(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152891
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】高速伝送装置、及びケーブル組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 12/72 20110101AFI20231005BHJP
【FI】
H01R12/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050097
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】63/325,931
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 利育
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】黒木 佳英
(72)【発明者】
【氏名】野澤 圭太
(72)【発明者】
【氏名】田中 理司
(72)【発明者】
【氏名】栗林 宏明
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB58
5E223AB65
5E223AB67
5E223BA07
5E223CD01
5E223DA13
5E223DB08
5E223DB23
(57)【要約】
【課題】基板上の離れた位置に配置された機器間で高速信号伝送を行う場合において、クロストークの発生を防ぐ。
【解決手段】高速伝送装置1は、基板20と、ASIC10と、第1コネクタ30と、第2コネクタ80と、第1コネクタ30と第2コネクタ80との間に配置されるケーブル組立体40とを具備し、ケーブル組立体40は、各々が1つのチャネルの差動信号を伝送する複数のツインナックスケーブル2を並べたケーブル列42と、複数のツインナックスケーブル2の内部導体21の端部が電気的に接続される第1信号用電極4、及び複数のツインナックスケーブル2の外部導体23の端部が電気的に接続される第1グランド用電極5が設けられたパドルカード基板41と、パドルカード基板41とケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う第1導電樹脂カバー43とを有し、第1導電樹脂カバー43は、第1信号用電極4と電気的に接続されず、第1グランド用電極5と電気的に接続される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられる制御装置と、
前記基板における前記制御装置の近傍の位置に配置され、前記制御装置と前記基板を介して電気的に接続される第1コネクタと、
前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置され、前記制御装置との間で信号を送受信する機器が装着される第2コネクタと、
前記第1コネクタと第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体と
を具備し、
前記ケーブル組立体は、
各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、
前記複数のケーブルの内部導体の前端部が電気的に接続される第1信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体の前端部が電気的に接続される第1グランド用電極が設けられたパドルカード基板と、
前記パドルカード基板と前記ケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う第1導電樹脂カバーと
を有し、
前記第1導電樹脂カバーは、前記第1信号用電極と電気的に接続されず、前記第1グランド用電極と電気的に接続される
ことを特徴とする高速伝送装置。
【請求項2】
基板における制御装置の近傍の位置に配置された第1コネクタと、前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置された第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体であって、
各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、
前記複数のケーブルの内部導体が電気的に接続される信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体が電気的に接続されるグランド用電極が設けられたパドルカード基板と、
前記パドルカード基板と前記ケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う導電樹脂カバーと
を有し、
前記導電樹脂カバーは、前記信号用電極と電気的に接続されず、前記グランド用電極と電気的に接続される
ことを特徴とするケーブル組立体。
【請求項3】
前記導電樹脂カバーは、前記ケーブルの前端を覆い、前記導電樹脂カバーの一面には前記ケーブルを迂回する形状の溝が設けられており、
前記導電樹脂カバーが前記パドルカード基板に固定された状態において、前記溝が前記信号用電極を跨ぎ、当該導電樹脂カバーと前記信号用電極との接触を避けている
ことを特徴とする請求項2に記載のケーブル組立体。
【請求項4】
前記パドルカード基板に、ソルダーレジストが設けられており、
少なくとも、前記グランド用電極における前記ケーブルの導体に接触する部分、及び前記信号用電極における前記ケーブルの導体に接触する部分が、前記ソルダーレジストに囲まれている
ことを特徴とする請求項2に記載のケーブル組立体。
【請求項5】
前記グランド用電極のソルダーレジストに囲まれた領域にはスルーホールが配置されていない
ことを特徴とする請求項4に記載のケーブル組立体。
【請求項6】
基板における制御装置の近傍の位置に配置された第1コネクタと、前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置された第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体であって、
各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、
前記複数のケーブルの内部導体が電気的に接続される信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体が電気的に接続されるグランド用電極が設けられたパドルカード基板と、
前記パドルカード基板上における前記内部導体と前記信号用電極の接続部分を覆うプラスチック部材と
を具備することを特徴とするケーブル組立体。
【請求項7】
金属板を、前記パドルカード基板上における前記プラスチック部材の数と同じ個数の湾曲部ができるように折り曲げたグランドカバーを具備し、
前記グランドカバーは、前記湾曲部により前記プラスチック部材を覆うようにして、前記パドルカード基板に固定されている
ことを特徴とする請求項6に記載のケーブル組立体。
【請求項8】
長板部とその一端辺に繋がる凸部とを有する金属端子を具備し、
前記グランドカバーにおける隣り合う湾曲部間の平板部に、前記金属端子の凸部が収まる程度の幅をもった孔が形成されており、
前記パドルカード基板上における前記グランド用電極に、前記金属端子の凸部が収まる程度の幅を持った孔が形成されており、
前記金属板の凸部は、前記グランドカバーの平板部の孔を通り、その奥の前記グランド用電極の孔に挿入され、固定されている
ことを特徴とする請求項7に記載のケーブル組立体。
【請求項9】
前記グランドカバーにおける隣り合う湾曲部間の平板部に、プレスフィット端子が設けられており、
前記グランドカバーの前記プレスフィット端子は、前記パドルカード基板上におけるグランド用電極に設けられた孔に挿入され、固定されている
ことを特徴とする請求項7に記載のケーブル組立体。
【請求項10】
金属板を折り曲げたグランドカバーを具備し、
前記パドルカード基板上に、複数の前記プラスチック部材が、並べて配置されており、
前記グランドカバーは、前記パドルカード基板上における一つおきの前記プラスチック部材を覆うようにして、前記パドルカード基板に固定されている
ことを特徴とする請求項6に記載のケーブル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASIC(application specific integrated circuit)及び光トランシーバ間の高速信号伝送に係り、特に、高速伝送コネクタ、ケーブル組立体、及びそれらを組み合わせた高速伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関わる文献として、特許文献1及び2がある。特許文献1に開示された高速相互接続ケーブルアセンブリは、回路基板上におけるASICとその周縁部の終端部材との間に、ツインナックスタイプのバイパスケーブルを配置し、終端部材にコネクタ部材を接続し、このコネクタ部材を介して外部のデバイスに信号を伝送するようにしたものである。特許文献2に開示された電気デバイスは、回路基板上のバイパスケーブルを、信号導体の差動対と、信号導体を取り囲むシールド層と、シールド層を囲むケーブルジャケットとを含む通信ケーブルとし、通信ケーブルのケーブルジャケットに、シールド層の一部を露出するアクセス開口部を設け、このアクセス開口部を基板上の接地接点と電気的に接続するようにしたものである。
【0003】
この種の回路基板の信号の伝送特性は、信号の周波数と信号の伝送距離に依存し、信号の周波数が高くなるほど、伝送可能距離は短くなる。基板での信号伝送の場合における送受信速度と伝送距離の目安は、50Gbpsであれば50cm、100Gbpsであれば25cm、200Gbpsでれば12.5cmとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許9011177B2号公開公報
【特許文献2】米国特許9203193B2号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者らは、ASIC及び光トランシーバ間における112Gbps以上の高速信号伝送を行う技術の開発を試みている。しかしながら、特許文献1及び2の技術は、基板上のASICとそこから離れた機器の間を単にケーブルで接続するだけのものであるため、112Gbps以上の高速信号伝送をするとなると、機器間の距離を25cm程度まで近づけない限り、クロストークの発生を十分に防ぐことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、基板上の離れた位置に配置された機器間で高速信号伝送を行う場合において、クロストークの発生を防ぐことができる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の好適な態様である高速伝送装置は、基板と、前記基板に設けられる制御装置と、前記基板における前記制御装置の近傍の位置に配置され、前記制御装置と前記基板を介して電気的に接続される第1コネクタと、前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置され、前記制御装置との間で信号を送受信する機器が装着される第2コネクタと、前記第1コネクタと第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体とを具備し、前記ケーブル組立体は、各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、前記複数のケーブルの内部導体の前端部が電気的に接続される第1信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体の前端部が電気的に接続される第1グランド用電極が設けられたパドルカード基板と、前記パドルカード基板と前記ケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う第1導電樹脂カバーとを有し、前記第1導電樹脂カバーは、前記第1信号用電極と電気的に接続されず、前記第1グランド用電極と電気的に接続されることを特徴とする。
【0008】
本発明の別の好適な態様であるケーブル組立体は、基板における制御装置の近傍の位置に配置された第1コネクタと、前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置された第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体であって、各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、前記複数のケーブルの内部導体が電気的に接続される信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体が電気的に接続されるグランド用電極が設けられたパドルカード基板と、前記パドルカード基板と前記ケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う導電樹脂カバーとを有し、前記導電樹脂カバーは、前記信号用電極と電気的に接続されず、前記グランド用電極と電気的に接続されることを特徴とする。
【0009】
この態様において、前記導電樹脂カバーは、前記ケーブルの前端を覆い、前記導電樹脂カバーの一面には前記ケーブルを迂回する形状の溝が設けられており、前記導電樹脂カバーが前記パドルカード基板に固定された状態において、前記溝が前記信号用電極を跨ぎ、当該導電樹脂カバーと前記信号用電極との接触を避けていてもよい。
【0010】
また、前記パドルカード基板に、ソルダーレジストが設けられており、少なくとも、前記グランド用電極における前記ケーブルの導体に接触する部分、及び前記信号用電極における前記ケーブルの導体に接触する部分が、前記ソルダーレジストに囲まれていてもよい。
【0011】
また、前記グランド用電極のソルダーレジストに囲まれた領域にはスルーホールが配置されていなくてもよい。
【0012】
本発明の別の好適な態様であるケーブル組立体は、基板における制御装置の近傍の位置に配置された第1コネクタと、前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置された第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体であって、各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、前記複数のケーブルの内部導体が電気的に接続される信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体が電気的に接続されるグランド用電極が設けられたパドルカード基板と、前記パドルカード基板上における前記内部導体と前記信号用電極の接続部分を覆うプラスチック部材とを具備することを特徴とする。
【0013】
この態様において、金属板を、前記パドルカード基板上における前記プラスチック部材の数と同じ個数の湾曲部ができるように折り曲げたグランドカバーを具備し、前記グランドカバーは、前記湾曲部により前記プラスチック部材を覆うようにして、前記パドルカード基板に固定されていてもよい。
【0014】
また、長板部とその一端辺に繋がる凸部とを有する金属端子を具備し、前記グランドカバーにおける隣り合う湾曲部間の平板部に、前記金属端子の凸部が収まる程度の幅をもった孔が形成されており、前記パドルカード基板上における前記グランド用電極に、前記金属端子の凸部が収まる程度の幅を持った孔が形成されており、前記金属板の凸部は、前記グランドカバーの平板部の孔を通り、その奥の前記グランド用電極の孔に挿入され、固定されていてもよい。
【0015】
また、前記グランドカバーにおける隣り合う湾曲部間の平板部に、プレスフィット端子が設けられており、前記グランドカバーの前記プレスフィット端子は、前記パドルカード基板上におけるグランド用電極に設けられた孔に挿入され、固定されていてもよい。
【0016】
また、金属板を折り曲げたグランドカバーを具備し、前記パドルカード基板上に、複数の前記プラスチック部材が、並べて配置されており、前記グランドカバーは、前記パドルカード基板上における一つおきの前記プラスチック部材を覆うようにして、前記パドルカード基板に固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による高速伝送装置は、基板と、前記基板に設けられる制御装置と、前記基板における前記制御装置の近傍の位置に配置され、前記制御装置と前記基板を介して電気的に接続される第1コネクタと、前記基板における前記制御装置から離れた位置に配置され、前記制御装置との間で信号を送受信する機器が装着される第2コネクタと、前記第1コネクタと第2コネクタとの間に配置されるケーブル組立体とを具備し、前記ケーブル組立体は、各々が差動信号を伝送する複数のケーブルを並べたケーブル列と、前記複数のケーブルの内部導体の前端部が電気的に接続される第1信号用電極、及び前記複数のケーブルの外部導体の前端部が電気的に接続される第1グランド用電極が設けられたパドルカード基板と、前記パドルカード基板と前記ケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う第1導電樹脂カバーとを有し、前記第1導電樹脂カバーは、前記第1信号用電極と電気的に接続されず、前記第1グランド用電極と電気的に接続される。よって、基板上の離れた位置に配置された機器間で高速信号伝送を行う場合において、クロストークの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態であるASIC10、第1コネクタ30、ケーブル組立体40、及び第2コネクタ80を含む高速伝送装置1の側面図である。
【
図2】
図1のケーブル組立体40、第1コネクタ30、及び基板20の斜視図である。
【
図3】
図2における第1コネクタ30からケーブル組立体40を外した状態を示す図である。
【
図4】
図1の第1コネクタを-X側から見た図である。
【
図7】
図6のケーブル組立体40の表層面410とソルダーレジスト110及び120を示す図である。
【
図8】
図6のケーブル組立体40から第1導電樹脂カバー43を外したものを示す図である。
【
図9】
図1における第1導電樹脂カバー43の周囲の部分をXZ面と平行な面で切断した断面図である。
【
図10】
図2における第2コネクタ80をXZ面と平行な面で切断した断面図である。
【
図11】
図10の第2コネクタ80を別の角度から見た断面図である。
【
図12】ケーブル組立体40及び第1コネクタ30のNEXT、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第1導電樹脂カバー43と第2導電樹脂32を無くしたもののNEXT、及びケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第2導電樹脂32を無くしたもののNEXTの各周波数特性を示す図である。
【
図13】ケーブル組立体40及び第1コネクタ30のFEXT、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第1導電樹脂カバー43と第2導電樹脂32を無くしたもののFEXT、及びケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第2導電樹脂32を無くしたもののFEXTの各周波数特性を示す図である。
【
図14】第2コネクタ80のNEXT、及び第2コネクタ80から第3導電樹脂カバー83を無くしたもののNEXTの各周波数特性を示す図である。
【
図15】第2コネクタ80のFEXT、及び第2コネクタ80から第3導電樹脂カバー83を無くしたもののFEXTの各周波数特性を示す図である。
【
図16】本発明の第2実施形態である第1コネクタ30Aの斜視図である。
【
図19】
図16から金属カバー26Aを外したものを別の方向から見た斜視図である。
【
図21】
図16のコンタクト3及び第2導電樹脂32Aを示す斜視図である。
【
図22】本発明の第3実施形態である第1コネクタ30Bから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
【
図24】本発明の第4実施形態である第1コネクタ30Cから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
【
図26】本発明の第5実施形態である第1コネクタ30Dから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
【
図28】本発明の第6実施形態である第1コネクタ30Eから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
【
図30】本発明の第7実施形態である第1コネクタ30Fから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
【
図32】本発明の第8実施形態であるASIC10、第1コネクタ30、ケーブル組立体40A、及び第2コネクタ80を含む高速伝送装置1Aの側面図である。
【
図34】
図33のケーブル組立体40Aからグランドカバー240を外したものの斜視図である。
【
図35】
図34のケーブル組立体40Aからプラスチック部材140を外したものの斜視図である。
【
図39】ケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたもののインピーダンス波形、及びケーブル組立体40Aからグランドカバー240及びプラスチック部材140を無くしたもののインピーダンス波形を示す図である。
【
図40】ケーブル組立体40AのFEXT、及びケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたもののFEXTの各周波数特性を示す図である。
【
図41】ケーブル組立体40Aの変形例を示す図である。
【
図42】本発明の第9実施形態であるケーブル組立体40Bを示す図である。
【
図43】本発明の第10実施形態であるケーブル組立体40Cを示す図である。
【
図44】本発明の第11実施形態であるケーブル組立体40Dを示す図である。
【
図46】ケーブル組立体40AのFEXT、ケーブル組立体40DのFEXT、及びケーブル組立体40Dからグランドカバー240を無くしたもののFEXTの各周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態であるケーブル組立体40、第1コネクタ30、及び第2コネクタ80を含む高速伝送装置1について説明する。この高速伝送装置1は、ネットワークスイッチやサーバに搭載されるものである。高速伝送装置1は、矩形状の基板20と、基板20上の所定距離(例えば、25cm)だけ離れた位置に配置されたASIC10及び光トランシーバ90と、ASIC10と光トランシーバ90との間に配置された第1コネクタ30、ケーブル組立体40、及び第2コネクタ80と、光トランシーバ90と第2コネクタ80を覆うケージ95と、を有する。光トランシーバ90は、第2コネクタ80に装着され、ASIC10との間で、PAM(Pulse Amplitude Modulation)による、112Gbps以上の高速差動伝送を行う。本実施形態では、ASIC10と光トランシーバ90との間で、16チャネルの差動信号の伝送が可能である。
【0020】
以降の説明では、基板20上におけるASIC10と光トランシーバ90の離れている方向を適宜X方向といい、X方向と直交する一方向を適宜Y方向といい、X方向及びY方向の両方と直交する方向を適宜Z方向という。また、X方向における光トランシーバ90から見てASIC10のある側である-X側を前側と称し、その逆の+X側を後側と称することがある。また、Z方向における基板20から見てASIC10及び光トランシーバ90のある側である+Z側を上側と称し、その逆の-Z側を下側と称することがある。また、X方向における後側から見て+Y側を左側と称し、後側から見て-Y側を右側と称することがある。
【0021】
図1において、ASIC10の下面には、各々が1つのチャネルと対応する差動信号の+端子と-端子の各対が露出している。ASIC10の+端子及び-端子の各対は、基板20のパッド(不図示)に半田付けされている。
【0022】
基板20上におけるASIC10の後側の近傍の位置には、第1コネクタ30が配置されている。ASIC10と第1コネクタ30との間の距離は、例えば、5cmである。
図2及び
図3に示すように、第1コネクタ30は、第1インシュレータ31と、コンタクト3と、第2導電樹脂32とを有する。
【0023】
第1インシュレータ31は、直方体の前面及び後面の上側の一部を切り欠いたような外形を有している。第1インシュレータ31には、第1スロット35が設けられている。第1スロット35は、第1インシュレータ31の上面と下面の間を貫通している。第1インシュレータ31における第1スロット35を前後から囲む壁部36の内面には、それぞれ、25個の細溝37が設けられている。前後の壁部36の下面は、第1凹部316として上側に抉れている。
【0024】
第1インシュレータ31の前後の壁部36の25個の細溝37には、それぞれ、コンタクト3が配置されている。コンタクト3における一方の直線部は、細溝37に圧入されており、他方の直線部の先端の基板側接触部は、第1凹部316から露出している。
【0025】
ここで、前後の壁部36の25個のコンタクト3のうち、左右両端のコンタクト3、及びこれらの間に2つおきに配置されたコンタクト3は、グランド用のコンタクトであり、グランド用のコンタクトの間に挟まれたコンタクト3は、差動信号用のコンタクトである。以降は、グランド用のコンタクトに(G)の文字を付し、差動信号用のコンタクトに(S)の文字を付し、両者を区別する。
【0026】
第1インシュレータ31の前後の壁部36の下側には、第2凹部326が設けられている。第2凹部326は、壁部36の外面から内側に向かって凹んでいる。第2凹部326は、第1スロット35と略同じ左右幅を持った矩形状をなしている。
図4に示すように、前後の壁部36の第2凹部326の内側にはスリット337が9個あり、スリット337は、それぞれコンタクト3(G)と対応した位置にある。スリット337は、壁部36を貫いて、細溝37に達している。
【0027】
図5に示すように、第2導電樹脂32は、略直方体状の本体部320の一面から、9個の突起部327を突出させたものである。第2導電樹脂32は、第1インシュレータ31に配置され、第1インシュレータ31の第2凹部326に嵌め込まれる。第2導電樹脂32の突起部327は、スリット337を通って、その奥の細溝37内のコンタクト3(G)に接触する。第2導電樹脂32が第2凹部326に嵌め込まれた状態において、第2導電樹脂32は、コンタクト3(S)と電気的に接続されておらず、コンタクト3(G)と電気的に接続されている。
【0028】
図3、
図6、及び
図8に示すように、ケーブル組立体40は、8本のツインナックスケーブル2を左右に並べたケーブル列42と、パドルカード基板41と、第1導電樹脂カバー43とを有する。
【0029】
ツインナックスケーブル2は、2本の内部導体21と、誘電体22と、外部導体23と、ジャケット24とを有する。2本の内部導体21は平行に配置されており、内部導体21の各々が誘電体22に覆われている。2つの誘電体22を束ねたものの周りを外部導体23が覆っており、外部導体23をジャケット24が覆っている。
【0030】
パドルカード基板41は、多層基板の前後の表層面410に、第1信号用電極4と第1グランド用電極5とを設けたものである。ツインナックスケーブル2の内部導体21の前端部は、パドルカード基板41の第1信号用電極4に電気的に接続され、ツインナックスケーブル2の外部導体23の前端部は、パドルカード基板41の第1グランド用電極5に電気的に接続される。
【0031】
より詳細に説明すると、パドルカード基板41は、第1スロット35と略同じ左右幅と厚みをもった矩形板状をなしている。パドルカード基板41における前後の表層面410には、それぞれ、16個の第1信号用電極4がある。第1信号用電極4は、細長い長方形状をなしている。前後の表層面410における16個の第1信号用電極4は、2個ずつの対になっている。
【0032】
パドルカード基板41の前後の表層面410における第1信号用電極4の周りには、第1グランド用電極5がある。第1グランド用電極5は、櫛歯状をなしている。第1グランド用電極5の基部54は、表層面410における第1信号用電極4の上側の略全面を占めており、この基部54から、左右両端の2つの第1延伸部55と、それらの間の7つの第2延伸部56が、下側に向かって延伸している。表層面410における左右の第1延伸部55に挟まれた内側には、第1信号用電極4の対と、第2延伸部56が、間隔をあけて交互に並ぶ。
【0033】
図7に示すように、パドルカード基板41における第1グランド用電極5が設けられた部分には、前後の表層面410間を貫く複数個のスルーホール100がある。前後の表層面410の第1グランド用電極5は、スルーホール100を介して、電気的に接続される。また、パドルカード基板41の表層面410における第1グランド用電極5の基部54と重なる部分にはソルダーレジスト110が設けられており、第1グランド用電極5の延伸部55、56及び第1信号用電極4と重なる部分には、ソルダーレジスト120が設けられている。ソルダーレジスト110は、基部54と略同じ左右幅を持った矩形状をなしている。ソルダーレジスト120は、第2延伸部56間の間隔と略同じ左右幅を持った矩形と、第2延伸部56自体と略同じ左右幅を持った矩形を、左右方向に交互に繋げたような形状を有している。第1グランド用電極5の基部54の上側の略半分は、ソルダーレジスト110によって囲まれており、第1信号用電極4の上縁部は、ソルダーレジスト120における左右幅の大きな矩形の周縁にあたる部分によって囲まれている。また、ソルダーレジスト110により囲まれている第1グランド用電極5の基部54の領域には、スルーホール100が設けられていない。
【0034】
第1延伸部55と第2延伸部56の下端は、第1信号用電極4の下端よりも下側に達している。第1延伸部55と第2延伸部56の左右幅は、下端に達する途中で狭くなっている。第2延伸部56における狭くなっている部分の左右幅は、第1信号用電極4の左右幅と略同一である。
【0035】
図8に示すように、前後の2つのケーブル列42におけるツインナックスケーブル2の下端部からは、内部導体21が突出している。ツインナックスケーブル2における端部から幅D1だけ上側にかけての部分は、ジャケット24と外部導体23が剥がされて、誘電体22が露出している。ツインナックスケーブル2における誘電体22の露出部分から幅D2(D2>D1)だけ上側にかけての部分は、ジャケット24が剥がされて、外部導体23が露出している。
【0036】
ツインナックスケーブル2の外部導体23の露出部分の一部は、基板側接触部234としてパドルカード基板41の側に引き出され、この基板側接触部234が、パドルカード基板41の第1グランド用電極5の基部54の上側の部分にはんだ付けされる。また、ツインナックスケーブル2の内部導体21の突出部分は、パドルカード基板41の第1信号用電極4の上縁部にはんだ付けされる。上述したように、第1グランド用電極5の基部54の上側の略半分は、ソルダーレジスト110によって、第1信号用電極4の上縁部は、ソルダーレジスト120によって、それぞれ囲まれており、これらのソルダーレジスト110及び120により、はんだ流れが防止される。また、ソルダーレジスト110により囲まれている第1グランド用電極5の基部54の領域にスルーホール100が設けられていないため、第1グランド用電極5の熱が逃げ難くなり、良好なはんだ付けが実施できる。
【0037】
第1導電樹脂カバー43は、略直方体状の本体部430の一面に、8個のアーチ溝44を設けたものである。8個のアーチ溝44は、ケーブル列42における8つのツインナックスケーブル2と同じ間隔で並んでいる。各アーチ溝44は、ツインナックスケーブル2を迂回する形状になっており、ツインナックスケーブル2の外形に沿って湾曲している。
【0038】
第1導電樹脂カバー43は、パドルカード基板41のはんだ付け接合部を覆うようにして、パドルカード基板41に固定されている。ツインナックスケーブル2は、第1導電樹脂カバー43のアーチ溝44に収まる。第1導電樹脂カバー43におけるアーチ溝44の両側の平面部は、導電性樹脂又は接着剤により、パドルカード基板41の第1グランド用電極5の基部54と、第1延伸部55及び第2延伸部56に、固定される。第1導電樹脂カバー43のパドルカード基板41への固定は、機械的な押さえ機構により行ってもよい。第1導電樹脂カバー43がパドルカード基板41に固定された状態において、第1導電樹脂カバー43のアーチ溝44は、第1信号用電極4を跨ぎ、当該第1導電樹脂カバー43と第1信号用電極4との接触を避けている。従って、第1導電樹脂カバー43は、第1信号用電極4と電気的に接続されず、第1グランド用電極5と電気的に接続される。
【0039】
第1導電樹脂カバー43の上下の寸法は、パドルカード基板41の上下の寸法よりも小さくなっている。
図6に示すように、第1導電樹脂カバー43がパドルカード基板41に固定された状態において、第1導電樹脂カバー43のアーチ溝44は、ツインナックスケーブル2における誘電体22の露出部分、及びパドルカード基板41の全電極の上側の略半分を覆っており、第1信号用電極4の下側の一部分と、第1グランド用電極5の第1延伸部55及び第2延伸部56の下側の一部分は、第1導電樹脂カバー43に覆われずに、露出している。
【0040】
パドルカード基板41が、第1コネクタ30の第1スロット35に嵌合されると、パドルカード基板41の第1信号用電極4が第1コネクタ30のコンタクト3(S)と、パドルカード基板41の第1グランド用電極5が第1コネクタ30のコンタクト3(G)と、それぞれ、接触する。
【0041】
図2に示すように、基板20には、基板20におけるASIC10の+端子及び-端子の固定位置から後方に向かう配線203が敷設されており、配線203には電極204が設けられている。第1コネクタ30のコンタクト3(G)及び3(S)の先端の基板側接触部は、電極204と接続される。
【0042】
図10は、ケーブル列42と第2コネクタ80を、XZ面と平行な面で切断した断面図である。
図11は、
図10を別の角度から見た図である。ここで、
図10及び
図11では、簡便のため、上下のケーブル列42をなす8つのツインナックスケーブル2のうち、左端の3つと右端の1つを除くものの図示を割愛している。また、
図10及び
図11では、簡便のため、第2コネクタ80に設けられる2つの第3導電樹脂カバー83のうち下側のものの図示を割愛している。
【0043】
第2コネクタ80は、第2インシュレータ81と、コネクタ基板91と、第3導電樹脂カバー83と、グランド用のコンタクト6(G)及び7(G)と、差動信号用のコンタクト6(S)及び7(S)と、有する。ツインナックスケーブル2の内部導体21の後端部は、コネクタ基板91の第2信号用電極8又は第3信号用電極901に電気的に接続され、ツインナックスケーブル2の外部導体23の後端部は、コネクタ基板91の第2グランド用電極9に電気的に接続される。
【0044】
より詳細に説明すると、第2インシュレータ81には、第2スロット85が設けられる。第2スロット85には、光トランシーバ90のヘッダーが嵌合される。第2インシュレータ81における第2スロット85を上下から囲む壁部86及び87のうち上側の壁部86には、25個の細溝88が設けられており、下側の壁部87には、25個の細溝89が設けられている。
【0045】
第2インシュレータ81の上側の壁部86の25個の細溝88には、それぞれ、コンタクト6(G)及び6(S)が配置されおり、下側の壁部87の25個の細溝89には、それぞれ、コンタクト7(G)及び7(S)が配置されている。
【0046】
コンタクト6(G)及び6(S)の後側の直線部は、細溝88に圧入されており、その前側の部分は、第2インシュレータ81の前面に沿って、第2インシュレータ81の下面の下側に達している。コンタクト7(G)及び7(S)の後側の直線部は、細溝89に圧入されており、その前側の部分は、第2インシュレータ81の貫通孔890を通って、第2インシュレータ81の下面の下側に達している。
【0047】
コネクタ基板91は、多層基板の下側の表層面に、第2信号用電極8と第2グランド用電極9とを設け、上側の表層面に、第3信号用電極901、第4信号用電極902と第2グランド用電極9とを設けたものである。コネクタ基板91は、第2インシュレータ81の下側に固定される。コネクタ基板91の下側の表層面の第2信号用電極8は、X方向に細長く延在している。第2信号用電極8、第3信号用電極901と第4信号用電極902は、2個ずつの対になっている。下側の表層面の第2信号用電極8の後端部には、コネクタ基板91を貫くスルーホール75が設けられて、前記スルーホールを経由して上側の第4信号用電極902に接続されている。
【0048】
コネクタ基板91の下側の表層面における第2信号用電極8および上側の表層面における第3信号用電極901、第4信号用電極902の周りには、第2グランド用電極9がある。すなわち、第2グランド用電極9は、コネクタ基板91の上下の表層面における、信号用電極の無い部分の略全面を占めている。
【0049】
コンタクト6(G)におけるコネクタ基板91の側に延伸した端部は、コネクタ基板91の上側の表層面の第2グランド用電極9にはんだ付けされる。コンタクト6(S)におけるコネクタ基板91の側に延伸した端部は、コネクタ基板91の上側の表層面の第3信号用電極901にはんだ付けされる。
【0050】
コンタクト7(G)におけるコネクタ基板91の側に延伸した端部は、コネクタ基板91の上側の表層面の第2グランド用電極9にはんだ付けされる。コンタクト7(S)におけるコネクタ基板91の側に延伸した端部は、コネクタ基板91のスルーホール75近傍の上側の表層面の第4信号用電極902にはんだ付けされる。
【0051】
上下の2つのケーブル列42におけるツインナックスケーブル2の後端部からは、内部導体21が突出している。
図11に示すように、ツインナックスケーブル2における端部から幅D3だけ前側の部分は、ジャケット24と外部導体23が剥がされて、誘電体22が露出している。ツインナックスケーブル2における誘電体22の露出部分から幅D4(D4>D3)だけ前側にかけての部分は、ジャケット24が剥がされ、外部導体23が露出している。
【0052】
上側のケーブル列42のツインナックスケーブル2の外部導体23の露出部分の一部は、基板側接触部634としてコネクタ基板91の側に引き出され、この基板側接触部634が、コネクタ基板91の第2グランド用電極9にはんだ付けされる。上側のケーブル列42のツインナックスケーブル2の内部導体21の突出部分は、コネクタ基板91の第3信号用電極901にはんだ付けされる。
【0053】
下側のケーブル列42のツインナックスケーブル2の外部導体23の露出部分の一部は、基板側接触部634としてコネクタ基板91の側に引き出され、この基板側接触部634が、コネクタ基板91のグランド用電極9にはんだ付けされる。下側のケーブル列42のツインナックスケーブル2の内部導体21の突出部分は、コネクタ基板91の第2信号用電極8にはんだ付けされる。
【0054】
第3導電樹脂カバー83は、略直方体状の本体部830の一面に、アーチ溝84を設けたものである。アーチ溝84は、ツインナックスケーブル2の外形に沿って湾曲している。
【0055】
第3導電樹脂カバー83は、コネクタ基板91の第2信号用電極8とツインナックスケーブル2の内部導体21の接続部分と、ケーブルの基板側接触部634と第2グランド用電極9の接続部分の両方を覆うようにして、コネクタ基板91に固定されている。ツインナックスケーブル2は、第3導電樹脂カバー83のアーチ溝84に収まる。第3導電樹脂カバー83がコネクタ基板91に固定された状態において、第3導電樹脂カバー83は、第2信号用電極8と電気的に接続されず、第2グランド用電極9と電気的に接続される。
【0056】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態にかかる高速伝送装置1は、基板20と、基板20に設けられる制御装置であるASIC10と、基板20におけるASIC10の近傍の位置に配置され、ASIC10と基板20を介して電気的に接続される高速伝送用コネクタである第1コネクタ30と、基板20におけるASIC10から離れた位置に配置され、ASIC10との間で信号を送受信する光トランシーバ90が装着される高速伝送用コネクタである第2コネクタ80と、第1コネクタ30と第2コネクタ80との間に配置されるケーブル組立体40とを具備し、ケーブル組立体40は、各々が1つのチャネルの差動信号を伝送する複数のツインナックスケーブル2を並べたケーブル列42と、複数のツインナックスケーブル2の内部導体21の前端部が電気的に接続される第1信号用電極4、及び複数のツインナックスケーブル2の外部導体23の前端部が電気的に接続される第1グランド用電極5が設けられたパドルカード基板41と、パドルカード基板41の前記ケーブルの内部導体と外部導体の接続部を覆う第1導電樹脂カバー43とを有し、第1導電樹脂カバー43は、第1信号用電極4と電気的に接続されず、第1グランド用電極5と電気的に接続される。よって、基板20上の離れた位置に配置されたASIC10と光トランシーバ90との間で高速信号伝送を行う場合において、クロストークの発生を防ぐことができる。特に、基板20の中央にASIC10を配置し、その周囲に複数の光トランシーバ90を配置する場合は、ASIC10と基板20のコーナーに配置される光トランシーバ90との間の距離が遠くならざるを得ないが、このような場合、ASIC10とコーナーの光トランシーバ90との通信においてもクロストークの発生を防止でき、良好な電気特性を確保できる。
【0057】
ここで、本願発明者は、本発明の効果を確認するために、次のような検証を行った。第1に、本願発明者は、電磁界解析ソフトウェアにより、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30のNEXT(Near End Cross Talk)、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第2導電樹脂32を無くしたもののNEXT、並びに、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第1導電樹脂カバー43と第2導電樹脂32を無くしたもののNEXTの各周波数特性を計算した。
図12は、このシミュレーション結果を示す図である。
図12の破線は、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30の周波数特性であり、一点鎖線は、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第2導電樹脂32を無くしたものの周波数特性であり、実線は、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第1導電樹脂カバー43と第2導電樹脂32を無くしたものの周波数特性である。
【0058】
図12を参照すると、本実施形態のケーブル組立体40及び第1コネクタ30は、10GHzから60GHzの広範な帯域に渡って、第1導電樹脂カバー43の無いものや第2導電樹脂32の無いものに比べて、NEXTが5dB~10dBほど小さくなることが分かる。
【0059】
第2に、本願発明者は、電磁界解析ソフトウェアにより、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30のFEXT(Far End Cross Talk)、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第2導電樹脂32を無くしたもののFEXT、並びに、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第1導電樹脂カバー43と第2導電樹脂32を無くしたもののFEXTの各周波数特性を計算した。
図13は、このシミュレーション結果を示す図である。
図13の破線は、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30の周波数特性であり、一点鎖線は、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第2導電樹脂32を無くしたものの周波数特性であり、実線は、ケーブル組立体40及び第1コネクタ30から第1導電樹脂カバー43と第2導電樹脂32を無くしたものの周波数特性である。
【0060】
図13を参照すると、本実施形態のケーブル組立体40及び第1コネクタ30は、30GHz~35GHzの帯域と42GHz~50GHzの帯域において、第1導電樹脂カバー43の無いものや第2導電樹脂32の無いものに比べて、FEXTが概ね5dB小さくなることが分かる。
【0061】
第3に、本願発明者は、電磁界解析ソフトウェアにより、第2コネクタ80のNEXT、及び第2コネクタ80から第3導電樹脂カバー83を無くしたもののNEXTの各周波数特性を計算した。
図14は、このシミュレーション結果を示す図である。
図14の破線は、第2コネクタ80の周波数特性であり、実線は、第2コネクタ80から第3導電樹脂カバー83を無くしたものの周波数特性である。
【0062】
図14を参照すると、本実施形態の第2コネクタ80は、5GHz~40GHzの帯域において、第3導電樹脂カバー83の無いものに比べて、NEXTが5dB~20dBほど小さくなることが分かる。
【0063】
第4に、本願発明者は、電磁界解析ソフトウェアにより、第2コネクタ80のFEXT、及び第2コネクタ80から第3導電樹脂カバー83を無くしたもののFEXTの各周波数特性を計算した。
図15は、このシミュレーション結果を示す図である。
図15の破線は、第2コネクタ80の周波数特性であり、実線は、第2コネクタ80から第3導電樹脂カバー83を無くしたものの周波数特性である。
【0064】
図15を参照すると、本実施形態の第2コネクタ80は、15GHz以上の帯域において、第3導電樹脂カバー83の無いものに比べて、FEXTが5~10dBほど小さくなることが分かる。
【0065】
また、上記実施形態において、1つのチャネルの差動信号を伝送するツインナックスケーブル2を、各々が差動信号の+信号と-信号を伝送する2本の同軸ケーブルに置き換えてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、第1導電樹脂カバー43のアーチ溝44を、湾曲形状と異なる形状(例えば、矩形状)に凹んだ溝に置き換えてもよい。
【0067】
また、ケーブル列42をなすツインナックスケーブル2の個数は、2個~7個でもよいし、9個以上でもよい。また、基板20上における第2コネクタ80と光トランシーバ90の個数は、2つ以上であってもよい。例えば、基板20上におけるASIC10を取り巻く各位置に複数の第2コネクタ80と光トランシーバ90を設置し、ASIC10の近傍に、第2コネクタ80と同じ数の第1コネクタ30を設置し、第1コネクタ30と第2コネクタ80を、それぞれ、ケーブル組立体40を介して接続するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、第2導電樹脂32の突起部327は、コンタクト3(G)と電気的に接続されていたが、突起部327は、コンタクト3(G)との間で、1GHz以上の高周波が電気的に接続できる距離に配置されていればよい。通常は、突起部327とコンタクト3(G)との間の距離は、0.05mm~0.1mm程度の隙間まで許容される。また、導電樹脂の誘電率は、帯電防止樹脂と同程度の10S/m~200S/mであれば良く、30S/m~150S/mであればより好適である。
【0069】
また、上記実施形態において、ツインナックスケーブル2の内部導体21は、パドルカード基板41の第1信号用電極4にはんだ付けされ、ツインナックスケーブル2の外部導体23は、パドルカード基板41の第1グランド用電極5にはんだ付けされていたが、はんだ付け以外の手段、例えば、溶接やかしめにより、内部導体21と第1信号用電極4、及び外部導体23と第1グランド用電極5を電気的に接続してもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、ソルダーレジスト110及び120に囲まれる部分は、グランド用電極におけるケーブルの導体に接触する部分、及び信号用電極におけるケーブルの導体に接触する部分だけである必要はない。少なくとも、グランド用電極におけるケーブルの導体に接触する部分、及び信号用電極におけるケーブルの導体に接触する部分が、ソルダーレジスト110及び120によって囲まれていればよい。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図16は、本発明の第2実施形態である第1コネクタ30Aの斜視図である。
図17は、
図16の分解図である。
図18は、
図16のA-A’線断面図である。
図19は、
図16から金属カバー26Aを外したものを別の方向から見た斜視図である。
図20は、
図19のB-B’線断面の一部を示す図である。
図21は、
図16のコンタクト3及び第2導電樹脂32Aを示す斜視図である。これらの図において、第1実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0072】
図16、及び
図17に示すように、第1コネクタ30Aは、金属カバー26A、第1インシュレータ31A、コンタクト3(G)及び3(S)、並びに第2導電樹脂32Aを有する。
【0073】
金属カバー26Aは、第1インシュレータ31Aの外周に沿って折れ曲がった枠体である。金属カバー26Aは、前後に平行に対面する前板部261A及び後板部262Aと、これらに繋がる左右の側板部264Aとを有する。前板部261A及び後板部262Aの左右の縁には、下方に延伸する突出部265Aがある。左右の側板部264Aにおける中心から前後に離れた各部分には、係合部268Aがある。係合部268Aの基端は、側板部264Aに繋がっており、その上側の部分は、内側に倒れている。後板部262Aにおける左右の縁には、係合部269Aがある。係合部269Aは、内側に折れ曲がっている。
【0074】
第1インシュレータ31Aの第1スロット35は、仕切壁350によって前後の空間に分かれている。第1インシュレータ31Aの左右の側面、及び前後の側面には、金属カバー26Aの係合部268A及び269Aを嵌合するための溝318及び319がある。また、第1インシュレータ31Aの前後の側面には、第2導電樹脂32Aを嵌合するための凹部326Aが設けられている。第1インシュレータ31Aの下面には、位置決め突起317が設けられている。
【0075】
第2導電樹脂32Aは、略直方体状の本体部320Aの一面から、9個の突起部327Aを突出させたものである。本体部320Aにおける突起部327Aの側と反対側の面には、4つの凸部328Aが設けられている。
【0076】
第1インシュレータ31Aの細溝37に、コンタクト3(G)及び3(S)を圧入し、凹部326Aに第2導電樹脂32Aを嵌合した状態において、第1インシュレータ31Aの上から金属カバー26Aを被せると、金属カバー26Aの係合部268A及び269Aが溝318及び319に嵌り、金属カバー26Aの内面が第2導電樹脂32Aの凸部328Aに接して内側に押され、金属カバー26A、第1インシュレータ31A、コンタクト3(G)及び3(S)、並びに第2導電樹脂32Aが一体化される。
【0077】
ここで、本実施形態において、基板20の配線203を挟んだ両側には、位置決め孔とスルーホールが設けられている。第1コネクタ30Aの位置決め突起317は、基板20の位置決め孔に挿入される。金属カバー26Aの突出部265Aは、基板20のスルーホールに挿入され、はんだ付けされる。
【0078】
図18に示すように、第2導電樹脂32Aの突起部327Aは、第1インシュレータ31Aにおける凹部326Aの内側のスリット337を通って、コンタクト3(G)に接触する。
【0079】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図22は、本発明の第3実施形態である第1コネクタ30Bから金属カバー26Aを除いたものの斜視図である。
図23は、
図22のC-C’線断面図である。これらの図において、第1及び第2実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0081】
本実施形態では、第2実施形態の第1インシュレータ31A及び第2導電樹脂32Aが、第1インシュレータ31B及び第2導電樹脂32Bに置き換わっている。
【0082】
第2導電樹脂32Bは、左右に延伸する薄板部320Bの一面から、2列に分かれて並ぶ複数の突起部327Bを突出させたものである。薄板部320B上における1つの列をなす突起部327Bの数は9個である。薄板部320B上における突起部327Aの2つの列の間の間隔は、第1インシュレータ31Bの仕切壁350の幅よりも僅かに大きくなっている。突起部327Bの側面の上側の部分は凸部328Bとして外側に突出している。
【0083】
第1インシュレータ31Bの前後の側面には、第2導電樹脂32Bを嵌合するための凹部は設けられていない。第2導電樹脂32Bは、第1インシュレータ31Bの第1スロット35の下側から、第1スロット35に嵌合される。
【0084】
図23に示すように、第2導電樹脂32Bの凸部328Bは、コンタクト3(G)の内側の面に接触する。
【0085】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態によっても、上記第1及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
<第4実施形態>
次に、本実施形態の第4実施形態を説明する。
図24は、本発明の第4実施形態である第1コネクタ30Cから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
図25は、
図24のD-D’線断面図である。これらの図において、第1~第3実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0087】
本実施形態では、第3実施形態の第2導電樹脂32Bが、2つに分かれた第2導電樹脂32Cに置き換わっている。
【0088】
第2導電樹脂32Cは、左右に延伸する薄板部320Cの一面から、1列に並ぶ突起部327Cを突出させたものである。突起部327Cの側面の上側の部分は凸部328Cとして外側に突出している。
【0089】
2つの第2導電樹脂32Cは、第1インシュレータ31Bの第1スロット35の下側から、第1スロット35に嵌合される。
【0090】
図25に示すように、第2導電樹脂32Cの凸部328Cは、コンタクト3(G)の内側の面に接触する。
【0091】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態によっても、上記第1~第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図26は、本発明の第5実施形態である第1コネクタ30Dから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
図27は、
図26のE-E’線断面図である。これらの図において、第1~第4実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0093】
本実施形態では、第2実施形態の第1インシュレータ31A及び第2導電樹脂32Aが、第1インシュレータ31D及び金属部材32Dに置き換わっている。
【0094】
第1インシュレータ31Dの前後の側面には、金属部材32Dを嵌合するための凹部326Dが設けられている。
【0095】
金属部材32Dは、左右に延伸する金属板320Dの下側の端辺から、突起部327Dを突出させたものである。突起部327Dは、鉤状に折れ曲がっている。
【0096】
図27に示すように、金属部材32Dの突起部327Dは、第1インシュレータ31Dにおける凹部326Dの内側のスリット337を通って、コンタクト3(G)に接触する。
【0097】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態によっても、上記第1~第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
図28は、本発明の第6実施形態である第1コネクタ30Eから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
図29は、
図28のF-F’線断面図である。これらの図において、第1~第5実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0099】
本実施形態では、第2実施形態の第1インシュレータ31A及び第2導電樹脂32Aが、第1インシュレータ31E及び金属部材32Eに置き換わっている。
【0100】
金属部材32Eは、左右に延伸する金属板320Eの上側の端辺から、突起部327Eを突出させたものである。突起部327Eは、鉤状に折れ曲がっている。
【0101】
第1インシュレータ31Eの前後の側面には、金属部材32Eを嵌合するための凹部は設けられていない。金属部材32Eは、第1インシュレータ31Eの第1スロット35の下側から、第1スロット35に嵌合される。
【0102】
図29に示すように、金属部材32Eは、コンタクト3(G)の内側の面に接触する。
【0103】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態によっても、上記第1~第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0104】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態を説明する。
図30は、本発明の第7実施形態である第1コネクタ30Fから金属カバー26Aを外したものの斜視図である。
図31は、
図30のG-G’線断面図である。これらの図において、第1~第6実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0105】
本実施形態では、第2実施形態の第1インシュレータ31A及び第2導電樹脂32Aが、第1インシュレータ31F及び金属部材32Fに置き換わっている。
【0106】
第1インシュレータ31Fの前後の側面には、金属部材32Fを嵌合するための凹部326Fが設けられている。
【0107】
金属部材32Fは、左右に延伸する金属板320Fの一面から、突起部327Fを起立させたものである。金属板320Fにおける突起部327Fの基端の+Y側には、切欠き328Fが設けられている。
【0108】
図31に示すように、金属部材32Fの突起部327Fは、第1インシュレータ31Fにおける凹部326Fの内側のスリット337を通って、コンタクト3(G)に接触する。
【0109】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態によっても、上記第1~第6実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態を説明する。
図32は、本発明の第8実施形態であるASIC10、第1コネクタ30、ケーブル組立体40A、及び第2コネクタ80を含む高速伝送装置1Aの側面図である。
図33は、
図32のケーブル組立体40Aの斜視図である。
図34は、
図33のケーブル組立体40Aからグランドカバー240を外したものの斜視図である。
図35は、
図34のケーブル組立体40Aからプラスチック部材140を外したものの斜視図である。
図36は、
図33の分解図である。
図37は、
図33をH方向から見た図である。
図38は、
図37のI-I’線断面の一部を示す図である。これらの図において、第1~第7実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0111】
本実施形態では、第1実施形態のケーブル組立体40が、ケーブル組立体40Aに置き換わっている。
【0112】
図33に示すように、ケーブル組立体40Aは、8本のツインナックスケーブル2を左右に並べたケーブル列42と、パドルカード基板41と、プラスチック部材140と、グランドカバー240とを有する。
【0113】
図35に示すように、ツインナックスケーブル2の外部導体23の露出部分の一部は、基板側接触部234としてパドルカード基板41の側に引き出され、この基板側接触部234が、パドルカード基板41の第1グランド用電極5の基部54の上側の部分にはんだ付けされる。また、ツインナックスケーブル2の内部導体21の突出部分は、パドルカード基板41の第1信号用電極4の上縁部にはんだ付けされる。
【0114】
図34及び
図36に示すように、プラスチック部材140は、直方体状の本体部141と、本体部141の+Y側と-Y側の端辺、及びそれらの真中から突出した3つの仕切壁142とを有する。プラスチック部材140は、絶縁樹脂により形成されている。
【0115】
プラスチック部材140は、ツインナックスケーブル2における1つのチャネルの差動信号を伝送する内部導体21の対と対応している。プラスチック部材140は、ツインナックスケーブル2の内部導体21とパドルカード基板41の第1信号用電極4のはんだ付け接合部29を覆うようにして、パドルカード基板41に固定されている。
【0116】
図37に示すように、プラスチック部材140は、X方向から見ると、E字状をなしている。プラスチック部材140が、パドルカード基板41に固定された状態において、左側のはんだ付け接合部29は、プラスチック部材140の真中の仕切壁142と左側の仕切壁142の間に収まっており、右側のはんだ付け接合部29は、プラスチック部材140の真中の仕切壁142と右側の仕切壁142の間に収まっている。
図38に示すように、プラスチック部材140は、はんだ付け接合部29及び内部導体21の突出部分に接触しておらず、プラスチック部材140とはんだ付け接合部29及び内部導体21の突出部分の間に、僅かな隙間が確保されている。
【0117】
図33及び
図36に示すように、グランドカバー240は、プラスチック部材140よりもZ方向の寸法の大きな金属板を、プラスチック部材140の数と同じ個数の略半円柱状の湾曲部241ができるように、折り曲げたものである。グランドカバー240は、湾曲部241によりプラスチック部材140を覆うようにして、パドルカード基板41に固定されている。より詳細には、グランドカバー240における隣り合う湾曲部241の間の平板部242が、パドルカード基板41における第1グランド用電極5の延伸部55及び56にはんだ付けされている。プラスチック部材140の湾曲部241には、矩形状の開口243が設けられている。グランドカバー240が、パドルカード基板41の延伸部55及び56にはんだ付けされた状態において、プラスチック部材140は、湾曲部241の開口243を介して外部に露出している。
【0118】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によっても、上記第1~第7実施形態と同様の効果が得られる。これに加えて、本実施形態では、パドルカード基板41におけるツインナックスケーブル2の内部導体21の露出部分とパドルカード基板41の第1信号用電極4の接合部が、プラスチック部材140によって覆われている。よって、ツインナックスケーブル2の内部導体21におけるはんだ付けされていない空気層のインピーダンスの上昇を抑え、より良好な信号伝達特性を実現することができる。
【0119】
ここで、本願発明者は、本発明の効果を確認するために、次のような検証を行った。第1に、本願発明者は、TDR(Time Domain Reflectometry)シミュレータにより、ケーブル組立体40Aからグランドカバー240及びプラスチック部材140を無くしたものをDUT(Device Under Test)とするTDR波形、及びケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたものをDUTとするTDR波形を、それぞれ計算した。
図39は、このシミュレーション結果を示す図である。
図39の実線は、ケーブル組立体40Aからグランドカバー240及びプラスチック部材140を無くしたもののTDR波形であり、破線は、ケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたもののTDR波形である。この波形において、区間E1は、ツインナックスケーブル2内の信号の伝搬時間に相当し、区間E2は、ツインナックスケーブル2の内部導体21の露出部分の信号の伝搬時間に相当し、区間E3は、はんだ付け接合部29の信号の伝搬時間に相当し、区間E4は、第1コネクタ30の信号の伝搬時間に相当し、区間E5は、基板20の信号の伝搬時間に相当する。
【0120】
図39を参照すると、ケーブル組立体40Aからグランドカバー240及びプラスチック部材140を無くしたもののTDR波形では、区間E2におけるピークのインピーダンスが128Ωと高くなっているのに対し、ケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたもののTDR波形では、区間E2におけるピークのインピーダンスが99Ωと低くなっている。
図38に示すように、ケーブル組立体40Aでは、ツインナックスケーブル2の内部導体21の露出部分とその先のはんだ付け接合部29が、プラスチック部材140により覆われており、はんだ付け接合部29と内部導体21の周囲の空気層が、プラスチック部材140の無いものに比べて狭くなる。この空気層の狭さが、区間E2におけるピークのインピーダンスのコントロールに寄与していると考えられる。
【0121】
第2に、本願発明者は、電解解析ソフトウェアにより、ケーブル組立体40AのFEXT、及びケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたもののFEXTの各周波数特性を計算した。
図40は、このシミュレーション結果を示す図である。
図40の実線は、ケーブル組立体40AのFEXTであり、破線は、ケーブル組立体40Aからグランドカバー240を無くしたもののFEXTである。
【0122】
図40を参照すると、本実施形態のケーブル組立体40Aでは、0~60GHzの帯域において、グランドカバー240の無いものに比べて、FEXTが5~10dBほど小さくなることが分かる。
【0123】
なお、第8実施形態において、
図41に示すように、プラスチック部材140の真中の仕切壁142を設けずに、プラスチック部材140の左側の仕切壁142と右側の仕切壁142の間に、ツインナックスケーブル2における一つのチャネルの差動信号を伝送する2つのはんだ付け接合部29が、収まるようにしてもよい。
【0124】
<第9実施形態>
次に、本発明の第9実施形態を説明する。
図42は、本発明の第9実施形態であるケーブル組立体40Bを示す図である。この図において、第1~第8実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0125】
本実施形態では、グランドカバー240をパドルカード基板41に固定する手段として、金属端子340を用いている。金属端子340は、長板部341とその一端辺に繋がる楕円状の凸部342とを有する。ここで、本実施形態では、グランドカバー240の平板部242と、パドルカード基板41における第1グランド用電極5の延伸部55及び56に、金属端子340の凸部342が収まる程度の幅をもった孔が形成されている。金属端子340の凸部342は、グランドカバー240の平板部242の孔を通り、その奥の第1グランド用電極5の延伸部55及び56の孔に挿入され、固定される。
【0126】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、上記第8実施形態と同様の効果が得られる。
【0127】
<第10実施形態>
次に、本発明の第10実施形態を説明する。
図43は、本発明の第10実施形態であるケーブル組立体40Cを示す図である。この図において、第1~第9実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0128】
本実施形態では、第8実施形態のグランドカバー240が、グランドカバー240Cに置き換わっている。グランドカバー240Cの平板部242CのZ方向の幅は、湾曲部241CのZ方向の幅よりも長くなっており、平板部242Cの端部は、湾曲部241Cの+Z側と-Z側に突き出している。平板部242Cの+Z側と-Z側には、プレスフィット端子244Cが設けられている。
【0129】
ここで、本実施形態では、パドルカード基板41における第1グランド用電極5の延伸部55及び56に、グランドカバー240Cのプレスフィット端子244Cが収まる程度の幅をもった孔が形成されている。グランドカバー240のプレスフィット端子244Cは、第1グランド用電極5の延伸部55及び56の孔に挿入され、固定される。
【0130】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、上記第8~9実施形態と同様の効果が得られる。
【0131】
<第11実施形態>
次に、本発明の第11実施形態を説明する。
図44は、本発明の第11実施形態であるケーブル組立体40Dを示す図である。
図45は、
図44の分解図である。これらの図において、第1~第10実施形態のものと同じ要素には同じ符号を付し、再度の説明を割愛する。
【0132】
本実施形態では、第8実施形態のグランドカバー240が、4つのグランドカバー240Dに置き換わっている。グランドカバー240Dは、金属板をコの字状に折り曲げ、折り曲げた先の両先端部を、外側に広げたものである。グランドカバー240Dは、パドルカード基板41上における一つおきのプラスチック部材140(具体的には、-Y側の端のプラスチック部材140、-Y側の端から3つ目のプラスチック部材140、-Y側の端から5つ目のプラスチック部材140、-Y側の端から7つ目のプラスチック部材140)とそれらの誘電体22、基板側接触部234を覆うようにして、パドルカード基板41に固定されている。
【0133】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、上記第8~10実施形態と同様の効果が得られる。
【0134】
ここで、本願発明者は、本発明の効果を確認するために、次のような検証を行った。本願発明者は、電磁界解析ソフトウェアにより、ケーブル組立体40AのFEXT、ケーブル組立体40DのFEXT、及びケーブル組立体40Dからグランドカバー240Dを無くしたもののFEXTを計算した。
図46は、このシミュレーション結果を示す図である。
図46の一点鎖線は、ケーブル組立体40Aの周波数特性であり、破線は、ケーブル組立体40Dの周波数特性であり、実線は、ケーブル組立体40Dからグランドカバー240Dを無くしたものの周波数特性である。
【0135】
図46を参照すると、本実施形態のケーブル組立体40Dと上記第8実施形態のケーブル組立体40Aは、ほぼ全ての帯域に渡って、FEXTが同等であること、及びグランドカバー240を無くしたもののFEXTは、ケーブル組立体40Dやケーブル組立体40Aに比べて劣ること、が分かる。
【符号の説明】
【0136】
1 高速伝送装置
1A 高速伝送装置
2 ツインナックスケーブル
3 コンタクト
4 第1信号用電極
5 第1グランド用電極
6 コンタクト
7 コンタクト
8 第2信号用電極
9 第2グランド用電極
10 ASIC
20 基板
21 内部導体
22 誘電体
23 外部導体
24 ジャケット
26A 金属カバー
29 はんだ接合部
30 第1コネクタ
30A 第1コネクタ
30B 第1コネクタ
30C 第1コネクタ
30D 第1コネクタ
30E 第1コネクタ
30F 第1コネクタ
31 第1インシュレータ
31A 第1インシュレータ
31B 第1インシュレータ
31D 第1インシュレータ
31E 第1インシュレータ
31F 第1インシュレータ
32 第2導電樹脂
32A 第2導電樹脂
32B 第2導電樹脂
32C 第2導電樹脂
32D 金属部材
32E 金属部材
32F 金属部材
35 第1スロット
36 壁部
37 細溝
40 ケーブル組立体
40A ケーブル組立体
40B ケーブル組立体
40C ケーブル組立体
40D ケーブル組立体
41 パドルカード基板
42 ケーブル列
43 第1導電樹脂カバー
44 アーチ溝
54 基部
55 第1延伸部
56 第2延伸部
75 スルーホール
80 第2コネクタ
81 第2インシュレータ
83 第3導電樹脂カバー
84 アーチ溝
85 第2スロット
86 壁部
87 壁部
88 細溝
89 細溝
90 光トランシーバ
91 コネクタ基板
95 ケージ
100 スルーホール
110 ソルダーレジスト
120 ソルダーレジスト
140 プラスチック部材
141 本体部
142 仕切壁
203 配線
204 電極
234 基板側接触部
240 グランドカバー
240C グランドカバー
240D グランドカバー
241 湾曲部
242 平板部
243 矩形状の開口
241C 湾曲部
242C 平板部
244C プレスフィット端子
261A 前板部
262A 後板部
264A 側板部
265A 突出部
268A 係合部
269A 係合部
316 第1凹部
317 突起
318 溝
319 溝
320 本体部
320A 本体部
320B 薄板部
320C 薄板部
320D 金属板
320E 金属板
320F 金属板
326 第2凹部
326A 凹部
326D 凹部
326F 凹部
327 突起部
327A 突起部
327B 突起部
327C 突起部
327D 突起部
327E 突起部
327F 突起部
328A 凸部
328B 凸部
328C 凸部
328F 切欠き
337 スリット
340 金属端子
341 長板部
342 円状の凸部
350 仕切壁
410 表層面
430 本体部
634 基板側接触部
830 本体部
890 貫通孔
901 第3信号用電極
902 第4信号用電極