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特開2023-152697抗ウイルス性化粧シート及び抗ウイルス性化粧板
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  • 特開-抗ウイルス性化粧シート及び抗ウイルス性化粧板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152697
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】抗ウイルス性化粧シート及び抗ウイルス性化粧板
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/00 20060101AFI20231005BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L25/00
B32B27/18 F
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012258
(22)【出願日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2022054860
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 智美
(72)【発明者】
【氏名】根津 義昭
(72)【発明者】
【氏名】和田 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】住田 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】良波 梨紗
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AH02A
4F100AH04A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK12A
4F100AK24A
4F100AT00D
4F100BA01
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA02A
4F100DD07A
4F100DE01A
4F100EJ91A
4F100HB00
4F100HB00C
4F100JB05A
4F100JB06A
4F100JB14A
4F100JC00A
4F100JK14A
4F100JN01B
4F100JN21A
4F100YY00A
4J002BC031
4J002BC121
4J002DJ016
4J002FD206
4J002GL01
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗ウイルス剤としてアニオン系抗ウイルス剤を用いた場合に、抗ウイルス性及び低艶性に優れた抗ウイルス性化粧シート、及び、抗ウイルス性化粧板を提供する。
【解決手段】少なくとも表面保護層を最表面に有する抗ウイルス性化粧シートであって、前記表面保護層は、アニオン系抗ウイルス剤、及び、疎水性シリカを含有する、ことを特徴とする抗ウイルス性化粧シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面保護層を最表面に有する抗ウイルス性化粧シートであって、
前記表面保護層は、アニオン系抗ウイルス剤、及び、疎水性シリカを含有する、
ことを特徴とする抗ウイルス性化粧シート。
【請求項2】
前記アニオン系抗ウイルス剤は、スチレンポリマー誘導体化合物、不飽和カルボン酸誘導体化合物、及び、スチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項3】
前記アニオン系抗ウイルス剤は抗ウイルス性粒子であり、前記抗ウイルス性粒子は、1)スチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物とを含有する粒子、2)スチレンポリマー誘導体化合物を含有する粒子と不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有する粒子との混合粒子、及び3)スチレン樹脂を含有する粒子からなる群より選択される少なくとも一種の抗ウイルス性粒子Aを含有する、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項4】
前記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aは、その構成成分がスチレン、スルホン酸ナトリウム、アクリル酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有する、請求項3に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項5】
前記スチレンポリマー誘導体化合物及び/又は前記不飽和カルボン酸誘導体化合物は、構成成分としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、ジメチルピロール、テトラメチル-1、3-プロパンジアミン、及びN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種の構造を有する、請求項2に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項6】
前記疎水性シリカの平均粒子径は、5μm以上15μm以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項7】
前記疎水性シリカの含有量は、前記表面保護層中の樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項8】
前記表面保護層は、更に、親水性シリカを含有し、前記親水性シリカの含有量は、前記表面保護層中の樹脂成分100質量部に対して、15質量部以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層側の入射角60度の光沢度が30以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項10】
前記表面保護層側の入射角60度の光沢度が1以上15以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項11】
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含有する、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項12】
前記表面保護層の表面側の、カットオフ値0.08mm、評価長さ0.4mmの測定条件で測定したJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)が、0.5μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項13】
前記表面保護層の厚みは、4μm以上50μm以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項14】
基材シート上に、少なくとも絵柄模様層、透明性樹脂層及び前記表面保護層をこの順に有する、請求項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シートを被着材上に有する抗ウイルス性化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性化粧シート及び抗ウイルス性化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衛生面の観点から、建築物の内装材等に用いられる化粧シート等の人が手で触れる物の表面に、抗菌性を有する組成物を塗布し、抗菌処理を施すことが行われていた。
【0003】
抗菌性を有する化粧シートとして、例えば、表面保護層に抗ウイルス性添加剤が添加された化粧シートが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6879421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化粧シートには意匠性が求められており、表面に低艶性が要求される。化粧シートの表面に低艶性を付与することを目的として、表面保護層に微粒子が添加されており、微粒子として艶消しシリカが用いられている。
【0006】
しかしながら、化粧シートの表面保護層に用いる抗ウイルス剤としてアニオン系抗ウイルス剤を用い、且つ、表面保護層に艶消しシリカを添加すると、抗ウイルス剤が失活するという問題がある。艶消しシリカの表面では、シラノール基のOHが脱離し、アニオン系抗ウイルス剤と結合し易い。このため、化粧シートの表面に抗ウイルス性及び低艶性を付与するために、表面保護層中にアニオン系抗ウイルス剤及び艶消しシリカを添加すると、アニオン系抗ウイルス剤が艶消しシリカと結合して、失活するという問題がある。
【0007】
従って、抗ウイルス剤としてアニオン系抗ウイルス剤を用いた場合に、抗ウイルス性及び低艶性に優れた抗ウイルス性化粧シート、及び、抗ウイルス性化粧板の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、抗ウイルス剤としてアニオン系抗ウイルス剤を用いた場合に、抗ウイルス性及び低艶性に優れた抗ウイルス性化粧シート、及び、抗ウイルス性化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、少なくとも表面保護層を最表面に有する化粧シートにおいて、表面保護層が、アニオン系抗ウイルス剤、及び、疎水性シリカを含有する構成とすれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の抗ウイルス性化粧シート及び抗ウイルス性化粧板に関する。
1.少なくとも表面保護層を最表面に有する抗ウイルス性化粧シートであって、
前記表面保護層は、アニオン系抗ウイルス剤、及び、疎水性シリカを含有する、
ことを特徴とする抗ウイルス性化粧シート。
2.前記アニオン系抗ウイルス剤は、スチレンポリマー誘導体化合物、不飽和カルボン酸誘導体化合物、及び、スチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の抗ウイルス性化粧シート。
3.前記アニオン系抗ウイルス剤は抗ウイルス性粒子であり、前記抗ウイルス性粒子は、1)スチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物とを含有する粒子、2)スチレンポリマー誘導体化合物を含有する粒子と不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有する粒子との混合粒子、及び3)スチレン樹脂を含有する粒子からなる群より選択される少なくとも一種の抗ウイルス性粒子Aを含有する、項1又は2に記載の抗ウイルス性化粧シート。
4.前記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aは、その構成成分がスチレン、スルホン酸ナトリウム、アクリル酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有する、項3に記載の抗ウイルス性化粧シート。
5.前記スチレンポリマー誘導体化合物及び/又は前記不飽和カルボン酸誘導体化合物は、構成成分としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、ジメチルピロール、テトラメチル-1、3-プロパンジアミン、及びN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種の構造を有する、項2に記載の抗ウイルス性化粧シート。
6.前記疎水性シリカの平均粒子径は、5μm以上15μm以下である、項1~5のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
7.前記疎水性シリカの含有量は、前記表面保護層中の樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下である、項1~6のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
8.前記表面保護層は、更に、親水性シリカを含有し、前記親水性シリカの含有量は、前記表面保護層中の樹脂成分100質量部に対して、15質量部以下である、項1~7のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
9.前記表面保護層側の入射角60度の光沢度が30以下である、項1~8のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
10.前記表面保護層側の入射角60度の光沢度が1以上15以下である、項1~9のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
11.前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含有する、項1~10のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
12.前記表面保護層の表面側の、カットオフ値0.08mm、評価長さ0.4mmの測定条件で測定したJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)が、0.5μm以上5.0μm以下である、項1~11のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
13.前記表面保護層の厚みは、4μm以上50μm以下である、項1~12のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
14.基材シート上に、少なくとも絵柄模様層、透明性樹脂層及び前記表面保護層をこの順に有する、項1~13のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シート。
15.項1~14のいずれかに記載の抗ウイルス性化粧シートを被着材上に有する抗ウイルス性化粧板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗ウイルス性化粧シート及び抗ウイルス性化粧板は、抗ウイルス剤としてアニオン系抗ウイルス剤を用いた場合に、優れた抗ウイルス性及び優れた低艶性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の抗ウイルス性化粧シートの層構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の抗ウイルス性化粧板の層構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の抗ウイルス性化粧シート(以下、単に「化粧シート」とも示す。)及び抗ウイルス性化粧板(以下、単に「化粧板」とも示す。)について詳細に説明する。なお、本発明の化粧シートにおいて、表面とは、いわゆる「おもて面」であり、本発明の化粧シートが被着材等に積層して用いられる際に、被着材と接触する面とは反対側の面であり、積層後に視認される面である。また、本明細書では、本発明の化粧シートについて、上記表面の方向を「おもて」又は「上」と称し、その反対側を「裏」又は「下」と称する場合がある。以下、本発明の化粧シートを構成する各層について具体的に説明する。なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
【0014】
1.抗ウイルス性化粧シート
本発明の抗ウイルス性化粧シートは、少なくとも表面保護層を最表面に有する抗ウイルス性化粧シートであって、前記表面保護層は、アニオン系抗ウイルス剤、及び、疎水性シリカを含有することを特徴とする。上記特徴を有する本発明の化粧シートは、少なくとも表面保護層を最表面に有しており、当該表面保護層中に用いる低艶剤として疎水性シリカを用いることにより、表面保護層中での疎水性シリカとアニオン系抗ウイルス剤との結合が抑制されており、アニオン系抗ウイルス剤の失活が抑制される。
【0015】
本発明の化粧シートは、少なくとも表面保護層を最表面に有しており、表面保護層がアニオン系抗ウイルス剤、及び、疎水性シリカを含有する構成を備える限り、層構成については限定されない。本発明の化粧シートの層構成の一例としては、例えば、図1に示すように、基材シート11、絵柄模様層12(ベタインキ層及び/又は柄インキ層)、接着剤層(図示せず)、透明性樹脂層13、及び表面保護層14を順に有する層構成が挙げられる(ダブリング仕様の化粧シート)。以下、かかる層構成の化粧シートを代表例として具体的に説明する。
【0016】
本発明の化粧シートの表面保護層側の入射角60度の光沢度は、30以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がより好ましい。また、光沢度の下限は特に限定されず、例えば、1以上程度が好ましい。光沢度が上記範囲であると、化粧シートの意匠性(低艶性)がより向上する。
【0017】
化粧シートの表面保護層側の入射角60度の光沢度を30以下に調整する手法として、例えば、1)表面保護層に無機フィラー(疎水性シリカを含む)を添加する方法、2)エンボス版によりエンボス形状を賦形する方法等が挙げられ、表面保護層に無機フィラーを添加する方法により化粧シートの表面保護層側の入射角60度の光沢度を調整することが好ましい。
【0018】
なお、本明細書における化粧シートの表面保護層側の入射角60度の光沢度は、日本工業規格JIS Z8741:1997に準拠した方法により、光沢計(株式会社村上色彩技術研究所製 商品名:GMX-202)を用いて化粧シートの任意の方向に沿って測定することにより測定される。
【0019】
本発明の化粧シートは、表面保護層の表面側の、カットオフ値0.08mm、評価長さ0.4mmの測定条件で測定したJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)が、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以上3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上2.0μm以下であることが更に好ましい。上記算術平均粗さが上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの意匠性(低艶性)がより向上し、且つ、抗ウイルス性をより発現し易くなる。
【0020】
本明細書において、化粧シートの表面保護層の表面側の算術平均粗さ(Ra0.08)は、JIS B0601:2001に準拠した測定方法により、表面粗さ計(東京精密社製、型番:SURFCOM FLEX-50A)を用い、カットオフ値0.08mm、評価長さ0.4mm、測定速度0.6mm/sの測定条件で測定される。 測定は、任意の5点において任意の方向に沿って測定し、平均値を測定値とする。
【0021】
(表面保護層)
表面保護層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。特に、電離放射線硬化型樹脂は高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。更に、耐候性をより一層向上させることができる観点から、電子線硬化型樹脂が最も好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0023】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0024】
表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂、又は、2液硬化型ウレタン系樹脂を含むことが好ましい。表面保護層がこれらの樹脂を含有する場合には、化粧シートの耐摩耗性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性耐候性等をより一層高め易い。
【0025】
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤、硬化剤、重合促進剤等を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
【0026】
熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、熱硬化型樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。溶液の塗布量としては、固形分で概ね5~50μm、好ましくは5~40μm程度である。
【0027】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等のケイ素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0028】
電離放射線としては、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線、電子線が好ましく、電子線がより好ましい。
【0029】
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190~380nm程度である。
【0030】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100~1000keV程度が好ましく、100~300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2~15Mrad程度が好ましい。
【0031】
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
【0032】
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
【0033】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1~10質量部程度である。
【0034】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布法で塗布すればよい。
【0035】
[アニオン系抗ウイルス剤]
本発明の化粧シートは、アニオン系抗ウイルス剤を含有する。アニオン系抗ウイルス剤としては特に限定されず、従来公知のアニオン系抗ウイルス剤として用いられているものを使用することができる。
【0036】
アニオン系抗ウイルス剤としては、スチレンポリマー誘導体化合物、不飽和カルボン酸誘導体化合物、スチレン樹脂等が好ましく、これらの中でも、表面保護層中に添加することで抗ウイルス性をより発揮できる点で、スチレンポリマー誘導体化合物、不飽和カルボン酸誘導体化合物、スチレン樹脂が好ましい。
【0037】
アニオン系抗ウイルス剤は、1)スチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物とを含有する粒子、2)スチレンポリマー誘導体化合物を含有する粒子と不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有する粒子との混合粒子、及び3)スチレン樹脂を含有する粒子、からなる群より選択される少なくとも一種の抗ウイルス性粒子Aを含有することが好ましい。ここで、3)スチレン樹脂を含有する粒子は、上記不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有していない粒子である。上記抗ウイルス性粒子Aは、1)スチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物とを一緒に含有する粒子であってもよく、2)スチレンポリマー誘導体化合物を含有する粒子と不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有する粒子とを別々に含有する混合粒子であってもよく、これらとは異なる3)スチレン樹脂を含有する粒子であってもよく、これら1)~3)の任意の組み合わせであってもよい。
【0038】
なお、詳細は後述するが、表面保護層は、上記抗ウイルス性粒子Aに加えて、本発明の効果に影響しない範囲で、抗ウイルス性粒子Aとは異なる抗ウイルス性粒子Bを併用してもよい。以下、抗ウイルス性粒子A及び抗ウイルス性粒子Bを包含する用語として「抗ウイルス性粒子」と記載する。
【0039】
上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aは、スチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物とを含有し、その構成成分は、水素、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩、カルボキシ基の誘導体及びスルホン酸基の誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましい。具体的には、スチレン、スルホン酸ナトリウム、アクリル酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましく、特にスチレン及びスルホン酸ナトリウムの少なくとも一種の構造、並びにアクリル酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される少なくとも一種の構造の両方を有することが好ましい。
【0040】
また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び/又は不飽和カルボン酸誘導体化合物は、構成成分としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、ジメチルピロール、テトラメチル-1、3-プロパンジアミン、及びN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましい。これらは、スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物をそれぞれ有機構造解析した際に構成成分として検出される化合物としての位置付けであり、これらの構成成分を有することで更に抗ウイルス性能が向上する。
【0041】
上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aの粒子全体におけるスチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物との含有割合は特に限定されず、エンベロープウイルスに対してのみ抗ウイルス性能を有していればよい場合はスチレンポリマー誘導体化合物のみを含有していれば十分である。これに関連し、エンベロープウイルスに対してのみ抗ウイルス性能を有していればよい場合は、上記抗ウイルス性粒子Aは、少なくとも3)スチレン樹脂を含有する粒子を用いる態様としてもよい。
【0042】
但し、上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aにおいて、活性阻害が困難なノンエンベロープウイルスに対しても抗ウイルス性能を有することを考慮すると、スチレンポリマー誘導体化合物に加えて不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有することが好ましく、本発明では、スチレンポリマー誘導体化合物:不飽和カルボン酸誘導体化合物の質量比で例えば30:70~70:30、更には40:60~60:40と設定することができる。つまり、本発明において、抗ウイルス性粒子Aは、エンベロープウイルス及びノンエンベロープウイルスの両方に対して抗ウイルス性能を有するためには、スチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物との両成分を含有する上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aを用いることが好ましい。
【0043】
具体的には、上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aにおいて、スチレンポリマー誘導体化合物を含む粒子(粒子Aa)と不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む粒子(粒子Ab)とを別々に含有する混合粒子である場合には、粒子Aa:粒子Abの質量比を30:70~70:30、更には40:60~60:40と設定することができる。これらの粒子Aa、粒子Abとしては、それぞれの成分を含有する各種用途で上市されている粒子をそのまま使用してもよく、溶剤系の状態で市販されているものを乾燥・成形することで粒子化して使用してもよい。
【0044】
また、本発明において用いられるアニオン系抗ウイルス剤は、上記不飽和カルボン酸誘導体化合物及び上記スチレンポリマー誘導体化合物を所望の混合割合で混合(混練)し、例えばジェットミルなどの公知の粉砕手段により所望の大きさとなるように粉砕することにより調製することができる。
【0045】
表面保護層は、抗ウイルス性粒子Aに加えて、本発明の効果に影響しない範囲で、抗ウイルス性粒子Aとは異なる抗ウイルス性粒子Bを更に含有してもよい。抗ウイルス性粒子Bは、上記1)、2)及び3)で特定される抗ウイルス性粒子Aに該当しない抗ウイルス性粒子であれば特に限定されない。抗ウイルス性粒子Aと抗ウイルス性粒子Bとを併用する場合には、抗ウイルス性粒子A:抗ウイルス性粒子Bの質量比は限定的ではないが、10:1~50:40の範囲で設定することが好ましい。
【0046】
上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aが抗ウイルス性を発揮する理由については下記に推測されるメカニズムに拘束される訳ではないが、例えば、インフルエンザウイルスは、宿主細胞表面の糖鎖受容体(糖鎖末端はノイラミン酸)に結合して宿主細胞内に侵入するところ、上記1)及び/又は2)の抗ウイルス性粒子Aはノイラミン酸と類似したイオン基を有するため、宿主細胞の代わりにウイルスと結合してウイルスを捕捉することで、ウイルスが宿主細胞の受容体に結合するのを防止して抗ウイルス効果を発揮すると考えられる。具体的には、エンベロープウイルスのスパイクタンパク質及びノンエンベロープウイルスのカプシド(タンパク質の殻)に対して、不飽和カルボン酸誘導体化合物の構成成分である前述の複数種のアミノ基が結合(補捉)する。それと同時又は従属的にスチレンポリマー誘導体化合物のスルホン酸基がエンベロープを破壊することでエンベロープウイルスは不活性化し、不飽和カルボン酸誘導体化合物のカルボキシ基がカプシドを酸化することでノンエンベロープウイルスを不活性化すると考えられる。また、スルホン酸基は上述の通り主にエンベロープの破壊に寄与していると考えられるが、酸化力を有しているためカルボキシ基同様にノンエンベロープウイルスのカプシドの酸化にも関係する。そのためノンエンベロープウイルスを効率的に不活性化しつつ、更にエンベロープウイルスも不活性化するには不飽和カルボン酸誘導体化合物とスチレンポリマー誘導体化合物を同時に用いることが有効となる。本発明において用いられるアニオン系抗ウイルス剤は、表面保護層の表面性能を阻害しない含有量でノンエンベロープウイルスの不活化が可能である点で従来品に対する優位性があるが、エンベロープウイルスを不活化する推測メカニズムも上記の通りであり、上記アニオン系抗ウイルス剤はノンエンベロープウイルスだけでなくエンベロープウイルスに対しても抗ウイルス効果を有している。
【0047】
抗ウイルス性粒子は表面保護層中において粒子の状態で存在する。言い換えると、抗ウイルス性粒子は、表面保護層形成用樹脂組成物(抗ウイルス性樹脂組成物)内で溶解することなく、粒子の状態で存在する。このため、表面保護層を形成する過程において、抗ウイルス性粒子の粒子が浮かび上がりやすくなり、表面保護層の表面側に抗ウイルス性粒子を偏在させやすくすることができる。そして、表面保護層の表面側に抗ウイルス性粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス性粒子の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
【0048】
表面保護層の表面に抗ウイルス性粒子を偏在しやすくするためには、表面保護層形成用樹脂組成物として、「抗ウイルス性粒子の比重<表面保護層形成用樹脂組成物の比重」の関係を満たすものを選定することが好ましい。また、抗ウイルス性粒子として極性の度合いが高いものを用いると、表面保護層の表面に抗ウイルス性粒子を偏在しやすくできる点で好ましい。また、表面保護層形成用樹脂組成物に含まれる溶剤が揮発する際に、抗ウイルス性粒子を表面保護層の表面に浮かび上がりやすくすることができ、表面保護層の表面付近に抗ウイルス性粒子を偏在させやすくできる。
【0049】
抗ウイルス性粒子の形状は特に制限されず、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられる。
【0050】
抗ウイルス性粒子の平均粒子径は、0.1~10.0μmが好ましく、0.5~8.0μmがより好ましく、1.0~7.0μmがさらに好ましい。
【0051】
平均粒子径を0.1μm以上とすることにより、表面保護層形成用樹脂組成物の安定性が得られやすくなる。また、平均粒子径を10.0μm以下とすることにより、抗ウイルス性粒子が表面保護層の表面から突出することによる外観不良、耐傷性及び耐汚染性の低下、並びに塗膜の白化を抑制しやすくできる。
【0052】
なお、抗ウイルス性粒子の平均粒子径は前述の範囲であることが好ましいが、表面保護層形成用樹脂組成物中の抗ウイルス性粒子が、表面保護層が完全に硬化するまでの間に凝集し、粒子径が見た目上で大きくなったとしても抗ウイルス性能の発現に問題は無い。
【0053】
抗ウイルス性粒子の平均粒子径をD、表面保護層の厚みをTと定義した際に、D/Tは1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
【0054】
D/Tを1.0以下とすることにより、抗ウイルス性粒子が表面保護層の表面から突出することによる外観不良、耐傷性及び耐汚染性の低下、並びに塗膜の白化を抑制しやすくできる。
【0055】
D/Tの下限は特に制限されないが、通常は0.01以上であり、好ましくは0.05以上である。
【0056】
本明細書において、抗ウイルス性粒子の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものを意味する。
【0057】
上記抗ウイルス性粒子は、異なる2つの粒子径ピークを有していてもよい。異なる2つの粒子径ピークは、例えば成分が異なる(これに伴い粒子径が異なる)二種以上の抗ウイルス性粒子を併用することに由来する。具体的には、抗ウイルス性粒子Aにおいて、上記1)~3)の粒子の組み合わせに由来するものでもよく、抗ウイルス性粒子Aに加えて抗ウイルス性粒子Bを更に含有することに由来するものでもよい。
【0058】
抗ウイルス性粒子Aの含有量は、表面保護層形成用樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部であることが好ましく、1.0~13.0質量部であることがより好ましく、3.0~10.0質量部であることがさらに好ましい。
【0059】
抗ウイルス性粒子Aの含有量を0.5質量部以上とすることにより、抗ウイルス性を良好にしやすくできる。
【0060】
抗ウイルス性粒子Aの含有量を20.0質量部以下とすることにより、塗膜強度や耐傷性などの塗膜物性の低下を抑えることができる。さらに、抗ウイルス性粒子の含有量を20.0質量部以下とすることにより、抗ウイルス性粒子が表面保護層の表面から突出することによる耐汚染性の低下及び塗膜の白化を抑制しやすくできる。
【0061】
[疎水性シリカ]
表面保護層は、疎水性シリカを含有する。表面保護層中において、疎水性シリカは粒子状であり、疎水性シリカ粒子として存在する。疎水性シリカとしては特に限定されず、従来公知の疎水性シリカとして用いられているものを使用することができる。
【0062】
疎水性シリカとしては、公知の方法で製造された親水性シリカを疎水化処理したものを用いることができる。公知の方法で製造された未処理シリカは通常親水性シリカであり、当該親水性シリカに疎水化処理を施して疎水化することにより疎水性シリカとなる。
【0063】
未処理シリカ(親水性シリカ)を疎水化処理する方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、シリコーンオイル系処理剤によって未処理シリカを疎水化処理する方法;アルキルシラザン系処理剤、トリメチルシリル化剤、及び/又はアルコキシシランで未処理シリカを処理した後に上述のシリコーンオイル系処理剤によって疎水化処理する方法;シリコーンオイル系処理剤によって未処理シリカを疎水化処理した後に、さらにトリメチルシリル化剤又はアルキルシラザン系処理剤で処理する方法;アルコキシシランによって未処理シリカを疎水化処理する方法;アルコキシシランによって未処理シリカを処理した後に、さらにシリコーンオイル系処理剤、又はシリコーンオイル系処理剤及びアルコキシシランで処理する方法;ダイマージオールシロキサン、及び/又はトリメチルシラノール若しくは環状シロキサンを用いて未処理シリカを処理する方法などが挙げられる。また、上述の疎水化処理の方法だけでなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等の各種カップリング剤;リン酸系、脂肪酸系等の界面活性剤;油脂、ステアリン酸等によって処理する方法も、疎水化処理の方法として挙げられる。以下、未処理シリカを疎水化処理するための上述の各製品(例えば、シリコーンオイル系処理剤等の処理剤、シランカップリング剤、界面活性剤等の全て)を、纏めて疎水化処理剤ともいう。
【0064】
シリコーンオイル系処理剤としては、特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル等を用いることができる。
【0065】
アルキルシラザン系処理剤としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルシラザン等が挙げられる。
【0066】
トリメチルシリル化剤としては、特に限定されず、例えば、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシランが挙げられる。
【0067】
アルコキシシランとしては、特に限定されず、例えば、後述のシランカップリング剤中のアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0068】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等のクロロシラン化合物などが挙げられる。
【0069】
チタネート系カップリング剤としては、特に限定されず、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
【0070】
アルミネート系カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0071】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができる。油脂としては、特に限定されず、各種公知の油脂を使用することができる。
【0072】
上述の各種疎水化処理剤で未処理シリカ(親水性シリカ)を疎水化処理する方法としては、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、未処理シリカに疎水化処理剤の原液、又は疎水化処理剤を水若しくは有機溶剤に希釈したものを添加(例えば噴霧)する方法(乾式処理法);未処理シリカを疎水化処理剤の原液、疎水化処理剤含有水溶液又は疎水化処理剤含有有機溶剤中で処理(例えば浸漬)し、その後、乾燥させる方法(湿式処理法);などが挙げられる。このような処理により未処理シリカの表面の一部若しくは全部が(a)疎水化処理剤で被覆されるか、(b)疎水化処理剤を吸着するか、又は(c)疎水化処理剤で被覆され、且つ吸着する((a)及び(b)の組み合わせとなる)、等が生じる。その結果、疎水化処理された疎水性シリカが得られる。なお、上記各種疎水化処理剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
疎水性シリカは、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、表面保護層は、疎水性シリカを含有していればよく、未処理シリカ(親水性シリカ)と疎水性シリカとを併用することもできる。未処理シリカ(親水性シリカ)及び疎水性シリカは、各種市販品を使用することができる。
【0074】
表面保護層中の疎水性シリカの含有量は、表面保護層を構成する樹脂(樹脂成分)100質量部に対して0.5~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましく、5~35質量部であることが更に好ましく、10~30質量部であることが特に好ましい。
【0075】
疎水性シリカ、及び、未処理シリカ(親水性シリカ)の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、ロッド状、板状、針状等が挙げられる。
【0076】
疎水性シリカが球状である場合、疎水性シリカの平均粒子径は特に限定されず、例えば、1μm以上15μm以下程度であることが好ましく、5μm以上15μm以下であることがより好ましい。また、疎水性シリカの平均粒子径は、表面保護層の厚みの1/2以下であることが好ましい。例えば、表面保護層の厚みが10μmであれば、疎水性シリカの平均粒子径を5μm以下にすることが好ましい。本明細書において、疎水性シリカの平均粒子径は、光散乱法で測定された値である。
【0077】
疎水性シリカと未処理シリカ(親水性シリカ)とを併用する場合、未処理シリカが球状である場合、未処理シリカの平均粒子径は特に限定されず、例えば、1μm以上15μm以下程度であることが好ましく、5μm以上15μm以下であることがより好ましい。また、未処理シリカの平均粒子径は、表面保護層の厚みの1/2以下であることが好ましい。例えば、表面保護層の厚みが10μmであれば、未処理シリカの平均粒子径を5μm以下にすることが好ましい。
【0078】
疎水性シリカと未処理シリカ(親水性シリカ)とを併用する場合、未処理シリカの添加量は、表面保護層に含まれる樹脂成分100質量部に対して15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましく、3質量部以下が特に好ましく、1質量部以下が最も好ましい。
【0079】
上記アニオン系抗ウイルス剤と疎水性シリカとの質量比(アニオン系抗ウイルス剤:疎水性シリカ)は、1:2~1:10が好ましく、1:3~1:8がより好ましく、1:3~1:7が更に好ましい。上記質量比が上記範囲であると、本発明の化粧シートがより十分な抗ウイルス性を示し、且つ、より高い意匠性(低艶性)を示すことができる。
【0080】
[添加剤]
表面保護層は、フェニルエーテル誘導体化合物、体質顔料、抗菌剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、消臭剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0081】
<フェニルエーテル誘導体化合物>
フェニルエーテル誘導体化合物は、抗ウイルス性能を補完するために表面保護層に含有することができる。
【0082】
フェニルエーテル誘導体化合物としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられ、これはエーテル型非イオン界面活性剤として抗ウイルス性能を発現し得ることが知られている。
【0083】
フェニルエーテル誘導体化合物の含有量は、表面保護層形成用樹脂100質量部に対して0.1~5.0質量部であることが好ましい。0.1質量部以上含有することにより表面保護層の抗ウイルス性能を補完することができ、5.0質量部以下とすることにより表面保護層の耐傷性や耐汚染性等の表面性能を維持することができる。
【0084】
<体質顔料>
体質顔料としては、上述の疎水性シリカ、及び、未処理シリカ(親水性シリカ)以外の無機粒子及び/又は有機粒子が挙げられる。体質顔料は、化粧シートの意匠性を調整する目的、耐擦傷性、耐摩耗性等を付与する目的等に応じて添加することができる。
【0085】
無機粒子としては、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、金剛砂、ガラス繊維、炭酸カルシウム、アルミノシリケート、硫酸バリウム等が挙げられる。有機粒子としては、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。
【0086】
<抗菌剤>
抗菌剤としては、無機系抗菌剤、及び有機系抗菌剤がある。特に無機系抗菌剤は有機系抗菌剤に比べ一般に安全性が高く、耐久性、及び耐熱性にも優れているため望ましい。無機系抗菌剤とは、銀をはじめとする銅、亜鉛等の抗菌性金属を各種の無機物担体に担持したものである。抗菌剤の含有量は、表面保護層形成用樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、抗菌剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0087】
<抗アレルゲン剤>
抗アレルゲン剤は、無機化合物又は有機化合物のいずれか一方を含むものであり、各々単体で用いても良いし、異なる2種以上を混合させても良い。無機化合物としては金属を担持してなる材料であることが好ましい。抗アレルゲン剤の含有量は、表面保護層形成用樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、抗アレルゲン剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0088】
無機化合物の無機材料としては例えば、酸化チタン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカアルミナ、珪酸マグネシウム及びリン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも酸化チタン、リン酸ジルコニウム等が好ましい。
【0089】
無機材料に担持される金属としては、例えば金、銀、白金、亜鉛及び銅からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも銀、亜鉛等が好ましい。市販品として例えば、大原パラヂウム製「パラファインANV-100:無機化合物に銀担持」、日揮触媒製「アトミーボールTZ-R:酸化チタンに亜鉛担持」等を好適に用いることができ、これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉などの種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0090】
有機化合物としては、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子又はポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたもの、スチレンスルホン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体成分を含む重合体であることが好ましい。
【0091】
フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子としては、市販品として例えば積水化学工業株式会社製「アレルバスター(商品名)」、丸善石油株式会社製「マルカリンカーM(商品名)」等を使用することができる。また、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせたものとしては、東亜合成株式会社製「アレリムーブ(商品名)」などが挙げられる。これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0092】
スチレンスルホン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種の単量体成分としては、特許第6136433号に示されるような材料を用いることができる。
【0093】
その他に、有機化合物と無機化合物とを混合させる場合は、例えばアニオン性フェノール系と抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料が挙げられる。
【0094】
アニオン性フェノール系材料としては、タンニン、タンニン酸-吐酒石、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド樹脂、ノボラツク型樹脂のスルホン化合物、ノボラツク型樹脂のメタンスルホン酸、レゾール型樹脂のメタンスルホン酸、ベンジル化フェノールスルホン酸、チオフェノール系化合物、ジヒドロキシジフェニルスルホン系化合物、リガント化合物及びこれらの金属キレート化合物などから適宜選択して用いられる。
【0095】
亜鉛系材料としては、水溶性亜鉛化合物又は非水溶性亜鉛化合物、亜鉛/金属酸化物複合素材などから適宜選択され、非水溶性亜鉛化合物及び/又は非水溶性亜鉛-金属酸化物の複合粒子が水分散され、粒子径が50μm以下であり、前記金属酸化物がチタニア、アルミナいずれかを少なくとも一種含むものであることが好ましい。
【0096】
表面保護層の厚みは、必要な性能を発揮すれば特に限定されないが、4μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上35μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下が更に好ましい。表面保護層の厚みの下限が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの耐摩耗性がより一層向上する。また、表面保護層の厚みの上限が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの抗ウイルス性がより一層向上する。
【0097】
(基材シート)
本発明の化粧シートは、基材シートを有していてもよい。
【0098】
基材シートは、その表面(おもて面)に絵柄模様層等が順次積層される層である。基材シートとしては、熱可塑性樹脂により形成されたシート(フィルム)を使用する。具体的には、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、アイオノマー、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体等が挙げられる。前記基材シートは、これら樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることにより形成される。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、他の(メタ)と記載された部分についても同様である。
【0099】
基材シートは、着色されていてもよい。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0100】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0101】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には20~300μmが好ましい。
【0102】
基材シートは、必要に応じて、絵柄模様層等を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、絵柄模様層を形成したり、後述する裏面プライマー層、バッカー層等を形成したりしてもよい。
【0103】
(絵柄模様層)
本発明の化粧シートは、絵柄模様層を有していてもよい。
【0104】
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与する層であり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0105】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。インキとしては、シートのVOCを低減する観点からは水性組成物を用いることもできる。
【0106】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いてもよい。
【0107】
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN-ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン-ポリアクリル系樹脂等が変性したものないし前記天然ゴム等の混合物、その他の樹脂も使用することができる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0109】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0110】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、層厚は0.1~10μm程度である。
【0111】
(接着剤層)
透明性樹脂層と絵柄模様層との間等の各層間の密着性を高めるため、接着剤層を形成してもよい。接着剤層は、透明性接着剤層であることが好ましく、当該透明性接着剤層としては、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0112】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0113】
接着剤層の厚みは特に限定されないが、厚みが0.1~30μm程度、好ましくは1~20μm程度である。
【0114】
(透明性樹脂層)
本発明の化粧シートは、透明性樹脂層を有していてもよい。
【0115】
透明性樹脂層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。前記透明性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、オレフィン系エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アイオノマー、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等を挙げることができる。これら樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
透明性樹脂層は、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を代表とするオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、透明性樹脂層を構成する樹脂が上記オレフィン系樹脂又はアイオノマー系樹脂であることがより好ましい。
【0117】
なお、透明性樹脂層は、透明性を有する限り着色されていてもよいが、特に着色剤を配合しない方が望ましい。
【0118】
透明性樹脂層の厚みは、通常は20~400μm程度であるが、化粧シートの用途等に応じて適宜調整すればよい。
【0119】
(プライマー層)
透明性樹脂層の上には、プライマー層を設けてもよい。プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿との混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンとのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0120】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01~10μm、好ましくは0.1~1μm程度である。
【0121】
(裏面プライマー層)
基材シートの裏面(絵柄模様層が積層される面と反対側の面)には、必要に応じて、裏面プライマー層を設けてもよい。例えば、化粧シートと被着材(基材)とを積層して化粧板を作製する際に効果的である。
【0122】
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートに塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0123】
裏面プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01~10μm、好ましくは0.1~1μm程度である。
【0124】
(化粧シート各層に含まれる各種添加剤のベシクル化)
本発明の化粧シートの各層に添加される各種添加剤はベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
【0125】
ベシクル化処理方法としては、超臨界逆相蒸発法の他に、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、逆相蒸発法、凍結融解法などが挙げられる。このようなベシクル化処理方法について簡単に説明すると、Bangham法は、フラスコなどの容器にクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解する。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることよりベシクルを得る方法である。エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代わってフィルターを通過させることによりベシクルを得る方法である。水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌して分散させてベシクルを得る方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを作り、当該エマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、この冷却・加熱を繰り返すことによってベシクルを得る方法である。
【0126】
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
【0127】
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0128】
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
【0129】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0130】
上記コレステロール類としては、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0131】
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
【0132】
(エンボス加工)
化粧シートの最表層側には、必要に応じてエンボス加工を施してもよい。
【0133】
エンボス加工方法は特に限定されず、例えば、表面保護層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧及び賦形した後、冷却する方法が好ましい方法として挙げられる。最終製品である化粧シート又は表面保護層の材質によっては、例えば、透明性樹脂層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧及び賦形した後、その上に表面保護層を形成してもよい。
【0134】
エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0135】
2.抗ウイルス性化粧板
上記化粧シートを被着材上に積層することにより、化粧板とすることができる。図2に、本発明の化粧板の層構成の一例を示す。図2では、本発明の化粧板は、被着材2と、化粧シート1の基材シート11側の面とが接するように積層されて形成されている。被着材は、限定的でなく、公知の化粧板に用いられるものと同様のものを用いることができる。上記被着材としては、例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、上記化粧シートは、木質材に好適に使用することができる。木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板(HDF、MDF)、チップボード、又はチップボードが積層された複合基材等が挙げられる。上記木質材としては、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板(HDF、MDF)を用いることが好ましい。
【0136】
化粧シートと被着材とを積層する積層方法は限定的でなく、例えば接着剤により化粧シートを被着材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すればよい。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例0137】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0138】
実施例1
(化粧シートの作製)
60μm厚さの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートの裏面にプライマー層(裏面プライマー層)を設けた。次いで、基材シートの表面に絵柄模様層を印刷により形成し、さらに当該絵柄模様層上に接着剤層を形成した。当該接着剤層の上に80μm厚さの透明ポリプロピレン系樹脂(透明ランダムポリプロピレン系樹脂)のシートを押出しラミネート方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。次いで、透明ランダムポリプロピレン系樹脂シートの表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層を形成した。
【0139】
上記プライマー層の表面に、ウレタンアクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化型樹脂(表面保護層形成用樹脂)、下記に示す抗ウイルス剤、及び、艶消し剤を含む表面保護層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート方式で全面に塗工量15μmで塗工した後,酸素濃度200ppm以下の環境下、電子照射装置を用いて加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射し表面保護層を形成して化粧シートを作製した。
【0140】
・抗ウイルス剤:スチレン樹脂、及び、フェニルエーテル誘導体を1:1(質量比)で含む粒子:表面保護層形成用樹脂100質量部に対して3質量部
・スチレン樹脂:polysciences社製スチレン樹脂粒子、商品名「ミクロスフェア(平均粒子径4.5μm)
・フェニルエーテル誘導体=Kao Chemicals製ポリオキシエチレンアルキルエーテル、商品名「エマルゲン 707」
・艶消し剤:疎水性シリカ(平均粒子径11μm) 表面保護層形成用樹脂100質量部に対して20質量部
【0141】
(化粧板の製造)
被着材として厚みが3.0mmの中密度木質繊維板(MDF)を用意し、表面を研磨した。化粧シートの離型性シートを剥がして貼り付け、化粧板を製造した。
【0142】
実施例2
以下の艶消し剤を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
・艶消し剤:
疎水性シリカ(平均粒子径11μm) 表面保護層形成用樹脂100質量部に対して10質量部
親水性シリカ(平均粒子径8μm) 表面保護層形成用樹脂100質量部に対して8質量部
【0143】
実施例3
プライマー層の表面に、下記に示す紫外線硬化型樹脂、抗ウイルス剤、艶消し剤、及び光開始剤を含む表面保護層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート方式で全面に塗工量13μmで塗工した後、紫外線照射装置を用いて300nmの波長の紫外線を照射し、表面保護層を形成して化粧シートを作製した。
・紫外線硬化型樹脂:新中村化学工業社製ウレタンアクリレートオリゴマー、商品名「UA-33H」
・抗ウイルス剤:スチレン樹脂、及び、フェニルエーテル誘導体を1:1(質量比)で含む粒子:表面保護層形成用樹脂100質量部に対して3質量部
・スチレン樹脂:polysciences社製スチレン樹脂粒子、商品名「ミクロスフェア(平均粒子径4.5μm)
・フェニルエーテル誘導体=Kao Chemicals製ポリオキシエチレンアルキルエーテル、商品名「エマルゲン 707」
・艶消し剤:疎水性シリカ(平均粒子径8μm) 表面保護層形成用樹脂100質量部に対して13質量部
・光開始剤:イルガキュア184 、表面保護層樹脂100質量部に対し9質量部
【0144】
実施例4
以下の抗ウイルス剤を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
・抗ウイルス剤:(樹脂100質量部に対する含有量は3質量部)
(不飽和カルボン酸誘導体化合物)
不飽和カルボン酸誘導体化合物は、シクロヘキサンカルボン酸(新日本理化株式会社製)、トリエチルアミン(東京化成工業株式会社製)、N,N-ジメチルアリルアミン(東京化成工業株式会社製)、2,4-ジメチルピロール(東京化成工業株式会社製)及びN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製)を含む原料を混合、反応させることにより調製した。
(スチレンポリマー誘導体化合物)
スチレンポリマー誘導体化合物は、p-スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社製;商品名「スピノマーNaSS」)、スチレンモノマー(和光純薬社製)及び変性エタノール(和光純薬社製;商品名「86%エタノール-ME」)を含む原料を混合、反応させることにより調製した。
抗ウイルス剤は、上記カルボン酸誘導体化合物及び上記スチレンポリマー誘導体化合物を順に3:1の質量比で混合した後、ジェットミル(日清エンジニアリング、商品名「SJ-100」)で粉砕することにより調製した。抗ウイルス剤の平均粒子径を、JIS Z8825-1に準拠したレーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製)を用いて測定したところ、平均粒子径は10μmであった。
【0145】
実施例5
透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記の表面保護層形成用組成物1(熱硬化性樹脂組成物:乾燥後塗布量(乾燥後の膜厚で記載する。以下同様)5μm)、及び、表面保護層形成用組成物2(ハイブリッド樹脂組成物:乾燥後塗布量5μm)を順次積層することで、表面保護層1(下層)と表面保護層2(上層)層からなる表面保護層を形成した。
【0146】
[表面保護層形成用組成物1(熱硬化性樹脂組成物)(下層)]
主剤100質量部に対し、下記の添加剤を下記の添加量で添加して、表面保護層形成用組成物1を調製した。
・主剤:アクリルポリオール(ガラス転移温度約100℃、重量平均分子量Mw約40,000、水酸基価12)
(添加剤)
・紫外線吸収材:Tinuvin479(BASF(株)製)5質量部
・光安定剤:Tinuvin123(BASF(株)製)3質量部
・希釈溶剤:酢酸エチル 50質量部
・光沢調整剤:無機フィラーL-121(AGCエスアイテック(株)製)15質量部
・硬化剤:デュラネートTAP-100(旭化成(株)製)5質量部
【0147】
[表面保護層形成用組成物2(ハイブリッド樹脂組成物)(上層)]
下記樹脂A:B:C=40:40:20(質量比)で配合して、混合樹脂を調製した。当該混合樹脂100質量部に対し、下記添加剤を下記の添加量で添加して、表面保護層形成用組成物2を調製した。なお、艶消し剤については、混合樹脂に、艶消し剤以外の添加剤を添加した表面保護層形成用組成物100質量部に対して、艶消し剤を10質量部添加することにより表面保護層形成用組成物2を調製した。
・樹脂A:3~15の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマー
・樹脂B:2~9の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマー
・樹脂C:ガラス転移温度が約100℃、重量平均分子量Mwが約50,000、水酸基価が15であるアクリルポリオール100質量部に対し硬化剤デュラネートTAP-100(旭化成(株)製)5質量部
(添加剤)
・紫外線吸収剤:Tinuvin479(BASF(株)製)5質量部
・光安定剤:Tinuvin123(BASF(株)製)3質量部
・希釈稀釈溶剤:酢酸エチル 50質量部
・抗ウイルス剤:実施例1と同一のアニオン系抗ウイルス剤5質量部
・艶消し剤:疎水性シリカ(平均粒子径5μm) 上記表面保護層形成用組成物100質量部に対して10質量部
【0148】
比較例1
以下の艶消し剤を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
・艶消し剤:親水性シリカ(平均粒子径8μm) 表面保護層形成用樹脂100質量部に対して20質量部
【0149】
(評価)
上述のようにして製造された実施例及び比較例の化粧シートについて、以下の方法により評価を行った。
【0150】
[光沢度]
化粧シートの表面保護層側の入射角60度の光沢度を、JIS Z8741:1997に準拠した方法により、光沢計(株式会社村 上色彩技術研究所製 商品名:GMX-202)を用いて化粧シートの任意の方向に沿って測定した。
【0151】
[算術表面粗さ(Ra0.08)]
化粧シートの表面保護層の表面側の算術平均粗さ(Ra0.08)を、JIS B0601:2001に準拠した測定方法により、表面粗さ計(東京精密社製、型番:SURFCOM FLEX-50A)を用い、カットオフ値0.08mm、評価長さ0.4mm、測定速度0.6mm/sの測定条件で測定した。 測定は、任意の5点において任意の方向に沿って測定し、平均値を測定値とした。
【0152】
[抗ウイルス性能]
抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で、化粧シートの抗ウイルス性能試験を行い、下記のウイルス種に対する抗ウイルス活性値を下記評価基準に基づいて評価した。評価基準は下記の通りである。
ウイルス種:エンベロープウイルス(インフルエンザウイルス)
++:抗ウイルス活性値が3.0以上であった
+:抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満であった
-:抗ウイルス活性値が2.0未満であった
【0153】
結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
【符号の説明】
【0155】
1:抗ウイルス性化粧シート
11:基材シート
12:絵柄模様層
13:透明性樹脂層
14:表面保護層
2:被着材
図1
図2