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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152893
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】pH調整用組成物及び繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/184 20060101AFI20231005BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20231005BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
D06M13/184
D06M13/02
D06M13/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050225
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022058560
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 匠実
(72)【発明者】
【氏名】関藤 正剛
(72)【発明者】
【氏名】山川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 優希
(72)【発明者】
【氏名】深山 拓也
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA05
4L033AA07
4L033AB07
4L033AC10
4L033AC15
4L033BA01
4L033BA16
4L033BA21
(57)【要約】
【課題】肌pHの上昇を充分に抑制できるpH調整用組成物及び当該pH調整用組成物が付着した繊維を提供する。
【解決手段】酸解離定数pKaの少なくとも1つが4.0~6.4である化合物及び当該化合物の塩からなる第1成分(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、油性成分(C)とを含み、30℃での粘度が5Pa・s~500Pa・sのpH調整用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離定数pKaの少なくとも1つが4.0~6.4である化合物及び当該化合物の塩からなる第1成分(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、油性成分(C)とを含み、30℃での粘度が5Pa・s~500Pa・sのpH調整用組成物。
【請求項2】
前記pH調整用組成物中の不揮発性成分の合計重量に基づく、前記第1成分(A)の重量割合が0.1重量%~40重量%である請求項1に記載のpH調整用組成物。
【請求項3】
前記酸解離定数pKaの少なくとも1つが4.0~6.4の化合物がカルボキシ基を有する化合物である請求項1又は2に記載のpH調整用組成物。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤(B)のHLB値が1~6である請求項1又は2に記載のpH調整用組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤(B)のHLB値が11~17である請求項1又は2に記載のpH調整用組成物。
【請求項6】
前記油性成分(C)がトリグリセリド、流動パラフィン、パラフィンオイル及びパラフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のpH調整用組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のpH調整用組成物が繊維本体に付着した繊維であって、前記繊維本体の重量に基づく、前記pH調整用組成物の重量割合が3~50重量%である繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH調整用組成物及び繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
肌に接するように用いる製品(例えば、化粧料を含むシート及び薬剤を含むシート等)を使用する際には、汗(体液)等の成分により、かぶれ等の肌荒れが発生することがある。このような肌荒れを抑制すべく、肌と接する側の面に配されるシートに弱酸性の成分を塗布することが検討されている。
例えば特許文献1においては、肌に接する側のシートの表面に、クエン酸又はクエン酸ナトリウムからなるpH制御剤を付与する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003-516778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている技術によれば、体液由来のアルカリ性成分による、肌pHの上昇を充分に抑制することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、肌pHの上昇を充分に抑制できるpH調整用組成物及び当該pH調整用組成物が付着した繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。即ち本発明は、酸解離定数pKaの少なくとも1つが4.0~6.4である化合物及び当該化合物の塩からなる第1成分(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、油性成分(C)とを含み、30℃での粘度が5Pa・s~500Pa・sのpH調整用組成物、及び前記pH調整用組成物が繊維本体に付着した繊維であって、前記繊維本体の重量に基づく、前記pH調整用組成物の重量割合が3~50重量%である繊維である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、肌pHの上昇を充分に抑制できるpH調整用組成物及び当該pH調整用組成物が付着した繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[pH調整用組成物]
本発明のpH調整用組成物は、酸解離定数pKaの少なくとも1つが4.0~6.4である化合物及び当該化合物の塩からなる第1成分(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、油性成分(C)とを含み、30℃での粘度が5Pa・s~500Pa・sの組成物である。
【0009】
第1成分(A)は、4.0~6.4の酸解離定数pKaを有する化合物及び当該化合物の塩からなる。当該化合物としては、pKaを1つ有する化合物であってもよく、また、pKaを複数有する化合物の場合、その少なくとも1つが4.0~6.4であればよい。本発明において、酸解離定数pKaは、25℃水中における数値とする。
【0010】
pKaの少なくとも1つが4.0~6.4である化合物としては、例えば、有機化合物等の炭素原子を有する化合物が挙げられ、カルボキシ基を有する化合物が好ましい。カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、1分子中にカルボキシ基を例えば1~4個、好ましくは1~3個有する飽和若しくは不飽和の脂肪族化合物又は芳香族化合物が挙げられ、これらの化合物はカルボキシ基に加えてヒドロキシ基を1分子中に例えば1~3個、好ましくは1~2個有する化合物であってもよく、アミノ基を1分子中に例えば1~2個、好ましくは1個有する化合物であってもよく、カルボキシ基を構成する炭素原子を含む1分子の炭素原子数が例えば1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~6の化合物であってよい。芳香族化合物としては、ベンゼン環、イミダゾール環等を有する化合物が挙げられる。
【0011】
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、ヒスチジン(pKaの少なくとも1つが6.0)、クエン酸(pKaの少なくとも1つが4.8、6.4)、リンゴ酸(pKaの少なくとも1つが5.1)、酢酸(pKaの少なくとも1つが4.6)、酒石酸(pKaの少なくとも1つが4.8)、マロン酸(pKaの少なくとも1つが5.7)、コハク酸(pKaの少なくとも1つが5.2)、フマル酸(pKaの少なくとも1つが4.4)、マレイン酸(pKaの少なくとも1つが6.3)、安息香酸(pKaの少なくとも1つが4.2)、フタル酸(pKaの少なくとも1つが5.4)、テレフタル酸(pKaの少なくとも1つが4.5)、炭酸(pKaの少なくとも1つが6.4)等が挙げられる。これらのうち、ヒスチジン、クエン酸、及び酢酸が好ましく、ヒスチジン及びクエン酸がより好ましい。
【0012】
酸解離定数pKaの少なくとも1つが4.0~6.4である化合物の塩としては、前記化合物のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;前記化合物の塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。これらのうち前記化合物のアルカリ金属塩及び前記化合物の塩酸塩が好ましい。
【0013】
第1成分(A)は、1種以上を含むことができ、具体的には、pKaの少なくとも1つが4.0~6.4の化合物と当該化合物の塩との組み合わせを1種類用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組み合わせとしては、例えば、ヒスチジンとヒスチジンの塩との組み合わせと、クエン酸とクエン酸の塩との組み合わせとの組み合わせ等が挙げられる。
【0014】
非イオン性界面活性剤(B)(「(B)成分」とも称する。)としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸とのエステル及び脂肪族1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0015】
多価アルコールと脂肪酸とのエステルを構成する多価アルコールとしては、2価以上のアルコールが挙げられ、2~12価のアルコールが好ましく、3~10価のアルコールがより好ましく、4~8価のアルコールが更に好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価のアルコール;グリセリン等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ソルビタン等の4価のアルコール;ソルビトール等の6価のアルコール;等が挙げられ、これらのアルコール(モノマー)としては、炭素原子数が好ましくは2~10、より好ましくは2~8、更に好ましくは2~6のアルコール(モノマー)が好ましい。多価アルコールとしては、これらのアルコール(モノマー)が2個以上脱水縮合してなるものであってもよい。具体的には、例えば、エチレングリコールが2個以上脱水縮合してなるポリエチレングリコール;プロピレングリコールが2個以上脱水縮合してなるポリプロピレングリコール等;グリセリンが2個以上脱水縮合してなるポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン等)等が挙げられる。ポリエチレングリコールとしては、好ましくは100個以下のエチレングリコールが脱水縮合してなるポリエチレングリコールであり、より好ましくは50個以下のエチレングリコールが脱水縮合してなるポリエチレングリコールである。
【0016】
多価アルコールと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸としては、炭素原子数が例えば8~20、好ましくは10~18、より好ましくは12~18、更に好ましくは14~18、更により好ましくは16~18の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸であってよく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノレイン酸、等が挙げられる。また、脂肪酸としては、ヒドロキシ基を0~3個有する直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸であってもよく、ヒドロキシ基を1~3個有する脂肪酸は、2個以上、例えば2~5個、好ましくは2~3個の当該脂肪酸が脱水縮合してエステル結合を形成した縮合物であってもよく、当該縮合物としては、例えば、ポリリシノレイン酸等が挙げられる。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、モノ又はジエステルが好ましい。
【0017】
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、例えば、ソルビタンモノオレート(HLB値は4.3)、ソルビタンモノステアレート(HLB値は4.7)、ソルビタントリオレート(HLB値は1.8)、グリセリンモノステアレート(HLB値は3.5)、グリセリンモノオレート(HLB値は2.8)、モノオレイン酸テトラグリセリル(HLB値は6.0)、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(HLB値は3.5)、ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル(HLB値は3.2)、モノイソステアリン酸ジグリセリル(HLB値は5.5)、ポリエチレングリコールモノオレート(HLB値は12.6)、ポリエチレングリコールモノステアレート(HLB値は14.1)等が挙げられる。
【0018】
脂肪族1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物は脂肪族1価のアルコールにアルキレンオキサイドが1個以上脱水縮合してなるものである。脂肪族1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を構成する脂肪族1価のアルコールとしては、炭素原子数が例えば8~20、好ましくは10~18、より好ましくは12~18、更に好ましくは14~18の飽和又は不飽和の1価の脂肪族アルコールが挙げられ、直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和の1価の脂肪族アルコールであってよく、直鎖飽和の1価の脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族1価アルコールとしては、具体的には、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール(セチルアルコール、パルミチルアルコール)、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等が挙げられる。
【0019】
脂肪族1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を構成するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキサイドがあげられる。炭素数2~4のアルキレンオキサイド(AO)としては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)等があげられる。PO及びBOは直鎖であっても分岐を有するものであってもよい。AOは1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
AOとしては、EOを含むことが好ましく、EOのみ及び、EOとPOとの組み合わせがより好ましい。AOがEOとPOとの組み合わせである場合、POのモル数に対するEOのモル数の比率(EOモル数/POモル数)としては、例えば1~10、好ましくは3~8、より好ましくは4~6である。AOが2種以上の組み合わせである場合、ブロック状に付加していてもよいし、ランダム状に付加していてもよい。
【0020】
脂肪族1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物1分子あたりのAOの数は、例えば5~40個、好ましくは7~30個、より好ましくは10~25個である。
【0021】
脂肪族1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、セタノールEO15モル付加物(HLB値は13.3)等のポリオキシエチレンセチルエーテル;セタノールEO20モルPO4モル付加物(HLB値は12.7)等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル;等が挙げられる。
【0022】
(B)成分は、1種類で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組み合わせとしては、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルの2種以上、例えば2~5種、好ましくは2~3種の組み合わせ;ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルの1種又は2種以上とソルビタンと脂肪酸とのエステルとの組み合わせ等が挙げられ、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルの2種以上としては、例えば、脂肪酸ジグリセリル、脂肪酸テトラグリセリル及び脂肪酸ヘキサグリセリルからなる群より選択される2つ以上等が挙げられる。
【0023】
(B)成分としては、pH調整用組成物を油中水型(w/o)エマルションとして得るのに好適であるという観点から、HLB値が1~6であるものが好ましい。
【0024】
(B)成分としては、pH調整用組成物を水中油型(o/w)エマルションとして得るのに好適であるという観点から、HLB値が11~17であるものが好ましく、HLB値が11.5~16であるものがより好ましく、HLB値が12~15であるものが更に好ましく、HLB値が12.5~14.5であるものが更により好ましい。
【0025】
本発明においてHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)とは親水性と親油性とのつり合いを表し、HLB値は下記の式(1)から求められる(「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「界面活性剤入門」、212-213頁、2007年三洋化成工業刊、等参照)。
HLB値=10×(無機性/有機性) (1)
式(1)中、括弧内は有機化合物の無機性と有機性との比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。(B)成分として2種類以上の化合物を用いる場合、(B)成分のHLBは加重平均により算出することができる。例えば、(B)成分として、HLB値がh1の化合物(B1)をM1重量部とHLB値がh2の化合物(B2)をM2重量部用いる場合の、(B)成分のHLB値は下記式(2)により算出できる。
(B)成分のHLB値=(h1×M1+h2×M2)/(M1+M2) (2)
【0026】
油性成分(C)としては、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド等のトリグリセリド;オリーブ油、大豆油、ナタネ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、ヒマシ油、牛脂、豚脂等の油脂;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;パラフィンワックス、パラフィンオイル、ワセリン、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;ラノリン、ミツロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ等のロウ類;等が挙げられる。これらのうち、トリグリセリド、ヤシ油、硬化ヤシ油、ワセリン、キャンデリラロウ、流動パラフィン、パラフィンオイル及びパラフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、トリグリセリド、ヤシ油、ヤシ硬化油、ワセリン、流動パラフィン、及びキャンデリラロウからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、トリグリセリド、ワセリン、及びキャンデリラロウからなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0027】
本発明のpH調整用組成物は、第1成分(A)、非イオン性界面活性剤(B)、及び油性成分(C)に加えて、他の成分を含むものであってもよい。
他の成分としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、セラミド等の保湿成分(肌の保湿成分);ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール等の粘度調整剤ないし乳化安定剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等の増粘剤ないし粘度調整剤:水、プロピレングリコール等の水性溶媒等が挙げられる。
【0028】
pH調整用組成物中の不揮発性成分の合計重量に基づく、第1成分(A)の重量割合は、例えば0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、更により好ましくは20重量%以上、特に好ましくは35重量%以上であり、例えば70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、更により好ましくは38重量%以下である。本発明における「不揮発性成分」とは、試料1gをガラス製シャーレ中で蓋をせず、105℃60分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0029】
pH調整用組成物中の不揮発性成分の合計重量に基づく、非イオン性界面活性剤(B)の重量割合は、例えば0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、例えば40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、更により好ましくは8重量%以下である。
【0030】
pH調整用組成物中の不揮発性成分の合計重量に基づく、油性成分(C)の重量割合は、例えば1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、更により好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上であり、例えば90重量%以下、好ましくは85重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは65重量%以下、更により好ましくは55重量%以下である。
【0031】
本発明のpH調整用組成物の30℃での粘度は、5Pa・s以上であり、好ましくは8Pa・s以上、より好ましくは9Pa・s以上であり、また、500Pa・s以下であり、好ましくは480Pa・s以下、より好ましくは450Pa・s以下であり、更に好ましくは400Pa・s以下、更により好ましくは300Pa・s以下、特に好ましくは200Pa・s以下である。本発明のpH調整用組成物の30℃での粘度が上記範囲内であると、当該組成物を付着させた繊維等が肌に接するとき、当該組成物が肌に転写しやすい。
【0032】
pH調整用組成物は、組成物を構成する各成分を配合し、常温又は必要により加熱(例えば30~70℃)して均一に混合することにより得ることができる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。組成物を構成する成分に水性溶媒を含む場合、第1成分(A)及び水性溶媒以外の成分を予め混合し、得られた混合物中に、第1成分(A)を予め溶解させた水性溶媒を投入して溶解又は乳化分散させる方法が好ましい。
【0033】
本発明のpH調整用組成物は、繊維(繊維本体)等に付着させて使用してもよい。
本発明のpH調整用組成物が付着した繊維は、不織布製品に用いてもよく、そのような場合、化粧料を含ませて用いるシート、薬剤を含ませて用いるシート及び吸収性物品のトップシートに用いることが好ましい。
【0034】
本発明のpH調整用組成物は、そのまま繊維(繊維本体)に付与することができる。本明細書において、本発明のpH調整用組成物を付与ないし付着させる対象の繊維、即ち、当該pH調整用組成物を付与ないし付着させる前の繊維を、付与ないし付着させた後の繊維と区別する観点で、「繊維本体」ということがある。本発明のpH調整用組成物を繊維本体に付着させることで、繊維に肌pHの上昇を充分に抑制できる機能を付与することができる。従って本発明のpH調整用組成物は、化粧料等として用いることができる。
【0035】
本発明のpH調整用組成物は、例えば、当該組成物を付着させた繊維をヒトの肌に接することにより、当該組成物を肌表面に充分に転写することができ、例えば、後述の実施例のように、pH調整用組成物の不揮発性成分の付着率[繊維本体の重量に対する重量割合(重量%)]が20重量%になるように繊維本体に付着させた繊維(不織布)を肌に1時間接触させるとき、実施例に示す算出式による転写率を例えば16~24%、具体的には18~22%とすることができる。
【0036】
本発明のpH調整用組成物は、肌に充分量を転写できるので、転写後(転写直後)の肌表面のpH(0分時のpHとする)を弱酸性、例えばpH4.8~5.2、具体的にはpH4.9~5.0にすることができるのみならず、転写後の肌表面のpHの上昇を、アルカリ性人工尿を接触させても充分に抑制することができ、例えば、後述の実施例のように、pH8.8の液体(アルカリ性人工尿)0.2gを肌表面に接触させ続けるとき、肌表面のpHの上昇を、接触開始後60分で例えばpH5.0~5.6(上記0分時のpHからの上昇幅はpH0.0~0.6)、具体的にはpH5.1~5.5(同上昇幅はpH0.1~0.5)、好ましくはpH5.1~5.3(同上昇幅はpH0.1~0.3)、より好ましくはpH5.2~5.3(同上昇幅はpH0.1~0.2)に抑えることができ、接触開始後120分で例えばpH5.2~6.0(上記0分時のpHからの上昇幅はpH0.2~1.0)、具体的にはpH5.3~5.9(同上昇幅はpH0.3~0.9)、好ましくはpH5.3~5.7(同上昇幅はpH0.3~0.7)、より好ましくはpH5.3~5.5(同上昇幅はpH0.3~0.5)に抑えることができる。
【0037】
[繊維]
本発明の繊維は、本発明のpH調整用組成物を繊維本体に付着させてなる繊維であって、前記繊維本体の重量に基づく、前記pH調整用組成物の重量割合が1.5~50重量%である繊維である。本発明において「繊維本体」とはpH調整用組成物を付着させる前の繊維を意味する。
【0038】
繊維本体にpH調整用組成物を付着させる方法には特に制限はなく、必要に応じて加熱し、例えば、非接触式のコーター、接触式のコーター、スプレーガン等一般的に用いられる方法を利用することができる。
pH調整用組成物の付着量は、繊維本体の重量に基づいて、pH調整用組成物中の不揮発性成分の重量割合が1.5~50重量%となる量であることが好ましく、5~45重量%となる量であることが更に好ましく、8~35重量%となる量が特に好ましい。
【0039】
繊維本体としては特に限定されないが、例えば疎水性繊維等が挙げられ、ここで疎水性繊維は、温度25℃、相対湿度65%で吸水率が1重量%以下である繊維を意味する。
繊維本体としては特に限定されず、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維;ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の生分解性プラスチック;綿等の天然繊維;レーヨン等の再生繊維;等を用いることができる。なお、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。また、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエーテルポリエステル等が挙げられる。ポリアミドとしては、6,6-ナイロン、6-ナイロン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン及びポリエステルは、おむつ用吸水素材として好ましく用いられる。
【0040】
本発明のpH調整用組成物が付着した繊維を用いた繊維形態は、布状の形状のものが好ましく、織物、編物、不織布等が挙げられる。また、混綿、混紡、混繊、交編、交織等の方法で混合した繊維を布状として使用してもよい。これらの中では、特に不織布が好ましい。
【0041】
本発明のpH調整用組成物が付着した繊維を不織布に適用する場合、短繊維を、乾式又は湿式法で繊維積層体とした後、加熱ロールで圧着したり、空気加熱で融着したり、高圧水流で繊維を交絡させて得られた不織布、もしくは、スパンボンド法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法等によって得られた不織布に、本発明のpH調整用組成物を付着させてもよい。
【実施例0042】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0043】
[実施例及び比較例]
(pH調整用組成物の製造)
第1成分(A)と水を除く表1に記載した成分を万能混合機[万能混合攪拌機、(株)三英製作所製]中で60℃に温調しながら30分均一溶解させた後、予め水に溶解させた第1成分(A)をそこに30分かけて滴下することによりpH調整用組成物を得た。
pH調整用組成物は、実施例1~15においては、油中水型(w/o)エマルションとして得られ、実施例16~24においては、水中油型(o/w)エマルションとして得られた。
得られたpH調整用組成物を30℃に温調しながら粘度をB型粘度計により測定した。結果を表に示す。
比較例4及び5で得た組成物は、二層分離してしまい、以降の操作を行わなかった。
【0044】
(不織布の製造)
繊維本体をローラーカードに通し、目付け25g/mのカードウェブを作製した。得られたカードウェブを140℃で10秒の熱風処理を行い、エアスルー不織布(厚みは3mmであった)を得た。繊維本体としてはポリエステル(芯)-ポリエチレン(鞘)系複合繊維であって、単繊維繊度が2.2Dtex、繊維長が51mmのものを用いた。次に、60℃に加温したpH調整用組成物を、バーコーターを用いて、不織布の片面の全面に均一に塗工した。なお、pH調整用組成物の不揮発性成分の付着率[繊維本体の重量に対する重量割合(重量%)]が20重量%になるように塗工したのち、25℃で3時間乾燥させて、pH調整用組成物が付着した不織布を得た。
【0045】
尚、実施例及び比較例で用いる各成分に対応する原料は、以下の通りである。
(A-1):ヒスチジン
(A-2):ヒスチジン塩酸塩
(A-3):クエン酸
(A-4):クエン酸三ナトリウム
(A-5):酢酸
(A-6):酢酸ナトリウム
(B-1):ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル(HLB3.2)[品名:NIKKOL Hexaglyn PR-15、日光ケミカルズ(株)製]
(B-2):モノイソステアリン酸ジグリセリル(HLB5.5)[品名:NIKKOL DGMIS、日光ケミカルズ(株)製]
(B-3):ソルビタントリオレート(HLB1.8)[品名:イオネットS-85、三洋化成工業(株)製]
(B-4):モノオレイン酸テトラグリセリル(HLB6.0)[品名:NIKKOL Tetraglyn 1-OV、日光ケミカルズ(株)製]
(B-5):セタノールEO20モルPO4モル付加物(HLB12.7)[品名:NIKKOL SG-C420、日光ケミカルズ(株)製]
(B-6):セタノールEO15モル付加物(HLB13.3)[品名:エマルミンCC-150、三洋化成工業(株)製]
(B-7):ポリエチレングリコールモノステアレート(HLB14.1)[品名:イオネットMS-1000、三洋化成工業(株)製]
(B-8):ポリエチレングリコールモノオレート(HLB12.6)[品名:イオネットMO-600、三洋化成工業(株)製]
(C-1):トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル[品名:O.D.O、日清オイリオグループ(株)製]
(C-2):ヤシ油[品名:精製ヤシ油(S)、日清オイリオグループ(株)製]
(C-3):硬化ヤシ油[品名:やし硬化油48、日清オイリオグループ(株)製]
(C-4):白色ワセリン[品名:Perfecta、sonneborn製]
(C-5):流動パラフィン[品名:Kaydol、sonneborn製]
(C-6):キャンデリラロウ[品名:精製キャンデリラワックス MK-2、横関油脂工業(株)製]
(D-1):グリセリン
(D-2):プロピレングリコール
(D-3):カルボキシメチルセルロースナトリウム
(D-4):ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル[品名:コスモール 168ARV、日清オイリオグループ(株)製]
(D-5):ベヘニルアルコール
(D-6):ステアリルアルコール
(D-7):ミリスチルアルコール
(D-8):水
【0046】
[評価試験]
年齢17~72歳の健康な男女10名(17~65歳の男性5名、19~72歳の女性5名)の被験者の腕に、得られたpH調整用組成物が付着した各不織布を適用してもらい、評価した。なお、被験者10名の各評価前の腕の肌のpH(以下、「通常時のpH」と称する。)は4.8~5.5であった。
【0047】
(転写率の評価)
実施例及び比較例で製造した不織布(4.0×2.5cmに裁断したもの。以下、「試験不織布」と称する。)の重量を予め測定した後、被験者の腕に装着し、市販の防水フィルムで固定した。1時間後に試験サンプルを被験者の腕から脱着し、重量を測定した。さらに、pH調整用組成物が付着していない不織布(以下、「ブランク不織布」と称する。)でも同様に試験を実施した。次の式で転写率を算出した。結果を表に示す。
転写量={(試験不織布脱着前の重量)-(試験不織布装着後の重量)}-{(ブランク不織布脱着前の重量)-(ブランク不織布装着後の重量)}
積載量=(試験不織布4.0×2.5cmに塗布されたpH調整用組成物の重量)
転写率(%)=100×{(転写量)/(積載量)}
【0048】
(肌pH維持性の評価)
pHメーター(Skin-pH-Meter PH905、Courage+Khazaka社製)を用いて、肌pHを測定した。まず、各被験者の腕の肌面を流水でよく洗浄した後、直ちにpHを測定し、肌の通常時のpHとした。次に実施例及び比較例で製造した各試験不織布を被験者の腕に装着し、市販の防水フィルムで固定し、pH調整用組成物を腕に転写させた。1時間後に防水フィルムと試験不織布を外し、直ちに肌表面のpHを測定し(0分時のpHとする)、アルカリ性人工尿(pH8.8、0.2g)を浸み込ませたコットンパフ(4.0×2.5cmに裁断したもの)を新たに腕に装着し、防水フィルムで固定した。さらに30分後、コットンパフと防水フィルムを剥がして直ちに肌表面のpHを測定し、同じコットンパフと防水フィルムを貼りなおした。以後30分おきに同様の操作を実施した。結果を表に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
表1及び表2から、本発明の第1成分(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、油性成分(C)とを含み、30℃での粘度が5Pa・s~500Pa・sのpH調整用組成物が付着した不織布は、当該組成物の肌表面への転写率に優れ、転写後の肌表面のpHの上昇はアルカリ性人工尿を接触させても充分に抑制できることがわかった。
【0053】
これに対し、表3から、30℃での粘度が上記範囲内ではない比較例1及び2で得られた組成物、又は、非イオン性界面活性剤(B)及び油性成分(C)を含まない比較例2及び3で得られた組成物がそれぞれ付着した不織布は、当該組成物の肌表面への転写率に劣り、転写後の肌表面のpHはアルカリ性人工尿の接触による上昇を充分に抑制することができないことがわかった。非イオン性界面活性剤(B)又は油性成分(C)を含まない比較例4及び5で得られた組成物は、二層分離してしまい、均一な液体が得られないことがわかった。