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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152632
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】高速干渉時間光検出および測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20231005BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022185627
(22)【出願日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】17/708,728
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522111493
【氏名又は名称】オプトウェイヴス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Optowaves, Inc.
【住所又は居所原語表記】6830 Via Del Oro, Suite 200, San Jose, CA 95119 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ツン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジー ジェンセン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】スー,シャンシン
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA49
5J084BA50
5J084BB08
5J084BB14
5J084BB19
5J084BB28
5J084BB31
5J084BB40
5J084CA03
5J084CA31
5J084DA01
5J084DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】時間-周波数領域反射率測定およびコヒーレント光源の小波長過渡変調に基づく高速干渉時間(TOI)光検出及び測距(LIDAR)システムを提供する。
【解決手段】TOI LIDARシステムは、対象物までの様々なポイントの測定距離に基づいて対象物の画像を生成する。このTOI LIDARシステムは、干渉光信号から生成した電気信号の包絡線を検出する。この干渉光信号は、対象物へのサンプルアーム発光による後方反射光と参照発光とが合成されて生成される。参照発光は、パルス変調されたコヒーレント光源の発光信号を分割し、参照アームに参照発光を通過させることで作成する。光干渉信号は平衡光検出器に転送され、デジタルデータに変換された電気信号に変換される。デジタルデータを評価して、デジタル電気干渉信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを求め、距離の計算に使用する参照発光と後方反射光の間の時間遅延を求める。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間-周波数領域反射法に基づいて、ToI LIDARシステムから対象物までの距離を測定するための、高速干渉時間(ToI)検出および測距(LIDAR)システムであって、
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源に接続する変調制御装置であって、パルス波長変調コヒーレント発光を生成するよう前記コヒーレント光源を変調するために前記コヒーレント光源に転送するパルス波長制御信号のパルス幅を生成および制御するよう構成した変調制御装置であって、正の過渡電圧スパイクと負の過渡電圧スパイクとを生成する過渡発生器を備え、過渡変調信号を制御して前記正の過渡電圧スパイクと負の過渡電圧スパイクとを融合して、前記2つのスパイク間での電圧のリンギングと整定時間を確保する、変調制御装置と、
前記パルス波長変調コヒーレント発光を受信するよう前記コヒーレント光源に接続された干渉計であって、前記パルス波長変調コヒーレント発光をサンプル部分と参照部分とに分割するように構成し、前記パルス波長変調コヒーレント発光の前記サンプル部分は、測定対象の前記対象物に入射するように配置され、前記パルス波長変調コヒーレント発光の前記参照部分は、前記TOI LIDARシステムから前記対象物までの距離を求めるための基礎を提供するよう配置した干渉計と、
発光用の低開口数と受光用の高開口数とを有する加工面を持つ屈折率分布型ファイバロッドを備え、前記パルス波長変調コヒーレント光の前記サンプル部分を受信するために前記干渉計に接続したスキャナであって、前記パルス波長変調コヒーレント光のサンプル部分を前記対象物に物理的に転送し、前記パルス波長変調コヒーレント光で前記対象物の表面を走査するよう構成され、さらに前記パルス波長変調コヒーレント光の後方反射部分を受信して前記後方反射部分を前記スキャナから前記干渉計に転送するよう構成したスキャナであって、
前記パルス波長変調コヒーレント光の後方反射部分と前記パルス波長変調コヒーレント光の参照部分とを結合して光干渉光信号を形成するスキャナと、
前記光干渉光信号を受信し、前記光干渉信号を電気干渉信号に変換するよう構成した光検出器アレイと、
前記光検出器アレイと連通して前記電気干渉信号を受信し、前記電気干渉信号をデジタル電気干渉信号に変換する信号処理装置と、
前記光干渉信号によって求められる時間遅延を計算し、前記対象物からの距離に基づいて表示される撮像範囲を生成するようにプログラムされたコンピュータシステムと、を備える、干渉時間LIDARシステム。
【請求項2】
前記過渡発生器を備える前記変調制御装置は、前記コヒーレント光源の駆動電流の制御、前記狭帯域光源の温度の調整、または前記光源から出射される光の位相の調整によって、前記コヒーレント光源を変調するよう構成し、前記過渡発生器は、前記正の過渡電圧スパイクおよび負の過渡電圧スパイクを生成するよう構成したインダクタンス、キャパシタンス、および抵抗を備える、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項3】
前記干渉計は、
前記コヒーレント光源から前記パルス波長変調コヒーレント光を受信するよう構成し、前記パルス波長変調コヒーレント光を前記パルス波長変調コヒーレント光の第1部分と前記パルス波長変調コヒーレント光の第2部分とに分割するように構成した第1のカプラと、
前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第1部分を受信するように接続したサーキュレータであって、前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第1部分が前記サーキュレータの第1ポートに入って後続のポートから出るように構成され、前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第1部分を前記スキャナに向かわせるサーキュレータと、
前記第1カプラに接続され、前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第1部分を受信して前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第1部分を前記スキャナへ転送するサンプルアームと、
前記第1カプラに接続され、前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第2部分を受信する参照アームと、
前記パルス波長変調コヒーレント光の後方反射部分を受信するよう構成し、前記参照アームから前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第2部分を受信するように構成し、前記パルス波長変調コヒーレント光の前記後方反射部分と前記パルス波長変調コヒーレント光の前記第2部分とを結合して光干渉光信号を形成するよう構成した第2カプラと、を備える、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項4】
前記干渉計がさらに、
前記パルス波長変調コヒーレント発光を受信し、前記パルス波長変調コヒーレント発光を前記第1カプラに転送し、前記光源からのコヒーレント発光の偏光状態を調整して前記光干渉信号または干渉電気信号の振幅を最大にするよう構成した偏光制御装置を備える、請求項3に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項5】
前記光検出器アレイは、偏光ダイバーシティ平衡増幅検出器として構成され、前記光検出器アレイへの入力パワーレベルを測定する少なくとも1つのパワーモニタを備え、前記パワーモニタは、前記対象物の距離と関連する時間遅延を有するよう変調したパワーレベルを出力する、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項6】
前記参照アームの長さは、前記サンプルアームの長さよりも長く、前記参照アームの光路長は、前記システムの最大測距深度の2倍を超える、請求項3に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項7】
前記光干渉信号の最大周波数が前記システムの最小測距深度に相当する、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項8】
前記信号処理装置は、デジタル化された電気干渉信号の包絡線を求めるよう構成する、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項9】
前記信号処理装置は、前記デジタル化電気干渉信号の包絡線の立ち下がりエッジで前記デジタル化電気干渉信号の時間遅延を測定するよう構成する、請求項8に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項10】
スキャン同期信号を生成するスキャンパターンを作成するよう構成したスキャン制御装置をさらに備え、前記スキャン制御装置は、前記スキャン同期信号を前記スキャナに印加して、前記対象物を表す測定情報の収集を実現する複数のスキャンパターンを生成するように構成する、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項11】
前記干渉時間LIDARシステムが、光ファイバ、バルク光学系、集積光回路、または光学素子の任意の組み合わせとして実装される、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項12】
前記屈折率分布型ファイバロッドはその遠位端に形成した加工面を有し、前記屈折率分布型ファイバロッドと長距離照明用の加工屈折率分布型レンズとに必要な低開口数と、前記対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光を受け取るために必要なより高い開口数とを提供する、請求項2に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項13】
前記屈折率分布型ファイバロッドには、前記屈折率分布型ファイバロッドと接する別個のレンズが形成され、前記屈折率分布型ファイバロッドと長距離照明用の加工屈折率分布型レンズとに必要な低開口数と、前記対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光を受け取るために必要なより高い開口数とを提供する、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項14】
前記過渡発生器によって、過渡光源変調器の実効インダクタンス値を変更して、レーザドライバ510の応答時間を大きく短縮するためにスパイク状の過渡状態を生成し、これによって速度制限を克服する、請求項1に記載の干渉時間LIDARシステム。
【請求項15】
対象物の距離を求めるための方法であって、
コヒーレント光ビームを生成する工程と、
前記コヒーレント光ビームを波長変調信号で変調する工程と、
前記コヒーレント光ビームの第1部分をサンプルアームに結合する工程と、
前記コヒーレント光ビームの第2部分を参照アームに結合する工程と、
正の過渡電圧スパイクおよび負の過渡電圧スパイクを生成して、前記コヒーレント光ビームを制御する工程と、
前記波長変調されたコヒーレント光ビームの光源からの距離を測定すべき対象物の場所で、加工面を有する屈折率分布型ファイバロッドの低開口数の部分を介して前記コヒーレント光ビームの前記第1部分を走査する工程と、
加工面を有する屈折率分布型ファイバロッドの高開口数を介して、前記測定対象物から前記波長変調されたコヒーレント光ビームの前記第1部分の一部を後方反射する工程と、
前記測定対象物からの前記波長変調されたコヒーレント光ビームの後方反射部分を受光する工程と、
前記コヒーレント光ビームの後方反射部分と前記コヒーレント光ビームの前記第2部分とを結合して、光干渉コヒーレント光信号を形成する工程と、
前記光干渉波長変調されたコヒーレント光信号を光検出して、振動する電気干渉信号を形成する工程と、
前記振動する電気干渉信号をデジタル化する工程と、
前記デジタル化した電気干渉信号の包絡線を検出して、前記デジタル化電気干渉信号の前記包絡線を求める工程と、
前記デジタル化した電気干渉信号の前記包絡線の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時間を求める工程と、
前記デジタル化した電気干渉信号の前記包絡線の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジ間の時間差を求める工程と、
前記測定対象物までの距離を計算する工程と、を備える方法。
【請求項16】
請求項11の各工程を繰り返し実行することにより、前記対象物のドップラー速度を求める工程と、
時間の経過に伴う距離の変化として、前記対象物のドップラー速度を計算する工程とを更に備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コヒーレント光ビームの偏光状態を調整し、前記光干渉信号または干渉電気信号の振幅を最大化する工程をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記干渉電気信号の最大周波数は、前記対象物までの距離測定の最小測距深度に相当し、前記干渉電気信号の最大周波数は、前記干渉電気信号をデジタル化する前記工程のナイキストサンプリング周波数より大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記干渉電気信号の最小周波数は、前記対象物の距離測定の最大測距深度に相当する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
光ファイバ、バルク光学系、集積光回路、または光学素子の任意の組み合わせを用いて前記方法を実施する工程をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
加工屈折率分布型レンズを有する屈折率分布型ファイバロッドを提供する工程と、
加工面を有する前記屈折率分布型ファイバロッドを実装して、前記屈折率分布型ファイバロッドと長距離照明用の加工屈折率分布型レンズとに必要な低開口数と、前記対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光を受け取るために必要なより高い開口数とを提供する工程と、をさらに備える請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記屈折率分布型ファイバロッドを実装する工程と、
前記屈折率分布型ファイバロッドと接する別個のレンズを提供し、前記屈折率分布型ファイバロッドと長距離照明用の加工屈折率分布型レンズとに必要な低開口数と、前記対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光を受け取るために必要なより高い開口数とを提供する工程と、をさらに備える請求項21に記載の方法。
【請求項23】
過渡光源変調器の実効インダクタンス値を変更して、レーザドライバの応答時間を大きく短縮するためにスパイク状の過渡状態を生成し、これによって速度制限を克服するよう構成した過渡発生器を提供する工程をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
対象物の距離を求めるための装置であって、
コヒーレント光ビームを生成する手段と、
前記コヒーレント光ビームを過渡波長変調信号で変調して、前記コヒーレント光ビームの振幅を調整する手段と、
前記コヒーレント光ビームの第1部分をサンプル光ファイバケーブルに結合する手段と、
前記コヒーレント光ビームの第2部分を参照アームに結合する手段と、
正の過渡電圧スパイクおよび負の過渡電圧スパイクを生成して、前記コヒーレント光ビームを制御する手段と、
前記変調されたコヒーレント光ビームの光源からの距離を測定すべき対象物の場所で、加工面を有する屈折率分布型ファイバロッドの低開口数の部分を介して前記コヒーレント光ビームの前記第1部分を走査する手段と、
加工面を有する屈折率分布型ファイバロッドの高開口数を介して、前記測定対象物から前記コヒーレント光ビームの前記第1部分の一部を後方反射する手段と、
前記測定対象物からの前記コヒーレント光ビームの後方反射部分を受光する高開口数を有する手段と、
前記コヒーレント光ビームの後方反射部分と前記コヒーレント光ビームの前記第2部分とを結合して、光干渉コヒーレント光信号を形成する手段と、
前記光干渉コヒーレント光信号を光検出して、振動する電気干渉信号を形成する手段と、
前記振動する電気干渉信号をデジタル化する手段と、
前記デジタル化した電気干渉信号の包絡線を検出して、前記デジタル化電気干渉信号の前記包絡線を求める手段と、
前記デジタル化した電気干渉信号の前記包絡線の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時間を求める手段と、
前記デジタル化した電気干渉信号の前記包絡線の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジ間の時間差を求める手段と、
前記測定対象物までの距離を計算する手段と、を備える装置。
【請求項25】
前記対象物の距離を求めるための請求項18の手段を繰り返し作動させることにより、前記対象物の速度を決定する手段と、
時間の経過に伴う距離の変化として、前記対象物の速度を計算する手段とをさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記コヒーレント光ビームの偏光状態を調整し、前記光干渉信号または干渉電気信号の振幅を最大化する手段をさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記干渉電気信号の最大周波数は、前記対象物までの距離測定の最小測距深度に相当し、前記干渉電気信号をデジタル化する前記手段のナイキストサンプリング周波数より大きい、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記屈折率分布型ファイバロッドの表面を加工して、前記屈折率分布型ファイバロッドと長距離照明用の加工屈折率分布型レンズとに必要な低開口数と、前記対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光を受け取るために必要なより高い開口数とを提供する手段をさらに備える請求項24に記載の装置。
【請求項29】
前記屈折率分布型ファイバロッドを実装する手段と、
前記屈折率分布型ファイバロッドと接する別個のレンズを提供し、前記屈折率分布型ファイバロッドと長距離照明用の加工屈折率分布型レンズとに必要な低開口数と、前記対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光を受け取るために必要なより高い開口数とを提供する手段と、をさらに備える請求項24に記載の装置。
【請求項30】
過渡光源変調器の実効インダクタンス値を変更して、レーザドライバの応答時間を大きく短縮するためにスパイク状の過渡状態を生成し、これによって速度制限を克服するよう構成した過渡発生器を提供する手段をさらに備える、請求項24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年5月10日出願の米国特許出願第17/315,678の一部継続出願であり、その全体を参照により引用し、共通の譲受人に譲渡される。
【0002】
本開示は、光検出及び測距システムに関し、特に、距離および速度を測定するために光干渉装置および方法を利用する光検出および測距システムに関する。
【背景技術】
【0003】
LIDAR(光検出および測距)は、光波を使用して対象物の距離、角度、および速度を求めるという点で、レーダー(電波検出および測距)に類似する。LIDARは、レーザ光の戻り時間や波長の違いを利用して、対象物をデジタル3次元で表現でき、地上・空中・モバイルと幅広い用途で利用されている。LIDAR機器は、一以上のレーザ発振器、光学系、スキャナ、光検出器、信号処理装置で構成される。一以上のレーザ発振器から発生したコヒーレント光ビームは、一連の光学系を介してスキャナに転送され、対象物までの距離または対象物の速度を求めるために対象物に送信される。3次元(3D)スキャンの場合、その物理的特性を求める。光検出器は、対象物が反射したコヒーレント光を受け、このコヒーレント光を電気信号に変換する。この信号を処理して対象物の距離を求める。発振器は、パルス状のコヒーレント光を生成する。信号処理装置は、パルス光を送信した時間を記録し、さらにコヒーレント光の反射光を受信した時間を記録する。対象物の距離は、送信時間と受信時間との差を2で割って、光速を掛けたものとなる。
【0004】
振幅変調連続波(AMCW)LIDARは、位相差方式のLIDARの一種である。直接パルスを検出するのとは異なり、位相差方式のLIDARは、連続レーザ信号を発する。レーザ出射振幅を高速の高周波(RF)信号で変調し、出力光信号を符号化する。出射信号と反射信号の位相差を検出し、測距を行う。正弦波で変調した連続レーザ波形の位相シフトを利用して、対象物までの距離を推測することができる。
【0005】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARはAMCW LIDARに似ているが、変調と復調を電気的にではなく光学的に行う。FMCW LIDARは、波長可変光源または位相変調光源と干渉計を用いて、対象物の距離を高感度で測定する。“Comb-Calibrated Frequency-Modulated Continuous-wave LiDAR,Y. Xie et al., 2020 IEEE 7th International Workshop on Metrology for AeroSpace (MetroAeroSpace),Pisa,Italy,2020,pp.372-376,URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=9160234&isnumber=9159966”に2/15/2021に掲載”は、FMCW LIDARを絶対距離の測定に非常に適したものと記載している。FMCWレーザの周波数は、キャリア信号によって線形変調され、レーザの往復飛行時間を正確に測定する。戻ってきたレーザと出射したレーザの間のうなり周波数信号を検出することにより、飛行時間を高精度に計算することができ、高精度な距離測定が可能である。
【0006】
干渉時間(TOI)LIDAR技術は、飛行時間(ToF)や周波数変調連続波(FWCW)などの従来のLIDAR技術の限界を克服する新しい測距方法であり、次の特徴を有する。(1)長距離からの弱い干渉信号を高感度に検出できる平衡検出器を備えた干渉計を利用、(2)信号周波数が高い場合でも干渉信号の時間遅延を測定できるため、対象物からの距離を正確に測定でき、高速データ収集システムが不要、(3)光源の位相変調または波長変調の要件が低いため、光源の駆動回路設計の複雑さを簡略化できる。TOI LIDARシステムの動作速度は、主に光源の変調速度と光受信機の効率とによって制限される。
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、時間-周波数領域反射率測定およびコヒーレント光源の小波長過渡変調に基づく高速干渉時間(TOI)光検出及び測距(LIDAR)システムを提供することである。高速TOI LIDARシステムは、時間-デジタル変換器またはデータ取得システムを使用して、干渉信号の時間遅延または干渉時間(TOI)を記録する。出力波長は、コヒーレント光源の動作電流または動作温度によって決まる。
【0008】
この目的を達成するために、高速TOI LIDARシステムは、変調制御装置に接続されたコヒーレント光源を有する。変調制御装置は、コヒーレント光源に転送されるパルス波長制御信号を生成するよう構成する。パルス波長制御信号は、電流変調信号でもよいし、レーザ周囲温度調整信号でもよい。パルス波長制御信号は、コヒーレント光源を変調し、パルス波長変調コヒーレント発光を発生させる。
【0009】
パルス波長変調コヒーレント発光は、干渉計への入力となる。干渉計は、パルス波長変調コヒーレント発光をサンプリング部分と参照部分とに分割するよう構成する。パルス波長変調コヒーレント発光のサンプリング部分は、測定対象物に入射するように配置する。パルス波長変調コヒーレント発光の参照部分は、TOI LIDARシステムから対象物までの距離を求めるための参照基礎となるように配置する。干渉計はさらに、パルス波長変調されたコヒーレント光をスキャナに転送するよう構成する。スキャナは、パルス波長変調コヒーレント光の第1部分を対象物に物理的に転送して、パルス変調コヒーレント光で対象物の表面を走査するよう構成する。スキャナはさらに、対象物から後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光の一部を受光するよう構成する。後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光をスキャナから干渉計に転送し、その後パルス波長変調コヒーレント光の参照部分と結合して光干渉光信号を形成する。
【0010】
TOI LIDARシステムは、光干渉信号を電気干渉信号に変換するよう構成した光検出器アレイを有する。様々な実施形態において、光検出器は、偏光ダイバーシティ平衡増幅検出器として構成する。光検出器は、光検出器への入力パワーレベルを測定する少なくとも1つのパワーモニタを有する。このパワーモニタの出力により、対象物の距離と関連する時間遅延を有するよう変調したパワーレベルが得られる。
【0011】
TOI LIDARシステムは、電気干渉信号を受信し、デジタルデータとして電気干渉信号の振幅を表すデジタルデータにこの電気干渉信号を変換する信号処理装置を有する。この信号処理装置は、対象物からの距離に基づいて表示される撮像範囲を生成するよう構成する。表示される撮像範囲は、光干渉信号によって求められる時間遅延を計算するようにプログラムされたコンピュータシステムによって計算される。
【0012】
変調制御装置は、狭帯域コヒーレント光源の駆動電流、狭帯域光源の温度の制御、または光源から出射される光の位相の調整によって、コヒーレント光源を変調する低デューティ比の波長変調制御信号を生成するよう構成する。他の実施形態では、変調制御装置は、干渉計のサンプルアームと参照アームとの光の間に時間遅延がある場合に、干渉を発生させるパルス位相制御信号を生成する。
【0013】
様々な実施形態において、干渉計は、光源からのコヒーレント発光の偏光状態を調整し、光干渉信号又は電気干渉信号の振幅を最大化するために用いられる偏光制御装置を備える。干渉計は、偏光制御装置からパルス波長変調コヒーレント光を受光する第1カプラを有する。このカプラは、パルス波長変調されたコヒーレント光を分割する。パルス波長変調コヒーレント光の第1部分は、少なくとも1つのサンプルアームに供給される。パルス波長変調コヒーレント光の第2部分は、参照アームに供給される。干渉計は、少なくとも一つのサンプルアームからのパルス波長変調コヒーレント光の第1部分を受光するよう接続されたサーキュレータを有する。このサーキュレータは、サンプルアームからのパルス波長変調コヒーレント光がサーキュレータに入って、次のポートから出るように構成する。通常、次のポートは、時計回りの方向にパルス波長変調コヒーレント光をスキャナへと向かわせる。スキャナは、サンプルパルス波長変調コヒーレント光を物理的に転送して対象物を走査するよう構成する。サンプリングされたパルス波長変調コヒーレント光は、測距測定を行う対象物からスキャナへと後方反射され、干渉計内のサーキュレータに転送される。その後、後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光は、サーキュレータから第2カプラに送られる。
【0014】
干渉計の参照アームは、サンプリングアームの長さの2倍以上の長さを有する。参照アーム内のパルス波長変調コヒーレント光の第2部分は、第2カプラに印加される。参照アームで移動するパルス波長変調コヒーレント光の第2部分を、回収した後方反射パルス波長変調光と結合し、光干渉光信号を形成する。この光干渉光信号は、第2のカプラを出て、光検出器アレイに入る。
【0015】
参照アームの光路長は、サンプルアームの光路長よりもシステムの最大測距深度の2倍を超えて長い。光干渉信号の最大周波数は、システムの最小測距深度に相当する。
【0016】
光干渉信号の最大周波数は、TOI LIDARシステムの最小測距深度に相当し、データ取得および信号処理装置におけるデジタイザのナイキストサンプリング周波数よりも大きい。光干渉信号の最小周波数は、TOI LIDARシステムの最大測距深度に相当する。検出された光干渉の時間遅延は、光干渉信号の包絡線の立ち下がりエッジで測定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、本開示の原理を具現化したTOI LIDARシステムの概略図である。
図1B図1Bは、本開示の原理を具現化したTOI LIDARシステムの概略図である。
図1C図1Cは、本開示の原理を具現化したTOI LIDARシステムの概略図である。
【0018】
図1D図1Dは、本開示の原理を具現化した図1A図1B、及び図1Cのサンプルアームの端部にある屈折率分布型レンズを受け入れるスキャナの概略図である。
【0019】
図2A図2Aは、本開示の原理を具現化した電気的TOI測定回路のブロック図である。
【0020】
図2B図2Bは、本開示の原理を具現化した、電気的TOI測定を行うよう構成した信号処理装置のプログラム構造を示すブロック図である。
【0021】
図2C図2Cは、本開示の原理を具現化したゼロ(0)メートル位置でのサンプルアームの後方反射パルスフリンジと包絡線をプロットした図である。
【0022】
図2D図2Dは、本開示の原理を具現化した180メートル位置でのサンプルアームの後方反射パルスフリンジと包絡線をプロットした図である。
【0023】
図3図3は、本開示の原理を具現化したTOI LIDARシステムのフレームベースの速度測定方法を示す図である。
【0024】
図4A図4Aは、本開示の原理を具現化した過渡光源変調器のブロック図である。
【0025】
図4B図4Bは、本開示の原理を具現化した、過渡光源変調器およびコヒーレント光源の概略図である。
【0026】
図5A図5Aは、本開示の原理を具現化したSSM-TOI電気測定回路を示すブロック図である。
【0027】
図5B図5Bは、本開示の原理を具現化した、SSM-TOI電気測定を行うよう構成する信号処理装置のプログラム構造を示すブロック図である。
【0028】
図6図6は、本開示の原理を具現化した、SSM-TOIドップラー速度測定を実行するよう構成したデジタル信号処理装置のブロック図である。
【0029】
図7図7は、本開示の原理を具現化した、TOIおよび飛行時間集積回路のブロック図である。
【0030】
図8A図8Aは、本開示の原理を具現化する、SSM-TOI電気計測を採用した対象物の距離を求める方法のフローチャートである。
【0031】
図8B図8Bは、本開示の原理を具現化する、SSM-TOI電気計測を採用した対象物の速度を求める方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
対象物までの様々なポイントの測定距離に基づいて対象物の画像を生成するようTOI LIDARシステムを構成する。このTOI LIDARシステムは、干渉光信号から生成した電気信号の包絡線を検出する。この干渉光信号は、対象物へのサンプルアーム発光による後方反射光と、参照発光とから生成される。参照発光は、パルス波長変調されたコヒーレント光源の発光信号を分割し、参照アームに参照発光を通過させることで作成する。光干渉信号は、光検出器に転送されて電気信号に変換されデジタルデータに変換される。このデジタルデータを評価して参照発光と後方反射光の立ち下がりエッジを求め、参照発光と後方反射光との時間遅延を求める。その後、この時間遅延から距離を計算する。
【0033】
図1A図1B図1Cは、本開示の原理を具現化するTOI LIDARシステムの概略図である。図1Aを参照すると、TOI LIDARシステム100は、パルス波長変調された狭帯域幅光源105を備える。このパルス波長変調光源105は、単一または複数の縦モードで構成される出力スペクトルを有するパルス変調コヒーレント光を出射する。共振空洞の縦モードは、空洞内に閉じ込められた波が形成する特定の定在波パターンである。レーザでは、通常2枚以上のミラーで構成される空洞共振器で光が増幅される。空洞には、光を反射する鏡面の壁があり、定在波モードがほとんど損失なく空洞内に存在できるようになっている。縦モードは、空洞の反射面で何度も反射した後、建設的干渉によって強化された反射波の波長に相当する。それ以外の波長は全て相殺的な干渉により抑制される。縦モードパターンでは、ノードが空洞の長さに沿って軸方向に配置される。パルス波長変調光源105は、当該技術分野で公知であり、固体レーザ、ガスレーザ、液体レーザ、または半導体レーザに分類される4種類のレーザのうちの1つとして実装される。本開示で述べる構成において、パルス波長変調光源105は、その波長または周波数が電流または温度のいずれかによって制御されるコヒーレント光源105として示される。以下、パルス波長変調光源105の変調について説明する。
【0034】
パルス波長変調狭帯域光源105は、パルス波長変調コヒーレント光を干渉計110に出射する。パルス波長変調狭帯域幅光源105の出射光は、自由空間、光ファイバ、または光導波路を介して干渉計110に送られる。
【0035】
様々な実施形態において、干渉計110は、光ファイバ、バルク光学系、集積光回路、又はそれらのいくつかの組み合わせとして実装される。干渉計110は、パルス波長変調コヒーレント光を受光する偏光制御装置115を有する。偏光制御装置115は、光源105からのパルス波長変調コヒーレント光の偏光状態を調整し、光路155a、155bで転送される光干渉信号、または干渉電気信号162の振幅を最大化する。光源105からのパルス波長変調コヒーレント光、または偏光制御装置115を介して転送されたパルス波長変調コヒーレント光は、カプラ(coupler)120に送られる。カプラ120は、コヒーレント光を、少なくとも1つのサンプルアーム122に供給されるサンプル部分と、干渉計110内の参照アーム140に供給されるパルス波長変調コヒーレント光の参照部分とに分割する。サンプルアーム122と参照アーム140は、自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装される。
【0036】
干渉計119は、サンプルアーム122からのパルス波長変調コヒーレント光のサンプル部分を受光するサーキュレータ125を有する。サーキュレータ125は、パルス波長変調コヒーレント光のサンプル部分がサーキュレータ125に入って、次のポートからサンプルアーム122の一セクションへと出るように構成する。次のポートによって、通常(ただし必須ではないが)時計回りの方向にコヒーレント光をサンプルアーム122を介してスキャナ130に向かわせる。スキャナ130は、サンプルパルス波長変調コヒーレント光135を物理的に転送して対象物を走査するよう構成する。サンプリングされたパルス波長変調コヒーレント光135は、測距測定を行うために対象物から後方反射される。後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光は、スキャナ130が受光し、サーキュレータ125に転送される。その後、後方反射されたパルス波長変調コヒーレント光は、光路145を通って第2カプラ150に転送される。この光路は、自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装される。
【0037】
自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装される参照アーム140は、参照アーム140の経路長がTOI LIDARシステム100の最大測距深度と一致するように追加の経路長を提供する追加の光経路142を有する。少なくとも1つのサンプルアーム122および参照アーム140からの光パルス波長変調コヒーレント光信号同士は、カプラ150内で結合され、光干渉信号を生成する。
【0038】
少なくとも1つのサンプルアーム122と参照アーム140からの各パルス波長変調コヒーレント光信号をヘテロダイン検波し、ベース信号からうなり周波数を抽出する。うなり信号は、カプラからの2つの出力において180°の位相差を有する。平衡検出器160は、各入力チャネルからの信号を減算して、うなり信号である干渉信号を抽出する。
【0039】
この光干渉信号は、自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装された光路155aおよび155bに印加される。光干渉信号は、光経路155aおよび155bに印加され、平衡光検出器160に転送されて、光経路155aおよび155bからの光干渉信号が干渉電気信号162に変換される。
【0040】
干渉電気信号162は、平衡光検出器160によって生成され、信号処理装置165内のデータ取得回路に転送され、そこで干渉電気信号162がデジタルデータに変換される。光干渉信号の最大周波数は、TOI LIDARシステムの最小測距深度に相当する。光干渉信号の最大周波数は、データ取得または信号処理装置165におけるデジタイザのナイキストサンプリング周波数よりも大きい。
【0041】
光路155a、155bに印加される光干渉信号の最小周波数は、TOI LIDARシステム100の最大測距深度に相当する。検出された光干渉の時間遅延は、光干渉信号の包絡線の立ち下がりエッジで測定する。
【0042】
その後、デジタルデータをコンピュータ170に転送し、さらに処理および表示する。いくつかの実施形態において、信号処理装置165は、単一のユニットとしてコンピュータ170と一体化してもよい。
【0043】
様々な実施形態では、コンピュータ170は、変調/走査制御装置175に接続される。他の実施形態では、コンピュータ170を変調/走査制御装置175と一体化する。変調/走査制御装置175は、コヒーレント光源105に印加する変調制御信号177の変調度、周波数、および形状を決める変調サブ回路を有する。変調/走査制御装置175はさらに、変調/走査同期信号179を信号処理装置165およびスキャナ130に提供する走査制御回路を有する。この走査制御回路は、スキャナ130に印加する適切な変調/走査同期信号179を生成するのに使用する所望の走査パターンを作成する。
【0044】
スキャナ130は、サンプルパルス波長変調コヒーレント光135を分散させて、TOI測定に基づく画像を形成する1次元または2次元スキャナとして実装してもよい。一次元走査パターンは、時間的に線形または非線形であってもよく、一方向または双方向であってもよい。TOI LIDARシステム100のいくつかの実装では、2次元走査パターンは、時間的に線形であっても非線形であってもよい。ラスタースキャン、スパイラルスキャンなど、測定情報を収集するためのパターンであってもよい。スキャナ130は、機械的に検流計ミラー、微小電気機械システム(MEMS)、圧電アクチュエータとして、または光学的に音響光学(AO)偏向器を備えて、またはソリッドステート式のスキャナとして実現してもよい。測定情報を収集するために必要な走査動作を提供するという本開示の原理に沿った他の方法があってもよい。
【0045】
図1Bを参照すると、このTOI LIDARシステム100は、図1Aと同じ構造を有するが、パルス波長変調コヒーレント光の第2の部分が参照アーム200に印加される。自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装される参照アーム200の光ファイバケーブルは、参照アーム200の光路長がTOI LIDARシステム100の最大測距深度と一致するように追加の光路142を有する。参照アーム200内のパルス波長変調コヒーレント光は、第2サーキュレータ210の入力ポートに印加される。パルス波長変調コヒーレント光は、第2サーキュレータ210の入出力ポートから参照アーム200の追加セグメントに送信される。コヒーレント光は、ミラー215に入射する。ミラー215は、コヒーレント光に遅延を与えるが、いくつかの実施形態では、光遅延線で置き換えられる。ミラー215は、コヒーレント光を第2サーキュレータ210に直接反射して戻し、カプラ150に導く。ミラーが反射したコヒーレント光は、後方反射したパルス波長変調コヒーレント光と結合され、光干渉信号を形成する。ミラー215は、TOI LIDARシステム100の最大範囲に相当する参照像平面として機能する。ミラー215があれば、追加の経路長202が第2のサーキュレータ210とミラー215との間に位置する場合、光の二重通過によって追加の経路長202の長さを半分にすることができる。ミラー215によって、コストダウンと省スペース化が可能になる。
【0046】
ミラー215を光遅延線に置き換える場合、参照アーム全経路長の微調整の自由度を高めることができる。遅延の調整可能な範囲は通常センチメートルのオーダーであるため、全体の撮像範囲を変更するというよりは、主にシステム変動の小さな変更に対応するためである。
【0047】
光干渉信号は、自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装された光路155aおよび155bに印加される。上述のように、光経路155aおよび155bに印加した光干渉信号は、平衡光検出器160に転送されて、光経路155aおよび155bからの光干渉信号が干渉電気信号162に変換される。
【0048】
いくつかの実装では、図1Aおよび図1Bの参照アーム140、200が、サンプルアーム103より長い光路長を有してもよい。サンプルアーム122と参照アーム140、200からのパルス波長変調コヒーレント光信号が干渉するタイミングは、干渉包絡線の立ち下がりエッジとなる。様々な実施形態において、参照アーム140及び200は、サンプルアーム122よりも短い光路長を有してもよい。サンプルアーム122と参照アーム140および200からのパルス波長変調コヒーレント光信号の干渉のタイミングの発生は、干渉包絡線の立ち上がりエッジとなる。
【0049】
図1Cを参照すると、このTOI LIDARシステム100は、図1Aと同じ構造を有するが、参照アーム140のパルス波長変調コヒーレント光の第2部分は、第1カプラ120を出て第3カプラ300に入射する。参照アーム140は、自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装される。第3カプラ300は、パルス波長変調コヒーレント光の第2部分を2つのパルス波長変調コヒーレント光ビームにさらに分割する。パルス波長変調コヒーレント光ビームの第2の部分のうち第1部分は、同様に自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装される第2の参照アーム305に印加される。第2の参照アーム305のパルス波長変調コヒーレント光ビームの第2の部分のうち第2部分は、掃引線形較正装置315に印加される。
【0050】
掃引線形較正装置315は、コヒーレント光源の波長掃引の線形性105を較正するための電気信号を発生するマッハツェンダー干渉計やファブリペローフィルタである。波長変調が光周波数領域で線形でない場合、掃引線形較正装置315が、マッハツェンダー干渉計またはファブリペローフィルタのいずれかからの固定経路長差から干渉信号を生成する。一般的には、光検出器や平衡検出器を用いて電気信号を発生させる。そのゼロ交差タイミングは、光周波数領域において等間隔に対応し、信号処理装置165内のデータ取得システムに光クロックを提供する。掃引線形較正装置315は、平衡検出器160で検出された干渉信号162を較正する。掃引線形較正装置315の出力は、信号処理装置165に転送される。
【0051】
参照アーム305の第2パルス波長変調コヒーレント光ビームは、第2カプラ150に印加される。上記のように、後方反射されたコヒーレント光は、カプラ150に導かれる。参照アーム305内の参照コヒーレント光は、後方反射したコヒーレント光と結合され、光干渉信号を形成する。光干渉信号は、自由空間経路、光ファイバ、または光導波路として実装された光路155aおよび155bに印加される。上述のように、光干渉信号は、光経路155aおよび155bを介して転送され、平衡光検出器160に転送されて、光経路155aおよび155bからの光干渉信号が干渉電気信号162に変換される。
【0052】
図1Dは、本開示の原理を具現化した図1A図1B、及び図1Cの光ファイバケーブルを有するサンプルアーム122を受け入れるよう構成したスキャナ130の概略図である。サンプルアーム122は、スキャナ130に挿入され、固定される。サンプルアーム122の遠位端は、屈折率分布型ファイバロッド122aに接続または接触している。屈折率分布型ファイバロッド122aは、高速動作のために全体的な効率を高めるために、屈折率分布型ファイバロッド121aの遠位面に形成された加工(engineered)屈折率分布型レンズ122bを有する。別の実施形態では、この加工屈折率分布型レンズ122bを、屈折率分布型ファイバロッド121aと接触する別個のレンズとして形成する。遠距離照明のための加工屈折率分布型レンズ122bを備えた屈折率分布型ファイバロッド121aには低い開口数が要求されるが、対象物からの後方反射パルス波長変調コヒーレント光を受信するためには高い開口数が要求される。加工屈折率分布型レンズ122bを有する屈折率分布型ファイバロッド122aにおいて、加工先端部の中心部分を通って出てくる軸上のサンプルパルス波長変調コヒーレント光135光は平行光である。加工屈折率分布型レンズ122bの環状部分122cを通過する物体からの軸外後方反射パルス波長変調コヒーレント光136を、サンプルアーム122へと戻るよう結合する。加工屈折率分布型(GRIN)レンズ122bを有する屈折率分布型ファイバロッド122aは、単一モードファイバを備えた屈折率分布型(GRIN)光ファイバレンズ、Fewモード(few-mode)ファイバを備えたGRIN光ファイバレンズ、光ファイバボールレンズ、GRINレンズアセンブリ、または自由空間コリメータとして実装される。加工屈折率分布型レンズ122bを備える屈折率分布型ファイバロッド122aを実装する場合、これら列挙したもののいずれかを組み合わせてもよい。加工屈折率分布型レンズ122bは、先細先端部、フレネル面、メタサーフェス(meta-surface)、またはそれらの組み合わせで形成される。
【0053】
サンプルアーム122は、スキャナ130に挿入され、固定される。サンプルアーム122によって、パルス状波長変調コヒーレント光135を第1ミラー132に放射する。第1ミラー132は、水平方向に回転134aして、パルス波長変調コヒーレント光135を水平走査パターンで反射する。水平走査パターンにより、所望の視野をカバーする。反射されたパルス波長変調コヒーレント光135は、第2ミラー133に入射する。第2ミラー133は垂直に回転134bし、垂直走査パターンを生成する。垂直走査パターンにより、垂直視野をカバーする。
【0054】
軸外後方反射パルス波長変調コヒーレント光136は、所望の測定対象物によって反射され、スキャナ130へひいては第2ミラー133へ、さらには第1ミラー132へと後方反射し、軸外後方反射パルス波長変調コヒーレント光136は反射してサンプルアーム122の加工屈折率分布型レンズ122bを有する屈折率分布型ファイバロッド122aへと伝達される。軸外後方反射パルス波長変調コヒーレント光136は、加工屈折率分布型レンズ122bを備えた屈折率分布型ファイバロッド122aを有するサンプル122に軸外で伝達される。光は、屈折率分布型ファイバロッド122aを通って伝達され、サンプルアーム122に運ばれてさらに処理される。
【0055】
図2Aは、本開示の原理を具現化した電気TOI測定回路のブロック図である。平衡検出器160が生成した図1A図1B図1Cの干渉電気信号162は、包絡線検出器400で受信され、干渉電気信号162の包絡線405に変換される。包絡線検出器400は、高周波(RF)電力検出器、二乗平均平方根(RMS)検出器、または周波数復調器として実装される。高周波(RF)電力検出器、二乗平均平方根(RMS)検出器、または周波数復調器は、当技術分野で知られており、市販の装置である。高周波(RF)電力検出器、二乗平均平方根(RMS)検出器、または周波数復調器は、干渉電気信号162中の高周波成分を除去することで干渉電気信号162の包絡線を識別する。
【0056】
包絡線信号405は、エッジ検出器410に転送される。エッジ検出器410があるパルスイベントを決定し、エッジ検出器の出力410にそのパルスイベントを配置する。パルスイベントとは、包絡線信号405の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを示すものである。エッジ検出器410は、エッジ-グリッチ変換器、XORゲート及び遅延回路、微分回路等として実現される。エッジ-グリッチ変換器、XORゲートおよび遅延回路、微分回路も同様に当技術分野で知られており、市販されている。
【0057】
エッジ検出器の出力415は、時間-デジタル変換器420の入力と接続される。時間-デジタル変換器420は、時間差信号を生成し、これを時間-デジタル変換器420の出力430に転送する。この時間差信号は、パルスイベント405およびパルスイベント425間の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時間を示す。パルスイベント425は、変調/走査制御装置175から転送された光源変調信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに対応する。パルスイベント425は、時間間隔をカウントする際に、時間-デジタル変換器420を起動するためのトリガとなる。エッジ検出器410のパルス出力415によって、時間-デジタル変換器420による時間間隔のカウントを終了させるためのパルスイベントが得られる。時間-デジタル変換器420の出力430における一連の時間差信号は、コンピュータ170が表示する画像を形成するための深度測定値に変換される。
【0058】
図2Bは、本開示の原理を具現化した信号処理装置のプログラム構造を示すブロック図である。平衡検出器160が生成する図1A図1B図1Cの干渉電気信号162は、データ取得モジュール440でデジタル化される。データ取得モジュール440は、変調/走査制御装置175からの変調/走査同期信号179によってトリガされる。干渉電気信号がデジタル信号442に変換され、データ取得モジュール440の出力に配置される。干渉電気信号162の最大周波数は、TOI LIDARシステム100の最小測距深度に相当する。干渉電気信号162の最大周波数は、データ取得モジュール440のデジタイザのナイキストサンプリング周波数よりも大きい。干渉電気信号の最小周波数は、TOI LIDARシステム100の最大測距深度に相当する。検出された干渉電気信号162の時間遅延は、干渉電気信号162の包絡線の立ち下がりエッジで測定される。
【0059】
デジタル信号442は、信号処理装置165によって実行される包絡線検出器プロセス445によって処理されて、デジタル干渉電気信号442の包絡線信号447を求める。包絡線検出器プロセス445は、デジタル信号442のヒルベルト変換の絶対値をとることによって実行される。次に、エッジ検出プロセス450によって包絡線信号447を処理し、干渉電気信号の発生タイミングを識別する。包絡線信号447と変調/スキャン同期信号179の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの間の時間差457を計算することができる。
【0060】
図2Cは、本開示の原理を具現化した参照アームのパルス入力フリンジ460と包絡線465をプロットした図である。図2Cは、ゼロ(0)メートル位置で対象物を検出するプロトタイプTOIシステム100の干渉電気信号の例である。図2Dは、本開示の原理を具現化したサンプルアームの後方反射パルスフリンジ470と包絡線475をプロットした図である。図2Dは、180メートル位置で対象物を検出するプロトタイプTOIシステム100の干渉電気信号の例である。図2Aのエッジ検出器410または図2Bのエッジ検出器プロセス450は、参照アーム460の包絡線の立ち下がりエッジtの時間と、サンプルアーム475の包絡線の立ち下がりエッジtの時間とを求める。カウンタ420またはカウンタプロセス455は、参照アームの立ち下がりエッジ時間tとサンプルアームの立ち下がりエッジ時間tとの間の時間間隔をカウントする。測定する対象物の距離は、次の式で求める。
距離=c*(t-t
ただし
cは光速を、
は、参照アームの立ち下がりエッジ時間を、
は、サンプルアームの立ち下がりエッジ時間を示す。
一連の時間差457は、深度情報に変換され、コンピュータ170が表示する画像を形成することができる。
【0061】
図3は、本開示の原理を具現化したTOI LIDARシステムのフレームベースの速度測定方法を示す図である。各フレーム490a、490a、490b、・・・、490m、490m+1、・・・、490y、490zは、図1A図1B図1Cの平衡光検出器160が取り込んだものであり、データ495nおよび495m+1を表す。データ495nおよび495m+1は、信号処理装置165に転送され、図2Aおよび図2Bに記載したように処理されて、データの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを求める。したがって、データの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの判定により、データ495nと495n+1間の時間差が得られる。次に、データ495nと495n+1間の距離を、データ495nと495n+1の間の時間差(tm+1-t)として求める。データ495nと495m+1の間の時間差(tm+1-t)に、光路155aおよび155bに印加した光干渉信号のサンプリングのフレームレートを掛けて、測定対象物の速度を求める。
【0062】
図4Aは、本開示の原理を具現化した図1A図1B、および図1Cの変調ドライバに組み込まれた小信号過渡変調器のブロック図である。過渡光源変調器は、DC電圧源VDCおよび変調電圧VMODを受信するよう接続された加算回路500を有する。加算回路500は、DC電圧源VDCと変調電圧VMODとを加算合成し、変調信号505を形成する。変調信号505は、電圧源のVDCの電圧よりも小さい振幅を有する。変調信号505は、方形波、三角波、正弦波、鋸歯状波、または任意の波形、さらにはこれらの波形の組み合わせを含む波形のグループから選択される。過渡発生器507は、変調信号505に電圧スパイクを導入することによって、スパイク状過渡変調信号508を生成する。スパイク状過渡変調信号508は、レーザドライバ510に印加される。スパイク状過渡変調信号508の電圧は、コヒーレント光源105を駆動するために電流に変換される。過渡発生器507の機能は、過渡光源変調器の実効インダクタンス値を変更して、レーザドライバ510の応答時間を短縮するために非常に大きなスパイク状の過渡電流を生成することであり、これによって従来のレーザ駆動方法の速度制限を克服する。過渡発生器507の概略については、図4Bで後述する。あるいは、変調信号505を変換した電流は、コヒーレント光源105のレーザダイオードの温度を安定させるために用いられる熱電冷却装置に印加される。熱電冷却装置を介して変調電流を投入することにより、コヒーレント光源105のレーザダイオードの温度が変化する。コヒーレント光源105のレーザダイオードは、ダイオード温度を監視するためのサーミスタを内蔵しており、これによって、熱電冷却装置とサーミスタとによって、温度監視と正確な温度変調とをもたらす制御ループを形成できる。
【0063】
コヒーレント光源105は、コヒーレント光信号520を干渉計に出射する。図1A図1B図1Cの参照アーム140、200、305とサンプルアーム122の間に光路長の差がある場合には、光干渉を導入するように波長/光周波数の波形変調を選択する。
【0064】
図4Bは、本開示の原理を具現化した、過渡光源変調器およびコヒーレント光源の概略図である。加算回路500は、DC電圧源VDCと、デジタル変調信号VDMODによって制御されるアナログ変調信号VAMODとを結合するために使用する2×1マルチプレクサMUX1を有する。2×1マルチプレクサMUX1の第1入力はDC電圧VDCであり、より低いベース電圧を提供する。2×1マルチプレクサMUX1への第2入力は、出力電圧を形成するためのより高い電圧である変調電圧VMODである。2×1マルチプレクサMUX1の出力Vによって、過渡発生器507の入力である過渡変調信号505が得られる。過渡発生器507の出力は、レーザドライバ510の入力に印加される過渡変調信号508である。レーザドライバ510は、過渡変調信号508を電流に変換し、コヒーレント光源105を駆動する。
【0065】
マルチプレクサMX1は、2つのトランスファゲートTG1、TG2によって形成される。これら2つのトランスファゲートTG1、TG2は並列に接続される。2つのトランスファゲートTG1およびTG2の各転送ゲートは、当技術分野で知られているように、接続された相補NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを有する。相補NMOSおよびPMOSトランジスタのそれぞれのソースおよびドレインが接続される。直流電圧源VDCと変調電圧VMODとが、それぞれ転送ゲートTG1、TG2のソースに接続される。デジタル変調信号VDMODは、第1インバータINV1の入力に接続される。第1インバータINV1の出力は、第2インバータINV2の入力に接続される。第1インバータINV1の出力は、トランスファゲートTG1の逆相ゲートとトランスファゲートTG2の同相ゲートに接続される。第2インバータINV2の出力は、トランスファゲートTG2の逆相ゲートとトランスファゲートTG1の同相ゲートに接続される。
【0066】
直流電圧源VDCは、トランスファゲートTG1の入力ソース/ドレインに接続され、変調電圧VMODは、トランスファゲートTG2の入力ソース/ドレインに接続される。トランスファゲートTG1とトランスファゲートTG2の出力ソース/ドレインは、コンパレータCOMP1の逆相入力に接続される。コンパレータCOMP1の同相入力は、制限電圧源Vに接続される。コンパレータCOMP1は、トランスファゲートTG1、TG2の出力電圧Vと制限電圧源Vの電圧レベルとを比較する。制限電圧源Vの電圧レベルがトランスファゲートTG1およびTG2の出力電圧Vよりも大きい場合、コヒーレント光源105は、後述するように、安全のためにシャットダウンされる。
【0067】
2×1マルチプレクサMX1は、加算回路500の出力として、過渡発生器507の入力に印加される出力電圧Voを有する。過渡発生器507は、インダクタLを有し、その第1端子は2×1マルチプレクサMX1の出力Voに接続される。インダクタLの第2端子は、コンデンサCおよび抵抗器Rの第1端子に共通に接続される。コンデンサCの第2端子は接地基準電源に接続され、この第2端子がレーザドライバ510に接続される。
【0068】
レーザドライバ510は、ゲートが過渡発生器507の出力に接続された第1NMOSトランジスタTX1を有する。MOSトランジスタTX1のドレインは、コヒーレント光源LD1 105のアノードに接続される。第1MOSトランジスタTX1のソースは、第2MOSトランジスタTX2のドレインに接続される。第2MOSトランジスタTX2のソースは、抵抗Rの第1端子に接続される。第2MOSトランジスタTX2のゲートは、コヒーレント光源LD1 105のシャットダウン指令を受け入れるコンパレータCOMP1の出力に接続される。抵抗器Rの第2端子は接地基準電源に接続される。抵抗Rにより、コヒーレント光源LD1 105のシャットダウン電圧を設定する。NMOSトランジスタTX1のゲートは、レーザ電流を生成する電流源として構成する。
【0069】
本開示の親の実施形態では、過渡発生器507がなく、第1MOSトランジスタTX1のゲート容量ならびに第1MOSトランジスタTX1に接続する配線上の抵抗およびインダクタンスは、変調信号505の立ち上がりでオーバーシュートやスパイクが無視できるレベルである。2×1マルチプレクサMX1の出力Vのスイッチングの遷移時間により、インダクタンスL、第1NMOSトランジスタTX1の大きなゲートサイズ、配線上のコンデンサCがオーバーシュートを押し上げ、電流スパイクや過渡信号を発生させる。過渡電流スパイクの程度は、変調信号505の立ち上がり時間、インダクタンスLのパラメータ、および第1NMOSトランジスタTX1のゲートサイズに大きく依存する。第1NMOSトランジスタTX1と第1NMOSトランジスタTX1の立ち上がりエッジで正のスパイクが発生する。直流電圧源VDCのベース電圧レベルに切り替わって戻る際に、第1NMOSトランジスタTX1の立ち下がりエッジで負のスパイクが発生する。したがって、変調信号505の切り替えごとに2つのスパイクイベントが存在する。
【0070】
変調信号505のスイッチングパルス幅は、電流源トランジスタTX1を駆動する上で重要な役割を果たす。立ち上がりエッジで、電流スパイクが直ちに発生し、リンギング(ringing)が続く。その後、電流スパイクは、変調信号505の振幅に等しい電圧レベルまでコンデンサCの充電電圧へと徐々に減少する。変調信号505の立ち下がりエッジで、2×1マルチプレクサMX1が切り替えられてDC電圧源VDCのベース電圧レベルに戻る電圧レベルに戻ると、負のスパイクが発生する。
【0071】
重要な点は、変調信号505のスイッチングパルス幅を制御して、過渡変調信号508の正と負の過渡電圧スパイクを融合させることである。正と負の過渡電圧スパイクの融合により、マルチプレクサMX1のオンとオフの切り替えによる2つのスパイク間の電圧リンギングと整定(settling)の時間が確保される。正と負の過渡電圧スパイク間の時間が短いほど、TOI LIDAR用途に適している。正負の過渡電圧スパイクの時間差は、検出対象がLIDAR装置に非常に近い場合を考慮したTOI LIDARの検出距離(エッジ検出)に寄与することとなる。
【0072】
コヒーレント光源105は、コヒーレントな光源105である。コヒーレント光源105は、レーザダイオード、量子カスケードレーザ、または光ファイバレーザの一種で、デバイスの活性領域が周期構造素子または回折格子を含むものである。電源電圧源VCCは、コヒーレント光源LD1 105に印加される。
【0073】
デジタル変調信号VDMODがhighおよびlowであれば、コヒーレント光源105をそれぞれオンおよびオフとすることができる。デジタル変調信号VDMODがhighであると、アナログ変調信号VAMODは、光源105に小信号変調を提供することができる。マルチプレクサの出力Vが所定の制限電圧Vよりも高く、第2のトランジスタTX2による遷移時間が短い場合、光源LD1 105は非活性化される。保護電流制限の設定は、NMOSゲートTX2およびコヒーレント光源LD1 105の電流制限特性に基づく。本実施形態では、NMOSゲートTX2の耐圧は20Vであり、保護には十分である。コヒーレント光源LD1 105の過渡電流は高いが、過渡電流の持続時間は約1ナノ秒なので、コヒーレント光源LD1(105)としては問題ないはずである。
【0074】
デジタル変調信号VDMODがローからハイに遷移する間、過渡発生器507は、光源LD1内の電流を直ちに排出する第1トランジスタTX1をスイッチオンする電圧スパイクを生成し、したがって、TOI用途向けの短い遷移時間が生成される。
【0075】
図5Aは、本開示の原理を具現化したSSM-TOI電気測定回路を示すブロック図である。平衡検出器160から発生した干渉電気信号162は、周波数-電圧変換器525で受信される。干渉電気信号162の周波数は、周波数-電圧変換器525の出力530で電圧に変換される。この電圧は、干渉電気信号162の周波数に比例する。周波数-電圧変換器525は、FM復調器、周波数検出器、または当技術分野で知られている任意の周波数-電圧変換回路を備える。出力530の電圧レベルが、エッジ検出器535の出力540にパルスを発生させるエッジ検出器535への入力となる。このパルスは、立ち上がりエッジ、すなわち周波数-電圧変換器525の出力530における電圧レベルの立ち上がりエッジ、または立ち下がりエッジに相当する。エッジ検出器535は、エッジ-グリッチ変換器、XORゲートと遅延回路、微分回路、または当技術分野で既知の任意のエッジ検出回路によって形成される。時間-デジタル変換器550は、時間-デジタル変換器550の出力555で時間差信号ΔTDを生成する。この時間差信号ΔTDは、エッジ検出器535の出力540における立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのパルスと、変調/走査制御装置175からの変調/走査同期信号179との差分である。一連の時間差507は、深度に変換され、コンピュータ170が表示する画像を形成する。
【0076】
図5Bは、本開示の原理を具現化した、SSM-TOI電気測定を行うよう構成する信号処理装置175のプログラム構造を示すブロック図である。平衡検出器160が生成した干渉電気信号162は、変調/走査制御装置175からの変調/走査同期信号179によってトリガされたデータ取得モジュール605によってデジタル化される。干渉電気信号162は、出力565でデジタル干渉信号に変換される。干渉電気信号162の最大周波数は、TOI LIDARシステム100の最小測距深度に相当する。干渉電気信号162は、データ取得モジュール605のデジタイザのナイキストサンプリング周波数よりも大きい。
【0077】
光路155a、155bに印加される光干渉信号の最小周波数は、TOI LIDARシステム100の最大測距深度に相当する。検出された電気干渉162の時間遅延は、干渉電気信号162の包絡線の立ち下がりエッジで測定される。干渉デジタル信号は、周波数検出器プロセス570によって処理されて、周波数検出器プロセス570の出力575でその瞬間周波数値を識別する。周波数検出器プロセス570は、短時間フーリエ変換、ウェーブレット変換、または当技術分野で知られている別の周波数検出器プロセスなどの方法を実行する。次に、周波数検出器プロセス570の出力575での瞬時周波数値は、エッジ検出器プロセス585によって処理されて、エッジ検出器プロセスの出力590で、干渉電気信号162の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのタイミングの発生および時間差ΔTDを識別する。時間差ΔTDは、出力575の瞬時周波数値の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと変調/走査同期信号179との間の時間として求める。一連の時間差ΔTDは、深度に変換され、コンピュータ170が表示する画像を形成する。
【0078】
図6は、本開示の原理を具現化した、SSM-TOIドップラー速度測定を実行するよう構成したデジタル信号処理装置のブロック図である。図6は、データ取得及び信号処理装置165が利用する、図1Cの掃引線形較正装置315によって実行される掃引線形化補正を示す図である。TOI LIDARシステム100がSSM-TOIモードで動作する場合、測定対象物の速度情報は、干渉電気信号162に符号化される。平衡光検出器160が生成した干渉電気信号162は、変調ドライバ175からの変調/走査同期信号179および光周波数較正クロック600によってトリガされたデータ取得モジュール605によってデジタル化され、干渉電気信号162をデータ取得モジュール605の出力607でデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、光周波数空間において線形である。干渉電気信号162の最大周波数は、TOI LIDARシステム100の最小測距深度に相当する。干渉電気信号162は、データ取得モジュール605のナイキストサンプリング周波数よりも大きい。
【0079】
干渉電気信号162の最小周波数は、TOI LIDARシステム100の最大測距深度に相当する。検出された干渉電気信号162の時間遅延は、干渉電気信号162の包絡線の立ち下がりエッジで測定される。光周波数較正クロック600は、マッハツェンダー干渉計、ファブリペロー共振器、エタロン共振器、または光周波数較正クロック600の生成に適した他の任意の干渉計または共振器から生成される。デジタル信号607は、瞬間周波数値を求めるための周波数検出器プロセス610への入力となる。瞬時周波数値は、周波数検出器プロセス610の出力611に配置される解(solution)である。様々な実施形態において、データ取得モジュール605の出力607におけるデジタル信号が光周波数空間においてそもそも線形である場合、光周波数較正クロック600は必要ではない。周波数検出器は、短時間フーリエ変換、ウェーブレット変換、または他の適切な周波数検出器プロセスとして実現され得る。次に、周波数検出器プロセス610の出力611での瞬間周波数値は、干渉の発生タイミングを識別するために、エッジ検出器プロセス615によって処理される。次に、エッジ検出器プロセス615は、瞬時周波数値の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと変調/スキャン同期信号179との間の時間差ΔTDを計算し、その後、周波数検出器プロセス610の出力620として時間差ΔTDを配置する。
【0080】
SSM-TOIドップラー速度測定の他の実施態様では、データ取得モジュール605の出力607におけるデジタル干渉電気信号が、対象物の移動速度を計算するためのドップラー速度計算プロセス625への入力となる。対象物の移動速度は、ドップラー速度算出プロセス625の出力630である。ドップラー速度計算プロセス625の1つの実施形態において、ドップラー速度計算プロセス625は、測定対象物の移動速度に比例する連続する前方掃引と後方掃引との干渉電気信号162の周波数の時間差ΔTDを測定することによって実現される。変調/走査同期信号179の対称性により、測定誤差を最小限に抑えることができる。エッジ検出器620の出力における一連の時間差ΔTDと測定対象物の移動速度とをそれぞれ深度と速度に変換し、コンピュータ170が表示する画像を形成することができる。SSM-TOIドップラー速度測定のいくつかの実装形態では、干渉電気信号162においてドップラー周波数シフトにより導入される速度を少なくとも1つのローパスフィルタを用いて直接抽出してもよい。周波数シフトを検出し、デジタル信号処理を必要とせずに速度電気信号に変換することができる。
【0081】
図7は、本開示の原理を具現化する、干渉時間および飛行時間集積回路のブロック図である。平衡光検出器160から発生した干渉電気信号162は、包絡線検出器650に転送される。包絡線検出器650は、包絡線検出器650の出力652に印加される干渉電気信号162の包絡線信号を求める。包絡線検出器650は、高周波(RF)電力検出器、二乗平均平方根(RMS)検出器、または周波数復調器として実装される。次に、干渉電気信号162の包絡線信号が第1エッジ検出器655を通過する。第1エッジ検出器655は、第1エッジ検出器655の出力657において、包絡線検出器650の出力657における干渉電気信号162の包絡線信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジに対応する第1パルス信号を生成する。エッジ検出器655は、エッジ-グリッチ変換器、XORゲートと遅延回路、微分回路、または当技術分野で既知の任意のエッジ検出回路によって形成される。
【0082】
後方反射コヒーレント光145からの電気信号が平衡検出器160のモニタチャネルから抽出され、後方反射電気信号145を形成する。モニタチャネルからの後方反射電気信号145は、後方反射電気信号の145のパワースペクトルであり、包絡線信号とみなすことができる。後方反射電気信号145は、第2エッジ検出器660の入力である。第2エッジ検出器660は、第2エッジ検出器660の出力662に第2パルス信号を発生する。
【0083】
第1エッジ検出器655の出力657の第1パルス信号、第2エッジ検出器660の出力662の第2パルス信号、および変調/走査同期信号179が、マルチチャネル時間-デジタル変換器665に印加される。マルチチャンネル時間-デジタル変換器665は、時間-デジタル変換器665の出力670に第1の時間差信号を生成する。第1時間差信号ΔTD1は、第1のパルス信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと、光源変調/スキャン同期信号179の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに対応する変調/スキャン同期信号179との間の時間をデジタル化したものである。
【0084】
マルチチャンネル時間デジタル変換器665は、第2エッジ検出器660の出力662における第2パルス信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと、光源変調の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに対応する変調/走査同期信号179との間の第2時間差信号ΔTD2を生成する。第1時間差信号ΔTD1と第2時間差信号ΔTD2とを平均化または加重平均化する。平均化または加重平均化された第1時間差信号ΔTD1と第2時間差信号ΔTD2は深度に変換され、コンピュータ170が表示する画像を形成する。
【0085】
図8Aは、本開示の原理を具現化する、SSM-TOI電気計測を採用した対象物の距離を求める方法のフローチャートである。レーザ光ビームを発生する(Box800)。レーザ光ビームを波長変調信号または周波数変調信号で変調し(Box805)、レーザ光ビームの波長または周波数を調整する。次に、レーザ光ビームを偏光して(Box810)、レーザ光の偏光状態を調整し、光干渉信号または干渉電気信号の振幅を最大化する。
【0086】
レーザ光ビームの第1部分を、サンプリング光ファイバケーブルに結合する(Box815)。レーザ光ビームの第2部分を、参照光路に結合する(Box820)。変調レーザ光源からの距離を求める対象物の場所でレーザ光ビームの第1部分を走査する(Box825)。
【0087】
レーザコヒーレント光ビームの第1部分の一部を、測定対象物から後方反射させて受光する(Box830)。レーザ光ビームの第1部分の後方反射部分を、レーザ光ビームの第2の部分と結合し(Box835)、光干渉コヒーレント光信号を形成する。光干渉コヒーレント光信号を平衡光検出器に送信し(Box840)、光干渉コヒーレント光信号を振動する電気干渉信号に変換する(Box845)。振動する電気干渉信号をデジタル化する(Box850)。干渉電気信号の最大周波数は、TOI LIDARシステムの最小測距深度に相当し、デジタル化のナイキストサンプリング周波数よりも大きい。干渉電気信号162の最小周波数は、TOI LIDARシステム100の最大測距深度に相当する。
【0088】
デジタル電気干渉信号の包絡線が包絡線検出プロセスを経て、デジタル電気干渉信号の包絡線を識別する(Box855)。デジタル電気干渉信号の包絡線の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時間を求める(Box860)。デジタル電気干渉信号の包絡線の立ち上がりまたは立ち下がりエッジと変調/走査同期信号の時間差を求め(Box865)、測定対象物までの距離を算出する(Box870)。
【0089】
図8Bは、本開示の原理を具現化する、SSM-TOI電気計測を採用した対象物の速度を求める方法のフローチャートである。SSM-TOI電気測定を利用して対象物の速度を求める方法は、図8Aの方法ステップを反復して実行すること(Box875)から始まる。対象物の速度を、距離の時間に対する変化から求める(Box880)。
【0090】
特に好ましい実施形態を参照して本開示を例示および説明してきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更がなされ得ることを当業者であれば理解されるであろう。特に、図1A図1B、または図1CのTOI LIDARシステム100は、光ファイバ、バルク光学系、集積光回路、または当技術分野で知られている光学素子の任意の組み合わせとして実装することができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
【外国語明細書】