(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152698
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20231005BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20231005BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20231005BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B33/00
E04F15/16 A
E04F13/07 B
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013189
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2022054857
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 智美
(72)【発明者】
【氏名】茅原 利成
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 臣
(72)【発明者】
【氏名】濱口 智行
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA12
2E220AA26
2E220AA29
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2E220GB33X
4F100AK01D
4F100AK01E
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4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】本発明は、施工面の触感の低下、施工の際の破断、反り、及び、白化が抑制されており、接着性、耐摩耗性、及び、施工し易さに優れた化粧シートを提供する。
【解決手段】少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する化粧シートであって、
(1)JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により測定される接着強度が20~100N/24mmであり、
(2)前記基材シートのマルテンス硬さが20~60MPaであり、
(3)前記化粧シートの厚みが0.2~0.3mmである、
ことを特徴とする化粧シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する化粧シートであって、
(1)JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により測定される接着強度が20~100N/24mmであり、
(2)前記基材シートのマルテンス硬さが20~60MPaであり、
(3)前記化粧シートの厚みが0.2~0.3mmである、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記基材シートのマルテンス硬さは、30~50MPaである、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みは、40~60μmである、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記基材シートの厚みは、60~80μmである、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記基材シート上に、更に、少なくとも絵柄模様層、透明性樹脂層及び表面保護層をこの順に有する、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記透明性樹脂層の厚みは、50~110μmである、請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記表面保護層の厚みは、10~25μmである、請求項5に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記透明性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂層である、請求項5に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂層である、請求項5に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項5に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記化粧シートは、JIS K6732に準拠した測定方法により測定した降伏点応力が、50N以下である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の化粧シートを被着材上に有する化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床面、壁面や建材等の様々な物品の表面には、意匠性を付与するために、化粧シートが貼り付けられている。
【0003】
建築物の床面、壁面や建材等の様々な物品の表面の化粧シートは、日常生活において破損、汚染等により補修が必要となる場合があり、また、リフォームの際に貼り換えが必要となる場合がある。このため、既存の建築物の床面、壁面、建材等の表面に、化粧シートを施工する場合がある。
【0004】
本発明者は、裏面に粘着剤層を有する化粧シートを補修、リフォーム等に用いることにより、低騒音で、養生工程を必要としないため短工事期間で施工が可能となることに着目した。
【0005】
既存の床面に貼付され、床面に貼付するための粘着剤層を有するタックシートと、その上面にオーバーラミフィルムとを備える床用粘着フィルムを張り付けてリフォームする方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、裏面に粘着剤層を有する化粧シートを用いて既存の施工面に補修、リフォーム等を行う場合、化粧シートの厚みが厚いと施工面で段差を生じるため、触感が劣るという問題がある。
【0007】
また、化粧シートの厚みが厚いと、施工面の形状に追従させるために化粧シートを曲げた際に十分追従できず、反り、白化を生じるという問題がある。
【0008】
上記施工面の触感の低下を抑制するために化粧シートの厚みを薄くすると、化粧シートの耐摩耗性が劣るという問題がある。
【0009】
また、裏面に粘着剤層を有する化粧シートを用いて補修、リフォーム等を行う場合、施工位置を調整する必要があり、一旦施工した化粧シートを剥がして再度施工する場合がある。化粧シートの厚みが薄いと、化粧シートを剥がした際に、化粧シートが破断するという問題がある。また、化粧シートの厚みが薄いと、施工の際に化粧シートのシワが発生し易くなり、施工し難くなるという問題がある。
【0010】
更に、裏面に粘着剤層を有する化粧シートを施工する際に、十分な接着性が要求されるが、接着性が高すぎると、化粧シートが破断するという問題がある。
【0011】
従って、施工面の触感の低下、施工の際の破断、反り、及び、白化が抑制されており、接着性、耐摩耗性、及び、施工し易さに優れた化粧シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、施工面の触感の低下、施工の際の破断、反り、及び、白化が抑制されており、接着性、耐摩耗性、及び、施工し易さに優れた化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する化粧シートにおいて、接着強度、基材シートのマルテンス硬さ、化粧シートの厚みが特定の範囲であれる化粧シートによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記の化粧シートに関する。
1.少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する化粧シートであって、
(1)JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により測定される接着強度が20~100N/24mmであり、
(2)前記基材シートのマルテンス硬さが20~60MPaであり、
(3)前記化粧シートの厚みが0.2~0.3mmである、
ことを特徴とする化粧シート。
2.前記基材シートのマルテンス硬さは、30~50MPaである、項1に記載の化粧シート。
3.前記粘着剤層の厚みは、40~60μmである、項1又は2に記載の化粧シート。
4.前記基材シートの厚みは、60~80μmである、項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
5.前記基材シート上に、更に、少なくとも絵柄模様層、透明性樹脂層及び表面保護層をこの順に有する、項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
6.前記透明性樹脂層の厚みは、50~110μmである、項5に記載の化粧シート。
7.前記表面保護層の厚みは、10~25μmである、項5又は6に記載の化粧シート。8.前記透明性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂層である、項5~7のいずれかに記載の化粧シート。
9.前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂層である、項5~8のいずれかに記載の化粧シート。
10.前記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項5~9のいずれかに記載の化粧シート。
11.前記化粧シートは、JIS K6732に準拠した測定方法により測定した降伏点応力が、50N以下である、項1~10のいずれかに記載の化粧シート。
12.項1~11のいずれかに記載の化粧シートを被着材上に有する化粧材。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧シートは、施工面の触感の低下、施工の際の破断、反り、及び、白化が抑制されており、接着性、耐摩耗性、及び、施工し易さに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の化粧材の層構成の一例を示す模式図である。
【
図4】本明細書におけるマルテンス硬さの測定に用いるダイヤモンド圧子(a)、押し込み操作の模式図(b)及び押し込み荷重と変位の一例(c)を示す図である。
【
図5】施工性(貼り易さ)の評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の化粧シート及び化粧材について詳細に説明する。なお、本発明の化粧シートにおいて、表面とは、いわゆる「おもて面」であり、本発明の化粧シートが被着材等に積層して用いられる際に、被着材と接触する面とは反対側の面であり、積層後に視認される面である。また、本明細書では、本発明の化粧シートについて、上記表面の方向を「おもて」又は「上」と称し、その反対側を「裏」又は「下」と称する場合がある。以下、本発明の化粧シートを構成する各層について具体的に説明する。なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
【0019】
1.化粧シート
本発明の化粧シートは、少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する化粧シートであって、(1)JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により測定される接着強度が20~100N/24mmであり、(2)前記基材シートのマルテンス硬さが20~60MPaであり、(3)前記化粧シートの厚みが0.2~0.3mmであることを特徴とする。
【0020】
上記特徴を有する本発明の化粧シートは、基材シートの裏面に粘着剤層を有しており、特定の測定方法により測定される接着強度が20N/24mm以上であるので、十分な接着性を示すことができる。また、本発明の化粧シートは、厚みが0.3mm以下であるので、既存の施工面に補修、リフォーム等を行う場合であっても、施工面での段差が抑制されており、触感の低下が抑制されている。また、本発明の化粧シートは、厚みが0.3mm以下であり、基材シートのマルテンス硬さが60MPa以下であることにより、化粧シートを曲げた際の反り、白化が抑制されている。また、本発明の化粧シートは、特定の測定方法により測定される接着強度が100N/24mm以下であり、厚みが0.2mm以上であり、基材シートのマルテンス硬さが20MPa以上であることにより、化粧シートの破断が抑制されるとともに、耐摩耗性に優れており、且つ、施工の際のシワの発生が抑制され、施工し易い。すなわち、本発明の化粧シートは、少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有しており、上記(1)~(3)の構成を備えることがあいまって、施工面の触感の低下、施工の際の破断、反り、及び、白化が抑制されており、接着性、耐摩耗性、及び、施工し易さに優れるとの特性をすべて備えることができる。このような本発明の化粧シートは、建築物の床面、壁面や建材等の様々な物品の表面の補修、リフォーム用の化粧シートとして有用に用いることができる。
【0021】
本発明の化粧シートは、少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する化粧シートであって、上記(1)~(3)の構成を備える限り、層構成については限定されない。本発明の化粧シートの層構成の一例としては、例えば、
図1に示すように、粘着剤層11、基材シート12、絵柄模様層13(ベタインキ層及び/又は柄インキ層)、接着剤層(図示せず)、透明性樹脂層14、及び表面保護層15を順に有する層構成が挙げられる(ダブリング仕様の化粧シート)。また、本発明の化粧シートは、
図2に示すように、離型層17、粘着剤層11、基材シート12、絵柄模様層13(ベタインキ層及び/又は柄インキ層)、接着剤層(図示せず)、透明性樹脂層14、及び表面保護層15を順に有する層構成が挙げられる。以下、かかる層構成の化粧シートを代表例として具体的に説明する。
【0022】
本発明の化粧シートは、JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により測定される接着強度が20~100N/24mmである。接着強度が20N/24mm未満であると、十分な接着性が得られない。また、接着強度が100N/24mmを超えると、施工位置を調整する際に、化粧シートが破断する。上記接着強度は、40~100N/24mmが好ましく、60~95N/24mmがより好ましく、75~90N/24mmが更に好ましい。
【0023】
上記接着強度は、具体的には以下の測定方法により測定される。すなわち、化粧シートを幅24mm、長さ150mmに切断し、試験片を調製する。当該試験片を用いて、JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により、試験体の準備を行い、接着強度を測定する。被着材はJIS G4305に規定のSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後に光輝熱処理)、厚み2mmのものを使用する。試験片を被着材の上に置き、試験片上から手動の圧着装置を用いて圧力1kg/24mm、圧着速度10mm/秒の条件で2往復させて圧力をかけ、試験片と被着材とを圧着する。次いで、10℃の恒温槽の中で、角度180度、速度500mm/分の条件で剥離試験を行い、JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により最大点荷重(N/24mm)を測定し、接着強度とする。
【0024】
本発明の化粧シートは、厚みが0.2~0.3mmである。厚みが0.2mm未満であると、施工位置を調整する際に、化粧シートが破断する。また、厚みが0.3mmを超えると、施工面での段差により触感が低下し、化粧シートを曲げた際に反り、白化が生じる。化粧シートの厚みは、0.200~0.275mmが好ましく、0.205~0.250mmがより好ましい。なお、上記化粧シートの厚みは、後述する離型層を除く厚みである。
【0025】
なお、本明細書において、化粧シートの総厚みは、
図1及び
図2においてtdとして示されるように、微粒子16が表面保護層の表面から頭出ししている場合には、当該頭出しした微粒子16以外の箇所を化粧シートの表面として測定する。また、
図1及び
図2のように、化粧シートにエンボス加工により凹凸模様が形成されている場合は、凹凸模様以外の箇所において化粧シートの総厚みを測定する。
【0026】
本発明の化粧シートのJIS K6732に準拠した測定方法により測定した降伏点応力は、上限が50N以下であることが好ましく、40N以下であることがより好ましい。降伏点応力の上限が上記範囲であると、本発明の化粧シートが補修用化粧シートとして十分な柔軟性と強度を示すことができる。このため、補修の対象部分に貼りつける際に、当該対象部分の角部等により追随することができ、且つ、伸ばされた化粧シートが破断することなく密着することが可能になる。
【0027】
(基材シート)
本発明の化粧シートは、基材シートを有する。基材シートとしては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製シートを用いることができる。基材シートは、上記樹脂1種単独からなる合成樹脂製シートを用いてもよいし、上記樹脂を2種以上混合して形成した合成樹脂製シートを用いてもよい。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂を含有する合成樹脂製シートが好ましい。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0029】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET-G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
本発明の化粧シートにおいて、基材シートのマルテンス硬さは20~60MPaである。基材シートのマルテンス硬さが20MPa未満であると、化粧シートが破断し、耐摩耗性が低下し、且つ、施工の際にシワが発生し易くなる。基材シートのマルテンス硬さが60MPaを超えると、化粧シートを曲げた際の反り、白化が発生する。基材シートのマルテンス硬さは、30~50MPaが好ましく、35~45MPaがより好ましい。
【0031】
なお、本明細書におけるマルテンス硬さは、ISO14577に準拠したマルテンス硬さ測定装置(フィッシャースコープHM2000;株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定を行う。具体的な測定方法は次の通りである。この測定方法では、
図4(a)に示されるダイヤモンド圧子(ビッカーズ圧子)を用いて、
図4(b)に示すように測定試料にダイヤモンド圧子を押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm
2)を計算し、試験荷重F(N)を割ることにより硬さを求める。押し込み条件は、室温(実験室環境温度)において、
図4(c)に示される通り、先ず0~5mNまでの負荷を10秒間で加え、次に5mNの負荷で5秒間保持し、最後に5~0mNまでの除荷を10秒間で行う。そして、表面積A、試験荷重Fに基づきF/Aにより求められる硬度が前記マルテンス硬さである。なお、本明細書では、測定対象とする層(基材シート、又は、透明性樹脂層)以外の層の硬度の影響を回避するために測定対象とする層の断面のマルテンス硬さを測定する。これに際し、化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂やUV硬化性樹脂などの樹脂)で埋包し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを切断し、機械研磨して測定対象とする層の断面を露出させ、当該断面に(充填材等の微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置に)ダイヤモンド圧子を押し込むことにより断面のマルテンス硬さを測定する。
【0032】
各層のマルテンス硬さは、1)複数の樹脂成分を混合する、2)樹脂にエラストマーを添加する、等によって適宜設定することができる。
【0033】
基材シートの厚みは、50~90μmが好ましく、60~80μmがより好ましい。
【0034】
基材シートは、必要に応じて着色されていてもよい。また、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよいし、隣接する層との密着性を高めるための下地塗料であるプライマーが塗布されていてもよい。
【0035】
(粘着剤層)
本発明の化粧シートは、少なくとも基材シートの裏面に粘着剤層を有する。粘着剤層は、化粧シートに接着強度を付与するために設けられる。
【0036】
粘着剤層を形成するための樹脂としては、接着性を示すことができれば特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、化粧シートにより一層高い接着性を付与することができる点で、アクリル系樹脂を含有することが好ましい。
【0037】
粘着剤層の厚みは、30~70μmが好ましく、40~60μmがより好ましく、40~50μmが更に好ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であることにより、化粧シートの接着性がより一層向上する。
【0038】
(絵柄模様層)
本発明の化粧シートは、絵柄模様層を有していてもよい。
【0039】
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0040】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。インキとしては、化粧シートのVOCを低減する観点からは水性組成物を用いることもできる。
【0041】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いてもよい。
【0042】
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN-ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン-ポリアクリル系樹脂等が変性したものないし前記天然ゴム等の混合物、その他の樹脂を使用することもできる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0044】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0045】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、層厚は0.1~10μm程度である。
【0046】
(着色隠蔽層)
本発明の化粧シートでは、基材シートと絵柄模様層との間にさらに着色隠蔽層が形成されていてもよい。
【0047】
着色隠蔽層は、化粧シートと被着材とを接合した際に被着材の地色を隠蔽できればよく、通常は基材シートを被覆するように形成すればよい。
【0048】
着色隠蔽層の形成には、上記公知の印刷法を利用できる。また、前記絵柄模様層の形成に用いるインキをそのまま使用できる。
【0049】
塗布量は、2~30g/m2の範囲が望ましい。着色隠蔽層の厚みは、通常0.1~20μm程度、好ましくは1~10μm程度である。
【0050】
(接着剤層)
後述する透明性樹脂層と絵柄模様層との密着性を高めるため、絵柄模様層上に接着剤層を形成してもよい。接着剤層は、透明性接着剤層であることが好ましく、当該透明性接着剤層としては、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0051】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。
【0052】
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら着色剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0053】
接着剤層の形成には、上記公知の印刷法を利用できる。
【0054】
接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1~30μm程度、好ましくは1~20μm程度である。
【0055】
(透明性樹脂層)
本発明の床用化粧シートは、透明性樹脂層を有していてもよい。
【0056】
透明性樹脂層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。前記透明性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、オレフィン系エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アイオノマー、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等を挙げることができる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
透明性樹脂層は、透明性熱可塑性樹脂層であることが好ましく、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を代表とするオレフィン系樹脂を含むことがより好ましい。すなわち、透明性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂層であることが好ましい。また、透明性樹脂層を構成する樹脂が上記オレフィン系樹脂又はアイオノマー系樹脂であることが更に好ましい。
【0058】
なお、透明性樹脂層は、透明性を有する限り着色されていても良いが、特に着色剤を配合しない方が望ましい。
【0059】
透明性樹脂層の厚みは、40~120μmが好ましく、50~110μmがより好ましく、60~100μmが更に好ましい。
【0060】
(プライマー層)
透明性樹脂層の上には、プライマー層を設けてもよい。プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿との混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンとのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填材、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0061】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1~100g/m2、好ましくは0.1~50g/m2程度である。
【0062】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01~10μm、好ましくは0.1~1μm程度である。
【0063】
(表面保護層)
本発明の化粧シートは、表面保護層を有していてもよい。表面保護層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。特に、電離放射線硬化型樹脂は高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。更に、耐候性をより一層向上させることができる観点から、電子線硬化型樹脂が最も好ましい。
【0064】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0065】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0066】
表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂、又は、2液硬化型ウレタン系樹脂を含むことが好ましい。表面保護層がこれらの樹脂を含有する場合には、化粧シートの耐摩耗性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性耐候性等をより一層高め易い。
【0067】
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤、硬化剤、重合促進剤等を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
【0068】
熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、熱硬化型樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。溶液の塗布量としては、固形分で概ね5~50μm、好ましくは5~40μm程度である。
【0069】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等のケイ素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0070】
電離放射線としては、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線、電子線が好ましく、電子線がより好ましい。
【0071】
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190~380nm程度である。
【0072】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100~1000keV程度が好ましく、100~300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2~15Mrad程度が好ましい。
【0073】
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
【0074】
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
【0075】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1~10質量部程度である。
【0076】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布法で塗布すればよい。
【0077】
表面保護層の厚みは、必要な性能を発揮すれば特に限定されないが、3~45μmが好ましく、5~35μmがより好ましく、10~25μmが更に好ましい。表面保護層の厚みの下限が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの耐摩耗性がより一層向上する。また、表面保護層の厚みの上限が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの反り、白化がより一層抑制される。
【0078】
電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、耐擦傷性、耐摩耗性を更に付与する場合には、無機充填材を配合すればよい。無機充填材としては、例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイヤモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
【0079】
無機充填材の添加量としては、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して1~80質量部程度である。
【0080】
表面保護層には必要に応じて、上記無機充填剤以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤、等が挙げられる。表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤を含有することが好ましい。上記添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
上記抗菌剤としては、無機系抗菌剤、及び有機系抗菌剤がある。特に無機系抗菌剤は有機系抗菌剤に比べ一般に安全性が高く、耐久性、及び耐熱性にも優れているため望ましい。無機系抗菌剤とは、銀をはじめとする銅、亜鉛等の抗菌性金属を各種の無機物担体に担持したものである。第1表面保護層に含有する場合には、抗菌剤の添加量は第1表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、詳細は抗菌剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0082】
上記抗ウイルス剤としては一般的に有機系と無機系とに大別することができる。有機系の抗ウイルス剤としては、第4級アンモニウム塩系、第4級ホスホニウム塩系、ピリジン系、ピリチオン系、ベンゾイミダゾール系、有機ヨード系、イソチアゾリン系、アニオン系等がある。無機系の抗ウイルス剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア、ガラス、酸化モリブデン等に担持させたものがある。抗ウイルス剤の添加量は表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、詳細は抗ウイルス剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0083】
上記有機系の抗ウイルス剤のうち、特に粒子形状を保つベンゾイミダゾール系の抗ウイルス剤またはアニオン系の抗ウイルス剤が好適に用いられる。粒子形状を保つとは、つまり表面保護層の硬化型樹脂となる組成物(硬化前のインキ)内で溶解することなく、粒子の状態で存在する。このため、表面保護層を形成する過程において、イミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子が浮かび上がりやすくなり、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子を偏在させやすくすることができる。そして、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子をまたはアニオン系化合物の粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス剤の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
【0084】
上記アニオン系の抗ウイルス剤としては例えばスチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含むものが好ましい。また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物はスチレン、スルホン酸Na、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸の構造のうち少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、全ての構造を含むことが更に好ましい。これは、ウイルスにはエンベロープ有無の2種類が存在し、それぞれに対し効果的に活性阻害しうる抗ウイルス剤の構造は異なると考えられるためである。
【0085】
一般に、エンベロープウイルスはエンベロープ(脂質層)を破壊することにより比較的容易に不活性化できるため、エンベロープウイルスに対する効果のみを期待するのであれば、スチレンポリマー誘導体化合物のみ含まれれば良く、その中でもスチレン樹脂単体のみ含まれれば十分に効果が得られる場合もある。
【0086】
一方、活性阻害が困難なノンエンベロープウイルスに対してはスチレンポリマー誘導体化合物及び/又はスチレン樹脂の組合せでは添加量を増量する必要がある場合があり、それにより表面保護層が本来備えるべき表面性能を阻害する可能性もある。そこで、ノンエンベロープウイルスに対し十分な活性阻害を得るためには、上記カルボン酸誘導体化合物を混合して用いることが好ましく、特に少量の添加量でも安定的な効果を得るためには上記カルボン酸誘導体化合物の構成成分としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、ジメチルピロール、テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,2,2-テトラメチル-1,3プロパンジアミンを全て含む化合物を用いることが更に好ましい。
【0087】
上記アニオン系の抗ウイルス性粒子が抗ウイルス性を発揮する理由については下記に推測されるメカニズムに拘束される訳ではないが、例えば、各種ウイルスは宿主細胞表面の糖鎖受容体(糖鎖末端はノイラミン酸)に結合して宿主細胞内に侵入するところ、上述のスチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス性粒子はノイラミン酸と類似したイオン基を有するため、宿主細胞の代わりにウイルスと結合してウイルスを捕捉することで、ウイルスが宿主細胞の受容体に結合するのを防止して抗ウイルス効果を発揮すると考えられる。
【0088】
具体的には、エンベロープウイルスのスパイクタンパク質及びノンエンベロープウイルスのカプシド(タンパク質の殻)に対して、カルボン酸誘導体化合物の構成成分として前述した複数種のアミノ基等の共有電子対を有する官能基が結合(補捉)する。それと同時又は従属的にスチレンポリマー誘導体化合物のスルホン酸基がエンベロープを破壊することでエンベロープウイルスは不活性化し、カルボン酸誘導体化合物のカルボキシ基がカプシドを酸化することでノンエンベロープウイルスを不活性化すると考えられる。また、スルホン酸基は上述の通り主にエンベロープの破壊に寄与していると考えられるが、酸化力を有しているためカルボキシ基同様にノンエンベロープウイルスのカプシドの酸化にも関係する。そのためノンエンベロープウイルスを効率的に不活性化しつつ、更にエンベロープウイルスも不活性化するにはカルボン酸誘導体化合物とスチレンポリマー誘導体化合物を同時に用いることが有効となる。
【0089】
上記無機系の抗ウイルス剤としては、生体毒性が無く安全性に優れる観点から銀系の抗ウイルス剤が好ましく、中でもリン酸系ガラス銀担持化合物または銀ゼオライト化合物、及び酸化モリブデン銀複塩化合物は少量でも抗ウイルス性能を発現することから添加量を抑制することができるため、更に好ましい。
【0090】
上記銀系の抗ウイルス剤を上記表面保護層に添加する場合、表面保護層によっては変色する(添加した塗料の状態で熱・光により変色する場合や、表面保護層形成後に熱・光により変色する場合がある)が、この場合は紫外線防止剤や光安定剤等を適時添加することにより改善することが可能である。例えば、上記酸化モリブデン銀複塩化合物に対しては、ベンゾトリアゾール化合物を用いると変色改善効果が期待できる。
【0091】
上記抗アレルゲン剤は、無機化合物又は有機化合物のいずれか一方を含むものであり、各々単体で用いても良いし、異なる2種以上を混合させても良い。無機化合物としては金属を担持してなる材料であることが好ましい。抗アレルゲン剤の添加量は表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、詳細は抗アレルゲン剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0092】
無機化合物の無機材料としては例えば、酸化チタン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカアルミナ、珪酸マグネシウム及びリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも酸化チタン、リン酸ジルコニウム等が好ましい。
【0093】
無機材料に担持される金属としては、例えば、銀以外の金、白金、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも亜鉛等が好ましい。市販品として例えば、日揮触媒製「アトミーボールTZ-R:酸化チタンに亜鉛担持」等を好適に用いることができ、これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉などの種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0094】
有機化合物としては、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子又はポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたもの、スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含む重合体であることが好ましい。
【0095】
フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子としては、市販品として例えば積水化学工業株式会社製「アレルバスター(商品名)」、丸善石油株式会社製「マルカリンカーM(商品名)」等を使用することができる。また、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせたものとしては、東亜合成株式会社製「アレリムーブ(商品名)」などが挙げられる。これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0096】
スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の単量体成分としては、特許第6136433号に示されるような材料を用いることができる。好適な例としては、スチレンスルホン酸塩の単独重合体、スチレンスルホン酸塩-スチレンスルホン酸共重合体、スチレンスルホン酸塩-スチレン共重合体、スチレンスルホン酸-スチレン共重合体、スチレンスルホン酸塩-スチレンスルホン酸-スチレン三元共重合体等が挙げられる。
【0097】
その他に、有機化合物と無機化合物とを混合させる場合は、例えばアニオン性フェノール系と抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料が挙げられる。
【0098】
アニオン性フェノール系材料としては、タンニン、タンニン酸・吐酒石、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド樹脂、ノボラツク型樹脂のスルホン化合物、ノボラツク型樹脂のメタンスルホン酸、レゾール型樹脂のメタンスルホン酸、ベンジル化フェノールスルホン酸、チオフェノール系化合物、ジ・ヒドロオキシ、ジ・フェニルスルホン系化合物、リガント化合物及びこれらの金属キレート化合物などから適宜選択して用いられる。
【0099】
亜鉛系材料としては、水溶性亜鉛化合物又は非水溶性亜鉛化合物、亜鉛/金属酸化物複合素材などから適宜選択され、非水溶性亜鉛化合物及び/又は非水溶性亜鉛・金属酸化物の複合粒子が水分散され、粒子径が50μm以下であり、前記金属酸化物がチタニア、シリカ、アルミナのいずれかを少なくとも一種含むものであることが好ましい。
【0100】
(裏面プライマー層)
前述の基材シートの裏面には、必要に応じて、裏面プライマー層を設けてもよい。基材シートと粘着剤層とを積層する際に有利である。
【0101】
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートの裏面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマーには、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填材、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0102】
裏面プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.1~10μm、好ましくは1~5μm程度である。
【0103】
(離型層)
本発明の化粧シートは、粘着剤層の裏面に離型層が積層されていてもよい。
【0104】
離型層としては、粘着剤層を被覆することができ、離型性を示すことができれば特に限定されず、離型紙、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂等を含有する離型性シート等が挙げられる。
【0105】
離型層の厚みは特に限定されないが、通常50~200μm、好ましくは100~150μm程度である。
【0106】
以上説明した各層の積層は、例えば、基材シートの一方の面に絵柄模様層(ベタインキ層、柄インキ層)を印刷により形成後、絵柄模様層上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤を介して透明性樹脂層をドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、さらに表面保護層を形成した後に、基材シートの裏面に粘着剤層を形成するための樹脂を塗布して乾燥させて粘着剤層を形成し、当該粘着剤層に離型層を積層する方法により行うことができる。また、離型層上に粘着剤層を形成し、基材シートの裏面に積層してもよい。
【0107】
化粧シートには、表面保護層側(化粧シートの上側)からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成してもよい。凹凸模様は、加熱プレス、ヘアライン加工等により形成できる。凹凸模様としては、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0108】
なお、本明細書において、上記化粧シートの各層の厚みは、上記凹凸模様が形成されていない箇所で測定した値である。
【0109】
本発明の化粧シートの上述の各層に添加される各種添加剤(表面保護層が含有する球状のアルミナ、アルミナ以外の球状の他の無機フィラー、消臭剤等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
【0110】
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
【0111】
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0112】
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
【0113】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0114】
上記コレステロール類としては、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0115】
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
【0116】
以上説明した本発明の化粧シートは、リフォーム用の化粧シートとして有用に好適に用いることができる。
【0117】
化粧材
本発明の化粧シートの基材シート側を被着材を貼り合わせて、接合することにより、化粧材とすることができる。本発明の化粧材は、上記化粧シートを被着材上に有する化粧材である。
【0118】
各種被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0119】
このような被着材の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0120】
被着材と化粧シートとを貼り合わせるには、化粧シートの粘着剤層と、被着材とを接するように積層して、押圧すればよい。また、被着材と化粧シートとを、接着剤を用いて貼り合わせてもよい。接着剤としては、例えば、ウレタン、アクリル、ウレタン・アクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする公知の接着剤が使用できる。
【0121】
被着材と化粧シートとの接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【0122】
以上説明した本発明の化粧材は、床用化粧材として好適に用いることができる。
【実施例0123】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
【0124】
(実施例1)
[化粧シートの作製]
マルテンス硬さが45MPa、60μm厚の着色ポリオレフィンフィルムからなる基材シートの裏面に、ウレタン-セルロース系樹脂の裏面プライマー層(厚さ2μm)を形成した。次いで、基材シートの表面に、アクリル-ウレタン系樹脂により厚さ2μmとなるように絵柄模様層をグラビア印刷により形成した。絵柄模様層上にウレタン系樹脂を用いて厚さ3μmとなるように透明性接着剤層を形成し、更に厚さ80μmとなるように透明性オレフィン系樹脂を加熱溶融押出し方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。
【0125】
更に、透明性樹脂層の上に厚さ15μmのアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなる電子線硬化型樹脂により表面保護層を形成した。意匠性を高めるために、透明性樹脂層の上からエンボス加工してエンボス凹部を設けた。
【0126】
別途、離型性シートの上にアクリル系粘着剤を50g/m2(厚み50μm)になるように形成し、上述の化粧シートの裏面プライマー側と貼り合せ、粘着剤層を形成して、離型層を有する化粧シートを製造した。離型性シートは、ポリエステル系シート(東レ社製 商品名セラピールBX8A)を使用した。化粧シートの厚み(離型層を剥がした際の厚み)は、0.205mmであった。
【0127】
[化粧材の製造]
市販の床材(朝日ウッドテック株式会社製、製品名 ライブナチュラル)を用意し、#180の紙やすりで表面を10往復研摩して、表面の汚れを除去し被着材とした。
化粧シートの離型性シートを剥がして被着材上に貼り付け、化粧材を製造した。
【0128】
(実施例2~4、比較例1~4)
基材シート、透明性樹脂層、粘着剤層、及び、化粧シートの構成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧材を製造した。
【0129】
(実施例5)
表面保護層形成用の電子線硬化型樹脂100質量部に対し、抗ウイルス剤としてリン酸系ガラス銀担持化合物(興亜硝子製 PG-711)を3質量部添加した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0130】
(実施例6)
表面保護層形成用の電子線硬化型樹脂100質量部に対し、抗アレルゲン性を有するアニオン性フェノール系材料(DIC社製 EXP20530A)及び抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料(DIC社製 EXP20530B)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを製造した。上記アニオン性フェノール系材料及び上記亜鉛系材料は、配合後の樹脂組成物(コーティング剤)100質量%中、それぞれ固形分割合で23質量%となるように配合した。
【0131】
(実施例7)
基材シートとして、ポリエチレン樹脂フィルム(厚さ55μm)を用意した。基材シートの一方の面にコロナ放電処理を行い、当該コロナ放電処理面に、ウレタン系印刷インキを用いて絵柄模様層(厚さ2μm)を形成した。次いで、絵柄模様層上にウレタン系樹脂を用いて厚さ3μmとなるように透明性接着剤層を形成し、更に厚さ70μmとなるようにポリプロピレン樹脂を加熱溶融押出し方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。
【0132】
更に、透明性樹脂層の上に2液硬化型ポリウレタンである熱硬化型樹脂組成物により表面保護層を形成し、化粧シートを製造した。化粧シートの厚さは135μmであった。また、当該化粧シートの降伏点応力を、JIS K6732に準拠した測定方法により測定したところ、19.9Nであった。
【0133】
上述のようにして得られた実施例7の化粧シートの裏面に、トーヨーケム(株)製 オリバインBPS5762Kを20μmの厚さで塗工して、粘着層を形成した。
【0134】
[評価方法]
実施例1~4及び比較例1~4について、下記試験を行い評価した。
【0135】
(接着強度)
化粧シートを幅24mm、長さ150mmに切断し、試験片を調製した。当該試験片を用いて、JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により、試験体の準備を行い、接着強度を測定した。被着材はJIS G4305に規定のSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後に光輝熱処理)、厚み2mmのものを使用した。試験片を被着材の上に置き、試験片上から手動の圧着装置を用いて圧力1kg/24mm、圧着速度10mm/秒の条件で2往復させて圧力をかけ、試験片と被着材とを圧着した。次いで、10℃の恒温槽の中で、角度180度、速度500mm/分の条件で剥離試験を行い、JIS Z0237:2022に準拠した測定方法により最大点荷重(N/24mm)を測定し、接着強度とした。
【0136】
(マルテンス硬さ)
基材シート及び透明性樹脂層のマルテンス硬さを、上述のマルテンス硬さの測定方法として説明した測定方法により測定した。
【0137】
(耐摩耗性)
JASフローリング摩耗試験に準拠した測定方法により、1kg荷重、研摩紙S-54の条件で耐摩耗性試験を行い、500回転後の外観を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
++:絵柄取られがなかった
+:絵柄取られがあったが僅かであった
-:絵柄取られがあった
【0138】
(触感)
化粧シートを下地上に貼り付け、手で触って化粧シートと下地との段差の有無を確認し、下記評価基準に従って評価した。
++:違和感(段差)を感じなかった
+:違和感(段差)を感じたが僅かであった
-:違和感(段差)を感じた
【0139】
(巻込外観(反り、白化))
化粧シートを1Rの形状の下地に施工し、巻込み仕上りの外観を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
++:反り、及び、白化が生じなかった
+:反り、及び/又は、白化が生じたが僅かであった
-:反り、及び/又は、白化が生じた
【0140】
(破断)
上記接着強度を測定する方法と同一の方法により試験を行い、下記評価基準に従って評価した。
+:化粧シートが破断しなかった
-:化粧シートが破断した
【0141】
(施工性(貼り易さ))
市販の床材(朝日ウッドテック株式会社製 製品名ライブナチュラル)を用意し、#180の紙やすりで表面を10往復研摩して、表面の汚れを除去した。当該床材を幅300mm、長さ1000mmに切断して、被着材を調製した。化粧シートを幅300mm、長さ100mmに切断し、試験片を調製した。化粧シートの離型性シートを剥がし、
図5のように、被着材の幅方向(300mm)の一辺と、化粧シート幅方向(300mm)の一辺とを揃え、当該一辺から長さ方向に約2cm貼着した。化粧シートの反対側の幅方向(300mm)の一辺の中央を1kgfの引張力で引張りながら、未圧着部を、手動の圧着装置を用いて圧力1kg/24mm、圧着速度10mm/秒の条件で2往復させて押圧し、被着材に圧着した。被着材に圧着された化粧シートのシワの有無を目視で確認した。上記試験を5回行い、下記評価基準に従って評価した。
++:シワの発生が1回以下であった
+:シワが2回発生した
-:シワが3回以上発生した
【0142】
結果を表1に示す。
【0143】
【0144】
実施例1及び実施例5で製造した化粧シートについて、下記試験を行い評価した。
【0145】
(抗ウイルス性能)
実施例1及び実施例5で作製した化粧シートについて、抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で抗ウイルス性能試験を行い、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を下記評価基準に基づいて評価した。
〇:抗ウイルス活性値2.0以上であった
×:抗ウイルス活性値2.0未満であった
【0146】
結果を表2に示す。
【0147】
【0148】
実施例1及び実施例6で製造した化粧シートについて、下記試験を行い評価した。
【0149】
(抗アレルゲン性能)
実施例1及び実施例6で作製した化粧シートについて、抗アレルゲン性能を評価した。具体的には、実施例1及び実施例6で作製した化粧シートを細かく切断し、ダニアレルゲン水溶液中に1日間浸した後のアレルゲン量を水平展開クロマト法(マイティチェッカー)で目視にて確認し、下記評価基準に従って評価した。
〇:アレルゲン量の減少が確認できた(ダニアレルゲンレベル判定が+判定以下(すなわち100匹程度/m2以下)
×:アレルゲン量の減少が確認できなかった(ダニアレルゲンレベル判定が+判定超過)
【0150】
結果を表3に示す。
【0151】
【0152】
実施例7で製造した化粧シートについて、下記試験を行い評価した。
【0153】
(曲げ加工追随性評価)
実施例7で作製した化粧シートについて、曲げ加工追随性を評価した。具体的には、
図6のように、被着材として幅300mm、長さ500mm、長さ方向の端部が半径15mmの曲面形状になっている被着材(b)を用意した。次いで、化粧シートを幅300mm、長さ600mmに切断して、化粧シート(a)を用意した。化粧シート(a)の離型性シートを剥がし、
図6(c)のように被着材(b)の幅方向(300mm)の一辺と、化粧シート(a)の幅方向(300mm)の一辺とを揃え、長さ方向は被着材(b)の端部から、化粧シート(a)が50mmはみ出すように貼着した後、端部を曲面に沿うように貼着した。24時間経過後に化粧シート(a)の端部の曲面からの捲れ上がりの有無を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。
〇:曲面からの捲れ上がりが無かった
×:曲面からの捲れ上がりが有った
【0154】
結果を表4に示す。
【0155】