(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152607
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】電気化学セル用電解質膜、及び、電気化学セル
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1016 20160101AFI20231005BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20231005BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20231005BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M8/1016
H01B1/06 A
C25B13/02 301
C25B13/04 301
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166224
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2022059632
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 真央
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
(72)【発明者】
【氏名】野引 浩介
【テーマコード(参考)】
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA19
5G301CD01
5G301CE01
5H126AA03
5H126BB06
5H126BB08
5H126GG12
5H126GG18
(57)【要約】
【課題】損傷を抑制可能な電気化学セル用電解質膜、及び電解質膜の損傷を抑制可能な電気化学セルを提供する。
【解決手段】電気化学セル用電解質膜10は、電解質本体部11と、複数の粗大気孔12と、を備える。電解質本体部11は、第1主面A、及び、第2主面B、を有する。第2主面Bは、第1主面Aの反対側に配置される。複数の粗大気孔12は、電解質本体部11中に配置される。粗大気孔12は、断面積が1.5μm
2以上である。粗大気孔12は、第2主面側領域R2よりも第1主面側領域R1に多く配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面、及び、前記第1主面の反対側に配置される第2主面、を有する電解質本体部と、
前記電解質本体部中に配置される複数の粗大気孔と、
を備え、
前記粗大気孔は、前記第2主面側領域よりも前記第1主面側領域に多く配置される、
電気化学セル用電解質膜。
【請求項2】
少なくとも1つの前記粗大気孔は、扁平状である、
請求項1に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項3】
少なくとも1つの前記粗大気孔は、前記第1主面方向に対して傾いている、
請求項2に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項4】
イオン伝導性物質をさらに備え、
前記イオン伝導性物質は、前記粗大気孔内に配置される、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項5】
前記イオン伝導性物質は、液体である、
請求項4に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項6】
前記イオン伝導性物質は、リン酸である、
請求項4または請求項5に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項7】
前記電解質本体部は、
基材と、
前記基材中に分散されたセラミックスと、
を含む、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項8】
前記基材は、樹脂である、
請求項7に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項9】
前記基材は、ポリベンゾイミダゾールであり、
前記セラミックスは、ピロリン酸スズである、
請求項7又は請求項8に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電気化学セル用電解質膜と、
アノードと、
カソードと、
を備える、電気化学セル。
【請求項11】
前記第1主面は、前記アノード側を向く、
請求項10に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記第1主面は、前記カソード側を向く、
請求項10に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル用電解質膜、及び、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ形燃料電池、アルカリ形二次電池及び電解セルなどの電気化学セルでは、イオン伝導性を有するイオン伝導体が電解質として用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気化学セルでは、水(又は、水蒸気)存在下で電解質が用いられるため、電解質内の含水状況によって電解質に体積変化が生じて、電解質の内部に損傷が生じるおそれがある。電気化学セル用電解質膜には、強度を保ちつつ損傷を抑制することが求められる。
【0005】
本発明は、損傷を抑制可能な電気化学セル用電解質膜、及び電解質膜の損傷を抑制可能な電気化学セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る電気化学セル用電解質膜は、電解質本体部と、複数の粗大気孔と、を備える。電解質本体部は、第1主面、及び、第2主面、を有する。第2主面は、第1主面の反対側に配置される。粗大気孔は、電解質本体部中に配置される。粗大気孔は、第2主面側領域よりも第1主面側領域に多く配置される。
【0007】
この構成によれば、粗大気孔が、第2主面側領域よりも第1主面側領域に多く配置される。ここで、例えば、アノード側で水が大量に供給される場合、アノード側の電解質膜の領域、すなわち、第1主面側領域で体積変化が生じやすい。この場合において第1主面がアノード側を向くように電解質膜を配置することによって、体積変化が生じやすい第1主面側領域で、粗大気孔により応力を緩和することができる。さらに、第1主面側領域に比べて体積変化が生じにくい第2主面側領域における粗大気孔の数を、第1主面側領域における粗大気孔の数よりも減らす、又は無くすことによって、電気化学セル用電解質膜の強度を保つことができる。その結果、電気化学セル用電解質膜全体として強度を保ちつつ、電気化学セル用電解質膜の損傷を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つの粗大気孔は、扁平状である。
【0009】
好ましくは、少なくとも1つの粗大気孔は、第1主面方向に対して傾いている。この場合、厚み方向における応力の緩和をより向上させることができる。
【0010】
好ましくは、イオン伝導性物質をさらに備え、イオン伝導性物質は、粗大気孔内に配置される。
【0011】
好ましくは、イオン伝導性物質は、液体である。
【0012】
好ましくは、イオン伝導性物質は、リン酸である。
【0013】
好ましくは、電解質本体部は、基材と、セラミックスと、を含む。セラミックスは、基材中に分散されている。
【0014】
好ましくは、基材は、樹脂である。
【0015】
好ましくは、基材は、ポリベンゾイミダゾールである。セラミックスは、ピロリン酸スズである。
【0016】
本発明の電気化学セルは、上記いずれかの燃料電池用電解質膜と、アノードと、カソードと、を備える。
【0017】
好ましくは、第1主面は、前記アノード側を向く。
【0018】
好ましくは、第1主面は、前記カソード側を向く。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、損傷を抑制可能な電気化学セル用電解質膜、及び電解質膜の損傷を抑制可能な電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る電気化学セル用電解質膜を用いた直接メタノール形燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る電気化学セル用電解質膜の断面の拡大模式図である。
【
図3】
図2とは異なる実施形態に係る電気化学セル用電解質膜の断面の拡大模式図である。
【
図4】実施形態に係る電気化学セル用電解質膜を化学式で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態に係る電気化学セル用電解質膜(以下、単に電解質膜という)10を含む電気化学セルの一種であるDMFC(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)100について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
[DMFC100]
図1に示すように、DMFC100は、プロトンをキャリアとする燃料電池の一種である。DMFC100は、電解質膜10、アノード20、及び、カソード30を備える。電解質膜10は、アノード20及びカソード30の間に配置される。DMFC100は、燃料供給部21及び酸化剤供給部22をさらに有する。
【0023】
DMFC100は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃~250℃)で発電することが好ましい。下記の電気化学反応式では、燃料としてメタノールが用いられている。
【0024】
・アノード20:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
・カソード30:6H++3/2O2+6e-→3H2O
・ 全体 :CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O
【0025】
燃料供給部21は、DMFC100の作動中、メタノール(CH3OH)を含む燃料を後述するアノード20に供給する。燃料に含まれるメタノールは、気相状態、液相状態、気相及び液相の混合状態のいずれであってもよい。燃料供給部21は、供給管21a、供給空間21b及び排出管21cを有する。供給管21aから導入される燃料は、供給空間21bにおいてアノード20に供給される。アノード20において消費されなかった燃料とアノード20において発生する二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)は、排出管21cから外部に排出される。
【0026】
酸化剤供給部22は、カソード30に酸素(O2)を含む酸化剤を供給する。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。酸化剤供給部22は、供給管22a、供給空間22b及び排出管22cを有する。供給管22aから導入される酸化剤は、供給空間22bにおいてカソード30に供給される。カソード30において消費されなかった酸化剤は、排出管22cから外部に排出される。
【0027】
[アノード20]
アノード20は、一般に燃料極と呼ばれる陰極である。DMFC100の発電中、アノード20には、メタノールを含む燃料が燃料供給部21から供給される。アノード20は、内部にメタノールを拡散可能な多孔質体である。アノード20の気孔率は特に制限されない。アノード20の厚みは特に制限されないが、例えば10~500μmとすることができる。
【0028】
アノード20は、公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード20の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、白金ルテニウム担持カーボン(PtRu/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0029】
アノード20の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状混合物を調製し、このペースト状混合物を電解質膜10のアノード側表面に塗布することにより形成することができる。
【0030】
[カソード30]
カソード30は、一般に空気極と呼ばれる陽極である。DMFC100の発電中、カソード30には、酸素(O2)を含む酸化剤が酸化剤供給部22から供給される。カソード30は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード30の気孔率は特に制限されない。カソード30の厚みは特に制限されないが、例えば10~200μmとすることができる。
【0031】
カソード30は、公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8~10族元素(IUPAC形式での周期表において第8~10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード30における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.05~10mg/cm2、より好ましくは、0.05~5mg/cm2である。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード30の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、白金コバルト担持カーボン(PtCo/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0032】
カソード30の作製方法は特に限定されないが、例えば、空気極触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状混合物を調製し、このペースト状混合物を電解質膜10のカソード側表面に塗布することにより形成することができる。
【0033】
[電解質膜10]
電解質膜10は、膜状、層状、或いは、シート状に形成される。電解質膜10は、アノード20とカソード30との間に配置される。電解質膜10は、アノード20及びカソード30のそれぞれに接続される。電解質膜10の厚みは特に制限されないが、例えば5~100μmである。好ましくは、電解質膜10の厚みは20μm以上である。
【0034】
図2に示すように、電解質膜10は、電解質本体部11と、複数の粗大気孔12と、を含む。
【0035】
[電解質本体部11]
電解質本体部11は、第1主面Aと、第2主面Bと、を有する。第1主面Aは、アノード20側を向く。第2主面Bは、第1主面Aの反対側に配置される。第2主面Bは、カソード30側を向く。
【0036】
電解質本体部11はさらに、第1主面側領域R1と、第2主面側領域R2と、を有する。第1主面側領域R1は、電解質本体部11を第1主面Aに平行な仮想平面で2等分して2つの領域に分けたときに、第1主面A側に配置される領域である。第2主面側領域R2は、電解質本体部11を第1主面Aに平行な仮想平面で2つの領域に分けたときに、第2主面B側に配置される領域である。
【0037】
電解質本体部11は、基材13と、セラミックス14と、を含む。
【0038】
[基材13]
基材13は、電解質膜10の形状を維持している。
【0039】
基材13は、樹脂である。詳細には、200℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する樹脂によって構成されている。
【0040】
好ましくは、基材13は、塩基性ポリマーである。塩基性ポリマーとは、プロトン受容性基を有するポリマーである。基材13が塩基性ポリマーによって構成される場合、酸塩基反応により後述するイオン伝導性物質15(リン酸)を保持できるため、電解質膜10からイオン伝導性物質15が流出することを抑制できる。より好ましくは、塩基性ポリマーは、アミノ基を有する。
【0041】
基材13を構成する材料は例えば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種又は2種以上である。好ましくは、基材13は、ポリベンゾイミダゾール(PBI)である。
【0042】
[セラミックス14]
セラミックス14は、基材13中に分散されている。セラミックス14は、アノード20側に供給されたメタノールが電解質膜10を透過してカソード30側に達することで酸素と直接反応してしまう所謂クロスオーバーを抑制する。
【0043】
セラミックス14は、イオン伝導性である。詳細には、セラミックス14は、プロトン伝導性である。DMFC100の発電中、電解質膜10は、セラミックス14によって、アノード20からカソード30側にプロトン(H+)を伝導する。
【0044】
セラミックス14がプロトンを伝導する場合、セラミックス14のプロトン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。セラミックス14のプロトン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
【0045】
セラミックス14は、セラミック粒子である。セラミックス14としては、プロトン伝導性を有する周知のセラミック材料を用いることができる。このようなセラミック材料は例えば、プロトン伝導性を有する金属酸化物などを用いることができる。このような金属酸化物としては、リン酸系化合物などである。リン酸系化合物としては、ピロリン酸スズ、リン酸ランタンピロリン酸ジルコニウム、リン酸スズ、及びリン酸ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上であることが好ましい。
【0046】
電解質膜10におけるセラミックス14の含有量は、35~65体積%とすることができる。なお、電解質膜10は、実質的に基材13及びセラミックス14のみによって構成されており、その他の物質は無視できる程度である。電解質膜10におけるセラミックス14の含有量は、好ましくは40体積%以上であり、さらに好ましくは50体積%以上である。
【0047】
セラミックス14の含有量は、電解質膜10の断面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察して、SEM画像上において樹脂より輝度が高く表示されるセラミックス14の断面積率を画像解析にて算出することによって得られる。より具体的には、SEM画像上においてセラミックス14を特定し、その視野におけるセラミックス14の断面積を視野内の電解質膜10全体の断面積で除することにより、セラミックス14の断面積率を算出する。本明細書においては、画像解析にて算出したセラミックス14の断面積率を、セラミックス14の体積率と考える。
【0048】
セラミックス14を構成するセラミック粒子の平均粒径は、円相当径で0.5~5.0μmとすることができる。セラミックス14を構成するセラミック粒子の比表断面積は、1~200m2/cm3とすることができる。
【0049】
セラミックス14の平均粒径は、電解質膜10の断面をSEM又はTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して、観察画像上において無作為に選択した20個のセラミックス14の円相当径を算術平均することによって得られる。円相当径は、セラミックス14の各々の粒子の断面積を求め、求めた断面積から計算する。
【0050】
セラミックス14の比表面積は、セラミックス14の平均粒径から平均表面積及び平均体積を算出して、平均表面積を平均体積で割ることによって算出される。
【0051】
[粗大気孔12]
複数の粗大気孔12は、電解質本体部11中に配置される。詳細には、粗大気孔12は、基材13内、及び、基材13とセラミックス14との間に配置される。
【0052】
なお、粗大気孔12とは、断面積が1.5μm2以上の気孔を意味する。粗大気孔12の断面積は、3.0μm2以上が好ましく、さらに好ましくは5.0μm2以上である。
【0053】
また、粗大気孔12の断面積は、30μm2以下が好ましく、さらに好ましくは20μm2以下である。これにより、アノード20に供給される燃料がカソード30側に透過することを抑制できる。
【0054】
粗大気孔12の断面積は、次の方法で測定する。電解質膜10の断面をSEMで観察する。粗大気孔12の断面積は、SEM画像上においてセラミックス14及び樹脂より輝度が低く表示される部分の断面積を画像解析にて算出することにより得る。
【0055】
粗大気孔12は、DMFC100の作動中に電解質本体部11の含水状況の変動に起因する電解質膜10の体積変化による応力を緩和させる。
【0056】
複数の粗大気孔12は、第2主面側領域R2よりも第1主面側領域R1に多く配置される。すなわち、第1主面側領域R1における粗大気孔12の数は、第2主面側領域R2における粗大気孔12の数よりも多い。本実施形態では、粗大気孔12は第2主面側領域R2に形成されていない。なお、粗大気孔12は第2主面側領域R2に形成されていてもよい。
【0057】
粗大気孔12の数は、次の方法で測定する。電解質膜10からサンプルを採取する。具体的には、電解質膜10の長手方向に等分した位置から、第1主面Aに対して垂直に電解質膜10を切断する。電解質膜10の厚さ方向に半分の位置から第1主面Aまでの領域を第1主面側領域R1とし、電解質膜10の厚さ方向に半分の位置から第2主面Bまでの領域を第2主面側領域R2とする。第1主面側領域R1の断面を含むサンプルと、第2主面側領域R2の断面を含むサンプルと、を作製する。サンプルを水で洗浄した後、乾燥させる。乾燥させたサンプルの観察面に対して、研磨する。研磨後、SEMを用いて、3000倍の倍率で、研磨された各観察面につき、任意の3視野(100μm×100μm)の反射電子像を取得する。
【0058】
取得した反射電子像において、電解質本体部11と粗大気孔12との明暗差は異なっており、電解質本体部11は“灰白色”、“灰色”、及び“黒色”の微細な粒の集合体として表示される。粗大気孔12は“黒色”で、電解質本体部11を構成する粒よりも大きな領域として表示される。MVTec社(ドイツ)製の画像解析ソフトHALCONを用いて画像の輝度を256階調に分類し2値化することで、電解質本体部11と粗大気孔12とを区別する。ただし、同様の結果が得られるのであれば、画像解析ソフトの種類は問わない。各視野において、粗大気孔12の数を測定する。各領域につき、合計12視野(4サンプルにつきそれぞれ3つの視野)における粗大気孔12の数の合計を、各領域の粗大気孔12の数と定義する。
【0059】
上記のとおり、アノード20側では下記の化学反応が起きている。
【0060】
・アノード20:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
つまり、アノード20側では、水が大量に供給されている。そのため、アノード20側に配置されている第1主面側領域R1では、電解質膜10が水を大量に含水する。含水することにより、電解質膜10に体積変化が生じる。ここで、粗大気孔12は、DMFC100の作動中に電解質本体部11の含水状況の変動に起因する電解質膜10の体積変化による応力を緩和させる。これにより、アノード20と電解質膜10との界面に応力が発生することを抑制できる。本実施形態の電解質膜10においては、粗大気孔12は、第2主面側領域R2よりも第1主面側領域R1に多く配置されるため、体積変化が大きい第1主面側領域R1の応力を効率的に緩和することができる。その結果、電解質膜10が損傷することを抑制することができる。
【0061】
少なくとも1つの粗大気孔12は、扁平状である。なお、粗大気孔12の長手方向は、第1主面Aの面方向に沿っている。粗大気孔12は、その長手方向の両端の角が丸められている。第1主面Aの面方向とは、第1主面Aの水平方向を意味する。
【0062】
粗大気孔12は、第1主面Aの面方向と平行に延びている。なお、
図3に示すように、粗大気孔12は、第1主面Aの面方向に対して傾いていてもよい。すなわち、粗大気孔12の長手方向は、第1主面Aの面方向に対して傾いていてもよい。例えば、粗大気孔12の長手方向は、第1主面Aの面方向に対して、10度以下程度、傾いていてもよい。これにより、厚み方向における応力の緩和をより向上させることができる。粗大気孔12は、電解質膜10の長手方向に延びていてもよい。
【0063】
[イオン伝導性物質15]
イオン伝導性物質15は、粗大気孔12内に配置される。イオン伝導性物質15は、液体である。イオン伝導性物質15は、リン酸である。
図4に示すように、電解質膜10の基材13が塩基性ポリマーである場合、酸塩基反応により、リン酸を保持することができる。そのため、電解質膜10からリン酸が流出するのを抑制することができる。なお、
図4において、基材13はポリベンゾイミダゾールである。
【0064】
イオン伝導性物質15は、DMFC100の発電中、アノード20側からカソード30側にプロトン(H+)を伝導させる。イオン伝導性物質15のプロトン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。イオン伝導性物質15のプロトン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば100mS/cmである。
【0065】
[電解質膜10の製造方法]
次に、電解質膜10の製造方法について説明する。以降に説明する電解質膜10の製造方法は、本実施形態の電解質膜10の製造方法の一例である。したがって、上述の構成を有する電解質膜10は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、本実施形態の電解質膜10の製造方法の好ましい一例である。
【0066】
本実施形態の電解質膜10は、第1電解質膜と第2電解質膜との2種類の電解質膜10を貼り合わせることにより製造する。第1電解質膜は、多孔質であり、粗大気孔12を含む。第2電解質膜は、緻密な膜であり、粗大気孔12を含まない。
【0067】
第1電解質膜の製造方法は、混合工程と、中間体製造工程と、緻密化工程と、を備える。以下、各工程について説明する。
【0068】
[混合工程]
混合工程では、セラミックスと樹脂と有機溶剤とを混合して混合物を準備する。混合物を準備する方法は特に限られないが、例えば、以下に説明する単純分散法を用いることができる。
【0069】
まず、基材13とする有機高分子を溶媒に溶解させることによってワニスを調製する。溶媒は、有機高分子を溶解可能で、膜化後に蒸発させられるものであればよい。溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジクロロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、i-プロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコールを用いることができる。
【0070】
次に、調製したワニスにセラミックス14を混合することによって混合物を調製する。ワニス、セラミックス14の混合方法としては、例えば、スターラ法、ボールミル法、ジェットミル法、ナノミル法、超音波などを用いることができる。
【0071】
[中間体製造工程]
中間体製造工程では、混合物を乾燥させて、中間体を製造する。中間体は気孔を有し、気孔の存在割合である気孔率は35%以上である。具体的には、ワニス、セラミックス14の混合物に対して、造孔材を添加する。造孔材を添加した混合物を基板上に膜化することで、中間体を得る。基板は、膜化後に混合物を剥がすことができるものであればよく、例えば、ガラス板、ポリテトラフルオロエチレンシート、ポリイミドシートなどを用いることができる。混合物の膜化方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0072】
気孔率は、以下のようにして算出する。乾燥後の中間体をΦ10mmに打ち抜き、マイクロメータで膜厚を測定する。測定した膜厚から、膜体積bを算出する。また、膜重量を測定する。膜重量を混合比率からセラミックス重量と樹脂重量に切り分け、それぞれの比重からセラミックス体積dと樹脂体積eを算出する。気孔率は、次の式(2)で定義される。
【0073】
(膜体積b-セラミックス体積d-樹脂体積e)/膜体積b×100 (2)
【0074】
中間体を製造する際、機械的に気体を混入する方法や、造孔材を化学的に分解させるなどの方法で中間体の気孔率を35%以上としてもよい。
【0075】
好ましくは、中間体の気孔率は、80%以下である。この場合、次工程の緻密化が容易になる。
【0076】
[緻密化工程]
緻密化工程では、100%以上の圧縮率で中間体を緻密化させることによって第1電解質膜を形成する。緻密化工程は、80~130℃の温度で行う。130℃以下の温度で中間体を緻密化した場合、電解質膜10の抵抗を高くすることがなく、導電性の低下を防ぐことができる。なお、緻密化設備内にルミラー(登録商標)2枚と、2枚のルミラーの間に中間体を配置したとき、圧縮率は、緻密化工程前の中間体膜厚をa、ルミラー厚をb、緻密化設備の中間体を挟む隙間の寸法をcとしたとき、次の式(3)で定義される。
【0077】
圧縮率=(緻密化工程前の中間体膜厚a+ルミラー厚b×2-緻密化設備の中間体を挟む隙間の寸法c)/緻密化工程前の中間体膜厚a×100 (3)
【0078】
式(3)で定義される圧縮率は、緻密化工程における圧縮条件を示している。この圧縮率を100%以上とすることによって、以下に説明するように、中間体を十分に圧縮することができる。
【0079】
まず、中間体は多孔質であるため、ルミラーよりも変形しやすい。そのため、ルミラーで挟んだ中間体を緻密化設備で緻密化すると、まずは中間体が圧縮され、中間体が十分に圧縮された後にルミラーが弾性変形する。すなわち、ルミラーが弾性変形することは、中間体が十分に圧縮されていることを意味する。ここで、圧縮率が100%とは、緻密化設備の中間体を挟む隙間の寸法cとルミラー2枚分の厚さ2bとが同じ値であることを意味する。このため、圧縮率が100%以上であればルミラーが弾性変形している、つまり、中間体が十分に圧縮されていることとなる。したがって、100%以上の圧縮率で中間体を緻密化することにより、中間体を十分に圧縮することができる。
【0080】
緻密化の方法は特に限定されないが、例えばロールプレスである。ロールプレスの場合、緻密化設備の中間体を挟む隙間の寸法cは2つのロールのギャップである。なお、中間体は多孔質で変形しやすいため、例えば中間体をルミラーで挟んだ積層体の厚みがロールのギャップの5倍以上であってもロールプレスすることができる。また、緻密化工程は、中間体を十分に圧縮できる方法であれば、上記の方法に限定されない。
【0081】
第2電解質膜の製造方法は、混合工程と、中間体製造工程と、緻密化工程と、を備える。混合工程は、第1電解質膜の混合工程と同様である。
【0082】
中間体製造工程では、造孔材は添加しない。そのため、中間体の気孔率は、35%未満である。中間体の気孔率が低いので、緻密化工程での圧縮率は100%以上でよい。それ以外は、第1電解質膜の中間体製造工程及び緻密化工程と同様である。
【0083】
上記のように作成した第1電解質膜と第2電解質膜とを、貼り合わせる。貼り合わせる方法は公知の方法でよい。たとえば、公知の接着剤を用いて2枚の電解質膜10を貼り合わせる方法、電解質膜10と同種の高分子の溶液によって貼り合わせる方法、ホットプレス法などがある。ホットプレス法の場合、具体的には、重ねた第1電解質膜と第2電解質膜とをルミラー(登録商標)で挟み、ホットプレス機の圧板間に置く。圧板を所定の温度まで加熱した後、重ねた電解質膜をプレスする。所定の時間保持した後、圧板を開放して電解質膜10を取り出し、室温まで冷却する。以上の工程により電解質膜10を形成することができる。
【0084】
貼り合わせて得られた電解質膜10を、リン酸に含浸させる。これによって、粗大気孔12内にリン酸が配置される。リン酸は、好ましくは、85%のリン酸水溶液である。また、基材13が塩基性ポリマーである場合には、電解質膜10をリン酸に含浸させることによって、リン酸が塩基性ポリマーにドープされる。リン酸は、塩基性ポリマーの繰り返し単位あたり2~10の分子数がドープされるよう設定する。
【0085】
[実施形態の変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0086】
[変形例1]
上記実施形態では、セラミックス14はイオン伝導性であったが、これに限られない。セラミックス14は、イオン伝導性でなくてもよい。この場合、多孔質の基材13を用いて、基材13の細孔にイオン伝導性物質15を含浸させることができる。ここで、細孔とは、断面積が0.1~1.0μm2の気孔を意味する。なお、細孔は1.0μm2以下であるため、電解質膜10の強度は低下しない。細孔の断面積は、SEM観察画像において、セラミックス14及び樹脂よりも輝度が低く表示される部分の断面積を画像解析により算出することにより得られる。多孔質の基材13は、造孔材を用いることで製造することができる。
【0087】
[変形例2]
上記実施形態では、第1主面Aはアノード20側を向き、第2主面Bはカソード30側を向くとしたが、これに限らない。例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC)に電解質膜10を用いる場合、第1主面Aがカソード30側を向き、第2主面Bがアノード20側を向いてもよい。PEFCは、下記の化学反応式に基づいて発電する。
【0088】
・アノード20:H2→2H++2e-
・カソード30:O2+4H++4e-→2H2O
【0089】
上記化学反応式に示すとおり、PEFCでは、アノード側には水が存在しない。一方、カソード側では、水が生成される。第1主面Aがカソード30側を向いていれば、カソード30側で発生する水を電解質膜10が含有することに起因する電解質膜10の体積変化を効率的に緩和することができる。
【0090】
[変形例3]
上記実施形態では、燃料電池の一種であるDMFCに電解質膜10を適用したが、これに限られない。電解質膜10は、電気化学セル全般に適用できる。例えば、電解質膜10は、電解セルに適用できる。
【実施例0091】
以下において、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0092】
[サンプルの作製]
試験番号1では、第1電解質膜は、以下のとおりに作製した。表1に記載のとおりセラミック粒子(平均粒径1.0μm以上)と基材原料とを配合して混合した。混合物をジメチルアセトアミド(DMAc)50mLに添加し、スラリーを作製した。造孔材としてテクポリマーBM30X-5を添加した。このスラリーをPETフィルム上に印刷法によって塗布して、熱処理(30分、90℃)を施すことによって中間体を形成した。スラリーの塗布量を調整することにより、中間体の膜厚を80μmとした。中間体をPETフィルムから剥離した。中間体の気孔率は、60~80%であった。中間体に対して180℃、圧縮率200%でロールプレスを施した。
【0093】
【0094】
次に、第2電解質膜を作製した。第2電解質膜は、次の点以外は、第1電解質膜と同様に作製した。造孔材は、添加しなかった。中間体の気孔率は、35%以下であった。中間体の膜厚は、50μmであった。ロールプレス時の圧縮率は、200%であった。
【0095】
第1電解質膜と第2電解質膜とをホットプレス(1時間、60℃、3MPa)することによって電解質膜10を作製した。電解質膜10の厚さは、60μmであった。なお、第1電解質膜と第2電解質膜とは、平面視において実質的に同じ大きさである。電解質膜10を、85%のリン酸水溶液に含浸させた。これによって、第1電解質膜の粗大気孔内にイオン伝導性物質であるリン酸を配置した。
【0096】
試験番号2は、次の点以外は、試験番号1の第2電解質膜と同様に作製した。中間体の膜厚は、80μmであった。ロールプレス時の圧縮率は、200%であった。第1電解質膜は貼り合わせず、第2電解質膜だけで電解質膜とした。電解質膜の厚さは、60μmであった。
【0097】
試験番号3は、次の点以外は、試験番号1の第1電解質膜と同様に作製した。中間体の膜厚は、120μmであった。ロールプレス時の圧縮率は、200%であった。第2電解質膜は貼り合わせず、第1電解質膜だけで電解質膜とした。電解質膜の厚さは、60μmであった。
【0098】
[粗大気孔の数の測定]
第1主面側領域及び第2主面側領域において、粗大気孔の数を測定した。
【0099】
[電解質膜破損評価]
炭素に担持されたカソード触媒(Pt/C)(Pt担持量50wt%(田中貴金属工業(株)社製TEC10E50E)と、バインダとしてのPVDF粉末とを準備した。そして、カソード触媒:PVDF粉末:水の重量比が、9wt%:0.9wt%:90wt%の比率となるように混合することによって、カソードペーストを調製した。調整したカソードペーストをPETフィルムに塗布して乾燥させてカソード転写フィルムを作製した。また、炭素に担持されたアノード触媒(Pt-Ru/C)Pt-Ru担持量54wt%(田中貴金属工業(株)社製TEC61E54)と、バインダとしてのPVDF粉末とを準備した。そして、アノード触媒:PVDF粉末:水の重量比が、9wt%:0.9wt%:90wt%の比率となるように混合することによって、アノードペーストを調製した。調整したアノードペーストをPETフィルムに塗布して乾燥させてアノード転写フィルムを作製した。
【0100】
各電解質膜を挟むように、カソード転写フィルム及びアノード転写フィルムを配置した。この際、試験番号1及び試験番号2では、第1電解質膜がアノード側に配置されるようにした。そして、カソード転写フィルム側、及びアノード転写フィルム側からホットプレス(120℃、1分、3MPa)を行うことによって、カソード転写フィルムのカソードを電解質膜上に転写形成するとともに、アノード転写フィルムのアノードを電解質膜上に転写形成して、燃料電池を作製した。なお、各実施例において、電解質膜の構成以外は、基本的に同じ構成とした。
【0101】
まず、アノードにメタノールを含む燃料を供給するとともに、カソードに空気を供給しながら、アルカリ形燃料電池を1時間で120℃まで昇温して1時間保持した後に室温まで冷却する工程を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。各実施例につき、電解質膜は5枚ずつ用いて試験を行った。
【0102】
熱サイクル試験後の各電解質膜における破損の有無を光学顕微鏡にて確認し、その結果を表1に示した。なお、表1において、「〇」は、試験を実施した5枚の電解質膜中1枚も破損が生じていないことを意味し、「×」は5枚中1枚でも電解質膜に破損が生じていることを意味する。
【0103】
[電解質膜10の強度の測定]
電解質膜10の強度を、以下のとおり評価した。JISZ1707の試験方法に準拠して、Φ10mmの穴が空いた板に電解質膜をはさみ、Φ0.5mmの針で穴の真ん中を突き刺して割れたときの最大破断荷重を測定した。
【0104】
[試験結果]
表1より、断面積が1.5μm2以上の粗大気孔12が、第2主面側領域R2よりも第1主面側領域R1に多く配置されるように構成することで、電解質膜10の破損を抑制できることが分かった。