(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015297
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】C/EBPα小分子活性化RNA組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20230124BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230124BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230124BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230124BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230124BHJP
A61P 5/50 20060101ALI20230124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230124BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20230124BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230124BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20230124BHJP
A61K 31/64 20060101ALI20230124BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230124BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230124BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61P1/16 ZNA
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P5/50
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/155
A61K31/4439
A61K31/517
A61K31/64
A61K45/00
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182989
(22)【出願日】2022-11-16
(62)【分割の表示】P 2021150183の分割
【原出願日】2014-11-24
(31)【優先権主張番号】61/907,732
(32)【優先日】2013-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512325200
【氏名又は名称】ミナ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】セトロム、ポール
(57)【要約】
【課題】患者のインスリン抵抗性又は肥満を治療するための、C/EBPαの標的化調節に有用な組成物を提供する。
【解決手段】患者のインスリン抵抗性又は肥満を治療するために用いられる組成物は、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のインスリン抵抗性又は肥満を治療するために用いられる、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAを含む組成物。
【請求項2】
前記患者の肝細胞におけるLDLレベルを減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記患者の肝細胞におけるトリグリセリドレベルを減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記患者の体重を減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記患者の肝臓サイズを減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
FAT/CD36、SREBP1、DGAT2、CETP、FASN、PPARγ-CoA1α、PPARγ-CoA1β、又はMLXIPLの発現を低減させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
LPL、LXD、ACACA、ACACB、APOC3、MTP、LDLR、PGC-1α、PGC-1β、PPARγ、又はPPARαの発現を増加させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記saRNAが、配列番号2、4、6、8、10、12、318又は374を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記患者の白色脂肪組織を低減させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記患者の褐色脂肪組織を活性化させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記患者の体脂肪を低減させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記患者の血清アルブミンレベルを増加させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
肝臓のインスリン感受性を増加させるか又はII型糖尿病を治療する薬物と共に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
メトホルミン、スルホニル尿素、非スルホニル尿素分泌促進剤、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グルカゴン様ペプチド-1類似体、及びジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、又はそれらの組み合わせと共に投与される、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C/EBPα及びC/EBPα経路を調節するための、ポリヌクレオチド、具体的にはsaRNA組成物に関する。また、本発明は、上記組成物を、代謝障害、過剰増殖性疾患の治療、及び幹細胞系統の制御等の治療応用に使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBPα、C/EBPアルファ、又はC/EBPA)は、ヒト及びラットを横断して保存されているロイシンジッパータンパク質である。この核内転写因子は、肝細胞、骨髄性単核球、脂肪細胞、並びに他のタイプの乳房上皮細胞に豊富に存在する[非特許文献1]。この核内転写因子は、N末端部分にある2つのトランスアクチベーションドメイン、C末端部分にある、他のC/EBPファミリーメンバーとの二量体化を媒介するロイシンジッパー領域及びDNA結合ドメインで構成される。C/EBP転写因子のファミリーの結合部位は、正常な肝細胞機能の維持、及び傷害への応答に関与する多数の遺伝子のプロモーター領域に存在する。C/EBPαは、免疫及び炎症応答、発生、細胞増殖、抗アポトーシス、及び幾つかの代謝経路に関与する幾つかの肝臓特異的遺伝子の転写に多面的効果を有する[非特許文献2]。C/EBPαは、肝細胞の分化状態の維持に不可欠である。C/EBPαは、アルブミン転写を活性化し、尿素産生に関与する複数のオルニチン回路酵素をコードする遺伝子の発現を調節し、したがって正常な肝機能に重要な役割を果たしている。
【0003】
成人の肝臓では、C/EBPαは、高分化した肝細胞で機能するとされているが、急速に増殖する肝癌細胞は、わずかなC/EBPαしか発現しない[非特許文献3]。C/EBPαは、網膜芽細胞腫の上方制御並びにCdk2及びCdk4の阻害により、細胞増殖の強力な阻害因子であるp21を上方制御することが知られている[非特許文献4;非特許文献5]。肝細胞癌(HCC)では、C/EBPαは、抗増殖特性を有する腫瘍抑制因子として機能する[非特許文献6]。
【0004】
C/EBPα mRNA又はC/EBPαタンパク質調節を研究するために、様々な手法が実施されている。C/EBPαタンパク質は、翻訳後リン酸化及びSUMO化により制御されることが知られている。例えば、FLT3チロシンキナーゼ阻害剤及び細胞外シグナル制御キナーゼ1及び/又は2(ERK1/2)は、C/EBPαのセリン21リン酸化を阻止し、それによりC/EBPαタンパク質の顆粒球への分化能を低下させる[非特許文献7;非特許文献8]。加えて、C/EBPαの翻訳は、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン(dioxoolean)-1,9-ジエン-28-酸(CDDO)により効率的に誘導することができ、それにより、C/EBPαタンパク質アイソフォームの比率が、p30形態よりも全長p42形態が有利になるように変更され、それにより顆粒球への分化が誘導される[非特許文献9]。
【0005】
C/EBPα遺伝子は、染色体19q13.1に位置する、イントロンを含まない遺伝子である。ほとんどの真核細胞では、遺伝子発現を制御するための機序としてRNA相補性が使用されている。1つの例は、二本鎖低分子干渉RNAを使用して、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)により遺伝子発現をノックダウンするRNA干渉(RNAi)経路である。短鎖二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、遺伝子のプロモーター領域を標的とし、それら遺伝子の転写活性化を媒介する能力も有することが今や確立されており、それらは、RNA活性化(RNAa)、アンチジーンRNA(agRNA)、又は短鎖活性化RNA(saRNA)と呼ばれている[非特許文献10]。遺伝子のsaRNA誘導性活性化は、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類を含む他の哺乳動物種で保存されており、遺伝子の内因性上方制御の効果を研究するための一般的な方法として急速に広まりつつある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lekstrom-Himesら、J.Bio.Chem、273巻、28545~28548頁(1998年)
【非特許文献2】Darlingtonら、Current Opinion of Genetic Development、5巻(5号)、565~570頁(1995年)
【非特許文献3】Umekら、Science、251巻、288~292頁(1991年)
【非特許文献4】Timchenkoら、Genes&Development、10巻、804~815頁(1996年)
【非特許文献5】Wangら、Molecular Cell、8巻、817~828頁(2001年)
【非特許文献6】Iakovaら、Seminars in Cancer Biology、21巻(1号)、28~34頁(2011年)
【非特許文献7】Radomskaら、Journal of Experimental Medicine、203巻(2号)、371~381頁(2006年)
【非特許文献8】Rossら、Molecular and Cellular Biology、24巻(2号)、675~686頁(2004年)
【非特許文献9】Koschmiederら、Blood、110巻(10号)、3695~3705頁(2007年)
【非特許文献10】Liら、PNAS、103巻、17337~17342頁(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、治療を目的としたsaRNAによるC/EBPαの標的化調節に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、診断及び予後を含む治療を目的としてC/EBPα遺伝子の発現及び/又は機能を調節する短鎖活性化RNA(saRNA)分子を、設計、調製、製造、製剤化、及び/又は使用するための組成物、方法、及びキットを供給する。
【0009】
本発明の1つの態様は、C/EBPα転写物を標的とするsaRNA及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明の別の態様は、対象体の代謝経路を調節するための方法であって、上記対象体に、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAを投与することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、過剰増殖性細胞の増殖を阻害する方法であって、上記細胞を、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAと接触させることを含む方法を提供する。
本発明の別の態様は、過剰増殖性障害を治療又は予防するための方法であって、上記過剰増殖性障害を有する対象体に、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAを投与することを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、細胞の上皮間葉転換を制御するための方法であって、上記細胞を、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAと接触させることを含む方法を提供する。
本発明の更に別の態様は、幹細胞の分化及び多能性を制御するための方法であって、上記幹細胞を、C/EBPα転写物を標的とするsaRNAと接触させることを含む方法を提供する。
【0012】
本発明の種々の実施形態の詳細は、本明細書の下記に示されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書及び図面から、並びに特許請求の範囲から明白になるだろう。
【0013】
上述の及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に図示されているような本発明の特定の実施形態に関する以下の説明から明白になるだろう。添付の図面では、類似の参照文字は、異なる図面の全体にわたって同一の部分を参照している。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ、本発明の種々の実施形態の原理を図示する際に強調がなされている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】肝臓に対するC/EBPαの主要効果を示す図である。
【
図2】脂肪組織に対するC/EBPαの副次的効果を示す図である。
【
図3-1】本発明のsaRNAの効果を示す一連のヒストグラムを示す図である。Aは、HepG2細胞へのC/EBPα-saRNAのトランスフェクションが、C/EBPα遺伝子の発現を正に制御することを示す;Bは、HepG2細胞へのC/EBPα-saRNAのトランスフェクションが、アルブミン遺伝子の発現を正に制御することを示す;Cには、C/EBPα-saRNAの用量増加が、96時間にわたりC/EBPα遺伝子発現に対して用量依存的効果を示すことが示されている。Dには、C/EBPα-saRNAの用量増加が、96時間にわたりアルブミン遺伝子発現に対して用量依存的効果を示すことが示されている。
【
図3-2】パネルE~Gには、アルブミンプロモーター(アルブミンD-ボックス)結合タンパク質(DBP)のD部位及びアルブミン(ALB)が全て、1つ又は複数のC/EBPα結合部位を有することが示されている。これらパネルには、各遺伝子の上流及び下流に(E)C/EBPα、(F)DBP、及び(G)アルブミン(ALB)の2000個のヌクレオチドを含むゲノム領域が示されている。ゲノム領域内の染色体座標(「スケール」及び染色体識別子)、C/EBPα結合部位(「CEBPA」;黒色のボックス)、C/EBPα結合モチーフ(「GCAATモチーフ」;黒色の垂直線)の出現、及びRefSeq遺伝子(青色のボックス及び線)が示されている。
【
図4】メチル化状態及び遺伝子発現に対する効果に関する研究を示す図である。A~Bには、(A)C/EBPA及び(B)DBPのプロモーター領域にあるCpG島のメチル化アッセイが、対照と比較してメチル化の低減を示したことが示されている。C:ヒトアルブミンに特異的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、20nM C/EBPα-saRNAのトランスフェクション後にアルブミン分泌が著しく増加したことを検出した。D:C/EBPα-saRNAトランスフェクション細胞では、オルニチン回路酵素オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードする遺伝子の発現が増加し、尿素産生能力の向上が示唆された。E:C/EBPα-saRNAトランスフェクション細胞では、アルファフェトプロテイン(AFP)をコードする遺伝子の発現が減少し、細胞分化の制御が向上したことが示唆された。F:C/EBPα-saRNAは、様々な濃度でHepG2細胞増殖の著しい下方制御を引き起こした。
【
図5】本発明のsaRNAに関するin vivo研究の結果を示す図である。A~F:慢性肝硬変及び自発性肝細胞癌を有する雄ウィスターラットにC/EBPα-saRNAを静脈内注射した。ラット血清中でのC/EBPα-saRNA-デンドリマーのヌクレアーゼ感受性を、表示されている時間にわたって試験した。血中saRNAの著しい減少が、24~48時間で観察された。その後、ラットを、C/EBPα-saRNA-デンドリマーで、48時間毎の反復用量で1週間処置した。アルブミン、ビリルビン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)のレベルを測定した。対照と比較してアルブミンの循環レベルが増加したことは、肝臓傷害からの回復を示唆する。
【
図6】本発明のsaRNAの全組織及び組織化学研究を示す図である。A:肝腫瘍容積は、対照と比較して、C/EBPα-saRNA-デンドリマーを注射したラットで目に見えて低減された。B:腫瘍量は、3mmを超える直径を有する全腫瘍小結節の容積により評価した。C/EBPα-saRNAを注射したラットは、2週間の処置後、腫瘍量が著しく低減した。C:スクランブル-saRNAを注射した対照ラット及びC/EBPα-saRNA-デンドリマーを注射したラットの2μm肝臓切片を免疫染色して、胎盤型グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-p)の発現を調べた。
【
図7】本発明のsaRNAに関するin vivo研究の結果を示す図である。A~D:7匹の対照ラットの全RNA抽出物及び7匹のC/EBPα-saRNA-デンドリマー注射ラットの全RNA抽出物を、(A)アルブミン遺伝子発現、(B)C/EBPα遺伝子発現、(C)肝細胞核内因子(HNF)4α遺伝子発現、及び(D)HNF1α遺伝子発現について分析した。これら因子の増加により、アルブミンの発現を促進するのに必要な転写因子が上方制御されたことが確認された。HGFをコードするmRNAレベルは減少した。E~G:7匹の対照ラットの全RNA抽出物及び7匹のC/EBPα-saRNA-デンドリマー注射ラットを、(E)肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子発現、(F)ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPD1)遺伝子発現、及び(G)プラスミノーゲン遺伝子発現について分析した。HGFをコードするmRNAレベルの減少は、細胞増殖の正の調節を示す。HPD1及びプラスミノーゲンのレベルの増加は、肝細胞の機能が改善したことを示す。
【
図8】C/EBPα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞における、一群の84個の肝臓癌特異的遺伝子の遺伝子発現プロファイルを分析した図である。
【
図9】プロモーター内の結合部位の特定を示す図である。A~C:STAT3(A)遺伝子、c-Myc(MYC)(B)遺伝子、及びインターロイキン6受容体(IL6R)(C)遺伝子のChIP-Seq分析は、それらのプロモーター領域内のC/EBPα結合部位の存在を示す。D~9F:C/EBPα-saRNAをトランスフェクションすると、HepG2細胞のSTAT3(D)、cMyc(E)、及びIL6R(F)の相対発現が低減した。
【
図10】メチル化アッセイ及びウエスタンブロットの結果を示す図である。A~C:STAT3(A)、MYC(B)、及びIL6R(C)のプロモーター領域にあるCpG島のメチル化アッセイが、対照と比較して過剰メチル化を示したことが示されている。D:ウエスタンブロット分析により、C/EBPα-saRNAでトランスフェクションした細胞では、STAT3の残基705及び727でのリン酸化が減少し、IL6Rが下方制御されることが示された。
【
図11】huh7肝細胞株でのC/EBPα発現を、対照、C/EBPα-saRNA単独、様々なデンドリマー、及び様々なsaRNA:デンドリマー複合比のC/EBPα-saRNA-デンドリマー複合体を用いて試験した図である。試料は、多くの場合、二重反復だった。
【
図12】HepG2細胞でのC/EBPα発現を、様々な期間インキュベートしたC/EBPα-saRNA-デンドリマー複合体で測定した図である。
【
図13】C/EBPα-saRNA-デンドリマー複合体を、3×用量及び1注射当り100uLで注射した1週間後に、マウスの血清アルブミンレベルについて試験した図である。
【
図14】本発明のsaRNAに関するIn vivo研究を示す図である。A~B:正常なC57Bl6/JマウスにC/EBPα-saRNAを静脈注射すると、対照と比較して、(A)アルブミン及び(B)非抱合型ビリルビンの循環レベルが増加することを示す。C~E:C/EBPα-saRNAを正常なC57Bl6/Jマウスに静脈注射すると、(C)ALT、(D)AST、及び(E)GGTの循環レベルが減少することを示す。
【
図15-1】本発明のsaRNAに関するIn vivo研究を示す図である。A~B:体重(A)及びコレステロール(B)を、各注射後に測定した。群間での体重の変化は、観察されなかった。C:漸増用量での処置後に測定したヘモグロビン(Hb)レベル。処置は、Hbレベルを正常範囲から変化させなかった。D:白血球細胞(WBC)数の測定は、漸増用量のC/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置しても影響を受けなかった。
【
図15-2】本発明のsaRNAに関するIn vivo研究を示す図である。E:血小板(PLT)数の測定は、対照動物から著しい変化を示さなかった。3×のC/EBPα-saRNAデンドリマーで処置すると、PLT数の変化は、正常範囲により近いことが示された。F:GGTの測定は、C/EBPα-saRNA-デンドリマー処置が、正常範囲により近い値をもたらすことを示唆する。G:SGOTのレベルは、対照動物と処置動物とで変化がなかった。H:1×及び2×処置動物におけるSGPTの循環レベルは、対照又は3×群と比較して、正常範囲により近かった。
【
図15-3】本発明のsaRNAに関するIn vivo研究を示す図である。I:アルカリホスファターゼの循環レベルは、対照動物と処置動物との間で差異を示さなかった。J:非抱合型ビリルビンの循環レベルは、対照と比べて、処置動物では用量依存的に増加した。K~L:尿素(K)及びクレアチニン(L)のレベルは、対照と比較して処置動物では変化を示さなかった。
【
図16】(A)対照、(B)1×C/EBPα-saRNA-デンドリマー、(C)2×C/EBPα-saRNA-デンドリマー、及び(D)4×C/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置したラットの肝臓組織を示す図である。
【
図17】(A)対照、(B)1×C/EBPα-saRNA-デンドリマー、(C)2×C/EBPα-saRNA-デンドリマー、及び(D)4×C/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置したラットの腎臓組織を示す図である。
【
図18】(A)対照、(B)1×C/EBPα-saRNA-デンドリマー、(C)2×C/EBPα-saRNA-デンドリマー、及び(D)4×C/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置したラットの脾臓組織を示す図である。
【
図19】増殖研究を示す図である。A~G:C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の線維芽細胞(A)、HL60細胞(B)、K562細胞(C)、ジャーカット細胞(D)、U937細胞(E)、U373細胞(F)、及び32DZ10細胞(G)のWST-1細胞増殖アッセイの結果。
【
図20】C/EBPα―saRNAトランスフェクション後のHL60細胞、U937細胞、線維芽細胞、ジャーカット細胞、K562細胞、U373細胞、32Dp210細胞の細胞増殖。
【
図21】本発明のsaRNAに関する増殖研究を示す図である。A~F:C/EBPα-saRNAトランスフェクションの後のヒトHCC(HepG2)細胞(A)、ラット肝臓癌(B)細胞、ヒト膵臓類上皮癌(C)細胞、ヒト乳腺癌(MCF7)細胞(D)、ヒト転移性前立腺癌(DU145)細胞(E)、ラットインスリノーマ(MIN6)(F)細胞の細胞増殖。
【
図22】C/EBPα―saRNAトランスフェクション後のMIN6細胞、線維芽細胞、MCF7細胞、HepG2細胞、ラット肝臓細胞、Panc1細胞、及びDu145細胞の細胞増殖を示す図である。
【
図23】同質遺伝子PEO1及びPEO4細胞株ペアのin vivo誘導を示す図である。
【
図24】A~C:C/EBPα―saRNAトランスフェクショントランスフェクション後のPEO1細胞及びPEO4細胞の細胞増殖を示す図である。
【
図25】増殖アッセイを示す図である。A~C:C/EBPα-saRNA+C/EBPβ-siRNAトランスフェクショントランスフェクション後のHepG2細胞増殖アッセイ、ウエスタンブロット、及びmRNAレベル。
【
図26】増殖アッセイを示す図である。A~C:C/EBPα-saRNA+C/EBPβ-siRNAトランスフェクション後のMCF7細胞増殖アッセイ、ウエスタンブロット、及びmRNAレベル。
【
図27】対照群とC/EBPα-saRNA処置群との間の、発現制御倍数データのグラフ表示を提供するヒートマップを示す図である。
【
図28】発現パターンアッセイを示す図である。A:この散布図では、アレイの全ての成熟miRNAの正規化発現が、対照群とC/EBPα-saRNA処置群との間で比較されている。中心線は、無変化のmiRNA発現を示す。B:このクラスタグラムには、miRNA発現プロファイル全体の教師無し階層化クラスタ分析が示されている。
【
図29】癌進行におけるマイクロRNAの役割(従来技術の結果)を示す図である。
【
図30】コレステロールに対する効果を示す図である。A~B:C/EBPα-saRNAは、コレステロール(A)及びLDL(B)の循環レベルを変化させた。
【
図31】体重に対する効果を示す図である。A:デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの体重変化。B:高脂肪/高コレステロール食餌を与えたラット及び与えなかったラットの身体サイズの変化。
【
図32A】肝臓の脂質及び病理を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝臓のトリグリセリドレベル。
【
図32B】肝臓の脂質及び病理を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝臓のコレステロールレベル。
【
図32C】肝臓の脂質及び病理を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝臓サイズ及び外観。
【
図32D】肝臓の脂質及び病理を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝臓組織の組織病理学的染色画像。
【
図33A】遺伝子発現及び血清コレステロール研究を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットのCEBPα発現。
【
図33B】遺伝子発現及び血清コレステロール研究を示す図である。A~D:デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットのCD36発現。
【
図33C】遺伝子発現及び血清コレステロール研究を示す図である。A~D:デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットのLPL発現。
【
図33D】遺伝子発現及び血清コレステロール研究を示す図である。A~D:デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットのLXR発現。
【
図34】デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの血清コレステロールレベルを示す図である。
【
図35A】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のCEBPαの発現。
【
図35B】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のSREBF-1の発現。
【
図35C】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のCD36の発現。
【
図35D】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のACACBの発現。
【
図35E】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のAPOC3の発現。
【
図35F】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のMTPの発現。
【
図35G】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のPPARγ-CoA1αの発現。
【
図35H】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のLDLRの発現。
【
図35I】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のPPARγ-CoA1βの発現。
【
図35J】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のPPARγの発現。
【
図35K】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のACACAの発現。
【
図35L】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のMLXIPLの発現。
【
図35M】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のPPARαの発現。
【
図35N】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のFASNの発現。
【
図35O】遺伝子発現に対する効果を示す図である。デンドリマー担持C/EBPα-saRNAで処置したラット及び対照で処置したラットの肝細胞のDGAT2の発現。
【
図36A】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのSREBPの発現。
【
図36B】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのCD36の発現。
【
図36C】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのLDLRの発現。
【
図36D】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのPPARGC1Aの発現。
【
図36E】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのAPOCの発現。
【
図36F】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのACACBの発現。
【
図36G】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのPERCの発現。
【
図36H】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのACACAの発現。
【
図36I】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのMLXP1の発現。
【
図36J】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのMTORの発現。
【
図36K】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのPPARAの発現。
【
図36L】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのFASNの発現。
【
図36M】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたBAT細胞でのDGATの発現。
【
図37A】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのSREBPの発現。
【
図37B】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのCD36の発現。
【
図37C】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのLDLRの発現。
【
図37D】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのPPARGC1Aの発現。
【
図37E】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのMTPの発現。
【
図37F】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのAPOCの発現。
【
図37G】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのACACBの発現。
【
図37H】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのPERCの発現。
【
図37I】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのACACAの発現。
【
図37J】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのMLX1PLの発現。
【
図37K】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのMTORの発現。
【
図37L】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのFASNの発現。
【
図37M】遺伝子発現に対する効果を示す図である。C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたWAT細胞でのDGATの発現。
【
図38A】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のAST。
【
図38B】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のALT。
【
図38C】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のクレアチニン。
【
図38D】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の総ビリルビン。
【
図38E】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の血小板数。
【
図38F】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のWBC。
【
図38G】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のリンパ球。
【
図38H】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の好中球。
【
図38I】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のRBC。
【
図38J】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の単球。
【
図38K】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の好酸球。
【
図38L】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の好塩基球。
【
図38M】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のヘモグロビン。
【
図38N】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の体重。
【
図38O】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の体重増加量。
【
図38P】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の肝臓重量。
【
図38Q】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の肝臓重量/体重。
【
図38R】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の白色脂肪。
【
図38S】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の白色脂肪/体重。
【
図38T】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の褐色脂肪。
【
図38U】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の褐色脂肪/体重。
【
図38V】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の筋肉。
【
図38W】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後の筋肉/体重。
【
図39A】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のコレステロール。
【
図39B】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のコレステロールの変化。
【
図39C】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のトリグリセリド。
【
図39D】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のトリグリセリドの変化。
【
図39E】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のHDL。
【
図39F】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のHDLの変化。
【
図39G】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のLDL。
【
図39H】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のLDLの変化。
【
図39I】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のHDL/LDL。
【
図39J】本発明のsaRNAを投与した際の、生物学的測定値に対するin vivo効果を示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のHDL/LDLの変化。
【
図40A】サイトカインレベルを示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のIL-6のレベル。
【
図40B】サイトカインレベルを示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のIL-1bのレベル。
【
図40C】サイトカインレベルを示す図である。C/EBPα-saRNA処置後のTNF-αのレベル。
【
図41】C/EBPα-saRNAトランスフェクション後のC/EBPα相対発現レベル、C/EBPβ相対発現レベル、及び「自己再生」転写因子相対発現レベルを示す図である。
【
図42】C/EBPα-saRNAトランスフェクション後のC/EBPα相対発現レベル、C/EBPβ相対発現レベル、及びNANOG相対発現レベルを示す図である。
【
図43A】ウエスタンブロットを示す図である。C/EBPα及びC/EBPβタンパク質アイソフォームの比率を研究するための、C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞のウエスタンブロット。
【
図43B】ウエスタンブロットを示す図である。C/EBPα及びC/EBPβタンパク質アイソフォームの比率を研究するための、C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞のウエスタンブロット。
【
図44A】遺伝子発現を示す図である。C/EBPα-saRNA及びC/EBPα-siRNAのトランスフェクション後のC/EBPファミリーメンバーの相対発現。
【
図44B】遺伝子発現を示す図である。C/EBPα-saRNA及びC/EBPα-siRNAのトランスフェクション後のC/EBPファミリーメンバーの相対発現。
【
図44C】遺伝子発現を示す図である。C/EBPα-saRNA及びC/EBPα-siRNAのトランスフェクション後のC/EBPファミリーメンバーの相対発現。
【
図45】C/EBPα-saRNA(CAW1)でトランスフェクションした4日後の、又は臨床レトロウイルス複製ベクターにクローニングしたmiRNA設計のC/EBPα-saRNA(miCAW1)で形質導入した4日後の、U87-fLuc細胞におけるC/EBPα発現レベルを示す図である。スクランブルsiRNA(con)、及びホタルルシフェラーゼ(mifLuc)に対する小型阻害性ヘアピンを送達するレトロウイルスベクターを陰性対照として使用した。
【
図46】C/EBPα-AW1 miRNAインサート配列及び共通miR-30構成(配列番号384)を示す図である。
【
図47】MTL-501(C/EBPα-saRNA-デンドリマー)で治療した患者の血清アルブミンレベルを示す図である。
【
図48】MTL-501(C/EBPα-saRNA-デンドリマー)で治療した硬変症患者の白血球数を示す図である。
【
図49A】DU145細胞での発現を示す図である。50nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるCEBPA mRNA発現レベルを示す。
【
図49B】DU145細胞での発現を示す図である。50nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるALB mRNA発現レベルを示す。
【
図49C】DU145細胞での発現を示す図である。50nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるp21 mRNA発現レベルを示す。
【
図49D】DU145細胞での発現を示す図である。10nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるCEBPA mRNA発現レベルを示す。
【
図49E】DU145細胞での発現を示す図である。10nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるALB mRNA発現レベルを示す。
【
図49F】DU145細胞での発現を示す図である。10nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるp21 mRNA発現レベルを示す。
【
図50A】DU145細胞での発現を示す図である。50nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるCEBPAのmRNA発現レベルを示す。
【
図50B】DU145細胞での発現を示す図である。50nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるecCEBPAのmRNA発現レベルを示す。
【
図50C】DU145細胞での発現を示す図である。10nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるCEBPAのmRNA発現レベルを示す。
【
図50D】DU145細胞での発現を示す図である。10nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるecCEBPAのmRNA発現レベルを示す。
【
図50E】DU145細胞での発現を示す図である。50nMのC/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞における、CEBPA mRNA、AW665812レベルのESTSを示す。
【
図51】修飾C/EBPα-saRNAでトランスフェクションした後のDU145細胞におけるCEBPA、ALB、p21のmRNA発現レベルを示す。
【
図52】相対発現を示す図である。A~Dは、通常のトランスフェクション(T)、リバーストランスフェクション(RT)、1用量の50nM C/EBPα-saRNAによるトランスフェクション(1)又は2用量の50nM C/EBPα-saRNAによるトランスフェクション(2)を受けたHepG2細胞におけるCEBPA mRNA相対発現レベルを示す。
【
図53A】増殖及び時間研究を示す図である。CEBPA-saRNA処置HepG2細胞の増殖低減を示す。
【
図53B】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、HepG2細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図53C】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、HepG2細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図53D】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、HepG2細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図53E】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、HepG2細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図53F】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、HepG2細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図53G】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、HepG2細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図54A】増殖及び時間研究を示す図である。CEBPA-saRNA処置DU145細胞の増殖低減を示す。
【
図54B】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、DU145細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図54C】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、DU145細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図54D】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、DU145細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図54E】増殖及び時間研究を示す図である。、C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、DU145細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図54F】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、DU145細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図54G】増殖及び時間研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、DU145細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図55A】増殖及び製剤化研究を示す図である。CEBPA-saRNA処置AML細胞の増殖低減を示す。
【
図55B】増殖及び製剤化研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、AML細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図55C】増殖及び製剤化研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、AML細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図55D】増殖及び製剤化研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、AML細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図55E】増殖及び製剤化研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、AML細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図55F】増殖及び製剤化研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、AML細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図55G】増殖及び製剤化研究を示す図である。C/EBPα―saRNAトランスフェクション後の様々な時点での、AML細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図56A】製剤化研究。製剤化NOV340-CEBPA-saRNAトランスフェクション後の、DU145細胞及びHepG2細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図56B】製剤化研究。製剤化NOV340-CEBPA-saRNAトランスフェクション後の、DU145細胞及びHepG2細胞におけるALBのmRNAレベルを示す。
【
図56C】製剤化研究。製剤化NOV340-CEBPA-saRNAトランスフェクション後の、DU145細胞及びHepG2細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図56D】製剤化研究。製剤化NOV340-CEBPA-saRNAトランスフェクション後の、DU145細胞及びHepG2細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図56E】製剤化研究。製剤化NOV340-CEBPA-saRNAトランスフェクション後の、DU145細胞及びHepG2細胞におけるALBのmRNAレベルを示す。
【
図56F】製剤化研究。製剤化NOV340-CEBPA-saRNAトランスフェクション後の、DU145細胞及びHepG2細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図57A】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。野生マウスで実施した、製剤化CEBPA-saRNAのin vivo研究のフローチャートを示す。
【
図57B】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。血清アルブミンタンパク質レベルを示す。
【
図57C】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。CEBPA mRNAレベルを示す。
【
図57D】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。アルブミンmRNAレベルを示す。
【
図57E】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。血清アルブミンタンパク質レベルを示す。
【
図57F】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。CEBPA mRNAレベルを示す。
【
図57G】研究デザイン及びアルブミンレベルを示す図である。アルブミンmRNAレベルを示す。
【
図58A】研究デザイン及び結果を示す図である。DENラットで実施した、製剤化CEBPA-saRNAのin vivo研究のフローチャートを示す。
【
図58B】研究デザイン及び結果を示す図である。12日目の腫瘍量を示す。
【
図58C】研究デザイン及び結果を示す図である。12日目の血清ビリルビンレベルを示す。
【
図58D】研究デザイン及び結果を示す図である。12日目のALT肝酵素レベルを示す。
【
図58E】研究デザイン及び結果を示す図である。12日目の血清アルブミンレベルを示す。
【
図58F】研究デザイン及び結果を示す図である。12日目のコレステロールレベルを示す。
【
図59A】ELISA及びmRNA研究を示す図である。野生型マウスでの製剤化CEBPA-saRNAによるアルブミンELISAの結果を示す。
【
図59B】ELISA及びmRNA研究を示す図である。野生型マウスでの製剤化CEBPA-saRNAによるアルブミンELISAの結果を示す。
【
図59C】ELISA及びmRNA研究を示す図である。CEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図59D】ELISA及びmRNA研究を示す図である。アルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図60】肝臓重量及び腫瘍容積を示す図である。Aは、製剤化CEBPA-saRNA処置後のDENラットの肝臓重量及び体重の比を示す。Bは、製剤化CEBPA-saRNA処置後のDENラットの腫瘍容積を示す。
【
図61】ウエスタンブロットを示す図である。A及びBは、ビオチン標識CEBPA-saRNAで形質移入したHepG2細胞におけるウエスタンブロットの結果を示す。
【
図62A】免疫沈降研究を示す図である。ビオチン標識CEBPA-saRNAのChIP-Seqを示す。
【
図62B】免疫沈降研究を示す図である。ビオチン標識CEBPA-saRNAのChIP-Seqを示す。
【
図62C】免疫沈降研究を示す図である。ビオチン標識CEBPA-saRNAのChIP-Seqを示す。
【
図62D】免疫沈降研究を示す図である。ビオチン標識CEBPA-saRNAのChIP-Seqを示す。
【
図62E】免疫沈降研究を示す図である。ビオチン標識CEBPA-saRNAのChIP-Seqを示す。
【
図63A】肝再生を示す図である。肝切除術後の肝再生率を示す。
【
図63B】肝再生を示す図である。BrdU標識率を示す。
【
図63C】肝再生を示す図である。PCNA標識率を示す。
【
図63D】肝再生を示す図である。Ki-67標識率を示す。
【
図64】HCC及び肝不全に関与する因子を示す図である。
【
図65A】発現研究を示す図である。CEBPA-saRNAトランスフェクション後のHepG2細胞のCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図65B】発現研究を示す図である。CEBPA-saRNAトランスフェクション後のHepG2細胞のアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図65C】発現研究を示す図である。CEBPA-saRNAトランスフェクション後のHepG2細胞のp21のmRNAレベルを示す。
【
図65D】発現研究を示す図である。CEBPA-saRNAトランスフェクション後のDU145細胞のCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図65E】発現研究を示す図である。CEBPA-saRNAトランスフェクション後のDU145細胞のp21のmRNAレベルを示す。
【
図66A】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図66B】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞におけるアルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図66C】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図66D】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞におけるGAPDHのmRNAレベルを示す。
【
図66E】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるCEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図66F】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるp21のmRNAレベルを示す。
【
図66G】発現研究を示す図である。様々な濃度のCEBPA-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞におけるGAPDHのmRNAレベルを示す。
【
図67】CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞における、ALB、CCND1、CDKN1A、CEBPA、CEBPB、ecCEBPA、MTOR、MYC、STAT3、及びTP53の相対発現を示す図である。
【
図68A】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞における、CEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図68B】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞における、p21のmRNAレベルを示す。
【
図68C】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞における、アルブミンのmRNAレベルを示す。
【
図68D】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞における、AFPのmRNAレベルを示す。
【
図68E】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞における、GAPDHのmRNAレベルを示す。
【
図69A】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞における、CEBPAのmRNAレベルを示す。
【
図69B】用量反応研究を示す図である。修飾CEBPA-saRNAでトランスフェクションしたDU145細胞における、GAPDHのmRNAレベルを示す。
【
図69C】用量反応研究を示す図である。Aha1-siRNAでトランスフェクションしたDU145細胞における、Aha1 mRNAレベルを示す。
【
図70A】時間経過研究を示す図である。CEBPA-saRNAで単回トランスフェクションした、又は2つのCEBPA-saRNAの組み合わせでトランスフェクションした24時間、48時間、及び72時間後の、HepG2細胞における、CEBPA、アルブミン、p21のmRNAレベルを示す。
【
図70B】時間経過研究を示す図である。CEBPA-saRNAで二重トランスフェクションした、又は2つのCEBPA-saRNAの組み合わせでトランスフェクションした24時間、48時間、及び72時間後の、HepG2細胞における、CEBPA、アルブミン、p21のmRNAレベルを示す。
【
図71】CEBPA-ルシフェラーゼリポーターアッセイの結果を示す図である。
【
図72A】サイトカイン研究を示す図である。CEBPA-saRNAのトランスフェクション後のヒトPBMCにおける、TNF-アルファ応答を示す。
【
図72B】サイトカイン研究を示す図である。CEBPA-saRNAのトランスフェクション後のヒトPBMCにおける、IFN-アルファ応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、治療の目的でC/EBPα遺伝子発現及び/又は機能を調節するための組成物、方法、及びキットを提供する。これら組成物、方法、及びキットは、C/EBPα転写物を標的とする核酸構築体を含む。
【0016】
C/EBPαタンパク質は、代謝プロセス及び細胞増殖の重要な制御因子として知られている。C/EBPα遺伝子を調節することは、治療目的に非常に有望である。本発明は、C/EBPα転写物を標的とする、修飾されている又は修飾されていない一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAを含んでいてもよい核酸構築体を提供することによりこの必要性に取り組むものである。
【0017】
本明細書の状況では、用語「標的」又は「標的とする」は、C/EBPα転写物に対して効果を及ぼすことを意味する。効果は、直接的でもよく、又は間接的であってもよい。直接的効果は、C/EBPα転写物との完全な又は部分的なハイブリダイゼーションにより引き起こされてもよい。間接的効果は、上流であってもよく、又は下流であってもよい。
【0018】
本明細書の状況では、用語「C/EBPα転写物」、「C/EBPα標的転写物」、又は「標的転写物」は、C/EBPα遺伝子のいずれかの鎖、C/EBPα遺伝子のアンチセンスRNA、C/EBPαタンパク質をコードするC/EBPα mRNA、又はC/EBPα遺伝子発現を制御する非コードRNAに位置していてもよい。C/EBPα遺伝子発現を制御する非コードRNAの1つの例は、長鎖非コードRNA(lncRNA)である。C/EBPα遺伝子のアンチセンスRNAは、本明細書の下記では、標的アンチセンスRNA転写物と呼ばれている。
【0019】
1つの実施形態では、C/EBPα転写物を標的する核酸構築体は、C/EBPα遺伝子の発現及び/又は機能を調節する。
本明細書の状況では、用語「調節する」は、C/EBPα遺伝子の発現及び/又は機能を上方制御又は下方制御することを含んでいてもよい。
【0020】
本明細書の状況では、用語「遺伝子発現」は、C/EBPα遺伝子からC/EBPα mRNAを生成する転写ステップ、又はC/EBPα mRNAからC/EBPαタンパク質を生成する翻訳ステップを含んでいてもよい。C/EBPα mRNAの増加及びC/EBPαタンパク質の増加は両方とも、C/EBPα遺伝子発現の増加又は正の効果を示す。
【0021】
I.本発明の組成物
本発明の1つの態様は、C/EBPα転写物を標的とする核酸構築体、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。そのような核酸構築の1つの例は、低分子活性化RNA(saRNA)であり、以下では「C/EBPα-saRNA」又は「本発明のsaRNA」と呼ばれ、本出願では同義的に使用される。
【0022】
本明細書の状況では、用語「低分子活性化RNA」又は「saRNA」は、特定遺伝子の遺伝子発現を上方制御するか又は正の効果を示す、典型的には50個ヌクレオチド未満の一本鎖又は二本鎖RNAを意味する。上記遺伝子は、上記saRNAの標的遺伝子と呼ばれる。例えば、C/EBPα遺伝子は、本発明のC/EBPα-saRNAの標的遺伝子である。
【0023】
saRNA設計
C/EBPα-saRNAは、C/EBPα転写物を標的とする。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、C/EBPα遺伝子の標的アンチセンスRNA転写物に相補的であるように設計されており、標的アンチセンスRNA転写物を下方制御することによりC/EBPα遺伝子の発現及び/又は機能にその効果を及ぼすことができる。
【0024】
本発明の状況では、用語「相補的」は、ストリンジェントな条件下で標的アンチセンスRNA転写物とハイブリダイズすることができることを意味する。
本発明の状況において、核酸配列の記載に使用される場合、用語「センス」は、その配列が、遺伝子のコード鎖の配列と同一性を有することを意味する。本発明の状況において、核酸配列の記載に使用される場合、用語「アンチセンス」は、その配列が、遺伝子のコード鎖の配列と相補性を有することを意味する。
【0025】
標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位(TSS)の最大100、80、60、40、20、又は10kb上流にある遺伝子座から、又はC/EBPα遺伝子の転写終止部位の最大100、80、60、40、20、又は10kb下流にある遺伝子座から転写されてもよい。1つの実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の最大1kb上流にある遺伝子座から、又はC/EBPα遺伝子の転写終止部位の最大1kb下流にある遺伝子座から転写される。別の実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の最大500、250、又は100個ヌクレオチド上流にある遺伝子座から、又はC/EBPα遺伝子の転写終止部位の最大500、250、又は100個ヌクレオチド下流にある遺伝子座から転写される。好ましくは、遺伝子座は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位から500個ヌクレオチド以下の上流に又は下流にある。
【0026】
用語「[特定の遺伝子座]から転写される」は、本発明の標的アンチセンスRNA転写物の文脈では、「標的RNA転写物の転写開始部位が、[特定の遺伝子座]に見出される」ことを意味する。1つの実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物の転写開始部位及び転写終止部位は両方とも、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の最大100kb上流又はC/EBPα遺伝子の転写終止部位の最大100kb下流のいずれかに別々に位置する。
【0027】
標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のゲノム配列のコード鎖に相補的であり、本明細書で「ゲノム配列」を参照する場合はいずれも、「ゲノム配列のコード鎖」の省略である。
【0028】
遺伝子の「コード鎖」は、その遺伝子のmRNAのコード配列を含む鎖である。遺伝子の「テンプレート鎖」は、その遺伝子のmRNAのコード配列を含まない鎖である。
したがって、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の100、80、60、40、20、又は10kb上流と、C/EBPα遺伝子の転写終止部位の100、80、60、40、20、又は10kb下流との間にあるゲノム配列に相補的な配列を含んでいてもよい。1つの実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の1kb上流と、C/EBPα遺伝子の転写終止部位の1kb下流との間にあるゲノム配列に相補的な配列を含む。別の実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の500、250、又は100個ヌクレオチド上流と、C/EBPα遺伝子の転写終止部位の500、250、又は100個ヌクレオチド下流との間にあるゲノム配列に相補的な配列を含む。標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のコード領域を含むゲノム配列に相補的な配列を含んでいてもよい。最も好ましくは、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域のゲノム配列に相補的な配列を含む。したがって、標的アンチセンスRNA転写物は、好ましくは、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域に相補的な配列を含む。
【0029】
遺伝子は、複数のプロモーター領域を有していてもよく、その場合には、標的アンチセンスRNA転写物は、プロモーター領域の1つ又は2つ以上とオーバーラップしていてもよい。注釈付き遺伝子座のオンラインデータベースを使用して、遺伝子のプロモーター領域を特定してもよい。
【0030】
標的アンチセンスRNA転写物とC/EBPα遺伝子のプロモーター領域との間のオーバーラップ領域、つまり、相補的領域は、部分的であってもよく、長さが単一ヌクレオチドと短くともよいが、好ましくは長さが少なくとも15個ヌクレオチド、より好ましくは長さが少なくとも25個ヌクレオチド、より好ましくは長さが少なくとも50個ヌクレオチド、より好ましくは長さが少なくとも75個ヌクレオチド、最も好ましくは長さが少なくとも100個ヌクレオチドである。以下の特定の構成の各々は、用語「オーバーラップ」の範囲以内に入ることが意図される。
【0031】
a)標的アンチセンスRNA転写物及びC/EBPα遺伝子のプロモーター領域は、長さが同一であり、オーバーラップしている(つまり、それらは、それらの全長にわたって相補的である)。
【0032】
b)標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域よりも短く、その全長にわたってC/EBPα遺伝子のプロモーター領域とオーバーラップしている(つまり、それは、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域内の配列に対して、その全長にわたって相補的である)。
【0033】
c)標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域よりも長く、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域が、それと完全にオーバーラップしている(つまり、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域は、標的アンチセンスRNA転写物内の配列に対して、その全長にわたって相補的である)。
【0034】
d)標的アンチセンスRNA転写物及びC/EBPα遺伝子のプロモーター領域は、長さが同一又は異なっており、オーバーラップの領域は、標的アンチセンスRNA転写物の長さ及びC/EBPα遺伝子のプロモーター領域の長さの両方と比べて短い。
【0035】
上述した「オーバーラップ」の定義は、本明細書の全体にわたって他のオーバーラップ配列の記載に準用される。むろん、標的アンチセンスRNA転写物が、プロモーター領域以外のC/EBPα遺伝子の領域とオーバーラップすると記載されている場合、標的アンチセンスRNA転写物の配列は、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域内ではなく、その領域内の配列に対して相補的である。
【0036】
1つの実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位を含むゲノム配列に相補的な配列を含む。言いかえれば、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位とオーバーラップする配列を含む。
【0037】
1つの実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、長さが、少なくとも1kb、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10kb、例えば、20、25、30、35、又は40kbである。
【0038】
1つの実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のコード鎖の配列に対して、その全長にわたって少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%相補的な配列を含む。
【0039】
本発明は、標的アンチセンスRNA転写物を標的とするsaRNAを提供し、そのような標的アンチセンスRNA転写物を効果的に及び特異的に下方制御することができる。これは、標的アンチセンスRNA転写物内の配列に対して高度な相補性を有するsaRNAにより達成することができる。saRNAは、標的アンチセンスRNA転写物内の配列に、5つ以下、好ましくは4つ又は3つ以下、より好ましくは2つ以下、更により好ましくは1つ以下のミスマッチを有し、最も好ましくはミスマッチを有していないだろう。
【0040】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、標的アンチセンスRNA転写物の領域に対して少なくとも95、98、99、又は100%の相補性を有する、少なくとも13個ヌクレオチドの配列を含む。好ましくは、標的アンチセンスRNA転写物の領域に対して少なくとも95、98、99、又は100%の相補性を有する上記配列は、長さが、少なくとも15、16、17、18、又は19個ヌクレオチドであり、好ましくは18~22個又は19~21個、最も好ましくはちょうど19個である。また本発明のsaRNAは、UU又はUUUであってもよい3’尾部を含んでいてもよい。
【0041】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、二本鎖を形成する2本の鎖を有していてもよく、一方の鎖は、ガイド鎖である。本発明のsiRNAは、標的転写物の領域に対してsiRNA様の相補性を有していてもよい。すなわち、saRNA二本鎖のガイド鎖の5’末端からヌクレオチド2~6と標的アンチセンスRNA転写物の領域との相補性が100%であってもよい。加えて、saRNAの他のヌクレオチドは、標的アンチセンスRNA転写物の領域に対して、少なくとも70、80、90、95、99、又は100%の相補性を有していてもよい。例えば、saRNAのヌクレオチド7(5’末端から数えて)から3’末端までは、標的アンチセンスRNA転写物の領域に対して、少なくとも70、80、90、95、99、又は100%の相補性を有していてもよい。
【0042】
用語「低分子干渉RNA」又は「siRNA」は、本発明の状況では、RNA干渉(RNAi)経路に関与し、特定の遺伝子の発現を干渉又は阻害する、典型的には長さが20~25個ヌクレオチドの二本鎖RNAを意味する。上記遺伝子は、上記siRNAの標的遺伝子である。例えば、C/EBPβ遺伝子の発現に干渉するsiRNAは、「C/EBPβ-siRNA」と呼ばれ、C/EBPβ遺伝子は、標的遺伝子である。C/EBPαの発現に干渉するsiRNAは、「C/EBPα-siRNA」と呼ばれ、C/EBPαは、標的遺伝子である。siRNAは、通常、長さが約21個ヌクレオチドであり、二本の鎖の各末端には3’突出(2個ヌクレオチド)を有する。
【0043】
siRNAは、上記遺伝子の1つ又は複数のRNA転写物に特定の配列に結合して切断を促進することにすることにより、標的遺伝子の発現を阻害する。典型的には、RNAiでは、RNA転写物は、mRNAであり、したがってmRNAの切断は、遺伝子発現の下方制御をもたらす。本発明では、いかなる理論にも束縛されることは望まないが、考え得る機序の1つは、C/EBPα-saRNAが、標的アンチセンスRNA転写物を切断することにより、C/EBPα遺伝子発現を調節することができるということである。
【0044】
当業者であれば、saRNAがC/EBPα遺伝子発現を調節する機序に関わらず、標的アンチセンスRNA転写物を参照することにより本発明のsaRNAを規定することが便利であることを認識するだろう。しかしながら、その代わりに、本発明のsaRNAは、C/EBPα遺伝子を参照することにより規定してもよい。標的アンチセンスRNA転写物は、C/EBPα遺伝子のコード鎖のゲノム領域に相補的であり、ひいては、本発明のsaRNAは、標的アンチセンスRNA転写物の領域に相補的であり、したがって、本発明のsaRNAは、C/EBPα遺伝子のコード鎖の領域に対して配列同一性を有すると規定することができる。標的アンチセンスRNA転写物を参照することによる本発明のsaRNAの規定に関して本明細書で考察されている特徴は全て、C/EBPα遺伝子を参照することによる本発明のsaRNAの規定に準用される。したがって、標的アンチセンスRNA転写物に対する相補性のあらゆる考察は、C/EBPα遺伝子のゲノム配列に対する同一性を含むと理解されるべきである。したがって、本発明のsaRNAは、好ましくは、C/EBPα遺伝子のゲノム配列に対して、高い同一性パーセント、例えば、少なくとも75、80、85、90、95、98、又は99%、好ましくは100%の同一性を有する。ゲノム配列は、C/EBPα遺伝子の転写開始部位の最大500個ヌクレオチド上流に又は下流にあることが好ましい。最も好ましくは、ゲノム配列は、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域内にある。したがって、saRNAは、好ましくは、C/EBPα遺伝子のプロモーター領域内にある配列に対して配列同一性を有する。
【0045】
本発明のsaRNAは、一本鎖であってもよく、又は好ましくは二本鎖であってもよい。二本鎖分子は、第1の鎖及び第2の鎖を含む。二本鎖の場合、好ましくは、二本鎖の各鎖は、長さが、少なくとも14個、より好ましくは少なくとも18個ヌクレオチド、例えば、長さが19、20、21、又は22個ヌクレオチドである。好ましくは、二本鎖は、少なくとも12個、より好ましくは少なくとも15個、より好ましくは17個、更により好ましくは少なくとも19個ヌクレオチドの長さにわたってハイブリダイズしている。各鎖は、長さがちょうど19個ヌクレオチドであってもよい。好ましくは、saRNAの長さは、30個ヌクレオチド未満である。それは、この長さを超えるオリゴヌクレオチド二本鎖では、インターフェロン応答を誘導するリスクが増加する場合があるからである。saRNA二本鎖を形成する鎖は、長さが等しくともよく、又は等しくなくともよい。
【0046】
本発明のsaRNAは、標的アンチセンスRNA転写物に相補的でない短い3’又は5’配列を含んでいてもよい。1つの実施形態では、そのような配列は、3’である。上記配列は、長さが1~5個、好ましくは2又は3個のヌクレオチドであってもよい。上記配列は、好ましくはウラシルを含み、したがって、好ましくは2又は3個ウラシルの3’伸長である。この非相補性配列は「尾部」と呼ばれる場合がある。3’尾部が存在する場合、鎖はより長くともよく、例えば、19個ヌクレオチド+3’尾部であってもよく、3’尾部は、好ましくはUU又はUUUである。本発明のsaRNAは、ダイサー基質配列又はドローシャ基質配列を更に含んでいてもよい。
【0047】
本発明のsaRNAは、フランキング配列を含んでいてもよい。フランキング配列は、本発明のsaRNAの3’末端又は5’末端に挿入されていてもよい。1つの実施形態では、フランキング配列は、miRNAの配列であり、saRNAにmiRNA構成を付与し、ドローシャ及びダイサーで切断することができる。非限定的な例では、本発明のsaRNAは、2本の鎖を有し、miR-30骨格フランキング配列にクローニングされている。
【0048】
本発明のsaRNAは、制限酵素基質又は認識配列を含んでいてもよい。制限酵素認識配列は、本発明のsaRNAの3’末端又は5’末端に存在していてもよい。制限酵素の非限定的な例としては、NotI及びAscIが挙げられる。
【0049】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、互いに安定的に対合し、各鎖の3’末端にある幾つかの非対合ヌクレオチドが3’突出を形成する2本の鎖からなる。各鎖の3’突出を形成する非対合ヌクレオチドの数は、好ましくは1~5個ヌクレオチドの範囲であり、より好ましくは1~3個ヌクレオチド、及び最も好ましくは2個ヌクレオチドである。3’突出は、上記で言及した3’尾部に形成されていてもよく、したがって、3’尾部は、3’突出であってもよい。
【0050】
したがって、本発明のsaRNAは、好ましくは、(i)標的アンチセンスRNA転写物の領域に対して少なくとも95%の相補性を有する配列、及び(ii)好ましくはウラシル残基を含む1~5個ヌクレオチドの3’尾部からなる。本発明のsaRNAは、好ましくは、存在する場合は3’尾部を除き、標的アンチセンスRNA転写物の領域に対してその全長にわたって相補性を有する。上記で言及したように、本発明のsaRNAは、「標的アンチセンスRNA転写物に相補的」である代わりに、C/EBPα遺伝子のコード鎖に対して「同一性」を有すると規定することもできる。
【0051】
saRNAの設計は、以下の文献にも開示されている:同時係争中の国際出願第GB2012/051422号、同時係争中の米国特許出願公開第2013/0164846号明細書(saRNAアルゴリズム)、米国特許第8,324,181号明細書、及びコーリーらの米国特許第7,709,566号明細書、Liらの米国特許出願公開第2010/0210707号明細書、及びVoutilaら、Mol Ther Nucleic Acids、1巻、e35(2012年)。これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
本明細書に記載したように、C/EBPα遺伝子の配列を使用して、C/EBPα-saRNAを設計する。標的C/EBPα転写物の配列は、C/EBPα-saRNAを設計するためのC/EBPα遺伝子の配列から決定することができる。しかしながら、そのようなC/EBPα転写物の存在を決定する必要はない。本発明の好適なC/EBPα-saRNAの好ましい配列は、表1に提供されている。したがって、配列番号2、4、6、8、10、及び12から選択される配列を含む第1の鎖を有するC/EBPα-saRNAが提供される。任意選択で、C/EBPα-saRNAは、これら配列の3’末端に3’尾部を含んでいてもよい。
【0053】
一本鎖C/EBPα-saRNAは、第1の鎖のみからなり、二本鎖C/EBPα-saRNAは、第2の鎖も有する。したがって、二本鎖C/EBPα-saRNAは、配列番号1、3、5、7、9、及び11から選択される配列を含む第2の鎖を有していてもよい。
【0054】
配列番号2の第1の鎖及び配列番号1の第2の鎖を有する二本鎖C/EBPα-saRNAが好ましい。
【0055】
【0056】
また、二機能性又は二重機能性オリゴヌクレオチドは、C/EBPα遺伝子発現を上方制御し、C/EBPβ遺伝子発現を下方制御するように設計される。二重機能性オリゴヌクレオチドの一方の鎖は、C/EBPα遺伝子発現を活性化し、他方は、C/EBPβ遺伝子発現を阻害する。好ましい二重機能性オリゴヌクレオチド配列は、表2Aに示されている。各鎖は、表2Bに示されるようなダイサー基質配列を更に含んでいてもよい。
【0057】
【0058】
【0059】
本発明のsaRNAは、任意の好適な方法により、例えば、合成的に生産してもよく、又は当業者に周知の標準的な分子生物学的技法を使用した細胞での発現により生産してもよい。例えば、本発明のsaRNAは、当技術分野で公知の方法を使用して、化学的に合成してもよく又は組換え的に産生してもよい。
【0060】
saRNAの化学修飾
本明細書では、saRNAの場合、用語「修飾」又は適切な場合は「修飾された」は、A、G、U、又はCリボヌクレオチドに対する構造的及び/又は化学的な修飾を指す。本発明のsaRNA分子中のヌクレオチドは、非天然ヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド等の非標準ヌクレオチドを含んでいてもよい。本発明のsaRNAは、糖、核酸塩基、又はヌクレオシド間連結等に(例えば、連結リン酸に/リン酸ジエステル結合に/ホスホジエステル骨格に)、任意の有用な修飾を含んでいてもよい。ピリミジン核酸塩基の1つ又は複数の原子は、任意選択で置換されたアミノ、任意選択で置換されたチオール、任意選択で置換されたアルキル(例えば、メチル又はエチル)、又はハロ(例えば、クロロ又はフルオロ)と交換又は置換されていてもよい。ある実施形態では、修飾(例えば、1つ又は複数の修飾)は、糖及びヌクレオシド間連結の各々に存在する。本発明による修飾は、リボ核酸(RNA)を、デオキシリボ核酸(DNA)に、トレオース核酸(TNA)に、グリコール核酸(GNA)に、ペプチド核酸(PNA)に、ロックド核酸(LNA)に、又はそれらのハイブリッドに修飾することであってもよい。非限定的な例では、Uの2’-OHが、-OMeに置換される。
【0061】
本発明のsaRNAは、糖、核酸塩基、及び/又はヌクレオシド間連結への修飾の組み合わせを含むことができる。これらの組み合わせにとしては、、本明細書に記載されているもの、又は2012年10月3日に出願された国際出願第2013/052523号に記載されているもの、特に式(Ia)~(Ia-5)、(Ib)~(If)、(IIa)~(IIp)、(IIb-1)、(IIb-2)、(IIc-1)~(IIc-2)、(IIn-1)、(IIn-2)、(IVa)~(IVl)、及び(IXa)~(IXr))の任意の1つ又は複数の修飾が挙げられる。これら文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明のsaRNAは、分子の全長にわたって一様に修飾されていてもよく、又はされていなくともよい。例えば、本発明のsaRNA中の1つ若しくは複数の又は全てのタイプのヌクレオチド(例えば、プリン若しくはピリミジン、或いはA、G、U、Cの任意の1つ若しくは複数又は全て)は、一様に修飾されていてもよく又はされていなくともよい。幾つかの実施形態では、本発明のsaRNA中の全てのヌクレオチドXが修飾されており、Xは、ヌクレオチドA、G、U、Cのいずれか1つ、又は組み合わせA+G、A+U、A+C、G+U、G+C、U+C、A+G+U、A+G+C、G+U+C、若しくはA+G+Cのいずれか1つであってもよい。
【0063】
異なる糖修飾、ヌクレオチド修飾、及び/又はヌクレオシド間連結(例えば、骨格構造)が、saRNAの種々の位置に存在してもよい。当業者であれば、ヌクレオチド類似体又は他の修飾(複数可)は、saRNAの機能を実質的に低減させずに、saRNAの任意の位置(複数可)に配置することができることを認識するだろう。本発明のsaRNAは、約1%から約100%までの(全ヌクレオチド含有量に対して、又は1つ若しくは複数のタイプのヌクレオチド、つまりA、G、U、又はCの1つ又は複数に対して)又はその間の任意のパーセントの修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい(例えば、1%から20%まで、1%から25%まで、1%から50%まで、1%から60%まで、1%から70%まで、1%から80%まで、1%から90%まで、1%から95%まで、10%から20%まで、10%から25%まで、10%から50%まで、10%から60%まで、10%から70%まで、10%から80%まで、10%から90%まで、10%から95%まで、10%から100%まで、20%から25%まで、20%から50%まで、20%から60%まで、20%から70%まで、20%から80%まで、20%から90%まで、20%から95%まで、20%から100%まで、50%から60%まで、50%から70%まで、50%から80%まで、50%から90%まで、50%から95%まで、50%から100%まで、70%から80%まで、70%から90%まで、70%から95%まで、70%から100%まで、80%から90%まで、80%から95%まで、80%から100%まで、90%から95%まで、90%から100%まで、及び95%から100%まで)。
【0064】
幾つかの実施形態では、本発明のsaRNAは、球状核酸(SNA)又は環状核酸になるように修飾されていてもよい。本発明のsaRNAの端末を化学試薬又は酵素により連結して、自由末端を有しない球状のsaRNAを産生してもよい。球状のsaRNAは、その線形形態よりも安定しており、RNase Rエキソヌクレアーゼによる消化に耐性があると予想される。球状のsaRNAは、A、G、U、又はCリボヌクレオチドに、他の構造的及び/又は化学的修飾を更に含んでいてもよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、本発明のsaRNAは、逆位脱塩基修飾(inverted abasic modification)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、逆位脱塩基修飾は、5’末端にあってもよい。
【0066】
saRNA結合体及び組み合わせ
結合は、安定性の増加及び/又は半減期の増加をもたらす場合があり、細胞、組織、又は生物の特定の部位に対して、本発明のsaRNAを標的化するのに特に有用であり得る。本発明のsaRNAは、以下のものと結合するように設計することができる:他のポリヌクレオチド、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、ミトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、アルキル化剤、ホスファート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性同位体標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収ファシリテータ(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ、タンパク質、例えば、糖タンパク質、又はペプチド、例えば、コリガンドに対して特異的親和性を有する分子、又は抗体、例えば、癌細胞、内皮細胞、若しくは骨細胞等の指定の細胞タイプに結合する抗体、ホルモン、及びホルモン受容体、脂質等の非ペプチド種、レクチン、炭水化物、ビタミン、コファクター、又は薬物。核酸分子に好適な結合体は、2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に開示されており、この文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
本発明によると、C/EBPα-saRNAは、1つ又は複数のRNAi剤、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、エンハンサーRNA、エンハンサー由来RNA、又はエンハンサー駆動RNA(eRNA)、マイクロRNA(miRNA)、miRNA結合部位、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒性DNA、tRNA、三重らせん形成、アプタマー、又はベクター等を誘導して、様々な機能を達成するRNAと共に投与してもよく、又は更にコードしていてもよい。上記の1つ又は複数のRNAi剤、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、miRNA結合部位、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒性DNA、tRNA、三重らせん形成、アプタマー、又はベクターを誘導するRNAは、少なくとも1つの修飾又は置換を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、修飾は、核酸の糖位置の化学的置換、リン酸位置の化学的置換、及び塩基位置の化学的置換から選択される。他の実施形態では、化学的修飾は、修飾ヌクレオチドの組み込み;3’キャッピング;高分子量の非免疫原性化合物との結合;親油性化合物との結合;及びリン酸骨格へのホスホロチオアートの組み込みから選択される。好ましい実施形態では、高分子量の非免疫原性化合物は、ポリアルキレングリコールであり、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0068】
1つの実施形態では、導入遺伝子を、RNAポリメラーゼIIプロモーターから同時発現させることができるように、C/EBPα-saRNAに結合させてもよい。非限定的な例では、C/EBPα-saRNAは、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)に結合されている。
【0069】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAを、DNA又はRNAアプタマーと結合させて、それによりC/EBPα-saRNA-アプタマー結合体を生成してもよい。アプタマーは、高い選択性、親和性、及び安定性を有するオリゴヌクレオチド又はペプチドである。アプタマーは、特定の安定した三次元形状をとり、それにより標的分子との非常に特異的で強固な結合を供給する。アプタマーは、低分子、タンパク質、核酸、及び更に細胞、組織、及び生物等の種々の分子標的に結合するように、反復ラウンドのin vitro選択、即ち同義的にはSELEX(試験管内進化法)により遺伝子操作されている核酸種であってもよい。核酸アプタマーは、古典的ワトソン-クリック型塩基対以外の相互作用により、分子に対する特異的結合親和性を有する。核酸アプタマーは、ファージディスプレイ又はモノクローナル抗体(mAb)により生成されるペプチドのように、選択した標的に特異的に結合すること可能であり、結合することにより、それらの標的が機能する能力を阻止する。また、ある場合には、アプタマーは、ペプチドアプタマーであってもよい。任意の特定の分子標的の場合、核酸アプタマーは、核酸のコンビナトリアルライブラリから、例えばSELEXにより特定することができる。ペプチドアプタマーは、酵母ツーハイブリッド系を使用して特定してもよい。したがって、当業者であれば、本発明のsaRNA又は細胞を、肝細胞等の標的細胞に送達するために好適なアプタマーを設計することができる。DNAアプタマー、RNAアプタマー、及びペプチドアプタマーが企図される。肝臓に特異的なアプタマーを使用して、本発明のsaRNAを肝臓に投与することが、特に好ましい。
【0070】
本明細書で使用される場合、典型的な核酸アプタマーは、サイズがおよそ10~15kDa(20~45個ヌクレオチド)であり、少なくともナノモルの親和性でその標的と結合し、密接に関連する標的を区別する。核酸アプタマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又はリボ核酸及びデオキシリボ核酸の混合であってもよい。アプタマーは、一本鎖のリボ核酸、デオキシリボ核酸、又はリボ核酸及びデオキシリボ核酸の混合であってもよい。アプタマーは、少なくとも1つの化学的修飾を含んでいてもよい。
【0071】
アプタマーの好適なヌクレオチド長は、約15から約100個ヌクレオチド(nt)までの範囲であり、種々の他の好ましい実施形態では、長さが、15~30nt、20~25nt、30~100nt、30~60nt、25~70nt、25~60nt、40~60nt、25~40nt、30~40nt、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ntのいずれか、又は40~70ntである。しかしながら、その配列は、本明細書に記載の距離にある2つの標的とアプタマーとの相互作用を収容することができる十分な可撓性を有するように設計することができる。アプタマーは、ヌクレアーゼ及び他の酵素活性からの保護を提供するように更に修飾されていてもよい。アプタマー配列は、当技術分野で知られている任意の好適な方法により修飾することができる。
【0072】
C/EBPα-saRNA-アプタマー結合体は、直接化学結合形成、ストレプトアビジン等のリンカーによる連結等の、2つの部分を連結する任意の公知の方法も使用して形成することができる。
【0073】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、抗体に結合されていてもよい。標的細胞表面受容体に対する抗体を生成する方法は、周知である。本発明のsaRNA分子は、公知の方法により、例えばRNA担体タンパク質を使用して、そのような抗体に結合することができる。その後、その結果生じた複合体を対象体に投与し、受容体媒介性エンドサイトーシスにより標的細胞に取り込まれてもよい。
【0074】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、以下のものに結合されていてもよい:コレステロール部分等の脂質部分(Letsingerら、Proc.Natl.Acid.Sci.米国、1989年、86巻:6553~6556頁)、コール酸(Manoharanら、Biorg.Med.Chem.Let.、1994年、4巻:1053~1060頁)、チオエーテル、例えば、ベリル-5-トリチルチオール(Manoharanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、1992年、660巻:306~309頁;Manoharanら、Biorg.Med.Chem.Let.、1993年、3巻:2765~2770頁)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl.Acids Res.、1992年、20巻:533~538頁)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoarasら、EMBO J、1991年、10巻:1111~1118頁;Kabanovら、FEBS Lett.、1990年、259巻:327~330頁;Svinarchukら、Biochimie、1993年、75巻:49~54頁)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール、又はトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-Hホスホナート(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995年、36巻:3651~3654頁;Sheaら、Nucl.Acids Res.、1990年、18巻:3777~3783頁)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleosides&Nucleotides、1995年、14巻:969~973頁)、又はアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995年、36巻:3651~3654頁)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim.Biophys.Acta、1995年、1264巻:229~237頁)、又はオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crookeら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1996年、277巻:923~937頁)。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Manoharanらの米国特許出願公開第20130184328号明細書に開示されているリガンドと結合されている。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。結合体は、式:リガンド-[リンカー]任意選択-[テザー]任意選択-オリゴヌクレオチド剤を有する。オリゴヌクレオチド剤は、Manoharanらの米国特許出願公開第20130184328号明細書に開示されている式(I)を有するサブユニットを含んでいてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
そのような核酸/脂質結合体の調製を教示する代表的な米国特許としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:米国特許第4,828,979号明細書;第4,948,882号明細書;第5,218,105号明細書;第5,525,465号明細書;第5,541,313号明細書;第5,545,730号明細書;第5,552,538号明細書;第5,578,717号明細書、第5,580,731号明細書;第5,591,584号明細書;第5,109,124号明細書;第5,118,802号明細書;第5,138,045号明細書;第5,414,077号明細書;第5,486,603号明細書;第5,512,439号明細書;第5,578,718号明細書;第5,608,046号明細書;第4,587,044号明細書;第4,605,735号明細書;第4,667,025号明細書;第4,762,779号明細書;第4,789,737号明細書;第4,824,941号明細書;第4,835,263号明細書;第4,876,335号明細書;第4,904,582号明細書;第4,958,013号明細書;第5,082,830号明細書;第5,112,963号明細書;第5,214,136号明細書;第5,082,830号明細書;第5,112,963号明細書;第5,214,136号明細書;第5,245,022号明細書;第5,254,469号明細書;第5,258,506号明細書;第5,262,536号明細書;第5,272,250号明細書;第5,292,873号明細書;第5,317,098号明細書;第5,371,241号明細書、5,391,723号明細書;第5,416,203号明細書、第5,451,463号明細書;第5,510,475号明細書;第5,512,667号明細書;第5,514,785号明細書;第5,565,552号明細書;第5,567,810号明細書;第5,574,142号明細書;第5,585,481号明細書;第5,587,371号明細書;第5,595,726号明細書;第5,597,696号明細書;第5,599,923号明細書;第5,599,928号明細書;及び第5,688,941号明細書。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
本発明のsaRNAは、考慮されている特定の方法に有効であることが知られている他の活性成分との組み合わせで提供することもできる。他の活性成分は、本発明のsaRNAと同時に、別々に、又は連続して投与されてもよい。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、異なる標的遺伝子を調節するsaRNAと共に投与される。非限定的な例としては、アルブミン、インスリン、又はHNF4A遺伝子を調節するsaRNAが挙げられる。任意の遺伝子の調節は、単一のsaRNA、又は2つ以上の異なるsaRNAの組み合わせを使用して達成することができる。本発明のC/EBPα-saRNAと共に投与することができるsaRNAの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:2012年6月20日に出願された国際公開第2012/175958号に開示されている、アルブミン又はHNF4Aを調節するsaRNA、両方とも2011年10月10日に出願された国際公開第2012/046084号及び第2012/046085号に開示されている、インスリンを調節するsaRNA、2006年11月13日に出願された米国特許第7,709,456号明細書、及び2010年4月23日に出願された米国特許出願公開第2010/0273863号明細書に開示されている、ヒトプロゲステロン受容体、ヒト主要ヴォールトタンパク質(hMVP)、E-カドヘリン遺伝子、p53遺伝子、又はPTEN遺伝子を調節するsaRNA、及び2006年4月11日に出願された国際公開第2006/113246号に開示されている、p21遺伝子を標的とするsaRNA。これらに文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、C/EBPβ遺伝子、つまりC/EBPβ-siRNAの発現を阻害する低分子干渉RNA又はsiRNAと共に与される。本発明の好適なsiRNAの好ましい配列は、表3に提供されている。
【0079】
【0080】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、代謝、特に肝機能を制御する1つ又は複数の薬物と共に投与される。非限定的な例では、本発明のC/EBPα-saRNAは、スタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、エゼチミブ、ナイアシン、PCSK9阻害剤、CETP阻害剤、クロフィブレート、フェノフィブリン(fenofibric)、トコトリエノール、植物ステロール、胆汁酸捕捉剤、プロブコール、又はそれらの組み合わせ等の、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール値を減少させる薬物と共に投与される。また、C/EBPα-saRNAは、Orvigらの米国特許第6287586号明細書に開示されているバナジウムビグアニド複合体と共に投与されてもよい。別の例では、C/EBPα-saRNAは、Rhodesらの国際公開第201102838号に開示されている組成物と共に投与して、血清コレステロールを低下させることができる。この文献の内容は、それらの全体が参照により組み込まれる。この組成物は、PCSK9タンパク質に選択的に結合及び阻害する抗原結合タンパク質;及び細胞でのPCSK9遺伝子の発現を阻害するRNAエフェクター剤を含む。更に別の例では、C/EBPα-saRNAは、ABC1生物活性を有するABC1ポリペプチド、又はBrooks-Wilsonらの欧州特許第1854880号明細書に記載の、コレステロールレベルを調節するABC1活性を有するABC1ポリペプチドをコードする核酸と共に投与してもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
別の実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAは、メトホルミン、スルホニル尿素、非スルホニル尿素分泌促進剤、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グルカゴン様ペプチド-1類似体、及びジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、又はそれらの組み合わせ等の、インスリン感受性を増加させるか又はII型糖尿病を治療する薬物と共に投与される。本発明のsaRNAと組み合わせて投与することができる他の肝保護剤は、Adamsら、Postgraduate Medical Journal、82巻、315~322頁(2006年)に開示されている。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0082】
ガンキリン及びFXRタンパク質
肝細胞癌(HCC)の進行は、肝臓過剰増殖及び肝臓癌に結び付く遺伝子発現の漸進的変化を伴う多段階プロセスである。肝臓癌の発癌中は、腫瘍抑制因子タンパク質Rb、p53、肝細胞核内因子4α(HNF4α)、及びC/EBP-αが中和されている。これらタンパク質の除去は、癌により活性化される26Sプロテアソームの小サブユニットであるガンキリンにより媒介される。Wangらは、ガンキリンが、C/EBPαのS193-phアイソフォームと相互作用し、それを標的としてユビキチンプロテアソーム系(UPS)媒介性分解を起こすことを開示している。ガンキリンレベルは、肝臓癌進行の初期段階中に上昇する(Wangら、J.Clin.Invest、120巻(7号):2549~2562頁(2010年)、この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。例えば、ガンキリン遺伝子(PSMD10遺伝子としても知られている)のsiRNA及び/又はガンキリン阻害剤を使用して、ガンキリンを阻害することにより、HCCを予防及び/又は治療することができる。
【0083】
Jiangらは、胆汁酸受容体(BAR)又はNR1H4としても知られているファルネソイドX受容体(FXR)が、HDAC1-C/EBPβ複合体によりガンキリンプロモータをサイレンシングすることにより、静止肝臓におけるガンキリンの発現を阻害することを見出した(Jiangら、Hepatology、57巻(3号):1098~1106頁(2013年)、この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。マウスにおけるFXRシグナル伝達の欠失は、12月齢でガンキリンプロモータの抑制解除及び肝臓癌の自然発生に結び付く。また、野生型マウスのジエチルニトロソアミン(DEN)媒介性肝臓癌は、FXRの低減及びガンキリンの活性化を伴う。高齢マウスの肝臓癌及びヒト患者の肝臓癌を調査すると、肝臓癌の自然発生中、FXRが低減する一方で、ガンキリンは上昇することが明らかになった。Jiangらは、FXRが、C/EBPβ-HDAC1複合体によりガンキリンプロモータを阻害することによって肝臓癌を予防し、ひいては腫瘍抑制因子タンパク質を分解から保護することに結び付くと結論付けた。FXRの安定化及び核内移行は、ガンキリンを阻害する。例えば、FXRアゴニスト若しくは活性化因子、又はNR1H4遺伝子の活性化因子を使用して、FXRを活性化することにより、HCCを予防及び/又は治療することができる。
【0084】
本発明のC/EBPα-saRNAは、ガンキリンを下方制御するか又はFXRを上方制御する治療剤の1つ又は複数と組み合わせて使用してもよい。この組み合わせは、HCCの予防及び/又は治療に相乗効果を示すことができる。幾つかの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAは、ガンキリン-siRNAと組み合わせて使用してもよい。二本鎖ガンキリン-siRNAは、Higashitsujiらの「Inhibition of endogenous gene expression by RNAi’section」より開示されている方法を使用して産生することができる(Higashitsujiら、Cancer Cell、8巻:75~87頁(2005年)、この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。幾つかの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAは、FXRアゴニストと組み合わせて使用してもよい。FXRアゴニスト又は活性化因子の非限定的な例としては、タウロコール酸、オベチコール酸(OCA)、INT-767(Intercept Pharmaceuticals社)、INT-777(Intercept Pharmaceuticals社)、及び以下のものに開示されている任意のFXRアゴニスト又は活性化因子が挙げられる:米国特許出願公開第20140057886号明細書、米国特許第8546365号明細書、米国特許第7932244号明細書、米国特許出願公開第20140100209号明細書、米国特許第8445472号明細書、米国特許第8114862号明細書、米国特許出願公開第20140094443号明細書、米国特許第8410083号明細書、米国特許第8796249号明細書、米国特許出願公開第20140024631号明細書、米国特許第8377916号明細書、米国特許第8258267号明細書、米国特許第7786102号明細書、米国特許第7138390号明細書、米国特許第7994352号明細書、米国特許第7858608号明細書、米国特許第7812011号明細書、米国特許出願公開第20140148428号明細書、及び米国特許出願公開第20060252670号明細書(これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0085】
製剤、送達、投与、及び用量
医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含んでいてもよく、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:所望の特定の剤形に適切なありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散助剤、又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤、又は乳化剤、保存剤等。医薬組成物を製剤化するための種々の賦形剤、及び組成物を調製するための技法は、当技術分野で知られている(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、A.R.Gennaro、Lippincott、Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2006年を参照;この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。従来の賦形剤の使用は、任意の従来の賦形剤が、任意の望ましくない生物学的効果をもたらすこと、又はそうでなければ医薬組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な様式で相互作用すること等により、物質又はその誘導体と適合しない可能性がある場合を除いて、本開示の範囲内で企図されていてもよい。
【0086】
幾つかの実施形態では、組成物は、ヒト、ヒト患者、又は対象体に投与される。本開示の目的では、語句「活性成分」は、一般的に、本明細書に記載のように送達されるC/EBPα-saRNAを指す。
【0087】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒト投与に好適な医薬組成物に関するが、当業者であれば、そのような組成物は、一般的に、任意の他の動物、例えば非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳動物への投与に好適であることを理解するだろう。組成物を種々の動物への投与に好適なものするために、ヒト投与に好適な医薬組成物を改変することは、十分に理解されており、通常技術の獣医学薬理学者であれば、必要に応じて単なる通常の実験作業を行って、そのような改変を設計及び/又は実施することができる。医薬組成物の投与が企図される対象体としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:ヒト及び/若しくは他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、及び/又はラット等の商業関連哺乳動物を含む哺乳動物;並びに/又は家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/若しくはシチメンチョウ等の商業関連鳥類を含む鳥類。
【0088】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の技術分野で知られているか又は下記で開発された任意の方法により調製することができる。一般的に、そのような調製方法は、活性成分を、賦形剤及び/又は1つ若しくは複数の他の副成分と結合させ、その後必要に応じて及び/又は望ましい場合、製品を、分割、成形、及び/又は包装して、所望の単一用量単位及び/又は複数用量単位にするステップを含む。
【0089】
本発明による医薬組成物は、単一単位用量として及び/又は複数の単一単位用量として、調製、包装、及び/又はバルクで販売されてもよい。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む、個別の量の医薬組成物である。活性成分の量は、一般的に、対象体に投与されることになる活性成分の用量、及び/又は例えばそのような用量の2分の1又は3分の1等の、そのような用量の便利な画分と等しい。
【0090】
本発明による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療される対象体の種類、大きさ、及び/又は状態に応じて、更に組成物が投与されることになる径路に応じて様々であろう。例としては、組成物は、0.1%~100%の、例えば、5~50%の、1~30%の、5~80%の、少なくとも80%(重量/重量)の活性成分を含んでいてもよい。
【0091】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、少なくとも1つのsaRNAを含んでいてもよい。非限定的な例として、製剤は、異なる配列を有する1、2、3、4、又は5つのsaRNAを含んでいてもよい。1つの実施形態では、製剤は、異なる配列を有する少なくとも3つsaRNAを含む。1つの実施形態では、製剤は、異なる配列を有する少なくとも5つsaRNAを含む。
【0092】
本発明のsaRNAは、以下のための1つ又は複数の賦形剤を使用して製剤化することができる:(1)安定性を増加させる;(2)細胞トランスフェクションを増加させる;(3)持続放出又は遅延放出を可能にする(例えば、saRNAのデポー製剤からの);(4)生体内分布を変化させる(例えば、特定の組織又は細胞タイプにsaRNAを標的化する);(5)コードタンパク質のin vivo翻訳を増加させる;及び/又は(6)コードタンパク質のin vivo放出プロファイルを変化させる。ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散助剤、又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤、又は乳化剤、保存剤等の従来の賦形剤に加えて、本発明の賦形剤としては、限定ではないが、以下のものが挙げられる:リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、saRNAでトランスフェクションされた細胞(例えば、対象体に移植するための)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、及びそれらの組み合わせ。したがって、本発明の製剤は、各々が、saRNAの安定性及び/又はsaRNAによる細胞トランスフェクションを共に増加させる量の1つ又は複数の賦形剤を含むことができる。更に、本発明のsaRNAは、自己組織化核酸ナノ粒子を使用して製剤化してもよい。本発明のsaRNAを有する製剤に使用することができる、核酸用の薬学的に許容される担体、賦形剤、及び送達剤は、2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に開示されている。この文献の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、長さが21個ヌクレオチドであり、各々がアニーリングして、活性成分としての二本鎖C/EBPα-saRNAを形成する2つの一本鎖RNAを含む。組成物は、50mM Tris-HCl、pH8.0、100mM NaCl、及び5mM EDTAで構成される塩緩衝液を更に含む。
【0094】
別の実施形態では、本発明のsaRNAは、デンドリマーを用いて送達されてもよい。デンドリマーは、高度に分岐した巨大分子である。好ましい実施形態では、本発明のsaRNAは、標的化in vivo送達用の構造的に可撓性のポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーと複合体化される。複合体は、C/EBPα-saRNA-デンドリマーと呼ぶ。デンドリマーは、高度な分子均一性、狭い分子量分布、特定のサイズ及び形状特徴、並びに高度に官能化された末端表面を有する。製造プロセスは、中心イニシエータコアから開始される一連の反復ステップである。その後の成長ステップは各々、より大きな分子直径及び分子量、並びにその前の生成よりも反応性の表面部位を有するポリマーの新たな生成である。PAMAMデンドリマーは、それらの表面に一級アミン基及び更に構造の内部に三級アミン基を担持する効率的なヌクレオチド送達系である。一級アミン基は、ヌクレオチド結合に寄与し、それらの細胞取り込みを促進し、内部の三級アミノ基は、エンドソームでプロトンスポンジとしての役割を果たし、細胞質への核酸の放出を増強する。これらデンドリマーは、それらが担持するsaRNAをリボヌクレアーゼ分解から保護し、効率的な遺伝子標的化のために、長期間にわたってエンドサイトーシスにより相当量のsaRNA放出を達成する。これらナノ粒子のin vivo効力は、以前に評価されており、生体内分布研究によると、デンドリマーは、末梢血単核細胞に優先的に蓄積し、識別できる毒性を示さずに残存することが示されている(Zhouら、Molecular Ther.2011年、19巻、2228~2238頁を参照、この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。PAMAMデンドリマーは、トリエタノールアミン(TEA)コア、ジアミノブタン(DAB)コア、シスタミンコア、ジアミノヘキサン(HEX)コア、ジアモノドデカン(diamonododecane)(DODE)コア、又はエチレンジアミン(EDA)コアを含んでいてもよい。好ましくは、PAMAMデンドリマーは、TEAコア又はDABコアを含む。
【0095】
リピドイド
リピドイドの合成は、広く一般に記載されており、これら化合物を含有する製剤は、特に、オリゴヌクレオチド又は核酸の送達に適切である(Mahonら、Bioconjug Chem.2010年 21巻:1448~1454頁;Schroederら、J Intern Med.2010年 267巻:9~21頁;Akincら、Nat Biotechnol.2008年 26巻:561~569頁;Loveら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2010年 107巻:1864~1869頁;Siegwartら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2011年 108巻:12996~3001頁を参照。これらの文献は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0096】
これらリピドイドは、二本鎖低分子干渉RNA分子をげっ歯動物及び非ヒト霊長類に効果的に送達するために使用されているが(Akincら、Nat Biotechnol.2008年 26巻:561~569頁;Frank-Kamenetskyら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2008年 105巻:11915~11920頁;Akincら、Mol Ther.2009年 17巻:872~879頁;Loveら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2010年 107巻:1864~1869頁;Leuschnerら、Nat Biotechnol.2011年 29巻:1005~1010頁を参照。これらの文献は全て、それらの全体が本明細書に組込まれる)、本開示は、saRNAの送達におけるそれらの製剤化及び使用を記載するものである。これらリピドイドを含む複合体、ミセル、リポソーム、又は粒子を調製することができ、したがって、局所的な及び/又は全身性の投与経路によりリピドイド製剤を注射して、saRNAの効果的な送達をもたらすことができる。saRNAのリピドイド複合体は、これらに限定されないが、静脈内径路、筋肉内径路、又は皮下径路を含む種々の手段により投与することができる。
【0097】
核酸のin vivo送達は、これらに限定されないが、製剤組成物、粒子ペグ化の性質、負荷量の度合い、オリゴヌクレオチド対脂質の比率、及びこれに限定されないが、粒径を含む生物物理学的パラメータを含む、多くのパラメータにより影響を受ける(Akincら、Mol Ther.2009年 17巻:872~879頁。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一例として、ポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質のアンカー鎖長をわずかに変化させると、in vivo効力が著しく影響を受ける場合がある。これらに限定されないが、ペンタ[3-(1-ラウリルアミノプロピオニル)]-トリエチレンテトラミン塩酸塩(TETA-5LAP;別名 98N12-5、Murugaiahら、Analytical Biochemistry、401巻:61頁(2010年)を参照。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、C12-200(誘導体及び変異体を含む)、及びMD1を含む、様々なリピドイドを有する製剤のin vivo活性を試験することができる。
【0098】
本明細書で「98N12-5」と呼ばれているリピドイドは、Akincら、Mol Ther.2009年 17巻:872~879頁に開示されており、この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。(
図2を参照)
本明細書では「C12-200」と呼ばれているリピドイドは、Loveら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2010年 107巻:1864~1869頁(
図2を参照)並びにLiu及びHuang、Molecular Therapy.2010年 669~670頁(
図2を参照)に開示されており、これらの文献の内容は両方とも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。リピドイド製剤は、saRNAに加えて、3又は4つ以上のいずれかの成分を含む粒子を含むことができる。一例として、98N12-5を含むが、それに限定されない、あるリピドイドを有する製剤は、42%リピドイド、48%コレステロール、及び10%PEG(C14アルキル鎖長)を含有していてもよい。別の例として、C12-200を含むが、これに限定されない、あるリピドイドを有する製剤は、50%リピドイド、10%ジステロイルホスファチジルコリン、38.5%コレステロール、及び1.5%PEG-DMGを含有していてもよい。
【0099】
1つの実施形態では、全身性静脈内投与用の、リピドイドと共に製剤化したsaRNAは、肝臓を標的とすることができる。例えば、saRNAを使用し、42% 98N12-5、48%コレステロール、及び10%PEG-脂質の脂質モル組成を含み、総脂質対saRNAの最終重量比が、約7.5対1であり、PEG脂質のアルキル鎖長がC14であり、平均粒径がおよそ50~60nmである、最終的な最適化された静脈用製剤は、90%を超える肝臓への製剤分布をもたらすことができる(Akincら、Mol Ther.2009年 17巻:872~879頁を参照。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の例では、C12-200(米国特許仮出願第61/175,770号明細書及び国際公開第2010129709号を参照。これらの文献の各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれる)リピドイドを使用する静脈用製剤は、50/10/38.5/1.5のモル比のC12-200/ジステロイルホスファチジルコリン/コレステロール/PEG-DMGを有し、総脂質対核酸の重量比が7対1であり、平均粒径が80nmであってもよく、saRNAを効率的に送達することができる(Loveら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2010年 107巻:1864~1869頁を参照。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、MD1リピドイド含有製剤を使用して、saRNAをin vivoで効果的に肝細胞に送達することができる。筋肉内又は皮下径路用の最適化リピドイド製剤の特徴は様々であり、標的細胞タイプ、及び製剤が細胞外マトリックスから血流へと拡散する能力に著しく依存する場合がある。効果的な肝細胞送達には、内皮開口部の大きさを考慮すると150nm未満の粒径が望ましいが(Akincら、Mol
Ther.2009年 17巻:872~879頁を参照。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、内皮細胞、骨髄系細胞、及び筋細胞を含むが、それらに限定されない他の細胞タイプに製剤を送達するためのリピドイド製剤化saRNAの使用は、同様のサイズ制限を受けない場合がある。siRNAを骨髄系細胞及び内皮等の他の非肝細胞にin vivo送達するためのリピドイド製剤の使用は、報告されている(Akincら、Nat Biotechnol.2008年 26巻:561~569頁;Leuschnerら、Nat Biotechnol.2011年 29巻:1005~1010頁;Choら、Adv.Funct.Mater.2009年 19巻:3112~3118頁;8th International Judah Folkman Conference、ケンブリッジ、マサチューセッツ州 2010年10月8~9日を参照。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。単球等の骨髄系細胞への効果的な送達には、リピドイド製剤は、同様の成分モル比を有していてもよい。様々な比率のリピドイド、並びにジステロイルホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG-DMGを含むが、それらに限定されない他の成分を使用して、肝細胞、骨髄系細胞、筋細胞等を含むが、それらに限定されない様々な細胞タイプに送達するためにsaRNA製剤を最適化することができる。例えば、成分モル比は、これらに限定されないが、50%C12-200、10%ジステロイルホスファチジルコリン、38.5%コレステロール、及び1.5%PEG-DMGを含んでいてもよい(Leuschnerら、Nat Biotechnol 2011年 29巻:1005~1010頁を参照。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。皮下送達又は筋肉内送達のいずれかにより核酸を細胞(これらに限定されないが、脂肪細胞及び筋細胞を含む)に局所送達するためのリピドイド製剤の使用は、全身性送達に望ましい製剤成分の全てを必要とするとは限らない場合があり、したがって、リピドイド及びsaRNAのみを含んでいてもよい。
【0100】
リポソーム、リポプレックス、及び脂質ナノ粒子
本発明のsaRNAは、1つ又は複数のリポソーム、リポプレックス、又は脂質ナノ粒子を使用して製剤化することができる。1つの実施形態では、saRNAの医薬組成物は、リポソームを含む。リポソームは、主に脂質二分子膜で構成されていてもよく、栄養分及び医薬製剤を投与するための送達媒体として使用することができる人工的に調製された小胞である。リポソームは、これらに限定されないが、直径が数百ナノメートルであってもよく、狭い水性区画により離間されている一連の同心状二分子膜を含んでいてもよい多重膜小胞(MLV)、直径が50nm未満であってもよい小型単一セル小胞(SUV)、及び直径が50~500nmであってもよい大型単層膜小胞(LUV)等、様々サイズであり得る。リポソームの構成は、不健康な組織に対するリポソームの結合を向上するために、又はエンドサイトーシスを含むが、それに限定されない事象を活性化するために、これらに限定されないが、オプソニン又はリガンドを含んでいてもよい。リポソームは、医薬製剤の送達を向上させるために、高pH又は低pHを含有していてもよい。
【0101】
リポソームの形成は、これらに限定されないが、封入された医薬製剤、並びにリポソーム成分、脂質小胞が分散されている媒体の性質、封入された物質の有効濃度及びその毒性の可能性、小胞の適用及び/又は送達中に伴う任意の追加プロセス、最適化サイズ、目的応用のための小胞の多分散性及び保管寿命、並びに安全で効率的なリポソーム製品の大規模生産のバッチ間再現性及び可能性等の、物理化学的特徴に依存する場合がある。
【0102】
1つの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物としては、限定ではないが、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、Marina Biotech社製(ボセル、ワシントン州)のDiLa2リポソーム、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、MC3(米国特許出願公開第20100324120号明細書;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びこれらに限定されないが、Janssen Biotech社製(Horsham、ペンシルベニア州)のDOXIL(登録商標)等の低分子薬を送達することができるリポソームで形成されたもの等のリポソームが挙げられる。
【0103】
1つの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物としては、限定ではないが、以前に記載されており、in vitro及びin vivoでのオリゴヌクレオチド送達に好適であることが記載及び示されている安定化プラスミド-脂質粒子(SPLP)又は安定化核酸脂質粒子(SNALP)の合成で形成されたもの等のリポソームが挙げられる(Wheelerら、Gene Therapy.1999年 6巻:271~281頁;Zhangら、Gene Therapy.1999年 6巻:1438~1447頁;Jeffsら、Pharm Res.2005年 22巻:362~372頁;Morrisseyら、Nat Biotechnol.2005年 2巻:1002~1007;Zimmermannら、Nature.2006年 441巻:111~114頁;Heyesら、J Contr Rel.2005年 107巻:276~287頁;Sempleら、Nature Biotech.2010年 28巻:172~176頁;Judgeら、J Clin Invest.2009年 119巻:661~673頁;deFougerolles Hum Gene Ther.2008年 19巻:125~132頁を参照。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。Wheelerらによる初期製造方法は、界面活性剤透析法であり、その後Jeffsらにより改良された。これは、自発性小胞形成方法と呼ばれている。リポソーム製剤は、saRNAに加えて3~4つの脂質成分で構成されていてもよい。一例として、リポソームは、これらに限定されないが、Jeffsらにより記載されているように、55%コレステロール、20%ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、10%PEG-S-DSG、及び15%1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)を含有することができる。別の例では、あるリポソーム製剤は、これらに限定されないが、Heyesらにより記載されているように、48%コレステロール、20%DSPC、2%PEG-c-DMA、及び30%陽イオン性脂質を含有していてもよく、上記陽イオン性脂質は、1,2-ジステアルロキシ(distearloxy)-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、DODMA、DLin-DMA、又は1,2-ジリノレニルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)であってもよい。別の例では、核酸-脂質粒子は、Maclachlanらの国際公開第2009127060号に記載のように、約50mol%から約85mol%までの在粒子総脂質を含む陽イオン性脂質;約13mol%から約49.5mol%までの在粒子総脂質を含む非陽イオン性脂質;及び約0.5mol%から約2mol%までの在粒子総脂質を含む、粒子の凝集を阻害する複合脂質を含んでいてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。別の例では、核酸-脂質粒子は、Maclachlanらの米国特許出願第2006008910号明細書に開示されている任意の核酸-脂質粒子であってもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、核酸-脂質粒子は、式Iの陽イオン性脂質、非陽イオン性脂質、及び粒子の凝集を阻害する複合脂質を含んでいてもよい。
【0104】
1つの実施形態では、saRNAは、官能化された脂質二分子膜間が架橋されていてもよい脂質小胞で製剤化してもよい。
1つの実施形態では、リポソームは、Ballyらの米国特許第5595756号明細書に開示されている糖修飾脂質を含有していてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。脂質は、約10molパーセントの量のガングリオシド及びセレブロシドであってもよい。
【0105】
1つの実施形態では、saRNAは、陽イオン性脂質を含むリポソームで製剤化されていてもよい。リポソームは、国際公開第2013006825号に記載のように、陽イオン性脂質中のチッ素原子対saRNA中のホスファートのモル比(N:P比)が、1:1~20:1であってもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、リポソームは、N:P比が、20:1超又は1:1未満である。
【0106】
1つの実施形態では、saRNAは、脂質-ポリカチオン複合体で製剤化されていてもよい。脂質-ポリカチオン複合体の形成は、当技術分野で知られている方法及び/又は米国特許出願公開第20120178702号明細書に記載の方法により達成することができる。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、ポリカチオンとしては、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリオルニチン、及び/又はポリアルギニン、及び国際公開第2012013326号明細書に記載の陽イオン性ペプチド等の、陽イオン性ペプチド又はポリペプチドが挙げられる場合がある。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、saRNAは、これらに限定されないが、コレステロール又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)等の中性脂質を更に含んでいてもよい脂質-ポリカチオン複合体で製剤化してもよい。
【0107】
リポソーム製剤は、これらに限定されないが、陽イオン性脂質成分の選択、陽イオン性脂質の飽和度、ペグ化の性質、全成分の比率、及びサイズ等の生物物理学的パラメータにより影響を受ける場合がある。Sempleら(Sempleら、Nature Biotech.2010年 28巻:172~176頁;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)による1つの例では、リポソーム製剤は、57.1%陽イオン性脂質、7.1%ジパルミトイルホスファチジルコリン、34.3%コレステロール、及び1.4%PEG-c-DMAで構成されていた。
【0108】
幾つかの実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)製剤中のPEG比率を、増加又は減少させてもよく、及び/又はPEG脂質の炭素鎖長をC14からC18に改変して、LNP製剤の薬物動態及び/又は生体内分布を変更してもよい。非限定的な例として、LNP製剤は、陽イオン性脂質、DSPC、及びコレステロールと比較して、1~5%の脂質モル比のPEG-c-DOMGを含有していてもよい。別の実施形態では、PEG-c-DOMGは、これらに限定されないが、PEG-DSG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)、又はPEG-DPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)等のPEG脂質と置換されていてもよい。陽イオン性脂質は、これらに限定されないが、DLin-MC3-DMA、DLin-DMA、C12-200、及びDLin-KC2-DMA等の、当技術分野で知られている任意の脂質から選択することができる。
【0109】
1つの実施形態では、saRNAは、国際公開第2012170930号に記載の脂質ナノ粒子等の脂質ナノ粒子で製剤されていてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
1つの実施形態では、本発明の製剤に使用することができる陽イオン性脂質は、これらに限定されないが、以下の文献に記載されている陽イオン性脂質から選択してもよい:国際公開第2012040184号、国際公開第2011153120号、国際公開第2011149733号、国際公開第2011090965号、国際公開第2011043913号、国際公開第2011022460号、国際公開第2012061259号、国際公開第2012054365号、国際公開第2012044638号、国際公開第2010080724号、国際公開第201021865号、及び国際公開第2008103276号、米国特許第7,893,302号明細書、第7,404,969号明細書、及び第8,283,333号明細書、米国特許出願公開第20100036115号明細書、及び第20120202871号明細書。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、陽イオン性脂質は、これらに限定されないが、以下の文献に記載の式Aから選択してもよい:国際公開第2012040184号、国際公開第2011153120号、国際公開第2011149733号、国際公開第2011090965号、国際公開第2011043913号、国際公開第2011022460号、国際公開第2012061259号、国際公開第2012054365号、及び国際公開第2012044638号。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。更に別の実施形態では、陽イオン性脂質は、これらに限定されないが、国際公開第2008103276号の式CLI~CLXXIX、米国特許第7,893,302号明細書の式CLI~CLXXIX、米国特許第7,404,969号明細書の式CLI~CLXXXXII、及び米国特許出願公開第20100036115号明細書の式I~VIから選択してもよい。これらの文献の各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。更に別の実施形態では、陽イオン性脂質は、Gaucheronらの米国特許第7223887号明細書に開示されている陽イオン性脂質等の多価陽イオン性脂質であってもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。陽イオン性脂質は、Gaucheronらの米国特許第7223887号明細書に記載されているように、2つの四級アミン基を含む正荷電頭部基及び4つの炭化水素鎖を含む疎水性部分を有していてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。更に別の実施形態では、陽イオン性脂質は、Maierらの米国特許出願公開第20130195920号明細書に開示されている生分解性脂質のように生分解性であってもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。陽イオン性脂質は、Maierらの米国特許出願第20130195920号明細書の式I~IVに記載されているように、陽イオン性脂質の脂質部分に位置する1つ又は複数の生分解性基を有していてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、陽イオン性脂質は、以下のものから選択してもよい:(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-9-アミン、(1Z,19Z)-N5N-ジメチルペンタコサ-l6,19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘンイコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Ζ、18Ζ)-Ν、Ν-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z、21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-l0-アミン、1-[(11Z,14Z)-l-ノニルイコサ(nonylicosa)-11,14-ジエン-l-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-20-エン-l0-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルエプタコサ-15-エン-l0-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコサ-14-エン-l0-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコサ-17-エン-l0-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコンタ-24-エン-l0-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20-エン-l0-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22-エン-l0-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘンイコサ-12,15-ジエン-1-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-l3,16-ジエン-l-アミン、N,N-ジメチル-l-[(lS,2R)-2-オクチルシクロプロピル]エプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、Ν,Ν-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(lS,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘンイコサン-l0-アミン、Ν,Ν-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(lR,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、Ν、Ν-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、Ν,Ν-ジメチル-[(lR,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R、2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-Ν、Ν-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-l-[(lS,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、R-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、S-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-[(5Z)-オクタ-5-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘプチロキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、Ν、Ν-ジメチル-1-(ノニルオキシ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、Ν、Ν-ジメチル-1-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;(2S)-N,N-ジメチル-1-[(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-3-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-Ν,Ν-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(13Z,16Z)-ドコサ-l3,16-ジエン-l-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z)-ドコサ-13-エン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(13Z)-ドコサ-13-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(9Z)-ヘキサデカ-9-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-N,N-ジメチル-H(1-メトイルオクチル(metoyloctyl))オキシ]-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2R)-1-[(3,7-ジメチルオクチル)オキシ]-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(オクチルオキシ)-3-({8-[(1S、2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-{[8-(2-オクリルシクロプロピル(oclylcyclopropyl))オクチル]オキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、及び(1lE,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-l1,20,2-トリエン-10-アミン、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【0111】
1つの実施形態では、脂質は、国際公開第2012170889号記載されているもの等の切断可能な脂質であってもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
1つの実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子は、本明細書に記載されている及び/又は当技術分野で知られている少なくとも1つの陽イオン性ポリマーを含んでいてもよい。
【0113】
1つの実施形態では、陽イオン性脂質は、当技術分野で知られている方法により、及び/又は以下の文献に記載されている方法により合成してもよい:国際公開第2012040184号、国際公開第2011153120号、国際公開第2011149733号、国際公開第2011090965号、国際公開第2011043913号、国際公開第2011022460号、国際公開第2012061259号、国際公開第2012054365号、国際公開第2012044638号、国際公開第2010080724号、及び国際公開第201021865号。これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0114】
1つの実施形態では、saRNAのLNP製剤は、3%の脂質モル比のPEG-c-DOMGを含有していてもよい。別の実施形態では、saRNAのLNP製剤は、1.5%の脂質モル比のPEG-c-DOMGを含有していてもよい。
【0115】
1つの実施形態では、saRNAの医薬組成物は、国際公開第2012099755号に記載されているペグ化脂質の少なくとも1つを含んでいてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0116】
1つの実施形態では、LNP製剤は、PEG-DMG2000(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(phophoethanolamine)-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)を含有していてもよい。1つの実施形態では、LNP製剤は、当技術分野で知られている陽イオン性脂質であるPEG-DMG2000及び少なくとも1つの他の成分を含有していてもよい。別の実施形態では、LNP製剤は、当技術分野で知られている陽イオン性脂質であるPEG-DMG2000、DSPC、及びコレステロールを含有していてもよい。非限定的な例として、LNP製剤は、PEG-DMG2000、DLin-DMA、DSPC、及びコレステロールを含有していてもよい。別の非限定的な例として、LNP製剤は、PEG-DMG2000、DLin-DMA、DSPC、及びコレステロールを、2:40:10:48のモル比で含んでいてもよい(例えば、Geallら、Nonviral delivery of self-amplifying RNA vaccines、PNAS 2012年;PMID:22908294を参照。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の非限定的な例として、本明細書に記載のsaRNAは、米国特許出願公開第20120207845号明細書に記載のような、非経口径路により送達されるナノ粒子で製剤化されていてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、陽イオン性脂質は、Manoharanらの米国特許出願公開第20130156845号明細書及びManoharanらの米国特許出願公開第20130129785号明細書、Wasanらの国際公開第2012047656号、Chenらの国際公開第2010144740号、Ansellらの国際公開第2013086322号、又はManoharanらの国際公開第2012016184号に開示されている陽イオン性脂質であってもよい。,これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0117】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Hopeらの米国特許出願公開第20130017223号明細書に記載のような第1及び第2の陽イオン性脂質等の、複数の陽イオン性脂質で製剤化されていてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。第1の陽イオン性脂質は、第1の特性に基づいて選択することができ、第2の陽イオン性脂質は、第2の特性に基づいて選択することができ、上記特性は、米国特許出願公開第20130017223号明細書で概説されているように決定することができる。この文献内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。1つの実施形態では、第1及び第2の特性は、補完的である。
【0118】
別の実施形態では、saRNAは、1つ又は複数の陽イオン性脂質、及び1つ又は複数の第2の脂質、及び1つ又は複数の核酸を含む脂質粒子で製剤化されてもよく、上記脂質粒子は、Cullisらの米国特許出願公開第20120276209号明細書に記載されているような中実コアを含む。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Satishchandranらの欧州特許第2298358号明細書に記載のもの等の、水中油型(o/w)エマルジョン中で陽イオン性両親媒性物質と複合体化されていてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。陽イオン性両親媒性物質は、陽イオン性脂質、修飾又は未修飾スペルミン、ブピバカイン、又は塩化ベンザルコニウムであってもよく、油は、植物油であってもよく、又は動物油であってもよい。非限定的な例として、少なくとも10%の核酸-陽イオン性両親媒性物質複合体は、水中油型エマルジョンの油相にあってもよい(例えば、Satishchandranらの欧州特許公開第2298358号明細書に記載の複合体を参照。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0120】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、陽イオン性化合物及び中性脂質の混合物を含む組成物で製剤化されてもよい。非限定的な例として、陽イオン性化合物は、Ansellらの国際公開第1999010390号に開示されている式(I)であってもよく、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれており、中性脂質は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、及びスフィンゴミエリンからなる群から選択されてもよい。
【0121】
1つの実施形態では、LNP製剤は、国際公開第2011127255号又は国際公開第2008103276号に記載の方法により製剤化されてもよい。これら文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、本発明のsaRNAは、国際公開第2011127255号及び/又は国際公開第2008103276号に記載の脂質ナノ粒子(LNP)製剤のいずれかに封入されていてもよい。これら文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0122】
1つの実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は、ポリカチオン性組成物を含んでいてもよい。非限定的な例として、ポリカチオン組成物は、米国特許出願公開第20050222064号明細書の式1~60から選択されてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、ポリカチオン組成物を含むLNP製剤を、本明細書に記載のsaRNAのin vivo及び/又はin vitro送達に使用してもよい。
【0123】
1つの実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は、透過性エンハンサー分子を更に含んでいてもよい。非限定的な透過性エンハンサー分子は、米国特許出願公開第20050222064号明細書に記載されている。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0124】
1つの実施形態では、医薬組成物は、これらに限定されないが、以下のもの等のリポソームで製剤化されてもよい;DiLa2リポソーム(Marina Biotech社、ボセル、ワシントン州)、SMARTICLES(登録商標)/NOV340(Marina Biotech社、ボセル、ワシントン州)、中性DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)に基づくリポソーム(例えば、卵巣癌へのsiRNA送達(Landenら、Cancer Biology&Therapy 2006年 5巻(12号)1708~1713頁);この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びヒアルロナン被覆リポソーム(Quiet Therapeutics社、Israel)。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、Panznerの国際公開第2008/043575号及びEsslerらの米国特許第8580297号明細書に開示されている任意の両性リポソームで製剤化されてもよい。これらの文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。両性リポソームは、陽イオン性両親媒性物質、陰イオン性両親媒性物質、及び任意選択の1つ又は複数の中性両親媒性物質を含む脂質の混合物を含んでいてもよい。両性リポソームは、その頭部が1つ又は複数の両性基で置換されている、両親媒性分子に基づく両性化合物を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、Esslerらの米国特許出願公開第20140227345号明細書に開示されているような、4~9の等電点を有する1つ又は複数の両性基を含む両性脂質で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
ナノ粒子製剤は、炭水化物担体及び核酸分子(例えば、saRNA)を含む炭水化物ナノ粒子であってもよい。非限定的な例として、炭水化物担体としては、これらに限定されないが、無水物修飾フィトグリコーゲン又はグリコーゲン型物質、フィトグリコーゲンオクテニルスクシナート、フィトグリコーゲンベータデキストリン、無水物修飾フィトグリコーゲンベータデキストリンを挙げることができる。(例えば、国際公開第2012109121号を参照;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0126】
脂質ナノ粒子製剤は、陽イオン性脂質を、迅速除去脂質ナノ粒子(reLNP、rapidly eliminated lipid nanoparticle)として知られている生分解性陽イオン性脂質に置換することにより改良されてもよい。これらに限定されないが、DLinDMA、DLin-KC2-DMA、及びDLin-MC3-DMA等のイオン性陽イオン性脂質は、時間と共に血漿及び組織に蓄積することが示されており、毒性源となる可能性があり得る。迅速除去脂質の迅速な代謝は、ラットでは1mg/kg用量から10mg/kg用量までも、脂質ナノ粒子の耐容性及び治療指数を向上させることができる。酵素分解性エステル結合を組み込むことにより、reLNP製剤の活性を依然として維持させつつ、陽イオン性成分の分解及び代謝プロファイルを向上させることができる。エステル結合は、脂質鎖内に内部的位置していてもよく、又は脂質鎖の末端に末端的に位置していてもよい。内部エステル結合は、脂質鎖の任意の炭素を置換してもよい。
【0127】
1つの実施形態では、saRNAは、限定ではないが、以下のもの等のリポプレックスとして製剤化されてもよい:Silence Therapeutics社(ロンドン、英国)のATUPLEX(商標)系、DACC系、DBTC系、及び他のsiRNA-リポプレックス技術、STEMGENT(登録商標)社製(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)のSTEMFECT(商標)、及び核酸のポリエチレンイミン(PEI)又はプロタミンに基づく標的送達及び非標的送達(Alekuら、Cancer Res.2008年 68巻:9788~9798頁;Strumbergら、Int J Clin Pharmacol Ther 2012年 50巻:76~78頁;Santelら、Gene Ther 2006年 13巻:1222~1234頁;Santelら、Gene Ther 2006年 13巻:1360~1370頁;Gutbierら、Pulm Pharmacol.Ther.2010年 23巻:334~344頁;Kaufmannら、Microvasc Res 2010年 80巻:286~293頁 Weideら、J Immunother.2009年 32巻:498~507頁;Weideら、J Immunother.2008年 31巻:180~188頁;Pascolo Expert Opin.Biol.Ther.4巻:1285~1294頁;Fotin-Mleczekら、2011年 J.Immunother.34巻:1~15頁;Songら、Nature Biotechnol.2005年、23巻:709~717頁;Peerら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2007年 6;104:4095~4100頁;deFougerolles Hum Gene Ther.2008年 19巻:125~132頁;これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0128】
また、1つの実施形態では、そのような製剤は、肝細胞、免疫細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、抗原提示細胞、及び白血球を含むが、それらに限定されない様々な細胞タイプに対して、in vivoで受動的に又は能動的に指向するように構築されていてもよく、そのように組成が変更されていてもよい(Akincら、Mol Ther.2010年 18巻:1357~1364頁;Songら、Nat Biotechnol.2005年 23巻:709~717頁;Judgeら、J Clin Invest.2009年 119巻:661~673頁;Kaufmannら、Microvasc Res 2010年 80巻:286~293頁;Santelら、Gene Ther 2006年 13巻:1222~1234頁;Santelら、Gene Ther 2006年 13巻:1360~1370頁;Gutbierら、Pulm Pharmacol.Ther.2010年 23巻:334~344頁;Bashaら、Mol.Ther.2011年 19巻:2186~2200頁;Fenske及びCullis、Expert Opin Drug Deliv.2008年 5巻:25~44頁;Peerら、Science.2008年 319巻:627~630頁;Peer及びLieberman、Gene Ther.2011年 18巻:1127~1133頁;これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。肝細胞に対して製剤を受動標的化する1つの例としては、アポリポタンパク質Eに結合し、これらの製剤の肝細胞との結合及び肝細胞による取り込みをin vivoで促進することが示されている、DLin-DMA、DLin-KC2-DMA、及びDLin-MC3-DMAに基づく脂質ナノ粒子製剤が挙げられる(Akincら、Mol Ther.2010年 18巻:1357~1364頁;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。また、製剤は、限定ではないが、葉酸、トランスフェリン、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)に代表されるような様々なリガンドをそれらの表面に発現させることにより、及び抗体標的化手法により選択的に標的化することができる(Kolhatkarら、Curr Drug Discov Technol.2011年 8巻:197~206頁;Musacchio及びTorchilin、Front Biosci.2011年 16巻:1388~1412頁;Yuら、Mol Membr
Biol.2010年 27巻:286~298頁;Patilら、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.2008年 25巻:1~61頁;Benoitら、Biomacromolecules.2011年 12巻:2708~2714頁;Zhaoら、Expert Opin Drug Deliv.2008年 5巻:309~319頁;Akincら、Mol Ther.2010年 18巻:1357~1364頁;Srinivasanら、Methods Mol Biol.2012年 820巻:105~116頁;Ben-Arieら、Methods Mol Biol.2012年 757巻:497~507頁;Peer 2010 J Control Release.20巻:63~68頁;Peerら、Proc Natl Acad Sci 米国、 2007年 104巻:4095~4100頁;Kimら、Methods Mol Biol.2011年 721巻:339~353頁;Subramanyaら、Mol Ther.2010年 18巻:2028~2037頁;Songら、Nat Biotechnol.2005年 23巻:709~717頁;Peerら、Science.2008年 319巻:627~630頁;Peer及びLieberman、Gene Ther.2011年 18巻:1127~1133頁;これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0129】
1つの実施形態では、saRNAは、中実脂質ナノ粒子として製剤化される。中実脂質ナノ粒子(SLN)は、10~1000nmの平均直径を有する球状であってもよい。SLNは、親油性分子を可溶化することができ、界面活性剤及び/又は乳化剤で安定化させることができる中実脂質コアマトリクスを有する。更なる実施形態では、脂質ナノ粒子は、自己組織化脂質-ポリマーナノ粒子であってもよい(Zhangら、ACS Nano、2008年、2巻(8号)、1696~1702頁を参照;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0130】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、制御放出及び/又は標的送達用に製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「制御放出」は、治療結果を達成するための特定の放出パターンに従う医薬組成物又は化合物の放出プロファイルを指す。1つの実施形態では、saRNAは、本明細書に記載されているか及び/又は当技術分野で知られている、制御放出及び/又は標的送達用の送達剤に封入されていてもよい。本明細書で使用される場合、用語「封入する」は、包囲する、取り囲む、又は包み込むことを意味する。本発明の化合物の製剤に関する場合、封入は、実質的でもよく、完全にでもよく、又は部分的にであってもよい。用語「実質的に封入される」は、本発明の医薬組成物又は化合物の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.9超、又は99.999%超が、送達剤内に包囲され、取り囲まれ、又は包み込まれていてもよいことを意味する。用語「部分的に封入される」は、本発明の医薬組成物又は化合物の10、10、20、30、40、又は50未満が、送達剤内に包囲され、取り囲まれ、又は包み込まれていてもよいことを意味する。有利には、封入は、蛍光顕微鏡及び/又は電子顕微鏡を使用して、本発明の医薬組成物又は化合物の漏出又は活性を測定することにより決定することができる。例えば、本発明の医薬組成物又は化合物の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、又は99.99%超が送達剤に封入されている。
【0131】
別の実施形態では、saRNAを、脂質ナノ粒子又は迅速除去脂質ナノ粒子に封入してもよく、その後、脂質ナノ粒子又は迅速除去脂質ナノ粒子を、本明細書に記載されている及び/又は当技術分野で知られているポリマー、ヒドロゲル、及び/又は外科的封止材に封入してもよい。非限定的な例として、ポリマー、ヒドロゲル、又は外科的封止材は、PLGA、エチレン酢酸ビニル(EVAc)、ポロキサマー、GELSITE(登録商標)(Nanotherapeutics,Inc.社、アラチュア、フロリダ州)、HYLENEX(登録商標)(Halozyme Therapeutics社、サンディエゴ、カリフォルニア州)、フィブリノゲンポリマー(Ethicon,Inc.社、コルネリア、ジョージア州)、TISSELL(登録商標)(Baxter International,Inc社、ディアフィールド、イリノイ州)、PEG系封止材、及びCOSEAL(登録商標)(Baxter International,Inc社、ディアフィールド、イリノイ州)等の外科的封止材であってもよい。
【0132】
別の実施形態では、脂質ナノ粒子は、対象体に注射されるとゲルを形成することができる、当技術分野で知られている任意のポリマーに封入されてもよい。別の非限定的な例として、脂質ナノ粒子は、生分解性であってもよいポリマーマトリックスに封入されてもよい。
【0133】
また、1つの実施形態では、制御放出及び/又は標的送達用のsaRNA製剤は、少なくとも1つの制御放出コーティングを含んでいてもよい。制御放出コーティングとしては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:OPADRY(登録商標)、ポリビニルピロリドン/ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、EUDRAGIT RL(登録商標)、EUDRAGIT RS(登録商標)、及びエチルセルロース水性分散剤(AQUACOAT(登録商標)及びSURELEASE(登録商標))等のセルロース誘導体。
【0134】
1つの実施形態では、制御放出及び/又は標的送達製剤は、ポリカチオン性側鎖を含んでいてもよい少なくとも1つ分解性ポリエステルを含んでいてもよい。分解性ポリエステルとしては、これらに限定されないが、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、分解性ポリエステルとしては、ペグ化ポリマーを形成するPEG結合体を挙げることができる。
【0135】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Manoharanら米国特許出願公開第20130202652号明細書に開示されている標的部分等の標的化部分を有する標的化脂質で製剤化してもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、Manoharanらの米国特許出願公開第20130202652号明細書の式Iの標的化部分を、所望の器官、組織、細胞、細胞タイプ若しくはサブタイプ、又は細胞器官に脂質を局在化しやすくするために選択してもよい。本発明で企図される非限定的な標的化部分としては、トランスフェリン、アニスアミド、RGDペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、フコース、抗体、又はアプタマーが挙げられる。
【0136】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、治療用ナノ粒子に封入されもよい。治療用ナノ粒子は、本明細書に記載の方法により、及びこれらに限定されないが、以下のもの等の、当技術分野で知られている方法により製剤化してもよい:国際公開第2010005740号、国際公開第2010030763号、国際公開第2010005721号、国際公開第2010005723号、国際公開第2012054923号、米国特許出願公開第20110262491号明細書、米国特許出願公開第20100104645号明細書、米国特許出願公開第20100087337号明細書、米国特許出願公開第20100068285号明細書、米国特許出願公開第20110274759号明細書、米国特許出願公開第20100068286号明細書、及び米国特許出願公開第20120288541号明細書、米国特許第8,206,747号明細書、第8,293,276号明細書、第8,318,208号明細書、及び第8,318,211号明細書;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、治療用ポリマーナノ粒子は、米国特許出願公開第20120140790号明細書に記載の方法により特定してもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0137】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、持続放出用に製剤化されてもよい。本明細書で使用される場合、「持続放出」は、特定の期間にわたってある放出速度に従う医薬組成物又は化合物を指す。期間としては、これらに限定されないが、数時間、数日間、数週間、数か月間、及び数年間を挙げることができる。非限定的な例として、持続放出性ナノ粒子は、ポリマー、及びこれらに限定されないが、本発明のsaRNA等の治療剤を含んでいてもよい(国際公開第2010075072号、並びに米国特許出願公開第20100216804号明細書、米国特許出願公開第20110217377号明細書、及び米国特許出願公開第20120201859号明細書を参照。これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0138】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、標的特異的であるように製剤化されてもよい。非限定的な例として、治療用ナノ粒子としては、コルチコステロイドを挙げることができる(国際公開第2011084518号を参照;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、癌特異的であるように製剤化されてもよい。非限定的な例として、治療のナノ粒子は、以下のものに記載のナノ粒子で製剤化されてもよい:国際公開第2008121949号、国際公開第2010005726号、国際公開第2010005725号、国際公開第2011084521号、米国特許出願公開第20100069426号明細書、米国特許出願公開第20120004293号明細書、及び米国特許出願公開第20100104655号明細書;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0139】
1つの実施形態では、本発明のナノ粒子は、ポリマーマトリックスを含んでいてもよい。非限定的な例として、ナノ粒子は、これらに限定されないが、以下のもの等の、2つ以上のポリマーを含んでいてもよい、ポリエチレン、ポリカルボナート、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフメラート(polypropylfumerate)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリシアノアクリラート、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、又はそれらの組み合わせ。
【0140】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、ジブロックコポリマーを含む。1つの実施形態では、ジブロックコポリマーは、これらに限定されないが、以下のもの等のポリマーとの組み合わせたPEGを含んでいてもよい:ポリエチレン、ポリカルボナート、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフメラート、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリシアノアクリラート、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、又はそれらの組み合わせ。
【0141】
非限定的な例として、治療用ナノ粒子は、PLGA-PEGブロックコポリマーを含む(米国特許出願公開第20120004293号明細書及び米国特許第8,236,330号明細書を参照;これらの文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。別の非限定的な例では、治療用ナノ粒子は、PEG及びPLA、又はPEG及びPLGAのジブロックコポリマーを含むステルスナノ粒子である(米国特許第8,246,968号明細書及び国際公開第2012166923号を参照;これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0142】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、これらに限定されないが、米国特許第8,263,665号明細書及び第8,287,910号明細書に記載のマルチブロックコポリマー等の、マルチブロックコポリマーを含んでいてもよい。これらの文献の各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0143】
1つの実施形態では、本明細書に記載のブロックコポリマーは、非ポリマー性ミセル及びブロックコポリマーを含むポリイオン複合体に含まれていてもよい。(例えば、米国特許出願公開第20120076836号明細書を参照;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0144】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、少なくとも1つのアクリルポリマーを含んでいてもよい。アクリルポリマーとしては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリシアノアクリラート、及びそれらの組み合わせ。
【0145】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリエチレンイミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ポリ(ベータ-アミノエステル)(例えば、米国特許第8,287,849号明細書を参照;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びそれらの組み合わせ等の、少なくとも1つのアミン含有ポリマーを含んでいてもよい。
【0146】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、ポリカチオン性側鎖を含有してもよい少なくとも1つの分解性ポリエステルを含んでいてもよい。分解性ポリエステルとしては、これらに限定されないが、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、分解性ポリエステルとしては、ペグ化ポリマーを形成するPEG結合体を挙げることができる。
【0147】
別の実施形態では、治療用ナノ粒子は、少なくとも1つの標的化リガンドの結合を含んでいてもよい。標的化リガンドは、モノクローナル抗体を含むが、それに限定されない、当技術分野で知られている任意のリガンドであってもよい。(Kirpotinら、Cancer Res.2006年 66巻:6732~6740頁;この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0148】
1つの実施形態では、治療用ナノ粒子は、癌を標的とするために使用することができる水溶液で製剤化されてもよい(国際公開第2011084513号及び米国特許出願公開第20110294717号明細書を参照;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0149】
1つの実施形態では、saRNAは、合成ナノ担体に封入、連結、及び/又は結合されていてもよい。合成ナノ担体としては、これらに限定されないが、以下のものに記載されているものが挙げられる:国際公開第2010005740号、国際公開第2010030763号、国際公開第201213501号、国際公開第2012149252号、国際公開第2012149255号、国際公開第2012149259号、国際公開第2012149265号、国際公開第2012149268号、国際公開第2012149282号、国際公開第2012149301号、国際公開第2012149393号、国際公開第2012149405号、国際公開第2012149411号、国際公開第2012149454号、及び国際公開第2013019669号、及び米国特許出願公開第20110262491号明細書、米国特許出願公開第20100104645号明細書、米国特許出願公開第20100087337号明細書、及び米国特許出願公開第20120244222号明細書;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。合成ナノ担体は、当技術分野で知られている方法より、及び/又は本明細書に記載されている方法により製剤化することができる。非限定的な例として、合成ナノ担体は、以下のものに記載されている方法により製剤化されてもよい:国際公開第2010005740号、国際公開第2010030763号、及び国際公開第201213501号、及び米国特許出願公開第US20110262491号明細書、米国特許出願公開第20100104645号明細書、米国特許出願公開第20100087337号明細書、及び米国特許出願公開第2012024422号明細書;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、合成ナノ担体製剤は、国際公開第2011072218号及び米国特許第8,211,473号明細書に記載の方法により凍結乾燥されてもよい。これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0150】
1つの実施形態では、合成ナノ担体は、本明細書に記載のsaRNAを放出するための反応性基を含有してもよい(国際公開第20120952552号及び米国特許出願公開第20120171229号明細書を参照;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0151】
1つの実施形態では、合成ナノ担体は、標的放出用に製剤化されてもよい。1つの実施形態では、合成ナノ担体は、指定のpHで及び/又は所望の時間間隔後にsaRNAを放出するように製剤化されていてもよい。非限定的な例として、合成ナノ粒子は、24時間後に及び/又はpH4.5でsaRNAを放出するように製剤化されてもよい(国際公開第2010138193号及び国際公開第2010138194、並びに米国特許出願公開第20110020388号明細書及び米国特許出願公開第20110027217号明細書を参照;これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0152】
1つの実施形態では、合成ナノ担体は、本明細書に記載のsaRNAの制御放出及び/又は持続放出用に製剤化されていてもよい。非限定的な例として、持続放出用の合成ナノ担体は、当技術分野で知られている方法により、本明細書に記載の方法により、及び/又は国際公開第2010138192号及び米国特許出願公開第20100303850号明細書に記載の方法により製剤化されていてもよい。これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0153】
1つの実施形態では、ナノ粒子は、経口投与用に最適化されていてもよい。ナノ粒子は、これらに限定されないが、キトサン又はその誘導体等の、少なくとも1つの陽イオン性生体高分子を含んでいてもよい。非限定的な例として、ナノ粒子は、米国特許出願公開20120282343号明細書に記載の方法により製剤化されていてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0154】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Manoharanらの米国特許第8575123号明細書に記載のもの等のモジュール式組成物で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、モジュール式組成物は、核酸、例えば本発明のsaRNA、少なくとも1つのエンドソーム溶解性成分、及び少なくとも1つの標的化リガンドを含んでいてもよい。モジュール式組成物は、Manoharanらの米国特許第8575123号明細書に記載の任意の処方等の処方を有していてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0155】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、de Fougerollesらの米国特許第8546554号明細書に記載のもの等の、安定的核酸-脂質粒子(SNALP)を形成する脂質製剤で封入されていてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。脂質は、陽イオン性であってもよく、又は非陽イオン性であってもよい。1つの非限定的な例では、脂質対核酸比(質量/質量比)(例えば、脂質対saRNA比)は、約1:1から約50:1まで、約1:1から約25:1まで、約3:1から約15:1まで、約4:1から約10:1まで、約5:1から約9:1まで、又は約6:1から9:1までの範囲、又は5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、若しくは11:1であろう。別の例では、SNALPは、40% 2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(リピドA)、10%ジオレオイルホスファチジルコリン(DSPC)、40%コレステロール、10%ポリエチレングリコール(PEG)-C-DOMG(モルパーセント)を含み、粒径は63.0±20nmであり、核酸/脂質比は0.027である。別の実施形態では、本発明のsaRNAは、Lamらの米国特許第7189705号明細書に開示されているようなエンドソーム膜不安定化剤を含む核酸-脂質粒子で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、エンドソーム膜不安定化剤は、Ca2+イオンであってもよい。
【0156】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Akineらの米国特許第8148344号明細書に開示されている製剤化脂質粒子(FLiP)で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。Akineらには、FLiPが、一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含み、上記オリゴヌクレオチドは、脂肪親和性物、及びエマルジョン又はリポソームの少なくとも1つと結合されており、結合されたオリゴヌクレオチドが、それらと凝集、混合、会合することが教示されている。これら粒子は、驚くべきことに、Akineらの米国特許第8148344号明細書に開示されているように、オリゴヌクレオチドを心臓、肺、及び筋肉に効果的に送達することが示されている。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Tamらの米国特許第6086913号明細書に記載のように、脂質製剤中に発現ベクターを含む組成物を使用して、細胞に送達してもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。Tamにより開示された組成物は、血清安定性であり、アデノ随伴ウィルス(AAV)に由来する第1及び第2の逆方向反復配列、AAVに由来するrep遺伝子、及び核酸断片を含む発現ベクターを含む。Tamの発現ベクターは、脂質と複合体化されている。
【0158】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、de Fougerollesらの米国特許出願公開第20120270921号明細書に開示されている脂質製剤で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。1つの非限定的な例では、脂質製剤は、米国特許出願公開第20120270921号明細書に記載の式Aを有する陽イオン性脂質を含んでいてもよい。この文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の非限定的な例では、米国特許出願公開第20120270921号明細書の表Aに開示されている例示的な核酸-脂質粒子の組成物を、本発明のsaRNAと共に使用することができる。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0159】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Maurerらの米国特許出願公開第20120276207号明細書に開示されている脂質粒子に完全に封入されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。粒子は、事前形成脂質小胞、荷電治療剤、及び不安定化剤を含み、小胞を破壊せずに事前形成脂質小胞の膜を効果的に不安定化する不安定化溶媒中で事前形成小胞及び治療剤の混合物を形成する脂質組成物を含んでいてもよい。
【0160】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、複合脂質で製剤化されてもよい。非限定的な例では、複合脂質は、Linらの米国特許出願公開第20120264810号明細書に記載のもの等の処方を有していてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。複合脂質は、陽イオン性脂質、中性脂質、及び凝集を低減可能な脂質を更に含む脂質粒子を形成することができる。
【0161】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、Fitzgeraldらの米国特許出願公開第20120244207号明細書に開示されているもの等の中性リポソーム製剤で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。語句「中性リポソーム製剤」は、生理学的なpHで中性付近又は中性の表面電荷を有するリポソーム製剤を指す。生理学的なpHは、例えば、約7.0~約7.5、又は例えば約7.5、又は例えば7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、若しくは7.5、又は例えば7.3、又は例えば7.4であってもよい。中性リポソーム製剤の一例は、イオン性脂質ナノ粒子(iLNP)である。中性リポソーム製剤は、イオン性陽イオン性脂質、例えばDLin-KC2-DMAを含んでいてもよい。
【0162】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、荷電脂質又はアミノ脂質で製剤化されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「荷電脂質」は、1つ又は2つの脂肪アシル又は脂肪アルキル鎖及び四級アミノ頭部基を有する脂質を含むこと意味する。四級アミンは、恒久的な陽電荷を担持する。頭部基は、任意選択で、生理学的なpHでプロトン化されていてもよい一級、二級、又は三級アミン等のイオン性基を含んでいてもよい。四級アミンが存在すると、四級アミンを欠如する構造的に類似する化合物(例えば、四級アミンが、三級アミンで置換されている)の基のpKaと比べて、イオン性基のpKaを変化させることができる。幾つかの実施形態では、荷電脂質は「アミノ脂質」と呼ばれる。非限定的な例では、アミノ脂質は、Hopeらの米国特許出願公開第20110256175号明細書に記載のアミノ脂質であってもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。例えば、アミノ脂質は、Hopeらの米国特許出願公開第20110256175号明細書に開示されている構造(II)、DLin-K-C2-DMA、DLin-K2-DMA、DLin-K6-DMAとして開示されている構造を有していてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。別の例では、アミノ脂質は、Muthiahらの国際公開第2009132131号に記載されているような、構造(I)、(II)、(III)、又は(IV)、又は4-(R)-DUn-K-DMA(VI)、4-(S)-DUn-K-DMA(V)を有していてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。別の例では、本明細書に記載の製剤のいずれかで使用される荷電脂質は、Manoharanらの欧州特許第2509636号明細書に記載の任意の荷電脂質であってもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0163】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、脂質、リポソーム、又はリポプレックスを含有する会合複合体で製剤化されてもよい。非限定的な例では、会合複合体は、Manoharanらの米国特許第8034376号明細書に開示されているように、各々が、式(I)により規定される構造、式(XV)により規定される構造を有するPEG脂質、ステロイド、及び核酸を有する1つ又は複数の化合物を含む。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。saRNAは、米国特許第8034376号明細書に記載の任意の会合複合体で製剤化されてもよく、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0164】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、逆頭部基脂質(reverse head group lipid)で製剤化されてもよい。非限定的な例として、saRNAは、Leungらの国際公開第2011056682号に記載の構造(A)又は構造(I)を有する脂質等の、正電荷がアシル鎖領域の付近に位置し、負電荷が頭部基の遠位端部に位置する頭部基を含む双性イオン脂質で製剤化されてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0165】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、脂質二分子膜担体で製剤化されてもよい。非限定的な例として、Cullisらの国際公開第1999018933号に記載のように、saRNAを、約5mol%~約20mol%の量の凝集防止剤、約0.5mol%~約50mol%の量の陽イオン性脂質、及び膜融合性脂質、及び界面活性剤の脂質混合物を含む脂質-界面活性剤混合物と組み合わせて、核酸-脂質-界面活性剤混合物を提供し;その後、上記核酸-脂質-界面活性剤混合物を、緩衝化塩溶液に対して透析して、上記界面活性剤を除去し、上記核酸を脂質二分子膜担体に封入し、脂質二分子膜-核酸組成物を提供してもよく、その場合、上記緩衝化塩溶液は、約40%から約80%までの上記核酸を封入するのに十分なイオン強度を有する。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAは、心臓、肝臓、又は腫瘍組織部位に対してsaRNAを選択的に標的化することが可能な核酸-脂質粒子で製剤化してもよい。例えば、核酸-脂質粒子は、Cullisらの欧州特許第1328254号明細書に記載のように、(a)核酸;(b)1.0モル%~45モル%の陽イオン性脂質;(c)0,0モル%~90モル%の別の脂質;(d)1,0モル%~10モル%の二分子膜安定化成分;(e)0,0モル%~60モル%のコレステロール;及び(f)0,0モル%~10モル%の陽イオン性ポリマー脂質を含んでいてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。Cullisは、上記の陽イオン性脂質、二分子膜安定化成分、別の脂質、コレステロール、及び陽イオン性ポリマー脂質の各々の量は、心臓、肝臓、又は腫瘍組織部位に対して組織選択性を付与し、それにより上記心臓、肝臓、又は腫瘍組織部位に対して核酸を選択的に標的化することが可能な核酸-脂質粒子を特定することができる。
【0167】
送達
本開示は、saRNAを、薬物送達科学の進歩の可能性を考慮した任意の適切な経路により、治療用、医薬品用、診断用、又は画像化用に送達することを包含する。送達は、ネイキッドであってもよく、製剤化されていてもよい。
【0168】
本発明のsaRNAは、ネイキッドのままで細胞に送達してもよい。本明細書で使用される場合、「ネイキッド」は、トランスフェクションを促進する作用剤を含まないsaRNAを送達することを指す。例えば、細胞に送達されるsaRNAは、修飾を含んでいなくともよい。ネイキッドsaRNAは、当技術分野で知られている投与経路及び本明細書に記載されている投与経路を使用して細胞に送達することができる。
【0169】
本発明のsaRNAは、本明細書に記載の方法を使用して製剤化してもよい。製剤は、修飾されていてもよく及び/又は未修飾であってもよいsaRNAを含有していてもよい。製剤は、これらに限定されないが、細胞透過剤、薬学的に許容される担体、送達剤、生物分解性又は生体適合性ポリマー、溶媒、並びに持続放出送達デポー剤を更に含んでいてもよい。製剤化saRNAは、当技術分野で知られている投与経路及び本明細書に記載されている投与経路を使用して細胞に送達することができる。
【0170】
また、組成物は、これらに限定されないが、直接浸漬又は直接浴、カテーテルによること、ゲル剤、散剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、及び/又は滴剤によること、上記組成物でコーティングした又は上記組成物を含浸させた布材料又は生物分解性材料等の基材を使用すること等によることを含む、当技術分野の幾つかの方法のいずれかを用いて器官又は組織に直接送達するために製剤化してもよい。また、本発明のsaRNAを、レトロウイルス複製ベクター(RRV)にクローニングして、細胞に形質導入してもよい。
【0171】
投与
本発明のsaRNAは、治療上有効な結果をもたらす任意の経路で投与することができる。投与経路としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる;腸内、胃腸内、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜上)、大脳内(大脳に)、脳室内(脳室に)、上皮(皮膚への塗布)、皮内(皮膚自体に)、皮下(皮膚の下に)経鼻投与(鼻から)、静脈内(静脈に)、動脈内(動脈に)、筋肉内(筋肉に)、心臓内(心臓に)、骨内注入(骨髄に)、髄腔内(脊柱管に)、腹腔内(腹膜への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼に)、海綿体内注射(陰茎の基部に)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(無傷皮膚から拡散させて全身に分布させる)、径粘膜(粘膜からの拡散)、吹送(鼻で吸う)、舌下、唇下、浣腸、点眼(結膜上に)、又は点耳。特定の実施形態では、組成物は、組成物が、血液脳関門、血管関門、又は他の上皮性関門を越えることを可能にするように投与される。2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に開示されている投与経路を使用して、本発明のsaRNAを投与してもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0172】
剤形
本明細書に記載の医薬組成物は、局所、鼻腔内、気管内、又は注射可能な(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)等の、本明細書に記載の剤形に製剤化することができる。2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に記載の液体剤形、注射可能な調製物、肺用形態、及び固形剤形を、本発明のsaRNAの剤形として使用することができる。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0173】
II.使用方法
本発明の1つの態様は、C/EBPα-saRNA、並びに上記C/EBPα-saRNA及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を使用するための方法を提供する。C/EBPα-saRNAは、C/EBPα遺伝子発現を調節する。1つの実施形態では、C/EBPα遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの非存在下でのC/EBPα遺伝子の発現と比較して、本発明のsaRNAの存在下では、少なくとも20、30、及び40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、更により好ましくは少なくとも80%増加する。更なる好ましい実施形態では、C/EBPα遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの非存在下でのC/EBPα遺伝子の発現と比較して、本発明のsaRNAの存在下では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍増加する。
【0174】
代謝調節
肝細胞は、一般的に、幾つかの生命機能の維持に重要であると考えられている。例えば、肝細胞は、炭水化物及び脂質の代謝、並びに外来性及び内因性化合物の解毒を制御することができる。C/EBPαは、様々な組織で発現され、脂肪細胞、II型肺胞細胞、及び肝細胞を含む多数の細胞タイプの分化に重要な役割を果たす。マウスでは、C/EBPαは、脂肪組織、肝臓組織、及び肺組織で最も大量に見出される。C/EBPαの機能的役割としては、これらに限定されないが、アルファ1-アンチトリプシン、トランスサイレチン、及びアルブミンの制御が挙げられる。更に、肝細胞株(HepG2)でのC/EBPα遺伝子の発現は、内因性基質の代謝に寄与し、主要な生体異物の解毒及び代謝活性化に重要な役割を果たすモノオキシゲナーゼのスーパーファミリーであるシトクロムP450(CYP)のレベル増加をもたらす[Joverら、FEBS Letters、431巻(2号)、227~230頁(1998年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。
【0175】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、主要な世界的健康関心事であり、合衆国では3人に1人が影響をうけている。NAFLDは、過剰なアルコール摂取で引き起こされるものではない、肝細胞における過剰な脂肪(脂質)蓄積である。肝臓重量の5%~10%超が脂肪である場合、脂肪肝(脂肪症)と呼ばれる。NAFLDは、脂肪性肝炎、肝硬変、及び肝臓癌に進行する場合がある。NAFLDは、メタボリック症候群、インスリン抵抗性、II型糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満等の代謝障害に伴う。治療方法としては、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを低下させること、インスリン感受性を向上させること、代謝危険因子を治療すること、及び体重を減少させること等が挙げられる。[アダムズら、Postgraduate Medical Journal、82巻、315~322頁(2006年);Mussoら、Curr.Opin.Lipidol.22巻(6号)、489~496頁(2011年)、これらの文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。
【0176】
C/EBPαタンパク質は、肝機能及び代謝の制御に重要な役割を果たす。肝臓に対するC/EBPαの主要効果は、
図1に示されており、以下のものが含まれる:CD36タンパク質レベルの低下による脂肪酸取り込みの減少、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP)、及び脂肪酸シンターゼ(FAS)タンパク質レベルの低下による新規脂質生合成の減少、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ(PPARα)及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ共活性化因子1アルファ&ベータ(PGC1α&β)タンパク質レベルの増加によるβ-酸化の増加、アポリポタンパク質C-III(APOC3)及び低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質レベルの低下による過負荷肝臓脂質の減少、PGC-1βタンパク質レベルの増加による線維症への進行の減少、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)タンパク質レベルの増加によるインスリン抵抗性の減少。更に、C/EBPαは、
図2に示されるように、脂肪組織に対して副次的効果を有する。白色脂肪組織(WAT)は、脂質生成及び脂肪貯蔵組織であるだけでなく、エネルギー恒常性、脂質代謝、食欲、受精能、並びに免疫及びストレス応答を制御する重要な内分泌器官でもある。褐色脂肪組織(BAT)は、WATと比較して、多数のより小さな脂質滴及び非常に多数の鉄含有ミトコンドリアを含有している。褐色脂肪組織は、栄養学的エネルギー、エネルギー収支、及び体重に重要な役割を果たす。BATの萎縮は、肥満と関連しているという証拠がある。特に、BATの熱産生障害が、げっ歯動物の肥満病因論において重要であることを示す研究がなされている[Trayhurn P、J.Biosci.、18巻(2号)、161~173頁(1993年)]。C/EBPαは、肝臓脂肪症及びインスリン抵抗性を減少させ、PGC-1αタンパク質レベルを増加させ、ひいては、WAT褐色化、WATのBATへの変換を引き起こし、その後BATを活性化させ、体脂肪及び体重を低減させることができる。したがって、本発明のC/EBPα-saRNAを使用して、肝機能を制御し、脂肪症を低減し、血清脂質を低減し、NAFLDを治療し、インスリン抵抗性を治療し、エネルギー消費を増加させ、肥満を治療することができる。
【0177】
1つの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAによる治療により、肝臓代謝遺伝子をin vitro及びin vivoで制御するための方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAによる治療により、NAFLDに関与する肝臓遺伝子をin vitro及びin vivoで制御するための方法が提供される。上記遺伝子としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:ステロール調節エレメント結合因子1(SREBF-1又はSREBF)、分化クラスタ36(CD36)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ2(ACACB)、アポリポタンパク質C-III(APOC3)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ共活性化因子1アルファ(PPARγ-CoA1α又はPPARGC1A)、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ共活性化因子1ベータ(PPARγ-CoA1β又はPERC)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ1(ACACA)、炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP又はMLX1PL)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ(PPARα又はPPARA)、FASN(脂肪酸シンターゼ)、ジグリセリドアシルトランスフェラーゼ-2(DGAT2)、及び哺乳動物ラパマイシン標的(mTOR)。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのSREBF-1遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのCD36遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのACACB遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのAPOC3遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのMTP遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのPPARγ-CoA1α遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのPPARγ遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのPPARα遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのMLXIPL遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのFASN遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのDGAT2遺伝子の発現を、少なくとも10%、20%、好ましくは少なくとも30%、40%、50%減少させる。
【0178】
また、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞において、上記で開示した肝臓代謝遺伝子の発現を調節する。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのSREBP遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのCD36遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのLDLR遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのPPARGC1A遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのAPOC遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、99%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのACACB遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのPERC遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのACACA遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのMLXP1遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのMTOR遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%、75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのPPARA遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも200%、250%、300%、350%、400%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのFASN遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞でのDGAT遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも200%、250%、300%増加させる。
【0179】
また、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞において、上記で開示した肝臓代謝遺伝子の発現を調節する。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのSREBP遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのCD36遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのLDLR遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのPPARGC1A遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのMTP遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、より好ましくは少なくとも5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10.0倍増加させる。1つの実施形態では、1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのAPOC遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、99%増加させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのACACB遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのPERC遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのACACA遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、95%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのMLX1PL遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのMTOR遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%、75%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのFASN遺伝子の発現を、少なくとも5%、10%、好ましくは少なくとも15%、20%減少させる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞でのDGAT遺伝子の発現を、少なくとも10%、20%、30%、より好ましくは40%、50%減少させる。
【0180】
別の実施形態では、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、インスリン抵抗性(IR)を低減又はインスリン感受性を増加させる方法が提供される。また、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、II型糖尿病、高インスリン血症、及び脂肪症を治療する方法が提供される。肝細胞が、インスリンに対して耐性であり、インスリンを効果的に使用することができない場合、高血糖症が発症する。すると、膵臓のベータ細胞は、インスリンの産生を増加させ、高インスリン血症及びII型糖尿病に結び付く。多数の制御因子が、肝細胞のインスリン抵抗性に影響を及ぼす。例えば、ステロール調節エレメント結合タンパク質1(SREBP1又はSREBP)は、コレステロールの主制御因子であり、インスリン抵抗性の増加と関連する。コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)の上方制御は、インスリン抵抗性の増加と関連する。肝性脂肪酸トランスロカーゼ/分化クラスタ36(FAT/CD36)の上方制御は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者におけるインスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪症の増加と関連する。リポタンパク質リパーゼ遺伝子(LPL)の肝臓特異的過剰発現は、肝臓特異的インスリン抵抗性を引き起こす。肝臓X受容体遺伝子(LXR)は、肝臓における、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)-1c-誘導性脂肪酸合成のインスリン媒介性活性化に中心的な役割を果たす。他の因子としては、トリグリセリド合成を制御するジグリセリドアシルトランスフェラーゼ-2(DGAT2)、及び脂肪酸生合成を制御する脂肪酸シンターゼ(FASN)が挙げられる。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのFAT/CD36遺伝子の発現を、未処置の肝細胞と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、更により好ましくは90%低減させる。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのLPL遺伝子の発現を、未処置の肝細胞と比較して、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、より好ましくは少なくとも100%、150%、200%、250%、300%、350%、及び400%増加させる。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、肝細胞でのLXR遺伝子の発現を、未処置の肝細胞と比較して、少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、より好ましくは少なくとも100%、150%、200%、250%、300%、350%、及び400%、更により好ましくは少なくとも450%、500%、550%、600%増加させる。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、SREBP1遺伝子発現を減少させる。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、DGAT2遺伝子発現を減少させる。別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、CETP遺伝子発現を減少させる。更に別の実施形態では、C/EBPα-saRNAは、FASN遺伝子発現を減少させる。
【0181】
C/EBPα-saRNAで調節することができるNAFLD及びIR遺伝子の要約は、表4に示されている。表4の略語:NAFLD:非アルコール性脂肪肝疾患;IR:インスリン抵抗性;DNL:新規脂質生成;FA:脂肪酸;TG:トリグリセリド;LPL:リポタンパク質リパーゼ;HP:肝性リパーゼ;CHOL:コレステロール。
【0182】
【0183】
【0184】
本発明の1つの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAで処置することにより、血清コレステロールレベルをin vitroで低下させる方法が提供される。C/EBPα-saRNAを用いると血清コレステロールレベルは、未処置の血清コレステロールレベルと比較して、少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは75%低減される。また、本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、in vivoにて肝細胞のLDL及びトリグリセリドのレベルを低下させ、LDLの循環レベルを増加させる方法が提供される。循環LDLレベルは、C/EBPα-saRNAの非存在下での循環LDLレベルと比較して、少なくとも2倍、好ましくは3倍、好ましくは4倍、好ましくは5倍、好ましくは10倍、好ましくは15倍増加させることができる。肝臓トリグリセリドレベルは、C/EBPα-saRNAの非存在下での肝臓トリグリセリドレベルと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は70%低減させることができる。肝臓LDLレベルは、C/EBPα-saRNAの非存在下での肝臓LDLレベルと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は70%低減させることができる。
【0185】
本発明の1つの実施形態では、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、NAFLDを治療し、脂肪肝サイズを低減させる方法が提供される。C/EBPα-saRNAで治療した患者の脂肪肝のサイズは、未治療の患者と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%低減される。また、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、体重を減少させ、肥満を治療する方法が提供される。C/EBPα-saRNAで治療した患者の体重は、C/EBPα-saRNAで治療しない患者の体重よりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は70%低い。本発明のC/EBPα-saRNAは、1用量、2用量、3用量、又はそれを超える用量で投与してもよい。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、肝臓の遊離脂肪酸取り込みを減少させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、白色脂肪組織(WAT)炎症を低減する方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、新規脂質生合成を低減する方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、肝臓のベータ-酸化を増加させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、肝臓の褐色脂肪組織(BAT)を増加させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、肝臓の脂質取り込みを低減する方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、WATでの脂質生合成を減少させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、肝臓での脂質貯蔵を減少させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより、肝臓での脂質過負荷を低減させる方法が提供される。
【0186】
別の実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAは、肝機能を増加させるために使用される。1つの非限定的な例では、C/EBPα-saRNAは、アルブミン遺伝子発現を増加させ、それにより血清アルブミン及び非抱合型ビリルビンのレベルを増加させる。アルブミン遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの非存在下でのアルブミン遺伝子の発現と比較して、本発明のsaRNAの存在下では、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、更により好ましくは少なくとも80%増加させてもよい。更なる好ましい実施形態では、アルブミン遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの非存在下でのアルブミン遺伝子の発現と比較して、本発明のsaRNAの存在下では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍増加される。別の非限定的な例では、C/EBPα-saRNAは、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルファフェクトプロテイン(alphafectoprotein)(AFP)、及び肝細胞増殖因子(HGF)の量を減少させる。ALT、AST、GGT、AFP、又はHGFの量は、本発明のsaRNAの非存在下でのALT、AST、GGT、AFP、又はHGFのいずれかの量と比較して、本発明のsaRNAの存在下では、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、更により好ましくは少なくとも80%減少してもよい。
【0187】
別の実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAを投与して、C/EBPファミリーの他のメンバーのレベルを制御する。C/EBPα-saRNAは、C/EBPα-saRNAの用量に応じて、C/EBPβ、C/EBPγ、C/EBPδ、及びC/EBPζの発現を増加させる。更に別の実施形態では、細胞中のC/EBPα又はC/EBPβタンパク質アイソフォームの比は、上記細胞を本発明のC/EBPα-saRNAと接触させることにより制御される。1つの実施形態では、C/EBPαの42KDaアイソフォームが増加される。1つの実施形態では、C/EBPβの30KDaアイソフォームが増加される。
【0188】
ecCEBPA
過剰コード化(extra coding)CEBPA(ecCEBPA)、CEBPA遺伝子座から転写される機能的ncRNAは、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT1)と相互作用することにより、CEBPAメチル化を制御し、したがってCEBPA遺伝子メチル化を防止する。ecCEBPAをノックダウンすると、CEBPA mRNA発現が減少し、DNAメチル化が著しい増加がもたらされたことが見出されている(Ruscioら、Nature、503巻:371~376頁(2013年);この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる)。別の実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAを使用して、ecCEBPAレベルを上方制御する。
【0189】
外科ケア
肝切除術、肝臓又は肝組織の外科的切除は、肝不全、アルブミン及び凝固因子の産生の低減引き起こす場合がある。肝切除術後には、適切な外科ケアが必要である。幾つかの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAを、肝切除術後の外科ケアに使用して、肝再生を促進し、生存率を増加させる。
【0190】
過剰増殖障害
本発明の1つの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAを使用して、過剰増殖性細胞の細胞増殖を低減させる。過剰増殖性細胞の例としては、癌細胞、例えば、癌腫、肉腫、リンパ腫、及び芽細胞腫が挙げられる。そのような癌細胞は、良性であってもよく、又は悪性であってもよい。過剰増殖性細胞は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、又は乾癬等の自己免疫状態に起因する場合がある。また、過剰増殖性細胞は、アレルゲンと接触した過敏免疫系を有する患者内で生じる場合がある。過敏免疫系に関与するそのような状態としては、これらに限定されないが、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、及びアレルギー性アナフィラキシー等のアレルギー反応が挙げられる。1つの実施形態では、腫瘍細胞発生及び/又は増殖が阻害される。好ましい実施形態では、固形腫瘍細胞増殖が阻害される。別の好ましい実施形態では、腫瘍細胞の転移が予防される。別の好ましい例では、未分化腫瘍細胞増殖が阻害される。
【0191】
細胞増殖の阻害又は増殖の低減は、増殖が低減されるか又は完全に停止することを意味する。したがって、「増殖の低減」は、「増殖の阻害」の実施形態である。細胞の増殖は、本発明のsaRNAで治療する前の上記細胞の増殖と比較して、又は同等の未処置細胞の増殖と比較して、本発明のsaRNAの存在下では、少なくとも20%、30%、若しくは40%、又は好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、若しくは75%、更により好ましくは少なくとも80、90、若しくは95%低減される。過剰増殖性細胞の細胞増殖が阻害される実施形態では、「同等の」細胞も過剰増殖性細胞である。好ましい実施形態では、増殖は、同等の健康な(非過剰増殖性)細胞の増殖速度と同等の速度に低減される。別の観点では、「細胞増殖の阻害」の好ましい実施形態は、過剰増殖を阻害又は細胞増殖を調節して、正常で健康なレベルの増殖に到達させることである。
【0192】
1つの非限定的な例では、C/EBPα-saRNAを使用して、白血病細胞及びリンパ腫細胞の増殖を低減させる。好ましくは、細胞としては、ジャーカット細胞(急性T細胞性リンパ腫細胞株)、K562細胞(赤白血病細胞株)、U373細胞(神経膠芽腫細胞株)、及び32Dp210細胞(骨髄性白血病細胞株)が挙げられる。
【0193】
別の非限定的な例では、C/EBPα-saRNAを使用して、卵巣癌細胞、肝臓癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、ラット肝臓癌細胞、及びインスリノーマ細胞の増殖を低減させる。好ましくは、細胞としては、PEO1及びPEO4(卵巣癌細胞株)、HepG2(肝細胞癌細胞株)、Panc1(ヒト膵臓癌細胞株)、MCF7(ヒト乳腺癌細胞株)、DU145(ヒト転移性前立腺癌細胞株)、ラット肝臓癌細胞、及びMIN6(ラットインスリノーマ細胞株)が挙げられる。
【0194】
別の非限定的な例では、C/EBPα-saRNAを、C/EBPβ遺伝子を標的とするsiRNAと組み合わせて使用して、腫瘍細胞増殖を低減させる。腫瘍細胞としては、HepG2細胞等の肝細胞癌細胞、及びMCF7細胞等の乳癌細胞を挙げることができる。
【0195】
1つの実施形態では、本発明のsaRNAを使用して、過剰増殖性障害を治療する。腫瘍及び癌は、特に目的とする過剰増殖性障害であり、あらゆるタイプの腫瘍及び癌、例えば、固形腫瘍及び血液学的癌が含まれる。癌の例としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:子宮頚癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、消化官癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、及び慢性骨髄性白血病等)、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠芽腫、髄芽細胞腫)、神経芽腫、肉腫、結腸癌、直腸癌、胃癌、肛門癌、膀胱癌、子宮内膜癌、形質細胞腫、リンパ腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、メラノーマ、及び他の皮膚癌。肝臓癌としては、これらに限定されないが、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、又は肝細胞癌(HCC)が挙げられる。HCCが特に目的である。
【0196】
原発性肝癌は、世界で5番目に多い癌であり、癌関連死亡の3番目に多い原因である。原発性肝癌の大部分は、HCCである[El-Seragら、Gastroenterology、132巻(7号)、2557~2576頁(2007年);この文献の内容は、それらの全体が本明細書に開示されている]。HCCは、癌細胞生物学、免疫系、及び様々な病原学(ウイルス、毒性、及び一般的)に関与する幾つかの因子の相互作用により影響を受ける。HCCの患者の大多数は、肝硬変の病歴があると悪性腫瘍を発症する。現在、ほとんどの患者は進行期で診断される。したがって、大多数のHCC患者の5年の生存率は、依然として不良である。現在、外科的切除、局所領域切除、及び肝移植のみが、HCCの治療に有望な治療選択肢である。しかしながら、個々の肝機能及び腫瘍量の評価に基づくと、患者のわずか約5~15%しか外科的処置の対象にならない。C/EBP転写因子ファミリーの結合部位は、正常な肝細胞機能の維持及び傷害に対する応答(アルブミン、、インターロイキン6応答、エネルギー恒常性、オルニチン回路制御、及び血清アミロイドA発現を含む)に関与する多数の遺伝子のプロモーター領域に存在する。本発明では、C/EBPα-saRNAを使用して、C/EBPα遺伝子の発現を調節し、肝硬変及びHCCを治療する。
【0197】
本発明の方法は、腫瘍容積を、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%低減することができる。好ましくは、1つ又は複数の新しい腫瘍の発生が阻害される、例えば、本発明により治療された対象体は、より少数の腫瘍及び/又はより小さな腫瘍しか発生させない。より少数の腫瘍は、対象体が、設定期間にわたって、同等の対象体よりも少数の腫瘍を発生させることを意味する。例えば、対象体は、同等の対照(未治療)対象体よりも、少なくとも1、2、3、4、又は5個少ないの腫瘍しか発症させない。より小さな腫瘍は、上記腫瘍が、同等の対象体の腫瘍よりも、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%少ない重量及び/又は容積であることを意味する。本発明の方法は、腫瘍量を、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%低減する。
【0198】
設定期間は、任意の好適な期間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10か月又は年であってもよい。
1つの非限定的な例では、細胞、組織、器官、又は対象体を、本発明のC/EBPα-saRNAと接触することを含む、未分化腫瘍を治療する方法が提供される。未分化腫瘍は、一般的に、分化腫瘍と比較して、不良な予後を示す。腫瘍における分化の度合いは、予後と関連するため、分化誘導性生物因子の使用は、有益な抗増殖薬でありうると仮定される。C/EBPαは、急性骨髄白血病では、骨髄分化を回復させ、造血細胞の過剰増殖を防止することが知られている。好ましくは、C/EBPα-saRNAで治療することができる未分化腫瘍としては、未分化小細胞肺癌、未分化膵臓腺癌、未分化ヒト膵臓癌、未分化ヒト転移性前立腺癌、及び未分化ヒト乳癌が挙げられる。
【0199】
1つの非限定的な例では、C/EBPα-saRNAは、標的化in vivo送達のために、PAMAMデンドリマーと複合体化され、C/EBPα-saRNA-デンドリマーと呼ばれる。静脈注射したC/EBPα-saRNA-デンドリマーの治療効果は、実施例1に示されているように、臨床的に意義のあるラット肝腫瘍モデルで実証されている。48時間間隔での尾静脈注射による3用量後、治療した硬変症ラットは、1週間以内に血清アルブミンレベルの有意な増加を示した。肝腫瘍量は、C/EBPα-saRNAデンドリマー治療群で有意に減少した。この研究は、低分子活性化RNA分子による遺伝子標的化を、全身性静脈内投与により使用して、HCCを有する硬変症ラットの肝機能を改善し、同時に腫瘍量を低減することができることを、初めて実証するものである。
【0200】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAを使用して、癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子を制御する。好ましくは、癌遺伝子の発現を下方制御してもよい。癌遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下での発現と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%低減される。更なる好ましい実施形態では、癌遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下での発現と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍低減される。好ましくは、腫瘍抑制遺伝子の発現を阻害してもよい。腫瘍抑制遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下での発現と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、更により好ましくは少なくとも100%増加する。更なる好ましい実施形態では、腫瘍抑制遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下での発現と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍増加される。癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:Bcl-2-結合Xタンパク質(BAX)、BH3相互作用ドメインデスアゴニスト(BID)、カスパーゼ8(CASP8)、ディスエイブルドホモログ2相互作用タンパク質(disabled homolog 2-interacting protein)(DAB21P)、肝臓癌欠失1(DLC1)、Fas表面デス受容体(FAS)、脆弱ヒスチジントライアド(FHIT)、成長停止及びDNA損傷誘導性ベータ(growth arrest and DNA-damage-inducible-beta)(GADD45B)、ヘッジホッグ相互作用タンパク質(HHIP)、インスリン様増殖因子2(IGF2)、リンパ系エンハンサー結合因子1(LEF1)、ホスファターゼ及びテンシン相同体(PTEN)、タンパク質チロシンキナーゼ2(PTK2)、網膜芽細胞腫1(RB1)、runt関連転写因子3(RUNX3)、SMADファミリーメンバー4(SMAD4)、サイトカインシグナル伝達抑制因子(3SOCS3)、形質転換増殖因子、ベータ受容体II(TGFBR2)、腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10(TNFSF10)、P53、ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質17(ADAM17)、v-aktマウス胸腺腫ウイルス癌遺伝子相同体1(AKT1)、アンギオポエチン2(ANGPT2)、B細胞CLL/リンパ腫2(BCL2)、BCL2様1(BCL2L1)、バキュロウイルスIAPリピート含有2(BIRC2)、バキュロウイルスIAPリピート含有5(BIRC5)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、サイクリンD1(CCND1)、サイクリンD2(CCND2)、カドヘリン1(CDH1)、カドヘリン13(CDH13)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1A(CDKN1A)、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子1B(CDKN1B)、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A(CDKN2A)、CASP8及びFADD様アポトーシス制御因子(CFLAR)、カテニン(カドヘリン関連タンパク質)ベータ1(CTNNB1)、ケモカイン受容体4(CXCR4)、E2F転写因子1(E2F1)、上皮増殖因子(EGF)、上皮成長因子受容体(EGFR)、E1A結合タンパク質p300(EP300)、Fas(TNFRSF6)結合デスドメイン(Fas (TNFRSF6)-associated via death domain)(FADD)、fms-関連チロシンキナーゼ1(FLT1)、frizzledファミリー受容体7(FZD7)、グルタチオンS-トランスフェラーゼpi1(GSTP1)、肝細胞増殖因子(HGF)、ハーベイラット肉腫ウイルス癌遺伝子相同体(HRAS)、インスリン様増殖因子結合タンパク質1(IGFBP1)、インスリン様増殖因子結合タンパク質3(IGFBP3)、インスリン受容体基質1(IRS1)、インテグリンベータ1(ITGB1)、キナーゼインサートドメイン受容体(KDR)、骨髄系細胞白血病配列1(MCL1)、met癌原遺伝子(MET)、及びmutS相同体2(MSH2)、mutS相同体3(MSH3)、メタドヘリン(MTDH)、v-mycトリ骨髄細胞腫症ウイルス癌遺伝子相同体(MYC)、B細胞カッパ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核内因子1(nuclear factor of kappa light polypeptide gene enhancer in B-cells 1)(NFKB1)、神経芽腫RASウイルス(v-ras)癌遺伝子相同体(NRAS)、オピオイド結合タンパク質/細胞接着分子様(OPCML)、血小板由来増殖因子受容体、アルファポリペプチド(PDGFRA)、ペプチジルプロリルイcis/transイソメラーゼ3、NIMA相互作用1(PIN1)、プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2(PTGS2)、PYD及びCARDドメイン含有(PYCARD)、ras-関連C3ボツリヌス毒素基質1(RAC1)、Ras結合(RalGDS/AF-6)ドメインファミリーメンバー1(RASSF1)、リーリン(RELN)、ras相同体ファミリーメンバーA(RHOA)、分泌型Frizzled関連タンパク質2(SFRP2)、SMADファミリーメンバー7(SMAD7)、サイトカインシグナル伝達抑制因子1(SOCS1)、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)、転写因子4(TCF4)、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、形質転換増殖因子アルファ(TGFA)、形質転換増殖因子ベータ1(TGFB1)、トール様受容体4(TLR4)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B)、血管内皮増殖因子A(VEGFA)、ウィルムス腫瘍1(WT1)、X連鎖アポトーシス阻害因子(XIAP)、及びYes関連タンパク質1(YAP1)。
【0201】
1つの実施形態では、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、白血球数を増加させる方法が提供される。また、敗血症又は慢性炎症疾患(例えば、肝炎及び肝硬変)を有する患者、及び免疫不全患者(例えば、化学療法を受けている患者)の白血球減少症を、上記患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより治療する方法が提供される。また、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、白血病及びリンパ腫を含む、プレB細胞悪性腫瘍及びB細胞悪性腫瘍を治療する方法が提供される。また、その必要性のある患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、白血球細胞、造血性幹細胞、又は間葉系幹細胞を動員する方法が提供される。1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAで治療された患者の白血球数は、C/EBPα-saRNAで治療しなかった場合と比較して、少なくとも50%、75%、100%、より好ましくは少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5倍、より好ましくは少なくとも6、7、8、9、10倍増加する。
【0202】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAを、肝細胞癌の治療に使用して、マイクロRNA(miRNA又はmiR)を制御する。マイクロRNAは、遺伝子発現を制御する低分子非コードRNAである。マイクロRNAは、重要な生理機能に関与し、発癌の1つ1つのステップに関与し得る。マイクロRNAは、典型的には、21個のヌクレオチドを有し、mRNAの3’-非翻訳領域(3’-UTR)に結合することにより、そのmRNAの翻訳を阻止するか又はそのmRNAの分解を誘導することにより、転写後レベルで遺伝子発現を制御する。
【0203】
腫瘍では、miRNA発現の制御は、腫瘍発生に影響を及ぼす。HCCでは、他の癌と同様に、miRNAは、細胞増殖及び成長、細胞代謝及び細胞分化、アポトーシス、血管新生、転移、及び最終的には予後に影響を及ぼす癌遺伝子又は腫瘍抑制遺伝子のいずれかとして機能する。[Linら、Biochemical and Biophysical Research Communications、375巻、315~320頁(2008年);Kutayら、J.Cell.Biochem.、99巻、671~678頁(2006年);Mengら、Gastroenterology、133巻(2号)、647~658頁(2007年)、これらの文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。本発明のC/EBPα-saRNAは、C/EBPα遺伝子の発現及び/又は機能を調節し、また、HCC細胞のmiRNAレベルを制御する。本発明のC/EBPα-saRNAにより制御することができるmiRNAの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:hsa-let-7a-5p、hsa-miR-133b、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-335-5p、hsa-miR-196a-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-96-5p、hsa-miR-184、hsa-miR-214-3p、hsa-miR-15a-5p、hsa-let-7b-5p、hsa-miR-205-5p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-140-5p、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-134、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7c、hsa-miR-218-5p、hsa-miR-206、hsa-miR-124-3p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-155-5p、hsa-miR-1、hsa-miR-150-5p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-127-5p、hsa-miR-191-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-10a-5p、hsa-miR-15b-5p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-34a-5p、hsa-miR-144-3p、hsa-miR-128、hsa-miR-215、hsa-miR-193a-5p、hsa-miR-23b-3p、hsa-miR-203a、hsa-miR-30c-5p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-146a-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-9-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-181c-5p、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-148b-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-130a-3p、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-132-3p、hsa-miR-193b-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-138-5p、hsa-miR-373-3p、hsa-miR-29b-3p、hsa-miR-135b-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-181d、hsa-miR-301a-3p、hsa-miR-200c-3p、hsa-miR-7-5p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-210、hsa-miR-17-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-18a-5p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-27a-3p、hsa-miR-372、hsa-miR-149-5p、及びhsa-miR-32-5p。
【0204】
1つの非限定的な例では、miRNAは、発癌性miRNAであり、C/EBPα-saRNAの非存在下と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1、1.5、2、2.5、及び3倍、下方制御される。別の非限定的な例では、miRNAは、腫瘍抑制性miRNAであり、C/EBPα-saRNAの非存在下と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1倍、より好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍、上方制御される。
【0205】
幹細胞制御
本発明の幾つかの実施形態では、C/EBPα-saRNAを使用して、自己再生多能性因子を制御し、幹細胞分化に影響を及ぼす。目的タンパク質を発現するために又は細胞を異なる細胞表現型に変更するために、細胞の表現型を変更することは、様々な臨床、治療、及び研究環境で使用されている。細胞表現型の変更は、現在、DNA又はウイルスベクターからタンパク質を発現させることより達成されている。現在、パーキンソン病及び糖尿病等の種々の疾患、及び脊髄傷害等の傷害の治療選択肢としてのヒト胚幹細胞の使用を評価するための研究が行われている。胚幹細胞は、あらゆる分化細胞タイプを生成する多能性を維持しつつ、無限に増殖する能力を有する。
【0206】
個別化再生医療、細胞療法、及び他の疾患療法の分野に有用な細胞表現型の変更には、多能性因子、細胞表現型変更因子、分化転換因子、分化因子、及び脱分化因子等の多数の因子が使用される。例えば、幹細胞の自己再生及び多能性特性は、OCT4、SOX2、NANOG、及びKLF遺伝子を含む、中核制御回路の転写因子及びクロマチンリモデリング酵素等の多くの遺伝子により制御される[Bourillotら、BMC Biology、8巻:125頁(2010年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。また、自己調節ネットワークのこの制御回路は、下流遺伝子に影響を及ぼす。中核制御回路を制御するために、オリゴヌクレオチドが利用されている。Xuらは、miRNA-145が、OCT4、SOX2、及びKLF4の3’-UTRを標的とすることを開示した。miRNA-145の低減は、分化を妨害し、OCT4、SOX2、及びKLF4を上昇させる。[Xuら、Cell、137巻、1~12頁(2009年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。
【0207】
1つの実施形態では、本発明のC/EBPα-saRNAを使用して、自己再生多能性遺伝子を制御する。多能性遺伝子の非限定的な例としては、SOX2、OCT4、cKit、KLF4、KLF2、KLF5、NANOG、CDX2、及びSALL4が挙げられる。1つの実施形態では、多能性遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも20、30、又は40%、又はより好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、又は75%、更により好ましくは少なくとも80、90、又は95%低減される。別の実施形態では、多能性遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、更により好ましくは少なくとも80%増加される。好ましい実施形態では、多能性遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの非存在下での発現と比較して、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍増加される。
【0208】
1つの実施形態では、C/EBPα-saRNAを使用して、細胞の上皮間葉転換(EMT)を制御する。幾つかの腫瘍は、自己再生することができ、癌細胞を様々な系統へと分化させることにより腫瘍開始能力を維持することができる癌幹細胞又は癌幹様細胞を含有している。EMTは、癌幹様細胞、腫瘍侵襲性及び転移性、及び腫瘍再発に関連することが示されれている。[Kongら、Cancers、3巻(1号)、716~729頁(2011年)]miR-200及びmiR-134等のmiRNA、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)等の増殖因子、並びにNotch-1シグナル経路及びWntシグナル経路等の因子を含む多数の因子が、EMTを制御する。1つの非限定的な例では、C/EBPα-saRNAは、miR-134の発現を調節することによりEMTを制御する。別の非限定的な例では、C/EBPα-saRNAは、RUNX3、CTNB1、HGF、SMAD7、又はTGFB1遺伝子の発現を調節することにより、EMTを制御する。
【0209】
III.キット及びデバイス
キット
本発明は、本発明の方法を便利に及び/又は効果的に実行するための様々なキットを提供する。典型的には、キットは、ユーザが対象体(複数可)の複数の治療を実施すること及び/又は複数の実験を実施することを可能にする、十分な量の及び/又は数の成分を含むだろう。
【0210】
1つの実施形態では、本発明は、本発明のC/EBPα-saRNA、又はC/EBPα-saRNA、他の遺伝子を調節するsaRNA、siRNA、若しくはmiRNAの組み合わせを含む、遺伝子の発現をin vitro又はin vivo制御するためのキットを提供する。キットは、パッケージング及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するための送達剤を更に含んでいてもよい。送達剤は、生理食塩水、緩衝化溶液、リピドイド、デンドリマー、又は本明細書に開示されている任意の送達剤を含んでいてもよい。遺伝子の非限定的な例としては、C/EBPα、C/EBPファミリーの他のメンバー、アルブミン遺伝子、アルファフェクトプロテイン遺伝子、肝臓特異的因子遺伝子、増殖因子、核内因子遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、多能性因子遺伝子が挙げられる。
【0211】
1つの非限定的な例では、緩衝化溶液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸塩、及び/又はEDTAを含んでいてもよい。別の非限定的な例では、緩衝化溶液は、これらに限定されないが、生理食塩水、2mMカルシウムを有する生理食塩水、5%スクロース、2mMカルシウムを有する5%スクロース、5%マンニトール、2mMカルシウムを有する5%マンニトール、乳酸リンゲル液、塩化ナトリウム、2mMカルシウムを有する塩化ナトリウム、及びマンノースを含んでいてもよい(米国特許出願公開第20120258046号明細書;この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。更に別の非限定的な例では、緩衝化溶液は、沈殿していてもよく、又は凍結乾燥されていてもよい。各成分の量は、一貫して再現性があるより高い濃度の生理食塩水又は単純な緩衝液配合を可能にするように様々であってもよい。また、成分は、ある期間にわたって及び/又は様々な条件下で緩衝化溶液中のsaRNAの安定性を増加させるために、様々であってもよい。
【0212】
別の実施形態では、本発明は、細胞に導入した際にその細胞の増殖を阻害するのに有効な量で提供されている本発明のC/EBPα-saRNA;任意選択で標的細胞の増殖を更に制御するsiRNA及びmiRNA;並びにパッケージング及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するための送達剤を含む、細胞増殖を制御するためのキットを提供する。
【0213】
別の実施形態では、本発明は、本発明のsaRNA分子;任意選択でLDLを低減する薬物;並びにパッケージング及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するための送達剤を含む、細胞のLDLレベルを低減するためのキットを提供する。
【0214】
別の実施形態では、本発明は、本発明のC/EBPα-saRNA;任意選択でsiRNA、eRNAs、及びlncRNA;並びにパッケージング及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するための送達剤を含む、細胞のmiRNA発現レベルを制御するためのキットを提供する。
【0215】
デバイス
本発明は、本発明のC/EBPα-saRNAを組み込むことができるデバイスを提供する。これらデバイスは、ヒト患者等の、その必要性のある対象体に直ちに送達することができる安定製剤を含有する。そのような対象体の非限定的な例としては、癌、腫瘍、又は肝硬変等の過剰増殖性障害を有する対象体;及びNAFLD、肥満、高LDLコレステロール、又はII型糖尿病等の代謝障害を有する対象体が挙げられる。
【0216】
デバイスの非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮貼布、加圧嗅覚器官送達デバイス、イオン泳動デバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。デバイスは、単一用量、複数用量、又は分割用量の投与計画に従って、本発明のC/EBPα-saRNAを送達するために使用することができる。デバイスは、本発明のC/EBPα-saRNAを、生物組織を越えて、皮内に、皮下に、又は筋肉内に送達するために使用することができる。オリゴヌクレオチドを送達するために好適なデバイスのより多くの例は、2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に開示されており、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0217】
定義
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で使用されている、ある用語及び語句の意味は、下記に提供されている。本明細書の他の部分での用語の使用と、この節で提供されているその定義との間に明らかな矛盾がある場合、この節の定義が優先するものとする。
【0218】
約:本明細書で使用される場合、用語「約」は、示されている値の+/-10%を意味する。
併用して投与される:本明細書で使用される場合、用語「併用して投与される」又は「併用投与」は、2つ以上の作用剤、例えばsaRNAが、対象体に対する各作用剤の効果が重なり合うことができるように、同時に又はある間隔内で対象体に投与されることを意味する。幾つかの実施形態では、2つ以上の作用剤は、互いに約60、30、15、10、5、又は1分以内に投与される。幾つかの実施形態では、作用剤の投与は、組み合わせ効果(例えば、相乗効果)が達成されるように、十分に短い間隔で投与される。
【0219】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」及び「アミノ酸(複数)」は、あらゆる天然L-アルファ-アミノ酸を指す。アミノ酸は、以下のように1文字命名法又は3文字命名法のいずれかにより特定される:アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、トレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リジン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)、メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)。上記では、アミノ酸がまず列挙され、その後の括弧内に3文字コード及び1文字コードがそれぞれ示されている。
【0220】
動物:本明細書で使用される場合、用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを指す。幾つかの実施形態では、「動物」は、あらゆる発達段階のヒトを指す。幾つかの実施形態では、「動物」は、あらゆる発達段階の非ヒト動物を指す。ある実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、又はブタ)である。幾つかの実施形態では、動物としては、これらに限定されないが、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚、及び虫が挙げられる。幾つかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、又はクローンである。
【0221】
およそ:本明細書で使用される場合、1つ又は複数の目的の値に適用されている用語「およそ」又は「約」は、記載の参照値に類似する値を指す。ある実施形態の中で、用語「およそ」又は「約」は、別様の記述がない限り又は状況からそうでないことが明らかでない限り(そのような数が、100%を超えるあり得ない値となってしまう場合を除く)、いずれかの方向(超又は未満)で、記載の参照値の、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%以下以内に入る一連の値を指す。
【0222】
結合される:本明細書で使用される場合、2つ以上の部分に関して使用される際の用語「結合される」「抱合される」、「連結される」、「繋止される」は、それら部分が、直接的に、又はリンカー剤としての役割を果たす1つ又は複数の部分を介してのずれかで、互いに物理的に結合又は接続されて、十分に安定な構造を形成し、その構造が使用される条件下で、例えば生理学的条件下でそれら部分が物理的に結合したままであることを意味する。「結合」は、厳密に直接的共有結合での化学結合である必要がない。また、結合は、イオン結合又は水素結合、又は「結合する」実体が物理的に結合したままであるように十分に安定したハイブリダイゼーションに基づくものを示唆する場合がある。
【0223】
二機能性:本明細書で使用される場合、用語「二機能性」は、少なくとも2つの機能を維持することが可能な任意の物質、分子、又は部分を指す。機能は、同じ結果を生じさせてもよく、又は異なる結果を生じさせてもよい。機能を生じさせる構造は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0224】
生体適合性:本明細書で使用される場合、用語「生体適合性」は、傷害、毒性、又は免疫系による拒絶のリスクをほとんど又は全く示さずに、生細胞、組織、器官、又は系と適合することを意味する。
【0225】
生分解性:本明細書で使用される場合、用語「生分解性」は、生物の作用により無害な産物に分解されることが可能であることを意味する。
生物学的に活性な:本明細書で使用される場合、語句「生物学的に活性な」は、生物系及び/又は生物中で活性を有する任意の物質の特徴を参照する。例えば、生物に投与した場合に、その生物に対して生物学的作用を示す物質は、生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態では、本発明のsaRNAは、saRNAの一部でさえが、生物学的に活性であるか、又は生物学的に意義が有るとみなされる活性を模倣する場合、生物学的に活性があるとみなすことができる。
【0226】
癌:本明細書で使用される場合、個体の「癌」という用語は、制御されていない増殖、不死、転移能、急速な増殖及び成長速度、及びある特徴的な形態学的特徴等の、癌を引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞が存在することを指す。多くの場合、癌細胞は、腫瘍の形態をしているだろう。しかし、そのような細胞は、個体内に単独で存在してもよく、白血病細胞等の独立した細胞として血流中に循環していてもよい。
【0227】
細胞増殖:本明細書で使用される場合、用語「細胞増殖」は、主に細胞数の増加を伴い、それは、増殖の速度が細胞死(例えば、アポトーシス又はネクローシスによる)の速度よりも速い細胞繁殖(つまり、増殖)により起こり、細胞集団のサイズの増加をもたらすが、その増殖の少部分は、ある環境では個々の細胞の細胞サイズ又は細胞質容積が増加するためであってもよい。したがって、細胞増殖を阻害する作用剤は、対立する2つのプロセス間の平衡が変更されるように、増殖の阻害又は細胞死の刺激のいずれかにより又は両方により、細胞増殖を阻害することができる。
【0228】
細胞タイプ:本明細書で使用される場合、用語「細胞タイプ」は、所与の供給源(例えば、組織、器官)に由来する細胞、又は所与の分化状態にある細胞、又は所与の病理学又は遺伝子構造に関連する細胞を指す。
【0229】
染色体:本明細書で使用される場合、用語「染色体」は、細胞に見出されるDNA及びタンパク質の組織化構造を指す。
相補的:本明細書で使用される場合、核酸に関する用語「相補的」は、例えば、二本鎖DNA分子の2本の鎖間、又は相補的であるオリゴヌクレオチプローブと標的との間等の、ヌクレオチド間又は核酸間のハイブリダイゼーション又は塩基対合を指す。
【0230】
症状:本明細書で使用される場合、用語「症状」は、任意の細胞、器官、臓器系、又は生物の状態を指す。症状は、疾患状態、又は単に実体の生理学的症状又は状況を反映していてもよい。症状は、疾患の肉眼的症状等の表現型症状、又はその症状に関連する根本的な遺伝子又はタンパク質発現プロファイル等の遺伝子型症状として特徴付けられてもよい。症状は、良性であってもよく、悪性であってもよい。
【0231】
制御放出:本明細書で使用される場合、用語「制御放出」は、治療結果を達成するための特定のパターンでの放出に従う、医薬組成物又は化合物の放出プロファイルを指す。
細胞増殖抑制:本明細書で使用される場合、「細胞増殖抑」は、細胞(例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生生物、プリオン、又はそれらの組み合わせの増殖、分裂、又は複製を阻害、低減、抑制することを指す。
【0232】
細胞毒性:本明細書で使用される場合、「細胞毒性」は、細胞(例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生生物、プリオン、又はそれらの組み合わせを死滅させるか、又は傷害性、毒性、若しくは致命的な効果を引き起こすことを指す。
【0233】
送達:本明細書で使用される場合、「送達」は、化合物、物質、実体、部分、カーゴ、又はペイロードを送達する行為又は様式を指す。
送達剤:本明細書で使用される場合、「送達剤」は、本発明のsaRNAの標的細胞へのin vivo送達を、少なくとも部分的に促進するあらゆる物質を指す。
【0234】
不安定化:本明細書で使用される場合、用語「不安定な」又は「不安定化する」又は「不安定化領域」は、同じ領域又は分子の開始野生型又は天然型ほど安定していない領域又は分子を意味する。
【0235】
検出可能な標識:本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」は、エックス線撮影、蛍光、化学ルミネセンス、酵素活性、及び吸光度等を含む当技術分野で知られている方法により直ちに検出される別の実体に結合されている、組み込まれている、又は会合されている1つ又は複数のマーカー、シグナル、又は部分を指す。検出可能な標識としては、放射性同位元素、フルオロフォア、発色団、酵素、色素、金属イオン、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、及びハプテン等のリガンド、量子ドット等が挙げられる。検出可能な標識は、ペプチド、タンパク質、又はポリヌクレオチド、例えば、本明細書で開示されているsaRNAの任意の位置に位置していてもよい。検出可能な標識は、N-末端若しくはC-末端又は場合に応じて5’末端若しくは3’末端に位置するアミノ酸、ペプチド、タンパク質、又はポリヌクレオチド内にあってもよい。
【0236】
封入する:本明細書で使用される場合、用語「封入する」は、包囲する、取り囲む、又は包み込むこと指す。
操作される:本明細書で使用される場合、構造的か又は化学的かに関わらず、それらが、開始点、野生型、又は天然分子と異なる特徴又は特性を有するように設計されている場合、本発明の実施形態は、「操作されている」。
【0237】
同等の対象体:本明細書で使用される場合、「同等の対象体」は、例えば、年齢、性別、及び肝臓健康又は癌病期等の健康状態が類似している対象体であってもよく、又は本発明により治療する前の同一の対象体であってもよい。同等の対象体は、本発明によるsaRNAでの治療を受けない点で「未治療」である。しかしながら、同等の対象体は、従来の抗癌治療を受けてもよいが、ただし、本発明のsaRNAで治療されている対象体は、同一又は同等の従来の抗癌治療を受ける。
【0238】
エキソソーム:本明細書で使用される場合、「エキソソーム」は、哺乳動物細胞により分泌される小胞である。
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象の1つ又は複数を指す:(1)DNA塩基配列からのRNAテンプレートの産生(例えば、転写により);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、及び/又は3’末端プロセシングによる);(3)RNAのポリペプチド又はタンパク質への翻訳;及び(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0239】
特徴:本明細書で使用される場合、「特徴」は、特色、特性、又は特有の要素を指す。
製剤:本明細書で使用される場合、「製剤」は、少なくとも本発明のsaRNA及び送達剤を含む。
【0240】
断片:本明細書で使用される場合、「断片」は、部分を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離される全長タンパク質の消化により得られるポリペプチドを含んでいてもよい。
【0241】
機能的な:本明細書で使用される場合、「機能的な」生体分子は、それが特徴とする特性及び/又は活性を示す形態の生体分子である。
遺伝子:本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」は、ポリペプチド又は前駆体を産生するために必要な制御配列及び最も多くの場合はコード配列を含む核酸配列を指す。しかしながら、遺伝子は、翻訳されなくともよく、その代わりに、制御RNA分子又は構造RNA分子をコードしてもよい。
【0242】
遺伝子は、植物、真菌、動物、細菌のゲノム又はエピソーム、真核生物、核、又はプラスミドDNA、cDNA、ウイルスDNA、又は化学的に合成されたDNAを含む、当技術分野で知られている任意の供給源から、全体が又は一部が由来してもよい。遺伝子は、コード領域、又は発現産物の生物学的活性若しくは化学構造、発現の速度、若しくは発現制御の様式に影響を及ぼし得る非翻訳領域のいずれかに、1つ又は複数の修飾を含有していてもよい。そのような修飾としては、これらに限定されないが、1つ又は複数のヌクレオチドの突然変異、挿入、欠失、及び置換が挙げられる。遺伝子は、一続きのコード配列を構成していてもよく、又は適切なスプライスジャンクションにより結合されている1つ又は複数のイントロンを含んでいてもよい。
【0243】
遺伝子発現:本明細書で使用される場合、用語「遺伝子発現」は、核酸配列の転写及びほとんどの場合では翻訳が成功して、タンパク質又はペプチドが産生されるプロセスを指す。明確にしておくが、「遺伝子発現」の測定が言及される場合、測定は、転写の核酸産物、例えばRNA又はmRNAの測定であってもよく、又は翻訳のアミノ酸産物、例えばポリペプチド又はペプチドの測定であってもよいことを意味することが理解されるべきである。RNA、mRNA、ポリペプチド、及びペプチドの量又はレベルを測定する方法は、当技術分野で周知である。
【0244】
ゲノム:用語「ゲノム」は、核内DNA成分、染色体DNA、又は細胞質DNA、並びに細胞質ドメイン(例えば、ミトコンドリアDNA)を含む生物のDNA相補体全体を含むことが意図されている。
【0245】
相同性:本明細書で使用される場合、用語「相同性」は、ポリマー分子間の、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。幾つかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一又は類似している場合、互いに「相同性」であるとみなされる。用語「相同的」は、必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列)間の比較を指す。本発明によると、2つのポリヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが、少なくとも約20個のアミノ酸の少なくとも1つの伸長に対して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は更に99%である場合、相同的であるとみなされる。幾つかの実施形態では、相同的なポリヌクレオチド配列は、少なくとも4~5個の一意的に指定されるアミノ酸の伸長をコードする能力を特徴とする。長さが60個ヌクレオチド未満のポリヌクレオチド配列の場合、相同性は、少なくとも4~5個の一意的に指定されるアミノ酸の伸長をコードする能力により決定される。本発明によると、2つのタンパク質配列は、それらタンパク質が、少なくとも約20個のアミノ酸の少なくとも1つの伸長に対して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、又は90%同一である場合、相同的であるとみなされる。
【0246】
用語「過剰増殖性細胞」は、同等の健康細胞(「対照」と呼ばれる場合がある)の増殖速度と比較して、異常に速い速度で増殖しているあらゆる細胞を指すことができる。「同等の健康」細胞は、細胞の正常で健康な対応物である。したがって、「同等の健康」細胞は、例えば、同じ器官に由来する同じタイプの細胞であり、比較細胞と同じ機能(複数可)を果たす。例えば、過剰増殖性肝細胞の増殖は、健康な肝細胞と比較することにより評価されるべきであり、過剰増殖性前立腺細胞の増殖は、健康な前立腺細胞と比較することにより評価されるべきである。
【0247】
「異常に速い」増殖速度とは、同等の健康な(非過剰増殖性の)細胞の増殖速度と比較して、過剰増殖性細胞の増殖速度が、少なくとも20、30、40%、又は少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、又は少なくとも80%増加することを意味する。また、「異常に速い」増殖速度は、同等の健康な細胞の増殖速度と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、又は少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、又は少なくとも60、70、80、90、100倍増加した速度を指してもよい。
【0248】
用語「過剰増殖性細胞」は、本明細書で使用される場合、ほとんどの細胞と比較して、天然でより速い速度で増殖するが、健康細胞である細胞を指さすものではない。生涯にわたって絶えず分割することが知られている細胞の例は、皮膚細胞、胃腸管の細胞、血液細胞、及び骨髄細胞である。しかしながら、そのような細胞は、それらの健康な対応物よりも速い速度で増殖する場合、過剰増殖性である。
【0249】
過剰増殖性障害:本明細書で使用される場合、「過剰増殖性障害」は、上記定義されているような過剰増殖性細胞に関与する任意の障害であってもよい。過剰増殖性障害の例としては、癌等の新生物障害、乾癬性関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患等の胃過剰増殖性障害、乾癬を含む皮膚障害、ライター症候群、毛孔性紅色ひこう疹、及び角質化の変異型過剰増殖性障害が挙げられる。
【0250】
当業者であれば、過剰増殖性細胞を特定する方法を十分に承知している。動物内の過剰増殖性細胞の存在は、X線、MRI、又はCTスキャン等のスキャンを使用して特定可能であってもよい。また、MTT、XTT、MTS、又はWST-1アッセイ等の細胞増殖アッセイを使用して、in vitroで試料を培養することにより、過剰増殖性細胞を特定してもよく、又は細胞の増殖をアッセイしてもよい。また、in vitroでの細胞増殖はフローサイトメトリーを使用して決定してもよい。
【0251】
同一性:本明細書で使用される場合、用語「同一性」は、ポリマー分子間の、例えば、オリゴヌクレオチド分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、比較を最適にするために2つの配列をアラインメントすることにより実施することができる(例えば、アラインメントを最適化するために、第1及び第2の核酸配列の一方に又は両方にギャップを導入してもよく、非同一配列を、比較のために無視してもよい)。ある実施形態では、比較のためにアラインメントする配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。その後、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置にあるヌクレオチドと同一のヌクレオチドで占められている場合、それら分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の関数である。配列の比較、及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、以下の文献に記載されているもの等の方法を使用して決定することができる:Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993年;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje,G.、Academic Press、1987年;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994年;及びSequence Analysis Primer、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton
Press、New York、1991年;これらの文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers及びMiller(CABIOS、1989年、4巻:11~17頁)のアルゴリズムを使用し、PAM120重み付き残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティは12、ギャップペナルティは4を用いて決定することができる。或いは、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いて、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して決定することができる。配列間の同一性パーセントを決定するために一般的に使用される方法としては、これらに限定されないが、Carillo,H.及びLipman,D.、SIAM J Applied Math.、48巻:1073頁(1988年)に開示されているものが挙げられる;この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。同一性を決定するための技法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにプログラムされている。2つの配列間の相同性を決定する例示的なコンピューターソフトウェアとしては、これらに限定されないが、GCGプログラムパッケージ、Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research、12巻(1号)、387頁(1984年))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA Altschul,S.F.ら、J. Molec.Biol.、215巻、403頁(1990年))が挙げられる。
【0252】
遺伝子の発現を阻害する:本明細書で使用される場合、語句「遺伝子の発現を阻害する」は、遺伝子の発現産物の量の低減を引き起こすことを意味する。発現産物は、遺伝子から転写されたRNA(例えば、mRNA)であってもよく、又は遺伝子から転写されたmRNAから翻訳されたポリペプチドであってもよい。典型的には、mRNAのレベルの低減は、そこから翻訳されるポリペプチドのレベルの低減をもたらす。発現のレベルは、mRNA又はタンパク質を測定するための標準技法を使用して決定することができる。
【0253】
in vitro:本明細書で使用される場合、用語「in vitro」は、生物(例えば、動物、植物、又は微生物)内ではなく、人工的環境、例えば、試験管又は反応槽、細胞培養、ペトリ皿等で生じる事象を指す。
【0254】
in vivo:本明細書で使用される場合、用語「in vivo」は、生物(例えば、動物、植物、若しくは微生物、又はそれらの細胞若しくは組織)内で生じる事象を指す。
【0255】
単離された:本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、それが関連する(自然界の環境又は実験環境に関わらず)成分の少なくとも幾つかから分離された物質又は実体を指す。単離された物質は、それらが関連していた物質に関して様々な純度レベルを有していいてもよい。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に関連していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%又はそれ以上から分離されている。幾つかの実施形態では、単離された作用剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%を超える純度である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分が実質的に存在しない場合、「純粋」である。実質的に単離された:「実質的に単離された」は、化合物が、それが形成又は検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離としては、例えば、本開示の化合物が豊富に存在する組成物が挙げられる。実質的な分離としては、本開示の化合物又はその塩の、重量で、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、又は少なくとも約99%を含有する組成物が挙げられる。化合物及びそれらの塩を単離する方法は、当技術分野で日常的である。
【0256】
標識:用語「標識」は、物質、化合物、又は物体を検出可能にするために、物体に組み込まれる物質又は化合物を指す。
リンカー:本明細書で使用される場合、リンカーは、例えば10~1,000個原子の原子団を指し、これらに限定されないが、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、及びイミン等の原子又は基で構成されていてもよい。リンカーは、第1の端部が、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドの核酸塩基又は糖部分に結合され、第2の端部が、ペイロード、例えば検出可能な又は治療用の作用剤に結合されていてもよい。リンカーは、核酸配列への組み込みと干渉しないような十分な長さであってもよい。リンカーは、本明細書に記載のような、saRNA結合体の形成並びにペイロードの投与等の、任意の有用な目的に使用することができる。リンカーに組み込むことができる化学基の例としては、これらに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、又はヘテロシクリルが挙げられ、それらの各々は、本明細書に記載のように、任意選択で置換されていてもよい。リンカーの例としては、これらに限定されないが、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレン又はプロピレングリコールモノマーユニット、例えばジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、又はテトラエチレングリコール)、及びデキストランポリマー、及びそれらの誘導体が挙げられる。他の例は、リンカー内に、これらに限定されないが、例えば、ジスルフィド結合(-S-S-)又はアゾ結合(-N=N-)等の切断可能な部分を含んでおり、それらは、還元剤又は光分解を使用して切断することができる。選択的に切断可能な結合の非限定的な例としては、例えば、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用して、又は他の還元剤及び/又は光分解により切断することができるアミド結合が挙げられ、並びに例えば、酸性又は塩基性加水分解により切断することができるエステル結合が挙げられる。
【0257】
転移:本明細書で使用される場合、用語「転移」は、原発腫瘍として最初に発生した場所から、体内の遠くの位置へと癌が広がるプロセスを意味する。また、転移は、原発腫瘍の拡散に起因する癌を指す。例えば、乳癌を有する者は、リンパ系、肝臓、硬骨、又は肺に転移を示す場合がある。
【0258】
修飾された:本明細書で使用される場合、「修飾された」は、本発明の分子の変化した状態又は構造を指す。分子は、化学的、構造的、及び機能的を含む、多くの様式で修飾することができる。1つの実施形態では、本発明のsaRNA分子は、非天然ヌクレオシド及び/又はヌクレオチドの導入により修飾されている。
【0259】
天然:本明細書で使用される場合、「天然」は、人為的な手を加えずに自然界に存在することを意味する。
核酸:本明細書中に使用される場合、用語「核酸」は、1つ又は複数のヌクレオチド、つまりリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はその両方で構成されている分子を指す。この用語は、ポリマーの場合には5’-3’連結により、互いに結合されているリボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドのモノマー及びポリマーを含む。リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドのポリマーは、一本鎖であってもよく、又は二本鎖であってもよい。しかしながら、連結は、例えば、5’-3’連結を含む核酸を含む、当技術分野で知られている連結のいずれを含んでいてもよい。ヌクレオチドは、天然であってもよく、又は天然の塩基対で塩基対関係を形成することが可能な合成的に生成された類似体であってもよい。塩基対関係を形成することが可能な非天然塩基の例としては、これらに限定されないが、アザ及びデアザピリミジン類似体、アザ及びデアザプリン類似体、及び他のヘテロ環式塩基類似体が挙げられ、ピリミジン環の炭素原子及びチッ素原子の1つ又は複数は、ヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、セレン、及びリン等により置換されている。
【0260】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」は、治療を求めていてもよく、又は治療の必要性があってもよく、治療を必要とし、治療を受けている、治療を受けることになる対象体、又は特定の疾患又は状態について、訓練された専門家によるケアを受けている対象体を指す。
【0261】
ペプチド:本明細書で使用される場合、「ペプチド」は、長さが50個アミノ酸以下であり、例えば、長さが約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50個アミノ酸である。
【0262】
薬学的に許容される:語句「薬学的に許容される」は、本明細書では、合理的なベネフィット/リスク比と釣り合い、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは困難なく、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、健全な医学的判断の範囲内にある、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために使用される。
【0263】
薬学的に許容される賦形剤:語句「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されている化合物以外の、患者に実質的に無毒性及び非炎症性であるという特性を有する任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁又は溶解することが可能な媒体)を指す。賦形剤としては、以下のものを挙げることができる:例えば、接着防止剤、酸化防止剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、薄膜形成剤又はコーティング、香味料、香料、流動促進剤(フローエンハンサー)、潤滑剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤、分散剤、甘味料、及び水和の水。例示的な賦形剤としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトール。
【0264】
薬学的に許容される塩:本開示は、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩も含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することにより(例えば、遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることにより)親化合物が修飾されている、本開示の化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、これらに限定されないが、アミン等の塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、及びカルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩又は有機塩等が挙げられる。代表的な酸付加塩としては、以下のものが挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩(heptonate)、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩及び、吉草酸塩等。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、以下のものが挙げられる:ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウム等、並びにこれらに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンを含む、無毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びアミン陽イオン等。本開示の薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒性無機酸又は有機酸から形成される、親化合物の従来の無毒性塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般的に、そのような塩は、水中で、又は有機溶媒中で、又はその2つの混合液中で、これら化合物の遊離酸形態又は遊離塩基形態を、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製することができ、一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985年、1418頁、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、P.H.Stahl及びC.G.Wermuth(編)、Wiley-VCH、2008年、及びBergeら、Journal of Pharmaceutical Science、66巻、1~19頁(1977年)に見出される。これらの文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0265】
薬学的に許容される溶媒和物:用語「薬学的に許容される溶媒和物」は、本明細書で使用される場合、好適な溶媒の分子が、その結晶格子に組み込まれている本発明の化合物を意味する。好適な溶媒は、投与される用量で生理学的に許容される。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、又はそられの混合液を含む溶液からの結晶化、再結晶化、又は析出により調製することができる。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、及び三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、及び安息香酸ベンジル等である。水が溶媒である場合、溶媒和物は、「水和物」と呼ばれる。
【0266】
薬理学的効果:本明細書で使用される場合、「薬理学的効果」は、生物又は系が外来性作用剤と接触又は暴露された後で生じる、その生物又は系での測定可能な生物学的現象である。薬理学的効果は、治療、1つ又は複数の症状、診断、予防の改善、及び疾患、障害、状態、又は感染の発症の遅延等の、治療上有効な結果をもたらすことができる。そのような生物学的現象の測定は、定量的、定性的、又は別の生物学的現象との比較であってもよい。定量的測定は、統計的に有意であってもよい。定性的測定は、度合い又は種類であってもよく、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%又はそれ以上以上異なっていてもよい。それらは、存在又は非存在、より良好又はより不良、多い又は少ないとして観察可能であってもよい。外来性作用剤は、薬理学的効果に関する場合、全体的に又は部分的に生物又は系に対して外来性である作用剤である。例えば、野生型生体分子を修飾すると、構造的か又は化学的かに関わらず、外来性作用剤がもたらされるだろう。また、同様に、生物又は系に天然では見出されない化合物、分子、又は物質に野生型分子を組み込むか、又はそれらと野生型分子を組み合わせると、外来性作用剤がもたらされるだろう。本発明のsaRNAは、外来性作用剤を含む。薬理学的効果の例としては、これらに限定されないが、以下の細胞の増加又は減少等の細胞数の変化が挙げられる:好中球、網状赤血球、顆粒球、赤血球(赤血球細胞)、巨核球、血小板、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、小神経膠細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサT細胞、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、又は網状赤血球。また、薬理学的効果としては、血液化学、pH、ヘモグロビン、ヘマトクリットの変化、これらに限定されないが、肝酵素AST及びALT等の酵素レベルの変化、脂質プロファイル、電解質、代謝マーカー、ホルモン、又は当業者に知られている他のマーカー若しくはプロファイルの変化が挙げられる。
【0267】
物理化学的:本明細書で使用される場合、「物理化学的」は、物理的な及び/又は化学的な特性を意味するか又は関する。
予防:本明細書で使用される場合、用語「予防」は、感染、疾患、障害、及び/又は状態の発症を部分的に又は完全に遅延させること;特定の感染、疾患、障害、及び/又は状態の1つ又は複数の症状、特徴、又は臨床徴候の発症を部分的に又は完全に遅延させること;特定の感染、疾患、障害、及び/又は状態の1つ又は複数の症状、特徴、又は徴候の発症を部分的に又は完全に遅延させること;感染、特定の疾患、障害、及び/又は状態からの進行を部分的に又は完全に遅延させること;及び/又は感染、疾患、障害、及び/又は状態と関連する病理が発生するリスクを減少させることを指す。
【0268】
プロドラッグ:また、本開示は、本明細書に記載した化合物のプロドラッグを含む。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、その物質、分子、又は実体が、化学的又は物理的に変更されると治療剤として作用することになる形態のあらゆる物質、分子、又は実体を指す。プロドラッグは、共有結合で結合されていてもよく、又はある様式で隔離されていてもよく、哺乳類対象体への投与前、投与時、又は投与後に放出されるか、又は活性薬物部分へと変換される。プロドラッグは、日常的な操作で又はin vivoでのいずれかで修飾が切断されて、親化合物になるように、化合物に存在する官能基を修飾することにより調製することができる。プロドラッグとしては、ヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、又はカルボキシル基が、哺乳動物対象体に投与されると、切断されて、それぞれ遊離ヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、又はカルボキシル基を形成する任意の基に結合されている化合物が挙げられる。プロドラッグの調製及び使用は、以下の文献で考察されている:T.Higuchi and V.Stella、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Seriesの14巻、及びBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年;この文献は両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる。
【0269】
予後:本明細書で使用される場合、用語「予後」は、特定の生物学的事象が、将来、生じることになる、又は生じる可能性が非常に高いと宣言又は主張することである。
進行:本明細書で使用される場合、用語「進行」又は「癌進行」は、疾患又は状態が進行すること、又は疾患又は状態に向かって悪化することを意味する。
【0270】
増殖する:本明細書で使用される場合、用語「増殖する」は、成長、拡大、若しくは増加すること、又は急速に成長、拡大、又は増加することを意味する。「増殖性」は、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖性」は、増殖特性に、対抗するか又は不適切である特性を有することを意味する。
【0271】
タンパク質:「タンパク質」は、ペプチド結合によって共に結合されているアミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で使用される場合、任意のサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。しかしながら、タンパク質は、典型的には、長さが少なくとも50個アミノ酸であろう。幾つかの例では、コードされたタンパク質は、約50個アミノ酸よりも小さい。この場合、このポリペプチドは、ペプチドと呼ばれる。タンパク質が短いペプチドである場合、それは、長さが少なくとも約10個アミノ酸残基であろう。タンパク質は、天然、組換え、又は合成であってもよく、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。また、タンパク質は、天然タンパク質又はペプチドの断片を含んでいてもよい。タンパク質は、単一分子であってもよく、又は多分子複合体であってもよい。また、タンパク質という用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマーに該当する場合がある。
【0272】
タンパク質発現:用語「タンパク質発現」は、検出可能なレベルのアミノ酸配列又はタンパク質が発現されるように、核酸配列が翻訳されるプロセスを指す。
精製された:本明細書で使用される場合、「精製する」「精製された」「精製」は、不要な成分、物質汚染、混合物、又は欠陥物から実質的に純粋な又は清浄なものにすることを意味する。
【0273】
退縮:本明細書で使用される場合、用語「退縮」又は「退縮度」は、表現型又は遺伝子型のいずれかでの、癌進行の反転を指す。癌進行を遅延又は停止させることは、退縮とみなすことができる。
【0274】
試料:本明細書で使用される場合、用語「試料」又は「生体試料」は、その組織、細胞、又は構成部分(例えば、血液、粘液、リンパ液、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜臍帯血、尿、膣液、及び精液を含むが、それらに限定されない体液)のサブセットを指す。試料としては、生物全体、又は例えば、血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚の外部区画、呼吸器、腸、及び尿生殖器管、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官を含むが、それらに限定されないその組織、細胞、若しくは構成部分のサブセット又はそれらの画分若しくは部分から調製されたホモジネート、溶解産物、又は抽出物が、更に挙げられる。更に、試料は、タンパク質又は核酸分子等の細胞成分を含有していてもよい、栄養ブロス又はゲル等の培地を指す。
【0275】
シグナル配列:本明細書で使用される場合、語句「シグナル配列」は、タンパク質の輸送又は局在化を指図することができる配列を指す。
単一単位用量:本明細書で使用される場合、「単一単位用量」は、1用量/1回/単一経路/単一接触点で、つまり単一投与事象で投与される任意の治療剤の用量である。
【0276】
類似性:本明細書で使用される場合、用語「類似性」は、ポリマー分子間の、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。ポリマー分子の相互の類似性パーセントの計算は、類似性パーセントの計算では、当技術分野で理解されているような保存的置換が考慮されている以外は、同一性パーセントの計算と同じ様式で実施することができる。
【0277】
分割用量:本明細書で使用される場合、「分割用量」は、単一単位用量又は総1日用量を2つ以上の用量に分割することである。
安定的:本明細書で使用される場合、「安定的」は、反応混合物から有用な程度の純度へと単離することに耐えるほど十分にロバストであり、好ましくは、効果的な治療剤へと製剤化することが可能である化合物を指す。
【0278】
安定化された:本明細書で使用される場合、用語「安定化する」「安定化された」「安定化領域」は、安定的する又は安定的になることを意味する。
対象体:本明細書で使用される場合、用語「対象体」又は「患者」は、本発明による組成物を、例えば、実験、診断、予防、及び/又は治療目的で投与することができる、任意の生物を指す。典型的な対象体としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒト等の哺乳動物)及び/又は植物が挙げられる。
【0279】
実質的に:本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、目的の特徴又は特性の完全な又はほぼ完全な程度又は度合いを示す質的状態を指す。生物学的技術分野の当業者であれば、生物学的な及び化学的な現象は、たとえあったとしても、ほとんどは完全には終了せず、及び/又は完璧には進行せず、又は絶対的な結果を達成若しくは回避しないことを理解するだろう。したがって、用語「実質的」は、本明細書では、多くの生物学的な及び化学的な現象に本来的な完全性の潜在的な欠如に留意するために使用される。
【0280】
実質的に等しい:本明細書で使用される場合、この用語は、投与間の時間的差異に関する際には、プラス/マイナス2%を意味する。
実質的に同時に:本明細書で使用される場合、この用語は、複数回の投与に関する際には、2秒以内を意味する。
【0281】
~を罹患する:疾患、障害、及び/又は状態を「罹患している」個体は、疾患、障害、及び/又は状態であると診断されているか、又はそれらの1つ若しくは複数の症状を提示している。
【0282】
~に感受性:疾患、障害、及び/又は状態に「感受性」である個体は、疾患、障害、及び/又は状態であると診断されていないか、及び/又は疾患、障害、及び/又は状態の症状を示していなくともよいが、疾患又はその症状を発症する傾向を内包する。幾つかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態(例えば、癌)に感受性である個体、下記の1つ又は複数を特徴としていてもよい:(1)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子突然変異;(2)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害、及び/又は状態に関連するタンパク質及び/又は核酸の発現及び/又は活性の増加及び/又は減少;(4)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する習慣及び/又はライフスタイル;(5)疾患、障害、及び/又は状態の家族歴;並びに(6)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する微生物との接触及び/又は感染。幾つかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態に感受性である個体は、疾患、障害、及び/又は状態を発症するだろう。幾つかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態に感受性である個体は、疾患、障害、及び/又は状態を発症しないだろう。
【0283】
持続放出:本明細書で使用される場合、用語「持続放出」は、特定の期間にわたってある放出速度に従う医薬組成物又は化合物の放出プロファイルを指す。
合成:用語「合成」は、人の手で生成、調製、及び/又は製造することを指す。本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド又は他の分子の合成は、化学的であってもよく、又は酵素的であってもよい。
【0284】
標的細胞:本明細書で使用される場合、「標的細胞」は、任意の1つ又は複数の目的細胞を指す。細胞は、in vivoで、in vitroで、in situで、又は生物の組織若しくは器官で見出される。生物は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、及び最も好ましくは患者であってもよい。
【0285】
治療剤:用語「治療剤」は、対象体に投与した際に、治療的、診断的、及び/又は予防的な効果を示し、並びに/又は所望の生物学的及び/若しくは薬学的効果を誘発する任意の作用剤を指す。
【0286】
治療上有効な量:本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な量」は、感染、疾患、障害、及び/又は状態を罹患しているか又は感受性がある対象体に投与した際に、その感染、疾患、障害、及び/又は状態を治療、症状を改善、診断、予防し、及び/又は発症を遅延させるのに十分な、送達される作用剤(例えば、核酸、薬物、治療剤、診断薬、予防薬等)の量を意味する。
【0287】
治療上有効な結果:本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な結果」は、感染、疾患、障害、及び/又は状態を罹患しているか又は感受性がある対象体において、その感染、疾患、障害、及び/又は状態を治療、症状を改善、診断、予防し、及び/又は発症を遅延させるのに十分な結果を意味する。
【0288】
総1日用量:本明細書で使用される場合、「総1日用量」は、24時間に与えられる又は処方される量である。総1日用量は、単一単位用量として投与されてもよい。
転写因子:本明細書で使用される場合、用語「転写因子」は、例えば、転写の活性化又は抑制により、DNAのRNAへの転写を制御するDNA結合タンパク質を指す。幾つかの転写因子は、単独で転写の制御を達成するが、他の転写因子は、他のタンパク質と協調して作用する。幾つかの転写因子は、ある条件下では転写の活性化及び抑制を両方とも達成することができる。一般的には、転写因子は、特定の標的配列、又は標的遺伝子の制御領域の特定のコンセンサス配列に高度に類似した配列に結合する。転写因子は、単独で又は他の分子との複合体で、標的遺伝子の転写を制御することができる。
【0289】
治療:本明細書で使用される場合、用語「治療」は、特定の感染、疾患、障害、及び/又は状態の1つ又は複数の症状又は特徴を部分的に又は完全に、緩和、寛解、改善、軽減、発症を遅延、進行を阻害、重症度を低減、及び/又は発生を低減することを指す。例えば、癌を「治療する」は、腫瘍の生存、増殖、及び/又は拡散を阻害することを指すことができる。治療は、疾患、障害、及び/又は状態の徴候を示していない対象体に、及び/又は疾患、障害、及び/又は状態の初期徴候を示しているに過ぎない対象体に、その疾患、障害、及び/又は状態に関連する病理の発症リスクを減少させるために施してもよい。
【0290】
語句「治療方法」又はそれと同等の語句は、例えば癌に適用される場合、個体の癌細胞の数を低減、除去、若しくは予防するか、又は癌の症状を緩和することを目的とする手順又は治療計画を指す。癌又は別の増殖性疾患を「治療する方法」は、癌細胞又は他の障害が、実際に完全に除去されることになること、細胞又は障害の数が実際に低減されることになること、又は癌又は他の障害の症状が実際に緩和されことになることを必ずしも意味しない。多くの場合、癌を治療する方法は、成功の可能性が低い場合でさえ実施されることになるが、個体の病歴及び推定余命を考慮した場合、それにもかかわらず全体的に有益な治療計画であるとみなされる。
【0291】
腫瘍増殖:本明細書で使用される場合、用語、「腫瘍増殖」又は「腫瘍転移増殖」は、別様の指定がない限り、腫瘍学で一般的に使用されている通りに使用される。この用語は、主に腫瘍細胞増殖の結果として増加する腫瘍又は腫瘍転移の質量又は容積に主に関する。
【0292】
腫瘍量:本明細書で使用される場合、用語「腫瘍量」は、対象体が有する、直径が3mmを超える腫瘍小結節全ての総腫瘍容積を指す。
腫瘍容積:本明細書で使用される場合、用語「腫瘍容積」は、腫瘍のサイズを指す。腫瘍容積(mm3)は、式:容積=(幅)2×長さ/2により計算される。
【0293】
未修飾:本明細書で使用される場合、「未修飾」は、任意の様式で変更される前の任意の物質、化合物、又は分子を指す。未修飾は、いつもそうとは限らないが、生体分子の野生型又は天然型を指す。分子は、一連の修飾を受けている場合があり、それにより各修飾分子は、その後の修飾の「未修飾」開始分子としての役目を果たす場合がある。
【0294】
均等物及び範囲
当業者であれば、単なる日常的な実験作業を使用して、本明細書に記載の本発明による特定の実施形態の多数の均等物があることを認識することになるか又は確認することができるだろう。本発明の範囲は、上記の記載に限定されることが意図されておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に示されている通りである。
【0295】
請求項では、「a」、「an」、「the」等の冠詞は、状況と矛盾することが示されない限り、又は状況から明らかにそうではないと示されない限り、1つ又は複数を意味する。群の1つ又は複数のメンバー間に「又は」を含む請求項又は記載は、状況と矛盾することが示されない限り、又は状況から明らかにそうではないと示されない限り、その群のメンバーの1つ、2つ以上、又は全てが、所与の産物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はそうでなければ関連している場合、満たされるとみなされる。本発明は、群の厳密に1つのメンバーが、所与の産物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はそうでなければ関連している実施形態を含む。本発明は、群のメンバーの2つ以上又は全てが、所与の産物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はそうでなければ関連している実施形態を含む。
【0296】
また、用語「含む(comprising)」は、包含的であることが意図されており、追加の要素又はステップの包含を許容することが留意される。
範囲が示されている場合、終点が含まれる。更に、別様の指定がない限り、又は状況から及び当業者の理解から明らかにそうではないと示されない限り、範囲として表わされている値は、本発明の様々な実施形態に提示されている範囲内のあらゆる特定の値又は部分範囲を、状況が明白にそうではないと示さない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで想定することができることが理解されるべきである。
【0297】
加えて、従来技術内に入る本発明のあらゆる特定の実施形態は、請求項の任意の1つ又は複数から明示的に除外される場合があることが理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、排除が本明細書に明示的に示されなくとも、それらは除外される場合がある。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の核酸又はそれによりコードされるタンパク質;任意の生産方法;任意の使用方法;等)は、従来技術の存在に関するか否かに関わらず、任意の1つ又は複数の請求項から理由の如何に関わらず除外することができる。
【0298】
引用源、例えば文献、刊行物、データベース、データベースエントリ、及び本明細書で引用した技術は全て、引用時に明示的に表記されていない場合でも、参照により本出願に組み込まれる。引用源及び本出願の記載が矛盾する場合、本出願の記載が優先するものとする。
【0299】
本発明は、以下の非限定的な例により更に例示される。
実施例
物質及び手順:
HepG2及びラット肝臓上皮細胞株へのC/EBPα-saRNAのトランスフェクション
HepG2は、既知の肝臓指向性ウイルス因子を含まない、多種多様な肝臓特異的代謝機能に関与する遺伝子を発現するヒト肝芽腫に由来する肝細胞株である。HepG2細胞を、100単位/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン、2mmol/Lグルタミン(SIGMA社)、及び10%ウシ胎仔血清(LABTECH INTERNATIONAL社)で補完されたロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)で培養した。C/EBPα-saRNAトランスフェクションの場合、細胞を24ウェルプレートで60%の集密度まで増殖させてから、製造業者のプロトコールに従ってナノフェクタミン(PAA社、英国)を使用して、5、10、及び20nmolのsaRNAをトランスフェクションした。このプロセスを16時間の間隔で3回繰り返してから、mRNA分析用に全RNAを分離するために細胞を回収した。
【0300】
アルブミンELISA
ラット肝臓上皮細胞及びHepG2細胞を、活性炭処理FCSの存在下で無フェノールレッドRPMI培地にて培養した。8時間、16時間、及び24時間の3セットのsaRNAトランスフェクション後、製造業者の説明書に従って、全マウスアルブミンELISA(ASSAY MAX、ASSAY PRO社 米国)のために、培養培地を収集した。
【0301】
WST-1アッセイ
C/EBPα-saRNAトランスフェクションの16、24、及び96時間後に、製造業者のガイドライン(ROCHE社、英国)に従ってWST-1試薬を使用して、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼ発現分析を行うことにより、細胞増殖を定量化した。簡潔に述べると、WST-1試薬を、1:100希釈でプレートに使用し、1時間インキュベートした。酵素反応を、BIO-TEK ELISA測定機を使用して、450nmで測定した。
【0302】
細胞株からの全RNAの分離
細胞株からの全RNA抽出は、製造業者の説明書に従ってRNAQUEOUS-MICROキット(AMBION社、英国)を使用して実施した。簡潔に述べると、細胞を、溶解緩衝液(AMBION社、英国)中で出力3にて3回パルスで超音波処理した後、穏やかに遠心分離した。その後、細胞溶解産物を、RNA結合カラムを通して処理し、その後、複数回洗浄して溶出した。単離した全RNAを、NANODROP 2000分光光度計で定量化した。500ngの全抽出RNAを処理してゲノムDNAを除去してから、QIAGEN社製のQUANTITECT(登録商標)逆転写キットを使用して逆転写を行った。
【0303】
動物実験
以前に記載されている臨床的に意義のあるラット肝腫瘍モデルを使用した[Huangら、Mol Ther、16巻、1681~1687頁(2008年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。in vivo治療の場合、C/EBPα-saRNAを、100ulのTEAコアPAMAMデンドリマー(Centre Interdisciplinaire de Nanoscience de Marseille、13288 マルセイユ、フランス)で再構成した。第1週では、尾静脈注射により3×用量で10匹の硬変症動物を処置した。対照動物(n=10)には、等容積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はスクランブル-saRNAを注射した。動物は全て、全米科学アカデミーが準備し、国立衛生研究所により出版された「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH刊行物86-23、1985年改訂)に概説されている基準に従って人道的に取り扱った。以下の配列のスクランブル-saRNAを使用した:
スクランブルsaRNA_SS:ACUACUGAGUGACAGUAGAUU (配列番号33)
スクランブルsaRNA_AS:UCUACUGUCA-CUCAGUAGUU (配列番号34)
遺伝子マイクロアレイプロファイル
ヒト肝臓癌RT2 Profiler(商標)(QIAGEN社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を使用して、肝細胞癌の進行に関与する84個の重要遺伝子の発現をプロファイルした。偏りのない逆転写を行うためのランダム六量体及びオリゴ-dTプライマーを使用し、RT2 Frist Strandキット(QIAGEN社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を用いて、500ngの精製RNAを15分間逆転写した。その後、ファーストストランド(First strand)で合成したcDNAを、アレイプレートに移し、7900HT型Applied Biosystems社製リアルタイムサイクラーで、RT2 SYBR(登録商標)Green ROX(商標)qPCRマスターミックス(QIAGEN社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を使用し、95℃で10分間の1サイクル及び40サイクル(95℃で15秒間及び60℃で1分間)で増幅し、蛍光データを収集した。各ウェルの閾値サイクル(CT)を、手作業で算出し、データ分析用にエクスポートし、SABiosciencesアレイ専用データ分析ソフトウェア(QIAGEN社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を使用してクラスタリングした。
【0304】
腫瘍量の評価
処置後の腫瘍進行を評価するために、処置動物は全て、C/EBPα-saRNA-デンドリマーを注射した1週間後に死亡させた。体重、肝臓、肺、及び脾臓を計量し、臓器全ての様子を記録した。動物を死亡させた後、肝葉を全て速やかに取り出して計量し、5mm切片の肝臓表面にある肉眼で視認できる小結節全ての直径を測定した。腫瘍量は、>3mmの直径を有する腫瘍小結節全ての総容積で評価した。
【0305】
実施例1.肝硬変及びHCCの治療におけるC/EBPα-saRNAの治療効果
追加の実験手順は、2013年8月8日のHepatologyに発表されたReebyeらの受理原稿に見出すことができる。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0306】
C/EBPα-saRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞でのC/EBPα及びアルブミンの発現レベル
C/EBPα-saRNAトランスフェクションのC/EBPα及びアルブミンの転写物レベルに対する効果を評価した。C/EBPαを標的とする以下のC/EBPα-saRNA二本鎖(センス/アンチセンス)をこの研究に使用した:
AW1センス鎖:CGGUCAUUGUCACUGGUCA(配列番号1)
AW1アンチセンス鎖:UGACCAGUGACAAUGACCG(配列番号2)
saRNA分子の特性は、以下の通りである。
【0307】
【0308】
20nM C/EBPα-saRNAをトランスフェクションすると、C/EBPα転写物(
図3A)及びアルブミンmRNA転写物(
図3B)は両方とも、2倍超に増加した。C/EBPα-saRNA(5、10、及び20nM)用量の量を増加させると、それに依存してC/EBPαmRNA転写物レベル(
図3C)が増強された。アルブミンの最大発現は、50nMのC/EBPα-saRNAで達成され、より高いsaRNAレベルでは、更なる用量依存的増加は見られなかった(
図3D)。C/EBPαのプロモーター領域(
図3E)、アルブミンプロモーター(アルブミンD-ボックス)結合タンパク質(DBP)(
図3F)及びアルブミン(
図3G)の結合ボックスを分析すると、コアC/EBPα結合モチーフ(GCAAT)の存在が示された。また、EPITECT(商標)メチルPCRアッセイは、C/EBPα-saRNAのトランスフェクション後に、C/EBPAプロモーター及びDBPプロモーターの両方のCpG島でメチル化が低減されたことを示した(
図4A及び
図4B)。
【0309】
C/EBPα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞でのアルブミンmRNA転写物増加の生物学的な意義を決定するために、ヒトアルブミン特異的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を実施した。分泌アルブミンペプチドが、トランスフェクション細胞の培養培地で検出された(
図4C)。C/EBPα-saRNAによるHepG2細胞でのアルブミン分泌の増強が、他の肝細胞特異的機能及び肝細胞分化の維持にも影響を及ぼしたか否かを確立するために、オルニチン回路酵素オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)及びアルファ-フェトプロテイン(AFP)の発現レベルを、mRNA転写物レベルの測定により、各々測定した。C/EBPα-saRNAは、OTC発現レベルの増加を引き起こし(
図4D)、尿素産生の能力向上を示唆した。減少したAFPの発現レベル(
図4E)は、正常な肝細胞で典型的に観察される負の調節を示している。上述の遺伝子発現変化の観察に加えて、C/EBPα-saRNAが、HepG2細胞増殖の著しい下方制御を引き起こしたことも観察された(
図4F)。この観察は、C/EBPαの既知の抗増殖効果と一致する。
【0310】
肝硬変/肝細胞癌(HCC)を坦持する雄ウィスターラットにC/EBPα-saRNAを静脈内注射すると、アルブミンの循環レベルの増加、肝機能の回復、及び腫瘍量の低減が促進された。
【0311】
C/EBPα-RNAを、静脈内送達用に、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーに組み込んだ。これをC/EBPα-saRNA-デンドリマーと呼ぶ。C/EBPα-saRNAの安定性は、C/EBPα-saRNA処置マウスに由来する血液試料を使用して、ヌクレアーゼ活性アッセイを実施することにより、まず循環血清中で試験した。C/EBPα-saRNA二本鎖の安定性の著しい低減が48時間までに観察された(
図5A及び
図5B)。したがって、硬変症ラットには、1週間の期間にわたって、200uLの0.1nmol/uL C/EBPα-saRNA-デンドリマーを反復用量で注射した。標準用量は、50uLの第5世代トリエタノールアミン(TEA)-コアPAMAMデンドリマー及び100uLの無RNase/Dnase水と混合した50uLの20ナノモルC/EBPα-saRNAで製作した。C/EBPα-saRNAの濃度は、0.1nmol/uLだった。
【0312】
循環アルブミンの測定は、200uLの0.1nmol/uL C/EBPα-saRNA-デンドリマーの3用量を注射した後、PBS対照群又スクランブル-saRNA-デンドリマー対照群と比較して、30%を超える有意な増加を示した(
図5C)。更なる血液分析は、C/EBPα-saRNA-デンドリマー処置群のビリルビンレベルが、両対照群と比較して、少なくとも17%有意により低かったことを示した(
図5D)。また、C/EBPα-saRNA-デンドリマー処置群では、両対照群と比較して、それぞれ少なくとも10%及び30%だけ、肝酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルが有意に低下した(
図5E及び
図5F)。肝臓の組織学的検査は、C/EBPα-saRNA-デンドリマー注射ラットの腫瘍小結節が、両対照群と比較して有意に減少したこと示した(
図6A及び
図6B)。これらの結果は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-p)の胎盤形態を染色したC/EBPα-saRNA処置ラット肝臓に由来する組織切片の免疫組織学研究と一致した。独立した分析は、PBS対照群又はスクランブル-saRNA-デンドリマー対照群と比較して、C/EBPα-saRNA-デンドリマーによる処置により発癌が低減された証拠があることを示唆した。更に、PBS対照群、スクランブル-saRNA-デンドリマー処置群、又はC/EBPα-saRNA-デンドリマー処置群間には、肝線維症に差異はなかった(
図6C)。対照群のGST-p陽性染色の平均密度は、70(±5.0%)であり、C/EBPα-saRNA-デンドリマー注射ラットの平均密度は、32(±6.5%)だった。GST-pの過剰発現は、ラット肝臓の前腫瘍状態及び悪性形質転換中に観察されるため、このデータは、C/EBPα-saRNA-デンドリマー処置がこのプロセスを低減することができることを示唆する。
【0313】
各群7匹の動物の肝生検から抽出された全RNAを、アルブミン(
図7A)、C/EBPα(
図7B)、肝細胞核内因子4-アルファ(HNF4α)(
図7C)、及び肝細胞核内因子1-アルファ(HNF1α)(
図7D)のmRNA転写物レベルについてスクリーニングした。mRNAレベルの有意な増加が、全ての因子で観察された。これは、肝細胞分化におけるHNF4αの役割、並びにアルブミン発現の促進におけるC/EBPα及びHNF1αの役割と一致した。まとめると、肝細胞増殖因子(HGF)のmRNAレベルがより低く(
図7E)、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPD1)(
図7F)及びプラスミノーゲン(
図7G)のレベルが増加したことは、C/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置した硬変症ラットの肝機能が改善したことを示唆した。したがって、C/EBPα-saRNAによる処置は、癌治療に有用であることを示すだけでなく、肝臓の臓器機能の改善も示している。
【0314】
経路遺伝子マイクロアレイ分析は、C/EBPα-saRNAが、腫瘍抑制遺伝子の上方制御に寄与し、遺伝子の下方制御が肝臓癌に関与することを示唆する。
C/EBPα-saRNAに応答して影響を受ける可能性のある他の肝臓特異的因子を調査するために、C/EBPα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞における、一群の84個の肝臓癌特異的遺伝子の遺伝子発現プロファイル(QIAGEN/SABIOSCIENCES社製ヒト肝臓癌RT
2 PROFILER(商標))を分析した(
図8)。特に興味深いことに、20個の遺伝子で上方制御が観察された(表5)。それらのうちの18個は、網膜芽細胞腫(RB)を含むHCCの既知腫瘍抑制遺伝子である(表7)。最も著しく上方制御された(3倍を超える)ものとしては、デスアゴニスト遺伝子BH3相互作用ドメイン(BID)、及びp53をコードする腫瘍タンパク質53遺伝子(TP53)があった。BIDは、BCl2結合Xタンパク質(BAX)と相互作用し、ひいては野生型p53により上方制御され、DNAの損傷に応答して細胞周期停止及びアポトーシスを制御する。下方制御された遺伝子は、表6に示されている。
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
【0319】
成長停止及びDNA損傷誘導性45ベータ(GADD45B)も上方制御されたが、これは、細胞増殖制御に関連する成長停止DNA損傷誘導性遺伝子ファミリーのメンバーであり、p53と共にHepG2細胞の肝保護を誘導する。肝臓癌欠失1(DLC1)遺伝子は、細胞増殖及び成長を阻害し、並びにアポトーシスを誘導するヒト肝臓癌の腫瘍抑制因子として報告されている。このデータは、DLC1が、C/EBPα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞では上方制御されることを示唆する(表7)。
【0320】
【0321】
Runt関連転写因子3(RUNX3)は、転写因子のRuntドメインファミリーのメンバーであり、HCCにおいて頻繁に観察されており、その発現は、周囲の正常組織よりも著しく低い。RUNX3の異所的発現は、HCC細胞での上皮間葉転換(EMT)を反転させるため、C/EBPα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞では、RUNX3の上方制御(表6)、及びEMTに関与する4つの遺伝子の下方制御も観察された。それらには、CTNB1(β-アテニン(β-atenin)をコードする)、肝細胞増殖因子(HGF)、スモールボディサイズマザーデカペンタプレジック相同体7(SMAD7、Small body size mothers against decapentaplegic homolog 7)、及び形質転換因子ベータ1(TGFB1)が含まれていた(表8)。
【0322】
サイトカインシグナル伝達抑制因子3(SOCS3)も検出された。SOCS3は、サイトカインシグナル伝達の負の制御因子として機能するSTAT誘導性STAT阻害因子(SSI)のメンバーである。SOCS3発現の減少は、HCCでのSTAT3のリン酸化増加と相関している。更に、SOCS3は、サイクリンD1(CCND1)、並びにXIAP、サバイビン(BIRC5)、及び骨髄性白血病細胞分化タンパク質(MCL1)を含む抗アポトーシス遺伝子の負の制御に関与すると考えられている。ここで、SOCS3発現の著しい増加(表7)、並びにSTAT3、CCND1、XIAP、BIRC5、及びMCL1発現の著しい減少(表8)が観察された。また、アレイデータにより、GSTP1発現の下方制御が確認された(表8)。
【0323】
全体として、下方制御された遺伝子は、アポトーシス及び細胞死の負の制御(ジーンオントロジー(GO)ターム GO:0043066及びGO:0060548;p値 それぞれ2×10-9及び2×10-9)と関連する機能が強く強化され、上方制御された遺伝子は、細胞分化の正の制御(GO:0045597;p=5×10-3)に関連する機能が強化された。結果的に、このデータは、C/EBPαのレベル及びシグナルの制御が、肝臓癌中の治療介入点であり得ることを示唆する。
【0324】
【0325】
【0326】
HepG2へのC/EBPα-saRNAのトランスフェクションは、HepG2細胞のSTAT3、IL6R、及びcMycを抑制する。
以前に発表されている報告によると、インターロイキン6受容体(IL6R)は、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)を直接活性化し、ひいてはc-Mycの発現を上方制御することにより肝臓発癌を促進することが示されている。これら3つの遺伝子のChIP-Seq分析により、それらのプロモーター領域内にC/EBPα結合部位が存在することが示されたため(
図9A、
図9B、及び
図9C)、本発明者らは、HepG2細胞へのC/EBPα-saRNAのトランスフェクションが、これら3つの因子の発現レベルに影響を及ぼすことになるか否かを調査した。
【0327】
非トランスフェクション細胞と比較して、STAT3(
図9D)、cMyc(
図9E)、及びIL6R(
図9F)のmRNAレベルの有意な低減が観察された。HepG2細胞を、20nM終濃度のC/EBPα-saRNA又はスクランブル-saRNAのいずれかでトランスフェクションした。3セットのトランスフェクション後、細胞を回収して、全RNAを抽出し、ゲノムDNAを除去した。mRNAを逆転写した後、定量PCR分析を実施して、STAT3、MYC、及びIL6Rの転写物レベルを検出した。この遺伝子低減傾向は、本発明者らの上述の遺伝子発現アレイにおいてMYC及びSTATでも観察された(表5)。STAT3(
図10A)、MYC(
図10B)、及びIL6R(
図10C)のプロモーター領域にあるCpG島のメチル化状態を、EPITECT(商標)メチルII PCRアッセイ(QIAGEN社)を使用して評価すると、3つの遺伝子全てのプロモーターでメチル化状態の増加が検出された。また、ウエスタンブロットにより、残基705及び727でのSTAT3のリン酸化ス状態の低減、及びIL6Rのタンパク質レベルの低減が確認された(
図10D)。まとめると、C/EBPαのin vivo送達は、硬変症/HCC状況での肝機能支援及び異常な細胞増殖の減少に正の効果を示すことができることが示された。
【0328】
要約すると、C/EPBαの周知の抗増殖効果を、臨床的に意義のある硬変症/HCCモデルで確認した。C/EPBαが、細胞増殖を制御するC/EPBαの既知標的の制御に加えて、多数の他の癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子を標的とすることを、肝臓癌特異的遺伝子アレイを使用して示した。したがって、C/EPBα-saRNAの調節は、肝臓癌を治療するために、転写レベルで非常に大きな効果を示すことができる。現在、手術、化学療法、放射線療法、及び生物学的製剤等のほとんどの治療分野は、多かれ少なかれ肝機能障害の減少を伴う。ここで示されたデータは、肝臓癌細胞の標的化に新しい手法を提供する。
【0329】
実施例2.C/EBPα-saRNA-デンドリマー遺伝子発現分析
Huh7肝細胞株でのC/EBPα発現を、対照、C/EBPα-saRNA単独、様々なデンドリマー、及び様々なC/EBPα-saRNA:デンドリマー比のC/EBPα-saRNA-デンドリマーを用いて試験した。臨床等級のC/EBPα-saRNAをトランスフェクションに使用した。
図11の結果は、C/EBPα遺伝子発現が、C/EBPα-saRNA-デンドリマーでのみ増加したことを示す。
【0330】
実施例2b.saRNAデンドリマーの安定性
また、C/EBPα-saRNA-デンドリマーの安定性を試験した。C/EBPα-saRNA-デンドリマーを、1時間、12時間、24時間、及び48時間室温でインキュベートしてから、HepG2細胞にトランスフェクションした。その後、C/EBPαmRNAの転写物レベルを、5nmol C/EBPα-saRNA-デンドリマーの3×用量後、
図12に示されているように各時点で測定した。最適な効果は、1時間で観察された。これは、12~24時間で少なくとも50%低減される。48時間では、C/EBPα-saRNA-デンドリマーは、安定性をほとんど失った。
【0331】
C/EBPα-saRNA-デンドリマー複合体を注射した後、マウスの血清アルブミンレベルを1週間試験した。結果は
図13に示されている。各群は、5匹のマウスを含む。群1は未処置であり、血清アルブミンレベルを1日目に試験した。群2は未処置であり、血清アルブミンレベルを8日目に試験した。群Aは、3×用量の5nmol C/EBPα-saRNA-デンドリマーを0.1nmol/uLの濃度で処置し、血清アルブミンレベルを2日目に試験した。群B、C、及びDは全て、同じ量のC/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置し、血清アルブミンレベルを、それぞれ3日目、5日目、及び8日目に試験した。群A、B、C、及びDの血清アルブミンレベルは、群2よりも高く、C/EBPα-saRNA-デンドリマーの影響が、投与後少なくとも8日目まで続いたことが示された。
【0332】
実施例3.正常動物でのin vivo C/EBPα-saRNA-デンドリマー薬物標的化
肝臓疾患のないマウスに静脈注射したC/EBPα-saRNAの生化学的効果を評価するために、肝臓特異的因子の循環血清を分析し、C/EBPα-saRNA注射マウスの肝細胞を対照マウスと比較して、組織病理学的変化を研究した。
【0333】
10匹の雄C57Bl6/J、8週齢マウスを実験に使用した(対照群N=5)。組織内及び地域の規制団体から承認を受け、手順は全て、現在有効な国家規制に従った。0.1nmol/uL濃度の5nmol C/EBPα-saRNAを、無RNase/Dnase H2Oで再構成して、総容積を100uLにした。50uLの複合体A(C/EBPα-saRNA)及び50uLの複合体B(INVIVOFECTAMINE、INVITROGEN社、カリフォルニア州、米国)を混合し、50℃で30分間インキュベートし、その結果生じた混合物を尾静脈注射に使用した。対照動物には等容積のPBSを注射し、陽性対照動物には、第VII因子に対するsiRNAを投与した。合計で5匹の対照動物及び5匹の実験動物に注射した。
【0334】
肝臓疾患の非存在下では、C/EBPα-saRNAの注射は、アルブミンの循環レベル(
図14A)及び非抱合型ビリルビンレベル(
図14B)を有意に増加させ、肝機能が増加したことが示された。アラニントランスアミナーゼ(ALT)(
図14C)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)(
図14D)、及びガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)(
図14E)の血清レベルは、C/EBPα-saRNA注射マウスでは減少した。
【0335】
ヘマトキシリン及びエオジンで染色した肝生検の病理学的検査を実施した。対照群と治療群との間に、識別可能な又は顕著な形態学的差異は観察されなかった。一般的に、肝腺房の構造は、保存されていた。C/EBPα-saRNAの注射後、著しい門脈炎症又は線維症はなかった。胆管は、両群で正常であることが観察され、病巣又は卵形細胞増殖の痕跡、又は肝臓壊死性炎症性活性の病巣はなかった。
【0336】
中央細静脈及び洞様毛細血管は、両群で正常であることが観察された。クッパー細胞が活性化されたことを示唆する形態学的証拠はなく、血管の変化又は内皮の変化の徴候もなかった。膨張及び脂肪症を含む細胞障害の目に見える証拠はなかった。肝細胞増殖の増加(有糸分裂、プレート肥厚化、又は核密集)を示唆する知見はなかった。しかしながら、1つの一貫した観察は、C/EBPα-saRNA処置群の帯域1では、細胞質が、よりコンパクトでわずかにより好塩基性であることだった。帯域1は、肝臓でのアルブミン合成の優先領域とみなされる(
図14F)。
【0337】
実施例4.C/EBPα-saRNA-デンドリマーの急性毒性研究
動物へのC/EBPα-saRNA-デンドリマー注射の濃度増加の効果を研究した。
427 研究は、Center for Experimental Surgery of the Biomedical Research Foundation of the Academy of Athensの動物設備で実施し、動物実験に必要なギリシア国の法的要件の要求に従って、Veterinary Service of the Prefecture of Athensの認可(許可番号414/07-02-2013)を受けた。
【0338】
動物
Harlan Laboratories社(ブラックソーン、英国)から購入し、動物設備センターで飼育し、平均体重が303.3±28.5g(平均±1SD)であり、年齢が12~14週歳の31匹の雄ウィスター非近交系ラット(HsdOla:WI)を研究に使用した。動物は、実験動物の管理と使用に関する指針、及び実験動物の管理と使用に関する欧州委員会の関連する推奨に従って、標準的な条件で飼育し、標準的なラット餌(Teklad2918、Harlan社、ウディネ、イタリア)を与え、自由に水を与えた。
【0339】
設備のラットは全て、欧州連合実験動物科学協会の推奨に準拠する健康管理プログラムを使用することにより定期的にスクリーニングし、キルハムラットウイルス、ラットパルボウィルス、Toolan H1ウイルス、センダイウィルス、マウス肺炎ウイルス、III型レオウイルス、マウス脳脊髄炎ウイルス、ラット唾液腺涙腺炎ウイルス、ラット微小ウイルス、ハンタンウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、CARバチルス(cilia-associated respiratory bacillus)、マウスアデノウィルスタイプ1型及び2型、ラットロタウイルス、ラットコロナウイルス、マイコプラズマ・プルモニス(Mycoplasma pulmonis)、クロストリジウム・ピリホルム(Clostridium piliforme)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、パスツレラ種、毛皮ダニ(fur mites)、及びギョウチュウを含む広範囲の病原体は検出されなかった。
【0340】
方法
対照群(群C)は10匹の動物、及び他の群は全て7匹の動物からなる4つの群に、動物を無作為化した。対照群では、100μLのPBSを尾静脈から動物に投与した。PBS中0.1nmol/uLの濃度のC/EBPα-saRNA-デンドリマーの100μLの基準用量溶液、2×用量溶液、及び3×用量溶液を、それぞれ群1×、群2×、及び群3×の動物に投与した。注射は、一日おきに3回連続で繰り返した。
【0341】
動物の体重を、安楽死直前の手順開始時及び終了時に測定した。
最後のC/EBPα-saRNA-デンドリマー注射の3日後に、吸入麻酔薬(イソフルラン)を使用してラットに麻酔をかけ、尾部大静脈から血液を採取した。
【0342】
3mlの血液試料をチューブに採取して、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビン、直接ビリルビン、クレアチニン、尿素、アルブミン、及び総コレステロールの血清レベルを、各群の実験期間の終了時に測定した。市販のキット(Humane社、ドイツ)を使用した比色酵素法により、採取した血液を、3000rpmで10分間遠心分離し、血清を、生化学的分析機(Chemwell 2910、Awareness Technology Inc.社、パームシティ、フロリダ州、米国)で分析した。
【0343】
別の3mlの血液試料をチューブに採取し、血液学的分析機(MEK6318、日本光電工業、東京、日本)を使用して血液学的分析を行った。
組織学的分析
剖検肝臓では、各動物に由来する脾臓及び腎臓を収集し、10%ホルマリンで固定した。固定した後、標本を日常的に処理し(エタノール溶液での段階的な脱水、及びキシレン溶液でのクリアランス)、パラフィンに包埋し、5μmに切片化し、ヘマトキシリン-エオシン(H-E)で染色した。
【0344】
統計分析
ウィンドウズ(登録商標)用のGraphPad Prismを統計分析に使用した。一元配置分散分析及びボンフェローニの多重比較検定を使用して、様々な用量のC/EBPα-saRNA-デンドリマーの投与による差異を比較した。変数は全て、平均±SDとして表されている。p<0.01の値を、統計的有意差を示すとみなした。
【0345】
結果
溶液の注射剤中に死亡は起きなかった。体重(
図15A)又はコレステロール(
図15B)の群内での変化は認められなかった。100uL、200uL、及び300uLの0.1nmol/uL C/EBPα-saRNA-デンドリマーの用量による動物の処置は、ヘモグロビン(Hb)レベル(正常範囲16g/dL)に影響を一切及ぼさなかった(
図15C)。C/EBPα-saRNA-デンドリマーの漸増用量による処置は、白血球細胞(WBC)数を、対照群の値から変化させなかった(
図15D)。C/EBPα-saRNA-デンドリマーの漸増用量による処置は、血小板数を、対照群から変化させなかった。しかしながら、最高用量(3×用量)による処置は、Harlan Laboratory社のパラメータにより規定される「正常範囲」により近い血小板数への復帰を示した(
図15E)。
【0346】
肝機能の生化学的分析は、C/EBPα-saRNA-デンドリマー処置群のガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)レベルが、全ての用量レベルにおいて、対照と比較して、正常範囲(Harlanパラメータにより規定されるような)により接近していることを明らかにした。これは、処置群内で肝機能が改善されたことを示唆する(
図15F)。血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)又はアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)のレベルは、対照群と比べて処置群では変化を示さなかった(
図15G)。血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)又はアラニントランスアミナーゼ(ALT)のレベルは、1×及び2×のC/EBPα-saRNA-デンドリマー処置動物では、正常範囲により接近していた。3×のC/EBPα-saRNA-デンドリマー処置群でのレベルは、対照群と同等だった(
図15H)。アルカリホスファターゼ(ALP)の循環レベルは、対照動物と処置動物との間で差異を示さなかった(
図15I)。処置動物の非抱合型ビリルビンの循環レベルは、正常範囲から変化しなかった(
図15J)。尿素及びクレアチニンのレベルを使用して、腎臓機能を評価した。対照と処置動物とで変化は観察されなかった(
図15K及び
図15L)。
【0347】
したがって、このデータは、C/EBPα-saRNA-デンドリマー分子が、関連毒性の証拠を示さずに肝機能を正に制御することができることを示す。
1×から3×までの漸増用量でのC/EBPα-saRNA-デンドリマー投与は、肝臓、脾臓、又は腎臓のいずれの組織学的外観にも影響を及ぼさなかった。群1×、群2×、又は群3×の動物から採取した肝臓標本は、対照群と比較して、細胞構成に変化を示さなかった。肝臓サイズがより小さく、結合組織の量が減少していたため(種特徴的)、小葉構成をはっきりと観察することができなかった。しかしながら、軽度の充血とは別に、他の病変(脂肪浸潤、炎症、又はネクローシス等)は観察されなかった(
図16)。
【0348】
腎臓組織学的検査は、実験群と対照群とで変化を示さなかった。標本は全て、正常な腎小体及び典型的な近位及び遠位尿細管上皮内層を示した。炎症性病変又は変性病変は、糸球体及び尿細管周囲毛細血管及び小葉間血管の両方における軽症の充血(肝臓標本のような)を除いて観察されなかった(
図17)。
【0349】
脾臓の微視的な評価(肝臓及び腎臓と全く同様な)は、異常な組織構成を示さなかった。群は全て、容易に観察可能なリンパ結節及び動脈周囲リンパ鞘を有する正常な白色髄を示した。しかしながら、動物は全て充血性の赤色髄を示した。充血は、脾臓結節の胚中心(aka周辺帯)近傍にさえ存在する。加えて、大血管は、赤血球細胞で満たされ、全体的な脾臓うっ血を示していた(
図18)。
【0350】
このデータは、肝臓癌を有する又は肝臓癌を有していない肝不全の患者の治療におけるC/EBPα-saRNAの安全性及び効力の全体的なプロファイルを支持する。
実施例5.C/EBPα-saRNAで処置した癌細胞の細胞増殖アッセイ
C/EBPα-saRNAを、高分化癌タイプ及び未分化の癌タイプを表わす一群の細胞株で試験した(要確認)。WST-1細胞増殖アッセイを、線維芽細胞HL60(急性骨髄白血病(AML))で実施した。K562(慢性骨髄性白血病(CML))、ジャーカット(急性T細胞性リンパ腫)、U937(組織球性リンパ腫)、U373(神経膠芽腫)、32DZ210(骨髄性白血病)は、
図19に示されており、HepG2(ヒトHCC)、ラット肝臓癌細胞、Panc1(ヒト膵臓類上皮癌)、MCF7(ヒト乳腺癌)、DU145(ヒト転移性前立腺癌)、及びMIN6(ラットインスリノーマ)は、
図21に示されている。これら細胞を、3×用量の20nM C/EBPα-saRNAで2時間、48時間、及び72時間で処置した。細胞増殖を測定した。結果は、
図20及び
図22に示されている。結果は、32Dp210(骨髄性白血病)、U373(神経膠芽腫)、K562(CML)、ジャーカット(急性T細胞性リンパ腫)、DU145(ヒト転移性前立腺癌)、panc1(ヒト膵臓癌)、ラット肝臓癌細胞、HepG2、及びMCF7(ヒト乳癌)の優れた阻害を示している。
【0351】
卵巣癌におけるC/EBPα-saRNAの関与を、シスプラチン感受性のPEO1細胞及びシスプラチン耐性の分化不良PEO4細胞で試験した。PEO1及びPEO4細胞は、in vivo由来の同質遺伝子細胞株ペアである(
図23)。細胞を接種し、20nMのC/EBPα-saRNA及びスクランブル-saRNA対照で3回トランスフェクションした。WST-1アッセイを、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間で実施した。
図24の結果は、C/EBPα-saRNAが、シスプラチン感受性(PEO1)卵巣癌細胞及びシスプラチン耐性(PEO4)卵巣癌細胞の細胞生存を両方とも低下させることを示す。
【0352】
加えて、WST-1細胞増殖アッセイは、スクランブル-saRNA対照での処置と比較して、小細胞肺癌及び膵臓腺癌の阻害を示した。しかしながら、対照的に、C/EBPα-saRNAは、高分化ラットインスリノーマの増殖抑制には効果的ではなかった。C/EBPα-saRNAは、高分化乳癌(MCF7)細胞株の増殖を31%低減したに過ぎなかった。qPCR及びウエスタンブロットを使用して、C/EBPαの内因性レベルを比較すると、未分化腫瘍細胞株は、高分化株と比較してより低いレベルで発現したことが示された。データはここには示されていない。
【0353】
ここで示された結果は、C/EBPα-saRNAが、分化の度合いが様々な腫瘍を治療するための重要な因子であり得ることを示した。更に、これは、この新規療法から利益を得ることができる患者を選択するために使用することができる可能性がある。
【0354】
実施例6.腫瘍の治療におけるC/EBPα-saRNA及びC/EBPβ-siRNAの組み合わせ
この研究では、本発明のCEBPα-siRNAを、C/EBPβ遺伝子発現を阻害するsiRNAと共に投与した。HepG2細胞増殖及びMCF7細胞増殖を、C/EBPα-saRNA+C/EBPβ-siRNAでトランスフェクションした後、製造業者のガイドラインに従ってWST-1試薬を使用して、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼ発現を分析することにより、それぞれ16、24、48、72、96、及び120時間で定量化した。20nMスクランブルsiRNA、50nMスクランブル-saRNA、20nMスクランブルsiRNA+50nMスクランブル-saRNA、20nM C/EBPβ-siRNA単独、及び50nM C/EBPα-saRNA単独での細胞増殖を試験した。HepG2細胞(
図25A)の場合、C/EBPα-saRNA単独及びC/EBPα-saRNA+C/EBPβ-siRNAは両方とも、腫瘍細胞増殖を阻害する。MCF7細胞の場合、C/EBPα-saRNA+C/EBPβ-siRNAは、細胞増殖を120時間で50%低減した(
図26A)。したがって、C/EBPβ-siRNAと併用したC/EBPα-saRNAは、HCC及び乳癌の治療に有望な治療剤である。
【0355】
実施例7.C/EBPα-saRNAは、miRNAレベルを制御する
最近、miRNAと癌の進行及び予後との相関性が、幾つかの研究で評価されている。HCCの場合、幾つかのmiRNAは、それらが最初に発見されて以降、広範に研究されてきた(例えば、miR-21又はmiR-122)。しかしながら、実際には、膨大な数のmiRNAが、癌の発生及び進行に関与している。miRNA及び癌には強い関連性があり、それらは、癌遺伝子特異的療法に使用することができる。この研究の目標は、miRNA発現の制御によるC/EBPα-saRNAの抗癌効果の可能性を評価することだった。
【0356】
HepG2細胞を、20nM終濃度のC/EBPα-saRNAで培養及び処置した。miRNA発現レベルを、マイクロアレイにより検出し、両群のリアルタイムPCRにより検証した。動物実験の場合、臨床的に意義のあるラット肝腫瘍モデルを使用し、動物を、尾静脈注射により0.1nmol/uLのC/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置した。対照動物には、等容積のPBS又はスクランブル-saRNAを注射した。
【0357】
本研究で実施した実験手順は、下記に記載されている。
C/EBPα-saRNAの2本の鎖を、50mM Tris-HCl、pH8.0、100mM NaCl、及び5mM EDTAを使用して、90℃で変性させるステップ、その後室温へと徐々にアニーリングさせるステップで、アニーリングさせた。C/EBPα-saRNAを、HepG2及びラット肝臓上皮細胞株にトランスフェクションし、全RNAを細胞から単離した。
【0358】
細胞株からの成熟miRNAの単離
細胞ペレットを、フェノール/グアニジンに基づく溶解緩衝液を使用して溶解し、クロロホルムを使用して水相及び有機相に分離した。その後、製造業者のプロトコール(miRNeasy MiniKit、QIAGEN社、ジャーマンタウン、メリーランド州)に従って、miRNAを多く含む画分を全RNAから分離した。
【0359】
成熟miRNAマイクロアレイプロファイル
ヒト癌PATHWAYFINDER MISCRIPT(商標)miRNA PCRアレイ(QIAGEN/SA BIOSCIENCES社、MIHS102ZA)を使用して、正常組織と比べて、腫瘍で示差的に発現された84個のmiRNAの発現をプロファイルした。500ngの精製RNAを、MISCRIPT(登録商標)RT2キット(QIAGEN社)で、核内低分子RNA(snoRNA)及び核内低分子RNA(snRNA)を効率的に逆転写するためのMISCRIPT HISPEC緩衝液(QIAGEN社)を使用して15分間逆転写した。その後、cDNAを、miScript PCRアレイプレートに移し、7900HT型Applied Biosystems社製リアルタイムサイクラーで、miScriptユニバーサルプライマー及びQuantiTect SYBR Green PCRマスターミックス(QIAGEN社)を使用し、95℃で10分間の1サイクル及び40サイクル(95℃で15秒間及び60℃で1分間)で増幅し、蛍光データを収集した。
【0360】
各ウェルの閾値サイクルを、手作業で計算し、データ分析用にエクスポートし、SABiosciencesアレイ専用データ分析ソフトウェア(QIAGEN社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を使用してクラスタリングした。ジーンオントロジー(GO)濃縮解析(enrichment analyse) Database for annotation, visualization and integrated discovery(DAVID、NIAID、NIH、ベテスダ、メリーランド州)ツールを使用して、上方制御された遺伝子及び下方制御された遺伝子の中で著しく濃縮された機能カテゴリーを特定した。
【0361】
マイクロRNA標的分析
TARGETSCANトータルコンテキストスコア予測データを、TARGETSCANウェブサイトからダウンロードした[Grimsonら、Cell Press、27巻、91~105頁(2007年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。TARGETSCANデータベースの各遺伝子について、上方制御されたmiRNA全てのコンテキストスコアの合計を算出した。同様に、各遺伝子について、下方制御されたmiRNA全てのコンテキストスコアの合計を算出した。最後に、所与の遺伝子について、下方制御されたmiRNAと比較した上方制御されたmiRNAの予測寄与は、上方制御されたmiRNAの合計コンテキストスコア分布におけるその遺伝子のランクから、下方制御されたmiRNAの合計コンテキスト分布におけるその遺伝子のランクを引いたものである。0.4を超える相対的ランクの絶対値変化を有する遺伝子を、上方制御されたmiRNA又は下方制御されたmiRNAにより強く影響されるとみなした。
【0362】
結果
癌miRNA分析は、C/EBPα-saRNAが、肝臓癌に関与するmiRNA媒介性脱制御を示唆する。
【0363】
C/EBPα-saRNAトランスフェクション細胞での異常なmiRNA制御の潜在的な寄与を研究するために、84個の癌特異的成熟miRNAの発現をプロファイルした。
【0364】
処置細胞と未処置細胞とで発現パターンが大きく変化した(
図27及び
図28A~
図28B)。全体的に腫瘍抑制因子miRNAは上方制御されたが、発癌性miRNAは抑制された(表9)。
【0365】
miRNA標的予測は、特定された示差的発現mRNAのほとんどが、示差的発現miRNAの幾つかにより制御されたことを示した。どのmRNAが、miRNA発現の変化により影響を受ける可能性が最も高かったかを特定するために、下方制御されたmiRNAと比較して、上方制御されたmiRNAにより最も強く標的とされることが予想されたmRNAを特定した。1つの下方制御された遺伝子(BIRC2)及び3つの上方制御された遺伝子(RUNX3、PTK2、FHIT)が、下方制御されたmiRNAにより最も影響を受けると予測された。対照的に、4つの下方制御された遺伝子(BIRC5、CCL5、CDKN2A、FADD、及びRAC1)が、miR-122(BIRC5及びCCL5)及びmiR-134(CDKN2A及びFADD)を含む上方制御されたmiRNAにより最も影響を受けると予測された。miR-122は、脂質代謝、C型肝炎ウイルス複製を調節し、アポトーシスを阻害することが知られている肝臓特異的miRNAである。miR122は、通常、成体肝臓への肝臓分化中に検出される。miR-122発現の喪失は、肝腫瘍の肝臓内転移の促進に関与し、その異所性回復は、細胞遊走、侵襲、及びin vivo腫瘍形成の低減に著しい効果示す。
【0366】
miR-122は、通常、HCCでは抑制されるため、その発現が、C/EBPα-saRNAのHepG2細胞へのトランスフェクション後に増加したことは特筆すべきことである(表10)。miR-122は、A-ジスチンテグリン(Distintegrin)及びA-メタロプロテイナーゼ17(ADAM17)を含む複数の標的遺伝子を負に制御する。ADAM17の発現増加は、HCCの発生に重要な役割を果たす。転写プロファイリング解析は、ADAM17が、C/EBPα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞で抑制されたことを示した。ADAM17は、細胞増殖、遊走、及びアポトーシスの制御に関与する膜係留受容体を切断するため、癌細胞の分子病理に重要な意味合いを持つ。したがって、こうした結果は、C/EBPα-saRNAが、miRNA-122を制御することにより、細胞増殖、遊走、及びアポトーシスを制御することができることを示唆する。
【0367】
miR-134も、C/EBPα-saRNAのトランスフェクション後、上方制御された。miR-134は、miRNA腫瘍抑制因子ネットワークの一部として、p53/p73/p63ファミリーのメンバーにより調節されることが以前に報告されている。非小細胞肺癌の機能研究により、miR-134のレベル増加が、上皮間葉転換(EMT)を阻害することが示されている。[Bloominathan、PLoS One、5巻、e10615(2010年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる]。最近の研究によると、miR-134は、腫瘍タンパク質KRASを下方制御することにより、HCC悪性疾患に劇的な抑制効果を及ぼすことが示されている。miR-134は、HCC腫瘍形成性を著しく減少させ、in vivoで著しい抗腫瘍効果を示した。加えて、内因性miR-134の阻害は、KRAS発現及びHCC悪性腫瘍に対するHNF4αの抑制効果を部分的に反転させた。HCCにおけるmiR-134又はその標的の機能は、まだ完全には解明されていないが、EMTに関連する遺伝子であるHGF及びSMAD7の転写物のレベル低減は、C/EBPα-saRNAの検出された治療可能性に妥当性のある作用機序を供給する。
【0368】
C/EBPα-saRNAは、細胞分化及び細胞増殖に関与するmiRNAを制御した
HCCでは、幾つかのmiRNAが、癌細胞の抗アポトーシス特性の獲得に関与することが示された(
図29)。miR-100、miR-122、miR-134、及びmiR-140-5pは、HCCでは、通常、下方制御される。これらは、細胞成長及び細胞増殖を制御する。加えて、miR-122及びmiR-140-5pは、肝細胞分化を制御することが報告された(
図29)。C/EBPαは、HepG2処置細胞において、これらのアポトーシス促進性miRNAの発現を誘導することが、本明細書で決定された。
【0369】
miR-372は、細胞増殖、細胞侵襲、及び細胞遊走を促進するため、HCCでは癌遺伝子として機能する。本研究では、miR-372は、C/EBPα-saRNAにより下方制御された。
【0370】
発表されている結果とは逆に、miR-125bは、C/EBPα-saRNAにより下方制御されたことが見出されたが、従来の研究では、細胞増殖を抑制することができ、その高発現は、HCC患者のより長期生存と相関し得ると報告されている。
【0371】
C/EBPα-saRNAは、癌細胞の上皮間葉転換に関与するマイクロRNAを制御した。
miR-124は、上皮間葉転換(EMT)を阻害することが報告されている(
図28)。腫瘍進行及び悪性転換中のEMT様事象は、初発癌細胞に侵襲性及び転移性特性を付与する。miR-124は、通常、HCCでは下方制御される。miR-124は、C/EBPα-saRNAにより上方制御されることが、本明細書で見出された。
【0372】
更に、miR-191は、C/EBPα-saRNAにより上方制御され、miR-148aは、C/EBPα-saRNAにより下方制御されたことが見出された。しかしながら、文献には、miR-191は、HCCでは上方制御され、EMTを誘導するが、miR-148aは、HCCでは下方制御され、分化を制御し、EMTを阻害することが報告されている(
図28)。したがって、こうした結果により、C/EBPα-saRNAは、miR-124及びmiR-191を制御することにより、癌細胞のEMTを制御することができる可能性があることが示唆される。
【0373】
C/EBPα-saRNAは、転移プロセスに関与するmiRNAを制御した。
転移プロセスは、癌細胞が循環に侵入することで始まる。様々なmiRNAが、正常細胞では、運動性、侵襲性、及び転移を抑制し、又は癌細胞では、運動性、侵襲性、及び転移を促進する(
図29)。C/EBPα-saRNAは、転移プロセスに関与するほとんどのmiRNAに正の効果を示したことが、本明細書で示された。C/EBPα-saRNAは、癌細胞の侵襲性を阻害することができるmiRNA(miR-23b、miR-100、miR-122、miR-140-5p、let-7g)を回復させ、転移促進性miRNA(miR-17-5p、miR-21、miR-372)のレベルを抑制した(表9)。他方では、miR-10bは、HepG2処置細胞で上方制御されたことが見出された。文献では、miR-10bは、通常、HCCでは上方制御され、その発現は、HCC患者の予後不良及び短期生存と相関することが報告されている。
【0374】
考察
本研究は、42個のmiRNAが、処置HepG2細胞ではC/EBPα-saRNAにより上方制御され、腫瘍抑制因子として作用することを明らかにした。その一方で、34個のmiRNAは、処置HepG2細胞ではC/EBPα-saRNAにより下方制御されたため、癌遺伝子として作用する。8個のmiRNAsは、C/EBPα-saRNAの注射により影響を受けなかったことも見出された。こうした結果により、複数のmiRNAがHCCに関与することが確認された。
【0375】
miR-134は、C/EPBα-saRNAトランスフェクション後に、正の制御を示した。このmiRNAは、癌細胞の上皮間葉転換(EMT)を防止する腫瘍抑制因子ネットワークの一部として機能する。C/EBPα-saRNAトランスフェクション後にmiR-134の発現が増加することは、EMT転換に関与する複数の遺伝子(HGF、SMAD7、及び程度はより低いがCTNNB1)が抑制されるC/EPBα-saRNAの効果に対する別の重要な寄与因子があることを示唆する。
【0376】
また、miR-23bの発現は、C/EPBα-saRNAトランスフェクション細胞では増加した。miR-23bは、HCCでは、通常、下方制御され、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)及びc-Metの上方制御に結び付き、したがって、細胞遊走及び細胞増殖を増加させる。また、HepG2細胞をC/EPBα-saRNAでトランスフェクションした後、let7gのレベル増加が見られた。Let7g発現は、通常、HCCの転移進行中に失われる。
【0377】
また、C/EPBα-saRNAトランスフェクションHepG2細胞でのmiR-21の喪失は、以前の報告では、HCC腫瘍及び細胞株ではその機能獲得が見られることが示唆されているため、特筆すべきことである。miR-21の抑制は、ホスファターゼ及びテンシン相同体(PTEN)腫瘍抑制因子活性を増強すると考えられる。
【0378】
miR-215又はmiR-193等の、処置細胞においてC/EBPα-saRNAにより影響を受けることが見出された幾つかのmiRNAは、HCCに関与することが以前には報告されていない。
【0379】
本発明者らの知見は、未処置HepG2細胞と比較して、C/EBPα-saRNAにより影響を受けることが見出された4つのmiRNAに関して、文献とは一致しない。(つまり、miR-10b、miR-125b、miR-148a、及びmiR-191)。
【0380】
結論として、C/EBPα-saRNAは、miRNAの発現を明らかに制御する。HCC並びに他の癌におけるmiRNAの関与及び機能に関して本明細書で提供されている理解は、miRNAを予後因子として使用することを支持するだけでなく、癌の診断、病期判定、及び治療における役割を果たす可能性があることを強調するものである。
【0381】
【0382】
【0383】
【0384】
【0385】
【0386】
実施例8.C/EBPα-saRNAは、コレステロール及びLDLのレベル、インスリン抵抗性遺伝子を制御し、非アルコール性脂肪肝疾患、インスリン抵抗性、及び脂肪症を治療し、BAT及びWATの代謝遺伝子を制御する。
【0387】
本発明のC/EBPα-saRNA-デンドリマーを、0.1nmol/uL標準用量、2×用量、及び3×用量でマウスに投与した。血中のLDLレベルを測定した。C/EBPα-saRNAの用量増加は、コレステロール(
図30A)及びLDL(
図30B)の循環レベルを変化させた。このデータは、LDL循環レベルが増加し、肝細胞内部のLDLレベルが減少したことを示す。
【0388】
更に、in vivoでの非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療として、C/EBPα-saRNAを試験する研究を実施した。ラットを、高脂肪食で4週間処置して、NAFLDを誘導した。C/EBPα-saRNAを、100ulのTEA-コアPAMAMデンドリマーで再構成して、0.1nmol/uL C/EBPα-saRNA-デンドリマーの濃度にした。NAFLDのラットを、尾静脈注射剤により、3×用量でデンドリマー担持C/EBPα-saRNA(R)(R+D)で7日間処置した。対照群のNAFLDラットは、PBS緩衝液(PBS)、C/EBPα-saRNA単独(R)、デンドリマー単独(D)、経口エゼチミブ単独(E)、デンドリマーを有するスクランブル-saRNA(Sc)(Sc+D)、又は経口エゼチミブを有するC/EBPα-saRNA(R+E)で処置した。エゼチミブは、血漿コレステロールレベルを低下させる薬物であり、陽性対照として使用される。
図31A及び
図32A~Cに示されているように、マウスの体重、並びにトリグリセリドレベル、コレステロールレベル、及び肝臓サイズ、及び肝臓外観を含む脂肪肝状態を記録及び分析した。
図31Aは、デンドリマーで製剤化したC/EBPα-saRNA処置したラット、及び経口エゼチミブを有するC/EBPα-saRNAで処置したラットの体重が、他の群よりも有意に少なかったことを示す。
図32A及び
図32Bは、デンドリマーで製剤化したC/EBPα-saRNAで処置したラットの肝臓のトリグリセリド及びコレステロールレベルが、それぞれ低減されたことを示す。また、デンドリマーにより担持されたC/EBPα-saRNAで処置したラットの肝臓サイズは、
図32Cに示されているように、対照群と比較して最も小さく低減された。肝臓組織の組織病理学的染色画像は、
図32Dに示されている。PBSで処置したマウス及びSc+D対照で処置したマウスの肝臓組織は、高脂肪食で飼育した肥満ラットが脂肪肝であるため大部分は赤色である。その一方で、saRNA-C/EBPα-デンドリマー(R+D)を投与した実験群のラットの肝臓組織の組織病理は、脂肪消失のため大部分は青色である。
【0389】
また、肥満ラットのインスリン抵抗性遺伝子に対するC/EBPα-saRNAの効果を研究した。FAT/CD36、LPL、及びLXRを、この研究に選択した。処置ラットの組織試料を使用して、種々の遺伝子の発現レベルを測定した。FAT/CD36、LPL、及びLXR遺伝子のmRNA転写物レベルを、qRT-PCR mRNA発現レベルによりin vitroで測定した(
図33B~D)。結果は、デンドリマーで製剤化したC/EBPα-saRNAでの処置後に、FAT/CD36の発現は低減されたが、LPL及びLXRの発現は増加したことを示す。血清コレステロールレベルは、低減された(
図34)。別の研究では、デンドリマー単独、スクランブルsaRNA、及びC/EBPα-saRNA-デンドリマーで処置した後の肥満ラット肝臓組織におけるC/EBPα、SREBF-1、CD36、ACACB、APOC3、MTP、PPARγ-CoA1α、LDLR、PPARγ-CoA1β、PPARγ、ACACA、MLXIPL、PPARα、FASN、DGAT2のmRNA転写物レベルを測定した(
図35A~O)。エゼチミブを、陽性対照として使用する。SREBP1及びCETPの発現は、C/EBPα-saRNAにより低減された(データ非表示)。
【0390】
更に、BAT及びWAT細胞での代謝遺伝子に対するC/EBPα-saRNAの効果を評価した。BAT及びWAT細胞を、20nMのC/EBPα-saRNAで丁寧にトランスフェクションし、代謝遺伝子のmRNAレベルを、
図36A~36M及び
図37A~37Mに示されているように測定した。試験した代謝遺伝子の発現は、デンドリマー対照及びスクランブルRNA対照と比較して制御された。
【0391】
また、反復脂肪肝研究を実施した。高脂肪食後、肥満ラットを、実験群及び対照群に無作為に割り当てた。実験群では、肝臓を標的とする21bpの二本鎖RNAオリゴヌクレオチド-デンドリマー(saRNA-デンドリマー)複合体を、標準低用量で使用して、C/EBPα遺伝子の転写活性化を達成した。その後、体重に応じた薬物用量で検証する。体重、脂質、及びエネルギー恒常性に対する、saRNA-デンドリマー複合体の全身効果及び局所効果を観察した。結果は、表11-1~表11-12、及び
図38~
図40に示した。
【0392】
【0393】
【0394】
【0395】
【0396】
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
【0401】
【0402】
【0403】
【0404】
実験群では、血清コレステロール及び体重は、有意に低減された。高用量のC/EBPαs aRNAは、血清トリグリセリドを顕著に低下させ、血清リポタンパク質プロファイルを向上させ、白色脂肪組織含量を減少させた。遺伝子発現解析により、遺伝子転写活性化は、対照群と比較して実験群で有意に変化したことが示された。肝臓では、C/EBPαは、脂肪酸取り込み(CD36)及び肝臓新規脂質生成(SREBP-1、ChREBP)に関与する遺伝子の発現を有意に減少させたが、ベータ-酸化(PPARα、PPARγ-CoA1α、PPARγ-CoA1β)及びインスリン感性遺伝子(PPARγ)は上方制御された。白色脂肪組織では、CD36及びACACB遺伝子の発現減少が見出された。これは、それぞれ炎症の低減及びベータ-酸化の増加を示唆した。白色脂肪組織脂質生成に関与する遺伝子の下方制御が認められた(SREBP-1、ACACA、mTOR)。最後に、白色脂肪組織でのPPARγ-CoA1αの発現増強も観察された。C/EBPαは、NAFLDモデルにおいて、脂肪肝及び肝臓エネルギー代謝を改善し、インスリン抵抗性、代謝異常、及び体脂肪に対する正の全身性効果を示した。低用量のC/EBPα saRNAは、肝臓脂質及びグルコース代謝の改善により及び白色脂肪組織に対する副次的な正の効果により媒介され得る、体重に対する正の効果を示した。高用量のC/EBPα saRNAは、より強い抗脂質異常作用を示した。これは、全身性効果がより広範であったためである可能性が高い。
【0405】
したがって、C/EBPα-saRNAは、NAFLDを治療するための、及び肝細胞のトリグリセリドレベル及びLDLコレステロールレベルを低減するための治療剤として使用することができる。また、C/EBPα-saRNAは、その必要性のある患者のインスリン抵抗性、全身性脂質血症、高インスリン血症、及び脂肪症を低減するために使用することができる。
【0406】
【0407】
実施例9.C/EBPα-saRNAは多能性を制御する
本発明のC/EBPα-saRNAをCD34+幹細胞に投与し、様々な濃度(25nM、50nM、100nM、又は150nM)のC/EBPα-saRNAでトランスフェクションした後、C/EBPα、C/EBPβ、多能性因子SOX2、OCT4、cKit、KLF4、及びNANOGの相対発現を測定した(
図41及び
図42)。C/EBPβ、SOX2、OCT4、cKit、KLF4の相対発現は低減されたが、C/EBPα及びNANOGの発現は増加した。したがって、C/EBPα-saRNAは、幹細胞の自己再生及び多能性特性を制御する、幹細胞の中核制御回路を制御することができる。
【0408】
【0409】
実施例10.C/EBPα-saRNAは、C/EBPαタンパク質アイソフォームを制御する
C/EBPα mRNAは、同一のオープンリーディングフレーム内にある異なる開始コドンを使用することにより、2つの異なる翻訳アイソフォーム:全長42kDaタンパク質及び30kDa短縮型を生成する。30kDaアイソフォームは、N末端転写活性化ドメイン(TAD1)を欠如するが、その中央転写活性化ドメイン(TAD2)を依然として保持する。これらアイソフォームは、遺伝子活性化及び細胞増殖において異なる機能を有する。このアイソフォームは両方とも細胞内で検出することができ、アイソフォームの比が、増殖の媒介及び分化の制御に重要である可能性が高い。[Calkhovenら、Genes and Development、14巻、1920~1932頁(2000年);Ramjiら、Biochem J.、365巻(Pt3)、561~575頁(2002年)、これらの文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる]。
【0410】
アイソフォーム比に対するC/EBPα-saRNAの効果を研究するために、HepG2細胞を、50nMのC/EBPα-saRNA(AW1)で、又は陰性対照として、スクランブルオリゴヌクレオチド(siRNA及びsaRNA)を有する20nMのC/EBPα-siRNAでトランスフェクションした。細胞を、0時間、24時間、及び48時間時に3回トランスフェクションした。細胞を72時間で回収し、全タンパク質を抽出した。ブラッドフォードアッセイを実施して、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルに負荷した全タンパク質を正規化し、電気泳動で分離した。その後、分離したタンパク質を、ニトロセルロースに固定してウエスタンブロットを行い、C/EBPα及びC/EBPβのタンパク質発現を検出した。タンパク質のN末端ドメインを認識するstand抗体(抗体クローンEP708Y、Millipore(登録商標)社)を使用して、アイソフォームのいずれかを検出した。
図43Aの結果によると、内因性レベルのC/EBPαは、未トランスフェクション細胞及びスクランブルトランスフェクション細胞では、主に30kDa変異体として発現されると考えられることが示されている。C/EBPα-saRNAトランスフェクションは、C/EBPαの42kDaアイソフォームの発現を引き起こした。その後、これは、C/EBPα-siRNAでトランスフェクションされた細胞では抑制された。未トランスフェクション細胞及びスクランブルトランスフェクション細胞では、内因性C/EBPβレベルの34kDa変異体(LAP、肝臓活性化タンパク質と呼ぶ)が、主要発現形態であると考えられる。C/EBPα-saRNAのトランスフェクションは、30kDa変異体(LIP、肝臓抑制性タンパク質と呼ぶ)の優勢発現を引き起こす。LIPの発現は、C/EBPα-siRNAトランスフェクション細胞では抑制された。
【0411】
別の研究では、HepG2細胞を、50nMのC/EBPα-saRNA(AW1及びAW2)で、又は陰性対照として、スクランブルオリゴヌクレオチド(siRNA及びsaRNA)を有する20nMのC/EBPα-siRNAでトランスフェクションした。上記の研究で使用した標準抗体の代わりに、42KDa C/EBPαアイソフォーム(細胞シグナル伝達抗体#2843、Cell Signaling Technology(登録商標))のみを認識する抗体を使用した。
図43Bに示されているウエスタンブロットの結果により、42KDa C/EBPαアイソフォームは、C/EBPα遺伝子の活性化により上方制御されることが示されてされた。AW1及びAW2は両方とも、42KDa C/EBPαアイソフォーム発現を増加させた。これは、42KDa C/EBPαアイソフォームの上方制御が、遺伝子特異的であるが、配列特異的ではない可能性を示す。
【0412】
別の研究では、MCF7細胞を、50nMのC/EBPα-saRNAで、及び陰性対照として、スクランブルオリゴヌクレオチド(siRNA及びsaRNA)を有する20nMのC/EBPα-siRNAでトランスフェクションする。ウエスタンブロットを実施して、C/EBPα及びC/EBPβアイソフォームの発現を研究する。
【0413】
上記の研究は、C/EBPα-saRNAが、種々のC/EBPαアイソフォーム及びC/EBPβアイソフォームを調節することを示す。任意の理論に束縛されることは望まないが、42kDa C/EBPαアイソフォームの増加は、C/EBPα-saRNAの新規な抗増殖効果及び他の治療効果に寄与する可能性がある。
【0414】
【0415】
実施例11.C/EBPα-saRNA及び他のC/EBPファミリーメンバー
HepG2細胞を、通常のRPMI/FBS/PSG培地に接種し、ナノフェクタミンを用いて、2×用量のC/EBPα-saRNAでトランスフェクションした。C/EBPα-saRNAトランスフェクションの48時間後に細胞を回収し、C/EBPα、C/EBPβ、C/EBPγ、C/EBPδ、及びC/EBPζのmRNAレベルを分析した。使用したC/EBPα-saRNAの濃度は、50nM、100nM、200nM、及び250nMだった。スクランブル-saRNAでトランスフェクションした細胞を、対照として使用した。
図44Aの結果は、C/EBPα-saRNAの後、全てのC/EBPファミリーメンバーの相対発現が増加し、この変化が用量依存的であることを示している。
【0416】
更に、HepG2細胞を、ナノフェクタミンを用いて、2×用量のC/EBPα遺伝子発現阻害性siRNA(C/EBPα-siRNA)でトランスフェクションした。
図44Bは、C/EBPα遺伝子のノックダウンを示し、
図44Cは、C/EBPファミリーの他のメンバーの相対発現も阻害されたことを示す。C/EBPα-siRNAの濃度は20nMだった。スクランブルsiRNAは、Invitrogen社から得た。
【0417】
この研究は、C/EBPαが、C/EBPファミリーの他のメンバーの発現レベルを制御することを示唆する。
【0418】
【0419】
実施例12.U87神経膠芽腫細胞でのC/EBPα-saRNA
C/EBPα-saRNAを、miRNA構成の臨床レトロウイルス複製ベクター(RRV)にクローニングした。この実験では、U87神経膠芽腫細胞において、このベクター-miRNA構成が、シトシンデアミナーゼ遺伝子治療との併用で機能するか否かを調査した。レトロウイルスは、saRNAヘアピン配列がmiR-30骨格フランキング配列にクローニングされていたmiRNA設計の、C/EBPα-miRNAと呼ばれるC/EBPα-saRNAの二本鎖配列を発現していた。C/EBPα-miRNAは、制限酵素認識配列を更に含んでいてもよい。制限酵素の非限定的な例としては、GCGGCCGCの認識配列を有するNotI、及びGGCGCGCCの認識配列を有するAscIが挙げられる。C/EBPα-miRNA配列の1つの非限定的な例は、下記及び
図46に示されており、マイクロRNAは、miR-30であり、C/EBPα-saRNAガイド鎖は、AW1アンチセンス(配列番号2)であり、パッセンジャー鎖は、AW1センス(配列番号1)である。C/EBPα-miRNAは、導入遺伝子に結合されていてもよく、したがって、導入遺伝子を、RNA pol IIプロモーターから同時発現させることができる。この研究では、C/EBPα-miRNAは、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)に結合されていた。GFP-C/EBPα-miRNAは単一の転写物として発現され、C/EBPα-miRNAは、内因性miR-30のようにドローシャ及びダイサーによりプロセシングされる。
【0420】
【0421】
図45に示されている結果では、U87細胞を、C/EBPα-saRNA(CAW1)でトランスフェクションしたか、又はRRV-C/EBPα-miRNA(miCAW1)で形質導入し、C/EBPαmRNA転写物レベルをqPCRにより測定した。スクランブルsiRNA(con)、及びホタルルシフェラーゼ(mifLuc)に対する低分子阻害性ヘアピンを送達するレトロウイルスベクターを陰性対照として使用した。4日目に、C/EBPα遺伝子発現は、C/EBPα-saRNAトランスフェクションにより1.5倍に、C/EBPα-miRNAベクター形質導入により2倍に、上方制御された。C/EBPα-saRNAでは、著しい細胞死が見られたが、C/EBPα-miRNAでは見られなかった。C/EBPα-miRNAは、プロセシングにより多くの時間を必要とする可能性がある。
【0422】
したがって、C/EBPα-saRNAは、U87細胞においてC/EBPα遺伝子発現を上方制御するその機能を依然として保持しつつ、miRNA構成のRRVにクローニングすることができる。
【0423】
実施例13.C/EBPα-saRNAのヒト研究
C/EBPα-saRNA-デンドリマーを臨床研究で試験した。C/EBPα-saRNAの両鎖は、3’-末端に2’-OMe-U修飾(mU)を有する。配列及び物理的特性は、下記に示されている。第4世代(G4)ジアミノブタン(DAB)-コア-PAMAMデンドリマー(NanoSynthons LLC社、ミシガン州)を使用して、C/EBPα-saRNAとの複合体を形成した。C/EBPα-sRNA対DAB-コア-PAMAMの比は、重量で1:3だった。このC/EBPα-saRNA-デンドリマー複合体(MTL-501)は、Synthetic and Biopolymer Chemistry Core、City of Hope Beckman Research Institute、ドアルテ、カリフォルニア州で合成された。このC/EBPα-saRNA-デンドリマー複合体は、活性成分のみを含有する凍結乾燥粉末であり、1バイアル当たり50mgとして供給される。
【0424】
CEBPA AW-1センス:
5’-rCrGrG rUrCrA rUrUrG rUrCrA rCrUrG rGrUrC rArUmU-3’(配列番号249)
CEBPA AW-1アンチセンス:
5’-rUrGrA rCrCrA rGrUrG rArCrA rArUrG rArCrC rGrUmU-3’(配列番号250)
CEBPA AW-1センスの分子量:6641.0g/モル
分子量:6641.0g/モル
吸光係数:201800L/(mole・cm)
nmole/OD
260:4.96
μg/OD
260:32.91
CEBPA AW-1アンチの分子量:6710.1g/モル
重量:6710.1g/モル
吸光係数:209600L/(mole・cm)
nmole/OD
260:4.77
μg/OD
260:32.01
C/EBPα-saRNA-デンドリマー治療の効果を、硬変症患者で試験した。硬変症患者は、35~40g/lの正常範囲よりも低い、抑制された血清アルブミンレベルを有する。この低アルブミン血症は、肝細胞の合成減少、並びに細胞外空間のアルブミン含有量を希釈する水及びナトリウム貯留により引き起こされる。硬変症患者へのアルブミンタンパク質の投与は、肝機能及び腎機能を改善させ、循環機能不全を減少させるために広く使用されている[Lee、Korean Journal of Internal Medicine、27巻(1号)、13~19頁(2012年);Bernardiら、Critical Care、16巻、211~217頁(2012年)]この研究では、3用量のC/EBPα-saRNA-デンドリマーMTL-501を、1日目、3日目、及び5日目に、約0.5mg/kgで硬変症の患者に投与した。血清アルブミンレベルを、
図47に示されているように38日目まで測定した。血清アルブミンレベルの有意な増加が、約15日目で観察され、血清アルブミンレベルが正常範囲へと増加した。血清アルブミンレベルは、34日目まで正常範囲を維持した。
【0425】
別の研究では、C/EBPα-saRNA-デンドリマーを、硬変症患者の白血球数を増加させるために使用した。3用量のC/EBPα-saRNA-デンドリマーMTL-501を、1日目、3日目、及び5日目に、約0.5mg/kgで硬変症の患者に投与した。上記患者の白血球数を、
図48に示されているように測定した。患者1に投与した単一用量は、10mgのC/EBPα-saRNA及び30mgのデンドリマーを含有していた。患者3に投与した単一用量は、20mgのC/EBPα-saRNA及び60mgのデンドリマーを含有していた。両患者の場合、第1の用量後、2日目には白血球数の増加が観察され、3用量のC/EBPα-saRNA-デンドリマーMTL-501での処置した後、9日目にはより大きな増加が観察された。
【0426】
ヒト研究結果は、C/EBPα-saRNA-デンドリマーを、肝臓病の患者を治療するための、及びその必要性のある患者の白血球数を増加させるための治療剤として使用することができることを示唆する。
【0427】
実施例14.鎖選択/特定及び切断研究
5’末端の逆位脱塩基修飾は、Ago2複合体のガイド位置への積み込みを防止すると示されている。C/EBPA-saRNAのアンチセンス鎖(AS)及びセンス鎖(SS)を、5’末端の逆位脱塩基修飾(b)で阻止し、C/EBPA mRNA発現を測定し、AS鎖及び/又はSS鎖の阻止がC/EBPA mRNA発現に及ぼす影響を決定した。saRNAは全て合成であり、水中でアニーリングさせた。RP-HPLCでの純度は90%である。オリゴヌクレオチド試料の配列を、以下の表に示した。
【0428】
【0429】
DU145細胞を、接種時に50nMオリゴヌクレオチド試料でリバーストランスフェクションし、24時間後にフォワードトランスフェクションし、72時間で回収した。C/EBPA、ALB、及びp21 mRNA発現レベルを、
図49A~
図49Cに示されているように測定した。同じ研究を、10nMオリゴヌクレオチド試料で実施し、結果を
図49D~
図49Fに示した。AW01-500012は、AW01-500000と同様に作用した。これは、SSの阻止が上方制御に影響を及ぼさないことを示す。AW01-500013及びAW01-500014は、NC-500000と同様に作用した。これは、ASの阻止が上方制御を弱めることを示す。C/EBPA-saRNAは、AS鎖を介して作用する。
【0430】
RNAiは、標的mRNAの切断に関与する。非切断配列である中央3塩基対の突然変異を試験して(CEBPA-AW01-500500)、CEBPA-saRNAが、標的EST(AW665812)を切断するか否かを決定した。中央3塩基対の突然変異は、その鎖がガイドとしての役目を果たすか否かに関わらず、切断不能なsaRNAをもたらす。CEBPA-AW01-500500は、陰性対照NC-500000と比較してCEBPA遺伝子を上方制御することができ、転写物の切断は、CEBPA上方制御に必要ではないが、上方制御は、陽性対照AW01-500000未満であることを示唆する。
【0431】
実施例15.C/EBPα-saRNAは、ecCEBPA RNA及びESTを上方制御する
CEBPA遺伝子座から転写される機能的ncRNAである過剰コード化CEBPA(ecCEBPA)は、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT1)と相互作用することにより、CEBPAメチル化を制御し、したがってCEBPA遺伝子メチル化を防止する。ecCEBPAのノックダウンは、CEBPA mRNA発現の減少、及びDNAメチル化の著しい増加をもたらしたことが見出されている(Ruscioら、Nature、503巻:371~376頁(2013年)及びDi Ruscioらの米国特許出願公開第20140171492号明細書、これらの文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる)。DU145細胞を、表12(上記)のオリゴヌクレオチドでトランスフェクションした。ecCEBPA及びCEBPA mRNAのレベルを測定し、
図50A~
図50B(50nM CEBPA-saRNAを使用)及び
図50C~
図50D(10nM CEBPA-saRNAを使用)に示した。CEBPA-saRNAsは全て、陰性対照(NC-500000)を除いて、CEBPA mRNA及びecCEBPAを両方とも上方制御した。10nMでは、二重脱塩基修飾オリゴ(AW01-500014)は、より低いecCEBPA活性化を示した。
【0432】
更に、DU145細胞における、CEBPA mRNA、AW665812のESTのレベルを測定した。DU145細胞を、接種時に表12(上記)の50nMオリゴヌクレオチド試料でリバーストランスフェクションし、24時間後にフォワードトランスフェクションし、72時間で回収した。
図50Eの結果は、2回繰り返したものからだった。
図50Eの結果は、CEBPA-saRNAsが、ESTを切断する代わりに、上方制御することを示した。
【0433】
実施例16.リバーストランスフェクション及びフォワードトランスフェクションによるC/EBPα-saRNAトランスフェクション法
A.HepG2細胞
物質
この研究で使用した材料としては、以下のものが含まれていた:培地:RPMI(Sigma社、R8758/500ML)1×Pen strep(Sigma社 P4333/100ML)10%FBS(Life社 10082147);24ウェルプレート(Sigma社 Z707791/126EA);リポフェクタミン2000(Life社 11668027);TransIT/X2(Mirus社 M6003);RNAiMAX(Life社 13778030);Optimem 500mL(Life社 11058021);RNeasy Plusミニキット(Qiagen社 74134);QuantiTect Rev.転写キット(50、Qiagen社 205311);Qiashredder79654;MicroAmp(登録商標)Optical Adhesive Film(Applied Biosystems社、4360954);MicroAmp(登録商標)Fast Optical バーコード付き384ウェル反応プレート、0.1mL(Applied Biosystems社、4346906);TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(1×5mL、Life Tech社 4444556);MicroAmp(登録商標)Optical Adhesive Film(Life Tech社 4360954);MicroAmp(登録商標)Fast Optical バーコード付き96ウェル反応プレート(Life Tech社 4346906);5ml血清用PSピペット(Sterile,Ind.社 包装、200/cs、米国、 Sci社 P/2837/5);10ml血清用PSピペット(Sterile,Ind.社 包装、200/cs、米国、 Sci社 P/2837/10);25ml血清用PSピペット(Sterile,Ind.社 包装、200/cs、米国、 Sci社 P/2837/25);1000ulチップ(米国、 Sci社 1111/2721);200ulチップ(米国、 Sci社 1111-0700);及び20ul TipOne naturalチップ(米国、 Sci社 1120-1810)。実験で使用したTaqman(登録商標)アッセイは、CEBPA FAM/TAMRAプローブ(Applied Biosystems社、Hs00269972_s1)及びGusB内因性対照VIC/TAMRAプローブ(Applied Biosystems社、Hs99999908_m1)AW1だった。
【0434】
実験で使用したsaRNA/siRNA
実験で使用したオリゴヌクレオチドには、AW1(CEBPA/AW01/500000)、AW1/MM(CEBPA/AW01/500100)、AW1/2OMe1(CEBPA/AW01/500001)、AW1/2OMe2(CEBPA/AW01/500011)、スクランブル2OMe1(NC/510003)、及びSMARTpool ON/TARGETplus CEBPA siRNAが含まれていた。
【0435】
saRNAの処理
オリゴヌクレオチドを、10mM Tris/HCl、20mM NaCl2、1mM EDTAで再水和して1mMにした。これは、まず、適切な容積の5×アニーリング緩衝液(50mM Tris/Hcl;100mM NaCl2;5mM EDTA)を添加し、その後無RNase水を添加することにより達成した。混合物を穏やかにボルテックスして再水和を完了させた。当量容積のAS鎖及びSS鎖を、穏やかにボルテックスすることにより共に混合した。混合した鎖を有するチューブを、95℃のmilliQ/水(沸騰はさせなかった)のビーカーに配置した。ビーカーをカバーで覆って、水をゆっくりと室温に冷却させた。アニーリングしたsaRNAを分割して、/20℃で保管した。その後、無RNAse H2Oを使用して希釈を実施した。
【0436】
HepG2の維持
HepG2細胞を、10%ウシ胎仔血清で補完されたRPMIで、定期的に継代して、対数増殖期増殖を維持した。継代数が10を超えた時点で、培養を中止した。
【0437】
核酸/リポフェクタミン複合体形成
試薬は全て、手順前に室温に戻した。1トランスフェクション当たり、1.5ulのリポフェクタミン2000を、50ul Optimemに添加した。saRNAを、50nMの終濃度で50ul Optimemに添加した。希釈リポフェクタミン及びsaRNAを穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。
【0438】
トランスフェクション用のHepG2細胞の調製
トリプシン/EDTAで細胞を剥離し、等容積の増殖培地に分散させ、細胞数を決定した。細胞を1000×gで5分間遠心分離し、400ulの増殖培地が24ウェルプレートのウェル中で40%の集密度をもたらすように、細胞ペレットを増殖培地に再懸濁した。核酸/リポフェクタミン複合体を穏やかに細胞に添加し、24ウェルプレート形式で播種した。細胞、培地、及びトランスフェクション複合体の最終容積は、500ulだった。24時間後、細胞は、約40%~45%の密集度になるはずである。24時間後、同じ核酸/リポフェクタミン複合体形成手順に従って、細胞を再トランスフェクションしたが、400ul増殖培地を新しく与えた接着細胞に複合体を添加した。24時間後、新しい増殖培地を細胞に与えた。培地交換の24時間後に、RNA抽出を実施した。トランスフェクションは全て、三重反復で実施した。要約すると、リバーストランスフェクションを行い、その後フォワードトランスフェクションを行った。
【0439】
RNeasyを使用した全RNAの精製
増殖培地及び溶解細胞を350ulのRLT緩衝液に吸引し、数回ピペットして、QIAshredderチューブに移した。その後、それらをRNeasyスピンカラムに通し、製造業者プロトコールに従って洗浄ステップを実施した。等容積の70%エタノールを溶解産物に添加し、よく混合した。溶解産物/エタノール混合物を、収集チューブにセットしたフィルターカートリッジにアプライし、15,000×gで30秒間遠心した。通過画分を破棄した。700ulの洗浄溶液#1をフィルターカートリッジにアプライし、15,000×gで30秒間遠心した。500ulの洗浄溶液#2/3をフィルターカートリッジにアプライし、15,000×gで30秒間遠心した。洗浄溶液#2/3を使用して、第2の洗浄を繰り返した。通過画分を破棄し、15,000×gで30秒間遠心分離して、残留する微量の洗浄溶液を除去した。フィルターカートリッジを、新しい収集チューブにセットした。40ulのピペット溶出溶液を、フィルターの中心にアプライした。チューブの蓋を閉めた。溶出液を、室温で30秒間15,000×gで遠心分離することにより回収した。
【0440】
RNA定量化
RNA濃度は、NanoDrop分光光度計を使用して測定した。
cDNAアーカイブの調製
当量のRNA(500ng~2μg)を、各RT反応のインプットとして使用した。量は、RNA抽出及び定量化後に決定した。RNA分解のリスクを最小限に抑えるために、反応は全て氷上でセットアップした。1)RTプライマーミックスを使用して日常的に逆転写を行う場合、RTプライマーミックス及び5×Quantiscript RT緩衝液を、1:4の比で事前に混合した。2)gDNA Wipeout緩衝液中に沈殿物がある場合、ボルテックスにより溶解させた。3)テンプレートRNAを氷上で解凍した。gDNA Wipeout緩衝液、Quantiscript逆転写酵素、Quantiscript RT緩衝液、RTプライマーミックス、及び無RNase水を、室温(15~25℃)で解凍した。4)ゲノムDNA除去反応を、表12に従って氷上で準備した。5)成分を混合してから、氷上で保管した。
【0441】
【0442】
6).混合物を42℃でインキュベートし、その後直ちに氷上に置いた。7).逆転写マスターミックスを、表14に従って氷上で調製した。
【0443】
【0444】
8).ステップ3のテンプレートRNA(14μl)を、逆転写マスターミックスを含有する各チューブに添加した。9).成分を混合し、その後氷上で保管した。10).混合物を42℃で15分間インキュベートした。11).混合物を、95℃で3分間インキュベートし、Quantiscript逆転写酵素を不活化した。12).終了した各逆転写反応の分割量をリアルタイムPCRミックスに添加した。13).逆転写反応を氷上で保管し、そのままリアルタイムPCRに進み、又は長期保存用に-20℃で保管した。
【0445】
遺伝子発現解析
定量PCR評価を使用して、QuantStudio7 FlexリアルタイムPCRシステムで、Taqman FAST qPCRにより相対的遺伝子発現を測定した。qPCR反応プレートを準備するために必要とされる成分の容積は、下記の表14を使用して算出した。注:試薬取扱中に生じる喪失を補う余裕をもって容積を提供するために、計算には追加反応を考慮してもよい。
【0446】
マルチチャンネルピペットを使用して、6uLの反応マスターミックスを、MicroAmp(登録商標)Fast Optical 384ウェル反応プレートの各ウェルに添加した。マルチチャンネルピペットを使用して、cDNAアーカイブ反応プレートのcDNAを4uL添加した。プレートを、MicroAmp Optical接着フィルムを使用して密封した。サーマルサイクラーにかける準備ができるまで、プレートを氷上に置いておいた。qPCR反応は全て、三重反復で実行した。
【0447】
B).DU145細胞
DU145培養条件:
Du145細胞は、HepG2と比較して、よりロバストに増殖する。Du145細胞は、トリプシン処理又は過剰集密度によるストレスの影響を受けにくい。常用培地:Pen/Strep/Glut(Sigma社 G1146)及び10%のFBS(Life 社 10082147)で補完されたRPM1649(Sigma社、R8758-500ML)。
【0448】
トランスフェクションのDU145接種密度:
DU145細胞は、HepG2細胞より速い倍加速度を有するため、トランスフェクションの初期接種密度はより低いだろう。24ウェル形式の場合:DU145=0.8×105細胞/ウェル;6ウェル形式の場合:DU145=200×105細胞/ウェル。
【0449】
トランスフェクション
DU145細胞のトランスフェクションは、HepG2細胞と同じ手順に従った。24又は6ウェル形式のいずれかに接種した当日に、細胞を「リバーストランスフェクション」ステップにかけ、細胞が単層に接着する前に、OptiMEM培地中のリポフェクタミン2000に基づくsaRNA複合体形成物を細胞に添加した。24時間後、培地を補充してから、フォワードトランスフェクションステップを実施した。これを、更に24時間インキュベートしてから、下流で応用するために細胞を回収した。
【0450】
saRNAの処理:
オリゴヌクレオチドを、10mM Tris-HCl、20mM NaCl2、1mM EDTAで再水和して1mMにした。これは、まず、適切な容積の5×アニーリング緩衝液(50mM Tris-Hcl;100mM NaCl2;5mM EDTA)を添加し、その後無RNase水を添加することにより達成した。ボルテックスを穏やかに実施して、再水和を完了させた。当量容積のAS鎖及びSS鎖を、穏やかなボルテックスにより共に混合した。混合した鎖を有するチューブを、95℃のmilliQ水(沸騰はさせなかった)のビーカーに配置した。ビーカーをカバーで覆って、水をゆっくりと室温に冷却させた。アニーリングしたsaRNAを分割して、-20℃で保管した。その後、無RNAse H2Oを使用して希釈を実施した。
【0451】
核酸/リポフェクタミンの複合体形成
試薬は全て、手順前に室温に戻した。1トランスフェクション当たり、1.5ul/3ul(24ウェルプレート/6ウェルプレートの場合)のリポフェクタミン2000を、50ul/125ulのOptimemに添加した。saRNAを、50nMの終濃度で50ul/125ulのOptimem(24ウェルプレート/6ウェルプレートの場合)に添加した。希釈リポフェクタミン及びsaRNAsを一緒にし、穏やかに混合し、室温で15分間インキュベートした。
【0452】
DU145細胞のトランスフェクション
細胞をトリプシン-EDTAで剥離させ、その後、過剰量の完全培地を加えてトリプシンを不活化した。必要に応じて、血球計を使用して細胞数を決定する。細胞を適切な接種密度で播種した。核酸/リポフェクタミン複合体形成物を、液滴として分注し、緩衝液に浸漬したチップで添加物を撹拌することにより、穏やかに細胞に添加した。細胞は、24時間後に、40%~50%程度の集密度になるはずである。24時間後に、同じ核酸/リポフェクタミン複合体形成手順に従って、細胞を再トランスフェクションしたが、新しい400ul増殖培地を与えた接着細胞に複合体を添加した。つまりフォワードトランスフェクションした。24時間後に、前のステップで使用した同じフォワードトランスフェクション技法を使用して、細胞を再び再トランスフェクションした。第3のトランスフェクションの24時間後に、RNA抽出を実施した。
【0453】
実施例17.C/EBPα-saRNAの修飾スクリーニング
修飾スクリーニング研究を、種々の修飾を有するC/EBPα-saRNAで実施した。オリゴヌクレオチド試料の配列を、以下の表に示した。DU145細胞を、50nMオリゴヌクレオチドを用いて、接種時にリバーストランスフェクションし、24時間後にフォワードトランスフェクションし、72時間で回収した。CEBPA、ALB、p21の相対発現レベルを
図51に示した。2’O-Me修飾は、SSの方が許容されやすかった。ASの5’の反対側のSSのミスマッチは、saRNAの効力を増加させた。
【0454】
【0455】
【0456】
実施例18.C/EBPα-saRNAのin vitro研究
A).HepG2細胞
HepG2細胞を、種々の方法を使用して、C/EBPα-saRNAでトランスフェクションした。非トランスフェクションHepG2と比較したHepG2細胞におけるCEBPA転写物の発現を、以下で測定した。通常のトランスフェクション(T)、リバーストランスフェクション(RT)、saRNAの50nM終濃度の1用量(1)、2用量(2)を実施した。細胞を、24時間、48時間、及び72時間で回収した。
図52A~Dの結果により、リバーストランスフェクション(RT)が、通常トランスフェクション(T)と比較して最適であることが確認される。saRNAの最適な効果は、逆転写又は通常転写を両方とも使用して、72時間の時点で検出された。二重トランスフェクション(2用量、第1のトランスフェクションの24時間後に第2のトランスフェクション)は、少なくとも4倍の増加をもたらした。
【0457】
B)経時的研究
HepG2、DU145、及びAML12細胞を、経時的研究用にC/EBPα-saRNA(CEBPA-AW01-500000)でトランスフェクションした。細胞を、1.3×105細胞/ウェル(DU145の場合、8×104細胞)で24ウェルプレートに接種し、リバーストランスフェクションし、その24時間後にフォワードトランスフェクションした。各トランスフェクションの4時間後に培地を交換した。細胞を、接種の24時間、48時間、及び72時間後に回収した。CEBPA、ALB、サイクリン、及びp21のmRNAレベルを測定した。
【0458】
C).CEBPA-saRNAによるHepG2、DU145、及びAML12の比較
HepG2及びAML12の接種は、1.2×10
5/ウェル(24ウェルプレート形式)だった。DU145接種は、0.8×10
5/ウェル(24ウェルプレート形式)だった。リバーストランスフェクションを0日目に、フォワードトランスフェクションを1日目に実施した。24時間時点=3日目。48時間時点=4日目。72時間時点=5日目。96時間時点=6日目。50nMのsaRNA(スクランブル又はCEBPA)をトランスフェクションした。培地を24時間毎に交換した。qPCRを実施して、相対的定量化を測定した(基線=未トランスフェクション)。CEBPA、p21、及びアルブミン発現を測定した。HepG2データを
図53A~Gに、DU145を
図54A~gに、及びAML12を
図55A~Gに示した。
【0459】
実施例19.製剤化したC/EBPα-saRNAのin vitro及びin vivo研究
A).製剤化したCEBPA-saRNAのin vitroトランスフェクション分析
CEBPA-saRNAを、NOV340(Marina社)で製剤化した。DU145及びHepG2細胞を、10nM、30nM、100nM、及び300nMのNOV340-CEBPA-saRNAを用いて、接種時にリバーストランスフェクションし、24時間後にフォワードトランスフェクションし、72時間で回収した。
図56A~
図56Fの結果は、直接標的であるCEBPA mRNA並びに近位標的であるアルブミンmRNA及びp21 mRNAの標的結合の証拠を示さなかった。
【0460】
B).野生型のマウスにおける製剤化CEBPA-saRNAのin vivo研究
CEBPA-saRNAを、デンドリマー-MTL-501及びNOV340(Marina社)で製剤化した。2つのin vivo研究を、野生型マウスで実施した(各研究でn=5)。野生型マウスには、デンドリマー-CEBPA-saRNA及びNOV340-CEBPA-saRNAを3用量で投与して、最後の用量の2日後に屠殺した(
図57A)。血清アルブミンレベルを、
図57B及び
図57Eに示した。CEBPA mRNAレベルを、
図57C及び
図57Fに示した。アルブミンmRNAレベルを、
図57D及び
図57Gに示した。血清アルブミンレベル及びアルブミンmRNAのレベルは上方制御され、近位標的結合を示した。しかしながら、直接標的結合の証拠はなかった。
【0461】
C).DENラットにおける製剤化CEBPA-saRNAのin vivo研究
1つのin vivo研究を、DENラットで実施した(n=6)。HCCモデルは、肝硬変及び自然発生肝腫瘍を誘導する。ラットにジエチルニトロソアミン(DEN)を7週間与え、その後水を3週間与えた。CEBPA-saRNAの種々の製剤による処置は、腫瘍発生直後に開始した。ラットには、5日間で3回のIV注射を施し、その後7日間モニタリングした(
図58A)。その後、ラットを屠殺して、組織学的検査、並びに肝臓mRNA及び血清タンパク質の測定を行った。12日目の腫瘍量を
図58Bに示した。12日目の血清ビリルビンレベルを、
図58Cに示した。ALT肝酵素レベルを
図58Dに示した。血清アルブミンレベルを、
図58Eに示した。12日目のコレステロールレベルを、
図58Fに示した。CEBPA上方制御、腫瘍増殖の強力な阻害、肝機能(血清ビリルビン及びALT)の改善、及び肝臓代謝(血清コレステロール)の改善が観察された。
【0462】
実施例20. 製剤化C/EBPα-saRNAのin vivo比較
A).野生マウス
CEBPA-saRNAを、デンドリマー-MTL-501及びNOV340(Marina社)-CEBPA/NOV340で製剤化した。製剤を野生型マウスに投与した。アルブミンELISAの結果を、
図59A~
図57Bに示した。
図59Bは、ELISA測定に基づいて血清アルブミンレベルを算出することができることを示した。アルブミンは、MTL-501及びCEBPA/NOV340により上方制御された。CEBPA及びアルブミンのmRNAレベルを測定した。全RNAを抽出し、500ngを逆転写した。CEBPA及びアルブミンの相対発現レベルを
図59C~
図59Dに示した。こうした結果により、CEBPA及びアルブミンが、MTL-501及びCEBPA/NOV340により上方制御されたことが更に確認された。また、異なる用量レベルのCEBPA/NOV340(0.5mg/kg及び3mg/kg)を、野生型マウスに投与した。
【0463】
B).DENラット
CEBPA-saRNAを、デンドリマー-MTL-501及びNOV340(Marina社)-CEBPA/NOV340で製剤化した。製剤を、「動物実験」項に記載されているものと同じ方法を使用して、DENラットに投与した。DENラットの体重、肝臓重量、腫瘍容積を、下記の表16、
図60A、及び
図60Bに示した。腫瘍容積は、全ての製剤/用量で有意に縮小した。
【0464】
【0465】
【0466】
【0467】
実施例21.C/EBPα-saRNA作用機序の研究
C/EBPA-saRNA作用機序を研究するために実験を行った。
1).抗ビオチンポリクローナル抗体を使用してクロマチン免疫沈降(ChIP)で濃縮したゲノムDNAを使用したRNA/DNA相互作用の分析:
C/EBPα-saRNA及びスクランブル-saRNAをビオチンで標識した。HepG2細胞を、ビオチン-Sramble-saRNA又はビオチンC-EBPA-saRNAでトランスフェクションした。細胞を、1%ホルムアルデヒドで固定し、RNA/DNA複合体を架橋した。核抽出物を超音波処理して、ゲノムDNAを200/300bp断片に煎断した。その後、断片を、抗ビオチンポリクローナル抗体を使用して免疫沈殿した。その後、免疫複合体を精製し、架橋を元に戻し、プロテイナーゼKと共にインキュベートした。残留ゲノムDNAを、フェノール/クロロホルムを使用して精製し、以下の遺伝子プロモーターの存在についてスクリーニングした:CEBPA、CDKN1A(p21)、AFP、NAB1(陰性対照)、IGX1A(EpiTect ChIP 陰性対照 Qiagen社)。
【0468】
ウエスタンブロットにより、トランスフェクションHepG2細胞にビオチン標識saRNAが存在することを確認した。トランスフェクション細胞抽出物を、抗ビオチンポリクローナル抗体を使用して免疫沈殿した。結果を
図61Aに示した。1.
図61Bに示されているように、トランスフェクションHepG2細胞に由来する断片化ゲノムDNAを、5%アガロースゲル電気泳動で分離した。
【0469】
ビオチン標識saRNAのChIP-Seqを実施して、saRNAが、どのプロモーター領域と結合しているかをゲノム全体にわたって研究した。抗ビオチンを使用してクロマチン免疫沈殿したゲノムDNAを、C/EBPA、AFP、CDKN1A、及びNAB1のTSS断片の存在についてスクリーニングした。IGX1Aは、バックグラウンドを評価するための、このアッセイの内部陰性対照である。ChIP-qPCR IGX1A陰性対照プライマーにより、ChIP手順中に共沈する非特異的ゲノムDNAの量が測定される。IGX1Aは、ヒト染色体12 Ref seq:NC_000012.11上の、あらゆる既知又は予測構造遺伝子を欠如するORF非含有遺伝子間領域又は「無プロモーター地帯(promoter desert)」内の特異的ゲノムDNA配列を検出する。
図62A~
図62Eの結果は、C/EBPAプロモーター領域のみが存在していたことを示す。
【0470】
2).抗Pol-IIによるChIP-Seqを実施して、プロモーター活性化及び転写活性の領域を特定する。H3K4me3/H3KAc/H3K27me等の後成的変化の証拠については、他の抗体を使用することができる。
【0471】
3).それらが特定されたら、1)及び2)でのChIP-Seqの代わりにRIPを実施して、saRNAの濃縮及びncRNAの種々のタンパク質を測定する。
4).H3K4Me3のChIP-qPCRを実施して、2)で特定した遺伝子/プロモーターを検証する。saRNAはビオチン標識されていない。
【0472】
5).鎖特異的RT-PCR、RACE-PCR、及びRNA-FISHを含む実験を実施して、上記で特定したC/EBPAプロモーター及び他の非特異的プロモーターの潜在的なアンチセンスncRNAの特定及び特徴付けを行った。
【0473】
6).細胞を、Agoタンパク質全てに対するsiRNA、並びにC/EBPA-saRNAでトランスフェクションして、どのAgoがC/EBPA発現の上方制御に必要であるかを特定する。
【0474】
7).細胞を、CRISPRでトランスフェクションして、翻訳されるタンパク質を突然変異させずに、標的プロモーター配列を突然変異させ、saRNAが、特異的な転写制御により作用しているか否かを判断する。
【0475】
8).定方向RT-PCRは、プロモーター領域での鎖特異的転写物を示している。ncRNAの証拠となるはずである。
9).転写活性が起こっている箇所をゲノム全体にわたって研究するために、核内走査(nuclear run)を実施する。また、リボソーム遮断剤を使用して、saRNAのあらゆる転写非特異的効果を示す。
【0476】
10).細胞を、ncRNA、例えばCEBPA-AS1を標的としてncRNAを分解するギャップマーでトランスフェクションする。saRNAトランスフェクション及びCEBPA上方制御を研究して、ncRNAが分解された場合に何らかの影響があるか否かを決定する。
【0477】
実施例22.外科支援療法のためのCEBPA
動物実験
臨床的に意義のあるラット硬変症モデルを、本明細書に記載のように使用した。6週齢の雄ウィスターラット(150~180g)を国立台湾大学動物センターから得た。ラットを、標準的条件で収容し、実験は全て、国立台湾大学の組織内実験動物委員会により準備された「実験動物の管理と使用に関する指針」に従って実施した。これら動物には、飲料水の唯一の供給源としてジエチルニトロソアミン(DEN)溶液(Sigma社、セントルイス、ミズーリ州)を、第1週での100ppmから開始して毎日、9週間与えた。動物の平均BWを週1回測定して、第1週のBWと比較し、BWに比例して動物の飲料水中のDENの濃度を毎週調整した。DEN投与の9週間後、その時点で肝硬変を認めることができた。ラットを、各群10匹の3群に無作為分割した。群1は、C/EBPa-saRNA処置を受け、群2は、スクランブル-saRNA処置を受け、群3は、その代わりにPBSを受容し、対照としての役割を果たした。
【0478】
in vivo治療の場合、C/EBPa-saRNAを、上述のように、100uLの無RNase/DNase H2O;50lLの20nM saRNAオリゴヌクレオチド、及び50uLのTEAコアPAMAMデンドリマーで再構成した。
【0479】
10匹の硬変症動物を、第1週に尾静脈注射による3×用量で処置した。対照動物(n=10)には、等容積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はスクランブル-saRNAを注射した。
【0480】
最後のsaRNA-C/EBPα:デンドリマーを注射した7日後に、Higgins及びAnderson(Higgins GM and Andreson RM、“Experimental pathology of the liver:Restoration of the liver of the white rat following partial surgical removal”、Arch.Pathol.、12巻:186~202頁(1931年)の手順に従って、正中葉及び左側葉の無菌除去による正中線開腹術後に部分的(70%)肝切除術を、全てのラットに対して実施した。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる。簡潔に述べると、全身麻酔(ケタミン40mg/kg i.p.)をかけた背臥位の動物の腹部に上部正中切開を施し、その後、周囲の靭帯を注意深く切除することにより、肝臓の正中葉及び左葉を動かせるようにした。その後、正中葉及び左葉の基部を縛って切除した。その後、回収した肝組織を、その後の組織学的検査のために幾つかの部分に分割し(術後0日目の試料、POD0と表記した)、10%ホルマリンに浸漬し、残りは、液体窒素で急速冷凍し、2週間後に動物をCO2吸入で屠殺した際に得た組織(術後7日目の試料、POD0と表記した)と比較するためのタンパク質及び分子分析に必要とされるまで、-80℃で保管した。また、肝切除術中に切除した肝葉、並びに追跡調査期間の終わりに切除したものを計量し、比較のために、肝臓対体重比(LW/BW×100%)を検証した。肝臓重量の変化を、肝性再生率(RR)として評価した。RRは、安楽死時の体重100g当りの肝臓体重/体重100g当りの術前推定肝臓重量と定義されている(Anderson KJら、“Postoperative but not preoperative treatment with sorafenib inhibits liver regeneration in rat”、J Surg Res、191巻(2号):331~338頁(2014年)、この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組みこまれる)。術前推定全肝臓重量は、切除した肝臓重量(術前の全肝臓重量の70%)から算出した。このモデルでは、復元プロセスの開始は12~16時間後に生じ、復元刺激の24時間後にDNA合成が最初のピークに達し、その後36~48時間に別の強度がより低いピークに達する。除去した肝臓質量の回復は、2~3週以内に起こる。
【0481】
免疫組織化学及び組織学的染色
部分切除術後の肝臓再生能力を検出するために、ラットには全て、肝切除術後の7日目に屠殺する2時間前に、100mg/kg体重の用量のBrdU(Sigma社;セントルイス、ミズーリ州)を単回IP注射した。肝切除術中に切除された肝臓葉並びに追跡調査期間の終了時に切除されたものを、以下のように、固定し、パラフィン包埋し、6μm切片に加工した。BrdUの免疫染色を、肝切除後の肝臓に実施した。BrdUで染色するために、切片を、モノクローナルマウス抗BrdU 1:100(MO744クローンBU20A;DAKO Sweden AB社)と共に60分間インキュベートし、その後、二次抗体、ビオチン化ポリクローナルウサギ抗マウス1:400(E0464;DAKO Sweden AB社)で25分間インキュベートした。その後、切片を、ABC vectastain standard kit(PK6100;Vector Laboratories社、バーリンゲーム、カリフォルニア州)で30分間インキュベートし、DAB Immpact(Vector Laboratories社)基質で5分間発色させた。切片を、ヘマトキシリン(マイヤーヘマトキシリン;Histolab社、エーテボリ、スウェーデン)で対比染色した。BrdUの標識率を、肝細胞の総数に対する、それぞれ陽染色された肝細胞核間の比率として算出した。切片の15箇所の無作為計数領域の累加平均値を、光顕微鏡検査(400×)で算出した。
【0482】
Ki-67又は増殖性細胞核抗原(PCNA)のIHCを示すために、組織切片の内因性ペルオキシダーゼをクエンチし、抗原回収溶液(0.01Mクエン酸緩衝液、pH6.0)に入れ、600Wで15分間100℃にて電子レンジ加熱した。カゼイン阻止でのインキュベーション後、モノクローナルマウス抗ラットKi-67特異的抗体(クローンMIB-5、アイソタイプIgG1;Dako社、グロストルプ、デンマーク)又はマウスMAb抗PCNA(クローンPC10;DAKO社)を、それぞれ1:20及び1:5000の希釈で切片にアプライした。切片を、一次抗体と共に4日間4℃にてインキュベートした。切片を洗浄し、陽性シグナルを、EnVision+西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウス検出系(Dako社)を使用して視覚化し、切片をヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、マウントした。細胞の数を、各スライド当たり5箇所の異なる視野で計数し、PCNA又はKi-67陽性/総肝細胞の比を算出した。
【0483】
血清の生化学的分析
肝切除術及び屠殺の直前に、静脈穿刺により血液試料を採取し、直ちに1300×gで4℃にて遠心分離し、血漿を生化学的分析用に-20℃で保管した。アルブミン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、総ビリルビン、及びガンマ-グルタミルトランスペプチターゼ(γ-GT)のレベルを、市販の酵素キットを使用して、自動生化学分析機(200FR;東芝、日本)で決定した。肝切除術前の血中レベルを、基準レベルとして記載した。
【0484】
結果
実施例1に示されているように、肝硬変/HCCを担持する雄ウィスターラットにC/EBPa-saRNAを静脈内注射すると、アルブミンの循環レベルの増加、肝機能の回復、及び腫瘍量の低減が促進された。
【0485】
70%肝切除術後の硬変症動物の生存:
各群の10匹のラットを手術して、生存率を検証した。70%肝切除術後、硬変症動物の生存率をモニターした。対照動物群(5/10)及びスクランブル-saRNA群(5/10)の50%が、7日目後には死亡していたが、C/EBPA-saRNAで処置した動物の生存率は、100%(10/10)だった。C/EBPA-saRNA処置後の硬変症動物の手術死亡率の有意な減少が認められた(p=0.03、対照群又はスクランブル-saRNA群との比較、フィッシャー直接検定による)。
【0486】
残存肝再生:
肝切除術の7日後、群1の再生率は、群2(p=0.006)及び群3(p=0.01)の再生率と比較して、C/EBPA-saRNA処置後に有意な上昇を示したが、群2及び群3間には有意差はなかった。肝切除術前後の3群には体重に有意差がなかったため(データ非表示)、群3の速度増加は、体重の変化では説明することはできない。
【0487】
Brd U標識率:
Brd U標識細胞の数は、対照群(p=0.001)及びスクランブル-saRNA群(p=0.024)とは対照的に、肝切除術7日後のC/EBPA-saRNA群で非常により高かった。対照群から得た肝臓の幾つかの領域は、Brd U陽染色細胞を含有していなかった。
【0488】
PCNA及びKi67アッセイ:
PCNA陽染色細胞の数は、肝切除術7日後のC/EBPA-saRNA群で非常により高かった。PCNA標識率は、対照群(p=0.017)とは対照的に、C/EBPA-saRNA群において有意により高かったが、スクランブル-saRNA群(p=0.06)とは有意差はなかった。Ki-67標識率は、対照群(p=0.001)及びスクランブル-saRNA群(p=0.014)の両方と対照的に、C/EBPA-saRNA群において有意により高かった。
【0489】
処置前肝臓重量/体重、処置後肝臓重量/体重、再生率、及びBrdU、PCNA、又はKi-67標識率の数値を、表17及び
図63A~63Dに示した。
【0490】
【0491】
【0492】
考察
C/EPBa-saRNAの潜在的な治療価値を試験するために、硬変症ラットモデルを使用してin vivo研究を引き続き実施した。C/EPBa-saRNAを標的送達するために、二本鎖RNA分子を陽イオン性PAMAMデンドリマーに連結した。これらナノ粒子は、以前に評価されており、生体内分布研究によると、ナノ粒子は、末梢血単核細胞及び肝臓に優先的に蓄積し、毒性は認められなかったことが示されている。1週間にわたるC/EPBa-saRNA-デンドリマーの静脈内注射は、PBS対照群又はスクランブル-saRNA-デンドリマー群と比較して、70%肝切除術後の生存率の有意な向上を示した。
【0493】
更に、肝再生の向上が、C/EBPa-saRNA処置群に由来する肝臓切片におけるBrd U、PCNA、及びKi-67染色の増加により検出された。臨床的視点から、これは、硬変症患者の手術死亡率を減少させ、肝臓切除術からの回復を加速させるために魅力的な治療手段である。
【0494】
上記の結果は、C/EPBa-saRNAの反復処置が、肝臓切除術後のラットの線維症肝臓の再生に肯定的な影響を示すことができ、硬変症動物の手術死亡率を減少させることになることを示唆する。
【0495】
CEBPA処置に関する仮説
HCCに関与する遺伝子としては、CEBPA、CEBPB、及びHNF4が挙げられる。いかなる理論にも束縛されることは望まないが、
図64に図示されているように、CEBPAは、分化癌(60%)及び未分化癌(40%)を含むHCC癌だけでなく、アルブミン及び凝固因子の産生不全を引き起こす肝不全にも関与する。また、
図64には、種々の療法の患者階層化が含まれている。チャイルドピューは、肝硬変のスコアリング体系である。Aは健康、Cは非常に不健康である。分化は、HCC腫瘍を指す。%は、進行HCC患者集団に対する、指定されている分化の割合の推定である。CEBPA-saRNAは、CEBPB-LIP-20KD抑止後に低CEBPA発現を示すHCC及び高CEBPAを示すHCC等、別々の増殖条件で使用してもよい。一方、CEBPA-saRNAは、肝臓切除の大手術後の肝再生を支援するために使用してもよい。CEBPA-saRNAは、状況に応じて、増殖の停止又は増殖の増強に対して臨床的に有用である能力を有する。このように、CEBPAは、ラット肝臓の70%除去後の再生率を向上させたため、支持療法として使用することができる。
【0496】
実施例23.更なるsaRNA配列
バイオインフォマティクスホットスポット(AW1、AW2、PR2)周囲でヌクレオチドウォーク(nucleotide walk)を実施した。saRNA配列を、交差反応性及び潜在的な非特異性最小化効果について、プレスクリーニングした。saRNAsの配列を、表18に示した。
【0497】
【0498】
【0499】
【0500】
【0501】
saRNAを、HepG2細胞においてbDNAアッセイ系を用いて四重反復でスクリーニングし、CEPBPA mRNA(標的)、アルブミンmRNA(下流)、及びp21 mRNA(下流)のレベルを測定した。結果を、
図65A~65Cに示した。また、それらを、DU145細胞においてスクリーニングし、CEBPA mRNA(標的)及びp21 mRNA(下流)のレベルを測定した。細胞は全て、0時間でリバーストランスフェクションし、24時間でフォワードトランスフェクションし、その後、72時間で回収した。結果を、
図65D~65Eに示した。2つの濃度のsaRNAを使用した:8nM及び50nM。
【0502】
幾つかのsaRNAに関する用量応答研究を、HepG2細胞及びDU145細胞においてbDNAアッセイ系を用いて四重反復で実施した。HepG2細胞におけるCEBPA mRNA(
図66A)、アルブミンmRNA(
図66B)、及びp21 mRNA(
図66C)のレベルを測定した。結果を、HepG2細胞におけるGAPDHレベル及びGAPDH mRNAレベルに対して正規化し、
図66Dに示した。DU145細胞におけるCEBPA mRNA(
図66E)及びp21 mRNA(
図66F)のレベルを測定した。結果を、DU145細胞におけるGAPDHレベル及びGAPDH mRNAレベルに対して正規化し、
図66Gに示した。細胞は全て、0時間でリバーストランスフェクションし、24時間でフォワードトランスフェクションし、その後、72時間で回収した。4つの濃度のsaRNAを使用した:1.25nM、2.5nM、5nM、及び10nM。
【0503】
HepG2細胞を、50nM CEBPA-AW01-510000(XD-03302)を用いて、接種時にリバーストランスフェクションし、24時間後にフォワードトランスフェクションし、72時間で回収した。
図67に示されているように、ALB、CEBPA、ecCEBPA、及びSTAT3の活性化が観察された。
【0504】
表18のsaRNA配列は、表19に示されているように、例えば、これらに限定されないが、2’O-Me修飾、逆位脱塩基修飾で修飾されていた。HepG2細胞及びDU145細胞を、種々の濃度(5nM及び10nM)の化学的修飾saRNA配列でトランスフェクションし、CEBPA mRNA、p21 mRNA、アルブミンmRNA、及びAFP mRNAのレベルを、bDNAアッセイで測定した。結果を、下記の表(表20~表26)並びに
図68A~
図68E及び
図69A~
図69Bに示した。模擬薬で処置した細胞の発現=1。図中の暗色は、親saRNAだった。図中の淡色は、陰性対照だった。DU145細胞を、Aha1 siRNAでトランスフェクションし、Aha mRNAレベルを、トランスフェクション対照として測定した(
図69C)。
【0505】
【0506】
【0507】
【0508】
【0509】
【0510】
【0511】
【0512】
【0513】
【0514】
【0515】
【0516】
加えて、トランスフェクション最適化研究を、単回トランスフェクション及び二重トランスフェクションで施した。HepG2細胞を、24ウェル形式で接種した(1.0×10
5細胞/ウェル)。単回トランスフェクションを、種々の量(5nM、10nM、15nM、及び20nM)のCEBPA-saRNAを使用して実施した。AW1及びAW1+1を試験した。この場合、2つのCEBPA-saRNAの標的は、ヌクレオチド1個分離れている。AW1は、AW01-5000000を指し、AW1+1は、AW01-51000(別名 AW1-51)を指す。細胞を、24時間、48時間、及び72時間で回収し、qPCR分析を行った。或いは、二重トランスフェクション法を使用した。リバーストランスフェクション及びフォワードトランスフェクション(二重トランスフェクション)を、種々の量のCEBPA-saRNA(5nM、10nM、15nM、及び20nMのAW1+1-CEBPA-saRNA)を使用して実施した。細胞を、第2のトランスフェクションの24時間、48時間、及び72時間後に回収し、qPCT分析を行った。単回トランスフェクションの結果を
図70Aに示し、二重トランスフェクションの結果を
図70Bに示した。単回トランスフェクション法又は二重トランスフェクション法のいずれでも、AW1+1での至適結果が達成された。
【0517】
CEBP-ルシフェラーゼリポーターアッセイを、HegG2(P8)細胞で実施した。CEBP応答性エレメント(ATTGCGCAAT)を、mCMVプロモーターの制御下のルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いて構築した。これは、二重リポーターカセットであり、したがって、トランスフェクション効率を正規化し、細胞生存率をモニターするための内部対照としてウミシイタケルシフェラーゼを有していた。その後、この二重CEBP(luc)リポーターアッセイにより、AW50に応答した細胞でのCEBPA転写活性を、AW51と比較して、迅速にモニターすることになる。
【0518】
接種密度は、96ウェル形式の1.5×10
5細胞/ウェルだった。100uL RPMI中の5%FCS(PSG非含有)を、リバーストランスフェクションの一次接種に使用した。FCSは、細胞培養中に基本培地を補完するために使用されるウシ胎仔血清を指す。PSGは、ペンシリン(Pencillin)、ストレプトマイシン、及びL-グルタミンを指す。ペンシリン及びストレプトマイシンの組み合わせは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の増殖を防止する。リポフェクタミン2000:saRNA:ルシフェラーゼ構築体複合体は、50uLのRPMI中にあった。総容積/ウェルは、150uLだった。スクランブル、AW-50(aka CEBPA-AW1-500000)、又はAW51(別名 CEBPA-AW1-510000)の濃度は、10ng/ウェルだった。CEBPA応答エレメント-Luc-プラスミドは、100ng/ウェルだった。CEBPA応答エレメント(CRE)プラスミドは、トランスフェクション効率を検出するために、サイトメガロウィルスプロモーターの下流のウミシイタケに加えて、ルシフェラーゼ遺伝子の上流にタンデムCREを含有している。CEBPAは、転写及び翻訳されると、このリポーターカセットに結合し、ルシフェラーゼの発現を引き起こすことになる。CEBP応答エレメントルシフェラーゼ構築体は、Qiagen社から市販されている(カタログCCS-001L)。完全RPMI+10%FCS+PSGを、フォワードトランスフェクションに使用した。細胞を、フォワードトランスフェクションの48時間後又は最初の接種の72時間後に回収した。20uLの受動溶解緩衝液、50uLのLARII Luc酵素基質、50uLのウミシイタケ測定停止反応を使用した。LARIIは、Promega社(カタログE1910)の記載によるとルシフェラーゼ活性化試薬IIである。試薬は、ルシフェラーゼの酵素活性が、細胞から発光を発生させるルシフェリル-AMP中間体を生成するために必要なマグネシウム及びATPに加えて、基質(ルシフェリン)を含有する。測定パラメータは、測定前に2秒間の遅延があり、その後測定時間は10秒間だった。結果を表27及び
図71に示した。CEBPA-Luc応答は、AW50(avv RLU:14.87)及びAW51(avv RLU:24.20)の両方で観察された。スクランブル誘導性CEBPA-Luc応答は、4.42のavv RLUを示した。したがって、AW50(別名 CEBPA-AW1-500000)及びAW51(別名 CEBPA-AW1-510000)は両方とも、ルシフェラーゼリポーターアッセイでは上方制御を示した。
【0519】
【0520】
更に、末梢血単核細胞(PBMC)サイトカインアッセイを実施して、免疫能を測定した。末梢血単核細胞(PBMC)によるin vitroサイトカイン産生を、免疫能の指標として測定した。PBMCアッセイを、AW50及びAW51の種々の修飾について実施した。2人の匿名ドナーに由来する全血を取得し、感染因子についてプレスクリーニングした。ヒト末梢血単核細胞を遠心分離により単離し、1ウェル当り約100,000細胞で播種した。saRNAのトランスフェクションを、DOTAPを使用して実施した。トランスフェクションの約20時間後に上清を回収し、ELISAによりIFN-α及びTNF-αの産生を直ちに分析した。各処置は、2人のドナー全てについて二重反復で分析した。saRNAsの配列を、下記の表28に示した。
【0521】
【0522】
【0523】
TNF-α応答に関するPBMCアッセイでは、新たに単離したPBMCを、DOTAP(ds-RNA)でトランスフェクションした。平滑末端25量体RNA(トランスフェクション)、CpG-モティーブ(motive)一本鎖オリゴヌクレオチド(直接インキュベーション)、chol結合siRNA(直接インキュベーション)を陽性対照として使用した。インキュベーション時間は、20時間だった。hsTNF-αについてELISAを実施した。結果を
図72A及び表29に示した。
【0524】
【0525】
【0526】
INF-α応答に関するPBMCアッセイでは、新たに単離したPBMCを、Geneporter-2対照(ds-RNA)でトランスフェクションした。平滑末端25量体RNA(トランスフェクション)、CpG-モティーブ一本鎖オリゴヌクレオチド(直接インキュベーション)、chol結合siRNA(直接インキュベーション)を陽性対照として使用した。インキュベーション時間は、20時間だった。hsINF-αについてELISAを実施した。結果を
図72B及び表30に示した。
【0527】
【0528】
【0529】
他の実施形態
本開示は、その詳細な説明と共に記載されているが、上述の説明は例示が目的であり、本開示の範囲を限定するものでなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲により規定されることが理解されるべきである。他の態様、利点、及び改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】