(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152794
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】電磁調理器用汚れ防止マット
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20231005BHJP
F24C 15/14 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05B6/12 307
F24C15/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036255
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2022059336
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 義一
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151AA29
3K151BA91
(57)【要約】
【課題】 固着や破れが生じにくくなる電磁調理器用汚れ防止マットを提供する。
【解決手段】汚れ防止マット1は、シート体2を円形に切り出したものよりなる。シート体2は、磁力線の透過性及び耐熱性を有するガラス繊維を平織したものより構成されるシート状の素材である織布3と、織布3の両面の全面に形成され、非透水性且つ耐熱性を有するシリコーンより構成されるコート材4a及び4bとからなる。シート体2は、引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上240kN/m以下に、織布3の厚みが0.02mm以上0.42mm以下に、コート材4a及び4bの各々の塗工量が5g/m
2以上520g/m
2以下に、コート材4a及び4bの塗工量の合計が20g/m
2以上570g/m
2以下に、コート材4a及び4bの各々の塗工厚みが2μm以上300μm以下に、コート材4a及び4bの塗工厚みの合計が4μm以上330μm以下に、それぞれ設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁調理器のトッププレートと前記電磁調理器によって加熱される鍋の底面との間に挟んで使用される電磁調理器用汚れ防止マットにおいて、
磁力線の透過性を有する耐熱性のシート体よりなり、
前記シート体は、引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上240kN/m以下である、電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項2】
前記シート体の厚みが、0.74mm以下である、請求項1記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項3】
前記シート体は、
耐熱性を有する繊維より構成されるシート状の素材と、
前記素材の両面に形成され、非透水性を有するコート材とからなり、
前記素材は、厚みが0.02mm以上0.42mm以下であり、
前記コート材は表面と裏面との各々において、塗工量が5g/m2以上520g/m2以下である、請求項1又は請求項2記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項4】
前記シート体は、
前記コート材の塗工量の合計が、20g/m2以上570g/m2以下である、請求項3記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項5】
前記シート体は、
耐熱性を有する繊維より構成されるシート状の素材と、
前記素材の両面に形成され、非透水性を有するコート材とからなり、
前記素材は、厚みが0.02mm以上0.42mm以下であり、
前記コート材は表面と裏面との各々において、塗工厚みが2μm以上300μm以下である、請求項1又は請求項2記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項6】
前記シート体は、
前記コート材の塗工厚みの合計が、4μm以上330μm以下である、請求項5記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項7】
前記素材はガラス繊維を含む、請求項3記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項8】
前記素材はガラス繊維を含む、請求項5記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項9】
前記コート材は、シリコーンを含む、請求項3に記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【請求項10】
前記コート材は、シリコーンを含む、請求項5に記載の電磁調理器用汚れ防止マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電磁調理器用汚れ防止マットに関し、特に加熱すべき鍋の底面の汚れや吹きこぼれ等を電磁調理器のトッププレートに付着させない電磁調理器用汚れ防止マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁調理器のトッププレートと鍋の底との間に挟んで使用する電磁調理器用汚れ防止マットとして、特許文献1に示すものが存在している。
【0003】
図3は、電磁調理器を組み込んだ一般の調理用加熱装置において、従来の電磁調理器用汚れ防止マットを使用した状態の外観形状を示した平面図であり、
図4は、
図3で示したIV-IVラインに対応した図であって、電磁調理器の作動原理を模式的に示した断面図及び従来の電磁調理器用汚れ防止マットの拡大断面図である。
【0004】
まず、
図3を参照して、調理用加熱装置61のトッププレート17の手前の左右には電磁調理器13a及び13bが設置され、トッププレート17の後方にはニクロム線がトッププレート17の下面に組み込まれた発熱線加熱器63が設置されている。尚、調理用加熱装置61は、その機種によって発熱線加熱器63に代えて電磁調理器が設置されている場合(すなわち、3つの電磁調理器を備える)や発熱線加熱器63が無く2つの電磁調理器のみを備える場合もある。又、トッププレート17の奥側には吸・排気パネル65が配置されている。この図においては、電磁調理器13bに対して磁力透過性及び耐熱性を有する汚れ防止マット51が配置され、更にその上に加熱すべき鍋19が配置された状態が示されている。
【0005】
電磁調理器13bの概略構造及びその加熱原理については
図4の(1)を参照して、トッププレート17の下方には電磁調理器13bを構成する磁力発生コイル14が配置されている。この磁力発生コイル14に図示しないスイッチをオンにすることによって電流が流れると、磁力発生コイル14の周りに二点鎖線で示されているような磁力線15が発生する。この磁力線15はトッププレート17及び汚れ防止マット51を貫通し、更にトッププレート17上に載置されている鍋19の底をも貫通してループ状に形成されることになる。鍋19は所定の導電性を有する材料によって構成されているため、この磁力線15の発生に伴ってその鍋底にうず電流16が発生する。このようにして発生したうず電流16が鍋19の鍋底の電気抵抗によって熱に代わり、鍋底の温度が上昇することになる。これによって鍋19内に収納された料理物が火を介することなく加熱されることになる。尚、磁力発生コイル14の通電を停止すると磁力線15は消滅し、これによって鍋19の鍋底に発生していたうず電流16も消滅する。その結果、鍋19の鍋底の温度は降下し、加熱状態が終了することになる。トッププレート17の下方には温度センサ18が取付けられている。温度センサ18はトッププレート17の温度を監視し、空焚き等によって異常にトッププレート17の温度が上昇したような場合に、図示しない制御装置によって電力の供給を遮断して加熱を停止するものである。
【0006】
汚れ防止マット51の構成については、
図4の(1)の“Z”部分の汚れ防止マット51を拡大した
図4の(2)、及び
図3を参照して、汚れ防止マット51は、磁力線の透過性を有するガラス繊維よりなる織布53の両面に非透水性且つ耐熱性のシリコーン54a及び54bを全面に施したものを円形に切り出してシート体52としたものである。汚れ防止マット51は、その中心素材として織布53を用いているためクッション性を有する。又、その両面に非透水性且つ耐熱性のシリコーン54a及び54bを施しているため、汚れ防止マット51全体は非透水性及び耐熱性を有する。
【0007】
汚れ防止マット51は、その使用により、鍋19の底面に汚れが付着していたり、料理のハネが飛んだりした際にも、トッププレート17に直接付着することが無く美麗な状態を保ち、掃除等の手間をかけずに済む効果を奏するものであるとともに、その使用によって電磁調理器の温度センサの測定に影響を与える虞がないよう、シート体52の熱抵抗を所定の範囲に設定することで、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が少なくなり、その結果、電磁調理器の使用に際して不具合が生じる虞を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示す上述のような従来の汚れ防止マット51を電磁調理器13a又は13bに載置した状態で汚れ防止マット51の上に鍋19を用いて調理により加熱した際には高温下で汚れ防止マット51と電磁調理器13a又は13bとが接した状態で使用されることになる。汚れ防止マット51は、シリコーン54a及び54bが、トッププレート17の天板の素材であるガラスに近い化学構造を持っている。そのため、トッププレート17側に位置するシリコーン54a又は54bとトッププレート17とが固着し、トッププレート17にシリコーン54a又は54bが残る現象が生じることがある。この固着が軽度であれば、手指や洗剤を含むスポンジ等で固着部分を擦って固着したシリコーン54a又は54bを容易に除去することができるが、固着が強固であると、汚れ防止マット51自体がトッププレート17に貼り付いた状態となることでトッププレート17から除去できない場合があり、これらがトッププレート17の汚れそのものになる虞があった。又、固着が強固である場合に汚れ防止マット51をトッププレート17から剥がそうとすると、固着部分から引き裂かれるように汚れ防止マット51が破れる虞もあった。すなわち、汚れ防止マット51を構成するシリコーン54a又は54bのみならず、ガラス繊維もトッププレート17上に残ってしまう。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、固着や破れが生じにくくなる電磁調理器用汚れ防止マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、電磁調理器のトッププレートと電磁調理器によって加熱される鍋の底面との間に挟んで使用される電磁調理器用汚れ防止マットにおいて、磁力線の透過性を有する耐熱性のシート体よりなり、シート体は、引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上240kN/m以下であるものである。
【0012】
このように構成すると、所定の引裂き強度を備える、という作用1が得られる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、シート体の厚みが、0.74mm以下であるものである。
【0014】
このように構成すると、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が少なくなる、という作用2が得られる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、シート体は、耐熱性を有する繊維より構成されるシート状の素材と、素材の両面に形成され、非透水性を有するコート材とからなり、素材は、厚みが0.02mm以上0.42mm以下であり、コート材は表面と裏面との各々において、塗工量が5g/m2以上520g/m2以下であるものである。
【0016】
このように構成すると、クッション性と所定の引裂き強度とを兼ね備えると共に、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が少なくなる、という作用3が得られる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、シート体は、コート材の塗工量の合計が、20g/m2以上570g/m2以下であるものである。
【0018】
このように構成すると、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が更に少なくなる、という作用4が得られる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、シート体は、耐熱性を有する繊維より構成されるシート状の素材と、素材の両面に形成され、非透水性を有するコート材とからなり、素材は、厚みが0.02mm以上0.42mm以下であり、コート材は表面と裏面との各々において、塗工厚みが2μm以上300μm以下であるものである。
【0020】
このように構成すると、クッション性と所定の引裂き強度とを兼ね備えると共に、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が少なくなる、という作用5が得られる。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、シート体は、コート材の塗工厚みの合計が、4μm以上330μm以下であるものである。
【0022】
このように構成すると、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が更に少なくなる、という作用6が得られる。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、素材はガラス繊維を含むものである。
【0024】
このように構成すると、汚れ防止マットが所定の耐熱性と強度を備えつつ柔軟性も備える、という作用7が得られる。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、素材はガラス繊維を含むものである。
【0026】
このように構成すると、汚れ防止マットが所定の耐熱性と強度を備えつつ柔軟性も備える、という作用8が得られる。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項3の発明の構成において、コート材は、シリコーンを含むものである。
【0028】
このように構成すると、汚れ防止マットの表面は防滑性、耐熱性、非透水性を備える、という作用9が得られる。
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項5の発明の構成において、コート材は、シリコーンを含むものである。
【0030】
このように構成すると、汚れ防止マットの表面は防滑性、耐熱性、非透水性を備える、という作用10が得られる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、上記作用1が得られるため、汚れ防止マットをトッププレートから剥がす際に、固着や破れが生じにくくなる。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、上記作用2が得られるため、電磁調理器の使用に際して不具合が生じる虞が減少する。
【0033】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用3が得られるため、トッププレートや鍋を傷つけにくくすると共に固着や破れを防止しつつ、温度センサの適切な作動を妨げにくい。
【0034】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、上記作用4が得られるため、温度センサの適切な作動を妨げない。
【0035】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用5が得られるため、トッププレートや鍋を傷つけにくくすると共に固着や破れを防止しつつ、温度センサの適切な作動を妨げにくい。
【0036】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、上記作用6が得られるため、温度センサの適切な作動を妨げない。
【0037】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、上記作用7が得られるため、所定の強度を備え、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性に優れた汚れ防止マットとなる。
【0038】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、上記作用8が得られるため、所定の強度を備え、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性に優れた汚れ防止マットとなる。
【0039】
請求項9記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、上記作用9が得られるため、使い勝手の良い汚れ防止マットとなる。
【0040】
請求項10記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、上記作用10が得られるため、使い勝手の良い汚れ防止マットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による電磁調理器用汚れ防止マットの概略形状を示した拡大斜視図である。
【
図2】
図1で示したII-IIラインの拡大断面図である。
【
図3】電磁調理器を組み込んだ一般の調理用加熱装置において、従来の電磁調理器用汚れ防止マットを使用した状態の外観形状を示した平面図である。
【
図4】
図3で示したIV-IVラインに対応した図であって、電磁調理器の作動原理を模式的に示した断面図及び従来の電磁調理器用汚れ防止マットの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、この発明の第1の実施の形態による電磁調理器用汚れ防止マットの概略形状を示した拡大斜視図であり、
図2は、
図1で示したII-IIラインの拡大断面図である。
【0043】
これらの図を参照して、汚れ防止マット1は、電磁調理器のトッププレートと電磁調理器によって加熱される鍋の底面との間に挟んで使用される電磁調理器用のものであって、磁力線の透過性を有する耐熱性のシート体2を円形に切り出したものよりなる。シート体2は、引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上240kN/m以下であって、磁力線の透過性及び耐熱性を有するガラス繊維を平織したものより構成されるシート状の素材の織布3と、織布3の両面の全面に形成され、非透水性及び耐熱性を有するシリコーンより構成されるコート材4a及び4bとからなる。尚、本明細書では、シリコーンとは、シリコーンレジン、シリコーンゴム及びそれらの両方を含むものを意味する。このように構成すると、所定の引裂き強度を備えるため、汚れ防止マット1をトッププレートから剥がす際に、汚れ防止マット1の固着や破れが生じにくくなる。尚、シート体2の引裂き強度の最大強度が15.0kN/m以上であれば、汚れ防止マット1のわずかな固着も生じにくく、更に好ましい。又、固着の観点からはシート体2の引裂き強度の最大強度の上限は特に限定されるものではないが、シート体2の引裂き強度はシート体2を構成するガラス繊維を含む織布3の厚みと繊維密度の大小により変わり、これらがトッププレートの温度を検知する温度センサの反応に影響を与えるので、シート体2の引裂き強度を240kN/m以下、より好ましくは210kN/m以下となるように設定すれば、温度センサの反応に与える影響をも低減できる。又、シート体2の引裂き強度が大きすぎると、汚れ防止マット1の製造時のシート体2の取扱い性や加工性が悪くなることがあり、又、必要以上の引裂き強度とすることは環境面にも資源の無駄遣いとなりかねないので好ましくない。尚、シート体2の外周端は全周に渡って、断面がコの字状となるようなバイアステープ等によって縁取られていてもよい。
【0044】
このようにシート状の素材を、ガラス繊維を織って形成した織布3とすると、汚れ防止マット1が所定の耐熱性と強度を備えつつ柔軟性も備えるため、所定の強度を備え、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性に優れた汚れ防止マット1となる。又、ガラス繊維としては、一般に流通する汎用のものを使用することもできるので、製造コストも低減することが可能となる。更に、コート材4a及び4bをシリコーンで構成すると、汚れ防止マット1の表面は防滑性、耐熱性、非透水性を備えるため、使い勝手の良い汚れ防止マット1となる。
【0045】
汚れ防止マット1の構成とその作用効果について更に詳述すると、汚れ防止マット1はその中心素材として織布3を用いているため、クッション性を有する。又、非透水性のコート材4a及び4bによって織布3の目が埋まり、汚れが織布3内部まで到達することが妨げられるため、汚れ防止マット1は全体が非透水性を有する。
【0046】
このように構成した汚れ防止マット1を、
図3及び
図4に示した汚れ防止マット51と置き換えて電磁調理器13a又は13bのトッププレート17上に配置し、その上に鍋19を置いて使用すると、汚れ防止マット51と同様に鍋19の底面に付着した汚れや料理のハネ等がトッププレート17上に直接付着することが汚れ防止マット1により防止される。
【0047】
尚、汚れ防止マット1は自身のクッション性により、使用の際にトッププレート17や鍋19を傷つける虞が無く、汚れ防止マット1自身が割れる虞も無いため、取扱いが容易である。又、ガラス繊維よりなる織布3はクッション性ばかりでなく、耐熱性や耐衝撃性にも優れた素材であるため、使用の際の信頼性が更に向上する。又、安価な素材でもあるため、コスト的に(経済性に)優れた汚れ防止マット1となる。
【0048】
更に、コート材4a及び4bは、耐熱性を有するため加熱調理の際にも融解等の危険がなく、鍋19の底面とトッププレート17に対して防滑性を発揮するため、より使い勝手が向上する。更に、コート材4a及び4bは撥水性を有するため、液体状の汚れが織布3内部まで浸透する虞が無いばかりでなく、容易に水洗いを行うことが出来るので、汚れ防止マット1のより衛生的な使用が可能となる。
【0049】
尚、シート体2の厚みは、0.74mm以下であることが好ましい。このように構成すると、トッププレート17の温度を検知する温度センサ18に与える影響が少なくなるため、電磁調理器13a又は13bの使用に際して不具合が生じる虞が減少する。
【0050】
又、シート状の素材である織布3は、厚みが0.02mm以上0.42mm以下であり、表面のコート材4aと裏面のコート材4bとの各々において、塗工量(乾燥後の重量)が5g/m2以上520g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以上であることがより好ましく、20g/m2以上150g/m2以下であることが更に好ましい。このように構成すると、クッション性と所定の引裂き強度とを兼ね備えると共に、トッププレート17の温度を検知する温度センサ18に与える影響が少なくなるため、トッププレート17や鍋19を傷つけにくくすると共に汚れ防止マット1の固着や破れを防止しつつ、温度センサ18の適切な作動を妨げにくい。又、特に塗工量を150g/m2以下とした場合には、コート材4a及び4bの無駄が省けるため、省コスト及び省資源な汚れ防止マット1となる。
【0051】
更に、シート体2は、コート材4a及び4bの塗工量(乾燥後の重量)の合計が、20g/m2以上570g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上300g/m2以下であることがより好ましい。このように構成すると、トッププレート17の温度を検知する温度センサ18に与える影響が更に少なくなるため、温度センサ18の適切な作動を妨げない。
【0052】
又、コート材は表面と裏面との各々において、塗工厚み(乾燥後の厚み)が2μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上90μm以下であることがより好ましい。このように構成すると、クッション性と所定の引裂き強度とを兼ね備えると共に、トッププレート17の温度を検知する温度センサ18に与える影響が少なくなるため、トッププレート17や鍋19を傷つけにくくすると共に汚れ防止マット1の固着や破れを防止しつつ、温度センサ18の適切な作動を妨げにくい。又、コート材4a及び4bの無駄が省けるため、省コスト及び省資源な汚れ防止マット1となる。
【0053】
更に、シート体は、コート材の塗工厚み(乾燥後の厚み)の合計が、4μm以上330μm以下であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上180μm以下であることがさらに好ましい。このように構成すると、トッププレート17の温度を検知する温度センサ18に与える影響が更に少なくなるため、温度センサ18の適切な作動を妨げない。
【0054】
尚、上記の第1の実施の形態では、汚れ防止マットは織布と、織布の両面に形成されたコート材とからなるものであったが、シリコーンのみからなるものであってもよい。
【0055】
又、上記の第1の実施の形態では、シート状の素材はガラス繊維を平織した織布であったが、ガラス繊維を一部に含むものであってもよく、又、磁力線の透過性及び耐熱性を有する他の繊維や、その他の素材で構成されてもよい。例えば、ガラス繊維よりなる不織布、カーボン繊維やセラミック繊維等よりなる織布又は不織布、紙であってもよい。
【0056】
更に、上記の第1の実施の形態では、コート材は織布の両面の全面に形成されていたが、一部にのみ形成されていてもよい。又、片面のみに形成されていてもよいし、無くてもよい。
【0057】
更に、上記の第1の実施の形態では、コート材はシリコーンより構成されるものであったが、シリコーンを一部に含むものであってもよく、非透水性を有する他の部材から構成されてもよい。コート材は磁力線の透過性を有するものが好ましいが、所定厚さ以上では非透過性のものであっても、所定厚さ以下とすることで透過性が確保出来るものであれば、同様に使用できる。
【0058】
更に、上記第1の実施の形態では、汚れ防止マットは円形形状となっているが、円形形状以外の、例えば矩形形状やドーナツ形状等の他の形状としても良い。尚、ドーナツ形状のように中央部に開口を形成した場合には、電磁調理器以外のガスコンロの五徳の下に設置することでガスコンロ用の汚れ防止マットとしても使用できる。したがって、本発明においては、ガスコンロ用の汚れ防止マットとして使用できるものであっても、電磁調理器用の汚れ防止マットとしても使用できるのであれば、本発明の範囲に含むものとする。
【0059】
更に、上記の第1の実施の形態では、シート体の厚み、シート状の素材の厚み、コート材の表裏各々の塗工量及び表裏の合計の塗工量が、それぞれ特定範囲内に設定されていることが好ましいとしていたが、シート体の引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上240kN/m以下であれば、特定範囲外に設定されていてもよい。
【実施例0060】
上記の汚れ防止マットの引裂き強度による固着現象への影響の度合い、及び、シート体の厚みによる温度センサへの影響の度合いを評価するために実験を行った。
【0061】
実験に際して、ガラス繊維の種類、表面及び裏面のコート材(シリコーン)の塗工量(乾燥後の重量)、引裂き強度、シート体の厚み並びに表面及び裏面のコート材(シリコーン)の塗工厚みを次の表1のように変えた汚れ防止マットの試料をそれぞれ準備した。尚、表1では詳細を後述する実験の結果(評価1及び評価2)も併せて示している。又、表1で示した各ガラス繊維の情報は、その次の表2の通りである。
【0062】
【0063】
【表2】
尚、表1における引裂き強度は、JIS K6252:2015(トラウザ形)定速伸長形に準じた試験方法で引張速度10cm/minに設定して測定したが、引裂き強度は最大値(最大強度)を読み取った値を指す。又、シート体厚みは、ダイヤルシックネスゲージを用いてJIS K 6250の10(寸法測定方法)に規定する方法によって試験片の引裂き付近の3箇所の厚さを測定して得られた値の算術平均である。又、表面及び裏面のコート材厚み(塗工厚み)は、シート体の断面が観察面となるようにシート体をエポキシ樹脂に埋め込みして研磨した面を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、シート体の表面及び裏面のコート材の厚みを、それぞれコート材の厚みに直交する方向(すなわち、シートの素材としてのガラス繊維の織布と平行する方向)に200μm間隔で10箇所測定して得られたコート材の厚みの値の算術平均である。尚、走査電子顕微鏡によるシート体断面観察時に用いた走査電子顕微鏡の装置名及び測定条件は以下のとおりである。また、走査電子顕微鏡による観察の前処理として、観察対象のシート体のエポキシ樹脂により樹脂包埋し、それを機械研磨した後、カーボン蒸着を行った。
装置名:日立ハイテク社製走査電子顕微鏡(型番:S-3700N)、測定条件:測定倍率150倍 加速電圧5kV、真空度10Pa、反射電子像取得
また、走査電子顕微鏡により得られたこれらの画像については、画像解析ソフト(ミタニコーポレーション社製WinRoof2018)を用いて、2点間距離計測の条件にて解析を行った。
【0064】
引裂き強度の測定について更に詳述すると、まず、各試料をズボン型(長方形の各試料において、一方の短手側端部の中央から長手方向に並行する切込みを入れた形状)に形成した試験片を準備する。次に、各試験片につき、切込みを起点とし、引き裂き方向をガラス繊維の折り目に対して45°の方向として、引き裂くのに要する力の最大値(最大強度)を測定する。尚、JIS K6252:2015(トラウザ形)における引裂き強さは、切込みを起点として引き裂くのに要する力の中央値をJIS K6274によって求め、試験片の厚さで除した値と定義されているが、ガラス繊維を主な構成要素とする上記各試料においては、引き裂きが始まるとガラス繊維の目が抜ける現象が発生して測定値が急激に低下し、適切な測定結果が得られない。そのため本実験では、引き裂くのに要する力の中央値ではなく、引き裂くのに要する力の最大値(最大強度)を、試験片の厚さで除した値を引裂き強度の値として採用している。
【0065】
次に、各試料の固着現象への影響(評価1)を評価した。
(1)評価1の測定に使用した機器等の仕様
マッフル炉:電気炉(ヤマト科学株式会社製:FO510)
結晶化ガラス:超耐熱結晶化ガラス:厚み3mm(日本電気硝子株式会社製:ネオセラムN-0)
(2)評価1の測定内容
まず、結晶化ガラスに各試料の検体を置いたものを、マッフル炉で300℃にて16時間加熱する。加熱が終了したら、常温に冷却した後に結晶化ガラスから検体を剥ぐ。この剥ぎ取り時に、検体が綺麗に剥がれた場合を◎、部分的に検体のシリコーンが結晶化ガラスに残ったが手指で擦れば簡単に除去できた場合を〇、検体のシリコーン及びガラス繊維が結晶化ガラスに残った(検体の引き裂きが生じた場合を含む)場合を×、と評価した。
(3)評価1の測定結果
評価1の測定結果から以下の内容が判明した。
【0066】
まず、実施例1~3において、実施例1及び2では検体が綺麗に剥がれるのに対し、引裂き強度が最も低い実施例3では、簡単に除去できる程度ではあるが部分的に検体のシリコーンが結晶化ガラスに残った。又、織布のガラス繊維と表面におけるコート材塗工量とを実施例3と共通としながらも、実施例3に比して裏面におけるコート材塗工量が少なく引裂き強度が低い比較例1では、検体のシリコーン及びガラス繊維が結晶化ガラスに残り、検体の引き裂きが生じる結果となった。尚、実施例1~3よりも引裂き強度が高い実施例4及び比較例2では、検体は綺麗に剥がれた。したがって、固着現象の有無及び程度は、シート体の引裂き強度の高低に起因していると言える。
【0067】
具体的には、シート体の引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上であれば、所定の引裂き強度を備えるため、汚れ防止マットをトッププレートから剥がす際に、汚れ防止マットの固着や破れが生じにくくなる。
【0068】
尚、引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上となるシート体において、汚れ防止マットがクッション性と所定の引裂き強度とを兼ね備えるには、素材である織布は厚みが0.02mm以上、コート材は表面と裏面との各々において塗工量が5g/m2以上であって、塗工量の合計が20g/m2以上であることが好ましい。
【0069】
ところで、上記試料においては、シート体厚みの値が最も大きい試料(比較例2)が、最も高い引裂き強度を備えているが、シート体厚みの増加は汚れ防止マットの断熱作用の高まりを引き起こす。尚、シート体の断熱作用が高まりすぎると鍋の温度が温度センサに伝わりにくくなる。すると、いくら引裂き強度が高く固着現象が生じにくいものであっても、断熱作用が高すぎて温度センサの適切な作動を妨げる汚れ防止マットは、使用に適さないと言える。
【0070】
そこで、各試料の使用状態における電磁調理器への影響(評価2)を測定した。
(4)評価2の測定に使用した機器等の仕様
電磁調理器:クッキングヒーター(三菱電機製:CS-G3205BDS)
鍋:専用天ぷら鍋:鍋径22cm(ウルシヤマ金属工業製:CS-100667)
油:日清サラダ油(日清オイリオグループ)
油温測定器:赤外線放射温度計(佐藤計量器製:SK-8700II)
(5)評価2の測定内容
各試料を鍋とトッププレートとの間にセットし、鍋にサラダ油200ccを入れて「揚げ物機能」で加熱する。「揚げ物機能」とは、加熱された鍋の熱をトッププレートを介して温度センサが検知し、この検知温度に基づいて加熱量を調整して油温をほぼ200℃に保つ機能を意味する。
【0071】
尚、使用した電磁調理器にあっては、安全に使用できる油量が500cc以上とされている。したがって、今回の油量200ccは適切な使用量ではないことになる。
【0072】
油温が300℃を超えず、電磁調理器が自動で予熱終了(加熱停止)した場合を〇、300℃を超えた場合を×、と評価した。
(6)評価2の測定結果
評価2の測定結果から以下の内容が判明した。
【0073】
実施例1~4及び比較例1においては、油温が300℃を超えずに電磁調理器が自動で加熱停止したのに対し、シート体の厚み及びコート材の塗工厚みの値が最も大きい比較例2では電磁調理器が自動で加熱停止せずに油温が300℃を超えた。これは、比較例2では揚げ物機能としての温度制御がなされず、安全上にも問題が生じることを意味する。したがって、電磁調理器の温度センサの適切な作動には、シート体の厚み及びコート材の塗工厚みが影響すると言える。尚、シート体の厚みは織布(シート状の素材)の厚み、コート材の表裏における塗工量及び塗工厚み並びに両面の合計塗工量及び合計塗工厚みによって定まるから、これらも温度センサの適切な作動に影響すると言える。
【0074】
具体的には、シート体の厚みが、0.74mm以下であれば、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が少なくなるため、電磁調理器の使用に際して不具合が生じる虞が減少する。
【0075】
又、コート材の塗工厚みの表面と裏面の合計が326.2μm以下であれば、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が更に少なくなるため、温度センサの適切な作動を妨げない。
【0076】
尚、厚みが0.74mm以下であるシート体において、所定の引裂き強度を備えつつ検知する温度センサに与える影響を少なくするには、引裂き強度の最大強度が5.0kN/m以上240kN/m以下であることが好ましい。又、素材である織布の厚みが0.42mm以下、コート材の塗工量が表面と裏面との各々において520g/m2以下であれば、クッション性と所定の引裂き強度とを兼ね備えると共に、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が少なくなるため、より好ましい。更に、コート材の塗工量の合計が570g/m2以下であれば、トッププレートの温度を検知する温度センサに与える影響が更に少なくなるため、更に好ましい。
【0077】
以上のことから、汚れ防止マットの引裂き強度は汚れ防止マットの固着現象に、汚れ防止マットのシート体の厚み、シート状の素材の厚み、コート材の表裏の塗工量及び塗工厚み並びに両面の合計塗工量及び合計塗工厚みは電磁調理器の作動状態に、それぞれ大きな影響を与える要素と言え、その適切な選択があってこそ、汚れ防止マットの存在が意味あるものとなる。
【0078】
すなわち、汚れ防止マットにおいては、シート体の引裂き強度の最大強度は、5.0kN/m以上240kN/m以下であることが好ましく、加えて、シート体の厚みが0.74mm以下であり、シート体のシート状の素材の厚みが0.02mm以上0.42mm以下であり、コート材は、表面と裏面との各々においての塗工量が5g/m2以上520g/m2以下であって、塗工量の合計が20g/m2以上570g/m2以下であり、表面と裏面との各々においての塗工厚みが2μm以上300μm以下であって、塗工厚みの合計が4μm以上330μm以下であれば、より好ましいと言える。尚、シート体の引裂き強度の最大強度が15.0kN/m以上であれば、固着現象そのものが生じにくく、更に好ましい汚れ防止マットとなる。