(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152959
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】シート及び排泄物収容装具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/445 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61F5/445
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054052
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022055089
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】安田 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】奥山 亘
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC31
4C098CD01
4C098CE03
4C098CE14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】衣服着用時、視認しにくいシート及び排泄物収容装具を提供する。
【解決手段】ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具10に取り付けられるシート4であって、シートの色が、次の(1)から(3)のいずれか一つに含まれる、シート。(1)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。(2)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+9.0以上+17.0以下であり、b*の値が+4.0以上+12.0以下である。(3)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+0.5以上+8.5以下であり、b*の値が+12.5以上+20.5以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色が、次の(1)から(6)のいずれか一つに含まれる、シート。
(1)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。
(2)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上75.0以下であり、a*の値が+4.7以上+17.0以下であり、b*の値が+1.0以上+12.0以下である。
(3)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+2.5以上+4.6以下であり、b*の値が+8.0以上+20.5以下である。
(4)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が49.0以上69.0以下であり、a*の値が-4.9以上+2.5以下であり、b*の値が-4.4以上+1.4以下である。
(5)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が45.0以上59.0以下であり、a*の値が-5.0以上+2.5以下であり、b*の値が+1.5以上+5.0以下である。
(6)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が53.0以上73.0以下であり、a*の値が+3.0以上+9.3以下であり、b*の値が-9.0以上-3.0以下である。
【請求項2】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色が、次の(1)から(3)のいずれか一つに含まれる、シート。
(1)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。
(2)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+9.0以上+17.0以下であり、b*の値が+4.0以上+12.0以下である。
(3)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+0.5以上+8.5以下であり、b*の値が+12.5以上+20.5以下である。
【請求項3】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が60.0以上75.0以下であり、a*の値が+3.0以上+8.7以下であり、b*の値が-2.5以上+4.5以下である、前記シート。
【請求項4】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が40.0以上59.0以下であり、a*の値が+0.1以上+8.1以下であり、b*の値が+5.5以上+12.4以下である、シート。
【請求項5】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が49.0以上69.0以下であり、a*の値が-4.9以上+2.5以下であり、b*のが-4.4以上+1.4以下である、シート。
【請求項6】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が45.0以上59.0以下であり、a*の値が-5.0以上+2.5以下であり、b*の値が+1.5以上+5.0以下である、シート。
【請求項7】
ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、
前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が53.0以上73.0以下であり、a*の値が+3.0以上+9.3以下であり、b*の値が-9.0以上-3.0以下である、シート。
【請求項8】
撥水性を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のシート。
【請求項9】
請求項8に記載のシートが取り付けられている、排泄物収容装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート及び排泄物収容装具に関し、特に、生体内又は生体表面からの排泄物、排泄液、ガス、滲出液、分泌液など(以下、これらを総称して「排泄物」という)が一時的に収容される排泄物収容装具及びそのシートに関する。
【背景技術】
【0002】
便や尿の排泄を自らの意志により制御できない場合や、消化器系又は泌尿器系器官の疾患がある場合に、外科的手術を行って腸管や尿管を体表まで導き体表面にストーマが造設されることがある。ストーマが造設された人は、ストーマからの排泄物を一時的に収容できるオストミー装具をストーマに装着する必要がある。また、その他の疾患で体表面に開孔や傷を有する人も、ドレナージなどにより排出された排泄物を処理するために、オストミー装具を開孔や傷の周囲に装着する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、外周シールに沿って接合されて老廃物を収容するキャビティを形成する第1のパウチ壁及び第2のパウチ壁と、内部に排泄物を受け入れるように第1のパウチ壁に設けられた入口とを備える結腸人工肛門、回腸人工肛門または人工膀胱に好適であるヒト排泄物収集バッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報第2013/181493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような装具は、使用者の皮膚表面と衣服との間に装着されるものであり、特許文献1に記載のバックでは、光の種類(太陽光又は室内灯など)や皮膚の色などの外的要因により、バックの輪郭が衣服を通して透けてしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は、衣服着用時、視認しにくいシート及び排泄物収容装具を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、前記シートの色が、次の(1)から(6)のいずれか一つに含まれる、シートを提供する。
(1)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。
(2)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上75.0以下であり、a*の値が+4.7以上+17.0以下であり、b*の値が+1.0以上+12.0以下である。
(3)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+2.5以上+4.6以下であり、b*の値が+8.0以上+20.5以下である。
(4)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が49.0以上69.0以下であり、a*の値が-4.9以上+2.5以下であり、b*の値が-4.4以上+1.4以下である。
(5)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が45.0以上59.0以下であり、a*の値が-5.0以上+2.5以下であり、b*の値が+1.5以上+5.0以下である。
(6)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が53.0以上73.0以下であり、a*の値が+3.0以上+9.3以下であり、b*の値が-9.0以上-3.0以下である。
また、本発明は、ストーマからの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、シートの色が、次の(1)から(3)のいずれか一つに含まれる、シートを提供する。
(1)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。
(2)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+9.0以上+17.0以下であり、b*の値が+4.0以上+12.0以下である。
(3)CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+0.5以上+8.5以下であり、b*の値が+12.5以上+20.5以下である。
また、前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が60.0以上75.0以下であり、a*の値が+3.0以上+8.7以下であり、b*の値が-2.5以上+4.5以下でありうる。
また、前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が40.0以上59.0以下であり、a*の値が+0.1以上+8.1以下であり、b*の値が+5.5以上+12.4以下でありうる。
また、前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が49.0以上69.0以下であり、a*の値が-4.9以上+2.5以下であり、b*のが-4.4以上+1.4以下でありうる。
また、前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が45.0以上+59.0以下であり、a*の値が-5.0以上+2.5以下であり、b*の値が+1.5以上+5.0以下でありうる。
また、前記シートの色について、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が53.0以上73.0以下であり、a*の値が+3.0以上+9.3以下であり、b*の値が-9.0以上-3.0以下でありうる。
シートは、撥水性を有していてよい。
また、本発明は、これらのシートが取り付けられている、排泄物収容装具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衣服着用時、視認しにくいシート及び排泄物収容装具を提供できる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る排泄物収容装具の構成例を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る排泄物収容装具の構成例を示す正面図である。
【
図3】本発明に係る排泄物収容装具の構成例を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る評価試験の様子を示す図である。
【
図5】本発明に係る評価試験の結果を示すグラフである。
【
図6】本発明に係る評価試験の結果を示すグラフである。
【
図7】本発明に係る評価試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されることはない。また、本発明は、下記の実施例及びその変形例のいずれかを組み合わせることができる。
【0011】
図面については、同一又は同等の要素又は部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
【0013】
<1.シート>
【0014】
本発明の第1実施形態に係るシートは、ストーマ等からの排泄物が収容される排泄物収容装具に取り付けられるシートであって、織布、編布、不織布、合成樹脂フィルム等の偏平なシート材料を用いることができ、特に、織布、編布、不織布等の繊維材料からなるシートを用いることが好ましい。シートに用いる材料としては、例えば、ポリエステル系材料、ポリオレフィン系材料、セルロース系材料(綿、ビスコースレーヨン、ポリノジック、銅アンモニアレーヨン、リヨセル等を含む)ポリウレタン系材料、アクリル系材料、ポリアミド系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリ塩化ビニリデン系材料、等が挙げられ、これらの材料を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。当該シートの排泄物収容装具への取り付け方については後述する。シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。当該シートの色は、好ましくは、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+19.0以上+25.0以下であり、b*の値が+27.0以上+33.0以下である。この色の見た目はくすんだオレンジ色である。
【0015】
ここで、CIE L*a*b*表示系は、1976年に国際照明委員会(CIE)により規定され、人間の視覚に近似するように設計されている。明度がL*、色相と彩度を示す色度がa*及びb*で表現される色を数値で示す手法である。
【0016】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+9.0以上+17.0以下であり、b*の値が+4.0以上+12.0以下であってもよい。当該シートの色は、好ましくは、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+10.0以上+16.0以下であり、b*の値が+5.0以上+11.0以下である。この色の見た目はくすんだピンク色である。
【0017】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+0.5以上+8.5以下であり、b*の値が+12.5以上+20.5以下であってもよい。当該シートの色は、好ましくは、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+1.5以上+7.5以下であり、b*の値が+13.5以上+19.5以下である。この色の見た目はカーキである。
【0018】
CIE L*a*b*表示系で規定されるL*、a*、及びb*の値がこの範囲に含まれる色を有するシートがパウチに取り付けられることにより、従来のパウチと比べて、衣服着用時、視認しにくくなる。さらに、本発明によれば、シートの色を規定することにより、パウチに収容された排泄物がパウチから透けて見えにくいという効果も生じる。その結果、他者の視線や排泄物の存在を過度に意識することによる使用者のストレスが軽減される。
【0019】
さらに、本発明の第1実施形態に係るシートは、撥水性を有していることが好ましい。これにより、例えば入浴後にパウチの表面の水分を拭き取る手間が削減される。例えばシリコン樹脂やフッ素樹脂などをシートの表面に塗布することにより、撥水性を有するシートを製造できる。
【0020】
<2.排泄物収容装具>
【0021】
次に、
図1~3を参照して、上記実施形態に係るシートが取り付けられている排泄物収容装具について説明する。
図1及び2は、本発明に係る排泄物収容装具の構成例を示す正面図である。
図3は、本発明に係る排泄物収容装具の構成例を示す側面図である。
【0022】
排泄物収容装具としては、例えば、オストミー装具、ドレナージパウチ、排便用バッグ、蓄尿用バッグ、採尿用バッグなどがあるが、排泄物を収容するパウチと、当該パウチを身体に固定する部材等から構成される。
【0023】
図1~3に示されるとおり、オストミー装具等の排泄物収容装具10は、排泄物を収容するパウチ1と、パウチ1を腹部等の身体(皮膚)に固定する粘着性の面板2と、を少なくとも備える。パウチ1は、収容された排泄物を排出する排出部3を備えることもできる。パウチ1は、身体に接する側に配される接皮側フィルム11と、外側(身体に接する側の反対側)に配される非接皮側フィルム12と、の2つの合成樹脂フィルムを外周に沿って接合することにより形成される。面板2は、接皮側フィルム11に溶着又は接着されることにより設けられる。
【0024】
本発明のシート4は、排泄物収容装具10を構成するパウチ1の少なくとも非接皮側フィルム12の外側に取り付けられる。これにより、従来のパウチと比べて、衣服着用時、パウチ1が視認しにくくなる。さらに、本発明によれば、パウチ1に収容された排泄物がパウチ1から透けて見えにくいという効果も生じる。その結果、他者の視線や排泄物の存在を過度に意識することによる使用者のストレスが軽減される。
【0025】
なお、本発明のシート4は、排泄物収容装具10を構成するパウチ1の接皮側フィルム11と非接皮側フィルム12との両方に取り付けられてもよく、また、排出部3を備えた所謂ドレナブルパウチの場合は、当該排出部3の外側までも、シート4で覆っていてもよい。この場合、使用者の動きにより、パウチが変形したとしても、透けにくさを維持することができる。さらに、本発明のシート4は、パウチ1の内側(すなわち、排泄物の収容部内)に取り付けられてもよい。また、本発明のシート4を合成樹脂フィルムで形成する場合は、排泄物収容装具10を構成するパウチ1のフィルムの一部として本発明のシート4を用いてもよい。
【0026】
<第2実施形態>
【0027】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に係るシートの色が異なる。なお、第2実施形態において、シートの色の相違以外の構成、第2実施形態に係るシートがとりつけられている排泄物収容装具については、上記第1実施形態と同様である。
【0028】
本発明の第2実施形態に係るシートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が60.0以上75.0以下であり、a*の値が+3.0以上+8.7以下であり、b*の値が-2.5以上+4.5以下である。この色の見た目はくすんだピンク色であり、第1実施形態において、くすんだピンク色を示す範囲の色より、暗い色味を有する。
【0029】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が40.0以上59.0以下であり、a*の値が+0.1以上+8.1以下であり、b*の値が+5.5以上+12.4以下である。この色の見た目は、カーキであり、第1実施形態において、カーキを示す範囲の色より、暗い色味を有する。
【0030】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が49.0以上69.0以下であり、a*の値が-4.9以上+2.5以下であり、b*の値が-4.4以上+1.4以下である。この色の見た目は、青味みのあるグレイである。
【0031】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が45.0以上+59.0以下であり、a*の値が-5.0以上+2.5以下であり、b*の値が+1.5以上+5.0以下である。この色の見た目は、茶色みのあるグレイである。
【0032】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が53.0以上73.0以下であり、a*の値が+3.0以上+9.3以下であり、b*の値が-9.0以上-3.0以下である。この色の見た目は、赤紫色みのあるグレイである。
【0033】
本発明の第2実施形態において、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*、a*、及びb*の値がこの範囲に含まれる色は、「ニュアンスカラー」に含まれる色である。ニュアンスカラーとは、一つの色と断定できない、複数の色味が混ざったような曖昧な中間色のことである。ニュアンスカラーは、鮮やかな原色や蛍光色に比べ、色の主張が控えられ、人の肌の色調に馴染みやすい。また、上記ニュアンスカラーは、健康意識の高まりやワークライフバランスを重視する社会的背景の中で需要がある色である。
【0034】
CIE L*a*b*表示系で規定されるL*、a*、及びb*の値がこの範囲に含まれる色を有するシートによって、第1の実施形態で得られる効果と同様の効果が得られる。
さらに、オストミー装具の着用者が、積極的に身に着けたい、見せたいと思える色として、上記ニュアンスカラーをオストミー装具の外観を示す色として適用することができる。
その結果、該着用者の心理的負担が低減され、該着用者が前向きな気持ちで生活することができる。
【0035】
<第3実施形態>
【0036】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態において、シートの色の特定以外の構成、第3実施形態に係るシートがとりつけられている排泄物収容装具については、上記第1実施形態及び上記第2実施形態と同様である。
【0037】
本発明の第3実施形態に係るシートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+18.0以上+26.0以下であり、b*の値が+26.0以上+34.0以下である。この色の見た目はくすんだオレンジ色である。
【0038】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上75.0以下であり、a*の値が+4.7以上+17.0以下であり、b*の値が+1.0以上+12.0以下である。この色の見た目は、異なる彩度を有する、くすんだピンクである。
【0039】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が50.0以上70.0以下であり、a*の値が+2.5以上+4.6以下であり、b*の値が+8.0以上+20.5以下である。この色の見た目は、異なる彩度を有する、カーキである。
【0040】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が49.0以上69.0以下であり、a*の値が-4.9以上+2.5以下であり、b*の値が-4.4以上+1.4以下である。この色の見た目は、青味みのあるグレイである。
【0041】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が45.0以上+59.0以下であり、a*の値が-5.0以上+2.5以下であり、b*の値が+1.5以上+5.0以下である。この色の見た目は、茶色みのあるグレイである。
【0042】
あるいは、当該シートの色は、CIE L*a*b*表示系で規定されるL*の値が53.0以上73.0以下であり、a*の値が+3.0以上+9.3以下であり、b*の値が-9.0以上-3.0以下である。この色の見た目は、赤紫色みのあるグレイである。
【0043】
CIE L*a*b*表示系で規定されるL*、a*、及びb*の値がこの範囲に含まれる色を有するシートがパウチに取り付けられることにより、従来のパウチと比べて、衣服着用時、視認しにくくなる。さらに、本発明によれば、シートの色を規定することにより、パウチに収容された排泄物がパウチから透けて見えにくいという効果も生じる。その結果、他者の視線や排泄物の存在を過度に意識することによる使用者のストレスが軽減される。
さらに、オストミー装具の着用者が積極的に身に着けたい、見せたいと思える色を、上記オストミー装具の外観を示す色として、自ら選択することができる。
その結果、該着用者の心理的負担を低減され、該着用者が前向きな気持ちで生活することができる。
【実施例0044】
以下に、実施例を挙げて本発明の効果について具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0045】
<試験例1>
評価対象であるパウチ及びシートと、白色の衣服を用いて、透けにくさを評価した。
【0046】
衣服は、市販のシャツ(抗ウイルスボタンダウンドレスシャツ、イトーヨーカドー製)である。衣類の素材は、綿が50%、ポリエステルが50%である。
【0047】
評価対象であるパウチは、市販のパウチである。
【0048】
評価対象であるシートは、本発明の効果を評価するために製造したシートである。このシートは、ポリエチレンテレフタレートからなるタフタ生地である。シートの重量は59~73g/平方メートルである。
【0049】
本試験において用いられる肌及び評価対象の色を、市販の分光測色計(CM-26d、コニカミノルタ製)を用いてSCE(正反射光除去)方式で測定した。測定径はΦ8mmである。分光測色計に付属の白色プレートの上に評価対象を置き、評価対象の表面における測定箇所を無作為に3箇所選び、3箇所それぞれにおいて色を測定した。
【0050】
CIE L*a*b*表示系による肌及び評価対象の色の値について表1を参照しつつ説明する。表1は、測定した3箇所の平均値である。
【0051】
【0052】
比較例1から6は、市販のパウチである。比較例1の見た目は白色である。比較例2の見た目は灰色である。比較例3から6の見た目は薄いオレンジ色又はベージュである。
【0053】
実施例1から3は、本発明の効果を評価するために製造したシートである。実施例1の見た目はくすんだオレンジ色である。実施例2の見た目はくすんだピンク色である。実施例3の見た目はカーキである。実施例4の見た目は、実施例2より暗い色味のくすんだピンク色である。実施例5の見た目は、実施例3より暗い色味のカーキである。実施例6の見た目は、青味みのあるグレイである。実施例7の見た目は、茶色みのあるグレイである。実施例8の見た目は、赤紫色みのあるグレイである。
【0054】
白色の衣服の下に人の肌を配置して、衣服と肌との間に評価対象であるパウチ又はシートを挿入した。つまり、衣服、評価対象、及び肌が積層されるように配置した。このときに、衣服の下から評価対象が透けて見える度合いを目視で確認した。
【0055】
評価結果を表2に示す。表2において、◎は非常に透けて見えにくいことを示す。○は透けて見えにくいことを示す。△は透けて見えやすいことを示す。
【0056】
【0057】
表2に示されるとおり、実施例は比較例よりも透けて見えにくいという結果となった。特に、実施例1及び2は非常に透けにくく、肌との境界線を確認することは難しかった。
【0058】
<試験例2>
パウチと、評価対象であるシートと、疑似便を用いて、排泄物の透けて見えにくさを評価した。
【0059】
疑似便としては、市販のドッグフード(ヘルシーステップ 角切りビーフ&野菜 375g P-HLC-KB)をフードプロセッサーで粉砕したものを使用した。
【0060】
パウチに疑似便を入れ、その上に評価対象であるシートを配置した。このときに、評価対象の下から疑似便が透けて見える度合いを目視で確認した。なお、比較例は、試験例1で用いたパウチからシートを取り外したものである。実施例は、試験例1で用いたものと同じものである。
【0061】
評価結果を表3に示す。表3において、○は透けて見えにくいことを示す。△は透けて見えやすいことを示す。×は透けて見えることを示す。
【0062】
【0063】
表3に示されるとおり、実施例は比較例よりも透けにくいという結果となった。実施例については、疑似便の色を確認することは難しかった。
【0064】
<試験例3>
評価対象であるシートを用いて、撥水性を評価した。
【0065】
比較例1から7は、市販のパウチからシートを取り外したものである。比較例8は、試験例1及び2において使用したシートである。実施例は、試験例1及び2において使用したシートの表面に、撥水剤の一例としてフッ素系のポリマーを用いて撥水加工を行ったものである。評価対象は、すべて縦2.5mm、横50.00mmのサイズにカットされている。
【0066】
評価対象をクリップに挟み、表面全体が濡れる程度に水に素早く浸し、クリップを持って5回振った。その後、
図4に示されるとおりに静置した。
図4は、本発明に係る評価試験の様子を示す図である。比較例1から8及び実施例のそれぞれについて3枚ずつを評価対象とした。
【0067】
その後、水に浸してから10分後、30分後、60分後、及び90分後の評価対象の重量を測定した。評価対象の吸水率を次の式(1)により算出した。
【0068】
吸水率=(測定時の重量-水に浸す前の重量)/水に浸す前の重量×100 ・・・(1)
【0069】
この測定の結果を
図5~7に示す。
図5~7は、本発明に係る評価試験の結果を示すグラフである。
図5~7に示される平均給水率は、3枚のシートそれぞれの吸水率の平均値である。
図6は、
図5に示される下方の領域を拡大したグラフである。
【0070】
図5及び6に示されるとおり、大半の比較例は水に浸した直後に吸水していることがわかる。
図7に示されるとおり、撥水加工されている実施例は水に浸した直後でもほぼ吸水していないことがわかる。