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  • 特開-オレフィン化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152776
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】オレフィン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 6/04 20060101AFI20231005BHJP
   C07C 15/52 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 7/14 20060101ALI20231005BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C07C6/04
C07C15/52
C07C7/14
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033179
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022057180
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 務
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC29
4H006AD15
4H006BA23
4H006BA48
4H006BB12
4H039CA29
4H039CE90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率的および選択的なトランス体オレフィン化合物の製造方法の提供。
【解決手段】本発明によるオレフィン化合物の製造方法は、下記式(1):

(式(1)中、Rは、炭素数6~20の鎖状炭化水素基、炭素数6~20の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の芳香族炭化水素基を示し、各基は、酸素原子、窒素原子、またはハロゲンを含んでいてもよい。)で表される原料化合物を触媒および溶媒の存在下、交差メタセシス反応によって、下記式(2):

(式(2)中、Rは、式(1)と同様である。)で表されるオレフィン化合物を合成する反応工程と、前記オレフィン化合物および前記触媒を含む反応溶液を精製して、前記オレフィン化合物および前記触媒を分離する第1の精製工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは、炭素数6~20の鎖状炭化水素基、炭素数6~20の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の芳香族炭化水素基を示し、各基は、酸素原子、窒素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい。)
で表される原料化合物を触媒および溶媒の存在下、交差メタセシス反応によって、
下記式(2):
【化2】
(式(2)中、Rは、式(1)と同様である。)
で表されるオレフィン化合物を合成する反応工程と、
前記オレフィン化合物および前記触媒を含む反応溶液を精製して、前記オレフィン化合物および前記触媒を分離する第1の精製工程と、
を含む、オレフィン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の精製工程が、減圧ろ過によって行われる、請求項1に記載のオレフィン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記原料化合物が、下記式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、または1以上の炭素数1~6のアルキル基で置換されたアミノ基を示し、nは0~5である。)
で表され、
前記オレフィン化合物が、下記式(4):
【化4】
(式(4)中、Rは、式(3)と同様である。)
で表される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(3)中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、または1以上の炭素数1~4のアルキル基で置換されたアミノ基であり、nは0~3である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(3)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~3である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記交差メタセシス反応の反応生成物のシス:トランス比が0:100~5:95である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記触媒が、金属-カルベン錯体化合物である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の精製工程で得られたオレフィン化合物をさらに精製する第2の精製工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2の精製工程が、再結晶によって行われる、請求項8に記載のオレフィン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差メタセシス反応を用いるオレフィン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン化合物は、例えば、医薬、農薬、電子材料、金属錯体の配位子等の様々な製品に幅広く使用されている化学物質である。一般的に、オレフィン化合物のシス体とトランス体の精製による分離は煩雑であり、反応工程によってシス体とトランス体を選択的に合成することが望まれている。
【0003】
上記の課題に対して、例えば、特許文献1には、マクマリー反応を用いてアルデヒドからトランス体のオレフィン化合物を合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021-018572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のマクマリー反応を用いた合成方法は反応工程が煩雑であり、さらに多段階の精製工程を行う必要があった。また、特許文献1に記載の方法では、反応生成物のシス・トランスの選択性の制御が十分ではなかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、効率的であり、かつ、シス・トランスの選択性に優れたオレフィン化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、交差メタセシス反応を用いることで、特定の原料化合物からトランス体のオレフィン化合物を選択的かつ効率的に合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 下記式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは、炭素数6~20の鎖状炭化水素基、炭素数6~20の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の芳香族炭化水素基を示し、各基は、酸素原子、窒素原子、またはハロゲン原子を含んでいてもよい。)
で表される原料化合物を触媒および溶媒の存在下、交差メタセシス反応によって、
下記式(2):
【化2】
(式(2)中、Rは、式(1)と同様である。)
で表されるオレフィン化合物を合成する反応工程と、
前記オレフィン化合物および前記触媒を含む反応溶液を精製して、前記オレフィン化合物および前記触媒を分離する第1の精製工程と、
を含む、オレフィン化合物の製造方法。
[2] 前記第1の精製工程が、減圧ろ過によって行われる、[1]に記載のオレフィン化合物の製造方法。
[3] 前記原料化合物が、下記式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、または1以上の炭素数1~6のアルキル基で置換されたアミノ基を示し、nは0~5である。)
で表され、
前記オレフィン化合物が、下記式(4):
【化4】
(式(4)中、Rは、式(3)と同様である。)
で表される、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記式(3)中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、または1以上の炭素数1~4のアルキル基で置換されたアミノ基であり、nは0~3である、[3]に記載の製造方法。
[5] 前記式(3)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~3である、[3]に記載の製造方法。
[6] 前記交差メタセシス反応の反応生成物のシス:トランス比が0:100~5:95である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記触媒が、金属-カルベン錯体化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記第1の精製工程で得られたオレフィン化合物をさらに精製する第2の精製工程を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記第2の精製工程が、再結晶によって行われる、[8]に記載のオレフィン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、効率的および選択的なトランス体のオレフィン化合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られたオレフィン化合物の13C-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[オレフィン化合物の製造方法]
本発明のオレフィン化合物の製造方法は、交差メタセシス反応を用いてオレフィン化合物を合成する反応工程と、第1の精製工程とを含み、第2の精製工程をさらに含んでもよい。以下、各工程について詳述する。
【0012】
(反応工程)
反応工程では、下記式(1):
【化5】
で表される原料化合物を用いる。
式(1)中、Rは、炭素数6~20の鎖状炭化水素基、炭素数6~20の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の芳香族炭化水素基を示し、各基は、酸素原子、窒素原子、またはハロゲンを含んでいてもよい。これらの鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、および芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは6~14である。
【0013】
本発明の一実施形態においては、式(1)中、Rは芳香族炭化水素基が好ましく、下記式(3):
【化6】
で表される置換基を有してもよいフェニル基がより好ましい。式(3)中、置換基Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、または1以上の炭素数1~6のアルキル基で置換されたアミノ基である。置換基Rは、好ましくはハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、または1以上の炭素数1~4のアルキル基で置換されたアミノ基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、さらにより好ましくはターシャリーブチル基である。また、式(3)中、nは0~5であり、好ましくは0~3であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1または2である。なお、nが0の場合、フェニル基の水素原子は置換されていないことを意味する。
【0014】
上記式(3)で表される原料化合物の好ましい実施形態としては、以下の化合物が挙げられる。下記式中、tBuはターシャリーブチル基を示し、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0015】
(触媒)
触媒としては、メタセシス反応活性を有する触媒であれば、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。メタセシス反応活性を有する触媒としては、例えば、金属-カルベン錯体化合物が挙げられ、金属-カルベン錯体化合物における金属はルテニウム、モリブデン、またはタングステンであることが好ましい。触媒としては、特にルテニウム-カルベン錯体化合物を用いることが好ましい。
【0016】
ルテニウム-カルベン錯体化合物としては、例えば、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)-3-メチル-2-ブテニリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジイソプロピルイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジシクロヘキシルイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3-ビス(2-メチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3-ジシクロヘキシル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)[ビス(3-ブロモピリジン)]ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(2-イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。これらのルテニウム-カルベン錯体化合物は、1種のみで用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
触媒の添加量は、交差メタセシス反応が進行すれば特に限定されないが、原料化合物である上記式(1)で表される化合物1モルに対して、好ましくは0.0001~1モルであり、より好ましくは0.001~0.5モルである。
【0018】
(溶媒)
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒;ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン等の含フッ素有機溶媒等を用いることができる。これらの中でも、金属-カルベン錯体化合物の溶解性等の点で、ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF(テトラヒドロフラン)、ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン等、及びこれらの混合物が好ましい。
【0019】
(反応条件)
原料化合物と触媒を接触させる雰囲気としては、特に限定されないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、窒素又はアルゴン雰囲気下がより好ましい。
【0020】
メタセシス反応は、原料化合物、触媒、および反応生成物であるオレフィン化合物が反応環境下で安定な状態を維持できる温度であれば特に限定されない。反応温度は、通常、室温から150℃の範囲で行うことができ、副生成物の抑制の観点から100℃以下で行うことが好ましく、80℃以下で行うことがより好ましい。
【0021】
原料化合物と触媒を接触させる時間としては、特に制限されないが、通常、1分~48時間の範囲であり、好ましくは10分~36時間であり、より好ましくは0.5時間~24時間である。
【0022】
(反応生成物)
交差メタセシス反応により得られる反応生成物は、下記式(2):
【化19】
で表されるオレフィン化合物である。
式(2)中、Rは、式(1)中の定義と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0023】
本発明の一実施形態においては、交差メタセシス反応により得られる反応生成物は、下記式(4):
【化20】
で表されるオレフィン化合物が好ましい。
式(4)中、Rは、式(2)中の定義と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0024】
交差メタセシス反応により得られる上記式(4)で表されるオレフィン化合物の好ましい実施形態としては、以下の化合物が挙げられる。
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0025】
(第1の精製工程)
第1の精製工程は、上記の反応工程で得られたオレフィン化合物および前記触媒を含む反応溶液を精製して、オレフィン化合物および触媒を分離する工程である。第1の精製工程の精製手段は、特に限定されないが、効率や簡便さの観点から、減圧ろ過により行うことが好ましい。減圧ろ過の減圧度は特に限定されないが、ゲージ圧力約10KPa(気圧換算0.1atm)以上で減圧ろ過を行うことが好ましい。減圧ろ過であれば、クロマトグラフィー等の他の精製手段に比べて、短期間かつ容易に分離を実現することができる。なお、第1の精製工程は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。
【0026】
(第2の精製工程)
第2の精製工程は、第1の精製工程で得られたオレフィン化合物をさらに精製する工程である。第2の精製工程は、第1の精製工程と異なる手段であれば、特に限定されないが、例えば、再結晶、分液、および溶媒留去等を行うことができる。なお、第2の精製工程は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。
【0027】
(用途)
本発明のオレフィン化合物は、医薬、農薬、電子材料、有機金属錯体の配位子等に有用である。
【実施例0028】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
下記の実施例で得られたオレフィン化合物の構造、および、純度、シス:トランス比は以下の方法により分析した。
(1)オレフィン化合物の構造の分析は、後述する条件で13C-NMRを用いて行った。
13C-NMR条件)
・NMR測定装置:BRUKER JAPAN社製
13C-NMR測定条件:周波数150.89MHz、CDCl3溶媒
・本化合物の検出ピーク(TMS内部基準):δ150.6,134.8,127.7,126.2,125.6,34.6,31.3
(2)オレフィン化合物の純度、シス:トランス比は、後述する条件でGC-MSを用いて行った。なお、純度とは、トランス体、シス体、および異性体の合計に対するトランス体の比率とする。
(GC-MS条件)
・GC装置:Agilent 7890B
・MS装置:日本電子製JMS-T200GCx-Plus
・分離カラム:ZB-1MS(30m×0.25mmi.d.×0.25μm)
・FIDカラム:不活性化処理フューズドシリカ (0.86m×0.18mmi.d.)
・MSカラム:不活性化処理フューズドシリカ (2.24m×0.18mmi.d.)
(測定条件)
・オーブン温度:50℃~350℃、昇温速度:5℃/min
【0030】
<オレフィン化合物の製造例>
[実施例1]
還流冷却器を備えたナスフラスコの中に、4-ターシャリーブチルスチレン(富士フィルム和光純薬株式会社製、純度94%品)0.752g、グラブス第二世代触媒(ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム)0.077g、およびジクロロメタン4mLを加えた後、還流させながら5時間、下記の反応を行った(反応式I)。
【化33】
【0031】
続いて、得られた反応液を、シリカゲル(4-ターシャリーブチルスチレンに対して15倍量)を充填したろ過装置に流し込み、ゲージ圧力約93KPa(気圧換算0.918atm)で減圧ろ過を行って、触媒や副生成物等を除去し、オレフィン化合物を得た。次に、得られたオレフィン化合物を、メタノール溶媒を用いて再結晶を行った。
【0032】
再結晶後のオレフィン化合物を上記の条件で13C-NMR測定を行い、図1に示す13C-NMRスペクトルを得た。スペクトル解析の結果、上記式のオレフィン化合物であることを確認した。
【0033】
また、再結晶後のオレフィン化合物を上記の条件でGC-MS測定を行ったところ、トランス体が98.0%、シス体が1.1%、異性体が0.9%含まれており(シス:トランス比=1.1:98.9)、純度は98.0%であった。なお、純度は、トランス体、シス体、および異性体の合計に対するトランス体の比率とする。また、オレフィン化合物の収率は、90%であった。
【0034】
[実施例2]
還流冷却器を備えたナスフラスコの中に、4-ターシャリーブチルスチレン(東京化成工業株式会社製、純度90%品)185g、グラブス第二世代触媒(ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム:シグマ アルドリッチ 社製)0.94g、およびジクロロメタン420mLを加えた後、還流させながら24時間、実施例1と同様の反応を行った(反応式I)。
【0035】
続いて、得られた反応液を、シリカゲル(4-ターシャリーブチルスチレンに対して3倍量)を充填したろ過装置に流し込み、ゲージ圧力約93KPa(気圧換算0.918atm)で減圧ろ過を行って、触媒や副生成物等を除去し、オレフィン化合物を得た。次に、得られたオレフィン化合物を、酢酸エチル溶媒(オレフィン化合物に対して5倍量)を用いて再結晶を行った。
【0036】
再結晶後のオレフィン化合物を上記の条件で13C-NMR測定を行い、13C-NMRスペクトルを得た。スペクトル解析の結果、上記式のオレフィン化合物であることを確認した。
【0037】
また、再結晶後のオレフィン化合物を上記の条件でGC-MS測定を行ったところ、純度は98.0%であった。また、オレフィン化合物の収率は、80%であった。
【0038】
[比較例1]
国際公開第2021-018572号公報に記載の方法に従って、4-ターシャリーブチルベンズアルデヒド9.86g、四塩化チタン34.6g、および亜鉛粉末29.8gを混合した後、下記のマクマリー反応を行った(反応式II)。
【化34】
【0039】
続いて、得られた反応物に分液操作、乾燥、濃縮、クロマトグラフィー等の精製工程を実施して、オレフィン化合物を得た。次に、実施例1と同様にして、オレフィン化合物を分析した結果、トランス体93.7%、シス体4.6%、異性体1.7%が含まれており(シス:トランス比=4.7:95.3)、純度は93.7%であった。また、トランス体の収率は、45%であった。
図1