(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152656
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】銅焼結ペースト組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20231005BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231005BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231005BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20231005BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20231005BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20231005BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20231005BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231005BHJP
C09J 1/00 20060101ALN20231005BHJP
B22F 7/08 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B22F9/00 B
C09J11/08
B22F1/00 L
B22F1/05
B22F1/102
H01B1/00 E
H01B1/22 A
H01B13/00 Z
C09J1/00
B22F7/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204017
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041153
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522495485
【氏名又は名称】ホジョンエイブル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジョンテ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クァンモ
【テーマコード(参考)】
4J040
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4J040AA011
4J040DH032
4J040EE012
4J040HA061
4J040KA23
4J040KA25
4J040LA08
4K017AA03
4K017AA06
4K017AA08
4K017BA05
4K017CA07
4K017DA07
4K018BA02
4K018BB04
4K018BD04
4K018JA36
4K018KA32
5G301DA06
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】従来のはんだ及び鉛フリーはんだを代替し得る接合物質であって、優れた耐熱性、放熱性、熱伝導度、及び接合強度を有する銅焼結ペースト組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】銅焼結ペースト組成物は、高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子;溶媒;還元剤;脱泡剤;及び粘度調節剤;を含む。銅焼結ペースト組成物の製造方法は、酸化膜除去剤で銅ナノ粒子の表面の酸化膜を除去する段階;前記酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合する段階;前記重合開始剤が結合された銅ナノ粒子の表面に高分子単量体を重合して高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を製造する段階;及び前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を混合溶液に混合する段階;を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子;溶媒;還元剤;脱泡剤;及び粘度調節剤;を含むことを特徴とする、銅焼結ペースト組成物。
【請求項2】
前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子の平均粒径は、0.5~5μmであることを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項3】
前記高分子は、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキシドから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項4】
前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子は、酸化膜除去剤で銅ナノ粒子の表面の酸化膜を除去し、酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合させて高分子を形成して製造されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項5】
前記酸化膜除去剤は、NH4Cl、NH4NO3、及び(NH4)2SO4から選択される1種以上が含まれた水溶液であることを特徴とする、請求項4に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項6】
前記重合開始剤は、二硫化物であることを特徴とする、請求項4に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項7】
前記溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤は、200~300℃の温度範囲に曝されたときに気化又は分解されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項8】
前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を、固形分で60~70重量%含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項9】
前記溶媒は、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジメチルサクシネート、ジプロピレングリコール、2-(2-へキシルオキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールモノへキシルエーテルなどからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項10】
前記還元剤は、シュウ酸、マロン酸、オレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、グルタル酸、マレイン酸、アゼライン酸、アビエチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アクリル酸、及びクエン酸からなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項11】
前記脱泡剤は、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅焼結ペースト組成物。
【請求項12】
酸化膜除去剤で銅ナノ粒子の表面の酸化膜を除去する段階;
前記酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合する段階;
前記重合開始剤が結合された銅ナノ粒子の表面に高分子単量体を重合して高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を製造する段階;及び
前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を混合溶液に混合する段階;を含むことを特徴とする、銅焼結ペースト組成物の製造方法。
【請求項13】
前記酸化膜除去剤は、NH4Cl、NH4NO3、及び(NH4)2SO4から選択される1種以上が含まれた水溶液であることを特徴とする、請求項12に記載の銅焼結ペースト組成物の製造方法。
【請求項14】
前記重合開始剤は、二硫化物であることを特徴とする、請求項12に記載の銅焼結ペースト組成物の製造方法。
【請求項15】
前記混合溶液は、溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤を含むことを特徴とする、請求項12に記載の銅焼結ペースト組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、銅焼結接合を形成するための銅焼結ペースト組成物及びその製造方法に関し、それから形成された銅焼結接合を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を支持部材に接合させるために多様な接合材を用いている。このような接合材としては、鉛(Pb)成分を含む鉛はんだと、鉛成分を除去した鉛フリーはんだとを使用しており、はんだ内の鉛成分の有害性により鉛フリーはんだの使用比重が増加し続けているのが実情である。
【0003】
しかし、大部分の鉛フリーはんだには、スズが必須的に含まれ、一般的にスズには、少量の鉛が必ず含まれる。また、スズ自体が鉛はんだに比べて高価であり、融点が200℃以上と高く、接合部分の形状とサイズを制御しにくいなどの問題がある。また、このような問題を解決するために添加されるビスマスやインジウムは、稀少な元素であるので価格が高いという問題がある。
【0004】
したがって、本発明では、銅粒子を焼結して接合を形成することによって、従来のはんだ素材より有害性が低く、価格が安いと共にせん断強度が高い焼結接合を形成し得る銅焼結ペースト組成物を提供しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-073639号公報(2021.05.13.)
【特許文献2】特開2021-064612号公報(2021.04.22.)
【特許文献3】特開2021-048396号公報(2021.03.25.)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.Khazaka,L.Mendizabal,D.Henry,Review on Joint Shear Strength of Nano-Silver Pasteand Its Long-Term High Temperature Reliability,J.Electron.Mater,43(7),2014,2459-2466.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、銅焼結接合を形成するための銅焼結ペースト組成物に関するもので、銅ナノ粒子を化学的に保護するための高分子キャッピングが行われた銅ナノ粒子を提供し、前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子が含まれた銅焼結ペースト組成物を製造することによって、従来のはんだ及び鉛フリーはんだを代替し得る接合物質を提供する一方、すぐれた耐熱性、放熱性、熱伝導度、及び接合強度を有する接合素材を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を含む銅焼結ペースト組成物に関する。
【0009】
前記銅焼結ペースト組成物は、高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子、溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤を含むものであってもよい。
【0010】
前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子は、銅ナノ粒子の酸化膜を除去した後、銅ナノ粒子の表面を高分子でキャッピングしたものを指称するものであってもよい。このとき、前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子の平均粒径は、0.5~5μmであってもよい。
【0011】
前記高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、及びポリウレタンなどからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であるか、これらの共重合体であってもよい。
【0012】
前記銅ナノ粒子の酸化膜は、酸化膜除去剤により除去されるものであってもよい。このとき、前記酸化膜除去剤は、銅酸化膜(CuO)と反応して銅塩を形成し得る物質であってもよい。酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合し、高分子を形成させることによって、前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を製造することができる。
【0013】
前記酸化膜除去剤は、NH4Cl、NH4NO3、及び(NH4)2SO4から選択される1種以上が含まれた水溶液であってもよい。
【0014】
前記重合開始剤は、二硫化物であってもよい。
【0015】
前記溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤は、200~300℃の温度範囲に曝されたときに気化又は分解されるものであってもよい。
【0016】
前記銅焼結ペースト組成物は、前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を、固形分で60~70重量%含んでいるものであってもよい。
【0017】
前記溶媒は、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジメチルサクシネート、ジプロピレングリコール、2-(2-へキシルオキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールモノへキシルエーテルなどからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であってもよい。
【0018】
前記還元剤は、シュウ酸、マロン酸、オレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、グルタル酸、マレイン酸、アゼライン酸、アビエチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アクリル酸、及びクエン酸からなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上を含むものであってもよい。
【0019】
前記脱泡剤は、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つを含むものであってもよい。
【0020】
本発明で提供する銅焼結ペースト組成物の製造方法は、酸化膜除去剤で銅ナノ粒子の表面の酸化膜を除去する段階;前記酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合する段階;前記重合開始剤が結合された銅ナノ粒子の表面に高分子単量体を重合して高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を製造する段階;前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を混合溶液に混合する段階;を含むものであってもよい。
【0021】
上述したように、前記酸化膜除去剤は、NH4Cl、NH4NO3、及び(NH4)2SO4から選択される1種以上が含まれた水溶液であり、重合開始剤は、二硫化物であってもよい。
【0022】
また、前記混合溶液は、高沸点溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤を含むものであってもよい。
【0023】
また、前記銅焼結ペースト組成物を基板上に塗布し、素子を前記銅焼結ペースト組成物上に配置した後、温度を200~400℃で1~10分間維持することによって銅焼結接合を形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による銅焼結ペースト組成物は、鉛を含まないと共に、放熱性、熱伝導性、接合強度、及び電気伝導度に優れているので、従来の鉛フリーはんだを代替し得る素子接合技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例によって形成された銅焼結接合のせん断強度を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による銅焼結接合を形成するための銅焼結ペースト組成物と、銅焼結ペースト組成物及びその製造方法に対して詳しく説明する。以下で開示する図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるように例として提供するものである。したがって、本発明は、以下提示する図面に限定されず、他の形態に具体化され得、以下提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示され得る。このとき、本発明で使用する技術用語及び科学用語において他の定義がない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有した者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明及び添付図面で本発明の要旨を不必要に濁す恐れのある公知機能及び構成に対する説明は省略する。
【0027】
本発明は、銅焼結ペースト組成物に関するもので、前記銅焼結ペースト組成物は、高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子;溶媒;還元剤;脱泡剤;及び粘度調節剤;を含むものであってもよい。
【0028】
このとき、前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子は、銅ナノ粒子の酸化膜を除去した後、表面を高分子でキャッピングしたものを意味する。前記銅ナノ粒子の平均粒径は、0.5~5μmであってもよく、好ましくは、1~3μmの平均粒径を有するものであってもよい。このようなサイズの銅ナノ粒子を使用することによって、後の銅接合の形成時に接合強度が15MPa以上と優秀であり得る。
【0029】
前記高分子は、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキシドなどからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であるか、これらの共重合体であってもよい。このとき、前記高分子は、前記銅ナノ粒子100重量部に対して1~5重量部で含まれ得る。
【0030】
前記銅ナノ粒子の酸化膜は、酸化膜除去剤により除去されるものであってもよい。具体的に、前記酸化膜除去剤は、銅酸化膜(CuO)と反応して銅塩を形成し得る物質であって、好ましくは、アンモニウム塩であれば、特に制限されず、具体的には、NH4Cl、NH4NO3、及び(NH4)2SO4などのアンモニウム塩を含む水溶液であってもよく、前記酸化膜除去剤をアンモニア水溶液に混合して使用することが銅酸化膜の除去に容易であるので好ましい。
【0031】
前記酸化膜除去剤とアンモニア水溶液は、重量比で1:0.5~2の割合で混合され得る。酸化膜除去剤がアンモニア水溶液に比べて少なく投入される場合、酸化膜が完全に除去されないため高分子キャッピングが行われない場合があり、酸化膜除去剤が過度に添加される場合、銅が過度に溶解されて銅ナノ粒子の消耗量が増加し得る。
【0032】
前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子は、酸化膜除去剤で銅ナノ粒子の表面の酸化膜を除去した後、前記酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合し、前記重合開始剤が結合された銅ナノ粒子の表面に高分子単量体を重合することによって収得したものであってもよい。
【0033】
このような高分子は、金属表面に化学的に結合されるものであってもよく、単量体に高分子の開始剤として作用し得る物質をさらに添加して重合することによってキャッピングを行うものであってもよい。例えば、好ましくは、チオール基を含む[S-CH2CH2OCOC(CH3)2Br]2又は[S-(CH2)11OCOC(CH3)2Br]2のような二硫化物系開始剤を用いることができる。このような開始剤を使用することによって、単量体を重合して銅ナノ粒子の表面と高分子が化学的に結合される表面キャッピングを行うことができる。
【0034】
このとき、前記開始剤の処理時間によって重合される高分子の密度が調節され得、処理時間が増加するにしたがって重合される高分子の密度が増加し得る。
【0035】
前記単量体は、上述した高分子を形成し得る単量体から選択され得、好ましくは、ビニルピロリドンを使用するものであってもよい。
【0036】
前記溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤は、200~300℃の温度範囲に曝されたときに気化又は分解されるものであって、このような物質を使用することによって、接合の形成時に残留有機物が残らないので接合のせん断強度が高く維持され得る。
【0037】
前記銅焼結ペースト組成物は、前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を、固形分で60~70重量%含んでいるものであってもよい。高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子の含量がこれより高い場合、銅焼結ペースト組成物の粘度が過度に高くなり得、これより低い場合、銅焼結ペースト組成物の粘度が過度に薄くなり、焼結接合がよく行われないという問題が発生し得る。
【0038】
本発明による銅焼結ペースト組成物は、高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子100重量部に対して還元剤1~5重量部、粘度調節剤0.5~1.5重量部、添加剤0.5~1.5重量部、脱泡剤0.5~1.5重量部、及び溶媒40~60重量部を含むものであってもよい。このような範囲で組成物を製造することによって粘度が適切であるので半導体工程に有利である。
【0039】
前記溶媒は、高沸点溶媒、特に高沸点有機溶媒であることが好ましく、具体的に、沸点が150℃以上の溶媒、特に沸点が150℃以上の有機溶媒を用いることができる。例えば、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジメチルサクシネート、ジプロピレングリコール、2-(2-へキシルオキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールモノへキシルエーテルなどからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であってもよい。このような溶媒を使用する場合、常温でペースト組成物から溶媒の揮発が少なく発生しながらも接合の形成時に高温により揮発し得るので好ましい。ただし、沸点が240℃を超過する溶媒、特に有機溶媒を使用する場合、このような揮発が発生しにくいので良くない。
【0040】
前記還元剤は、シュウ酸、マロン酸、オレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、グルタル酸、マレイン酸、アゼライン酸、アビエチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アクリル酸、及びクエン酸からなる群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上を含むものであってもよい。このとき、好ましくは、シュウ酸を用いるものであってもよい。このような有機酸系列の物質を使用することによって、銅の接合形成時に高温により熱分解され得るので、残留量が少ないため好ましい。
【0041】
前記脱泡剤は、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択されるいずれか一つ又は二つを含むものであってもよい。このような脱泡剤を使用することによって、銅焼結ペースト組成物に気泡が発生することを防止することができ、また、焼結接合の接合強度を一層高めることができる。
【0042】
前記粘度調節剤は、セルロース系又はアクリル酸系物質及びアミン系物質の混合物を使用するものであってもよい。具体的に、セルロース系粘度調節剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシエチルメチルセルロースのような物質が適する。アクリル酸系物質としては、carbopol940のような従来増粘剤として使用されている物質が適し、これと混合するアミン系物質としては、トリエチルアミンのような物質が適する。このような物質を添加することによって銅焼結ペースト組成物の粘度を半導体工程に適するように維持することができる。
【0043】
前記銅焼結ペースト組成物は、シランカップリング剤を添加剤としてさらに含むことができる。具体的に、前記シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなエトキシ又はメトキシ系シランカップリング剤を意味するものであってもよい。このような添加剤を含むことによって銅焼結ペースト組成物内の粒子の分散度が増加して焼結時に接合が均一に形成され得る。
【0044】
本発明による銅焼結ペースト組成物の製造方法は、酸化膜除去剤で銅ナノ粒子の表面の酸化膜を除去する段階;前記酸化膜が除去された銅ナノ粒子の表面に重合開始剤を結合する段階;前記重合開始剤が結合された銅ナノ粒子の表面に高分子単量体を重合して高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を製造する段階;及び前記高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子を混合溶液に混合する段階;を含むものであってもよい。
【0045】
このとき、混合時に物質が均一に分散されない場合、以後の銅の接合形成時に接合強度が減少して接合部の破断が発生し得る。
【0046】
前記混合溶液は、上述した高沸点溶媒、還元剤、脱泡剤、及び粘度調節剤を含むものであり、前記酸化膜除去剤及び重合開始剤は、上述した内容と同一であるので重複する説明は省略する。
【0047】
このような銅焼結ペースト組成物を基板上に塗布し、素子を前記銅焼結ペースト組成物上に配置した後、温度を200~400℃で1~10分間維持することによって、銅焼結接合を形成することができる。
【0048】
また、上述した接合の形成方法は、1分以内の予熱をさらに行う過程を含むことができる。このような予熱は、100~200℃で2分以内で行うことができる。このような予熱過程をさらに含むことによって、小型電気素子の接合時に温度変化による急激な気体発生を防止してより精緻な工程を行うことができる。
【0049】
上述したような銅焼結ペースト組成物を使用して形成された銅焼結接合は、せん断強度が10~25MPaであってもよい。
【実施例0050】
以下、実施例を通じて本発明による銅焼結ペースト組成物及びそれから形成された銅焼結接合に対してより詳しく説明する。ただし、下記実施例は、本発明を詳しく説明するための一つの参照に過ぎず、本発明がこれによって限定されるものではなく、多くの形態で具現され得る。
【0051】
また、異に定義しない限り、全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する当業者において一般的に理解される意味と同一な意味を有する。本願で説明に用いられる用語は、ただし、特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限するものと意図されない。
【0052】
<銅ナノ粒子の酸化膜除去>
蒸溜水に酸化膜除去剤として(NH4)2SO42g及びNH4OH1gを混合した混合溶液1Lを半回分式恒温反応槽に入れた後、銅ナノ粒子10gを添加して撹拌しながら反応温度40℃まで加熱し、10分間反応させて前記銅ナノ粒子の酸化膜を除去した後、溶液を濾過して反応物を乾燥して酸化膜が除去された銅ナノ粒子を得た。
【0053】
<高分子でキャッピングされた銅ナノ粒子の製造>
500mLの丸底フラスコに高分子開始剤として二硫化物([S-(CH2)11OCOC(CH3)2Br]2)150μLとTHF(Tetrahydrofuran、SigmaAldrich)200mLを入れ、強く撹拌しながら酸化膜が除去された銅ナノ粒子をゆっくり添加した。20℃の温度で24時間の間撹拌させた後、銅ナノ粒子を遠心分離して収得した後、DMF(N,N-Dimethylformamide)に分散させた。その後、窒素雰囲気で4VP(4-vinylpyridine)0.5g及び蒸溜水0.5mLを添加し、40℃の温度で48時間の間強く撹拌して重合を誘導して銅ナノ粒子の表面にPVPをキャッピングした後、溶液を濾過してPVPでキャッピングされた銅ナノ粒子を収得した。
【0054】
<実施例1>
前記PVPでキャッピングされた銅ナノ粒子65gをブチルカルビトール30gに混合して撹拌しながら、還元剤2g、粘度調節剤0.5g、及び添加剤0.5gを2時間の間撹拌して銅焼結ペースト組成物を製造した。
【0055】
<比較例1>
前記実施例1と同様に銅焼結ペースト組成物を製造するが、PVPキャッピングを行わなかった銅ナノ粒子を使用した。
【0056】
<特性評価方法>
せん断強度測定
銅焼結ペースト組成物を用いて銅焼結接合を行い、接合のせん断強度を測定した。
【0057】
【0058】
図1を参照すると、実施例1及び比較例1で形成した接合のせん断強度を視覚的に確認することができ、実施例1の場合、せん断強度が焼結時間に比例して増加し、5分間接合した場合にせん断強度が最も優れていることが示された。焼結時間が5分を超過する場合、せん断強度が徐々に落ちる傾向を示し、実施例1の最適焼結時間は、3~8分程度であることが分かる。これとは異なり、比較例1の場合、焼結時間の増加に従ってせん断強度が増加するが、せん断強度が全般的に実施例1より低いことが分かる。
【0059】
また、PVPキャッピングを行った実施例1の場合、せん断強度の偏差が一層大きくなる傾向があるが、接合を10分以内で行う場合、せん断強度が全般的に優れて品質に影響を大きく与えるレベルではなかった。
【0060】
以上のように、特定の事項と限定された実施例を通じて本発明を説明したが、これは、本発明の全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有した者であれば、」このような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0061】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等であるか等価的な変形がある全てのものは、本発明の思想の範疇に属する。