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特開2023-152939紫外線架橋型ホットメルト組成物及び伸縮性部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152939
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】紫外線架橋型ホットメルト組成物及び伸縮性部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053018
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022058331
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日笠 有利
(72)【発明者】
【氏名】染谷 悠
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BP011
4J002EE026
4J002FD022
4J002FD146
4J002GJ01
(57)【要約】
【課題】伸張性、伸縮回復性、及び高温での伸張時の応力維持性に優れており、吸収性物品に使用される伸縮性部材に用いることができる紫外線架橋型ホットメルト組成物を提供する。
【解決手段】スチレン-ブタジエン共重合体(A)、可塑剤(B)、及び、光重合開始剤(C)を含有する紫外線架橋型ホットメルト組成物であって、
紫外線架橋後のゲル分率が70%以上であり、
吸収性物品に使用される伸縮性部材用であることを特徴とする紫外線架橋型ホットメルト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-ブタジエン共重合体(A)、可塑剤(B)、及び、光重合開始剤(C)を含有する紫外線架橋型ホットメルト組成物であって、
紫外線架橋後のゲル分率が70%以上であり、
吸収性物品に使用される伸縮性部材用であることを特徴とする紫外線架橋型ホットメルト組成物。
【請求項2】
前記スチレン-ブタジエン共重合体(A)の含有量は、紫外線架橋型ホットメルト組成物を100質量%として、40~60質量%である、請求項1に記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤(C)は、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、Rは水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は、下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、Rは炭素数1~10で示される基である。)で示される基である。
また、式(1)中、Rは炭素数1~10の水酸基含有アルキル基を示す。)
で表される化合物である、請求項1に記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物。
【請求項4】
前記スチレン-ブタジエン共重合体(A)は、1,2-ビニル結合含有量が25%以上である、請求項1に記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物からなる伸縮性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線架橋型ホットメルト組成物及び伸縮性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料を含む吸収性物品が広く使用されている。これらの吸収性物品には、着用時のずれ落ち防止のために、伸縮性を有する部材で構成された積層体が用いられている。
【0003】
積層体に用いられる伸縮部材に、天然ゴムや合成高分子を糸状にした糸ゴムが知られている。糸ゴムは伸張時に良好な応力を示すため吸収性物品の着用時のずれ落ち防止に効果的である。
【0004】
また、吸収性物品のずれ落ちを防止し、且つ、着用時の圧迫感やかぶれを抑制するために、吸収性物品に用いられる積層体の伸縮部材として、ホットメルト組成物を含む伸縮性フィルムが用いられている。
【0005】
ホットメルト組成物として、特許文献1には、芳香族ビニルモノマーからなるブロックと共役ジエンモノマーからなるブロックからなり、該共役ジエンモノマーからなるブロックの炭素-炭素二重結合の50%以上が水素添加されたブロック共重合体、粘着付与樹脂および光重合開始剤を含有してなる紫外線架橋型粘・接着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-73355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙おむつ等の吸収性物品が着用される際は、体温に近い温度で長時間保持されるため、伸縮部材では、加温された状態で伸張されて保持されても、応力の緩和が低減されており、高温での伸張時の応力維持性が優れていることが要求される。特許文献1では、組成物を紫外線照射によって架橋させることにより、耐熱性を付与している。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は、架橋により粘着性が低下するため、粘着性を維持するためにポリマー配合量を少なくして、粘着付与剤の配合量を多くする必要がある。このため、特許文献1に記載の組成物は、架橋効率が低くなり、伸張率及び伸縮回復性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、伸張性、伸縮回復性、及び高温での伸張時の応力維持性に優れており、吸収性物品に使用される伸縮性部材に用いることができる紫外線架橋型ホットメルト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、スチレン-ブタジエン共重合体(A)、可塑剤(B)、及び、光重合開始剤(C)を含有する紫外線架橋型ホットメルト組成物において、紫外線架橋後のゲル分率が70%以上であれば、吸収性物品に使用される伸縮性部材用の紫外線架橋型ホットメルト組成物として用いることができ、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の紫外線架橋型ホットメルト組成物、伸縮性部材及び吸収性物品に関する。
1.スチレン-ブタジエン共重合体(A)、可塑剤(B)、及び、光重合開始剤(C)を含有する紫外線架橋型ホットメルト組成物であって、
紫外線架橋後のゲル分率が70%以上であり、
吸収性物品に使用される伸縮性部材用であることを特徴とする紫外線架橋型ホットメルト組成物。
2.前記スチレン-ブタジエン共重合体(A)の含有量は、紫外線架橋型ホットメルト組成物を100質量%として、40~60質量%である、項1に記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物。
3.前記光重合開始剤(C)は、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、Rは水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は、下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、Rは炭素数1~10で示される基である。)で示される基である。
また、式(1)中、Rは炭素数1~10の水酸基含有アルキル基を示す。)
で表される化合物である、項1又は2に記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物。
4.前記スチレン-ブタジエン共重合体(A)は、1,2-ビニル結合含有量が25%以上である、項1~3のいずれかに記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物。
5.項1~4のいずれかに記載の紫外線架橋型ホットメルト組成物からなる伸縮性部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紫外線架橋型ホットメルト組成物は、伸張性、伸縮回復性、及び高温での伸張時の応力維持性に優れており、吸収性物品に使用される伸縮性部材に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.紫外線架橋型ホットメルト組成物
本発明の紫外線架橋型ホットメルト組成物(以下、単に「ホットメルト組成物」ともいう。)は、スチレン-ブタジエン共重合体(A)、可塑剤(B)、及び、光重合開始剤(C)を含有し、紫外線架橋後のゲル分率が70%以上であり、吸収性物品に使用される伸縮性部材用であるホットメルト組成物である。本発明のホットメルト組成物は、上記(A)~(C)を含有し、且つ、紫外線架橋後のゲル分率が70%以上の伸縮性部材として用いるものであることから、粘着付与剤を高い含有量で配合する必要がなく、スチレン-ブタジエン共重合体(A)を十分な量で配合することができる。これにより、本発明のホットメルト組成物は、伸縮性部材に要求される伸張性及び伸縮回復性が十分に発揮可能である。また、本発明のホットメルト組成物は、紫外線照射による架橋等によって体温に近い温度で加温された状態で伸張されて保持されても、応力の緩和が低減されており、高温での伸張時の応力維持性が優れている。すなわち、本発明のホットメルト組成物は、上記構成を備えることにより、伸張性、伸縮回復性、及び高温での伸張時の応力維持性に優れており、これらの特性を全て兼ね備えることにより、吸収性物品に使用される伸縮性部材用として好適である。
【0014】
本明細書において「高温」とは、人の体温程度の温度を意味しており、35~42℃程度、好ましくは35.5~41.5℃程度、より好ましくは36~41℃程度、特に好ましくは40℃の温度を意味する。また、「加温」とは、上記範囲の温度とすることを意味する。
【0015】
本発明のホットメルト組成物は、吸収性物品に使用される伸縮性部材用である。本発明のホットメルト組成物は、通常0~60℃の温度範囲、特に23℃の常温で固体であり、伸縮性を示すため、本発明のホットメルト組成物を用いて形成された伸縮性部材は、吸収性物品に用いることができる。
【0016】
上記伸縮性部材は、衛生材料等の吸収性物品として好適に用いられる。上記衛生材料としては、具体的には、紙おむつ、生理用ナプキン等が挙げられる。
【0017】
本発明のホットメルト組成物は、紫外線架橋後のゲル分率が70%以上である。上記ゲル分率が70%未満であると、紫外線照射による架橋が十分でないため、高温での伸張時の応力維持性が低下する。上記ゲル分率は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。また、上記ゲル分率の上限は高い程よく、100%であってもよい。
【0018】
本発明のホットメルト組成物において、ゲル分率を測定する際の紫外線架橋の条件、及び、紫外線架橋後のゲル分率の測定方法は、後述の実施例に記載のゲル分率の測定方法による。
【0019】
(スチレン-ブタジエン共重合体(A))
スチレン-ブタジエン共重合体(A)としては、スチレン単位、及びブタジエン単位を有する共重合体であれば特に限定されず、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBBS)等が挙げられる。これらの中でも、より一層伸張性、伸縮回復性、及び高温での伸張時の応力維持性に優れる点で、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)が好ましい。
【0020】
上記スチレン-ブタジエン共重合体は、一種単独で用いられてもよいし、二種以上が混合されて用いられてもよい。
【0021】
スチレン-ブタジエン共重合体のスチレン含有量は、当該スチレン-ブタジエン共重合体を100質量%として、15~50質量%が好ましく20~45質量%がより好ましい。スチレン含有量の下限が上記範囲であると、ホットメルト組成物により形成された伸縮部材の高温での伸張時の応力維持性がより一層向上する。スチレン含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルト組成物がより柔らかくなり、伸縮部材がより一層良好な伸張性を発現することができる。
【0022】
なお、本明細書において、スチレン-ブタジエン共重合体の「スチレン含有量」とは、スチレン-ブタジエン共重合体中のスチレンブロックの含有割合(質量%)をいう。
【0023】
また、本明細書における、スチレン-ブタジエン共重合体中のスチレン含有量の算出方法は特に限定されず、例えば、JIS K6239に準じたプロトン核磁気共鳴法や赤外分光法を用いる方法が挙げられる。
【0024】
スチレン-ブタジエン共重合体としては市販されている製品を用いることができる。市販品としては、クレイトンポリマー社製 DX0222、旭化成社製 T-439、T-432等が挙げられる。
【0025】
スチレン-ブタジエン共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、スチレン含有量が高いスチレン-ブタジエン共重合体と、スチレン含有量が低いスチレン-ブタジエン共重合体とを、混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いた場合のスチレン-ブタジエン共重合体全体のスチレン含有量は、重量に基づく平均値により算出すればよい。
【0026】
本発明のホットメルト組成物中のスチレン-ブタジエン共重合体(A)の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、30~70質量%が好ましく、40~65質量%がより好ましく、40~60質量%が更に好ましく、45~55質量%が特に好ましい。スチレン-ブタジエン共重合体(A)の含有量が上記範囲であることにより、本発明のホットメルト組成物を用いて形成した伸縮部材がより一層高温での伸張時の応力維持性に優れ、且つ、ホットメルト組成物の塗工適性がより一層向上する。
【0027】
本発明のホットメルト組成物中のスチレン-ブタジエン共重合体(A)の1,2-ビニル結合含有量は、25%以上が好ましく30%がより好ましい。また、上記1,2-ビニル結合含有量は、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましい。上記1,2-ビニル結合含有量の下限が上記範囲であることにより、本発明のホットメルト組成物を用いて形成した伸縮部材がより一層高温での伸長時の応力維持性に優れる。また、上記1,2-ビニル結合含有量の上限が上記範囲であることにより、本発明のホットメルト組成物がより一層熱安定性に優れる。なお、上記1,2-ビニル結合含有量は、紫外線照射前の値である。
【0028】
なお、本明細書において、1,2-ビニル結合含有量とは、重合体ブロック中において下記式に基づいて算出された値である。
[1,2-ビニル結合含有量(%)]
=100×(1,2-ビニル結合量)/〔(1,2-ビニル結合量)+(1,4-ビニル結合量)〕
【0029】
本発明のホットメルト組成物中のスチレン-ブタジエン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、20000~600000が好ましく、30000~450000がより好ましく、40000~350000が更に好ましい。重量平均分子量の下限が上記範囲であると、ホットメルト組成物を用いて形成した伸縮部材の伸張性がより一層向上する。重量平均分子量の上限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の塗工適性がより一層向上する。なお、上記重量平均分子量(Mw)は、紫外線照射前の値である。
【0030】
なお、スチレン系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値である。
【0031】
本明細書における重量平均分子量(Mw)は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置:Waters社製 商品名「ACQUITY APC」
測定条件:カラム
・ACQUITY APCXT45 1.7μm×1本
・ACQUITY APCXT125 2.5μm×1本
・ACQUITY APCXT450 2.5μm×1本
移動相:テトラヒドロフラン 0.8mL/分
サンプル濃度:0.2質量%
検出器:示差屈折率(RI)検出器
標準物質:ポリスチレン(Waters社製 分子量:266~1800000) カラム温度:40℃
RI検出器温度:40℃
【0032】
(可塑剤(B))
本発明のホットメルト組成物は、可塑剤(B)を含有する。可塑剤(B)は、23℃で液状であることが好ましい。なお、本明細書において「液状」とは、流動性を示す状態のことをいう。このような可塑剤(B)の流動点は、23℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
【0033】
本明細書において、流動点は、JIS K2269に準拠した測定方法により測定される値である。
【0034】
可塑剤(B)としては特に限定されず、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィンオイル、炭化水素系合成オイル等が挙げられる。なかでも、加熱安定性が優れる観点から、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィンオイル、及び炭化水素系合成オイルが好ましく、ホットメルト組成物を用いて形成した伸縮部材の高温での伸張時の応力維持性がより一層向上する観点から、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。
【0035】
パラフィン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製PW-32、出光興産社製PS-32等が挙げられる。
【0036】
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ペトロチャイナ社製KN-4010、出光興産社製ダイアナフレシアN-28、出光興産社製ダイアナフレシアU-46、Nynas社製Nyflex222B等が挙げられる。
【0037】
流動パラフィンオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、MORESCO社製P-100、Sonneborn社製Kaydol等が挙げられる。
【0038】
炭化水素系合成オイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学社製ルーカントHC-10、三井化学社製ルーカントHC-20等が挙げられる。
【0039】
上記可塑剤(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発明のホットメルト組成物中の可塑剤(B)の含有量は、本発明のホットメルト組成物を100質量%として、30~70質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましく、40~60質量%が更に好ましい。可塑剤(B)の含有量の上限が上記範囲であることにより、ホットメルト組成物を用いて形成した伸縮部材の高温での伸張時の応力維持性がより一層向上する。可塑剤(B)の含有量の下限が上記範囲であることにより、ホットメルト組成物の溶融粘度がより一層低くなり、ホットメルト組成物の塗工適性がより一層向上する。
【0041】
(光重合開始剤(C))
本発明のホットメルト組成物は、光重合開始剤(C)を含有する。上記光重合開始剤(C)を含有することにより、本発明のホットメルト組成物が紫外線照射により架橋するため、本発明のホットメルト組成物を紫外線架橋型ホットメルト組成物とすることができる。
【0042】
上記光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、アセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の紫外線重合開始剤が挙げられる。
【0043】
上記光重合開始剤(C)としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物を用いることができる。
【0044】
【化3】
【0045】
上記式(1)中、Rは水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は、下記一般式(2)で示される基である。
【0046】
【化4】
【0047】
なお、上記式(2)中、Rは炭素数1~10で示される基である。Rの炭素数は、1~2が好ましく、2がより好ましい。
【0048】
上記式(1)中、Rがアルキル基、又は、アルコキシ基である場合、これらの基の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0049】
上記式(1)中、Rは炭素数1~10の水酸基含有アルキル基である。Rの炭素数は、2~8が好ましく、3~6がより好ましい。
【0050】
上記光重合開始剤(C)としては、より具体的には、下記式(3)で示される1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、又は、下記式(4)で示される1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノンを好適に用いることができる。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
上記光重合開始剤(C)としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、IGM Resins B.V.社製 Omnirad 184、Omnirad 2959が挙げられる。
【0054】
上記光重合開始剤(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
本発明のホットメルト組成物中の光重合開始剤(C)の含有量は、本発明のホットメルト組成物を100質量%として、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.3~2質量%が更に好ましく、0.5~1.5質量%特に好ましい。光重合開始剤(C)の含有量の上限が上記範囲であることにより、ホットメルト組成物の熱安定性が一層向上する。光重合開始剤(C)の含有量の下限が上記範囲であることにより、ホットメルト組成物を用いて形成した伸縮部材の伸張性、伸縮回復性、及び高温での伸張時の応力維持性がより一層向上する。
【0056】
(他の添加剤)
本発明のホットメルト組成物は、本発明の目的を本質的に妨げない範囲で、他の添加剤を含有していてもよい。上記他の添加剤としては、酸化防止剤、粘着付与樹脂、液状ゴム、微粒子充填剤等が挙げられる。
【0057】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルべンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
本発明のホットメルト組成物中の酸化防止剤の含有量としては、ホットメルト組成物を100質量%として、0.01~2質量%が好ましく、0.05~1.5質量%がより好ましく、0.1~1質量%が更に好ましい。酸化防止剤の含有量が0.01質量%以上であると、ホットメルト組成物の熱安定性がより一層向上する。酸化防止剤の含有量が2質量%以下であると、ホットメルト組成物の臭気が低減する。
【0059】
粘着付与樹脂としては、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂、また、それら石油樹脂に水素を添加した部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂としては、ホットメルト組成物の臭気、熱安定性に優れている点で、石油樹脂、部分水添石油樹脂、及び完全水添石油樹脂が好ましく、部分水添石油樹脂、及び完全水添石油樹脂がより好ましい。これら粘着付与樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
本発明のホットメルト組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。粘着付与樹脂の含有量が30質量%以下であると、ホットメルト組成物が硬くなりすぎず、伸縮部材の伸縮回復性がより一層向上する。
【0061】
液状ゴムとしては、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン及びこれらの水添樹脂が挙げられる。液状ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
本発明のホットメルト組成物中の液状ゴムの含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、1~20質量%が好ましく2~15質量%がより好ましく3~10質量%が更に好ましい。液状ゴムの含有量が1質量%以上であると、ホットメルト組成物の溶融粘度が低下し、塗工適性がより一層向上する。液状ゴムの含有量が20質量%以下であると、ホットメルト組成物が柔らかくなりすぎず、伸縮部材の伸縮回復性がより一層向上する。
【0063】
微粒子充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ等が挙げられる。微粒子充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
本発明のホットメルト組成物は、180℃における溶融粘度が45,000mPa・s以下が好ましく、32,000mPa・s以下がより好ましく、20,000mPa・s以下が更に好ましい。溶融粘度の上限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の塗工適性がより一層向上する。また、ホットメルト組成物の180℃における溶融粘度の下限は特に限定されず、5,000mPa・s程度であってもよい。
【0065】
本明細書において、「溶融粘度」は、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルト組成物の粘度である。180℃における溶融粘度の測定方法としては、例えば、ホットメルト組成物を加熱溶融し、180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRV型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて、回転数を測定可能な範囲で調整して測定する測定方法が挙げられる。
【0066】
本発明のホットメルト組成物は公知の方法で製造される。例えば、スチレン-ブタジエン共重合体(A)、可塑剤(B)、光重合開始剤(C)、必要に応じて各種添加剤等を150℃に加熱した双腕型混練機へ投入し、加熱しながら溶融混練することによって製造される。
【0067】
本発明のホットメルト組成物は、通常0~60℃の温度範囲、特に23℃の常温で固体であり、伸縮性を示すため、本発明のホットメルト組成物を用いて形成された伸縮性部材は、吸収性物品に使用される伸縮性部材に用いることができる。このような伸縮性部材も本発明の一つである。
【実施例0068】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0069】
なお、実施例及び比較例で用いた原料は以下のとおりである。
【0070】
スチレン-ブタジエン共重合体(A)
・スチレン-ブタジエン共重合体(A1)
スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS) クレイトンポリマー社製 DX0222(スチレン含有量20質量%、Mw=186900
・スチレン-ブタジエン共重合体(A2)
スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS) 旭化成社製 T-439(スチレン含有量45質量%、Mw=42500
・スチレン-ブタジエン共重合体(A3)
スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS) 旭化成社製 T-432(スチレン含有量30質量%、Mw=167200
【0071】
可塑剤(B)
・パラフィンオイル(B1) 出光興産社製 PS-32
・ナフテンオイル(B2) ペトロチャイナ社製 KN-4010
【0072】
光重合開始剤(C)
・光重合開始剤(C1) 1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン IGM Resins B.V.社製 Omnirad 184
・光重合開始剤(C2) 1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン IGM Resins B.V.社製 Omnirad 2959
【0073】
酸化防止剤
・酸化防止剤(1) チオエーテル系酸化防止剤 ADEKA社製 AO-412S
・酸化防止剤(2) フェノール系酸化防止剤 日本スペシャリティケミカルズ社製 Evernox10
【0074】
(実施例及び比較例)
上述した原料を、それぞれ表1に示した配合量で、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入した。150℃で90分間加熱しながら混練して、ホットメルト組成物を製造した。
【0075】
得られたホットメルト組成物、及び、当該ホットメルト組成物を用いて製造した伸縮性部材について、以下の測定条件により性状を測定し、特性を評価した。
【0076】
性状の測定
(180℃溶融粘度)
ホットメルト組成物を加熱溶融し、180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて、回転数を測定可能な範囲で調整して測定した。
【0077】
(ゲル分率)
ホットメルト組成物を、160~180℃の塗工温度で、離型処理されたPETフィルム(厚み50μm)の離型層側に塗布量50g/mで塗布し、その後、ヘレウス社製、Light Hammer6 Hバルブを用いて、出力100%、高さ60mm条件下で2500mJ/cmの条件になるよう紫外線照射し、試験片を作製した。
【0078】
得られた試験片を、トルエンに一昼夜浸漬し、その後2時間振とうさせた。その溶液を200メッシュ粗さの金属網でろ過し、80℃の防爆オーブン機にて2時間乾燥させてサンプルを作製後、その重さを測定した。
【0079】
得られた値から下記計算式を用いてゲル分率を算出した。
【0080】
ゲル分率(%)=[(A-C)/[B×(D-E)]]×100
A…サンプル重量
B…ホットメルト組成物に対する、スチレン-ブタジエン共重合体(A)の含有比(例えば、含有量20%の場合は0.2)
C…金属網重量
D…試験片重量
E…離型処理されたPETフィルム重量
【0081】
評価
(試験片(伸縮性部材)の調製)
ホットメルト組成物を160~180℃の塗工温度で、離型処理されたPETフィルムの離型層側に50g/mの塗布量、で塗布した。塗布幅100mmであった。次いで、ヘレウス社製、Light Hammer6 Hバルブを用いて、出力100%、高さ60mm条件下で2500mJ/cmの条件になるように紫外線を照射し、2層の積層体を作製した。得られた積層体を、幅方向に50mm及び塗布方向に100mmの大きさ、又は、幅方向に25mm及び塗布方向に50mmの大きさでカットした。積層体のPETフィルムを剥離して、ホットメルト組成物からなる幅25mm、長さ50mmの試験片、及び、幅50mm、長さ100mmの試験片(伸縮性部材)を調製した。
【0082】
(破断伸び(伸張性))
治具間を50mmに設定した引張り試験機(島津製作所製 製品名:AGS-X)へ、長手方向(ホットメルト組成物の塗布方向(MD方向))と垂直な方向(CD方向)が上下に位置するよう試験片(幅(MD方向)50mm、長さ(CD方向)100mm)の塗布方向の両端を治具で固定し、引張速度500mm/分で上下方向に、試験片が破断するまで引張った。試験片が破断するまでの治具の移動距離を測定し、下記式に基づいて破断伸びの値を算出した。
[破断伸び(%)]=(試験片が破断するまでの治具の移動距離(mm)/初期治具間距離(mm))×100
【0083】
下記評価基準に従って破断伸びを評価した。
◎:600%以上
〇:500%以上600%未満
△:400%以上500%未満
×:400%未満
【0084】
(伸縮回復率)
治具間を50mmに設定した引張り試験機(島津製作所製 製品名:AGS-X)へ、長手方向(ホットメルト組成物の塗布方向(MD方向))と垂直な方向(CD方向)が上下に位置するよう試験片(幅(MD方向)50mm、長さ(CD方向)100mm)を治具で固定し、引張速度500mm/分で試験片の歪み変位が300%となる点まで上下方向に引張った。次いで、速度500mm/分で初期の位置に戻した。歪み変位300%まで引張り、その後初期の位置に戻す工程を1サイクルとし、同一試験片について2サイクル繰り返した。1サイクル目の引張り時の積分値と2サイクル目の引張り時の積分値から、下記式に基づいて永久歪みの値を算出して、伸縮回復性を評価した。
[伸縮回復率(%)]=
[(2サイクル目の積分値(J))/(1サイクル目の積分値(J))]×100
【0085】
下記評価基準に従って伸縮回復率を評価した。
◎:90%以上
〇:80%以上90%未満
△:70%以上80%未満
×:70%未満
【0086】
(応力維持率(高温での伸張時の応力維持性))
40℃の環境下で、治具間を25mmに設定した引張り試験機(島津製作所製 製品名:EZ-LX)へ、長手方向(ホットメルト組成物の塗布方向(MD方向))と垂直な方向(CD方向)が上下に位置するよう試験片(幅(MD方向)25mm、長さ(CD方向)50mm)を治具で固定し、引張速度100mm/分で試験片の変位が100%となる点まで上下方向に引張った。この状態で1時間維持し、試験力の変化を測定した。試験力の最大値を初期試験力とし、1時間後の試験力の測定値から、下記式に基づいて応力維持率を算出して、高温での伸張時の応力維持性を評価した。
[応力維持率(%)]=(1時間後の試験力(N)/初期試験力(N))×100
【0087】
下記評価基準に従って応力維持率を評価した。
◎:70%以上
〇:60%以上70%未満
△:50%以上60%未満
×:50%未満
【0088】
結果を表1に示す。
【0089】
【表1】