(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152964
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】センサ較正のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01N27/26 381C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023054449
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】22166263.8
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン トーマス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酸素化較正流体を必要とするセンサを較正する方法が開示される。
【解決手段】流体供給源220から、流体選択弁230とセンサ経路211との間にある流体ライン213内に所定量の脱酸素化較正流体221を移送することと、較正流体を移送する前後に周囲空気232’を流体ライン213内に移送し、周囲空気232’のゾーンの間に較正流体221’の隔離されたプラグを形成することと、弁230とセンサ経路211との間に含まれる流体ライン213の所定の長さ内で較正流体のプラグ221’を前後に振動させ、流体ライン213の内壁に沿ってテーリングする流体膜225を往復運動させ、流体ライン213内の周囲空気232’からの流体膜による酸素取り込みを介して較正流体221’の酸素化を促進することと、センサ212が配置される位置にて酸素化較正流体221’をセンサ経路211内に移送し、センサ212を較正することと、を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロースルーセンサ経路(211)に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体(221’’)を必要とするセンサ(212)を較正する自動化された方法であって、
流体供給源(220)から、流体選択弁(230)と前記センサ経路(211)との間にある、内壁を有する流体ライン(213)内に所定量の脱酸素化較正流体(221)を移送することと、
前記較正流体を移送する前後に、周囲空気(232’)を前記流体ライン(213)内に移送し、それによって周囲空気(232’)の2つのゾーンの間に位置する較正流体の隔離されたプラグ(221’)を形成することと、
前記較正流体のプラグ(221’)を、前記弁(230)と前記センサ経路(211)との間に含まれる前記流体ライン(213)の所定の長さ内で所定の回数および所定の速度で前後に振動させること(241)であって、それによって、前記流体ライン(213)の前記内壁に沿ってテーリングする流体膜(225)を往復運動させ、それによって、前記流体ライン(213)内の前記周囲空気(232’)からの前記テーリング流体膜(225)による酸素取り込みを介した前記較正流体(221’)の酸素化を促進することと、
前記センサ(212)が配置される位置にて前記酸素化較正流体(221’’)を前記センサ経路(211)内に移送し、前記センサ(212)を較正することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記脱酸素化較正流体(221、221’)の所定量が、前記センサ経路(211)内の許容位置範囲内で較正されるべき前記センサ(212)を完全に覆うのに十分な最小体積である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221、221’、221’’)を前記流体ライン(213)内に移送するため、前記流体ライン(213)内の前記較正流体(221’)を振動させる(241)ため、ならびに周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221’、221’’)を前記センサ経路(211)内に移送するためにポンプ(240)を使用することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体ライン(213)内の前記較正流体(221’)を振動させる(241)ための前記所定の速度が、前記ポンプ(240)が可能なほぼ最大の速度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記較正流体(221’)が内部で振動する(241)前記流体ライン(213)の前記所定の長さが、前記流体ライン(213)のほぼ全長である、すなわち、前記流体選択弁(230)と前記センサ経路(211)との間、または、さらなる導管(214)を介して前記流体選択弁(230)の出口ポート(231)に流体接続されたポート(40)と前記センサ経路(211)との間の長さである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1のステップとして、前記流体ライン(213)および前記センサ経路(211)を脱酸素化較正流体(221)によって洗浄することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記洗浄ステップが、前記流体ライン(213)および前記センサ経路(211)を通って、周囲空気(232’)の複数のゾーンによって交互に配置された、複数の較正流体のプラグ(221’)を所定の時間および所定の速度で連続的に移送することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2のステップとして、前記流体ライン(213)および前記センサ経路(211)を空気(232’)によって充填することを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
フロースルーセンサ経路(211)内に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体(221’’)を必要とする少なくとも1つのセンサ(212)を備える体外診断IVD分析器(200)であって、前記IVD分析器(200)が、少なくとも1つの脱酸素化較正流体(221)を備える流体供給源(220)と、一度に少なくとも1つの流体(221、222、223、232)を選択するための流体選択弁(230)と、前記弁(230)と前記センサ経路(211)との間に含まれる流体ライン(213、213’)と、をさらに備え、前記IVD分析器(200)が、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つのセンサ(212)を較正する方法を自動的に実行するように構成されたコントローラ(250)をさらに備える、IVD分析器(200)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサ(212)が、グルコースセンサおよび乳酸センサのうちの少なくとも一方を含む代謝産物センサである、請求項9に記載のIVD分析器(200)。
【請求項11】
前記IVD分析器(200)がポンプ(240)をさらに備え、前記コントローラ(250)が、周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221’、221’’)を前記流体ライン(213、213’)内に移送するため、前記流体ライン(213)内の前記較正流体(221’)を振動させる(241)ため、ならびに較正のためにそれぞれの前記センサ(212)に対応して前記酸素化較正流体(221’’)を配置することを含む、周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221’、221’’)を前記センサ経路(211)内に移送するために、前記ポンプ(240)および前記流体選択弁(230)を制御するように構成されている、請求項9または10に記載のIVD分析器(200)。
【請求項12】
前記流体ライン(213’)が、周囲空気からの酸素に対して透過性のある材料から少なくとも部分的に作られている、請求項9から11のいずれか一項に記載のIVD分析器(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロースルーセンサ経路に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体を必要とするセンサを較正する自動化された方法、ならびにそれぞれの体外診断分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療では、医師の診断と患者の治療は、多くの場合、体外診断分析器によって実行される患者試料のパラメータの測定に依存している。分析器が正確で信頼性の高い測定値を提供することによって正しく機能することが重要である。したがって、体外診断分析器が一連の品質管理(QC)手順を実施することが一般的な要件である。これらの手順のうちの1つは、較正である。ほとんどの場合、較正は、既知の濃度またはパラメータによって標準溶液を使用して行われる。このようにして、測定された信号を定量的な結果に関連付けることができる。較正は、システムに応じて、また性能に影響を与える可能性のある他の変動要因に応じて、多い頻度で、または少ない頻度で、実行される必要がある。
【0003】
血液ガスおよび電解質の試験において、血液ガスの分圧(pO2、pCO2)、酸素飽和度(SO2)、pH値、電解質濃度(例えば、Na+、K+、Mg2
+、Ca2
+、Li+、Cl-)、重炭酸塩値(HCO3
-)、代謝産物の濃度(例えば、グルコース、乳酸、尿素、クレアチニン)、ヘモグロビンおよびヘモグロビン誘導体についての値(例えば、tHb、O2Hb、HHb、COHb、MetHb、SulfHb)、ビリルビン値、およびヘマトクリットのようなパラメータが、患者の試料から決定される。
【0004】
典型的には、これらのパラメータは、伝導率、電気化学、および/または光学の測定原理によって決定される。これらの測定原理に基づいて、そのような試料パラメータを測定するように構成されたセンサは、組み合わされてもよく、例えば、1つまたは複数のフロースルーセンサ経路に順次配置されてもよい。これは、1回の試験実行において1つの単一試料から複数のパラメータを同時および/または逐次的に決定することを可能にする。
【0005】
一部の代謝物センサ、例えばグルコースおよび乳酸センサは、測定を行うために酸素の存在を必要とする。したがって、これらのセンサを較正するために、乳酸塩および/またはグルコースをそれぞれ含み、酸素も既知のレベルで含む較正流体が必要である。しかしながら、グルコース/乳酸および酸素は、それらが互いに反応し、それによってそれらのそれぞれの内容物を貯蔵時間にわたって変化させるため、すぐに使用できる較正流体として一緒に貯蔵されることができない。したがって、グルコース/乳酸較正流体は、典型的には酸素なしで貯蔵され、したがって、トノメトリと呼ばれるプロセスにおいてセンサ較正の直前に酸素が添加される必要がある。このプロセスは、典型的には、周囲空気からの酸素透過性のある材料、例えばシリコーンから作られた流体ライン内に所定量の脱酸素化較正溶液を引き込み、この新たに酸素化された(トノメータ処理された)較正流体をセンサ経路内に引き込み、センサを較正する前に、必要な酸素化レベルに到達するまで、流体ラインの壁を通って較正流体内に酸素が拡散するための所定時間待機することを含む。
【0006】
例えば多点較正を実行するためにいくつかの較正流体が必要とされる可能性があるため、較正流体が連続的にトノメトリされる場合、トノメトリプロセスは、較正時間を過度に延長する可能性がある。あるいは、較正流体の並列トノメトリは、追加の流体ラインおよび場合によっては追加の弁、ポンプなどのような追加の部品を必要とし、したがって分析器の設計をより複雑且つより高価にする。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様が従来技術に対する特定の自明でない利点および進歩を提供するのは、上記の背景に対してである。特に、体外診断分析器に対する複雑で費用のかかる設計変更を必要とせずに、脱酸素化較正流体のより迅速なトノメトリを可能にする、フロースルーセンサ経路に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体を必要とするセンサを較正する新たな自動化された方法が本明細書に開示されている。前記自動化された方法を実行し、同じ利点を提示するように構成された体外診断分析器も本明細書に開示される。
【0008】
特に、自動化された方法は、流体供給源から、流体選択弁とセンサ経路との間にある流体ライン内に所定量の脱酸素化較正流体を移送することであって、流体ラインが内壁を有する、所定量の脱酸素化較正流体を移送することと、較正流体を移送する前後に周囲空気を流体ライン内に移送し、それによって周囲空気のゾーンの間に較正流体の隔離されたプラグを形成することと、較正流体のプラグを、弁とセンサ経路との間に含まれる流体ラインの所定の長さ内で所定の回数および所定の速度で前後に振動させることであって、それによって、流体ラインの内壁に沿ってテーリングする流体膜を往復運動させ、それによって、流体ライン内の周囲空気からのテーリング流体膜による酸素取り込みを介して較正流体の酸素化を促進することと、センサが配置される位置にて酸素化較正流体をセンサ経路内に移送し、センサを較正することと、を含む。
【0009】
本明細書で使用される「体外診断分析器」または「IVD分析器」という用語は、スクリーニング、診断および治療監視目的のための情報を提供するために、体外で試料を検査するように構成された自動または半自動分析装置を指す。IVD分析器は、適用の医療分野、決定されるべきパラメータ、および対応する実験室ワークフローにしたがって設計および構成される。例えば、ポイントオブケア試験環境において、IVD分析器は、スループットが低く、ターンアラウンド時間が短く、測定可能なパラメータの数が限定されているハンドヘルドデバイスから、スループットがより高く、測定可能なパラメータの数がより多いコンパクトなベンチトップ機器まで多岐にわたることができる。そのようなIVD分析器は、特定のタイプのパラメータ、例えば、ガス、電解質、代謝産物、臨床化学分析物、免疫化学分析物、凝固パラメータ、血液学パラメータなどを検出するように設計される。関心のあるパラメータに応じて、様々な異なる分析方法および異なる検出技術が適用されることができる。例えば、血液ガスおよび電解質の試験の分野において、電気化学的な測定原理および/または伝導率の測定原理および/または光学的検出方法が使用される。IVD分析器は、典型的には、複数の機能ユニットを備え、これらは、それぞれ、特定のタスク専用であり、自動化された試料の処理および分析を可能とするために、互いに協調する。そのような機能ユニットは、例えば、試料を受け取るための試料入力インターフェース、流体システム、分析測定ユニットまたは検出ユニット、流体供給ユニットなどを含むことができる。1つまたは複数の機能ユニットは、IVD分析器の作動を単純化するために、より大きいユニットまたはモジュールに統合されることができる。
【0010】
「流体システム」は、例えば、少なくとも部分的に互いに接続された、または接続可能な1つまたは複数の流体ラインを備えるシステムである。それは、流体ラインを通して流体を移送するための少なくとも1つのポンプ、1つまたは複数の弁、チャンバ、フィルタ、膜などをさらに備えてもよい。特に、流体システムは、検出ユニットに流体を供給するための少なくとも1つの流体ラインを備える。「流体ライン」とは、任意の形状とサイズを有することができるが、典型的には、内部体積とデッドボリュームを最小限に抑えるように最適化されている、液密な方法で流体を通すのに適した1つまたは複数の部品を備える、管、チャネル、チャンバ、またはそれらの組み合わせなどの中空導管とすることができる。部品は、可撓性、剛性、弾性、またはそれらの組み合わせであってもよい。特に、流体システムおよび流体ラインは、典型的には、移送中の試料パラメータへの影響を回避するために気密になるように設計される。それにもかかわらず、実施形態によれば、流体ラインは、周囲空気からの酸素に対して透過性のある材料、例えばシリコーンから作られた材料の少なくとも一部から作られてもよい。較正流体のトノメトリのために流体選択弁とセンサ経路との間の流体ラインまたは流体ラインの一部を使用することは、このセグメントが一般に他の流体との混合を潜在的にもたらす他の流体接合部または接続部を含まないという利点を有する。
【0011】
「流体選択弁」という用語は、流れを制御、方向転換、制限、または停止するための、特に切替弁またはロータリー弁、すなわち一度に1つまたは複数の流体リザーバとの流体接続を選択することを可能にするマルチポート弁を指す。これは、典型的には、異なる要素間の連通を切り換えるために1つまたは複数の弁導管を移動させることによって達成される。要素は、パイプ、チューブ、毛細管、マイクロ流体チャネルなどのようなさらなる導管を介して流体的に接続されてもよい。例えば、弁は、各流体リザーバのためのチャネルおよびそれぞれの入力ポートを含むマニホールドに一体化されてもよく、弁の切り替え時に、例えば回転によって、一度に1つの流体リザーバと、例えば検出ユニットに通じる流体ラインに接続または接続可能な共通の出口ポートとの間に流体接続が確立される。弁は、周囲空気用および試料用などの他の流体用の他の入力ポートを備えてもよい。
【0012】
IVD分析器は、典型的には、試料容器からの試料、流体供給ユニットからの他の流体、または少なくとも1つの流体ラインを通って検出ユニットを通る周囲空気を移送するための少なくとも1つのポンプ、例えば蠕動ポンプ、シリンジポンプ、膜ポンプまたは任意の他の適切なポンプも備える。特に、周囲空気および/または較正流体を流体ライン内に移送するため、流体ライン内で較正流体を振動させるため、ならびに周囲空気および/または較正流体をセンサ経路内に移送するために、好都合に使用されることができる。較正流体を流体ライン内で振動させるために、ポンプはまた、ポンピング方向が反転可能であるように構成される。ポンプは、典型的には検出ユニットの下流に配置されるが、任意の他の位置に配置されてもよく、弁およびスイッチなどのさらなる要素を介して流体システムに接続されてもよい。
【0013】
本明細書で使用される「流体供給ユニット」は、1つまたは複数の流体容器、および場合によっては流体システムを循環する流体がプロセスの最後に廃棄されることができる1つまたは複数の廃棄物容器を含むIVD分析器のモジュールまたは構成要素である。「流体」という用語は、気体もしくは液体またはそれらの混合物のいずれかを指すことができる。流体は、例えば、試料、試薬、品質管理流体または較正流体などの基準流体、洗浄流体、湿潤流体、空気または他のガスであってもよい。
【0014】
試料は、典型的には、流体供給ユニットとは異なる試料入力インターフェース、すなわち、典型的には操作者が便利にアクセス可能な位置に配置され、操作者によって持ち上げられた試料容器から体外診断分析器内に試料を移送するように構成された体外診断分析器の別のモジュールまたは構成要素を介して流体システム内に入る。試料入力インターフェースは、例えば、例えば、毛細管型または注射器型の試料容器を結合、取り付け、接続、着座、導入またはプラグインするように構成された外側入力ポート側と、試料入力導管の一端に結合または結合するための内側入力ポート側とを含む試料入力ポートを含むことができ、試料入力導管は、例えば、他端で検出ユニットまたは流体選択弁に流体接続されている。一実施形態によれば、試料入力導管は、流体選択弁から検出器に通じる同じ流体ラインであり、同じ端部で内側入力ポート側および流体選択弁に、例えば、直接流体選択弁の出口ポートに、または別の導管を介して流体選択弁の出口ポートに接続された別のポートに交互に接続して、試料入力ポートからの試料および試料以外の流体を流体選択弁を介して交互に引き込むように構成され、他方の端部は検出ユニット/センサ経路に接続される。実施形態によれば、流体ラインは、試料入力導管としても作用する場合、試料入力ポートの内側入力ポート側および流体選択弁の出口ポートまたはその延長部に結合されるように構成された剛性吸引針として少なくとも部分的に具現化されることができる。実施形態によれば、周囲空気は、試料入力ポートを介して直接流体ライン内に、または流体選択弁の専用空気ポートを介して吸引されることもできる。
【0015】
「較正流体」は、較正に使用される1つまたは複数の較正物質の既知の値を含み、生物学的試料と同じ条件下で測定される、典型的には流体供給ユニット内に提供される基準溶液または標準溶液である。較正物質は、品質管理(QC)物質、例えば、生物学的試料中に潜在的に存在し、特定のセンサによって検出される目的の分析物と同一の分析物であるが、その濃度が既知であるか、または反応によってその濃度が既知である目的の分析物と同一の分析物を生成する分析物と同じとすることができるか、または目的の試料パラメータを模倣するか、そうでなければ目的の特定のパラメータと相関させることができる任意の他の等価な濃度の物質、例えば目的の分析物と同様に光学的に挙動する色素とすることができる。典型的には、センサが分析物濃度に線形に応答する場合、1つまたは2つの較正流体がそれぞれ1点または2点較正に使用される。較正曲線が非線形である場合、3つ以上の較正流体が使用されることができる。特に、較正流体は、較正物質の異なる濃度範囲に対応する異なるレベルで提供されることができる。
【0016】
特に、少なくとも1つの脱酸素化較正流体が、本開示にかかる流体供給源に提供される。「脱酸素化」という用語は、較正流体中の任意の他の較正物質の含有量が、その中に含まれる酸素との反応の結果として貯蔵時間にわたって有意に変化しないように、0または十分に低い酸素のレベルを指す。換言すれば、較正流体中の酸素のレベルまたは分圧は、較正流体の貯蔵寿命がその酸素レベルによって影響されないようなものである。脱酸素は、例えば較正流体に使用される溶媒を脱気することによって、または酸素を別の不活性ガスで置き換えることによって、一般に、較正流体が液体および気密流体容器に密封される前に空気からの酸素取り込みが防止されるように脱酸素環境において製造プロセスを実行することによって、製造時に得られることができる。貯蔵中に酸素化のレベルを低レベルまたはほぼ0レベルに維持するために、例えば貯蔵中に流体容器内に最終的に透過される酸素と相互作用して中和するために、化学的酸素捕捉剤が脱酸素化較正流体に使用されることができるが、その反応速度は、流体ライン内の酸素化のプロセスを妨げないほど十分に遅い。
【0017】
本開示にかかる「検出ユニット」は、少なくとも1つのフロースルーセンサ経路を備えるIVD分析器の分析測定ユニットである。「フロースルーセンサ経路」は、センサ経路を通って流れる試料が接触する、例えば経路に沿って順次配置された1つまたは複数のセンサ、例えば検出されるべき異なるパラメータ/分析物ごとのセンサを含むことができる流体導管であり、場合によっては複数のセンサ経路にわたって分散された複数のセンサを含む交換可能なカートリッジ状構造で具現化されることができる。代替案として、IVD分析器は、1つのパラメータ/分析物専用のセンサであって、交換可能であってもなくてもよいセンサを備えるセンサ経路をそれぞれが有する複数の検出ユニットを備えてもよい。したがって、試料は、1つまたは複数のセンサ経路内に流れ、異なるパラメータ/分析物が、それぞれのセンサによって決定されてもよい。検出ユニットは、任意に、フロースルー光学測定ユニットも備えてもよい。フロースルーセンサ経路は、少なくとも1つの流体ラインおよび少なくとも1つのセンサ経路が流体接続されるように、IVD分析器の流体システムの一体化された部分、または例えばIVD分析器の流体システムに流体接続されたセンサカートリッジなどの別個の構成要素の一部であってもよい。
【0018】
用語「センサ」は、本明細書では、定量化およびデジタル化されることができる、相関する信号出力を生成することにより、試料パラメータを検出するように構成されている検出器を示すように一般的に使用される。センサは、例えばバイオセンサ、化学センサまたは物理センサとすることができ、典型的には、IVD分析器の機能ユニット、例えば分析測定ユニットまたは検出ユニットの一部である。センサは、関心のある1つの試料パラメータに関して選択的または特異的とすることができるか、または関心のある複数の異なる試料パラメータを検出および定量化するように構成されることができる。センサのタイプに応じて、センサは、複数のセンサ要素を備えることができる。用語「センサ要素」は、したがって、1つまたは複数の他のセンサ要素と組み合わせて、完全に機能するセンサを形成する、センサの一部(例えば、作用電極、基準電極、カウンタ電極)を指す。
【0019】
特定の態様によれば、検出ユニットは、pO2センサ、pCO2センサ、pHセンサ、Na+、K+、Ca2
+およびCl-などの電解質値を決定するための1つまたは複数のイオン選択電極(ISE)センサ、乳酸およびグルコースなどのパラメータを決定するための1つまたは複数の代謝物センサのうちのいずれか1つまたは複数を含む。センサは、例えば、それぞれアンペロメトリー、ポテンショメトリーまたはコンダクトメトリーの原理に基づくものであってもよい。
【0020】
例えば、pO2センサは、一般に、クラークの測定原理にしたがって機能する。これは、酸素が膜を通ってセンサ内部の負電位を有する金マルチワイヤシステムに拡散することを意味する。ここで酸素が還元されて、試料に含まれる酸素に比例した電流が発生する。この電流は、アンペロメトリーで測定される。
【0021】
pCO2センサは、典型的には、Severinghouse型センサである。これは、CO2が酸素センサと同様の膜を通って拡散することを意味する。センサでは、CO2濃度が変化し、ポテンショメトリーで測定される内部緩衝系のpH値の相関変化を引き起こす。
【0022】
pHセンサは、通常、pH感応膜を含む。試験試料のpH値に応じて、膜と試料の間の境界層に電位が発生する。この電位は、基準センサによってポテンショメトリーで測定されることができる。
【0023】
Na+、K+、Ca2+、Cl-ISEセンサは、通常、ポテンショメトリーの測定原理にしたがって動作する。それらの違いは、それぞれの電解質に対する感度を可能にする膜材料の違いだけである。
【0024】
グルコースセンサは、典型的には、グルコースオキシダーゼ酵素を利用し、それによってグルコースは、試料中で利用可能な酸素によってグルコノラクトンに酸化される。このプロセスで生成されたH2O2が、二酸化マンガン/カーボン電極によってアンペロメトリーで測定される。
【0025】
乳酸センサは、典型的には、乳酸オキシダーゼ酵素を利用し、それによって乳酸が試料中で利用可能な酸素でピルビン酸に酸化される。このプロセスで生成されたH2O2が、グルコースセンサと同様にアンペロメトリーで測定される。
【0026】
実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、グルコースセンサおよび乳酸センサのうちの少なくとも1つを含む代謝産物センサ、または酸素との反応を伴う任意の他のバイオセンサである。
【0027】
実施形態によれば、トノメータ操作されるために流体選択弁とセンサ経路との間の流体ライン内に引き込まれる脱酸素化較正流体の所定量は、センサ経路内の許容位置範囲内で較正されるべきセンサを完全に覆うのに十分な最小体積である。したがって、最小体積は、センサ経路の内側断面の面積および較正されるセンサの感知要素によって占められるセンサ経路の長さ、ならびにそれぞれの感知要素に対応するセンサ経路内の酸素化後の較正流体のこの体積の位置決めの精度に依存する。そのような精度は、ポンプの精度および/または流体システム内の許容誤差に依存する可能性があり、流体システム内の圧力変化時に体積変化を受けるデッドボリュームおよび/または可撓性部品を含む可能性があり、特に流体ライン内の空気が圧縮可能であるという事実にも依存する可能性がある。それはまた、流体選択弁の切り替え速度および弁を切り替えるときの結果として生じる流体変位にも依存することができる。したがって、許容誤差は、特定の構成およびシステム設計に応じて、センサ経路内で較正されるセンサを完全にカバーするのに十分な体積の例えば10%、20%、50%、またはさらに100%以上のより狭いまたはより広い範囲であってもよい。過剰量ではなく最小量を使用する理由は、体積が小さいほど、この方法による酸素化が速くなり得るためである。
【0028】
較正流体を移送する前後に周囲空気を流体ライン内に引き込み、それによって周囲空気のゾーン間に較正流体の隔離されたプラグを形成することは、流体ラインの壁を通る拡散を待つのではなく、周囲空気中の既知のレベルに含まれる酸素を流体ライン内に直接導入し、この流体ラインに含まれる較正流体のプラグと接触させるという利点を有する。較正流体のプラグを前後に振動させると、流体ラインの内壁に沿ってテーリングする流体膜を往復運動させるため、空気に曝される較正流体の表面が増加し、それによって較正流体の酸素化が加速される。「テーリング」という用語は、表面/毛細管力によって流体ラインの内壁に付着し、主移動プラグに追従する液体の部分を指す。プラグが前後に移動し続けると、新たなテーリング部が後方に形成されている間に、プラグの前進ヘッドの前のテーリング部がプラグに再結合され、それによって連続的な混合が得られる。
【0029】
一般に、振動の速度が速いほど、振動距離は長くなり、液体体積が小さいほど、酸素化プロセスは速くなる。これは、空気に再生可能に曝される表面対体積比が最大になり、したがって液体による酸素取り込みが非常に迅速になり得るためである。特に、より高速で振動させることは、単位時間当たりにより多くの距離をカバーすることができ、より厚いテーリング流体膜(より多くの体積)が残るという利点を有する。
【0030】
振動の速度は、ポンプの速度および加速特性によって制限されることができるため、実施形態によれば、流体ライン内で較正流体を振動させるための所定の速度は、ポンプが可能なほぼ最大速度である。しかしながら、速度は、液体プラグの破壊が発生する可能性があり、むしろ回避されるべきである所定の速度制限よりも高くなくてもよい。したがって、特定の流体システムについて、ポンプの最大速度が制限速度よりも高い場合、それに応じて振動速度が低下する。
【0031】
振動の長さ、すなわち、較正流体のプラグが1つの完全な振動サイクル中に到達する端部位置間の流体ライン内の距離もまた、酸素化の速度に寄与する。したがって、実施形態によれば、較正流体が振動する流体ラインの所定の長さは、流体ラインのほぼ全長である、すなわち、流体選択弁とセンサ経路との間、または流体選択弁の出口ポートにさらなる導管を介して接続されたポートとセンサ経路との間の、接合部を除く長さである。特に、振動距離を大きくすることにより、振動回数を低減しつつ、液体プラグをより長時間高速で走行させることができる。これは、液体プラグが方向を変えるたびに減速および再加速を受け、ポンプ方向の切り替え中に一定の静止期間があり、液体が反対方向に移動し始めるまで、液体膜による酸素取り込みも減少するために有利である。
【0032】
所定の速度で流体ラインの所定の長さ内の最小振動数は、例えば、振動数を増加させた後、較正流体の酸素化の必要なレベルがセンサの較正に適したレベルに到達するまで、酸素化のレベル、すなわち酸素分圧を測定することによって、特定の流体システムの製造業者によって経験的に決定されることができる。周囲空気中の酸素分圧は、例えば高度にも依存して僅かに変動することができるため、全ての場合において十分なレベルの酸素化が得られることを確実にするために、過剰な振動が予め決定されることができる。
【0033】
総体積、したがって液体プラグの長さを最小にすることによって、テーリング液体膜の体積と振動液体プラグの体積との比がより高くなり、したがって酸素取り込みがより速くなる。さらに、液体プラグがより小さい場合、利用可能な振動距離はより大きい。
【0034】
実施形態によれば、本方法は、第1のステップとして、脱酸素化較正流体を用いて流体ラインおよびセンサ経路を洗浄することを含む。このステップは、流体システムからの以前の流出から微量の液体および/または汚染物質を除去し、流体ラインおよびセンサ経路の内面を較正流体によって調整するという利点を有することができる。
【0035】
実施形態によれば、洗浄ステップは、流体ラインおよびセンサ経路を通って空気プラグによって交互に配置される較正流体のプラグを所定時間および所定速度で連続的に移送することを含む。この場合、液体プラグが小さいほど、また、液体プラグの数が多いほど、洗浄効率が高くなることができ、一方で、洗浄に使用されて浪費される較正流体の総量が低減される。
【0036】
実施形態によれば、本方法は、第2のステップとして流体ラインおよびセンサ経路に空気を充填すること、すなわち、第1のステップにおいて入った較正流体から流体ラインおよびセンサ経路を空にすることを含む。このステップは、較正流体のプラグを酸素化される流体ライン内に移送する前に、周囲空気の第1のプラグを流体ライン内に移送し、それによって流体プラグの前に第1の空気ゾーンを形成するステップと一致することができる。
【0037】
本開示はまた、フロースルーセンサ経路内に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体を必要とする少なくとも1つのセンサを備える体外診断分析器に関する。IVD分析器は、少なくとも1つの脱酸素化較正流体を含む流体供給源と、一度に少なくとも1つの流体を選択するための流体選択弁と、弁とセンサ経路との間に含まれる流体ラインとをさらに備え、IVD分析器は、本明細書に開示された方法ステップのいずれかを自動的に実行するように構成されたコントローラをさらに備える。
【0038】
実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、グルコースセンサおよび乳酸センサのうちの少なくとも1つを含む代謝産物センサである。
【0039】
実施形態によれば、IVD分析器は、ポンプをさらに備え、コントローラは、周囲空気および/または較正流体を流体ライン内に移送するため、流体ライン内で較正流体を振動させるため、ならびに周囲空気および/または較正流体をセンサ経路内に移送するために、ポンプおよび流体選択弁を制御するように構成され、較正のためにそれぞれのセンサに対応して酸素化較正流体を配置することを含む。
【0040】
本明細書で使用される「コントローラ」という用語は、任意の物理的または仮想的な処理デバイス、特に、動作計画にしたがって、特に本明細書に開示されるセンサを較正する方法にしたがって動作を実行する命令を備えたコンピュータ可読プログラムを実行するプログラマブルロジックコントローラを含むことができる。これは、プロセッサ、コントローラ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、または本明細書に記載された機能/方法の1つまたは複数を実行するように構成された他の回路またはプロセッサを含むことができる。
【0041】
実施形態によれば、流体ラインは、周囲空気からの酸素に対して透過性のある材料、例えばシリコーンから作られた材料の少なくとも一部から作られる。
【0042】
他のおよびさらなる目的、特徴および利点が、原理をより詳細に説明するのに役立つ例示的な態様についての以下の説明および添付の図面から見えて来るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】フロースルーセンサ経路と、フロースルーセンサ経路内に位置するセンサを較正する自動化方法の第1のステップとを含む体外診断分析器を概略的に示している。
【
図1B】
図1Aの同じ体外診断分析器および同じ自動化方法の第2のステップを概略的に示している。
【
図1C】
図1A~
図1Bの同じ体外診断分析器および同じ自動化方法の第3のステップを概略的に示している。
【
図1D】
図1A~
図1Cの同じ体外診断分析器および同じ自動化方法の第4のステップを概略的に示している。
【
図1E】
図1A~
図1Dの同じ体外診断分析器および同じ自動化方法の第5のステップを概略的に示している。
【
図2】
図1A~
図1Eの同じ体外診断分析器およびセンサ較正後の分析のための試料を移送するステップを概略的に示している。
【
図3B】プロセス中の酸素化の進行を示す
図3Aの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
当業者には、図中の要素は、簡単および明確にするための例示であり、必ずしも一律の縮尺で描かれていないことが分かる。例えば、図中の一部の要素の寸法は、他の要素に対して誇張されている場合がある一方で、他の要素は、明瞭性を高め、本開示の態様の理解を向上させるために、省かれているか、または数が減らされて表されている場合がある。
【0045】
図1Aから
図1Eは、合わせて、本開示にかかるフロースルーセンサ経路211を備える体外診断分析器200の例、ならびにフロースルーセンサ経路211に配置されたセンサ212を較正する自動化された方法を概略的に示している。特に、体外診断分析器200は、フロースルーセンサ経路211を備える検出ユニット210を備え、フロースルーセンサ経路211は、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体を必要とする少なくとも1つのセンサ212を備える。実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ212は、グルコースセンサおよび乳酸センサの少なくとも一方を含む代謝物センサである。
【0046】
IVD分析器200は、他の流体222、223の中でも少なくとも1つの脱酸素化較正流体221を含む流体供給源220と、少なくとも1つの流体221、222、223を一度に選択するための流体選択弁230と、弁230とセンサ経路211との間に含まれる流体ライン213とをさらに備える。IVD分析器200は、試料容器1の開放端部を差し込むように構成された外側入力ポート側11および内側入力ポート側12を備える試料入力ポート10を備える試料入力インターフェース100をさらに備える。試料容器1は、この例では毛細管状の試料容器である。試料入力インターフェース100は、上流端31および下流端32を含む吸引針30をさらに備える。吸引針30の下流端32は、流体ライン213を介してセンサ経路211に流体接続され、一方、上流端31は、外側入力ポート側11に差し込まれた試料容器1から試料を吸引するために内側入力ポート側12に、およびさらなる導管214を介して流体選択弁230の出口ポート231に流体接続された流体供給ポート40に交互に結合するように構成される。しかしながら、流体ライン213は、流体選択弁230の出口ポート231に直接接続されてもよく、試料は、例えば、流体選択弁230に別々に接続された異なる流体ラインを介して導入されてもよい。
図1A~
図1Eの流体選択弁は、それぞれの流体リザーバに含まれる各流体221、222、223のそれぞれの入力ポートおよび空気ポート232を備え、弁230の切り替え時に、一度に1つの流体リザーバ221、222、223または空気ポートと共通出口ポート231との間に流体接続が確立される。
【0047】
IVD分析器200は、センサ経路211の下流に配置された蠕動ポンプなどのポンプ240と、流体供給源220内に配置された廃棄物容器224とをさらに備え、流体ライン213およびセンサ経路211を通って循環する流体が廃棄されることができる。
【0048】
IVD分析器200は、本明細書に開示された方法ステップのいずれかを自動的に実行するように構成されたコントローラ250をさらに備える。
【0049】
特に、
図1Aは、フロースルーセンサ経路211に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体221を必要とする少なくとも1つのセンサ212を較正する自動化された方法の第1の任意のステップを概略的に示している。本方法は、流体ライン213およびセンサ経路211を通って空気プラグ232’によって交互に配置される較正流体のプラグ221’を連続的に移送することによって、流体ライン213およびセンサ経路211を脱酸素化較正流体211によって洗浄および調整することを含む。これは、例えば、較正流体リザーバ221に流体接続されたポートと空気ポート232との間の接続233を交互に切り替えながら、下流ポンプ240を所定の時間および所定の速度で連続的に動作させることによって達成される。
【0050】
本方法は、
図1Bに示すように、任意の第2のステップとして流体ライン213およびセンサ経路211に空気を充填することによって継続する。これは、出口ポート231に接続された空気ポート232から流体ライン213内およびセンサ経路211内に空気を移送しながら、下流ポンプ240を所定の時間および所定の速度で連続的に動作させることによって達成される。
【0051】
本方法は、
図1Cおよび
図1Dに示すように、流体供給源220から、流体選択弁230とセンサ経路211との間にある流体ライン213内に所定量の脱酸素化較正流体221を移送し、前のステップからの既に含まれている空気を移送し、次いで、較正流体221を移送した後に流体ライン213内に周囲空気を移送し、それによって周囲空気232’のゾーン間に較正流体の隔離されたプラグ221’を形成し、次いで、所定の回数および所定の速度で弁230とセンサ経路211との間に含まれる流体ライン213の所定の長さ内で較正流体のプラグ221’を前後に振動させ241、それによって流体ライン213の内壁に沿ってテーリングする流体膜を往復運動させ、それによって、流体ライン213内の周囲空気からの流体膜による酸素取り込みを介して較正流体221’の酸素化を容易にし、それによって振動ステップの終わりに酸素化較正流体221’’のプラグを提供する。
【0052】
較正流体のプラグ221’の振動241は、ポンプ240のポンピング方向を繰り返し切り替える242ことによって達成されることができる。
【0053】
この例では、流体ライン213内の較正流体221’を振動させるための所定の速度は、ポンプ240が可能なほぼ最大速度である。
【0054】
また、較正流体221’が振動する流体ライン213の所定の長さは、流体供給ポート40とセンサ経路211との間の長さである、この場合には吸引針30も含む、流体ライン213のほぼ全長である。
【0055】
較正方法は、
図1Eに示すように、感知要素を含むセンサ212が配置される位置にて、前のステップにおける較正流体のプラグ221’の振動から生じた酸素化較正流体221’’をセンサ経路211内に移送し、センサ212を較正することによって終了する。
【0056】
コントローラ250は、周囲空気および/または較正流体221を流体ライン213内に移送するため、流体ライン内で較正流体221’を振動さるため、ならびに周囲空気および/または較正流体221’、221’’をセンサ経路内に移送するために、ポンプ240および流体選択弁230を制御するように構成され、較正のためにそれぞれのセンサ212に対応して酸素化較正流体221’’を配置することを含む。
【0057】
図2は、
図1A~
図1Eの同じ体外診断IVD分析器200と、
図1A~
図1Eの方法にかかる較正後のセンサ212による試料2の分析のために、試料入力ポート10の外側入力ポート側11に差し込まれた試料容器1から試料2を搬送するステップとを概略的に示しており、一方、吸引針30の上流端31は、試料入力ポート10の内側入力ポート側12に結合されている。較正後、試料を移送する前に、別の流体を用いた中間洗浄ステップを行うことができる(図示せず)。この場合、コントローラ250はまた、他のステップを実行するために、外側入力ポート側11に差し込まれた試料容器1から流体供給ポート40に試料を吸引するために、内側入力ポート側12に交互に結合するように吸引針30を制御するように構成される。
【0058】
図3A~
図3Cは、ともに、
図1A~
図1Eの方法による、トノメトリとも呼ばれる較正流体酸素化の原理を概略的に示している。特に、流体ライン213は、
図4のステップ中に概略的に示されており、較正流体221’のプラグは、酸素化/トノメータ化されるために、自然酸素レベルO
2を含む周囲空気232’のゾーン間で振動されている(241)。較正流体のプラグ221’を前後に振動させること241は、流体ライン213の内壁に沿ってテーリングする流体膜225を往復運動させ、したがって空気に曝される液体の表面を増加させ、それによって較正流体221’の酸素化を加速する。特に、振動速度が速いほど、振動距離は長くなり、液体体積が小さいほど、酸素化プロセスは速くなる。これは、空気に再生可能に曝される表面対体積比が最大になり、したがって液体による酸素取り込みが非常に迅速になり得るためである。
図3Aから開始して、脱酸素化較正流体221’のプラグが流体供給源220(
図3A~
図3Cには示されていない)から流体ライン213内の周囲空気と接触して流体ラインに移送されると、それは既にいくらかの酸素O
2を取り込み始める。これは、例えば、酸素含有状態の最終含有量の最大10%~50%とすることができる。例えば最大30~50回またはそれ以上の振動まで振動241の数が増加すると、流体膜テーリング225の往復運動を介した酸素取り込みは、センサ212の較正に適した較正流体221’’の酸素化の必要なレベル(酸素分圧)に対応する飽和または平衡に近いレベルが達成されるまで増加し(
図3B)、振動のプロセスは終了する(
図3C)が、これは、振動の継続が、酸素化レベルのさらなる増加に無視できるほどしか寄与せず、プロセスが不必要に延長されるためである。得られた酸素化較正流体221’’中の酸素分圧は、典型的には、例えば高度に応じて、周囲空気中の酸素分圧の約80~90%、すなわち約110~170mmHgである。
【0059】
図4は、
図3A~
図3Cに示すプロセスの変形例を示しており、流体ライン213’が周囲空気からの酸素O
2に対して透過性のある材料、例えばシリコーンから作られた材料の少なくとも一部から作られている点のみが異なる。したがって、内側からテールするフィルムを介した酸素取り込みと外側から材料の壁を通る酸素拡散との複合効果は、酸素化の速度をさらに増加させ、および/または同じ結果を達成するために必要な振動の数を減少させることができる。
【0060】
図3A~
図3Cおよび
図4の酸素の相対存在量「O
2」は、実際には空気中の酸素の貯蔵容量(モルO
2で測定)が同じ条件下の水などの液体中の貯蔵容量(飽和度)よりも約30倍大きいため、概略表現にすぎない。標準条件における1リットルの空気は、0.0093モルの酸素を含有し、一方、20℃、1バールの1リットルの(脱塩された)水は、0.000284モルの酸素を含有する。
【0061】
開示された態様の変更および変形が、上記の説明に照らして、もちろん可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、上記の例に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることができることを理解されたい。
【0062】
特に、図面または部品の少なくともいくつかは、概略的なものであり、例示としてのみ提供されることを理解されたい。また、各要素の関係は、図示したもの以外でもよく、本開示の趣旨に関係のない部品は、省略されている。
【0063】
また、先の明細書全体を通して、「一態様」、「一態様」、「一例」または「例」に言及することは、その態様または例に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの態様に含まれていることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所における「一態様では」、「一態様では」、「一例」、または「例」という表現の出現は、必ずしも全てが同じ態様または例を指しているわけではない。
【0064】
さらにまた、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の態様または例において、任意の適切な組み合わせおよび/または部分的組み合わせで組み合わせられることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロースルーセンサ経路(211)に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体(221’’)を必要とするセンサ(212)を較正する自動化された方法であって、
流体供給源(220)から、流体選択弁(230)と前記センサ経路(211)との間にある、内壁を有する流体ライン(213)内に所定量の脱酸素化較正流体(221)を移送することと、
前記較正流体を移送する前後に、周囲空気(232’)を前記流体ライン(213)内に移送し、それによって周囲空気(232’)の2つのゾーンの間に位置する較正流体の隔離されたプラグ(221’)を形成することと、
前記較正流体のプラグ(221’)を、前記弁(230)と前記センサ経路(211)との間に含まれる前記流体ライン(213)の所定の長さ内で所定の回数および所定の速度で前後に振動させること(241)であって、それによって、前記流体ライン(213)の前記内壁に沿ってテーリングする流体膜(225)を往復運動させ、それによって、前記流体ライン(213)内の前記周囲空気(232’)からの前記テーリング流体膜(225)による酸素取り込みを介した前記較正流体(221’)の酸素化を促進することと、
前記センサ(212)が配置される位置にて前記酸素化較正流体(221’’)を前記センサ経路(211)内に移送し、前記センサ(212)を較正することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記脱酸素化較正流体(221、221’)の所定量が、前記センサ経路(211)内の許容位置範囲内で較正されるべき前記センサ(212)を完全に覆うのに十分な最小体積である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221、221’、221’’)を前記流体ライン(213)内に移送するため、前記流体ライン(213)内の前記較正流体(221’)を振動させる(241)ため、ならびに周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221’、221’’)を前記センサ経路(211)内に移送するためにポンプ(240)を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体ライン(213)内の前記較正流体(221’)を振動させる(241)ための前記所定の速度が、前記ポンプ(240)が可能なほぼ最大の速度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記較正流体(221’)が内部で振動する(241)前記流体ライン(213)の前記所定の長さが、前記流体ライン(213)のほぼ全長である、すなわち、前記流体選択弁(230)と前記センサ経路(211)との間、または、さらなる導管(214)を介して前記流体選択弁(230)の出口ポート(231)に流体接続されたポート(40)と前記センサ経路(211)との間の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1のステップとして、前記流体ライン(213)および前記センサ経路(211)を脱酸素化較正流体(221)によって洗浄することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記洗浄ステップが、前記流体ライン(213)および前記センサ経路(211)を通って、周囲空気(232’)の複数のゾーンによって交互に配置された、複数の較正流体のプラグ(221’)を所定の時間および所定の速度で連続的に移送することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2のステップとして、前記流体ライン(213)および前記センサ経路(211)を空気(232’)によって充填することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
フロースルーセンサ経路(211)内に配置され、較正のために少なくとも1つの酸素化較正流体(221’’)を必要とする少なくとも1つのセンサ(212)を備える体外診断IVD分析器(200)であって、前記IVD分析器(200)が、少なくとも1つの脱酸素化較正流体(221)を備える流体供給源(220)と、一度に少なくとも1つの流体(221、222、223、232)を選択するための流体選択弁(230)と、前記弁(230)と前記センサ経路(211)との間に含まれる流体ライン(213、213’)と、をさらに備え、前記IVD分析器(200)が、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つのセンサ(212)を較正する方法を自動的に実行するように構成されたコントローラ(250)をさらに備える、IVD分析器(200)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサ(212)が、グルコースセンサおよび乳酸センサのうちの少なくとも一方を含む代謝産物センサである、請求項9に記載のIVD分析器(200)。
【請求項11】
前記IVD分析器(200)がポンプ(240)をさらに備え、前記コントローラ(250)が、周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221’、221’’)を前記流体ライン(213、213’)内に移送するため、前記流体ライン(213)内の前記較正流体(221’)を振動させる(241)ため、ならびに較正のためにそれぞれの前記センサ(212)に対応して前記酸素化較正流体(221’’)を配置することを含む、周囲空気(232’)および/または前記較正流体(221’、221’’)を前記センサ経路(211)内に移送するために、前記ポンプ(240)および前記流体選択弁(230)を制御するように構成されている、請求項9に記載のIVD分析器(200)。
【請求項12】
前記流体ライン(213’)が、周囲空気からの酸素に対して透過性のある材料から少なくとも部分的に作られている、請求項9に記載のIVD分析器(200)。
【外国語明細書】