(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152863
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】皮膚化粧料用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20231005BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20231005BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231005BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231005BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/58
A61K8/44
A61K8/37
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046760
(22)【出願日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022058897
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】山科 拓也
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一博
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】各種成分を配合した際に、透明性及び保存安定性に優れる皮膚化粧料用組成物を提供する。
【解決手段】下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含有し、ディスク状ミセルを含む皮膚化粧料用組成物。
成分A:リン脂質
成分B:ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩
成分C:炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリル
成分D:炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリル
成分E:水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含有し、ディスク状ミセルを含む皮膚化粧料用組成物。
成分A:リン脂質
成分B:ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩
成分C:炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリル
成分D:炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリル
成分E:水
【請求項2】
成分Bは下記成分B1であり、成分Cは下記成分C1であり、成分Dは下記成分D1である、請求項1に記載の皮膚化粧料用組成物。
成分B1:ココイルグルタミン酸塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ココイルアスパラギン酸塩、ラウロイルアスパラギン酸塩、ミリストイルアスパラギン酸塩、及びジラウロイルグルタミン酸リシン塩からなる群より選ばれた1以上のアシルアミノ酸塩
成分C1:ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-10、カプリン酸ポリグリセリル-10、及びオレイン酸ポリグリセリル-10からなる群より選ばれた1以上の脂肪酸ポリグリセリル
成分D1:ラウリン酸モノグリセリル、カプリル酸モノグリセリル、及びカプリン酸モノグリセリルからなる群より選ばれた1以上の脂肪酸モノグリセリル
【請求項3】
成分A及び成分Cの合計量に対する成分Cの質量比[A/(A+C)]は0.04~0.3である請求項1又は2に記載の皮膚化粧料用組成物。
【請求項4】
成分A及び成分Cの合計量に対する成分Dの質量比[D/(A+C)]は0.15~2.0である請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚化粧料用組成物。
【請求項5】
成分A及び成分Cの合計量に対する成分Bの質量比[B/(A+C)]は0.3~4.0である請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚化粧料用組成物。
【請求項6】
さらに、下記成分Fを含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の皮膚化粧料用組成物。
成分F:油性成分
【請求項7】
さらに、下記成分Gを含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の皮膚化粧料用組成物。
成分G:直鎖状又は分岐鎖状の高級アルコール
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膚化粧料用組成物を含む皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚化粧料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌の水分の蒸散を防ぎ、角質を柔軟にするなどエモリエント効果があり、保湿性に寄与することから、油分を水系化粧料へ配合することが試みられている。水系化粧料に、水に難溶性の油分を配合するための技術として、ミセルによる可溶化(例えば、特許文献1)や、キャリアとしてリポソーム(閉鎖小胞体)(例えば、特許文献2)を用いる技術、キャリアとしてバイセル構造体を用いる技術(例えば、特許文献3~5)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-262653号公報
【特許文献2】特開平5-286824号公報
【特許文献3】国際公開第2020/066895号
【特許文献4】国際公開第2018/061854号
【特許文献5】国際公開第2017/090740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油分等の水に難溶性の成分や水溶性成分を多量に配合した場合に透明な水系化粧料を調製することは極めて困難であった。例えば、ノニオン界面活性剤よりミセルを形成する場合、ミセルの大きさは通常10~20nm程度と非常に小さく、ミセル内に油分を取り込むスペースが充分ではなく、透明性が不充分となることがある。
【0005】
また、リポソームを用いる技術にも問題がある。リポソームは100nmオーダーのサイズで、ミセルよりも大きく、リポソーム膜内に各種成分をより多く配合できる。しかし、リポソームの粒径に依存して透明性は低下し、特に、低粘度のローション剤型に配合した場合は、保存安定性に劣る。
【0006】
従って、本発明の目的は、各種成分を配合した際に、透明性及び保存安定性に優れる皮膚化粧料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、リン脂質と、特定のアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩と、特定の脂肪酸ポリグリセリルと、特定の脂肪酸モノグリセリルと、水とを含有し、ディスク状ミセルを含む皮膚化粧料用組成物によれば、各種成分を配合した際に、透明性及び保存安定性に優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含有し、ディスク状ミセルを含む皮膚化粧料用組成物を提供する。
成分A:リン脂質
成分B:ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩
成分C:炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリル
成分D:炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリル
成分E:水
【0009】
成分Bは下記成分B1であり、成分Cは下記成分C1であり、成分Dは下記成分D1であることが好ましい。
成分B1:ココイルグルタミン酸塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ココイルアスパラギン酸塩、ラウロイルアスパラギン酸塩、ミリストイルアスパラギン酸塩、及びジラウロイルグルタミン酸リシン塩からなる群より選ばれたアシルアミノ酸塩
成分C1:ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-10、カプリン酸ポリグリセリル-10、及びオレイン酸ポリグリセリル-10からなる群より選ばれた1以上の脂肪酸ポリグリセリル
成分D1:ラウリン酸モノグリセリル、カプリル酸モノグリセリル、及びカプリン酸モノグリセリルからなる群より選ばれた1以上の脂肪酸モノグリセリル
【0010】
成分A及び成分Cの合計量に対する成分Cの質量比[A/(A+C)]は0.04~0.3であることが好ましい。
【0011】
成分A及び成分Cの合計量に対する成分Dの質量比[D/(A+C)]は0.15~2.0であることが好ましい。
【0012】
成分A及び成分Cの合計量に対する成分Bの質量比[B/(A+C)]は0.3~4.0であることが好ましい。
【0013】
上記皮膚化粧料用組成物は、さらに、下記成分Fを含有することが好ましい。
成分F:油性成分
【0014】
上記皮膚化粧料用組成物は、さらに、下記成分Gを含有することが好ましい。
成分G:直鎖状又は分岐鎖状の高級アルコール
【0015】
また、本発明は、上記皮膚化粧料用組成物を含む皮膚化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の皮膚化粧料用組成物によれば、各種成分を配合した際に、透明性及び保存安定性に優れる。このため、油分等の水に難溶性の成分などの各種成分を比較的多量に配合した場合であっても、皮膚化粧料用組成物は透明性及び保存安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、リン脂質;ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩;炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリル;炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリル;及び水を少なくとも含む。
【0018】
なお、本明細書において、リン脂質を「成分A」、ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩を「成分B」、炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリルを「成分C」、炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリルを「成分D」、水を「成分E」とそれぞれ称する場合がある。
【0019】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、さらに、油性成分を含んでいてもよい。なお、本明細書において、上記油性成分を「成分F」と称する場合がある。また、本発明の皮膚化粧料用組成物は、さらに、直鎖状又は分岐鎖状の高級アルコールを含んでいてもよい。なお、本明細書において、上記直鎖状又は分岐鎖状の高級アルコールを「成分G」と称する場合がある。
【0020】
すなわち、本発明の皮膚化粧料用組成物は、成分A、成分B、成分C、成分D、及び成分Eを少なくとも含む。本発明の皮膚化粧料用組成物は、さらに成分F及び/又は成分Gを含んでいてもよい。また、本発明の皮膚化粧料用組成物は、上記成分A~G以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の皮膚化粧料用組成物に含まれる各成分、例えば、成分A、成分B、成分C、成分D、成分F、成分G、及び他の成分等の各成分は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0021】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、ディスク状ミセルを含む。上記ディスク状ミセルは、成分A~Dを構成成分として含む、ディスク状の脂質二分子膜構造(いわゆる、バイセル構造)を有する。上記ディスク状ミセルは、複数のディスク状ミセルが平面状に積層した球状あるいは柱状の構造を形成していてもよい。上記ディスク状ミセルは、ミセルとリポソームの中間の、20~100nm程度の粒径を有する。上記ディスク状ミセルは、ディスク状ミセルの構造中に油性成分等の水に難溶性の成分や水性成分をとりこむことができる。また、上記ディスク状ミセルを含む態様であれば透明性にも優れる。また、本発明の皮膚化粧料用組成物は、ディスク状ミセルに加えてリポソームを含んでいてもよい。
【0022】
[成分A]
成分Aはリン脂質である。成分Aは上記ディスク状ミセルを形成する主成分である。成分Aは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0023】
成分Aとしては、リン酸残基を含む複合脂質であって、天然リン脂質、合成リン脂質、天然由来のリン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質などが挙げられる。上記リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然リン脂質;ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイル・オレオイルホスファチジルコリン等の合成リン脂質;水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリン等の水素添加リン脂質などが挙げられる。このうち、保存安定性に優れる観点から、水素添加リン脂質が好ましく、水素添加大豆レシチンがより好ましい。
【0024】
成分Aとしては、市販品を用いることができる。水素添加大豆レシチンの市販品としては、例えば、商品名「COATSOME NC-21」、商品名「COATSOME NC-61」(以上、日油株式会社製)、商品名「NIKKOL レシノールS-10EX」、商品名「NIKKOL レシノールS-10E」、商品名「NIKKOL レシノールS-10M」(以上、日光ケミカルズ株式会社製)、商品名「ベイシス LS-60HR」(日清オイリオグループ株式会社製)、商品名「phytopresome OR」、商品名「phytopresome」(以上、日本精化株式会社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の皮膚化粧料用組成物において、成分A及び成分Cの合計量に対する成分Aの質量比[A/(A+C)]は、0.04~0.3であることが好ましく、より好ましくは0.04~0.2、さらに好ましくは0.05~0.19、さらに好ましくは0.06~0.19、特に好ましくは0.07~0.18である。上記質量比が0.04以上であると、より安定的にディスク状ミセルを形成することができる。上記質量比が0.3以下であると、ディスク状ミセルを形成しない余剰の成分Aを少なくし、透明性により優れる。
【0026】
[成分B]
成分Bは、ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩である。成分Bは、主として成分A、成分C、及び成分Dにより形成される二分子膜構造の隙間に一部が入り込み、上記隙間に入り込まない成分Bと反発し合うことによるものと推測され、形成されるディスク状ミセルを小サイズとすることができ、皮膚化粧料用組成物の透明性に優れる。成分Bは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0027】
上記アシルアミノ酸構造としては、ココイルグルタミン酸構造、ラウロイルグルタミン酸構造、ミリストイルグルタミン酸構造、ココイルアスパラギン酸構造、ラウロイルアスパラギン酸構造、ミリストイルアスパラギン酸構造が挙げられる。成分Bは、上記アシルアミノ酸構造を一種のみ有していてもよいし、二種以上有していてもよい。また、上記アシルアミノ酸構造は、上記アシル基部分が上記アミノ酸部分の一箇所のカルボキシル基のみに結合していてもよいし、二箇所のカルボキシル基に結合していてもよい。
【0028】
上記アシルアミノ酸構造は、上記アシル基部分及び上記アミノ酸部分を、それぞれ、一種のみ有していてもよいし、二種以上有していてもよい。
【0029】
上記アシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸は、上記アシルアミノ酸構造以外に、ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基以外のその他のアシル基部分や、グルタミン酸及びアスパラギン酸以外のその他のアミノ酸部分を有していてもよい。上記その他のアミノ酸部分としては、リシンなどが挙げられる。
【0030】
上記その他のアシル基部分は、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸と結合していてもよいし、上記その他のアミノ酸部分と結合していてもよい。また、上記その他のアミノ酸部分は、ココイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、上記その他のアシル基部分、グルタミン酸、及びアスパラギン酸のいずれと結合していてもよい。
【0031】
上記アミノ酸部分(グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸)は、上記アシル基部分との結合以外に、グルタミン酸、アスパラギン酸、上記その他のアミノ酸等のアミノ酸や、他の上記アシル基アミノ酸構造と結合していてもよい。このようなアシルアミノ酸としては、ジラウロイルグルタミン酸リシンなどが挙げられる。
【0032】
成分Bは、アシルアミノ酸の塩であり、上記アシルアミノ酸構造中のグルタミン酸部分及び/又はアスパラギン酸部分が塩を形成していてもよいし、上記その他のアミノ酸部分を有する場合は上記その他のアミノ酸部分が塩を形成していてもよい。上記塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
【0033】
成分Bとしては、例えば、ココイルグルタミン酸塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ココイルアスパラギン酸塩、ラウロイルアスパラギン酸塩、ミリストイルアスパラギン酸塩、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩などが挙げられる。なお、本明細書において、ココイルグルタミン酸塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ココイルアスパラギン酸塩、ラウロイルアスパラギン酸塩、ミリストイルアスパラギン酸塩、及びジラウロイルグルタミン酸リシン塩からなる群より選ばれた1以上のアシルアミノ酸塩を「成分B1」と称する場合がある。成分Bとしては、中でも、成分B1であることが好ましい。
【0034】
成分B1としては、より具体的には、例えば、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ミリストリルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ココイルアスパラギン酸ナトリウム、ココイルアスパラギン酸カリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸カリウム、ミリストイルアスパラギン酸ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸カリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンカリウムなどが挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚化粧料用組成物において、成分A及び成分Cの合計量に対する成分Bの質量比[B/(A+C)]は、0.3~4.0であることが好ましく、より好ましくは0.3~2.2、さらに好ましくは0.4~2.1、特に好ましくは0.5~2.0である。上記質量比が0.3以上であると、形成されるディスク状ミセルをより小サイズとすることができ、皮膚化粧料用組成物の透明性により優れる。上記質量比が4.0以下であると、皮膚化粧料用組成物の泡立ちや白濁をより起こりにくくすることができる。
【0036】
[成分C]
成分Cは、炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリルである。成分Cは、成分Aとの極性差が大きく、ディスク状ミセルの縁を主として形成し、二分子膜構造の曲率を高め、ディスク状ミセルを小サイズとすることができる。また、皮膚への低刺激性に優れる。成分Cは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0037】
成分Cにおける脂肪酸の炭素数は、8~18であり、好ましくは8~16である。上記炭素数が上記範囲内であることにより、ディスク状ミセルを小サイズとすることができる。なお、成分Cにおける脂肪酸の炭素数は、成分C中の脂肪酸の炭素数の総数である。上記脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。
【0038】
成分Cとしては、例えば、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-10、カプリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10などが挙げられる。なお、本明細書において、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-10、カプリン酸ポリグリセリル-10、及びオレイン酸ポリグリセリル-10からなる群より選ばれた1以上の脂肪酸ポリグリセリルを「成分C1」と称する場合がある。成分Cとしては、中でも、成分C1であることが好ましい。
【0039】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の成分A及び成分Cの合計割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物の総量100質量%に対して、0.0001~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.0005~8.0質量%、さらに好ましくは0.001~6.0質量%である。上記合計割合が0.0001質量%以上であると、ディスク状ミセルが充分な量で形成され、透明性及び保存安定性により優れる。上記合計割合が10.0質量%以下であると、ディスク状ミセルを形成しない余剰の成分A及び成分Cを少なくし、透明性により優れる。
【0040】
[成分D]
成分Dは、炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリルである。成分Dは、成分Aとの極性差が大きく、主に成分Cにより形成されるディスク状ミセル膜の縁において、成分C間に入り込み、縁の密度を高くすることにより縁を補強するものと推測され、ディスク状ミセルを安定化させ、保存安定性に優れる。また、皮膚への低刺激性に優れる。成分Dは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0041】
成分Dとしては、例えば、ラウリン酸モノグリセリル、カプリル酸モノグリセリル、カプリン酸モノグリセリルなどが挙げられる。なお、本明細書において、ラウリン酸モノグリセリル、カプリル酸モノグリセリル、及びカプリン酸モノグリセリルからなる群より選ばれた1以上の脂肪酸モノグリセリルを「成分D1」と称する場合がある。成分Dとしては、中でも、成分D1であることが好ましい。
【0042】
本発明の皮膚化粧料用組成物において、成分A及び成分Cの合計量に対する成分Dの質量比[D/(A+C)]は、0.15~2.0であることが好ましく、より好ましくは0.3~2.0、さらに好ましくは0.35~1.95、特に好ましくは0.4~1.9である。上記質量比が0.15以上であると、ディスク状ミセルがより安定化し、保存安定性により優れる。上記質量比が2.0以下であると、皮膚化粧料用組成物の増粘を抑制することができる。
【0043】
[成分E]
成分Eは水である。成分Eは本発明の皮膚化粧料用組成物のマトリックスである。また、成分Eを含むことにより。本発明の皮膚化粧料用組成物にみずみずしさとさっぱり感を付与することができ、さらには本発明の皮膚化粧料用組成物を水系ローション等の皮膚化粧料に適用することができる。
【0044】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の成分Eの含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物の総量100質量%に対して、30.0~99.0質量%が好ましく、より好ましくは35.0~95.0質量%、さらに好ましくは40.0~90.0質量%である。
【0045】
[成分F]
成分Fは油性成分である。成分Fとしては、例えば、植物油、エステル油、シリコーン油、炭化水素油、ロウ、高級脂肪酸、成分G以外の高級アルコールなどが挙げられる。本発明の皮膚化粧料用組成物は上記ディスク状ミセルを含むことにより、成分Fを多量に配合することができる。成分Fは本発明の皮膚化粧料用組成物において、肌の水分の蒸散を防ぎ、角質を柔軟にするなどのエモリエント成分として用いることができる。成分Fは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお成分Fには、成分Gに該当するものは含まれないものとする。
【0046】
上記植物油としては、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、カカオバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油、ハッカ油、アルガンオイル、カロットオイル、ラベンダー油、シュガースクワラン、ダマスクバラ花ロウ、センチフォリアバラ花ロウ、ソケイ花ワックス、椿油、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボカド油、水素添加大豆油等)などが挙げられる。
【0047】
上記エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル、安息香酸アルキル(C12-15)などが挙げられる。
【0048】
上記シリコーン油としては、特に限定されないが、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0049】
上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。
【0050】
上記ロウとしては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリン、ヒマワリ種子ロウなどが挙げられる。
【0051】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
【0052】
上記成分G以外の高級アルコールとしては、ステロール等の脂環を有する高級アルコールなどが挙げられる。
【0053】
成分Fは、ステロール骨格を有する成分を含むことが好ましく、ステロール及び/又はステロールエステルを含むことがより好ましい。上記ステロール及びステロールエステルは、二分子膜構造の曲率を調整し、これによりバイセル構造の安定化に寄与すると推定される。また、皮膚のバリア機能向上等のための有効成分としても配合される。ステロール及び/又はステロールエステルとしては、例えば、動物ステロール、植物ステロール(フィトステロール)等が挙げられ、例えば、コレステロール、コレスタノール、7-デヒドロコレステロール、シトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール、γオリザノールなどが挙げられる。
【0054】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の、成分A及び成分Cの合計量に対する成分Fの質量比[F/(A+C)]は、特に限定されないが、0.01以上が好ましく、より好ましくは0.02以上である。上記質量比は、1.0以下が好ましく、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。上記質量比が上記範囲内であると保存安定性に一層優れる。なお、成分Fは任意成分であり、含まれなくてもよい。すなわち、上記質量比[F/(A+C)]は0であってもよい。
【0055】
[成分G]
成分Gは直鎖状又は分岐鎖状の高級アルコールである。成分Gを含むと上記ディスク状ミセルの結晶性を低下させ、保存安定化により優れる。成分Gは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0056】
成分Gは、炭素数12~24の一価の脂肪族アルコールが好ましく、より好ましくは炭素数14~22の一価の脂肪族アルコールである。
【0057】
直鎖状の高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。分岐鎖状の高級アルコールとしては、例えば、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、イソステアリルアルコールなどが挙げられる。中でも、保存安定性により優れる観点から、分岐鎖状の高級アルコールが好ましく、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールがより好ましい。
【0058】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の、成分A及び成分Cの合計量に対する成分Gの質量比[G/(A+C)]は、特に限定されないが、0.01以上が好ましく、より好ましくは0.02以上である。上記質量比が、0.01以上であると保存安定性により優れる。上記質量比は、1.0以下が好ましく、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である。上記質量比が1.0以下であると、透明性により優れる。
【0059】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、防腐性向上等の観点から、炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有していてもよい。なお、本明細書において、上記「炭素数5~10の1,2-アルカンジオール」を「成分H」と称する場合がある。成分Hは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0060】
成分Hとしては、例えば、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール(カプリリルグリコール)、1,2-デカンジオールなどが挙げられる。中でも、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)が好ましい。
【0061】
[その他の成分]
本発明の皮膚化粧料用組成物は、上記成分A~H以外のその他の成分をさらに含有していてもよい。上記その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、成分B以外の界面活性剤(カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等)、低級アルコール、多価アルコール、紫外線吸収剤、粉体、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、増粘剤、ビタミン類、中和剤、アミノ酸、pH調整剤、美白剤、抗炎症剤、消臭剤、動植物抽出物、金属イオン封鎖剤などの添加剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0062】
本発明の皮膚化粧料用組成物の好ましい一態様は、成分A~E、成分G、及び成分Hを含み、成分Bの含有割合が、本発明の皮膚化粧料用組成物の総量100質量%に対して、2.0~10.0質量%(好ましく4.0~10.0質量%)である。
【0063】
本発明の皮膚化粧料用組成物の外観は、審美性の観点から、透明の状態のものが好ましい。また、本発明の皮膚化粧料用組成物の透明性が高いことは、配合された油性成分の凝集やクリーミングが生じていないことを意味し、非常に安定した状態であることを示している。このため本発明の皮膚化粧料用組成物の透明性は保存安定性の指標ともなる。
【0064】
本発明の皮膚化粧料用組成物のpHは、特に限定されないが、例えば、25℃において5.0~8.0であることが好ましい。
【0065】
本発明の皮膚化粧料用組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃での粘度が0.5~1000mPa・sであることが好ましく、0.5~500mPa・sであることがより好ましい。粘度測定はB型粘度計を用い、粘度に合ったローターを選択し、回転数60r/minで実施する。
【0066】
本発明の皮膚化粧料用組成物の上記ディスク状ミセルの平均粒子径は、特に限定されないが、20nm以上が好ましく、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上である。上記平均粒子径が20nm以上であると、ディスク状ミセル内に各種成分(成分Fや水溶性成分など)を取り込むスペースを確保することができる。上記平均粒子径は、100nm以下が好ましく、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。上記平均粒子径が100nm以下であると、保存安定性及び透明性により優れたものとなる。上記平均粒子径(nm)の測定は、動的光散乱光度計や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行うことができる。
【0067】
本発明の皮膚化粧料用組成物を調製するには、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いて撹拌することにより製造することができる。
【0068】
また、本発明の皮膚化粧料用組成物を、皮膚化粧料に使用される成分と共に混合等することによって、化粧水等の皮膚化粧料を製造することができる。すなわち、本発明の皮膚化粧料用組成物は、皮膚化粧料の製造に用いる原料(所謂、中間原料)とすることができる。本発明の皮膚化粧料用組成物を用いることにより、水系や低粘度の分散媒にも安定して分散させることができるため、成分F等の水に難溶性の成分など各種成分を皮膚化粧料中に配合させることができる。また、本発明の皮膚化粧料用組成物は、それ自体で皮膚化粧料として使用することもできる。
【0069】
本発明においては、上記の本発明の皮膚化粧料用組成物を含有する皮膚化粧料が得られる。なお、本明細書においては、上記「本発明の皮膚化粧料用組成物を含有する皮膚化粧料」を「本発明の皮膚化粧料」と称する場合がある。本発明の皮膚化粧料100質量%中の本発明の皮膚化粧料用組成物の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは0.1~100質量%、より好ましくは0.5~10.0質量%とすることができる。
【0070】
本発明の皮膚化粧料用組成物(又は皮膚化粧料)の剤型としては、特に限定されないが、例えば、化粧水(ローション)、クリーム、ジェル、乳液、エアゾールスプレー、ナチュラルスプレー、スティック、パウダー、ロールオン、シート(ペーパー)などの種々の剤型が挙げられる。中でも、化粧水(ローション)、クリーム、ジェル、乳液が好ましく、化粧水(ローション)がより好ましい。
【0071】
本発明の皮膚化粧料用組成物(又は皮膚化粧料)としては、特に限定されないが、例えば、保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア用化粧料、アンチエイジング化粧料(例えば、しわ抑制、たるみ抑制等を目的とする)等のスキンケア化粧料;スカルプケア化粧料(例えば、保湿、皮脂抑制等を目的とする);デオドラント化粧料;日焼け止め化粧料;シェービング化粧料;ボディ用洗浄料(例えば、ボディシャンプー、固形石鹸等)頭皮用などが挙げられる。中でも、本発明の皮膚化粧料用組成物(又は皮膚化粧料)は、スキンケア化粧料、スカルプケア化粧料であることが好ましく、スキンケア化粧料であることがより好ましい。本発明の皮膚化粧料用組成物(又は皮膚化粧料)は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【0072】
本発明の皮膚化粧料用組成物(又は皮膚化粧料)を適用する部位としては、特に限定されず、顔(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中、頭皮などが挙げられる。
【0073】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、水(成分E)を媒体とする皮膚化粧料用組成物において、リン脂質(成分A)、ココイル基、ラウロイル基、及びミリストイル基からなる群より選択される1以上のアシル基部分と、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸であるアミノ酸部分とが結合したアシルアミノ酸構造を有するアシルアミノ酸の塩(成分B)、炭素数8~18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、ポリグリセリンの平均重合度が10である脂肪酸ポリグリセリル(成分C)、及び炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとのエステルである脂肪酸モノグリセリル(成分D)を含む。本発明の皮膚化粧料用組成物におけるディスク状ミセルは、成分Aを中心として、成分B、成分C、及び成分Dから構成される。上記各成分の役割は完全には解明されていないが、成分C及び成分Dがディスク状ミセルの曲率を調整し、成分Bがディスク状ミセルの安定性に寄与していると推定されるが、ディスク状ミセルの安定性が特に向上する。以上のメカニズムにより、本発明の皮膚化粧料用組成物は、油分等の水に難溶性の成分などの各種成分を、少量である場合のみならず、比較的多量に配合した場合であっても、水系の皮膚化粧料用組成物でありながら、透明性及び保存安定性に優れるものとできる。
【実施例0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。
【0075】
実施例1~31、比較例1~9
表に示した各成分を用い、実施例及び比較例の各皮膚化粧料用組成物を常法により調製した。
【0076】
(評価)
実施例及び比較例で得られた皮膚化粧料用組成物について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。
【0077】
(1)透明性
調製直後の各実施例及び比較例の皮膚化粧料用組成物について、50gをスクリュー管に入れ、目視観察を行った。そして、透明性を下記の評価基準に従って評価した。
<透明性の評価基準>
○(良好):濁りが無く、澄明である。
△(可) :濁りがあるが、透明であり、スクリュー管の向こう側を透けて見える。
×(不良):濁りがあり、スクリュー管の向こう側を透けて見ることができない。
【0078】
(2)保存安定性
各実施例及び比較例の皮膚化粧料用組成物50gをスクリュー管に入れ、5℃の恒温機内で14日間保存した。保存後の各皮膚化粧料用組成物のスクリュー管の外観を目視で観察し、保存安定性を下記の評価基準に従って評価した。
<保存安定性の評価基準>
〇(良好):分離、析出物又は澱が全く認められない。
×(不良):分離、析出物又は澱を認める。
【0079】
(3)ディスク状ミセルの確認
実施例1、8、23、26、及び28の皮膚化粧料用組成物を、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、ディスク状ミセルが観察された。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
本発明の皮膚化粧料用組成物(実施例)は、いずれも、透明性及び保存安定性に優れていると評価された。また、実施例1、8、23、26、及び28の皮膚化粧料用組成物ではディスク状ミセルが形成されていることが確認され、他の実施例においてもディスク状ミセルが形成されていることが推定される。一方、ディスク状ミセルの主要構成成分である成分A、B、又はCを欠く比較例1~9では、いずれも透明性が劣っていると評価された。
【0084】
さらに、本発明の皮膚化粧料用組成物の処方例を示す。
処方例1 化粧水
水添レシチン 0.5質量%
カプリル酸モノグリセリル 2.0質量%
ミリスチン酸ポリグリセリル-10 4.0質量%
γオリザノール 0.05質量%
オクチルドデカノール 0.5質量%
ラウロイルグルタミン酸カリウム 1.5質量%
精製水 残部
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.15質量%
1,3-BG 8.0質量%
合計 100.0質量%
【0085】
処方例2 保湿クリーム
水添レシチン 0.5質量%
カプリル酸モノグリセリル 1.5質量%
ミリスチン酸ポリグリセリル-10 4.0質量%
ミリストイルアスパラギン酸Na 2.0質量%
オクチルドデカノール 0.5質量%
フィトステロールズ 0.05質量%
精製水 残部
モノステアリン酸グリセリル 1.0質量%
ステアリン酸ポリグリセリル 1.0質量%
スクワラン 5.0質量%
キサンタンガム 0.2質量%
合計 100.0質量%