IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NLTテクノロジー株式会社の特許一覧

特開2023-152643光線方向制御素子、表示装置及び光線方向制御素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152643
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】光線方向制御素子、表示装置及び光線方向制御素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20190101AFI20231005BHJP
【FI】
G02F1/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191434
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022058156
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】城川 政宜
(72)【発明者】
【氏名】岡本 守
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BD23
2K101BD24
2K101BD25
2K101BF23
2K101BF41
2K101EC02
2K101ED01
2K101EE02
2K101EF23
2K101EG52
2K101EJ11
2K101EK02
(57)【要約】
【課題】出射光の角度分布が広い状態において、透過率が高い光線方向制御素子、表示装置及び光線方向制御素子の製造方法を提供する。
【解決手段】光線方向制御素子100は、第1透光性基板10と第2透光性基板20とに挟まれている透光領域30と、透光領域30の間に位置する光吸収領域40と、光吸収領域40に封入された透光性分散媒52と、透光性分散媒52に分散された電気泳動粒子54とを備える。透光領域30は、第1透光性基板10から第2透光性基板20に向かって延びる第1透光領域32と、第1透光領域32から第2透光性基板20に向かって延びる第2透光領域34とを有する。第1透光領域32の高さH1は第2透光領域34の高さH2よりも低く、第1透光領域32の幅D1は第2透光領域34の幅D2よりも広い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に第1透光性電極を有する、第1透光性基板と、
前記第1透光性基板に対向し、前記第1透光性基板の前記主面に対向する主面に第2透光性電極を有する、第2透光性基板と、
所定の方向に並び、前記第1透光性基板と前記第2透光性基板とに挟まれている、複数の透光領域と、
前記透光領域の間に位置する、複数の光吸収領域と、
前記光吸収領域に封入された、透光性分散媒と、
光を吸収し、前記透光性分散媒に分散され、印加される電圧によって分散状態が変化する、電気泳動粒子と、を備え、
前記透光領域のそれぞれは、前記第1透光性基板の前記主面から前記第2透光性基板に向かって、前記第1透光性基板の前記主面に対して垂直に延びる第1透光領域と、前記第1透光領域の上面から前記第2透光性基板に向かって、前記第1透光性基板の前記主面に対して垂直に延びる第2透光領域と、を有し、
前記光吸収領域のそれぞれは、前記第1透光領域の間に位置する第1光吸収領域と、前記第2透光領域の間に位置する第2光吸収領域と、を有し、
前記第1透光領域の前記第1透光性基板の前記主面からの高さは、前記第2透光領域の前記第1透光領域の上面からの高さよりも低く、
前記所定の方向を含み、前記第1透光性基板の前記主面に対して垂直な断面で断面視した場合、前記第1透光領域の幅は前記第2透光領域の幅よりも広い、
光線方向制御素子。
【請求項2】
前記第1透光性電極と前記第2透光性電極との間に所定の第1電圧が印加された場合に、前記電気泳動粒子が前記第1光吸収領域の内に集まる、
請求項1に記載の光線方向制御素子。
【請求項3】
前記第1透光性電極と前記第2透光性電極との間に所定の第2電圧が印加された場合に、前記電気泳動粒子が前記第1透光性基板の側に集まる、
請求項1に記載の光線方向制御素子。
【請求項4】
前記第1透光領域の前記第1透光性基板の前記主面からの高さと、前記第2透光領域の前記第1透光領域の上面からの高さとの比が、1:2.6以上である、
請求項1に記載の光線方向制御素子。
【請求項5】
前記第1透光領域の幅が、前記第1透光性基板に向かって、前記第2透光領域の幅から連続的に広がる、
請求項1に記載の光線方向制御素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光線方向制御素子と、
表示パネルと、を備え、
前記光線方向制御素子は、前記表示パネルの表示面に配置されている、
表示装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光線方向制御素子と、
透過型液晶表示パネルと、
前記透過型液晶表示パネルの表示面と反対側に配置され、前記透過型液晶表示パネルに光を供給するバックライトと、を備え、
前記光線方向制御素子は、前記透過型液晶表示パネルと前記バックライトとの間に配置されている、
表示装置。
【請求項8】
モールド基板と、前記モールド基板の主面の上に該主面に対して垂直に設けられ所定の方向に並ぶ複数の第1柱部と、前記複数の第1柱部のそれぞれの上面に前記モールド基板の前記主面に対して垂直に設けられた第2柱部とを有する、モールドを準備する工程と、
前記モールドに透光性樹脂を充填する工程と、
主面に第1透光性電極を有する第1透光性基板の該主面を、前記第2柱部と前記第2柱部の間から露出している前記透光性樹脂とに押し当てる工程と、
前記第1透光性基板の前記主面を押し当てられた、前記透光性樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記透光性樹脂から前記モールドを離型させて、前記第1透光性基板の前記主面の上に、隣接する前記第2柱部の間の空間の形状に対応する形状を有する第1透光層と、隣接する前記第1柱部の間の空間の形状に対応する形状を有する第2透光層とを有する、複数の透光層を形成する工程と、
前記複数の透光層の上に、前記第1透光性基板に対向し、前記第1透光性基板の前記主面に対向する主面に第2透光性電極を有する第2透光性基板を圧着する工程と、
前記透光層の間に、光を吸収し、印加される電圧によって分散状態が変化する電気泳動粒子を分散された、透光性分散媒を充填する工程と、を含み、
隣接する前記第2柱部の間の空間の高さは、隣接する前記第1柱部の間の空間の高さよりも低く、
前記所定の方向を含み、前記モールド基板の前記主面に対して垂直な断面で断面視した場合、隣接する前記第2柱部の間の空間の幅は、隣接する前記第1柱部の間の空間の幅よりも広い、
光線方向制御素子の製造方法。
【請求項9】
主面に第1透光性電極を有する第1透光性基板の該主面の上に、所定の間隔で遮光層を形成する工程と、
感光性を有する透光性材料から形成され前記遮光層を覆う第1層を、前記第1透光性基板の前記主面の上に所定の第1厚さで積層する工程と、
前記第1透光性基板の側から、前記第1層を露光する工程と、
露光された前記第1層の上に、感光性を有する透光性材料から形成される第2層を、前記所定の第1厚さよりも厚い所定の第2厚さで積層する工程と、
前記第2層の側から、平面視した場合に前記第2層の前記遮光層の間に位置する領域を、前記遮光層の前記所定の間隔よりも狭い幅で露光する工程と、
露光された前記第1層と露光された前記第2層とを現像し、前記第1透光性基板の前記主面の上に、複数の透光層を形成する工程と、
前記複数の透光層の上に、前記第1透光性基板に対向し、前記第1透光性基板の前記主面に対向する主面に第2透光性電極を有する第2透光性基板を圧着する工程と、
前記透光層の間に、光を吸収し、印加される電圧によって分散状態が変化する電気泳動粒子を分散された、透光性分散媒を充填する工程と、を含む、
光線方向制御素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光線方向制御素子、表示装置及び光線方向制御素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過する光の出射範囲を制御する光線方向制御素子が、知られている。例えば、特許文献1は、互いの主面が対向するように配置された第1及び第2の透明基板と、第1の透明基板に配置された導電性遮光パターンと、第2の透明基板に配置された透明導電膜と、第1の透明基板上に配置された複数の光透光領域と、隣接する光透光領域の間に配置され、遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散剤とから成る電気泳動素子と、を有する光学素子を開示している。特許文献1の光学素子では、導電性遮光パターンと透明導電膜との間の電位差を調整することにより、電気泳動粒子の分散状態を変化させて、光透光領域及び分散剤を透過する光の出射範囲を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6443691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光学素子では、電気泳動粒子を導電性遮光パターンの近傍に凝集させることにより、広視野状態(広い出射範囲)を実現しているが、広視野状態において、光学素子の透過率をより高くすることが望まれている。広視野状態における光学素子の透過率をより高めるためには、電気泳動粒子を凝集させる領域(すなわち、光透光領域の間隔)を狭めて、広視野状態における光学素子の開口率を高くすることが挙げられる。
【0005】
一方、光の出射範囲を変化させるために、光透光領域を高アスペクト比で形成する必要もある。特許文献1では、感光性を有する樹脂(フォトレジスト)から光透光領域を形成しているので、高アスペクト比を有する光透光領域をより狭い間隔で形成することは困難である。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、出射光の角度分布が広い状態において、透過率が高い光線方向制御素子、表示装置及び光線方向制御素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の観点に係る光線方向制御素子は、
主面に第1透光性電極を有する、第1透光性基板と、
前記第1透光性基板に対向し、前記第1透光性基板の前記主面に対向する主面に第2透光性電極を有する、第2透光性基板と、
所定の方向に並び、前記第1透光性基板と前記第2透光性基板とに挟まれている、複数の透光領域と、
前記透光領域の間に位置する、複数の光吸収領域と、
前記光吸収領域に封入された、透光性分散媒と、
光を吸収し、前記透光性分散媒に分散され、印加される電圧によって分散状態が変化する、電気泳動粒子と、を備え、
前記透光領域のそれぞれは、前記第1透光性基板の前記主面から前記第2透光性基板に向かって、前記第1透光性基板の前記主面に対して垂直に延びる第1透光領域と、前記第1透光領域の上面から前記第2透光性基板に向かって、前記第1透光性基板の前記主面に対して垂直に延びる第2透光領域と、を有し、
前記光吸収領域のそれぞれは、前記第1透光領域の間に位置する第1光吸収領域と、前記第2透光領域の間に位置する第2光吸収領域と、を有し、
前記第1透光領域の前記第1透光性基板の前記主面からの高さは、前記第2透光領域の前記第1透光領域の上面からの高さよりも低く、
前記所定の方向を含み、前記第1透光性基板の前記主面に対して垂直な断面で断面視した場合、前記第1透光領域の幅は前記第2透光領域の幅よりも広い。
【0008】
第2の観点に係る表示装置は、
上記に記載の光線方向制御素子と、
表示パネルと、を備え、
前記光線方向制御素子は、前記表示パネルの表示面に配置されている。
【0009】
第3の観点に係る表示装置は、
上記に記載の光線方向制御素子と、
透過型液晶表示パネルと、
前記透過型液晶表示パネルの表示面と反対側に配置され、前記透過型液晶表示パネルに光を供給するバックライトと、を備え、
前記光線方向制御素子は、前記透過型液晶表示パネルと前記バックライトとの間に配置されている。
【0010】
第4の観点に係る光線方向制御素子の製造方法は、
モールド基板と、前記モールド基板の主面の上に該主面に対して垂直に設けられ所定の方向に並ぶ複数の第1柱部と、前記複数の第1柱部のそれぞれの上面に前記モールド基板の前記主面に対して垂直に設けられた第2柱部とを有する、モールドを準備する工程と、
前記モールドに透光性樹脂を充填する工程と、
主面に第1透光性電極を有する第1透光性基板の該主面を、前記第2柱部と前記第2柱部の間から露出している前記透光性樹脂とに押し当てる工程と、
前記第1透光性基板の前記主面を押し当てられた、前記透光性樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記透光性樹脂から前記モールドを離型させて、前記第1透光性基板の前記主面の上に、隣接する前記第2柱部の間の空間の形状に対応する形状を有する第1透光層と、隣接する前記第1柱部の間の空間の形状に対応する形状を有する第2透光層とを有する、複数の透光層を形成する工程と、
前記複数の透光層の上に、前記第1透光性基板に対向し、前記第1透光性基板の前記主面に対向する主面に第2透光性電極を有する第2透光性基板を圧着する工程と、
前記透光層の間に、光を吸収し、印加される電圧によって分散状態が変化する電気泳動粒子を分散された、透光性分散媒を充填する工程と、を含み、
隣接する前記第2柱部の間の空間の高さは、隣接する前記第1柱部の間の空間の高さよりも低く、
前記所定の方向を含み、前記モールド基板の前記主面に対して垂直な断面で断面視した場合、隣接する前記第2柱部の間の空間の幅は、隣接する前記第1柱部の間の空間の幅よりも広い。
【0011】
第5の観点に係る光線方向制御素子の製造方法は、
主面に第1透光性電極を有する第1透光性基板の該主面の上に、所定の間隔で遮光層を形成する工程と、
感光性を有する透光性材料から形成され前記遮光層を覆う第1層を、前記第1透光性基板の前記主面の上に所定の第1厚さで積層する工程と、
前記第1透光性基板の側から、前記第1層を露光する工程と、
露光された前記第1層の上に、感光性を有する透光性材料から形成される第2層を、前記所定の第1厚さよりも厚い所定の第2厚さで積層する工程と、
前記第2層の側から、平面視した場合に前記第2層の前記遮光層の間に位置する領域を、前記遮光層の前記所定の間隔よりも狭い幅で露光する工程と、
露光された前記第1層と露光された前記第2層とを現像し、前記第1透光性基板の前記主面の上に、複数の透光層を形成する工程と、
前記複数の透光層の上に、前記第1透光性基板に対向し、前記第1透光性基板の前記主面に対向する主面に第2透光性電極を有する第2透光性基板を圧着する工程と、
前記透光層の間に、光を吸収し、印加される電圧によって分散状態が変化する電気泳動粒子を分散された、透光性分散媒を充填する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、第1透光領域の高さが第2透光領域の高さよりも低く、第1透光領域の幅は第2透光領域の幅よりも広いので、平面視した場合に第1透光領域の間に位置する第1光吸収領域を狭くして、出射光の角度分布が広い状態における光線方向制御素子の透過率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る光線方向制御素子を示す断面図である。
図2】実施形態1に係る表示装置を示す模式図である。
図3】実施形態1に係る、第1透光領域と第2透光領域と第1光吸収領域と第2光吸収領域とを示す斜視図である。
図4】実施形態1に係る狭視野モードを示す模式図である。
図5】実施形態1に係る、XZ平面に平行な平面における光線方向制御素子の出射光の角度分布を示す図である。
図6】実施形態1に係る第1広視野モードを示す模式図である。
図7】実施形態1に係る、第1広視野モードの光線方向制御素子を示す平面図である。
図8】実施形態1に係る光線方向制御素子の製造方法を示すフローチャートである。
図9】実施形態1に係るモールドを示す模式図である。
図10】実施形態1に係るモールドと透光性樹脂とを示す模式図である。
図11】実施形態1に係るモールドと透光性樹脂と第1透光性基板とを示す模式図である。
図12】実施形態1に係る第1透光性基板と透光層とを示す模式図である。
図13】実施形態1に係る第1透光性基板と透光層と第2透光性基板とを示す模式図である。
図14】実施形態2に係る第2広視野モードを示す模式図である。
図15】実施形態2に係る、XZ平面に平行な平面における光線方向制御素子の出射光の角度分布を示す図である。
図16】実施形態3に係る光線方向制御素子を示す断面図である。
図17】実施形態4に係る光線方向制御素子を示す断面図である。
図18】実施形態5に係る最大出射角を示す模式図である。
図19】実施形態5に係る第2透光領域の高さと最大出射角とを示す図である。
図20】実施形態6に係る光線方向制御素子の製造方法を示すフローチャートである。
図21】実施形態6に係る遮光層を示す模式図である。
図22】実施形態6に係る第1層を示す模式図である。
図23】実施形態6に係る第1層の露光を示す模式図である。
図24】実施形態6に係る第2層を示す模式図である。
図25】実施形態6に係る第2層の露光を示す模式図である。
図26】実施形態6に係る第1透光性基板と透光層とを示す模式図である。
図27】変形例に係る光線方向制御素子を示す模式図である。
図28】変形例に係る第1透光領域を示す模式図である。
図29】変形例に係る第1透光領域を示す模式図である。
図30】変形例に係る第1透光領域を示す模式図である。
図31】電気泳動粒子の残留を説明するための模式図である。
図32】変形例に係る第1透光領域を示す模式図である。
図33】変形例に係る第1透光領域を示す模式図である。
図34】変形例に係る第1透光領域を示す模式図である。
図35】変形例に係る表示装置を示す模式図である。
図36】変形例に係る表示装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る光線方向制御素子と表示装置について、図面を参照して説明する。
【0015】
<実施形態1>
図1図13を参照して、本実施形態に係る光線方向制御素子100と表示装置300とを説明する。光線方向制御素子100は、図1に示すように、第1透光性基板10と、第2透光性基板20と、透光領域30と、光吸収領域40とを備える。光吸収領域40には、透光性分散媒52と電気泳動粒子54が封入されている。透光領域30は、第1透光領域32と第2透光領域34とを有する。また、光吸収領域40は、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44とを有する。光線方向制御素子100では、図示しない外部電源から電気泳動粒子54に印加される電圧により、透光性分散媒52内の電気泳動粒子の分散状態が変化し、光線方向制御素子100から出射される出射光の角度分布が変化する。なお、理解を容易にするため、本明細書では、図1における光線方向制御素子100の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の奥方向)を+Y方向として説明する。また、X方向を左右方向と、Z方向を上下方向とも記載する。
【0016】
光線方向制御素子100は、図2に示すように、表示パネル210と共に表示装置300を構成する。表示装置300は、スマートフォン、ラップトップ型コンピュータ、車両、インフォメーションディスプレイ等に搭載される。表示パネル210は、文字、画像等を表示する。表示パネル210は、液晶表示パネル、有機EL(Electro Luminescence)表示パネル、マイクロLED(Light emitting diode)表示パネル等である。
【0017】
光線方向制御素子100は、表示パネル210から出射され光線方向制御素子100を透過する、光の角度分布(出射光の角度分布)を制御する。光線方向制御素子100は、表示パネル210の表示面に配置される。
【0018】
図1に戻り、光線方向制御素子100の第1透光性基板10は、可視光を透過する。第1透光性基板10は、例えば平板状のガラス基板である。第1透光性基板10は、第1主面10aの上に第1透光性電極12を有する。本実施形態では、第1透光性電極12は、第1主面10aの全面に、ITO(Indium Tin Oxide)から形成されている。また、第1透光性電極12の上に、図示しない絶縁層が設けられている。絶縁層は、例えば、酸化ケイ素(SiO2)から形成される。
【0019】
光線方向制御素子100の第2透光性基板20は、第1透光性基板10と同様に、可視光を透過する。第2透光性基板20は、例えば平板状のガラス基板である。第2透光性基板20は、第1主面20aの上に第2透光性電極22を有する。第2透光性電極22は、第1主面20aの全面に、ITOから形成される。また、第2透光性電極22の上に、絶縁層が設けられる。
【0020】
第2透光性基板20は、第1透光性基板10と対向している。本実施形態では、第1透光性基板10の第1主面10aと第2透光性基板20の第1主面20aが対向している。
【0021】
光線方向制御素子100の透光領域30は、可視光を透過する領域である。透光領域30は、X方向に並び、第1透光性基板10と第2透光性基板20に挟まれている。透光領域30は、例えば、透光性を有する樹脂から形成される透光層である。透光領域30は、図1に示すように、第1透光領域32と第2透光領域34とを有する。本実施形態では、X方向が所定の方向に相当する。
【0022】
第1透光領域32は、第1透光性基板10の第1主面10aの上に設けられる。第1透光領域32は、図1図3に示すように、第1透光性基板10の第1主面10aから第2透光性基板20に向かって、第1透光性基板10の第1主面10aに対して垂直に延びる(すなわち、+Z方向に延びる)直方体形状を有している。また、第1透光領域32は、Y方向(奥行き方向)にも延びている。第1透光領域32は、後述する第1光吸収領域42の幅D3に相当する間隔で、X方向に配列されている。なお、第1透光領域32の間隔は、隣接する第1透光領域32の側面の間隔を指す。
【0023】
第1透光領域32の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さH1は、後述する第2透光領域34の高さH2よりも低い。XZ断面、すなわち、X方向(所定の方向)を含み、第1透光性基板10の第1主面10aと第2透光性基板20の第1主面20aに対して垂直な断面で断面視した場合、第1透光領域32の幅D1は、後述する第2透光領域34の幅D2よりも広い。第1透光領域32のより具体的な構成は、後述する。なお、第1透光領域32の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さH1を、第1透光領域32の高さH1とも記載する。
【0024】
本実施形態では、第1透光領域32の幅D1が広いので、第1透光性基板10と第1透光領域32(透光層)との密着性が向上する。これにより、透光領域30(透光層)の第1透光性基板10からの剥離が抑えられて、光線方向制御素子100の耐久性が向上する。
【0025】
第2透光領域34は、第1透光領域32の上面(+Z側の面)32aから第2透光性基板20に向かって、第1透光性基板10の第1主面10aに対して垂直に延びる直方体形状を有している。また、第2透光領域34は、Y方向にも延びている。第2透光領域34は、後述する第2光吸収領域44の幅D4に相当する間隔で、X方向に並んでいる。第2透光領域34の第1透光領域32の上面32aからの高さH2は、第1透光領域32の高さH1よりも高く、XZ断面で断面視した場合、第2透光領域34の幅D2は第1透光領域32の幅D1よりも狭い。第2透光領域34のより具体的な構成は、後述する。なお、第2透光領域34の間隔は、隣接する第2透光領域34の側面の間隔を指す。また、第2透光領域34の第1透光領域32の上面32aからの高さH2を、第2透光領域34の高さH2とも記載する。
【0026】
光線方向制御素子100の光吸収領域40は、図1図3に示すように、隣接する透光領域30の間の領域である。光吸収領域40は、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44とを有する。光吸収領域40は、後述するように、第1透光性基板10の第1主面10aの上に透光領域30を形成することにより形成される。第1光吸収領域42は隣接する第1透光領域32から形成され、第2光吸収領域44は隣接する第2透光領域34から形成される。
【0027】
第1光吸収領域42は、隣接する第1透光領域32の間の領域である。第1光吸収領域42は、第1透光領域32と同様に、第1透光性基板10の第1主面10aから第2透光性基板20に向かって、第1透光性基板10の第1主面10aに対して垂直に延びる。第2光吸収領域44は、隣接する第2透光領域34の間の領域であり、第1光吸収領域42から第2透光性基板20に向かって、第1透光性基板10の第1主面10aに対して垂直に延びている。なお、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44も、Y方向に延びている。
【0028】
本実施形態では、第1光吸収領域42は隣接する第1透光領域32の間の領域であるので、第1光吸収領域42の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さは第1透光領域32の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さH1に等しい。また、第2光吸収領域44は隣接する第2透光領域34の間の領域であるので、第2光吸収領域44の第1光吸収領域42の上面42aからの高さは第2透光領域34の第1透光領域32の上面32aからの高さH2に等しい。さらに、第1透光領域32の高さH1は第2透光領域34の高さH2よりも低いので、第1光吸収領域42の高さH1は第2光吸収領域44の高さH2よりも低くなっている。なお、第1光吸収領域42の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さを、第1光吸収領域42の高さH1と、第2光吸収領域44の第1光吸収領域42の上面42aからの高さを、第2光吸収領域44の高さH2とも記載する。
【0029】
また、XZ断面で断面視した場合、第1透光領域32の幅D1は第2透光領域34の幅D2よりも狭い。したがって、XZ断面で断面視した場合、第1光吸収領域42の幅D3は第2光吸収領域44の幅D4よりも狭くなっている。第1光吸収領域42と第2光吸収領域44のより具体的な構成は、後述する。
【0030】
光線方向制御素子100の透光性分散媒52は、光吸収領域40に封入される。透光性分散媒52は可視光を透過する。透光性分散媒52は、電気泳動粒子54を分散する。
【0031】
光線方向制御素子100の電気泳動粒子54は、透光性分散媒52に分散され、可視光を吸収する。電気泳動粒子54は、正又は負に帯電し、第1透光性電極12と第2透光性電極22により印加される電圧によって、透光性分散媒52中での分散状態が変化する。電気泳動粒子54は、例えば、帯電したカーボンブラック粒子である。本実施形態では、電気泳動粒子54は負に帯電していると仮定する。
【0032】
透光性分散媒52と透光性分散媒52に分散された電気泳動粒子54は、光吸収領域40に封入されている。したがって、光吸収領域40(第1光吸収領域42と第2光吸収領域44)は、第1透光性電極12と第2透光性電極22と共に、電気泳動素子として機能する。第1透光性電極12の電位V1と第2透光性電極22の電位V2を制御することにより、電気泳動粒子54の分散状態を変化させて、光吸収領域40を電気泳動粒子54の分散状態に応じた光吸収層として機能させることができる。
【0033】
ここで、光線方向制御素子100の動作について、説明する。ここでは、どの方向から見ても輝度が一定である面光源(均等拡散面光源)700を、光線方向制御素子100の第1透光性基板10側に配置したと仮定して、光線方向制御素子100の動作を説明する。光線方向制御素子100は、-Z方向から入射した光710の角度分布を制御して、+Z方向へ出射する。
【0034】
(狭視野モード)
第1透光性電極12の電位V1と第2透光性電極22の電位V2が等しく、電気泳動粒子54に電圧が印加されていない場合、電気泳動粒子54は光吸収領域40の全体に渡って均一に分散し、光吸収領域40(第1光吸収領域42と第2光吸収領域44)は全体に渡って光吸収層として機能する。以下では、上記の状態を狭視野モードと記載する。
【0035】
XZ平面で断面視した場合、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44が第1透光性基板10の第1主面10aに対して垂直であるので、狭視野モードでは、図4に示すように、面光源700から入射する光710のうち、+Z方向近傍以外の光は第1光吸収領域42と第2光吸収領域44に吸収される。また、XZ平面では、面光源700から入射する光710のうち、+Z方向近傍の光は光線方向制御素子100から出射する。したがって、+X方向を0°と、+Z方向を90°と、-X方向を180°とした場合、XZ平面に平行な平面では、狭視野モードにおける光線方向制御素子100からの出射光は、図5に示すように、90°(+Z方向)近傍の狭い角度分布を有する。
【0036】
第1透光領域32と第2透光領域34とを含むYZ平面に平行な平面では、第1透光領域32と第2透光領域34がY方向に延びているので、狭視野モードにおける光線方向制御素子100からの出射光は、均等な角度分布を有する。他のYZ平面に平行な平面では、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44がY方向に延びているので、面光源700から入射する光710は、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44に吸収される。なお、YZ平面に平行な平面はYZ平面を含んでいる。
【0037】
以上のように、狭視野モードにおける光線方向制御素子100からの出射光は、XZ平面に平行な平面において90°(+Z方向)近傍の狭い角度分布を有し、第1透光領域32と第2透光領域34とを含むYZ平面に平行な平面において均等な角度分布を有する。したがって、狭視野モードでは、光線方向制御素子100は、表示装置300の左右方向(X方向)の視野角を、正面(+Z方向)近傍に制限できる。
【0038】
(第1広視野モード)
第1透光性電極12の電位V1を第2透光性電極22の電位V2よりも大きくして、所定の第1電圧を電気泳動粒子54に印加した場合、負に帯電している電気泳動粒子54は第1光吸収領域42に集まり、第1光吸収領域42のみが光吸収層として機能する。以下では、上記の状態を第1広視野モードと記載する。
【0039】
第1広視野モードでは、第1光吸収領域42のみが光吸収層として機能し、第1光吸収領域42の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さH1は、第2光吸収領域44の第1光吸収領域42の上面42aからの高さH2よりも低い。したがって、XZ平面で断面視した場合、図6に示すように、面光源700から入射する光710のうち、+Z方向に対して大きな角度を有する一部の入射光のみが第1光吸収領域42に吸収され、その他の入射光は光線方向制御素子100から出射する。すなわち、XZ平面に平行な平面では、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100からの出射光は、図5に示すように、広い角度分布を有する。
【0040】
第1透光領域32と第2透光領域34とを含むYZ平面に平行な平面では、第1透光領域32と第2透光領域34がY方向に延びているので、狭視野モードにおける光線方向制御素子100からの出射光は、均等な角度分布を有する。他のYZ平面に平行な平面では、第1光吸収領域42がY方向に延びているので、面光源700から入射する光710は、第1光吸収領域42に吸収される。
【0041】
以上のように、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100からの出射光は、XZ平面に平行な平面において広い角度分布を有し、第1透光領域32と第2透光領域34とを含むYZ平面に平行な平面において均等な角度分布を有する。したがって、第1広視野モードでは、光線方向制御素子100は、表示装置300の視野角をほとんど制限しない。第1広視野モードは、出射光の角度分布が広い状態を指している。
【0042】
第1透光領域32と第2透光領域34と第1光吸収領域42と第2光吸収領域44のより具体的な構成を説明する。一例として、透光領域30は、第1透光領域32の高さH1を25μmと、第1透光領域32の幅D1を45μmと、第2透光領域34の高さH2を120μmと、第2透光領域34の幅D2を40μmとして形成される。また、光吸収領域40は、第1光吸収領域42の高さH1を25μmと、第1光吸収領域42の幅(第1透光領域32の間隔)D3を5μmと、第2光吸収領域44の幅(第2透光領域34の間隔)D4を10μmとして形成される。なお、透光領域30と光吸収領域40の第1透光性基板10の第1主面10aからの高さHは、145μmである。
【0043】
上記の光吸収領域40には、例えば、平均粒径が120nmの電気泳動粒子54を4重量%含む透光性分散媒52が充填される。具体的には、電気泳動粒子54の粒子密度を0.5g/cmと、光吸収領域40における電気泳動粒子54の最大充填率を71.6%(最密充填では74%)と、透光性分散媒52の溶媒密度を0.75g/cmと、透光領域30と光吸収領域40のY方向の長さ(奥行き)をLμmとすると、下記の式(1)のように、電気泳動粒子54を第1光吸収領域42の高さH1(25μm)のうちの21.8μmに充填できる。
【0044】
【数1】
【0045】
上記の構成を有する、第1広視野モードの光線方向制御素子100を、図7に示すように、+Z方向から平面視すると、第1広視野モードの光線方向制御素子100の開口率は90%((45/50)×100)となる。一方、光吸収領域40を第2光吸収領域44のみにより形成した場合(以下、比較例と記載)、広視野モードの光線方向制御素子の開口率は80%((40/50)×100)となる。なお、図7では、理解を容易にするために、第1透光性基板10、第2透光性基板20等を省略している。
【0046】
本実施形態では、第1広視野モードにおいて電気泳動粒子54が集まる第1光吸収領域42を形成する第1透光領域32の高さH1が、第2透光領域34の高さH2よりも低く、第1透光領域32のアスペクト比が小さいので、第1透光領域32の間隔(すなわち、第1光吸収領域42の幅D3)を容易に狭めることができる。第1透光領域32の幅D1は第2透光領域34の幅D2よりも広いので、第1広視野モードにおいて電気泳動粒子54が集まる第1光吸収領域42の幅D3が第2光吸収領域44の幅D4よりも狭くなり、上記の一例のように、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の開口率を高くできる。第1広視野モードにおける開口率が高いので、図5に示すように、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の透過率を高くできる。
【0047】
次に、光線方向制御素子100の製造方法を説明する。図8は、光線方向制御素子100の製造方法を示すフローチャートである。光線方向制御素子100の製造方法は、モールド400を準備する工程(ステップS100)と、モールド400に透光性樹脂450を充填する工程(ステップS102)と、第1透光性基板10の第1主面10aを、第2柱部424の間から露出している透光性樹脂450に押し当てる工程(ステップS104)と、透光性樹脂450を硬化させる工程(ステップS106)と、硬化した透光性樹脂450からモールド400を離型させ、第1透光性基板10の第1主面10aの上に複数の透光層60を形成する工程(ステップS108)とを含む。
【0048】
光線方向制御素子100の製造方法は、更に、複数の透光層60の上に第2透光性基板20を圧着する工程(ステップS110)と、透光層60の間に電気泳動粒子54を分散された透光性分散媒52を充填する工程(ステップS112)とを含む。
【0049】
ステップS100では、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、第1透光性基板10の第1主面10aの上に透光領域30を形成するためのモールド400を準備する。モールド400は、図9に示すように、モールド基板410と柱部420とを備える。モールド基板410は、例えば、シリコン基板である。柱部420は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、モールド基板410の第1主面410aの上に、化学増幅型フォトレジスト:SU-8(商品名、日本化薬株式会社)から形成される。柱部420の形状は、光線方向制御素子100の光吸収領域40に対応している。また、隣接する柱部420の間の空間の形状は、光線方向制御素子100の透光領域30の形状に対応している。
【0050】
柱部420は、第1柱部422と第2柱部424とを有する。第1柱部422は、モールド基板410の第1主面410aの上に第1主面410aに対して垂直に設けられ、直方体形状を有する。第1柱部422は、X方向に、隣接する第1柱部422の側面422a(+X側の面、-X側の面)の間隔W21を、光線方向制御素子100の第2透光領域34の幅D2と等しくして並べられ、Z方向とY方向に延びている。第1柱部422のモールド基板410の第1主面410aからの高さH21は、第2光吸収領域44と第2透光領域34の高さH2に等しい。また、XZ断面で断面視した場合、第1柱部422の幅D41は、第2光吸収領域44の幅D4に等しい。第1柱部422の形状は光線方向制御素子100の第2光吸収領域44の形状に対応し、隣接する第1柱部422の間の空間432の形状は光線方向制御素子100の第2透光領域34の形状に対応している。
【0051】
第2柱部424は、第1柱部422の上面(+Z側の面)422bの上に、第1主面410aに対して垂直に設けられ、直方体形状を有する。第2柱部424は、X方向に、隣接する第2柱部424の側面424aの間隔W11を、光線方向制御素子100の第1透光領域32の幅D1と等しくして並べられ、Z方向とY方向に延びている。第2柱部424の第1柱部422の上面422bからの高さH11は、第1光吸収領域42と第1透光領域32の高さH1に等しい。また、XZ断面で断面視した場合、第2柱部424の幅D31は、第1光吸収領域42の幅D3に等しい。第2柱部424の形状は光線方向制御素子100の第1光吸収領域42の形状に対応し、隣接する第2柱部424の間の空間434の形状は光線方向制御素子100の第1透光領域32の形状に対応している。
【0052】
本実施形態では、第1柱部422の高さH21は第2光吸収領域44と第2透光領域34の高さH2に等しく、第2柱部424の高さH11は第1光吸収領域42と第1透光領域32の高さH1に等しい。第1光吸収領域42と第1透光領域32の高さH1は、第2光吸収領域44と第2透光領域34の高さH2よりも低いので、第2柱部424の高さH11(すなわち隣接する第2柱部424の間の空間434の高さ)は第1柱部422の高さH21(すなわち隣接する第1柱部422の間の空間432の高さ)よりも低い。
【0053】
また、第1柱部422の間隔W21は第2透光領域34の幅D2に等しく、第2柱部424の間隔W11は第1透光領域32の幅D1に等しい。第1透光領域32の幅D1は第2透光領域34の幅D2よりも広いので、第2柱部424の間隔W11(すなわち隣接する第2柱部424の間の空間434の幅)は第1柱部422の間隔W21(すなわち隣接する第1柱部422の間の空間432の幅)よりも広い。
【0054】
ステップS102では、図10に示すように、モールド400の柱部420の間に透光性樹脂450を充填する。充填された透光性樹脂450は脱泡される。透光性樹脂450は、例えば、熱硬化型のシリコン樹脂である。
【0055】
ステップS104では、図11に示すように、第1透光性基板10の第1主面10aを、第2柱部424と、第2柱部424の間から露出している透光性樹脂450とに押し当てる。
【0056】
ステップS106では、第1透光性基板10の第1主面10aを押し当てられた、透光性樹脂450を加熱して硬化させる。
【0057】
ステップS108では、図12に示すように、硬化した透光性樹脂450から、モールド400を離型させて、第1透光性基板10の第1主面10aの上に透光層60を形成する。透光層60は、隣接する第2柱部424の間の空間434に対応した形状を有する第1透光層62と、隣接する第1柱部422の間の空間432の形状に対応する形状を有する第2透光層64とから形成されている。隣接する第2柱部424の間の空間434の形状は光線方向制御素子100の第1透光領域32の形状に対応し、隣接する第1柱部422の間の空間432は光線方向制御素子100の第2透光領域34の形状に対応しているので、本ステップでは、第1透光性基板10の第1主面10aの上に、光線方向制御素子100の透光領域30に相当する透光層60が形成される。
【0058】
ステップS110では、図13に示すように、第2透光性基板20の第1主面20aを第1透光性基板10の第1主面10aに対向させて、透光層60の上に第2透光性基板20を圧着する。
【0059】
ステップS112では、透光層60の間に、電気泳動粒子54を分散させた透光性分散媒52を充填する。これにより、光吸収領域40(第1光吸収領域42と第2光吸収領域44)が形成される。光吸収領域40は接着剤により封止される。
【0060】
以上により、光線方向制御素子100を製造できる。本実施形態では、広い間隔W11で形成されるモールド400の第2柱部424から、狭い間隔(第1光吸収領域42の幅D3)で並ぶ第1透光領域32に相当する部分(第1透光層62)を形成するので、光線方向制御素子100を容易に製造できる。
【0061】
以上のように、第1光吸収領域42を形成する第1透光領域32の高さH1が、第2透光領域34の高さH2よりも低く、第1透光領域32の幅D1が第2透光領域34の幅D2よりも広いので、第1広視野モード(出射光の角度分布が広い状態)において電気泳動粒子54が集まる第1光吸収領域42の幅D3を狭めて、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の開口率を高くできる。したがって、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の透過率を高くできる。また、第1透光領域32の幅D1が広いので、第1透光性基板10と第1透光領域32(透光層)との密着性を向上させて、光線方向制御素子100の耐久性を高めることができる。
【0062】
<実施形態2>
実施形態1の第1広視野モードでは、第1光吸収領域42のみが光吸収層として機能する。光線方向制御素子100の、出射光の角度分布が広い状態では、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44の一部が、光吸収層として機能してもよい。以下では、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44の一部が光吸収層として機能する状態を、第2広視野モードと記載する。光吸収層として機能する領域を除く、本実施形態のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0063】
第2広視野モードでは、第1広視野モードにおける所定の第1電圧よりも低い、所定の第2電圧を電気泳動粒子54に印加する。これにより、図14に示すように、電気泳動粒子54が第1透光性基板10側に集まり、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44の第1光吸収領域42側の領域46が光吸収層として機能する。
【0064】
第2広視野モードでは、電気泳動粒子54が第1透光性基板10側に位置する第1光吸収領域42にも集まるので、第2光吸収領域44の領域46の光学濃度(OD(Optical Density)値)は低い。これにより、第2光吸収領域44の領域46に入射した光710の一部は、第2光吸収領域44の領域46を透過して、光線方向制御素子100から出射する。したがって、第2広視野モードでは、第1広視野モードと同様に、光線方向制御素子100は、表示装置300の視野角をほとんど制限しない。また、第2光吸収領域44の領域46に入射した光710の一部が光線方向制御素子100から出射するので、第2広視野モードにおける光線方向制御素子100の透過率は、図15に示すように、光吸収領域40を第2光吸収領域44のみにより形成した比較例の透過率よりも高くなる。
【0065】
以上のように、所定の第1電圧よりも低い所定の第2電圧を電気泳動粒子54に印加することにより、電気泳動粒子54を第1透光性基板10側に集めて、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44の一部(領域46)を光吸収層として機能させる第2広視野モード(出射光の角度分布が広い状態)においても、光線方向制御素子100の透過率を高くできる。
【0066】
<実施形態3>
実施形態1と実施形態2では、光線方向制御素子100の第2透光領域34は直方体形状を有しており、XZ平面で断面視した場合、第2透光領域34は長方形形状である。XZ平面で断面視した場合、第2透光領域34は他の形状であってもよい。
【0067】
例えば、図16に示すように、XZ平面で断面視した場合、第2透光領域34は台形形状(テーパー形状)であってもよい。本実施形態では、第2透光領域34は、-Z側の幅D2bが+Z側の幅D2aよりも広い台形形状を有している。例えば、幅D2bは40μmであり、幅D2aは36μm~30μmである。透光領域30のその他の寸法は、実施形態1の一例と同様である。
【0068】
本実施形態では、第2透光領域34の-Z側の幅D2bが第2透光領域34の+Z側の幅D2aよりも広いので、第2光吸収領域44の幅が第1光吸収領域42に向かって狭くなり、電気泳動粒子54を-Z側に位置する第1光吸収領域42に容易に集めることができる。
【0069】
<実施形態4>
実施形態1と実施形態2では、光線方向制御素子100の第1透光領域32は直方体形状を有しており、XZ平面で断面視した場合、第1透光領域32は長方形形状である。XZ平面で断面視した場合、第1透光領域32は他の形状であってもよい。
【0070】
例えば、図17に示すように、XZ平面で断面視した場合、第1透光領域32は台形形状(テーパー形状)であってもよい。本実施形態では、第1透光領域32は、-Z側の幅D1bが+Z側の幅D1aよりも広い台形形状を有している。例えば、幅D1aは45μmであり、幅D1bは47μmである。また、例えば、第1光吸収領域42の+Z側の幅D3aは5μmであり、第1光吸収領域42の-Z側の幅D3bは3μmである。透光領域30のその他の寸法は、実施形態1の一例と同様である。
【0071】
本実施形態では、第1透光領域32の-Z側の幅D1bが第1透光領域32の+Z側の幅D1aよりも広いので、電気泳動粒子54を第1光吸収領域42に容易に集めることができる。
【0072】
<実施形態5>
実施形態1の一例では、第1透光領域32の高さH1(25μm)と第2透光領域34の高さH2(120μm)の比は、1:4.8である。実施形態1~実施形態4の光線方向制御素子100では、第1透光領域32の高さH1と第2透光領域34の高さH2の比は1:2.6以上であることが、好ましい。
【0073】
例えば、実施形態1の光線方向制御素子100をXZ断面で断面視した場合、光線方向制御素子100から出射される光の+Z方向に対する最大出射角θ1は、第1透光性基板10と第2透光性基板20での光の屈折を無視すると、図18と下記の式(2)により、表される。ここで、nは透光領域30の屈折率を、θ2は光線方向制御素子100に入射する光の+Z方向に対する角度を表す。
【0074】
【数2】
【0075】
図19は、実施形態1の一例と同様に、第1透光領域32の高さH1を25μmと、第1透光領域32の幅D1を45μmと、第2透光領域34の幅D2を40μmとした場合に、式(2)から求められる第2透光領域34の高さH2と最大出射角θ1との関係との関係を示す。図19に示すように、透光領域30の屈折率nを1.5と、第2透光領域34の高さH2を65μm(すなわち第1透光領域32の高さH1と第2透光領域34の高さH2の比を1:2.6)以上とした場合、最大出射角θ1を40°以下にできる。したがって、透光領域30の屈折率nを1.5と、第1透光領域32の高さH1と第2透光領域34の高さH2の比を1:2.6以下とした場合、表示装置300の左右方向の視野角を80°以下にできる。
【0076】
<実施形態6>
実施形態1では、モールドを使用して、光線方向制御素子100を製造している。光線方向制御素子100は、フォトリソグラフィー技術を用いて製造されてもよい。
【0077】
図20は、本実施形態の光線方向制御素子100の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態の光線方向制御素子100の製造方法は、第1透光性基板10の第1主面10aの上に、所定の間隔W1で遮光層502を形成する工程(ステップS200)と、感光性を有する透光性材料から形成される第1層504を、所定の第1厚さD51で積層する工程(ステップS202)と、第1透光性基板10側から第1層504を露光する工程(ステップS204)と、露光された第1層504の上に、感光性を有する透光性材料から形成される第2層506を、所定の第1厚さD51よりも厚い所定の第2厚さD52で積層する工程(ステップS206)と、を含む。
【0078】
本実施形態の光線方向制御素子100の製造方法は、更に、第2層506の側から、第2層506の遮光層502の間に位置する領域506aを、遮光層502の所定の間隔W1よりも狭い幅D22で露光する工程(ステップS208)と、露光された第1層504と露光された第2層506とを現像し、第1透光性基板10の第1主面10aの上に複数の透光層60を形成する工程(ステップS210)と、複数の透光層60の上に第2透光性基板20を圧着する工程(ステップS212)と、透光層60の間に電気泳動粒子54を分散された透光性分散媒52を充填する工程(ステップS214)と、を含む。
【0079】
ステップS200では、図21に示すように、第1透光性基板10の第1主面10aの上に、X方向に並ぶ、複数の遮光層502を形成する。遮光層502は、第1層504と第2層506を形成している透光性材料を露光するための光を遮る。遮光層502は、クロム、アルミニウム等から形成される。遮光層502は、XZ断面で断面視した場合、所定の間隔W1で形成され、幅D32を有している。所定の間隔W1は光線方向制御素子100の第1透光領域32の幅D1に等しい。また、幅D32は第1光吸収領域42の幅D3、すなわち第1透光領域32の間隔に等しい。なお、所定の間隔W1は、隣接する遮光層502の側面の間隔を指す。
【0080】
ステップS202では、透光性材料から形成される第1層504を第1透光性基板10の第1主面10aの上に所定の第1厚さD51で積層する。透光性材料は感光性を有する。また、第1層504は、図22に示すように、遮光層502を覆って、第1透光性基板10の第1主面10aの上に形成される。所定の第1厚さD51は、第1透光領域32と第1光吸収領域42の高さH1に等しい。感光性を有する透光性材料は、例えば、SU-8である。
【0081】
ステップS204では、まず、積層された第1層504に含まれる溶媒を除くために、積層された第1層504をプリベークする(95℃、3時間)。次に、図23に示すように、マスクを用いず、第1透光性基板10側から第1層504を露光する。第1層504の厚さD51は、第1透光領域32と第1光吸収領域42の高さH1に等しく、第1光吸収領域42の幅D3に等しい幅D32を有する遮光層502が、光線方向制御素子100の第1透光領域32の幅D1に等しい間隔W1で形成されているので、光線方向制御素子100の第1透光領域32に相当する領域が露光される。
【0082】
ステップS204では、第1層504を露光した後、PEB(Post Exposure Bake)処理を実施する(95℃、25分)。
【0083】
ステップS206では、図24に示すように、露光された第1層504の上に透光性材料から形成される第2層506を、所定の第2厚さD52で積層する。第2層506を形成する透光性材料は感光性を有する。第2層506を形成する透光性材料と第1層504を形成する透光性材料は、同じであっても、異なってもよい。所定の第2厚さD52は、第2透光領域34と第2光吸収領域44の高さH2に等しく、所定の第1厚さD51よりも厚い。
【0084】
ステップS208では、まず、積層された第2層506をプリベークする(95℃、30分)。次に、図25に示すように、第2層506の側から、マスクMを用いて、平面視した場合に第2層506の遮光層502の間に位置する領域506aを、幅D22で露光する。幅D22は、第2透光領域34の幅D2に等しく、遮光層502の所定の間隔W1よりも狭い。第2層506の厚さD52は、第2透光領域34と第2光吸収領域44の高さH2に等しく、幅D22は、第2透光領域34の幅D2に等しいので、光線方向制御素子100の第2透光領域34に相当する領域が露光される。
【0085】
ステップS208では、第2層506を露光した後、PEB処理を実施する(95℃、25分)。
【0086】
ステップS210では、露光された第1層504と露光された第2層506とを、現像液によって現像する。現像の後、第1層504と第2層506とを、リンス液によってリンス処理し、ポストベークする(150℃、30分)。これらにより、図26に示すように、複数の透光層60が第1透光性基板10の第1主面10aの上に形成される。
【0087】
本実施形態では、ステップS204において第1層504の第1透光領域32に相当する領域が露光され、ステップS208において第2層506の第2透光領域34に相当する領域が露光されている。したがって、本ステップでは、光線方向制御素子100の透光領域30に相当する透光層60が、第1透光性基板10の第1主面10aの上に形成される。
【0088】
本実施形態のステップS212とステップS214は、実施形態1のステップS110とステップS112と同様である。
【0089】
以上により、光線方向制御素子100を製造できる。本実施形態のステップS204では、第1層504の第1透光領域32に相当する領域を、第1透光性基板10の側から露光する。これにより、第1層504が、第1透光領域32の間隔(第1光吸収領域42の幅D3)に等しい幅D32を有する遮光層502を介して、露光されるので、狭い間隔(第1光吸収領域42の幅D3)で並ぶ第1透光領域32に相当する部分を容易に形成でき、光線方向制御素子100を容易に製造できる。なお、本実施形態の光線方向制御素子100では、遮光層502が第1透光性基板10の第1主面10aの上に存在する。遮光層502は光吸収領域40の内に位置するので、遮光層502は光線方向制御素子100の特性に影響を与えない。
【0090】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、第1透光性基板10と第2透光性基板20は、透光性を有する樹脂から形成されてもよい。また、電気泳動粒子54は正に帯電してもよい。
【0092】
実施形態では、モールド400は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて作製されている。モールド400は、金属(例えば、シリコン)を切削加工することにより、作製されてもよい。また、モールド400は、メッキ加工された、ニッケル(Ni)モールド、銅(Cu)モールド等であってもよい。
【0093】
実施形態では、柱部420は、化学増幅型フォトレジスト:SU-8から形成されている。柱部420は、他のレジストから形成されてもよい。例えば、柱部420は、ネガ型レジスト:KMPR(商品名、日本化薬株式会社)から形成されてもよい。また、柱部420は、ドライフィルムレジストを用いて形成されてもよい。
【0094】
実施形態では、透光性樹脂450として、熱硬化型のシリコン樹脂を使用している。透光性樹脂450は、熱硬化型のエポキシ樹脂、熱硬化型のアクリル樹脂等であってもよい。
【0095】
また、透光性樹脂450は、UV(Ultra Violet)硬化型の樹脂(シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等)であってもよい。透光性樹脂450としてUV硬化型の樹脂を使用する場合、第1透光性基板10側又は第2透光性基板20側から、UV光を透光性樹脂450に照射することにより、透光性樹脂450を硬化させる(ステップS106)。
【0096】
実施形態では、光線方向制御素子100に入射する光710は、第1透光性基板10側(-Z側)から光線方向制御素子100に入射している。図27に示すように、光710は、第2透光性基板20側(+Z側)から光線方向制御素子100に入射してもよい。この場合、光線方向制御素子100は、+Z方向から入射した光710の角度分布を制御して、-Z方向へ出射する。
【0097】
実施形態1の一例では、電気泳動粒子54を第1光吸収領域42の高さH1(25μm)のうちの21.8μmに充填できる。第1広視野角モードでは、電気泳動粒子54は、第1光吸収領域42の高さH1以下の高さに、充填されればよい。
【0098】
実施形態では、光線方向制御素子100は、第1広視野モードと第2広視野モードと狭視野モードで、動作する。光線方向制御素子100は、第1広視野モードと狭視野モードで、動作してもよい。また、光線方向制御素子100は、第2広視野モードと狭視野モードで、動作してもよい。
【0099】
光線方向制御素子100が第2広視野モードと狭視野モードで動作する場合、透光性分散媒52に分散された電気泳動粒子54は、所定の第2電圧以上の電圧を印加された状態で、第1光吸収領域42と第2光吸収領域44の領域46とに充填される濃度又は体積を有してもよい。
【0100】
実施形態3では、XZ断面視した場合、第2透光領域34は台形形状を有している。また、実施形態4では、第1透光領域32が台形形状を有している。XZ断面視した場合、第1透光領域32と第2透光領域34が台形形状を有してもよい。
【0101】
実施形態1~実施形態4の第1透光領域32の側面は平面状であるが、第1透光領域32の側面は、図28に示すように、曲面状であってもよい。例えば、第1透光領域32の-Z側の幅D1bは47μmであり、第1光吸収領域42の-Z側の幅D3bは3μmである。さらに、第1透光領域32の角部32bは、図29に示すように、曲面状であってもよい。
【0102】
台形形状を有する第1透光領域32では、図30に示すように、-Z側の幅D1bが+Z側の幅D1aよりも広く、第1透光領域32の+Z側の幅D1aが第2透光領域34の幅(-Z側の幅)D2と等しくともよい。これより、第1透光領域32の幅D1が、第1透光性基板10に向かって、第2透光領域34の幅(-Z側の幅)D2から-Z側の幅D1bへ連続的に広がる。したがって、図31に示すように、第1広視野モードにおいて、電気泳動粒子54の一部が、第1透光領域32と第2透光領域34との段差部38(第1透光領域32の上面32a)に、残留することを抑制できる。電気泳動粒子54の残留を抑制することによって、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の透過率を更に高くできる。
【0103】
第1透光領域32と第2透光領域34との段差部38が存在しなければよい。例えば、上述の変形例(図30)の第1透光領域32の側面は平面状であるが、第1透光領域32の側面は、図32図33に示すように、曲面状であってもよい。本変形例においても、-Z側の幅D1bが+Z側の幅D1aよりも広く、第1透光領域32の+Z側の幅D1aが第2透光領域34の幅(-Z側の幅)D2と等しい。第1透光領域32の幅D1は、第1透光性基板10に向かって、第2透光領域34の幅(-Z側の幅)D2から-Z側の幅D1bへ連続的に広がる。本変形例においも、上述の変形例と同様に、第1透光領域32と第2透光領域34との段差部38をなくすことができ、電気泳動粒子54の残留を抑制できる。電気泳動粒子54の残留を抑制することによって、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の透過率を更に高くできる。
【0104】
さらに、図34に示すように、第1透光領域32の角部32bを曲面状に切り欠くことによって、第1透光領域32と第2透光領域34との段差部38をなくしてもよい。本変形例においても、第1透光領域32の幅D1は、第1透光性基板10に向かって、第2透光領域34の幅(-Z側の幅)D2から-Z側の幅D1bへ連続的に広がる。本変形例においも、電気泳動粒子54の残留を抑制できる。電気泳動粒子54の残留を抑制することによって、第1広視野モードにおける光線方向制御素子100の透過率を更に高くできる。
【0105】
表示装置300は、図35に示すように、光線方向制御素子100と透過型液晶表示パネル215とバックライト220から構成されてもよい。バックライト220は、透過型液晶表示パネル215の表示面と反対側に配置され、透過型液晶表示パネル215に光を供給する。光線方向制御素子100は、透過型液晶表示パネル215とバックライト220との間に配置されて、バックライト220から透過型液晶表示パネル215に供給される光の角度分布を制御する。
【0106】
また、図36に示すように、光線方向制御素子100は、透過型液晶表示パネル215の表示面に配置されてもよい。
【0107】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0108】
10 第1透光性基板、10a 第1主面、12 第1透光性電極、20 第2透光性基板、20a 第1主面、22 第2透光性電極、30 透光領域、32 第1透光領域、32a 上面、32b 角部、34 第2透光領域、38 段差部、40 光吸収領域、42 第1光吸収領域、42a 上面、44 第2光吸収領域、46 領域、52 透光性分散媒、54 電気泳動粒子、60 透光層、62 第1透光層、64 第2透光層、100 光線方向制御素子、210 表示パネル、215 透過型液晶表示パネル、220 バックライト、300 表示装置、400 モールド、410 モールド基板、410a 第1主面、420 柱部、422 第1柱部、422a 側面、422b 上面、424 第2柱部、424a 側面、432,434 空間、450 透光性樹脂、502 遮光層、504 第1層、506 第2層、506a 領域、700 面光源、710 光、D1,D1a,D1b,D2,D2a,D2b,D22,D3,D3a,D3b,D31,D32,D4,D41 幅、D51,D52 厚さ、H1,H2,H11,H21 高さ、W1,W11,W21 間隔、n 屈折率、M マスク、θ1最大出射角、θ2 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36