(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152833
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】光学部材、光学部材形成材料、その製造方法および光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/04 20060101AFI20231005BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20231005BHJP
C08G 64/00 20060101ALI20231005BHJP
C07C 39/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02B1/04
C08G63/00
C08G64/00
C07C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043570
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022059596
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 一宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正幸
【テーマコード(参考)】
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB92
4J029AA03
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC01
4J029AE04
4J029BB12B
4J029BF12
4J029BF20
4J029BF26
4J029CB06A
4J029CC06A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材を提供する。
【解決手段】下記式(i)で表される構造を含む、光学部材。R
1は水素原子またはアリール基であり、aは0~5の整数、bは0~4の整数、R
2は置換基であり、(a+b)が2以上の場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なってもよく、cおよびdは独立に0~6の整数、R
3はアルキレン基であり、(c+d)が2以上の場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なってもよく、eおよびfは独立に1~5の整数、gおよびhは独立に0~4の整数、(e+g)は1~5、(f+h)は1~5であり、R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上の場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なってもよい。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(i)で表される構造を含む、光学部材。
【化1】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
下記式(1)で表される化合物に基づく構成単位を有する樹脂を含む、光学部材。
【化2】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
【請求項3】
前記樹脂が、多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂である請求項2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂である請求項2に記載の光学部材。
【請求項5】
下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物の硬化物を含む、光学部材。
【化3】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
Xは、重合性官能基もしくは反応性官能基を含む1価基、または水素原子であり、(e+f)個のXは同一でも異なっていてもよく、(e+f)個のXのうち少なくとも1個は前記1価基であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
【請求項6】
下記式(1)で表される化合物に基づく構成単位を有する樹脂を含む、光学部材形成材料。
【化4】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
【請求項7】
前記樹脂が、多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂である請求項6に記載の光学部材形成材料。
【請求項8】
前記樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂である請求項6に記載の光学部材形成材料。
【請求項9】
下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物である、光学部材形成材料。
【化5】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
Xは、重合性官能基もしくは反応性官能基を含む1価基、または水素原子であり、(e+f)個のXは同一でも異なっていてもよく、(e+f)個のXのうち少なくとも1個は前記1価基であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか1項に記載の光学部材形成材料を製造する方法であって、
モノマー成分の少なくとも一部に前記式(1)で表される化合物を用いて前記樹脂を製造する工程を有する、光学部材形成材料の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の光学部材形成材料を製造する方法であって、
前記式(2)中のOXが全てOHである化合物の前記OHの少なくとも一部に、重合性官能基または反応性官能基を含む1価基を付加して前記式(2)で表される化合物を製造する工程を有する、光学部材形成材料の製造方法。
【請求項12】
請求項6~8のいずれか1項に記載の光学部材形成材料を成形する、光学部材の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の光学部材形成材料を硬化する、光学部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、光学部材形成材料、その製造方法および光学部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率樹脂は、レンズ、タッチパネル用フィルム等の各種の光学部材に用いられる。高屈折率樹脂としては、フルオレン骨格を有するモノマーを用いた樹脂が知られている(例えば特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5513825号公報
【特許文献2】特許第6016303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のフルオレン骨格を有するモノマーは、溶剤溶解性が低い等の実用上の問題がある。そこで、フルオレン骨格以外の新規な骨格を持つ光学部材が求められる。
【0005】
本発明は、新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材およびその製造方法、ならびに新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材が得られる光学部材形成材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]下記式(i)で表される構造を含む、光学部材。
【化1】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
[2]下記式(1)で表される化合物に基づく構成単位を有する樹脂を含む、光学部材。
【化2】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
[3]前記樹脂が、多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂である[2]に記載の光学部材。
[4]前記樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂である[2]に記載の光学部材。
[5]下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物の硬化物を含む、光学部材。
【化3】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
Xは、重合性官能基もしくは反応性官能基を含む1価基、または水素原子であり、(e+f)個のXは同一でも異なっていてもよく、(e+f)個のXのうち少なくとも1個は前記1価基であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
[6]下記式(1)で表される化合物に基づく構成単位を有する樹脂を含む、光学部材形成材料。
【化4】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
[7]前記樹脂が、多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂である[6]に記載の光学部材形成材料。
[8]前記樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂である[6]に記載の光学部材形成材料。
[9]下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物である、光学部材形成材料。
【化5】
ここで、R
1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R
2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR
2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R
3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR
3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
Xは、重合性官能基もしくは反応性官能基を含む1価基、または水素原子であり、(e+f)個のXは同一でも異なっていてもよく、(e+f)個のXのうち少なくとも1個は前記1価基であり、
R
4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR
4は同一でも異なっていてもよい。
[10][6]~[8]のいずれかに記載の光学部材形成材料を製造する方法であって、
モノマー成分の少なくとも一部に前記式(1)で表される化合物を用いて前記樹脂を製造する工程を有する、光学部材形成材料の製造方法。
[11][9]に記載の光学部材形成材料を製造する方法であって、
前記式(2)中のOXが全てOHである化合物の前記OHの少なくとも一部に、重合性官能基または反応性官能基を含む1価基を付加して前記式(2)で表される化合物を製造する工程を有する、光学部材形成材料の製造方法。
[12][6]~[8]のいずれかに記載の光学部材形成材料を成形する、光学部材の製造方法。
[13][9]に記載の光学部材形成材料を硬化する、光学部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材およびその製造方法、ならびに新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材が得られる光学部材形成材料およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光学部材は、下記式(i)で表される構造(以下、「構造(i)」とも記す。)を含む。
【0009】
【0010】
ここで、R1は、水素原子またはアリール基であり、
aは0~5の整数であり、bは0~4の整数であり、
R2は置換基であり、(a+b)が2以上である場合、(a+b)個のR2は同一でも異なっていてもよく、
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数であり、
R3は、アルキレン基であり、(c+d)が2以上である場合、(c+d)個のR3は同一でも異なっていてもよく、
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5であり、
R4は、置換基であり、(g+h)が2以上である場合、(g+h)個のR4は同一でも異なっていてもよい。
【0011】
R1におけるアリール基としては、例えばフェニル基が挙げられる。
R1としては、高屈折率化の点からは、フェニル基が好ましく、本化合物を合成する際の反応性の容易さの点からは、水素原子が好ましい。
【0012】
aは0~5の整数であり、原料の調達のしやすさの点から、0が好ましい。
bは0~4の整数であり、原料の調達のしやすさの点から、0が好ましい。
R2における置換基としては、例えば炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、水酸基、シアノ基、アセチル基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0013】
cおよびdは、それぞれ独立に0~6の整数である。
好ましい一態様において、cおよびdは0である。構造(i)は、典型的には、後述する化合物(1)に由来する。化合物(1)において、HO-(R3O)c-の末端のOHは、cが0の場合は、HO-(R3O)c-が結合したベンゼン環に結合してフェノール性水酸基となり、-(OR3)d-OHの末端のOHも同様である。この場合、化合物(1)を原料にポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂、その他化合物とする際、反応性に優れる傾向がある。
他の好ましい一態様において、cおよびdは1以上の整数である。化合物(1)において、HO-(R3O)c-の末端のOHは、cが1以上の整数の場合は、R3に結合してアルコール性水酸基となり、-(OR3)d-OHの末端のOHも同様である。この場合、フェノール性水酸基の酸化により生じるキノン構造の生成が抑制され、構造(i)を含む光学部材に、経時変化による黄変等の変色が発生することや、それら変色が濃くなることを抑制できる。この態様においてcおよびdは、耐熱性の点から、1が好ましい。
【0014】
R3におけるアルキレン基の炭素数は、例えば2~10であり、2~4が好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキレン基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン-1,2-ジイル基、ヘキシレン基が挙げられる。
【0015】
eおよびfは、それぞれ独立に1~5の整数であり、gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数であり、(e+g)は1~5であり、(f+h)は1~5である。
eおよびfは、化合物(1)をポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂の原料として用いる場合には、1が特に好ましい。
化合物(1)は、そのままエポキシ樹脂の硬化剤に用いたり、化合物(1)の水酸基を重合性官能基や反応性官能基を含む基に置換し、硬化性組成物に含有させて用いたりすることもできる。このような場合には、eおよびfは、硬化性組成物を硬化させた際に架橋密度が高くなることにより、その硬化物の機械強度や耐熱性が高まることから、それぞれ独立に1~4の整数であることが好ましい。
gおよびhは、原料調達のしやすさの点から、それぞれ独立に1~2の整数が好ましく、1が特に好ましい。
R4における置換基としては、例えば炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、水酸基、アセチル基、ハロゲン原子、-(OR3)kOHが挙げられる。R3は前記と同様である。kは0~6の整数である。
R4としては、原料調達のしやすさの点から、アルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、例えば1~10であり、1~2が好ましい。アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0016】
化合物(1)をモノマー成分の少なくとも一部に用いてポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂を製造する場合には、eおよびfが1であり、gおよびhがそれぞれ独立に1~2の整数であり、R4がアルキル基であることが好ましい。このときのR1、a、b、c、d、R3それぞれの好ましい態様は前記と同様である。
化合物(1)の水酸基に重合性官能基または反応性官能基を含む1価基を付加し、硬化性組成物に含有させる場合には、eおよびfがそれぞれ独立に1~4の整数であり、gおよびhがそれぞれ独立に1~2の整数であり、R4がアルキル基であることが好ましい。この場合、eおよびfの値が大きいほど、硬化性組成物を硬化させた際に架橋密度が高くなることにより、その硬化物の機械強度や耐熱性が高まる傾向がある。このときのR1、a、b、c、d、R3それぞれの好ましい態様は前記と同様である。
【0017】
〔光学部材(1)〕
本発明の光学部材の一態様として、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」とも記す。)に基づく構成単位を有する樹脂(以下、「樹脂A」とも記す。)を含む光学部材(以下、「光学部材(1)」とも記す。)が挙げられる。
化合物(1)に基づく構成単位は、前記した構造(i)を含む。
【0018】
【0019】
式(1)中、R1、a、b、R2、c、d、R3、e、f、g、hおよびR4はそれぞれ前記したとおりである。
【0020】
樹脂Aとしては、例えば、多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂であって、多価ヒドロキシ化合物の少なくとも一部が化合物(1)である樹脂が挙げられる。
多価ヒドロキシ化合物は、2以上の水酸基を有する化合物である。
【0021】
多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂の一例として、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
モノマー成分として化合物(1)を用いたポリカーボネート樹脂としては、例えば、下記式(a1)で表される構成単位(以下、「構成単位(a1)」とも記す。)を有するポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0022】
【0023】
ポリカーボネート樹脂が有する構成単位(a1)は1種でもよく2種以上でもよい。
ポリカーボネート樹脂は、構成単位(a1)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。
他の構成単位としては、例えば、化合物(1)以外の他の多価ヒドロキシ化合物に基づく構成単位(以下、「構成単位(a2)」とも記す。)が挙げられる。
構成単位(a2)は、下記式(a2)で表される。
【0024】
【0025】
R6は、他の多価ヒドロキシ化合物から2個の水酸基を除いた残基である。他の多価ヒドロキシ化合物は、典型的には、ジヒドロキシ化合物である。
他の多価ヒドロキシ化合物としては、特に制限はなく、ポリカーボネート樹脂のモノマー成分として公知のものを用いることができる。他の多価ヒドロキシ化合物としては、例えば芳香族ジヒドロキシ化合物等の芳香族多価ヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物等の脂肪族多価ヒドロキシ化合物が挙げられる。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばヒドロキノン、レゾルシン等のフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールCDE、ビスフェノールフルオレン等のビスフェノール化合物、ビスナフトールフルオレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂が有する構成単位(a2)は1種でもよく2種以上でもよい。
【0026】
多価ヒドロキシ化合物をモノマー成分とする樹脂の他の一例として、ポリエステル樹脂が挙げられる。
モノマー成分として化合物(1)を用いたポリエステル樹脂としては、例えば、下記式(b1)で表される構成単位(以下、「構成単位(b1)」とも記す。)を有するポリエステル樹脂が挙げられる。
【0027】
【0028】
R5は、ジカルボン酸から2個のカルボキシ基を除いた残基である。
ジカルボン酸としては、特に制限はなく、ポリエステル樹脂のモノマー成分として公知のものを用いることができる。ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0029】
ポリエステル樹脂が有する構成単位(b1)は1種でもよく2種以上でもよい。
ポリエステル樹脂は、構成単位(b1)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。
他の構成単位としては、例えば、下記式(b2)で表される構成単位(以下、「構成単位(b2)」とも記す。)が挙げられる。
【0030】
【0031】
R6は、他の多価ヒドロキシ化合物から2個の水酸基を除いた残基であり、R7は、ジカルボン酸から2個のカルボキシ基を除いた残基である。
他の多価ヒドロキシ化合物、ジカルボン酸はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
ポリエステル樹脂が有する構成単位(b2)は1種でもよく2種以上でもよい。
【0032】
光学部材(1)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂A以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、酸化防止剤、その他の各種の添加剤が挙げられる。他の成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0033】
<光学部材(1)の製造方法>
光学部材(1)は、例えば、樹脂Aを含む光学部材形成材料(以下、「光学部材形成材料(1)」とも記す。)を成形することにより製造できる。
光学部材形成材料(1)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂A以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、前記と同様のものが挙げられる。光学部材形成材料(1)の製造方法については後で詳しく説明する。
【0034】
光学部材形成材料(1)の成形方法としては、熱可塑性樹脂の成形方法として公知の方法を用いることができ、例えば、射出成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形等が挙げられる。
【0035】
<光学部材形成材料(1)の製造方法>
光学部材形成材料(1)は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部に化合物(1)を用いて樹脂Aを製造し、必要に応じて他の成分を混合することにより製造できる。
樹脂Aは、モノマー成分の少なくとも一部に化合物(1)を用いる以外は、公知の製造方法により製造できる。
【0036】
樹脂Aを製造する前に、化合物(1)を製造してもよい。
化合物(1)は、例えば、以下の工程Aを有する製造方法により製造できる。
工程A:下記式(1a)で表されるビフェニル化合物と、下記式(1b)で表されるヒドロキシ化合物と、下記式(1c)で表されるヒドロキシ化合物とを反応させて下記式(1-1)で表される化合物(以下、「化合物(1-1)」とも記す。)を得る工程。
必要に応じて、工程Aの後、下記工程Bを行う。
工程B:工程Aで得られた化合物(1-1)の水酸基に1以上のオキシアルキレン基を付加する工程。
【0037】
【0038】
【0039】
(ビフェニル化合物)
式(1a)中、R1、a、b、R2はそれぞれ前記したとおりである。
ビフェニル化合物としては、例えば、4-ビフェニルアルデヒド、4-ブロモ-4’-ビフェニルアルデヒド、4-ベンゾイルビフェニル、4-ブロモ-4’-ベンゾイルビフェニルが挙げられる。これらのビフェニル化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、原料の調達のしやすさの点では、4-ビフェニルアルデヒドが好ましい。臭素原子を有することで、生成する化合物(1)がより高屈折率を発現できる点では、4-ブロモ-4’-ビフェニルアルデヒドが好ましい。
【0040】
(ヒドロキシ化合物)
式(1b)、(1c)中、c、d、e、f、g、h、R3およびR4はそれぞれ前記したとおりである。
式(1b)で表されるヒドロキシ化合物と式(1c)で表されるヒドロキシ化合物は同じものであっても異なるものであってもよい。以下、式(1b)で表されるヒドロキシ化合物と式(1c)で表されるヒドロキシ化合物を総称して単に「ヒドロキシ化合物」とも記す。
ヒドロキシ化合物としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クルミフェノール、p-ノニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールCDE、ジヒドロキシジフェニルメタン、スチレン化フェノール、炭素数2~9のアルキル基で置換されたアルキルフェノール、精製カシューナッツシェルリキッドの主成分である側鎖不飽和結合を有する長鎖アルキルで置換されたアルキルフェノール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール等公知のフェノール誘導体、更に塩素または臭素で置換されたハロゲン化フェノール等が挙げられる。これらのヒドロキシ化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これら中でも、原料の調達のしやすさの点から、フェノール、クレゾール、レゾルシンが好ましい。
【0041】
(工程A)
ビフェニル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる際のビフェニル化合物とヒドロキシ化合物とのモル比(ビフェニル化合物/ヒドロキシ化合物)は、0.01~1.00が好ましく、0.05~0.50がより好ましい。
ビフェニル化合物/ヒドロキシ化合物のモル比が1.00以下であれば、1分子のビフェニル化合物に2分子のヒドロキシ化合物が付加した化合物(1-1)が主成分として生成される傾向がある。
ビフェニル化合物/ヒドロキシ化合物のモル比が1.00を超えると、ビフェニル化合物とヒドロキシ化合物が交互に付加しやすくなり、結果として化合物(1-1)の収率が低くなるおそれがある。
【0042】
典型的には、酸触媒の存在下でビフェニル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる。酸触媒を用いることで、ビフェニル化合物とヒドロキシ化合物との反応が容易に進行する。
酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;シュウ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等の有機酸塩;スルホン基やカルボン酸基を有するイオン交換樹脂等が挙げられる。これらの中でも、副反応による副生物の生成が抑制されると同時に、反応終了後、水洗処理などにより、容易に脱触媒を行うことができる点で、シュウ酸、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸が好ましい。これらの酸触媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
酸触媒の使用量は、例えば、ビフェニル化合物100質量部に対して0.01~100質量部である。
【0043】
ビフェニル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる際、必要に応じて、助触媒を用いてもよい。
助触媒としては、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、ノルマルプロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、ターシャリーブチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類が挙げられる。これらの助触媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
助触媒の使用量は、例えば、ビフェニル化合物100質量部に対して0.01~100質量部である。
【0044】
工程Aは、通常のノボラック型フェノール樹脂の製造方法と同様の方法で実施できる。
例えば、反応容器にビフェニル化合物、ヒドロキシ化合物、酸触媒、溶媒、必要に応じて助触媒を仕込み、任意の反応温度を任意の反応時間保持することで、化合物(1-1)を含む生成物が得られる。
溶媒としては、例えばイオン交換水等の水;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
反応温度は、例えば10~150℃である。反応時間は、例えば0.5~48時間である。
反応終了後、必要に応じて、抽出、水洗、濃縮、再結晶等の処理を行ってもよい。
【0045】
(工程B)
化合物(1-1)の水酸基に1以上のオキシアルキレン基((OR3)c、(OR3)d)を付加することで、前記式(1)中のcおよびdの少なくとも一方が1以上である化合物(以下、「化合物(1-2)」とも記す。)が得られる。
【0046】
1以上のオキシアルキレン基の付加方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、化合物(1-1)と、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させる方法が挙げられる。
【0047】
〔光学部材(2)〕
本発明の光学部材の他の一態様として、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」とも記す。)を含む硬化性組成物(以下、「光学部材形成材料(2)」とも記す。)の硬化物を含む光学部材(以下、「光学部材(2)」とも記す。)が挙げられる。
硬化物は、化合物(2)に基づく構成単位を有する。化合物(2)に基づく構成単位は、前記した構造(i)を含む。
【0048】
【0049】
式(2)中、R1、a、b、R2、c、d、R3、e、f、g、hおよびR4はそれぞれ前記したとおりである。
Xは、重合性官能基もしくは反応性官能基を含む1価基(以下、「基(x)」とも記す。)、または水素原子であり、(e+f)個のXは同一でも異なっていてもよく、(e+f)個のXのうち少なくとも1個は基(x)である。
化合物(2)は、1個以上の重合性官能基または反応性官能基を持つので、単独でまたは硬化剤により硬化させることができる。
【0050】
基(x)における重合性官能基としては、重合可能なものであれば特に制限はなく、例えば(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。
基(x)における反応性官能基としては、例えばエポキシ基、酸無水物基、アミノ基等が挙げられる。
基(x)が有する重合性官能基または反応性官能基は1個でも2個以上でもよいが、典型的には1個である。
重合性官能基または反応性官能基は、Xに隣接する酸素原子に直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。
【0051】
基(x)としては、例えば、-X2-X1で表される基が挙げられる。X1は、重合性官能基または反応性官能基であり、X2は、単結合または2価の連結基である。
X2における2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基の末端または/および炭素原子間にエーテル性酸素原子を含む基等が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、例えばアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基およびそれらの2以上の組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基としては、R3におけるアルキレン基と同様のものが挙げられる。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば水酸基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。シクロアルキレン基の炭素数は、例えば6~8である。シクロアルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えばアルキル基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。アリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基、4,4’-ビフェニル-ジイル基が挙げられる。アリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えばアルキル基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。
X2としては、置換基として水酸基を有するものが好ましい。X2が水酸基を有していれば、化合物(2)を用いた硬化物の耐熱性や機械強度がより優れる傾向がある。これは、水酸基が存在することで、水素結合による分子間力が得られ、分子の凝集力が高まるためと考えられる。また、この水素結合は、ガラスやポリエステル等の無機または有機物(例えばフィルム、レンズ、など)に対する密着性向上にも寄与する。
【0052】
基(x)の具体例としては、グリシジル基、-[Ph-C(CH3)2-Ph-O-CH2-CH(OH)-CH2-O]n-Ph-C(CH3)2-Ph-O-Y1、(メタ)アクリロイル基、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基(-CH2-CH(OH)-CH2-O-C(=O)-C(R)=CH2)、-[Ph-C(CH3)2-Ph-O-CH2-CH(OH)-CH2-O]n-C(=O)-C(R)=CH2、トリメリット酸無水物基(下記式(x-1)で表される基)、アミノ基等が挙げられる。Phはフェニレン基であり、Y1はグリシジル基であり、Rは水素原子またはメチル基である。nは特に限定されないが、例えば1~10の整数である。
【0053】
【0054】
基(x)としては、硬化物が耐熱性や機械強度に優れ、光学部材としての有用性に優れる点で、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基が好ましい。
【0055】
光学部材形成材料(2)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(2)以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、化合物(2)以外の重合性官能基または反応性官能基を持つ化合物、硬化剤(架橋剤、重合開始剤等)、硬化促進剤、溶剤、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、酸化防止剤、その他の各種の添加剤が挙げられる。他の成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
基(x)が(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を有する場合、光学部材形成材料(2)は、重合開始剤(光重合開始剤、熱重合開始剤等)を含むことが好ましい。
【0057】
基(x)が反応性官能基を有する場合、光学部材形成材料(2)は、基(x)の反応性官能基と反応し得る官能基を2以上有する架橋剤を含むことが好ましい。反応性官能基がエポキシ基である場合、エポキシ基と反応し得る官能基としては、アミノ基、酸無水物基、水酸基等が挙げられる。反応性官能基が酸無水物基である場合、酸無水物基と反応し得る官能基としては、アミノ基、水酸基等が挙げられる。反応性官能基がアミノ基である場合、アミノ基と反応し得る官能基としては、酸無水物基等が挙げられる。
【0058】
基(x)がエポキシ基を有する場合に用いられる架橋剤としては、例えば、アミン類、酸無水物類、フェノール樹脂等のエポキシ硬化剤が挙げられる。必要に応じて、トリフェニルホスフィン類やイミダゾール類等の硬化促進剤を併用してもよい。
【0059】
基(x)が酸無水物基を有する場合に用いられる架橋剤としては、例えば、ジアミンが挙げられる。この場合、化合物(2)とジアミンとの反応さによりポリイミドが生成する。ジアミンとしては、例えば1,3-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミン化合物、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。ジアミンは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
<光学部材(2)の製造方法>
光学部材(2)は、光学部材形成材料(2)を硬化することにより製造できる。
光学部材形成材料(2)を硬化する前に、光学部材形成材料(2)を製造してもよい。光学部材形成材料(2)の製造方法については後で詳しく説明する。
【0061】
光学部材形成材料(2)の硬化方法は特に限定されず、基(x)が有する重合性官能基または反応性官能基の種類に応じて公知の方法を適用できる。例えば基(x)が重合性官能基を有する場合、光学部材形成材料(2)に光や熱を加えることで、化合物(2)等を重合させ、硬化物とすることができる。
光学部材形成材料(2)を硬化する際に、光学部材形成材料(2)を、目的の光学部材の形状に成形してもよい。光学部材形成材料(2)を硬化した後に、硬化物を、目的の光学部材の形状に成形してもよい。
【0062】
<光学部材形成材料(2)の製造方法>
光学部材形成材料(2)は、例えば、化合物(2)を製造し、必要に応じて他の成分を混合することにより製造できる。
化合物(2)は、例えば、以下の工程Cを有する製造方法により製造できる。
工程C:式(2)中のOXが全てOHである化合物、つまり化合物(1)のOHの少なくとも一部に、基(x)を付加する工程。
【0063】
(工程C)
工程Cは、基(x)の構造に応じて、公知の方法を用いて実施できる。
例えば、基(x)がグリシジル基の場合、化合物(1)のOHにエピハロヒドリン(例えばエピクロルヒドリン)を反応させる方法(以下、「方法1」とも記す。)が挙げられる。
基(x)が-[Ph-C(CH3)2-Ph-O-CH2-CH(OH)-CH2-O]n-Ph-C(CH3)2-Ph-O-Y1の場合、方法1において、エピハロヒドリンの代わりに、OH1モルに対して(n+1)モルのビスフェノールA型エポキシ化合物(HO-Ph-C(CH3)2-Ph-O-Y1)を反応させればよい。
基(x)が(メタ)アクリロイル基である場合、化合物(1)のOHに(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を反応させる方法(以下、「方法2」とも記す。)が挙げられる。
基(x)が2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシエチル基である場合、上述の方法1によって基(x)がグリシジル基である化合物を得、この化合物のグリシジル基に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を反応させる方法(以下、「方法3」とも記す。)が挙げられる。
基(x)が-[Ph-C(CH3)2-Ph-O-CH2-CH(OH)-CH2-O]n-C(=O)-C(R)=CH2の場合、方法3において、基(x)がグリシジル基である化合物を得る代わりに、基(x)が-[Ph-C(CH3)2-Ph-O-CH2-CH(OH)-CH2-O]n-Ph-C(CH3)2-Ph-O-Y1である化合物を得ればよい。
基(x)がトリメリット酸無水物基である場合、化合物(1)のOHに無水トリメリット酸または無水トリメリット酸ハライドを反応させる方法(以下、「方法4」とも記す。)が挙げられる。
【0064】
方法1において、化合物(1)のOHに対するエピハロヒドリンのモル比(OH/エピハロヒドリン比)は、最も一般的なエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂を、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから製造する際と同様のモル比であってよい。
OH/エピクロルヒドリン比は、0.02~0.33が好ましく、0.10~0.20がより好ましい。
化合物(1)のOH1モルに対して多量のエピクロルヒドリンを用いた場合(OH/エピクロルヒドリン比が小さい場合)には、OHがグリシジルエーテル化された化合物が主成分として得られる。このモル比を大きくするに従い、OHに付加したグリシジルエーテル化したエポキシ基が他のOHと反応し、高分子量化されるおそれがある。
【0065】
以上説明した本発明の光学部材は、構造(i)を有することから、高い屈折率(例えば1.62~1.78の屈折率)を示す。
ここで、一般に、分子全体の分極が大きくなると、高屈折率を発現する傾向がある。分子全体の分極を大きくする手法の一つが、自由に動くことができる共役π電子を多くすることである。
構造(i)中のビフェニル部位においては、2個のベンゼン環内に存在する12個のπ電子がビフェニル部位全体の広範囲に共鳴している。このビフェニル部位にさらに、すくなくとも2個のベンゼン環が導入されることで、共役π電子の数が増大し、π電子が共鳴する範囲も広くなる。これにより、分子全体がより分極しやすくなり、高屈折率を発現すると考えられる。
【0066】
また、従来のフルオレン骨格を有するモノマーは、溶剤溶解性が低いという問題がある。溶剤溶解性が低いと、モノマーを溶解可能な溶剤の選択肢が限られる。よって、フルオレン骨格を有するモノマーでは、高品質の光学部材を汎用的な溶剤(例えばN-メチル-2-ピロリドン)で製造できず、実用性に劣る。
これに対し、本発明において、構造(i)に対応する化合物(1)や化合物(2)は、溶剤溶解性に優れる。これらの化合物の優れた溶剤溶解性は、前記したビフェニル化合物の-C(R1)=O由来の炭素原子に結合した2つのヒドロキシ化合物由来の部分が自由回転できるため、溶剤と相互作用しやすいことによるものと推定される。これらの化合物が溶剤溶解性に優れることから、汎用的な溶剤で高品質の光学部材を製造できる。
【0067】
本発明の光学部材の具体例としては、CMOSイメージセンサー用マイクロレンズ、タッチパネル用インデックスマッチング材、液晶用ブラックマトリックス、光学用接着材、透明ポリイミド、LED用透明電極等が挙げられる。
【実施例0068】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。以下において「%」は、特に言及がない場合は、「質量%」を示す。
【0069】
〔測定方法〕
<NMR測定>
試料(各例の化合物)の7.7%d-ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を調製し、1H-NMR、13C-NMRを測定した。内部標準としてはテトラメチルシランを用いた。
使用機器:JEOL RESONANCE社製 ECZ-500R
【0070】
<FD-MS(電界脱離質量分析)>
試料の0.2%テトラヒドロフラン(THF)溶液を調製し、イオン源FD+、質量範囲60~1600のもと、FD-MSを測定した。
使用機器:日本電子社製 JMS-T200GC
【0071】
<GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)>
試料の1%THF溶液を調製し、GPC測定を行った。
使用機器:東ソー社製 HLC8320GPC
カラム:TSKgel G3000HXL+G2000HXL+G2000HXL
【0072】
<屈折率>
試料について3種の濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液を調製し、各溶液について屈折率計にて、25.0℃におけるD線(波長589nm)の屈折率を測定した。これら3種の濃度を横軸に、それぞれの屈折率を縦軸にプロットし、最小二乗法における近似曲線から、濃度100%における屈折率を算出し、その値を屈折率とした。
使用機器:京都電子社製 屈折率計DA-645
【0073】
<溶解性(1)>
試料に、化合物の最終的な濃度が8%以上となるようにN-メチル-2-ピロリドンを加えた試験管をボルテックスミキサーにて十分に撹拌混合した後、25℃に調整した水槽にて10分間放置したときの試料の溶解性を確認した。
【0074】
<溶解性(2)>
屈折率測定用に調製した3種の濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液について、25℃で一日静置した後に目視で、試料の析出の有無を確認した。
【0075】
〔実施例1〕
撹拌機、温度計、アリーン冷却管を付けた200mL四つ口フラスコに、o-クレゾール64.86g(0.60モル)、4-ビフェニルアルデヒド10.93g(0.06モル)、反応溶媒としてイオン交換水10.93gを仕込み撹拌した。そこにドデシルメルカプタン0.559g(0.0028モル)を添加し、加温により反応溶液を55℃まで昇温した。55℃に到達した時点で35%塩酸18.42gを8分間かけて添加した。触媒添加により反応溶液の色相は淡黄色から淡紅色に変化した。その後、内温55℃を保持したまま6時間撹拌を続けた後、反応溶液を冷却した。25℃以下に冷却後、30%水酸化ナトリウム溶液23.60gを添加すると反応溶液が徐々に懸濁し、赤紫色の油状粘調物が水に分散した状態となった。ここにイオン交換水127.0gを添加し撹拌を継続した。この時のフラスコ内の反応溶液のpHは7~8となった。この水と油状粘調物を含む反応溶液にシクロペンチルメチルエーテル288.3gを加えて、全量を1000mL分液ロートへ移液した。これらを混合し、静置すると、薄く濁った淡橙色のエーテル相と無色透明の水相に分離した。水相を除去した後、この分液ロートにてエーテル相にイオン交換水246.0gを添加して水洗を行い、これを3回繰り返した。水洗済みエーテル溶液を500mL三角フラスコにて加熱して減圧濃縮によりエーテル除去を行うことで橙色濃縮物が残留した。この残留物を常温まで放冷し、静置すると、橙色の針状結晶が析出した。この針状結晶を吸引ろ過し、ヌッチェ上の結晶を適量のイソプロピルアルコールとイオン交換水により洗浄すると、淡橙色の残渣となった。これを風乾することにより淡橙色粉末13.01gを得た。この粉末は、GPCにより目的化合物と未反応のo-クレゾールを主成分とする粉末であることが分かった。目的化合物を単離するために、この粉末にイソプロピルアルコール13.0gとイオン交換水13.0gを加えて加熱溶解し再結晶を行った。これを室温まで放冷し静置すると淡橙色の結晶が析出した。この結晶を吸引ろ過し、ヌッチェ上で適量のイソプロピルアルコールとイオン交換水により洗浄した後、風乾すると、白橙色の粉末8.63g(理論収量に対する収率37.9%)を得た。
この白色粉末について1H-NMR、13C-NMR、FD-MSにより定性したところ、下記式(11)に示す化合物であることを確認した。なお、得られた白橙色の粉末の理化学的性質は以下のとおりであった。また、GPCより純度が96.6%であることを確認した。
マススペクトル:(m/z)380。
1H-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 2.06(s,6H),5.31(s,1H),6.72(a pair of s,4H),6.83(s,2H),7.15(d,J=8.3Hz,2H),7.31(t,J=7.3Hz,1H),7.41(t,J=7.7Hz,2H),7.55(d,J=8.30Hz,2H),7.61(dd,J=7.3Hz,1.2Hz,2H),9.2(s,2H)。
13C-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 16.2,54.3,114.4,123.5,126.5,126.6,127.1,127.2,131.2,134.5,137.7,140.0,144.5,153.7。
【0076】
【0077】
〔実施例2〕
o-クレゾールをp-クレゾール64.86g(0.60モル)とした以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応溶液を冷却した。25℃以下に冷却後、30%水酸化ナトリウム溶液を添加すると、反応溶液は淡紅色から薄茶色に変化し懸濁した。この時のフラスコ内の反応溶液のpHは7~8であった。この反応溶液にシクロペンチルメチルエーテル144.2gを加えて、全量を1000mL分液ロートへ移液した。ここにイオン交換水127.0gを加えて混合し、静置すると、薄く濁った淡褐色のエーテル相と無色透明の水相に分離した。水相を除去した後、この分液ロートにてエーテル相にイオン交換水246.0gを添加して水洗を行い、これを3回繰り返した。水洗済みエーテル溶液を500mL三角フラスコにて加熱して減圧濃縮によりエーテル除去を行うことで褐色の濃縮物が残留した。この残留物を常温まで放冷し、静置すると、白色の針状結晶が析出した。この針状結晶を吸引ろ過し、ヌッチェ上の結晶を適量のイソプロピルアルコールとイオン交換水により洗浄すると、白色の残渣となった。これを風乾することにより白色粉末8.23g(理論収量に対する収率36.1%)を得た。
この白色粉末について1H-NMR、13C-NMR、FD-MSにより定性したところ、下記式(12)に示す化合物であることを確認した。なお、得られた白色粉末の理化学的性質は以下のとおりであった。また、GPCより純度96.4%であることを確認した。
マススペクトル:(m/z)380。
1H-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 2.08(s,6H),6.06(s,1H),6.55(d,J=2.0Hz,2H),6.71(d,J=8.1Hz,2H),6.83(dd,J=8.2Hz,1.9Hz,2H),7.09(d,J=8.3Hz,2H),7.31(tt,J=7.3Hz,1.1Hz,1H),7.42(t,J=7.8Hz,2H),7.54(d,J=8.4Hz,2H),7.63(dd,J=8.5Hz,1.3Hz,2H),9.07(s,2H)。
13C-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 20.6,42.4,114.9,126.3,126.5,126.6,127.2,127.4,128.9,129.7,129.9,130.1,137.4,140.1,143.6,152.6。
【0078】
【0079】
〔比較例1〕
特許第6016303号公報に記載の実施例1に準じ、以下の手順で、下記式(13)に示す化合物を合成した。
撹拌機、温度計、アリーン冷却管を付した200mL四つ口フラスコに9-フルオレノン14.42g(0.08モル)、レゾルシン88.09g(0.80モル)、反応溶媒としてイオン交換水14.42gを入れ、撹拌を開始した。ここにドデシルメルカプタン7.45g(0.037モル)を入れ、昇温し、反応溶液が55℃となった時点で35%塩酸24.58g(0.24モル)を添加した。これをさらに昇温してゆき、内温116℃で還流が開始した。還流開始後4時間の時点でイオン交換水40.00gを注入した。さらにフラスコを冷却し、反応溶液の温度を25℃とした。この反応溶液を分析ロートに移し、シクロペンチルメチルエーテル144.2gにて2回抽出し、この2回のエーテル層を一括して分液ロートに移液した。このエーテル層をイオン交換水173.0gにて2回水洗し、水洗済みエーテル溶液を減圧蒸留によりエーテル除去を行うことでスラリー状物80.61gを得た。このスラリー状物にイソプロピルアルコール40.3gを加え、還流させることによりスラリーを溶解し、ここにイオン交換水40.3gを入れ、放冷した。冷却により析出した粉末をヌッチェと吸引びんを使用し、吸引ろ過(ろ紙:ADVANTEC5C)により分離し、淡黄色粉末状の粗成物52.37gを得た。この粗成物10.00gを再度イソプロピルアルコール22.00gに溶解し、一旦還流させ、これを室温まで徐冷した。析出物を吸引ろ過(ろ紙:ADVANTEC5C)により単離し、ヌッチェ上でイオン交換水22.00gにて2回水洗し、これを減圧乾燥させることにより白色粉末状の精製物7.34gを得た。
得られた白色粉末について1H-NMR、13C-NMR、FD-MSにより、下記式(13)に示す化合物(スピロ[フルオレン9,9’-(2’,7’-ジヒドロキシキサンテン)])であることを確認した。なお、得られた白色粉末の理化学的性質は以下のとおりであった。また、GPCより、純度が97.3%であることを確認した。
マススペクトル:(m/z)364。
1H-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 5.85(s,1H),6.13(dd,J=8.3Hz,2.4Hz,2H),6.30(d,J=2.5Hz,2H),6.49(d,J=8.3Hz,2H),7.05(d,J=8.1Hz,2H),7.30(tt,J=7.4Hz,1.4Hz,1H),7.41(t,J=7.7Hz,2H),7.51(d,J=8.3Hz,2H),7.61(dd,J=8.4Hz,1.2Hz,2H),8.90-9.30(a pair of br s,4H)。
13C-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 41.2,102.5,105.5,121.3,126.2,126.5,129.0,129.5,130.2,137.2,140.3,145.0,155.5,156.4。
【0080】
【0081】
〔比較例2〕
比較例2の化合物として、下記式(14)に示す市販のビスフェノールA(三井化学株式会社製)を用意した。
【0082】
【0083】
〔実施例3〕
o-クレゾールをm-クレゾール64.86g(0.60モル)とした以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応溶液を冷却した。25℃以下に冷却後、30%水酸化ナトリウム溶液を添加すると、反応溶液は淡紅色から薄茶色に変化し懸濁した。この時のフラスコ内の反応溶液のpHは7~8であった。この反応溶液にシクロペンチルメチルエーテル144.2gを加えて、全量を1000mL分液ロートへ移液した。ここにイオン交換水127.0gを加えて混合し、静置すると、薄く濁った淡褐色のエーテル相と無色透明の水相に分離した。水相を除去した後、この分液ロートにてエーテル相にイオン交換水246.0gを添加して水洗を行い、これを3回繰り返した。水洗済みエーテル溶液を500mL三角フラスコにて加熱し、減圧濃縮によりエーテルを除去したところ、褐色の濃縮油状物70.4gが残留した。この残留物はGPCより、目的化合物と未反応のm-クレゾールを含む混合物であった。この残留物を適量のイソプロピルアルコールとイオン交換水により溶解し、減圧下にて常温から175℃まで昇温して濃縮を行った後、常温まで冷却したところ、褐色の固形物残渣が得られた。これを風乾し、粗砕することにより白褐色の粉末19.70g(理論収量に対する収率86.4%)を得た。
この白褐色粉末について1H-NMR、13C-NMR、FD-MSにより定性したところ、下記式(15)に示す化合物(異性体あり)であることを確認した。なお、得られた白褐色粉末の理化学的性質は以下のとおりであった。また、GPCより純度79.7%であることを確認した。
マススペクトル:(m/z)380。
1H-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 2.06-2.20(overlapped s,6H),5.53,5.80 and 6.00(s,1H),6.48-7.64(overlapped,15H),9.13-9.27(overlapped s,2H)。
13C-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 19.4,19.4,20.8,21.1,41.9,44.6,47.9,112.1,112.3,112.4,115.7,115.9,117.2,117.3,119.2,119.4,119.6,126.3,126.4,126.5,126.6,127.0,127.1,127.2,127.3,128.9,129.2,129.5,129.9,132.5,132.8,136.1,136.3,137.1,137.4,137.6,137.8,138.7,139.9,140.1,140.2,143.0,143.5,144.0,154.2,154.6,155.4,155.5,157.3。
なお、1H-NMRにおいて、「overlapped s,6H」は、6つのシングレットピークが重なり合っていたことを示す。同様に、「overlapped s,2H」は、2つのシングレットピークが重なり合っていたことを示す。「5.53,5.80 and 6.00(s,1H)」は、これら3ピークがいずれもシングレットで、3ピーク合わせて1H相当であったことを示す。また、13C-NMRにおいて、δ 19.4に2本のピークが重なり合っていたため、同じ値を併記した。後述する実施例4においても同様である。
【0084】
【0085】
〔実施例4〕
m-クレゾールをMP-クレゾール(m-クレゾールとp-クレゾールとの混合物、住友化学社製「M-301」)64.86g(0.60モル)とした以外は実施例3と同様にして反応を行い、反応溶液を冷却後、30%水酸化ナトリウム溶液による中和、シクロペンチルメチルエーテルによる抽出、更に水洗を行った。この水洗済みエーテル溶液について減圧濃縮によりエーテルを除去したところ、褐色の濃縮油状物77.0gが残留した。この残留物はGPCより、目的化合物と未反応のMP-クレゾールを含む混合物であった。この残留物を適量のイソプロピルアルコールとイオン交換水により溶解し、減圧下にて常温から175℃まで昇温して濃縮を行った後、常温まで冷却したところ、褐色の固形物残渣が得られた。これを風乾し、粗砕することにより白褐色の粉末18.80g(理論収量に対する収率82.5%)を得た。
この白褐色粉末について1H-NMR、13C-NMR、FD-MSにより定性したところ、前記式(12)に示す化合物と、前記式(15)に示す化合物(異性体あり)と、下記式(16)に示す化合物(異性体あり)との混合物であることを確認した。なお、得られた白褐色粉末の理化学的性質は以下のとおりであった。また、GPCより純度79.7%であることを確認した。
マススペクトル:(m/z)380。
1H-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 2.00-2.20(overlapped s,6H),5.53,5.80 and 6.00(s,1H),6.48-7.64(overlapped,15H),9.00-9.27(overlapped s,2H)。
13C-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 19.4,19.4,20.1,20.8,21.1,41.9,44.6,47.9,112.1,112.3,112.4,115.1,115.7,115.9,117.2,117.3,119.2,119.4,119.6,126.1,126.3,126.4,126.5,126.6,127.2,127.2,127.3,128.8,128.9,129.2,129.5,129.7,129.9,132.5,132.8,136.1,136.3,137.1,137.4,137.6,137.8,138.7,139.9,140.0,140.1,140.2,143.0,143.5,144.0,154.5,154.6,155.0,155.4,155.5,157.3。
【0086】
【0087】
〔実施例5〕
o-クレゾールをフェノール56.46g(0.60モル)とした以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応溶液を冷却後、30%水酸化ナトリウム溶液による中和、シクロペンチルメチルエーテルによる抽出、更に水洗を行った。この水洗済みエーテル溶液について減圧濃縮によりエーテルを除去したところ、赤橙色の濃縮油状物32.6gが残留した。この残留物はGPCより、目的化合物と未反応のフェノールを含む混合物であった。この残留物を、イソプロピルアルコール3.2gとイオン交換水3.2gを加えて加熱溶解し、再結晶を行った。これを室温まで放冷し静置すると白橙色の結晶が析出し、この結晶を吸引ろ過した。この結晶には未反応のフェノールがまだ含まれていたため、更にこの結晶をイソプロピルアルコールとイオン交換水に加熱溶解し、再結晶を行った結果、白色の結晶が析出した。この結晶を吸引ろ過し、ヌッチェ上で適量のイソプロピルアルコールとイオン交換水により洗浄した後、風乾すると、白色の粉末6.15g(理論収量に対する収率29.1%)を得た。
この白色粉末について1H-NMR、13C-NMR、FD-MSにより定性したところ、下記式(17)に示す化合物であることを確認した。なお、得られた白色粉末の理化学的性質は以下のとおりであった。また、GPCより純度が95.7%であることを確認した。
マススペクトル:(m/z)352。
1H-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 5.39(s,1H),6.71(dt,J=8.7Hz,2.5Hz,4H),6.92(dt,J=8.6Hz,2.4Hz,4H),7.15(d,J=8.2Hz,2H),7.31(tt,J=7.4Hz,1.4Hz,1H),7.42(t,J=7.7Hz,2H),7.56(dt,J=8.4Hz,1.8Hz,2H),7.61(dt,J=7.2Hz,1.4Hz,2H),9.30(s,1H)。
13C-NMR:(500MHz,DMSO-d6):δ 54.1,115.1,126.5,126.6,127.3,128.9,129.5,129.9,134.6,137.8,140.0,144.4,155.6。
【0088】
【0089】
表1~2に、実施例1~5および比較例1~2の各例の化合物の屈折率の測定に用いた溶液の濃度と屈折率、それらに基づいて求めた屈折率、溶解性(1)および溶解性(2)の評価結果を示す。
屈折率については、小数点第3位を四捨五入した値を示した。( )内に、小数点第4位までの値を併記した。
【0090】
【0091】
【0092】
なお、実施例1~5、比較例1~2それぞれの溶解性(1)の評価において設定した「化合物の最終的な濃度」と「溶解可否」の結果は以下のとおりであった。○は溶解可であったことを示し、×は溶解不可であったことを示す。
[実施例1]
濃度9.13%:○、濃度16.60%:○、濃度23.36%:○
[実施例2]
濃度8.98%:○、濃度16.66%:○
[比較例1]
濃度7.30%:○、濃度8.05%:×
[比較例2]
濃度8.14%:○、濃度10.72%:○
[実施例3]
濃度9.07%:○、濃度16.77%:○
[実施例4]
濃度9.06%:○、濃度16.78%:○
[実施例5]
濃度8.50%:○、濃度16.60%:○
【0093】
比較例1の化合物は、ポリカーボネート樹脂の原料等として一般的な比較例2の化合物に比べ、高屈折率であるものの、溶剤溶解性に劣っていた。
これに対し、実施例1~5の化合物は、比較例2の化合物よりも高屈折率であり、しかも溶剤溶解性に優れていた。
本発明によれば、新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材およびその製造方法、ならびに新規な骨格を持つ高屈折率の光学部材が得られる光学部材形成材料およびその製造方法を提供できる。