(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152584
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】磁石レスモータとその制御のためのシステム、構成要素及び方法
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
H02K19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022119742
(22)【出願日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】63/327,158
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
2.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】513172928
【氏名又は名称】キューエム・パワー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QM POWER,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】エッサキアッパン,ソマスンダラム
(72)【発明者】
【氏名】アイオネル,ダン エム
(72)【発明者】
【氏名】ケスギン,ムラト グルハン
(72)【発明者】
【氏名】マンジレカル,マダブ
(72)【発明者】
【氏名】ステピエン,トーマス エム
【テーマコード(参考)】
5H619
【Fターム(参考)】
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB24
5H619PP01
5H619PP11
(57)【要約】
【課題】モータを駆動するためのシステム、構成要素、及び方法を開示する。
【解決手段】本発明は、回転子と固定子とを含むモータを含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと複数の電磁石を含み、前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互分散して配置される。前記モータは第1の複数のモータ信号を発生するように構成される。前記モータに結合されかつ前記第1の複数のモータ信号を受信するコントローラは、駆動インバータ及びDC-DCコンバータに第1の複数の制御信号を発生するように構成され、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、また、複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するためのシステムであって、
前記システムは、回転子と固定子とを含むモータを備え、
前記固定子は、複数の固定子相コイルと複数の電磁石を含み、
前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置され、
前記モータは第1の複数のモータ信号を発生するように構成され、
前記システムは、前記モータに結合されかつ前記第1の複数のモータ信号を受信するコントローラを含み、
前記コントローラは、駆動インバータ及びDC-DCコンバータに第1の複数の制御信号を発生することで、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、また、前記複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与えるように構成される、システム。
【請求項2】
前記第1の複数のモータ信号は、モータ速度、モータトルク、相電流、及び界磁電流のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の複数の制御信号は、速度制御、トルク制御、固定子電流制御、及び界磁制御のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、前記少なくとも1つの励磁電流を発生するための少なくとも1つの界磁駆動電力コンバータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの界磁駆動電力コンバータは、前記複数の固定子相コイルの電流極性を反転させることによって前記少なくとも1つの励磁電流を発生するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの励磁電流は、時計回り方向に磁束を発生するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの励磁電流は、反時計回り方向に磁束を発生させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記モータは、永久磁石を有しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記モータは、少なくとも1つの永久磁石をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記モータは、n相電気モータである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記モータの構造は、アキシャルフラックス型である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記モータの構造は、ラジアルフラックス型である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記モータの構造は、アキシャルフラックス型とラジアルフラックス型との組合せである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、前記モータに電力を供給するように構成された複数のパワーエレクトロニクススタックをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
モータを駆動するための方法であって、前記方法は、
コントローラを前記モータに結合することを含み、前記モータは、回転子と固定子とを含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと複数の電磁石を含み、前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置され、
前記方法は、
前記モータが第1の複数のモータ信号を発生することと、
前記コントローラが駆動インバータ及びDC-DCコンバータに対して第1の複数の制御信号を発生することで、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、また、前記複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与えることを含む、方法。
【請求項16】
前記第1の複数のモータ信号は、モータ速度、モータトルク、相電流、及び界磁電流のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の複数の制御信号は、速度制御、トルク制御、固定子電流制御、及び界磁制御のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記少なくとも1つの励磁電流を用いて時計回り方向に磁束を発生することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記少なくとも1つの励磁電流を用いて反時計回り方向に磁束を発生させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
n相電気モータであって、
前記n相電気モータは、
回転子と、
複数の固定子相コイルと複数の電磁石とを含む固定子とを備え、
前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置され、
前記複数の電磁石は、直流励磁電流に基づいて時計回り方向又は反時計回り方向の周回磁束を発生するように構成され、
前記複数の固定子相コイルは、前記周回磁束密度を変調するように構成される、n相電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、永久磁石レスモータの設計、構造、及び制御のためのシステム、構成要素、及び方法に関する。本開示の実施形態の目的は、輸送及び産業用途のトラクション(牽引)アプリケーションに関連する発明的かつ従来にないシステムを提供することにある。
【0002】
(優先権主張)
本出願は、2022年4月4日に出願された米国仮出願第63/327,158号に基づいて優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
永久磁石(PM)は、静磁場を発生させる回転子(サリエント回転子)の界磁巻線に代わるものとして、トラクション(牽引)電気モータ(電動機)に広く使用されている。永久磁石は巻線界磁コイルに比べて小型であるため、高い出力密度が得られるという利点がある。また、界磁コイルの銅損をなくすことができる。しかし、PMモータ技術にはいくつかの欠点がある。ひとつは、高速制御のための磁界弱化が、効率を犠牲にし、減磁の危険性を伴わずに行えないことである。また、PMモータは固定された一方向の磁場を発生させるため、磁路の形状を操作することができない。さらに、レアアース(希土類)を使用することが多く、入手できる国が限られているため、コストと入手のリスクが高くなる。故障時に、特に回転子回転数が高い場合、制御不能な開回路逆起電力が発生し、電力コンバータや安全性を脅かす可能性がある。また、PMを回転子上に配置することは、製造時の接合の問題や、特に回転子が高速回転している場合に、また、回転子上に配置すると、製造時のボンディングの問題や、モータの許容回転数が低くなる可能性がある。現在の固定子PMモータは、高いトルク密度を実現するために過剰なPMを搭載している。また、磁性体コアの飽和により、トルクの向上が阻害される。また、固定子電流の増加によるトルク密度のさらなる向上は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、モータ制御のための改良されたシステム、構成要素、及び方法が必要とされている。本開示は、従来のモータトポロジーにおける回転子マウントPMの欠点を、固定子に装着された電磁石に置き換えることによって克服するシステム、構成要素、及び方法について説明するものである。このアーキテクチャを採用することで、重要な希土類元素への依存を排除することができ、界磁励磁電流の減少による磁束弱化の微調整により、広い定電力範囲での性能を実現し、パワーエレクトロニクス界磁駆動コンバータによる界磁励磁の無効化で逆起電力を低減して固有の故障を保護し、また、永久磁石を使用しないシンプルな積層(ラミネート)型スチール回転子により、回転子の高速運転が可能である。その結果、最新技術に比べて最大4倍の出力密度向上を実現し、重量とコストの削減になる。
【0005】
開示された永久磁石を使用しないモータ制御のためのシステム、構成要素、及び方法の目的は、上記の問題点及び/又は従来技術の他の問題点のうちの1つ以上を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、モータを駆動するためのシステムを提供することを目的とし、前記システムはモータを含み、前記モータは、回転子と、固定子とを含む。前記固定子は、複数の固定子相コイルと、複数の電磁石とを含む。前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置され、ここで、モータは、第1の複数のモータ信号を発生するように構成される。一実施形態において、前記モータに結合されかつ前記第1の複数のモータ信号を受信するコントローラは、駆動インバータ及びDC-DCコンバータに第1の複数の制御信号を発生することで、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与えるように構成される。
【0007】
本開示の別の態様は、モータを駆動するための方法を提供することを目的とし、前記方法は、
コントローラをモータに結合することを含み、ここで、モータは、回転子及び固定子を含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと、複数の電磁石とを含み、前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置される。前記方法は、モータに対して第1の複数のモータ信号を発生することを含む。前記方法はまた、コントローラが、駆動インバータ及びDC-DCコンバータに対する第1の複数の制御信号を発生することを含み、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、また、複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与える。
【0008】
本開示のさらに別の態様の目的は、n相電気モータを提供することにあり、前記モータは回転子及び固定子を含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと、複数の電磁石とを含み、前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルに相互に分散されるように配置される。前記複数の電磁石は、直流励磁電流に基づいて時計回り又は反時計回りの方向に周回磁束を発生するように構成されてもよく、そして、複数の固定子相コイルは、周回磁束密度を変調するように構成されている。
【0009】
他のシステム、方法、及び構成要素についても、本明細書で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態に係る、磁石レス制御のための例示的なモータトポロジーの断面を示す図である。
【
図1B】本開示のいくつかの実施形態に係る、磁石レス制御のための例示的なモータトポロジーの代替図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態に係る、例示的な磁石構成に関連する周方向磁束を示す図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態に係る、シングル固定子デュアル回転子構成を含むモータに関連する例示的な磁石構成を示す図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態に係る、デュアル固定子シングル回転子構成を含むモータに関連する例示的な磁石構成を示す図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態に係る、デュアル固定子シングル回転子構成、及び永久磁石と電磁石の両方を含むモータに関連する例示的な磁石構成を示す図である。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態に係る、例示的なモータ制御システムのシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
以下の説明は、添付の図面を参照する。可能な限り、図面及び以下の説明において、同じ参照番号は、同じ又は類似の部品を参照するために使用される。いくつかの例示的な実施形態が本明細書に記載されているが、修正、適応、及び他の実施形態が可能である。例えば、図面に例示された構成要素及びステップに対して、置換、追加、又は修正を行うことができる。本明細書に記載された例示的な方法は、開示された方法にステップを置換、並べ替え、削除、又は追加することによって変更されてもよい。従って、以下の詳細な説明は、開示された実施形態及び実施例に限定されるものではない。その代わりに、本発明の適切な範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0012】
モータを駆動するための先行する公知のシステム及び方法は、回転子に永久磁石を使用することを含んでいた。本開示の実施形態の目的は、モータを駆動するように構成されたシステム、構成要素、及び方法を提供することにあり、これらの方法等は、(1)磁石を回転子から固定子に再配置することと、(2)モジュラーコアの使用により回転子及び固定子構造を簡単化することと、(2)永久磁石(PM)を電磁石で置き換えることにより、永久磁石の使用を部分的又は完全に排除することにより、モータを駆動するように構成される。簡単に説明するために、モータを駆動するための例示的なシステムを以下に説明するが、例示的なシステムの態様は、方法及び構成要素に等しく適用されるということを理解されたい。
【0013】
開示された実施形態は、n相電気モータを含むことができ。前記n相電気モータは、回転子及び固定子を含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと、複数の電磁石とを含み、前記複数の電磁石は前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置され、ここで、前記複数の電磁石は、直流励磁電流に基づいて時計回り方向又は反時計回り方向に周回磁束を発生するように構成され、前記複数の固定子相コイルは、前記周方向磁束密度を変調するように構成される。
【0014】
n相電気モータは、回転磁界を利用して電気エネルギーを機械的運動に変換する装置であってもよい。前記モータは、ラジアルフラックス(径方向磁束)型、アキシャルフラックス(軸方向磁束)型、又は両者を組み合わせたハイブリッド型であってもよい。このトポロジーのモータは、相電流制御用のインバータと界磁電流制御用のDC-DCコンバータの組み合わせによって駆動されてもよい。
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態に係る、磁石レス制御のための例示的なモータトポロジーの断面を示す図である。
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、磁石レス制御のための例示的なモータトポロジーの代替図を示す。
図1A及び
図1Bに示されるように、n相モータ100の一例は、例えば、A相コイル101、B相コイル102、及びC相コイル103のごとく、三相コイルを含むデバイスを含む。また、モータは、例えば電磁石104のように、複数の電磁石を含んでもよく、複数の電磁石は、固定子105上の複数の固定子相コイル101、102、及び103と相互分散して配置される。回転子106は、磁石を含まないものであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、
図1A及び
図1Bに示すように、n相モータの固定子相コイルと相互分散して配置された複数の電磁石を含んでもよい。
図2は、本開示のいくつかの実施形態に係る、例示的な磁石構成に関連する周方向磁束を示す図である。
図2に示されるように、界磁駆動用電力コンバータを用いて、電磁石201の個々の界磁コイル電流の極性を反転させることによって、電磁石201の各々のためのDC励磁電流を選択的に反転させることができ、必要に応じて時計回り又は反時計回りの周回磁束を供給することができる。
【0016】
図2に示す構成では、時計方向と反時計方向に磁束が発生するように界磁コイル直流電流を調整し、交番電磁石を励磁する。相コイル電流が増加すると、電磁石の磁束と相互作用する磁場が形成される。その結果、エアギャップを横切る磁力線が増加し、エアギャップ磁束密度が増加する。このように、DC-DC電力コンバータを介した電磁石励磁電流と、インバータを介した相コイル電流を細かく制御することで、エアギャップ磁束密度を振幅及び方向変調させることができる。この三相電流によってエアギャップ内に回転磁界が発生し、電気機械的トルクが発生して回転子が回転する。界磁コイルをロータに配置する他の直流界磁励磁モータトポロジーとは異なり、ステータ界磁コイルを有する開示された実施形態のトポロジーは、例えばブラシ、スリップリング、誘導無線送電装置、または容量無線送電装置などの非常に複雑な界磁電流供給機構が不要である。
【0017】
図1Aのモータの図示断面図では、直流界磁コイル(電磁石)104の断面は長方形である。他の変形例では、直流界磁コイルの断面が他の形状であってもよい。断面が台形である具体的な変形例を、
図2に示す。
図2では、直流界磁コイル(電磁石)201の断面が台形状である。いくつかの実施形態では、モータは、
図1及び
図2に示すように、ラジアルフラックス(径方向磁束)モータであってもよい。他の実施形態では、モータは、
図3から
図5に示すように、アキシャルフラックス(軸方向磁束)モータであってもよい。
【0018】
図1A、
図1B、
図2に示す変形例は、モータの固定子における全ての永久磁石を電磁石又はDC界磁コイルに置き換えたものである。また、他の実施形態では、他の実施形態では、永久磁石の一部が電磁石又は直流界磁コイルに置き換えられるハイブリッドアプローチも可能である。このような実施形態では、永久磁石は、モータによるトルク発生を可能にするために、磁気回路内に常に存在する。このような実施形態では、追加又は強化された出力トルクが必要な場合、DC-DC電力コンバータによってDC界磁コイルに通電して、必要な追加の電磁トルクを発生することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、モータの構造及び動作はまた、アキシャルフラックス型であってもよい。アキシャルフラックス型のトポロジーでは、いくつかのバリエーション(変形例)が可能である。例えば、シングル固定子とシングル回転子、シングル固定子とデュアル回転子、デュアル固定子とデュアル回転子などのいくつかのバリエーションが可能である。いくつかの実施形態では、ラジアルフラックス型モータと同様に、一部の永久磁石を電磁石(DC界磁巻線)に置き換えたハイブリッドバージョンが実現され、DC界磁コイルが選択的に通電され、時間制限のある強化されたトルクが発生される場合がある。
【0020】
図3は、本開示のいくつかの実施形態に係る、シングル固定子デュアル回転子構成を含むモータに関連する例示的な磁石構成を示す図である。
図3に示されるように、モータは、2つの回転子302及び303を有する単一の固定子301を含んでもよい。固定子301は、相互分散型電磁石307に加えて、相コイル304、305、及び306を含んでもよい。
図4は、本開示のいくつかの実施形態に係る、デュアル固定子シングル回転子構成を含むモータに関連する例示的な磁石構成を例示する。
図4に示されるように、モータは、単一の回転子403を有する2つの固定子401及び402を含んでもよい。第1の固定子401は、相互分散型電磁石407に加えて、相コイル404、405、及び406を含んでもよい。第2の固定子402は、相互分散型電磁石411に加えて、相コイル408、409、及び410を含んでもよい。
図5は、本開示のいくつかの実施形態に係る、永久磁石と電磁石の両方を含むモータに関連する例示的な磁石の構成を示す図である。
図5に示されるように、モータは、単一の回転子503を有する2つの固定子501及び502を含んでもよい。第1の固定子501は、相互分散型電磁石507に加えて、相コイル504、505、及び506を含んでもよい。第2の固定子502は、相互分散型永久磁石511に加えて、相コイル508、509、及び510を含んでもよい。
【0021】
開示された実施形態は、モータを駆動するためのシステムを含んでもよい。このシステムは、モータを含み、モータは、回転子及び固定子を含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと、複数の電磁石とを含み、前記複数の電磁石は、前記複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置される。前記モータは、第1の複数のモータ信号を発生するように構成され、前記モータは、前記モータに結合されかつ前記第1の複数のモータ信号を受信するコントローラを備える。前記コントローラは、駆動インバータ及びDC-DCコンバータに第1の複数の制御信号を発生することで、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、また、複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与えるように構成される。
【0022】
図6は、本開示のいくつかの実施形態に係る、例示的なモータ制御システムのシステム図である。
図6に示されるように、本明細書に開示される実施形態に係る、モータ601を含んでもよい。例えば、モータ601は、
図1A及び
図1Bに開示されるようなラジアルフラックスモータ100を含んでもよい。他の実施形態では、モータ601は、
図3から
図5のいずれかに開示されるようなアキシャルフラックス型モータを含んでもよい。モータ601は、本明細書に開示される任意のタイプのモータであってもよく、本明細書に開示される構造の任意の組合せを含んでもよい。モータ601は、車両602を駆動するために用いられてもよい。モータ601は、コントローラの帰還及び信号調整モジュール603に複数のモータ信号を発生してもよい。フィードバック及び信号調整モジュール603は、複数のモータ信号を処理して、モータ速度、モータトルク、相電流、及び界磁電流を含む複数の値を決定してもよい。帰還(フィードバック)及び信号調整モジュール603は、複数の制御アルゴリズムモジュール604に接続されてもよい。複数の制御アルゴリズムモジュール604は、速度制御、トルク制御、固定子電流制御、及び界磁制御を含む複数の制御信号を発生するように構成される。制御アルゴリズムモジュール604は、駆動インバータスイッチング関数(機能)605及びDC-DCコンバータスイッチング関数(機能)606を発生するために、複数の制御信号を発生してもよい。駆動インバータ608及びDC-DCコンバータ607は、モータ601の関数(機能)を変調するために、相電流及び電磁石励磁電流を発生してもよい。
【0023】
コントローラは、1つ又は複数のプロセッサと、プロセッサに結合されたメモリ媒体(複数可)とを含んでもよく、メモリ媒体において、1つ以上のコンピュータプログラム又はソフトウェア構成要素が格納され得る。本明細書で使用されるように、「プロセッサ」は、プロセッサコア又は処理チップを含んでもよい。例えば、複数のプロセッサを有するプログラマブルコントローラは、複数のコア(例えば、2、4、8など)を有する単一の処理チップを含んでもよく、複数の処理チップ(例えば、複数の中央処理装置)を含んでもよい。各プロセッシングチップは1つ以上のプロセッサを含み、複数のプロセッサは、チップとコアの任意の組合せを指すことができる。メモリ媒体は、本明細書に記載された方法を実行するために実行可能な1つ以上のプログラムを記憶してもよい。いくつかの実施形態において、コントローラは、マイクロコントローラ、又は組込みシステムにおける特定の動作を制御するように設計された他の任意の小型集積回路を含んでもよい。マイクロコントローラは、プログラマブルであってもよい。他の実施形態では、コントローラは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はプログラム可能な相互接続を介して接続されたコンフィギュラブルロジックブロック(CLB)のマトリックスを中心とする他の任意の半導体デバイスを含んでもよい。FPGAは、製造後に、本明細書で開示する機能に対応するアプリケーション又は機能要件に再プログラムすることができる。
【0024】
図6に示すように、いくつかの実施形態において、モータ相電流を供給するモータ駆動インバータ605に加え、直流界磁電流を調整するための別個のDC-DCコンバータ606も含まれ得る。
図6に示されるパワーエレクトロニクススタック(PEスタック)は、2レベル出力電圧スタック又はマルチレベル出力電圧スタックとして構築されてもよい。
図6に示すパワーエレクトロニクススタック(PEスタック)は、直流電圧の利用可能性とデバイスのブロッキング電圧定格に応じて、2レベル出力電圧スタック又はマルチレベル出力電圧スタックとして構成することができる。
図6には、2レベル及び3レベルPEスタックのいくつかの例示的なトポロジーが示されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、スタック(積層)には、MOSFETなどのパワー半導体デバイスを使用することができる。MOSFETやIGBTのようなパワー半導体デバイスを利用することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、速度及びトルク基準、並びに速度及びトルクの測定値に基づいて、相電流及び直流界磁電流を決定してもよい。PM機械(PMマシン)において、発生する電磁トルクは、回転子極数、直流及び直交インダクタンス、固定子電流値、及び永久磁石磁束の関数である。このようなPM機では、機械を流れる固定子相電流の大きさを大きくすることによってのみ、指令トルクの増大が実現される。しかしながら、本明細書に開示される実施形態において、発生する電磁トルクは、回転子極数、直交インダクタンス及び直交インダクタンス、固定子電流値、及び直流界磁コイル電流の関数であってよく、次式で表される。以下の式は、トルク関数の1つの実装の例を提供する。他の実施例は、追加の変数を含むか、又は特定の変数を削除してもよい。他の特定の実施例は、他の非理想又は非線形性を含んでもよく、又は特定の非理想又は非線形性を除去してもよい。
【0026】
【0027】
ここで、Toは出力電磁トルクであり、Poは、出力電力であり、ωmは角速度であり、Pは極数であり、ie
dとie
qはabc-dq変換で得られる直交軸電流と直交軸電流であり、Le
ddとLe
qqは直交軸と直交軸のインダクタンスであり、λdcは電磁界巻線における電流による磁束鎖交である。
【0028】
いくつかの実施形態では、可変としての固定子電流に加えて、DC界磁コイル電流も、トルクを調整するために利用可能である場合がある。電磁トルク要件の増加は、相電流(多相インバータを使用)及びDC界磁電流(界磁電流DC-DCコンバータを使用)を最適な割合で調整することによって達成され、結果として最大動作効率を得ることができる。直流界磁コイルを固定子に配置することで、界磁束の高帯域幅制御が可能となり、機械の電磁トルクを高速かつダイナミックに制御することができる。内部永久磁石モータなどの他のモータ構造において、回転子内の永久磁石を回転子内の電磁石に置き換えるには、ブラシ、スリップリング、誘導型無線送電装置、又は容量型無線送電装置などの界磁送電メカニズム(機構)が必要である。このような実施例で利用可能な制御帯域幅は、電界供給機構によって制限される。そのため、システムのダイナミックトルク性能も制限される。
【0029】
モータが定電力領域の高速に入ると、固定子の端子におけるバックEMF(起電力)電圧を最小化するために、界磁弱化が使用され得る。本明細書に開示される実施形態において、これは、DC-DC電力コンバータを介してDC界磁コイル電流を変調することによって容易に達成することができる。PM機械は、モータ逆起電力との位相差が動作速度に応じて変化する固定子電流の注入にのみ依存する。本明細書に開示された実施形態は、固定子電流位相角方式に加えて、DC界磁コイル電流の変調を使用して、界磁を弱めることもできる。
【0030】
開示された実施形態は、モータを駆動するための方法を含んでもよい。前記方法は、コントローラをモータに結合することを含み、モータは、回転子及び固定子を含み、前記固定子は、複数の固定子相コイルと複数の電磁石を含み、複数の電磁石は、複数の固定子相コイルと相互に分散されるように配置され、前記方法は、モータが第1の複数のモータ信号を発生することと、コントローラが駆動インバータ及びDC-DCコンバータに第1の複数の制御信号を発生することで、複数の固定子相コイルのうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの相電流に影響を与え、また、複数の電磁石のうちの少なくとも1つに供給される少なくとも1つの励磁電流に影響を与えることを含む。
【0031】
本開示は、その特定の実施形態を参照して示され説明されてきたが、本開示は、他の環境においても、変更することなく実施できることが理解されよう。前述の説明は、説明のために提示されたものである。それは、網羅的ではなく、開示された正確な形態又は実施形態に限定されるものではない。他の実施形態は、二重(内側及び外側)回転子を有するラジアル磁束モータ、1つの固定子及び1つの回転子を有するアキシャルフラックスモータ、複数の固定子及び複数の回転子が一緒に接続されたスタック型アキシャルフラックスモータを含み得る。変更及び適応は、開示された実施形態の明細書及び実践を考慮することから当業者には明らかであろう。書面の説明及び開示された方法に基づくコンピュータプログラムは、経験豊富な開発者のスキルの範囲内である。
【0032】
様々なプログラム又はプログラムモジュールは、当業者に知られている技術のいずれかを使用して作成することができ、又は既存のソフトウェアと関連して設計することができる。例えば、以下の通りである。種々のプログラム又はプログラムモジュールは、.Net Framework、.Net Compact Framework(及び、例えばVisual Basic、Cなどの関連言語)、Java、C++、Objective-C、HTML、HTML/AJAXの組み合わせ、XML、又はJavaアプレットが含まれるHTMLで、又はその手段で設計することができる。また、プログラム部やプログラムモジュールは、市販のマイクロコントローラ、プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイのメーカーが規定又は提供する統合設計環境において、又はその手段で設計することもできる。
【0033】
さらに、例示的な実施形態が本明細書に記載されたが、本開示に基づいて当業者に理解されるであろう、同等の要素、修正、省略、組み合わせ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)、適応及び/又は変更を有する任意の及び全ての実施形態の範囲である。特許請求の範囲における制限は、特許請求の範囲に採用された言語に基づいて広く解釈され、本明細書に記載された例又は本出願の遂行中に記載された例に限定されない。実施形態、実施例は、非排他的なものとして解釈される。さらに、開示された方法のステップは、ステップの順序変更及び/又はステップの挿入又は削除を含む任意の方法で変更され得る。従って、本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮されることが意図され、真の範囲及び精神は、以下の請求項及びその全範囲の等価物によって示される。
【外国語明細書】