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特開2023-152611エマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152611
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】エマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231005BHJP
   C09D 11/023 20140101ALI20231005BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231005BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231005BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20231005BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/00
C09D11/023
C09D5/02
C09D201/00
C09D7/65
C08L71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171692
(22)【出願日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2022056575
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 優作
(72)【発明者】
【氏名】浅田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BC031
4J002CH022
4J002GH01
4J038CC021
4J038CG141
4J038DD001
4J038DF002
4J038DG001
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA14
4J038PB04
4J038PC10
4J039AB08
4J039AD03
4J039AD10
4J039AE04
4J039AE06
4J039BE22
(57)【要約】
【課題】廃棄プラスチック等の樹脂を出発物質として用いることができ、モノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有し、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得るエマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法を提供する。
【解決手段】コア部およびシェル部を有するコアシェル構造を有し、コア部は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含み、シェル部は、第1の界面活性剤と、第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部およびシェル部を有するコアシェル構造を有し、
前記コア部は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含み、
前記シェル部は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、
前記第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、
前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョン。
【請求項2】
前記SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、またはポリエステルのうち、少なくとも1種を含む、請求項1記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20である(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、少なくとも1種を含む、請求項1または2記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記シェル部は、スチレンマレイン酸またはロジン類のうち、少なくともいずれか一方を含む、請求項1または2記載のエマルジョン。
【請求項5】
請求項1または2記載のエマルジョンを含む、水性印刷インク組成物。
【請求項6】
請求項1または2記載のエマルジョンを含む、オーバープリントニス組成物。
【請求項7】
SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を、前記溶剤に溶解してワニスを調製するワニス調製工程と、
分散剤を含む水相に、前記ワニスを混合し、水中油型エマルジョンを作製する第1乳化工程と、
前記水中油型エマルジョンを微細化する第2乳化工程と、
減圧留去により前記溶剤を留去する溶剤除去工程と、を有し、
前記分散剤は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、
前記第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、
前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョンの製造方法。
【請求項8】
SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を、前記溶剤に溶解してワニスを調製するワニス調製工程と、
前記ワニスに分散剤を加え、加温する加温工程と、
加温された前記ワニスに連続的に水相を添加し、エマルジョンを油相から水相へ転相させる乳化工程と、
減圧留去により前記溶剤を留去する溶剤除去工程と、を有し、
前記分散剤は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、
前記第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、
前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有し、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得るエマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スチレンモノマーを出発物質として得られるポリスチレンエマルジョンは、種々の分野で使用されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-40994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリスチレン等のプラスチックは、各種容器や発泡スチロール、食品トレー、カラトリー等として汎用されている。近年、石油資源の使用量削減や、海洋プラスチックごみの問題等を受け、ポリスチレン等の廃棄プラスチックを削減したり、再利用したりする技術が求められている。しかしながら、廃棄プラスチックは、リサイクルの過程で品質が劣化しやすい。そのため、容器包装分野などの要求品質の高い分野では、廃棄プラスチックは、リサイクルが難しかった。また、例えばポリスチレンをリサイクルする場合、リサイクルに際して、ポリマーであるポリスチレンをポリスチレンモノマーに分解してから再利用するのは、手間やコストがかかる上、そのような作業にも多くのエネルギー資源が必要となる。
【0005】
一方、水性印刷インクの分野では、スチレンモノマーを出発物質としてポリスチレンエマルジョンを調製し、得られたポリスチレンエマルジョンを用いた水性印刷インクがある。このような水性印刷インクは、濃度、透明性等の特性が優れる。しかしながら、廃棄プラスチックを用いて、このような特性の優れた水性印刷インクを得ることは、極めて困難であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、廃棄プラスチック等の樹脂を出発物質として用いることができ、モノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有し、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得るエマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、界面活性剤として所定のHLBを示す異なる2種の界面活性剤を併用し、コアシェル構造を採用したエマルジョンが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0008】
(1)コア部およびシェル部を有するコアシェル構造を有し、前記コア部は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含み、前記シェル部は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、前記第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョン。
【0009】
このような構成によれば、エマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、本発明のエマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。また、エマルジョンは、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、エマルジョンは、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【0010】
(2)前記SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、またはポリエステルのうち、少なくとも1種を含む、(1)記載のエマルジョン。
【0011】
このような構成によれば、エマルジョンは、乳化状態が安定であり、増粘や粒子の析出などが生じない。
【0012】
(3)前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20である(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、少なくとも1種を含む、(1)または(2)記載のエマルジョン。
【0013】
このような構成によれば、エマルジョンは、微粒化し、乾燥皮膜の光沢等が優れる。
【0014】
(4)前記シェル部は、スチレンマレイン酸またはロジン類のうち、少なくともいずれか一方を含む、(1)~(3)のいずれかに記載のエマルジョン。
【0015】
このような構成によれば、エマルジョンは、透明性や耐スクラッチ性等の特性がより優れる。
【0016】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載のエマルジョンを含む、水性印刷インク組成物。
【0017】
このような構成によれば、水性印刷インク組成物は、濃度、透明性、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性等の特性が優れる。
【0018】
(6)(1)~(4)のいずれかに記載のエマルジョンを含む、オーバープリントニス組成物。
【0019】
このような構成によれば、オーバープリントニス組成物は、光沢、耐スクラッチ性等の特性が優れる。
【0020】
(7)SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を、前記溶剤に溶解してワニスを調製するワニス調製工程と、分散剤を含む水相に、前記ワニスを混合し、水中油型エマルジョンを作製する第1乳化工程と、前記水中油型エマルジョンを微細化する第2乳化工程と、減圧留去により前記溶剤を留去する溶剤除去工程と、を有し、前記分散剤は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、前記第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョンの製造方法。
【0021】
このような構成によれば、エマルジョンの製造方法は、出発物質としてSP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を用いてエマルジョンを製造し得る。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、本発明のエマルジョンの製造方法は、環境問題等の解決に貢献し得る。また、得られるエマルジョンは、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、得られるエマルジョンは、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【0022】
(8)SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を、前記溶剤に溶解してワニスを調製するワニス調製工程と、前記ワニスに分散剤を加え、加温する加温工程と、加温された前記ワニスに連続的に水相を添加し、エマルジョンを油相から水相へ転相させる乳化工程と、減圧留去により前記溶剤を留去する溶剤除去工程と、を有し、前記分散剤は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含み、前記第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含み、前記第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む、エマルジョンの製造方法。
【0023】
このような構成によれば、エマルジョンの製造方法は、出発物質としてSP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を用いてエマルジョンを製造し得る。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、本発明のエマルジョンの製造方法は、環境問題等の解決に貢献し得る。また、得られるエマルジョンは、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、得られるエマルジョンは、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、廃棄プラスチック等の樹脂を出発物質として用いることができ、モノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有し、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得るエマルジョン、水性印刷インク組成物、オーバープリントニス組成物、エマルジョンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<エマルジョン>
本発明の一実施形態のエマルジョンは、コア部およびシェル部を有するコアシェル構造を有する。コア部は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。シェル部は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含む。第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含む。第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む。以下、それぞれについて説明する。
【0026】
(エマルジョンのコア部)
コア部は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体またはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、またはポリエステルのうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、エマルジョンは、乳化状態が安定であり、増粘や粒子の析出などが生じない。
【0027】
なお、本実施形態の「SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂」において、「溶解可能」とは、10~60℃で溶剤100gに樹脂が15g以上溶けることをいう。「SP値が8~10である溶剤」は、一例を挙げると、酢酸ブチル(SP値=8.5)、酢酸エチル(SP値=9.1)、キシレン(SP値=8.8)、トルエン(SP値=8.8)、ベンゼン(SP値=9.2)、メチルエチルケトン(SP値=9.3)等である。
【0028】
また、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、合成品であってもよく、廃棄プラスチック等から回収された樹脂であってもよい。廃棄プラスチック等から回収された樹脂が使用される場合、本実施形態のエマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。
【0029】
本実施形態のエマルジョンのコア部は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂のほかに、上記以外のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、これらの混合樹脂等を含んでもよい。
【0030】
ポリ(メタ)アクリレート樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ポリ(メタ)アクリレート樹脂は、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等の、アクリル酸エステル類およびメタアクリル酸エステル類、3-エトキシプロピルアクリレート、3-エトキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等の、アクリル酸エステル誘導体およびメタクリル酸エステル誘導体、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル類およびアクリル酸アラルキルエステル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類のポリマーである。
【0031】
ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、エチレン-環状オレフィン共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン等である。
【0032】
ポリプロピレン樹脂は、プロピレンを単独重合させたアイソタクティックホモポリプロピレン、シンジオタクティックホモポリプロピレン等のプロピレン単独重合体、プロピレンを主体とし、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン等を共重合させたプロピレン共重合体等である。
【0033】
コア部におけるSP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、コア部におけるSP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂の含有量は、100質量%であってもよく、80質量%以下であることが好ましい。ポリスチレンの含有量が上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、乳化状態が安定であり粒子径が微細になる。
【0034】
(エマルジョンのシェル部)
シェル部は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含む。
【0035】
・第1の界面活性剤
第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含む。第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体は特に限定されない。一例を挙げると、第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体は、下記式に示す構造を有する。
【0036】
【化1】
【0037】
上記式中、R1、R2はそれぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキル基または水素原子を示す。炭素原子数1~4のアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等である。(x+z)はEO(エチレンオキシド)構成単位の付加モル数を表し、yはPO(プロピレンオキシド)構成単位の付加モル数を表す。[(x+z)/(x+z+y)]は0.2~0.8であり、好ましくは0.4~0.7である。また60≦x+y+z≦100である。
【0038】
第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体のHLBは、14以上であればよく、15以上であることが好ましい。また、HLBは、20以下であればよく、19以下であることが好ましい。HLBが14未満である場合、得られるエマルジョンは、乳化状態が不安定になりやすい。なお、HLBとは、界面活性剤の分野で利用されている、分子の親水性部分と親油性部分とのバランス(hydrophile-lipophile balance)を表すものであり、下記に示すグリフィン式(一定の油に対する乳化効率の測定から求めた実験値と親水部の重量分率に基づく式)を適用して求めることができる。
[グリフィンの式]HLB=(100/5)×親水基重量/(親水基重量+疎水基重量)
【0039】
上記HLBを満たす第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体の具体例は、(株)ADEKA製のアデカプルロニックシリーズ、三洋化成工業(株)製のニューポールシリーズ、BASF社製のPLURONICシリーズ等である(プルロニックおよびPLURONICは登録商標である)。
【0040】
第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることが更に好ましい。また、第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)は、50,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが更に好ましい。Mwが上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、安定に乳化されやすい。なお、本実施形態において、Mwは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの重量平均分子量である。
【0041】
第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体は、ブロック共重合体であることにより、他の重合形式(グラフト共重合、ランダム共重合等)である場合と比較して、粒子間架橋が生じにくく、親水性成分が液中に効率的に拡がるため乳化状態が安定となる。
【0042】
シェル部における第1の界面活性剤の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、シェル部における第1の界面活性剤の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。第1の界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、乳化状態が安定であり、成膜した塗膜の耐水性が良好である。
【0043】
・第2の界面活性剤
第2の界面活性剤は、第1の界面活性剤とは異なる。また、第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む。
【0044】
第2の界面活性剤のHLBは、14以上であればよく、15以上であることが好ましい。また、HLBは、20以下であればよく、19以下であることが好ましい。HLBが14未満である場合、得られるエマルジョンは、乳化状態が不安定になりやすい。
【0045】
第2の界面活性剤は、HLBが14~20である(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、エマルジョンは、微粒化し、乾燥皮膜の光沢等が優れる。
【0046】
上記HLBを満たす第2の界面活性剤の具体例は、(株)ADEKA製のアデカプルロニックシリーズ、三洋化成工業(株)製のニューポールシリーズ、BASF社製のPLURONICシリーズ、花王(株)製のエマルゲンシリーズ、エマノーンシリーズ、レオドールシリーズ、クラリアント社製のEmulsogenシリーズ、阪本薬品工業(株)製のポリグリセリン脂肪酸エステル等である。
【0047】
第2の界面活性剤の質量平均分子量(Mw)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることが更に好ましい。また、第2の界面活性剤の質量平均分子量(Mw)は、50,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが更に好ましい。Mwが上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、安定に乳化されやすい。
【0048】
第2の界面活性剤がブロック共重合体である場合、ブロック共重合体は、他の重合形式(グラフト共重合、ランダム共重合等)である場合と比較して、粒子間架橋が生じにくく、親水性成分が液中に効率的に拡がるため乳化状態が安定となる。
【0049】
シェル部における第2の界面活性剤の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、シェル部における第2の界面活性剤は、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。第2の界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、乳化状態が安定であり、成膜した塗膜の耐水性が良好である。
【0050】
・その他の成分
シェル部は、上記した第1の界面活性剤および第2の界面活性剤のほかに、その他の成分を含んでもよい。その他の成分は、スチレンマレイン酸、スチレンアクリル酸、ロジン類、脂肪酸トリグリセリド、セルロースエーテル等である。これらの中でも、シェル部は、得られるエマルジョンの透明性や耐スクラッチ性等の特性がより優れる点から、スチレンマレイン酸またはロジン類のうち少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
【0051】
スチレンマレイン酸は、スチレンとマレイン酸とが共重合した水性樹脂であり、スチレンマレイン酸モノブチルエステルコポリマー等である。
【0052】
スチレンマレイン酸が含有される場合、スチレンマレイン酸の含有量は、シェル部中、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、スチレンマレイン酸の含有量は、シェル部中、90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。シェル部におけるスチレンマレイン酸の含有量が上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、透明性や耐スクラッチ性等の特性がより優れる。
【0053】
ロジン類は特に限定されない。一例を挙げると、ロジン類は、ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステルおよびその水添物または重合物、ロジンペンタエリスリトールおよびその水添物または重合物等である。これらの中でも、ロジン類は、重合ロジンまたはロジンエステルであることが好ましい。
【0054】
ロジン類が含有される場合、ロジン類の含有量は、シェル部中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、ロジン類の含有量は、シェル部中、70質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。シェル部におけるロジン類の含有量が上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、透明性や耐スクラッチ性等の特性がより優れる。
【0055】
脂肪酸トリグリセリドは特に限定されない。一例を挙げると、脂肪酸トリグリセリドは、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリウンデカン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリパルミトレイン酸グリセリル、トリアセチルヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリアセチルリシノール酸グリセリル、トリヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/イソステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ牛脂脂肪酸グリセリル、トリ(牛脂脂肪酸/ミンク油脂肪酸/タラ肝油脂肪酸)グリセリル、トリ(ミンク油脂肪酸/パルミチン酸)グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、トリラノリン脂肪酸グリセリル、トリ(リシノレイン酸/カプロン酸/カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ脂肪酸(C10-18)グリセリル、トリ脂肪酸(C12-18)グリセリル、水添トリ脂肪酸(C12-18)グリセリル、トリ脂肪酸(C12-20)グリセリル、トリ脂肪酸(C18-36)グリセリル、トリ分岐脂肪酸(C10-40)グリセリル、トリ分岐脂肪酸(C12-31)グリセリル、(水添ロジン/ジイソステアリン酸)グリセリル、トリ(パーム油脂肪酸/パーム核油脂肪酸/オリーブ油脂肪酸/マカデミアナッツ油脂肪酸/アブラナ種子油脂肪酸)グリセリル、トリ(ヒマシ脂肪酸/オリーブ脂肪酸)グリセリル、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、トリ(ミンク脂肪酸/パルミチン酸)グリセリル等である。これらの中でも、脂肪酸トリグリセリドは、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルであることが好ましい。
【0056】
脂肪酸トリグリセリドが含有される場合、脂肪酸トリグリセリドの含有量は、シェル部中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、脂肪酸トリグリセリドの含有量は、シェル部中、70質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。シェル部における脂肪酸トリグリセリドの含有量が上記範囲内であることにより、得られるエマルジョンは、透明性や耐スクラッチ性等の特性がより優れる。
【0057】
なお、シェル部は、上記したスチレンマレイン酸等の成分を溶解したり、中和したりするために、塩基性化合物が併用されてもよい。塩基性化合物は特に限定されない。一例を挙げると、塩基性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基性化合物や、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等である。有機アミンは、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等である。
【0058】
エマルジョン全体の説明に戻り、本実施形態では、異なる2種の界面活性剤(第1の界面活性剤および第2の界面活性剤)が併用されることにより、例えば1種類の界面活性剤が用いられる場合と比較して、得られるエマルジョンの乳化安定性が優れる。
【0059】
なお、異なる2種の界面活性剤が用いられることにより、得られるエマルジョンの乳化安定性が優れる機序は、分子量が異なる界面活性剤を用いたことで、界面活性剤が効率よくコア部表面に吸着したためであると考えられる。
【0060】
本実施形態において、第1の界面活性剤および第2の界面活性剤の好適な組み合わせは、アデカプルロニックF-108(HLB:15.8)とアデカプルロニックF-68(HLB:16.0)との組み合わせ、アデカプルロニックF-108とニューポールPE78(HLB:15.6)との組み合わせ、ニューポールPE128とアデカプルロニックF108(HLB:15.8)との組み合わせ、ニューポールPE108とアデカプルロニックF108との組み合わせ等である。これらの組み合わせによれば、得られるエマルジョンは、乳化安定性がより優れる。
【0061】
エマルジョンは、水を含む。水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、エマルジョンは、相転移を充分に進行させることができ、安定性が優れる。
【0062】
エマルジョンの平均粒子径は、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、エマルジョンの平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。本実施形態のエマルジョンは、従来のスチレンモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、粒子径が小さい。そのため、エマルジョンは、乳化状態が安定であり、優れた光沢、透明性、耐スクラッチ性等の特性を有する。なお、エマルジョンの平均粒子径は、粒度分布計(マイクロトラックUPA、日機装(株)製)を用いて測定することができる。
【0063】
以上、本実施形態のエマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、エマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。また、エマルジョンは、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、エマルジョンは、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【0064】
<エマルジョンの製造方法>
本発明の一実施形態のエマルジョンの製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、エマルジョンは、強制乳化または転送乳化を行うことにより製造することが好ましい。
【0065】
(強制乳化)
エマルジョンを強制乳化により製造する場合、エマルジョンの製造方法は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を溶剤に溶解してワニスを調製するワニス調製工程と、分散剤を含む水相に、ワニスを混合し、水中油型エマルジョンを作製する第1乳化工程と、水中油型エマルジョンを微細化する第2乳化工程と、減圧留去により溶剤を留去する溶剤除去工程とを有する。分散剤は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含む。第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含む。第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む。
【0066】
・ワニス調製工程
ワニス調製工程は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を溶剤に溶解してワニスを調製する工程である。溶剤は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤は、酢酸エチルなどのエステル類、トルエンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトンなどのケトン類等である。
【0067】
SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等から回収された樹脂ペレットであってもよい。
【0068】
SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂に対する溶剤の配合量は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤の配合量は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂100質量部に対して、300~500質量部である。
【0069】
溶解条件は特に限定されない。一例を挙げると、溶解温度は、20~40℃であり、溶解時間は、10~60分である。
【0070】
・第1乳化工程
第1乳化工程は、分散剤を含む水相に、ワニスを混合し、水中油型エマルジョンを作製する工程である。なお、この第1乳化工程において得られる水中油型エマルジョンは、安定な乳化物ではなく、乳化状態または懸濁状態として存在する。
【0071】
分散剤は、エマルジョンの実施形態に関連して上記した第1の界面活性剤と、第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含む。
【0072】
水相中の分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、第1の界面活性剤の含有量は、水相中、0.5質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましい。また、第1の界面活性剤の含有量は、水相中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。また、第2の界面活性剤の含有量は、水相中、0.5質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましい。また、第2の界面活性剤の含有量は、水相中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
ワニスに対する水相の配合量は特に限定されない。一例を挙げると、水相の配合量は、ワニス100質量部に対して、80~200質量部である。
【0074】
ワニスと水相との混合条件は特に限定されない。一例を挙げると、混合条件は、常温常圧下、ワニスを回転数4,000rpmで攪拌中に水相を添加する方法である。混合は、ホモディスパー(ラボ・リューション、プライミクス(株)製)を用いて実施し得る。
【0075】
・第2乳化工程
第2乳化工程は、水中油型エマルジョンを微細化する工程である。
【0076】
微細化は、高圧乳化機(Panda Plus 2000、GEA Niro Soavi)を用いて、500barの圧力を5パスすることにより実施し得る。
【0077】
・溶剤除去工程
溶剤除去工程は、減圧留去により溶剤を留去する工程である。減圧留去は、従来の公知の機器(ダイヤフラムポンプ等)を用いて実施され得る。
【0078】
以上の工程を経て、エマルジョンが得られる。得られたエマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、エマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。
【0079】
また、本実施形態の強制乳化の方法により得られたエマルジョンは、平均粒子径が0.5μm~5μmの範囲を採り得る。なお、エマルジョンの平均粒子径は、粒度分布計(マイクロトラックUPA、日機装(株)製)を用いて測定することができる。このように、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、エマルジョンは、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【0080】
(転相乳化)
エマルジョンを転相乳化により製造する場合、エマルジョンの製造方法は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を溶剤に溶解してワニスを調製するワニス調製工程と、ワニスに分散剤を加え、加温する加温工程と、加温したワニスに、連続的に水相を添加することで、エマルジョンを油相から水相へ転相させる乳化工程と、減圧留去により溶剤を留去する溶剤除去工程とを有する。分散剤は、第1の界面活性剤と、前記第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤とを含む。第1の界面活性剤は、HLBが14~20である第1の(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロック共重合体を含む。第2の界面活性剤は、HLBが14~20であるノニオン性界面活性剤を含む。
【0081】
・ワニス調製工程
ワニス調製工程は、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を溶剤に溶解してワニスを調製する工程である。ワニス調製工程は、強制乳化に関連して上記したワニス調製工程と同様である。
【0082】
・加温工程
加温工程は、ワニスに分散剤を加え、加温する工程である。分散剤は、強制乳化に関連して上記した分散剤と同様である。
【0083】
ワニスに対する分散剤の配合量は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤の配合量は、ワニス100質量部に対して、2~20質量部である。
【0084】
ワニスと分散剤との混合条件は特に限定されない。混合は、ホモディスパー(ラボ・リューション、プライミクス(株)製)を用いて実施し得る。
【0085】
加温条件は特に限定されない。一例を挙げると、加温条件は、溶液を攪拌しながら1℃/分の温度上昇速度である。加温は、マントルヒーター(GB-3、大科電器(株)製)を用いて実施し得る。
【0086】
・乳化工程
乳化工程は、加温したワニスに、連続的に水相を添加することで、エマルジョンを油相から水相へ転相させる工程である。具体的には、上記マントルヒーターを用いて加温後の混合液(ワニスと分散剤との混合液)に対し、回転数1,000~10,000rpmで攪拌しながらゆっくりと水相を添加する。これにより、エマルジョンは、油相から水相に転相される。
【0087】
・溶剤除去工程
溶剤除去工程は、減圧留去により溶剤を留去する工程である。減圧留去は、従来の公知の機器(ダイヤフラムポンプ等)を用いて実施され得る。
【0088】
以上の工程を経て、エマルジョンが得られる。得られたエマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、エマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。
【0089】
また、本実施形態の転相乳化の方法により得られたエマルジョンは、平均粒子径が0.1μm~2μmの範囲を採り得る。なお、エマルジョンの平均粒子径は、粒度分布計(マイクロトラックUPA、日機装(株)製)を用いて測定することができる。このように、従来のスチレンモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、エマルジョンは、水性印刷インク組成物やオーバープリントニス組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【0090】
<水性印刷インク組成物>
本発明の一実施形態の水性印刷インク組成物(以下、インク組成物ともいう)は、上記エマルジョンを含む。
【0091】
(エマルジョン)
エマルジョンは、エマルジョンの実施形態に関連して上記したエマルジョンと同様である。
【0092】
エマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、エマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。また、エマルジョンは、従来のスチレンモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、エマルジョンは、水性印刷インク組成物として使用された場合であっても優れた特性を発揮し得る。
【0093】
エマルジョンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、エマルジョンの含有量は、インク組成物中、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、エマルジョンの含有量は、インク組成物中、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。エマルジョンの含有量が上記範囲内であることにより、得られるインク組成物は、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンを用いる場合と同様に、濃度、透明性、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性等の特性が優れる。
【0094】
(その他の成分)
インク組成物は、上記したエマルジョン以外に、水性印刷インク組成物の分野で一般使用され得る他の成分を含んでもよい。他の成分は、例えば、着色剤、顔料分散用樹脂、水性媒体、各種任意成分である。
【0095】
・着色剤
着色剤は特に限定されない。一例を挙げると、着色剤は、無機顔料であってもよく、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が例示される。また、着色剤は、有機顔料であってもよく、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が例示される。
【0096】
着色剤が配合される場合、着色剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、着色剤の含有量は、インク組成物中、3質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましい。また、着色剤の含有量は、インク組成物中、60質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。着色剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインク組成物は、所望の印刷濃度の印刷物が得られやすく、かつ、インク組成物の粘度が適切であり、取扱性が優れる。
【0097】
・顔料分散用樹脂
顔料分散用樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、顔料分散用樹脂は、アルカリ可溶性樹脂等である。
【0098】
アルカリ可溶性樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらのアルカリ可溶性樹脂を合成するための材料は、特開2000-94825号公報に開示されているものが例示される。
【0099】
アクリル系共重合樹脂は、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下、溶媒中で重合して得られるもの等である。
【0100】
アニオン性基含有単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体等である。
【0101】
カルボキシル基を有する単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマル酸、マレイン酸ハーフエステル等である。スルホン酸基を有する単量体は、スルホエチルメタクリレート等である。ホスホン酸基を有する単量体は、ホスホノエチルメタクリレート等である。
【0102】
アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体は、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。疎水性基含有単量体は、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート等)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテル等)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレート等);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等である。
【0103】
アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体は、水性媒体中でアルカリ可溶性樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0104】
親水性基含有単量体は、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキシド付加物および/またはプロピレンオキシド付加物等;塩基性基含有単量体として、例えば、1-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニル-3-ピロリドン等のビニルピロリドン類、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のビニルピリジン類、1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール等のビニルイミダゾール類、3-ビニルピペリジン、N-メチル-3-ビニルピペリジン等のビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(メタ)アクリルアミド、N-エトキシ(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類等;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類等;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等である。
【0105】
疎水性基含有単量体、および親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類等である。
【0106】
顔料分散剤が配合される場合、顔料分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、顔料分散剤の含有量は、インク組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、顔料分散剤の含有量は、インク組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。顔料分散剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインク組成物は、塗膜の光沢と耐水性とのバランスが優れる。
【0107】
・水性媒体
本実施形態のインク組成物は、水のほか、インク組成物の性能を低下させない範囲で、その他の水性媒体が配合されてもよい。水性媒体は特に限定されない。一例を挙げると、水性媒体は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール、グリセリン等のアルコールおよび多価アルコール系有機溶剤等である。
【0108】
水性媒体が配合される場合、水性媒体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水性媒体の含有量は、インク組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、水性媒体の含有量は、インク組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。水性媒体の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインク組成物は、洗浄性と乾燥性とのバランスが優れる。
【0109】
・添加剤
インク組成物は、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。添加剤は特に限定されない。一例を挙げると、添加剤は、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子および粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために苛性ソーダ等の塩基性化合物、造膜エマルジョン等の各種添加剤である。
【0110】
<水性印刷インク組成物の製造方法>
インク組成物は、従来法により作製し得る。一例を挙げると、インク組成物は、着色剤と、顔料分散用樹脂と、水を含有する溶剤とを混合した後、ビーズミル、パールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等の各種練肉機を利用して練肉し、その後、エマルジョン等の材料および任意の添加剤を混合することにより作製し得る。インク組成物は、必要に応じて、水を含む溶剤により希釈されてもよい。
【0111】
得られたインク組成物は、紙や樹脂の表面への印刷、特に、紙コップ、紙皿等の紙製容器等の紙器、または表面が樹脂層で被覆された紙製容器、食品パッケージの薄紙またはそれらの材料に、各種印刷機で印刷する方法により用いられ得る。
【0112】
<オーバープリントニス組成物>
本発明の一実施形態のオーバープリントニス組成物(以下、ニス組成物ともいう)は、上記エマルジョンを含む。
【0113】
(エマルジョン)
エマルジョンは、エマルジョンの実施形態に関連して上記したエマルジョンと同様である。
【0114】
エマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を含む。SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂は、廃棄プラスチック等であってもよい。そのため、エマルジョンは、環境問題等の解決に貢献し得る。また、エマルジョンは、従来のモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンと同様に、乳化状態が安定であり、優れた光沢等の特性を有する。また、エマルジョンは、オーバープリントニス組成物として使用された場合であっても優れた光沢と耐スクラッチ性等の特性を発揮し得る。
【0115】
エマルジョンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、エマルジョンの含有量は、ニス組成物中、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、エマルジョンの含有量は、ニス組成物中、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。エマルジョンの含有量が上記範囲内であることにより、得られるニス組成物は、従来のスチレンモノマーを出発物質として調製されたエマルジョンを用いる場合と同様に、印刷適正や塗膜耐性等の特性が優れる。
【0116】
(その他の成分)
ニス組成物は、上記したエマルジョン以外に、オーバープリントニス組成物の分野で一般使用され得る他の成分を含んでもよい。他の成分は、例えば、水性樹脂、水性媒体、各種任意成分である。
【0117】
・水性樹脂
水性樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂やエマルジョン型の水性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂は、水性印刷インク組成物に関連して上記したものと同様である。エマルジョン型の水性樹脂は、具体的には、高分子乳化剤を用いて乳化重合して得られるスチレン-アクリル系水性樹脂、スチレン-マレイン酸系水性樹脂、スチレン-アクリル-マレイン酸系水性樹脂等である。
【0118】
高分子乳化剤は、カルボキシル基含有α,β-モノエチレン性不飽和単量体、疎水性の高い芳香環を有するエチレン性不飽和単量体A、および、必要に応じて、その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合して得られる酸価100~200mgKOH/gの共重合樹脂等である。
【0119】
カルボキシル基含有α,β-モノエチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル等である。
【0120】
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体Aは、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、それらの誘導体等のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル等である。
【0121】
その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート等である。
【0122】
高分子乳化剤は、酸価が100~200mgKOH/gであることが好ましく、150~200mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が100mgKOH/g未満である場合、高分子乳化剤は、水中での溶解性が低下するおそれがある。一方、酸価が200mgKOH/gを超える場合、得られる印刷物は、耐水性が低下するおそれがある。
【0123】
高分子乳化剤を水中に溶解または分散するために使用する塩基性化合物は、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等である。具体的には、有機アミンは、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等である。アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等である。これらの中でも、塩基性化合物は、乾燥性を向上させるために、常温あるいはわずかの加温で容易に揮発するものが好ましい。
【0124】
・水性媒体
本実施形態のニス組成物は、水のほか、ニス組成物の性能を低下させない範囲で、その他の水性媒体が配合されてもよい。水性媒体はインク組成物に使用されるものと同じものを使用することができる。
【0125】
水性媒体が配合される場合、水性媒体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水性媒体の含有量は、ニス組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、水性媒体の含有量は、インク組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。水性媒体の含有量が上記範囲内であることにより、得られるニス組成物は、洗浄性と乾燥性とのバランスが優れる。
【0126】
・添加剤
ニス組成物は、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。添加剤は特に限定されない。一例を挙げると、添加剤は、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子および粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために苛性ソーダ等の塩基性化合物、造膜エマルジョン等の各種添加剤である。
【0127】
<ニス組成物の製造方法>
ニス組成物は、従来法により作製し得る。一例を挙げると、ニス組成物は、エマルジョン、上記各材料および任意の添加剤を混合攪拌することにより作製し得る。ニス組成物は、必要に応じて、水を含む溶剤により希釈されてもよい。
【0128】
得られたニス組成物は、紙や樹脂の表面への印刷、特に、紙コップ、紙皿等の紙製容器等の紙器、または表面が樹脂層で被覆された紙製容器、食品パッケージの薄紙またはそれらの材料に、各種印刷機で印刷する方法により用いられ得る。
【実施例0129】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0130】
使用した原料および調製方法を以下に示す。
ポリスチレン:GPPS(HF77 306)、PSジャパン(株)製、一般グレード
ポリメタクリル酸メチル:アクリペット VH 001、三菱ケミカル(株)製
メタクリル酸メチル-スチレン共重合体:セビアンMAS10、ダイセルミライズ(株)製
ポリカーボネート:ユピゼータFPC-2136、三菱ガス化学(株)製
廃棄ポリメタクリル酸メチル:工場端材(切粉)
廃棄メタクリル酸メチル-スチレン共重合体:工場端材(切粉)
ロジンエステル:エステルガムAAG、荒川化学工業(株)製、酸価0.1~7
マレイン酸変性ロジンエステル:マルキードNo.2、荒川化学工業(株)製、酸価39以下
重合ロジン:アラダイムR-95、荒川化学工業(株)製、酸価158~168
フマル酸変性ロジンエステル:ネオサイト F-896、楠本化成(株)製、酸価205
EO/POブロック共重合体1:アデカプルロニックF-108、(株)ADEKA製、HLB:15.8、重量平均分子量:19,000
EO/POブロック共重合体2:アデカプルロニックF-68、(株)ADEKA製、HLB:16.0 EO/POブロック共重合体3:ニューポールPE-78、三洋化成工業(株)製、HLB:15.6
EO/POブロック共重合体4:アデカプルロニックL-121、(株)ADEKA製、HLB:5.1
EO/POブロック共重合体5:アデカプルロニックL-64、(株)ADEKA製、HLB:12.5
ポリオキシエチレンアルキルエーテル1:エマルゲン350、花王(株)製、HLB:17.8
ポリオキシエチレンアルキルエーテル2:エマノーン3199VB、花王(株)製、HLB:19.4
ポリオキシエチレンアルキルエーテル3:レオドールTW120L、花王(株)製、HLB:16.7
ポリオキシエチレンアルキルエーテル4:レオドールTW120O、花王(株)製、HLB:15.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル5:エマノーンCH-60、花王(株)製、HLB:14.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル6:エマルゲン306P、花王(株)製、HLB:9.4
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル1:Emulsogen TS600、クラリアント社製、HLB:17.5
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル2:Emulsogen TS200、クラリアント社製、HLB:14.0
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル3:エマルゲンB66、花王(株)製、HLB:13.2
ポリグリセリン脂肪酸エステル1:MCA-7S、阪本薬品工業(株)製、HLB:16.1
ポリグリセリン脂肪酸エステル2:M-7S、阪本薬品工業(株)製、HLB:12.9
スチレンマレイン酸:ハイロス X-200、星光PMC(株)製、酸価190
スチレンアクリルエマルジョン:ジョンクリル778、BASF社製、スチレン系のコアシェル型エマルジョン
【0131】
<実施例1>
35.7質量部のポリスチレンを、102質量部の溶剤(酢酸エチル)に溶解してポリスチレンワニスを調製した(ワニス調製工程)。次いで、3.4質量部のEO/POブロック共重合体1と、3.4質量部のEO/POブロック共重合体2とを含む119質量部の水相に、137.7質量部ポリスチレンワニスを混合し、回転数4,000rpmで10分間攪拌し、水中油型エマルジョンを作製した(第1乳化工程)。次いで、高圧乳化機(Panda Plus 2000、GEA Niro Soavi)を用いて、500barの圧力で5パスすることで水中油型エマルジョンを微細化した(第2乳化工程)。その後、50℃以下で攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて減圧留去し、溶剤を留去した。実施例1のポリスチレンエマルジョンは、表1に記載の処方を示した。
【0132】
<実施例2~7、比較例1~5>
表1~表2に記載の処方となるよう変更した以外は、実施例1と同様の方法により、エマルジョンを作製した。
【0133】
<実施例8>
28.9質量部のポリスチレンを、102質量部の溶剤(酢酸エチル)に溶解してポリスチレンワニスを調製した(ワニス調製工程)。次いで、3.4質量部のEO/POブロック共重合体1と、3.4質量部のEO/POブロック共重合体2と、8.5質量部のスチレンマレイン酸と、6.8質量部の重合ロジンを加え、溶液を攪拌しながらマントルヒーターを用いて1℃/分という温度上昇速度で50℃まで加温した(加温工程)。次いで上記溶液に、0.6質量部のアンモニアを含む119質量部の水相を、回転数4,000rpmで攪拌中に7質量部/分の速度で添加することで乳化した(乳化工程)。その後、50℃以下で攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて減圧留去し、溶剤を留去した。実施例8のポリスチレンエマルジョンは、表1に記載の処方を示した。
【0134】
<実施例9~28、比較例6~8>
表1~表3に記載の処方となるよう変更した以外は、実施例8と同様の方法により、エマルジョンを作製した。ただし、実施例24~28において使用した溶剤は、それぞれ、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸エチルとした。
【0135】
<参考例1>
市販品であるジョンクリル778(BASF社製、コアシェル構造を有するスチレンアクリル系エマルジョン)を評価した。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
上記で得られた実施例、比較例および参考例のエマルジョンについて、以下の評価方法にしたがって、乳化状態、保存安定性、平均粒子径(μm)、光沢、透明性および耐スクラッチ性を評価した。また、上記で得られた実施例、比較例および参考例のエマルジョンについて、以下の評価方法にしたがって、水性印刷インク組成物を調製し、濃度、透明性、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐水耐摩擦性および耐ブロッキング性を評価した。結果を表1または表2に示す。
【0140】
<エマルジョンの評価>
(乳化状態)
エマルジョンの製造時に、水相と油相とを混合した後の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:混合された水相と油相とは、安定して乳白色の懸濁状態を保っていた。
△:混合された水相と油相とは、わずかに分離を生じた。
×:混合された水相と油相とは、二層に分離した。
(保存安定性)
エマルジョンを密閉したサンプル瓶に入れ、40℃で1週間静置保管前後の粘度変化率を、以下の式(1)にて算出し、以下の評価基準にしたがって評価した。
粘度変化率=(保管後の粘度-保管前の粘度)/保管前の粘度×100 (1)
○:粘度変化率の絶対値は、50%未満であった。
△:粘度変化率の絶対値は、50%以上、100%未満であったか、または、保管後のサンプルは、わずかに分離、沈降が見られた。
×:粘度変化率の絶対値は、100%以上であったか、または、保管後のサンプルは、大幅な分離、沈降、固化、ゲル化が見られた。
(平均粒子径)
マイクロトラックUPA粒度分布計(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法で平均粒子径を測定した。
(光沢)
エマルジョンを0.15mmのメヤバーにて、OPPフィルムに展色し、蛍光灯から生じた光が展色物上で跳ね返った際の反射光の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。後述する水性ニス組成物についても同様の方法により評価した。
○:反射光は、霞むことなく、明瞭に観測できた。
△:反射光は、わずかに霞んだ。
×:反射光は、観測できなかった。
(透明性)
エマルジョンを0.15mmのメヤバーにて、OPPフィルムに展色し、フィルム展色物を蛍光灯からの光を透かした際の透過光の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:透過光は、霞むことなく、明瞭に観測できた。
△:透過光は、わずかに霞んだ。
×:透過光は、観測できなかった。
(耐スクラッチ性)
エマルジョンを0.15mmのメヤバーにてOPPフィルムに展色し、塗膜を爪でこすったときの塗膜の脱落度合いを目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:塗膜は、脱落しなかった。
△:塗膜は、わずかに脱落した。
×:塗膜は、脱落した。
【0141】
<水性印刷インク組成物の評価>
・ベースインクの調製
以下の処方に従って、顔料(フタロシアニンブルー、B-15:3)、水溶性樹脂ワニス(ジョンクリルHPD-671、BASF社製、St-Ac系、固形分25%)、イソプロピルアルコール、水の混合物を、ビーズミルで混合した後、残りの材料を添加混合してベースインクを調製した。
【0142】
ジョンクリルHDP-671(固形分25%) 25.00
イソプロピルアルコール 2.00
水 15.00
顔料(B-15:3) 30.00
↓ビーズ練肉
ジョンクリルHDP-671(固形分25%) 20.00
水 8.00
100.00(質量部)
【0143】
(水性印刷インク組成物の調製)
上記で調製したベースインク30.0質量部に、ケミパールW100(三井化学(株)製ポリエチレンワックス)を1.5質量部、サーフィノール104E(日信化学工業(株)製アセチレンジオール系界面活性剤)を0.3質量部、S N デフォーマー 777(サンノプコ(株)製消泡剤)を0.03質量部、実施例8~11、14~28および比較例6~8のエマルジョンを固形分が20%となる量を混合した後、合計が100質量部となるよう水を添加し、攪拌混合して水性印刷インク組成物を調製した。
【0144】
(水性ニス組成物の調製)
実施例8~11、14~28および比較例6~8のエマルジョンを、固形分が29質量%となる量に、ケミパールW100(三井化学(株)製ポリエチレンワックス)を1.5質量部、サーフィノール104E(日信化学工業(株)製アセチレンジオール系界面活性剤)を0.3質量部、S N デフォーマー 777(サンノプコ(株)製消泡剤)を0.03質量部混合後、合計が100質量部となるよう水を添加し、攪拌混合して水性ニス組成物を調製した。
【0145】
(濃度)
水性印刷インク組成物を、へら引きにてKライナー(王子製紙(株)製)に展色し、分光光度計(eXact、エックスライト社製)を用いて、OD値の測定を3回行い、その平均値を以下の評価基準にしたがって評価した。
○:OD値は、1.5以上であった。
△:OD値は、1.4以上、1.5未満であった。
×:OD値は、1.4未満であった。
(透明性)
水性印刷インク組成物を、0.15mmのメヤバーにてOPPフィルムに展色し、フィルム展色物に光を照射した際の透過光の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。水性ニス組成物についても同様の方法により評価した。
○:透過光は、霞むことなく、明瞭に観測できた。
△:透過光は、わずかに霞んだ。
×:透過光は、観測できなかった。
(耐スクラッチ性)
水性印刷インク組成物を、0.15mmのメヤバーにてOPPフィルムに展色した各印刷物の表面に、ニチバン(株)製の粘着シート(セロテープ(登録商標))の粘着層側の面を貼り付け、引き剥がす操作を行い、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:塗膜は、剥離しなかった。水性ニス組成物についても同様の方法により評価した。
△:塗膜は、一部が剥離した。
×:塗膜は、大部分が剥離した。
(耐摩擦性)
水性印刷インク組成物を、0.15mmのメアバーを用いてKライナー(王子製紙(株)製)に展色した各印刷物を、2.5cm×25cmに切断してテストピースとし、学振型耐摩擦試験機((株)大栄科学精器製作所製)を使用して、Kライナーの無地面を印刷物の印刷面に当てて、500gの荷重で100回ずつ摩擦して、以下の評価基準にしたがって評価した。水性ニス組成物についても同様の方法により評価した。
○:印刷物は、印刷面の脱落や、無地面への汚染が見られなかった。
△:印刷物は、印刷面の脱落や、無地面への汚染がわずかに見られた。
×:印刷物は、印刷面の脱落や、無地面への汚染が見られた。
(耐水耐摩擦性)
水性印刷インク組成物を、0.15mmのメアバーを用いてKライナー(王子製紙(株)製)に展色した各印刷物を、2.5cm×25cmに切断してテストピースとし、学振型耐摩擦試験機((株)大栄科学精器製作所製)を使用して、水5滴を滴下した晒し布を印刷物の印刷面に当てて、200gの荷重で2回ずつ摩擦して、以下の評価基準にしたがって評価した。水性ニス組成物についても同様の方法により評価した。
○:印刷物は、印刷面の脱落や、晒し布への汚染が見られなかった。
△:印刷物は、印刷面の脱落や、晒し布への汚染がわずかに見られた。
×:印刷物は、印刷面の脱落や、晒し布への汚染が見られた。
(耐ブロッキング性)
水性印刷インク組成物を、0.15mmのメアバーを用いてKライナー(王子製紙(株)製)に展色した各印刷物2枚を、印刷面と印刷面を合わせて、荷重1kg/cm2をかけながら40℃・90%RHで24時間放置後に手で剥がし、以下の評価基準にしたがって評価した。水性ニス組成物についても同様の方法により評価した。
○:印刷物は、印刷面と印刷面とが容易に剥離し、印刷面の脱落も見られなかった。
△:印刷物は、印刷面と印刷面とがわずかに接着しており、印刷面の脱落がわずかに見られた。
×:印刷物は、印刷面と印刷面とが強く接着しており、印刷面の脱落が見られた。
【0146】
表1~3に記載のとおり、本発明のエマルジョンは、SP値が8~10である溶剤に溶解可能な樹脂を出発物資として用いることができ、乳化状態が安定であり、かつ、保存安定性および光沢等の特性が優れた。また、本発明のエマルジョンを含むインク組成物は、濃度、透明性、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性等の特性が優れた。また、本発明のエマルジョンを含む水性ニス組成物は、光沢、透明性、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性等の特性が優れた。