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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153081
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】フッ素樹脂組成物、及び、成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20231005BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20231005BHJP
   B29C 48/475 20190101ALI20231005BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231005BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08F 14/26 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L27/18
B29C43/34
B29C48/00
B29C48/475
C08K3/013
C08K3/04
C08F14/26
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057680
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022058838
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022157682
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】迎 弘文
(72)【発明者】
【氏名】藤島 綾音
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】石井 健二
【テーマコード(参考)】
4F204
4F207
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F204AA17
4F204AB11
4F204AB15
4F204AC04
4F204AR06
4F204AR17
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F207AA16
4F207AA17
4F207AB11
4F207AB16
4F207AB17
4F207AB18
4F207AR06
4F207AR07
4F207AR12
4F207AR17
4F207KA01
4F207KA17
4J002BD151
4J002BD152
4J002DA016
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4J002DA036
4J002DA076
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4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DG026
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002FA046
4J002FA086
4J002FD016
4J002FD116
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GQ00
4J100AC26P
4J100AE39Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA16
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4J100DA42
4J100DA51
4J100EA09
4J100FA20
4J100FA21
4J100JA28
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、引張特性及び取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物、及び、前記フッ素樹脂組成物から得られる成形体を提供する。
【解決手段】融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bと、充填材とを含む、溶融流動性を示さないフッ素樹脂組成物。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、
溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bと、
充填材とを含む、
溶融流動性を示さないフッ素樹脂組成物。
【請求項2】
333℃未満の温度領域に1つ以上、かつ、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有する請求項1に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項4】
前記変性モノマー単位の量が、前記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下である請求項3に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項5】
フッ素樹脂Aは、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項6】
前記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.25g/10分以上である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項7】
前記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、融点が320℃以下のフッ素樹脂である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項8】
フッ素樹脂Bが前記溶融流動性を示すフッ素樹脂であり、前記フッ素樹脂組成物は、更に、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂Cを含む請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項9】
見掛密度が0.40g/ml以上である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項10】
安息角が40°未満である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項11】
平均二次粒子径が5~700μmである請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項12】
フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さが、フッ素樹脂Bの粒子の最大直線長さより小さい請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項13】
前記充填材は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、球状カーボン、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、アルミナ、マイカ、炭化珪素、窒化硼素、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化コバルト、二硫化モリブデン、ブロンズ、金、銀、銅、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項14】
前記充填材は、導電性フィラーである請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項15】
前記導電性フィラーは、カーボンブラックである請求項14に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項16】
粉末である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項17】
圧縮成形用粉末又はラム押出成形用粉末である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項18】
引張破断強度が8MPa以上である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物を圧縮成形及び焼成するか、又は、ラム押出成形して得られる成形体。
【請求項20】
320~335℃の範囲に吸熱ピークを1つ以上有するフッ素樹脂組成物であって、
窒素雰囲気下600℃で熱分解すると前記フッ素樹脂組成物に対し15質量%以下の残渣を生じ、
導電性又は0.3W/m・K以上の熱伝導率を示すフッ素樹脂組成物。
【請求項21】
更に、335℃超の範囲に吸熱ピークを1つ以上有する請求項20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項22】
更に導電性フィラー又は熱伝導性フィラーを含む請求項20又は21に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項23】
体積抵抗率が10Ω・cm以下である請求項20又は21に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項24】
見掛密度が0.40g/ml以上である請求項20又は21に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項25】
安息角が40°未満である請求項20又は21に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項26】
ラム押出成形用粉末である請求項20又は21に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項27】
引張破断強度が8MPa以上である請求項20又は21に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項28】
多孔質用でない請求項1、2、20及び21のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素樹脂組成物、及び、成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
成形加工等のために融点以上の温度に加熱した履歴のあるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、そのまま再度成形材料として使用しても充分な物性が得られないため、成形用途での再生は一部に止まっている。
【0003】
特許文献1及び2には、焼成後に粉砕されたPTFEや加熱済みPTFEのリサイクルに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/244433号
【特許文献2】特開2006-70233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、引張特性及び取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物、及び、上記フッ素樹脂組成物から得られる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示(1)は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、
溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bと、
充填材とを含む、
溶融流動性を示さないフッ素樹脂組成物である。
【0007】
本開示(2)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、かつ、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有する本開示(1)に記載のフッ素樹脂組成物である。
【0008】
本開示(3)は、上記フッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む本開示(1)又は(2)に記載のフッ素樹脂組成物である。
【0009】
本開示(4)は、上記変性モノマー単位の量が、上記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下である本開示(3)に記載のフッ素樹脂組成物である。
【0010】
本開示(5)は、フッ素樹脂Aは、ポリテトラフルオロエチレンである本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0011】
本開示(6)は、上記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.25g/10分以上である本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0012】
本開示(7)は、上記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、融点が320℃以下のフッ素樹脂である本開示(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0013】
本開示(8)は、フッ素樹脂Bが上記溶融流動性を示すフッ素樹脂であり、上記フッ素樹脂組成物は、更に、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂Cを含む本開示(1)~(7)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0014】
本開示(9)は、見掛密度が0.40g/ml以上である本開示(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0015】
本開示(10)は、安息角が40°未満である本開示(1)~(9)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0016】
本開示(11)は、平均二次粒子径が5~700μmである本開示(1)~(10)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0017】
本開示(12)は、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さが、フッ素樹脂Bの粒子の最大直線長さより小さい本開示(1)~(11)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0018】
本開示(13)は、上記充填材は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、球状カーボン、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、アルミナ、マイカ、炭化珪素、窒化硼素、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化コバルト、二硫化モリブデン、ブロンズ、金、銀、銅、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(12)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0019】
本開示(14)は、上記充填材は、導電性フィラーである本開示(1)~(13)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0020】
本開示(15)は、上記導電性フィラーは、カーボンブラックである本開示(14)に記載のフッ素樹脂組成物である。
【0021】
本開示(16)は、粉末である本開示(1)~(15)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0022】
本開示(17)は、圧縮成形用粉末又はラム押出成形用粉末である本開示(1)~(16)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0023】
本開示(18)は、引張破断強度が8MPa以上である本開示(1)~(17)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0024】
本開示(19)は、本開示(1)~(18)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物を圧縮成形及び焼成するか、又は、ラム押出成形して得られる成形体である。
【0025】
本開示(20)は、320~335℃の範囲に吸熱ピークを1つ以上有するフッ素樹脂組成物であって、窒素雰囲気下600℃で熱分解すると上記フッ素樹脂組成物に対し15質量%以下の残渣を生じ、導電性又は0.3W/m・K以上の熱伝導率を示すフッ素樹脂組成物である。
【0026】
本開示(21)は、更に、335℃超の範囲に吸熱ピークを1つ以上有する本開示(20)のフッ素樹脂組成物である。
【0027】
本開示(22)は、更に導電性フィラー又は熱伝導性フィラーを含む本開示(20)又は(21)のフッ素樹脂組成物である。
【0028】
本開示(23)は、体積抵抗率が10Ω・cm以下である本開示(20)~(22)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0029】
本開示(24)は、見掛密度が0.40g/ml以上である本開示(20)~(23)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0030】
本開示(25)は、安息角が40°未満である本開示(20)~(24)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0031】
本開示(26)は、ラム押出成形用粉末である本開示(20)~(25)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0032】
本開示(27)は、引張破断強度が8MPa以上である本開示(20)~(26)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【0033】
本開示(28)は、多孔質用でない本開示(1)~(18)、(20)~(27)のいずれかとの任意の組合せのフッ素樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、引張特性及び取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物、及び、上記フッ素樹脂組成物から得られる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0036】
本開示は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bと、充填材とを含む、溶融流動性を示さないフッ素樹脂組成物(以下、本開示の第1のフッ素樹脂組成物ともいう)を提供する。
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、上記構成を有するので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)及び取り扱い性(粉体としての取り扱い性)に優れる。
【0037】
上記フッ素樹脂Aは、融点以上の温度に加熱した履歴を有する。上記加熱としては、成形加工、加熱処理等のための加熱等が挙げられる。
【0038】
フッ素樹脂Aは、融点が100℃以上、333℃未満であることが好ましく、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましい。
下限は限定されないが、140℃であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。
【0039】
フッ素樹脂Aは、333℃未満の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、また、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。
融点が上記範囲内にあることは、融点以上の温度に加熱した履歴があることを示す。
フッ素樹脂Aは、333℃以上の温度領域にも融点を有していてもよい。
【0040】
本明細書において、フッ素樹脂の融点は、X-DSC7000(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用い、10℃/分の昇温速度で示差走査熱量測定〔DSC〕を行って得られた融解熱曲線における極小点に対応する温度である。1つの融解ピーク中に極小点が2つ以上ある場合は、それぞれを融点とする。
【0041】
フッ素樹脂Aは、溶融流動性を示さない。
本明細書において、溶融流動性を示さないとは、メルトフローレート(MFR)が0.25g/10分未満、好ましくは0.10g/10分未満、より好ましくは0.05g/10分以下であることを意味する。
本明細書において、MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、フッ素樹脂の種類によって定められた測定温度(例えば、PFAやFEPの場合は372℃、ETFEの場合は297℃)、荷重(例えば、PFA、FEP及びETFEの場合は5kg)において内径2.095mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。PTFEの場合は、PFAと同様の測定条件で測定して得られる値である。
【0042】
また、フッ素樹脂を圧縮成形した予備成形体(未焼成の成形体)を、当該フッ素樹脂の融点以上で1時間以上加熱した場合に、加熱前の厚みに対する加熱後の厚みの減少率が20%未満であるか、又は、加熱後の厚みが加熱前の厚みより増加することも、当該フッ素樹脂が溶融流動性を示さないことを意味する。
【0043】
フッ素樹脂Aとしては、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]が好ましい。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0044】
フッ素樹脂Aとしての上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0045】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0046】
上述した各重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0047】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル:パーフルオロアリルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0048】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0049】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0050】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0051】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0052】
【化1】
【0053】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0054】
【化2】
【0055】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0056】
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0057】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、一般式(B):
CF=CF-CF-ORf (B)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0058】
上記Rfは、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0059】
フッ素樹脂Aとしての上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.280以下であることが好ましく、2.10以下であることがより好ましい。また、1.50以上であることが好ましく、1.60以上であることがより好ましい。上記SSGは、ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法により測定する。
【0060】
フッ素樹脂Aとしての上記PTFEは、通常、非溶融二次加工性を有する。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、言い換えると、溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0061】
フッ素樹脂Aとしての上記PTFE(高分子量PTFE)は、融点の1つが310℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがより好ましく、また、333℃未満であることが好ましい。333℃以上の温度領域にも融点を有してもよい。
【0062】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、フッ素樹脂Aの粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂Aの粒子は、フッ素樹脂Aの二次粒子であってよい。
【0063】
上記フッ素樹脂Aの粒子は、平均二次粒子径が1~200μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、また、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、70μm以下であることが更により好ましく、50μm以下であることが特に好ましく、30μm以下であることが最も好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0064】
上記フッ素樹脂Aの粒子は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0065】
上記フッ素樹脂Aの粒子は、例えば、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂を圧縮成形し、焼成して得られた成形品の切削屑を粉砕することにより得ることができる。上記粉砕は、粉砕機等で行うことができる。粗粉砕した後、微細化してもよい。圧縮成形の形状は特に問わない。焼成する温度はフッ素樹脂の融点以上であれば良い。粉砕機は特に限定されず、切削屑を粉砕(好ましくは微細化)することができるものであればよい。例えば、エアジェットミル、ハンマーミル、フォースミル、石臼型の粉砕機、凍結粉砕機等が挙げられる。
【0066】
上記フッ素樹脂Aの粒子は、また、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂の粉末を圧縮成形せずに融点以上に加熱した後、粉砕機を用いて粉砕することによっても、得ることができる。粉砕機は上記同様である。
【0067】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、更に、充填材を含む。これにより、耐摩耗性、耐圧縮クリープ性等の機械的特性を改善することができる。
上記充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、球状カーボン、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、アルミナ、マイカ、炭化珪素、窒化硼素、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化コバルト、二硫化モリブデン、ブロンズ、金、銀、銅、ニッケル、芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト、及び、ブロンズからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0068】
上記充填材の含有量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、0~80質量%であることが好ましい。上記含有量は、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが更により好ましく、12質量%以上であることが特に好ましく、また、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが更により好ましく、40質量%以下であることが殊更に好ましく、30質量%以下であることが特に好ましく、25質量%以下であることが最も好ましい。
【0069】
成形体に導電性を付与する目的で、上記充填材として導電性フィラーを用いることも好ましい。上記充填材として導電性フィラーを使用する場合、驚くべきことに、フッ素樹脂として上記フッ素樹脂A及びフッ素樹脂Bを併用することにより、フッ素樹脂Bのみの場合と比較して、導電性が向上することが見出された。フッ素樹脂Aを使用すると、成形体に隙間が生じやすく、その隙間を埋めるように導電性フィラーが充填されるので、良好な導電パスが形成され、導電性が向上すると考えられる。
【0070】
上記導電性フィラーとしては、例えば、カーボンフィラー、金属系フィラーが挙げられる。
【0071】
上記カーボンフィラーとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、グラフェンシート、カーボンナノチューブ(CNT)、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0072】
上記金属系フィラーとしては、鉄、銀、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属粉末、酸化ジルコニウム等の導電性金属酸化物粉末、これらの金属繊維、導電性金属酸化物繊維、金属被覆合成繊維等が例示できる。
【0073】
カーボンフィラーと金属系フィラーとを併用してもよい。
【0074】
上記導電性フィラーとしては、カーボンフィラーが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。本開示の第1のフッ素樹脂組成物では、比較的安価でハンドリング性に優れるカーボンブラックを使用しても、良好な導電性を付与することができる。
【0075】
上記カーボンブラックは、導電性カーボンブラックであることが好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラック及びファーネスブラックからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0076】
上記カーボンブラックは、一層導電性の高い成形体が得られることから、吸油量が100ml/100g以上であることが好ましく、120ml/100g以上であることがより好ましく、150ml/100g以上であることが特に好ましい。
【0077】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物において、上記導電性フィラー(好ましくはカーボンブラック)の含有量としては、上記フッ素樹脂組成物に対し、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは8.0質量%以下であり、また、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。
上記のように導電性フィラーが比較的少量であっても、良好な導電性を付与することができるので、成形加工性や成形体の機械強度を損なうことなく、導電性を付与することができる。
【0078】
CNT等の導電性フィラーは、アスペクト比が1000以上であることにより、良好な導電のネットワークを形成しやすいので、配合量を更に少なくすることができる。アスペクト比が1000以上の導電性フィラーの含有量としては、上記フッ素樹脂組成物に対し、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下であり、また、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上である。
【0079】
上記導電性フィラーに加えて、性能を阻害しない範囲で非導電性フィラーを併用してもよい。非導電性のフィラーとしては、シリカ、シリケート、クレー、ケイソウ土、モンモリロナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、脂肪酸カルシウム、酸化チタン、ベンガラ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ等の非導電性の無機酸化物フィラー、ポリイミド等の非導電性の樹脂フィラー等を挙げることができる。
【0080】
成形体に熱伝導性を付与する目的で、上記充填材として熱伝導性フィラーを用いることも好ましい。上記充填材として熱伝導性フィラーを使用する場合、驚くべきことに、フッ素樹脂として上記フッ素樹脂A及びフッ素樹脂Bを併用することにより、フッ素樹脂Bのみの場合と比較して、熱伝導性が向上することが見出された。フッ素樹脂Aを使用すると、フッ素樹脂Aの中にはフィラーが入らないため、フッ素樹脂Aの周辺に熱伝導性フィラーが充填されるので、良好な熱伝導パスが形成され、熱伝導性が向上すると考えられる。
【0081】
上記熱伝導性フィラーとしては、例えば、窒化硼素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0082】
上記熱伝導性フィラーとしては、窒化硼素が好ましい。本開示の第1のフッ素樹脂組成物では、良好な熱伝導性を付与することができる。
【0083】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物において、上記熱伝導性フィラー(好ましくは窒化硼素)の含有量としては、上記フッ素樹脂組成物に対し、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは8.0質量%以下であり、また、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。
上記のように熱伝導性フィラーが比較的少量であっても、良好な熱伝導性を付与することができるので、成形加工性や成形体の機械強度を損なうことなく、熱伝導性を付与することができる。
【0084】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、更に、溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bを含む。上記フッ素樹脂Bを含むことにより、上記フッ素樹脂A及び上記充填材のみを使用する場合と比較して、引張特性が向上する。
【0085】
上記フッ素樹脂Bが溶融流動性を示すフッ素樹脂であることは、好ましい態様の1つである。
上記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、MFRが0.25g/10分以上であってよく、好ましくは0.50g/10分以上、より好ましくは1.00g/10分以上である。上記MFRは、100g/10分以下であってよく、80g/10分以下であることが好ましい。
【0086】
上記溶融流動性を示すフッ素樹脂としては、融点が320℃以下のフッ素樹脂、及び、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(低分子量PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、融点が320℃以下のフッ素樹脂がより好ましい。
上記溶融流動性を示すフッ素樹脂の詳細は後述する。
【0087】
上記フッ素樹脂Bが溶融流動性を示すフッ素樹脂である場合、本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、更に、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂Cを含むことが好ましい。フッ素樹脂Cを更に含むことで、引張特性が一層向上する。
上記フッ素樹脂Cの詳細は後述する。
【0088】
上記フッ素樹脂Bが融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂であることも、好ましい態様の1つである。上記融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂は、懸濁重合で重合されたものであってもよく、乳化重合で重合されたものであってもよい。
上記融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂としては、PTFEが好ましい。上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであってもよい。
上記融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂の詳細は後述する。
【0089】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Aの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~99.5質量%であることが好ましい。上記含有量は、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、また、99質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましく、90質量%以下であることが更により好ましく、85質量%以下であることが殊更に好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
【0090】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Bが溶融流動性を示すフッ素樹脂である場合の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、0.5~30質量%であることが好ましい。上記含有量は、1.0質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが更により好ましく、7質量%以上であることが特に好ましく、また、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが更により好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0091】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Bが融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂である場の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、20質量%超であることが更により好ましく、25質量%以上であることが殊更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが更により好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0092】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Cの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、0~80質量%であることが好ましい。上記含有量は、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以上であることが更により好ましく、30質量%以上であることが殊更に好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、また、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、65質量%以下であることが更により好ましく、60質量%以下であることが殊更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0093】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂A~Cの合計量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更により好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0094】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、溶融流動性を示さない。
本開示の第1のフッ素樹脂組成物のMFRは0.25g/10分未満であってよく、好ましくは0.10g/10分未満であり、より好ましくは0.05g/10分以下である。
【0095】
また、本開示の第1のフッ素樹脂組成物を圧縮成形した予備成形体(未焼成の成形体)を、当該フッ素樹脂組成物の融点以上で1時間以上加熱した場合に、加熱前の厚みに対する加熱後の厚みの減少率が20%未満であるか、又は、加熱後の厚みが加熱前の厚みより増加することも、当該フッ素樹脂組成物が溶融流動性示さないことを意味するので好ましい。
【0096】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、333℃未満の温度領域に1つ以上、かつ、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂と、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂とを含むことを示す。
【0097】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含むことが好ましい。上記フッ素樹脂組成物は、重合単位として、TFE単位及び変性モノマー単位のみを含むものであってよい。
【0098】
取り扱い性及び引張特性が一層向上する点で、上記変性モノマー単位の含有量は、上記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.00001質量%が好ましく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0099】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、全重合単位に対しTFE単位を99.0質量%以上含むことが好ましい。
【0100】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物を構成する重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0101】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、取り扱い性に一層優れる点で、見掛密度が0.40g/ml以上であることが好ましく、0.42g/ml以上であることがより好ましく、0.45g/ml以上であることが更に好ましく、0.47g/ml以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0102】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、流動性に優れ、取り扱い性に一層優れる点で、安息角が40°未満であることが好ましく、38°未満であることがより好ましく、35°未満であることが更に好ましい。
上記安息角は、全高115mm、足部径φ26mm、足部長さ35mm、取込部の開きが60°の漏斗を、漏斗の底面から試料落下面までの高さが100mmとなるように設置し、40gの試料を漏斗から落とし、落下した試料の山の下半分の角度を分度器で測定して得られる値である。
【0103】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、平均二次粒子径が5~700μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0104】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物においては、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さが、フッ素樹脂Bの粒子の最大直線長さより小さいことが好ましい。フッ素樹脂A及びBの粒子の最大直線長さが上記関係にあると、フッ素樹脂組成物の見掛密度を高くすることができ、取り扱い性が一層向上する。また、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さを増大させるための変形化処理を行う必要がないので、フッ素樹脂組成物の製造コストを低減することができる。
【0105】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0106】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、溶融流動性を示すフッ素樹脂B1と、充填材とを含む、溶融流動性を示さないフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(1)ともいう。)であることが好ましい。
フッ素樹脂組成物(1)は、溶融流動性を示すフッ素樹脂B1を含むので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂Aを含むにもかかわらず、引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)に優れる。この効果は、成形時に、フッ素樹脂Aの粒子間の界面がフッ素樹脂B1によって埋まることによると考えられる。
【0107】
フッ素樹脂組成物(1)において、フッ素樹脂Aとフッ素樹脂B1とを見分ける方法としては、例えば、ホットステージ上に上記フッ素樹脂組成物を乗せて、5℃/minで昇温させながら顕微鏡で観察し、粒子の形状を維持するかどうかでフッ素樹脂A及びB1のいずれの粒子であるかを判別する方法が挙げられる。
【0108】
フッ素樹脂組成物(1)におけるフッ素樹脂A及び充填材としては、上述したものを使用することができる。
【0109】
上記フッ素樹脂B1は、溶融流動性を示す。
本明細書において、溶融流動性を示すとは、MFRが0.25g/10分以上、好ましくは0.50g/10分以上、より好ましくは1.00g/10分以上であることを意味する。上記MFRは、100g/10分以下であってよく、80g/10分以下であることが好ましい。
【0110】
また、フッ素樹脂を圧縮成形した予備成形体(未焼成の成形体)を、当該フッ素樹脂の融点以上で1時間以上加熱した場合に、加熱前の厚みに対する加熱後の厚みの減少率が20%以上であることも、当該フッ素樹脂が溶融流動性を示すことを意味する。
【0111】
上記フッ素樹脂B1は、融点以上の温度に加熱した履歴を有さないことが好ましい。
【0112】
フッ素樹脂B1は、融点が100~340℃であることが好ましい。上記融点は、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、また、336℃以下であることがより好ましく、333℃以下であることが更に好ましく、332℃以下であることが更により好ましく、331℃以下であることが殊更に好ましく、330℃以下であることが特に好ましい。
【0113】
フッ素樹脂B1の融点は、上述の方法により測定することができるが、フッ素樹脂Aとフッ素樹脂B1との合計に対し、フッ素樹脂B1が例えば5質量%以下と少ない場合は、上記方法では検出しにくい場合がある。その場合は、昇温時にフッ素樹脂B1の融点より低い温度(好ましくは上記融点より10℃以上低い温度)で10分間保持した後に、再度10℃/分の速度で昇温することでフッ素樹脂B1の融解ピークを検出できることがある。この方法で昇温しても構わない。
【0114】
フッ素樹脂B1としては、融点が320℃以下のフッ素樹脂、及び、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(低分子量PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、融点が320℃以下のフッ素樹脂がより好ましい。
フッ素樹脂B1としては、パーフルオロ樹脂も好ましい。
【0115】
上記融点が320℃以下のフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)共重合体[PFA]、TFE/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]、エチレン[Et]/TFE共重合体[ETFE]、Et/TFE/HFP共重合体[EFEP]、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFE]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]/TFE共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニル[PVF]、ポリフッ化ビニリデン[PVdF]、フッ化ビニリデン[VdF]/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/ペンタフルオロプロピレン共重合体、VdF/PAVE/TFE共重合体等が挙げられ、PFA、FEP及びETFEからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PFAが更に好ましい。
【0116】
上記PFAは、TFE単位と、PAVE単位又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)単位とを含む。上記PAVEとしては、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるモノマーが挙げられる。上記パーフルオロ(アルキルアリルエーテル)としては、上記一般式(B)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるモノマーが挙げられる。
【0117】
上記PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位と、PAVE単位又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)単位とのモル比(TFE単位/(PAVE単位又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)単位))が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。上記PFAは、TFE及びPAVE又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)と共重合可能な単量体に由来する重合単位が0.1~10モル%(TFE単位及びPAVE単位又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)単位が合計で90~99.9モル%)、より好ましくは0.1~5モル%、特に好ましくは0.2~4モル%である共重合体であることも好ましい。
【0118】
TFE及びPAVE又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)と共重合可能な単量体としては、HFP、式(I):CZ=CZ(CF(式中、Z、Z及びZは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Zは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、式(II):CF=CF-OCH-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、式(III):CZ=CZ-CZ-O-Rf(式中、式中、Z、Z及びZは、同一又は異なって、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、Z及びZは、水素原子又はフッ素原子を表し、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアリルエーテル単量体等が挙げられる。上記アリルエーテル単量体としては、CH=CFCF-O-Rf、CF=CFCH-O-Rf、CH=CHCF-O-Rf(式中、Rfは上記式(III)と同じ)等が好ましく挙げられる。
また、TFE及びPAVE又はパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)と共重合可能な単量体としては、更に、イタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0119】
上記PFAは、融点が180~320℃であることが好ましく、230~320℃であることがより好ましく、280~320℃であることが更に好ましい。
【0120】
上記PFAは、MFRが0.25g/10分以上、100g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であることが更に好ましく、また、90g/10分以下であることがより好ましく、80g/10分以下であることが更に好ましい。
PFAのMFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、測定温度372℃、荷重5kgにおいて内径2.095mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0121】
上記FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。上記FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する重合単位が0.1~10モル%(TFE単位及びHFP単位が合計で90~99.9モル%)、より好ましくは0.1~5モル%、特に好ましくは0.2~4モル%である共重合体であることも好ましい。
【0122】
TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、式(III)で表される単量体、式(II)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
また、TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、更に、イタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0123】
上記FEPは、融点が150~320℃であることが好ましく、200~320℃であることがより好ましく、240~320℃であることが更に好ましい。
【0124】
上記FEPは、MFRが0.25g/10分以上、100g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であることが更に好ましく、また、80g/10分以下であることがより好ましく、60g/10分以下であることが更に好ましい。
FEPのMFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、測定温度372℃、荷重5kgにおいて内径2.095mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0125】
上記ETFEとしては、TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が20/80以上90/10以下である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は37/63以上85/15以下であり、更に好ましいモル比は38/62以上80/20以下である。ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、下記式
CH=CXRf、CF=CFRf、CF=CFORf、CH=C(Rf(式中、Xは水素原子又はフッ素原子、Rfはエーテル結合を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)で表される単量体や式(III)で表される単量体が挙げられ、なかでも、CF=CFRf、CF=CFORf及びCH=CXRfで表される含フッ素ビニルモノマー、式(III)で表される単量体が好ましく、HFP、CF=CF-ORf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CF=CF-CF-O-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロアルキルアリルエーテル及びRfが炭素数1~8のフルオロアルキル基であるCH=CXRfで表される含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、イタコン酸、無水イタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸であってもよい。TFE及びエチレンと共重合可能な単量体は、含フッ素重合体に対して0.1~10モル%が好ましく、0.1~5モル%がより好ましく、0.2~4モル%が特に好ましい。
【0126】
上記ETFEは、融点が140~320℃であることが好ましく、160~320℃であることがより好ましく、195~320℃であることが更に好ましい。
【0127】
上記ETFEは、MFRが0.25g/10分以上、100g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であることが更に好ましく、また、90g/10分以下であることがより好ましく、80g/10分以下であることが更に好ましい。
ETFEのMFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、測定温度297℃、荷重5kgにおいて内径2.095mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0128】
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度(複素粘度)が1.0×10~1.0×10Pa・sであることが好ましい。
上記溶融粘度は、1.0×10Pa・s以上であることがより好ましく、1.5×10Pa・s以上であることが更に好ましく、7.0×10Pa・s以上であることが特にり好ましく、また、7.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、3.0×10Pa・s以下であることが更に好ましく、1.0×10Pa・s以下であることが特に好ましい。
本明細書において、「低分子量PTFE」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあるPTFEを意味する。
【0129】
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した値である。
【0130】
上記低分子量PTFEは、372℃、荷重5kgにおいて内径2.095mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られるMFRの値が0.25g/10分以上であることが好ましく、0.10g/10分以上であることがより好ましく、0.05g/10分以上であることが更に好ましい。上記MFRは、また、50g/10分以下であることが好ましく、30g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることが更に好ましい。
【0131】
上記低分子量PTFEは、融点が320~340℃であることが好ましい。上記融点は、324℃以上であることがより好ましく、また、336℃以下であることがより好ましく、333℃以下であることが更に好ましく、332℃以下であることが更により好ましく、331℃以下であることが殊更に好ましく、330℃以下であることが特に好ましい。
【0132】
上記低分子量PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0133】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0134】
上記変性モノマーとしては、溶融流動性を示さないフッ素樹脂としてのPTFE(高分子量PTFE)について上述した単量体が挙げられる。
【0135】
上述した重合体の各重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0136】
上記フッ素樹脂B1は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の公知の重合方法により製造することができる。
【0137】
フッ素樹脂組成物(1)は、フッ素樹脂B1の粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂B1の粒子は、フッ素樹脂B1の一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
【0138】
上記フッ素樹脂B1の粒子が一次粒子(水性分散液の状態)である場合は、平均一次粒子径が500nm以下であることが好ましい。上記平均一次粒子径は、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましい。上記平均一次粒子径は、また、10nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが更に好ましく、100nm以上であることが更により好ましく、150nm以上であることが特に好ましい。
上記平均一次粒子径は、固形分濃度を0.5質量%に調整した水性分散液をアルミ箔に滴下し、150℃、1時間の条件で水を乾燥除去したものの走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の粒子の直径の平均値である。
【0139】
上記フッ素樹脂B1の粒子が二次粒子(粉末の状態)である場合は、平均二次粒子径が100μm以下であることが好ましい。上記平均二次粒子径は、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。上記平均二次粒子径は、また、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0140】
フッ素樹脂組成物(1)は、更に、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂Cを含むことが好ましい。フッ素樹脂組成物(1)はフッ素樹脂Cを含まなくても引張特性に優れるが、フッ素樹脂Cを更に含むことで、引張特性が一層向上する。
フッ素樹脂組成物(1)は、フッ素樹脂A及びBと、任意で、フッ素樹脂Cとを含むものであることが好ましい。
【0141】
フッ素樹脂Cは、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する。
フッ素樹脂Cは、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。上記温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
融点が上記範囲内にあることは、融点以上の温度に加熱した履歴がない部分を有することを示す。
上記融点とともに、333℃未満の温度領域にも融点を有していても構わない。
【0142】
フッ素樹脂組成物(1)は、更にフッ素樹脂Cを含む場合、333℃未満の温度領域に1つ以上、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂Cとを含むことを示す。
【0143】
フッ素樹脂Cは、溶融流動性を示さない。溶融流動性については、上述したとおりである。
【0144】
フッ素樹脂Cとしては、PTFEが好ましい。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0145】
フッ素樹脂Cとしての上記PTFE(高分子量PTFE)は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0146】
フッ素樹脂Cとしての上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
融点以上の温度に加熱した履歴のないPTFEについての「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0147】
フッ素樹脂Cとしての上記PTFEは、通常、非溶融二次加工性を有する。非溶融二次加工性については、上述したとおりである。
【0148】
フッ素樹脂Cとしての上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0149】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0150】
フッ素樹脂Cとしての上記PTFEにおいて使用し得る変性モノマーは、フッ素樹脂AとしてのPTFE(高分子量PTFE)について例示したものと同様である。
【0151】
フッ素樹脂組成物(1)は、フッ素樹脂Cの粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂Cの粒子は、フッ素樹脂Cの一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
【0152】
上記フッ素樹脂Cの粒子が一次粒子(水性分散液の状態)である場合は、平均一次粒子径が500nm以下であることが好ましい。上記平均一次粒子径は、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが更に好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。上記平均一次粒子径は、また、10nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが更に好ましく、100nm以上であることが更により好ましく、150nm以上であることが特に好ましい。
上記平均一次粒子径は、固形分濃度を0.5質量%に調整した水性分散液をアルミ箔に滴下し、150℃、1時間の条件で水を乾燥除去したものの走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の粒子の直径の平均値である。
【0153】
上記フッ素樹脂Cの粒子が二次粒子(粉末の状態)である場合は、平均二次粒子径が700μm以下であることが好ましい。上記平均二次粒子径は、500μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが更により好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。上記平均二次粒子径は、また、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0154】
フッ素樹脂組成物(1)の一態様において、上記フッ素樹脂Cの粒子は、一次粒子の状態で存在する場合は、平均アスペクト比が2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが更により好ましく、1.4以下であることが殊更に好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。上記平均アスペクト比は、また、1.0以上であってよい。
【0155】
上記平均アスペクト比は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の一次粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0156】
フッ素樹脂組成物(1)の別の一態様において、上記フッ素樹脂Cの粒子は、一次粒子の状態で存在する場合は、上記フッ素樹脂Cの粒子の全数に対し、アスペクト比が2.5以上の上記フッ素樹脂Cの粒子の割合が0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、2.0%以上であることが特に好ましい。上記割合は、また、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0157】
上記割合は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の一次粒子について画像処理を行って各粒子のアスペクト比を算出し、上記抽出した粒子の全数に対する割合として求める。
【0158】
フッ素樹脂組成物(1)におけるフッ素樹脂Aの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~99.5質量%であることが好ましい。上記含有量は、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、また、99質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましく、90質量%以下であることが更により好ましく、85質量%以下であることが殊更に好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
【0159】
フッ素樹脂組成物(1)におけるフッ素樹脂B1の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、0.5~30質量%であることが好ましい。上記含有量は、1.0質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが更により好ましく、7質量%以上であることが特に好ましく、また、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが更により好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0160】
フッ素樹脂組成物(1)におけるフッ素樹脂Cの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、0~80質量%であることが好ましい。上記含有量は、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以上であることが更により好ましく、30質量%以上であることが殊更に好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、また、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、65質量%以下であることが更により好ましく、60質量%以下であることが殊更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0161】
フッ素樹脂組成物(1)におけるフッ素樹脂A~Cの合計量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更により好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0162】
フッ素樹脂組成物(1)は、溶融流動性を示さない。
フッ素樹脂組成物(1)のMFRは0.25g/10分未満であってよく、好ましくは0.10g/10分未満であり、より好ましくは0.05g/10分以下である。
【0163】
また、フッ素樹脂組成物(1)を圧縮成形した予備成形体(未焼成の成形体)を、当該フッ素樹脂組成物の融点以上で1時間以上加熱した場合に、加熱前の厚みに対する加熱後の厚みの減少率が20%未満であるか、又は、加熱後の厚みが加熱前の厚みより増加することも、当該フッ素樹脂組成物が溶融流動性示さないことを意味するので好ましい。
【0164】
フッ素樹脂組成物(1)は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含み、全重合単位に対し、上記変性モノマー単位の量が1.0質量%以下であることが好ましい。また、TFE単位の量が99.0質量%以上であることが好ましい。
【0165】
フッ素樹脂組成物(1)における上記変性モノマー単位の含有量の下限は、0質量%であってもよく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0166】
上記変性モノマー単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0167】
フッ素樹脂組成物(1)の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0168】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、平均二次粒子径が5~700μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0169】
フッ素樹脂組成物(1)は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0170】
フッ素樹脂組成物(1)は、引張特性が一層向上する点で、低分子量含フッ素化合物の含有量(総量)が、上記フッ素樹脂組成物に対し1質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb以下であることが更に好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが殊更に好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb以下であることが特により好ましく、1質量ppb以下であることが殊更特に好ましく、1質量ppb未満であることが最も好ましい。
上記低分子量含フッ素化合物の含有量は、試料をメタノールでソックスレー抽出した後、液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定する。
【0171】
上記低分子量含フッ素化合物としては、炭素数4以上の含フッ素カルボン酸及びその塩、炭素数4以上の含フッ素スルホン酸及びその塩等が挙げられ、これらはいずれもエーテル結合(-O-)を有していてもよい。
【0172】
上記低分子量含フッ素化合物としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0173】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤はまた、アニオン性部分の分子量が1000以下のフッ素を含む界面活性剤であってよく、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってもよい。
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
【0174】
上記低分子量含フッ素化合物としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0175】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、特開2007-119526号公報、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号明細書、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
【0176】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状又は環状で、一部又は全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
【0177】
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
は、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
【0178】
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0179】
上記一般式(N)で表される化合物としては、下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、F又はCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る、部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状又は分枝鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1及びYn2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、一般式(N):
【化3】
(式中、Xn2、Xn3及びXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状又は分岐鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状又は分岐鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4及びRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
【0180】
上記一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)等が挙げられる。
【0181】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I):
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるものである。
【0182】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II):
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0183】
上記パーフルオロエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III):
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0184】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV):
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0185】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V):
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状又は分枝鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0186】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI):
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0187】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII):
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0188】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII):
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0189】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX):
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0190】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X):
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状又は分枝鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状又は分枝鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0191】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI):
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状又は分枝鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0192】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化4】
(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状又は分岐鎖状の部分又は完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-SOM、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0193】
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CFClO(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOONH(平均分子量750の混合物、式中、n9及びn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
【0194】
上述したように上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が挙げられる。
【0195】
上記含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0196】
上記含フッ素界面活性剤としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、
【化5】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、上記定義したものである。)
【0197】
フッ素樹脂組成物(1)は、例えば、フッ素樹脂Aの粉末と、フッ素樹脂B1の粒子と、充填材と、必要に応じてフッ素樹脂Cの粒子とを混合することにより製造することができる。
【0198】
上記フッ素樹脂B1の粒子は、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されてもよく、水性分散液の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されてもよいが、引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、水性分散液の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されることが好ましい。
【0199】
上記フッ素樹脂B1の粒子を含む水性分散液は、公知の方法により製造することができる。例えば、アニオン性界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フッ素樹脂B1を構成するのに必要なモノマーの乳化重合を水性媒体中で行うことにより、製造することができる。上記乳化重合において、必要に応じて、連鎖移動剤、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤等を使用してもよい。
当業者であれば、上記乳化重合の条件を調整することにより、フッ素樹脂B1の組成や物性、粒子の物性等を制御することができる。
【0200】
上記水性分散液は、炭化水素系界面活性剤を含んでもよい。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。上記炭化水素系界面活性剤は、上記乳化重合に使用されたものであってもよく、上記乳化重合の後に添加されたものであってもよい。
【0201】
上記炭化水素系界面活性剤としては、例えば、特表2013-542308号公報、特表2013-542309号公報、特表2013-542310号公報に記載されているもの等を使用することができる。
【0202】
炭化水素系界面活性剤は、同じ分子上に親水性部分及び疎水性部分を有する。これらは、カチオン性、非イオン性又はアニオン性であってよい。
【0203】
カチオン性界面活性剤は、通常、アルキル化臭化アンモニウム等のアルキル化ハロゲン化アンモニウム等の正に帯電した親水性部分と、長鎖脂肪酸等の疎水性部分とを有する。
【0204】
アニオン性界面活性剤は、通常、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩等の親水性部分と、アルキル等の長鎖炭化水素部分である疎水性部分とを有する。
【0205】
非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖等の水溶性官能基を含む。
【0206】
上記炭化水素系界面活性剤は、アニオン系界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0207】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Resolution Performance ProductsのVersatic(登録商標)10、BASF製のAvanel Sシリーズ(S-70、S-74等)等が挙げられる。
【0208】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、R-L-M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を巻いていてもよい。Lが、-ArSO 、-SO 、-SO-、-PO 又は-COOであり、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。-ArSO は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
具体的には、CH-(CH-L-M(式中、nが、6~17の整数である。L及びMが、上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
Rが、12~16個の炭素原子を有するアルキル基であり、Lが、硫酸塩又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるものの混合物も使用できる。
【0209】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、R(-L-M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキレン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を巻いていてもよい。Lが、-ArSO 、-SO 、-SO-、-PO 又は-COOであり、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。-ArSO は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0210】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、R(-L-M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキリジン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキリジン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を巻いていてもよい。Lが、-ArSO 、-SO 、-SO-、-PO 又は-COOであり、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。-ArSO は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0211】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Akzo Nobel Surface Chemistry LLCのスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300等も挙げられる。
スルホサクシネート炭化水素系界面活性剤としては、スルホコハク酸ジイソデシルNa塩、(ClariantのEmulsogen(登録商標)SB10)、スルホコハク酸ジイソトリデシルNa塩(Cesapinia ChemicalsのPolirol(登録商標)TR/LNA)等が挙げられる。
【0212】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Omnova Solutions,Inc.のPolyFox(登録商標)界面活性剤(PolyFoxTMPF-156A、PolyFoxTMPF-136A等)も挙げられる。
【0213】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンアルキルエステル)、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンアルキルエステル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(グリセロールエステル)等のエステル型非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系非イオン性界面活性剤;それらの誘導体等が挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記非イオン性界面活性剤は、非フッ素化非イオン性界面活性剤であってよい。
【0214】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0215】
上記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0216】
上記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等が挙げられる。
【0217】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウリレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
【0218】
上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられる。
【0219】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール等が挙げられる。
【0220】
上記誘導体としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル-ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート等が挙げられる。
【0221】
上記エーテル型非イオン性界面活性剤及びエステル型非イオン性界面活性剤は、10~18のHLB値を有してよい。
【0222】
非イオン性炭化水素系界面活性剤としては、Dow Chemical Company製のTriton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN-6、TMN-10、TMN-100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m~22、n~23))、T-Detシリーズ(A138)、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA-6、TDA-9、TDA-10)等が挙げられる。
【0223】
上記非イオン性界面活性剤を構成する化合物において、その疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れであってもよいが、アルキルフェノール基を構造中に有しない化合物等、ベンゼン環を有さないものであることが好ましい。
【0224】
上記非イオン性界面活性剤としては、なかでも、エーテル結合(-O-)を有するものが好ましく、上述したエーテル型非イオン性界面活性剤がより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが更に好ましい。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素数10~20のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル構造からなるものが好ましく、炭素数10~15のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル構造からなるものがより好ましい。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル構造におけるアルキル基は、分岐構造を有していることが好ましい。
【0225】
上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記水性分散液の固形分に対し12質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が更により好ましく、2質量%以下が殊更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、また、1質量ppm以上であってよく、10質量ppm以上であってもよく、100質量ppm以上であってもよく、500質量ppm以上であってもよい。
【0226】
上記乳化重合により得られた水性分散液、又は、上記炭化水素系界面活性剤を含む水性分散液を、陰イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂を含む混床と接触させてもよく、濃縮してもよく、これらの両方により処理してもよい。上記処理を行うことにより、低分子量含フッ素化合物を除去することができる。上記処理としては、公知の処理を採用することができる。
【0227】
フッ素樹脂Aの粉末とフッ素樹脂B1の粒子を含む水性分散液とを混合して得られた混合物を凝析してもよい。凝析の方法としては、凍結や機械的剪断力により乳化粒子を凝集させる方法が挙げられる。メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0228】
上記混合物を乾燥することにより、フッ素樹脂組成物が得られる。上記凝析により得られた湿潤粉末を乾燥してもよい。
乾燥の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行うことができる。
上記乾燥の温度としては、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましく、また、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
【0229】
上記フッ素樹脂Cの粒子は、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末(及びフッ素樹脂B1の粒子)と混合されてもよく、水性分散液の形態でフッ素樹脂Aの粉末(及びフッ素樹脂B1の粒子)と混合されてもよい。
【0230】
得られたフッ素樹脂組成物を粉砕してもよい。上記粉砕は公知の方法により行ってよく、例えば、エアジェットミル、ハンマーミル、フォースミル、石臼型の粉砕機、凍結粉砕機等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0231】
得られたフッ素樹脂組成物を造粒してもよい。これにより、見掛密度が高く、取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物が得られる。
上記造粒の方法としては、公知の方法が挙げられ、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等が挙げられる。
【0232】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない懸濁重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂B2と、充填材とを含み、見掛密度が0.42g/ml以上であるフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(2a)ともいう。)であることも好ましい。
【0233】
フッ素樹脂組成物(2a)は、融点以上の温度に加熱した履歴のない懸濁重合で重合されたフッ素樹脂B2を含み、かつ見掛密度が特定の範囲内にあるので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂Aを含むにもかかわらず、取り扱い性(例えば、運搬時や圧縮成形時の取り扱い性)に優れる。
また、フッ素樹脂組成物(2a)は、良好な引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)を有する。
【0234】
フッ素樹脂組成物(2a)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂B2とを含むことを示す。
【0235】
フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂A及び充填材としては、上述したものを使用することができる。
【0236】
フッ素樹脂B2は、融点以上の温度に加熱した履歴を有さない。
【0237】
フッ素樹脂B2は、融点が100~360℃であることが好ましい。上記融点は、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
【0238】
フッ素樹脂B2は、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。上記温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
融点が上記範囲内にあることは、融点以上の温度に加熱した履歴がないことを示す。
なお、上記融点とともに、333℃未満の温度領域にも融点を有していても構わない。
【0239】
フッ素樹脂B2は溶融流動性を示さない。溶融流動性については、上述したとおりである。
【0240】
フッ素樹脂B2としては、PTFEが好ましい。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0241】
フッ素樹脂B2としての上記PTFE(高分子量PTFE)は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0242】
フッ素樹脂B2としての上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
融点以上の温度に加熱した履歴のないPTFEについての「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0243】
フッ素樹脂B2としての上記PTFEは、通常、非溶融二次加工性を有する。非溶融二次加工性については、上述したとおりである。
【0244】
フッ素樹脂B2としての上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
見掛密度が一層高く、取り扱い性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる点、及び、引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる点では、変性PTFEが好ましい。
【0245】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0246】
フッ素樹脂B2としての上記PTFEにおいて使用し得る変性モノマーは、フッ素樹脂AとしてのPTFE(高分子量PTFE)について例示したものと同様である。
【0247】
フッ素樹脂B2は、懸濁重合で重合されたものである。懸濁重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂は、繊維化しにくいので、フッ素樹脂組成物の見掛密度を高くすることができ、取り扱い性を向上させることができる。
【0248】
懸濁重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂B2は、以下の全てを満たすものであることが好ましい。
(i)走査電子顕微鏡(SEM)の画像処理による粒子径が1μm以下の粒子の割合が30%以下である。
(ii)メタノールでソックスレー抽出した抽出液を用いた液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定されるアニオン性含フッ素界面活性剤の量が1質量ppm以下である。
【0249】
上記懸濁重合は公知の方法により行うことができる。例えば、アニオン性含フッ素界面活性剤を用いないか又は限られた量を用い、水性媒体中に重合開始剤を分散させ、フッ素樹脂B2を構成するのに必要なモノマーを重合させることによって、フッ素樹脂B2の顆粒状粉末を直接単離することができる。
【0250】
フッ素樹脂B2としては、上記懸濁重合により直接得られた粉末を用いてもよく、上記粉末を粉砕、及び/又は造粒して得られる粉末を用いてもよい。
上記粉砕は公知の方法により行ってよく、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル、カッターミル等の粉砕機を用いて粉砕する方法により行うことができる。
上記造粒も公知の方法により行ってよく、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等の方法により行うことができる。
【0251】
フッ素樹脂組成物(2a)は、フッ素樹脂B2の粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂B2の粒子は、フッ素樹脂B2の二次粒子であってよい。
【0252】
上記フッ素樹脂B2の粒子は、平均二次粒子径が1~700μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが更により好ましい。また、500μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0253】
上記フッ素樹脂B2の粒子は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0254】
フッ素樹脂組成物(2a)は、見掛密度が0.42g/ml以上である。見掛密度が上記範囲内にあることで、フッ素樹脂組成物(2a)は取り扱い性に優れる。
取り扱い性に一層優れる点で、上記見掛密度は、0.45g/ml以上であることが好ましく、0.47g/ml以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0255】
フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂Aの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが更により好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、また、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、80質量%未満であることが更により好ましく、75質量%以下であることが殊更に好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0256】
フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂B2の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、20質量%超であることが更により好ましく、25質量%以上であることが殊更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが更により好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0257】
フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂A及びB2の合計量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更により好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0258】
フッ素樹脂組成物(2a)は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含み、全重合単位に対し、上記変性モノマー単位の量が1.0質量%以下であることが好ましい。また、TFE単位の量が99.0質量%以上であることが好ましい。
【0259】
フッ素樹脂組成物(2a)における上記変性モノマー単位の含有量の下限は、0質量%であってもよく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
上記変性モノマー単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0260】
フッ素樹脂組成物(2a)の好適な態様の1つは、フッ素樹脂B2がTFEの単独重合体であり、かつ、フッ素樹脂Aの含有量が上記フッ素樹脂組成物に対し50質量%以上、80質量%未満であることである。この態様において、フッ素樹脂Aの含有量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
【0261】
また、フッ素樹脂組成物(2a)の別の好適な態様の1つは、フッ素樹脂Aの含有量が上記フッ素樹脂組成物に対し50質量%以上であり、かつ、上記フッ素樹脂組成物の引張破断強度が20MPa以上であることである。
上記引張破断強度は、φ100mmの金型に35gの上記フッ素樹脂組成物を投入し、30MPaの圧力、1分間の条件で圧縮成形し、室温から300℃まで3時間で昇温し、その後300℃から370℃まで4時間で昇温し、370℃で12時間保持した後、300℃まで5時間で降温したのち、室温まで1時間で降温する工程により焼成した成形体を打ち抜いて作成したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。
この態様において、フッ素樹脂B2がTFEの単独重合体であることも好ましい。
【0262】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない懸濁重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂B2と、充填材とを含み、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含むフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(2b)ともいう。)であることも好ましい。
フッ素樹脂組成物(2b)は、特定の単量体組成を有するので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂Aを含むにもかかわらず、取り扱い性(例えば、運搬時や圧縮成形時の取り扱い性)に優れる。
また、フッ素樹脂組成物(2b)は、良好な引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)を有する。
【0263】
フッ素樹脂組成物(2b)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂B2とを含むことを示す。
【0264】
フッ素樹脂組成物(2b)におけるフッ素樹脂A及び充填材としては、上述したものを使用することができる。
【0265】
フッ素樹脂組成物(2b)におけるフッ素樹脂B2としては、フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂B2と同様のものを使用することができ、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位(TFE単位)と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位と)とを含む変性PTFEが好ましい。上記フッ素樹脂B2は、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記変性モノマーとしては、フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂B2としての変性PTFEについて上述した単量体が挙げられる。変性モノマー単位の含有量の好適な範囲もフッ素樹脂組成物(2a)について説明した範囲と同様である。
【0266】
フッ素樹脂組成物(2b)におけるフッ素樹脂B2の、組成以外の構成は、フッ素樹脂組成物(2a)におけるフッ素樹脂B2と同様である。
【0267】
フッ素樹脂組成物(2b)は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む。フッ素樹脂組成物(2b)は、重合単位として、TFE単位及び変性モノマー単位のみを含むものであってよい。
【0268】
フッ素樹脂組成物の取り扱い性及び引張特性が一層向上する点で、上記変性モノマー単位の含有量は、上記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.00001質量%が好ましく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0269】
フッ素樹脂組成物(2b)は、全重合単位に対しTFE単位を99.0質量%以上含むことが好ましい。
【0270】
フッ素樹脂組成物(2b)を構成する重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0271】
フッ素樹脂組成物(2b)におけるフッ素樹脂A及びB2の含有量、並びに、フッ素樹脂A及びBの合計量は、フッ素樹脂組成物(2a)について説明した各量と同様である。
【0272】
フッ素樹脂組成物(2b)は、取り扱い性に一層優れる点で、見掛密度が0.42g/ml以上であることが好ましく、0.45g/ml以上であることがより好ましく、0.47g/ml以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0273】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0274】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)においては、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さが、フッ素樹脂B2の粒子の最大直線長さより小さいことが好ましい。フッ素樹脂A及びB2の粒子の最大直線長さが上記関係にあると、フッ素樹脂組成物の見掛密度を高くすることができ、取り扱い性が一層向上する。また、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さを増大させるための変形化処理を行う必要がないので、フッ素樹脂組成物の製造コストを低減することができる。
【0275】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)は、以下の全てを満たすものであることが好ましい。
(i)走査電子顕微鏡(SEM)の画像処理による粒子径が1μm以下の粒子の割合が30%以下である。
(ii)メタノールでソックスレー抽出した抽出液を用いた液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定されるアニオン性含フッ素界面活性剤の量が1質量ppm以下である。
【0276】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)は、流動性に優れ、取り扱い性に一層優れる点で、安息角が40°未満であることが好ましく、38°未満であることがより好ましく、35°未満であることが更に好ましい。
上記安息角は、全高115mm、足部径φ26mm、足部長さ35mm、取込部の開きが60°の漏斗を、漏斗の底面から試料落下面までの高さが100mmとなるように設置し、40gの試料を漏斗から落とし、落下した試料の山の下半分の角度を分度器で測定して得られる値である。
【0277】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)は、平均二次粒子径が5~700μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0278】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0279】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)は、引張特性が一層向上する点で、低分子量含フッ素化合物の含有量(総量)が、上記フッ素樹脂組成物に対し1質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb以下であることが更に好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが殊更に好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb以下であることが特により好ましく、1質量ppb以下であることが殊更特に好ましく、1質量ppb未満であることが最も好ましい。
上記低分子量含フッ素化合物の含有量は、試料をメタノールでソックスレー抽出した後、液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定する。
【0280】
上記低分子量含フッ素化合物としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0281】
フッ素樹脂組成物(2a)及び(2b)は、例えば、フッ素樹脂Aの粉末と、フッ素樹脂B2の粒子と、充填材とを混合することにより製造することができる。上記フッ素樹脂B2の粒子は、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されることが好ましい。混合の方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。粉砕機中で混合を行うこともできる。
見掛密度が一層高く、取り扱い性に一層優れるフッ素樹脂組成物を容易に得る点では、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さを、フッ素樹脂B2の粒子の最大直線長さより小さくすることが好ましい。
【0282】
得られたフッ素樹脂組成物を粉砕してもよい。上記粉砕は公知の方法により行ってよく、例えば、エアジェットミル、ハンマーミル、フォースミル、石臼型の粉砕機、凍結粉砕機等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0283】
得られたフッ素樹脂組成物を造粒してもよい。これにより、見掛密度が一層高く、取り扱い性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる。
上記造粒の方法としては、公知の方法が挙げられ、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等が挙げられる。
【0284】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない乳化重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂B3と、充填材とを含み、見掛密度が0.42g/ml以上であるフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(3a)ともいう。)であることも好ましい。
フッ素樹脂組成物(3a)は、融点以上の温度に加熱した履歴のない乳化重合で重合されたフッ素樹脂B3を含み、かつ見掛密度が特定の範囲内にあるので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂Aを含むにもかかわらず、取り扱い性(例えば、運搬時や圧縮成形時の取り扱い性)に優れる。
また、フッ素樹脂組成物(3a)は、良好な引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)を有する。
【0285】
フッ素樹脂組成物(3a)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂B3とを含むことを示す。
【0286】
フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂A及び充填材としては、上述したものを使用することができる。
【0287】
フッ素樹脂B3は、融点以上の温度に加熱した履歴を有さない。
【0288】
フッ素樹脂B3は、融点が100~360℃であることが好ましい。上記融点は、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
【0289】
フッ素樹脂B3は、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。上記温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
融点が上記範囲内にあることは、融点以上の温度に加熱した履歴がないことを示す。
なお、上記融点とともに、333℃未満の温度領域にも融点を有していても構わない。
【0290】
フッ素樹脂B3は溶融流動性を示さない。溶融流動性については、上述したとおりである。
【0291】
フッ素樹脂B3としては、PTFEが好ましい。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0292】
フッ素樹脂B3としての上記PTFE(高分子量PTFE)は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0293】
フッ素樹脂B3としての上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
融点以上の温度に加熱した履歴のないPTFEについての「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0294】
フッ素樹脂B3としての上記PTFEは、通常、非溶融二次加工性を有する。非溶融二次加工性については、上述したとおりである。
【0295】
フッ素樹脂B3としての上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
フッ素樹脂組成物の取り扱い性及び引張特性が一層向上する点では、変性PTFEが好ましい。
【0296】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0297】
フッ素樹脂B3としての上記PTFEにおいて使用し得る変性モノマーは、フッ素樹脂AとしてのPTFE(高分子量PTFE)について例示したものと同様である。
【0298】
フッ素樹脂B3は、乳化重合で重合されたものである。乳化重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂B3は、以下のいずれかを満たすものであってよく、全てを満たすものであることが好ましい。
(i)走査電子顕微鏡(SEM)の画像処理による粒子径が1μm以下の粒子(一次粒子)の割合が50%超、好ましくは70%超、より好ましくは90%超である。
(ii)メタノールでソックスレー抽出した抽出液を用いた液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定されるアニオン性含フッ素界面活性剤の量が1質量ppb以上である。
【0299】
上記乳化重合は公知の方法により行うことができる。例えば、アニオン性含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フッ素樹脂B3を構成するのに必要なモノマーの乳化重合を水性媒体中で行うことにより、フッ素樹脂B3の粒子(一次粒子)を含む水性分散液が得られる。上記乳化重合において、必要に応じて、連鎖移動剤、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤等を使用してもよい。
【0300】
上記水性分散液は、炭化水素系界面活性剤を含んでもよい。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。上記炭化水素系界面活性剤は、上記乳化重合に使用されたものであってもよく、上記乳化重合の後に添加されたものであってもよい。
【0301】
上記炭化水素系界面活性剤としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0302】
上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記水性分散液の固形分に対し12質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が更により好ましく、2質量%以下が殊更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、また、1質量ppm以上であってよく、10質量ppm以上であってもよく、100質量ppm以上であってもよく、500質量ppm以上であってもよい。
【0303】
上記水性分散液から、フッ素樹脂B3を提供してもよい。
また、上記水性分散液を凝析し、乾燥することにより、フッ素樹脂B3の粒子を含む粉末が得られる。上記粉末から、フッ素樹脂B3を提供してもよい。
凝析及び乾燥は、いずれも公知の方法により行うことができる。
【0304】
フッ素樹脂組成物(3a)は、フッ素樹脂B3の粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂B3の粒子は、フッ素樹脂B3の一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
【0305】
上記フッ素樹脂B3の二次粒子は、上記フッ素樹脂組成物の取り扱い性が一層向上する点で、平均二次粒子径が1000μm以下であることが好ましい。上記平均二次粒子径は、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが更に好ましく、700μm以下であることが特に好ましい。上記平均二次粒子径は、また、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが更に好ましく、400μm以上であることが特に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0306】
上記フッ素樹脂B3の粒子は、上記フッ素樹脂組成物の取り扱い性が一層向上する点で、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であることがより好ましく、1200μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0307】
フッ素樹脂組成物(3a)は、見掛密度が0.42g/ml以上である。見掛密度が上記範囲内にあることで、フッ素樹脂組成物(3a)は取り扱い性に優れる。
取り扱い性に一層優れる点で、上記見掛密度は、0.45g/ml以上であることが好ましく、0.47g/ml以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0308】
フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂Aの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが更により好ましく、50質量%以上であることが殊更に好ましく、50質量%超であることが特に好ましく、また、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、80質量%未満であることが更により好ましく、75質量%以下であることが殊更に好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0309】
フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂B3の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、20質量%超であることが更により好ましく、25質量%以上であることが殊更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが更により好ましく、50質量%以下であることが殊更に好ましく、50質量%未満であることが特に好ましい。
【0310】
フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂A及びB3の合計量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更により好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0311】
フッ素樹脂組成物(3a)は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含み、全重合単位に対し、上記変性モノマー単位の量が1.0質量%以下であることが好ましい。また、TFE単位の量が99.0質量%以上であることが好ましい。
【0312】
フッ素樹脂組成物(3a)における上記変性モノマー単位の含有量の下限は、0質量%であってもよく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
上記変性モノマー単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0313】
本開示は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない乳化重合で重合された溶融流動性を示さないフッ素樹脂B3と、充填材とを含み、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含むフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(3b)ともいう。)であることも好ましい。
フッ素樹脂組成物(3b)は、特定の単量体組成を有するので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂Aを含むにもかかわらず、取り扱い性(例えば、運搬時や圧縮成形時の取り扱い性)に優れる。
また、フッ素樹脂組成物(3b)は、良好な引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)を有する。
【0314】
フッ素樹脂組成物(3b)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂B3とを含むことを示す。
【0315】
フッ素樹脂組成物(3b)におけるフッ素樹脂Aとしては、フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂Aと同様のものを使用することができる。
【0316】
フッ素樹脂組成物(3b)におけるフッ素樹脂B3としては、フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂B3と同様のものを使用することができ、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位(TFE単位)と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位と)とを含む変性PTFEが好ましい。上記フッ素樹脂B3は、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記変性モノマーとしては、フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂B3としての変性PTFEについて上述した単量体が挙げられる。変性モノマー単位の含有量の好適な範囲もフッ素樹脂組成物(3a)について説明した範囲と同様である。
【0317】
フッ素樹脂組成物(3b)におけるフッ素樹脂B3の、組成以外の構成は、フッ素樹脂組成物(3a)におけるフッ素樹脂B3と同様である。
【0318】
フッ素樹脂組成物(3b)は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む。フッ素樹脂組成物(3b)は、重合単位として、TFE単位及び変性モノマー単位のみを含むものであってよい。
【0319】
フッ素樹脂組成物の取り扱い性及び引張特性が一層向上する点で、上記変性モノマー単位の含有量は、上記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.00001質量%が好ましく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0320】
フッ素樹脂組成物(3b)は、全重合単位に対しTFE単位を99.0質量%以上含むことが好ましい。
【0321】
フッ素樹脂組成物(3b)を構成する重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0322】
フッ素樹脂組成物(3b)におけるフッ素樹脂A及びB3の含有量、並びに、フッ素樹脂A及びB3の合計量は、フッ素樹脂組成物(3a)について説明した各量と同様である。
【0323】
フッ素樹脂組成物(3b)は、取り扱い性に一層優れる点で、見掛密度が0.42g/ml以上であることが好ましく、0.45g/ml以上であることがより好ましく、0.47g/ml以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0324】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0325】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)は、以下のいずれかを満たすものであってよく、全てを満たすものであることが好ましい。
(i)走査電子顕微鏡(SEM)の画像処理による粒子径が1μm以下の粒子(一次粒子)の割合が50%超、好ましくは70%超、より好ましくは90%超である。
(ii)メタノールでソックスレー抽出した抽出液を用いた液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定されるアニオン性含フッ素界面活性剤の量が1質量ppb以上である。
【0326】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)は、流動性に優れ、取り扱い性に一層優れる点で、安息角が40°未満であることが好ましく、38°未満であることがより好ましく、35°未満であることが更に好ましい。
上記安息角は、全高115mm、足部径φ26mm、足部長さ35mm、取込部の開きが60°の漏斗を、漏斗の底面から試料落下面までの高さが100mmとなるように設置し、40gの試料を漏斗から落とし、落下した試料の山の下半分の角度を分度器で測定して得られる値である。
【0327】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)は、平均二次粒子径が50~500μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、70μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、また、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0328】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、100μm以上であることが特に好ましく、また、800μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0329】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)は、引張特性が一層向上する点で、低分子量含フッ素化合物の含有量(総量)が、上記フッ素樹脂組成物に対し1質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb以下であることが更に好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが殊更に好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb以下であることが特により好ましく、1質量ppb以下であることが殊更特に好ましく、1質量ppb未満であることが最も好ましい。
上記低分子量含フッ素化合物の含有量は、試料をメタノールでソックスレー抽出した後、液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定する。
【0330】
上記低分子量含フッ素化合物としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0331】
フッ素樹脂組成物(3a)及び(3b)は、例えば、フッ素樹脂Aの粉末と、フッ素樹脂B3の粒子と、充填材とを混合することにより製造することができる。
【0332】
上記フッ素樹脂B3の粒子は、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されてもよく、水性分散液の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されてもよいが、取り扱い性及び引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる点で、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されることが好ましい。
【0333】
上記混合は、例えば、回転ブレードを備える粉砕機を用いて行うことができる。上記回転ブレードを備える粉砕機としては、例えば、大阪ケミカル社製ワンダークラッシャーWC-3が挙げられる。
上記粉砕機を用いた混合の際、ブレードの回転数を1500~10000rpmとすることが好ましい。回転数を上記範囲内とすることにより、混合時の剪断力を低減し、フッ素樹脂B3の繊維化を抑制することができるので、見掛密度が高く、取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物が得られる。フッ素樹脂B3がTFEの単独重合体である場合には、回転数を1500~2500rpmとすることが好ましい。
【0334】
また、混合後のフッ素樹脂組成物を造粒することによっても、見掛密度が高く、取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物が得られる。この態様における上記混合は、フッ素樹脂B3が繊維化しやすい条件で行ってもよい。
上記造粒の方法としては、公知の方法が挙げられ、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等が挙げられる。
【0335】
得られたフッ素樹脂組成物を粉砕してもよい。上記粉砕は公知の方法により行ってよく、例えば、エアジェットミル、ハンマーミル、フォースミル、石臼型の粉砕機、凍結粉砕機等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0336】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂B4と、充填材とを含み、テトラフルオロエチレン(TFE)単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含むフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(4)ともいう。)であることも好ましい。
フッ素樹脂組成物(4)は、特定の単量体組成を有するので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂Aを含むにもかかわらず、取り扱い性(例えば、運搬時や圧縮成形時の取り扱い性)に優れる。
また、フッ素樹脂組成物(4)は、引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)にも優れる。
【0337】
フッ素樹脂組成物(4)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333~360℃の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂B4とを含むことを示す。
【0338】
フッ素樹脂組成物(4)におけるフッ素樹脂A及び充填材としては、上述したものを使用することができる。
【0339】
フッ素樹脂B4は、融点以上の温度に加熱した履歴を有さない。
【0340】
フッ素樹脂B4は、融点が100~360℃であることが好ましい。上記融点は、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
【0341】
フッ素樹脂B4は、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。上記温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
融点が上記範囲内にあることは、融点以上の温度に加熱した履歴がないことを示す。
なお、上記融点とともに、333℃未満の温度領域にも融点を有していても構わない。
【0342】
フッ素樹脂B4は溶融流動性を示さない。溶融流動性については、上述したとおりである。
【0343】
フッ素樹脂B4としては、PTFEが好ましい。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0344】
フッ素樹脂B4としての上記PTFE(高分子量PTFE)は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0345】
フッ素樹脂B4としての上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
融点以上の温度に加熱した履歴のないPTFEについての「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0346】
フッ素樹脂B4としての上記PTFEは、通常、非溶融二次加工性を有する。非溶融二次加工性については、上述したとおりである。
【0347】
フッ素樹脂B4としての上記PTFEは、見掛密度が一層高く、取り扱い性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる点、及び、引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる点で、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであることが好ましい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0348】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0349】
フッ素樹脂B4としての上記PTFEにおいて使用し得る変性モノマーは、フッ素樹脂AとしてのPTFE(高分子量PTFE)について例示したものと同様である。
【0350】
フッ素樹脂B4は、懸濁重合又は乳化重合により製造することができる。
【0351】
上記懸濁重合は公知の方法により行うことができる。例えば、アニオン性含フッ素界面活性剤を用いないか又は限られた量を用い、水性媒体中に重合開始剤を分散させ、フッ素樹脂B4を構成するのに必要なモノマーを重合させることによって、フッ素樹脂B4の顆粒状粉末を直接単離することができる。
【0352】
フッ素樹脂B4としては、上記懸濁重合により直接得られた粉末を用いてもよく、上記粉末を粉砕、及び/又は造粒して得られる粉末を用いてもよい。
上記粉砕は公知の方法により行ってよく、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル、カッターミル等の粉砕機を用いて粉砕する方法により行うことができる。
上記造粒も公知の方法により行ってよく、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等の方法により行うことができる。
【0353】
上記乳化重合は公知の方法により行うことができる。例えば、アニオン性含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フッ素樹脂B4を構成するのに必要なモノマーの乳化重合を水性媒体中で行うことにより、フッ素樹脂B4の粒子(一次粒子)を含む水性分散液が得られる。上記乳化重合において、必要に応じて、連鎖移動剤、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤等を使用してもよい。
【0354】
上記水性分散液は、炭化水素系界面活性剤を含んでもよい。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。上記炭化水素系界面活性剤は、上記乳化重合に使用されたものであってもよく、上記乳化重合の後に添加されたものであってもよい。
【0355】
上記炭化水素系界面活性剤としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0356】
上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記水性分散液の固形分に対し12質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が更により好ましく、2質量%以下が殊更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、また、1質量ppm以上であってよく、10質量ppm以上であってもよく、100質量ppm以上であってもよく、500質量ppm以上であってもよい。
【0357】
上記水性分散液から、フッ素樹脂B4を提供してもよい。
また、上記水性分散液を凝析し、乾燥することにより、フッ素樹脂B4の粒子を含む粉末が得られる。上記粉末から、フッ素樹脂B4を提供してもよい。
凝析及び乾燥は、いずれも公知の方法により行うことができる。
【0358】
フッ素樹脂組成物(4)は、フッ素樹脂B4の粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂B4の粒子は、フッ素樹脂B4の二次粒子であってよい。
【0359】
上記フッ素樹脂B4の粒子は、平均二次粒子径が1~1000μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが更により好ましい。また、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが更に好ましく、700μm以下であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0360】
上記フッ素樹脂B4の粒子は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であることがより好ましく、1200μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0361】
フッ素樹脂組成物(4)は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む。フッ素樹脂組成物(4)は、重合単位として、TFE単位及び変性モノマー単位のみを含むものであってよい。
【0362】
取り扱い性及び引張特性が一層向上する点で、上記変性モノマー単位の含有量は、上記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.00001質量%が好ましく、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0363】
フッ素樹脂組成物(4)は、全重合単位に対しTFE単位を99.0質量%以上含むことが好ましい。
【0364】
フッ素樹脂組成物(4)を構成する重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0365】
フッ素樹脂組成物(4)は、取り扱い性に一層優れる点で、見掛密度が0.40g/ml以上であることが好ましく、0.42g/ml以上であることがより好ましく、0.45g/ml以上であることが更に好ましく、0.47g/ml以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0366】
フッ素樹脂組成物(4)におけるフッ素樹脂Aの含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが更により好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、また、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、80質量%未満であることが更により好ましく、75質量%以下であることが殊更に好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0367】
フッ素樹脂組成物(4)におけるフッ素樹脂B4の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、10~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、20質量%超であることが更により好ましく、25質量%以上であることが殊更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが更により好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0368】
フッ素樹脂組成物(4)におけるフッ素樹脂A及びB4の合計量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更により好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0369】
フッ素樹脂組成物(4)の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0370】
フッ素樹脂組成物(4)においては、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さが、フッ素樹脂B4の粒子の最大直線長さより小さいことが好ましい。フッ素樹脂A及びB4の粒子の最大直線長さが上記関係にあると、フッ素樹脂組成物の見掛密度を高くすることができ、取り扱い性が一層向上する。また、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さを増大させるための変形化処理を行う必要がないので、フッ素樹脂組成物の製造コストを低減することができる。
上記態様は、フッ素樹脂B4が懸濁重合により得られるものである場合に、特に好適である。
【0371】
フッ素樹脂組成物(4)は、流動性に優れ、取り扱い性に一層優れる点で、安息角が40°未満であることが好ましく、38°未満であることがより好ましく、35°未満であることが更に好ましい。
上記安息角は、全高115mm、足部径φ26mm、足部長さ35mm、取込部の開きが60°の漏斗を、漏斗の底面から試料落下面までの高さが100mmとなるように設置し、40gの試料を漏斗から落とし、落下した試料の山の下半分の角度を分度器で測定して得られる値である。
【0372】
フッ素樹脂組成物(4)は、平均二次粒子径が5~700μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0373】
フッ素樹脂組成物(4)は、D90が10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、また、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0374】
フッ素樹脂組成物(4)は、引張特性が一層向上する点で、低分子量含フッ素化合物の含有量(総量)が、上記フッ素樹脂組成物に対し1質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb以下であることが更に好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが殊更に好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb以下であることが特により好ましく、1質量ppb以下であることが殊更特に好ましく、1質量ppb未満であることが最も好ましい。
上記低分子量含フッ素化合物の含有量は、試料をメタノールでソックスレー抽出した後、液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定する。
【0375】
上記低分子量含フッ素化合物としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0376】
フッ素樹脂組成物(4)は、例えば、フッ素樹脂Aの粉末と、フッ素樹脂B4の粒子と、充填材とを混合することにより製造することができる。
【0377】
上記フッ素樹脂B4の粒子は、懸濁重合により得られる場合、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されることが好ましい。混合の方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。粉砕機中で混合を行うこともできる。
見掛密度が一層高く、取り扱い性に一層優れるフッ素樹脂組成物を容易に得る点では、フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さを、フッ素樹脂B4の粒子の最大直線長さより小さくすることが好ましい。
【0378】
また、上記フッ素樹脂B4の粒子は、乳化重合により得られる場合、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されてもよく、水性分散液の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されてもよいが、取り扱い性及び引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物が得られる点で、粉末の形態でフッ素樹脂Aの粉末と混合されることが好ましい。
【0379】
上記混合は、例えば、回転ブレードを備える粉砕機を用いて行うことができる。上記回転ブレードを備える粉砕機としては、例えば、大阪ケミカル社製ワンダークラッシャーWC-3が挙げられる。
上記粉砕機を用いた混合の際、ブレードの回転数を1500~10000rpmとすることが好ましい。回転数を上記範囲内とすることにより、混合時の剪断力を低減し、フッ素樹脂B4の繊維化を抑制することができるので、見掛密度が高く、取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物が得られる。
【0380】
また、混合後のフッ素樹脂組成物を造粒することによっても、見掛密度が高く、取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物が得られる。この態様における上記混合は、フッ素樹脂B4が繊維化しやすい条件で行ってもよい。
上記造粒の方法としては、公知の方法が挙げられ、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等が挙げられる。
【0381】
得られたフッ素樹脂組成物を粉砕してもよい。上記粉砕は公知の方法により行ってよく、例えば、エアジェットミル、ハンマーミル、フォースミル、石臼型の粉砕機、凍結粉砕機等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0382】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、融点以上の温度に加熱した履歴のないフッ素樹脂B5と、充填材とを含むフッ素樹脂組成物であって、一次粒子径1μm以下の微粒子を含むフッ素樹脂組成物(フッ素樹脂組成物(5)ともいう。)であることも好ましい。
フッ素樹脂組成物(5)は、融点以上の温度に加熱した履歴のないフッ素樹脂を含み、かつ特定の粒子径を有する微粒子を含むので、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、着色が少なく引張特性に優れる。
【0383】
フッ素樹脂組成物(5)は、333℃未満の温度領域に1つ以上、333℃以上の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。
上記333℃未満の温度領域は、332℃未満であることがより好ましく、331℃未満であることが更に好ましく、100℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。
上記333℃以上の温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃であることが更に好ましく、また、360℃以下であることが好ましく、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
上記2つの温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂A(好ましくはPTFE)と、融点以上の温度に加熱した履歴のないフッ素樹脂B5(好ましくは溶融流動性を示さないフッ素樹脂、より好ましくはPTFE)とを含むことを示す。
【0384】
フッ素樹脂組成物(5)におけるフッ素樹脂A及び充填材としては、上述したものを使用することができる。
【0385】
フッ素樹脂B5は、融点以上の温度に加熱した履歴を有さない。
【0386】
フッ素樹脂B5は、融点が100~360℃であることが好ましい。上記融点は、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
【0387】
フッ素樹脂B5は、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有することが好ましい。上記温度領域は、334℃以上であることがより好ましく、335℃以上であることが更に好ましく、また、355℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。
融点が上記範囲内にあることは、フッ素樹脂B5(好ましくは溶融流動性を示さないフッ素樹脂、より好ましくはPTFE)に、融点以上の温度に加熱した履歴がないことを示す。
なお、上記融点とともに、333℃未満の温度領域にも融点を有していても構わない。
【0388】
フッ素樹脂B5としては、PTFE、PFA、FEP、ETFE、EFEP、PCTFE、CTFE/TFE共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、Et/CTFE共重合体、PVF、PVdF、VdF/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/ペンタフルオロプロピレン共重合体、VdF/PAVE/TFE共重合体、低分子量PTFE等が挙げられる。
【0389】
フッ素樹脂B5としての上記PTFEは、溶融流動性を示さない。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0390】
フッ素樹脂B5としての上記PTFE(高分子量PTFE)は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0391】
フッ素樹脂B5としての上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
融点以上の温度に加熱した履歴のないPTFEについての「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0392】
フッ素樹脂B5としての上記PTFEは、通常、非溶融二次加工性を有する。非溶融二次加工性については、上述したとおりである。
【0393】
フッ素樹脂B5としての上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0394】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0395】
フッ素樹脂B5としての上記PTFEにおいて使用し得る変性モノマーは、フッ素樹脂AとしてのPTFE(高分子量PTFE)について例示したものと同様である。
【0396】
フッ素樹脂B5としての上記低分子量PTFEは、溶融流動性を示す。上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度(複素粘度)が1.0×10~1.0×10Pa・sである。上記溶融粘度は、1.0×10以上であることが好ましく、1.5×10Pa・s以上であることがより好ましく、7.0×10Pa・s以上であることが更に好ましく、また、7.0×10以下であることが好ましく、3.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、1.0×10Pa・s以下であることが更に好ましい。
本明細書において、「低分子量PTFE」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあるPTFEを意味する。
【0397】
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した値である。
【0398】
フッ素樹脂B5としての上記低分子量PTFEは、融点が320~340℃であることが好ましい。上記融点は、324℃以上であることがより好ましく、また、336℃以下であることがより好ましく、333℃以下であることが更に好ましく、332℃以下であることが更により好ましく、331℃以下であることが殊更に好ましく、330℃以下であることが特に好ましい。
【0399】
フッ素樹脂B5としての上記低分子量PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0400】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
【0401】
フッ素樹脂B5としての上記低分子量PTFEにおいて使用し得る変性モノマーとしては、溶融流動性を示さないフッ素樹脂としてのPTFE(高分子量PTFE)について上述した単量体が挙げられる。
【0402】
フッ素樹脂B5は、溶融流動性を示さないフッ素樹脂であってもよく、溶融流動性を示すフッ素樹脂であってもよい。
上記溶融流動性を示さないフッ素樹脂としては、上記PTFE(高分子量PTFE)が好ましい。
上記溶融流動性を示すフッ素樹脂としては、上述したフッ素樹脂B1と同様のものが挙げられる。
【0403】
フッ素樹脂B5は、溶融流動性を示さないフッ素樹脂であることが好ましく、PTFE(高分子量PTFE)であることがより好ましい。
フッ素樹脂B5は、溶融流動性を示すフッ素樹脂であってもよく、PFA、FEP、ETFE、EFEP、PCTFE、CTFE/TFE共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、Et/CTFE共重合体、PVF、PVdF、VdF/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/ペンタフルオロプロピレン共重合体、VdF/PAVE/TFE共重合体、及び、低分子量PTFEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PFA、FEP、及び、低分子量PTFEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0404】
フッ素樹脂組成物(5)は、フッ素樹脂B5の粒子を含むものであってよい。
【0405】
上記フッ素樹脂B5の粒子は、フッ素樹脂B5の一次粒子であることが好ましい。上記一次粒子は、二次粒子を構成していないことが好ましい。
【0406】
上記フッ素樹脂B5の粒子は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましい。上記平均一次粒子径は、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが更に好ましく、400nm以下であることが更により好ましく、350nm以下であることが殊更に好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。上記平均一次粒子径は、また、10nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが更に好ましく、100nm以上であることが更により好ましく、150nm以上であることが特に好ましい。
上記平均一次粒子径は、固形分濃度を0.5質量%に調整した水性分散液をアルミ箔に滴下し、150℃、1時間の条件で水を乾燥除去したものの走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の粒子の直径の平均値である。
上記平均一次粒子径は、また、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の一次粒子の直径の平均値であってもよい。
【0407】
フッ素樹脂組成物(5)の一態様において、上記フッ素樹脂B5の粒子は、平均アスペクト比が2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが更により好ましく、1.4以下であることが殊更に好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。上記平均アスペクト比は、また、1.0以上であってよい。
【0408】
上記平均アスペクト比は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の一次粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0409】
フッ素樹脂組成物(5)の別の一態様において、上記フッ素樹脂B5の粒子の全数に対し、アスペクト比が2.5以上の上記フッ素樹脂B5の粒子の割合が0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、2.0%以上であることが特に好ましい。上記割合は、また、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0410】
上記割合は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の一次粒子について画像処理を行って各粒子のアスペクト比を算出し、上記抽出した粒子の全数に対する割合として求める。
【0411】
上記フッ素樹脂Aと上記フッ素樹脂B5との質量比(A/B5)は、着色が一層低減され引張特性が一層向上する点で、1/99~90/10であることが好ましい。
上記質量比A/B5は、3/97以上であることがより好ましく、5/95以上であることが更に好ましく、10/90以上であることが更により好ましく、15/85以上であることが特に好ましい。上記質量比A/B5は、また、85/15以下であることがより好ましく、80/20以下であることが更に好ましく、75/25以下であることが更により好ましく、70/30以下であることが特に好ましい。
【0412】
フッ素樹脂組成物(5)におけるフッ素樹脂A及びB5の合計量は、上記フッ素樹脂組成物に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更により好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0413】
フッ素樹脂組成物(5)は、一次粒子径1μm以下の微粒子を含む。
上記微粒子は、上記フッ素樹脂組成物を構成するフッ素樹脂の粒子であり、フッ素樹脂A及びB5からなる群より選択される少なくとも1種の粒子であってよく、フッ素樹脂B5の粒子であることが好ましい。
上記微粒子は、一次粒子であってよく、フッ素樹脂B5の一次粒子であることが好ましい。
【0414】
上記微粒子は、一次粒子径が500nm以下であることが好ましく、450nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることが更に好ましく、350nm以下であることが更により好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。上記一次粒子径は、また、10nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが更に好ましく、100nm以上であることが更により好ましく、150nm以上であることが特に好ましい。
上記一次粒子径は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の微粒子の直径の平均値である。
【0415】
フッ素樹脂組成物(5)の一態様において、上記微粒子は、平均アスペクト比が2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが更により好ましく、1.4以下であることが殊更に好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。上記アスペクト比は、また、1.0以上であってよい。
【0416】
上記平均アスペクト比は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の上記微粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0417】
フッ素樹脂組成物(5)の別の一態様において、上記微粒子の全数に対し、アスペクト比が2.5以上の上記微粒子の割合が0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、2.0%以上であることが特に好ましい。上記割合は、また、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0418】
上記割合は、上記フッ素樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の上記微粒子について画像処理を行って各粒子のアスペクト比を算出し、上記抽出した上記微粒子の全数に対する割合として求める。
【0419】
フッ素樹脂組成物(5)は、粒子径5μm以上の粗大粉末を含むことが好ましい。
上記粗大粉末は、上記フッ素樹脂組成物を構成するフッ素樹脂の粒子であり、フッ素樹脂A及びB5からなる群より選択される少なくとも1種の粒子であってよく、フッ素樹脂Aの粒子であることが好ましい。
上記粗大粉末は、二次粒子であってよく、フッ素樹脂Aの二次粒子であってもよい。
【0420】
上記粗大粉末は、粒子径が10μm以上であることがより好ましく、また、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記粗大粉末の粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、得られた分布(体積基準)において検出される粒子径である。
【0421】
フッ素樹脂組成物(5)においては、上記粗大粉末の表面に、上記微粒子が付着しており、上記粗大粉末の露出している表面が60%以下であることが好ましい。これにより、着色が一層低減され、引張破断強度、引張破断歪等の引張特性が一層向上する。
上記露出している表面は、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
上記露出している表面の割合は、上記フッ素樹脂組成物を走査型顕微鏡(SEM)観察した5000倍の画像から、上記粗大粉末における、上記微粒子に覆われていない表面の面積を、上記粗大粉末の表面の面積で割ることで算出する。
【0422】
フッ素樹脂組成物(5)は、平均二次粒子径が5~500μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径は、10μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることが更に好ましく、また、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。
上記平均二次粒子径は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の50%に対応する粒子径に等しいとする。
【0423】
フッ素樹脂組成物(5)は、D90が50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、また、800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、650μm以下であることが更に好ましい。
上記D90は、ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、粒度分布積算(体積基準)の90%に対応する粒子径に等しいとする。
【0424】
フッ素樹脂組成物(5)は、着色が一層低減され、引張特性が一層向上する点で、非イオン性界面活性剤の含有量が、上記フッ素樹脂組成物に対し1.0質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが更により好ましく、0.6質量%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満であってよく、1000質量ppmであってもよい。
上記非イオン性界面活性剤の含有量は、凍結粉砕した1gの上記フッ素樹脂組成物を10mLのメタノール中で60℃にて超音波抽出し、「平成15年厚生労働省告示第261号 水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 別表第28」に準じて測定する。
【0425】
フッ素樹脂組成物(5)は、非イオン性界面活性剤を含まないことも好ましく、炭化水素系界面活性剤を含まないことも好ましい。
【0426】
上記非イオン性界面活性剤及び炭化水素系界面活性剤としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0427】
フッ素樹脂組成物(5)は、着色が一層低減され、引張特性が一層向上する点で、凍結粉砕した1gの上記フッ素樹脂組成物を10mLのメタノール中で60℃にて超音波抽出し、「平成15年厚生労働省告示第261号 水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 別表第28」に準じて吸光度を測定することによって得られる成分の含有量が、上記フッ素樹脂組成物に対し1.0質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが更により好ましく、0.6質量%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満であってよく、1000質量ppmであってもよい。
上記成分の量が上記範囲内にあることは、上記フッ素樹脂組成物が非イオン性界面活性剤を含まないか、含んでいてもその含有量が極めて少ないことを示す。
【0428】
フッ素樹脂組成物(5)は、着色が一層低減され、引張特性が一層向上する点で、低分子量含フッ素化合物の含有量(総量)が、上記フッ素樹脂組成物に対し1質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb以下であることが更に好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが殊更に好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb以下であることが特により好ましく、1質量ppb以下であることが殊更特に好ましく、1質量ppb未満であることが最も好ましい。
上記低分子量含フッ素化合物の含有量は、試料をメタノールでソックスレー抽出した抽出液を用い、液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定する。
【0429】
上記低分子量含フッ素化合物としては、フッ素樹脂組成物(1)について例示した化合物が挙げられる。
【0430】
フッ素樹脂組成物(5)の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0431】
フッ素樹脂組成物(5)は、例えば、フッ素樹脂Aの粉末と、フッ素樹脂B5の粒子を含み、固形分濃度が70質量%以下である水性分散液とを混合することにより混合物を得る工程(以下、混合工程ともいう。)、上記混合物を乾燥する工程(以下、乾燥工程ともいう。)、及び、充填材を混合する工程を含むフッ素樹脂組成物の製造方法(以下、第1の製造方法ともいう。)によって製造することができる。
第1の製造方法では、固形分濃度が70質量%以下の水性分散液を用いるので、フッ素樹脂Aの粉末とフッ素樹脂B5の粒子とを均一に混合することができる。その結果、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、着色が少なく引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)に優れるフッ素樹脂組成物を製造することができる。
【0432】
上記フッ素樹脂B5の粒子の含有量は、上記水性分散液の固形分に対し、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが更により好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、98質量%以上であることが最も好ましい。
【0433】
第1の製造方法における上記水性分散液は、通常、水性媒体を含む。上記水性分散液は、水性媒体にフッ素樹脂B5の粒子が分散したものであってよい。
水性媒体は、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。水性媒体は、水が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0434】
上記水性分散液は、固形分濃度が70質量%以下である。着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記固形分濃度は、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが更に好ましい。上記固形分濃度は、また、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。
上記固形分濃度は、水性分散液約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、110℃にて30分で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて30分加熱した加熱残分(Zg)より、式:P=[Z/X]×100(質量%)から算出する。
【0435】
上記水性分散液は、炭化水素系界面活性剤を含んでもよい。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
【0436】
上記炭化水素系界面活性剤としては、上述したものが挙げられる。
【0437】
上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記水性分散液の固形分に対し12質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が更により好ましく、2質量%以下が殊更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。上記炭化水素系界面活性剤の含有量は、また、1質量ppm以上であってよく、10質量ppm以上であってもよく、100質量ppm以上であってもよく、500質量ppm以上であってもよい。
【0438】
上記非イオン性界面活性剤の含有量は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記水性分散液の固形分に対し12質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が更により好ましく、2質量%以下が殊更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。上記非イオン性界面活性剤の含有量は、また、1質量ppm以上であってよく、10質量ppm以上であってもよく、100質量ppm以上であってもよく、500質量ppm以上であってもよい。
【0439】
上記水性分散液は、非イオン性界面活性剤を含まないことも好ましく、炭化水素系界面活性剤を含まないことも好ましい。
【0440】
上記水性分散液は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、低分子量含フッ素化合物の含有量(総量)が上記水性分散液に対し1質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb以下であることが更に好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが殊更に好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb以下であることが特により好ましく、1質量ppb以下であることが殊更特に好ましく、1質量ppb未満であることが最も好ましい。
上記低分子量含フッ素化合物の含有量は、試料をメタノールでソックスレー抽出した後、液体クロマトグラフ質量計(LC/MS/MS)により測定する。
【0441】
上記低分子量含フッ素化合物としては、上述したものが挙げられる。
【0442】
上記水性分散液は、例えば、アニオン性界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フッ素樹脂B5を構成するのに必要なモノマーの乳化重合を水性媒体中で行うことにより、製造することができる。上記乳化重合において、必要に応じて、連鎖移動剤、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤等を使用してもよい。
当業者であれば、上記乳化重合の条件を調整することにより、フッ素樹脂B5の組成や物性、粒子の物性等を制御することができる。
【0443】
上記乳化重合により得られた水性分散液に、炭化水素系界面活性剤を添加してもよい。上記炭化水素系界面活性剤としては、上述したものが挙げられる。
【0444】
上記乳化重合により得られた水性分散液、又は、上記炭化水素系界面活性剤を添加して得られた水性分散液を、陰イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂を含む混床と接触させてもよく、濃縮してもよく、これらの両方により処理してもよい。上記処理を行うことにより、低分子量含フッ素化合物を除去することができる。
【0445】
上記陰イオン交換樹脂及び上記混床は、特に限定されるものではないが、公知のものを用いることができる。また、上記陰イオン交換樹脂又は上記混床と接触させる方法は、公知の方法を用いることができる。
【0446】
上記濃縮の方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、相分離、遠心沈降、曇点濃縮、電気濃縮、電気泳動、限外濾過を用いた濾過処理、逆浸透膜(RO膜)を用いた濾過処理、ナノ濾過処理等が挙げられる。
【0447】
上記乳化重合により得られた重合上がりの(炭化水素系界面活性剤を添加する前の)水性分散液を上記混合工程に供してもよいし、上記炭化水素系界面活性剤を添加して得られた水性分散液を上記混合工程に供してもよいし、上記イオン交換樹脂との接触又は濃縮を行って得られた水性分散液を上記混合工程に供してもよい。固形分濃度が50質量%を超えている場合は、希釈して用いればよい。
【0448】
上記水性分散液は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、25℃における粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、40mPa・s以下であることが更に好ましく、30mPa・s以下であることが特に好ましい。上記粘度は、また、0.1mPa・s以上であってよい。
上記粘度は、B型回転粘度計(東機産業社製、ローターNo.2)を用い、回転数60rpm、測定時間120秒の条件で、25℃において測定する。
【0449】
上記フッ素樹脂Aの粉末と上記水性分散液との混合は、着色が一層少なく引張特性に一層優れるフッ素樹脂組成物を製造できる点で、上記フッ素樹脂Aの粉末と上記フッ素樹脂B5の粒子との質量比(A/B5)が1/99~90/10となるように行うことが好ましい。
上記質量比A/B5は、3/97以上であることがより好ましく、5/95以上であることが更に好ましく、10/90以上であることが更により好ましく、15/85以上であることが特に好ましい。上記質量比A/B5は、また、85/15以下であることがより好ましく、80/20以下であることが更に好ましく、75/25以下であることが更により好ましく、70/30以下であることが特に好ましい。
【0450】
上記混合工程で得られた混合物の固形分濃度又は粘度が高すぎる場合は、当該混合物を希釈して、固形分濃度又は粘度を上述した範囲内に調整してもよい。
【0451】
第1の製造方法は、上記混合工程で得られた混合物を凝析する凝析工程を含んでもよい。凝析の方法としては、凍結や機械的剪断力により乳化粒子を凝集させる方法が挙げられる。メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0452】
上記乾燥工程では、上記混合工程で得られた混合物を乾燥することによりフッ素樹脂組成物を得る。第1の製造方法が上記凝析工程を含む場合は、凝析により得られた湿潤粉末を乾燥する。
乾燥の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行うことができる。
上記乾燥の温度としては、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましく、また、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
【0453】
第1の製造方法は、上記乾燥工程で得られたフッ素樹脂組成物を粉砕する粉砕工程を含んでもよい。上記粉砕は公知の方法により行ってよく、例えば、エアジェットミル、ハンマーミル、フォースミル、石臼型の粉砕機、凍結粉砕機等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0454】
上記充填材を混合する工程において、上記充填材は、上記フッ素樹脂A1の粉末と混合してもよく、上記水性分散液と混合してもよく、上記フッ素樹脂A1の粉末と上記水性分散液との混合工程で得られた混合物と混合してもよく、上記凝析工程で得られた湿潤粉末と混合してもよく、上記乾燥工程で得られた乾燥粉末と混合してもよい。
【0455】
フッ素樹脂組成物(5)は、また、フッ素樹脂Aの粉末と、フッ素樹脂B5の粒子を含み、炭化水素系界面活性剤を含まない水性分散液とを混合することにより混合物を得る工程(混合工程)、上記混合物を乾燥する工程(乾燥工程)、及び、充填材を混合する工程を含むフッ素樹脂組成物の製造方法(以下、第2の製造方法ともいう。)によっても製造することができる。
第2の製造方法では、炭化水素系界面活性剤を含まない水性分散液を用いるので、炭化水素系界面活性剤の残留による着色や、物性への影響を低減することができる。その結果、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、着色が少なく引張特性に優れるフッ素樹脂組成物を製造することができる。
【0456】
フッ素樹脂Aの粉末及びフッ素樹脂B5の粒子は、第1の製造方法について上述したとおりである。
【0457】
第2の製造方法における水性分散液は、炭化水素系界面活性剤を含まない。上記炭化水素系界面活性剤としては、第1の製造方法について例示したものが挙げられる。
上記水性分散液の上記以外の成分や物性については、第1の製造方法と同様のものを採用することができる。
【0458】
第2の製造方法における混合工程の好ましい態様は、第1の製造方法について上述した態様と同様である。
【0459】
第2の製造方法における乾燥工程としては、第1の製造方法における乾燥工程と同様の工程を採用することができる。
【0460】
その他、第2の製造方法において採用し得る任意の工程や好適な態様は、第1の製造方法と同様である。
【0461】
第1及び第2の製造方法は、更に、得られたフッ素樹脂組成物を造粒する工程を含むことも好ましい。これにより、見掛密度が高く、取り扱い性に優れるフッ素樹脂組成物が得られる。
上記造粒の方法としては、公知の方法が挙げられ、水中造粒法、温水造粒法、乳化分散造粒法、乳化温水造粒法、無溶剤造粒法、乾式溶剤造粒法等が挙げられる。
【0462】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物としては、なかでも、フッ素樹脂組成物(1)、フッ素樹脂組成物(2a)、フッ素樹脂組成物(2b)、フッ素樹脂組成物(3a)、フッ素樹脂組成物(3b)、及び、フッ素樹脂組成物(4)が好ましい。
【0463】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、引張破断強度が8MPa以上であることが好ましく、9MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが更に好ましく、13MPa以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば20MPaであってよい。
上記引張破断強度は、φ100mmの金型に35gの上記フッ素樹脂組成物を投入し、30MPaの圧力、1分間の条件で圧縮成形し、室温から300℃まで3時間で昇温し、その後300℃から370℃まで4時間で昇温し、370℃で12時間保持した後、300℃まで5時間で降温したのち、室温まで1時間で降温する工程によって焼成した成形体を打ち抜いて作成したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。尚、上記引張破断強度は、ラム押出成形品を用いて以下の方法により測定することもできる。予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて押出することにより成形体を得、この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ150mmに切削加工することで平板を用意し、この成形品を打ち抜くことでダンベルを用意し、ASTM D 1708に準じて測定する。
【0464】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、引張破断歪が75%以上であってよく、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、250%以上であることが更に好ましく、300%以上であることが更により好ましく、360%以上であることが殊更に好ましく、400%以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば600%であってよい。
上記引張破断歪は、φ100mmの金型に35gの上記フッ素樹脂組成物を投入し、30MPaの圧力、1分間の条件で圧縮成形し、室温から300℃まで3時間で昇温し、その後300℃から370℃まで4時間で昇温し、370℃で12時間保持した後、300℃まで5時間で降温したのち、室温まで1時間で降温する工程によって焼成した成形体を打ち抜いて作成したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。尚、上記引張破断歪は、ラム押出成形品を用いて以下の方法により測定することもできる。予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて押出することにより成形体を得、この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ150mmに切削加工することで平板を用意し、この成形品を打ち抜くことでダンベルを用意し、ASTM D 1708に準じて測定する。
【0465】
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、成形材料として好適に使用し得る。上記フッ素樹脂組成物を成形する方法としては、特に限定されないが、圧縮成形、ラム押出成形、アイソスタティック成形等が挙げられる。なかでも、圧縮成形、ラム押出成形が好ましい。
本開示の第1のフッ素樹脂組成物は、圧縮成形用粉末又はラム押出成形用粉末であることが好ましい。
【0466】
本開示は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物を圧縮成形及び焼成するか、又は、ラム押出成形して得られる成形体(以下、本開示の第1の成形体ともいう)も提供する。
本開示の第1の成形体は、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、引張特性に優れる。
【0467】
上記圧縮成形は、例えば、10~50MPaの圧力で、1分~30時間保持することにより行うことができる。
【0468】
上記焼成は、例えば、350~380℃の温度で0.5~50時間加熱することにより行うことができる。
【0469】
上記ラム押出成形は、例えば、予熱ゾーン230~330℃、成形ゾーン320~400℃に設定した、シリンダー径φ5~50mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力1~50MPa、加圧時間5~90秒、1サイクル10~120秒にて押出することにより行うことができる。
【0470】
本開示はまた、320~335℃の範囲に吸熱ピークを1つ以上有するフッ素樹脂組成物であって、窒素雰囲気下600℃で熱分解すると上記フッ素樹脂組成物に対し15質量%以下の残渣を生じ、導電性又は0.3W/m・K以上の熱伝導率を示すフッ素樹脂組成物(以下、本開示の第2のフッ素樹脂組成物ともいう)を提供する。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、上記構成を有するので、引張特性(例えば、引張破断強度、引張破断歪)及び取り扱い性(粉体としての取り扱い性)に優れる。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、また、導電性又は熱伝導性も有する。
【0471】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、320~335℃の範囲に吸熱ピーク(融点)を1つ以上有する。
上記吸熱ピークは、323℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましく、また、333℃以下であることが好ましく、330℃以下であることがより好ましい。
吸熱ピーク(融点)が上記範囲内にあることは、融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂を含むことを示す。
【0472】
本明細書において、フッ素樹脂組成物の吸熱ピーク(融点)は、X-DSC7000(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用い、10℃/分の昇温速度で示差走査熱量測定〔DSC〕を行って得られた融解熱曲線における極小点に対応する温度である。1つの融解ピーク中に極小点が2つ以上ある場合は、それぞれを吸熱ピーク(融点)とする。
【0473】
融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂としては、上述したフッ素樹脂Aを使用することができる。
フッ素樹脂Aとしては、PTFEが好ましい。上記PTFEは、高分子量PTFEであってよい。
【0474】
フッ素樹脂Aとしての上記PTFEは、TFEの単独重合体であってもよいし、99.0質量%以上のTFEに基づく重合単位と、1.0質量%以下の変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、TFEに基づく重合単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記変性モノマーとしては、本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Aとしての変性PTFEについて上述した単量体が挙げられる。変性モノマー単位の含有量の好適な範囲も本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Aとしての上記PTFEの標準比重(SSG)、及び、融点の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0475】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、フッ素樹脂Aの粒子を含むものであってよい。上記フッ素樹脂Aの粒子は、フッ素樹脂Aの二次粒子であってよい。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Aの粒子の平均二次粒子径、及び、D90の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。本開示の第2のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Aの粒子は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した方法により得ることができる。
【0476】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、窒素雰囲気下600℃で熱分解すると上記フッ素樹脂組成物に対し15質量%以下の残渣を生じる。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣が、上記フッ素樹脂組成物に対し10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、また、1質量%以上であってよい。
上記残渣は、例えば、10℃/分の昇温速度で窒素雰囲気下600℃で示差熱熱重量同時測定〔TG/DTA〕を行って得られたTG曲線の重量減少から求めることができる。
【0477】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、導電性又は0.3W/m・K以上の熱伝導率を示す。
本明細書において、導電性を示すとは、体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを意味する。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、体積抵抗率が10Ω・cm以下であることが好ましく、導電性が一層向上することから、10Ω・cm以下であることがより好ましく、10Ω・cm以下であることが特に好ましく、10Ω・cm以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば10-2Ω・cmであってよい。
上記体積抵抗率は、ASTM D 991に準拠して測定する。
【0478】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、導電性フィラーを含むことが好ましい。これにより、フッ素樹脂組成物に良好な導電性を付与することができる。
導電性フィラーとしては、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について上述した導電性フィラーが挙げられる。導電性フィラーとしては、カーボンフィラーが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。本開示の第2のフッ素樹脂組成物では、比較的安価でハンドリング性に優れるカーボンブラックを使用しても、良好な導電性を付与することができる。カーボンブラックは、導電性カーボンブラックであることが好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラック及びファーネスブラックからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。カーボンブラックの吸油量の好適な範囲は本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
導電性フィラーの含有量の好適な範囲は本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0479】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、熱伝導率が0.4W/m・K以上であることが好ましく、0.5W/m・K以上であることがより好ましく、0.6W/m・K以上であることが更に好ましく、0.7W/m・K以上であることが更により好ましい。
上記熱伝導率は、予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて押出することにより成形体を得、この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ20mmに切削加工することで平板を用意し、JIS H7903に準拠し、室温23℃の雰囲気下で、ヒーター温度42℃、チラー温度12℃、測定荷重400Nで測定する。
【0480】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含むことが好ましい。これにより、フッ素樹脂組成物に良好な熱伝導性を付与することができる。
上記熱伝導性フィラーとしては、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について上述した熱伝導性フィラーが挙げられる。上記熱伝導性フィラーとしては、窒化硼素が好ましい。本開示の第2のフッ素樹脂組成物では、良好な熱伝導性を付与することができる。
熱伝導性フィラーの含有量の好適な範囲は本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0481】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、更に、溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bを含んでもよい。上記フッ素樹脂Bを含むことにより、引張特性が向上する。フッ素樹脂Bとしては、本開示の第1のフッ素樹脂組成物において上述したフッ素樹脂Bを使用できる。本開示の第2のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂A及びBの含有量の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0482】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、更に、335℃超の範囲に吸熱ピーク(融点)を1つ以上有することが好ましく、また、355℃以下に吸熱ピーク(融点)を1つ以上有することが好ましく、350℃以下に吸熱ピーク(融点)を1つ以上有することがより好ましい。
上記温度領域に融点を有することは、フッ素樹脂組成物が、335℃超の範囲に吸熱ピーク(融点)を有するフッ素樹脂、すなわち、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂及び/又は融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂を更に含むことを示す。
【0483】
融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂としては、本開示の第1のフッ素樹脂組成物において上述したフッ素樹脂Bとしての、融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂、例えばフッ素樹脂B2~B4を使用できる。融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂の含有量の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂B(あるいはフッ素樹脂B2~B4)の含有量について説明した範囲と同様である。
【0484】
融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂としては、本開示の第1のフッ素樹脂組成物において上述したフッ素樹脂Cを使用できる。融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂の含有量の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物におけるフッ素樹脂Cについて説明した範囲と同様である。
【0485】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物における335℃超の範囲に吸熱ピーク(融点)を有するフッ素樹脂の含有量は、引張特性が一層向上する点で、上記フッ素樹脂組成物に対し、0~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以上であることが更により好ましく、20質量%以上であることが殊更に好ましく、20質量%超であることが特に好ましく、25質量%以上であることが特により好ましく、30質量%以上であることが特に更に好ましく、40質量%以上であることが特に殊更に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以下であることが更により好ましく、65質量%以下であることが殊更に好ましく、60質量%以下であることが特に好ましく、50質量%以下であることが特により好ましい。
【0486】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、溶融流動性を示さない。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物のMFRの好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0487】
また、本開示の第2のフッ素樹脂組成物を圧縮成形した予備成形体(未焼成の成形体)を、当該フッ素樹脂組成物の融点以上で1時間以上加熱した場合に、加熱前の厚みに対する加熱後の厚みの減少率が20%未満であるか、又は、加熱後の厚みが加熱前の厚みより増加することも、当該フッ素樹脂組成物が溶融流動性示さないことを意味するので好ましい。
【0488】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含むことが好ましい。上記フッ素樹脂組成物は、重合単位として、TFE単位及び変性モノマー単位のみを含むものであってよい。変性モノマーの含有量の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0489】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、全重合単位に対しTFE単位を99.0質量%以上含むことが好ましい。
【0490】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物を構成する重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、原料組成が分かっている場合は、原料組成から計算により求めることもできる。
【0491】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、取り扱い性に一層優れる点で、見掛密度が0.40g/ml以上であることが好ましく、0.42g/ml以上であることがより好ましく、0.45g/ml以上であることが更に好ましく、0.47g/ml以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1.00g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0492】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、流動性に優れ、取り扱い性に一層優れる点で、安息角が40°未満であることが好ましく、38°未満であることがより好ましく、35°未満であることが更に好ましい。
上記安息角は、全高115mm、足部径φ26mm、足部長さ35mm、取込部の開きが60°の漏斗を、漏斗の底面から試料落下面までの高さが100mmとなるように設置し、40gの試料を漏斗から落とし、落下した試料の山の下半分の角度を分度器で測定して得られる値である。
【0493】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、平均二次粒子径が5~700μmであることが好ましい。本開示の第2のフッ素樹脂組成物における平均二次粒子径の好適な範囲は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物について説明した範囲と同様である。
【0494】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物の形態は特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
【0495】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、引張破断強度が8MPa以上であることが好ましく、9MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが更に好ましく、13MPa以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば20MPaであってよい。
上記引張破断強度は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物と同様に作製したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。
【0496】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、引張破断歪が75%以上であってよく、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、250%以上であることが更に好ましく、300%以上であることが更により好ましく、360%以上であることが殊更に好ましく、400%以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば600%であってよい。
上記引張破断歪は、本開示の第1のフッ素樹脂組成物と同様に作製したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。
【0497】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、成形材料として好適に使用し得る。上記フッ素樹脂組成物を成形する方法としては、特に限定されないが、圧縮成形、ラム押出成形、アイソスタティック成形等が挙げられる。なかでも、圧縮成形、ラム押出成形が好ましく、ラム押出成形がより好ましい。
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、圧縮成形用粉末又はラム押出成形用粉末であることが好ましく、ラム押出成形用粉末であることがより好ましい。
【0498】
本開示の第2のフッ素樹脂組成物は、多孔質用でないことが好ましい。
本明細書において、多孔質とは、成形体をカットした断面を観察した際に、10μm以上の空隙が締める面積が単位面積当たり20%以上である状態を意味する。
【0499】
本開示は、本開示の第2のフッ素樹脂組成物をラム押出成形して得られる成形体(以下、本開示の第2の成形体ともいう)も提供する。
本開示の第2の成形体は、融点以上の温度に加熱した履歴のあるフッ素樹脂を含むにもかかわらず、引張特性に優れる。
【0500】
上記ラム押出成形としては、上述した方法を用いることができる。
【0501】
本開示の第1及び第2の成形体は、引張破断強度が8MPa以上であることが好ましく、9MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが更に好ましく、13MPa以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば20MPaであってよい。
上記引張破断強度は、ASTM D1708に準じて測定する。
【0502】
本開示の第1及び第2の成形体は、引張破断歪が75%以上であってよく、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、250%以上であることが更に好ましく、300%以上であることが更により好ましく、360%以上であることが殊更に好ましく、400%以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば600%であってよい。
上記引張破断歪は、ASTM D1708に準じて測定する。
【0503】
本開示の第1及び第2の成形体は、導電性の向上を目的とする場合、体積抵抗率が10Ω・cm以下であることが好ましく、導電性が一層向上することから、10Ω・cm以下であることがより好ましく、10Ω・cm以下であることが特に好ましく、10Ω・cm以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば10-2Ω・cmであってよい。
上記体積抵抗率は、ASTM D 991に準拠して測定する。
【0504】
本開示の第1及び第2の成形体は、帯電防止を目的とする場合、体積抵抗率が10~10Ω・cmであることが好ましい。
【0505】
本開示の第1及び第2の成形体は、熱伝導性の向上を目的とする場合、熱伝導率が0.3W/m・K以上であることが好ましく、熱伝導性が一層向上することから、0.5W/m・K以上であることが好ましい。上記体積抵抗率は、JIS H7903に準拠して測定する。
【0506】
本開示の第1及び第2のフッ素樹脂組成物から得られる成形体は、多孔質でないことが好ましい。
【0507】
本開示の第1及び第2のフッ素樹脂組成物から得られる成形体は、ライニングシート、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム弁、耐熱電線、車両モータ・発電機等の耐熱絶縁テープ、離型シート、シール材、ケーシング、スリーブ、ベロース、ホース、ピストンリング、バタフライバルブ、角槽、ウェハーキャリア、回路基板等に好適に用いることができる。
【0508】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0509】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0510】
各種物性は下記方法にて測定した。
【0511】
(融点)
X-DSC7000(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用い、10℃/分の昇温速度で示差走査熱量測定〔DSC〕を行って得られた融解熱曲線における極小点に対応する温度として求めた。1つの融解ピーク中に極小点が2つ以上ある場合は、それぞれを融点とした。
フッ素樹脂Bが5質量%以下の場合は、X-DSC7000(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用い、10℃/分の昇温速度でフッ素樹脂Bの融点未満である300℃まで昇温し、300℃で10分間保持した後、10℃/分の昇温速度で昇温し示差走査熱量測定〔DSC〕を行って得られた融解熱曲線における極小点に対応する温度として求めた。
【0512】
(残渣)
TG/DTA7200(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用い、10℃/分の昇温速度で窒素雰囲気下600℃で示差熱熱重量同時測定〔TG/DTA〕を行って得られたTG曲線の重量減少から求めた。
【0513】
(フッ素樹脂の単量体組成)
19F-NMR法により測定した。
【0514】
(フッ素樹脂組成物の単量体組成)
原料組成から計算により求めた。
【0515】
(粉末の二次粒子径)
ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、得られた粒度分布(体積基準)に基づいて求めた。平均二次粒子径は、粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとした。10%に対応する粒子径をD10、90%に対応する粒子径をD90とした。
【0516】
(平均一次粒子径)
固形分濃度を0.5質量%に調整した水性分散液をアルミ箔に滴下し、150℃、1時間の条件で水を乾燥除去したものの走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の粒子の直径の平均値として求めた。
【0517】
(アスペクト比)
固形分濃度が0.5質量%となるように希釈したフッ素樹脂水性分散液を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より平均アスペクト比を求めた。
アスペクト比が2.5以上の粒子の割合は、固形分濃度が0.5質量%となるように希釈したフッ素樹脂水性分散液を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した100個以上の粒子について画像処理を行って各粒子のアスペクト比を算出し、上記抽出した粒子の全数に対する割合として求めた。
【0518】
(水性分散液の固形分濃度)
水性分散液中の固形分濃度(P質量%)は、試料約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、110℃にて30分で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて30分加熱した加熱残分(Zg)より、式:P=[Z/X]×100(質量%)から算出した。
【0519】
(水性分散液中の非イオン性界面活性剤の含有量)
水性分散液中の非イオン性界面活性剤のPTFEに対する含有量(N質量%)は、試料約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、110℃にて30分で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて30分加熱した加熱残分(Zg)より、式:N=[(Y-Z)/Z]×100(質量%)から算出した。
【0520】
(見掛密度)
JIS K 6891に準拠して測定した。
【0521】
(標準比重(SSG))
ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0522】
(安息角)
全高115mm、足部径φ26mm、足部長さ35mm、取込部の開きが60°の漏斗を、漏斗の底面から試料落下面までの高さが100mmとなるように設置し、40gの試料を漏斗から落とし、落下した試料の山の下半分の角度を分度器で測定し、安息角とした。
【0523】
(最大直線長さ)
二次粒子100個以上をSEM画像を用いて観察し、二次粒子の長径をそれぞれ測定した。その中で最も大きい長径を最大直線長さとした。
【0524】
(MFR)
ASTM D1238に準拠して、メルトインデクサーを用いて、フッ素樹脂の種類によって定められた測定温度(例えば、PFAやFEPの場合は372℃、ETFEの場合は297℃)、荷重(例えば、PFA、FEP及びETFEの場合は5kg)において内径2.095mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を測定した。
【0525】
(引張試験)
実施例1~6において、φ100mmの金型に35gの粉末を入れて、30MPa、1分間の圧縮成形を行った後に、室温から300℃まで3時間で昇温し、その後300℃から370℃まで4時間で昇温し、370℃で12時間保持した後、300℃まで5時間で降温したのち、室温まで1時間で降温する工程により焼成することで成形品を得、この成形品を打ち抜くことでダンベルを用意し、ASTM D 1708に準じて引張試験を行い、引張破断強度、引張破断歪を測定した。尚、実施例7~16において、ラム押出成形品を用いた場合、以下の方法で測定した。予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて押出することにより成形体を得、この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ150mmに切削加工することで平板を用意し、この成形品を打ち抜くことでダンベルを用意し、ASTM D 1708に準じて引張試験を行い、引張破断強度、引張破断歪を測定した。
【0526】
(フッ素樹脂組成物の溶融流動性)
上記引張試験と同じ条件でフッ素樹脂組成物(粉末)を圧縮成形及び焼成した際に、焼成前の厚みに対する焼成後の厚みが20%以上減少した場合に、フッ素樹脂組成物に溶融流動性があると判定し、焼成前後の減少率が20%未満であるか、又は、焼成後の厚みが焼成前の厚みより増加する場合に溶融流動性がないと判定した。
【0527】
(体積抵抗率)
実施例7において、予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて押出することにより成形体を得た。この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ150mmに切削加工することで平板を用意し、ASTM D 991に準拠し、電圧電極間の距離60mm、電流電極間の距離100mm、室温23℃、湿度50%の雰囲気下で、デジタルオームメーターR506(株式会社川口電機製作所製)を用いて、体積抵抗率を測定した。尚、実施例8~14において、体積抵抗率は上記平板を用意し、JIS K 7194に準拠し、室温23℃、湿度50%の雰囲気下で、ロレスターGX MCP-T700(三菱化学アナリティック社製)を用いて測定した。
【0528】
(熱伝導率)
予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて押出することにより成形体を得た。この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ20mmに切削加工することで平板を用意し、JIS H7903に準拠し、室温23℃の雰囲気下で、ヒーター温度42℃、チラー温度12℃、測定荷重400Nで、TCM1001(株式会社レスカ製)を用いて、熱伝導率を測定した。
【0529】
(非多孔質性)
上記熱伝導率と同じ条件でフッ素樹脂組成物(粉末)をラム押出成形し得られた成形体の断面をSEM画像を用いて観察し、10μm以上の空隙が単位面積当たりに占める割合が20%以上の場合多孔質であると判断した。前述した割合が20%未満であるとき「多孔質でない」と判定し、表1中では「〇」で表記し、同じく20%以上のものを「多孔質である」と判定し、表1中では「×」で表記した。
【0530】
合成例1(パーフルオロエーテルカルボン酸アンモニウム塩Aの合成)
1Lオートクレーブを窒素にて置換した後、脱水したテトラメチル尿素16.5g及びジエチレングルコールジメチルエーテル220gを仕込み、冷却した。フッ化カルボニル38.5gを仕込み、次いでヘキサフルオロプロピレンオキサイド100gを導入して撹拌した。その後、フッ化カルボニル38.5g及びヘキサフルオロプロピレンオキサイド100gを追加で仕込んだ。その後、更にフッ化カルボニル及びヘキサフルオロプロピレンオキサイドを同量の仕込みを行った。反応終了後、反応混合液を取り出して、分液して下層の反応生成物を得た。
【0531】
6Lオートクレーブにテトラグライム1000mL、CsF(75g)を入れ、オートクレーブ内を窒素で置換した。その後、オートクレーブを冷却し、上記で得られた反応生成物を2100g仕込み、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドをオートクレーブに導入して反応を開始した。最終的に、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドを1510g仕込んだ。その後、内容物を抜き出し、分液ロートにより上層と下層を分離した。上層は1320g、下層は3290gであった。下層を精留し、単離した。
【0532】
次に、単離した目的物1000gに純水1000gを加えて加水分解を行った。その後、分液ロートで分液して有機層(下層)を回収した。回収した溶液は硫酸水を用いて洗浄した。更に得られた溶液を単蒸留して精製した。精製後、得られた化合物と28質量%アンモニア水溶液76gと純水600gを混合した水溶液に、500gの上記で得られた単蒸留物を滴下した。滴下終了後、28質量%アンモニア水溶液を加えてpHが7になるように調整した。これを凍結乾燥することでパーフルオロエーテルカルボン酸アンモニウム塩Aを得た。
【0533】
製造例1(フッ素樹脂粉末A-1の作製)
TFEモノマーのみの懸濁重合で得られたホモPTFEの粗粉末を粉砕機で粉砕して得られたPTFEモールディングパウダー(標準比重(SSG):2.159,融点:345.0℃)35gを使用して、φ100mmの金型にて30MPa、1分間の条件で圧縮成形し、370℃で3時間焼成することで成形品を得た。得られた成形品を切削した後に、粉砕機で粉砕し、フッ素樹脂粉末A-1を得た。フッ素樹脂粉末A-1の融点は328℃、平均二次粒子径は23μm、D10は8μm、D90は48μm、見掛密度は0.64g/ml、最大直線長さは94μmであった。
【0534】
製造例2(フッ素樹脂粉末A-2の作製)
製造例1と同様にして得られた成形品を、切削した後に粉砕機で粉砕し、フッ素樹脂粉末A-2を得た。フッ素樹脂粉末A-2の融点は328℃、平均二次粒子径は148μm、D10は96μm、D90は212μm、見掛密度は1.03g/mlであった。
【0535】
製造例3(フッ素樹脂粉末B-1の作製)
TFEモノマーのみの懸濁重合で得られたホモPTFEの粗粉末を粉砕機で粉砕し、フッ素樹脂粉末B-1を得た。フッ素樹脂粉末B-1の見掛密度は0.34g/ml、平均二次粒子径は24μm、D90は55μm、標準比重(SSG)は2.163、融点は345.0℃、最大直線長さは112μmであった。
【0536】
製造例4(フッ素樹脂粉末B-2の作製)
TFEとパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)との懸濁重合で得られた変性PTFEの粗粉末を粉砕機で粉砕し、フッ素樹脂粉末B-2を得た。フッ素樹脂粉末B-2の見掛密度は0.33g/ml、平均二次粒子径は28μm、D90は77μm、標準比重(SSG)は2.168、融点は341.5℃、PPVE単位の量は0.09質量%、最大直線長さは156μmであった。
【0537】
製造例5(フッ素樹脂粉末B-3の作製)
撹拌翼を備えた内容積6LのSUS製のオートクレーブにて、パーフルオロエーテルカルボン酸アンモニウム塩Aを使用して、公知の乳化重合方法によりTFE単位とパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)単位とからなる変性PTFEの水性分散液を得た後、公知の方法により凝析及び乾燥を行い、フッ素樹脂粉末B-3を得た。
得られたフッ素樹脂粉末B-3の見掛密度は0.46g/ml、平均二次粒子径は460μm、標準比重(SSG)は2.169、融点は334.6℃、PPVE単位の含有量は0.14質量%、最大直線長さは1379μmであった。
【0538】
製造例6(フッ素樹脂粉末B-4の作製)
撹拌翼を備えた内容積6LのSUS製のオートクレーブにて、パーフルオロエーテルカルボン酸アンモニウム塩Aを使用して、公知の乳化重合方法によりTFE単位とパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)単位とからなるPFA粒子を含むPFA水性分散液を得た。得られたPFA水性分散液を凝析してフッ素樹脂粉末B-4を得た。平均二次粒子径は、1.5μm、MFRは28g/10min、融点は314℃、PPVE単位の含有量は1.4モル%、最大直線長さは27μmであった。
【0539】
製造例7(フッ素樹脂粉末B-6の作製)
TFEモノマーのみの懸濁重合で得られたホモPTFEの粗粉末を粉砕機で粉砕し、フッ素樹脂粉末B-6を得た。フッ素樹脂粉末B-6の見掛密度は0.39g/ml、平均二次粒子径は31μm、D90は204μm、融点は343℃、最大直線長さは307μmであった。
【0540】
実施例で使用したカーボンブラック及び窒化ホウ素は、それぞれ次に示すものである。
カーボンブラック1:BET比表面積=225m/g、DBP吸油量=105cc/100g、平均一次粒子径=16nm
カーボンブラック2:BET比表面積=214m/g、DBP吸油量=175cc/100g、平均一次粒子径=37nm
窒化ホウ素:BET比表面積=5.0m/g、タップ密度=0.3g/cm
【0541】
実施例1
フッ素樹脂粉末A-1を40g、フッ素樹脂粉末B-2を45g、ガラス繊維(日東紡績株式会社製PF E-001)を15g用い、ワンダークラッシャーWC-3を用いて、回転数6900rpmで60秒間の混合を行なうことでPTFE粉末(フッ素樹脂組成物)を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.45g/ml、安息角は34°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.959質量%、PPVE単位を0.041質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は329℃及び342℃、引張破断強度は15MPa、引張破断歪は342%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0542】
実施例2
フッ素樹脂粉末A-1を35g、フッ素樹脂粉末B-2を40g、フッ素樹脂粉末B-4を10g、ガラス繊維(日東紡績株式会社製PF E-001)を15g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.48g/ml、安息角は38°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.604質量%、PPVE単位を0.396質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は315℃、329℃及び342℃、引張破断強度は16MPa、引張破断歪は365%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0543】
実施例3
フッ素樹脂粉末A-1を40g、フッ素樹脂粉末B-1を35g、フッ素樹脂粉末B-4を10g、ガラス繊維(日東紡績株式会社製PF E-001)を15g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.44g/ml、安息角は38°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.641質量%、PPVE単位を0.359質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は315℃、329℃及び345℃、引張破断強度は16MPa、引張破断歪は401%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0544】
実施例4
フッ素樹脂粉末A-1を40g、フッ素樹脂粉末B-2を40g、ガラス繊維(日東紡績株式会社製PF E-001)を15g、グラファイト(日本黒鉛工業株式会社製CPB)を5g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.49g/ml、安息角は38°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.964質量%、PPVE単位を0.036質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は329℃及び342℃、引張破断強度は9MPa、引張破断歪は80%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0545】
実施例5
フッ素樹脂粉末A-1を40g、フッ素樹脂粉末B-2を45g、ブロンズ粉末(福田金属箔粉工業社製Bro-AT-200)を15g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.53g/ml、安息角は34°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.959質量%、PPVE単位を0.041質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は329℃及び342℃、引張破断強度は14MPa、引張破断歪は364%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0546】
実施例6
フッ素樹脂粉末A-1を45g、フッ素樹脂粉末B-3を40g、ガラス繊維(日東紡績株式会社製PF E-001)を15g用いて、回転数を2900rpmに変更したこと以外は実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.43g/ml、安息角は35°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.944質量%、PPVE単位を0.056質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は329℃及び336℃、引張破断強度は11MPa、引張破断歪は283%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0547】
実施例7
フッ素樹脂粉末A-2を65g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、カーボンブラック1を10g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.43g/ml、安息角は23°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は11MPa、引張破断歪は26%、体積抵抗率は1.4Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は9.1質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0548】
実施例8
フッ素樹脂粉末A-2を72g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、カーボンブラック1を3g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.54g/ml、安息角は21°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は14MPa、引張破断歪は55%、体積抵抗率は8.0Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は5.4質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0549】
実施例9
フッ素樹脂粉末A-2を20g、フッ素樹脂粉末B-6を70g、カーボンブラック2を10g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.48g/ml、安息角は20°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は14MPa、引張破断歪は158%、体積抵抗率は1.6Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は11.9質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0550】
実施例10
フッ素樹脂粉末A-2を40g、フッ素樹脂粉末B-6を50g、カーボンブラック1を10g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.43g/ml、安息角は34°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は10MPa、引張破断歪は17%、体積抵抗率は5.1Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は9.8質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0551】
実施例11
フッ素樹脂粉末A-2を40g、フッ素樹脂粉末B-6を45g、カーボンブラック2を15g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.34g/ml、安息角は28°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は10MPa、引張破断歪は16%、体積抵抗率は0.6Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は16.8質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0552】
実施例12
フッ素樹脂粉末A-2を70g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、カーボンブラック2を5g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.46g/ml、安息角は29°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は17MPa、引張破断歪は140%、体積抵抗率は3.1Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は7.4質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0553】
実施例13
フッ素樹脂粉末A-2を74g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、カーボンブラック1を1g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.60g/ml、安息角は22°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は17MPa、引張破断歪は167%、体積抵抗率は2.0×10Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は8.1質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0554】
実施例14
フッ素樹脂粉末A-2を69g、フッ素樹脂粉末B-4を3g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、カーボンブラック2を3g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.51g/ml、安息角は26°であり、取扱性に優れるものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を99.8923質量%、PPVE単位を0.1077質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は315℃、327℃及び343℃、引張破断強度は18MPa、引張破断歪は211%、体積抵抗率は9.2Ω・cmであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は4.8質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0555】
実施例15
フッ素樹脂粉末A-2を65g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、窒化ホウ素を10g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.56g/ml、安息角は30°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は10MPa、引張破断歪は42%、熱伝導率は0.72W/m・Kであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は13.9質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0556】
実施例16
フッ素樹脂粉末A-2を72g、フッ素樹脂粉末B-6を25g、窒化ホウ素を3g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.72g/ml、安息角は31°であり、取扱性に優れるものであった。上記PTFE粉末の融点は327℃及び343℃、引張破断強度は15MPa、引張破断歪は154%、熱伝導率は0.32W/m・Kであった。窒素雰囲気下600℃で熱分解して生じる残渣は10.9質量%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0557】
比較例1
フッ素樹脂粉末A-1を85g、ガラス繊維(日東紡績株式会社製PF E-001)を15g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.62g/ml、安息角は44°であり、取扱性に劣るものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を100質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は329℃、引張破断強度は6MPa、引張破断歪は71%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0558】
比較例2
フッ素樹脂粉末A-1を85g、グラファイト(日本黒鉛工業株式会社製CPB)を15g用いて実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の見掛密度は0.37g/ml、安息角は43°であり、取扱性に劣るものであった。また、上記PTFE粉末は、全重合単位に対しTFE単位を100質量%含んでいた。上記PTFE粉末の融点は329℃、引張破断強度は7MPa、引張破断歪は17%であった。得られたPTFE粉末の特性について、表1に示す。
【0559】
【表1】

【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質用でない、溶融流動性を示さないフッ素樹脂組成物であって、
融点以上の温度に加熱した履歴のある溶融流動性を示さないフッ素樹脂Aと、
前記フッ素樹脂組成物に対し、0.5~30質量%の溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、10~90質量%の融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂Bと、
充填材とを含
フッ素樹脂Aは、ポリテトラフルオロエチレンであり、
前記融点以上の温度に加熱した履歴のない溶融流動性を示さないフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである、
フッ素樹脂組成物。
【請求項2】
333℃未満の温度領域に1つ以上、かつ、333~360℃の温度領域に1つ以上の融点を有する請求項1に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項4】
前記変性モノマー単位の量が、前記フッ素樹脂組成物を構成する全重合単位に対し1.0質量%以下である請求項3に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項5】
前記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.25g/10分以上である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項6】
前記溶融流動性を示すフッ素樹脂は、融点が320℃以下のフッ素樹脂である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項7】
フッ素樹脂Bが前記溶融流動性を示すフッ素樹脂であり、前記フッ素樹脂組成物は、更に、融点以上の温度に加熱した履歴のない部分を有する溶融流動性を示さないフッ素樹脂Cを含む請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項8】
見掛密度が0.40g/ml以上である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項9】
安息角が40°未満である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項10】
平均二次粒子径が5~700μmである請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項11】
フッ素樹脂Aの粒子の最大直線長さが、フッ素樹脂Bの粒子の最大直線長さより小さい請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項12】
前記充填材は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、球状カーボン、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、アルミナ、マイカ、炭化珪素、窒化硼素、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化コバルト、二硫化モリブデン、ブロンズ、金、銀、銅、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項13】
前記充填材は、導電性フィラーである請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項14】
前記導電性フィラーは、カーボンブラックである請求項13に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項15】
粉末である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項16】
圧縮成形用粉末又はラム押出成形用粉末である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項17】
下記のいずれかの条件で測定した引張破断強度が8MPa以上である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物。
(測定条件1)
φ100mmの金型に35gの前記フッ素樹脂組成物を投入し、30MPaの圧力、1分間の条件で圧縮成形し、室温から300℃まで3時間で昇温し、その後300℃から370℃まで4時間で昇温し、370℃で12時間保持した後、300℃まで5時間で降温したのち、室温まで1時間で降温する工程によって焼成した成形体を打ち抜いて作成したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。
(測定条件2)
予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて前記フッ素樹脂組成物を押出することにより成形体を得、この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ150mmに切削加工することで平板を用意し、この成形品を打ち抜くことでダンベルを用意し、ASTM D 1708に準じて測定する。
【請求項18】
請求項1又は2に記載のフッ素樹脂組成物を圧縮成形及び焼成するか、又は、ラム押出成形して得られる成形体。
【請求項19】
320~335℃の範囲、及び、335℃超の範囲のそれぞれに吸熱ピークを1つ以上有するフッ素樹脂組成物であって、
窒素雰囲気下600℃で熱分解すると前記フッ素樹脂組成物に対し15質量%以下の残渣を生じ、
導電性又は0.3W/m・K以上の熱伝導率を示す
多孔質用でないフッ素樹脂組成物。
【請求項20】
更に導電性フィラー又は熱伝導性フィラーを含む請求項19に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項21】
体積抵抗率が10Ω・cm以下である請求項19又は20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項22】
見掛密度が0.40g/ml以上である請求項19又は20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項23】
安息角が40°未満である請求項19又は20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項24】
ラム押出成形用粉末である請求項19又は20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項25】
下記のいずれかの条件で測定した引張破断強度が8MPa以上である請求項19又は20に記載のフッ素樹脂組成物。
(測定条件1)
φ100mmの金型に35gの前記フッ素樹脂組成物を投入し、30MPaの圧力、1分間の条件で圧縮成形し、室温から300℃まで3時間で昇温し、その後300℃から370℃まで4時間で昇温し、370℃で12時間保持した後、300℃まで5時間で降温したのち、室温まで1時間で降温する工程によって焼成した成形体を打ち抜いて作成したダンベルを用いて、ASTM D1708に準じて測定する。
(測定条件2)
予熱ゾーン270℃、成形ゾーン370℃に設定した、シリンダー径φ27mm、全長1300mmの縦型ラム押出成形機で、充填長70mm、圧力10MPa、加圧時間20秒、1サイクル40秒にて前記フッ素樹脂組成物を押出することにより成形体を得、この成形体を、厚さ2.0mm、幅20mm、長さ150mmに切削加工することで平板を用意し、この成形品を打ち抜くことでダンベルを用意し、ASTM D 1708に準じて測定する。