(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152874
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法、固体電解質膜形成用液体組成物および固体電解質膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20231005BHJP
H01L 21/283 20060101ALI20231005BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231005BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/316 C
H01L21/283 B
H01L21/283 C
H01L29/78 617T
H01L29/78 617V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048020
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022055397
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】土井 利浩
【テーマコード(参考)】
4M104
5F058
5F110
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104AA09
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5F110HK21
5F110HK31
5F110HK32
5F110HK33
(57)【要約】
【課題】ランタンとジルコニウムを含む酸化物からなる固体電解質膜を形成するための液体組成物であって、溶媒として酸を特に必要としない液体組成物とその製造方法、および固体電解質膜の製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとを含む混合液を、カルボン酸エステルの存在下で還流する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとを含む混合液を、カルボン酸エステルの存在下で還流する固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ジルコニウムもしくは前記タンタルのアルコキシドの溶液と、前記希土類元素の長鎖カルボン酸塩とを混合し、得られた混合液を還流し、次いで、還流後の混合液にカルボン酸エステルを加えて還流する請求項1に記載の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法。
【請求項3】
希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドと、カルボン酸エステルとを含み、示差熱分析による吸熱ピークが340℃以上380℃以下の範囲内にあって、前記吸熱ピークの半値幅が30℃以下である固体電解質膜形成用液体組成物。
【請求項4】
前記希土類元素、前記ジルコニウムおよび前記タンタルの合計量に対する前記希土類元素の含有量が1モル%以上50モル%以下の範囲内にある請求項3に記載の固体電解質膜形成用液体組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法で得られた固体電解質膜形成用液体組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の固体電解質膜形成用液体組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜を加熱する工程と、を含む固体電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法、固体電解質膜形成用液体組成物および固体電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート絶縁層として、ジルコニウムとからなる酸化物あるいはランタンとタンタルとを含む酸化物からなる固体電解質膜を用いた薄膜トランジスタが知られている(特許文献1)。特許文献1には、この固体電解質膜の形成方法として、ランタンを含む前駆体及びジルコニウムを含む前駆体を溶質とする前駆体溶液又はランタンを含む前駆体及びタンタルを含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を塗布して、酸素含有雰囲気中において加熱する方法が記載されている。前駆体溶液の溶媒としては、プロピオン酸が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体電解質膜を形成するための前駆体溶液は、前駆体溶液を塗布する塗布装置や塗布した前駆体溶液を加熱する加熱装置などの設備を劣化させないものであることが望ましい。
しかしながら、従来の前駆体溶液では、溶媒としてプロピオン酸を使用しているため、塗布装置や加熱装置などの設備を腐食させるおそれがある。
【0005】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ランタンなどの希土類元素とジルコニウムを含む酸化物あるいは希土類元素とタンタルを含む酸化物からなる固体電解質膜を形成するための液体組成物であって、溶媒として酸を特に必要としない液体組成物とその製造方法、およびその液体組成物を用いた固体電解質膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとを含む混合液を、カルボン酸エステルの存在下で還流する構成とされている。
【0007】
このような構成とされた本発明の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法によれば、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとを含む混合液を、溶媒であるカルボン酸エステルの存在下で還流するので、得られた固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとが安定した状態でカルボン酸エステルに溶解した状態となる。このため、本発明の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法によれば、溶媒として酸を特に必要としないで、長期間にわたって保存しても、沈殿の発生などの変質が起こりにくく保存安定性が高い固体電解質膜形成用液体組成物を製造することができる。
【0008】
ここで、本発明の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法には、前記ジルコニウムもしくは前記タンタルのアルコキシドの溶液と、前記希土類元素の長鎖カルボン酸塩とを混合し、得られた混合液を還流し、次いで、還流後の混合液にカルボン酸エステルを加えて還流する構成とされていてもよい。
この場合、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドの溶液と希土類元素の長鎖カルボン酸塩との混合液を還流するので、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとをより安定した状態でカルボン酸エステルに溶解させることができる。よって、得られた固体電解質膜形成用液体組成物は、保存安定性がより向上する。
【0009】
本発明の固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドと、カルボン酸エステルとを含み、示差熱分析による吸熱ピークが340℃以上380℃以下の範囲内にあって、前記吸熱ピークの半値幅が30℃以下である構成とされている。
【0010】
このような構成とされた本発明の固体電解質膜形成用液体組成物によれば、溶媒として酸を特には必要としないので、固体電解質膜を形成する際に用いる塗布装置や加熱装置などの設備を腐食させにくい。また、本発明の固体電解質膜形成用液体組成物によれば、示差熱分析による吸熱ピークが340℃以上380℃以下の範囲内にあって、吸熱ピークの半値幅が30℃以下と狭いので、熱分解が速やかに進行し均質な固体電解質膜が得られる。
【0011】
ここで、本発明の固体電解質膜形成用液体組成物においては、前記希土類元素、前記ジルコニウムおよび前記タンタルの合計量に対する前記希土類元素の含有量が1モル%以上50モル%以下の範囲内にある構成とされていてもよい。
この場合、固体電解質膜形成用液体組成物によって得られる固体電解質膜は、希土類元素、ジルコニウムおよびタンタルの合計量に対する希土類元素の含有量が1モル%以上50モル%以下の範囲内となり、この固体電解質膜を用いた薄膜トランジスタの特性が向上する。
【0012】
また、本発明の固体電解質膜形成用液体組成物は、上述の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法で得られたものとされている。
このような構成とされた固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとが安定した状態でカルボン酸エステルに溶解しているので、この固体電解質膜形成用液体組成物を用いることによって膜厚と組成の均一性が高い固体電解質膜を得ることができる。
【0013】
また、固体電解質膜の製造方法は、上記本発明の固体電解質膜形成用液体組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜を加熱する工程と、を含む構成とされている。
このような構成とされた本発明の固体電解質膜の製造方法によれば、固体電解質膜形成用液体組成物として、上記本発明の固体電解質膜形成用液体組成物を用いるので、固体電解質膜の塗布膜を形成する際に用いる塗布装置、塗布膜を加熱する際に用いる加熱装置などの設備を腐食させにくい。このため、長期間にわたって安定して固体電解質膜を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ランタンなどの希土類元素とジルコニウムを含む酸化物あるいは希土類元素とタンタルを含む酸化物からなる固体電解質膜を形成するための液体組成物であって、溶媒として酸を特に必要としない液体組成物とその製造方法およびそれを用いた固体電解質膜の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固体電解質膜形成用液体組成物を用いて成膜した固体電解質膜を有する薄膜トランジスタの一例の断面図である。
【
図2】本発明例1および比較例1で得られた液体組成物のDTA曲線である。
【
図3】本発明例1および比較例1で得られた液体組成物のTG曲線である。
【
図4】本発明例1で得られた液体組成物を用いて成膜した固体電解質膜のSEM写真である。
【
図5】本発明例4で得られた薄膜トランジスタのVBG-Id曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態に係る固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法および固体電解質膜形成用液体組成物について説明する。
本実施形態に係る固体電解質膜形成用液体組成物は、塗布して加熱することによって固体電解質膜を生成する液体である。固体電解質膜は、ジルコニウムおよびタンタルの少なくとも一方あるいは両方と希土類元素とを含む酸化物である。
【0017】
本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドと、カルボン酸エステルとを含む。また、本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物は、示差熱分析(DTA)による吸熱ピークが340℃以上380℃以下の範囲内にあって、吸熱ピークの半値幅が30℃以下と狭い値を示す。
【0018】
希土類元素の長鎖カルボン酸塩は、希土類元素供給源である。希土類元素としては、例えば、ランタン、イットリウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムを用いることができる。これらの希土類元素は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。長鎖カルボン酸塩は、炭素数が6~12個の範囲内にあることが好ましい。希土類元素の長鎖カルボン酸塩は、例えば、2-エチルヘキサン酸塩であってもよい。
【0019】
ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドは、ジルコニウムもしくはタンタルの供給源である。固体電解質膜形成用液体組成物は、ジルコニウムのアルコキシドとタンタルのアルコキシドの少なくとも一方または両方を含む。ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドは、炭素数が4~20個の範囲内にあることが好ましい。ジルコニウムアルコキシドの例としては、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシドを挙げることができる。タンタルアルコキシドの例としては、タンタルテトラメトキシド、タンタルテトラエトキシド、タンタルテトラ-n-プロポキシド、タンタルテトライソプロポキシド、タンタルテトラ-n-ブトキシド、タンタルテトラ-t-ブトキシドを挙げることができる。
【0020】
カルボン酸エステルは溶媒である。カルボン酸エステルは、炭素数が4~10の範囲内にあることが好ましい。カルボン酸エステルは、例えば、炭素数1~3のカルボン酸と炭素数1~8の1価アルコールとのエステルであってもよい。1価アルコールは、分岐を有していてもよい。カルボン酸エステルは、例えば、酢酸イソアミルであってもよい。
【0021】
固体電解質膜形成用液体組成物は、カルボン酸エステルに溶解するもしくは親和性を有するその他の化合物を含んでいてもよい。その他の化合物の例としては、アセチルア船などのジケトンを挙げることができる。
【0022】
固体電解質膜形成用液体組成物に含まれる希土類元素の含有量は、希土類元素、ジルコニウムおよびタンタルの合計量に対して1モル%以上50モル%以下の範囲内にあることが好ましい。また、固体電解質膜形成用液体組成物の希土類元素、ジルコニウムおよびタンタルの合計量は、加熱残分として、1質量%以上20質量%以下の範囲内にあることが好ましい。加熱残分は、固体電解質膜形成用液体組成物を加熱して溶媒を除去することによって生成する残分(固体電界質)の量(=固体電解質膜/固体電解質膜形成用液体組成物×100)である。加熱残分は、予め質量を測定した固体電解質膜形成用液体組成物を450℃で加熱し、室温まで放冷して後の残分の質量を測定することに求めることができる。また、固体電解質膜形成用液体組成物は、加熱によって生成する固体電解質膜のモル濃度で0.1モル/kg以上0.4モル/kg以下の範囲内にあることが好ましい。加熱残分や固体電解質膜のモル濃度が低くなりすぎると、膜厚の厚い固体電解質膜を成膜することが困難となるおそれがある。また、加熱残分や固体電解質膜のモル濃度が高くなりすぎると、プロセス中に前駆物質由来の炭素が抜けにくくなりポーラスな膜質となってしまうおそれがある。
【0023】
以上のような構成とされた本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドと、カルボン酸エステルとを含み、溶媒として酸を特には必要としないので、固体電解質膜を形成する際に用いる塗布装置や加熱装置などの設備を腐食させにくい。また、本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物は、示差熱分析による吸熱ピークが340℃以上380℃以下の範囲内にあって、吸熱ピークの半値幅が30℃以下と狭いので、均質な膜質が得られやすい。
【0024】
本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物においては、希土類元素、ジルコニウムおよびタンタルの合計量に対する希土類元素の含有量が1モル%以上50モル%以下の範囲内にある場合、固体電解質膜形成用液体組成物によって得られる固体電解質膜は、希土類元素、ジルコニウムおよびタンタルの合計量に対する希土類元素の含有量が1モル%以上50モル%以下の範囲内となり、この固体電解質膜を用いた薄膜トランジスタの特性が向上する。
【0025】
次に、本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法では、原料として、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドと、カルボン酸エステルとを用いる。これらの化合物の例は、上記のとおりである。
【0026】
本実施形態の製造方法では、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとを含む混合液を、カルボン酸エステルの存在下で還流する。還流とは、液体が沸騰と凝縮を繰り返す状態とすることを意味する。還流は、主溶媒であるカルボン酸エステル沸騰する温度以上に加熱することによって行うことが好ましい。加熱温度は、使用する原料によっても異なるが、例えば、カルボン酸エステルとして酢酸イソアミルを用いた場合で150℃以上である。
【0027】
希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドと、カルボン酸エステルとの混合方法は特に制限ない。例えば、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドの溶液と希土類元素の長鎖カルボン酸塩との混合物と、カルボン酸エステルとを混合してもよい。この場合、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドの溶液と希土類元素の長鎖カルボン酸塩との混合物を還流してもよい。ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドの溶液の溶媒としては、例えば、アセチルアセトンなどのジケトンを用いることができる。
【0028】
このような構成とされた本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法によれば、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとを含む混合液を、溶媒であるカルボン酸エステルの存在下で還流するので、得られた固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとが安定した状態でカルボン酸エステルに溶解した状態となる。
このため、本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法によれば、溶媒として酸を特に必要としないで、長期間にわたって保存しても、沈殿の発生などの変質が起こりにくく保存安定性が高い固体電解質膜形成用液体組成物を製造することができる。
【0029】
よって、本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法で得られた固体電解質膜形成用液体組成物は、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとが安定した状態でカルボン酸エステルに溶解しているので、この固体電解質膜形成用液体組成物を用いることによって膜の微細構造と組成の均一性が高い固体電解質膜を得ることができる。
【0030】
本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物の製造方法において、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドの溶液と、希土類元素の長鎖カルボン酸塩とを混合し、得られた混合液を還流し、次いで、還流後の混合液にカルボン酸エステルを加えて還流する場合には、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドの溶液と希土類元素の長鎖カルボン酸塩との混合液を還流するので、希土類元素の長鎖カルボン酸塩と、ジルコニウムもしくはタンタルのアルコキシドとをより安定した状態でカルボン酸エステルに溶解させることができる。よって、得られた固体電解質膜形成用液体組成物は、保存安定性がより向上する。
【0031】
本発明の一実施形態に係る本実施形態の固体電解質膜の製造方法は、上述の本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜を加熱する工程と、を含む。
固体電解質膜形成用液体組成物の塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、スクリーン印刷法などの方法を用いることができる。塗布膜を加熱する際の加熱温度は、固体電解質膜形成用液体組成物の示差熱分析(DTA)による吸熱ピークの温度以上、その吸熱ピークの温度に対して+100℃以下の範囲内にあることが好ましい。塗布膜の加熱温度は450℃以下であることがより好ましい。
【0032】
また、所望の膜厚の固体電解質膜を製造する方法として、本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物を塗布して塗布膜を形成して、塗布膜を仮焼する工程を複数回繰り返して仮焼膜を得て、仮焼膜の膜厚が消耗の厚さとなった後に本焼成を行う方法を用いてもよい。仮焼温度は、固体電解質膜形成用液体組成物の溶媒の蒸発温度以上、溶媒の蒸発温度+100℃以下の範囲内にあることが好ましい。本焼成の温度は、固体電解質膜形成用液体組成物の示差熱分析(DTA)による吸熱ピークの温度以上であって、その吸熱ピークの温度に対して+100℃以下での範囲内にあることが好ましい。
【0033】
このような構成とされた本実施形態の固体電解質膜の製造方法によれば、固体電解質膜形成用液体組成物として、上述の本実施形態の固体電解質膜形成用液体組成物を用いるので、固体電解質膜の塗布膜を形成する際に用いる塗布装置、塗布膜を加熱する際に用いる加熱装置などの設備を腐食させにくい。このため、長期間にわたって安定して固体電解質膜を製造することができる。
【0034】
次に、本発明の一実施形態に係る固体電解質膜形成用液体組成物を用いて成膜した固体電解質膜を有する薄膜トランジスタについて説明する。
図1は、本実施形態の固体電解質膜を有する薄膜トランジスタの一例の断面図である。
図1に示すように、薄膜トランジスタ10は、基板1の上に配置されたゲート電極2と、ゲート絶縁層3と、チャネル層4と、ソース電極5と、ドレイン電極6とを有する。ソース電極5とドレイン電極6は、チャネル層4の上にかつ互いに対向する位置に配置されている。
【0035】
基板1としては、例えば、絶縁性基板および半導体基板を用いることができる。絶縁性基板の例としては、高耐熱ガラス、熱酸化膜(酸化ケイ素膜)を有するシリコン基板(SiO2/Si基板)、アルミナ(Al2O3)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO2層およびTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成したものが挙げられる。半導体基板の例としては、Si基板、SiC基板、Ge基板が挙げられる。基板1の厚さは、例えば、300μm以上1mm以下の範囲内にある。
【0036】
ゲート電極2は、1層の導電性膜からなる単層膜であってもよいし、2層以上の導電性膜からなる積層膜であってもよい。導電性膜の材料としては、例えば、金属、その金属を含む合金、金属酸化物を用いることができる。金属の例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、モリブデン、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、タングステン、チタンを挙げることができる。金属酸化物の例としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化ルテニウム(RuO2)を挙げることができる。ゲート電極2の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下の範囲内にある。ゲート電極2(導電性膜)は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、塗布焼成法など従来の薄膜トランジスタのゲート電極の形成方法で利用されている方法を用いることができる。塗布焼成法は、加熱によって導電性膜を生成する導電性膜形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成し、次いで塗布膜を加熱して導電性膜を成膜する方法である。
【0037】
ゲート絶縁層3は、ジルコニウムおよびタンタルの少なくとも一方あるいは両方と希土類元素とを含む酸化物からなる固体電解質膜である。ゲート絶縁層3の厚さは、例えば、40nm以上200nm以下の範囲内にある。固体電解質膜は、上述の固体電解質膜形成用液体組成物を用いた塗布焼成法によって成膜することができる。塗布焼成法は、固体電解質膜形成用液体組成物を塗布して塗布膜を形成し、次いで塗布膜を加熱して固体電解質膜を成膜する方法である。固体電解質膜形成用液体組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法を用いることができる。また、固体電解質膜の膜厚を調整する方法として、固体電解質膜形成用液体組成物を塗布して塗布膜を形成し、次いで塗布膜を仮焼して仮焼膜とする操作を複数回繰り返して、仮焼膜積層体の膜厚が所望の厚さとなった時点で本焼成を行う方法を用いてもよい。この場合、仮焼成の焼成温度は100℃以上300℃以下の範囲内にあり、本焼成の焼成温度は300℃以上500℃以下の範囲内にあることが好ましい。
【0038】
チャネル層4は、半導体膜からなる。半導体膜の材料は、無機半導体であってもよいし、有機半導体であってもよい。チャネル層4は、酸化インジウム系膜であることが好ましい。酸化インジウム膜は、錫、亜鉛、ジルコニウム、ガリウムなどの元素を含んでいてもよい。これらの元素は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。チャネル層4の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下の範囲内にある。
チャネル層4は、例えば、加熱によって半導体膜を生成する半導体膜形成用液体組成物を用いた塗布焼成法によって成膜することができる。
【0039】
ソース電極5およびドレイン電極6は、1層の導電性膜からなる単層膜であってもよいし、2層以上の導電性膜からなる積層膜であってもよい。導電性膜の材料としては、例えば、金属、その金属を含む合金、金属酸化物を用いることができる。金属および金属酸化物の例は、ゲート電極2の場合と同じである。ソース電極5およびドレイン電極6の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下の範囲内にある。ソース電極5およびドレイン電極6の形成方法は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、塗布焼成法など従来の薄膜トランジスタのソース電極およびドレイン電極の形成方法で利用されている方法を用いることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0041】
[本発明例1]
ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド4.54gと、アセチルアセトンと2.80gを還流器付きフラスコに投入し、150℃で30分間加熱還流してオレンジ色の透明液体を得た。次いで、2-エチルヘキサン酸ランタン11.82gを加えて、150℃で30分間加熱還流した。さらに、酢酸イソアミル80.83gを加えて150℃で60分間加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、得られた液体を還流器付きフラスコから取り出して、全量が100gとなるように酢酸イソアミルを加えた後、メンブレンフィルター(孔径:200μm)でろ過した。こうして、La0.3Zr0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0042】
[本発明例2]
2-エチルヘキサン酸ランタンの代わりに、2-エチルヘキサン酸サマリウムを11.82g加えたこと以外は、本発明例1と同様にして、Sm0.3Zr0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0043】
[本発明例3]
2-エチルヘキサン酸ランタンの代わりに、2-エチルヘキサン酸ネオジウムを11.82g加えたこと以外は、本発明例1と同様にして、Nd0.3Zr0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0044】
[本発明例4]
タンタルペンタエトキシド5.69gと、アセチルアセトンと2.80gを還流器付きフラスコに投入し、150℃で30分間加熱還流してオレンジ色の透明液体を得た。次いで、2-エチルヘキサン酸ランタン11.82gを加えて、150℃で30分間加熱還流した。さらに、酢酸イソアミル79.69gを加えて150℃で60分間加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、得られた液体を還流器付きフラスコから取り出して、全量が100gとなるように酢酸イソアミルを加えた後、メンブレンフィルター(孔径:200μm)でろ過した。こうして、La0.3Ta0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0045】
[本発明例5]
2-エチルヘキサン酸ランタンの代わりに、2-エチルヘキサン酸サマリウムを11.82g加えたこと以外は、本発明例4と同様にして、Sm0.3Ta0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0046】
[本発明例6]
2-エチルヘキサン酸ランタンの代わりに、2-エチルヘキサン酸ネオジムを11.82g加えたこと以外は、本発明例4と同様にして、Nd0.3Ta0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0047】
[本発明例7]
ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド2.27g、タンタルペンタエトキシド2.85gと、アセチルアセトンと2.80gを還流器付きフラスコに投入し、150℃で30分間加熱還流してオレンジ色の透明液体を得た。次いで、2-エチルヘキサン酸ネオジム11.82gを加えて、150℃で30分間加熱還流した。さらに、酢酸イソアミル79.69gを加えて150℃で60分間加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、得られた液体を還流器付きフラスコから取り出して、全量が100gとなるように酢酸イソアミルを加えた後、メンブレンフィルター(孔径:200μm)でろ過した。こうして、La0.3Zr0.35Ta0.35O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0048】
[本発明例8]
ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド6.16gと、アセチルアセトンと3.80gを還流器付きフラスコに投入し、150℃で30分間加熱還流してオレンジ色の透明液体を得た。次いで、2-エチルヘキサン酸ランタン1.97gを加えて、150℃で30分間加熱還流した。さらに、酢酸イソアミル88.07gを加えて150℃で60分間加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、得られた液体を還流器付きフラスコから取り出して、全量が100gとなるように酢酸イソアミルを加えた後、メンブレンフィルター(孔径:200μm)でろ過した。こうして、La0.3Zr0.70O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0049】
[本発明例9]
ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド3.24gと、アセチルアセトンと2.00gを還流器付きフラスコに投入し、150℃で30分間加熱還流してオレンジ色の透明液体を得た。次いで、2-エチルヘキサン酸ランタン19.70gを加えて、150℃で30分間加熱還流した。さらに、酢酸イソアミル75.06gを加えて150℃で60分間加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、得られた液体を還流器付きフラスコから取り出して、全量が100gとなるように酢酸イソアミルを加えた後、メンブレンフィルター(孔径:200μm)でろ過した。こうして、La0.3Zr0.70O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0050】
[比較例1]
酢酸イソアミルを加えた後、加熱還流を行わなかったこと以外は、本発明例1と同様にして、La0.3Zr0.7O換算の濃度が0.2モル/kgの液体組成物を得た。
【0051】
[評価]
本発明例1~3および比較例1で得られた液体組成物について、貯蔵安定性、熱特性、成膜性を、下記のようにして測定した。
【0052】
(貯蔵安定性)
液体組成物を、樹脂製の容器に入れて密封した。密閉した容器を、温度5℃に設定した冷蔵庫内で1か月間静置した。静置後、冷蔵庫から容器を取り出して、容器中の液体組成物を目視で観察し、沈殿がなったものは合格とし、沈殿があったものは不合格とした。その結果を、下記の表1に示す。また、表1に、液体組成物中の全金属量(La量+Ta量+希土類量)に対する希土類量のモル比[希土類量/(La量+Ta量+希土類量)]を記載した。
【0053】
【0054】
本発明例1~3で得られた液体組成物はいずれも沈殿が発生せず、保存安定性は合格であった。本発明例1~3では、希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩とジルコニウムテトラ-n-ブトキシドと酢酸イソアミルとを含む混合液の状態で加熱還流したことにより、溶媒の酢酸イソアミルによって希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩およびジルコニウムテトラ-n-ブトキシドが安定されたため、安定して溶解した状態を維持できたと考えられる。
一方、比較例1で得られた液体組成物は沈殿が発生し、保存安定性は不合格であった。
比較例1では、希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩とジルコニウムテトラ-n-ブトキシドと酢酸イソアミルとを含む混合液の状態で加熱還流していないため、溶媒の酢酸イソアミルが希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩およびジルコニウムテトラ-n-ブトキシドに均一に配位せず、2-エチルヘキサン酸塩およびジルコニウムテトラ-n-ブトキシドが酢酸イソアミルに溶解した状態を維持できなかったと考えられる。
【0055】
(熱特性)
液体組成物の示差熱分析(DTA)と熱重量分析(TG)を行った。測定の条件は、下記のとおりである。本発明例1および比較例1で得られた液体組成物のDTA曲線を
図2に示し、TG曲線を
図3に示す。
測定条件:試料を100℃で10分間乾燥させ、余分な溶媒を揮発させてから評価を実施した。試料皿はアルミニウムを用いた。評価は、試料重量10mg、昇温10℃毎分で室温から500℃まで加熱を行った。
【0056】
図2のDTA曲線から、本発明例1で得られた液体組成物は、吸熱ピークが約360℃にあって、吸熱ピークの半値幅が約25℃と狭いことがわかる。本発明例1の液体組成物は、溶媒の酢酸イソアミルが希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩およびジルコニウムテトラ-n-ブトキシドに均一に配位しているため、2-エチルヘキサン酸塩とジルコニウムテトラ-n-ブトキシドとの反応が円滑かつ均一に進行したと考えられる。
一方、比較例1で得られた液体組成物は、吸熱ピークが約360℃と約390℃の2つの温度にあり、吸熱ピークの半値幅が約60℃と広いことがわかる。比較例1の液体組成物は、溶媒の酢酸イソアミルが希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩およびジルコニウムテトラ-n-ブトキシドに均一に配位しないため、2-エチルヘキサン酸塩とジルコニウムテトラ-n-ブトキシドとの反応が不均一に進行したと考えられる。
【0057】
図3のTG曲線から、本発明例1で得られた液体組成物は、約320℃から約360℃の範囲で急激に重量変化するのに対して、比較例1で得られた液体組成物は、約220℃から約400℃までの範囲で重量が変化することがわかる。これは、本発明例1の液体組成物は反応が円滑かつ均一に進行するのに対して、比較例1の液体組成物は反応が不均一に進行するためである。
【0058】
なお、本発明例2、3で得られた液体組成物のDTA曲線およびTG曲線は、本発明例1で得られた液体組成物のDTA曲線およびTG曲線とほぼ同じであった。
【0059】
(成膜性)
液体組成物を用いて固体電解質膜を成膜し、得られた固体電解質膜の表面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、ボイド(気孔)の有無を確認した。固体電解質膜は次のようにして成膜した。Pt電極付きの基板上に液体組成物を滴下し、2000rpmの回転速度で20秒間スピンコーティングを行って塗布膜を形成し、次いで250℃のホットプレートを用いて塗布膜を5分間仮焼成して仮焼膜とした。この操作を5回繰り返し、得られた仮焼膜積層体を、450℃のホットプレートを用いて5分間焼成を行った。本発明例1で得られた液体組成物を用いて成膜した固体電解質膜のSEM写真を、
図4に示す。
【0060】
図4のSEM写真に示すように、本発明例1の液体組成物を用いて成膜した固体電解質膜からは、直径が10nmを超えるボイドは確認されなかった。なお、本発明例2、3で得られた液体組成物を用いて成膜した固体電解質膜についても直径が10nmを超えるボイドは確認されなかった。
【0061】
[本発明例10]
図1に示す構成の薄膜トランジスタ10を作製した。ゲート絶縁層3は、本発明例1で得られた液体組成物を用いて形成した。各部分の材料および形成方法は、下記のとおりである。
基板1:厚さ500nmの熱酸化膜を有するシリコン基板(SiO
2/Si基板)。
ゲート電極2:チタン層(厚さ:10nm)の上に、白金層(厚さ:100nm)を積層したPt/Ti層。チタン層および白金層はスパッタリング法により成膜した。
【0062】
ゲート絶縁層3:厚さ120nmのLa0.3Zr0.7O膜。La0.3Zr0.7O層は次のようにして成膜した。ゲート電極2の上に本発明例1で得られた液体組成物を滴下し、2000rpmの回転速度で20秒間スピンコーティングを行って塗布膜を形成し、次いで250℃のホットプレートを用いて塗布膜を5分間仮焼成して仮焼膜とした。
この操作を5回繰り返し、得られた仮焼膜積層体を、450℃のホットプレートを用いて5分間焼成を行った。
【0063】
チャネル層4:厚さ20nmのIn2O3膜。In2O3膜は、In2O3溶液をスピンコーティング法により塗布し、得られた塗布層を酸素含有雰囲気で、250℃で予備焼成した後、300℃で本焼成して成膜した。In2O3溶液は、硝酸インジウム3水和物を、In2O3濃度に換算して0.2mol/kgとなるように2-メトキシエタノールに溶解させ、得られた溶液を110℃で30分間還流することによって調製した。
【0064】
ソース電極5およびドレイン電極6:ITO層(厚さ:50nm)の上に、白金層(厚さ:100nm)を積層したPt/ITO電極。ITO層及び白金層はスパッタリング法により成膜した。
【0065】
得られた薄膜トランジスタのゲート電極2の電圧VBGを0.5Vから1.5Vに上昇させ、1.5Vから0.5Vに下降させたときのドレイン電流Idを測定した。得られたVBG-Id曲線を、
図5に示す。
図5の結果から、本発明例に従う固体電解質膜形成用液体組成物を用いてゲート絶縁層3を形成した薄膜トランジスタ10は、高いドレイン電流Idを示すことがわかる。