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特開2023-153042高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法
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  • 特開-高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法 図1
  • 特開-高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法 図2
  • 特開-高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法 図3
  • 特開-高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法 図4
  • 特開-高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153042
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】高圧および低圧ガス消費装置用のガス供給システム、およびこのようなシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20231005BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023055888
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2202941
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】セルマ、ムサウイ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール、アウン
(72)【発明者】
【氏名】ロマン、ナルメ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB20
3E172BA06
3E172EA03
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA22
3E172EA23
3E172EB02
3E172EB03
3E172EB08
3E172EB10
3E172EB15
3E172EB20
3E172GA17
3E172GA21
3E172HA04
3E172HA05
3E172JA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】船内に含まれる消費装置用のガス供給システム、ならびにこのようなシステムを制御するための方法を提供する。
【解決手段】タンク(8)を備える浮遊構造体の高圧ガス消費装置(4)および低圧ガス消費装置(5)にガスを供給するためのシステム(1)に関し、前記供給システムは、第1供給回路(2)と、第2供給回路(3)と、戻りライン(14)と、第1熱交換器(6)および第2熱交換器(7)と、を備え、前記戻りラインは流量調整部材(15)を備える供給システムにおいて、前記供給システムは、前記ガスの前記特性に基づいて前記流量調整部材を制御するように構成された制御モジュール(86)を備える、前記供給システムを管理するための装置(80)を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを、前記ガスを収容するように構成された少なくとも1つのタンク(8)を備える浮遊構造体(20)の少なくとも1つの高圧ガス消費装置(4)および少なくとも1つの低圧ガス消費装置(5)に供給するためのシステム(1)であって、前記供給システム(1)は、
-ガスを前記高圧ガス消費装置(4)に供給する少なくとも1つの第1回路(2)と、
-前記第1ガス供給回路(2)を流れる前記ガスを蒸発させるように構成された少なくとも1つの高圧エバポレータ(11)と、
-ガスを前記低圧ガス消費装置(5)に供給する少なくとも1つの第2回路(3)であって、前記タンク(8)に蒸気状態で入ったガスを、前記低圧ガス消費装置(5)の前記要件に適合する圧力まで圧縮するように構成された少なくとも1つのコンプレッサ(13)を備える第2回路(3)と、
-前記第2供給回路(3)に前記コンプレッサ(13)の下流において接続するとともに前記タンク(8)まで延びる少なくとも1つのガス戻りライン(14)と、
-前記戻りライン(14)を蒸気状態で流れる前記ガスと前記第1供給回路(2)を液体状態で流れる前記ガスとの間で熱を交換するように各々構成された少なくとも1つの第1熱交換器(6)および少なくとも1つの第2熱交換器(7)と、
を備え、
前記第1供給回路(2)は、前記第1熱交換器(6)と前記第2熱交換器(7)との間に配置されたポンプ(10)を備え、
前記戻りライン(14)は、前記第1熱交換器(6)と前記タンク(8)との間に配置された流量調整部材(15)を備える供給システム(1)において、
前記供給システム(1)は、前記供給システム(1)を管理するための装置(80)を備え、
前記装置(80)は、前記第1供給回路(2)において前記第1熱交換器(6)と前記ポンプ(10)との間に存在する前記ガスの温度および圧力を特定するようにそれぞれ構成された少なくとも1つの第1センサ(81)および第1検出器(84)と、前記第1供給回路(2)において前記タンク(8)と前記第1熱交換器(6)との間に存在する前記ガスの温度を特定するように構成された第2センサ(82)と、前記戻りライン(14)において前記第1熱交換器(6)と前記流量調整部材(15)との間に存在する前記ガスの温度を特定するように構成された第3センサ(83)と、を備え、
前記管理装置(80)は、前記第1センサ(81)、前記第2センサ(82)、前記第3センサ(83)、および前記第1検出器(84)が特定した前記ガスの前記特性に応じて、前記流量調整部材(15)を制御するように構成された制御モジュール(86)を備える、
ことを特徴とする供給システム(1)。
【請求項2】
前記タンク(8)に収容された液体状態の前記ガスの前記組成を特定するように構成された流体分析器(87)を備える、
請求項1に記載の供給システム(1)。
【請求項3】
前記管理装置(80)は、前記タンク(8)に存在する前記ガスの圧力を特定するように構成された第2検出器(85)を備え、
前記制御モジュール(86)は、前記第2検出器(85)が特定した前記ガスの前記圧力に応じて、前記流量調整部材(15)を制御するように構成される、
請求項1または2に記載の供給システム(1)。
【請求項4】
前記戻りライン(14)は、前記戻りライン(14)を流れる蒸気状態の前記ガスの前記流量を特定するように構成された流量計(88)を備え、
前記制御モジュール(86)は、前記流量計(88)が特定した前記ガス流量に応じて、前記流量調整部材(15)を制御するように構成される、
請求項1~3のいずれかに記載の供給システム(1)。
【請求項5】
前記第1供給回路(2)は、前記タンク(8)において液体状態から取り出された前記ガスを圧送するように構成された少なくとも1つの圧送部材(9)を備える、
請求項1~4のいずれかに記載の供給システム(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の供給システム(1)を制御するための方法(100)であって、
-前記第1供給回路(2)において前記第1熱交換器(6)と前記ポンプ(10)との間に存在する前記ガスの前記温度と、前記第1供給回路(2)において前記第1熱交換器(6)と前記ポンプ(10)との間に存在する前記ガスの前記圧力、前記供給システム(1)を流れる前記ガスの組成、および安全マージンの関数として特定される最大温度閾値(Tmax)と、を比較するステップ(101)を備え、
-前記第1供給回路(2)において前記第1熱交換器(6)と前記ポンプ(10)との間に存在する前記ガスの前記温度が前記最大温度閾値(Tmax)よりも高い場合、前記流量調整部材(15)の通過断面を縮小し、
-前記第1供給回路(2)において前記第1熱交換器(6)と前記ポンプ(10)との間に存在する前記ガスの前記温度が前記最大温度閾値(Tmax)よりも低い場合、対比ステップ(102)が、前記戻りライン(14)において前記第1熱交換器(6)と前記流量調整部材(15)との間に存在する前記ガスの前記温度と、前記第1供給回路において前記タンク(8)と前記第1熱交換器(6)との間に存在する前記ガス(2)の前記温度および温度差に応じて特定される最適温度閾値(Topt)と、の間で実施され、
-前記戻りライン(14)において前記第1熱交換器(6)と前記流量調整部材(15)との間に存在する前記ガスの前記温度が前記最適温度閾値(Topt)よりも高い場合、前記流量調整部材(15)の前記通過断面を縮小し、
-前記戻りライン(14)において前記第1熱交換器(6)と前記流量調整部材(15)との間に存在する前記ガスの前記温度が前記最適温度閾値(Topt)よりも低い場合、前記流量調整部材(15)の前記通過断面を拡大する、
制御方法(100)。
【請求項7】
経時的に繰り返され得る請求項6に記載の制御方法(100)。
【請求項8】
前記ガスの前記組成は、前記流体分析器(87)により特定される、
請求項2と組み合わせた請求項6または7に記載の制御方法(100)。
【請求項9】
前記ガスの前記組成は、技術資料により特定される、
請求項6または7に記載の制御方法(100)。
【請求項10】
前記最大温度閾値は、数種類のガスについてのデータ表(106)により特定される、
請求項6または7に記載の制御方法(100)。
【請求項11】
前記安全マージンおよび前記温度差は、1°C~3°Cの値に対応する、
請求項6~10のいずれかに記載の制御方法(100)。
【請求項12】
前記第2検出器(85)が特定した前記ガスの前記圧力は、圧力閾値(Pref)と比較される、
請求項3と組み合わせた請求項6~11のいずれかに記載の制御方法(100)。
【請求項13】
前記第2検出器(85)が特定した前記ガスの前記圧力が前記圧力閾値(Pref)よりも低い場合に、前記戻りライン(14)内の前記ガス流を中断するステップ(110)を備える、
請求項12に記載の制御方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状態のガスの貯蔵および/または輸送船の分野に関し、より具体的には、このような船内に含まれる消費装置用のガス供給システム、ならびにこのようなシステムを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費される、および/または目的地に配達されることが意図された液体状態のガスのタンクを備える船による旅程中に、前記船は、そのエンジンの少なくとも1つへの供給のために、ガス供給システムを介して液体状態の前記ガスの少なくとも一部を使用可能であり得る。これは、ME-GIタイプの高圧推進エンジンを有する船の事例である。このタイプのエンジンへの供給のためには、ガスを300バールの絶対圧まで圧縮できる特別なコンプレッサにより、ガスを非常に高圧に圧縮する必要がある。しかしながら、このようなコンプレッサは高価であり、相当なメンテナンスコストがかかるとともに、船に振動を誘発する。
【0003】
このような高圧コンプレッサの設置に対する代替手段は、ガスを推進エンジンに送る前に、液体状のガスを特に高圧ポンプを使用して300バールの絶対圧で気化させることである。このような解決策では、少なくとも部分的に積み荷を収容するタンク内で自然的に形成される蒸気状のガス(またはBOG(Boil-Off Gas、ボイルオフガスの略))を除去することができない。低圧コンプレッサを、低圧の蒸気状のガスを消費できる補助エンジンへの供給のために設置することができる。余剰のボイルオフガスは、高圧ガス消費装置に供給される液体状態のガスにより再凝縮されることにより、タンクに流れ得る。
【0004】
しかしながら、このタイプのシステムは、その内部での作業に制約がある。したがって、高圧ポンプは、液体状態のガスしか圧送できないため、ガスが蒸気状態になった場合に破損することがある。このため、液体状態のガスが、蒸気状態のガスとの熱交換中に蒸発しないように注意しなければならない。しかしながら、後者は、システムの有効性を保証するために再凝縮させる必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、このような問題を、
ガスを収容するように構成された少なくとも1つのタンクを備える浮遊構造体の少なくとも1つの高圧ガス消費装置および少なくとも1つの低圧ガス消費装置のためのシステムであって、前記供給システムは、
-ガスを前記高圧ガス消費装置に供給する少なくとも1つの第1回路と、
-前記第1ガス供給回路を流れる前記ガスを蒸発させるように構成された少なくとも1つの高圧エバポレータと、
-ガスを前記低圧ガス消費装置に供給する少なくとも1つの第2回路であって、前記タンクに蒸気状態で入ったガスを、前記低圧ガス消費装置の前記要件に適合する圧力まで圧縮するように構成された少なくとも1つのコンプレッサを備える第2回路と、
-前記第2供給回路に前記コンプレッサの下流において接続するとともに前記タンクまで延びる少なくとも1つのガス戻りラインと、
-前記戻りラインを蒸気状態で流れる前記ガスと前記第1供給回路を液体状態で流れる前記ガスとの間で熱を交換するように各々構成された少なくとも1つの第1熱交換器および少なくとも1つの第2熱交換器と、
を備え、
前記第1供給回路は、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に配置されたポンプを備え、
前記戻りラインは、前記第1熱交換器と前記タンクとの間に配置された流量調整部材を備える供給システムにおいて、
前記供給システムは、前記供給システムを管理するための装置を備え、
前記装置は、前記第1供給回路において前記第1熱交換器と前記ポンプとの間に存在する前記ガスの温度および圧力を特定するようにそれぞれ構成された少なくとも1つの第1センサおよび第1検出器と、前記第1供給回路において前記タンクと前記第1熱交換器との間に存在する前記ガスの温度を特定するように構成された第2センサと、前記戻りラインにおいて前記第1熱交換器と前記流量調整部材との間に存在する前記ガスの温度を特定するように構成された第3センサと、を備え、
前記管理装置は、前記第1センサ、前記第2センサ、前記第3センサ、および前記第1検出器が特定した前記ガスの前記特性に応じて、前記流量調整部材を制御するように構成された制御モジュールを備える、
ことを特徴とする供給システムを提案することで解決することを目的とする。
【0006】
したがって、この管理装置の存在により、第1供給回路を流れる液体状態のガスの尚早な蒸発を回避しつつ、戻りラインを流れる蒸気状態のガスの凝縮を最大化すべく供給システムの異なる部分を流れるガスを調整することができる。ガスの温度および/または圧力は、このように供給システムの異なる箇所で特定または測定されるため、どの時点で調整部材に作用することが可能かを特定することができ、これにより前記供給システムの性能を向上させることができる。
【0007】
第1ガス供給回路により、高圧ガス消費装置の燃料ニーズを満たすことができる。ガスを高圧ガス消費に供給する第1回路により、第1供給回路がガスを高圧ガス消費装置に供給するように構成されていることが理解される。前記装置は、例えば、浮遊構造体を推進するための手段、例えば、ME-GIエンジンであり得る。第1供給回路は、タンクから高圧ガス消費装置まで延びる。
【0008】
高圧ガス消費装置に供給され得るためには、ガスは蒸気状態でなくてはならないため、高圧エバポレータは、ガスが高圧ガス消費装置に供給される前にこれを確実にボイルオフ(気体化)させる。高圧エバポレータは、第1供給回路を流れる液体状態のガスと、例えばグリコール水、海水、水蒸気等の伝熱流体とが熱交換をする場所である。この伝熱流体は、その形状がどのようなものであれ、ガスの状態を変化させてガスが蒸気状態または超臨界状態になって高圧ガス消費装置に供給するように、十分な高温を有する必要がある。
【0009】
好適には、第2熱交換器と高圧エバポレータとが、単一の熱交換器を形成する。このような構成は、例えば、供給システムの機械的嵩を低減するために有利であり得る。単一の熱交換器を通過する液体状態のガスは、その熱量を、戻りラインを流れる蒸気状態のガスと交換するとともに、同時に、またはその後に蒸発する。
【0010】
代替的に、第2熱交換器と高圧エバポレータとは、2つの互いに別個の熱交換器であり得る。
【0011】
ポンプは、第1熱交換器と第2熱交換器との間に配置される。第1供給回路を流れる液体状態のガスの圧力を増加させて、ガスが高圧ガス消費装置への供給に適した圧力を有することを可能にするのはポンプである。最適な構成は、ポンプを2つの熱交換器の間に配置することである。したがって、第1供給回路を流れて第1熱交換器を通過するガスが、その出口において確実に液体状態のままであることが不可欠である。
【0012】
一般に、タンクに収容されたガスは、自然に、または浮遊構造体により強制的に、蒸気状態になり得る。タンク内で蒸気状態に変化したガスは、タンク内での過圧の発生を回避すべく排出しなければならない。
【0013】
このような機能は、低圧ガス消費装置の第2ガス供給回路により提供される。このような第2供給回路は、タンクから低圧ガス消費装置まで延びる。ガスを低圧ガス消費に供給する第2回路という表現は、第2供給回路が、ガスを低圧ガス消費装置に供給するように構成されていることを意味するものと理解される。前記装置は、例えば、発電機等の補助モータであり得る。第2供給回路に設置されたコンプレッサは、タンクスペースに存在するガスを引き込む責を負う。これは、ガス消費装置へ低圧で動力を供給できるようにするだけでなく、タンク内の圧力を調整できるようにすることの両方を目的としている。
【0014】
コンプレッサの出口において、蒸気状態のガスは、低圧ガス消費装置に供給され得る、または、低圧ガス消費装置が燃料の摂取を必要としていない、またはほとんどない場合には、戻りラインを流れ得る。戻りラインはコンプレッサの下流に接続しているため、コンプレッサにより引き込まれた蒸気状態のガスは、これを流れることができる。
【0015】
戻りラインを流れる蒸気状態のガスは、タンクに戻る前に、最初に第2熱交換器を、次いで第1熱交換器を通過する。この構成によれば、第1供給回路を流れる液体状態のガスと戻りラインを流れる蒸気状態のガスとの間で生じる熱量交換により、蒸気状態のガスの温度は、2つの熱交換器を通過することにより、第1熱交換器の実質的に下流で前記ガスが凝縮して液体状態に戻るまで低下する。こうして、ガスは凝縮する、すなわち液体状態になり、そしてタンクへ流れる。
【0016】
戻りラインは、第1熱交換器の下流に配置された流量調整部材を備える。流量調整部材は、戻りラインを流れるガスの流量を制御するように、部分的または完全に開閉可能である。流量は、蒸気状態の最大量のガスが再び凝縮するように制御される。しかしながら、これは、第1熱交換器で実施される熱交換中に第1供給回路を流れる液体状態のガスが蒸発してポンプにキャビテーションが発生し得ることを避けるように制限される。
【0017】
供給システムの管理装置により、特に前記供給システム内においてその種々の箇所で種々のセンサおよび検出器によりなされる測定に応じて、流量調整部材を制御することができる。定義によれば、センサはガスの温度を特定するように構成され、検出器はガスの圧力を特定するように構成される。
【0018】
第1センサは、第1供給回路において第1熱交換器の出口でのガスの温度を特定または測定するように配置される。この温度を制御することは、第1熱交換器内で生じる熱交換により第1供給回路を流れるガス温度が上昇した状態でも、第1熱交換器の出口においてガスが液体状態に維持されているかどうかを特定することに寄与する。また、温度はポンプの上流でも特定される。これは、例えば、第1熱交換器の出口とポンプの入口との間に位置する箇所において、第1センサをガスに浸すことによる。
【0019】
第1検出器は、第1供給回路において第1熱交換器とポンプとの間で同様に流れるガスの圧力を特定する。ガスのボイルオフ温度はその圧力に応じて変化するため、圧力の特定は同様に重要である。
【0020】
第2センサは、第1供給回路を流れるガスの温度を特定するように同様に配置されるが、第1センサと異なり、第1熱交換器の上流に配置される。第3センサは、戻りラインにおいて、第1熱交換器の上流かつ流量調整部材の下流でのガスの温度を特定するように配置される。
【0021】
センサおよび検出器からのデータは、すべて制御モジュールに送信される。受信したデータに応じて、制御モジュールは、第1供給回路を流れて第1熱交換器を通過する液体状態のガスのボイルオフを生じさせることなく、調整部材を制御して戻りラインを流れる凝縮ガスの量を最大化することができる。
【0022】
本発明の特徴によれば、供給システムは、前記タンクに収容された液体状態の前記ガスの前記組成を特定するように構成された流体分析器を備える。上述のタンクには、液体状態の数種類のガスが輸送および/または貯蔵され得る。これらのガスは、すべてそれぞれの組成に応じた、例えばガスを構成する異なる種類および割合の炭化水素、および積み荷の輸送中の変化に応じた、異なるボイルオフ温度を有している。したがって、本発明の供給システムを最適に制御するためには、積み荷としてのガスの組成、ひいてはそのボイルオフ温度を把握することが重要である。
【0023】
流体分析器は、液体状態であるときのガスの組成を特定することができる。液体状態のガスを強制的に気化させて、流体分析器がガスの組成を特定することもできる。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、前記管理装置は、前記タンクに存在する前記ガスの圧力を特定するように構成された第2検出器を備え、前記制御モジュールは、前記第2検出器が特定した前記ガスの前記圧力に応じて、前記流量調整部材を制御するように構成される。この第2検出器は、第2供給回路を流れるガスの圧力を特定する。この圧力は、タンクスペース内のガスの圧力と同一である。換言すれば、第2検出器は、タンクの内圧を監視するのに役立つ。このような監視は、タンク内の圧力が低すぎてタンクの膜が変形したり損傷したりし得ることを回避するために重要である。
【0025】
本発明の1つの特徴によれば、前記戻りラインは、前記戻りラインを流れる蒸気状態の前記ガスの前記流量を特定するように構成された流量計を備え、前記制御モジュールは、前記流量計が特定した前記ガス流量に応じて、前記流量調整部材を制御するように構成される。流量計は、戻りラインを流れるガスの流量を制限するように、オペレータにより制御され得る。本例において、流量調整部材は、オペレータにより流量計および制御モジュールを介して制御される。後者は、流量計と流量調整部材との接続を保証する。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1供給回路は、前記タンクにおいて液体状態から取り出された前記ガスを圧送するように構成された少なくとも1つの圧送部材を備える。別途圧送部材としても知られるポンプは、タンクの底部に設置されて、液体状態のガスが圧送されて第1供給回路を流れることができることを保証する。圧送部材は、有利には、液体状態のガスを汲み上げて第1供給回路内を流すようにタンクの底部に配置された液中ポンプである。液体状態のガスが液中ポンプにより圧送されると、その絶対圧力は6~17バールの値に上昇する。
【0027】
また、本発明は、上述の供給システムを制御するための方法であって、
-前記第1供給回路において前記第1熱交換器と前記ポンプとの間に存在する前記ガスの前記温度と、前記第1供給回路において前記第1熱交換器と前記ポンプとの間に存在する前記ガスの前記圧力、前記供給システムを流れる前記ガスの組成、および安全マージンの関数として特定される最大温度閾値と、を比較するステップを備え、
-前記第1供給回路において前記第1熱交換器と前記ポンプとの間に存在する前記ガスの前記温度が前記最大温度閾値よりも高い場合、前記流量調整部材の通過断面を縮小し、
-前記第1供給回路において前記第1熱交換器と前記ポンプとの間に存在する前記ガスの前記温度が前記最大温度閾値よりも低い場合、対比ステップが、前記戻りラインにおいて前記第1熱交換器と前記流量調整部材との間に存在する前記ガスの前記温度と、前記第1供給回路において前記タンクと前記第1熱交換器との間に存在する前記ガスの前記温度および温度差に応じて特定される最適温度閾値との間で実施され、
-前記戻りラインにおいて前記第1熱交換器と前記流量調整部材との間に存在する前記ガスの前記温度が前記最適温度閾値よりも高い場合、前記流量調整部材の前記通過断面を縮小し、
-前記戻りラインにおいて前記第1熱交換器と前記流量調整部材との間に存在する前記ガスの前記温度が前記最適温度閾値よりも低い場合、前記流量調整部材の前記通過断面を拡大する、
制御方法に関する。
【0028】
この制御方法により、ポンプの良好な作動を害することなく、蒸気状態のガスの凝縮を最適化するように供給システムの調整が実施される。
【0029】
比較ステップにより、第1供給回路を流れるガスの温度が、第1熱交換器の出口において高くなり過ぎないことが保証され得る。この目的のために、前記ガスの温度を第1センサで特定する。この段階において、第1熱交換器の出口におけるガスの温度がこうして把握される。
【0030】
同時に、またはその後に、最大温度閾値が特定される。この目的は、第1センサにより上昇したガスの温度を、この最大温度閾値未満に維持することである。この閾値は、第1検出器が特定したガスの圧力、および何らかの方法で把握されるガスの組成から計算される。そして、安全マージンが、得られた結果から差し引かれる。この安全マージンにより、例えば、当該最大温度閾値をわずかに超えた場合であっても、ガスがボイルオフしないことが保証され得る。このような安全マージンは、ポンプの正味吸引高さおよび特定された安全閾値に依存する。正味吸引高さは、監視すべきデータのひとつである。この目的は、ポンプの入口での液体状態のガスの吸引により液体状態の前記ガスが気化することで、ポンプ内にキャビテーションが発生し得ることを防止することである。正味吸引高さは、使用されるポンプモデルに依存する。安全閾値は、オペレータが特定でき、目的の達成を保証すべくさらなる保全レベルを形成する。
【0031】
最大温度閾値および第1センサが記録した温度が得られたら、比較ステップにおいて、これら2つの値が互いに比較される。
【0032】
第1センサが記録した温度が最大温度閾値よりも高い場合、これは、第1供給回路を流れるガスが、第1熱交換器から過度に高い温度で流出することを意味する。そして、一部が蒸発するおそれがあり、第1熱交換器から流出するガスの蒸気部分によりポンプの動作が害され得る。
【0033】
第1供給回路において第1熱交換器の出口での温度が過度に高いということは、第1熱交換機内における過剰な熱交換と同義である。戻りラインを流れる蒸気状態のガスの流量を制限することにより、この熱交換のレベルを低減することができる。そして、制御モジュールは、戻りライン内を流れる蒸気状態のガスの流量を低減するように、流量調整部材を制御する。
【0034】
この流量の低減により、第1熱交換器でなされる熱の交換は少なくなり、第1供給回路を流れるガスは、第1熱交換器からより低い温度で流出するため、液体状態に維持される。
【0035】
第1センサが特定するガスの温度が最大温度閾値よりも低い場合、本方法は対比ステップに続く。この段階において、時点tにおける供給システムの条件下で、第1熱交換器の出口において液体状態のガスが蒸発するおそれはないことが保証される。したがって、供給システムにより凝縮されるガスの量を最大化するように、戻りラインを流れる蒸気状態のガスの流量を潜在的に増加させることが可能である。
【0036】
この目的のために、対比ステップは、最初に戻りラインにおいて第1熱交換器と流量調整部材との間に存在するガスの温度を第3センサを介して特定するステップと、これと同時に、またはその後に、最適温度閾値を特定するステップと、からなる。
【0037】
最適温度閾値は、第2センサが特定した温度、すなわち、第1供給回路内を流れるガスの温度であって、タンクと第1熱交換器との間で、好適には第1熱交換器の入口で測定された温度に温度差が加算された温度に対応する。温度差は、例えば、第1熱交換器のピンチングに対応する。こうして、第3センサが特定したガスの温度は、最適温度閾値と比較される。
【0038】
ここでの目的は、供給システムが実施する凝縮の効率を最大化することである。この最大化は、第3センサが特定する温度を最適温度閾値に収束させることにより可能となる。したがって、第3センサが特定する温度が最適温度閾値よりも低い場合、これは、戻りラインを流れる蒸気状態のガスをより多量に凝縮できるということを意味する。こうして、制御モジュールは、第3センサが特定するガスの温度が最適温度閾値に収束するまで、戻りラインを流れるガスの量を増大させるように流量調整部材の通過断面を拡大する。
【0039】
第3センサが特定する温度が最適温度閾値よりも高い場合、これは、戻りラインに存在する蒸気状態のガスの凝縮が最適ではないということを意味する。そして、制御モジュールは、第3センサが特定するガスの温度が最適温度閾値に収束するまで、戻りラインを流れるガスの量を減少させるように流量調整部材の通過断面を縮小する。最適温度閾値は測定された温度に依存するため、この閾値は供給システムの使用条件に応じて変化する。
【0040】
上述のように、対比ステップは比較ステップの後に続く。しかしながら、制御方法は、比較ステップと対比ステップとを同時に実施することも可能である。流量調整部材の通過断面の潜在的な調節は、優先ステップに応じて、すなわち、比較テップに応じて、または、比較ステップにおいて流量調整部材の通過断面を縮小する必要がないと特定された場合には対比ステップに応じて、実施される。
【0041】
本方法の1つの特徴によれば、本方法は、経時的に繰り返され得る。本方法は、ステップが連続している場合には比較ステップから、または比較ステップおよび対比ステップが同時に実施される場合にはそれらのステップから、繰り返すことができる。本方法は、比較ステップまたは対比ステップによる調整部材の通過断面の制御が実施された後、繰り返され得る。
【0042】
本方法の1つの特徴によれば、前記ガスの前記組成は、前記流体分析器により特定され得る。ガスの組成の特定は、少なくとも制御方法の比較のステップが実施されているときに利用可能であり、最大温度閾値を規定することを可能とする。上述の流体分析器は、ガスの組成を得るための解決策をなし、この分析は、積み荷の搬入時、またはその後、すなわち、浮遊構造体の移動中に実施され得る。
【0043】
本方法の1つの特徴によれば、前記ガスの前記組成は、技術資料により特定され得る。これは、例えば供給システムがこのような流体分析器を備えていない場合に、流体分析器を介して特定することに対する代替的な解決策である。技術資料は、積み荷とともに提供され、積み荷としてのガスのボイルオフ温度等の積み荷に関する複数の特徴を含んでいる。この技術資料は、例えば、ボイルオフ温度と積み荷に含まれるガスの特定の圧力とを対応させるチャートである。
【0044】
本方法の1つの特徴によれば、前記最大温度閾値は、数種類のガスについてのデータ表により特定され得る。ガス分析器や技術資料がない場合、データ表に頼ることができる。このような表は、船により輸送および/または貯蔵される、現在までに知られる天然ガスのほとんどの種類について、圧力の関数としてのボイルオフ温度を有する。したがって、第1検出器が特定する圧力を上昇させることにより、安全マージンを考慮しつつ、特定された圧力における種々の種類のガスのうち最低のボイルオフ温度が使用されて最大温度閾値が設定される。このようなデータ表は、手動で読み込むことができる、または、管理装置のメモリに入力して最大温度閾値の特定を自動化することができる。
【0045】
本方法の特徴によれば、前記安全マージンおよび前記温度差は、1°C~3°Cの値に対応する。これらは、供給システムの動作の最適化を害さないように、実際の温度限度値に比較的近く、かつ十分な値である。
【0046】
本方法の特徴によれば、前記第2検出器が特定した前記ガスの前記圧力は、圧力閾値と比較される。この特定は、上述のステップと並行してなされる。第2検出器により、第2供給回路を流れるガスの圧力、ひいてはタンクスペースで主流となる圧力を特定することができる。この特定により、タンクの内圧が過度に低くならないことが保証され得る。過度に低い内部タンク圧力は、膜の変形につながり得る。このため、タンクの内圧を圧力閾値を上回るように維持する必要がある。圧力閾値は、一定の固定値に対応し、この固定値未満では、タンクの内圧により前記タンクの膜の変形が生じ得ると想定される。例示として、圧力閾値は、外圧に対して-60ミリバールまたは-30ミリバールであり得る。
【0047】
本発明の1つの特徴によれば、本方法は、前記第2検出器が特定した前記ガスの前記圧力が前記圧力閾値よりも低い場合に、前記戻りライン内の前記ガス流を中断するステップを備える。第2供給回路および戻りライン内におけるガスの流れは、タンクのスペースにおける蒸気状態のガスを吸引した結果であり、タンクの内圧の低下をもたらす。したがって、タンクスペースの圧力が圧力閾値を下回る場合、タンクの膜が損傷するおそれがある。そこで、制御部材は、圧力低下を阻止すべく、流量調整部材を全閉とする。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、以下に続く説明、および添付の概略図面を参照して例示の目的で限定せずになされるいくつかの例示的な実施形態の両者から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明による供給システムの概略図である。
図2図2は、供給システムの本発明による制御方法のフローチャートである。
図3図3は、蒸気状態のガスの量を監視する制御方法の一部のフローチャートである。
図4図4は、制御方法の実施に使用できる数種類のガスのデータ表の例である。
図5図5は、浮遊構造体のタンク、およびこのタンクを搬入および/または搬出するためのターミナルの切欠概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の説明で用いられる「上流」および「下流」という用語は、液体状態または蒸気状態におけるガスの回路内での要素の位置を示すために使用され、前記回路内において前記ガスが流れる方向を指す。
【0051】
図1は、浮遊構造体に配置されたガス供給システム1を示す。この供給システム1により、液体状態、蒸気状態、二相状態、または超臨界状態にあり得るガスを、貯蔵タンクおよび/または輸送タンク8から、高圧ガス消費装置4および低圧ガス消費装置5に、これらへの燃料供給を目的として流すことができる。
【0052】
前記浮遊構造体は、例えば、液体状態のガス、特に天然ガスを貯蔵および/または輸送可能な船であり得る。本例において、供給システム1は、浮遊構造体が貯蔵および/または輸送する液体状態のガスを使用して、例えば推進エンジンであり得る高圧ガス消費装置4、および、例えば浮遊構造体に電気を供給する発電機であり得る低圧ガス消費装置5に供給することができる。
【0053】
タンク8に収容されたガスを高圧ガス消費装置4まで確実に流すように、供給システム1は、第1ガス供給回路2を有している。第1供給回路2は、タンク8内に配置された圧送部材9、有利には液中ポンプ9を備えている。液中ポンプ9により、液体状態のガスを圧送すること、そして特にこれを第1供給回路2内に流すことができる。液体状態のガスを汲み上げることにより、圧送部材9はその絶対圧力を6~17バールの値まで上昇させる。
【0054】
液体状態のガスは、タンク8から高圧ガス消費装置4へ流れる方向において、第1熱交換器6を通過し、ポンプ10により加圧される。その後、液体状態のガスは、第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とを組み合わせた単一の熱交換器21を通過する。ただし、第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とは、互いに別個であることも可能である。熱交換器に関する詳細は、以下に説明する。
【0055】
単一の熱交換器21により、高圧エバポレータ11を介して、第1供給回路2を流れるガスの状態を変更して、これを蒸気状態または超臨界状態に変化させることができる。このような状態により、ガスは、高圧ガス消費装置4への供給に適合することができる。液体状態のガスの蒸発は、例えば、液体状態のガスを蒸発させるのに十分に高い温度を有する伝熱流体、本例においてグリコール水、海水、または水蒸気との熱交換により実施され得る。
【0056】
ガス圧力の上昇は、ポンプ10が液体状態のガスを圧送する際に、ポンプ10により保証される。ポンプ10により、液体状態のガスの絶対圧力を、特にアンモニアまたは水素の使用では30~400バールの値まで、液化石油ガスの使用では、30~70バールの値まで、エタン、エチレン、あるいは主としてメタンからなる液化天然ガスの使用では、好適には150~400バールの値まで上昇させることができる。
【0057】
ポンプ10と単一の熱交換器21との組み合わせにより、ガスは、圧力を有するとともに、高圧消費装置4への供給に適合した状態になる。このような構成により、コスト制約条件を有するとともに強い振動を発生させる高圧コンプレッサを第1供給回路2に設置することが、回避され得る。
【0058】
タンク8内において、積み荷であるガスの一部が自然的に蒸気状態に変化し、タンクのスペース12に拡散する場合がある。タンク8内の過圧を回避するために、タンクスペース12に含まれる蒸気状態のガスを排出しなければならない。
【0059】
したがって、供給システム1は、蒸気状態のガスを使用して低圧ガス消費装置5に供給する第2ガス供給回路3を備えている。第2供給回路3は、タンクスペース12と低圧ガス消費装置5との間で延びている。タンクスペース12に含まれる蒸気状態のガスを吸引するように、第2供給回路3は、コンプレッサ13を備えている。コンプレッサ13は、蒸気状態のガスを引き込むだけでなく、第2供給回路3を流れる蒸気状態のガスを圧縮して、6~20バールの値の絶対圧力にすることができる。これにより、蒸気状態のガスは、低圧ガス消費装置5への供給に適合した圧力になる。したがって、第2供給回路3は、タンクスペース12に存在する蒸気状態のガスを吸引することによりタンク8内の圧力を調整しつつ、低圧ガス消費装置5への供給を可能とする。
【0060】
タンクスペース12内で過剰量の蒸気状態のガスが存在すると、タンク8内で過圧が生じる。したがって、タンク8内の圧力を低下させるように、蒸気状態のガスを排出する必要がある。蒸気状態の過剰なガスは、例えば、バーナー(燃焼器)18により排除され得る、または、図示しない態様で大気中に排出されて積み荷のロスを発生させ得る。しかしながら、本発明による供給システム1は、第2供給回路3からタンク8まで延びる戻りライン14を備えている。
【0061】
戻りライン14は、第2供給回路3を流れる蒸気状態のガスが流れる方向に対して、第2供給回路3にコンプレッサ13の下流で接続している。戻りライン14は、単一の熱交換器21を第1ステップにおいて通過する。このため、単一の熱交換器21は、液体状態のガスが第1供給回路2から流れる第1パス24と、蒸気状態のガスが戻りライン14から流れる第2パス28と、第1パス24を流れる液体状態のガスを蒸発させる伝熱流体が流れる第3パス29と、を備えている。
【0062】
単一の熱交換器21の第2パス28の出口において、蒸気状態のガスは、第1熱交換器6を通過するまで流れる。第1熱交換器6の入口は、第1供給回路2の液体状態のガスが最低温度を有する箇所である。したがって、戻りライン14を流れるガスが凝縮されるのは、第1熱交換器6を通過した後である。このため、戻りライン14からのガスは、第1熱交換器6の入口では蒸気状態であるが、第1熱交換器6内で実施される熱量交換の後に、液体状態において流出する。
【0063】
戻りライン14は、戻りライン14を流れる流体の流量を制御する流量調整部材15も備えている。この流量調整部材15は、変更可能な通過断面を有している。ガスは、凝縮された後、タンク8へと流れる。したがって、第1熱交換器6は、コンデンサとして機能する。一方で、流量調整部材15は、第1熱交換器6および単一の熱交換器21で実施される熱交換を制御する。
【0064】
供給システム1は、さらに補助供給ライン16を備えている。補助供給ライン16は、第1供給回路2から、圧送部材9と第1熱交換器6との間に配置されたコックを経由して、第2供給回路3まで延び、これにコンプレッサ13と低圧ガス消費装置5との間において接続している。補助供給ライン16により、タンクスペース12内で形成された蒸気状態のガスの流量が足りない場合に、低圧ガス消費装置5に電力を供給することができる。
【0065】
蒸気状態のガスがタンクスペース12において十分な量で存在していない場合、水中ポンプ9により圧送された液体ガスは、低圧ガス消費装置5への供給のためにこの補助供給ライン16内に流れ得る。この目的のために、補助供給ライン16は、低圧エバポレータ17を通過する。これにより、補助供給ライン16を流れる液体状態のガスは、蒸気状態になる。低圧エバポレータ17の動作は、例えば高圧エバポレータ11のものと同一であり得る。すなわち、ガスを、伝熱流体との熱交換により、液体状態のガスがボイルオフさせるのに十分に高い温度において蒸発させる。低圧エバポレータ17の出口において、蒸気状態のガスは、補助供給ライン16内を流れ、次いで、低圧ガス消費装置5への供給のために第2供給回路3に合流する。
【0066】
上記から、補助供給ライン16は、タンクスペース12内における蒸気状態のガスが十分でない場合のみ使用されることが理解される。したがって、補助供給ライン16は、その使用が必要ない場合に補助供給ライン16におけるガスの流れを抑制するバルブ19を備えている。
【0067】
ポンプ10は、有利には、第1熱交換器6と単一の熱交換器21との間に配置される。ポンプ10は、液体状態のガスを圧送することしかできない。その正しい動作を害さないためには、第1供給回路2を流れるガスを、第1熱交換器6の出口において液体状態に維持することが重要である。
【0068】
さらに、本発明による供給システム1の目的の1つは、タンクスペース12で形成され、低圧ガス消費装置5で消費されない蒸気状態の最大量のガスを、第1供給回路2を流れるガスが第1熱交換器6を通過する際にボイルオフすることなく、再凝縮させることである。
【0069】
この目的のために、供給システム1は、上述の種々のパラメータの制御を保証する管理装置80を備えている。管理装置80は、特に、第1センサ81と、第2センサ82と、第3センサ83と、第1検出器84と、第2検出器85と、を備えている。センサ81、82、83がガスの温度を特定し、検出器84、85がガスの圧力を特定することについて、以下で考察する。管理装置80は、センサ81、82、83ならびに検出器84、85が特定した種々のデータを受信する制御モジュール86も備えている。これらの前記データに応じて、制御モジュール86は、戻りライン14を流れるガスの流量を変化させるべく、流量調整部材15に作用することができる。
【0070】
第1センサ81は、第1供給回路2において、第1熱交換器6とポンプ10との間に配置される。第2センサ82は、第1供給回路2において、タンク8と第1熱交換器6との間に配置される。第3センサ83は、戻りライン14において、第1熱交換器6と流量調整部材15との間に配置される。センサ81、82、83の各々は、前記センサ81、82、83の各それぞれの位置において流れるガスの温度を特定するように構成されている。供給システム1のこれらの異なるセクションを流れるガスの温度は、流量調整部材15を制御するために使用される。これは、第1供給回路2において第1熱交換器6とポンプ10との間に配置された検出器84、および第2供給回路3においてタンク8とコンプレッサ13との間に配置された第2検出器85が特定する圧力についても同様である。
【0071】
管理装置80は、タンク8に収容された液体状態のガスの組成を特定することができる流体分析器87も備えていてもよい。流体分析器87は、液体状態のガスの組成を直接的に特定することができる、または、ガスの組成を特定するようにガスを気化させることを必要とする場合もある。ガス組成を把握することは、以下で詳細に説明するように、ガスのボイルオフ温度を特定するのに有利である。温度値および圧力値と同様に、流体分析器87が特定したガスの組成も、制御モジュール86に送信される。ただし、ガスの組成は、積み荷としてのガスに関する技術資料を通じて与えられ得る、または、以下に示すように、特性がデータ表に記載されたガスの種類に対応し得る。
【0072】
戻りライン14は、流量計88も備え得る。流量計は、戻りライン14を流れるガス流量を特定するように構成されている。有利には、ガス流量は、第2供給回路3との接続点と、単一の熱交換器21と、の間で特定される。流量計88は、流量調整部材15に作用することができる制御モジュール86にも接続している。このため、オペレータは、制御部材86が流量計88から情報を受信して、流量計88からのこの情報に応じて流量調整部材15に作用するように、流量計88に作用することができる。
【0073】
図2は、例えば上述の管理装置により実施される際の、本発明による制御方法100の種々のステップを説明することを可能とするフローチャートである。
【0074】
制御方法100は、第1センサ81によるガスの温度と最大温度閾値Tmaxとの比較ステップ101から開始する。第1センサ81が特定するガスの温度は、第1供給回路内を流れるガスの第1熱交換器の出口での温度に対応する。特に、これは、図1に示すように、第1センサ81を第1供給回路の一部を形成する第1熱交換器のパスの出口とポンプの入口との間の任意の位置に第1センサ81を配置することによる、現場測定であり得る。また、これは、システムの他のデータから作成される推定値または計算値であり得る。
【0075】
第1センサ81によるガスの温度の特定の前に、これと同時に、またはその後に、第1検出器が特定したガスの圧力、ガスの組成、および安全マージンから、最大温度閾値Tmaxが規定される。最大温度閾値Tmaxの特定時において使用されるガスの圧力は、第1供給回路を流れるガスの第1熱交換器の出口での圧力に対応する。
【0076】
第1センサ81と同様に、第1検出器は、圧力を現場で測定してもよいし、システムの他のデータから作成された推定値または計算値から得てもよい。
【0077】
ガスの圧力および組成が把握されれば、ガスのボイルオフ温度を求めることができる。圧力は第1検出器84により特定される一方で、ガスの組成は、図1に示す流体分析器87により得ることができる。供給システムが流体分析器を含まない場合、ガス組成は、特に積み荷の搬入時に伝達された積み荷についての技術資料から与えられ得る。そのいずれもが利用できない場合、最大温度閾値Tmaxは、異なる種類のガスをグループ化し、ガスの各々の圧力に応じた異なるボイルオフ温度を有する図4に示すデータ表を使用して特定され得る。第1検出器84が特定した圧力は把握されているため、最低のボイルオフ温度を選択することにより、データ表はこの圧力から読み取られる。この目的は、タンクに収容されたガスの種類に関係なく、このガスが少なくともこの選択された温度をボイルオフ温度として確実に有するようにすることである。
【0078】
最大温度閾値Tmaxは、先に得られたガスのボイルオフ温度から安全マージンを差し引くことで最終的に得られる。安全マージンは、ポンプの正味吸引高さおよび安全閾値に依存する。正味吸引高さは、第1供給回路内で使用されるポンプに固有のものであり、ポンプが液体状態のガスを圧送することによりガスをボイルオフさせるおそれのある限界値に対応する。保全閾値は、オペレータが選択できる。安全マージンは、例えば、ガスの実際のボイルオフ温度よりもわずかに低い最高温度閾値Tmaxを得るように、1°C~3°Cであり得る。
【0079】
最大温度閾値が得られた後、これと第1センサ81が特定したガスの温度との比較を実施することができる。
【0080】
第1センサ81が特定したガスの温度が最大温度閾値よりも高い場合、これは、第1供給回路を流れるガスが、第1熱交換器を過度に高い温度で流出することにより、少なくとも一部がボイルオフし、結果としてポンプを損傷するおそれがあるということを意味する。
【0081】
第1熱交換器とポンプとの間のガス温度が高すぎるということは、第1熱交換器内で生じる熱交換が過剰であるということを意味する。この熱交換を抑制するには、戻りラインを流れるガスの流量を減少させなければならない。
【0082】
したがって、第1センサ81が特定した温度が最大温度閾値よりも大きい場合、制御方法100は、通過断面を縮小するステップ103に続く。この縮小ステップ103において、図1に示す制御モジュールは、流量調整部材15に作用し、その通過断面を縮小する。この目的は、戻りラインを流れるガスの流量を減少させることで、第1熱交換器内での熱交換、ひいては第1供給回路を流れるガスの温度の上昇を制限することである。これにより、ポンプの上流でのガスのボイルオフが防止される。
【0083】
縮小ステップ103が終了すると、制御方法100は、例えば、第1熱交換器とポンプとの間を流れるガスの温度が実際に低下したかどうかを確認するために、比較ステップ101から繰り返され得る。
【0084】
第1センサ81が特定するガス温度が最大温度閾値Tmaxよりも低い場合、制御方法100は、対比ステップ102に続く。
【0085】
対比ステップ102は、第3センサ83によるガスの温度、すなわち、第1熱交換器を通過した後に戻りラインを流れるガスの温度と、最適温度閾値Toptとの間でなされる。最適温度閾値Toptは、第2センサが特定するガスの温度、すなわち、第1供給回路を第1熱交換器の上流において流れるガスの温度に温度差が加算される温度に対応する。この差は、安全マージンと同様に、+1°C~+3°Cであり得る。温度差は、タンクから来て第1熱交換器6に流入する液体状態のガスであって、例えば第2センサ82が計測するガスの温度と、戻りライン14を流れるガスであって、第1熱交換器6の出口で測定される、例えば第3センサにより測定されるガスの温度と、の最小差である。この温度差は、第1熱交換器6のピンチングに対応し得る。
【0086】
第2センサおよび第3センサ83は、現場で、すなわち、上述の位置で温度を測定し得る、または、システムの他のデータから作成された推定値または計算値から得てもよい。
【0087】
対比ステップ102により、戻りラインを流れるガスの凝縮が最適化される。この目的は、最適な凝縮を最大量で実施するために、戻りラインを流れるガスの第1熱交換器の出口における温度の値を、最適温度閾値Toptに収束させることである。戻りラインを流れて第1熱交換器から流出するガスが過度に高い温度を有する場合、これは、ガスが効果的に凝縮されるには、あまりに多量に流れていることを意味する。逆に、戻りラインを流れて第1熱交換器から流出するガスが過度に低い温度を有する場合、これは、所定時間により多量のガスを凝縮させるように、ガス流量を増加させ得ることを意味する。
【0088】
次いで、第3センサ83が特定する温度を、最適温度閾値Toptと比較する。第3センサ83が特定したガスの温度が最適温度閾値Toptよりも高くても低くても、制御方法100は、制御モジュールが流量調整部材の通過断面を調節するステップに続く。より具体的には、第3センサ83が特定したガスの温度が最適温度閾値Toptよりも高い場合、制御方法100は、流量調整部材の通過断面を縮小するステップ103に続く。この縮小ステップ103は、比較ステップ101から生じ得るステップと同様である。逆に、第3センサ83が特定したガスの温度が最適温度閾値Toptよりも高い場合、制御方法100は、流量調整部材の通過断面を縮小するステップ104に続く。
【0089】
図2において、比較ステップ101および対比ステップ102は順次実施されるが、比較ステップ101が最初に実施されることに留意されたい。ただし、制御方法100は、比較ステップ101および対比ステップ102を同時に実施するように構成され得る。それでもやはり、比較ステップ101は対比ステップ102より優先される。
【0090】
比較ステップ101または対比ステップ102に応じて縮小ステップ103または拡大ステップ104が実施された後、制御方法100は、ステップが連続している場合には比較ステップ101から、または上述のように2つの同時のステップから繰り返され得る。第1供給回路を流れる液体ガスが少なくとも部分的に蒸発した状態で流出しないことを保証することが優先事項である。したがって、比較ステップ101は、対比ステップ102に対応する、戻りラインを流れる蒸気状態のガスの凝縮最適化動作より優先度が高い。
【0091】
図3は、タンクスペースの内圧を監視する制御方法の一部のフローチャートである。制御方法のこの一部は、図2で説明したことと並行して実施され、特に、タンクスペースの特定圧力が圧力閾値Prefと比較されるモニタリングステップ105からなる。圧力閾値Prefは、例えば、外圧に対して-30ミリバールまたは-60ミリバールの値に対応し得る。例えば、第2供給回路を流れるガスであってタンクとコンプレッサとの間のガスの圧力、および一般にタンクスペースの内圧を特定するのは、第2検出器85である。
【0092】
次いで、第2検出器85が特定するこの圧力を、圧力閾値Prefと比較する。前記閾値は、タンクの壁が損傷するおそれのある圧力値未満に固定されるとともに、これに対応する。
【0093】
したがって、第2検出器85が特定する圧力が圧力閾値Pref以下である場合、これは、タンクスペースの圧力がさらに低下すると、タンクの壁が損傷するおそれがあることを意味する。制御モジュールが流量調整部材を全閉とする中断ステップ110が実施される。このような状況において、タンクスペースの圧力が上昇することを待ちつつ、供給システムを展開することができる。代替的に、低圧ガス消費装置が、図1に示す補助供給ライン16により動力を供給され得る。
【0094】
第2検出器85が特定する圧力が圧力閾値よりも高い場合、制御方法は、第2検出器85が特定する圧力の値のモニタリングを継続しつつ進み得る。
【0095】
図4は、図2で言及した最大温度閾値Tmaxを特定することを可能にするデータ表106を示す。このデータ表106は、5つの異なる種類のガスA、B、C、D、Eについて、第1検出器が特定する圧力の関数としてのボイルオフ温度を示す。
【0096】
したがって、タンクに収容されたガスの組成を把握できない場合、データ表106を使用して、第1検出器が特定する圧力の関数としての理論的なボイルオフ温度を特定する。前記ガスの組成よりも、タンクに収容されるガスが第1供給回路内で第1熱交換器の出口において液体状態に維持されることを保証するように、選択されたボイルオフ温度は、可能な限り低い。したがって、図4において、選択されるのは第1種類のガスAである。安全マージンが適用された後、最大温度閾値が次いで特定される。
【0097】
図5は、液体状態および蒸気状態のガスを収容したタンク8を示す浮遊構造体20の切欠図である。このタンク8は、浮遊構造体20の二重船体22に装着された全体として角柱状の形状を有している。タンク8の壁は、タンク8に収容された液体状態のガスに接触することが意図された一次シール膜と、一次シール膜と浮遊構造体20の二重船体22との間に配置された二次シール膜と、一次シール膜と二次シール膜との間および二次シール膜と二重船体22との間にそれぞれ配置された2つの熱絶縁バリアと、を備えている。
【0098】
液体状態のガスを搬入および/または搬出するためのパイプ23が、浮遊構造体20の上部デッキに配置されている。搬入および/または搬出パイプ23は、タンク8から、またはタンク8に、積み荷としての液体状態のガスを移送するように、適切なコネクタにより、海洋または港湾ターミナルに接続可能である。
【0099】
また、図5は、港湾または配送ターミナル搬入および/または搬出ステーション25と、水中ダクト26と、陸上および/または港湾施設27と、を備える海洋ターミナルの例を示す。陸上および/または港湾施設27は、例えば、港湾のドック上に配置され得る、または、別の例によれば、コンクリート製の重力プラットフォーム上に配置され得る。陸上および/または港湾施設27は、液体状態のガス用の貯蔵タンク30と、水中パイプ26により搬入および/または搬出設備25に接続した接続パイプ31と、を備えている。
【0100】
液体状態のガスの移送に必要な圧力を生成するために、陸上および/または港湾施設27に装置されたポンプ、および/または浮遊構造体20に装備されたポンプが実装されている。
【0101】
当然ながら、本発明は上述の実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施例に多くの変更を加えることができる。
【0102】
上述のように、本発明は、その意図した目的を明確に達成し、前記ガスの温度および凝縮の制御を保証する管理装置を備えるガス供給システムを提案することができる。本明細書に記載されない変形例は、本発明の文脈から逸脱することなく実施され得る。なぜならば、本発明によれば、変形例は、本発明によるガス供給システムを備えるからである。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】