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特開2023-152688ハニカム構造体およびハニカム構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152688
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ハニカム構造体およびハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/20 20060101AFI20231005BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20231005BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231005BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231005BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B28B3/20 B
B01J35/02 G
B01J35/04 301N
B01J35/04 301F
B01J35/04 301P
B01J37/00 D
B01J37/08
C04B38/00 304Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008955
(22)【出願日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2022055290
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広則
(72)【発明者】
【氏名】横井 里奈
(72)【発明者】
【氏名】徳田 昌弘
【テーマコード(参考)】
4G019
4G054
4G169
【Fターム(参考)】
4G019GA04
4G054AA09
4G054AB09
4G054BD28
4G169AA01
4G169AA08
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA13
4G169CA14
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA19
4G169EB12Y
4G169EB14X
4G169EB14Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB18Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169EC30
4G169EE03
4G169FA01
4G169FB33
4G169FB57
4G169FB67
(57)【要約】
【課題】厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を有し、前記成形工程は、前記押出し成形によって得られる円筒状のハニカム成形体のセルが延びる方向に沿う外周面を受台で支持して搬送することを含み、前記受台は、前記セルが延びる方向に沿う溝部を有する本体部と、前記本体部の前記溝部に配置され前記ハニカム成形体の下半分に当接する円弧状の湾曲面を有する当接部と、を有し、前記当接部は、硬度74N以下の材質で構成され、前記円弧状の当接部の径と前記押出し成形の金型の径との差は0.6mm以下である。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を有するハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカム構造体は、外周壁と前記外周壁の内側に配設される隔壁とを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、
前記成形工程は、前記押出し成形によって得られる円筒状のハニカム成形体のセルが延びる方向に沿う外周面を受台で支持して搬送することを含み、
前記受台は、前記セルが延びる方向に沿う溝部を有する本体部と、前記本体部の前記溝部に配置され前記ハニカム成形体の下半分に当接する円弧状の湾曲面を有する当接部と、を有し、
前記当接部は、硬度74N以下の材質で構成され、
前記円弧状の当接部の径と前記押出し成形の金型の径との差は0.6mm以下である、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記セラミック原料は、炭化ケイ素および金属ケイ素を含む、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ハニカム成形体の比重は0.3以上である、請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記当接部の周方向端部は、前記ハニカム成形体の外周面に隙間なく当接する、請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記当接部は軟質ウレタンフォームで構成される、請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、
前記ハニカム構造部は、炭化ケイ素および金属ケイ素を含み、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面の真円度は1mm以下であり、
前記電極層の厚みは0.05mm以上0.50mm以下であり、前記電極層の厚みのバラツキは35%以下である、
ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体およびハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に、担体に触媒を担持させた触媒担体が用いられている。処理の際、エンジン始動時に触媒温度が低いと、触媒が所定の温度まで昇温されず、排ガスが十分に浄化されないという問題がある。このような問題を解決するために、導電性を有する担体に通電して担体を発熱させることにより、担体に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)を用いた排ガス処理装置の開発が進んでいる。このような担体として、特許文献1には、セラミック製のハニカム構造部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6438939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ハニカム構造部を発熱させるため、その側面には電極層が配設される。例えば、ハニカム構造部の通電発熱特性を向上させるため、配設される電極層の厚みはより均一であることが求められる。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の実施形態によるハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を有するハニカム構造体の製造方法であって、前記ハニカム構造体は、外周壁と前記外周壁の内側に配設される隔壁とを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、前記成形工程は、前記押出し成形によって得られる円筒状のハニカム成形体のセルが延びる方向に沿う外周面を受台で支持して搬送することを含み、前記受台は、前記セルが延びる方向に沿う溝部を有する本体部と、前記本体部の前記溝部に配置され前記ハニカム成形体の下半分に当接する円弧状の湾曲面を有する当接部と、を有し、前記当接部は、硬度74N以下の材質で構成され、前記円弧状の当接部の径と前記押出し成形の金型の径との差は0.6mm以下である。
2.上記1に記載のハニカム構造体の製造方法において、上記セラミック原料は、炭化ケイ素および金属ケイ素を含んでもよい。
3.上記1または2に記載のハニカム構造体の製造方法において、上記ハニカム成形体の比重は0.3以上であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法において、上記当接部の周方向端部は、上記ハニカム成形体の外周面に隙間なく当接してもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法において、上記当接部は軟質ウレタンフォームで構成されてもよい。
【0007】
6.本発明の別の実施形態によるハニカム構造体は、第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、前記ハニカム構造部は、炭化ケイ素および金属ケイ素を含み、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面の真円度は1mm以下であり、前記電極層の厚みは0.05mm以上0.50mm以下であり、前記電極層の厚みのバラツキは35%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の概略の構成を示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の断面図である。
図3図1に示すハニカム構造体の断面図である。
図4】セルピッチを説明するための図である。
図5A】押出し成形されたハニカム成形体が受台で支持される様子の一例を示す模式図である。
図5B】押出し成形機の金型から押し出されるハニカム成形体の先端の凹凸パターンの一例を示す図である。
図6】本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の製造方法に用いられる受台の概略の構成を示す斜視図である。
図7】受台でハニカム成形体が支持される様子の一例を横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
A.ハニカム構造体
図1は本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の概略の構成を示す斜視図であり、図2および図3図1に示すハニカム構造体の断面図である。ハニカム構造体30は、ハニカム構造部10と、ハニカム構造部10の側面に配設され、ハニカム構造部10を介して互いに対向する一対の電極層20、20と、を備える。
【0012】
ハニカム構造部10は、第一端面10aから第二端面10bまで(長さ方向に)延びて流体の流路となり得る複数のセル12を区画形成する隔壁14と、外周に位置して隔壁14を囲む外周壁16とを有する。外周壁16は、長さ方向に延びる。複数のセル12はそれぞれ、長さ方向に延びる空間とされる。長さ方向に垂直な各セル12の断面形状は、図示例では略正六角形であるが、他の多角形(例えば、三角形、四角形、五角形)、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。長さ方向に垂直な外周壁16の断面形状は、代表的には円形であるが、多角形や楕円形であってもよい。なお、図3においては、隔壁14は省略している。
【0013】
ハニカム構造部10(外周壁16)のセル12の延びる方向に直交する面の真円度は、例えば1mm以下であり、好ましくは0.6mm以下である。真円度は、例えば、光ゲージ曲がり測定(レーザー変位計を用いた測定)により得ることができる。具体的には、ハニカム構造部10の長さ方向の上端部、中央部および下端部の3点について外周形状を測定し、得られた測定データを、基準の外周形状に対してベストフィット処理(基準値からのずれ量を最小とする処理)し、基準値との差の絶対値を求めることにより真円度(単位:mm)を得ることができる。このような真円度を満足することにより、厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を得ることができる。なお、本明細書において、「直交する面」には、「直交する断面」も含まれ得る。
【0014】
外周壁16の厚みは、例えば、強度の観点から、好ましくは0.2mm以上である。一方、外周壁16の厚みは、例えば1mm以下であり、好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.4mm以下である。外周壁の厚みのバラツキ(セル12の延びる方向に直交する面の面内におけるバラツキ)は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。なお、外周壁の厚みのバラツキは、一定の間隔をあけて(中心角で45°おきに)、外周壁の厚みをCNC画像測定システム(例えば、ニコン社製のNEXIVシリーズ)により8か所測定し、それぞれの測定値とこれらの平均値との差の絶対値を平均値で除することにより算出することができる。
【0015】
隔壁14の厚みは、例えば、触媒担体としての利用の観点から、好ましくは310μm以下であり、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは230μm以下である。一方、隔壁14の厚みは、例えば、強度の観点から、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは130μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上である。
【0016】
セル12の延びる方向に直交する面における単位面積当たりのセル12の数は、例えば50セル/cm~150セル/cmであり、好ましくは60セル/cm~100セル/cmである。
【0017】
セル12の延びる方向に直交する面におけるセル12のセルピッチPは、例えば0.8mm以上1.6mm以下であり、好ましくは1.0mm以上1.4mm以下である。ここで、セルピッチPは、図4に示すように、対向する略平行な隔壁14の厚み方向における中央部14a間の距離である。
【0018】
セルピッチPのバラツキ(セル12の延びる方向に直交する面の面内におけるバラツキ)は、好ましくは5.5%以下であり、より好ましくは4.5%以下である。セルピッチのバラツキは、各直径方向に沿って、一定の間隔をあけてセルピッチをCNC画像測定システム(例えば、ニコン社製のNEXIVシリーズ)により計10か所以上測定し、それぞれの測定値とこれらの平均値との差の絶対値を平均値で除することにより算出することができる。ここで、「各直径方向」とは、セルの断面形状が四角形の場合はX方向およびY方向の二方向を意味し、セルの断面形状が六角形の場合は三方向(一組の対向する隔壁に対し直交する方向)を意味する。
【0019】
一対の電極層20、20は、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで配設され、それぞれ、ハニカム構造部10のセル12の延びる方向に延びる帯状に形成されている。図示しないが、一対の電極層20、20にはそれぞれ金属製の端子が設けられ、一方の端子は電源のプラス極に接続され、他方の端子は電源のマイナス極に接続され得る。
【0020】
電極層20の厚みは、例えば0.05mm以上0.50mm以下である。電極層20の厚みのバラツキは、35%以下であることが好ましく、より好ましくは32%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。電極層20の厚みのバラツキの下限については、特に制限は無いが、例えば、20%以上であってもよく、25%以上であってもよい。なお、電極層の厚みのバラツキは、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する複数の断面における電極層の厚みを、光学顕微鏡により各断面において4点以上測定し、それぞれの測定値とこれらの平均値との差の絶対値を平均値で除することにより算出することができる。本発明の実施形態によるハニカム構造部によれば、このような厚みの均一性が達成され、得られるハニカム構造体の通電発熱性を確保し、通電発熱ムラが抑制され、均一にハニカム構造体を加熱し得る。
【0021】
電極層20の形成範囲は特に限定されないが、一対の電極層20、20は、それぞれ、セル12の延びる方向に直交する面における円弧の中心角θで、例えば80°以上の範囲に形成され、好ましくは99°以上180°未満の範囲に形成される。このような形成範囲においても、上記電極層の厚みのバラツキを達成し得る。
【0022】
ハニカム構造部10の25℃における電気抵抗率は、好ましくは0.1Ωcm~200Ωcmである。電極層20の25℃における電気抵抗率は、好ましくは0.1Ωcm~100Ωcmであり、より好ましくは0.1Ωcm~50Ωcmである。
【0023】
ハニカム構造部10は、代表的には、多孔質体で構成される。ハニカム構造部10は、セラミック原料を含む材料により形成される。代表的には、炭化ケイ素および金属ケイ素を含む材料により形成される。具体的には、ケイ素-炭化ケイ素複合材料を主成分とする(例えば、95質量%以上含む)材料により形成される。ケイ素-炭化ケイ素複合材料は、複数の炭化ケイ素粒子が、金属ケイ素によって結合された材料であり得る。ハニカム構造部が、ケイ素-炭化ケイ素複合材料で形成される場合、ハニカム構造部に含有される「骨材としての炭化ケイ素粒子の質量」と、ハニカム構造部に含有される「結合材としてのケイ素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部に含有される「結合材としてのケイ素の質量」の比率が、10質量%~40質量%であることが好ましく、15質量%~35質量%であることがさらに好ましい。このような材料によれば、上記電気抵抗率を良好に達成し得る。
【0024】
代表的には、電極層20の体積抵抗率をハニカム構造部10の体積抵抗率より低くする。このような関係によれば、電極層20に優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がセル12の延びる方向および周方向に広がりやすくなる。電極層20の体積抵抗率は、ハニカム構造部10の体積抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/30以下であることがさらに好ましい。一方で、両者の体積抵抗率の差が大きくなりすぎると、対向する電極層20の端部間に電流が集中してハニカム構造部10の発熱に偏りが生じるおそれがある。電極層20の体積抵抗率は、ハニカム構造部10の体積抵抗率の1/200以上であることが好ましく、1/150以上であることがより好ましく、1/100以上であることがさらに好ましい。ここで、電極層20の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値である。
【0025】
電極層20の材質としては、例えば、導電性セラミックス、金属、または、金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を用いることができる。金属としては、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、SiもしくはTiの単体金属、または、これらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、例えば、炭化ケイ素(SiC);珪化タンタル(TaSi)、珪化クロム(CrSi)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属ケイ素と炭化ケイ素との複合材、上記金属珪化物と金属ケイ素と炭化ケイ素との複合材が挙げられる。また、金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、熱膨張低減の観点から、上記の一種または二種以上の金属に、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化ケイ素、窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種または二種以上添加した複合材が挙げられる。これの中でも、例えば、ハニカム構造部10と同時に焼成し得、製造工程の簡素化に資する観点から、金属珪化物と金属ケイ素と炭化ケイ素との複合材が好ましく用いられる。
【0026】
ハニカム構造体30を触媒担体として使用する場合、隔壁14には触媒が担持され、セル12を通過する排ガス中のCO、NO、炭化水素などを触媒反応によって無害な物質にすることが可能となる。触媒は、好ましくは、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウム、およびこれらの組み合わせを含有し得る。
【0027】
B.製造方法
上記ハニカム構造体(ハニカム構造部)は、代表的には、セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体(ハニカム構造部)を得る焼成工程と、を有する方法により製造され得る。
【0028】
上述のとおり、成形材料は、セラミック原料を含む。代表的には、炭化ケイ素(粉末)および金属ケイ素(粉末)を含む。成形材料に含まれ得る他の原料としては、例えば、バインダー、分散媒、添加剤が挙げられる。
【0029】
上記成形工程において、代表的には、ハニカム構造部の隔壁に対応するスリットが形成された口金から成形材料を押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を有する円筒状のハニカム成形体を得る。そして、成形工程において、押出し成形によって得られるハニカム成形体のセルが延びる方向に沿う外周面を受台で支持して搬送する。
【0030】
図5Aは、押出し成形されたハニカム成形体が受台で支持される様子の一例を示す模式図である。図5Aに示すように、押出し成形機40の金型(押え板)41で固定された口金42から押し出された円筒状のハニカム成形体44は、押出し成形機40の金型41の出口に配置される受台100に受け渡されて搬送される。金型(押え板)41は、ハニカム構造部の外周壁を規定する。図示しないが、受台100は、代表的には、所定の速度(例えば、成形材料の押出し速度と略同一速度)で搬送する搬送路上に配置される。搬送路は、特に限定されないが、例えば、コンベア式の搬送路が採用される。
【0031】
ハニカム成形体44は、上述のとおり、炭化ケイ素および金属ケイ素を含む成形材料により形成され得る。このような成形体は、比重が高くなる傾向にあり、その比重は例えば0.3以上である。ここで、ハニカム成形体の比重は、ハニカム成形体の重量および容積(成形長と押出し成形の金型の径から算出される容積)から算出される。
【0032】
ハニカム成形体44の水分率は、好ましくは19%~27%である。このような水分率によれば、後述の当接の際に変形を抑制することができる。
【0033】
押出し成形機から押し出されるハニカム成形体の先端の凹凸パターン(押出し量のバラツキ)を制御することにより、後述の当接を良好に行うことができる。ハニカム成形体の先端の凹凸パターンは、ハニカム成形体の比重、水分率、硬度等に応じて適切に設計され得る。押出し成形機の金型41から押し出されるハニカム成形体44の先端の凹凸パターンの一例を図5Bに示す。図5Bに示すように、最も多く押し出された箇所(図示例では中央部)と最も少なく押し出された箇所(図示例では外周部)との差(高さh)を0mm~2mmに制御することが好ましい。
【0034】
図6は、本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の製造方法に用いられる受台の概略の構成を示す斜視図である。受台100は、本体部50と本体部50上に配置される当接部60とを有する。
【0035】
本体部50は、一方向に延びる溝部51を有する。溝部51の形状は、特に限定されないが、例えば、ハニカム成形体44の形状に対応する形状、サイズに応じて調整され得る。図示例では、溝部51は、ハニカム成形体44のセルが延びる方向に沿う外周面の下半分に対応する湾曲面を有し、溝部51の延びる方向に直交する面は、ハニカム成形体44のセルの延びる方向に直交する面の下半分(半円)とされる。
【0036】
当接部60は、本体部50の溝部51に配置され、ハニカム成形体44に当接する。当接部60は、ハニカム成形体44のセルが延びる方向に沿う外周面の下半分と略同一の円弧状の湾曲面を有する。具体的には、円弧状の当接部(当接面)60の径L1と押出し成形の金型41の径L2との差(クリアランス)は0mm以上0.6mm以下であり、好ましくは0.2mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下である。当接部60の周方向両端部60a、60aは、図7に示すように、ハニカム成形体44の外周面に隙間なく当接することが好ましい。このような構成によれば、支持された状態で、当接部60とハニカム成形体44との間の隙間に向けてハニカム成形体44が自重により変形することを効果的に抑制し、上記真円度をはじめ、外周壁の厚みのバラツキ、セルピッチのバラツキを良好に達成することができる。ハニカム成形体の比重が高い場合は自重により変形しやすく、特に効果的である。
【0037】
当接部60は、硬度74N以下の材質で構成される。当接部を構成する材質の硬度は、好ましくは70N以下であり、より好ましくは65N以下であり、60N以下であってもよい。一方、当接部60は、硬度44N以上の材質で構成されることが好ましく、50N以上であってもよく、55N以上であってもよい。ここで、硬度はJIS K6400-2の6.7(D法)に準拠して測定される25%圧縮時の硬さである。具体的には、測定対象(当接部)を、その当初の厚み(元厚)の75%の厚みになるまで予備圧縮して元厚に戻った後、元厚の25%の厚みになるまで押し込み20秒間保持したときの荷重(N)である。
【0038】
ハニカム成形体44を受台100に受け渡す際、ハニカム成形体44は当接部60(特に、当接部60の周方向端部60a)に衝突し易いが、当接部60が硬度74N以下の材質で構成されていることにより、衝突による変形を抑制することができる。また、上記硬度を満足し得る材質を採用することにより、支持された状態で、ハニカム成形体44の自重による変形(例えば、セル形状の変形・潰れ)を抑制することができる。ハニカム成形体44の変形を抑制することにより、歩留りが格段に向上し得る。
【0039】
上記硬度を良好に満足させる観点から、当接部60は軟質ウレタンフォームで構成されることが好ましい。当接部60の厚みは、例えば9.2mm~10.8mmである。このような厚みによれば、図示例のように、当接部60は、本体部50の溝部51に倣って湾曲して、ハニカム成形体のセルが延びる方向に沿う外周面と略同一の円弧状の湾曲面を有することができる。
【0040】
本体部50は、任意の適切な材料で構成され得る。溝部51の加工精度の観点から、硬質材料で構成されることが好ましい。硬質材料は、例えば、ISO 868に準拠して測定されるショアD硬度が40HS~70HSを満足する。硬質材料の中でも、取扱い性の観点から、硬質樹脂で構成されることがより好ましい。硬質樹脂の具体例としては、発泡スチロール、多孔質ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0041】
搬送後、上記ハニカム成形体を乾燥させてハニカム乾燥体を得る。乾燥前に(例えば、搬送途中において)、ハニカム成形体は、所定の長さとなるように切断されてもよい。
【0042】
ハニカム成形体の乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、50℃~120℃とすることが好ましい。
【0043】
上記ハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体(ハニカム構造部)を得る。焼成条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。焼成温度は、例えば1400℃~1500℃である。焼成時間は、例えば20時間~80時間である。焼成は、連続的に行ってもよいし、異なる温度で多段的に行ってもよい。なお、多段的に焼成を行う場合、上記焼成時間は、各段階の焼成時間の合計である。
【0044】
ハニカム乾燥体を焼成処理に供する前に、ハニカム乾燥体を仮焼してもよい。仮焼温度は、例えば、ハニカム乾燥体に含まれる有機物の燃焼温度に応じて決定され得る。仮焼温度は、例えば200℃~1000℃である。仮焼時間は、例えば10時間~100時間である。なお、仮焼と焼成とは連続的に行ってもよい。具体的には、焼成の昇温過程において、仮焼を行ってもよい。
【0045】
上記電極層は、代表的には、電極層形成材料を塗布して得られる塗布層を焼成することにより形成される。電極層形成材料は、任意の適切なタイミングで塗布され得る。代表的には、電極層形成材料は上記ハニカム乾燥体に塗布される。なお、電極層形成材料はハニカム焼成体に(上記焼成工程の途中に)塗布されてもよい。電極層形成材料の塗布方法としては、好ましくは印刷法が採用される。例えば、ハニカム乾燥体の側面に開口部が形成された製版を配置し、製版の上からペースト状の電極層形成材料をスキージで押圧して塗布する。このような方法によれば、塗布面(曲面である側面)に対し、良好に電極層を形成することができる。加えて、得られるハニカム構造部は上記真円度を良好に達成し得ることから、電極層形成材料の塗布面の均一性が高く、厚みの均一性に優れた電極層を形成することができる。
【実施例0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
(受台)
図6に示すような断面が半円の溝部を有する本体部を、エンドミルを用いて発泡スチロールを切削加工することにより作製した。得られた本体部の溝部に、厚み10mmで硬度60Nのシート状の軟質ウレタンフォームを図6に示すように配置し、断面が直径(L1)86.4mmの半円の当接部を形成し、受台を作製した。
【0048】
(成形材料)
篩に通した炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末とを70:30の質量比で混合し、原料粉末を得た。得られた原料粉末に、バインダー、添加剤および水を添加し、これらを混合して湿粉(混合物)を得た。ここで、得られるハニカム成形体の水分率が23%となるように水の添加量を調整した。得られた湿紛を混練し、坏土を得た。
【0049】
上記坏土を、図5Aに示すように、直径(L2)86.4mmの押え板で口金を装着した押出し成形機により押し出し、押し出された円筒状のハニカム成形体を、押出し成形機の押え板の出口に配置した受台に保持させた。その後、ハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム乾燥体を得た。
【0050】
(電極層形成材料)
平均粒子径が6μmの金属ケイ素(Si)粉末、平均粒子径が35μmの炭化ケイ素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリンおよび水を、自転公転攪拌機で混合して、電極層形成材料を調製した。Si粉末およびSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合した。また、Si粉末およびSiC粉末の合計を100質量部としたときに、配合量は、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。
【0051】
(電極層)
印刷法により、図1に示すような電極層が得られるように、上記電極層形成材料を上記ハニカム乾燥体の側面に塗布した(一方の電極層の中心角90°)。具体的には、ハニカム乾燥体の外周面に開口部が形成された製版を配置し、製版の上から上記電極層形成材料をスキージで押圧することで塗布した。
【0052】
(焼成)
ハニカム乾燥体に塗布された電極層形成材料を乾燥させた後、アルゴン雰囲気下で焼成し、さらに、大気雰囲気下で焼成し、適宜長さを調整し、長さ65mmのハニカム構造体を得た。
【0053】
[実施例2]
受台の作製において、当接部の直径(L1)86.6mmとなるように本体部の切削加工を行ったこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0054】
[実施例3]
受台の作製において、厚み10mmで硬度50Nのシート状の軟質ウレタンフォームを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0055】
[実施例4]
受台の作製において、厚み10mmで硬度70Nのシート状の軟質ウレタンフォームを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0056】
[比較例1]
受台の作製において、厚み10mmで硬度110Nのシート状の軟質ウレタンフォームを用い、当接部の直径(L1)86.6mmとなるように本体部の切削加工を行ったこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0057】
[比較例2]
受台の作製において、シート状の軟質ウレタンフォームを用いずに、当接部の直径(L1)が86.8mmとなるように本体部の切削加工を行ったこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。ここで、当接部の直径(L1)が86.8mmとなるように、厚み1mmの布を本体部とハニカム成形体の間に配置させて調整した。なお、布は、重さの緩衝効果はないため、硬度は求められないものである。
【0058】
<評価>
実施例および比較例について、真円度および電極層の厚みのバラツキを評価した。評価方法は下記のとおりである。評価結果を表1および表2にまとめる。
【0059】
1.真円度
レーザー変位計(レーザーセンサー、Micro-Epsilon社製)により真円度を評価した。具体的には、得られたハニカム成形体およびハニカム乾燥体の長さ方向の上端部(先端から6mmの部位)、下端部(終端から6mmの部位)および中央部(上端部と下端部との中間)の3点について外周形状を測定した。得られた測定データを、基準の外周形状に対してベストフィット処理を行い、基準値との差の絶対値を求めた。
なお、ハニカム焼成体(ハニカム構造部)の真円度は、ハニカム乾燥体の真円度と同程度(具体的には、最大でもハニカム乾燥体の真円度に対して0.05mm大きくなる程度)であった。
2.電極層の厚みのバラツキ
得られたハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する複数の断面(先端および終端)における電極層の厚みを、光学顕微鏡により各断面において10点測定し、電極層の厚みのバラツキを評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
比較例において、受台の当接部の周方向端部に衝突することによるハニカム成形体の変形を防止する観点から、表1に示すクリアランスよりも低い値に設定することは困難である。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の実施形態のハニカム構造体は、内燃機関の排ガスの処理(浄化)用途に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0065】
10 ハニカム構造部、10a 第一端面、10b 第二端面、12 セル、14 隔壁、16 外周壁、20 電極層、30 ハニカム構造体、40 押出し成形機、41 押出し成形の金型(押え板)、42 口金、44 ハニカム成形体、50 本体部、51 溝部、60 当接部、60a 周方向端部、100 受台、L1 当接部(当接面)の径、L2 押出し成形の金型(押え板)の径。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7