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特開2023-152880アクリル強撚紡績糸、ならびに該紡績糸を含むアクリル編物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152880
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】アクリル強撚紡績糸、ならびに該紡績糸を含むアクリル編物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/26 20060101AFI20231005BHJP
   D02J 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
D02G3/26
D02J1/00 W
D04B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048611
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022056708
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】溝部 穣
(72)【発明者】
【氏名】安川 真一
【テーマコード(参考)】
4L002
4L036
【Fターム(参考)】
4L002AA08
4L002AB01
4L002AB03
4L002AC02
4L002AC07
4L002BA01
4L002DA01
4L002EA00
4L002FA01
4L036MA04
4L036MA35
4L036MA37
4L036PA10
4L036PA20
4L036PA21
4L036PA31
4L036RA03
4L036UA01
(57)【要約】
【課題】涼感風合を有する布帛として、ポリエステル繊維の強撚糸を用いた清涼感やシャリ感に優れた編物が知られている。しかし、風合が硬くなる傾向にあるため、肌触りや着心地に改良の余地がある。この点について、アクリル繊維の強撚糸は柔らかいため、涼感風合と柔らかい風合いを両立できる。しかし、熱や繰り返し使用によりヘタって涼感風合が低下してしまうという問題がある。本発明は、涼感風合が低下しづらいアクリル強撚紡績糸および該紡績糸を含むアクリル編物を提供することを目的とする。
【解決手段】沸水収縮率が10~50%であり、かつ繊度が1~7dtexである収縮性アクリル繊維を70~100質量%含有する紡績糸であって、メートル番手が1番手以上100番手以下であり、かつメートル番手より算出される撚係数が150超210以下であるアクリル強撚紡績糸および該紡績糸を含むアクリル編物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸水収縮率が10~50%であり、かつ繊度が1~7dtexである収縮性アクリル繊維を70~100質量%含有する紡績糸であって、メートル番手が1番手以上100番手以下であり、かつメートル番手より算出される撚係数が150超210以下であることを特徴とするアクリル強撚紡績糸。
【請求項2】
請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸を30~100質量%含有することを特徴とするアクリル編物。
【請求項3】
Z撚りである請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸とS撚りである請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸が交編されていることを特徴とするアクリル編物。
【請求項4】
請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸を収縮発現させる工程、およびかかる収縮発現されたアクリル強撚紡績糸を製編する工程を含むことを特徴とするアクリル編物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸を製編して編物を得る工程、および該編物を収縮発現させる工程を含むことを特徴とするアクリル編物の製造方法。
【請求項6】
Z撚りである請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸とS撚りである請求項1に記載のアクリル強撚紡績糸を交編して編物を得る工程、および該編物を収縮発現させる工程を含むことを特徴とするアクリル編物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱や繰り返し使用によっても涼感風合が低下しづらい編物を作製できるアクリル強撚紡績糸、ならびに該紡績糸を含むアクリル編物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、涼感風合を有する布帛を得るために、強撚糸を使用することが知られている。例えば、特許文献1や2には、ポリエステル繊維を用いた強撚糸から得られる清涼感やシャリ感に優れた編物が開示されている。しかしながら、ポリエステル繊維を用いた強撚糸は風合が硬くなる傾向にあるため、涼感風合はあるものの、肌触りや着心地については、改良の余地がある。
【0003】
一方、特許文献3に開示されたアクリル繊維を用いた強撚糸から得られた編物は、ポリエステル繊維よりも柔らかいアクリル繊維を用いているため、涼感風合を有しつつ、柔らかい風合いを有しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-97234号公報
【特許文献2】特開2003-138455号公報
【特許文献3】特開平8-3835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3に開示されたアクリル繊維を用いた強撚糸から得られた編物は、熱や繰り返し使用によりヘタりやすく涼感風合が低下してしまうという問題を有している。本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、熱や繰り返し使用によっても涼感風合が低下しづらい編物を作製できるアクリル強撚紡績糸、ならびに該紡績糸を含むアクリル編物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、高収縮性アクリル繊維を用いることによって設備的対応では実現の難しい高撚係数の強撚糸にするとともに、比較的太い繊度、太い番手を採用することにより、ヘタりが抑制され、涼感風合が低下しにくくなること、さらには特定の構成とすることで良好なシボ(楊柳シボ)を発現できることを見出し、本発明に到達した。なお、楊柳シボとは細かい縦シワのことである。
【0007】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1) 沸水収縮率が10~50%であり、かつ繊度が1~7dtexである収縮性アクリル繊維を70~100質量%含有する紡績糸であって、メートル番手が1番手以上100番手以下であり、かつメートル番手より算出される撚係数が150超210以下であることを特徴とするアクリル強撚紡績糸。
(2) (1)に記載のアクリル強撚紡績糸を30~100質量%含有することを特徴とするアクリル編物。
(3) Z撚りである(1)に記載のアクリル強撚紡績糸とS撚りである(1)に記載のアクリル強撚紡績糸が交編されていることを特徴とするアクリル編物。
(4) (1)に記載のアクリル強撚紡績糸を収縮発現させる工程、およびかかる収縮発現されたアクリル強撚紡績糸を製編する工程を含むことを特徴とするアクリル編物の製造方法。
(5) (1)に記載のアクリル強撚紡績糸を製編して編物を得る工程、および該編物を収縮発現させる工程を含むことを特徴とするアクリル編物の製造方法。
(6) Z撚りである(1)に記載のアクリル強撚紡績糸とS撚りである(1)に記載のアクリル強撚紡績糸を交編して編物を得る工程、および該編物を収縮発現させる工程を含むことを特徴とするアクリル編物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアクリル強撚紡績糸およびアクリル編物は、熱や繰り返し使用によっても涼感風合が低下しづらいという性能を有するものである。かかる性能を有する本発明のアクリル強撚紡績糸およびアクリル編物は、ポリエステル繊維の強撚糸よりも柔らかいという特徴も有しているため、より肌触りのよい涼感衣料品を提供できる材料として好適である。また、従来、冬物衣料品が中心であったアクリル繊維の用途を、夏物衣料にも拡大するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明のアクリル強撚紡績糸に採用する収縮性アクリル繊維について>
本発明に採用する収縮性アクリル繊維は、沸水収縮率が10~50%であり、好ましくは15~40%である。沸水収縮率が10%未満であると涼感風合が得られない恐れがある。一方、50%を超えると硬く肌触りが悪くなる恐れがある。
【0010】
また、該収縮性アクリル繊維は、繊度が1~7dtexであり、好ましくは1~5dtexである。繊度が1dtex未満であると繊維が細すぎて熱や外力によりヘタりやすくなるため、染色加工や洗濯などにより、涼感風合やシボ感が低下しやすくなる恐れがある。一方、7dtexを超えると肌触りが硬くなる恐れがある。
【0011】
<本発明のアクリル強撚紡績糸について>
本発明のアクリル強撚紡績糸は、上記収縮性アクリル繊維の含有率が70~100質量%であり、好ましくは80~100質量%である。含有率が70質量%未満であると十分な涼感風合が得られない恐れがある。
【0012】
また、本発明のアクリル強撚紡績糸は、上述した収縮性アクリル繊維以外の繊維を含んでいてもよい。かかる繊維としては、特に制限はなく、木綿、麻、羊毛、獣毛(モヘア、カシミヤ、キャメル、アルパカ、アンゴラ等)などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、アクリル、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維などを採用することができ、複数種を用いてもよい。
【0013】
さらに、本発明のアクリル強撚紡績糸は、メートル番手が1番手以上100番手以下であり、好ましくは5番手以上90番手以下であり、より好ましくは10番手以上80番手以下である。メートル番手が100番手を超えると糸が細すぎて熱や外力によりヘタりやすくなるため、染色加工や洗濯などにより、清涼感のある風合やシボ感が低下しやすくなる恐れがある。一方、1番手未満であると糸が太すぎて夏物衣料用途には適さないものとなる恐れがある。
【0014】
加えて、本発明のアクリル強撚紡績糸は、メートル番手により算出される撚係数が収縮発現前において150超210以下であり、好ましくは150超195以下であり、より好ましくは150超180以下である。かかる撚係数であれば、収縮発現後の撚係数が210超280以下であるものとでき、涼感風合を得ることができる。収縮発現前の撚係数が150以下であると通常と大差のない風合となる恐れがある。一方、収縮発現前の撚係数を210を超えるようにすることは、安定的な製造や設備能力の面から困難である。
【0015】
上述してきた本発明のアクリル強撚紡績糸は、綿紡績、2インチ紡績、梳毛紡績といった従来公知の紡績方法によって製造することができる。
【0016】
また、かかる本発明のアクリル強撚紡績糸は、編物に構成した後に、該アクリル強撚紡績糸に含まれる収縮性アクリル繊維の収縮を発現させることにより、前記編物に涼感風合を付与することができるものである。この際、本発明のアクリル強撚紡績糸は、収縮発現により撚係数が大きくなり、設備的対応では実現の難しい、210を超えるような高い撚係数を実現することができる。このことが、熱や外力を受けてもヘタりにくく、涼感風合を維持できるという本発明の特徴に寄与していると考えられる。
【0017】
<本発明のアクリル編物について>
本発明のアクリル編物は、上述したアクリル強撚紡績糸の含有率が30~100質量%であり、好ましくは50~100質量%である。含有率が30質量%未満であると編物としての涼感風合が得られない恐れがある。
【0018】
また、本発明のアクリル編物は、上述したアクリル強撚紡績糸以外の糸を用いて交編したものでもよい。かかる糸としては、特に制限はなく、綿糸、レーヨン糸、毛混糸、合繊糸などを採用することができ、複数種を用いてもよい。また、かかるアクリル強撚紡績糸以外の糸としては、通常撚の糸または強撚糸のいずれも要求される風合に応じて使用することができる。
【0019】
さらに、本発明のアクリル編物の組織としては、特に制限はないが、天竺編、フライス編、パイル編などを挙げることができる。特に、組織が拘束度の低い天竺編である場合には、製編後の収縮発現によりシボ感が発現されやすくなるので好適である。通常、編物においてシボ感を発現させることは難しいが、本発明のアクリル強撚紡績糸を用いた天竺編においてシボ感が得られることは特筆すべき特徴である。
【0020】
また、本発明のアクリル編物においては、上述したアクリル強撚紡績糸としてZ撚りである糸(以下、「Z」と記載する)とS撚りである糸(以下、「S」と記載する)を交編したものとすることによっても、シボ感を発現しやすくすることができる。具体的には、ZとSを1本ずつ交互に用いるパターン(ZSZS・・・)や複数本ずつ繰り返すパターン(ZZSSZZSS・・・やZZZSSSZZZSSS・・・など)があり、さらに、ZとS以外の他の糸を混用する場合もある。ただし、他の糸を混用する場合にはシボ感発現効果が小さくなりやすい。
【0021】
<本発明のアクリル編物の製造方法について>
また、本発明のアクリル編物の製造方法としては、大きく分けて以下の2つの代表的な方法を採用することができる。
(A法)上述したアクリル強撚紡績糸を収縮発現させる工程、および該工程により得られる収縮発現されたアクリル強撚紡績糸を製編する工程を含む方法
(B法)上述したアクリル強撚紡績糸を製編して編物を得る工程、および該工程により得られる編物を収縮発現させる工程を含む方法
【0022】
A法においては、既に収縮処理した糸を用いて製編するため、後述のB法のような編物設計の困難は避けられる。また、糸染め工程を利用して収縮処理をすることもできるので、より簡便に本発明のアクリル編物を得ることができる。B法においては、編物としてから収縮処理を行うため、収縮による編物の寸法や密度の変化を考慮して製編しなければならず、編物の設計が難しくなるが、編物表面に凹凸を形成させやすいため、より涼感風合に優れた編物を得られやすい。また、上述のシボ感を発現させる場合にもB法を採用する。
【0023】
A法における収縮処理方法としては、上述のアクリル強撚紡績糸に、80~100℃の熱水に浸漬して10分以上処理する工程の後に、できるだけ張力を下げた状態において冷却速度1℃/分以下で徐冷処理する工程を施す方法を挙げることができる。また、B法の収縮処理方法としては、上述のアクリル強撚紡績糸を製編した編物を沸水中に浸漬して20分以上処理する工程の後に、できるだけ張力を下げた状態において冷却速度1℃/分以下で徐冷処理する工程を施す方法を挙げることができる。
【0024】
これらの方法においては、前半の工程で、収縮を潜在化させている仮セット状態が解除され、後半の徐冷処理中に徐々に収縮が発現する。ここで、仮に後半の工程で急冷すると、急速に構造が固定されてしまうため、収縮を十分に発現することができなくなる。なお、収縮処理は染色工程の一部として実施してもよい。
【0025】
また、B法においては、製編の際に、上述したアクリル強撚紡績糸としてZ撚りである糸とS撚りである糸を交互に交編する方法や天竺編を採用することにより、より良好なシボを有するアクリル編物とすることができる。
【実施例0026】
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。
【0027】
<沸水収縮率>
JIS L 1015:2010 8.15 a)に従い、適切な温度の熱水として沸水を用いて熱水寸法変化率を求め、これを沸水収縮率とする。
【0028】
<繊度>
JIS L 1015:2010 8.5に従って繊度を求める。
【0029】
<メートル番手>
JIS L 1095:2010 9.4.1に従ってメートル番手Sを求める。
【0030】
<撚係数>
JIS L 1095:2010 9.15.1のA法に従って1メートルあたりの撚数Nを求める。撚数Nと上記のメートル番手Sから撚係数を次式により算出する。
撚係数=N/(S)1/2
【0031】
<涼感風合>
サンプルの触感をコントロール品(比較例5の編物)と比較し、下記の基準に従い評価する。3人の検査員の評価点の平均値をそのサンプルの評価とする。平均値が1点を超えれば、良好な涼感風合を有すると判断できる。
2点:コントロール品よりも涼感風合に富む
1点:コントロール品よりもやや涼感風合あり
0点:コントロール品と同等の涼感風合である
【0032】
<外観(シボ感)>
サンプルの表面の外観を目視で観察し、シボ感を下記の基準に従い評価する。3人の検査員の評価点の平均値をそのサンプルの評価とする。平均値が1点を超えれば、シボ感を有すると判断する。
2点:一般的な縮生地と同等またはそれ以上のシボ感を認識できる
1点:一般的な縮生地ほどではないがシボ感を認識できる
0点:シボ感を認識できない
【0033】
<洗濯方法>
一般財団法人繊維評価技術協議会製品認証部発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」(2020年10月30日改定版・文書番号JEC326)に従い、下記の条件で洗濯処理を実施する。
・JAFET標準配合洗剤(繊維製品新機能評価評議会製)を用い、標準洗濯法(1995年度版JIS L 0217:1995 103法記載の方法)に従って洗濯処理を実施し、乾燥は吊り干しで行い、洗濯10回行った評価サンプルを作成する。
【0034】
[実施例1]
収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、1.7dtex、51mm)のみを用いて、Z撚りでリング紡績し、メートル番手64番手、撚係数152である実施例1のアクリル強撚紡績糸を得た。該アクリル強撚紡績糸について、100%使いとして16ゲージ天竺編の編物を作成した。この編物を98℃で30分間熱水処理した後、できるだけ張力を下げた状態において冷却速度1℃/分以下で徐冷処理を行って収縮発現させ、次いで、仕上セットとして、120℃の蒸気で30秒間処理することにより編目の乱れやひずみを取り除いて実施例1のアクリル編物を得た。
【0035】
[実施例2]
実施例1において、アクリル強撚紡績糸の構成繊維として収縮性アクリル繊維のみを用いる代わりに、収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、1.7dtex、51mm)と非収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率1%、1.7dtex、51mm)を70:30の質量比で用いること以外は同様にして、実施例2のアクリル編物を得た。
【0036】
[比較例1]
実施例2において、収縮性アクリル繊維と非収縮性アクリル繊維の質量比を30:70に変更すること以外は同様にして、比較例1のアクリル編物を得た。
【0037】
[比較例2]
実施例1において、アクリル強撚紡績糸の代わりに、非収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率1%、1.7dtex、51mm)のみを用いたメートル番手48番手、撚係数152である比較例2のアクリル紡績糸を用いたこと以外は同様にして、比較例2のアクリル編物を得た。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、アクリル強撚紡績糸の構成繊維として収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、1.7dtex、51mm)のみを用いる代わりに、収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、6.6dtex、51mm)のみを用いること、メートル番手を64番手から20番手に変更すること、および天竺編を16ゲージから5ゲージに変更すること以外は同様にして、実施例3のアクリル編物を得た。
【0039】
[比較例3]
実施例1において、アクリル強撚紡績糸の構成繊維として収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、1.7dtex、51mm)のみを用いる代わりに、収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、0.9dtex、51mm)のみを用いること以外は同様にして、比較例3のアクリル編物を得た。
【0040】
[実施例4]
実施例1において、アクリル強撚紡績糸の構成繊維として収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率25%、1.7dtex、51mm)のみを用いる代わりに、収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率40%、1.7dtex、51mm)のみを用いること、および天竺編を16ゲージから14ゲージに変更すること以外は同様にして、実施例4のアクリル編物を得た。
【0041】
[実施例5]
実施例1のアクリル強撚紡績糸および該アクリル強撚紡績糸の撚りをS撚りに変更したのみのアクリル強撚紡績糸を用いて、1:1で交互に用いて16ゲージ天竺編の編物を作成した。この編物に対して、実施例1と同様の熱水処理、徐冷処理、および仕上セットを施して実施例5のアクリル編物を得た。
【0042】
[比較例4]
実施例1のアクリル強撚紡績糸および比較例2のアクリル紡績糸においてメートル番手を64番手に変更したアクリル紡績糸を前者1本、後者3本の割合で交編し16ゲージ天竺編の編物を作成した。この編物に対して、実施例1と同様の熱水処理、徐冷処理、および仕上セットを施して実施例4のアクリル編物を得た。
【0043】
[比較例5]
実施例1において、アクリル強撚紡績糸の代わりに、非収縮性アクリル繊維(日本エクスラン工業社製、沸水収縮率1%、1.7dtex、51mm)のみを用いたメートル番手48番手、撚係数108である比較例5のアクリル紡績糸を用いたこと以外は同様にして、比較例5のアクリル編物を得た。なお、かかるアクリル編物は収縮性アクリル繊維を用いず、強撚ではない普通の撚係数で作成した紡績糸を用いた編物である。
【0044】
上記各実施例及び各比較例で得られた編物及び織物を評価した結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1からわかるように、本発明の実施例である実施例1~5においては、洗濯10回後においても、良好な涼感風合および良好なシボ感が維持されるものであった。これに対して、比較例1および2においては、収縮性アクリル繊維の混率が低いため、紡績時に高い撚係数としていても、収縮発現による撚係数の上昇が小さいため、涼感風合およびシボ感の向上があまり見られないものとなった。
【0047】
また、比較例3においては、収縮性アクリル繊維として細繊度のものを使用したため、洗濯前においてはやや涼感風合の向上したものとなったが、洗濯10回後においては涼感風合が低下してしまった。比較例4においては、実施例1のアクリル強撚紡績糸を使用しているものの、編物中における該繊維の割合が低いため、涼感風合およびシボ感の向上がほとんど見られないものとなった。