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特開2023-153075放射温度計及び放射温度計冷却ケース
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153075
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】放射温度計及び放射温度計冷却ケース
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/061 20220101AFI20231005BHJP
   G01J 5/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01J5/061
G01J5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057529
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022058177
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健人
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC01
2G066BA14
2G066BA43
2G066BA48
2G066CA02
2G066CA15
(57)【要約】
【課題】従来の放射温度計や熱画像測定装置を冷却するための冷却機構は、冷却機構を取り付けた筐体が大きくなっていた。
【解決手段】測定対象から放射される赤外線を受光し、温度を測定する放射温度計装置や熱画像測定器において、装置の外側に装着する冷却ケースの壁面、または装置の筐体の壁面に、水路を設け、測定対象に対向する面の壁内および対向しない壁内に水路を配置することで、小型で冷却性能が高い冷却ケースまたは筐体を提供する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から放射される赤外線を受光し温度を測定する放射温度計装置を内蔵し、
測定対象に対向する面と測定対象に対向しない筐体壁を有し、
測定対象に対向する面の筐体壁内に水路を配置したことを特徴とする、放射温度計冷却ケース。
【請求項2】
前記水路を、測定対象に対向しない面の筐体壁内にも配置したことを特徴とする請求項1に記載の放射温度計冷却ケース。
【請求項3】
測定対象から放射される赤外線を受光し温度を測定する放射温度計装置において、
測定対象に対向する面の筐体壁内に水路を配置したことを特徴とする、放射温度計装置。
【請求項4】
前記水路を測定対象に対向しない面の筐体壁内にも配置したことを特徴とする請求項3に記載の放射温度計装置。
【請求項5】
前記測定対象に対向しない筐体壁から外部へ接続するケーブルや冷却水供給管を覆うカバーを取り付けできることを特徴とする、請求項1及び2に記載の放射温度計冷却ケース。
【請求項6】
前記測定対象に対向しない筐体壁から外部へ接続するケーブルや冷却水供給管を覆うカバーを取り付けできることを特徴とする、請求項3及び4に記載の放射温度計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下で使用するために、冷却機構を備えた放射温度計及び放射温度計冷却ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
放射温度計や熱画像計測装置は、離れた所の温度を非接触で測定したり、離れた所の所定の領域の温度分布を測定したりする装置として使われる。これらの装置は、測定対象物から放射される赤外線を計測することで温度を測定する。しかしながら、赤外線は測定対象物だけでなく、測定器自体からも放射される。そのため、高温環境下で、放射温度計や熱画像計測装置を使用するためには、測定器本体を冷却して、測定値に筐体の温度が影響しないようにする必要があった。
【0003】
例えば、特開2016-130599(特許文献1)では、セメントを製造する工程で、クリンカの冷却状態を測定するために、熱画像計測装置を用いている。熱画像カメラの筐体の外部に冷却水が通る配管を配置し、レンズの冷却と粉塵除去のために空気を噴出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-130599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の冷却機構は、測定器の周辺環境や測定対象が数百度以上の高温で使うことを想定しており、冷却機構を取り付けた筐体が大きくなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら、図1に示すように、恒温炉の中で動作させた電子機器などの測定対象の表面温度を放射温度計や熱画像計測装置で調べる場合、測定装置の周辺環境が100℃~200℃でも、測定器本体が数十℃になるために、正常な温度測定ができなくなるため、冷却機構が必要となる。そのために、炉内でも使える小型で十分な冷却能力を持つ冷却装置を有する放射温度計が必要となる。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された放射温度計冷却ケースは、測定対象から放射される赤外線を受光し温度を測定する放射温度計装置を内蔵し、測定対象に対向する面と測定対象に対向しない筐体壁を有し、測定対象に対向する面の筐体壁内に冷却水路を配置したことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載された、放射温度計冷却ケースは、前記水路を、測定対象に対向しない面の筐体壁内にも配置したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載された、放射温度計装置は、測定対象から放射される赤外線を受光し温度を測定する放射温度計装置において、測定対象に対向する面の筐体壁内に水路を配置したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載された、放射温度計装置は、水路を測定対象に対向しない面の筐体壁内にも配置したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載された、放射温度計冷却ケースは、測定対象に対向しない筐体壁から外部へ接続するケーブルや冷却水供給管を覆うカバーを取り付けできることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に記載された、放射温度計装置は、測定対象に対向しない筐体壁から外部へ接続するケーブルや冷却水供給管を覆うカバーを取り付けできることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、十分な冷却機能を持ちながら、筐体が小型の放射温度計を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】恒温炉内で熱画像装置を用いた測定の例
図2A】実施例1の正面からの外観図
図2B】実施例1の背面からの外観図
図2C】実施例1の後部カバーを付けた状態の外観図
図3A】実施例2の正面からの外観図
図3B】実施例2の背面からの外観図
図3C】実施例2の後部カバーを付けた状態の外観図
図4】冷却配管の配置例
図5】実施例1の各部の温度
図6】実施例2の各部の温度
図7】実施例2の各部の温度測定したときの構成
図8】高温の環境で本発明を使用する場合の構成
図9】カメラと画像処理部が分離している装置を使った場合の構成
図10A】実施例1の変形例の背面からの外観図
図10B】実施例1の変形例の後部カバーを付けたときの背面からの外観図
図10C】実施例1の変形例の後部カバーと蓋を付けたときの背面からの外観図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0016】
図1は本発明の使用例を示した図である。恒温炉101の内部で、放射温度計または熱画像計測装置となる測定器102を用いて、測定対象103の温度を測定する。チラー104は測定器102に配管を経由して冷却水を供給し、測定器102を冷却して戻ってきた冷却水を温度調整する。電源105は測定器102に動作電圧を供給する。処理装置106は測定器102から出力された温度データを処理する。
【0017】
本出願では、図1に示すように、測定対象に向いているレンズがある筐体の面を正面と呼び、その反対側の面を背面と呼ぶ。また、以下の実施例の説明で放射温度計と熱画像計測装置をまとめて、測定器と呼ぶ。
【0018】
図1では、測定対象103の測定面に対して、測定器102を垂直上方に配置しているが、金属などの光沢がある材料では、反射光が測定器に照射され、測定値に誤差が生じる可能性があるので、測定器を垂直から約15度傾けると、反射光の影響が除去できる。傾ける角度は10度~20度が望ましい。
【0019】
<実施例1>
図2A、B、Cは測定器を冷却ケースに入れた構成の外観図である。図2Aは、測定器を入れた冷却ケースを正面上方から見た図である。冷却ケース201の正面に窓202がついている。冷却ケースの材料は、アルミ合金など熱伝導率が高い材料が望ましい。また、窓の材料は、赤外線波長の透過率が優れていて、高熱などの耐環境性能が高い材料が望ましく、具体的にはシリコンが挙げられる。
【0020】
図2Bは、測定器を入れた冷却ケースを背面から見た図である。筐体へ冷却水を供給する給水口203と筐体内の水路を通過した冷却水が排出される排水口204がある。測定器背面には、測定器の焦点を調節するフォーカス調整ねじ205、フォーカス調整ねじ205の誤操作防止用カバー206、測定機に電源を供給する電源コネクタ207、測定結果を外部へ出力するためのLANケーブルコネクタ208がある。
【0021】
209は筐体壁に水路になる穴を貫通させた跡である。この部分は、給水口203、排水口204以外の穴は、シールテープとねじ穴加工により漏水しないようにふさがれている。一方、給水口203、給水口204はホースを取り付けできるようにワンタッチ継ぎ手が取り付けられる。
【0022】
図2Cは冷却ケースに後部カバー210を取り付けた外観を示した図である。211は測定器の背面に取り付けたケーブルや冷却水ホースを外部へ取り出すための開口部である。不図示であるが、開口部から外部機器へ接続される冷却ケースに取り付けたホースや測定機に接続したケーブルは炉内の熱から保護するために、断熱材で被覆することが望ましい。
【0023】
<実施例2>
図3A、B、Cは測定器の筐体外壁を実施例1のような冷却ケースにした構成の外観図である。図3Aは、測定器を正面上方から見た図である。測定器本体301の正面にレンズ302 がついている。レンズの材料は赤外線波長の透過率が優れていて、高熱などの耐環境性能が高い材料が好ましい。具体的にはダイヤモンドやゲルマニウムが挙げられる。
【0024】
図3Bは、測定器を入れた冷却ケースを背面から見た図である。測定器本体の背面パネル303があり、測定器の焦点を調節するフォーカス調整ねじ取り付け部304、測定器が熱画像測定装置である場合に撮影画像を外部へ出力する外部映像端子取り付け部305、警報出力コネクタ取り付け部306、LANケーブルコネクタ取り付け部307、電源ケーブル取り付け部308がある。309は、実施例1の209と同様に筐体壁に水路を形成した際の穴で、実施例1の209と同様に漏水しないように加工されている。
【0025】
図3Cは測定器筐体に後部カバー310を取り付けた状態の図である。実施例と同様に、冷却水ホースやケーブルを外部機器に接続するための開口部311を備える。この実施例でも、開口部から外部機器へ接続される冷却ケースに取り付けたホースや測定機に接続したケーブルは炉内の熱から保護するために、断熱材で被覆することが望ましい。
【0026】
図4は、実施例2の筐体での冷却配管の構成を示した図である。以下の説明では、レンズ取り付け部がついている面を正面とし、反対側を背面、上下は図4に従って記載する。筐体背面上部の給水口401から冷却水が供給され、冷却配管402を通って、冷却水は背面から正面に向かい、冷却配管403と冷却配管404を通って、筐体正面上部を冷却水が通過する。冷却配管405を通って、冷却水は筐体正面から背面へ向かい、冷却配管406を通って、冷却水は筐体上部から筐体下部へ向かい、冷却配管407を通って、筐体下部を背面から正面へ冷却水が向かい、冷却配管408と冷却配管409で冷却水は筐体正面株を通過し、冷却配管410を通って、冷却水は筐体正面下部から背面下部へ向かい、排水口411から冷却水はチラーへ向かう。
【0027】
冷却配管の構成は、このパターンに限られず、例えば、冷却配管406をなくして、冷却配管402→403→404→405を経由する冷却配管と冷却配管410→409→408→407を経由する2系統の冷却配管を形成し給水口、排水口を2組用意して、冷却性能を向上させる構成や、筐体正面と背面をつなぐ配管を1つにして、筐体正面部で冷却配管を2系統に分離して、冷却水が筐体正面を通過した後に1系統にまとめて、筐体背面へ冷却水を流す構成も考えられる。
【0028】
本発明による冷却ケースや冷却筐体による冷却効果を示す。図5は実施例1の冷却ケースの背面、窓、正面、上面、後部カバーに熱電対を取り付け、電気炉内で炉の温度と冷却水の温度を変化させた際の各部の温度を示した結果である。放射温度計、熱画像測定器として使用するには、窓部の温度が40℃にならないことが望ましく、必要な冷却がなされていることがわかる。
【0029】
図6は実施例2の冷却筐体を電気炉内に設置し、筐体のレンズ、側面、内壁および炉内の実温を熱電対で測定した結果である。この場合も、レンズの温度は40℃以下になっており、必要な冷却がなされていることがわかる。
【0030】
図6の表に示した実験では図7に示すように恒温炉701内に冷却ケース702を設置した。冷却ケースの中には熱画像装置703が配置されている。チラー704、電源705、処理装置706は図1と同様である。図6の表の水温は冷却水の温度、炉設定温度は恒温炉の設定温度、炉内温度は炉内の温度、ケース側面は冷却ケース702の側面に貼り付けた熱電対が示す温度、レンズは熱画像装置703のレンズに貼り付けた熱電対が示す温度、内壁は冷却ケース702の内壁に貼り付けた熱電対が示す温度になる。
【0031】
恒温炉内で本発明の冷却ケースを用いる場合、恒温炉の温度と冷却水の温度差により冷却ケースの表面やケース内の測定装置に結露が発生するおそれがある。また、恒温炉の外部でチラーと接続しているホースでは、外部環境の湿度によって、さらに結露が生じやすい。例えば、恒温炉の温度を200℃に設定した場合、冷却水の温度を15℃にするとケースや冷却水ホースに結露が生じやすいので20℃~25℃にするのが望ましい。
【0032】
本発明の冷却ケースは、恒温炉の内部に限らず、測定器が高温の環境に置かれる場合に、測定器を冷却するために用いることもできる。図8にその一例を示す。加熱装置801の内部にヒータ802があり、ヒータ802の上に被加工品803がある。被加工品の温度を測定できる位置に冷却筐体804があり、冷却筐体804の中に測定器805がある。冷却筐体804の壁面には前述のように水路が設けられており、チラー806に接続され、冷却水が循環する。電源807は測定器805に動作電圧を供給する。処理装置808は測定器805から出力された温度データを処理する。
【0033】
放射温度計には、撮影用のカメラとカメラからの画像を処理したり、外部へ出力したりする部分が分離している製品がある。本発明はそのような製品にも適用できる。図9にその一例を示す。加熱炉901の内部に、測定対象902が設置されている。測定対象の温度を測定できる位置に冷却筐体903があり、冷却筐体903の中にカメラ904がある。冷却筐体903の壁面には前述のように水路が設けられており、チラー907に接続され、冷却水が循環する。電源908は測定器904に動作電圧を供給する。カメラ904から出力されたデータは画像処理部905に送られ、処理装置906は画像処理部905から出力された画像や温度のデータを処理する。なお、この例では、画像処理部905と処理装置906を別な装置としたが、画像処理部を処理装置内に設け、ハードウェアやソフトウェアで処理することも可能である。
【0034】
図10A図10B図10Cは、実施例1の変形例である。図10Aは、測定器を入れた冷却ケースを背面から見た図である。筐体1001へ冷却水を供給する給水口1002と筐体内の水路を通過した冷却水が排出される排水口1003がある。測定器背面には、測定器の焦点を調節するフォーカス調整ねじ1004、測定機に電源を供給する電源コネクタ1005、測定結果を外部へ出力するためのLANケーブルコネクタ1006がある。図2Bではフォーカス調整用ネジは誤操作防止用カバーで覆われていたが、本変形例ではカバーで覆われていない。図10Bに示すように、後部カバー1007には、電源ケーブル、通信ケーブル、冷却水を供給するホースなどを外部へ取り出すための開口部1008と、フォーカス調整ネジ1004を操作するための開口部1009が設けられている。図10Cでは、開口部1009を塞ぐ蓋1010が取り付けられている。これにより、操作性の向上と、冷却性能の維持が両立できる。なお、本変形例では、蓋1010をネジで固定しているが、蓋の落下を防止できる他の固定具も利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
恒温炉101
測定器102
測定対象103
チラー104
電源105
処理装置106
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C