(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152946
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】プリント配線基板用積層体、多層プリント配線基板用接合体、プリント配線基板用樹脂フィルムおよびプリント配線基板用樹脂部材
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231005BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K1/03 670
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053166
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022058414
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022178613
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】善見 誠一
(72)【発明者】
【氏名】太田 友里恵
(72)【発明者】
【氏名】大橋 絵梨奈
(72)【発明者】
【氏名】竹村 唯
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB17C
4F100AB33C
4F100AK01A
4F100AK12B
4F100AK49B
4F100AT00
4F100BA03
4F100DC14C
4F100DG04A
4F100DG04H
4F100DH01A
4F100EJ822
4F100EJ82A
4F100GB43
4F100JB12A
4F100JG05A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電特性および加工後の平坦性のいずれにも優れ、金属箔の密着性が良好である、プリント配線基板用積層体を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂層は、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含有する樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、
前記樹脂層は、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体。
【請求項2】
前記樹脂層は、絶縁性繊維および前記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含む、請求項1に記載のプリント配線基板用積層体。
【請求項3】
硬化性樹脂を含有する樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、
前記樹脂層は、絶縁性繊維および前記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、
前記繊維部材を含む前記樹脂層は、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、プリント配線基板用積層体。
【請求項4】
前記繊維部材の厚さが、前記樹脂層の厚さの1/100以上1/2以下である、請求項2または請求項3に記載のプリント配線基板用積層体。
【請求項5】
樹脂部材と、前記樹脂部材の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、
前記樹脂部材が、硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有し、
前記樹脂層Aおよび前記樹脂層Bは、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体。
【請求項6】
前記樹脂層は、半硬化状態または硬化状態である、請求項1、請求項3または請求項5に記載のプリント配線基板用積層体。
【請求項7】
前記金属箔が、銅箔である、請求項1、請求項3または請求項5に記載のプリント配線基板用積層体。
【請求項8】
前記金属箔がパターン状である、請求項1、請求項3または請求項5に記載のプリント配線基板用積層体。
【請求項9】
前記樹脂層が、充填剤を含有する、請求項1、請求項3または請求項5に記載のプリント配線基板用積層体。
【請求項10】
硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、前記第1樹脂層の100℃における損失正接が0.4未満であり、前記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、前記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、
硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、前記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、
前記第2プリント配線基板用積層体の前記第2樹脂層側の面が、前記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、前記第1プリント配線基板用積層体と前記第2プリント配線基板用積層体とが、前記第2プリント配線基板用積層体の前記第2樹脂層を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体。
【請求項11】
前記第1樹脂層は、絶縁性繊維および前記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含む、請求項10に記載の多層プリント配線基板用接合体。
【請求項12】
硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、前記第1樹脂層は、絶縁性繊維および前記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、前記繊維部材を含む前記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、前記繊維部材を含む前記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、第1プリント配線基板用積層体と、
硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、前記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、
前記第2プリント配線基板用積層体の前記第2樹脂層側の面が、前記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、前記第1プリント配線基板用積層体と前記第2プリント配線基板用積層体とが、前記第2プリント配線基板用積層体の前記第2樹脂層を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体。
【請求項13】
第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、前記第1樹脂部材は、硬化性樹脂を含有する樹脂層A1と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第1基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B1とをこの順に有し、前記樹脂層A1および前記樹脂層B1の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、前記樹脂層A1および前記樹脂層B1の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、
第2樹脂部材と、前記第2樹脂部材の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、前記第2樹脂部材は、前記金属箔側から順に、硬化性樹脂を含有する樹脂層A2と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第2基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B2とをこの順に有する、第2プリント配線基板用積層体と、を有し、
前記第2プリント配線基板用積層体の前記第2樹脂部材側の面が、前記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、前記第1プリント配線基板用積層体と前記第2プリント配線基板用積層体とが、前記第2プリント配線基板用積層体の前記第2樹脂部材の前記樹脂層B2を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体。
【請求項14】
硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、
前記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態であり、
硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用樹脂フィルム。
【請求項15】
硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、
前記プリント配線基板用樹脂フィルムは、絶縁性繊維および前記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、
前記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態または半硬化状態であり、
硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、プリント配線基板用樹脂フィルム。
【請求項16】
硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有するプリント配線基板用樹脂部材であって、
前記樹脂層Aおよび前記樹脂層Bは、未硬化状態または半硬化状態であり、
前記樹脂層Aおよび前記樹脂層Bは、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用樹脂部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線基板用積層体、多層プリント配線基板用接合体、プリント配線基板用樹脂フィルムおよびプリント配線基板用樹脂部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化に伴い、各種プリント配線基板の需要が伸びている。プリント配線基板には、通常、基材上に金属箔からなる導電層が積層された金属積層板が用いられ、金属積層板の導電層がパターニングされて回路が形成される。例えば特許文献1には、基材フィルムに銅箔が接着剤層を介して貼り合わされている銅張積層板が開示されている。
【0003】
現在、携帯電話端末に代表される移動通信システムは、第4世代(4G)から第5世代(5G)へ移行しようとしている。第5世代移動通信システムでは、第4世代移動通信システムに比べて高い周波数帯が用いられる。周波数が高くなるに従い、高周波回路での伝送損失も大きくなることから、第5世代移動通信システム用のプリント配線基板に対して、高周帯域の周波数に対応する優れた電気特性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、高周波の情報信号を扱うプリント配線基板用の基材として、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系脂のような低誘電樹脂材料を含有する基材を使用することが検討されている。
【0006】
しかし、フッ素系樹脂は、誘電特性に優れているものの、機械加工性が良くない。そのため、フッ素系樹脂を含有する基材が、打ち抜き加工や穴あけ加工等の加工時に変形し、プリント配線基板の平坦性が低下したり、絶縁信頼性が低下したりするという問題がある。電気機器や電子機器の内部で用いられる回路基板としては、2層以上の回路を有する多層プリント配線基板が広く用いられている。プリント配線基板の平坦性が低いと、複数のプリント配線基板を積層するのが困難となる。
【0007】
一方、液晶ポリマー(LCP)は、成形流動性が良く、機械加工性は良好であるものの、フッ素系樹脂と比較して誘電特性に劣る。
【0008】
また、液晶ポリマー(LCP)やフッ素系樹脂のような低誘電樹脂材料を含有する基材は、金属箔との密着性が悪い場合がある。また、伝送損失抑制のため、金属箔は表面が低粗度であることが求められているが、表面が低粗度の金属箔は、基材との接着性が不十分となりやすい。
【0009】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、誘電特性および加工後の平坦性のいずれにも優れ、金属箔の密着性が良好である、プリント配線基板用積層体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態は、硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂層は、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体を提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記繊維部材を含む上記樹脂層は、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、プリント配線基板用積層体を提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、樹脂部材と、上記樹脂部材の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂部材が、硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有し、上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体を提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂層の100℃における損失正接が0.4未満であり、上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、上記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記繊維部材を含む上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、上記繊維部材を含む上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、第1プリント配線基板用積層体と、硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、上記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体を提供する。
【0015】
本開示の他の実施形態は、第1樹脂部材と、上記第1樹脂部材の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂部材は、硬化性樹脂を含有する樹脂層A1と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第1基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B1とをこの順に有し、上記樹脂層A1および上記樹脂層B1の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、上記樹脂層A1および上記樹脂層B1の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、第2樹脂部材と、上記第2樹脂部材の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第2樹脂部材は、上記金属箔側から順に、硬化性樹脂を含有する樹脂層A2と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第2基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B2とをこの順に有する、第2プリント配線基板用積層体と、を有し、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂部材側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂部材の上記樹脂層B2を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体を提供する。
【0016】
本開示の他の実施形態は、硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態であり、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用樹脂フィルムを提供する。
【0017】
本開示の他の実施形態は、硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態または半硬化状態であり、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、プリント配線基板用樹脂フィルムを提供する。
【0018】
本開示の他の実施形態は、硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有するプリント配線基板用樹脂部材であって、上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、未硬化状態または半硬化状態であり、上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用樹脂部材を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本開示においては、誘電特性および加工後の平坦性のいずれにも優れ、金属箔の密着性が良好である、プリント配線基板用積層体とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図2】本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における多層プリント配線基板用接合体の製造方法を例示する工程図である。
【
図4】本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図8】本開示における多層プリント配線基板用接合体を例示する概略断面図である。
【
図9】本開示における多層プリント配線基板用接合体の製造方法を例示する工程図である。
【
図10】本開示における多層プリント配線基板用接合体を例示する概略断面図である。
【
図11】本開示における多層プリント配線基板用接合体を例示する概略断面図である。
【
図12】寸法安定性試験の試料の標点を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0022】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0023】
以下、本開示におけるプリント配線基板用積層体、多層プリント配線基板用接合体、プリント配線基板用樹脂フィルムおよびプリント配線基板用樹脂部材について、詳細に説明する。
【0024】
A.プリント配線基板用積層体
本開示におけるプリント配線基板用積層体は、3つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0025】
I.プリント配線基板用積層体の第1実施態様
本開示におけるプリント配線基板用積層体の第1実施態様は、硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂層は、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である。
【0026】
図1および
図2は、本実施態様のプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
図1におけるプリント配線基板用積層体10は、硬化性樹脂を含有する樹脂層1と、樹脂層1の一方の面に配置された金属箔2と、を有する。また、
図2におけるプリント配線基板用積層体10は、硬化性樹脂を含有する樹脂層1と、樹脂層1の両面に配置された金属箔2と、を有する。
【0027】
ここで、本開示の発明者らは、プリント配線基板の加工後の平坦性について鋭意検討を行い、プリント配線基板用の基材の粘弾性に着目した。粘弾性においては、損失正接が0に近いほど弾性体に近く、損失正接が大きいほど粘性体に近いといえる。そして、本開示の発明者らは、基材の損失正接が大きいと、粘性が高くなるため、加工時に変形しやすくなること、一方で、基材の損失正接が小さいと、弾性が低くなるため、加工時に変形しにくくなることを見出した。
【0028】
本実施態様においては、樹脂層の損失正接が所定の値未満であることにより、打ち抜き加工や穴あけ加工等の加工時に樹脂層が変形するのを抑制することができる。よって、プリント配線基板用積層体の加工後の平坦性を良くすることができる。また、絶縁信頼性も高めることができる。
【0029】
また、本実施態様においては、樹脂層の誘電率および誘電正接が所定の範囲であるため、誘電特性に優れている。よって、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0030】
また、本実施態様においては、樹脂層は、硬化性樹脂を含有するため、基材として機能するとともに接着層として機能することができる。そのため、樹脂層および金属箔の密着性を向上させることができる。特に、表面が低粗度の金属箔を用いる場合であっても、十分な密着性を得ることができる。よって、樹脂層と金属箔とが強固に接着され、かつ、伝送損失が抑制された、第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体とすることができる。
【0031】
図3(a)~(c)は、本実施態様のプリント配線基板用積層体を用いた多層プリント配線基板用接合体の製造方法を例示する工程図である。
図3(a)に示すように、第1プリント配線基板用積層体10Aは、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層1aと、第1樹脂層1aの両面に配置されたパターン状の金属箔2とを有する。また、第2プリント配線基板用積層体10Bは、硬化性樹脂を含有する第2樹脂層1bと、第2樹脂層1bの一方の面に配置された金属箔2とを有する。このとき、第1プリント配線基板用積層体10Aの第1樹脂層1a、および、第2プリント配線基板用積層体10Bの第2樹脂層1bが、後述するように半硬化状態である場合には、接着性を有する。次に、
図3(b)に示すように、第1プリント配線基板用積層体10Aと、第2プリント配線基板用積層体10Bとを、第1プリント配線基板用積層体10Aの第1樹脂層1a、および、第2プリント配線基板用積層体10Bの第2樹脂層1bにより接合する。続いて、
図3(c)に示すように、第2プリント配線基板用積層体10Bの金属箔2をパターニングする。このようにして、多層プリント配線基板用接合体100を製造する。
【0032】
従来、銅張積層板等のプリント配線基板用積層体を複数積層して、多層プリント配線基板用接合体を製造する場合、プリント配線基板用積層体同士はボンディングシートを介して接合される。これに対し、本実施態様においては、上述したように、樹脂層が半硬化状態である場合には接着性を有するため、樹脂層を介してプリント配線基板用積層体同士を接合できる。そのため、ボンディングシートが不要である。よって、多層プリント配線基板用接合体の薄型化が可能である。また、多層プリント配線基板用接合体の製造における工程数を減らし、製造コストを削減できる。
【0033】
以下、本実施態様のプリント配線基板用積層体の各構成について説明する。
【0034】
1.樹脂層
本実施態様における樹脂層は、硬化性樹脂を含有する部材である。本実施態様のプリント配線基板用積層体において、樹脂層は、低誘電性基材および接着層を兼ねる部材である。
【0035】
(1)樹脂層の物性
(a)損失正接
樹脂層においては、硬化状態において、100℃における損失正接が、0.4未満であり、0.3以下であってもよく、0.2以下であってもよい。好ましくは、硬化状態において、30℃以上100℃以下における損失正接が、0.4未満であり、0.3以下であってもよく、0.2以下であってもよい。上記損失正接が上記範囲であれば、プリント配線基板用積層体の加工後の平坦性を良くすることができる。
【0036】
ここで、損失正接tanδは、動的粘弾性測定により得られる貯蔵弾性率E’に対する損失弾性率E’’の比である。樹脂層の損失正接は、JIS K7244-1:1998(プラスチック-動的機械特性の試験方法-第1部:通則)に準拠した動的粘弾性測定法により、下記条件で測定する。動的粘弾性測定装置は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製 動的粘弾性測定装置RSA-IIIを用いることができる。
【0037】
<損失正接の測定条件>
・測定試料:幅5mm、長さ20mm
・チャック間距離(チャック間測定試料長さ):10mm
・アタッチメントモード:フィルム引張モード
・周波数:1Hz
・温度範囲:30℃以上100℃以下
・昇温速度:5℃/min
【0038】
なお、樹脂層の粘弾性の測定を行うに際して、樹脂層を硬化状態とするときの硬化方法およびその条件は、硬化性樹脂の種類および樹脂層の組成等に応じ適宜選択される。
【0039】
また、後述するように、樹脂層が繊維部材を含む場合、樹脂層の損失正接は、樹脂層が繊維部材を含まない状態での損失正接である。後述するように、樹脂層が繊維部材を含む場合、繊維部材の厚さは樹脂層の厚さよりも薄いことが好ましい。この場合、例えば
図4(a)、(b)に示すように、樹脂層1は、繊維部材3を含まない部分11、12と、繊維部材3を含む部分21とを有する。樹脂層の損失正接は、樹脂層において繊維部材を含まない部分の損失正接である。この場合、樹脂層の損失正接を測定する際、硬化前に、樹脂層から繊維部材を含まない部分のみを取り出し、樹脂層における繊維部材を含まない部分を硬化状態とする。樹脂層から繊維部材を含まない部分のみを取り出す方法としては、樹脂層をスライスする方法が挙げられる。
【0040】
樹脂層の損失正接を制御する手段としては、例えば、樹脂層に含まれる硬化性樹脂の含有量および官能基数を調整する方法が挙げられる。具体的には、硬化性樹脂の含有量が多くなると、樹脂層の硬化度(架橋密度)が高くなり、樹脂層の損失正接が低くなる傾向がある。また、硬化性樹脂の官能基数が多くなると、樹脂層の硬化度(架橋密度)が高くなり、樹脂層の損失正接が低くなる傾向がある。
【0041】
(b)誘電率および誘電正接
樹脂層においては、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が、4.0以下であり、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよい。また、樹脂層は、硬化状態において、28GHzにおける誘電正接が、0.01以下であり、0.006以下であってもよく、0.002以下であってもよい。28GHzにおける誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0042】
ここで、誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。誘電率および誘電正接は、共振器法により測定する。誘電率および誘電正接は、例えば、ネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製 E8363B PNAシリーズ)と、スプリットシリンダ共振器28GHz(EMラボ社製 スプリットシリンダ共振器28GHz CR-728)とを備える、マイクロ波ネットワークアナライザ測定システムを用いて測定することができる。
【0043】
なお、樹脂層の誘電特性の測定を行うに際して、樹脂層を硬化状態とするときの硬化方法およびその条件は、硬化性樹脂の種類および樹脂層の組成等に応じ適宜選択される。
【0044】
また、樹脂層が繊維部材を含む場合、樹脂層の誘電率および誘電正接は、樹脂層が繊維部材を含まない状態での誘電率および誘電正接である。上述したように、樹脂層が、繊維部材を含まない部分と、繊維部材を含む部分とを有する場合、樹脂層の誘電率および誘電正接は、樹脂層において繊維部材を含まない部分の誘電率および誘電正接である。この場合、樹脂層の誘電率および誘電正接を測定する際、硬化前に、樹脂層から繊維部材を含まない部分のみを取り出し、樹脂層における繊維部材を含まない部分を硬化状態とする。樹脂層から繊維部材を含まない部分のみを取り出す方法は、上述した通りである。
【0045】
樹脂層の誘電率および誘電正接を調整する手段としては、例えば、樹脂層に硬化性樹脂に加えて低誘電樹脂を含有させる方法や、硬化性樹脂として低誘電硬化性樹脂を用いる方法が挙げられる。具体的には、樹脂層に硬化性樹脂に加えて低誘電樹脂を含有させたり、硬化性樹脂として硬化性低誘電樹脂を用いたりすることで、誘電率および誘電正接を低くすることができる。
【0046】
(2)樹脂層の材料
樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含有すればよく、例えば、硬化性樹脂と低誘電樹脂とを含有する、あるいは、硬化性樹脂として硬化性低誘電樹脂を含有することができる。
【0047】
樹脂層に含有される硬化性樹脂は、半硬化状態または硬化状態であることが好ましく、半硬化状態であることがより好ましい。本実施態様のプリント配線基板用積層体を用いて多層プリント配線基板用接合体を製造する場合、樹脂層が半硬化状態であることにより、ボンディングシートを必要とすることなく、樹脂層を介してプリント配線基板用積層体同士を接合できる。
【0048】
なお、本明細書において、「半硬化」とは、樹脂の硬化を途中段階で停止させた状態である。例えば硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、「半硬化」とは、JIS K6800:2006「接着剤・接着用語」に定義されているような、B-ステージ(熱硬化性樹脂組成物の硬化中間体)状態を意味する。
【0049】
硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0050】
なお、電離放射線とは、分子を重合または架橋し得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV-A、UV-B、UV-C)、可視光線、γ線、X線、電子線(EB)等が挙げられる。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、炭化水素樹脂(芳香族系および脂肪族系)、ゴム系樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。ポリイミド系樹脂としては、例えば、特許第6790816号に記載のポリイミド系接着剤を使用することができる。熱硬化性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
熱硬化性樹脂の硬化温度は、例えば、250℃以下であり、200℃以下であってもよい。
【0053】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0054】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、分子中に重合性官能基を有する、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等を挙げることができる。重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合、エポキシ基等が挙げられる。
【0055】
上記のモノマー、オリゴマー、プレポリマーとしては、例えば、分子中に重合性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、単官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、多官能性(メタ)アクリレートは、分子内に重合性官能基を2個以上有する(メタ)アクリレートである。
【0056】
多官能性(メタ)アクリレートの官能基数としては、特に限定されるものではなく、例えば、2以上50以下であり、好ましくは2以上8以下、さらに好ましくは2以上6以下である。
【0057】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレート、脂環または脂肪族複素環を有する(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
樹脂層が硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する場合、樹脂層中の硬化性樹脂の含有量は、例えば、樹脂成分の総量を100質量部としたとき、20質量部以上であり、30質量部以上であってもよく、40質量部以上であってもよい。また、樹脂層中の硬化性樹脂の含有量は、例えば、樹脂成分の総量を100質量部としたとき、80質量部以下であり、70質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよい。具体的には、樹脂層中の硬化性樹脂の含有量は、樹脂成分の総量を100質量部としたとき、20質量部以上80質量部以下であり、30質量部以上70質量部以下であってもよく、40質量部以上60質量部以下であってもよい。硬化性樹脂の含有量が少なすぎると、損失正接が高くなる可能性や、金属箔との密着性が低下する可能性がある。また、硬化性樹脂の含有量が多すぎると、低誘電樹脂の含有量が相対的に少なくなり、所望の誘電特性が得られない可能性がある。
【0059】
また、樹脂層に含有される低誘電樹脂は、樹脂層の誘電率および誘電正接を所定の範囲にすることが可能であり、かつ、上記硬化性樹脂と混合可能な樹脂であれば、特に限定されない。低誘電樹脂は、硬化性樹脂との親和性や、硬化性樹脂への分散性が良いことが好ましい。低誘電樹脂の、硬化性樹脂との親和性や、硬化性樹脂への分散性が悪いと、樹脂層と金属箔との密着性が低下する可能性がある。低誘電樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、フッ素系樹脂、液晶ポリマーが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、α-オレフィン共重合体等が挙げられる。ポリスチレンとしては、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)等が挙げられる。低誘電樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
樹脂層が硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する場合、樹脂層中の低誘電樹脂の含有量は、例えば、樹脂成分の総量を100質量部としたとき、20質量部以上であり、30質量部以上であってもよく、40質量部以上であってもよい。また、樹脂層中の低誘電樹脂の含有量は、例えば、樹脂成分の総量を100質量部としたとき、80質量部以下であり、70質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよい。具体的には、樹脂層中の低誘電樹脂の含有量は、樹脂成分の総量を100質量部としたとき、20質量部以上80質量部以下であり、30質量部以上70質量部以下であってもよく、40質量部以上60質量部以下であってもよい。低誘電樹脂の含有量が少なすぎると、所望の誘電特性が得られない可能性がある。また、低誘電樹脂の含有量が多すぎると、硬化性樹脂の含有量が相対的に少なくなり、損失正接が高くなる可能性や、金属箔との密着性が低下する可能性がある。
【0061】
また、樹脂層に含有される硬化性低誘電樹脂としては、樹脂層の誘電率および誘電正接を所定の範囲にすることが可能であれば、特に限定されず、公知の硬化性低誘電樹脂の中から適宜選択して用いることができる。
【0062】
樹脂層が、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を含有する場合は、さらに硬化剤、硬化促進剤を含有することができる。また、樹脂層が、硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を含有する場合は、さらに重合開始剤を含有することができる。また、樹脂層は、必要に応じて、粘着付与剤、難燃剤、カップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤等の添加剤を含有することができる。
【0063】
樹脂層が充填剤を含有する場合には、寸法安定性を向上できる。なお、充填剤は、フィラーとも称される。
【0064】
充填剤の28GHzにおける誘電率は、4.0以下が好ましく、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよい。また、充填剤の28GHzにおける誘電正接は、0.1以下が好ましく、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。充填剤の誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、樹脂層が充填剤を含有する場合であっても、誘電特性に優れる樹脂層を得ることができる。
【0065】
充填剤の誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。
【0066】
充填剤としては、絶縁性を有する充填剤であれば特に限定されず、無機充填剤および有機充填剤のいずれであってもよい。無機充填剤としては、絶縁性を有するものであればよく、シリカ、アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸カリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ガラス、タルク、クレー、マイカ、モリブデン化合物、天然鉱物等が挙げられる。有機充填剤としては、絶縁性を有するものであればよく、アクリル系、ポリスチレン系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、フッ素樹脂系等の有機充填剤が挙げられる。充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
中でも、耐熱性、硬さ等の観点から、無機充填剤が好ましい。また、無機充填剤の中でも、シリカ、フッ化アルミニウム、窒化ホウ素が好ましく、シリカがより好ましい。これらは、誘電特性が良好である。
【0068】
充填剤の形状としては、特に限定されず、例えば、球状、繊維状、針状、板状、鱗片状、不定形が挙げられる。中でも、充填剤の形状は、非球状が好ましく、具体的には、繊維状、針状、板状、鱗片状、不定形が好ましい。非球状粒子は、異形粒子とも称する。異形粒子の場合、寸法安定性をより向上できる。
【0069】
ここで、充填剤の形状は、樹脂層の厚さ方向の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することにより確認する。
【0070】
また、充填剤の平均粒子径は、樹脂層の厚さ以下であることが好ましい。なお、上記の樹脂層の厚さとは、樹脂層が繊維部材を含む場合には、樹脂層における繊維部材を含まない部分の厚さをいう。具体的には、充填剤の平均粒子径は、1nm以上であり、10nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。また、充填剤の平均粒子径は、例えば、50μm以下であり、20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。すなわち、充填剤の平均粒子径は、例えば、1nm以上50μm以下であり、10nm以上20μm以下であってもよく、100nm以上10μm以下であってもよい。上記平均粒子径が小さすぎると、充填剤の製造が困難である可能性や、充填剤同士が凝集しやすくなり、充填剤の分散性が悪くなる可能性がある。一方、上記平均粒子径が大きすぎると、樹脂層の平坦性が損なわれる可能性や、樹脂層および金属箔の密着性が損なわれる可能性がある。
【0071】
ここで、充填剤の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した樹脂層の厚さ方向の断面の画像から20個の充填剤の粒子径を測定し、20個の充填剤の粒子径の算術平均値とする。充填剤が異形粒子である場合、充填剤の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した樹脂層の厚さ方向の断面の画像から異形粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、平均して粒子径を求め、20個の異形粒子の粒子径の算術平均値とする。
【0072】
樹脂層中の充填剤の含有量は、例えば、樹脂層に含有される樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上であり、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。また、樹脂層中の充填剤の含有量は、例えば、樹脂層に含有される樹脂成分100質量部に対して、50質量部以下であり、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。具体的には、樹脂層中の充填剤の含有量は、樹脂層に含有される樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であり、5質量部以上30質量部以下であってもよく、10質量部以上25質量部以下であってもよい。充填剤の含有量が上記範囲内であれば、樹脂層の誘電特性を良くすることができる。一方、充填剤の含有量が少なすぎると、寸法安定性向上の効果が十分に得られない可能性がある。
【0073】
(3)繊維部材
樹脂層は、絶縁性繊維と上記硬化性樹脂とを含有する繊維部材を含んでいてもよい。例えば
図4(a)、(b)において、樹脂層1は繊維部材3を含んでいる。樹脂層が繊維部材を含むことにより、プリント配線基板用積層体の反りを抑制し、寸法安定性を向上できる。特に、プリント配線基板の製造方法がサブトラクティブ法である場合、エッチング加工時の寸法安定性を高めることができる。また、プリント配線基板の製造工程における加熱時の寸法安定性も高めることができる。プリント配線基板の製造工程における加熱工程としては、例えば、ボンディングシート(接着シート)を介して各層を接合する際にボンディングシートを熱硬化する工程や、レジストを熱硬化する工程が挙げられる。これらの工程では、例えば加熱温度が120℃から180℃で設定されている。また、上記加熱工程としては、プリント配線基板用積層体同士を接合する工程が挙げられる。樹脂層に含有される硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、加熱により、樹脂層を介してプリント配線基板用積層体同士を接合できる。繊維部材が含まれることによって、このような加熱時の寸法安定性が高くなる。
【0074】
繊維部材の形態としては、上記硬化性樹脂を含浸できれば特に限定されず、例えば、不織布、織物、編物、紙、フェルトが挙げられる。中でも、不織布、織物、編物が好ましい。
【0075】
繊維部材に含有される絶縁性繊維の28GHzにおける誘電率は、7.0以下であることが好ましく、6.0以下であってもよく、5.0以下であってもよい。また、絶縁性繊維の28GHzにおける誘電正接は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。絶縁性繊維の誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、樹脂層が繊維部材を含む場合であっても、誘電特性に優れる樹脂層を得ることができる。
【0076】
誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。
【0077】
絶縁性繊維としては、絶縁性を有する繊維であれば特に限定されず、無機繊維および有機繊維のいずれであってもよい。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、バサルト繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ビニロン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、液晶ポリマー繊維が挙げられる。
【0078】
中でも、無機繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。ガラス繊維は、絶縁性および寸法安定性が良好である。
【0079】
絶縁性繊維は表面処理が施されていてもよい。表面処理により、繊維部材への硬化性樹脂の含浸性を良くすることができ、ボイドの発生を抑制できる。絶縁性繊維の表面処理方法としては、例えば、表面処理剤を用いる方法、プラズマ処理、オゾン処理、マイクロ波処理、コロナ放電処理、エキシマレーザ処理、電離放射線処理が挙げられる。表面処理剤を用いる方法の場合、絶縁性繊維は表面に、表面処理剤を含有する表面処理膜を有することになる。電離放射線処理において、電離放射線としては、例えば、紫外線、電子線が挙げられる。
【0080】
また、硬化性樹脂を含浸する前の繊維部材が、表面処理されていてもよい。表面処理により、繊維部材への硬化性樹脂の含浸性を良くすることができ、ボイドの発生を抑制できる。繊維部材の表面処理方法は、上記の絶縁性繊維の表面処理方法と同様である。表面処理剤を用いる方法の場合、繊維部材は表面に、表面処理剤を含有する表面処理膜を有することになる。
【0081】
表面処理については、硬化性樹脂を含浸する前の繊維部材が、表面処理されていることが好ましい。繊維部材の表面処理方法としては、中でも、表面処理剤を用いる方法、プラズマ処理、オゾン処理、マイクロ波処理が好ましく、特に、表面処理剤を用いる方法が好ましい。
【0082】
表面処理剤を用いる方法において、表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、脂肪酸、界面活性剤が挙げられる。中でも、表面処理剤は、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、繊維部材への硬化性樹脂の含浸性を良くすることができれば特に限定されないが、ビニル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤が好ましい。ビニル系シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。アミノ系シランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ系シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。イソシアネート系シランカップリング剤としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0083】
絶縁性繊維の繊維径は特に限定されないが、絶縁性繊維の平均繊維径が、例えば、0.1μm以上であり、1μm以上であってもよい。平均繊維径が上記範囲であると、絶縁性繊維間の隙間が大きくなり、硬化性樹脂の含浸性を良くすることができる。また、平均繊維径が上記範囲であれば、絶縁性繊維自体の剛性が高くなり、プリント配線基板用積層体の寸法安定性を高めることができる。一方、絶縁性繊維の平均繊維径は、例えば、10μm以下であり、5μm以下であってもよい。すなわち、絶縁性繊維の平均繊維径は、例えば、0.1μm以上10μm以下であり、1μm以上5μm以下であってもよい。
【0084】
絶縁性繊維の繊維径は、樹脂層の断面に対して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定する。測定時の観察範囲は25mm2とする。絶縁性繊維の平均繊維径は、100本の絶縁性繊維の繊維径の平均値とする。
【0085】
硬化性樹脂を含浸する前の繊維部材の目付は、上記硬化性樹脂を含浸できれば特に限定されず、例えば、50g/m2以下であり、30g/m2以下であってもよく、20g/m2以下であってもよい。繊維部材の目付が高すぎると、硬化性樹脂が含浸しにくくなる可能性がある。一方、硬化性樹脂を含浸する前の繊維部材の目付は、例えば、1g/m2以上であり、2g/m2以上であってもよく、5g/m2以上であってもよい。繊維部材の目付が低すぎると、寸法安定性向上の効果が十分に得られない可能性がある。繊維部材の目付は、繊維部材の製造方法や製造条件等により調整できる。すなわち、硬化性樹脂を含浸する前の繊維部材の目付は、例えば、1g/m2以上50g/m2以下であり、2g/m2以上30g/m2以下であってもよく、5g/m2以上20g/m2以下であってもよい。
【0086】
繊維部材に含有される硬化性樹脂は、樹脂層に含有される硬化性樹脂と同一である。繊維部材は、未硬化状態の硬化性樹脂を含浸させることで得られる。
【0087】
繊維部材においては、繊維部材全体に硬化性樹脂が含浸されていることが好ましい。ボイドの発生を抑制できる。
【0088】
樹脂層は、1つの繊維部材を含んでいてもよく、複数の繊維部材を含んでいてもよい。
図4(a)、(b)は樹脂層1が1つの繊維部材3を含む例であり、
図4(c)、(d)は樹脂層1が2つの繊維部材3a、3bを含む例である。樹脂層が複数の繊維部材を含む場合、各繊維部材の厚さを薄くでき、繊維部材を含む樹脂層全体の誘電特性が良好になる。さらに、樹脂層が複数の繊維部材を含むことにより、プリント配線基板用積層体の寸法安定性をさらに高めることができる。
【0089】
また、樹脂層が複数の繊維部材を含む場合、樹脂層において、隣接する繊維部材の間には、繊維部材を含まない部分が配置されていることが好ましい。例えば
図4(c)、(d)に示す樹脂層1において、2つの繊維部材3a、3bの間には、繊維部材3a、3bを含まない部分13が配置されている。この場合、各繊維部材への硬化性樹脂の含浸性を良くすることができる。
【0090】
繊維部材の厚さは、樹脂層の厚さよりも薄いことが好ましい。具体的には、繊維部材の厚さは、絶縁性繊維の種類に応じて適宜選択されるが、樹脂層の厚さの1/2以下であることが好ましく、樹脂層の厚さの1/5以下であってもよい。繊維部材の厚さが上記範囲であることにより、繊維部材を含む樹脂層全体の誘電特性が良好になる。一方、繊維部材の厚さは、樹脂層の厚さの1/100以上であってもよく、樹脂層の厚さの1/50以上であってもよく、樹脂層の厚さの1/20以上であってもよく、樹脂層の厚さの1/10以上であってもよい。繊維部材の厚さが薄すぎると、寸法安定性向上の効果が十分に得られない可能性がある。すなわち、繊維部材の厚さは、樹脂層の厚さの1/100以上1/2以下であってもよく、樹脂層の厚さの1/50以上1/2以下であってもよく、樹脂層の厚さの1/20以上1/2以下であってもよく、樹脂層の厚さの1/20以上1/5以下であってもよく、樹脂層の厚さの1/10以上1/5以下であってもよい。より具体的には、繊維部材の厚さは、絶縁性繊維の種類に応じて適宜調整されるが、1μm以上であり、10μm以上であってもよい。また、繊維部材の厚さは、50μm以下であり、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。すなわち、繊維部材の厚さは、1μm以上50μm以下であり、1μm以上30μm以下であってもよく、1μm以上20μm以下であってもよく、10μm以上20μm以下であってもよい。なお、樹脂層が複数の繊維部材を含む場合、各繊維部材の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0091】
繊維部材の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察されるプリント配線基板用積層体の厚さ方向の断面から測定して得られた任意の10箇所の厚さの平均値とする。プリント配線基板用積層体が有する他の部材の厚さについても同様である。
【0092】
樹脂層において、繊維部材の位置は特に限定されないが、繊維部材は、樹脂層の厚さ方向の中央に位置することが好ましい。具体的には、
図4(a)、(b)に示すように、樹脂層1が1つの繊維部材3を含む場合、樹脂層1において、繊維部材3を含む部分21の両側に位置する、繊維部材3を含まない部分11、12の厚さが同じであることがより好ましい。また、
図4(c)、(d)に示すように、樹脂層1が2つの繊維部材3a、3bを含む場合、繊維部材3aを含む部分21の繊維部材3bとは反対側に位置する、繊維部材3a、3bを含まない部分11の厚さと、繊維部材3bを含む部分22の繊維部材3aとは反対側に位置する、繊維部材3a、3bを含まない部分12の厚さとが同じであることが好ましい。これにより、プリント配線基板用積層体の反りを抑制し、寸法安定性をさらに向上できる。
【0093】
(4)樹脂層の厚さ
樹脂層の厚さは、例えば、10μm以上であり、20μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。一方、樹脂層の厚さは、例えば、300μm以下であり、200μm以下であってもよい。具体的には、樹脂層の厚さは、10μm以上300μm以下であり、20μm以上300μm以下であってもよく、20μm以上200μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよい。
【0094】
樹脂層が繊維部材を含む場合、樹脂層の厚さは、例えば、50μm以上であることが好ましく、80μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。また、樹脂層が繊維部材を含む場合、樹脂層の厚さは、80μm以上100μm以下であってもよい。
【0095】
2.金属箔
本実施態様における金属箔は、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置される部材である。金属箔は、上記樹脂層と接していることが好ましい。
【0096】
金属箔の金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ステンレス、チタン、ニッケルが挙げられる。これらの中でも、加工性やコストの観点から、銅が好ましく、すなわち、銅箔が好ましい。また、銅箔は、圧延銅箔であってもよく、電解銅箔であってもよい。
【0097】
金属箔の厚さは、例えば、1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、金属箔の厚さは、例えば、200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。具体的には、金属箔の厚さは、1μm以上200μm以下であり、5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であってもよい。
【0098】
また、例えば
図5(a)、(b)に示すように、金属箔2はパターン状であってもよい。特に、金属箔は銅箔パターンであることが好ましい。
【0099】
また、金属箔は、表面が平滑な平滑金属箔であることが好ましい。渦電流による表皮効果によって金属箔の表面に電流が流れるが、金属箔の表面の粗度が大きいと、経路が長くなり、損失が大きくなりやすい。そのため、金属箔の表面が平滑であることによって、上記損失を抑制できる。特に、第5世代移動通信システムに用いられるプリント配線基板の場合、導体損失を低減することが重要になるため、金属箔は平滑金属箔であることが好ましい。
【0100】
具体的には、金属箔の樹脂層側の面の最大高さ粗さ(Rz)は、10.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましく、2.0μm以下がさらに好ましく、1.0μm以下が特に好ましい。一方、上記最大高さ粗さ(Rz)は、例えば、0.1μm以上であり、好ましくは0.5μm以上である。具体的には、上記最大高さ粗さ(Rz)は、例えば、0.1μm以上10.0μm以下が好ましく、0.1μm以上5.0μm以下がより好ましく、0.5μm以上2.0μm以下がさらに好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。
【0101】
なお、最大高さ粗さ(Rz)とは、JIS B0601:2001に準拠する方法で得られる値である。
【0102】
最大高さ粗さ(Rz)は、例えば、表面粗さ測定器を用いて測定することができる。具体的には、粗さ曲線からその平均線の方向にJIS B0601:2001に記載の基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定したものをRzとすることができる。表面粗さ測定器としては、例えば、小坂研究所社製「サーフコーダーSE1700α」を用いることができる。
【0103】
3.プリント配線基板用積層体
本実施態様のプリント配線基板用積層体は、上記の樹脂層および金属箔を有する。本実施態様のプリント配線基板用積層体は、例えば
図1に示すように、樹脂層1の一方の面に金属箔2を有する積層体(特に、片面銅張積層体)であってもよく、例えば
図2に示すように、樹脂層1の両面に金属箔2を有する積層体(特に、両面銅張積層体)であってもよい。
【0104】
また、本実施態様のプリント配線基板用積層体においては、ドリル穴あけ加工後の金属箔変形量が、例えば、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。上記金属箔変形量が上記範囲であれば、加工時の樹脂層の変形を抑制することができる。よって、加工後の平坦性を良くすることができる。なお、樹脂層の損失正接が大きく、粘性が高いと、加工時の変形が大きくなると考えられる。一方、樹脂層の損失正接が小さく、弾性が高いと、加工時の変形が小さくなると考えられる。よって、樹脂層の損失正接が所定の値未満であることにより、金属箔変形量を小さくすることができる。
【0105】
ここで、金属箔変形量は、下記条件で、プリント配線基板用積層体の金属箔の面からドリル穴あけ加工を行ったときの、金属箔の先端が変位した長さである。例えば
図6(a)、(b)ように、金属箔変形量dは、穴hの周辺以外の領域における樹脂層1および金属箔2の界面を基準面として、この界面(基準面)から、金属箔2の先端までの、プリント配線基板用積層体10の厚さ方向の距離をいう。
【0106】
なお、
図6(b)に示すように、樹脂層1の両面に金属箔2a、2bが配置されている場合には、ドリルをあてるほうの金属箔2aの変形量を測定する。この場合、樹脂層1と金属箔2aとの界面を基準面とし、この界面(基準面)から、金属箔2aの先端までの、プリント配線基板用積層体10の厚さ方向の距離が、金属箔変形量dである。
【0107】
<ドリル穴あけ加工条件>
・穴の直径:100μm
・ドリル:アンダーカットドリル
・送り速度:0.87m/s
・回転数:190000rpm
【0108】
また、金属箔の厚さが、例えば、1μm以上100μm以下である場合、金属箔変形量が上記範囲であることが好ましい。
【0109】
本開示におけるプリント配線基板用積層体の用途は、特に限定されないが、高周帯域の周波数に対応する優れた電気特性を有するため、特に、第5世代移動通信システムに用いられるプリント配線基板を作製するための積層体として好適に使用される。また、本開示におけるプリント配線基板用積層体は、細線同軸ケーブルに代えて利用するプリント配線基板にも用いることができる。
【0110】
4.プリント配線基板用積層体の製造方法
本実施態様のプリント配線基板用積層体の製造方法は、特に限定されないが、樹脂層と金属箔とを積層する積層工程を有する製造方法が挙げられる。
【0111】
(1)積層工程
積層工程においては、樹脂層および金属箔を積層する。これにより、樹脂層および金属箔が厚さ方向に積層された積層体が得られる。
【0112】
樹脂層および金属箔を積層する方法としては、例えば、金属箔上に未硬化状態の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗工し、その後、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる方法や、未硬化状態の硬化性樹脂を含有する樹脂フィルムを準備し、金属箔上に樹脂フィルムを配置し、その後、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる方法が挙げられる。これにより、樹脂層および金属箔が接着される。
【0113】
金属箔上に硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、特に限定されず、公知の塗工方法を採用することができる。
【0114】
また、樹脂フィルムの作製方法としては、例えば、セパレータ上に未硬化状態の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗工する方法が挙げられる。セパレータは、金属箔上に樹脂フィルムを配置した後、剥離すればよい。
【0115】
硬化性樹脂の硬化方法としては、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択され、例えば、加熱する方法や、電離放射線を照射する方法が挙げられる。また、加熱する方法および電離放射線を照射する方法を組み合わせてもよい。加熱する方法の場合、加熱温度は、例えば、250℃以下であり、200℃以下であってもよい。
【0116】
また、樹脂層が繊維部材を含む場合、樹脂層および金属箔を積層する方法としては、例えば、未硬化状態の硬化性樹脂を含有する複数の樹脂フィルムを準備し、金属箔、第1の樹脂フィルム、繊維部材および第2の樹脂フィルムの順に配置し、その後、加熱および加圧する方法や、繊維部材の両面に未硬化状態の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成し、塗膜上に金属箔を配置し、その後、加熱および加圧する方法が挙げられる。加熱および加圧により、繊維部材に硬化性樹脂を含浸させることができる。また、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、加熱および加圧により、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させて、樹脂層と金属箔とを接着できる。一方、硬化性樹脂が電離放射線硬化性樹脂である場合、加熱および加圧後に、電離放射線を照射して未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる。
【0117】
繊維部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、特に限定されず、公知の塗工方法を採用することができる。
【0118】
また、樹脂フィルムの作製方法は、上述した通りである。セパレータは、繊維部材上に樹脂フィルムを配置した後、剥離すればよい。
【0119】
(2)その他の工程
上記積層工程の前に、金属箔として、表面が平滑な平滑金属箔を準備する金属箔準備工程を行ってもよい。金属箔は、市販品を使用してもよく、金属箔の表面を平滑化する工程を行ってもよい。金属箔の表面を平滑化する方法としては、例えば、ウェットエッチングやドライエッチングのエッチングを用いたハーフエッチング法が挙げられる。エッチング条件については、金属箔の種類に応じて適宜設定される。
【0120】
また、上記積層工程後に、金属箔をパターニングするパターニング工程を行ってもよい。具体的には、サブトラクティブ法が適用される。
【0121】
II.プリント配線基板用積層体の第2実施態様
本開示におけるプリント配線基板用積層体の第2実施態様は、硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記繊維部材を含む上記樹脂層は、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である。
【0122】
図4(a)、(b)は、本実施態様のプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
図4(a)におけるプリント配線基板用積層体10は、硬化性樹脂を含有する樹脂層1と、樹脂層1の一方の面に配置された金属箔2と、を有する。また、
図4(b)におけるプリント配線基板用積層体10は、硬化性樹脂を含有する樹脂層1と、樹脂層1の両面に配置された金属箔2と、を有する。樹脂層1は、絶縁性繊維および硬化性樹脂を含有する繊維部材3を含む。
【0123】
本実施態様においては、樹脂層が繊維部材を含むことにより、繊維部材を含む樹脂層全体の熱膨張率を低くでき、プリント配線基板用積層体の反りを抑制し、寸法安定性を向上できる。よって、プリント配線基板用積層体の平坦性を良くすることができる。また、樹脂層が繊維部材を含むことにより、樹脂層を補強できるので、打ち抜き加工や穴あけ加工等の加工時に樹脂層が変形するのを抑制できる。よって、プリント配線基板用積層体の加工後の平坦性も良くすることができる。また、絶縁信頼性も高めることができる。
【0124】
また、本実施態様においては、樹脂層の誘電率および誘電正接が所定の範囲であるため、誘電特性に優れている。よって、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0125】
また、本実施態様においては、樹脂層は、硬化性樹脂を含有するため、基材として機能するとともに接着層として機能することができる。そのため、樹脂層および金属箔の密着性を向上させることができる。特に、表面が低粗度の金属箔を用いる場合であっても、十分な密着性を得ることができる。よって、樹脂層と金属箔とが強固に接着され、かつ、伝送損失が抑制された、第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体とすることができる。
【0126】
また、本実施態様のプリント配線基板用積層体を用いて多層プリント配線基板用接合体を製造する場合において、上記第1実施態様の項に記載したように、樹脂層が半硬化状態である場合には接着性を有するため、樹脂層を介してプリント配線基板用積層体同士を接合できる。そのため、ボンディングシートが不要である。よって、多層プリント配線基板用接合体の薄型化が可能である。また、多層プリント配線基板用接合体の製造における工程数を減らし、製造コストを削減できる。
【0127】
以下、本実施態様のプリント配線基板用積層体の各構成について説明する。
【0128】
1.樹脂層
本実施態様における樹脂層は、硬化性樹脂を含有する部材であり、絶縁性繊維および硬化性樹脂を含有する繊維部材を含む。本実施態様のプリント配線基板用積層体において、樹脂層は、低誘電性基材および接着層を兼ねる部材である。
【0129】
繊維部材を含む樹脂層においては、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が、5.0以下であり、4.0以下であってもよく、3.0以下であってもよい。また、繊維部材を含む樹脂層においては、硬化状態において、28GHzにおける誘電正接が0.1以下であり、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。上記の誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0130】
ここで、誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。誘電率および誘電正接の測定方法は、上記第1実施態様における誘電率および誘電正接の測定方法と同様である。繊維部材を含む樹脂層の誘電率および誘電正接は、繊維部材を含む樹脂層全体の誘電率および誘電正接である。
【0131】
樹脂層の誘電率および誘電正接を調整する手段は、上記第1実施態様における手段と同様である。また、繊維部材に、所定の誘電率および誘電正接を有する絶縁性繊維を用いる方法、繊維部材の厚さを薄くする方法も挙げられる。
【0132】
繊維部材を含む樹脂層においては、硬化状態において、100℃における損失正接が、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。より好ましくは、硬化状態において、30℃以上100℃以下における損失正接が、0.1以下であり、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。上記損失正接が上記範囲であれば、プリント配線基板用積層体の加工後の平坦性を良くすることができる。
【0133】
損失正接の測定方法は、上記第1実施態様における方法と同様である。繊維部材を含む樹脂層の損失正接は、繊維部材を含む樹脂層全体の損失正接である。
【0134】
樹脂層の損失正接を制御する手段は、上記第1実施態様における手段と同様である。また、樹脂層が繊維部材を含むことにより、樹脂層の損失正接が低くなる。
【0135】
樹脂層の材料、繊維部材、樹脂層の厚さ等については、上記第1実施態様と同様である。
【0136】
2.金属箔
金属箔については、上記第1実施態様と同様である。
【0137】
3.プリント配線基板用積層体
プリント配線基板用積層体のその他の点については、上記第1実施態様と同様である。
【0138】
III.プリント配線基板用積層体の第3実施態様
本開示におけるプリント配線基板用積層体の第3実施態様は、樹脂部材と、上記樹脂部材の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、上記樹脂部材が、硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有し、上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である。
【0139】
図7(a)、(b)は、本実施態様のプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
図7(a)におけるプリント配線基板用積層体10は、樹脂部材30と、樹脂部材30の一方の面に配置された金属箔2と、を有する。また、
図7(b)におけるプリント配線基板用積層体10は、樹脂部材30と、樹脂部材30の両面に配置された金属箔2と、を有する。樹脂部材30は、硬化性樹脂を含有する樹脂層A31と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層32と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B33とをこの順に有する。
【0140】
本実施態様においては、樹脂部材が、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層を有することにより、樹脂部材全体の熱膨張率を低くでき、プリント配線基板用積層体の反りを抑制し、寸法安定性を向上できる。よって、プリント配線基板用積層体の平坦性を良くすることができる。また、樹脂部材が、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層を有することにより、樹脂部材を補強できるので、打ち抜き加工や穴あけ加工等の加工時に樹脂部材が変形するのを抑制できる。よって、プリント配線基板用積層体の加工後の平坦性も良くすることができる。また、絶縁信頼性も高めることができる。
【0141】
また、本実施態様においては、樹脂層Aお樹脂層Bの誘電率および誘電正接が所定の範囲であるため、誘電特性に優れている。また、ポリスチレンおよび変性ポリイミドは、樹脂の中では、低誘電性特性が良好である。よって、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0142】
また、本実施態様においては、樹脂層Aおよび樹脂層Bは、硬化性樹脂を含有するため、接着層として機能することができる。そのため、樹脂層Aおよび樹脂層Bと金属箔との密着性を向上させることができる。特に、表面が低粗度の金属箔を用いる場合であっても、十分な密着性を得ることができる。よって、樹脂層Aまたは樹脂層Bと金属箔とが強固に接着され、かつ、伝送損失が抑制された、第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体とすることができる。
【0143】
また、本実施態様のプリント配線基板用積層体を用いて多層プリント配線基板用接合体を製造する場合において、上記第1実施態様の項に記載したように、樹脂層Aおよび樹脂層Bが半硬化状態である場合には接着性を有するため、樹脂層Aおよび樹脂層Bを介してプリント配線基板用積層体同士を接合できる。そのため、ボンディングシートが不要である。よって、多層プリント配線基板用接合体の薄型化が可能である。また、多層プリント配線基板用接合体の製造における工程数を減らし、製造コストを削減できる。
【0144】
以下、本実施態様のプリント配線基板用積層体の各構成について説明する。
【0145】
1.樹脂層Aおよび樹脂層B
本実施態様において、樹脂層Aおよび樹脂層Bは硬化性樹脂を含有する。本実施態様のプリント配線基板用積層体において、樹脂層Aおよび樹脂層Bは、接着層として機能し得る。
【0146】
樹脂層Aおよび樹脂層Bにおいては、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が、4.0以下であり、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよい。また、樹脂層Aおよび樹脂層Bにおいては、硬化状態において、28GHzにおける誘電正接が、0.01以下であり、0.006以下であってもよく、0.002以下であってもよい。28GHzにおける誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0147】
ここで、誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。誘電率および誘電正接の測定方法は、上記第1実施態様における誘電率および誘電正接の測定方法と同様である。
【0148】
樹脂層Aおよび樹脂層Bの誘電率および誘電正接を調整する手段は、上記第1実施態様における手段と同様である。
【0149】
樹脂層Aおよび樹脂層Bの材料については、上記第1実施態様における樹脂層の材料と同様である。樹脂層Aに含有される硬化性樹脂と、樹脂層Bに含有される硬化性樹脂とは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0150】
また、樹脂層Aおよび樹脂層Bの厚さについても、上記第1実施態様における樹脂層の厚さと同様である。樹脂層Aの厚さと、樹脂層Bの厚さとは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。中でも、樹脂層Aの厚さおよび樹脂層Bの厚さは同じであることが好ましい。これにより、プリント配線基板用積層体の反りを抑制し、寸法安定性をさらに向上できる。
【0151】
2.基材層
本実施態様における基材層は、上記の樹脂層Aおよび樹脂層Bの間に配置され、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する部材である。以下、基材層がポリスチレンを含有する場合および変性ポリイミドを含有する場合に分けて説明する。
【0152】
(1)ポリスチレンを含有する基材層
本実施態様において、基材層がポリスチレンを含有する場合、基材層の28GHzにおける誘電率は、4.0以下が好ましく、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよい。また、基材層の28GHzにおける誘電正接は、0.01以下が好ましく、0.005以下であってもよく、0.001以下であってもよい。基材層の誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、樹脂部材が基材層を有する場合においても、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0153】
ここで、誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。誘電率および誘電正接の測定方法は、上記第1実施態様における誘電率および誘電正接の測定方法と同様である。
【0154】
基材層に用いられるポリスチレンは、上記の誘電特性を満たすものであれば特に限定されない。中でも、ポリスチレンは、シンジオタクチックポリスチレンであることが好ましい。シンジオタクチックポリスチレン(syndiotactic polystyrene)は、いわゆるシンジオタクチック構造を有するスチレンポリマーである。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、すなわち、炭素-炭素結合から形成される主鎖に対して、側鎖であるフェニル基または置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を意味する。
【0155】
シンジオタクチックポリスチレンのタクティシティー(立体規則性)は、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量する。13C-NMR法により測定されるシンジオタクチックポリスチレンのタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば、2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。
【0156】
シンジオタクチックポリスチレンは、ラセミダイアッドで75%以上、中でも85%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレンポリマーであることが好ましい。また、シンジオタクチックポリスチレンは、ラセミトリアッドで60%以上、中でも75%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレンポリマーであることも好ましい。また、シンジオタクチックポリスチレンは、ラセミペンタッドで30%以上、中でも50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレンポリマーであることが好ましい。
【0157】
シンジオタクチックポリスチレンとしてのスチレンポリマーの種類としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体、これらの混合物、またはこれらを主成分とする共重合体等が挙げられる。ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)等が挙げられる。ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0158】
シンジオタクチックポリスチレンの重量平均分子量は、例えば、好ましくは10,000以上3,000,000以下であり、より好ましくは30,000以上1,500,000以下であり、さらに好ましくは50,000以上500,000以下である。
【0159】
シンジオタクチックポリスチレンのガラス転移点は、例えば、好ましくは60℃以上140℃以下であり、より好ましくは70℃以上130℃以下である。シンジオタクチックポリスチレンの融点は、例えば、好ましくは200℃以上320℃以下であり、より好ましくは220℃以上280℃以下である。シンジオタクチックポリスチレンのガラス転移点および融点は、JIS K7121:2012に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定する。
【0160】
基材層は、シンジオタクチックポリスチレン以外に、他のポリマーを含有してもよい。
【0161】
基材層は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0162】
基材層は、二軸延伸ポリスチレンフィルム(OPS)であることが好ましい。二軸延伸を行うことにより、MD方向およびTD方向における、機械的強度や熱収縮率のバランスに優れる基材層を得ることができる。また、二軸延伸を行うことで、耐熱性を高めることができる。
【0163】
シンジオタクチックポリスチレンを含有する基材層は、市販品を用いてもよい。例えば、倉敷紡績社製の「Oidys」を用いることができる。
【0164】
基材層の厚さは、ポリスチレンの種類に応じて適宜選択されるが、例えば10μm以上80μm以下が好ましく、20μm以上60μm以下であってもよく、25μm以上50μm以下であってもよい。基材層の厚さが上記範囲内であれば、樹脂部材全体の誘電特性を良くすることができる。また、基材層の厚さが薄すぎると、寸法安定性向上の効果が十分に得られない可能性がある。
【0165】
基材層がポリスチレンを含有する場合、樹脂層Aおよび樹脂層Bは基材層に直に接していることが好ましい。
【0166】
(2)変性ポリイミドを含有する基材層
本実施態様において、基材層が変性ポリイミドを含有する場合、基材層の28GHzにおける誘電率は、4.0以下が好ましく、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよい。また、基材層の28GHzにおける誘電正接は、0.05以下が好ましく、0.01以下であってもよく、0.005以下であってもよい。基材層の誘電率および誘電正接が上記範囲であれば、樹脂部材が基材層を有する場合においても、第5世代移動通信システムに対応可能な誘電特性を得ることができる。
【0167】
ここで、誘電率および誘電正接は、23℃、28GHzにおける誘電率および誘電正接である。誘電率および誘電正接の測定方法は、上記第1実施態様における誘電率および誘電正接の測定方法と同様である。
【0168】
基材層に用いられる変性ポリイミドは、上記の誘電特性を満たすものであれば特に限定されない。変性ポリイミドは、モディファイドポリイミド(MPI)とも称される。
【0169】
変性ポリイミドを含有する基材層は、市販品を用いてもよい。例えば、PI Advanced Materials社製の「GF」、東レ・デュポン社製の「カプトン」を用いることができる。
【0170】
基材層の厚さは、変性ポリイミドの種類に応じて適宜選択されるが、例えば1μm以上が好ましく、3μm以上であってもよく、4μm以上であってもよい。また、基材層の厚さは、例えば50μm以下が好ましく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。具体的には、基材層の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下であってもよく、4μm以上25μm以下であってもよい。基材層の厚さが上記範囲内であれば、樹脂部材全体の誘電特性を良くすることができる。一方、基材層の厚さが薄すぎると、寸法安定性向上の効果が十分に得られない可能性がある。
【0171】
基材層が変性ポリイミドを含有する場合、樹脂層Aおよび樹脂層Bは基材層に直に接していることが好ましい。
【0172】
3.金属箔
金属箔については、上記第1実施態様と同様である。
【0173】
4.プリント配線基板用積層体
プリント配線基板用積層体のその他の点については、上記第1実施態様と同様である。
【0174】
5.プリント配線基板用積層体の製造方法
本実施態様のプリント配線基板用積層体の製造方法は、特に限定されないが、金属箔と樹脂層Aと基材層と樹脂層Bとを積層する、あるいは、金属箔と樹脂層Aと基材層と樹脂層Bと金属箔とを積層する積層工程を有する製造方法が挙げられる。
【0175】
金属箔と樹脂層Aと基材層と樹脂層Bとを積層する方法としては、例えば、未硬化状態の硬化性樹脂を含有する樹脂フィルムAおよび樹脂フィルムBを準備し、金属箔、樹脂フィルムA、基材層および樹脂フィルムBの順に配置し、その後、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる方法や、基材層の両面に未硬化状態の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜Aおよび塗膜Bを形成し、塗膜A上に金属箔を配置し、その後、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる方法が挙げられる。後者の方法では、金属箔上に硬化性樹脂組成物を塗工してもよい。
【0176】
また、金属箔と樹脂層Aと基材層と樹脂層Bと金属箔とを積層する方法としては、例えば、未硬化状態の硬化性樹脂を含有する樹脂フィルムAおよび樹脂フィルムBを準備し、金属箔、樹脂フィルムA、基材層、樹脂フィルムBおよび金属箔の順に配置し、その後、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる方法や、基材層の両面に未硬化状態の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜Aおよび塗膜Bを形成し、塗膜A上および塗膜B上に金属箔を配置し、その後、未硬化状態の硬化性樹脂を硬化または半硬化させる方法が挙げられる。後者の方法では、金属箔上に硬化性樹脂組成物を塗工してもよい。
【0177】
樹脂フィルムの作製方法、硬化性樹脂組成物の塗工方法、および硬化性樹脂の硬化方法については、上記第1実施態様に記載の方法と同様である。
【0178】
また、その他の工程については、上記第1実施態様に記載の工程と同様である。
【0179】
B.多層プリント配線基板用接合体
本開示における多層プリント配線基板用接合体は、3つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0180】
I.多層プリント配線基板用接合体の第1実施態様
本開示における多層プリント配線基板用接合体の第1実施態様は、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂層の100℃における損失正接が0.4未満であり、上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、上記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層を介して接合されている。
【0181】
図8は、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体を例示する概略断面図である。
図8に示す多層プリント配線基板用接合体100においては、第1樹脂層1aの両面にパターン状の金属箔2pを有する第1プリント配線基板用積層体10Aと、第2樹脂層1bの一方の面にパターン状の金属箔2pを有する第2プリント配線基板用積層体10Bとが、第2プリント配線基板用積層体10Bの第2樹脂層1bを介して接合されている。
【0182】
図9(a)~(b)は、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体の製造方法を例示
する工程図である。
図9(a)~(b)においては、第1プリント配線基板用積層体10Aの金属箔をパターニングし、かつ、第2プリント配線基板用積層体10Bの金属箔をパターニングした後に、第1プリント配線基板用積層体10Aおよび第2プリント配線基板用積層体10Bを積層している。また、
図3(a)~(c)は、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体の製造方法を例示する工程図である。
図3(a)~(c)においては、第1プリント配線基板用積層体10Bの金属箔をパターニングし、第1プリント配線基板用積層体10Aおよび第2プリント配線基板用積層体10Bを積層した後に、第2プリント配線基板用積層体10Bの金属箔をパターニングしている。
【0183】
本実施態様においては、第1プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第1実施態様を用いるため、誘電特性に優れており、第5世代移動通信システムに対応可能な多層プリント配線基板用接合体とすることができる。また、第1プリント配線基板用積層体は、加工後の平坦性に優れるため、第1プリント配線基板用積層体および第2プリント配線基板用積層体を安定して積層することができる。
【0184】
ここで、プリント配線基板用積層体の基材が、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂等の低誘電樹脂材料(特に、熱可塑性樹脂)を含有する基材である場合、複数のプリント配線基板用積層体を積層して多層プリント配線基板を製造する際には、熱溶着によりプリント配線基板用積層体同士を接合する。この熱溶着の際には、通常、400℃程度の高温が必要となる。そのため、基材に含まれる熱可塑性樹脂が溶融し、パターン状の金属箔の位置ずれが生じる場合があった。
【0185】
これに対し、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体によれば、第1プリント配線基板用積層体の第1樹脂層および第2プリント配線基板用積層体の第2樹脂層が硬化性樹脂を含有することにより、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合でも、比較的低温(例えば200℃以下)でプリント配線基板用積層体同士を接合することができる。また、プリント配線基板用積層体同士の接合に際して、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層および第2樹脂層の流動性は、従来のような熱可塑性樹脂を含有する基材の流動性よりも低いことから、パターン状の金属箔の位置ずれを抑制することができる。
【0186】
また、従来、複数のプリント配線基板用積層体を積層して多層プリント配線基板用接合体を製造する場合、プリント配線基板用積層体同士はボンディングシートを介して接合される。これに対し、本実施態様においては、上述したように、接合前の第1樹脂層および第2樹脂層が半硬化状態である場合には接着性を有するため、第1樹脂層および第2樹脂層によりプリント配線基板用積層体同士を接合できる。そのため、ボンディングシートが不要である。よって、多層プリント配線基板用接合体の薄型化が可能である。また、多層プリント配線基板用接合体の製造における工程数を減らし、製造コストを削減できる。
【0187】
第1プリント配線基板用積層体を構成する第1樹脂層および金属箔は、上述の「A.プリント配線基板用積層体 I.プリント配線基板用積層体の第1実施態様」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0188】
また、第1プリント配線基板用積層体と同様に、第2プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第1実施態様を用いることが好ましい。また、第2プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第2実施態様を用いてもよく、上述のプリント配線基板用積層体の第3実施態様を用いてもよい。
【0189】
本実施態様の多層プリント配線基板用接合体において、第1樹脂層および第2樹脂層は、硬化状態である。
【0190】
本実施態様の多層プリント配線基板用接合体において、第1プリント配線基板用積層体は、通常1つであり、この第1プリント配線基板用積層体の片面もしくは両面に1つ以上の第2プリント配線基板用積層体が配置される。
【0191】
II.多層プリント配線基板用接合体の第2実施態様
本開示における多層プリント配線基板用接合体の第2実施態様は、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記繊維部材を含む上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、上記繊維部材を含む上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、第1プリント配線基板用積層体と、硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、上記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層を介して接合されている。
【0192】
図10(a)は、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体を例示する概略断面図である。
図10(a)に示す多層プリント配線基板用接合体100においては、第1樹脂層1aの両面にパターン状の金属箔2pを有する第1プリント配線基板用積層体10Aと、第2樹脂層1bの一方の面にパターン状の金属箔2pを有する第2プリント配線基板用積層体10Bとが、第2プリント配線基板用積層体10Bの第2樹脂層1bを介して接合されている。また、第1プリント配線基板用積層体10Aにおいて、第1樹脂層1aは繊維部材3aを含んでいる。
【0193】
本実施態様においては、第1プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第2実施態様を用いるため、誘電特性に優れており、第5世代移動通信システムに対応可能な多層プリント配線基板用接合体とすることができる。また、第1プリント配線基板用積層体は、寸法安定性および加工後の平坦性に優れるため、第1プリント配線基板用積層体および第2プリント配線基板用積層体を安定して積層することができる。
【0194】
また、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体によれば、第1プリント配線基板用積層体の第1樹脂層および第2プリント配線基板用積層体の第2樹脂層が硬化性樹脂を含有することにより、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合でも、比較的低温(例えば200℃以下)でプリント配線基板用積層体同士を接合することができる。また、プリント配線基板用積層体同士の接合に際して、硬化性樹脂を含有する第1樹脂層および第2樹脂層の流動性は、従来のような熱可塑性樹脂を含有する基材の流動性よりも低いことから、パターン状の金属箔の位置ずれを抑制することができる。
【0195】
また、本実施態様においては、上記第1実施態様の項に記載したように、接合前の第1樹脂層および第2樹脂層が半硬化状態である場合には接着性を有するため、第1樹脂層および第2樹脂層によりプリント配線基板用積層体同士を接合できる。そのため、ボンディングシートが不要である。よって、多層プリント配線基板用接合体の薄型化が可能である。また、多層プリント配線基板用接合体の製造における工程数を減らし、製造コストを削減できる。
【0196】
第1プリント配線基板用積層体を構成する第1樹脂層および金属箔は、上述の「A.プリント配線基板用積層体 II.プリント配線基板用積層体の第2実施態様」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0197】
また、第2プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第1実施態様を用いてもよく、上述のプリント配線基板用積層体の第2実施態様を用いてもよい。例えば
図10(b)は、第2プリント配線基板用積層体10Bとして、上記プリント配線基板用積層体の第2実施態様を用いる例であり、第2プリント配線基板用積層体10Bの第2樹脂層1bは繊維部材3bを含んでいる。また、第2プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第3実施態様を用いてもよい。
【0198】
本実施態様の多層プリント配線基板用接合体において、第1樹脂層および第2樹脂層は、硬化状態である。
【0199】
本実施態様の多層プリント配線基板用接合体において、第1プリント配線基板用積層体は、通常1つであり、この第1プリント配線基板用積層体の片面もしくは両面に1つ以上の第2プリント配線基板用積層体が配置される。
【0200】
III.多層プリント配線基板用接合体の第3実施態様
本開示における多層プリント配線基板用接合体の第3実施態様は、第1樹脂部材と、上記第1樹脂部材の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂部材は、硬化性樹脂を含有する樹脂層A1と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第1基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B1とをこの順に有し、上記樹脂層A1および上記樹脂層B1の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、上記樹脂層A1および上記樹脂層B1の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、第2樹脂部材と、上記第2樹脂部材の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第2樹脂部材は、上記金属箔側から順に、硬化性樹脂を含有する樹脂層A2と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第2基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B2とをこの順に有する、第2プリント配線基板用積層体と、を有し、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂部材側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂部材の上記樹脂層B2を介して接合されている。
【0201】
図11は、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体を例示する概略断面図である。
図11に示すように、第1プリント配線基板用積層体10Aは、第1樹脂部材30aと、第1樹脂部材30aの両面に配置されたパターン状の金属箔2pとを有する。第1樹脂部材30aは、硬化性樹脂を含有する樹脂層A1 31aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第1基材層32aと、硬化性樹脂を含有する樹脂層B1 33aとをこの順に有する。また、第2プリント配線基板用積層体10Bは、第2樹脂部材30bと、第2樹脂部材30bの一方の面に配置されたパターン状の金属箔2pとを有する。第2樹脂部材30bは、金属箔2p側から順に、硬化性樹脂を含有する樹脂層A2 31bと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第2基材層32bと、硬化性樹脂を含有する樹脂層B1 33bとをこの順に有する。多層プリント配線基板用接合体100においては、第1プリント配線基板用積層体10Aと、第2プリント配線基板用積層体10Bとが、第2プリント配線基板用積層体10Bの第2樹脂部材30bの樹脂層B2 33bを介して接合されている。
【0202】
本実施態様においては、第1プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第3実施態様を用いるため、誘電特性に優れており、第5世代移動通信システムに対応可能な多層プリント配線基板用接合体とすることができる。また、第1プリント配線基板用積層体は、寸法安定性および加工後の平坦性に優れるため、第1プリント配線基板用積層体および第2プリント配線基板用積層体を安定して積層することができる。
【0203】
また、本実施態様の多層プリント配線基板用接合体によれば、第1プリント配線基板用積層体の樹脂層A1および樹脂層B1ならびに第2プリント配線基板用積層体の樹脂層A2および樹脂層B2が硬化性樹脂を含有することにより、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合でも、比較的低温(例えば200℃以下)でプリント配線基板用積層体同士を接合することができる。また、プリント配線基板用積層体同士の接合に際して、硬化性樹脂を含有する樹脂層A1、樹脂層B1、樹脂層A2および樹脂層B2の流動性は、従来のような熱可塑性樹脂を含有する基材の流動性よりも低いことから、パターン状の金属箔の位置ずれを抑制することができる。
【0204】
また、本実施態様においては、上記第1実施態様の項に記載したように、接合前の樹脂層A1、樹脂層B1、樹脂層A2および樹脂層B2が半硬化状態である場合には接着性を有するため、例えば樹脂層A1および樹脂層B2によりプリント配線基板用積層体同士を接合できる。そのため、ボンディングシートが不要である。よって、多層プリント配線基板用接合体の薄型化が可能である。また、多層プリント配線基板用接合体の製造における工程数を減らし、製造コストを削減できる。
【0205】
第1プリント配線基板用積層体を構成する第1樹脂部材および金属箔は、上述の「A.プリント配線基板用積層体 III.プリント配線基板用積層体の第3実施態様」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0206】
また、第2プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第3実施態様を用いることが好ましい。また、第2プリント配線基板用積層体として、上述のプリント配線基板用積層体の第1実施態様を用いてもよく、上述のプリント配線基板用積層体の第2実施態様を用いてもよい。
【0207】
本実施態様の多層プリント配線基板用接合体において、樹脂層A1、樹脂層B1、樹脂層A2および樹脂層B2は、硬化状態である。
【0208】
本実施態様の多層プリント配線基板用接合体において、第1プリント配線基板用積層体は、通常1つであり、この第1プリント配線基板用積層体の片面もしくは両面に1つ以上の第2プリント配線基板用積層体が配置される。
【0209】
C.プリント配線基板用樹脂フィルム
本開示におけるプリント配線基板用樹脂フィルムは、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0210】
I.プリント配線基板用樹脂フィルムの第1実施態様
本開示におけるプリント配線基板用樹脂フィルムの第1実施態様は、硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態であり、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である。
【0211】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、上述のプリント配線基板用積層体の第1実施態様と同様の効果を奏する。
【0212】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、上述のプリント配線基板用積層体の第1実施態様における樹脂層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0213】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態である。
【0214】
本実施態様において、プリント配線基板用樹脂フィルムの一方の面にはセパレータが配置されていてもよい。
【0215】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムの用途は、特に限定されないが、高周帯域の周波数に対応する優れた電気特性を有するため、特に、第5世代移動通信システムに用いられるプリント配線基板を作製するための樹脂フィルムとして好適に使用される。また、本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、例えば、FPC(フレキシブルプリント配線基板)の保護フィルムや、FFC(フレキシブルフラットケーブル)の保護フィルムにも用いることができる。なお、これらの保護フィルムは、カバーレイフィルムとも称される。さらに、本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、細線同軸ケーブルに代えて利用するプリント配線基板を作製するための樹脂フィルムにも用いることができる。
【0216】
II.プリント配線基板用樹脂フィルムの第2実施態様
本開示におけるプリント配線基板用樹脂フィルムの第2実施態様は、硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態または半硬化状態であり、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である。
【0217】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、上述のプリント配線基板用積層体の第2実施態様と同様の効果を奏する。
【0218】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、上述のプリント配線基板用積層体の第2実施態様における樹脂層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0219】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態または半硬化状態である。「半硬化」については、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載した内容と同様である。
【0220】
本実施態様のプリント配線基板用樹脂フィルムの用途は、上記プリント配線基板用樹脂フィルムの第1実施態様の用途と同様である。
【0221】
D.プリント配線基板用樹脂部材
本開示におけるプリント配線基板用樹脂部材は、硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有するプリント配線基板用樹脂部材であって、上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、未硬化状態または半硬化状態であり、上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である。
【0222】
本開示におけるプリント配線基板用樹脂部材は、上述のプリント配線基板用積層体の第3実施態様と同様の効果を奏する。
【0223】
本開示におけるプリント配線基板用樹脂部材は、上述のプリント配線基板用積層体の第3実施態様における樹脂部材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0224】
本開示において、樹脂層Aおよび樹脂層Bは、未硬化状態または半硬化状態である。「半硬化」については、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載した内容と同様である。
【0225】
本開示におけるプリント配線基板用樹脂部材の用途は、上述のプリント配線基板用樹脂フィルムの第1実施態様の用途と同様である。
【0226】
E.プリント配線基板用樹脂組成物
本開示におけるプリント配線基板用樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、未硬化状態であり、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である。
【0227】
本開示におけるプリント配線基板用樹脂組成物は、上述のプリント配線基板用積層体と同様の効果を奏する。
【0228】
本開示におけるプリント配線基板用樹脂組成物は、上述のプリント配線基板用積層体における樹脂層を形成するための樹脂組成物である。樹脂組成物の組成は、上記樹脂層の組成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。プリント配線基板用樹脂組成物は、さらに溶媒を含有していてもよい。
【0229】
本開示におけるプリント配線基板用樹脂組成物は、未硬化状態である。また、プリント配線基板用樹脂組成物は、液状であってもよく、シート状であってもよい。
【0230】
本開示において、プリント配線基板用樹脂組成物の損失正接、誘電率、誘電正接を測定するに際しては、基板上にプリント配線基板用樹脂組成物を塗布し、硬化させて、硬化樹脂層を形成し、硬化樹脂層について測定を行う。この際、硬化樹脂層の厚さは、特に限定されない。
【0231】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0232】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0233】
[実施例1]
熱硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:ポリプロピレン系樹脂、誘電率2.30、誘電正接0.00421、厚さ50μm)の両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0234】
[実施例2]
熱硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:スチレン系樹脂、誘電率2.22、誘電正接0.00134、厚さ50μm)の両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0235】
[比較例1]
熱硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:スチレン系樹脂、誘電率2.35、誘電正接0.00199、厚さ50μm)の両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0236】
[評価1]
(1)損失正接
実施例および比較例で用いた未硬化状態の樹脂フィルムを、熱プレス(180℃、1MPa、60分)で熱硬化した。その後、5mm×20mmに切り出し、硬化状態の樹脂フィルムのサンプルを作製した。硬化状態の樹脂フィルムについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、損失正接を測定した。
【0237】
(2)誘電率および誘電正接
上記と同様に、硬化状態の樹脂フィルムのサンプルを作製した。硬化状態の樹脂フィルムについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、誘電率および誘電正接を測定した。
【0238】
(3)金属箔変形量
上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、金属箔変形量を測定した。
【0239】
(4)伝送損失
プリント配線基板用積層体における一方の面の銅箔をパターニングし、配線長さ100mm、インピーダンス50Ω回路となるマイクロストリップラインを作製した。測定周波数を1GHz~40GHzとし、伝送損失S21パラメータをネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製 E8363B PNAシリーズ)で測定した。また、下記評価基準に従って、評価した。
【0240】
<評価基準>
A:伝送損失が少なかった。
B:伝送損失が実使用上問題ないレベルであった。
C:伝送損失が大きく、実使用上問題があった。
【0241】
【0242】
【0243】
実施例1~2では、硬化状態の樹脂フィルムの損失正接が所定の範囲であり小さいため、金属箔変形量が少なかった。これに対し、比較例1では、硬化状態の樹脂フィルムの損失正接が所定の範囲を超えているため、金属箔変形量が多くなった。ここで、粘弾性においては、損失正接が0に近いほど弾性体に近く、損失正接が大きいほど粘性体に近いといえる。よって、硬化状態の樹脂フィルムの損失正接が大きいと、粘性が高くなるため、加工時に変形しやすくなり、一方で、硬化状態の樹脂フィルムの損失正接が小さいと、弾性が低くなるため、加工時に変形しにくくなると推量される。
【0244】
また、実施例1~2では、伝送損失が抑制されていた。
【0245】
[実施例3]
ガラスクロス(ユニチカ社製「L01Z」、厚さ15μm)の両面に、熱硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:ポリプロピレン系樹脂、誘電率2.30、誘電正接0.00421、厚さ50μm)を積層し、さらにその両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0246】
[実施例4]
まず、ガラスクロス(ユニチカ社製「LU1017:L01Z」、厚さ15μm)を、シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン)の1%水溶液に浸し、120℃で5分間乾燥させて、表面処理を行った。次に、表面処理されたガラスクロスの両面に、熱硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:ポリプロピレン系樹脂、誘電率2.30、誘電正接0.00421、厚さ50μm)を積層し、さらにその両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0247】
[実施例5]
基材層として、ポリスチレンフィルム(倉敷紡績社製「Oydis」、厚さ50μm)を用いた。基材層の両面に、熱硬化性樹脂および低誘電樹脂を含有する、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:ポリプロピレン系樹脂、誘電率2.30、誘電正接0.00421、厚さ25μm)を積層し、さらにその両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0248】
[実施例6]
基材層として、変性ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「50LK」、厚さ25μm)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0249】
[評価2]
(1)損失正接
実施例3で用いた、未硬化状態の樹脂フィルムとガラスクロスと未硬化状態の樹脂フィルムとを有する積層フィルムを、熱プレス(180℃、1MPa、60分)で熱硬化した。その後、5mm×20mmに切り出し、硬化状態の積層フィルムのサンプルを作製した。硬化状態の積層フィルムについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、損失正接を測定した。
【0250】
(2)誘電率および誘電正接
実施例3、4については、上記と同様に、硬化状態の積層フィルムのサンプルを作製した。実施例5、6については、未硬化状態の樹脂フィルムと基材層と未硬化状態の樹脂フィルムとを有する積層フィルムを、熱プレス(180℃、1MPa、60分)で熱硬化した。その後、5mm×20mmに切り出し、硬化状態の積層フィルムのサンプルを作製した。硬化状態の積層フィルムについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、誘電率および誘電正接を測定した。
【0251】
(3)伝送損失
実施例3~6のプリント配線基板用積層体における一方の面の銅箔をパターニングし、配線長さ100mm、インピーダンス50Ω回路となるマイクロストリップラインを作製した。測定周波数を40GHzとし、伝送損失S21パラメータをネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製 E8363B PNAシリーズ)で測定した。また、上記評価1と同様の評価基準に従って、評価した。
【0252】
(4)寸法安定性
まず、実施例1、3~6のプリント配線基板用積層体から、大きさ240mm×300mmの試料を切り取った。次いで、試料の両側の銅箔の面をそれぞれA面、B面とし、A面およびB面の四隅に、
図12に示すように標点パターンを印刷した。次に、300mm以上の直接距離を0.01mmの値まで読み取ることのできる光学装置付き測長機を用いて、初期の4か所の標点間の距離を測定した。
【0253】
次に、試料のB面を粘着テープで覆い、43±5℃のエッチング液で試料のA面の銅箔をエッチングし、よく水洗して、乾燥した。その後、エッチング処理後の4か所の標点間の距離を測定した。そして、エッチング処理後の寸法安定性として、下記式(1)、(2)により、MD方向の寸法変化率ΔLm(%)、TD方向の寸法変化率ΔLt(%)を算出した。
【0254】
次に、試料のB面から粘着テープを剥がし、43±5℃のエッチング液で試料のB面の銅箔をエッチングし、よく水洗して、乾燥した。次いで、両側の銅箔がエッチングされた試料を、150±3℃で30分間保った後、取り出して、20±4時間放置した。その後、熱処理後の4か所の標点間の距離を測定した。そして、熱処理後の寸法安定性として、下記式(1)、(2)により、MD方向の寸法変化率ΔLm(%)、TD方向の寸法変化率ΔLt(%)を算出した。
【0255】
ΔLm=[{(A2-A1)/A1}+{(D2-D1)/D1}]/2×100 (1)
ΔLt=[{(C2-C1)/C1}+{(B2-B1)/B1}]/2×100 (2)
上記式(1)、(2)において、
A1:a点とb点の処理前の距離(mm)
A2:a点とb点の処理後の距離(mm)
B1:b点とd点の処理前の距離(mm)
B2:b点とd点の処理後の距離(mm)
C1:c点とa点の処理前の距離(mm)
C2:c点とa点の処理後の距離(mm)
D1:d点とc点の処理前の距離(mm)
D2:d点とc点の処理後の距離(mm)
である。
【0256】
【0257】
【0258】
実施例3~4では、樹脂層がガラスクロスを含むため、寸法安定性が良好であった。また、実施例5~6では、樹脂部材が基材層を含むため、寸法安定性が良好であった。また、実施例3~6では、実施例1と同様に、伝送損失が抑制されていた。
【0259】
[参考例1~3]
実施例4において、ガラスクロスの厚さを11μmまたは20μmとしたこと以外は、実施例4と同様にしてプリント配線基板用積層体を作製した。
【0260】
[評価3]
表面処理されたガラスクロスについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、誘電率および誘電正接を測定した。
【0261】
また、未硬化状態の樹脂フィルムと表面処理されたガラスクロスと未硬化状態の樹脂フィルムとを有する積層フィルムを、熱プレス(180℃、1MPa、60分)で熱硬化した。その後、5mm×20mmに切り出し、硬化状態の積層フィルムのサンプルを作製した。硬化状態の積層フィルムについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、損失正接を測定した。
【0262】
【0263】
実施例4、7、8の比較から、誘電特性を良くするには、ガラスクロスの厚さに好ましい範囲があることがわかった。
【0264】
[実施例9~11]
まず、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂および低誘電樹脂であるポリプロピレン系樹脂に、樹脂成分の総量100質量部に対して、シリカフィラー(AGC社製「HNP-20B」、平均粒子径:10μm)を1.15質量部添加し、超音波分散機にて10分間、分散させて、樹脂組成物を得た。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、上記樹脂組成物を塗布し、乾燥して、未硬化状態の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、低誘電樹脂:ポリプロピレン系樹脂、誘電率2.3、誘電正接0.00421、厚さ50μm)を作製した。
【0265】
ガラスクロス(ユニチカ社製「L01Z」、厚さ15μm)の両面に、上記未硬化状態の樹脂フィルムを積層し、さらにその両面に、銅箔(福田金属箔紛工業社製「CF-T9DA-SV-12」、厚さ12μm)を配置し、それらを熱圧着(180℃、1MPa、60分)で貼り合わせ、プリント配線基板用積層体を作製した。
【0266】
[評価4]
(1)誘電率および誘電正接
未硬化状態の樹脂フィルムとガラスクロスと未硬化状態の樹脂フィルムとを有する積層フィルムを、熱プレス(180℃、1MPa、60分)で熱硬化した。その後、5mm×20mmに切り出し、硬化状態の積層フィルムのサンプルを作製した。硬化状態の積層フィルムについて、上述の「A.プリント配線基板用積層体」に記載の方法により、誘電率および誘電正接を測定した。
【0267】
(2)伝送損失
実施例3~6と同様にして、伝送損失を測定した。また、上記評価1と同様の評価基準に従って、評価した。
【0268】
(3)寸法安定性
実施例3~6と同様にして、寸法変化率を求めた。
【0269】
【0270】
実施例9~11では、樹脂層がガラスクロスおよびフィラーを含むため、寸法安定性が良くなる傾向があった。また、実施例9~10では、実施例1と同様に、伝送損失が抑制されていた。
【0271】
本開示は、以下の[1]~[16]を提供する。
[1]
硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、
上記樹脂層は、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体。
[2]
上記樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含む、[1]に記載のプリント配線基板用積層体。
[3]
硬化性樹脂を含有する樹脂層と、上記樹脂層の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、
上記樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、
上記繊維部材を含む上記樹脂層は、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、プリント配線基板用積層体。
[4]
上記繊維部材の厚さが、上記樹脂層の厚さの1/100以上1/2以下である、[2]または[3]に記載のプリント配線基板用積層体。
[5]
樹脂部材と、上記樹脂部材の少なくとも一方の面に配置された金属箔と、を有し、
上記樹脂部材が、硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有し、
上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、硬化状態において、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用積層体。
[6]
上記樹脂層は、半硬化状態または硬化状態である、[1]から[5]までのいずれかに記載のプリント配線基板用積層体。
[7]
上記金属箔が、銅箔である、[1]から[6]までのいずれかに記載のプリント配線基板用積層体。
[8]
上記金属箔がパターン状である、[1]から[7]までのいずれかに記載のプリント配線基板用積層体。
[9]
前記樹脂層が、充填剤を含有する、[1]から[8]までのいずれかに記載のプリント配線基板用積層体。
[10]
硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂層の100℃における損失正接が0.4未満であり、上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、
硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、上記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、
上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体。
[11]
上記第1樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含む、[10]に記載の多層プリント配線基板用接合体。
[12]
硬化性樹脂を含有する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂層は、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、上記繊維部材を含む上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、上記繊維部材を含む上記第1樹脂層の28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、第1プリント配線基板用積層体と、
硬化性樹脂を含有する第2樹脂層と、上記第2樹脂層の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有する第2プリント配線基板用積層体と、を有し、
上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂層を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体。
[13]
第1樹脂部材と、上記第1樹脂部材の両面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第1樹脂部材は、硬化性樹脂を含有する樹脂層A1と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第1基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B1とをこの順に有し、上記樹脂層A1および上記樹脂層B1の28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、上記樹脂層A1および上記樹脂層B1の28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、第1プリント配線基板用積層体と、
第2樹脂部材と、上記第2樹脂部材の一方の面に配置されたパターン状の金属箔と、を有し、上記第2樹脂部材は、上記金属箔側から順に、硬化性樹脂を含有する樹脂層A2と、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する第2基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層B2とをこの順に有する、第2プリント配線基板用積層体と、を有し、
上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂部材側の面が、上記第1プリント配線基板用積層体側に配置され、上記第1プリント配線基板用積層体と上記第2プリント配線基板用積層体とが、上記第2プリント配線基板用積層体の上記第2樹脂部材の上記樹脂層B2を介して接合されている、多層プリント配線基板用接合体。
[14]
硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、
上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態であり、
硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用樹脂フィルム。
[15]
硬化性樹脂を含有するプリント配線基板用樹脂フィルムであって、
上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、絶縁性繊維および上記硬化性樹脂を含有する繊維部材を含み、
上記プリント配線基板用樹脂フィルムは、未硬化状態または半硬化状態であり、
硬化状態において、28GHzにおける誘電率が5.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.1以下である、プリント配線基板用樹脂フィルム。
[16]
硬化性樹脂を含有する樹脂層Aと、ポリスチレンまたは変性ポリイミドを含有する基材層と、硬化性樹脂を含有する樹脂層Bとをこの順に有するプリント配線基板用樹脂部材であって、
上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、未硬化状態または半硬化状態であり、
上記樹脂層Aおよび上記樹脂層Bは、硬化状態において、100℃における損失正接が0.4未満であり、28GHzにおける誘電率が4.0以下であり、28GHzにおける誘電正接が0.01以下である、プリント配線基板用樹脂部材。