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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152887
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】圧縮機および冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 23/02 20060101AFI20231005BHJP
   F04C 18/32 20060101ALI20231005BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F04C23/02 J
F04C18/32
F04C29/00 D
F04C29/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049495
(22)【出願日】2023-03-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022060347
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊竹 大樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB21
3H129BB24
3H129BB32
3H129CC05
3H129CC07
3H129CC27
3H129CC30
(57)【要約】
【課題】圧縮機の製品との接続部位における振動を抑制する。
【解決手段】バランサ(50)は、駆動軸(20)および電動機(25)の回転子(27)とともに回転系(60)を構成する。圧縮機(10)の製品との接続部位において、圧縮機構(30)の低圧室(S1)と高圧室(S2)との圧力差に応じたトルクによる第1振動(a1)と、偏心回転運動によりピストン(35)に作用する慣性力による第2振動(a2)と、回転系(60)に作用する遠心力による第3振動(a3)との合成である合成振動(at)が第1振動(a1)以下となるように、バランサ(50)が構成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に搭載される圧縮機であって、
回転軸線(Q1)に対して偏心する偏心軸部(22)を有する駆動軸(20)と、
前記駆動軸(20)に固定された回転子(27)を有して前記駆動軸(20)を回転駆動する電動機(25)と、
前記偏心軸部(22)と係合して偏心回転運動を行うピストン(35)と、前記ピストン(35)を収容して流体室(S0)を形成するシリンダ(31)と、前記流体室(S0)を低圧室(S1)と高圧室(S2)とに区画するブレード(36)とを有する圧縮機構(30)と、
前記駆動軸(20)および前記回転子(27)とともに回転系(60)を構成するバランサ(50)と、
前記駆動軸(20)と前記電動機(25)と前記圧縮機構(30)と前記バランサ(50)とを収容するケーシング(11)と、
前記圧縮機構(30)に流体を吸入するための吸入管(15)と、
前記圧縮機構(30)により圧縮された流体を吐出するための吐出管(16)とを備え、
前記圧縮機の前記製品との接続部位において、前記低圧室(S1)と前記高圧室(S2)との圧力差に応じたトルクによる第1振動(a1)と、前記偏心回転運動により前記ピストン(35)に作用する慣性力による第2振動(a2)と、前記回転系(60)に作用する遠心力による第3振動(a3)との合成である合成振動(at)が前記第1振動(a1)以下となるように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【請求項2】
請求項1の圧縮機において、
前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吐出管(16)、前記吸入管(15)、前記ケーシング(11)の脚部(17)のいずれか1つである
圧縮機。
【請求項3】
請求項1の圧縮機において、
前記製品は、冷房運転を行う冷凍装置(RR)であり、前記流体は、冷媒であり、
前記第1振動(a1)の振幅をAとし、前記第1振動(a1)の位相をΦとし、前記第2振動(a2)の振幅をAとし、前記第2振動(a2)の位相をΦとし、前記第3振動(a3)の振幅をAとし、前記第3振動(a3)の位相をΦとすると、前記圧縮機の運転条件が前記吸入管(15)により吸入される冷媒と前記吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件である場合に、前記圧縮機の前記製品との接続部位において次の式1が成立するように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【数1】
【請求項4】
請求項3の圧縮機において、
前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、
前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、
前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吐出管(16)であり、
前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吐出管(16)において次の式11~式17が成立するように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【数2】
【請求項5】
請求項3の圧縮機において、
アキュムレータ(18)と、
前記アキュムレータ(18)と前記圧縮機構(30)とを接続する接続管(19)とを備え、
前記吸入管(15)は、前記アキュムレータ(18)と前記接続管(19)を経由して前記圧縮機構(30)に接続され、
前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、
前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、
前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吸入管(15)であり、
前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吸入管(15)において次の式21~式27が成立するように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【数3】
【請求項6】
請求項1の圧縮機において、
前記製品は、冷房運転を行う冷凍装置(RR)であり、前記流体は、冷媒であり、
前記第1振動(a1)の振幅をAとし、前記第1振動(a1)の位相をΦとし、前記第2振動(a2)の振幅をAとし、前記第2振動(a2)の位相をΦとし、前記第3振動(a3)の振幅をAとし、前記第3振動(a3)の位相をΦとすると、前記圧縮機の運転条件が前記吸入管(15)により吸入される冷媒と前記吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件である場合に、前記圧縮機の前記製品との接続部位において次の式2が成立するように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【数4】
【請求項7】
請求項6の圧縮機において、
前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、
前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、
前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吐出管(16)であり、
前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吐出管(16)において次の式31~式37が成立するように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【数5】
【請求項8】
請求項6の圧縮機において、
アキュムレータ(18)と、
前記アキュムレータ(18)と前記圧縮機構(30)とを接続する接続管(19)とを備え、
前記吸入管(15)は、前記アキュムレータ(18)と前記接続管(19)を経由して前記圧縮機構(30)に接続され、
前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、
前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、
前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吸入管(15)であり、
前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吸入管(15)において次の式41~式47が成立するように、前記バランサ(50)が構成される
圧縮機。
【数6】
【請求項9】
請求項1の圧縮機において、
前記圧縮機の運転可能な回転数の範囲は、90rps以上の範囲を含む
圧縮機。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つの圧縮機を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機および冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータリ式圧縮機が開示されている。このロータリ式圧縮機では、電動機の回転子に、上側主錘部材と下側主錘部材と上側副錘部材と下側副錘部材からなるバランサが設けられる。上側主錘部材よりも質量の大きい下側主錘部材は、質量中心が180°の方向に位置する。上側副錘部材よりも質量の大きい下側副錘部材は、質量中心が90°の方向に位置する。このため、バランサの質量中心の位置は、180°の方向から反時計方向へ角度θだけずれた位置となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-129755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、製品に搭載された圧縮機のうち製品との接続部位における振動を抑制するために、圧縮トルクによる第1振動と、ピストン慣性力による第2振動と、回転系遠心力による第3振動との合成である合成振動を考慮することについては、何ら開示も示唆もない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、製品に搭載される圧縮機であって、回転軸線(Q1)に対して偏心する偏心軸部(22)を有する駆動軸(20)と、前記駆動軸(20)に固定された回転子(27)を有して前記駆動軸(20)を回転駆動する電動機(25)と、前記偏心軸部(22)と係合して偏心回転運動を行うピストン(35)と、前記ピストン(35)を収容して流体室(S0)を形成するシリンダ(31)と、前記流体室(S0)を低圧室(S1)と高圧室(S2)とに区画するブレード(36)とを有する圧縮機構(30)と、前記駆動軸(20)および前記回転子(27)とともに回転系(60)を構成するバランサ(50)と、前記駆動軸(20)と前記電動機(25)と前記圧縮機構(30)と前記バランサ(50)とを収容するケーシング(11)と、前記圧縮機構(30)に流体を吸入するための吸入管(15)と、前記圧縮機構(30)により圧縮された流体を吐出するための吐出管(16)とを備え、前記圧縮機の前記製品との接続部位において、前記低圧室(S1)と前記高圧室(S2)との圧力差に応じたトルクによる第1振動(a1)と、前記偏心回転運動により前記ピストン(35)に作用する慣性力による第2振動(a2)と、前記回転系(60)に作用する遠心力による第3振動(a3)との合成である合成振動(at)が前記第1振動(a1)以下となるように、前記バランサ(50)が構成される。
【0006】
第1の態様では、バランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を調節することができる。そして、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0007】
本開示の第2の態様は、第1の態様の圧縮機において、前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吐出管(16)、前記吸入管(15)、前記ケーシング(11)の脚部(17)のいずれか1つである圧縮機である。
【0008】
第2の態様では、吐出管(16)と吸入管(15)とケーシング(11)の脚部(17)のいずれか1つにおける振動を抑制することができる。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様の圧縮機において、前記製品は、冷房運転を行う冷凍装置(RR)であり、前記流体は、冷媒であり、前記第1振動(a1)の振幅をAとし、前記第1振動(a1)の位相をΦとし、前記第2振動(a2)の振幅をAとし、前記第2振動(a2)の位相をΦとし、前記第3振動(a3)の振幅をAとし、前記第3振動(a3)の位相をΦとすると、前記圧縮機の運転条件が前記吸入管(15)により吸入される冷媒と前記吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件である場合に、前記圧縮機の前記製品との接続部位において次の式1が成立するように、前記バランサ(50)が構成される圧縮機である。
【0010】
【数1】
【0011】
第3の態様では、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができる。これにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第3の態様の圧縮機において、前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吐出管(16)であり、前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吐出管(16)において次の式11~式17が成立するように、前記バランサ(50)が構成される圧縮機である。
【0013】
【数2】
【0014】
第4の態様では、式11~式17に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吐出管(16)において式1が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができ、吐出管(16)における振動を抑制することができる。
【0015】
本開示の第5の態様は、第3の態様の圧縮機において、アキュムレータ(18)と、前記アキュムレータ(18)と前記圧縮機構(30)とを接続する接続管(19)とを備え、前記吸入管(15)は、前記アキュムレータ(18)と前記接続管(19)を経由して前記圧縮機構(30)に接続され、前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吸入管(15)であり、前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吸入管(15)において次の式21~式27が成立するように、前記バランサ(50)が構成される圧縮機である。
【0016】
【数3】
【0017】
第5の態様では、式21~式27に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吸入管(15)において式1が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吸入管(15)における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができ、吸入管(15)における振動を抑制することができる。
【0018】
本開示の第6の態様は、第1または第2の態様の圧縮機において、前記製品は、冷房運転を行う冷凍装置(RR)であり、前記流体は、冷媒であり、前記第1振動(a1)の振幅をAとし、前記第1振動(a1)の位相をΦとし、前記第2振動(a2)の振幅をAとし、前記第2振動(a2)の位相をΦとし、前記第3振動(a3)の振幅をAとし、前記第3振動(a3)の位相をΦとすると、前記圧縮機の運転条件が前記吸入管(15)により吸入される冷媒と前記吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件である場合に、前記圧縮機の前記製品との接続部位において次の式2が成立するように、前記バランサ(50)が構成される圧縮機である。
【0019】
【数4】
【0020】
第6の態様では、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)の0.5倍以下にすることができる。これにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0021】
本開示の第7の態様は、第6の態様の圧縮機において、前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吐出管(16)であり、前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吐出管(16)において次の式31~式37が成立するように、前記バランサ(50)が構成される圧縮機である。
【0022】
【数5】
【0023】
第7の態様では、式31~式37に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吐出管(16)において式2が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)における合成振動(at)を第1振動(a1)の0.5倍以下にすることができ、吐出管(16)における振動を抑制することができる。
【0024】
本開示の第8の態様は、第6の態様の圧縮機において、アキュムレータ(18)と、前記アキュムレータ(18)と前記圧縮機構(30)とを接続する接続管(19)とを備え、前記吸入管(15)は、前記アキュムレータ(18)と前記接続管(19)を経由して前記圧縮機構(30)に接続され、前記バランサ(50)は、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)から遠い側に位置する第1錘部(51)と、前記回転子(27)の前記圧縮機構(30)に近い側に位置する第2錘部(52)とを有し、前記第1錘部(51)の重量をm[g]とし、前記第1錘部(51)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第1錘部(51)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記第2錘部(52)の重量をm[g]とし、前記第2錘部(52)と前記回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、前記偏心軸部(22)の偏心方向に対する前記第2錘部(52)の前記回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、前記偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とし、前記偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、前記ピストン(35)の重量をm[g]とし、前記圧縮機構(30)と前記回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とすると、前記第1錘部(51)と前記第2錘部(52)との角度差(X)と、前記圧縮機の静バランス量(Y)と、前記圧縮機の動バランス量(Z)は、以下の式A,式B,式Cで示され、前記圧縮機の前記製品との接続部位は、前記吸入管(15)であり、前記圧縮機の運転条件が前記冷房運転条件である場合に、前記吸入管(15)において次の式41~式47が成立するように、前記バランサ(50)が構成される圧縮機である。
【0025】
【数6】
【0026】
第8の態様では、式41~式47に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吸入管(15)において式2が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吸入管(15)における合成振動(at)を第1振動(a1)の0.5倍以下にすることができ、吸入管(15)における振動を抑制することができる。
【0027】
本開示の第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つの圧縮機において、前記圧縮機の運転可能な回転数の範囲は、90rps以上の範囲を含む圧縮機である。
【0028】
第9の態様では、圧縮機(10)の回転数が90rps以上の範囲である場合においても、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができる。これにより、圧縮機(10)の回転数が90rps以上の範囲である場合においても、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0029】
本開示の第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つの圧縮機を備える冷凍装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施形態1の冷凍装置の構成を例示する概略図である。
図2図2は、実施形態1の圧縮機の構成を例示する縦断面図である。
図3図3は、圧縮機構の構成を例示する横断面図である。
図4図4は、第1錘部および第2錘部の距離と角度を例示する概略図である。
図5図5は、偏心軸部の偏心量を例示する概略図である。
図6図6は、圧縮機構と回転系の重心との距離を例示する縦断面図である。
図7図7は、比較例1の圧縮機における各種の振動と位相との関係を例示するグラフである。
図8図8は、比較例1の圧縮機における各種の振動と回転数との関係を例示するグラフである。
図9図9は、比較例2の圧縮機における各種の振動と回転数との関係を例示するグラフである。
図10図10は、実施形態1の圧縮機における各種の振動と回転数との関係を例示するグラフである。
図11図11は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値と第1錘部と第2錘部との角度差(X)との関係を例示するグラフである。
図12図12は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値と圧縮機の静バランス量(Y)との関係を例示するグラフである。
図13図13は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値と圧縮機の動バランス量(Z)との関係を例示するグラフである。
図14図14は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値がゼロ以下となるときの第1錘部と第2錘部との角度差(X)と圧縮機の静バランス量(Y)との関係を例示するグラフである。
図15図15は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値がゼロ以下となるときの第1錘部と第2錘部との角度差(X)と圧縮機の静バランス量(Y)との関係に関する第1境界線を例示するグラフである。
図16図16は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値がゼロ以下となるときの第1錘部と第2錘部との角度差(X)と圧縮機の動バランス量(Z)との関係に関する第2境界線を例示するグラフである。
図17図17は、圧縮機の製品との接続部位における合成振動に関する指標値がゼロ以下となるときの圧縮機の静バランス量(Y)と圧縮機の動バランス量(Z)との関係に関する第3境界線を例示するグラフである。
図18図18は、その他の実施形態における圧縮機構の構成を例示する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して実施の形態を詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0032】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の冷凍装置(RR)の構成を例示する。冷凍装置(RR)は、冷媒が循環する冷媒回路(RR1)を備える。具体的には、冷媒回路(RR1)は、圧縮機(10)と、第1熱交換器(RR5)と、第2熱交換器(RR6)と、減圧機構(RR7)と、四方切換弁(RR8)とを有する。この例では、膨張機構(RR7)は、電子膨張弁である。冷媒回路(RR1)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0033】
この例では、冷凍装置(RR)は、冷房運転と暖房運転とを切り換え可能な空気調和機である。第1熱交換器(RR5)は、熱源熱交換器であり、室外に設けられる。第2熱交換器(RR6)は、利用熱交換器であり、室内に設けられる。例えば、圧縮機(10)と第1熱交換器(RR5)と膨張機構(RR7)は、室外に設置される室外ユニットのケーシング(図示省略)内に設けられる。第2熱交換器(RR6)は、室内に設置される室内ユニットのケーシング(図示省略)内に設けられる。
【0034】
圧縮機(10)の吐出側は、四方切換弁(RR8)の第1ポート(P1)に接続される。圧縮機(10)の吸入側は、四方切換弁(RR8)の第2ポート(P2)に接続される。第1熱交換器(RR5)のガス端は、四方切換弁(RR8)の第3ポート(P3)に接続される。第1熱交換器(RR5)の液端は、膨張機構(RR7)を経由して第2熱交換器(RR6)の液端に接続される。第2熱交換器(RR6)のガス端は、四方切換弁(RR8)の第4ポート(P4)に接続される。
【0035】
四方切換弁(RR8)は、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する第1状態(図1の実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する第2状態(図1の破線で示す状態)とに切り換え可能である。
【0036】
〔冷房運転〕
冷房運転では、四方切換弁(RR8)が第1状態となり、圧縮機(10)が駆動する。圧縮機(10)から吐出された冷媒は、第1熱交換器(RR5)において放熱し、膨張機構(RR7)において減圧された後に、第2熱交換器(RR6)において吸熱する。これにより、室内が冷房される。第2熱交換器(RR6)から流出した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される。
【0037】
〔暖房運転〕
暖房運転では、四方切換弁(RR8)が第2状態となり、圧縮機(10)が駆動する。圧縮機(10)から吐出された冷媒は、第2熱交換器(RR6)において放熱し、膨張機構(RR7)において減圧された後に、第1熱交換器(RR5)において吸熱する。これにより、室内が暖房される。第1熱交換器(RR5)から流出した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される。
【0038】
(圧縮機)
図2および図3は、実施形態1の圧縮機(10)の構成を例示する。圧縮機(10)は、冷凍装置(RR)に搭載される。図3は、図2のIII-III線における断面図に対応する。圧縮機(10)は、冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。冷凍装置(RR)は、圧縮機(10)が搭載される製品の一例である。冷媒は、圧縮機(10)により圧縮される流体の一例である。
【0039】
圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、駆動軸(20)と、電動機(25)と、圧縮機構(30)と、バランサ(50)とを備える。
【0040】
〔ケーシング〕
ケーシング(11)は、駆動軸(20)と電動機(25)と圧縮機構(30)とバランサ(50)とを収容する。この例では、ケーシング(11)は、起立した状態の円筒状の密閉容器である。ケーシング(11)は、ケーシング(11)の円筒軸線が上下方向を向くように配置される。具体的には、ケーシング(11)は、円筒状の胴部(12)と、胴部(12)の上端部を閉塞する第1鏡板(13)と、胴部(12)の下端部を閉塞する第2鏡板(14)とを有する。
【0041】
なお、以下の説明において、部材の上側は、その部材の軸方向の一端側に対応し、部材の下側は、その部材の軸方向の他端側に対応する。部材の軸方向は、その部材の軸線の方向のことである。部材の径方向は、その部材の軸方向と直交する方向のことである。部材の周方向は、その部材の軸線周りの方向のことである。例えば、ケーシング(11)の上側は、ケーシング(11)の軸方向の一端側に対応し、ケーシング(11)の下側は、ケーシング(11)の軸方向の他端側に対応する。
【0042】
〔吸入管と吐出管と脚部〕
また、圧縮機(10)は、吸入管(15)と、吐出管(16)とを備える。ケーシング(11)は、脚部(17)を有する。吸入管(15)は、圧縮機構(30)に冷媒を吸入するために設けられる。吐出管(16)は、圧縮機構(30)により圧縮された冷媒を吐出するために設けられる。脚部(17)は、ケーシング(11)の下部に設けられる。吸入管(15)と吐出管(16)とケーシング(11)の脚部(17)は、圧縮機(10)が搭載される製品との接続部位の一例である。
【0043】
この例では、圧縮機(10)は、アキュムレータ(18)と、接続管(19)とを備える。アキュムレータ(18)は、起立した状態の円筒状の密閉容器である。吸入管(15)の一端部は、アキュムレータ(18)の入口に接続される。吸入管(15)の他端部は、圧縮機(10)が搭載される製品の構成要素(図1の例では四方切換弁(RR8)の第1ポート(P1))に接続される。接続管(19)は、ケーシング(11)の胴部(12)の下部に取り付けられ、胴部(12)を貫通する。接続管(19)の一端部は、圧縮機構(30)に接続される。接続管(19)の他端部は、アキュムレータ(18)の出口に接続される。このように、吸入管(15)は、アキュムレータ(18)と接続管(19)とを経由して圧縮機構(30)に接続される。
【0044】
吐出管(16)は、ケーシング(11)の第1鏡板(13)に取り付けられ、第1鏡板(13)を貫通する。吐出管(16)の一端部は、ケーシング(11)の内部空間と連通する。吐出管(16)の他端部は、圧縮機(10)が搭載される製品の構成要素(図1の例では四方切換弁(RR8)の第2ポート(P2))に接続される。
【0045】
ケーシング(11)の脚部(17)は、ケーシング(11)の第2鏡板(14)に取り付けられ、ケーシング(11)を支持する。また、ケーシング(11)の脚部(17)は、圧縮機(10)が搭載される製品の構成要素(例えば圧縮機(10)が収容される室外ユニットのケーシングの底板)に接続される。
【0046】
〔駆動軸〕
駆動軸(20)は、ケーシング(11)の円筒軸線に沿うように延びる。この例では、駆動軸(20)は、駆動軸(20)の回転軸線(Q1)が上下方向を向くように配置される。駆動軸(20)は、主軸部(21)と、偏心軸部(22)とを有する。主軸部(21)の中心軸線は、駆動軸(20)の回転軸線(Q1)に対応する。偏心軸部(22)は、主軸部(21)の下端寄りに配置される。偏心軸部(22)の直径は、主軸部(21)の直径よりも大きい。偏心軸部(22)は、回転軸線(Q1)に対して偏心する。偏心軸部(22)の中心軸線に対応する偏心軸線(Q2)は、駆動軸(20)の回転軸線(Q1)と実質的に平行である。
【0047】
〔電動機〕
電動機(25)は、駆動軸(20)を回転駆動する。電動機(25)は、固定子(26)と、回転子(27)とを有する。この例では、電動機(25)は、圧縮機構(30)の上方に配置される。固定子(26)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定される。回転子(27)は、固定子(26)と所定のエアギャップを隔てて対向する。回転子(27)は、駆動軸(20)の主軸部(21)に固定される。なお、この例では、回転子(27)の上側は、回転子(27)の圧縮機構(30)から遠い側に対応する。回転子(27)の下側は、回転子(27)の圧縮機構(30)に近い側に対応する。
【0048】
〔圧縮機構〕
圧縮機構(30)は、冷媒を圧縮する。この例では、圧縮機構(30)は、ケーシング(11)内の下部に配置される。圧縮機構(30)は、シリンダ(31)と、フロントヘッド(32)と、リアヘッド(33)と、ピストン(35)と、ブレード(36)と、一対のブッシュ(37)とを有する。シリンダ(31)とフロントヘッド(32)とリアヘッド(33)は、ボルトにより締結される。シリンダ(31)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定される。
【0049】
シリンダ(31)は、ピストン(35)を収容して流体室(S0)を形成する。具体的には、シリンダ(31)は、肉厚な円板状に形成される。シリンダ(31)の中央部には、シリンダ(31)を軸方向に貫通する円形状の孔が形成される。シリンダ(31)の孔にピストン(35)が収容される。
【0050】
フロントヘッド(32)は、シリンダ(31)の上端面を閉塞する板状の部材である。フロントヘッド(32)の中央部には、駆動軸(20)を支持する主軸受部(32a)が設けられる。主軸受部(32a)は、円筒状に形成され、フロントヘッド(32)から上方へ向けて突出する。主軸受部(32a)には、駆動軸(20)の主軸部(21)のうち偏心軸部(22)の上側の部分が挿通される。
【0051】
リアヘッド(33)は、シリンダ(31)の下端面を閉塞する板状の部材である。リアヘッド(33)の中央部には、駆動軸(20)を支持する副軸受部(33a)が設けられる。副軸受部(33a)は、円筒状に形成され、リアヘッド(33)から下方へ向けて突出する。副軸受部(33a)には、駆動軸(20)の主軸部(21)のうち偏心軸部(22)の下側の部分が挿通される。
【0052】
ピストン(35)は、駆動軸(20)の偏心軸部(22)と係合して偏心回転運動を行う。具体的には、ピストン(35)は、円筒状に形成される。ピストン(35)には、駆動軸(20)の偏心軸部(22)が回転可能に嵌め込まれる。そして、ピストン(35)は、駆動軸(20)の偏心軸部(22)が嵌め込まれた状態で、シリンダ(31)の孔に収容される。ピストン(35)の外周面は、シリンダ(31)の内周面と摺接する。シリンダ(31)にピストン(35)が収容されることで、シリンダ(31)の内周面とピストン(35)の外周面との間に流体室(S0)が形成される。
【0053】
ブレード(36)は、シリンダ(31)とピストン(35)との間に形成された流体室(S0)を低圧室(S1)と高圧室(S2)とに区画する。この例では、ブレード(36)は、平板状に形成され、ピストン(35)の外周面からピストン(35)の径方向外側へ向けて突出する。ブレード(36)は、ピストン(35)と一体に形成される。
【0054】
シリンダ(31)には、ブッシュ孔(40)が形成される。ブッシュ孔(40)は、シリンダ(31)を軸方向に貫通する。一対のブッシュ(37)は、一対のブッシュ(37)の間にブレード(36)を進退可能に挟み込んだ状態で、シリンダ(31)に形成されたブッシュ孔(40)に揺動可能に嵌め込まれる。ブレード(36)は、一対のブッシュ(37)により揺動可能に支持される。
【0055】
シリンダ(31)には、吸入ポート(41)が形成される。吸入ポート(41)は、シリンダ(31)を径方向に貫通する。吸入ポート(41)の一端は、シリンダ(31)の内周面に開口する。吸入ポート(41)の開口端は、シリンダ(31)の周方向においてブッシュ孔(40)の一端側(駆動軸(20)の回転方向における前方側)に配置され、ブッシュ孔(40)と隣り合う。そして、吸入ポート(41)は、流体室(S0)の低圧室(S1)と連通する。吸入ポート(41)の他端には、接続管(19)の一端部が挿入される。
【0056】
フロントヘッド(32)には、吐出ポート(42)が形成される。吐出ポート(42)は、フロントヘッド(32)を厚み方向(駆動軸(20)の軸方向)に貫通する。吐出ポート(42)の一端は、フロントヘッド(32)の下面に開口する。吐出ポート(42)の開口端は、シリンダ(31)の周方向においてブッシュ孔(40)の他端側(駆動軸(20)の回転方向における後方側)に配置される。そして、吐出ポート(42)は、流体室(S0)の高圧室(S2)と連通する。吐出ポート(42)の他端には、吐出ポート(42)を開閉する吐出弁(43)が設けられる。例えば、吐出弁(43)は、リード弁である。
【0057】
〔バランサ〕
バランサ(50)は、駆動軸(20)および電動機(25)の回転子(27)とともに、回転系(60)を構成する。この例では、バランサ(50)は、第1錘部(51)と、第2錘部(52)とを有する。
【0058】
第1錘部(51)は、回転子(27)の圧縮機構(30)から遠い側(図2の例では上側)に配置される。第2錘部(52)は、回転子(27)の圧縮機構(30)から近い側(図2の例では下側)に配置される。具体的には、第1錘部(51)は、回転子(27)の上端面に固定され、第2錘部(52)は、回転子(27)の下端面に固定される。例えば、第1錘部(51)および第2錘部(52)は、真鍮などの金属で構成される。
【0059】
〔圧縮機の動作〕
次に、圧縮機(10)の動作について説明する。
【0060】
電動機(25)を通電すると、駆動軸(20)は、正回転方向(図3の例では時計回りの方向)に回転する。駆動軸(20)が回転すると、ブレード(36)と一体に形成されたピストン(35)は、揺動しつつ偏心回転運動を行う。
【0061】
駆動軸(20)が回転してピストン(35)が移動すると、低圧室(S1)の容積が次第に大きくなり、吸入ポート(41)から低圧室(S1)へ低圧のガス冷媒が吸い込まれる。また、それと同時に、高圧室(S2)の容積が次第に小さくなり、高圧室(S2)内のガス冷媒が圧縮される。
【0062】
高圧室(S2)内のガス冷媒の圧力がケーシング(11)の内部空間のガス冷媒の圧力を上回ると、吐出弁(43)が開状態となり、高圧室(S2)内のガス冷媒が吐出ポート(42)を通じてケーシング(11)の内部空間に吐出される。圧縮機構(30)からケーシング(11)の内部空間へ吐出された高圧のガス冷媒は、吐出管(16)を通じてケーシング(11)の外部へ流出する。
【0063】
〔圧縮トルクによる振動〕
回転系(60)には、低圧室(S1)と高圧室(S2)との差に応じたトルクが作用する。以下の説明では、低圧室(S1)と高圧室(S2)との差に応じたトルクを「圧縮トルク」と記載し、圧縮トルクによる振動を「第1振動(a1)」と記載する。また、以下では、第1振動(a1)の振幅を「A」とし、第1振動(a1)の位相を「Φ」とする。圧縮トルクは、概ね高圧室(S2)から低圧室(S1)へ向かう方向に作用する。第1振動(a1)の波形は、以下の式のように表現される。
【0064】
【数7】
【0065】
〔ピストン慣性力による振動〕
偏心回転運動を行うピストン(35)には、偏心回転運動による慣性力が作用する。以下の説明では、偏心回転運動によりピストン(35)に作用する慣性力を「ピストン慣性力」と記載し、ピストン慣性力による振動を「第1振動(a2)」と記載する。また、以下では、第2振動(a2)の振幅を「A」とし、第2振動(a2)の位相を「Φ」とする。第2振動(a2)の波形は、以下の式のように表現される。
【0066】
【数8】
【0067】
〔回転系遠心力による振動〕
回転系(60)には、遠心力が作用する。以下の説明では、回転系(60)に作用する遠心力を「回転系遠心力」と記載し、回転系遠心力による振動を「第3振動(a3)」と記載する。また、以下では、第3振動(a3)の振幅を「A」とし、第3振動(a3)の位相を「Φ」とする。回転系遠心力には、偏心軸部(22)に作用する遠心力、回転子(27)に作用する遠心力、第1錘部(51)に作用する遠心力、第2錘部(52)に作用する遠心力が含まれる。第3振動(a3)の波形は、以下の式のように表現される。
【0068】
【数9】
【0069】
〔合成振動〕
圧縮機(10)には、上記の「圧縮トルク」と「ピストン慣性力」と「回転系遠心力」とが加振力として作用する。以下の説明では、第1振動(a1)と第2振動(a2)と第3振動(a3)の合成を「合成振動(at)」と記載する。合成振動(at)の波形と合成振動(at)の大きさ|at|は、以下の式のように表現される。
【0070】
【数10】
【0071】
〔圧縮機の各種パラメータ〕
なお、以下の説明では、第1錘部(51)の重量をm[g]とし、第2錘部(52)の重量をm[g]とし、偏心軸部(22)の重量をm[g]とし、ピストン(35)の重量をm[g]とする。
【0072】
また、以下の説明では、図4に示すように、第1錘部(51)と回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とし、第2錘部(52)と回転軸線(Q1)との距離をr[mm]とする。具体的には、第1錘部(51)と回転軸線(Q1)との距離は、第1錘部(51)の質点と回転軸線(Q1)との径方向距離である。第2錘部(52)と回転軸線(Q1)との距離は、第2錘部(52)の質点と回転軸線(Q1)との径方向距離である。
【0073】
また、以下の説明では、図4に示すように、偏心軸部(22)の偏心方向に対する第1錘部(51)の回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とし、偏心軸部(22)の偏心方向に対する第2錘部(52)の回転軸線(Q1)周りの角度をθ[deg]とする。具体的には、第1錘部(51)の回転軸線(Q1)周りの角度は、「回転軸線(Q1)から偏心軸線(Q2)まで径方向に延びる基準直線」から「回転軸線(Q1)から第1錘部(51)の質点まで径方向に延びる第1直線」までの角度である。第2錘部(52)の回転軸線(Q1)周りの角度は、「基準直線」から「回転軸線(Q1)から第2錘部(52)の質点まで径方向に延びる第2直線」までの角度である。
【0074】
また、以下の説明では、図5に示すように、偏心軸部(22)の偏心量をe[mm]とする。具体的には、偏心軸部(22)の偏心量は、回転軸線(Q1)と偏心軸線(Q2)との径方向距離である。
【0075】
また、以下の説明では、図6に示すように、圧縮機構(30)と回転系(60)の重心(G60)との距離をh[mm]とする。具体的には、圧縮機構(30)と回転系(60)の重心(G60)との距離は、フロントヘッド(32)の主軸受部(32a)の先端から回転系(60)の重心(G60)までの軸方向距離である。
【0076】
〔第1錘部と第2錘部との角度差と静バランス量と動バランス量〕
第1錘部(51)と第2錘部(52)との角度差(X)は、以下の式Aで示される。圧縮機(10)の静バランス量(Y)は、以下の式Bで示される。圧縮機(10)の動バランス量(Z)は、以下の式Cで示される。
【0077】
【数11】
【0078】
〔実施形態1の特徴〕
実施形態1では、圧縮機(10)の製品との接続部位において合成振動(at)が第1振動(a1)以下となるように、バランサ(50)が構成される。例えば、圧縮機(10)の製品との接続部位において合成振動(at)が第1振動(a1)以下となるように、バランサ(50)に含まれる第1錘部(51)および第2錘部(52)の各々の「重量」と「回転軸線(Q1)との距離」と「偏心軸部(22)の偏心方向に対する回転軸線(Q1)周りの角度」とが調節される。
【0079】
具体的には、実施形態1では、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位において、次の式1が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0080】
【数12】
【0081】
より具体的には、実施形態1では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、吐出管(16)である。そして、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)において、次の式11~式17が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0082】
【数13】
【0083】
〔比較例の説明〕
ここで、本願発明者による研究の結果について説明する前に、比較例の圧縮機について説明する。以下では、説明の便宜上、比較例の圧縮機の構成要素のうち実施形態1の圧縮機(10)の構成要素と同様の構成要素については、実施形態1の圧縮機(10)の構成要素の符号と同様の符号を用いて説明する。
【0084】
〔比較例1の説明〕
まず、比較例1の圧縮機について説明する。比較例1の圧縮機は、バランサ(50)の構成が実施形態1の圧縮機(10)と異なる。比較例1の圧縮機のその他の構成は、実施形態1の圧縮機(10)の構成と同様である。比較例1では、第1錘部(51)と第2錘部(52)の角度差(X)は、180°に設定される。
【0085】
比較例1の圧縮機では、第1振動(a1)と第2振動(a2)と第3振動(a3)と合成振動(at)の各々の波形は、図7に示した波形のようになる。第1振動(a1)と第2振動(a2)と第3振動(a3)と合成振動(at)の大きさ(回転数毎の大きさ)を示す波形は、図8に示した波形のようになる。
【0086】
図8に示すように、比較例1の圧縮機では、圧縮機の運転可能な回転数の範囲の全域において、合成振動(at)が第1振動(a1)以上となる。図8の例では、圧縮機の運転可能な回転数の範囲は、ゼロから140rpsまでの範囲である。
【0087】
〔比較例2の説明〕
次に、比較例2の圧縮機について説明する。比較例2の圧縮機は、特許文献1(特開2014-129755号公報)に開示された圧縮機に対応する。比較例2の圧縮機は、バランサ(50)の構成が実施形態1の圧縮機(10)と異なる。比較例2の圧縮機のその他の構成は、実施形態1の圧縮機(10)の構成と同様である。比較例2では、バランサ(50)の質量中心の位置は、180°の方向から反時計方向へ所定角度だけずれた位置となる。比較例2の圧縮機では、回転系遠心力の位相しか考慮されていない。
【0088】
比較例2の圧縮機では、第1振動(a1)と第2振動(a2)と第3振動(a3)と合成振動(at)の大きさ(回転数毎の大きさ)を示す波形は、図9に示した波形のようになる。
【0089】
図9に示すように、比較例2の圧縮機では、圧縮機の運転可能な回転数の範囲のうち高速域において、合成振動(at)が第1振動(a1)以上となる。図9の例では、圧縮機の運転可能な回転数の範囲は、ゼロから140rpsまでの範囲であり、高速域は、90rpsから140rpsまでの範囲である。
【0090】
〔本願発明者による研究の結果〕
本願発明者は、研究の結果、圧縮機(10)の振動のうち「圧縮機(10)の回転数のN倍(Nは整数)の一次成分の振動」が他の周波数成分の振動よりも比較的に大きいことを見出し、この一次成分の振動の主な要因となる加振力が「圧縮トルク」と「ピストン慣性力」と「回転系遠心力」の3つであり、これらの加振力の重ね合わせにより一次成分の振動が引き起こされることを見出した。また、本願発明者は、ピストン慣性力と回転系遠心力が圧縮機(10)の回転数の二乗に比例して変化するので、圧縮機(10)の回転数が高速になるほど、一次成分の振動が圧縮機(10)の回転数の上昇に応じて急激に増大する傾向があることを見出した。
【0091】
以上の知見に基づいて、本願発明者は、圧縮トルクによる第1振動(a1)とピストン慣性力による第2振動(a2)と回転系遠心力による第3振動(a3)との合成である合成振動(at)を考慮することで、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を適切に抑制することができることを見出した。
【0092】
具体的には、本願発明者は、圧縮機(10)の製品との接続部位において合成振動(at)の大きさを第1振動(a1)の大きさ以下にすることで、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動(特に高速域における振動)を抑制することができることを見出した。
【0093】
ここで、合成振動(at)の大きさを「|at|」とし、第1振動(a1)の大きさを「|a1|」とすると、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動(特に高速域における振動)を抑制することができる関係式は、以下の式5で示される。
【0094】
【数14】
【0095】
上記の式5は、次の式6のように展開することができる。
【0096】
【数15】
【0097】
そして、上記の式6を展開すると、式1が得られる。
【0098】
【数16】
【0099】
上記の式1が成立するようにバランサ(50)が構成された圧縮機(10)では、第1振動(a1)と第2振動(a2)と第3振動(a3)と合成振動(at)の大きさ(回転数毎の大きさ)を示す波形は、図10に示した波形のようになる。
【0100】
図10に示すように、上記の式1が成立するようにバランサ(50)が構成された圧縮機(10)では、圧縮機の運転可能な回転数の範囲の全域において、合成振動(at)が第1振動(a1)以下となる。特に、圧縮機の運転可能な回転数の範囲のうち高速域において、合成振動(at)が第1振動(a1)よりも小さくなる。図10の例では、圧縮機の運転可能な回転数の範囲は、ゼロから140rpsまでの範囲であり、高速域は、90rpsから140rpsまでの範囲である。
【0101】
なお、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動は、圧縮機(10)の運転条件に応じて変化する。そこで、本願発明者は、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を評価する運転条件を、「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」とした。この冷房運転条件は、代表的な冷房運転条件であるといえる。
【0102】
以上のようにして、本願発明者は、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、上記の式1が成立するようにバランサ(50)を構成することで、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件(代表的な冷房運転条件)である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができることを見出した。
【0103】
〔本願発明者によるさらなる研究の結果〕
また、本願発明者は、さらなる研究の結果、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が「吐出管(16)」であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合において、吐出管(16)において上記の式1が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる関係式(上記の式11~式17)を見出した。具体的には、以下の手順により、上記の関係式が見出された。
【0104】
まず、本願発明者は、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が吐出管(16)であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合において、上記の式1が成立するための必要条件を、「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」と「静バランス量(Y)」と「動バランス量(Z)」とを用いて表現することを検討した。
【0105】
上記の検討のために、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)に対してシミュレーションを行うことで、上記の条件下(振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が吐出管(16)であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合)における「第1振動(a1)の振幅および位相」と「第2振動(a2)の振幅および位相」と「第3振動(a3)の振幅および位相」とを取得した。
【0106】
次に、本願発明者は、「第1振動(a1)の振幅および位相」と「第2振動(a2)の振幅および位相」と「第3振動(a3)の振幅および位相」とに基づいて、上記の式1の左辺に示された指標値を導出した。
【0107】
本願発明者は、指標値の「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」に対する依存性を確認した。具体的には、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)の「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」を変化させて「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」毎に上記のシミュレーションを行うことで、「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」毎の指標値を取得した。図11に示すように、「指標値」と「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」は、下に凸となる二次関数で表現された。
【0108】
また、本願発明者は、指標値の「静バランス量(Y)」に対する依存性を確認した。具体的には、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)の「静バランス量(Y)」を変化させて「静バランス量(Y)」毎に上記のシミュレーションを行うことで、「静バランス量(Y)」毎の指標値を取得した。図12に示すように、「指標値」と「静バランス量(Y)」の関係は、下に凸となる二次関数で表現された。
【0109】
また、本願発明者は、指標値の「動バランス量(Z)」に対する依存性を確認した。具体的には、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)の「動バランス量(Z)」を変化させて「動バランス量(Z)」毎に上記のシミュレーションを行うことで、「動バランス量(Z)」毎の指標値を取得した。図13に示すように、「指標値」と「動バランス量(Z)」の関係は、下に凸となる二次関数で表現された。
【0110】
次に、本願発明者は、指標値がゼロ以下となるとき(言い換えると上記の式1が成立するとき)の「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」と「静バランス量(Y)」との関係を確認した。図14に示すように、横軸を「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」とし縦軸を「静バランス量(Y)」とするグラフに、指標値がゼロ以下となる領域を図示すると、指標値がゼロ以下となる領域は、楕円形となる。言い換えると、図14に示した楕円形の領域内に存在する「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」と「静バランス量(Y)」との組合せは、指標値がゼロ以下となる組合せである。
【0111】
また、本願発明者は、指標値がゼロ以下となるときの「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」と「動バランス量(Z)」との関係を確認した。横軸を「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」とし縦軸を「動バランス量(Z)」とするグラフに、指標値がゼロ以下となる領域を図示すると、指標値がゼロ以下となる領域は、図14の例と同様の楕円形となった。
【0112】
また、本願発明者は、指標値がゼロ以下となるときの「静バランス量(Y)」と「動バランス量(Z)」との関係を確認した。横軸を「静バランス量(Y)」とし縦軸を「動バランス量(Z)」とするグラフに、指標値がゼロ以下となる領域を図示すると、指標値がゼロ以下となる領域は、図14の例と同様の楕円形となった。
【0113】
次に、本願発明者は、構成要素の細部がそれぞれ異なる複数の圧縮機(10)の各々に対してシミュレーションを行い、複数の圧縮機(10)の各々について、上記の条件下(振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が吐出管(16)であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合)における「第1振動(a1)の振幅および位相」と「第2振動(a2)の振幅および位相」と「第3振動(a3)の振幅および位相」とを取得した。
【0114】
なお、上記の複数の圧縮機(10)の各々は、図2および図3に示した構成と同様の構成を有する圧縮機の代表的な現行機であり、構成要素のサイズおよび位置の少なくとも1つがそれぞれ異なる。
【0115】
次に、本願発明者は、上記の複数の圧縮機(10)の各々について、指標値がゼロ以下となるときの「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」と「静バランス量(Y)」との関係を確認した。図15に示すように、横軸を「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」とし縦軸を「静バランス量(Y)」とするグラフには、複数の圧縮機(10)に対応する複数の領域が描かれた。図15の例では、代表的な5つの圧縮機(第1~第5圧縮機)に対応する5つの領域(R11~R15)が示されている。領域(R11)は、第1圧縮機に対応する。領域(R12~R15)は、第2~第4圧縮機に対応する。
【0116】
そして、本願発明者は、図15のグラフにおいて複数の領域を包含する包含領域を規定する第1境界線(LL1)を決定した。図15の例では、第1境界線(LL1)は、5つの領域(R11~R15)を包含する三角形の領域を規定する3つの直線により構成される。
【0117】
また、本願発明者は、上記の複数の圧縮機(10)の各々について、指標値がゼロ以下となるときの「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」と「動バランス量(Z)」との関係を確認した。図16に示すように、横軸を「第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)」とし縦軸を「動バランス量(Z)」とするグラフには、複数の圧縮機(10)に対応する複数の領域が描かれた。図16の例では、代表的な5つの圧縮機(第1~第5圧縮機)に対応する5つの領域(R21~R25)が示されている。領域(R21)は、第1圧縮機に対応する。領域(R22~R25)は、第2~第4圧縮機に対応する。
【0118】
そして、本願発明者は、図16のグラフにおいて複数の領域を包含する包含領域を規定する第2境界線(LL2)を決定した。図16の例では、第2境界線(LL2)は、5つの領域(R21~R25)を包含する三角形の領域を規定する3つの直線により構成される。
【0119】
また、本願発明者は、上記の複数の圧縮機(10)の各々について、指標値がゼロ以下となるときの「静バランス量(Y)」と「動バランス量(Z)」との関係を確認した。図17に示すように、横軸を「静バランス量(Y)」とし縦軸を「動バランス量(Z)」とするグラフには、複数の圧縮機(10)に対応する複数の領域が描かれた。図17の例では、代表的な5つの圧縮機(第1~第5圧縮機)に対応する5つの領域(R31~R35)が示されている。領域(R31)は、第1圧縮機に対応する。領域(R32~R35)は、第2~第4圧縮機に対応する。
【0120】
そして、本願発明者は、図17のグラフにおいて複数の領域を包含する包含領域を規定する第3境界線(LL3)を決定した。図17の例では、第3境界線(LL3)は、5つの領域(R31~R35)を包含する五角形の領域を規定する5つの直線により構成される。
【0121】
次に、本願発明者は、図15のグラフにおいて決定された第1境界線(LL1)と、図16のグラフにおいて決定された第2境界線(LL2)と、図17のグラフにおいて決定された第3境界線(LL3)とに基づいて、以下の式11~式17を見出した。
【0122】
【数17】
【0123】
具体的には、式11~式17は、第1境界線(LL1)により表現される第1関係式と、第2境界線(LL2)により表現される第2関係式と、第3境界線(LL3)により表現される第3関係式とを解くことで導出される。第1関係式は、第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)と静バランス量(Y)との関係式である。第2関係式は、第1錘部(51)第2錘部(52)との角度差(X)と動バランス量(Z)との関係式である。第3関係式は、静バランス量(Y)と動バランス量(Z)との関係式である。
【0124】
〔実施形態1の効果〕
以上のように、実施形態1では、圧縮機(10)の製品との接続部位において、低圧室(S1)と高圧室(S2)との圧力差に応じたトルクによる第1振動(a1)と、偏心回転運動によりピストン(35)に作用する慣性力による第2振動(a2)と、回転系(60)に作用する遠心力による第3振動(a3)との合成である合成振動(at)が第1振動(a1)以下となるように、バランサ(50)が構成される。
【0125】
上記の構成では、バランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を調節することができる。そして、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0126】
このように、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動(特に圧縮機(10)の回転数が高速域であるときの振動)を抑制することができるので、圧縮機(10)の振動による騒音を低減することができる。また、圧縮機(10)を小型化することができ、圧縮機(10)のコストを低減することができる。
【0127】
また、実施形態1では、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位において、上記の式1が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0128】
上記の構成では、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができる。これにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0129】
また、実施形態1では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、吐出管(16)であり、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)において、上記の式11~式17が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0130】
上記の構成では、上記の式11~式17に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)において式1が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができ、吐出管(16)における振動を抑制することができる。
【0131】
また、実施形態1では、圧縮機(10)の運転可能な回転数の範囲は、90rps以上の範囲を含む。
【0132】
上記の構成では、圧縮機(10)の回転数が90rps以上の範囲である場合においても、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができる。これにより、圧縮機(10)の回転数が90rps以上の範囲である場合においても、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0133】
なお、実施形態1の圧縮機(10)において、アキュムレータ(18)と接続管(19)とが省略されてもよい。この場合、吸入管(15)は、ケーシング(11)の胴部(12)の下部に取り付けられ、胴部(12)を貫通する。吸入管(15)の一端部は、圧縮機構(30)に接続される。
【0134】
(実施形態2)
実施形態2の圧縮機(10)は、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位とバランサ(50)の構成とが実施形態1の圧縮機(10)と異なる。実施形態2の圧縮機(10)のその他の構成は、実施形態1の圧縮機(10)の構成と同様である。
【0135】
実施形態2では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、アキュムレータ(18)と接続管(19)を経由して圧縮機構(30)に接続される吸入管(15)である。そして、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吸入管(15)において、次の式21~式27が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0136】
【数18】
【0137】
〔本願発明者による研究の結果〕
本願発明者は、研究の結果、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が「吸入管(15)」であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合において、吐出管(16)において上記の式1が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる関係式(上記の式21~式27)を見出した。
【0138】
なお、上記の関係式(式21~式27)が見出された手順は、実施形態1の「本願発明者によるさらなる研究の結果」の手順と同様の手順である。具体的には、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)に対してシミュレーションを行うことで、上記の条件下(振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が吸入管(15)であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合)における「第1振動(a1)の振幅および位相」と「第2振動(a2)の振幅および位相」と「第3振動(a3)の振幅および位相」とを取得した。以降の手順は、実施形態1の「本願発明者によるさらなる研究の結果」の手順と同様である。
【0139】
〔実施形態2の効果〕
以上のように、実施形態2では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、吸入管(15)であり、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吸入管(15)において、上記の式21~式27が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0140】
上記の構成では、上記の式21~式27に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吸入管(15)において式1が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吸入管(15)における合成振動(at)を第1振動(a1)以下にすることができ、吸入管(15)における振動を抑制することができる。
【0141】
(実施形態3)
実施形態3の圧縮機(10)は、バランサ(50)の構成が実施形態1の圧縮機(10)と異なる。実施形態3の圧縮機(10)のその他の構成は、実施形態1の圧縮機(10)の構成と同様である。
【0142】
実施形態3では、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位において、次の式2が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0143】
【数19】
【0144】
具体的には、実施形態3では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、吐出管(16)である。そして、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)において、次の式31~式37が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0145】
【数20】
【0146】
〔本願発明者による研究の結果〕
本願発明者は、研究の結果、圧縮機(10)の製品との接続部位において合成振動(at)の大きさを第1振動(a1)の大きさの半分以下にすることで、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動(特に高速域における振動)をさらに抑制することができることを見出した。
【0147】
ここで、合成振動(at)の大きさを「|at|」とし、第1振動(a1)の大きさを「|a1|」とすると、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動(特に高速域における振動)を抑制することができる関係式は、以下の式7で示される。
【0148】
【数21】
【0149】
上記の式7は、次の式8のように展開することができる。
【0150】
【数22】
【0151】
そして、上記の式8を展開すると、式2が得られる。
【0152】
【数23】
【0153】
なお、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動は、圧縮機(10)の運転条件に応じて変化する。そこで、本願発明者は、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を評価する運転条件を、「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」とした。この冷房運転条件は、代表的な冷房運転条件であるといえる。
【0154】
以上のようにして、本願発明者は、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、上記の式2が成立するようにバランサ(50)を構成することで、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件(代表的な冷房運転条件)である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動をさらに抑制することができることを見出した。
【0155】
〔本願発明者によるさらなる研究の結果〕
また、本願発明者は、さらなる研究の結果、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が「吐出管(16)」であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合において、吐出管(16)において上記の式2が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる関係式(上記の式31~式37)を見出した。
【0156】
なお、上記の関係式(式31~式37)が見出された手順は、実施形態1の「本願発明者によるさらなる研究の結果」の手順と同様の手順である。具体的には、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)に対してシミュレーションを行うことで、上記の条件下(振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が吐出管(16)であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合)における「第1振動(a1)の振幅および位相」と「第2振動(a2)の振幅および位相」と「第3振動(a3)の振幅および位相」とを取得した。以降の手順は、実施形態1の「本願発明者によるさらなる研究の結果」の手順において「ゼロ以下」を「-0.75A 以下」に読み替えた手順と同様である。
【0157】
〔実施形態3の効果〕
以上のように、実施形態3では、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位において、上記の式2が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0158】
上記の構成では、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、圧縮機(10)の製品との接続部位における合成振動(at)を第1振動(a1)の0.5倍以下にすることができる。これにより、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制することができる。
【0159】
また、実施形態3では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、吐出管(16)であり、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)において、上記の式31~式37が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0160】
上記の構成では、上記の式31~式37に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)において式2が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吐出管(16)における合成振動(at)を第1振動(a1)の0.5倍以下にすることができ、吐出管(16)における振動を抑制することができる。
【0161】
なお、実施形態3の圧縮機(10)において、アキュムレータ(18)と接続管(19)とが省略されてもよい。この場合、吸入管(15)は、ケーシング(11)の胴部(12)の下部に取り付けられ、胴部(12)を貫通する。吸入管(15)の一端部は、圧縮機構(30)に接続される。
【0162】
(実施形態4)
実施形態4の圧縮機(10)は、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位とバランサ(50)の構成とが実施形態3の圧縮機(10)と異なる。実施形態4の圧縮機(10)のその他の構成は、実施形態3の圧縮機(10)の構成と同様である。
【0163】
実施形態4では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、アキュムレータ(18)と接続管(19)を経由して圧縮機構(30)に接続される吸入管(15)である。そして、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吸入管(15)において、次の式41~式47が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0164】
【数24】
【0165】
〔本願発明者による研究の結果〕
本願発明者は、研究の結果、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が「吸入管(15)」であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合において、吐出管(16)において上記の式2が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる関係式(上記の式41~式47)を見出した。
【0166】
なお、上記の関係式(式41~式47)が見出された手順は、実施形態3の「本願発明者によるさらなる研究の結果」の手順と同様の手順である。具体的には、本願発明者は、対象とする圧縮機(10)に対してシミュレーションを行うことで、上記の条件下(振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位が吸入管(15)であり、且つ、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合)における「第1振動(a1)の振幅および位相」と「第2振動(a2)の振幅および位相」と「第3振動(a3)の振幅および位相」とを取得した。以降の手順は、実施形態3の「本願発明者によるさらなる研究の結果」の手順と同様である。
【0167】
〔実施形態4の効果〕
以上のように、実施形態4では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、吸入管(15)であり、圧縮機(10)の運転条件が「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」である場合に、吸入管(15)において、上記の式41~式47が成立するように、バランサ(50)が構成される。
【0168】
上記の構成では、上記の式41~式47に基づいてバランサ(50)を調節することにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吸入管(15)において式2が成立するように、バランサ(50)を容易に構成することができる。これにより、圧縮機(10)の運転条件が上記の冷房運転条件である場合に、吸入管(15)における合成振動(at)を第1振動(a1)の0.5倍以下にすることができ、吸入管(15)における振動を抑制することができる。
【0169】
(その他の実施形態)
なお、以上の説明では、冷凍装置(RR)が冷房運転と暖房運転とを切り換え可能な空気調和機である場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、冷凍装置(RR)は、冷房専用機であってもよいし、暖房専用機であってもよい。この場合、冷凍装置(RR)において、四方切換弁(RR8)が省略されてもよい。また、冷凍装置(RR)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0170】
また、以上の説明では、ケーシング(11)の円筒軸線が上下方向となるようにケーシング(11)が配置される場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、ケーシング(11)は、ケーシング(11)の円筒軸線が水平方向となるように配置されてもよい。
【0171】
また、以上の説明では、ブレード(36)がピストン(35)と一体に形成される場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、ブレード(36)は、ピストン(35)と別体に形成されてもよい。図18の例では、シリンダ(31)には、ブッシュ孔(40)の代わりに、ブレード孔(45)が形成される。ブレード孔(45)は、シリンダ(31)を軸方向に貫通する。ブレード(36)は、シリンダ(31)の径方向において進退可能となるように、ブレード孔(45)に嵌め込まれる。圧縮機構(30)は、一対のブッシュ(37)の代わりに、バネ(38)を有する。バネ(38)は、ブレード孔(45)に収容され、ブレード(36)をピストン(35)へ向けて押し付ける。このような構成により、ブレード(36)の端部がピストン(35)の外周面と摺接する。
【0172】
また、以上の説明では、振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位の例として、吐出管(16)と吸入管(15)と挙げたが、これらに限定されない。例えば。振動を抑制しようとする圧縮機(10)の製品との接続部位は、ケーシング(11)の脚部(17)であってもよいし、その他の部位であってもよい。
【0173】
また、以上の説明では、圧縮機(10)の製品との接続部位における振動を抑制しようとする運転条件の例として、「吸入管(15)により吸入される冷媒と吐出管(16)により吐出される冷媒との圧力差が2.0MPaとなる冷房運転条件」を挙げたが、これに限定されない。上記の圧縮機(10)の運転条件は、上記の冷房運転条件ではない他の運転条件であってもよい。
【0174】
また、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0175】
以上説明したように、本開示は、圧縮機および冷凍装置として有用である。
【符号の説明】
【0176】
10 圧縮機
11 ケーシング
15 吸入管
16 吐出管
17 脚部
18 アキュムレータ
19 接続管
20 駆動軸
21 主軸部
22 偏心軸部
25 電動機
26 固定子
27 回転子
30 圧縮機構
31 シリンダ
35 ピストン
36 ブレード
37 ブッシュ
40 ブッシュ孔
41 吸入ポート
42 吐出ポート
43 吐出弁
50 バランサ
51 第1錘部
52 第2錘部
60 回転系
S0 流体室
S1 低圧室
S2 高圧室
RR 冷凍装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18