脂フィルムを挟んで密着されることにより構成された合わせガラス構造であってもよい。
【0035】
また、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記複数枚の第1、第2及び第3の耐火ガラスが、それぞれ、1枚の耐熱結晶化ガラスで構成されていてもよい。
【0036】
さらに、本発明の一態様の防火ガラススクリーンでは、前記耐熱結晶化ガラスが、30~750℃の温度範囲において-10~10×10-7/Kの平均線膨張係数となるよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複数枚の耐火ガラスを対向して配置することにより複層ガラス構造の防火ガラススクリーンを構成する際に、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる防火ガラススクリーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施形態に係る防火ガラススクリーン10の正面図である。
図2図1に示した本発明の第1の実施形態の防火ガラススクリーン10のA-A断面における縦断面図である。
図3図1に示した本発明の第1の実施形態の防火ガラススクリーン10のB-B断面における横断面図である。
図4図3に示した横断面図の左側部分の拡大図である。
図5図1図4に示した本発明の第1の実施形態の防火ガラススクリーン10に対して防火試験を実施した場合の様子を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る防火ガラススクリーン40の正面図である。
図7図6に示した本発明の第2の実施形態の防火ガラススクリーン40のC-C断面における縦断面図である。
図8図6に示した本発明の第2の実施形態の防火ガラススクリーン40のD-D断面における横断面図である。
図9図8に示した横断面図の左側部分の拡大図である。
図10図6図9に示した本発明の第2の実施形態の防火ガラススクリーン40に対して防火試験を実施した場合の様子を示す図である。
図11】耐火ガラス22Aを隙間防止用ガラスとして中空層内に配置した防火ガラススクリーン40Aの横断面図である。
図12】角筒状の耐火ガラス22Bを隙間防止用ガラスとして中空層内に配置した防火ガラススクリーン40Bの横断面図である。
図13】従来の複層ガラス構造のガラススクリーンにおいてガラス板を耐火ガラスに置き換えた構造の一例である防火ガラススクリーン100の正面図である。
図14図13に示した従来の防火ガラススクリーン100のE-E断面における横断面図である。
図15図13図14に示した従来の防火ガラススクリーン100に対して防火試験を実施した場合の様子を示す図である。
図16】金属製の方立材を用いた構造の一例である防火ガラススクリーン200の正面図である。
図17図16に示した従来の防火ガラススクリーン200のF-F断面における横断面図である。
図18図17に示した横断面図の中央部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る防火ガラススクリーン10の正面図である。本実施形態の防火ガラススクリーン10は、2枚の耐火ガラス20A、20Bと3枚の耐火ガラス21A~21Cとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンである。なお、耐火ガラス21A~21Cは、裏側に配置されているため図1においては図示されていない。
【0041】
なお、本実施形態の防火ガラススクリーン10は、火炎を受けても火炎後1時間遮炎して、加熱面の反対側の非加熱面側に火炎を出さない特定防火設備である。
【0042】
本実施形態の防火ガラススクリーン10は、例えば、高さが3000mm、横幅が2500mmという縦長の開口部に設けられる構造となっている。
【0043】
防火ガラススクリーン10は、図1に示されるように、左右の縦枠11、12と、上枠13と、下枠14により構成された枠体と、この枠体により固定される5枚の耐火ガラス20A、20B、21A~21Cとから構成されている。なお、上述したように耐火ガラス21A~21Cは、耐火ガラス20A、20Bの裏側に配置されているため、図1の正面図では図示されていない。そして、耐火ガラス20Aと耐火ガラス20Bとの間には目地材16が設けられている。なお、裏面側においては、耐火ガラス21Aと耐火ガラス21Bとの間には目地材17が設けられ、耐火ガラス21Bと耐火ガラス21Cとの間には目地材18が設けられている。
【0044】
図1に示した本実施形態の防火ガラススクリーン10のA-A断面における縦断面図を図2に示す。また、図1に示した本実施形態の防火ガラススクリーン10のB-B断面における横断面図を図3に示す。さらに、図3の横断面図の左側部分の拡大図を図4に示す。
【0045】
図2を参照すると、耐火ガラス20Bと耐火ガラス21Cの下辺は、それぞれ、セッッティングブロック32により下枠14の溝部において支えられている。セッッティングブロック32は、例えば、不燃材の珪酸カルシウム板により構成される。そして、耐火ガラス20Bと耐火ガラス21Cは、上枠13の溝部と下枠14の溝部において、それぞれ、難燃性シリコーン成形品31に挟まれて固定されている。そして、耐火ガラス20Bと耐火ガラス21Cとの間には、中空層が形成されているのが分かる。このような中空層が形成されていることにより、複層ガラス構造のガラススクリーンは、一般的に、単層構造のガラススクリーンと比較して、遮音性、断熱性が優れている。
【0046】
また、図3を参照すると、耐火ガラス20Aと耐火ガラス20Bとの間には目地材16が設けられている。また、耐火ガラス21Aと耐火ガラス21Bとの間には目地材17が設けられ、耐火ガラス21Bと耐火ガラス21Cとの間には目地材18が設けられているのが分かる。
【0047】
縦目地に設けられた目地材16~18は、例えば、難燃性のシリコーン成形品により構成されている。ここで、縦目地の目地幅は、例えば、5~10mm程度であり、難燃性のシリコーン成形品の成形し易さを考慮して5mm以上となっており、デザイン性を考慮すると10mm以下が望ましい。
【0048】
なお、目地材16~18は、可燃性の材料でなければ防火試験に合格する。そのため、目地材としてステンレスの板を用い得るようにしてもよい。この場合には、例えば、2mm厚のステンレスの板を耐火ガラスの端部に張り付けて2枚の耐火ガラスにより挟むことにより、目地幅を2mmとすることができる。
【0049】
また、図4を参照すると、耐火ガラス20A、21Aが、縦枠11の溝部において、それぞれ、難燃性シリコーン成形品31に挟まれて固定されている様子が示されている。
【0050】
そして、本実施形態の防火ガラススクリーン10では、2枚の耐火ガラス20A、20Bと3枚の耐火ガラス21A~21Cは、2枚の耐火ガラス20A、20Bにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置(目地材16の位置)と、3枚の耐火ガラス21A~21Cにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置(目地材17、18の位置)とが、横幅方向において異なるように配置されている。
【0051】
そして、本実施形態の防火ガラススクリーン10は、2枚の耐火ガラス20A、20Bにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地16が設けられている位置と、3枚の耐火ガラス21A~21Cにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地17、18が設けられている位置とが、横幅方向において異なるように配置されていることにより、防火試験において縦目地に設けられた目地材16~18が脱落して亀裂が発生した場合でもこの亀裂を通して反対側を目視できないような構造となっている。
【0052】
そのため、本実施形態の防火ガラススクリーン10によれば、防火試験の際に縦目地に設けられた目地材16~18が脱落して亀裂が発生したとしても、非加熱側からこの亀裂を通して加熱側を視認することができないため、防火試験に合格することができる。つまり、本実施形態の防火ガラススクリーン10によれば、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる。
【0053】
図1図4に示した本実施形態の防火ガラススクリーン10に対して防火試験を実施した場合の様子を図5に示す。図5を参照すると、防火試験における熱により目地材16~18が脱落して亀裂が発生した場合でも、縦目地の位置が表裏において異なっていることにより、火炎が非加熱面側へ出てきたり、非加熱側から加熱側を目視できたりしないような構造となっているのが分かる。
【0054】
なお、本実施形態の防火ガラススクリーン10の表裏を反対にして防火試験を行った場合でも同様であり、発生した亀裂を介して反対側の面を目視できたり、火炎が加熱面から非加熱面側に出てきたりするようなことが防がれる。
【0055】
ここで耐火ガラス20A、20B、21A~21Cは、それぞれ、耐熱結晶化ガラス、耐熱強化ガラス、強化ガラス、低膨張防火ガラス、珪酸ソーダ入り積層ガラス等を用いることができる。
【0056】
なお、本実施形態における耐火ガラス20A、20B、21A~21Cは、厚みが5mmの耐熱結晶化ガラスとなっている。
【0057】
また、耐熱結晶化ガラスを用いる場合でも、耐火ガラス20A、20B、21A~21Cを、それぞれ、1枚の耐熱結晶化ガラスで構成するようにしてもよいし、2枚の耐熱結晶化ガラスの間に樹脂フィルムを挟んで密着されることにより構成された合わせガラス構造としてもよい。
【0058】
ここで、耐熱結晶化ガラスは、リチウムアルミナ珪酸系組成のガラスに、熱処理により微細な結晶を析出させ、熱膨張を極めて小さくして耐熱性を高めたものである。つまり、耐熱結晶化ガラス102の平均線膨張係数は極めて小さく、耐熱結晶化ガラスの平均線膨張係数は、例えば30~750℃の温度範囲において-10~10×10-7/Kとなるよう構成されている。また、20~300℃の温度範囲において平均線膨張係数が、-0.5~0.5×10-6/Kの製品を耐熱結晶化ガラスとして使用することもできる。
【0059】
なお、本実施形態の防火ガラススクリーン10では、一方の面を2枚の耐火ガラス20A、20Bにより構成し、他方の面を3枚の耐火ガラス21A~21Cにより構成する場合について説明したが、それぞれの面を構成する耐火ガラスの枚数はこのような場合に限定されるものではない。耐火ガラス間の縦目地の位置が一方の面と他方の面とで異なるような構成であれば、どのような構成としても本発明は適用可能である。
【0060】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る防火ガラススクリーン40について説明する。
【0061】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る防火ガラススクリーン40の正面図である。本実施形態の防火ガラススクリーン40は、2枚の耐火ガラス20A、20Bと2枚の耐火ガラス23A、23Bとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンである。なお、耐火ガラス23A、23Bは、裏側に配置されているため図6においては図示されていない。
【0062】
なお、本実施形態の防火ガラススクリーン40も、上記で説明した第1の実施形態の防火ガラススクリーン10と同様に、火炎を受けても火炎後1時間遮炎して、加熱面の反対側の非加熱面側に火炎を出さない特定防火設備である。
【0063】
本実施形態における防火ガラススクリーン40は、図6に示されるように、左右の縦枠41、42と、上枠43と、下枠44により構成された枠体と、この枠体により固定される4枚の耐火ガラス20A、20B、23A、23Bと、4枚の耐火ガラス20A、20B、23A、23Bにより構成された中空層に配置された耐火ガラス22とから構成されている。なお、上述したように耐火ガラス23A、23Bは、耐火ガラス20A、20Bの裏側に配置されているため、図6の正面図では図示されていない。そして、耐火ガラス20Aと耐火ガラス20Bとの間には目地材16が設け、裏面側においては、耐火ガラス23Aと耐火ガラス23Bとの間には目地材19が設けられている。この目地材19も図6においては図示されていない。
【0064】
図6に示した本実施形態の防火ガラススクリーン40のC-C断面における縦断面図を図7に示す。また、図6に示した本実施形態の防火ガラススクリーン40のD-D断面における横断面図を図8に示す。さらに、図8の横断面図の左側部分の拡大図を図9に示す。
【0065】
図7を参照すると、耐火ガラス20B、耐火ガラス22、耐火ガラス23Bの下辺は、それぞれ、セッッティングブロック32により下枠44の溝部において支えられている。そして、耐火ガラス20B、耐火ガラス22、耐火ガラス23Bは、上枠43の溝部と下枠44の溝部において、それぞれ、難燃性シリコーン成形品31に挟まれて固定されている。図7に示すように、耐火ガラス22は、耐火ガラス20Bと耐火ガラス23Bとの間に形成された中空層に配置されているのが分かる。
【0066】
また、図8を参照すると、耐火ガラス20Aと耐火ガラス20Bとの間には目地材16が設けられている。また、耐火ガラス23Aと耐火ガラス23Bとの間には目地材19が設けられているのが分かる。そして、図8では、耐火ガラス22が、耐火ガラス20A、20B間の縦目地の位置と、耐火ガラス23A、23B間の縦目地の位置との間の視線を遮るための隙間防止用ガラスとして配置されている様子が示されている。
【0067】
また、図9を参照すると、耐火ガラス20A、23Aが、縦枠41の溝部において、それぞれ、難燃性シリコーン成形品31に挟まれて固定されている様子が示されている。
【0068】
本実施形態における防火ガラススクリーン40では、耐火ガラス20Aと耐火ガラス20Bとの間に設けられた縦目地の位置(目地材16の位置)と、耐火ガラス23Aと耐火ガラス23Bとの間に設けられた縦目地の位置(目地材19の位置)とは同じ位置となっている。
【0069】
しかし、本実施形態における防火ガラススクリーン40では、2枚の耐火ガラス20A、20Bと、2枚の耐火ガラス23A、23Bにより形成された中空層において、2枚の耐火ガラス20A、20Bにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置と、2枚の耐火ガラス23A、23Bにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置との間に、耐火ガラス20A、20B、23A、23Bと比較して横幅方向の長さが短い耐火ガラス22が配置されている。
【0070】
例えば、耐火ガラス22の横幅は200mmであり、耐火ガラス20A、20B、23A、23Bの横幅は、それぞれ、1250mmである。なお、耐火ガラス22は、耐火ガラス20A、20B、23A、23Bと同じ材質としてもよいし、耐火ガラス20A、20B、23A、23Bとは異なる材質としてもよい。
【0071】
例えば、耐火ガラス20A、20B、23A、23Bを板厚が10mmの耐熱強化ガラスとし、隙間防止用ガラスである耐火ガラス22を板厚が5mmの耐熱結晶化ガラスとしてもよい。なお、中空層内に隙間防止用ガラスとして配置する耐火ガラス22には、防火試験において破損、脱落、軟化変形しない材質であることが必要であり、耐熱結晶化ガラス、低膨張防火ガラス、ホウ珪酸ガラスが適している。
【0072】
そして、本実施形態の防火ガラススクリーン40は、耐火ガラス22が中空層において配置されていることにより、防火試験において縦目地に設けられた目地材16、19が脱落して亀裂が発生した場合でもこの亀裂を通して反対側を目視できないような構造となっている。
【0073】
そのため、本実施形態の防火ガラススクリーン40によれば、防火試験の際に縦目地に設けられた目地材16、19が脱落して亀裂が発生したとしても、非加熱側からこの亀裂を通して加熱側を視認することができないため、防火試験に合格することができる。つまり、本実施形態の防火ガラススクリーン40によれば、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる。
【0074】
図6図9に示した本実施形態の防火ガラススクリーン40に対して防火試験を実施した場合の様子を図10に示す。図10を参照すると、防火試験における熱により目地材16、19が脱落して亀裂が発生した場合でも、防火ガラス22が設けられていることにより、火炎が非加熱面側へ出てきたり、非加熱側から加熱側を目視できたりしないような構造となっているのが分かる。
【0075】
次に、耐火ガラス22の変形例を用いた防火ガラススクリーンの横断面図を図11図12に示す。図11は、直径が40mm、板厚が4mmの円筒状の耐火ガラス22Aを隙間防止用ガラスとして中空層内に配置した防火ガラススクリーン40Aの横断面図である。また、図12は、板厚が4mmの角筒状の耐火ガラス22Bを隙間防止用ガラスとして中空層内に配置した防火ガラススクリーン40Bの横断面図である。
【0076】
図11図12に示したような構造の防火ガラススクリーン40A、40Bであっても、防火ガラススクリーン40と同様に、耐火ガラス間の連結部において方立材を必要とすることなく防火試験に合格することができる。
【0077】
なお、本実施形態における耐火ガラス22、22A、22B、23A、23Bも、上記で説明した第1の実施形態における耐火ガラス20A、20B、21A~21Cと同様に、耐熱結晶化ガラス、耐熱強化ガラス、強化ガラス、低膨張防火ガラス、珪酸ソーダ入り積層ガラス等の様々な材質の耐火ガラスを用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 防火ガラススクリーン
11、12 縦枠
13 上枠
14 下枠
16~19 目地材
20A、20B 耐火ガラス
21A~21C 耐火ガラス
22、22A、22B 耐火ガラス
23A、23B 耐火ガラス
31 難燃性シリコーン成形品
32 セッッティングブロック
40 防火ガラススクリーン
41、42 縦枠
43 上枠
44 下枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の第1の耐火ガラスと複数枚の第2の耐火ガラスとが、中空層を形成するように対向して配置される複層ガラス構造の防火ガラススクリーンであって、
前記複数枚の第1の耐火ガラス間に設けられた縦目地の位置と、前記複数枚の第2の耐火ガラス間に設けられた縦目地の位置とが同じ位置となっており、
前記複数枚の第1の耐火ガラスと前記複数枚の第2の耐火ガラスとにより形成された中空層において、前記複数枚の第1の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置と、前記複数枚の第2の耐火ガラスにおける隣接する耐火ガラス間の縦目地が設けられている位置との間に、前記第1及び第2の耐火ガラスと比較して横幅方向の長さが短い第3の耐火ガラスが隙間防止用ガラスとして配置されていることにより、防火試験において前記縦目地に設けられた目地材が脱落して亀裂が発生した場合でも当該亀裂を通して反対側を目視できないような構造となっている、
防火ガラススクリーン。
【請求項2】
前記縦目地に設けられた目地材が、難燃性のシリコーン成形品により構成されている請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項3】
前記複数枚の第1、第2及び第3の耐火ガラスは、それぞれ、2枚の耐熱結晶化ガラスの間に樹脂フィルムを挟んで密着されることにより構成された合わせガラス構造であることを特徴とする請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項4】
前記複数枚の第1、第2及び第3の耐火ガラスは、それぞれ、1枚の耐熱結晶化ガラスで構成される請求項1記載の防火ガラススクリーン。
【請求項5】
前記耐熱結晶化ガラスは、30~750℃の温度範囲において-10~10×10-7/Kの平均線膨張係数となるよう構成されている請求項3又は4記載の防火ガラススクリーン。