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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152983
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】官能化水素化ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20231005BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08F 4/48 20060101ALI20231005BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20231005BHJP
   B65G 15/32 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C08F8/42
C08F8/04
C08L15/00
C08K3/36
C08K3/04
C08F4/48
B60C1/00 Z
F16L11/04
B65G15/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023054925
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/362,214
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/155,799
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フランクリン・スピルカー
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット・フロック・ビールヘイバー
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・パトリック・マレー
【テーマコード(参考)】
3D131
3F024
3H111
4J002
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA07
3D131AA08
3D131AA11
3D131AA12
3D131AA15
3D131BC02
3D131BC12
3F024AA11
3F024BA07
3F024CA02
3F024CB03
3H111AA02
3H111BA15
3H111DA12
4J002AC111
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GC00
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN01
4J015DA02
4J100AS01P
4J100AS11P
4J100FA06
4J100FA08
4J100HA03
4J100HA35
4J100HA61
4J100HB02
4J100HB61
4J100JA29
4J100JA57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤなどのゴム製品の製造において組み込むことができるポリマーを生成するための低コストの手段を提供する。
【解決手段】水素化官能化ポリマーは、官能化ポリジエンが少なくともそのポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルまで選択的に水素化されているものを含む。官能化ポリジエンは、特定の官能化リチウム開始剤で開始されるリビングアニオン性エラストマーの反応生成物であり、前記ポリマーは、(1)リビングアニオン性エラストマーと官能性停止剤との反応生成物であり、両者は、構造式(II)の鎖を有するポリマーを生成する。

[ポリジエン]のそれぞれは、少なくとも1つの部分的または完全に水素化されたジエンモノマーを含むポリマー鎖を表す。RおよびRは、独立して、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に水素化されている官能化ポリジエンを特徴とする、水素化官能化ポリマーであって、
前記官能化ポリジエンは、少なくともそのポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルまで選択的に水素化されており、
前記官能化ポリジエンが、式(I)
【化1】
[式中、nは1~8の整数であり、R、R、およびRは同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から選択される]
の官能化リチウム開始剤で開始されるリビングアニオン性エラストマーから生成されており、
前記水素化された官能化ポリマーが、構造式(II)
【化2】
(式中、[ポリジエン]は、部分的または完全に水素化された少なくとも1つのジエンモノマーを含むポリマー鎖を表し、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の鎖を有する、
上記の水素化官能化ポリマー。
【請求項2】
、RおよびRが、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
水素化の前に、ポリジエンのそれぞれが、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、およびスチレン-イソプレン-ブタジエンゴムからなる群から独立して選択されることを特徴とする、請求項1に記載のゴムポリマー。
【請求項4】
前記ポリジエン部分が、水素化によって完全に飽和していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約10%~約40%飽和していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約40%~約80%飽和していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約80%~約100%飽和していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
シリカおよび/またはカーボンブラックをも含むゴム組成物中に組み込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
ゴムタイヤ、ホース、ベルト、および靴のうちの1つに組み込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
選択的に水素化されている官能化ポリジエンを特徴とする、水素化された官能化ポリマーであって、
前記官能化ポリジエンは、少なくともそのポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルまで選択的に水素化されており、
前記官能化ポリジエンが、式III:
【化3】
(式中、
Xは、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子からなる群から選択され、
mは0~2の整数であり、nは1~3の整数であり、但し、n+m=3であり、
およびRは、独立して、1~18個の炭素原子を含むアルキル基もしくはアリール基であり、または
、Rは、独立して-SiR基であり、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、もしくは二置換アミノ基から独立して選択され、または
およびRは、共通の窒素原子、および任意に、硫黄もしくは酸素であるヘテロ原子、と一緒になって、5~8員環を形成し、
は、水素、またはC1~C18アルキル、アリール、もしくはそれらの組み合わせであり、またはRは、-Rおよび-Rから選択され、Rは、1~3個の炭素原子を含むアルカンジイルであり、Rは、次の構造:-S-Z、-N(R)(R)、-O(Y)、およびSi(OR)、から選択され、RおよびRは、1~18個の炭素原子を含むアルキル基およびアリール基から独立して選択され、YおよびZは、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、tert-ブチル基、アリル基、1-エトキシエチル基、ベンジル基、トリフェニルメチル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、およびイソプロピルジメチルシリル基からなる群から独立して選択され、Rは、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の重合停止剤で停止されるリビングアニオン性エラストマーポリマーの反応生成物である、
水素化官能化ポリマー。
【請求項11】
前記重合停止剤が、以下の構造:
【化4】
の群から選択され、
リビングゴム状ポリマーが、1,3-ブタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つのジエンモノマーに由来することを特徴とする、
請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
水素化の前は、ポリジエンのそれぞれが、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、およびスチレン-イソプレン-ブタジエンゴムからなる群から独立して選択されることを特徴とする、請求項10に記載の官能化ゴム。
【請求項13】
構造式I:
【化5】
[式中、[ポリジエン]はぞれぞれ、水素化によって少なくとも部分的に飽和した少なくとも1つのジエンモノマーを含み、RおよびRは、独立して、1~8個の炭素を含むアルキル基または式II:
【化6】
(式中、Rは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の部分を表す]
の鎖を有する、水素化官能化ゴムポリマー。
【請求項14】
前記ポリジエン部分が、水素化によって完全に飽和していることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【請求項15】
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約10%~約40%飽和していることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【請求項16】
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約40%~約80%飽和していることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【請求項17】
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約80%~約100%飽和していることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【請求項18】
シリカおよび/またはカーボンブラックをさらに含むゴム組成物中に組み込まれていることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【請求項19】
ゴムタイヤ、ホース、ベルト、および靴のうちの1つに組み込まれていることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、水素化によって選択的に飽和された官能化ゴム状ポリマーに関する。それは、タイヤ用などのゴム用途での使用を意図しており、特にそれを参照して説明されるであろう。しかし、本例示的な実施形態は、他の同様の用途にも適用可能であることが理解される。
【背景技術】
【0002】
[0002]ほとんどのゴムポリマーは共役ジエンに由来し、炭化水素ポリマー鎖に沿って存在する、架橋のための不飽和点を含む。硬化したゴムは、時間の経過とともに、光、酸素(オゾン)、および熱の暴露によって引き起こされる劣化を受ける可能性がある。オゾンはゴム鎖の二重結合を攻撃するため、老化が促進される。老化が起こると、硬化したゴム製品の物理的性質が変化する。
【0003】
[0003]オゾン劣化からゴムを保護するために、オゾン劣化防止剤などの添加剤が広く使用されている。効果的に機能させるためには、添加剤がゴム表面に移動してバリアとして機能するような特性を有していなければならない。添加剤を必要としない別の手法が望まれている。したがって、硬化したゴム製品の老化を改善するために、飽和ポリマーが提案されている。
【0004】
[0004]しかし、ゴムコンパウンドは、その所望の仕様で性能を発揮し続けなければならない。性能を損なってまで耐用寿命を延ばすことはできない。例示的物品としてタイヤを用いると、シリカ充填剤を含むトレッド配合物は、カーボンブラックを使用する配合物よりも多くの重要な性能上の利点を示す。トレッド配合物では、シリカは、カーボンブラックを充填した従来のタイヤと比較して、(a)転がり抵抗が低く、(b)雪上でのトラクションが向上し、(c)騒音発生が低くなると考えられる。したがって、シリカ充填剤との強い適合性を維持しながら、老化を改善するポリマーが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第17,454,120号
【特許文献2】米国特許第4,022,959号
【特許文献3】米国特許第4,696,986号
【特許文献4】米国特許第11,117,997号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930)
【発明の概要】
【0007】
[0005]本開示は、より良好な老化および性能が望まれる場合に、タイヤなどのゴム製品の製造において組み込むことができるポリマーを生成するための低コストの手段を提供する。
【0008】
[0006]本開示の一実施形態は、低いヒステリシスおよびカーボンブラックやシリカなどの充填剤との良好な適合性を示す官能性を有する水素化官能化ポリマーを対象とする。開示されたポリマーは、オゾン劣化による影響を最小限に抑えるか、または受けないかのいずれかの特別な特性を必要とする、幅広い種類のゴム物品における使用が企図される。
【0009】
[0007]本開示の一実施形態は、水素化官能化ポリマーを対象とし、これは、官能化ポリジエンの少なくともポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルまで選択的に水素化された官能化ポリジエンを含む。官能化ポリジエンは、式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、nは1~8であり、R、R、およびRは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択される)
の官能化リチウム開始剤で開始されるリビングアニオン性エラストマーの反応生成物である。ポリマーは、また、(1)リビングアニオン性エラストマーと(2)官能性停止剤との反応生成物であり、両者は、構造式(II)
【0012】
【化2】
【0013】
の鎖を有するポリマーを生成する。各ポリジエンは、少なくとも1つの部分的または完全に水素化されたジエンモノマーを含むポリマー鎖を表す。RおよびRは、独立して、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す。
【0014】
[0008]本開示の一実施形態は、水素化官能化ポリマーを対象とし、これは、官能化ポリジエンの少なくともポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルを達成するように選択的に水素化された末端官能化ポリジエンを含む。一実施形態では、官能化ポリジエンは、(1)リビングゴム状ポリマーと、(2)式III
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、XはCl、Br、またはIである)
の重合停止剤との反応生成物である。
[0009]そのような実施形態では、mは0~2の整数であり、nは1~3の整数であり、但し、n+m=3であり;R、Rは独立してC1~C18アルキル、アリール、もしくはそれらの組み合わせであり、またはR、Rは独立して-SiRであり、ここで、Rは独立してアルキル、アリール、アルコキシ、もしくは二置換アミノであり、またはRおよびRは共通の窒素原子および任意に硫黄もしくは酸素であるへテロ原子と一緒になって、5~8員環を形成し;Rは、水素、またはC1~C18アルキル、アリール、もしくはそれらの組み合わせであり、またはRは、-SiRであり、ここで、Rは、独立してアルキル、アリール、アルコキシ、もしくは二置換アミノであり、またはRは、-R-Rであり、ここでRは、C1~C3アルカンジイルであり、Rは、以下の構造-S-Z、-N(R)(R)、-O(Y)もしくはSi(OR10から選択され、ここで、RおよびRは、独立してC1~C18アルキル、アリール、もしくはその組み合わせであり、YおよびZは、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、tert-ブチル、アリル、1-エトキシエチル、ベンジル、トリフェニルメチル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、およびイソプロピルジメチルシリルからなる群から独立して選択され、R10は、独立してC1~C4アルキルであり、またはm=1の場合である。
【0017】
[0010]一実施形態では、官能化ポリジエンは、(1)リビングゴム状ポリマーと、(2)式IV
【0018】
【化4】
【0019】
の重合停止剤との反応生成物である。
[0011]そのような実施形態では、R、Rは、独立してC1~C18アルキル、アリール、もしくはそれらの組み合わせであり、またはR、Rは独立して-SiRであり、ここでRは独立してアルキル、アリール、アルコキシ、または二置換アミノであり、XおよびRは先に定義したとおりであり、kは0~10の整数であり、リビングゴム状ポリマーはその主鎖に構造
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、R11およびR12は、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の官能基を有するポリマー鎖からなる。
【0022】
[0012]使用できる重合停止剤のいくつかの代表例としては、以下の構造(V)~(VIII):
【0023】
【化6】
【0024】
のいずれかを有するものが挙げられる。
[0013]主題の発明はまた、水素化によるその飽和の前は、構造式II:
【0025】
【化7】
【0026】
(式中、ポリジエンは、少なくとも1つのジエンモノマーからなるポリマー鎖を表し、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のポリマー鎖に由来する官能化ゴムを明らかにする。このようなポリジエンは、最終的なゴムにおいて、少なくとも部分的に飽和している。
【0027】
[0014]本発明はさらに、官能化ゴムを合成する方法であって、(1)不活性有機液体媒体中で共役ジエンモノマーの重合を官能化リチウム開始剤で開始するステップと、(2)モノマー転化率が所望のレベルに達するまで、不活性有機液体媒体中で重合を継続させて、リビングポリマー鎖を有するゴム状ポリマーを生成するステップと、(3)リビングポリマー鎖に重合停止剤を添加して、官能化ゴムを生成するステップと、(4)官能化ゴムを水素化して選択レベルまで飽和させるステップと、(5)撹拌条件下で不活性有機液体媒体全体に酸および水を分配するステップと、(6)官能化ゴムを不活性液体有機媒体から回収するステップとを含む、方法を明らかにする。
【0028】
[0015]このような方法では、官能化リチウム開始剤は、構造式(I):
【0029】
【化8】
【0030】
(式中、nは1~8の整数であり、R、R、およびRは同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)
を有する。官能化ゴムは、構造式II:
【0031】
【化9】
【0032】
(式中、ポリジエンは、少なくとも1つのジエンモノマーからなるポリマー鎖を表し、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のポリマー鎖を有する。
【0033】
[0016]このプロセスの開始経路、停止ステップ、および水素化ステップは、より具体的には、以下の例示的であるが非限定的な例によって図示することができる。
【0034】
【化10】
【0035】
[0017]これらのゴム状ポリマーは、水素化官能化高シス-1,4-ポリブタジエンゴム、水素化官能化ポリイソプレンゴム、水素化官能化スチレン-ブタジエンゴム、水素化官能化スチレン-イソプレンゴム、水素化官能化スチレン-イソプレン-ブタジエンゴムなどを含み得る。いずれにしても、その中の官能化された基が、カーボンブラックやシリカなどのゴムコンパウンドに通常使用される種類の充填剤とのゴムの適合性を改善し、その中の飽和ポリジエン部分が老化を改善するため、改善されたポリマー特性が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[0018]本開示は、官能化ゴムを選択的に水素化して、ゴムの所定の飽和レベルを生成することによって製造される水素化官能化ポリマーを対象とする。官能化ゴムの水素化は、当技術分野において公知の方法および触媒を用いて実施することができる。特に、最終ポリマーは、飽和ポリマーを官能化する代わりに、官能化ポリジエンを水素化することにより製造される。
【0037】
[0019]「選択的」水素化によって、水素化反応の停止は、官能化ポリマー中のすべての二重結合、より詳細には官能化ポリマー中のブタジエンおよびイソプレン単位の完全または部分転化のいずれかの後に行われる。一実施形態では、官能化ポリマーの水素化によってこれらの単位が約10%~約40%、または代替的に40%~約80%、または代替的に約80%~約100%飽和したときに水素化が停止される。一実施形態では、最終ポリマーは、鎖の少なくともポリジエン部分に沿って完全に飽和している。一実施形態では、ポリジエン部分および/または官能化部分が、官能化ポリマーの水素化によって約10%~約40%、または代替的に40%~約80%、または代替的に約80%~約100%飽和したときに水素化が停止される。
【0038】
[0020]企図される実施形態では、その内容が完全に本明細書に組み込まれる2020年12月9日出願の所有者が共通する(commonly owned)米国特許出願第17,454,120号に開示された官能化ゴムは、水素化によって少なくとも部分的に飽和される。その特許は、幅広い種類の官能化ゴムを作るために使用できる開始経路および停止ステップを開示している。これらのゴムは、通常、共役ジオレフィンモノマーのホモポリマーまたはコポリマーとなり、さらにビニル芳香族モノマーを含むことができる。
【0039】
[0021]本発明の官能化ゴムの合成に用いられる重合は、通常、リチウム触媒を利用した不活性有機媒体中での溶液重合として実施される。作られた官能化ゴム状ポリマーのビニル含有量は、重合中に存在する改質剤の量によって制御される。
【0040】
[0022]本発明の改質剤を用いて合成されるゴム状ポリマーは、共役ジオレフィンモノマーの単独重合、または共役ジオレフィンモノマーとビニル芳香族モノマーの共重合によって製造することができる。もちろん、共役ジオレフィンモノマーと1つまたは複数のエチレン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマーとの混合物を重合することにより、ゴム状ポリマーを作ることも可能である。本発明に従ってゴム状ポリマーの合成に利用することができる共役ジオレフィンモノマーは、一般に4~12個の炭素原子を含む。4~8個の炭素原子を含むものが、商業的な目的のために一般に好ましい。同様の理由で、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが最も一般的に利用される共役ジオレフィンモノマーである。単独でまたは混合して利用することができるいくつかの追加の共役ジオレフィンモノマーとしては、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。
【0041】
[0023]本発明の改質剤を用いてゴム状ポリマーに共重合できる可能性のあるエチレン性不飽和モノマーのいくつかの代表例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなどのアルキルアクリレート;1つまたは複数の末端CH2=CH-基を有するビニリデンモノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、フルオロスチレンなどのビニル芳香族;エチレン、プロピレン、1-ブテンなどのα-オレフィン;臭化ビニル、クロロエタン(塩化ビニル)、フッ化ビニル、ヨウ化ビニル、1,2-ジブロモエテン、1,1-ジクロロエテン(塩化ビニリデン)、1,2-ジクロロエテンなどのビニルハライド;酢酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β-オレフィン性不飽和ニトリル;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドなどのα,β-オレフィン性不飽和アミドなどが挙げられる。
【0042】
[0024]1つまたは複数のジエンモノマーと1つまたは複数の他のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであるゴム状ポリマーは、通常、約50重量%~約99重量%の共役ジオレフィンモノマーおよび、共役ジオレフィンモノマーに加えて、約1重量%~約50重量%の他のエチレン性不飽和モノマーを含むことになる。例えば、共役ジオレフィンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマー、例えば、50~95重量%の共役ジオレフィンモノマーと5~50重量%のビニル芳香族モノマーを含むスチレン-ブタジエンゴムは、多くの用途で有用である。
【0043】
[0025]ビニル芳香族モノマーは、ポリジエンに一般的に組み込まれるエチレン性不飽和モノマーの中で、おそらく最も重要なグループである。このようなビニル芳香族モノマーは、当然ながら、利用される共役ジオレフィンモノマーと共重合可能であるように選択される。一般に、有機リチウム開始剤で重合することが知られているいずれかのビニル芳香族モノマーを使用することができる。このようなビニル芳香族モノマーは、通常、8~20個の炭素原子を含む。通常、ビニル芳香族モノマーは、8~14個の炭素原子を含むことになる。最も広く使用されているビニル芳香族モノマーは、スチレンである。利用することができるビニル芳香族モノマーのいくつかの例としては、スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、α-メチルスチレン、4-フェニルスチレン、3-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0044】
[0026]本発明に従って官能化することができるゴム状ポリマーのいくつかの代表例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、α-メチルスチレン-ブタジエンゴム、α-メチルスチレン-イソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、スチレン-イソプレンゴム(SIR)、イソプレン-ブタジエンゴム(IBR)、α-メチルスチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、およびα-メチルスチレン-スチレン-イソプレン-ブタジエンゴムが挙げられる。
【0045】
[0027]本発明に従って製造された官能化高ビニルポリブタジエンゴムおよびスチレン-ブタジエンゴムは、典型的には、0~40重量%のスチレンおよび60重量%~100重量%の1,3-ブタジエンを含む。本発明の官能化スチレン-ブタジエンゴムは、より典型的には、15~40重量%の結合スチレンおよび60~85重量%の結合1,3-ブタジエンを含むであろう。例えば、本発明の官能化スチレン-ブタジエンゴムは、18~24重量%のスチレンと76~82重量%の1,3-ブタジエン、または24~32重量%のスチレンと68~76重量%の1,3-ブタジエン、または32~40重量%のスチレンと60~68重量%の1,3-ブタジエンを含むことができる。
【0046】
[0028]溶液重合では、溶媒として利用される不活性有機媒体は、通常、1つまたは複数の芳香族、パラフィン系またはシクロパラフィン系化合物であり得る室温で液体である炭化水素であろう。これらの溶媒は、通常、1分子あたり4~10個の炭素原子を含み、重合条件下で液体であろう。もちろん、選択される溶媒が不活性であることは重要である。本明細書で使用する「不活性」という用語は、溶媒が、官能化開始剤、重合反応に干渉しない、またはそれによって作られるポリマーと反応しないことを意味する。適切な有機溶媒のいくつかの代表例としては、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられ、単独または混合で用いる。シクロヘキサン、ノルマルヘキサンなどの飽和脂肪族溶媒が最も好ましい。
(1)不活性有機液体媒体中で共役ジエンモノマーの重合を官能化リチウム開始剤で開始するステップ:
[0029]本発明の官能化ゴムの合成に使用される官能化リチウム開始剤は、構造式I:
【0047】
【化11】
【0048】
のものである。
[0030]式中、nは1~8の整数であり、R基は同一でも異なっていてもよく、水素原子または1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。通常、nが3~5の整数を表すことが好ましく、nが4を表すことが最も好ましい。通常、R、RおよびRが、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表すことが好ましく、R、RおよびRが、1個または2個の炭素原子を含むアルキル基を表すことがより好ましい(R、RおよびRがメチル基またはエチル基であるため)。これらの官能性開始剤は、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などの極性改質剤の存在下の不活性有機溶媒中でアルキルリチウム化合物をビス-(ジアルキルアミノ)ビニルアルキルシランと反応させることにより製造する。この反応は、以下のように図示することができ、
【0049】
【化12】
【0050】
式中、nは1~8の整数であり、R基は同一でも異なっていてもよく、水素原子または1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、Rは1~7個の炭素原子を含むアルキル基である。テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の存在下のヘキサン溶媒中でノルマルブチルリチウムがビス-(ジメチルアミノ)ビニルメチルシランと反応する場合、この反応は以下のように図示することができる。
【0051】
【化13】
【0052】
[0031]官能化された開始剤の製造に使用するのに好ましい有機リチウム化合物は、式:R-Liで表すことができ、式中、Rは、1~約20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基を表す。一般に、そのような単官能性有機リチウム化合物は、1~約7個の炭素原子を含み、アルキルリチウム化合物となるであろう。使用することができる有機リチウム化合物のいくつかの代表例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、n-オクチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、p-トリルリチウム、1-ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、p-トリルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4-ブチルシクロヘキシルリチウム、および4-シクロヘキシルブチリルリチウムが挙げられる。有機モノリチウム化合物、例えば、アルキルリチウム化合物、およびアリールリチウム化合物が通常、使用される。利用することができる好ましい有機モノリチウム化合物のいくつかの代表例としては、エチルアルミニウム、イソプロピルアルミニウム、n-ブチルリチウム、セカンダリーブチルリチウム、ノルマルヘキシルリチウム、ターシャリーオクチルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウムなどが挙げられる。ノルマルブチルリチウムおよびセカンダリーブチルリチウムは、非常に好ましいリチウム開始剤である。
【0053】
[0032]官能化された開始剤の製造では、リチウム化合物とビス-(ジアルキルアミノ)ビニルアルキルシランとの化学量論的比が、通常、使用されることになる。例えば、モノリチウム化合物とビス-(ジアルキルアミノ)ビニルアルキルシランのモル比は、通常、0.5:1~1.2:1の範囲内にあることになり、0.9:1~1.1:1の範囲内にあるモル比が好ましい。
【0054】
[0033]前述のように、リチウム化合物は、極性改質剤の存在下でビス-(ジアルキルアミノ)ビニルアルキルシランと反応して、官能化された開始剤を製造する。使用される極性改質剤は、典型的には、ルイス塩基として作用するエーテルおよび3級アミンから選択される。利用することができる極性改質剤のいくつかの代表例としては、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-フェニルモルホリン、1,2,3-トリメトキシベンゼン、1,2,3-トリエトキシベンゼン、1,2,3-トリブトキシベンゼン、1,2,3-トリヘキソキシベンゼン、4,5,6-トリメチル-1,2,3-トリメトキシベンゼン、4,5,6-トリ-n-ペンチル-1,2,3-トリエトキシベンゼン、5-メチル-1,2,3-トリメトキシベンゼン、5-プロピル-1,2,3-トリメトキシベンゼン、1,2,4-トリメトキシベンゼン、1,2,4-トリエトキシベンゼン、1,2,4-トリブトキシベンゼン、1,2,4-トリペントキシベンゼン、3,5,6-トリメチル-1,2,4-トリメトキシベンゼン、5-プロピル-1,2,4-トリメトキシベンゼン、および3,5-ジメチル-1,2,4-トリメトキシベンゼンが挙げられる。
【0055】
[0034]官能化ゴムの合成に利用される官能化リチウム開始剤の量は、官能化リチウム開始剤ごとに、また合成される官能化ゴムに望まれる分子量によって異なることになる。一般原則として、すべてのアニオン重合と同様に、生成されるポリマーの分子量(ムーニー粘度)は、利用した触媒の量に反比例する。いずれにしても、約0.01phm(モノマーの重量部の百分率)~1phmの官能化リチウム触媒が、典型的には使用されるであろう。多くの場合、0.01phm~0.1phmの官能化リチウム触媒が使用され、0.025phm~0.07phmの官能化リチウム開始剤を利用することが好ましいであろう。
【0056】
[0035]通常、重合媒体には、重合媒体(有機溶媒およびモノマーを含む)の総重量を基準にして、約5重量%~約35重量%のモノマーが加えられることになる。多くの場合、重合媒体は、約10重量%~約30重量%のモノマーを含むことが好ましいであろう。重合媒体が約20重量%~約25重量%のモノマーを含むことが、典型的にはより好ましい。
【0057】
[0036]合成されるゴム状ポリマーの微細構造は、重合温度に多少依存する。いずれにしても、重合温度は、通常、約5℃~約100℃の範囲内にあるであろう。重合温度は、実用的な理由からと、所望のポリマー微細構造を達成するために、好ましくは約40℃~約90℃の範囲内にあるであろう。約60℃~約90℃の範囲内の重合温度は、一般に最も好ましい。
【0058】
[0037]ビニル含有量のレベルを高めるために、重合は通常、少なくとも1つの極性改質剤の存在下で行われる。官能化リチウム開始剤の製造に使用するために先に説明した種類の極性改質剤は、この目的のために使用することができる。実際、重合は、TMEDAなどの官能化リチウム開始剤を作る際に使用したのと同じ極性改質剤を用いて実施することができる。1,2,3-トリアルコキシベンゼンおよび1,2,4-トリアルコキシベンゼンと同様にルイス塩基としてよく作用するエーテルおよび3級アミンは、合成されるゴム状ポリマーのビニル含有量を増加させる目的で、重合に利用することができる極性改質剤の代表例である。ジピペリジノエタン、ジピロリジノエタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、およびテトラヒドロフランは、非常に好ましい改質剤の代表である。
【0059】
[0038]米国特許第4,022,959号は、極性改質剤としてのエーテルおよび3級アミンの使用をより詳細に記載している。改質剤としての1,2,3-トリアルコキシベンゼンおよび1,2,4-トリアルコキシベンゼンの利用は、米国特許第4,696,986号においてより詳細に記載されている。米国特許第4,022,959号および米国特許第4,696,986号の教示は、極性改質剤およびそれらがゴム状ポリマーの重合を改質する際に使用できる方法を説明する目的で、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0060】
[0039]いずれにしても、共役ジオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位の微細構造は、重合温度および存在する極性改質剤の量の関数である。例えば、重合温度が高いほど、ビニル含有量が少なくなる(1,2-微細構造のレベルが低くなる)ことが知られている。したがって、選択される重合温度、改質剤の量、および特定の改質剤は、合成される官能化ゴムの究極の所望の微細構造を念頭において決定される。
【0061】
[0040]環状アルコールの金属塩と極性改質剤の組み合わせは、それらの存在下で合成されたゴム状ポリマーのビニル含有量を増加させるために相乗的に作用することが見出された。この相乗的な改質剤系の利用は、官能化高ビニルポリブタジエンゴム、官能化スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、官能化スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、官能化イソプレン-ブタジエンゴムなどの幅広い種類の官能化ゴム状ポリマーの合成に有利に使用することもできる。
【0062】
[0041]環状アルコールの金属塩は、通常、Ia族金属塩であろう。リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、およびセシウム塩がそのような塩の代表例であり、リチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩が好ましい。ナトリウム塩が通常、最も好ましい。環状アルコールは、単環式、二環式、または三環式とすることができ、脂肪族または芳香族とすることができる。これらは、1~5個の炭化水素部分で置換することができ、また、任意にヘテロ原子を含むことができる。例えば、環状アルコールの金属塩は、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールまたは2-t-ブチル-5-メチルシクロヘキサノールなどのジ-アルキル化シクロヘキサノールの金属塩とすることができる。これらの塩は、ヘキサンだけでなく、他のほとんどの一般的な有機溶媒に可溶であるため、好ましい。二置換シクロヘキサノールの金属塩は、この理由のために可溶性であり、t-アミル酸ナトリウムと同様の改質効率を提供するため、非常に好ましい。メントール酸ナトリウムは、本発明の実施で使用することができる環状アルコールの金属塩として非常に好ましい。チモールの金属塩も利用することができる。環状アルコールの金属塩は、脂肪族または芳香族溶媒中で、環状アルコールを金属または別の金属源、例えば、水素化ナトリウムと直接反応させることにより調製することができる。
【0063】
[0042]環状アルコールの金属塩と極性改質剤とのモル比は、通常、約0.1:1~約10:1の範囲内にあり、環状アルコールの金属塩とリチウム開始剤とのモル比は、通常、約0.01:1~約20:1の範囲内にあるものである。環状アルコールの金属塩と極性改質剤とのモル比が約0.2:1~約5:1の範囲内にあり、環状アルコールの金属塩とリチウム開始剤とのモル比が約0.05:1~約10:1の範囲内にあることが、一般に好ましい。環状アルコールの金属塩と極性改質剤とのモル比が約0.5:1~約1:1の範囲内にあり、環状アルコールの金属塩とリチウム開始剤とのモル比が約0.2:1~約3:1の範囲内にあることが一般により好ましい。
(2)モノマー転化率が所望のレベルに達するまで、不活性有機液体媒体中で重合を継続させて、リビングポリマー鎖を有するゴム状ポリマーを生成するステップ:
[0043]重合は、実質的にすべてのモノマーが使い果たされるまで継続させる。言い換えれば、重合は、完了するまで実行される。モノマーを重合するためにリチウム触媒が使用されるので、リビングポリマーが生成される。合成されたリビングポリマーは、典型的には、約25,000~約700,000の範囲内の数平均分子量を有することになる。合成されたゴムは、より典型的には、約150,000~約400,000の範囲内の数平均分子量を有することになる。
(3)リビングポリマー鎖に重合停止剤を添加して、官能化ゴムを生成するステップ:
[0044]モノマー転化率が所望のレベルに達した後、官能化停止剤を重合媒体(重合が行われる不活性有機液体媒体)に添加する。使用することができる官能性停止剤のいくつかの代表例として、以下の構造式(V)~(IX):
【0064】
【化14】
【0065】
などの化合物が挙げられる。これらの官能性停止剤およびリビングポリマーの官能化におけるそれらの使用は、さらに、所有者が共通する米国特許第11,117,997号に記載されており、その内容は完全に本明細書に組み込まれる。
【0066】
[0045]官能性停止剤との反応により、ポリマー中の官能基が反応し、リビングゴム状ポリマーの主鎖に官能性を形成する。そのような官能化されたリビングポリマーは、式:
【0067】
【化15】
【0068】
(式中、ポリジエンおよびポリジエンは、独立して少なくとも1つのジエンモノマーからなるポリマー鎖を表し、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のものである。
【0069】
[0046]ゴム状ポリマー中のあらゆる残存リビング鎖末端を、次に任意で、ハロゲン化スズまたはハロゲン化ケイ素などの適切なカップリング剤でカップリングさせることができる。典型的には四ハロゲン化スズまたは四ハロゲン化ケイ素、例えば、四塩化スズ、四臭化スズ、四塩化ケイ素、または四臭化ケイ素が、カップリング剤として使用するのに好ましい。本発明の別の実施形態では、リビングゴム状ポリマーは、官能化停止剤を添加する前にカップリングされる。しかし、このシナリオでは、使用するカップリング剤のレベルを、ゴム状ポリマーのリビング鎖末端のすべてとカップリングするには不十分な量に制限することが重要である(化学量論的レベル未満のカップリング剤が添加される)。これはもちろん、リビング鎖末端が、後のステップで添加される官能化停止剤と反応するために利用できることが重要であるためである。
(4)官能化ゴムを水素化して選択レベルまで飽和させるステップ:
[0047]次に、官能化ポリジエンは、水素化反応を受けて、官能化ポリマーを所望のレベルまで選択的に飽和させることができる。この反応により、ポリジエンゴム中の選択的な量の二重結合が単結合に転化される。これにより、最終ポリマーにおいてオゾン劣化を受けやすい不飽和点の数が減少し、老化が改善される。水素化反応は、ポリマー中の二重結合の完全または部分転化の後、選択的に停止される。
(5)撹拌条件下で不活性有機液体媒体全体に酸および水を分配するステップ:
[0048]ゴム状ポリマーが官能化停止剤で処理され、任意にカップリングされた後、あらゆる残存リビング鎖末端を死滅させる。この目的のために、幅広い種類の有機酸および無機酸を使用することができる。例えば、塩酸や硫酸などの無機酸を使用することができる。しかし、この目的のために、カルボン酸などの有機酸を利用することが通常好ましい。使用することができるカルボン酸は、典型的には、構造式:R-COOH(式中、Rは、酢酸またはステアリン酸などの、1~約30個の炭素原子を含むヒドロカルビル部分を表す)のものである。このようなカルボン酸は、約10~約25個の炭素原子、より好ましくは約15~20個の炭素原子を含むことが通常好ましい。ステアリン酸は非常に好ましい。
【0070】
[0049]酸および水は、別々にまたは混合流として重合媒体に添加することができる。酸が水溶性でない場合があるので、水と酸を別々に添加することが通常好ましい。いずれにしても、この添加は、重合媒体全体に酸と水を混合するために撹拌条件下で行われることになる。通常、約0.1phr~約5phrの酸および約0.1phr~約5phrの水が添加されることになる。より典型的には、約0.5phr~約2phrの酸および約0.5phr~約2phrの水が添加されることになる。通常、約0.1phr~約5phrの酸および約0.1phr~約5phrの水が添加されることになる。より典型的には、約0.8phr~約1.2phrの酸および約0.8phr~約1.2phrの水が添加されることになる。
【0071】
[0050]酸/水処理は、意外にも、その後の少なくとも2週間の期間の貯蔵時にポリマーが安定であることをもたらすことがわかった。より具体的には、ゴム状ポリマーは、2週間の貯蔵後にMooneyクリープをほとんどまたは全く示さない。これは、もちろん、商業規模の生産で非常に望ましい。
(6)官能化ゴムを不活性液体有機媒体から回収するステップ:
[0051]次に、ゴム状ポリマーを有機溶媒から回収する。ポリブタジエンゴムは、デカンテーション、濾過、遠心分離などのいずれかの手段によって、有機溶媒および残渣から回収することができる。ポリマー溶液に約1~約4個の炭素原子を含む低級アルコールを添加することによって、有機溶媒からゴム状ポリマーを沈殿させることがしばしば望ましい。ポリマーセメントからのゴム状ポリマーの沈殿に適した低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマル-プロピルアルコール、t-ブチルアルコールが挙げられる。ポリマーセメントからゴムを沈殿させるための低級アルコールの利用も、リチウム末端基を不活性化することによってリビングポリマーを「死滅させる」。いずれにしても、ゴム状ポリマーを溶液から回収した後、ポリマー中の揮発性有機化合物のレベルを下げるために、スチームストリッピングが通常使用される。スチームストリッピングは、あらゆる残存リビング鎖末端を死滅させることに留意されたい。次いで、不活性溶媒および残留モノマーは、その後の重合のために再利用することができる。
【0072】
[0052]官能化ゴムは、その後、従来の技術を使用して、重合媒体から仕上げ、回収することができる。いずれにしても、構造式:
【0073】
【化16】
【0074】
(式中、ポリジエンは、少なくとも1つのジエンモノマーからなるポリマー鎖を表し、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のポリマー鎖からなる官能化ゴムを生成する。
【0075】
[0053]水素化官能化ポリマーは、タイヤ、被覆金属、被覆ワイヤ、被覆コード、ホース、ベルト、および靴底用の構成要素を含むが、これらに限定されない種々のゴム物品に組み込むことができる。例えば、ゴムタイヤの構成要素は、トレッド(トレッドキャップおよびトレッドベースを含む)、サイドウォール、エイペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコートまたはインナーライナーであり得る。一実施形態では、構成要素はトレッドである。トレッドでは、開示された水素化官能化ポリマーは、老化がより良好であり、特に改善されたポリマー-充填剤相互作用を介して、性能が維持または改善されると考えられる。実例としてタイヤトレッドコンパウンドを使用すると、開示された水素化官能化ポリマーは、トラクションおよび転がり抵抗の改善をもたらすことがあり、後者はヒステリシスが減少する結果である。
【0076】
[0054]実例として、タイヤゴムを説明する。本発明の官能化ポリジエンゴムは、従来の成分および標準的な技術を利用して配合することができる。例えば、官能化ポリジエンゴムは、典型的には、カーボンブラックおよび/またはシリカ、硫黄、充填剤、促進剤、油、ワックス、スコーチ防止剤、および加工助剤と混合されることになる。多くの場合、官能化ポリジエンゴムは、硫黄および/または硫黄含有化合物、少なくとも1つの充填剤、少なくとも1つの促進剤、少なくとも1つの劣化防止剤、少なくとも1つの加工油、酸化亜鉛、任意に粘着付与樹脂、任意に補強樹脂、任意に1つまたは複数の脂肪酸、任意にペプタイザー、および任意に1つまたは複数のスコーチ防止剤と配合されることになる。このような混合種は、通常、約0.5~5phr(ゴムの重量部の百分率)の硫黄および/または硫黄含有化合物を含むことになり、1phr~2.5phrが好ましい。ブルームが問題となる場合には、不溶性硫黄を利用することが望ましい場合がある。
【0077】
[0055]通常、10phr~165phrの少なくとも1つの充填剤が利用されることになり、30phr~80phrが好ましい。多くの場合、少なくともいくつかのカーボンブラックが充填剤として利用されることになる。もちろん、充填剤を完全にカーボンブラックで構成することも可能である。引裂抵抗および発熱性を改善するために、シリカを充填剤に含めることができる。コストを低減するために、クレーおよび/またはタルクを充填剤に含めることができる。生産的(硬化発現段階の)ゴムコンパウンドはまた、通常、0.1phr~4phrの少なくとも1つの促進剤を含むことになり、0.2phr~1.5phrが好ましい。酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤は、一般に、0.25phr~10phrの範囲の量でゴムコンパウンドに含まれることになり、1phr~5phrの範囲の量が好ましい。加工油は、一般に、2phr~100phrの範囲の量で混合種に含まれることになり、5phr~50phrの範囲の量が好ましい。本発明の配合された官能化ポリジエンゴムはまた、通常、0.5phr~10phrの酸化亜鉛を含むことになり、1phr~5phrが好ましい。最大60phrの樹脂を使用することができる。これらの混合種は、任意に、0phr~10phrの粘着付与樹脂、0phr~10phrの補強樹脂、1phr~10phrの脂肪酸、0phr~2.5phrのペプタイザー、および0phr~1phrのスコーチ防止剤を含むことができる。
【0078】
[0056]ゴム状ポリマーのセメントには、任意で伸展油も添加することができる。そのような伸展油は、典型的には、0phr~50phrの範囲内のレベルで添加されることになる。油展ゴムの場合、油は、より典型的には10phr~45phrの範囲内にある量で添加されることになり、最も典型的には20phr~35phrの範囲内にあるレベルで添加されることになる。
【0079】
[0057]本発明の官能化ポリジエンゴムの総合的な利点を十分に実現するために、通常、シリカがトレッドゴム配合物に含まれることになる。様々な市販のシリカを、本発明の実施に使用するために考慮することができる。本発明の実施で使用することができるシリカのいくつかの代表例としては、これに限定されないが、Hi-Sil商標、例えば、Hi-Sil(登録商標)210およびHi-Sil(登録商標)243としてPPG Industriesから市販されているシリカ、例えば、Z1165MPおよびZ165GRの名称でRhone-Poulencから入手できるシリカ、ならびに、例えば、VN2、VN3およびBV9000GRの名称でDegussa AGから入手できるシリカが挙げられる。J.M.Huber CorporationからのZeopol(登録商標)8745シリカは、シリカ表面平方ナノメートルあたりのヒドロキシル基の平均合計約13個、および前記平均合計に対するジェミナルヒドロキシル基の比約0.23/l;CTAB値約145m/gおよびBET値約185m/gを有すると報告されており、これも本発明の実施に使用することができる。J.M Huber CorporationからのZeopol(登録商標)8715シリカは、前記シリカの平方ナノメートル表面あたりのヒドロキシル基の平均合計約18個、前記平均合計に対するジェミナルヒドロキシル基の比約0.27/l、CTAB値約94m/g、およびBET値約163m/gを有することによって特徴付けられると報告されており、本発明の実施で使用することができるシリカの別の例である。
【0080】
[0058]ゴム配合用途で用いられる一般的に使用されているシリカ質顔料をシリカとして使用することができる。例えば、シリカは、焼成および沈降シリカ質顔料(シリカ)を含むことができるが、沈降シリカが好ましい。本発明で好ましく使用されるシリカ質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムを酸性化して得られるものなどの沈降シリカである。このようなシリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定したBET表面積が、好ましくは1グラムあたり約40~約600平方メートルの範囲、より通常は約50~約300平方メートルの範囲にあることによって特徴付けられる場合がある。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930)に記載されている。
【0081】
[0059]シリカはまた、典型的には、約100~約400、より通常は約150~約300の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することによって特徴付けられる場合がある。シリカは、例えば、電子顕微鏡で測定して0.01~0.05ミクロンの範囲の平均極限粒径を有すると予想されるが、シリカ粒子は大きさがさらに小さいか、場合によっては大きくなる可能性がある。
【0082】
[0060]本発明で使用するために、様々な市販のシリカを考慮することができ、例えば、限定するものではないが、本明細書で一例として、Hi-Sil商標、210、243などの名称でPPG Industriesから市販されているシリカ、例えば、Z1165MPおよびZ165GRの名称でRhone-Poulencから入手できるシリカ、および例えば、VN2およびVN3の名称でDegussa AGから入手できるシリカが挙げられる。
【0083】
[0061]官能化ポリジエンゴムの加工は、最大の利点を実現するために、通常、硫黄含有有機ケイ素化合物の存在下で行われる。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
Z-Alk-Sn-Alk-Z
[式中、Zは、
【0084】
【化17】
【0085】
(式中、Rは1~4個の炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり、Rは1~8個の炭素原子のアルコキシ、または5~8個の炭素原子のシクロアルコキシである)
からなる群から選択され、Alkは1~18個の炭素原子の二価の炭化水素であり、nは2~8の整数である]
のものである。
【0086】
[0062]本発明に従って使用され得る硫黄含有有機ケイ素化合物の具体例としては、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-2’’-エチルヘキソキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリイソオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(メトキシジエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロヘキソキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロペントキシシリルプロピル)トリスルフィド、2,2’-ビス(トリ-2’’-メチルシクロヘキソキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3-メトキシエトキシプロポキシシリル3’-ジエトキシブトキシ-シリルプロピルテトラスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルsec.ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(メチルブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジt-ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(フェニルメチルメトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルイソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメチルエチルメルカプトシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(メチルジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、2,2’-ビス(メチルエトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジエチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(エチルジ-sec.ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ブチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(フェニルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-フェニルエトキシブトキシシリル3’-トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’-ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルドデシル)ジスルフィド、18,18’-ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、18,18’-ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリル-ブテン-2-イル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシレン)テトラスルフィド、5,5’-ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィドが挙げられる。
【0087】
[0063]好ましい硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)スルフィドである。最も好ましい化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって式Iに関しては、好ましくはZは、
【0088】
【化18】
【0089】
(式中、Rは2~4個の炭素原子のアルコキシであり、2個の炭素原子が特に好ましい)
であり、Alkは2~4個の炭素原子の二価の炭化水素であり、3個の炭素原子が特に好ましく、nは3~5の整数であり、4が特に好ましい。
【0090】
[0064]ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用するシリカのレベルに依存して変化することになる。一般的に、式Iの化合物の量は、シリカの1重量部あたり約0.01~約1.0重量部の範囲になるであろう。好ましくは、その量は、シリカの1重量部あたり約0.02~約0.4重量部の範囲になるであろう。より好ましくは、式Iの化合物の量は、シリカの1重量部あたり約0.05~約0.25重量部の範囲になるであろう。
【0091】
[0065]硫黄含有有機ケイ素に加えて、ゴム組成物は、十分な量のシリカ、および使用する場合にはカーボンブラックを含有して、適度に高いモジュラスおよび高い引裂抵抗をもたらすべきである。シリカ充填剤は、約10phr~約250phrの範囲の量で添加することができる。好ましくは、シリカは、約15phr~約80phrの範囲の量で存在する。カーボンブラックも存在する場合、カーボンブラックの量は、使用される場合、変化し得る。一般的に、カーボンブラックの量は、約5phr~約80phrで変化することになる。好ましくは、カーボンブラックの量は、約10phr~約40phrの範囲になるであろう。シリカカップラーは、カーボンブラックとともに、すなわちゴム組成物への添加前にカーボンブラックと予め混合して使用することができ、そのようなカーボンブラックは、ゴム組成物配合のためのカーボンブラックの前記量に含まれることになることを理解されたい。いずれにしても、シリカとカーボンブラックの合計量は、少なくとも約30phrであろう。上記で言及したように、シリカとカーボンブラックの合計重量は、約30phrと低くてもよいが、好ましくは約45~約130phrである。
【0092】
[0066]本発明に従って作られた、シリカおよび有機ケイ素化合物を含むゴム配合物は、典型的には、熱機械的混合技術を利用して混合されることになる。タイヤトレッドゴム配合物の混合は、ゴム混合技術の当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、成分は、典型的には、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階に続いて、生産的な混合段階で混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化剤は、典型的には、従来「生産的な」混合段階と呼ばれる最終段階で混合され、混合は典型的には、先行する非生産的な混合段階の混合温度よりも低い温度、または最終温度で起こる。ゴム、シリカおよび硫黄含有有機ケイ素、ならびにカーボンブラックが使用される場合、カーボンブラックは、1つまたは複数の非生産的な混合段階で混合される。「非生産的な」および「生産的な」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者に周知である。硫黄含有有機ケイ素化合物、加硫可能なゴムおよび一般にシリカの少なくとも一部を含む硫黄加硫可能なゴム組成物は、熱機械的混合ステップに付されるべきである。熱機械的混合ステップは、一般に、140℃~190℃の範囲内にあるゴム温度を生じさせるのに適した時間、ミキサーまたは押出機で機械的に加工することを含む。熱機械加工の適切な時間は、操作条件、ならびに成分の量および性質の関数として変化する。例えば、熱機械加工の時間は、約2分~約20分の範囲内であり得る。通常、ゴムは、約145℃~約180℃の範囲内の温度に達し、約4分~約12分の範囲内の時間、前記温度で維持されることが好ましいであろう。通常、ゴムは、約155℃~約170℃の範囲内の温度に達し、約5分~約10分の範囲内の時間、前記温度で維持されることがより好ましいであろう。本発明の官能化ゴムをタイヤトレッドコンパウンドに利用することにより、トレッド摩耗または転がり抵抗を損なうことなく、トラクション特性を改善させることができる。
【0093】
[0067]本発明における変形は、本明細書に提供されたそれの説明に照らして可能である。主題の発明を説明する目的で、特定の代表的な実施形態および詳細を示したが、主題の発明の範囲から逸脱することなく、そこに様々な変更および修正を加えることができることは、当技術分野における当業者には明らかであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の完全な意図された範囲内にあるであろう、記載された特定の実施形態では変更がなされ得ることを理解されたい。
【0094】
[発明の態様]
[パラグラフ1]
選択的に水素化されている官能化ポリジエンを含む、水素化官能化ポリマーであって、
前記官能化ポリジエンは、少なくともそのポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルまで選択的に水素化されており、
前記官能化ポリジエンが、式(I)
【0095】
【化19-1】
【0096】
[式中、nは1~8の整数であり、R、R、およびRは同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から選択される]
の官能化リチウム開始剤で開始されるリビングアニオン性エラストマーから生成されており、
前記水素化された官能化ポリマーが、構造式(II)
【0097】
【化19-2】
【0098】
(式中、[ポリジエン]は、部分的または完全に水素化された少なくとも1つのジエンモノマーを含むポリマー鎖を表し、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の鎖を有する、
上記の水素化官能化ポリマー。
[パラグラフ2]
、RおよびRが、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ3]
水素化の前に、ポリジエンのそれぞれが、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、およびスチレン-イソプレン-ブタジエンゴムからなる群から独立して選択される、パラグラフ1に記載のゴムポリマー。
[パラグラフ4]
前記ポリジエン部分が、水素化によって完全に飽和している、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ5]
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約10%~約40%飽和している、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ6]
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約40%~約80%飽和している、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ7]
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約80%~約100%飽和している、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ8]
シリカおよび/またはカーボンブラックをも含むゴム組成物中に組み込まれている、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ9]
ゴムタイヤ、ホース、ベルト、および靴のうちの1つに組み込まれている、パラグラフ1に記載のポリマー。
[パラグラフ10]
選択的に水素化されている官能化ポリジエンを含む、水素化された官能化ポリマーであって、
前記官能化ポリジエンは、少なくともそのポリジエン部分に沿って所定の飽和レベルまで選択的に水素化されており、
前記官能化ポリジエンが、式III:
【0099】
【化19-3】
【0100】
(式中、
Xは、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子からなる群から選択され、
mは0~2の整数であり、nは1~3の整数であり、但し、n+m=3であり、
およびRは、独立して、1~18個の炭素原子を含むアルキル基もしくはアリール基であり、または
、Rは、独立して-SiR基であり、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、もしくは二置換アミノ基から独立して選択され、または
およびRは、共通の窒素原子、および任意に、硫黄もしくは酸素であるヘテロ原子、と一緒になって、5~8員環を形成し、
は、水素、またはC1~C18アルキル、アリール、もしくはそれらの組み合わせであり、またはRは、-Rおよび-Rから選択され、Rは、1~3個の炭素原子を含むアルカンジイルであり、Rは、次の構造:-S-Z、-N(R)(R)、-O(Y)、およびSi(OR)、から選択され、RおよびRは、1~18個の炭素原子を含むアルキル基およびアリール基から独立して選択され、YおよびZは、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、tert-ブチル基、アリル基、1-エトキシエチル基、ベンジル基、トリフェニルメチル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、およびイソプロピルジメチルシリル基からなる群から独立して選択され、Rは、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の重合停止剤で停止されるリビングアニオン性エラストマーポリマーの反応生成物である、
水素化官能化ポリマー。
[パラグラフ11]
前記重合停止剤が、以下の構造:
【0101】
【化19-4】
【0102】
の群から選択され、
リビングゴム状ポリマーが、1,3-ブタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つのジエンモノマーに由来する、
パラグラフ10に記載のポリマー。
[パラグラフ12]
水素化の前は、ポリジエンのそれぞれが、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、およびスチレン-イソプレン-ブタジエンゴムからなる群から独立して選択される、パラグラフ10に記載の官能化ゴム。
[パラグラフ13]
構造式I:
【0103】
【化19-5】
【0104】
[式中、[ポリジエン]はぞれぞれ、水素化によって少なくとも部分的に飽和した少なくとも1つのジエンモノマーを含み、RおよびRは、独立して、1~8個の炭素を含むアルキル基または式II:
【0105】
【化19-6】
【0106】
(式中、Rは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の部分を表す]
の鎖を有する、水素化官能化ゴムポリマー。
[パラグラフ14]
前記ポリジエン部分が、水素化によって完全に飽和している、パラグラフ10に記載のポリマー。
[パラグラフ15]
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約10%~約40%飽和している、パラグラフ10に記載のポリマー。
[パラグラフ16]
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約40%~約80%飽和している、パラグラフ10に記載のポリマー。
[パラグラフ17]
前記ポリジエン部分が、前記官能化ポリマーの水素化によって約80%~約100%飽和している、パラグラフ10に記載のポリマー。
[パラグラフ18]
シリカおよび/またはカーボンブラックをさらに含むゴム組成物中に組み込まれている、パラグラフ10に記載のポリマー。
[パラグラフ19]
ゴムタイヤ、ホース、ベルト、および靴のうちの1つに組み込まれている、パラグラフ10に記載のポリマー。
【外国語明細書】