(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152594
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】導電性複合繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/12 20060101AFI20231005BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
D01F8/12 A
D01F8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159140
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2022061442
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】掛巣 淳洋
(72)【発明者】
【氏名】平佐多 久晶
【テーマコード(参考)】
4L041
【Fターム(参考)】
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BA22
4L041BA23
4L041BA32
4L041BC09
4L041BD20
4L041CA21
4L041CA25
4L041CA26
4L041CA36
4L041CB02
4L041CB25
4L041CB28
4L041DD21
(57)【要約】
【課題】 従来の石油由来の導電性繊維と同等の導電性能を有しながら、環境にやさしい新規な導電性ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】 繊維横断面において導電層と、非導電層とからなる導電性複合繊維であって、非導電層がポリアミド1010である導電性複合繊維である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維横断面において導電層と、非導電層とからなる導電性複合繊維であって、非導電層がポリアミド1010である導電性複合繊維。
【請求項2】
ポリアミド1010の相対粘度が1.5以上、2.5以下である請求項1記載の導電性繊維。
【請求項3】
繊維横断面における非導電層/導電層の面積比率が45/55~98/2である請求項1または2に記載の導電性複合繊維。
【請求項4】
繊維全体のバイオマス由来成分が、質量比率25%以上、98%以下である請求項1または2に記載の導電性複合繊維。
【請求項5】
繊維全体のバイオマス由来成分が、質量比率25%以上、98%以下である請求項3記載の導電性複合繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非導電層と導電層からなる導電性複合繊維に関する。さらに詳しくは非導電成分が非石油資源から得られるバイオマス由来の高分子原料から構成される導電性ポリアミド複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性複合繊維としては、石油資源由来の合成樹脂を用いた合成繊維が一般的である(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、昨今の地球的規模での環境に対する意識向上に伴い、繊維分野おいても、非石油由来の繊維素材が切望されている。一方、将来の石油資源の枯渇や、石油資源の大量消費による地球温暖化を抑制するための手段の一つとして、植物由来のプラスチック、すなわちバイオマス由来のプラスチック(以下、バイオマスプラと称する)に注目が集まっている。
このようなバイオマスプラを利用した導電性ポリアミド複合繊維としては、例えば、特許文献2には、セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドと導電性カーボンで構成され、導電性カーボンの含有量が10~40質量%である導電性ポリアミド繊維が開示されている。具体的には、ポリアミド610、ポリアミド510中に導電性カーボンを練り込んだ導電性ポリアミド単独繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-11213号公報
【特許文献2】特開2013-151782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載に記載された導電性ポリアミド繊維は、石油由来の繊維よりは環境に優しいものであるものの、さらに新たな環境に優しい導電性ポリアミド繊維など、環境に優しいものが求められているのが現状である。
したがって、本発明は、従来の石油由来の導電性繊維と同等の導電性能を有しながら、環境に優しい新規な導電性ポリアミド繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、繊維横断面において導電層と、非導電層とからなる導電性複合繊維であって、非導電層がポリアミド1010である導電性複合繊維をその要旨とする。
上記繊維において、ポリアミド1010の相対粘度が1.5以上、2.5以下であることが好ましい。
上記繊維において、繊維横断面における非導電層/導電層の面積比率が45/55~98/2であることが好ましい。
上記繊維において、繊維全体のバイオマス由来成分が、質量比率25%以上、98%以下であることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非導電層にバイオマス由来100%の熱可塑性樹脂を使用しているにもかかわらず、石油由来の熱可塑性樹脂の導電性ポリアミド繊維と同等の導電性能を有する新規な導電性ポリアミド繊維を得ることができる。
またPA610、PA510に導電性カーボンを全分散させた導電性繊維よりも、より環境にやさしい導電性ポリアミド繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の導電性複合繊維の繊維横断面を示す例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、導電層と非導電層とからなる導電性複合繊維である。
【0010】
導電層は、導電性カーボンブラック、白色導電剤などの導電性粒子を含有する熱可塑性樹脂から形成されることが好ましい。
【0011】
導電層における導電性粒子の含有量は、導電性粒子の種類、必要な導電性能などによって変わるが、通常10~85質量%程度の範囲内であり、目的に応じて、適宜選択するとよい。
【0012】
導電性粒子として、導電性カーボンブラックを用いる場合、導電層における導電性粒子の含有量が15質量%以上、45質量%以下含む熱可塑性樹脂を導電層とすることが好ましい。
熱可塑性樹脂における導電性カーボンブラックの含有量が15質量%未満であると、導電性繊維の導電性能が不足し、繊維構造体に使用して導電性能を良好にすることが難しい傾向がある。導電性カーボンブラックの含有量が、45質量%を超えると、導電層の流動性が著しく低下し、繊維化することが難しい傾向がある。
【0013】
導電性粒子として、白色導電剤を用いる場合、導電層における導電性粒子の含有量が50質量%以上、80質量%以下含む熱可塑性樹脂を導電層とすることが好ましい。
熱可塑性樹脂における白色導電剤の含有量が50質量%未満であると、導電性繊維の導電性能が不足し、繊維構造体に使用して導電性能を良好にすることが難しい傾向がある。白色導電剤の含有量が、80質量%を超えると、導電層の流動性が著しく低下し、繊維化することが難しい傾向がある。
【0014】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンが好適に挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド1010、これらを主成分とする共重合ポリアミドが挙げられる。
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシベンゾエートおよびこれらを主成分とする共重合ポリエステル等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリプロピレンおよびこれらを主成分とする共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0015】
非導電層は、ポリアミド1010から形成される。ポリアミド1010はバイオマス由来100%樹脂であるにもかかわらず、溶融時の流動性が高く、品位のよい導電性複合繊維を得ることができる。これにより、従来の非導電層がポリアミド6の導電性複合繊維と同等の強伸度物性、導電性能を有する環境にやさしい導電性繊維を得ることができる。また一部のバイオマス由来の樹脂を繊維全体に分散させた導電性繊維よりもさらに環境に優しい導電性繊維を得ることができる。
【0016】
非導電層に用いるポリアミド1010の相対粘度は、1.5以上、2.5以下が好ましい。この範囲であると、紡糸可能で繊維物性も良好となる。より好ましくは、1.6以上、2以下である。
【0017】
本発明の導電性複合繊維は、繊維横断面において、上記導電層と上記非導電層とを複合せしめたものである。
上記導電層は、繊維長手方向に連続して導電パスが形成されるように、繊維長手方向に連続したものであることが好ましい。
【0018】
本発明の導電性複合繊維の繊維横断面の例を
図1に示す。
図1は芯が導電層(1)と鞘が非導電層(2)とから構成される芯鞘複合繊維の繊維横断面である。
図1(a)は、芯に導電層(1)、鞘に非導電層(2)、(2’)を配置した芯鞘複合繊維である。具体的には、非導電層(2)、導電層(1)、非導電層(2’)の順に、導電層(1)を挟んで非導電層(2)(2’)がサイドバイサイドに3層型で配置されているサンドイッチ形状である。導電層(1)は、繊維表面全体において2か所露出し、非導電層(2)、(2’)に挟まれている。
図1(b)は、導電層(1)が繊維表面に露出せず、導電層(1)の周囲を取り囲んで非導電層が(2)配置されている。導電層(1)が芯、非導電層(2)が鞘の偏心型の芯鞘形状である。
本発明の導電性複合繊維は、非導電層にポリアミド1010を用い、導電層が集中して長手方向に連続した複合繊維とすることができるため、例えば、環境にやさしい素材で、導電層が繊維表面に露出する面積が少なく、導電性能を保ちながら加工性のよいものを得ることができる。
【0019】
非導電層と導電層の複合比率については、質量比率(非導電層:導電層)で、20:1~5:1であることが好ましい。繊維の物性を確保すると言う観点からは非導電層の比率が大きいほど好ましいが、導電層の比率が小さくなると安定した複合形態を得ることが難しくなる傾向があり、これに伴い導電性の安定性が低下する傾向がある。これらを勘案すると、上記記載のように、非導電層:導電層は20:1~5:1であることが好ましく、15:1~10:1であることが更に好ましい。
【0020】
非導電層と導電層の繊維横断面における面積比率としては、非導電層/導電層で、45/55~98/2であることが好ましい。繊維の物性を確保すると言う観点からは非導電層の比率が大きいほど好ましいが、導電層の比率が小さくなると安定した複合形態を得ることが難しくなる傾向があり、これに伴い導電性の安定性が低下する傾向がある。これらを勘案すると、上記記載のように、非導電層/導電層は45/55~98/2であることが好ましく、5/1~10/1であることが更に好ましい。
【0021】
本発明の導電性複合繊維は、繊維全体のバイオマス由来成分の含有量は環境への配慮と目的とする導電性能などに応じて適宜決定するとよいが、通常は、質量比率25%以上、98%以下であることが好ましい。この範囲であると、環境にもやさしく、導電性能を得られ、繊維化もし易いものとなり易い。より好ましくは50%以上、98%以下である。さらに好ましくは60%以上、98%以下である。
【0022】
本発明の導電性複合繊維の繊度は、20dtex以上、400dtex以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性複合繊維のフィラメント数は、2以上、90以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の導電性複合繊維の破断強度は、0.5cN/dtex以上、6.0cN/dtex以下であることが好ましい。また破断伸度は、30%以上、200%以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の導電性複合繊維の熱水収縮率は、5%以上、15%以下であることが好ましい。本発明の導電性複合繊維は、導電層と組みわせる非導電層にポリアミド1010を用いた複合繊維とすることにより、従前の非導電層が石油由来のポリアミド6を組み合わせた複合繊維よりも熱水収縮率が低い寸法安定性の良好な繊維とすることができる。これにより、後加工性も優れることが期待できるので、寸法安定性を求めるような用途には特に有用に使用できる。
【0026】
本発明の導電性複合繊維の線抵抗値(温度20℃、湿度30%RH)は、103以上、109Ω/cm以下であることが好ましい。通常、上限は、1011Ω/cmである。
この範囲であると、製糸及び加工時の生産性の安定性と、十分な導電性能が得られる。このため、本発明の導電性複合繊維を繊維構造体に使用した際に良好な制電性を示す。
【0027】
本発明の導電性複合繊維は、長繊維(フィラメント)であっても、短繊維(ステープル)であってもよい。
【0028】
本発明の導電性複合繊維は、ユニフォーム、カーテン、カーペット、防塵衣、搬送用ベルトなどに好適に用いることができる。
【0029】
本発明の導電性複合繊維の製造方法は、本発明の導電性複合繊維が得られる限り、特に限定するものではないが、例えば、溶融紡糸による製造方法について、二工程法(未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法)、一工程で半延伸糸を製造する方法(POYの製造方法)、一工程である高速紡糸法(紡糸速度を4000m/分以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法)、高速紡糸延伸法(紡糸-延伸工程を連続して行う方法)等が挙げられる。
特に好ましい方法としては、二工程法が挙げられる。二工程法で製造する方法について、以下、例を説明する。
導電層に用いる導電性カーボンブラックまたは白色導電剤等の導電性粒子を含有した熱可塑性樹脂と、非導電層に用いる上記ポリアミド1010樹脂をそれぞれ溶融し、口金吐出孔から吐出し、冷却、給油の後、1000m/分以下の速度で一旦巻き取り未延伸糸を得る。
次に、得られた未延伸糸を、延伸倍率2倍以上、3.5倍以下、熱延伸温度190℃以下で巻き取り、線抵抗値が(温度20℃、湿度30%RH)103~109Ω/cmの延伸糸(ポリアミド長繊維)を得ることができる。
【実施例0030】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。尚、本発明に用いる樹脂、本発明の実施例及び比較例で得られた導電性繊維は次に示す方法より求めた。
【0031】
<相対粘度>
ポリアミド1010の相対粘度ηrは、50mlのm-クレゾールに0.25gのポリアミドを溶解させた溶液を準備し、25℃でオストワルド粘度計を通し、溶液の流下時間をm-クレゾールの流下時間で割りかえすことにより求めた。
<破断強度、破断伸度及び強伸度積>
導電性複合繊維の破断強度及び破断伸度は、JIS-L-1013に準じ、(株)島津製作所製AGS-1KNGオートグラフ引っ張り試験機を用い、試料糸長20cm、引っ張り速度20cm/minの条件で試料が伸長破断したときの強度及び伸度を測定して求めた。また、それらの数値から下記式より強伸度積を求めた。
【0032】
【0033】
<熱水収縮率>
JIS L 1013に準じ、熱水収縮率を求めた。
【0034】
<繊維の導電性評価(線抵抗値)>
線抵抗値は、導電性複合繊維を10cm採取し、その両端に導電性接着剤でアルミ箔を接着させ、ヒューレットパッカード製ハイレジスタンスメーター4339Bを用いて測定した抵抗測定値(Ω)を電極間距離(cm)で除し、線抵抗値(Ω/cm)とした。
【0035】
〔実施例1〕
ポリエチレンに白色導電剤を75質量%混練した樹脂組成物を芯の導電層、ポリアミド1010(ダイセル・エボニック製)を鞘の非導電層とし、導電層が繊維表面に露出しない
図1(b)の偏心芯鞘型複合繊維を形成する口金を用いて溶融複合紡糸機にて複合紡糸を行った。鞘のポリアミド1010の相対粘度は、1.80であった。口金のホール数は48ホールであり、吐出された複合繊維を1糸条として油剤付与ガイド、ゴデットローラーを介し900m/minで回転するボビンに未延伸糸として巻き取った。巻き取られた未延伸糸を延撚機にてフィードローラー、96℃の第一ローラー、第二ローラーを介し、第一ローラーと第二ローラー間で破断伸度が40~60%程度となるように回転速度差を付けて延伸させ、トラベラを介してパーンに巻き取り、110dtex/48fの導電性複合繊維の延伸糸を得た。尚、繊維横断面における非導電層/導電層の面積比率は10/1とした。
得られた導電性複合繊維は強伸度に優れたものとなり、後工程の通過性にも優れたものであった。
【0036】
〔実施例2〕
ポリアミド6に導電性カーボンブラックを35質量%混練した樹脂組成物を芯の導電層、ポリアミド1010(ダイセル・エボニック製)を鞘の非導電層とし、導電層が繊維表面全体に2点露出し、非導電層に挟まれる形のサンドイッチ型(
図1(b))芯鞘型複合繊維を形成する口金を用いて溶融複合紡糸機にて複合紡糸を行った。鞘のポリアミド1010の相対粘度は、1.80であった。口金のホール数は72ホールであり、吐出された複合繊維を1糸条として油剤付与ガイド、ゴデットローラーを介し600m/minで回転するボビンに未延伸糸として巻き取った。巻き取られた未延伸糸を延撚機にてフィードローラー、第一ローラー、第二ローラーを介し、第一ローラーと第二ローラー間で破断伸度が40~60%程度となるように回転速度差を付けて延伸させ、トラベラを介してパーンに巻き取り、225dtex/72fの導電性複合繊維の延伸糸を得た。尚、繊維横断面における非導電層/導電層の面積比率は10/1とした。
得られた導電性複合繊維は強伸度特性に優れたものとなり、後工程の通過性にも優れたものであった。
【0037】
〔参考例1〕
ポリエチレンに白色導電剤を75質量%混練した樹脂組成物を芯の導電層、ポリアミド6を鞘の非導電層とし、導電層が繊維表面に露出しない
図1(b)の偏心芯鞘型複合繊維を形成する口金を用いて溶融複合紡糸機にて複合紡糸を行った。口金のホール数は48ホールであり、吐出された複合繊維を1糸条として油剤付与ガイド、ゴデットローラーを介し900m/minで回転するボビンに未延伸糸として巻き取った。巻き取られた未延伸糸を延撚機にてフィードローラー、96℃の第一ローラー、第二ローラーを介し、第一ローラーと第二ローラー間で破断伸度が40~60%程度となるように回転速度差を付けて延伸させ、トラベラを介してパーンに巻き取り、110dtex/48fの導電性複合繊維の延伸糸を得た。尚、繊維横断面における非導電層/導電層の面積比率は10/1とした。
得られた導電性複合繊維は強伸度に優れたものとなり、後工程の通過性にも優れたものであった。
【0038】
〔参考例2〕
ポリアミド6に導電性カーボンブラックを35質量%混練した樹脂組成物を芯の導電層、ポリアミド6を鞘の非導電層とし、導電層が繊維表面全体に2点露出し、非導電層に挟まれる形のサンドイッチ型(
図1(b))芯鞘型複合繊維を形成する口金を用いて溶融複合紡糸機にて複合紡糸を行った。口金のホール数は72ホールであり、吐出された複合繊維を油剤付与ガイド、ゴデットローラーを介し600m/minで回転するボビンに未延伸糸として巻き取った。巻き取られた未延伸糸を延撚機にてフィードローラー、108℃の第一ローラー、第二ローラーを介し、第一ローラーと第二ローラー間で破断伸度が40~60%程度となるように回転速度差を付けて延伸させ、トラベラを介してパーンに巻き取り、225dtex/72fの導電性複合繊維の延伸糸を得た。尚、繊維横断面における非導電層/導電層の面積比率は10/1とした。
得られた導電性複合繊維は強伸度に優れたものとなり、後工程の通過性にも優れたものであった。
実施例及び比較例で得られた導電性複合繊維の構成と、糸質物性を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1の結果より、本発明の実施例から得られた複合繊維は、導電性、強伸度及び寸法安定性に優れた導電性複合繊維であった。このため、石油資源由来による導電性複合繊維と同等の物性を持ったバイオマス由来の導電性複合繊維を得ることができた。
【0041】
また、実施例の導電性繊維の非導電層を構成するポリアミド1010は、バイオマス由来100%の樹脂であるため、一部バイオマス由来の樹脂であるPA610、PA510に導電性粒子を繊維断面全体に分散させた導電性繊維よりも環境にやさしいものとなった。