(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153024
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ジウレア化合物を使用する有核ポリプロピレンマスターバッチの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20231005BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20231005BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20231005BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08J3/22 CES
C08K5/21
C08L23/10
C08L75/02
C08G18/32 037
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055237
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202241019000
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】523089209
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】パダダ,スリニバス ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カダム,プラビン ゴパル
(72)【発明者】
【氏名】チェリアン,ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ボジャ,ラマチャンドララオ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AB09
4F070AB24
4F070AC45
4F070AC49
4F070AE30
4F070FA03
4F070FB03
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4J002BB111
4J002CK012
4J002ET016
4J002FD202
4J002FD206
4J034CA13
4J034CA15
4J034CB01
4J034CB03
4J034CC12
4J034DA03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】任意のグレードのポリプロピレンに添加でき、取り扱い中に吸入の危険が起きず、取り扱いが容易で、基材ポリプロピレン中での分散性が向上しているジウレア化合物を使用する有核ポリプロピレンマスターバッチの調製方法を提供する。
【解決手段】マスターバッチは、重量で、2~60重量%のジウレアベースの核形成剤と、40~98重量%のポリプロピレン樹脂とで構成される。本発明は、ポリプロピレンを核形成剤と混和させることによるポリプロピレンマスターバッチの調製方法を開示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンを、2~60重量%の範囲の重量%を有する核形成剤と溶融混合させることによる核形成剤マスターバッチを調製する方法であって、前記核形成剤は、少なくとも1つのイソシアネートおよび少なくとも1つのアミンの反応生成物であり、前記重量%は、前記マスターバッチの総重量に基づいている方法。
【請求項2】
前記イソシアネートは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、および芳香族イソシアネートからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)からなる群から選ばれるジイソシアネートである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミンは、芳香族アミンであって、前記芳香族アミンは、アニリン、p‐アミノトルエン、o‐アミノトルエン、2,4‐ジアミノトルエン、2,6‐ジアミノトルエン、p‐フェニルアニリン、α‐アミノナフチレン、4,4’‐ジアミノビフェニル、p‐フェニレンジアミン、および4,4’‐メチレンビスアニリンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族アミンは、アニリンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アミンは、脂肪族アミンであり、前記脂肪族アミンは、メチルアミンおよびエチルアミンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アミンは、脂環式アミンであり、前記脂環式アミンは、ヘキシルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融混合は、150~300℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体および/または任意の他のアルケンもしくはアクリレートもしくはハロゲン化炭化水素を有するポリプロピレン共重合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記核形成剤の濃度は、ポリプロピレン中で250~20000ppmにさらに希釈され、有核ポリプロピレンを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリプロピレンおよび核形成剤で前記マスターバッチを調製するための前記溶融混合は、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、2本ロール機、またはその他の加工装置で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
結晶化温度は、前記濃度を250~1000ppmとすることで116℃~129℃に上昇させられる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られた前記核形成剤マスターバッチを有する有核ポリプロピレン。
【請求項14】
1.5g/10分~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有する前記ポリプロピレンを請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られた前記核形成剤マスターバッチと溶融混合することにより有核ポリプロピレンを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有核ポリプロピレンマスターバッチの調製方法を開示する。より具体的には、本発明は、ポリプロピレンを核剤としてのジウレアと溶融混合させることによるポリプロピレンマスターバッチの調製方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
核剤は、完成したポリマーの機械特性および透明性を高めるため、ポリマーの製造中に加えられる添加剤の一式であり、より速い結晶化速度も提供する。核剤は現在、かつてないほどに需要が増している。モノマー混合物に不均一表面を提供し、核剤は、結晶化を引き起こす手助けをし、生産率を増強させる。十分な量の核剤は、一定寸法のスフェルライトを維持することができる。核剤の市場は、プラスチックおよびポリマー製造産業に大きく依存している。核剤は、強度を高めるため、結晶化の速度を上げることでサイクル時間を減少させるため、およびプラスチックおよび他のポリマーの清澄化を向上させるために広く採用されている。核剤は、プラスチックおよびポリマー製造産業と共に成長することが予想されている。包装産業の成長は、プラスチックおよびポリマーのグローバルな核剤市場を発展させる重要な要因と考えられている。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0218279号明細書は、特定の結晶核剤を含有するポリプロピレンベースの樹脂組成物に関する。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0236332号明細書は、a)溶融状態の熱可塑性配合物を提供するステップと、b)少なくとも1つの二環式化合物、少なくとも1つのモノ脂環式化合物、および少なくとも1つの有機塩からなる群から選ばれるステップ「a」の上記配合物内で実質的に可溶である少なくとも1つの化合物を同時にまたは別々のいずれかで導入するステップと、c)ステップ「b」における合成混合物を冷却して有核熱可塑性物を形成するステップとを備える。上記有核熱可塑性物は、その中にいかなる核剤も入っていない同じ熱可塑性物質のピーク結晶化温度を超過するピーク結晶化温度を呈する、熱可塑性配合物を有核化する方法を開示する。
【0005】
欧州特許第3049469号明細書は、熱可塑性ポリマー用の核剤、このような核剤を備える熱可塑性ポリマー組成物、このような熱可塑性ポリマー組成物からできた物品、およびこのような熱可塑性ポリマー組成物を作成および成型する方法に関する。
【0006】
米国特許第6235823号明細書は、結晶性ポリプロピレン樹脂とβ核剤とを備える結晶性ポリプロピレン樹脂組成物と、組成物を成形する工程を含み、結晶性ポリプロピレン樹脂成形体中のβ型結晶の割合を上昇させる方法と、を開示し、β核剤はジアミド化合物である。
【0007】
従って、任意のグレードのポリプロピレンに添加して必要な濃度を得ることができる核剤組成物としてジウレア化合物を使用する、ポリプロピレン核剤マスターバッチを提供することが必要となる。
【発明の概要】
【0008】
ポリプロピレン(PP)のマスターバッチを調製することが本発明の主要な目的である。
【0009】
本発明のさらなる目的は、核剤を使用するポリプロピレン(PP)のマスターバッチを製造することである。
【0010】
本発明の他の目的は、MDI‐アニリン/IPDI‐アニリン/HMDI‐アニリン(ジウレア化合物)を核剤として使用するポリプロピレン(PP)のマスターバッチを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様において、本発明は、1.5~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンを、2~60重量%の範囲の重量%を有する核剤と溶融混合させることによる核剤マスターバッチを調製する方法であって、前記核剤は、少なくとも1つのイソシアネートおよび少なくとも1つのアミンの反応生成物であり、前記重量%は、前記マスターバッチの総重量に基づいている方法を開示する。
【0012】
本発明の実施形態において、前記イソシアネートは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、および芳香族イソシアネートからなる群から選ばれる。
【0013】
本発明の実施形態において、前記イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)からなる群から選ばれるジイソシアネートである。
【0014】
本発明の実施形態において、前記アミンは、芳香族アミンであって、前記芳香族アミンは、アニリン、p‐アミノトルエン、o‐アミノトルエン、2,4‐ジアミノトルエン、2,6‐ジアミノトルエン、p‐フェニルアニリン、α‐アミノナフチレン、4,4’‐ジアミノビフェニル、p‐フェニレンジアミン、および4,4’‐メチレンビスアニリンからなる群から選ばれる。前記脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミンなど、脂環式アミンとしては、ヘキシルアミンなどが使用可能である。
【0015】
本発明の実施形態において、前記芳香族アミンは、アニリンである。
【0016】
本発明の実施形態において、前記アミンは、脂肪族アミンであり、前記脂肪族アミンは、メチルアミン、エチルアミン、などからなる群から選ばれる。
【0017】
本発明の実施形態において、前記アミンは、脂環式アミンであり、前記脂環式アミンは、ヘキシルアミンなどである。
【0018】
本発明の実施形態において、前記溶融混合は、150~300℃の範囲の温度で行われる。
【0019】
本発明の実施形態において、MDI‐アニリン/IPDI‐アニリン/HMDI‐アニリンの反応は、モキーフら[モキーフ、M・V(Mokeev, M.V.)、オスタニン、S・A(Ostanin, S.A.)、およびズエフ、V・V(Zuev, V.V.)、2020年、シクロヘキシルメタンまたはジフェニルメタンベースの尿素化合物とそれらのポリマー対応物における水素結合のNMR分光法による研究:電子的要因と幾何学的要因の相互作用(Hydrogen bonding in dicyclohexylmethane?or diphenylmethane based urea compounds and their polymer counterparts investigated by NMR spectroscopy: Interplay of electronic and geometrical factors)、ケミカルフィジックスレターズ(Chemical Physics Letters)、739/137047ページ]の方法論の通りに行われた。
【0020】
本発明の別の態様において、上記で開示された方法で得られた前記核剤マスターバッチを有する有核ポリプロピレンを開示する。
【0021】
本発明の他の一態様において、上記で開示された方法で得られた前記核剤マスターバッチを有する1.5g/10分~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有する前記ポリプロピレンを溶融混合することにより有核ポリプロピレンを調製する方法を開示する。
【0022】
本発明の実施形態において、前記ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体および/または任意の他のアルケンもしくはアクリレートもしくはハロゲン化炭化水素を有するポリプロピレン共重合体である。
【0023】
本発明の実施形態において、前記核剤の濃度は、ポリプロピレン中で250~20000ppmにさらに希釈され、有核ポリプロピレンを生成する。
【0024】
本発明の実施形態において、ポリプロピレンおよび核剤で前記マスターバッチを調製するための前記溶融混合は、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、2本ロール機、またはその他の加工装置で行われる。
【0025】
本発明の実施形態において、結晶化温度は、前記濃度を250~1000ppmとすることで116℃~129℃に上昇させられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】A:iPP、B:実施例3、C:比較例1、D:実施例6、E:比較例2、F:実施例9、G:比較例3に対して得られた光学顕微鏡像を示す。
【
図2】ポリプロピレンと核剤とを混合してポリプロピレンマスターバッチを調製するプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の態様において、a)1.5~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンと、b)溶融ポリプロピレンを2~60重量%の範囲の重量%を有する核剤と混合させることと、を備える核剤マスターバッチを調製する方法であって、核剤は、少なくとも1つのイソシアネートおよび少なくとも1つのアミンの反応生成物であり、重量%は、ポリプロピレンの総重量に基づいている方法を開示する。
【0028】
本発明の特徴において、イソシアネートは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、および芳香族イソシアネートからなる群から選ばれる。
【0029】
本発明の実施形態において、イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)からなる群から選ばれるジイソシアネートである。
【0030】
本発明の特徴において、アミンは芳香族アミンであって、芳香族アミンは、アニリン、p‐アミノトルエン、o‐アミノトルエン、2,4‐ジアミノトルエン、2,6‐ジアミノトルエン、p‐フェニルアニリン、α‐アミノナフチレン、4,4’‐ジアミノビフェニル、p‐フェニレンジアミン、および4,4’‐メチレンビスアニリンからなる群から選ばれる。脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミンなど、脂環式アミンとしては、ヘキシルアミンなどが使用可能である。
【0031】
本発明の特徴において、芳香族アミンは、アニリンである。
【0032】
本発明の特徴において、アミンは、脂肪族アミンであり、脂肪族アミンは、メチルアミン、エチルアミンなどからなる群から選ばれる。
【0033】
本発明の特徴において、アミンは、脂環式アミンであり、脂環式アミンはヘキシルアミンなどである。
【0034】
本発明の特徴において、イソシアネートは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、および/または芳香族イソシアネートから選ばれ、好ましくは、ジイソシアネート、例えば、トリ‐、テトラ‐、ペンタ‐、ヘキサ‐、ヘプタ‐、および/またはオクタメチレンジイソシアネート、2‐メチルペンタメチレン1,5‐ジイソシアネート、2‐エチルブチレン1,4‐ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5‐ジイソシアネート、ブチレン1,4‐ジイソシアネート、1‐イソシアナト‐3,3,5‐トリメチル‐5‐イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4‐および/または1,3‐ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4‐ジイソシアネート、1‐メチルシクロヘキサン2,4‐および/または2,6‐ジイソシアネート、および/またはジシクロヘキシルメタン4,4’‐、2,4’‐および2,2’‐ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’‐、2,4’‐および/または4,4’‐ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5‐ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4‐および/または2,6‐ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’‐ジメチルビフェニルジイソシアネート、1,2‐ジフェニルエタンジイソシアネート、および/またはフェニレンジイソシアナートである。
【0035】
本発明の特徴において、MDI‐アニリン/IPDI‐アニリン/HMDI‐アニリンの反応は、モキーフら[モキーフ、M・V(Mokeev, M.V.)、オスタニン、S・A(Ostanin, S.A.)、およびズエフ、V・V(Zuev, V.V.)、2020年、ジシクロヘキシルメタンまたはジフェニルメタンベースの尿素化合物とそれらのポリマー対応物における水素結合のNMR分光法による研究:電子的要因と幾何学的要因の相互作用(Hydrogen bonding in dicyclohexylmethane?or diphenylmethane based urea compounds and their polymer counterparts investigated by NMR spectroscopy: Interplay of electronic and geometrical factors)、ケミカルフィジックスレターズ(Chemical Physics Letters)、739/137047ページ]の方法論の通りに行われた。
【0036】
本発明の特徴において、溶融混合は、150~300℃の範囲の温度で行われる。
【0037】
本発明の別の態様において、上記に開示された方法によって得られた核剤マスターバッチを有する有核ポリプロピレンを開示する。
【0038】
本発明の別の態様において、上記に開示された方法によって得られた核剤マスターバッチを有する1.5g/10分~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンを溶融混合することにより有核ポリプロピレンを調製する方法を開示する。
【0039】
本発明の別の態様において、1.5g/10分~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンと2重量%~60重量%の核剤を溶融混合することにより核剤マスターバッチを調製する方法を開示し、核剤は、少なくとも1つのイソシアネートおよび少なくとも1つのアミンの反応生成物であり、重量%は、マスターバッチの総重量に基づき、イソシアネートは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、および芳香族イソシアネートからなる群から選ばれ、使用されるジイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)であり、アミンは、芳香族アミンであり、芳香族アミンはアニリンからなる群から選ばれる。
【0040】
本発明の他の一態様において、1.5g/10分~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンと2重量%~60重量%の核剤を溶融混合することにより核剤マスターバッチを調製する方法を開示し、核剤は、少なくとも1つのイソシアネートおよび少なくとも1つのアミンの反応生成物であり、重量%は、マスターバッチの総重量に基づき、イソシアネートは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、および芳香族イソシアネートからなる群から選ばれ、使用されるジイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)であり、アミンは、芳香族アミンであり、芳香族アミンは、アニリンからなる群から選ばれ、溶融混合は、150~300℃の範囲の温度で行われる。
【0041】
核剤がポリプロピレン(PP)中に添加され、マスターバッチが調製される。上記のマスターバッチの利点は以下の通りである。
・調製されたマスターバッチは、任意のグレードのポリプロピレンに添加できる
・取り扱い中に吸引することがない
・取り扱いが容易である
・必要な濃度への希釈中にPP中での分散性がよりよい
【0042】
使用材料は次の通りである。12.5g/10分のMFIおよび0.9g/cm3の濃度を有するポリプロピレン単独重合体(iPP)。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、アニリン、トルエン、およびメタノールは、シグマアルドリッチより購入された。全ての化学物質は、さらなる調節や精製なく、得られたそのままで使用された。
【0043】
ポリマー加工処理は次の通りである。マスターバッチ調製方法論は次の通りである。iPPおよび調製された配合物の押し出しは、30mmのスクリュー径、48/1のL/Dを有し、8つの加熱ゾーンを備える共回転二軸押出機(ボーラニエンジニアリングコーポレーション、ムンバイ、インド)で行われた。まずPPが、高速のミキサーで5~20分間、核剤と予混合され、その後、ホッパーを通して押出機へと供給された。押出機における温度プロファイルはフィードゾーンからダイゾーンまで160~230℃に維持された。供給機スクリューと押出機スクリューの速度は、それぞれ10rpmと225rpmとに設定された。押出物は水槽(25℃に維持し、連続的に水を循環させた)を通過させて冷却され、続いてペレット化された。得られたペレットは、射出成形の前に約2~3時間、105℃で、恒温槽で乾燥された。上述のマスターバッチは、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、2本ロール機またはその他の加工装置を使用して調製されることもできる。
【0044】
核剤マスターバッチは、2重量%~60重量%の範囲の核剤濃度で調製されることもできる一方で、有核ポリプロピレンを調製するには、調製されたマスターバッチは250~20000ppmの濃度へと希釈されることができる。本開示では、マスターバッチ中の核剤の濃度は10重量%に維持された。
【0045】
マスターバッチの希釈およびサンプル調製は次の通りである。250~1000ppmの有核ポリプロピレンを調製するためのマスターバッチの希釈は、マスターバッチ調製方法論下における押出加工で述べられたものに類似の加工条件を使用して行われた。
【0046】
射出成形(アーブルグ、オールラウンダー410C、ドイツ)は、ホッパーから噴射ノズルまで190~230℃の温度プロファイルを維持することで行われた。噴射圧、パッキング圧、および冷却時間は、成形工程中、それぞれ、240バール、1000バール、および20秒間で一定に維持された。
【0047】
テストおよび特性化は次の通りである。メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM D1238の通りに決定された。引張特性[引張強度(TS)、降伏伸び(E@Y)]および曲げ特性[曲げ弾性率(FM)]は、それぞれ、ASTM D638およびD790に従って測定された。ノッチ付きアイゾッド衝撃(IM)テストは、ASTM D256の通りに行われた。ショアD硬さ(SD)は、ASTM D2240に従って決定された。示差走査熱量計(DSC)テストは、ASTM D3418の通りに行われた。結晶化度パーセントは、ブジョゾウスカ‐スタヌクら(ブジョゾウスカ‐スタヌク、A(Brzozowska‐Stanuch, A)、ラビエイ、S(Rabiej, S.)、ファビア、J(Fabia, J)、およびノヴァク、J(Nowak, J.)、2014年、エイジング過程での添加剤が異なるアイソタクチックポリプロピレンの熱的性質の変化(Changes in thermal properties of isotactic polypropylene with different additives during aging process)、ポリメリー(Polimery)、59(4)、302~307ページ)によって提供された方法の通りにDSCを使用して決定された。調製された有核サンプルの収縮率(SR)および無核サンプルの収縮率(SR)は、ASM D955に従って決定された。調製された組成物の熱たわみ温度(HDT)およびビカット軟化温度(VSP)は、それぞれ、ASTM D648(方法A)およびD1525(方法A)の通りに決定された。
【0048】
調製されたポリプロピレン組成物のスフェルライト形態が、自動ホットステージ熱制御の付いたライカDMLP(リンカムサイエンティフィックインストルメンツ、イギリス)偏光顕微鏡で、約0.1mmの薄膜上で観察された。サンプルは、2つの顕微鏡カバーガラスの間に挟まれ、5分間、230℃で溶融されて、熱履歴が消され、その後、10℃/分の比率で室温へと冷却された。
【0049】
表1は、実施例1~9および比較例1~3で調製された組成物を詳述する。調製された実施例に対する得られた特性は表2~4に記載している。
【0050】
表1:調製組成物:実施例1~9および比較例1~3
【表1】
核剤濃度(NA濃度):MDI‐MB/IPDI‐MB/HMDI‐MB/MDI‐アニリン、IPDI‐アニリン、HMDI‐アニリンを添加してのポリプロピレン中の核剤の最終的な濃度
*1:iPP中に1000ppmの核剤(MDI‐アニリン)の直接添加
*2:iPP中に1000ppmの核剤(IPDI‐アニリン)の直接添加
*3:iPP中に1000ppmの核剤(HMDI‐アニリン)の直接添加
【0051】
表2:実施例1~9および比較例1~3に対して得られた機械特性
【表2】
【0052】
表3:実施例1~9および比較例1~3に対して得られたDSC解析データ
【表3】
【0053】
表4:実施例1~9および比較例1~3に対して得られた熱的性質
【表4】
【実施例0054】
実施例1は次の通りである。実施例1は、1000gのiPP中に2.5g(0.25phr)のMDI‐MB(MB:マスターバッチ、MDI‐アニリンの濃度は10重量%に維持された)を添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、250ppmとされた。
【0055】
実施例2は次の通りである。実施例2は、1000gのiPP中に5g(0.50phr)のMDI‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、500ppmとされた。
【0056】
実施例3は次の通りである。実施例3は、1000gのiPP中に10g(1.00phr)のMDI‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、1000ppmとされた。
【0057】
比較例1は次の通りである。比較例1は、1000gのiPP中に1.0g(1000ppm)のMDI‐アニリンを直接添加することで調製された。
【0058】
実施例4は次の通りである。実施例4は、1000gのiPP中に2.5g(0.25phr)のIPDI‐MB(MB:マスターバッチ、IPDI‐アニリンの濃度は10重量%に維持された)を添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、250ppmとされた。
【0059】
実施例5は次の通りである。実施例5は、1000gのiPP中に5g(0.50phr)のIPDI‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、500ppmとされた。
【0060】
実施例6は次の通りである。実施例6は、1000gのiPP中に10g(1.00phr)のIPDI‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、1000ppmとされた。
【0061】
比較例2は次の通りである。比較例2は、1000gのiPP中に1.0g(1000ppm)のIPDI‐アニリンを直接添加することで調製された。
【0062】
実施例7は次の通りである。実施例7は、1000gのiPP中に2.5g(0.25phr)のHMDI‐MB(MB:マスターバッチ、HMDI‐アニリンの濃度は10重量%に維持された)を添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、250ppmとされた。
【0063】
実施例8は次の通りである。実施例8は、1000gのiPP中に5g(0.50phr)のHMDI‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、500ppmとされた。
【0064】
実施例9は次の通りである。実施例9は、1000gのiPP中に10g(1.00phr)のHMDI‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、1000ppmとされた。
【0065】
比較例3は次の通りである。比較例3は、1000gのiPP中に1.0g(1000ppm)のHMDI‐アニリンを直接添加することで調製された。