(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153084
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20231005BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20231005BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/406 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
C08J11/06
H01M10/54
H01M50/451
H01M50/403 Z
H01M50/403 F
H01M50/417
H01M50/406
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057944
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0040303
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0039710
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン サン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒェ ジン
【テーマコード(参考)】
4F401
5H021
5H031
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AB05
4F401AC06
4F401AC07
4F401AD07
4F401BA13
4F401BB10
4F401CA39
4F401FA11
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB04
5H021BB12
5H021BB13
5H021BB15
5H021BB19
5H021CC03
5H021EE04
5H021EE21
5H021EE23
5H021HH00
5H021HH06
5H031BB02
5H031BB04
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータの再活用工程の効率を高める、再生方法を提供する。
【解決手段】本発明は、無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法に関する。本発明の一実施形態によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、を含む、無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、
前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、
を含む、無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項2】
前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程は、
超音波処理をさらに含む、請求項1に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項3】
前記超音波処理は、周波数10~50kHzの条件で行われる、請求項2に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項4】
前記表面研磨処理手段として、
下記(a)基材および(b)ブラシのうち1つ以上を含む、請求項1に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
(a)織布、不織布、カレンダー不織布(calendered non-woven fabric)、重合体フィルム、ステッチボンド布(stitchbonded fabric)、連続気泡発泡体(open cell foam)、または独立気泡発泡体(close cell foam)を表面に備えた基材
(b)有機重合体繊維または無機繊維をブラシ毛として備えたブラシ
【請求項5】
前記表面研磨処理は、
前記(a)基材および(b)ブラシのうち1つ以上が表面の少なくとも一部に備えられた1つまたは2つ以上のロールを用いて廃セパレータの表面を擦る工程を含む、請求項4に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項6】
前記廃セパレータを乾燥する工程は、50~150℃で行われる、請求項1に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項7】
前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、
前記コーティング層が脱離した廃セパレータを洗浄する工程をさらに含む、請求項1に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項8】
前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程において、
前記廃セパレータが巻き取られたロール状で提供され、前記提供されたロールから廃セパレータが巻き出されて水槽に含浸される、請求項1に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項9】
前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、
前記脱離したコーティング層を得る工程をさらに含む、請求項1に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項10】
前記得られたコーティング層から無機粒子を得る工程をさらに含む、請求項9に記載の無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法。
【請求項11】
表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータにコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、
前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、
前記乾燥された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂を混合する工程と、
前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出してペレットを製造する工程と、
を含む、再生ペレットの製造方法。
【請求項12】
前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程は、
超音波処理をさらに含む、請求項11に記載の再生ペレットの製造方法。
【請求項13】
前記廃セパレータは、前記廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物の全重量を基準として前記混合物中に10~90重量%で含まれる、請求項11に記載の再生ペレットの製造方法。
【請求項14】
前記乾燥された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂を混合する工程における混合温度は50~500℃である、請求項11に記載の再生ペレットの製造方法。
【請求項15】
前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出してペレットを製造する工程において、
前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を100~500℃で溶融押出する、請求項11に記載の再生ペレットの製造方法。
【請求項16】
廃セパレータを巻き出す巻出機と、
前記巻出機から巻き出された廃セパレータが投入される水槽と、
前記水槽の内部に設けられ、前記廃セパレータの表面を研磨する研磨ローラと、
前記水槽を通過して研磨された廃セパレータを巻き取る巻取機と、
を含み、
前記研磨ローラは、前記水槽に収容された液体に収容されるように配置され、前記液体中で前記廃セパレータの表面を研磨するように構成される、廃セパレータ再生装置。
【請求項17】
前記研磨ローラは、前記廃セパレータの表面を押して加圧するように構成される、請求項16に記載の廃セパレータ再生装置。
【請求項18】
前記研磨ローラは、ロールボディの表面にサンディングスポンジが付着した構造で構成される、請求項16に記載の廃セパレータ再生装置。
【請求項19】
前記水槽は、互いに分離された第1水槽および第2水槽を含み、
前記第2水槽の内部に前記研磨ローラが設けられ、
前記巻出機から巻き出された廃セパレータが、前記第1水槽に投入され、前記第1水槽に収容された液体に浸漬し、
前記第1水槽に浸漬した廃セパレータが、前記第2水槽に投入され、前記第2水槽に収容された液体に浸漬した状態で、前記研磨ローラにより表面が研磨されるとともに洗浄されるように構成される、請求項16に記載の廃セパレータ再生装置。
【請求項20】
前記水槽と巻取機との間に設けられ、
前記水槽を通過して研磨された廃セパレータを脱水する脱水ユニットと、
前記脱水ユニットにより脱水された廃セパレータを乾燥する乾燥ユニットと、をさらに含む、請求項16に記載の廃セパレータ再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法に関する。具体的に、本発明は、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータの連続再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータとは、電気自動車、携帯電話、ノートパソコンなどに用いられる電池において、正極と負極との接触を遮断して電極間の電気接触を防止することで安全性を高める微細フィルムである。電池用セパレータは、数十ナノメートルサイズの気孔を有しており、このような気孔を介してイオンが通過し、電池の機能を発揮するようにする。
【0003】
一般的に用いられるポリオレフィン系セパレータは、高温での熱収縮が激しく、物理的に耐久性が弱い。したがって、電池に異常が発生して内部の温度が上昇すると、セパレータの変形が生じやすく、深刻な場合、電極と電極との接触を十分に防止することができず、ショート(short)による爆発が発生し得る。
【0004】
このような安定性問題を解決するために、従来のポリオレフィン系セパレータの片面や両面に無機粒子を用いて無機粒子層を形成したセラミックコーティングセパレータ(Ceramic Coated Separator、CCS)が開発されている。
【0005】
高耐熱特性のセラミックコーティングセパレータの需要が高くなるにつれ、多様な再活用方策が研究されている。セラミックコーティングセパレータは、表面の無機粒子層によりチッピング(chipping)および/またはペレット化(pelletizing)が難しく、押出が可能であるとしても樹脂混合物の高粘度性により押出機内に高負荷が発生するという問題がある。粘度を低くするために添加剤を投入する方策が提案されているが、前記方法により製造されるペレットの物性が添加剤により劣り、多様な製品への応用が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1441031号公報(公告日:2014年09月17日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した問題を解決するために、本発明は、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータの再活用工程の効率を高めようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するための一手段として、本発明の一実施形態によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、を含む、無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法を提供することができる。
【0009】
また、本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程は、超音波処理をさらに含んでもよい。
また、本発明の一実施形態によると、前記超音波処理は、周波数10~50kHzの条件で行われてもよい。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記表面研磨処理手段として下記(a)基材および(b)ブラシのうち1つ以上を含んでもよい。
(a)織布、不織布、カレンダー不織布(calendered non-woven fabric)、重合体フィルム、ステッチボンド布(stitchbonded fabric)、連続気泡発泡体(open cell foam)、または独立気泡発泡体(close cell foam)を表面に備えた基材;
(b)有機重合体繊維または無機繊維をブラシ毛として備えたブラシ;
【0011】
また、本発明の一実施形態によると、前記表面研磨処理は、前記(a)基材および(b)ブラシのうち1つ以上が表面の少なくとも一部に備えられた1つまたは2つ以上のロールを用いて廃セパレータの表面を擦る工程を含んでもよい。
また、本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータを乾燥する工程は、50~150℃で行われてもよい。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを洗浄する工程をさらに含んでもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程において、前記廃セパレータが巻き取られたロール状で提供され、前記提供されたロールから廃セパレータが巻き出されて水槽に含浸されてもよい。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、前記脱離したコーティング層を得る工程をさらに含んでもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記得られたコーティング層から無機粒子を得る工程をさらに含んでもよい。
【0016】
また、上述した目的を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によると、前述した無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法により得られたコーティング層を含む組成物を提供することができる。
【0017】
また、上述した目的を達成するためのまた他の一手段として、本発明の一実施形態によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータにコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、前記乾燥された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂を混合する工程と、前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出してペレットを製造する工程と、を含む、再生ペレットの製造方法を提供することができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程は、超音波処理をさらに含んでもよい。
また、本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータは、前記廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物の全重量を基準として前記混合物中に10~90重量%で含まれてもよい。
【0019】
また、本発明の一実施形態によると、前記乾燥された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂を混合する工程における混合温度は50~500℃であってもよい。
【0020】
また、本発明の一実施形態によると、前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出してペレットを製造する工程において、前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を100~500℃で溶融押出してもよい。
【0021】
また、上述した目的を達成するためのさらに他の一手段として、本発明の一実施形態によると、前述した再生ペレットの製造方法により製造された再生ペレットを提供することができる。
【0022】
また、上述した目的を達成するためのさらに他の一手段として、本発明の一実施形態によると、前述したように製造された再生ペレットを押出または射出して製造される成形品を提供することができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る廃セパレータ再生装置は、廃セパレータを巻き出す巻出機と、前記巻出機から巻き出された廃セパレータが投入される水槽と、前記水槽の内部に設けられ、前記廃セパレータの表面を研磨する研磨ローラと、前記水槽を通過して研磨された廃セパレータを巻き取る巻取機と、を含み、前記研磨ローラは、前記水槽に収容された液体に収容されるように配置され、前記液体中で前記廃セパレータの表面を研磨するように構成されてもよい。
【0024】
前記研磨ローラは、前記廃セパレータの表面を押して加圧するように構成されてもよい。
前記研磨ローラは、ロールボディの表面にサンディングスポンジが付着した構造で構成されてもよい。
【0025】
前記水槽は、互いに分離された第1水槽および第2水槽を含み、前記第2水槽の内部に前記研磨ローラが設けられ、前記巻出機から巻き出された廃セパレータが、前記第1水槽に投入され、前記第1水槽に収容された液体に浸漬し、前記第1水槽に浸漬した廃セパレータが、前記第2水槽に投入され、前記第2水槽に収容された液体に浸漬した状態で、前記研磨ローラにより表面が研磨されるとともに洗浄されるように構成されてもよい。
【0026】
前記廃セパレータ再生装置は、前記水槽と巻取機との間に設けられ、前記水槽を通過して研磨された廃セパレータを脱水する脱水ユニットと、前記脱水ユニットにより脱水された廃セパレータを乾燥する乾燥ユニットと、をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを再生して脱離したコーティング層、前記脱離したコーティング層から得られる無機粒子、および/または再生されたセパレータを提供することができるため、産業上の利点に優れる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、廃セパレータから脱離したコーティング層を提供することができる。前記脱離したコーティング層は、無機粒子、水分、および有機物のうち1つ以上を含む組成物であって、ペイントなどのような塗料またはフィラー(filler)などの構成成分として含まれることができるため、産業上の利点に優れる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、廃セパレータから脱離したコーティング層から得られた無機粒子を提供することができる。前記得られた無機粒子は、電気化学素子のセパレータコーティング剤の用途だけでなく、セメント組成物、触媒支持体、吸着剤、半導体基板、LED蛍光体などの多様な産業分野に活用することができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る廃セパレータの連続再生方法は、再生されたセパレータを提供することができる。前記再生されたセパレータは、表面の少なくとも一部にコーティングされた無機粒子を含むコーティング層が脱離したポリオレフィン系多孔性セパレータ基材であってもよく、今後電気化学素子のセパレータとして再活用することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る廃セパレータの再生方法は、水槽内に廃セパレータを含浸させた後に、表面研磨処理を単独で行うかまたは超音波処理-表面研磨処理を複合して行う比較的に簡単な工程により、廃セパレータ表面の無機粒子を含むコーティング層の大半を脱離させることができるため、産業上の利点に優れる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る廃セパレータの再生方法は、連続式工程の適用が可能であって、大量の廃セパレータを効率的に再生させることができるため、産業上の利点に優れる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る再生ペレット(pellet)の製造方法によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを用いて製造された再生ペレットを提供することができる。前記再生ペレットは、新材ポリオレフィン樹脂と類似したレベルの物性を有するので、従来の新材ポリオレフィン樹脂を原料として用いる多様な産業分野に活用することができるため、産業上の利点に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る廃セパレータの連続再生工程図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る廃セパレータ再生装置の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る研磨ローラの配置構造を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付図面とともに詳細に後述している実施形態を参照すれば明らかになるであろう。ただし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現できるものであり、本実施形態は、単に本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範囲により定義されるだけである。以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための具体的な内容について詳しく説明する。図面に関係なく同一の部材番号は、同一の構成要素を指す。
【0036】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味として用いられてもよい。明細書の全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。また、単数形は、語句において特に言及しない限り、複数形も含む。
【0037】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0038】
本明細書において、「廃セパレータ(waste separator)」とは、セパレータの製造工程中に発生するオフスペック(off-spec)のセパレータを意味するか、または廃電池(waste battery)または多様な廃電気化学素子(waste electrochemical device)の回収後に再活用または分解過程で得られるセパレータを意味し得る。
【0039】
本明細書において、「セパレータ(separator)」は、ポリオレフィン系多孔性セパレータ基材上に表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされたセラミックコーティングセパレータ(Ceramic Coated Separator、CCS)を指し得る。表面の少なくとも一部がコーティング層でコーティングされるとは、片面または両面の一部または全体がコーティング層でコーティングされていることを意味し得る。前記「コーティング層」は、当該技術分野で公知のセパレータコーティング層の全ての組成物を含んでもよく、その構成に特に制限されない。
【0040】
一実施形態によると、前記コーティング層は、無機粒子を含んでもよい。前記無機粒子としては、当該技術分野で公知の無機粒子のいずれを用いてもよいが、非限定的な例によると、前記無機粒子は、アルミナ(alumina)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、シリカ(silica)、酸化バリウム(barium oxide)、酸化チタン(titanium oxide)、酸化マグネシウム(magnesium oxide)、水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、粘土(clay)、ガラス粉末(glass powder)、ベーマイト(boehmite)、擬ベーマイト(psuedo-boehmite)、またはこれらの混合物からなってもよい。擬ベーマイトは、化学式AlO(OH)で表され、水分含量が高く、微細結晶のベーマイト類似構造を有する物質を意味する。
【0041】
一実施形態によると、前記コーティング層は、高分子バインダーを含んでもよい。前記高分子バインダーとしては、当該技術分野で公知のバインダーのいずれを用いてもよいが、非限定的な例によると、前記高分子バインダーは、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate、PBA)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)などのアクリル系樹脂、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン)((3-aminopropyl)trimethoxysilane)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)((3-glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)などのシラン系化合物、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、ポリビニルピロリドン(polyvinylprrolidone、PVP)、およびポリビニルアセテート(polyvinylaccetate、PVAc)のうち1つ以上を含んでもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、を含む、無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法を提供することができる。以下、各工程について詳しく説明する。
【0043】
本発明の一実施形態によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させることで廃セパレータを十分に濡らし、表面研磨処理または超音波処理-表面研磨処理時に廃セパレータの表面上にコーティングされたコーティング層が円滑に脱離できるようにする。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記水槽は、1つまたは2つ以上の水槽で構成されてもよく、特に制限されない。非限定的な一例によると、前記水槽が1つで構成される場合、同一の水槽内で廃セパレータの含浸処理-表面研磨処理が行われてもよい。他の非限定的な一例によると、前記水槽が2つ以上で構成される場合、廃セパレータが含浸される水槽、廃セパレータが表面研磨処理される水槽が別個に構成されてもよい。また、後述する表面研磨処理以後に行われる廃セパレータの洗浄工程の場合、非限定的な例によると、表面研磨処理と同一の水槽内で行われてもよく、表面研磨処理とは別個の異なる水槽内で行われてもよく、特に制限されない。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態によると、廃セパレータが含浸される水槽、廃セパレータが表面研磨処理される水槽、廃セパレータが洗浄される水槽は、それぞれ別個の異なる水槽であってもよい。別個の異なる水槽内で含浸処理、表面研磨処理、および洗浄がそれぞれ行われると、表面研磨処理により脱離したコーティング層の浮遊物などが廃セパレータの表面または表面付近に残存して含浸処理時に廃セパレータが十分に濡れることができないか、表面研磨処理時の脱離効率が低下するか、または洗浄時の洗浄効果が十分でない可能性を予防することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、廃セパレータを十分に濡らすために必要な含浸時間は10秒~5分であってもよい。含浸時間が過度に短い場合には、廃セパレータが十分に濡れないため、コーティング層が円滑に脱離しない恐れがあり、その逆に含浸時間が過度に長い場合には、工程効率が低下する恐れがある。上述した観点を考慮して、含浸時間は、好ましくは10秒~3分、10秒~2分、30秒~5分、30秒~3分、または30秒~2分であってもよい。前記廃セパレータが含浸される含浸時間は、廃セパレータが含浸される水槽が別個に構成される場合であれば、含浸される水槽内で廃セパレータが滞留する時間を意味し得、同一の水槽内で含浸処理-表面研磨処理が行われる場合であれば、表面研磨処理が行われる前まで水槽内で廃セパレータが滞留する時間を意味し得る。
【0047】
一方、水でない有機溶媒などで満たされた処理槽に廃セパレータを含浸させる場合、廃セパレータ中の空隙(pore)に有機溶媒中の化学物質が流入することで、廃セパレータの汚染が発生し得る。このため、廃セパレータから製造される再生ペレットの物性に影響を与える可能性がある。また、有機溶媒を再処理するための追加設備および防爆設備が別に必要であり、有機溶媒の揮発による人体の損傷および環境汚染などの問題があり得る。
【0048】
廃セパレータを水槽に含浸させた後、本発明の一実施形態によると、その次に、前記廃セパレータを表面研磨処理してもよい。表面研磨処理は、多様な装置または器具を活用して表面を摩擦させ、廃セパレータの表面にコーティングされた無機粒子を脱離可能であれば十分であり、表面研磨処理手段は、特に制限されない。表面研磨処理手段の非限定的な例としては、(a)織布、不織布、カレンダー不織布(calendered non-woven fabric)、重合体フィルム、ステッチボンド布(stitchbonded fabric)、連続気泡発泡体(open cell foam)、または独立気泡発泡体(close cell foam)を表面に備えた基材(substrate);および(b)有機重合体繊維または無機繊維をブラシ毛として備えたブラシ(brush);のうち1つ以上を含む多様な装置または器具が挙げられる。より具体的な例として、後述するように、表面研磨処理手段は、研磨ローラで実現されてもよい。
【0049】
前記有機重合体繊維としては、ブラシを活用する技術分野で公知の有機重合体材質の繊維であれば、いずれを用いてもよい。有機重合体繊維の非限定的な例として、エステル系繊維、ナイロン系繊維、セルロース系繊維、アクリル系繊維、オレフィン系繊維、天然繊維、およびポリ塩化ビニル系繊維のうち1つまたは2つ以上が混合された繊維を用いてもよい。
【0050】
前記無機繊維としては、ブラシを活用する技術分野で公知の無機繊維であれば、いずれを用いてもよい。無機繊維の非限定的な例として、シリコンカーバイド系繊維、炭素繊維、金属酸化物繊維、金属窒化物繊維、金属炭窒化物繊維のうち1つまたは2つ以上が混合された繊維を用いてもよい。
【0051】
一方、硬度が過度に大きい表面研磨処理手段を用いて廃セパレータを表面研磨処理すると、廃セパレータが破れ得、前記廃セパレータの破れた空間に無機粒子が混入する恐れがある。それを考慮して、前記表面研磨処理手段の硬度を適宜調節することが必要である。特に制限されるものではないが、表面研磨処理手段のうちブラシにおいて、ブラシ毛は、ASTM D786に準じて測定されたR-スケール(R-scale)ロックウェル硬さが80~140または90~130であってもよい。
【0052】
非限定的な一実施形態によると、前記表面研磨処理は、前記(a)基材および(b)ブラシのうち1つ以上が表面の少なくとも一部に備えられた1つまたは2つ以上のロール(roll)を用いて廃セパレータの表面を擦る工程(scrubbing process)を含んでもよい。
【0053】
本発明によると、前記廃セパレータを表面研磨処理して表面にコーティングされたコーティング層を脱離してもよいが、本発明の好ましい一実施形態によると、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程において、超音波処理をさらに含んでもよい。
【0054】
一実施形態によると、前記超音波処理は、表面研磨処理の以前、同時、または以後に行われてもよく、行われる時点は特に制限されない。本発明によると、水槽内で超音波処理を行うことで、前記超音波処理を行う器具と被処理対象である廃セパレータとの間に介在する水槽内の水分子に超音波振動と回転を与えることができ、前記水分子の振動と回転により廃セパレータの表面を極微細加工することができる。前記極微細加工により廃セパレータとコーティング層との結合力を低くすることができる。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態によると、超音波処理を行った後に表面研磨処理を行ってもよい。本発明によると、前処理として超音波処理を先に行うと、廃セパレータとコーティング層との結合力を低くすることができ、これは、後処理である表面研磨処理を行う際に、前記廃セパレータからコーティング層がさらに円滑に脱離できるようにすることができる。
【0056】
前記超音波処理を行う器具としては、特に制限されないが、非限定的な例として、超音波発振器、振動子、ホーンを含む超音波研磨装置を用いてもよい。
一実施形態によると、超音波処理は、周波数10~50kHz、10~40kHz、または10~30kHzの条件で行われてもよい。
【0057】
一実施形態によると、超音波処理は、出力300~1500W、300~1200W、300~1000W、500~1500W、500~1200W、または500~1000Wの条件で行われてもよい。
【0058】
一実施形態によると、超音波処理時間は10秒~5分であってもよい。超音波処理時間が過度に短い場合には、廃セパレータとコーティング層との結合力を十分に低くすることができない恐れがあり、その逆に超音波処理時間が過度に長い場合には、廃セパレータとコーティング層との結合力を低くする効果が飽和するだけでなく、工程効率が低下する恐れがある。上述した観点を考慮して、好ましい一実施形態によると、前記超音波処理時間は10秒~3分、10秒~2分、30秒~5分、30秒~3分、または30秒~2分であってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程を含んでもよい。
一実施形態によると、廃セパレータの乾燥温度は50~150℃、50~120℃、または50~100℃であってもよい。乾燥時間は、特に制限されないが、一実施形態によると、30分~6時間、30分~3時間、または30分~2時間であってもよい。
【0060】
一方、本発明によると、廃セパレータを水槽内で表面研磨処理して前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する場合、廃セパレータから脱離したコーティング層が廃セパレータの表面付近に残存している可能性が存在する。
【0061】
本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、選択的に、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを洗浄する工程をさらに含んでもよい。
【0062】
前記洗浄する工程は、当該技術分野で公知の洗浄工程のいずれを適用してもよいが、非限定的な例によると、蒸留水を用いて洗浄してもよい。また、前記洗浄する工程は、表面研磨処理を行った水槽と同一の水槽内で行われてもよく、または表面研磨処理を行った水槽とは異なる別個の水槽内で行われてもよいが、特に制限されない。
【0063】
本発明によると、無機粒子を含む廃セパレータを連続再生する再生方法を提供することができる。理解を助けるために、添付の
図1を用いて廃セパレータの連続再生工程について説明する。ただし、本発明の技術思想がこれに限定されないことを留意しなければならない。
【0064】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータは、巻き取られたロール状で提供されてもよい。その後、前記提供されたロールから廃セパレータが巻き出されて(unwound)水槽に含浸されてもよい。前記廃セパレータは、水槽に含浸されて十分に濡らされ(wetting)、水槽内で表面研磨処理(polishing)を単独で行うか、または超音波処理(sonication)-表面研磨処理を複合して行ってもよい。図面上では超音波処理と表面研磨処理が同一の水槽で行われているが、互いに別個の異なる水槽で行われてもよい。
【0065】
前記表面研磨処理は、(a)基材および(b)ブラシのうち1つ以上が表面の少なくとも一部に備えられた1つまたは2つ以上のロールにより廃セパレータの表面を擦る(scrubbing)工程を含んで行われる。前記(a)基材および(b)ブラシは、前述したものと同様の構成を用いることができるため、便宜上省略する。
【0066】
前記超音波処理は、再生ラインにおいて表面研磨処理と複合して行われてもよく、特に制限されない。一例によると、前記超音波処理を行った後に表面研磨処理を行ってもよい。一実施形態によると、超音波処理時の周波数は10~50kHz、10~40kHz、または10~30kHzであってもよく、出力は300~1500W、300~1200W、300~1000W、500~1500W、500~1200W、または500~1000Wであってもよい。
【0067】
上記過程で廃セパレータの表面にコーティングされた無機粒子を脱離した後、その次に、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを洗浄(washing)する工程を行ってもよい。洗浄工程は、蒸留水を用いて行われてもよい。
【0068】
その次に、前記洗浄された廃セパレータを乾燥する工程を行ってもよい。一実施形態によると、乾燥温度は50~150℃、50~120℃、または50~100℃であってもよい。乾燥時間は、特に制限されないが、一実施形態によると、30分~6時間、30分~3時間、または30分~2時間であってもよい。
その後、必要に応じて、再生されたセパレータを再び巻き取ってもよいが、必ずしも巻き取らなければならないものではない。
【0069】
また、本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、前記脱離したコーティング層を得る工程をさらに含んでもよい。
【0070】
前記脱離したコーティング層を得る工程は、廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程と同時または以後に行わればよく、前述した廃セパレータを洗浄する工程または廃セパレータを乾燥する工程の以前または以後に行われてもよい。
【0071】
前記得られたコーティング層は、無機粒子、水分、および有機物のうち1つ以上を含んでもよい。一例によると、前記有機物は、コーティング層中に含まれた高分子バインダーに由来したものであってもよいが、特に制限されない。また、一例によると、前記混合物は、スラリー状であってもよいが、特に制限されない。
【0072】
水槽内で脱離したコーティング層は、水分含量が高く、今後適用される製品の水を考慮して適切に水分を除去する必要がある。それを考慮して、一実施形態によると、前記脱離したコーティング層を得る工程は、脱離したコーティング層をフィルタープレスなどを用いて水分を除去した後に乾燥する工程を含んでもよい。
【0073】
他の一実施形態によると、前記脱離したコーティング層を得る工程は、脱離したコーティング層を含む水槽内に凝集剤を投与して沈殿した沈殿物を乾燥する工程を含んでもよい。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前述したように得られたコーティング層を含む組成物を提供することができる。前記得られたコーティング層は、無機粒子、水分、および有機物のうち1つ以上を含む組成物であって、ペイントなどのような塗料またはフィラー(filler)などの構成成分として含まれることができるため、産業上の利点に優れる。
【0075】
また、本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法は、前記得られたコーティング層から無機粒子を得る工程をさらに含んでもよい。
【0076】
前記得られたコーティング層から無機粒子を得る工程は、乾燥または熱処理によりコーティング層中に含まれた水分および/または有機物を除去できればよく、その手段は特に制限されない。
【0077】
本発明の一実施形態によると、前記得られたコーティング層から得られる無機粒子を提供することができる。前記得られた無機粒子は、電気化学素子のセパレータコーティング剤の用途だけでなく、セメント組成物、触媒支持体、吸着剤、半導体基板、LED蛍光体などの多様な産業分野に活用することができるため、産業上の利点に優れる。
【0078】
本発明の一実施形態によると、前述した廃セパレータの連続再生方法のうち1つの方法により再生されたセパレータを提供することができる。前記再生されたセパレータは、表面の少なくとも一部にコーティングされた無機粒子を含むコーティング層が脱離したポリオレフィン系多孔性セパレータ基材であってもよく、今後電気化学素子のセパレータとして再活用することができる。
【0079】
本発明に係る廃セパレータの再生方法は、水槽内に廃セパレータを含浸させた後に、水槽内で表面研磨処理を単独で行うかまたは超音波処理-表面研磨処理を複合して行う比較的に簡単な工程により、廃セパレータの表面にコーティングされた無機粒子を含むコーティング層の大半を脱離させることができるため、産業上の利点に優れる。
【0080】
本発明に係る廃セパレータの再生方法は、連続式工程の適用が可能であって、大量の廃セパレータを効率的に再生させることができるため、産業上の利点に優れる。
【0081】
本発明の一実施形態に係る無機粒子を含む廃セパレータの連続再生方法によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを再生して脱離したコーティング層、前記脱離したコーティング層から得られる無機粒子、および/または再生されたセパレータを提供することができるため、産業上の利点に優れる。
【0082】
本発明によると、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされた廃セパレータを水槽に含浸させた後に表面研磨処理し、前記廃セパレータにコーティングされたコーティング層を脱離する工程と、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程と、前記乾燥された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂を混合する工程と、前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出して再生ペレットを製造する工程と、を含む、再生ペレットの製造方法を提供することができる。
【0083】
本発明の一実施形態によると、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程は、超音波処理をさらに含んでもよい。
本発明の好ましい一実施形態によると、前記廃セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を脱離する工程以後に、前記コーティング層が脱離した廃セパレータを洗浄する工程をさらに含んでもよい。
【0084】
前記無機粒子を含むコーティング層を脱離する工程、コーティング層が脱離した廃セパレータを乾燥する工程、廃セパレータを洗浄する工程の詳細な事項は、前述した廃セパレータの連続再生方法において説明したものと同様であるため、便宜上省略する。
【0085】
本発明の一実施形態によると、前記乾燥された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂を混合してもよい。前記ポリオレフィン系樹脂としては、新材ポリオレフィン系樹脂を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記混合する工程は、当該技術分野で公知の混合工程のいずれを適用してもよく、混練機を用いて行われてもよい。混練機の非限定的な例としては、1軸または多軸の混練機、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、ラボプラストミル、およびロール混練機のうち1つまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
一実施形態に係る前記混合温度は50~500℃、50~400℃、または50~300℃であってもよい。
一実施形態に係る混合工程の実行時間は0分超過30分以内、0分超過20分以内、または0分超過10分以内であってもよい。
【0087】
ローター付きの混練機を用いて混合工程を行う場合、一実施形態によると、回転速度は10~500rpm、10~300rpm、または10~100rpmであってもよい。
【0088】
混合工程に続き、本発明の一実施形態によると、前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出して再生ペレットを製造する工程を行ってもよい。前記溶融押出工程は、当該技術分野で公知の溶融押出工程のいずれを適用してもよく、射出機を用いて行われてもよい。射出機の非限定的な例としては、プランジャ式射出機、スクリュー式射出機、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
一実施形態によると、前記廃セパレータは、前記廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物の全重量を基準として前記混合物中に10~90重量%、10~80重量%、または10~70重量%で含まれてもよい。前述した組成範囲内でペレットを製造してこそ、ポリオレフィン系樹脂の単独組成のペレットと比べて物性に劣らない。
【0090】
一実施形態によると、前記混合された廃セパレータとポリオレフィン系樹脂の混合物を100~500℃、100~400℃、100~300℃、150~500℃、150~400℃、または150~300℃で溶融押出してもよい。
【0091】
本発明によると、前述した再生ペレットの製造方法により製造された再生ペレットを提供することができる。前記再生ペレットは、新材ポリオレフィン樹脂と同等レベルの物性を有するため、従来の新材ポリオレフィン樹脂を製品の原料として用いる多様な産業分野に活用することができる。
【0092】
また、本発明によると、前述したように製造された再生ペレットを押出または射出して製造される成形品を提供することができる。前記成形品の非限定的な例としては、各種産業分野のケース類、フィルム類、シート類、履き物、衣服などの衣類、プラスチック製品類などの成形品が挙げられる。特に制限されるものではないが、前記フィルム類の例として電気化学素子のセパレータが挙げられる。
【0093】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0094】
{実施例}
評価例1:コーティング層の脱離工程(表面研磨処理/超音波処理)の実行有無に応じたコーティング脱離率の評価
【0095】
試験片A
(コーティング液の製造)
コーティング液の全重量を基準として、平均粒径0.7μmのベーマイト(γ-AlO(OH))粒子94重量%、Tgが-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)4重量%、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)2重量%を溶媒である水に添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造した。
【0096】
(セパレータの製造)
セパレータ基材として厚さ11μm、単位重量5.9g/m2のポリオレフィン微細多孔性セパレータ(SK ENPASS)を用い、前記製造されたコーティング液スラリーを両面に各5μmの厚さでバーコーティング(bar coating)した後に乾燥し、ロール状に巻き取り、表面の少なくとも一部が無機粒子を含むコーティング層でコーティングされたセラミックコーティングセパレータ(CCS)を準備した。この際、前記ロール状に巻き取られたセパレータを巻き出した後、幅10cm×長さ10cmに切断して試験片を準備した。
【0097】
試験片B
コーティング液の全重量を基準として、平均粒径0.7μmのベーマイト(γ-AlO(OH))粒子95重量%、Tgが60℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)5重量%を溶媒である水に添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造したことを除いては、前記試験片Aと同様の条件でセパレータを製造した。
前記試験片A、Bを水槽に含浸させた後、下記表1に記載の条件でコーティング層の脱離工程を行い、その結果を下記表1に共に示した。
【0098】
下記表1において、「表面研磨処理」は、水槽内に試験片A、Bを60秒間含浸させた後、スクラブ(scrubbing)布で試験片の全表面を時計方向に2回擦ることで行った。スクラブ布としては、KM社製のポリエステルワイパーWW-3012製品を用いた。
【0099】
下記表1において、「超音波処理」は、水槽内で20kHz、750Wの条件で、超音波工具(sonication horn)により60秒間超音波処理することで行った。
下記表1において、表面研磨処理および超音波処理のいずれも行う場合である実施例3、4では、水槽内で超音波処理を先に行った後、直ちに表面研磨処理を行った。
コーティング層の脱離工程を行った後、表1の各実施例1~4、比較例1~2のセパレータは、蒸留水で洗浄した後、80℃のオーブンで1時間乾燥した。
【0100】
下記表1の「コーティング脱離率(%)」は、下記の式により計算された。
コーティング脱離率(%)=(初期セパレータの重量-最終セパレータの重量)/(脱離前コーティング層の重量)*100
【0101】
-前記「初期セパレータの重量」は、表1によるコーティング層の脱離工程を行っていないセパレータの重量であって、試験片A、Bで製造されたセパレータの重量である。
【0102】
-前記「最終セパレータの重量」は、表1によるコーティング層の脱離工程および洗浄、乾燥を行った後の実施例1~4、比較例1~2のセパレータの重量である。
【0103】
-前記「脱離前コーティング層の重量」は、初期セパレータの重量からコーティング前セパレータの重量0.059gを引いた重量である。前記コーティング前セパレータの重量0.059gは、ポリオレフィン微細多孔性セパレータ(SK ENPASS)の単位重量5.9g/m2と試験片の面積100cm2から計算された。
【0104】
【0105】
前記表1の結果を参照すると、水槽内で表面研磨処理を行った実施例1~4におけるコーティング脱離率が90%以上であって、セパレータの表面にコーティングされたコーティング層を円滑に脱離したことを確認することができた。特に、実施例3、4は、超音波処理を行った後に表面研磨処理を行うことで、コーティング脱離率が実施例1、2と比べて高く、セパレータの表面にコーティングされたコーティング層をさらに円滑に脱離したことを確認することができた。
【0106】
これに対し、比較例1、2は、超音波処理のみを行った結果、コーティング脱離率が80%未満であって、コーティング層の脱離工程で十分に脱離せず、セパレータの表面上に多量のコーティング層が残存した。
【0107】
評価例2:再生ペレットの物性の評価
評価例1におけるコーティング層の脱離工程を行い、洗浄、乾燥された実施例1のセパレータ、またはコーティング層の脱離工程を全く行っていない試験片Aのセパレータを高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)と下記表2に記載の比率でBrabender mixer(internal mixer)に投入した後、200℃、40rpmで5分間混合した。前記混合物をWabash Compressor molder装置を介して190℃で溶融押出して再生ペレットを製造した。製造されたペレットに対して物性を評価した後、評価結果を下記表2に示した。下記表2において、「Ref.」は、実施例と比較例の物性を評価するための高密度ポリエチレンの単独組成のペレットである。
【0108】
【0109】
前記表2の結果を参照すると、実施例5、6は、セパレータの表面上に無機粒子を含むコーティング層が円滑に脱離し、高密度ポリエチレンの単独組成のRef.の物性と同等レベルに確保可能であることを確認した。
【0110】
これに対し、比較例3は、セパレータの表面に無機粒子を含むコーティング層が残留し、実施例5、6と比べて降伏強度および延伸率が低く、弾性に劣り、衝撃強度が低かった。
【0111】
以下、本発明の廃セパレータ再生装置について説明する。
図1を再び参照すると、本発明の装置は、概略的に、巻き取られたロール状で提供される廃セパレータを巻き出して水槽に投入し、浸漬(Wetting)、スクラブ(Scrubbing)、および洗浄(Washing)などの再生工程を行った後に巻き取るように構成される。
【0112】
図2は、本発明の一実施形態に係る廃セパレータ再生装置の概略図であり、より具体化された装置の一例に該当する。本装置10は、大きく、廃セパレータ20を巻き出す巻出機11と、内部に液体が収容され、廃セパレータが投入される水槽12と、水槽12を通過した廃セパレータを巻き取る巻取機14と、を含み、巻出機11と巻取機14との間で廃セパレータを移送するための複数のガイドローラ15を含む。
【0113】
本装置10は、水槽12の内部に研磨ローラ13が設けられ、当該研磨ローラ13は、水槽12の内部に収容された液体に収容されるように配置される。研磨ローラ13は、複数で構成されてもよい。研磨ローラ13は、粗い表面を有するように構成され、廃セパレータの表面をスクラブして研磨する。これにより、廃セパレータが液体に浸漬した状態で研磨されることができる。このように液体中で廃セパレータを研磨することで、廃セパレータの損傷を減らし、研磨性能が向上することができる。
【0114】
この際、研磨ローラ13が廃セパレータを押すように配置され、研磨ローラ13が廃セパレータを加圧するように構成されてもよい。
図3は、本発明の一実施形態に係る研磨ローラの配置構造を概略的に示した図であり、図示されたように、研磨ローラ13は、研磨ローラ13の前後に配置されたガイドローラ15に比べて廃セパレータ側に突出して配置され、廃セパレータが研磨ローラ13を中心にS字状で囲む配置構造(S-wrap)で構成されてもよい。これにより、研磨ローラ13が廃セパレータを上方から下方に、または前面から後面に押して廃セパレータを加圧することになる。このように研磨ローラ13が廃セパレータを加圧するように構成されることで、研磨ローラ13と廃セパレータとの密着力が増大し、研磨性能が増加することができる。
【0115】
本装置10は、研磨ローラ13が複数で構成されてもよく、複数の研磨ローラ13は、
図3の配置構造が連続式に設けられた構造で構成されてもよい。この際、図示してはいないが、いずれか1つの研磨ローラの前および後のうち少なくとも一側にガイドローラの代わりに他の研磨ローラが配置され、当該隣接した2つ以上の研磨ローラが互いにジグザグに配置され、隣接した研磨ローラ同士がS字状の配置構造で構成されてもよい。
【0116】
一方、研磨ローラ13は、表面にサンディングスポンジ13sが付着した構造で構成されてもよい。
図4は、研磨ローラを示した図であり、研磨ローラ13は、ロールボディ13bの表面にサンディングスポンジ13sが付着した構造からなってもよく、この際、サンディングスポンジ13sは、内部接着テープを用いて付着してもよい。サンディングスポンジ13sの粗さは適宜選択されてもよい。このように研磨ローラ13が構成されることで、サンディングスポンジ13sの脱付着が容易であって設置および管理上の便宜を提供し、それに基づいて研磨ローラ13の粗さを容易に変更することができる。研磨ローラ13は、1つまたは2つ以上設けられてもよく、各研磨ローラ13の粗さは、互いに同一または異なるように構成されてもよい。
【0117】
研磨ローラ13は、ロールボディ13bの表面にサンディングスポンジ13sが付着した構造の他にも、上述したように非限定的な例として、(a)織布、不織布、カレンダー不織布(calendered non-woven fabric)、重合体フィルム、ステッチボンド布(stitchbonded fabric)、連続気泡発泡体(open cell foam)、または独立気泡発泡体(close cell foam)を表面に備えた基材(substrate);および(b)有機重合体繊維または無機繊維をブラシ毛として備えたブラシ(brush);のうち1つ以上を含む多様な装置または器具で構成されてもよい。前記有機重合体繊維および無機繊維は、前述したものと同様であるため、便宜上省略する。
【0118】
図2を再び参照すると、水槽12は、第1水槽12-1と第2水槽12-2に分離して構成されてもよく、第2水槽12-2に研磨ローラ13が設けられてもよい。このように水槽12を分離して構成する理由は、各水槽12が担う機能が異なるためであり、第1水槽12-1には廃セパレータが浸漬し、第2水槽12-2では廃セパレータの研磨と洗浄が行われてもよい。
【0119】
より具体的に、巻出機11から巻き出された廃セパレータは、第1水槽12-1に投入され、第1水槽12-1に収容された液体に十分に浸漬し、第1水槽12-1に浸漬した廃セパレータは、第2水槽12-2に投入され、第2水槽12-2に収容された液体に浸漬した状態で、研磨ローラ13により表面が研磨されるとともに洗浄されてもよい。第1水槽12-1の液体と第2水槽12-2の液体は、使用による汚染度が異なるため、取り替え周期が異なってもよく、本発明は、それを考慮して、水槽12を分離して構成することで、装置の最適化された設計を提供し、メンテナンス費用を節減することができる。
【0120】
一方、
図1のように水槽が3個に分離して構成され、最後の水槽である第3水槽にて最終洗浄機能をさらに行うように構成されてもよい。この場合、洗浄機能の向上の面で利点があるが、装置の全体積が増加する短所があるため、それを考慮して状況に合わせて適切に設計変更してもよい。
【0121】
図2を再び参照すると、水槽12と巻取機14との間には、脱水ユニット16と乾燥ユニット17が設けられてもよい。脱水ユニット16は、水槽12から出た廃セパレータの水分を脱水させるものであり、スクイズロールまたはエアナイフのような脱水装置で構成されてもよい。乾燥ユニット17は、脱水ユニット16を通過して脱水された廃セパレータを乾燥させるものであり、ドライヤのような乾燥装置で構成されてもよい。
【0122】
さらに、前述したように、廃セパレータの表面を研磨するために、研磨ローラ13の他に、超音波を用いて追加の研磨工程を複合して行ってもよく、そのための超音波発生装置18が水槽12、より具体的には第2水槽12-2に密着して設けられてもよい。
【0123】
以上、本発明の例示的な実施例について説明したが、本発明はこれに限定されず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する請求範囲の概念と範囲から逸脱しない範囲内で多様な変更および変形が可能であることを理解することができる。