(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152846
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】防カビ組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/20 20060101AFI20231005BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231005BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20231005BHJP
A01N 35/04 20060101ALI20231005BHJP
A01N 35/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01N59/20 Z
A01P3/00
A01N31/08
A01N35/04
A01N35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045419
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022056291
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
2.キュプラ
3.テンセル
(71)【出願人】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】福世 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】長尾 朋和
(72)【発明者】
【氏名】藤森 良枝
(72)【発明者】
【氏名】直原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絵里歌
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一希
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA03
4H011BA02
4H011BB03
4H011BC05
4H011BC18
4H011DA15
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】 従来の天然有機化合物および天然無機物質の防カビ作用よりも強い防カビ作用を有する新規な技術を提供する。
【解決手段】 一価銅化合物粒子と、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と、を有効成分として含む防カビ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価の銅化合物粒子と、
防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と、を有効成分として含む防カビ組成物。
【請求項2】
前記防カビ作用を有する天然有機化合物として、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物を含む、請求項1に記載の防カビ組成物。
【化1】
【化2】
【請求項3】
防カビ作用を有する天然有機化合物として、シンナムアルデヒド、カルバクロール、チモール、オイゲノール、およびシトラールからなる群から少なくとも1種選択される有機化合物を含む、請求項1または2に記載の防カビ組成物。
【請求項4】
前記一価の銅化合物粒子として、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、シアン化物、水酸化物、およびチオシアン化物からなる群から少なくとも1種選択される一価の銅化合物粒子を含む、請求項1または2に記載の防カビ組成物。
【請求項5】
一価の銅化合物粒子と、
下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物とを含む、防カビ組成物。
【化3】
【化4】
【請求項6】
シンナムアルデヒド、カルバクロール、チモール、オイゲノール、およびシトラールからなる群から少なくとも1種選択される化合物を含む、請求項5に記載の防カビ組成物。
【請求項7】
一価の銅化合物粒子を、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物と混合することを含む、前記化合物の防カビ作用増強方法。
【化5】
【化6】
【請求項8】
一価の銅化合物粒子を有効成分として含む、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物の防カビ作用増強剤。
【化7】
【化8】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビを死滅および/または増殖抑制できる防カビ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,喘息その他のアレルギー性疾患が社会的な問題となって来ている。その原因の一つにカビがある。特に1980年頃から「住宅における省エネ基準」が幾度も改訂され、高断熱高気密住宅が増えるに従い、カビによる問題は増加してきている。しかし現在開発されている抗カビ剤は漂白能を持った塩素系が多いため、扱い方が難しかったり、人体へ悪影響を及ぼしたり、などの課題が多い。
【0003】
一方、以前よりインフルエンザやノロウイルスなどの感染症の流行は何度も繰り返されており、2019年に中国湖北省武漢市付近で初めて発生が確認されたCOVID-19の世界的流行により、抗菌・抗ウイルス部材の要求が大きくなっている。
【0004】
これらの課題を解決するために、天然有機化合物を用いた防カビ抗菌抗ウイルスフィルターなどが開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-181226号公報
【特許文献2】特開平10-000315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、天然由来の防カビ作用を有する物質はその効果が低いという問題があった。本発明は、従来の天然有機化合物および天然無機物質の防カビ作用よりも強い防カビ作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と一価銅化合物粒子を併用することで、天然有機化合物および/または天然無機物質の防カビ作用を増強させることができることを見出した。さらに本発明者は、後述する一般式(1)であらわされる化合物および一般式(2)であらわされる化合物であらわされる化合物のうち天然有機化合物以外の化合物の防カビ作用についても増強させることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
一価の銅化合物粒子と、
防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と、を有効成分として含む防カビ組成物。
[2]
前記防カビ作用を有する天然有機化合物として、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物を含む、[1]に記載の防カビ組成物。
【化1】
【化2】
[3]
前記防カビ作用を有する天然有機化合物として、シンナムアルデヒド、カルバクロール、チモール、オイゲノール、およびシトラールからなる群から少なくとも1種選択される有機化合物を含む、[1]または[2]に記載の防カビ組成物。
[4]
前記一価の銅化合物粒子として、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、シアン化物、水酸化物、およびチオシアン化物からなる群から少なくとも1種選択される一価の銅化合物粒子を含む、[1]から[3]のいずれか一つに記載の防カビ組成物。
[5]
一価の銅化合物粒子と、
下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物とを含む、防カビ組成物。
【化3】
【化4】
[6]
シンナムアルデヒド、カルバクロール、チモール、オイゲノール、およびシトラールからなる群から少なくとも1種選択される化合物を含む、[5]に記載の防カビ組成物。
[7]
一価の銅化合物粒子を、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物と混合することを含む、前記化合物の防カビ作用増強方法。
【化5】
【化6】
[8]
一価の銅化合物粒子を有効成分として含む、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物の防カビ作用増強剤。
【化7】
【化8】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の天然有機化合物および天然無機物質の防カビ作用よりも強い防カビ作用を有する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施形態の一例である第1の実施形態について詳述する。
【0011】
まず、第1の実施形態である防カビ組成物は、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と一価銅化合物粒子とを有効成分として含む。
本明細書において、カビとは、菌類のうち菌糸体の態様を有しているものをいう。また、本明細書において、防カビ作用とは、カビを死滅させるおよび/またはカビの増殖を抑制する作用を意味する。また、防カビ組成物とは、防カビ作用を有する組成物を意味する。
カビとして、例えば、Trichophyton rubrum・Trichophyton mentagrophytes・Trichophyton tonsurans・Microsporum canis・Microsporum gypseum・Trichophyton verrucosumなどの白癬菌や、 Aspergillus niger ・ Aspergillus ochraceus ・Aspergillus oryzaeなどのコウジカビ、食品などに生えるEupenicillium属、Hailer属、Penicilliopsis属、Talaromyces属、Trichocoma属に属するアオカビ、JISの抗カビ試験で指定されているEurotium tonophilum、Penicillium citrinum、Penicillium pinophilum、Rhizopus oryzae、Cladosporium cladosporioides、Aureobasidium pullulans、Trichoderma virens、Chaetomiなどが挙げられる。
【0012】
本明細書において、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質とは、植物、動物、微生物などの生命体を構成する物質もしくは生命体が産生してその生命体の体外もしくは体内に存在する物質、もしくは自然現象により形成あるいは変性した物質であって、防カビ作用を有するものを意味する。
また、本明細書において、天然有機化合物および/または天然無機物質とは、植物、動物、微生物、または無機物などからの抽出物等のほか、それと同じものが天然にも存在している合成品も含む概念である。
第1の実施形態の防カビ組成物は、天然有機化合物を含むことが好ましい。
具体的な天然有機化合物としては、カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートなどのカテキン類や、シトラール、ノナナール、フェニルアセトアルデヒド、ペリルアルデヒド及びシンナムアルデヒドなどのアルデヒド類、リモネン、カルベオール、テルピネオールなどのテルペン類、メントール、1,8-シネオール及び1,4-シネオールなどのメンタン類、チモール、カルバクロールなどのフェノール類、ユーカリ油、レモングラス油、ティートリー油、シナモン油、タイム油、カモミール油、ラベンダー油、ヒノキ油、ラベンサラ油、フェンネル油などの精油類、キトサン、孟宗竹抽出物、からし抽出物、ワサビ抽出物、茶葉抽出ポリフェノール、樟脳、オイゲノール、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。このうち、本発明の構成を適用することで防カビ作用をより増強できるため、下記一般式(1)で表される2置換フェノール類および一般式(2)で表されるホルミル基もしくはイソチオシアネート基を有する化合物のいずれか一つ以上が第1実施形態の防カビ組成物に含まれることが好ましい。
【0013】
【0014】
【0015】
一般式(1)で表される化合物は、チモール(別名:5-メチル-2-イソプロピルフェノール)、カルバクロール2-メチル-5-イソプロピルフェノール(別名:2-メチル-5-イソプロピルフェノール)、オイゲノール(別名:4-アリル-2-メトキシフェノール)、o-オイゲノール(別名:2-アリル-6-メトキシフェノール)、ジヒドロオイゲノール(別名:2-メトキシ-4-プロピルフェノール)等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)で表される化合物としては、ゲラニアール(別名:(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール)、ネラール(別名:(Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール)、シトラール(ゲラニアールとネラールの混合物)、シンナムアルデヒド(別名:(E)-3-フェニルプロペナール)、(Z)-3-フェニルプロペナール、アリルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0017】
更には、本発明の構成を適用することで防カビ作用をより増強させることができるため、シンナムアルデヒド、チモール、オイゲノール、カルバクロール、およびシトラールからなる群から選択される1種または2種以上が第1実施形態の防カビ組成物に含まれることがより好ましい。
【0018】
また、第1実施形態の防カビ組成物は、有効成分として一価の銅化合物粒子を含有する。
なお、一価の銅化合物粒子は非常に高い抗菌・抗ウイルス性があることが知られている。そのメカニズムについては明確ではないが、空気中あるいは飛沫中の水分と接触すると、一価の銅イオンが溶出し、溶出した一価の銅イオンは細菌やウイルスと接触することで電子を放出し、その際に、発生した活性種により何らかのダメージを与えると考えられる。したがって第1の実施形態の防カビ組成物は、抗菌・抗ウイルスのために使用することも可能である。
また、一価の銅化合物粒子には本発明の目的を達することができる範囲において、二価銅あるいは0価銅など他の酸化状態の銅元素を含んでいても構わない。
【0019】
第1の実施形態の防カビ組成物は、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と、一価の銅化合物粒子とを併用することで、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質を単独で使用する以上の防カビ作用を示す。
【0020】
第1の実施形態の防カビ組成物の製造方法は特に限定されず、当業者が適宜設定でき、例え防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と、一価の銅化合物粒子とを混合するなどすればよい。
第1の実施形態において、防カビ作用を有する天然有機化合物および/または天然無機物質と、一価の銅化合物粒子の含有割合は特に限定されず、当業者が適宜設定でき、例えば、重量比で「天然有機化合物および/または天然無機物質」:「一価銅化合物粒子」=1:0.1~1:100とすることができる。
【0021】
第1の実施形態の防カビ組成物は、本発明の目的を達することができる限り、他の成分を含んでいてもよく、特に限定されない。
例えば第1の実施形態の防カビ組成物は、水や低級アルコールなどの分散媒を含んでもよい。低級アルコールは、炭素数が5以下のアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコールとすることができる。また、これらの分散媒は2種以上混合するようにしてもよい。本実施形態の防カビ剤に含まれる分散媒の含有量は、用途や被処理物の種類等に応じて変更可能である。さらに一価の銅化合物粒子の分散安定性を高めるための分散剤を用いてもよい。分散剤としては、例えば界面活性剤や高分子系分散剤を用いることができる。
【0022】
界面活性剤としては、具体的には、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を使用できる。アニオン系界面活性剤としては、親水基としてカルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つものとすることができる。また、カルボン酸系としては、例えば石鹸の主成分である脂肪酸塩やコール酸塩とすることができる。また、スルホン酸系としては合成洗剤に多く使われる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。より具体的には、脂肪酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリウム石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩などのカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などのスルホン酸塩、アルキルリン酸カリウム塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸などがあげられる。これらは単独または複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、ノニオン系界面活性剤としては、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物および高級アルコールエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸エチレンオキシド付加物およびポリエチレングリコール脂肪酸エステル、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物および脂肪酸アミドエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、非イオン界面活性剤グリセリンおよびペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド脂肪酸、アルカノールアミドなどがあげられる。これらは単独または複数を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
さらに、高分子系分散剤としては、ポリウレタンプレポリマー、スチレン・ポリカルボン酸共重合体、リグニンスルホン酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、ゼラチン、さらに、オリゴマーおよびプレポリマーとしては、不飽和ポリエステル、不飽和アクリル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、マレイミド、ポリエン/ポリチオールや、アルコキシオリゴマーなどが用いられる。
【0025】
[第2実施形態]
次に本発明の実施形態の一例である第2の実施形態の防カビ組成物について説明する。第1の実施形態と共通する部分については説明を省略する。例えば、一価の銅化合物粒子や組成物中に必要に応じて含有してもよいその他の構成成分は第1の実施形態に記載された内容に準ずる。
第2の実施形態の防カビ組成物は、有効成分として、一価銅化合物粒子と、下記一般式(1)であらわされる化合物及び/または下記一般式(2)であらわされる化合物とを含む。第2の実施形態においても一般式(1)であらわされる化合物および/または一般式(2)であらわされる化合物、一価銅化合物粒子の含有割合は特に限定されず、当業者が適宜設定でき、例えば、重量比で「一般式(1)であらわされる化合物および/または一般式(2)であらわされる化合物」:「一価銅化合物粒子」=1:0.1~1:100とすることができる。
【0026】
【0027】
【0028】
一般式(1)で表される化合物は 5-メチル-2-イソプロピルフェノール(別名:チモール)、2-メチル-5-イソプロピルフェノール(別名:カルバクロール)、4-メチル-2-イソプロピルフェノール、2-メチル-4-イソプロピルフェノール、3-メチル-5-イソプロピルフェノール、2-メチル-6-イソプロピルフェノール、2-メチル-3-イソプロピルフェノール、3-メチル-2-イソプロピルフェノール、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、4-メチル-3-イソプロピルフェノール、5-メチル-2-プロピルフェノール、2-メチル-5-プロピルフェノール、4-メチル-2-プロピルフェノール、2-メチル-4-プロピルフェノール、3-メチル-5-プロピルフェノール、2-メチル-6-プロピルフェノール、2-メチル-3-プロピルフェノール、3-メチル-2-プロピルフェノール、3-メチル-4-プロピルフェノール、4-メチル-3-プロピルフェノール、2,3-ジエチルフェノール、3,4-ジエチルフェノール、2,4-ジエチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、5-アリル-2-メトキシフェノール、2-アリル-5-メトキシフェノール4-アリル-2-メトキシフェノール(別名:オイゲノール)、2-アリル-4-メトキシフェノール、3-アリル-5-メトキシフェノール、2-アリル-6-メトキシフェノール(別名:o-オイゲノール)、2-アリル-3-メトキシフェノール、3-アリル-2-メトキシフェノール、3-アリル-4-メトキシフェノール、4-アリル-3-メトキシフェノール、5-メチル-2-メトキシフェノール、2-メチル-5-メトキシフェノール、4-メチル-2-メトキシフェノール、2-メチル-4-メトキシフェノール、3-メチル-5-メトキシフェノール、2-メチル-6-メトキシフェノール、2-メチル-3-メトキシフェノール、3-メチル-2-メトキシフェノール、3-メチル-4-メトキシフェノール、4-メチル-3-メトキシフェノール、5-メトキシ-2-プロピルフェノール、2-メトキシ-5-プロピルフェノール、4-メトキシ-2-プロピルフェノール、2-メトキシ-4-プロピルフェノール(別名:ジヒドロオイゲノール)、3-メトキシ-5-プロピルフェノール、2-メトキシ-6-プロピルフェノール、2-メトキシ-3-プロピルフェノール、3-メトキシ-2-プロピルフェノール、3-メトキシ-4-プロピルフェノール、4-メトキシ-3-プロピルフェノール、5-アリル-2-イソプロピルフェノール、2-アリル-5-イソプロピルフェノール、4-アリル-2-イソプロピルフェノール、2-アリル-4-イソプロピルフェノール、3-アリル-5-イソプロピルフェノール、2-アリル-6-イソプロピルフェノール、2-アリル-3-イソプロピルフェノール、3-アリル-2-イソプロピルフェノール、3-アリル-4-イソプロピルフェノール、4-アリル-3-イソプロピルフェノール、5-アリル-2-メチルフェノール、2-アリル-5-メチルフェノール、4-アリル-2-メチルフェノール、2-アリル-4-メチルフェノール、3-アリル-5-メチルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、2-アリル-3-メチルフェノール、3-アリル-2-メチルフェノール、3-アリル-4-メチルフェノール、4-アリル-3-メチルフェノール等が挙げられる。
【0029】
一般式(2)で表される化合物としては、(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(別名:ゲラニアール)、(Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(別名:ネラール)、シトラール(ゲラニアールとネラールの混合物)、(E)-3-フェニルプロペナール(別名:trans-シンナムアルデヒド)または(Z)-3-フェニルプロペナール(別名:cis-シンナムアルデヒド)であるシンナムアルデヒド、アリルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0030】
本発明の構成を適用することで防カビ作用をより増強できるため、上記一般式(1)で表される2置換フェノール類である化合物または一般式(2)で表されるホルミル基もしくはイソチオシアネート基を有する化合物は、シンナムアルデヒド、チモール、オイゲノール、カルバクロール、およびシトラールからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0031】
第1及び第2実施形態の防カビ組成物は、様々な用途に展開することができる。例えば、第1または第2実施形態の組成物をそのままカビを死滅および/または増殖抑制するために用いることができる。例えば、第1または第2実施形態の防カビ組成物をそのままスプレーで噴霧したり、不織布に含侵させてウェットシート様にして清掃材としてもよい。スプレー剤として被処理物(噴霧対象物)に噴霧できるように構成する場合、ノズルからの良好な放出性を有していることが好ましいため、一価の銅化合物粒子の平均粒子径は、10nmから100μmであることが特に好ましい。
【0032】
また、第1または第2実施形態の実施形態の防カビ組成物を、繊維構造体や樹脂基材に固定して用いることもできる。固定する方法としては、一般的なバインダーと混合してスラリーを作成し、浸漬法、スプレー法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの方法で塗布する方法が用いられる。また、第1または第2実施形態の防カビ組成物に含まれる一価の銅化合物粒子の表面に、シランモノマーを化学結合させ、その後に第1または第2実施形態の実施形態の防カビ組成物を溶剤と混合してスラリーを作成し、該スラリーを基材表面に塗布したのち、加熱乾燥によるグラフト重合や、赤外線、紫外線、電子線、γ線などの放射線照射によるグラフト重合を形成させ、基材表面と化学結合させて固定してもよい。
【0033】
上記バインダー成分としては、基材との密着性が良いものであれば特に限定はされないが、例えば合成樹脂では、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、繊維素系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂を用いることができる。また、天然樹脂としては、ひまし油、亜麻仁油、桐油などの乾性油などを用いることができる。
【0034】
具体的な応用例としては、対象部材としては、例えば、繊維構造体、フィルム、シートを挙げることができる。塗膜が形成可能な繊維構造体としては、例えば織物や不織布が挙げられ、それらの具体的な応用例としては、エアコン用フィルター、空気清浄機用フィルター、掃除機用フィルター、換気扇用フィルター、車両用フィルター、空調用フィルターなどが挙げられる。これらの繊維構造体は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ポリテトラフフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ケブラー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、レーヨン、キュプラ、テンセル、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、綿、麻、羊毛、絹、竹、などの高分子材料や、アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮、銅、タングステン、チタニウムなどの金属を含む繊維で構成されている。
【0035】
フィルムの材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン-エチレン共重合体などの樹脂を含むものが挙げられる。
【0036】
また、シートとしては、ポリカーボネート樹脂シート、フィルム塩化ビニルシート、フッ素樹脂シート、ポリエチレンシート、シリコーン樹脂シート、ナイロンシート、ABSシート、ウレタンシートなどの高分子からなるシートやチタニウム、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、真鍮などの金属を含むシートが挙げられる。
【0037】
これらのフィルムやシートの具体的な応用例としては、壁紙や窓、エアコンのフィン材、天井・車両用シート、ブラインド、農業用資材、シートシャッターなど、様々な分野に利用できる。
【0038】
さらに第1または第2実施形態の防カビ組成物は、混錬して樹脂部材として使うこともできる。例えば、成形品であったり、シート状、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状(網状構造)、ハニカム状、不織布状などの形状を有していたりしてもよい。繊維状である場合には、ナノファイバー(5nm以上、1μm未満の平均繊維径を有する繊維)であってもよい。なお、平均繊維径とは、複数のナノファイバーの繊維径の平均値をいう。ナノファイバーの繊維径は、ナノファイバーを顕微鏡により画像観察することで測定できる。具体的には、複数のナノファイバーを電子顕微鏡などで観察し、得られた観察画像においてランダムに幾つかのナノファイバーを選択し、画像処理ソフトによって各ナノファイバーの繊維径を測定して、それら繊維径の平均値を算出することができる。
【0039】
また第1または第2の実施形態の防カビ組成物を用いた部材では、添加剤として、可塑剤、乾燥剤、硬化剤、皮張り防止剤、平坦化剤、たれ防止剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、粘性調整剤、安定剤、乾燥調整剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、他の抗ウイルス組成物、抗菌組成物、防カビ組成物と第1または第2の実施形態の防カビ組成物が1の部材において併用されていてもよく、特に限定されない。
【実施例0040】
次に、被験物質がカルバクロール、オイゲノール、シトラール、チモール、またはtrans-シンナムアルデヒドである実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
(防カビ性試験)
抗菌製品技術協議会の「防カビ剤の防カビ効力評価試験法」に準拠して防カビ性を試験した。試験菌をポテトデキストロース培地(BD社製potato dextrose ager 31.2 gを精製水800mLに溶解して調製)に移植し、25±1 ℃で7~14日間培養した。培養した試験菌の分生子を0.005 %スルホコハク酸ジオクチルナトリウム溶液に懸濁させ子実体・菌糸体を除去した後、ぶどう糖ペプトン培地で希釈し、分生子が1.0×105~1.0×106 /mlとなるようにして接種用菌液を調製した。
【0042】
オートクレーブ滅菌後、50~60℃に冷却した「1.5%寒天(BD社製 BactoTM Agar )を加えたぶどう糖ペプトン培地」に各試験溶液を培地の1/99 量加え、十分に混合後、シャーレに分注・固化させて感受性測定用平板とした。同様の手順で、試験溶液無添加およびエタノールのみを同量添加した平板を調製し、この2種類の平板を対照試験用平板とした。接種用菌液を感受性測定用平板および2種類の対照試験用平板にニクロム線ループで1cm程度画線塗沫し、25 ℃±1 ℃、7日間培養した。
培養後、感受性測定用平板を肉眼観察して試験菌の発育の有無を調べ、発育が認められな
い試料の最低濃度を最小発育阻止濃度とした。
【0043】
(試験1)
カルバクロールをエタノールに溶解して試験溶液1―1を調製した。試験溶液1―1をエタノールで段階希釈し、試験菌にPenicillium pinophilum(アオカビ)及び Aspergillus niger(クロカビ)を用いて、上述の防カビ性試験に従って各試験菌におけるカルバクロールのみを使用した場合の最小発育阻止濃度を算出した。
次に濃度3.12wt%となるよう、ヨウ化銅粒子をエタノールに分散してヨウ化銅エタノール分散液を調製した。カルバクロールをヨウ化銅エタノール分散液に溶解して、実施例である試験溶液1―2を調製した。試験溶液1―2をヨウ化銅エタノール分散液で段階希釈し、試験菌にPenicillium pinophilum(アオカビ)及び Aspergillus niger(クロカビ)を用いて上述同様の防カビ性試験を実施し、カルバクロールとヨウ化銅粒子を併用した場合の最小発育阻止濃度を算出した。
【0044】
(試験2)
実施例1のカルバクロールをオイゲノールに替えた試験溶液2―1及び実施例である試験溶液2―2を調製し、試験菌にPenicillium pinophilum(アオカビ)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、オイゲノールのみ用いた場合及びオイゲノールとヨウ化銅粒子を併用した場合それぞれの最小発育阻止濃度を算出した。
【0045】
(試験3)
実施例1のカルバクロールをシトラールに替えた試験溶液3―1及び実施例である試験溶液3―2を調製し、試験菌にPenicillium pinophilum(アオカビ)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、シトラールのみ用いた場合及びシトラールとヨウ化銅粒子を併用した場合それぞれの最小発育阻止濃度を算出した。
【0046】
(試験4)
実施例1のカルバクロールをチモールに替えた試験溶液4―1及び実施例である試験溶液4―2を調製し、試験菌にAspergillus niger(クロカビ)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、チモールのみ用いた場合及びチモールとヨウ化銅粒子を併用した場合それぞれの最小発育阻止濃度を算出した。
【0047】
(試験5)
実施例1のカルバクロールをtrans-シンナムアルデヒドに替えた試験溶液5―1及び実施例である試験溶液5―2を調製し、試験菌にAspergillus niger(クロカビ)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、trans-シンナムアルデヒドのみ用いた場合及びtrans-シンナムアルデヒドとヨウ化銅粒子を併用した場合それぞれの最小発育阻止濃度を算出した。
【0048】
(比較例1)
3.12wt%となるよう、ヨウ化銅粒子をエタノールに分散して試験溶液6を調製した。上述の防カビ性試験に従って、試験菌:Penicillium pinophilum(アオカビ)及び Aspergillus niger(クロカビ)の発育阻止の有無を確認した。
【0049】
(比較例2)
エタノールを試験溶液7とし、上述の防カビ性試験に従って、試験菌:Penicillium pinophilum(アオカビ)及び Aspergillus niger(クロカビ)の発育阻止の有無を確認した。
【0050】
試験1~5及び比較例1~2の結果を表1に示す。試験菌の発育が認められた場合は「+」、認められなかった場合は「-」で表記した。
【0051】
【0052】
上記表1の試験結果からわかる通り、アオカビ、クロカビのいずれに対しても、ヨウ化銅単独添加では発育阻止効果が認められなかった。また、試験1から理解できるとおり、カルバクロール単独添加の場合、200ppmでは発育阻止効果が認められたものの、100ppmでは発育阻止効果が認められなかった。
一方、ヨウ化銅とクルバクロールを併用した実施例の組成物では、各々単独添加では発育阻止効果が認められなかった濃度でも試験菌の発育阻止効果が認められ、ヨウ化銅とクロバクロールを併用した実施例の組成物では、アオカビ、クロカビへの発育阻止効果が向上することがわかる。
同様に試験2から、ヨウ化銅とオイゲノールを併用した実施例の組成物ではアオカビへの発育阻止効果が理解できる。試験3から、ヨウ化銅とシトラールを併用した実施例の組成物では、アオカビへの発育阻止効果が理解できる。試験4から、ヨウ化銅とチモールを併用した実施例の組成物では、クロカビへの発育阻止効果が理解できる。試験5から、ヨウ化銅とtrans-シンナムアルデヒドを併用した実施例の組成物では、クロカビへの発育阻止効果が向上していることがわかる。