(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152798
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】血管内留置医療器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036540
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2022058439
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山口 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD54
4C160DD63
(57)【要約】
【課題】血管内の所望の部位をより短時間で閉塞することが可能な構造の血管内留置医療器具を提供する。
【解決手段】血管内留置医療器具100は、血管360内に留置されて当該血管360を閉塞する血管内留置医療器具であり、血管内留置医療器具100は、メッシュ状の本体部10と、本体部10内に配置されており吸水により膨張する吸水膨張材20と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具であって、
メッシュ状の本体部と、
前記本体部内に配置されており吸水により膨張する吸水膨張材と、
を備える血管内留置医療器具。
【請求項2】
前記吸水膨張材は、前記本体部の先端部と基端部とに対してそれぞれ固定されている請求項1に記載の血管内留置医療器具。
【請求項3】
前記吸水膨張材は、線材をコイル状に巻回した形状に形成されており、
前記線材の一端が前記本体部の先端部に対して固定されており、
前記線材の他端が前記本体部の基端部に対して固定されている請求項2に記載の血管内留置医療器具。
【請求項4】
前記本体部は、中空の円柱状に形成されており、
前記本体部の自然状態での外径をD、
コイル状の前記吸水膨張材の軸心から、前記線材の螺線状に延在する中心線までの距離をLとすると、
0.25D<L<0.41Dを満たす請求項3に記載の血管内留置医療器具。
【請求項5】
前記線材は、吸水性ポリマーにより構成されている請求項3又は4に記載の血管内留置医療器具。
【請求項6】
前記線材は、金属線と、前記金属線の周囲を被覆している吸水性ポリマーと、により構成されている請求項3又は4に記載の血管内留置医療器具。
【請求項7】
前記本体部の基端部には、当該血管内留置医療器具をプッシャワイヤに対して連結するための連結部材が設けられており、
前記吸水膨張材は、前記連結部材に対して固定されることによって、前記本体部の基端部に対して固定されている請求項2から6のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項8】
前記本体部の先端部には、マーカー部材が設けられており、
前記吸水膨張材は、前記マーカー部材に対して固定されることによって、前記本体部の先端部に対して固定されている請求項2から7のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内留置医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1の血管内留置医療器具(同文献には、閉塞デバイスと記載)は、メッシュ状の複数の本体籠(同文献には、メッシュキャリッジと記載)と、プッシャワイヤ(同文献には、コアワイヤと記載)が連結される連結部材(同文献には、マーカーと記載)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1に記載の血管内留置医療器具は、血管内の所望の部位を短時間で閉塞する観点から、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、血管内の所望の部位をより短時間で閉塞することが可能な構造の血管内留置医療器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具であって、
メッシュ状の本体部と、
前記本体部内に配置されており吸水により膨張する吸水膨張材と、
を備える血管内留置医療器具が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、血管内の所望の部位をより短時間で閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る血管内留置医療器具の側面図であり、血管内留置医療器具がガイドカテーテル内に収容された状態を示す。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は実施形態に係る血管内留置医療器具の側面図であり、このうち
図2(a)は吸水膨張材が膨張する前の状態を示し、
図2(b)は吸水膨張材が膨張した状態を示す。
【
図3】
図3(a)は
図2(a)に示すA-A線に沿った断面図であり、
図3(b)は
図2(b)に示すB-B線に沿った断面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は血管内留置医療器具を血管に留置する際の一連の動作を説明する側面図であり、このうち
図4(a)は血管内留置医療器具がガイドカテーテル内に収容された状態を示し、
図4(b)は血管内留置医療器具がガイドカテーテルによる拘束から解除された状態を示す。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)は実施形態における血管内留置医療器具の側面図であり、血管内に留置された状態を示す。
【
図6】
図6(a)は
図5(a)に示すA-A線に沿った断面図であり、
図6(b)は
図5(c)に示すB-B線に沿った断面図である。
【
図7】実施形態に係る血管内留置医療器具の軸方向に対して直交する断面内における、第1領域及び第2領域をそれぞれ示す図である。
【
図8】実施形態に係る血管内留置医療器具の軸方向に対して直交する断面内における、第3領域及び第4領域をそれぞれ示す図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は実施形態の変形例に係る血管内留置医療器具の側面図であり、このうち
図9(a)は吸水膨張材が膨張する前の状態を示し、
図9(b)は吸水膨張材が膨張した状態を示す。
【
図10】
図10(a)は
図9(a)に示すA-A線に沿った断面図であり、
図10(b)は
図9(b)に示すB-B線に沿った断面図である。
【0009】
以下、本発明の実施形態について、
図1から
図8を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図4(a)から
図5(c)において、本体部10の内部構造を見やすくするために、便宜的に当該本体部10の編み目を点線で図示している。
また、本発明の血管内留置医療器具100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要は無く、一つの構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0010】
図4(a)及び
図4(b)等に示すように、本実施形態に係る血管内留置医療器具100は、血管360内に留置されて当該血管360を閉塞する血管内留置医療器具である。
血管内留置医療器具100は、メッシュ状の本体部10と、本体部10内に配置されており吸水により膨張する吸水膨張材20と、を備える。
【0011】
血管内留置医療器具100は、後述するガイドカテーテル210に収容された状態で血管360内における所望の部位に搬送される。
血管内留置医療器具100の外径は、ガイドカテーテル210の内径よりも大きい寸法に設定されている。このため、ガイドカテーテル210に収容されている間は、血管内留置医療器具100は、当該血管内留置医療器具100の外径及び内径が相対的に小さい縮径状態(
図1参照)となっている。そして、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、血管内留置医療器具100は縮径状態から拡径状態(
図2(a)参照)へと弾性復元する。これにより、血管内留置医療器具100は、血管360内における所望の部位に留置される(固定される)。そして、拡径状態となった血管内留置医療器具100と、当該血管内留置医療器具100の内部及びその周囲に形成される血栓と、によって、当該血管360の所望の部位が閉塞される(
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)参照)。更に、血管内留置医療器具100の留置後、血管360の内壁において血管内留置医療器具100の周囲が器質化することにより、当該血管内留置医療器具100が血管360内における所望の部位に対してより強固に固定される。
なお、血管内留置医療器具100の縮径状態とは、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている状態を意味している。また、血管内留置医療器具100の拡径状態とは、少なくとも縮径状態よりも拡径した状態を意味しており、例えば、血管内留置医療器具100の自然状態である。
以下の説明において、血管内留置医療器具100の各部の形状の説明は、特に断りが無い限り、外力が付与されていない自然状態での形状を説明したものである。
【0012】
本実施形態によれば、血管内留置医療器具100は、メッシュ状の本体部10に加えて、本体部10内に配置されており、吸水により膨張する吸水膨張材20を更に備えている。
これにより、血管内留置医療器具100の内部及びその周囲に形成される血栓に加えて、吸水によって膨張する吸水膨張材20によっても血管360を閉塞することができる。よって、血管内留置医療器具100が吸水膨張材20を備えていない場合と比較して、より短時間で血管360内の所望の部位を閉塞することができる。
また、メッシュ状の本体部10が血管360の内壁に対して係止されるので、血管内留置医療器具100が、血流の圧力によって血管360に対して相対的に変位してしまうことを抑制できる。すなわち、血管内留置医療器具100が血管360内の所望の部位に留置された状態を維持することができるので、当該所望の部位をより確実に閉塞することができる。
このように、本実施形態によれば、より短時間で、血管360内の所望の部位をより確実に閉塞することができる。
【0013】
血管内留置医療器具100は、デリバリー装置200(
図1参照)によって血管360内における所望の部位に搬送及び留置される。なお、
図1、
図4(a)及び
図4(b)においては、ガイドカテーテル210を当該ガイドカテーテル210の軸方向に沿った断面図で示している。
デリバリー装置200は、例えば、血管内留置医療器具100が収容される上述のガイドカテーテル210と、血管内留置医療器具100と連結されるプッシャワイヤ220と、を備えている。
ガイドカテーテル210は、例えば、一方向に長尺な管状に形成されている。ガイドカテーテル210の基端部には不図示の操作部が設けられている。
ガイドカテーテル210は、血管内留置医療器具100に対して軸方向に摺動させることによって抜去可能に当該血管内留置医療器具100に外挿される。
ガイドカテーテル210に収容されている間は、血管内留置医療器具100はガイドカテーテル210によって外周囲を拘束され、ガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている。
プッシャワイヤ220は、例えば、一方向に長尺なワイヤ部材によって構成されている。プッシャワイヤ220の先端部221には、例えば、後述する連結部材61に対して螺合によって着脱可能に装着される装着部222が設けられている。本実施形態の場合、装着部222の外周面にはねじ山が形成されており、装着部222は雄ねじ形状となっている。装着部222を介して、プッシャワイヤ220の先端部221は本体部10の基端部12と連結される。血管内留置医療器具100が連結されたプッシャワイヤ220をガイドカテーテル210内に挿入し、基端側から先端側へと押し込んでいくことによって、血管内留置医療器具100をガイドカテーテル210における所望の部位まで搬送することができる。
【0014】
ガイドカテーテル210の材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレンなどの摩擦抵抗が低いフッ素系樹脂であることが好ましい。これにより、生体器官内を移動する際において、ガイドカテーテル210の、血管360の内壁に対する摺動抵抗を低減することができる。
プッシャワイヤ220の材料は、特に限定されないが、例えば、ニチノールなどの超弾性合金であることが挙げられる。
【0015】
例えば、ガイドカテーテル210の外周面には、親水性剤がコーティングされていることも好ましい。これにより、血管360の内壁に対するガイドカテーテル210の摺動抵抗を低減することができ、ガイドカテーテル210の操作性が良好となる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の場合、本体部10は、例えば、中空の円柱状に形成されている。より詳細には、本体部10の全体は、例えば、複数本のワイヤ部材によって中空の円柱状に編組されている。
本体部10を構成するワイヤ部材の材料は、特に限定されないが、例えば、ニチノールなどの超弾性合金であることが挙げられる。ただし、本体部10を構成するワイヤ部材の材料は、例えば、樹脂材料であってもよい。
本体部10の外径及び内径の各々は、例えば、当該本体部10の軸方向における位置にかかわらず略一定である。ただし、本発明において、本体部10の内径及び外径の各々は、当該本体部10の軸方向において変化していてもよい。より詳細には、例えば、本体部10は、例えば、相対的に外径及び内径の大きい大径部と、相対的に外径及び内径の小さい括れ部(小径部)と、をそれぞれ複数含んでいてもよい。この場合、本体部10の軸方向において、1つの大径部と、1つの括れ部とが、先端側から順に交互に配置されている。そして、本体部10の軸方向において、各大径部は互いに離間して配置されている。
【0017】
以下の説明において、本体部10の周方向を単に周方向と称し、本体部10の軸方向を単に軸方向と称し、本体部10の径方向を単に径方向と称する場合がある。また、先基端方向とは、本体部10の長手方向である。軸心とは、本体部10の長手方向に沿った中心軸を意味する。
【0018】
上述のように、血管内留置医療器具100を血管360内における所望の部位に搬送する際には、血管内留置医療器具100はガイドカテーテル210内に収容される。この状態では、本体部10は当該ガイドカテーテル210によって拘束され、ガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている(縮径状態となっている)(
図1及び
図4(a)参照)とともに、軸方向外側に伸長している。そして、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、本体部10を構成しているワイヤ部材の弾性復元力及び後述するコイル状の吸水膨張材20の弾性復元力によって、当該本体部10は自然状態(
図4(b)参照)に弾性復元する。より詳細には、縮径状態から自然状態に弾性復元力する際に、本体部10は、径方向外側に拡径する一方で、軸方向内側に収縮する。
【0019】
図1に示すように、吸水膨張材20は、例えば、本体部10の先端部11と基端部12とに対してそれぞれ固定されている。
これにより、吸水膨張材20は、軸方向における本体部10の伸縮に良好に追従することができる。
【0020】
より詳細には、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、吸水膨張材20は、例えば、線材21をコイル状に巻回した形状に形成されている。
線材21の一端22が本体部10の先端部11に対して固定されており、線材21の他端23が本体部10の基端部12に対して固定されている。
これにより、吸水膨張材20は、コイル状の線材21の軸心方向において良好に伸縮することができる。よって、吸水膨張材20は、軸方向における本体部10の伸縮により良好に追従することができる。
また、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、吸水膨張材20が速やかに径方向外側に拡径するようにできる。
更には、吸水膨張材20において、血流と接触する接触面積を十分に確保することがでるので、当該吸水膨張材20が、血液中の水分を速やかに吸水するとともに十分に膨張するようにできる。よって、より短時間で、血管360内の所望の部位をより確実に閉塞することができる。
【0021】
より詳細には、線材21は、例えば、先端部21aと、基端部21bと、先端部21aと基端部21bとの間に位置する中間部21cと、を含む。先端部21aの先端が本体部10の先端部11に対して固定されており、基端部21bの基端が本体部10の基端部12に対して固定されている。
先端部21a及び基端部21bの各々は、コイル状の吸水膨張材20の軸心AX1(
図2(a)及び
図2(b)参照)に沿って直線状に延在している。
中間部21cは、螺旋状に巻回されており、複数の巻回部を有する。各巻回部は、線材21を一周巻回することにより形成されている部位である。中間部21cにおける各巻回部の内径は、互いに等しいことが好ましい。同様に、中間部21cにおける各巻回部は、外径は互いに等しいことが好ましい。また、複数の巻回部は、一例として、等間隔ピッチで配置されている。
中間部21cは、本体部10と同軸に配置されている。すなわち、吸水膨張材20は、本体部10と同軸に配置されている。
中間部21cの外径は、例えば、本体部10の内径よりも小さい寸法に設定されており、中間部21cの外周縁(吸水膨張材20の外周縁)と本体部10の内周面との間には間隙41が形成されている。
図5(a)に示すように、血管内留置医療器具100を留置した直後においては、血流は当該間隙41や中間部21cの内部を通過可能となっている。
【0022】
本実施形態の場合、線材21は、例えば、吸水性ポリマーにより構成されている。
これにより、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、線材21が血液中の水分を吸水することによって、当該吸水膨張材20の線径が増大する。より詳細には、吸水膨張材20の太さは、線材21の中心線C1を基準として、当該線材21の径方向外側に略均等に増大する。この結果、膨張後の吸水膨張材20の内径、及び、膨張後の吸水膨張材20の外周縁と本体部10の内周面との間隙41の各々が小さくなるようにできるので、吸水膨張材20の内腔及び間隙41において血栓の成長が促進される。
本実施形態の場合、完全に膨張した吸水膨張材20の線径(
図3(b)に示すD4)は、例えば、膨張前の吸水膨張材20の線径(
図3(a)に示すD3)の1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは当該線径D3の2倍以上であることが好ましい。
【0023】
吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸(アクリル酸とビニルアルコールとの共重合体や、アクリル酸ナトリウムの重合体など)、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリラート及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等のポリオールの架橋重合体、又は多糖系のヒドロゲル(デンプンとアクリロニトリルとのグラフト共重合体のアルカリ加水分解物など)等を用いることができる。
【0024】
ここで、本実施形態の場合、
図1に示すように、本体部10の基端部12には、血管内留置医療器具100をプッシャワイヤ220に対して連結するための連結部材61が設けられており、本体部10の先端部11には、マーカー部材30が設けられている。
そして、吸水膨張材20は、連結部材61に対して固定されることによって、本体部10の基端部12に対して固定されている。
このような構成によれば、吸水膨張材20は、メッシュ状の本体部10の基端部12に対して、直に固定されるのではなく当該基端部12に設けられている連結部材61を介して固定される。よって、吸水膨張材20を本体部10の基端部12に対して良好に固定することができる。
同様に、吸水膨張材20は、マーカー部材30に対して固定されることによって、本体部10の先端部11に対して固定されている。
このような構成によれば、吸水膨張材20は、メッシュ状の本体部10の先端部11に対して、直に固定されるのではなく当該先端部11に設けられているマーカー部材30を介して固定される。よって、吸水膨張材20を本体部10の先端部11に対して良好に固定することができる。
また、本実施形態の場合、連結部材61及びマーカー部材30の各々は、本体部10と同軸に配置されている。そして、本体部10が軸方向に伸長する際には、連結部材61とマーカー部材30とは、本体部10と同軸に配置された状態を維持しつつ、軸方向外側(軸方向において互いに遠ざかる方向)に移動する。同様に、本体部10が軸方向に収縮する際には、連結部材61とマーカー部材30とは、本体部10と同軸に配置された状態を維持しつつ、軸方向内側(軸方向において互いに近づく方向)に移動する。
このため、上述のように吸水膨張材20が、連結部材61及びマーカー部材30を介して、本体部10の先端部11及び基端部12に対して良好に固定されていることによって、当該吸水膨張材20は、本体部10と同軸に配置された状態を維持しつつ、軸方向における本体部10の伸縮に良好に追従することができる。
より詳細には、線材21において、基端部21b(線材21の他端23)が、連結部材61に対して固定されており、先端部21a(線材21の一端22)が、マーカー部材30に対して固定されている。そして、線材21における先端部21aと基端部21bとの間に位置する部分であり、複数の巻回部を有する中間部21cは、本体部10と同軸に配置された状態を維持しつつ、当該本体部10に追従して軸方向に良好に伸縮する。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、連結部材61は、例えば、本体部10の基端部12の中心(軸中心)に配置されている。連結部材61は、例えば、本体部10の基端面15から基端側に向けて突出している。連結部材61は、例えば、本体部10の基端面15の中心部に配置されている。連結部材61は、例えば、略円筒状に形成されており、上述のように本体部10と同軸に配置されている。
連結部材61は、例えば、プッシャワイヤ220の装着部222に対して着脱可能に螺合する雌ねじ形状のものである。連結部材61が装着部222に対して螺合することによって、本体部10はプッシャワイヤ220の先端部221に対して連結される。すなわち、連結部材61を介して、血管内留置医療器具100とプッシャワイヤ220とが互いに連結されている。また、連結部材61と装着部222との螺合を解除することによって、血管内留置医療器具100とプッシャワイヤ220との連結を解除することができる。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、マーカー部材30は、例えば、本体部10の先端面14から先端側に向けて突出している。マーカー部材30は、例えば、本体部10の先端面14の中心部に配置されている。マーカー部材30は、例えば、円筒状に形成されており、上述のように本体部10と同軸に配置されている。
マーカー部材30は、例えば、X線不透過性の金属材料によって構成されている。血管360内において、マーカー部材30によって、本体部10の先端部11の位置を認識することができる。
【0027】
ここで、軸方向に対して直交する断面内における吸水膨張材20の好ましい配置について、
図7を用いて説明する。なお、
図7においては、以下に説明する第1領域R1を左上がりのハッチングで示し、第2領域R2を右上がりのハッチングで示している。また、
図7においては、本体部10のワイヤ部材を破線で示している。また、
図7は
図2(a)のA-A線に沿った断面を示している。
コイル状の吸水膨張材20が膨張することによって本体部10の内部空間の全域がバランス良く埋まるようにするためには、本体部10の内部空間のうち、コイル状の吸水膨張材20の内側の空間(
図7に示す第1領域R1:正確には後述する中心線C1よりも内側の空間)の体積と、吸水膨張材20の外側の空間(
図7に示す第2領域R2:正確には後述する中心線C1よりも外側の空間)の体積と、が略等しいことが好ましい。
本体部10の自然状態での外径をD、コイル状の吸水膨張材20の軸心AX1から吸水膨張材20を構成する線材21の螺線状に延在する中心線C1までの距離をLとすると、第1領域R1の断面積と第2領域R2の断面積とが互いに等しくなるようなLは、L=(1/8
1/2)・D≒0.35Dとなる。
そのようなLを間に挟むLの上限と下限について、第2領域R2の断面積:第1領域R1の断面積=2:1となるようなLの値をLの下限値とし、第2領域R2の断面積:第1領域R1の断面積=1:2となるようなLの値をLの上限値とすると、(1/12
1/2)・D≦L≦(1/6
1/2)・Dとなるので、およそ、0.29D≦L≦0.41Dとなる。
Lの下限については、0.29Dよりもやや小さい0.25Dを採用すると、0.25D≦L≦0.41Dとなる。
すなわち、
図7に示すように、本体部10の自然状態での外径をD、コイル状の吸水膨張材20の軸心AX1から、線材21の螺線状に延在する中心線C1までの距離をLとすると、0.25D<L<0.41Dを満たすことが好ましい。なお、
図3(a)、
図3(b)、
図6(a)、
図6(b)、
図7及び
図8において、中心線C1を一点鎖線で示しており、本体部10の外周面17および内周面の各々を二点鎖線で示している。
このような構成によれば、軸方向に対して直交する断面(径方向に沿った断面)(
図7)において、第1領域R1と第2領域R2とを、膨張した吸水膨張材20によってバランス良く埋めることができる。よって、本体部10の内部空間において、第1領域R1と第2領域R2とのそれぞれにおいて血栓320がバランス良く成長するようにできる。
【0028】
上記のように、第2領域R2の断面積:第1領域R1の断面積=2:1となるようなLの値をLの下限値とするならば、0.29D≦Lとなるので、好ましくは、0.29D≦Lである。
【0029】
更に、軸方向に対して直交する断面内における吸水膨張材20のより好ましい配置について説明する。
第2領域R2の断面積:第1領域R1の断面積=3:2となるようなLの値をLの下限値とし、第2領域R2の断面積:第1領域R1の断面積=2:3となるようなLの値をLの上限値とすると、(1/10
1/2)・D≦L≦{(3
1/2)/(20
1/2)}・Dとなるので、およそ0.32D≦L≦0.39Dとなる。
すなわち、本体部10の自然状態での外径をD、コイル状の吸水膨張材20の軸心AX1から、線材21の螺線状に延在する中心線C1までの距離をLとすると、0.32D≦L≦0.39Dを満たすことがより好ましい。
このようにすることによって、軸方向に対して直交する断面(
図7)において、第1領域R1と第2領域R2とを、膨張した吸水膨張材20によって、より一層バランス良く埋めることができる。
なお、Lは、0.35Dになるべく近い値であることが好ましい。
【0030】
上記においては、本体部10の自然状態での外径DとLとの好ましい関係式を説明したが、以下では、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径dとLとの好ましい関係式について、
図8を用いて説明する。なお、
図8においては、以下に説明する第3領域R3を左上がりのハッチングで示し、第4領域R4を右上がりのハッチングで示している。また、
図8においては、本体部10のワイヤ部材を破線で示している。また、
図8は
図5(a)のA-A線に沿った断面を示している。
血管内留置医療器具100は、製品モデル毎に、留置可能な血管360の内径(適用血管径)に幅を持たせる場合がある。一例として、留置可能な血管360の内径を4mm以上6mm以下と設定する場合、内径が6mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置した状態と内径が4mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置した状態との両方で適切となるLの値を設定することが好ましい。このため、内径が6mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置したときにベストな状態になるよう設計する場合と、内径が4mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置したときにベストな状態になるよう設計する場合と、の両方の数値範囲を含むようなLの数値範囲を考える。
血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径をdとする。
そして、6mmの血管360に留置したときにL=0.25dになるよう設計した場合に、4mmの血管360に留置しても0.25d≦L≦0.41dを満たし、4mmの血管360に留置したときにL=0.25dになるよう設計した場合に、6mmの血管360に留置しても0.25d≦L≦0.41dを満たし、6mmの血管360に留置したときにL=0.41dになるよう設計した場合に、4mmの血管360に留置しても0.25d≦L≦0.41dを満たし、4mmの血管360に留置したときにL=0.41dになるよう設計した場合に、6mmの血管360に留置しても0.25d≦L≦0.41dを満たすような、Lの範囲が存在するかを考える。
すると、4mmの血管360に留置したときにL=0.25dになるよう設計した場合、すなわちL=1mmのときに、6mmの血管360に対するLの割合は、1/6=約0.17となり、0.25d≦L≦0.41dには収まらない。また、6mmの血管360に留置したときにL=0.41dになるよう設計した場合、すなわちL=2.46mmのときに、4mmの血管360に対するLの割合は、2.46/4=約0.62となり、やはり、0.25d≦L≦0.41dには収まらない。
そこで、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径dとLとの好ましい関係は、例えば、0.17dよりもやや小さい0.1dをLの下限とし、0.62dよりもやや大きい0.7dをLの上限とし、0.1d≦L≦0.7dとすることができる。
すなわち、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径をdとすると、0.1d≦L≦0.7dを満たすことにより、内径が6mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置した状態と内径が4mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置した状態との両方で適切となるLの値に設定することができ、軸方向に対して直交する断面(
図8)において、第3領域R3と第4領域R4とを、膨張した吸水膨張材20によって、バランス良く埋めることができる。
ここで、第3領域R3は、本体部10の内部空間のうち、コイル状の吸水膨張材20の内側の空間(正確には中心線C1よりも内側の空間)である。第4領域R4は、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内部空間のうち、吸水膨張材20の外側の空間(正確には中心線C1よりも外側の空間)である。
【0031】
更に、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径dとLとのより好ましい関係式について説明する。
6mmの血管360に留置したときにL=0.32dになるよう設計した場合に、4mmの血管360に留置しても0.32d≦L≦0.39dを満たし、4mmの血管360に留置したときにL=0.32dになるよう設計した場合に、6mmの血管360に留置しても0.32d≦L≦0.39dを満たし、6mmの血管360に留置したときにL=0.39dになるよう設計した場合に、4mmの血管360に留置しても0.32d≦L≦0.39dを満たし、4mmの血管360に留置したときにL=0.39dになるよう設計した場合に、6mmの血管360に留置しても0.32d≦L≦0.39dを満たすような、Lの範囲が存在するかを考える。
すると、6mmの血管360に留置したときにL=0.32dになるよう設計した場合、すなわちL=1.92mmのときに、4mmの血管360に対するLの割合は、1.92/4=約0.48となり、0.32d≦L≦0.39dには収まらない。また、4mmの血管360に留置したときにL=0.32dになるよう設計した場合、すなわちL=1.28mmのときに、6mmの血管360に対するLの割合は、1.28/6=約0.21となり、0.32d≦L≦0.39dには収まらない。また、6mmの血管360に留置したときにL=0.39dになるよう設計した場合、すなわちL=2.34mmのときに、4mmの血管360に対するLの割合は、2.34/4=約0.59となり、0.32d≦L≦0.39dには収まらない。また、4mmの血管360に留置したときにL=0.39dになるよう設計した場合、すなわちL=1.56mmのときに、6mmの血管360に対するLの割合は、1.56/6=約0.26となり、0.32d≦L≦0.39dには収まらない。
そこで、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径dとLとのより好ましい関係は、例えば、0.21dよりもやや小さい0.2dをLの下限とし、0.59dよりもやや大きい0.6dをLの上限とし、0.2d≦L≦0.6dとすることができる。
すなわち、血管内留置医療器具100が留置される血管360の内径をdとすると、0.1d≦L≦0.7dを満たすことにより、内径が6mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置した状態と内径が4mmの血管360に血管内留置医療器具100を留置した状態との両方でより適切となるLの値に設定することができ、軸方向に対して直交する断面(
図8)において、第3領域R3と第4領域R4とを、膨張した吸水膨張材20によって、より一層バランス良く埋めることができる。
【0032】
以下、
図4(a)から
図6(b)を用いて、血管内留置医療器具100を血管360内の所望の部位に留置する際の動作の一例を説明する。なお、
図5(a)及び
図5(b)において、血流の流れを矢印で示している。
なお、予め血管360内にガイドカテーテル210を案内する不図示のガイドワイヤが挿入されている状態から説明する。
先ず、ガイドカテーテル210を、ガイドワイヤに沿って導入する。より詳細にはガイドカテーテル210をガイドワイヤに外挿し、ガイドカテーテル210をガイドワイヤの軸方向に沿って基端側から先端側に摺動させながら、ガイドカテーテル210の先端部211を血管360内における所望の部位まで送り込む。ガイドカテーテル210の先端部211が当該所望の部位に到達したら、ガイドワイヤを抜去する。
続いて、血管内留置医療器具100が連結されたプッシャワイヤ220を、ガイドカテーテル210内に挿入し、基端側から先端側へと押し込んでいく。これにより、血管内留置医療器具100をガイドカテーテル210の内周面に沿って基端側から先端側に摺動させながら、当該血管内留置医療器具100をガイドカテーテル210の先端部211まで送り込む。
次に、この状態で血管内留置医療器具100を血管360内における所望の部位に留置する。より詳細には、ガイドカテーテル210を血管内留置医療器具100に対して相対的に後退させることによって、当該ガイドカテーテル210を血管内留置医療器具100から取り外す。これにより、ガイドカテーテル210の内壁によって拘束されていた血管内留置医療器具100が、弾性復元力により、自然状態へと復元されて拡径する。なお、ガイドカテーテル210を後退させる際において、血管内留置医療器具100の基端部(本体部10の基端部12)と連結されているプッシャワイヤ220によって、血管内留置医療器具100の後退が規制される。これにより、本体部10及びコイル状の吸水膨張材20の各々は、その弾性復元力により、自然状態の形状(
図4(b)参照)、もしくは当該自然状態に近い形状に復元する。そして、連結部材61に対するプッシャワイヤ220の連結を解除して、プッシャワイヤ220及びガイドカテーテル210をそれぞれ血管360から抜去する。
このようにして、血管内留置医療器具100は、血管360内における所望の部位に留置される。なお、血管360において、血管内留置医療器具100は、一例として、当該血管内留置医療器具100の先端側が血流の下流側、基端側が血流の上流側に配置された姿勢で留置される。そして、膨張した吸水膨張材20と、本体部10内及び本体部10の周囲に形成される血栓と、によって、血管360内の所望の部位が閉塞され、血流が遮断される。
より詳細には、
図5(a)に示すように、血管内留置医療器具100を留置した直後においては、血流は、本体部10の内周面と膨張する前の吸水膨張材20の外周縁との間隙41や、当該吸水膨張材20の内腔を介して、血管内留置医療器具100の内部を基端側から先端側に通過する。
続いて、
図5(b)に示すように、時間の経過とともに、吸水膨張材20は、血液中の水分を吸水し徐々に膨張する。より詳細には、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、膨張する前と比較して、吸水膨張材20の線径の全体が徐々に太くなることによって、吸水膨張材20の内径及び間隙41の各々が徐々に狭くなる。これにより、吸水膨張材20の内腔及び間隙41において血栓の成長が促進される。また、血管内留置医療器具100が血流から受ける圧力が徐々に高まるようにできる(血管内留置医療器具100が血流から急に大きな圧力を受けないようにできる)ので、血管360に対する血管内留置医療器具100の相対的な変位が抑制される。
そして、
図5(c)に示すように,本体部10、吸水膨張材20、本体部10の外周面17と血管360の内壁との間などに血栓320が形成されて、血管360における血管内留置医療器具100の配置領域が閉塞される。すなわち、血管内留置医療器具100によって、基端側から先端側への血流が遮断される。
図5(c)に示す例では、本体部10の基端面15と、吸水膨張材20の内腔及び間隙41と、本体部10の外周面17と血管360の内壁との間と、にそれぞれ血栓が形成されている。
【0033】
<変形例>
次に、
図9(a)から
図10(b)を用いて実施形態の変形例を説明する。なお、
図9(a)及び
図9(b)において、本体部10の内部構造を見やすくするために、便宜的に当該本体部10の編み目を点線で図示している。また、
図9(a)及び
図9(b)において、金属線26を二点鎖線で示している。また、
図10(a)及び
図10(b)において、本体部10の外周面17及び内周面をそれぞれ二点鎖線で示している。
図9(a)から
図10(b)に示すように、本変形例の場合、吸水膨張材20の線材21は、金属線26と、金属線26の周囲を被覆している吸水性ポリマー27と、により構成されている点において、上記の実施形態と相違しており、その他の点においては上記の実施形態と同様に構成されている。
このような構成によっても、
図9(b)及び
図10(b)に示すように、吸水性ポリマー27が血液中の水分を吸水することによって、当該吸水膨張材20の線径が太くなるようにできる。よって、膨張後の吸水膨張材20の内径、及び、膨張後の吸水膨張材20の外周縁と本体部10の内周面との間隙41の各々が小さくなるようにできるので、吸水膨張材20の内腔及び間隙41において血栓の成長が促進される。
【0034】
本変形例の場合も、吸水膨張材20は、例えば、コイル状に巻回した形状に形成されている。
より詳細には、金属線26は、例えば、先端部26aと、基端部26bと、先端部26aと基端部26bとの間に位置する中間部26cと、を含む。先端部26aの先端が本体部10の先端部11に対して固定されており、基端部26bの基端が本体部10の基端部12に対して固定されている。
先端部26a及び基端部26bの各々は、コイル状の吸水膨張材20の軸心AX1(
図9(a)及び
図9(b)参照)に沿って直線状に延在している。
中間部26cは、螺旋状に巻回されている。中間部26cにおける各巻回部の内径及び外径は、互いに等しいことが好ましい。また、中間部26cは、一例として、等間隔ピッチで形成されている。
中間部26cは、例えば、本体部10と同軸に配置されている。すなわち、吸水膨張材20は、本体部10と同軸に配置されている。
また、本実施形態の場合、吸水性ポリマー27は、金属線26の外周面の全体を被覆している。
【0035】
なお、本発明に係る血管内留置医療器具100は、生体適合性を有し、通常の生物学的作用の一過程において無害な化合物に分解される生分解性材料によって構成されていてもよい。このような生分解性材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸(PGA)、コラーゲンもしくはその他の結合タンパク質や天然材料、ポリカプロラクトン、ヒアルロン酸、接着タンパク質、これらの材料の共重合体、複合材料および組み合わせならびに他の生分解性ポリマーの組み合わせ、あるいは生分解性の金属材料などが挙げられる。より詳細には、本体部10は、例えば、ポリ乳酸とポリグリコール酸との共重合体(PLGA)、マグネシウム合金等から形成されるのが好ましい。また、吸水膨張材20(線材21)は、例えば、ポリ乳酸とポリエチレングリコールとの共重合体、ヒアルロン酸などの多糖類やその誘導体、ポリアスパラギン酸などのポリペプチド等から形成されるのが好ましい。また、マーカー部材30は、例えば、上述した生分解性材料の少なくとも何れか一と、硫酸バリウム、三酸化ビスマス、タングステン、タングステンカーバイト等の高密度の生体親和性放射線不透過フィラー材と、の複合材料等から形成されるのが好ましい。
【0036】
以上、図面を参照して実施形態及び変形例を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0037】
例えば、上記においては、血管360において、血管内留置医療器具100が、当該血管内留置医療器具100の先端側が血流の下流側、基端側が血流の上流側に配置された姿勢で留置される例を説明した。ただし、本発明において、血管内留置医療器具100が留置される際の姿勢はこの例に限定されず、血管内留置医療器具100は、例えば、当該血管内留置医療器具100の先端側が血流の上流側、基端側が血流の下流側に配置された姿勢で留置されてもよい。
このような場合でも、血管内留置医療器具100と、血管内留置医療器具100の内部及びその周囲に形成される血栓と、によって、血管360内の所望の部位を閉塞し、血流を遮断することができる。
【0038】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具であって、
メッシュ状の本体部と、
前記本体部内に配置されており吸水により膨張する吸水膨張材と、
を備える血管内留置医療器具。
(2)前記吸水膨張材は、前記本体部の先端部と基端部とに対してそれぞれ固定されている(1)に記載の血管内留置医療器具。
(3)前記吸水膨張材は、線材をコイル状に巻回した形状に形成されており、
前記線材の一端が前記本体部の先端部に対して固定されており、
前記線材の他端が前記本体部の基端部に対して固定されている(2)に記載の血管内留置医療器具。
(4)前記本体部は、中空の円柱状に形成されており、
前記本体部の自然状態での外径をD、
コイル状の前記吸水膨張材の軸心から、前記線材の螺線状に延在する中心線までの距離をLとすると、
0.25D<L<0.41Dを満たす(3)に記載の血管内留置医療器具。
(5)前記線材は、吸水性ポリマーにより構成されている(3)又は(4)に記載の血管内留置医療器具。
(6)前記線材は、金属線と、前記金属線の周囲を被覆している吸水性ポリマーと、により構成されている(3)又は(4)に記載の血管内留置医療器具。
(7)前記本体部の基端部には、当該血管内留置医療器具をプッシャワイヤに対して連結するための連結部材が設けられており、
前記吸水膨張材は、前記連結部材に対して固定されることによって、前記本体部の基端部に対して固定されている(2)から(6)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(8)前記本体部の先端部には、マーカー部材が設けられており、
前記吸水膨張材は、前記マーカー部材に対して固定されることによって、前記本体部の先端部に対して固定されている(2)から(7)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【符号の説明】
【0039】
10 本体部
11 先端部
12 基端部
14 先端面
15 基端面
17 外周面
20 吸水膨張材
21 線材
21a 先端部
21b 基端部
21c 中間部
22 一端
23 他端
26 金属線
26a 先端部
26b 基端部
26c 中間部
27 吸水性ポリマー
30 マーカー部材
41 間隙
61 連結部材
100 血管内留置医療器具
200 デリバリー装置
210 ガイドカテーテル
211 先端部
220 プッシャワイヤ
221 先端部
222 装着部
320 血栓
360 血管
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
R4 第4領域
AX1 軸心
D 本体部の自然状態での外径
d 血管内留置医療器具が留置される血管の内径
L コイル状の吸水膨張材の軸心から吸水膨張材を構成する線材の螺線状に延在する中心線までの距離
D3 膨張前の吸水膨張材の線径
D4 完全に膨張した吸水膨張材の線径