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特開2023-153097コーティング、物品、およびセラミック系基材を保護する方法
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  • 特開-コーティング、物品、およびセラミック系基材を保護する方法 図1
  • 特開-コーティング、物品、およびセラミック系基材を保護する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153097
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】コーティング、物品、およびセラミック系基材を保護する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20231005BHJP
   F02C 7/00 20060101ALN20231005BHJP
   F01D 5/28 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C04B41/89 Z
F02C7/00 C
F01D5/28
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059893
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】17/711,600
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】アールティーエックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】RTX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1000 Wilson Boulevard,Arlington,VA 22209,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウェズリー ジャクソン 3世
(72)【発明者】
【氏名】シャア タン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ティー.ビールズ
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202EA05
3G202EA08
(57)【要約】
【課題】 環境バリアコーティングを提供する。
【解決手段】 本開示の例示的実施形態によるコーティングは、可能なものの中でもとりわけ、マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコート、ボンドコート上に配置されたトップコート、及びボンドコートとトップコートとの間の中間層を含む。中間層は、マトリックス中に分散された非ケイ酸塩酸化物粒子を含む。セラミック系基材を保護する物品及び方法も開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコートと、
前記ボンドコート上に配置されたトップコートと、
前記ボンドコートと前記トップコートとの間の中間層であって、マトリックス中に分散した非ケイ酸塩酸化物粒子を含む、前記中間層と、
を備える、コーティング。
【請求項2】
前記中間層の前記マトリックスが前記ボンドコートの前記マトリックスと同じである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記非ケイ酸塩酸化物粒子が、前記中間層の約25~約50体積%を構成する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
前記非ケイ酸塩酸化物粒子が、約10~約25ミクロン(約0.5~約1ミル)の平均直径を有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項5】
前記非ケイ酸塩酸化物粒子が、前記ゲッタリング粒子の平均直径とほぼ同じ平均直径を有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項6】
前記非ケイ酸塩酸化物粒子が二酸化ハフニウム粒子である、請求項1に記載のコーティング。
【請求項7】
前記トップコートがケイ酸ハフニウムを含む、請求項6に記載のコーティング。
【請求項8】
前記ゲッタリング粒子が二ケイ化モリブデン粒子を含む、請求項6に記載のコーティング。
【請求項9】
前記ゲッタリング粒子が、炭化ケイ素粒子及びオキシ炭化ケイ素粒子をさらに含む、請求項8に記載のコーティング。
【請求項10】
前記中間層が、前記トップコートの材料の粒子を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項11】
前記中間層が、前記拡散粒子の材料の領域を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項12】
セラミック系基材と、
前記セラミック系基材上に配置されたコーティングであって、
マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコートと、
前記ボンドコート上に配置されたトップコートと、
前記ボンドコートと前記トップコートとの間の中間層であって、マトリックス中に分散した非ケイ酸塩酸化物粒子を含む前記中間層と、
を含む、前記コーティングと、
を備える、物品。
【請求項13】
前記中間層がケイ酸塩反応生成物を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記ケイ酸塩反応生成物が前記トップコートと同じ材料である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記中間層が前記拡散粒子の材料の領域を含む、請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記非ケイ酸塩酸化物粒子が二酸化ハフニウムであり、前記トップコート及び前記ケイ酸塩反応生成物がケイ酸ハフニウムである、請求項13に記載の物品。
【請求項17】
前記ゲッタリング粒子が二ケイ化モリブデン粒子を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項18】
セラミック系基材を保護する方法であって、
前記セラミック系基材上にコーティングを提供することであって、前記コーティングは、
マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコートと、
前記ボンドコート上に配置されたトップコートと、
前記ボンドコートと前記トップコートとの間の中間層であって、マトリックス中に分散した非ケイ酸塩酸化物粒子を含む、前記中間層と、
を備える、前記提供すること
を含み、
前記ゲッタリング粒子は酸化体と反応して酸化生成物を形成し、前記非ケイ酸塩酸化物粒子は前記酸化生成物と反応して前記中間層にケイ酸塩を形成する、
前記方法。
【請求項19】
前記非ケイ酸塩酸化物粒子が二酸化ハフニウムであり、前記ケイ酸塩がケイ酸ハフニウムである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲッタリング粒子が二ケイ化モリブデン粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境バリアコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、通常、ファンセクション、圧縮機セクション、燃焼器セクション、及びタービンセクションを含む。圧縮機セクションに入る空気は圧縮されて燃焼器セクションに送られ、そこで燃料と混合されて点火され、高エネルギーの排気ガス流が生成される。高エネルギーの排気ガス流は、タービンセクションを通って膨張し、圧縮機セクションとファンセクションを駆動する。圧縮機セクションは通常、低圧及び高圧圧縮機を含み、タービンセクションは低圧及び高圧タービンを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、ガスタービンエンジンで使用されるものなどの複合物品に関する。ガスタービンエンジン部品などの部品は、高温、腐食性及び酸化性条件、及び高い応力レベルにさらされる場合がある。熱安定性及び/または酸化安定性を改善するために、部品は保護バリアコーティングを含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の例示的実施形態によるコーティングは、可能なものの中でもとりわけ、マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコート、ボンドコート上に配置されたトップコート、及びボンドコートとトップコートとの間の中間層を含む。中間層は、マトリックス中に分散された非ケイ酸塩酸化物粒子を含む。
【0005】
前述のさらなる例では、中間層のマトリックスはボンドコートのマトリックスと同じである。
【0006】
前述のいずれかのさらなる例では、非ケイ酸塩酸化物粒子は、中間層の約25~約50体積%を構成する。
【0007】
前述のいずれかのさらなる例では、非ケイ酸塩酸化物粒子は、約10~約25ミクロン(約0.5~約1ミル)の間の平均直径を有する。
【0008】
前述のいずれかのさらなる例では、非ケイ酸塩酸化物粒子は、ゲッタリング粒子の平均直径とほぼ同じ平均直径を有する。
【0009】
前述のいずれかのさらなる例では、非ケイ酸塩酸化物粒子は二酸化ハフニウム粒子である。
【0010】
前述のいずれかのさらなる例では、トップコートはケイ酸ハフニウムを含む。
【0011】
前述のいずれかのさらなる例では、ゲッタリング粒子は二ケイ化モリブデン粒子を含む。
【0012】
前述のいずれかのさらなる例では、ゲッタリング粒子は、炭化ケイ素粒子及びオキシ炭化ケイ素粒子をさらに含む。
【0013】
前述のいずれかのさらなる例では、中間層はトップコートの材料の粒子を含む。
【0014】
前述のいずれかのさらなる例では、中間層は拡散粒子の材料の領域を含む。
【0015】
本開示の例示的な実施形態による物品は、可能なものの中でもとりわけ、セラミック系基材と、セラミック系基材上に配置されたコーティングとを含む。コーティングは、マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコート、ボンドコート上に配置されたトップコート、及びボンドコートとトップコートとの間の中間層を含む。中間層は、マトリックス中に分散された非ケイ酸塩酸化物粒子を含む。
【0016】
前述のさらなる例では、中間層はケイ酸塩反応生成物を含む。
【0017】
前述のいずれかのさらなる例では、ケイ酸塩反応生成物はトップコートと同じ材料である。
【0018】
前述のいずれかのさらなる例では、中間層は拡散粒子の材料の領域を含む。
【0019】
前述のいずれかのさらなる例では、非ケイ酸塩酸化物粒子は二酸化ハフニウムであり、トップコート及びケイ酸塩反応生成物はケイ酸ハフニウムである。
【0020】
前述のいずれかのさらなる例では、ゲッタリング粒子は二ケイ化モリブデン粒子を含む。
【0021】
本開示の例示的実施形態による、セラミック系基材を保護する方法は、可能なものの中でもとりわけ、マトリックス中に分散されたゲッタリング粒子及び拡散粒子を含むボンドコート、ボンドコート上に配置されたトップコート、及びボンドコートとトップコートとの間の中間層を含む。中間層は、マトリックス中に分散されたケイ酸塩酸化物粒子を含む。ゲッタリング粒子は酸化体と反応して酸化生成物を形成する。非ケイ酸塩酸化物粒子は酸化生成物と反応して、中間層にケイ酸塩を形成する。
【0022】
前述のさらなる例では、非ケイ酸塩酸化物粒子は二酸化ハフニウムであり、ケイ酸塩はケイ酸ハフニウムである。
【0023】
前述のいずれかのさらなる例では、ゲッタリング粒子は二ケイ化モリブデン粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的なガスタービンエンジンの概略図である。
図2】コーティングを有する請求項1のガスタービンエンジン用物品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ガスタービンエンジン20を概略的に示す。ガスタービンエンジン20は、本明細書中では、一般的にファンセクション22、圧縮機セクション24、燃焼器セクション26、及びタービンセクション28を組み込む2スプール式ターボファンとして開示される。ファンセクション22は、ファンケースまたはナセルなどのハウジング15内に画定されたバイパスダクト内のバイパス流路Bに沿って空気を駆動し、またコア流路Cに沿って空気を駆動し、圧縮及び燃焼器セクション26への連通、次いでタービンセクション28を通る膨張を行う。開示された非限定的な実施形態では2スプールターボファンガスタービンエンジンとして示されているが、本教示は3スプール構造を含む他のタイプのタービンエンジンにも適用し得るため、本明細書に記載の概念は2スプールターボファンでの使用に限定されないことを理解されたい。
【0026】
例示的なエンジン20は、いくつかのベアリングシステム38を介してエンジン静的構造体36に対してエンジンの中心長手方向軸Aを中心として回転するように装着された低速スプール30及び高速スプール32を一般的に含む。様々な位置に様々なベアリングシステム38を代替的または追加的に設けてもよく、ベアリングシステム38の位置を用途に応じて適宜変更してもよいことを理解されたい。
【0027】
低速スプール30は、第1(または低圧)圧縮機44、及び第1(または低圧)タービン46を相互接続する内側シャフト40を一般的に含む。内側シャフト40は、低速スプール30よりも低速でファン42を駆動するために、例示的なガスタービンエンジン20では歯車構造48として示されている速度変更機構を介してファン42に接続されている。高速スプール32は、第2(または高圧)圧縮機52、及び第2(または高圧)タービン54を相互接続する外側シャフト50を含む。燃焼器56は、高圧圧縮機52と高圧タービン54との間の例示的なガスタービン20に配置される。エンジン静的構造体36の中間タービンフレーム57は、一般に高圧タービン54と低圧タービン46との間に配置され得る。中間タービンフレーム57はさらに、タービンセクション28内のベアリングシステム38を支持する。内側シャフト40及び外側シャフト50は、同心であり、ベアリングシステム38を介して、その長手方向軸と共線の、エンジンの中心長手方向軸Aを中心として回転する。
【0028】
コア空気流は、低圧圧縮機44、次いで高圧圧縮機52によって圧縮され、燃焼器56内で燃料と混合及び燃焼され、次いで高圧タービン54及び低圧タービン46を通って膨張する。中間タービンフレーム57は、コア空気流路C内にあるエアフォイル59を含む。タービン46、54は、膨張に応答して、それぞれの低速スプール30及び高速スプール32を回転駆動する。ファンセクション22、圧縮機セクション24、燃焼器セクション26、タービンセクション28、及びファン駆動歯車システム48の位置のそれぞれが変更され得ることが理解されるであろう。例えば、歯車システム48は、低圧圧縮機の後方、または燃焼器セクション26の後方、またはさらにはタービンセクション28の後方に配置してもよく、ファン42は、歯車システム48の位置の前方または後方に配置してもよい。
【0029】
一例では、エンジン20は、高バイパス歯車航空機エンジンである。さらなる例では、エンジン20のバイパス比は約6よりも大きく、例示的な実施形態では約10よりも大きく、約18.0以下、またはより厳密な範囲で16.0以下にすることができる。歯車構造48は、約2.3より大きい歯車減速比を有する、遊星歯車システムまたは他の歯車システムなどの遊星歯車列である。歯車減速比は4.0以下であってもよい。低圧タービン46は、約5より大きい圧力比を有する。低圧タービン圧力比は、13.0以下、またはより厳密には12.0以下とすることができる。開示された一実施形態では、エンジン20のバイパス比は約10(10:1)より大きく、ファンの直径は低圧圧縮機44の直径よりもかなり大きく、低圧タービン46の圧力比は約5(5:1)を超える。低圧タービン46の圧力比は、排気ノズルの前の低圧タービン46の出口での圧力に対して、低圧タービン46の入口の前で測定された圧力である。歯車構造48は、約2.3:1より大きく約5:1より小さい歯車減速比を有する、遊星歯車システムまたは他の歯車システムなどの遊星歯車列であってもよい。しかしながら、上記のパラメータは歯車構造エンジンの一実施形態の単なる例示であり、本発明は直接駆動ターボファンを含む他のガスタービンエンジンに適用可能であることを理解されたい。
【0030】
バイパス比が高いため、バイパス流Bによってかなりの量の推力が提供される。エンジン20のファンセクション22は、特定の飛行条件、典型的にはマッハ約0.8及び約35,000フィート(10,668メートル)で巡航するように設計されている。マッハ0.8及び35,000フィート(10,668メートル)の飛行状態で、エンジンが最高の燃料消費量にある場合(「バケットクルーズ推力比燃料消費量(’TSFC’)」とも呼ばれる)は、エンジンがその最小点で生成する推力のlbfで割った、燃焼される燃料のlbmの業界標準パラメータである。上記及びこの段落で説明するエンジンパラメータは、特に指定がない限り、この条件で測定されたものである。「低ファン圧力比」は、ファン出口ガイドベーン(「FEGV」)システムを使用しないファンブレードのみの全体の圧力比である。非限定的な一実施形態によれば、本明細書に開示される低ファン圧力比は、約1.45未満であり、またはより厳密には1.25以上である。「低補正ファン先端速度」は、[(Tram°R)/(518.7°R)]0.5という産業標準温度補正値で除算した実際のファン先端での速度である。非限定的な一実施形態によれば、本明細書に開示される「低補正ファン先端速度」は、約1150.0フィート/秒(350.5メートル/秒)未満であり、1000.0フィート/秒(304.8メートル/秒)以上であり得る。
【0031】
図2は、バリア層として機能する複合材料ボンドコート102を含む、ガスタービンエンジン20用の例示的な物品100の代表的な部分を概略的に示している。物品100は、例えば、圧縮機セクション24またはタービンセクション28内のブレードまたはベーンなどのエアフォイル、燃焼器セクション26内の燃焼器ライナパネル、ブレード外側エアシール、または、本明細書の例の恩恵を受ける他の部品であり得る。この例では、ボンドコート102は環境バリア層として使用され、下にある基材104を環境条件及び熱条件から保護する。理解されるように、ボンドコート102は、独立したバリア層として、追加の下層を有する最外/トップコートとして、または、限定するものではないがセラミック系トップコートなどの他のコーティング下層または上層と組み合わせて使用することができる。
【0032】
ボンドコート102は、マトリックス106、「ゲッタリング」粒子108の分散体、及び拡散粒子110の分散体を含む。一例では、マトリックス106は二酸化ケイ素(SiO)であってもよい。一例では、ゲッタリング粒子108は、オキシ炭化ケイ素粒子(SiOC)または二ケイ化モリブデン(MoSi)粒子108であるが、他の例も考えられる。ゲッタリング粒子108は、例えば二ケイ化モリブデン粒子、他のケイ化物、酸炭化ケイ素粒子、炭化ケイ素(SiC)粒子、窒化ケイ素(Si)粒子、酸炭窒化ケイ素(SiOCN)粒子、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlON)粒子、酸炭窒化ケイ素ホウ素(SiBOCN)粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。拡散粒子110は、例えば、アルミノケイ酸バリウムマグネシウム(BMAS)粒子、ケイ酸バリウムストロンチウムアルミニウム粒子、ケイ酸マグネシウム粒子、アルミノケイ酸カルシウム粒子(CAS)、アルカリ土類ケイ酸アルミニウム粒子、ケイ酸イットリウムアルミニウム粒子、イッテルビウムアルミニウムケイ酸塩粒子、他の希土類金属アルミニウムケイ酸塩粒子、ホウケイ酸塩粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0033】
特定の例では、ゲッタリング粒子108は、炭化ケイ素粒子、オキシ炭化ケイ素粒子、及び二ケイ化モリブデン粒子の組み合わせを含む。この例では、ボンドコート102は、ゲッタリング粒子の酸化前に、少なくとも約50体積%の炭化ケイ素とオキシ炭化ケイ素を一緒に含む。
【0034】
ボンドコート102は、下にある基材104を酸素及び水分から保護する。例えば、基材104は、ケイ素含有セラミック材料などのセラミック系基材とすることができる。その一例が炭化ケイ素である。別の非限定的な例は、炭化ケイ素マトリックス中の炭化ケイ素繊維である。ゲッタリング粒子108及び拡散粒子110は、下にある基材104が周囲環境からの酸素及び/または水分にさらされるのを制限する酸素及び水分の拡散バリアとして機能する。特定の理論に束縛されるものではないが、BMAS粒子110などの拡散粒子110は、基材104の反対側のバリア層の外面に拡散し、下にある基材104を酸素/水分への暴露からシールするシール層を形成することによって、酸化及び水分保護を強化する。さらに、拡散粒子110の陽イオン金属種(例えば、BMAS粒子、バリウム、マグネシウム、及びアルミニウム)は、ゲッタリング粒子108内に拡散して、ゲッタリング材料の酸化安定性を高めることができる。さらに、拡散粒子110の拡散挙動は、バリア層に形成される可能性のあるあらゆるマイクロクラックをシールするように機能し得る。マイクロクラックをシールすることで、酸素がバリア層に浸透するのを防ぐことができ、バリア層の耐酸化性がさらに向上する。ゲッタリング粒子108は、ボンドコート102に拡散する可能性のある酸素や水などの酸化体種と反応する可能性がある。このようにして、ゲッタリング粒子は、これらの酸化体種が基材104に到達して酸化する可能性を低減することができる。
【0035】
セラミック系トップコート114は、ボンドコート102と接触している。一例として、セラミック系トップコート114は、酸化物系材料の1つまたは複数の層を含むことができる。酸化物系材料は、例えば、ハフニウム系酸化物またはイットリウム系酸化物(ハフニア、ケイ酸ハフニウム、ケイ酸イットリウム、イットリア安定化ジルコニアまたはガドリニア安定化ジルコニアなど)、またはそれらの組み合わせであり得るが、そのような酸化物に限定されない。
【0036】
トップコート114及びボンドコート102は一緒に、基材104のためのバリアコーティング116を形成する。
【0037】
ゲッタリング粒子108が上記の保護メカニズムで酸化体と反応すると、ゲッタリング粒子108の酸化生成物がボンドコート102に蓄積する。反応生成物は、主にトップコート114に近いボンドコート102の最外面の間に蓄積する。例えば、反応生成物は二酸化ケイ素であるか、または二酸化ケイ素を含むことができる。しかしながら、二酸化ケイ素は、例えば、物品100を含むガスタービンエンジン20の運転中に酸化反応が起こる高温に部分的に起因して、望ましくない微細構造を有する場合がある。特定の例では、二酸化ケイ素はクリストバライト相にあり、これは比較的不安定であり、マトリックス106と比較して低下した機械的特性を示す。クリストバライト相は平面層で形成され、クラックが生じやすい。したがって、コーティング116におけるこれらの酸化生成物の蓄積は、コーティング116の保護特性及び機械的完全性を損なう場合がある。
【0038】
反応生成物の影響を緩和するために、トップコート114とボンドコート102との間のコーティング116に中間層118が設けられる。中間層118は、二酸化ハフニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、または他の希土類金属非ケイ酸塩酸化物などの非ケイ酸塩酸化物粒子120を充填したマトリックス106を含む。非ケイ酸塩酸化物粒子120は、ケイ素含有酸化物反応生成物と反応してケイ酸塩を形成することにより、上述のゲッタリング粒子108の酸化からの酸化物反応生成物を消費する。したがって、非ケイ酸塩酸化物粒子120は、上述のように望ましくない酸化物相の大きなポケットの形成を妨げ、クラッキングの機会を最小限に抑え、それによってコーティング116の有効性及び完全性を改善する。さらに、ケイ酸塩は比較的低い熱伝導率を有し、一般に結晶性であるため、熱保護を提供し、コーティング116の機械的安定性を改善し得る。
【0039】
中間層118は厚さT1を有し、ボンドコート102は厚さT2を有する。いくつかの例では、厚さT2のT1に対する比は少なくとも約3である。特定の例では、比は約3から約4の間である。例えば、厚さT1は約50ミクロン(2ミル)であり、厚さT2は、約150から約200ミクロン(約6から約8ミル)の間である。
【0040】
物品100の寿命の間、トップコート114及び/またはボンドコート102の様々な成分がコーティング116内に拡散する場合がある。例えば、トップコート114の材料は中間層118に拡散し得、及び/またはコーティング102の成分は中間層118に拡散し得る。したがって、中間層118は、トップコート114材料の粒子122を含み得る。中間層118はまた、拡散粒子110材料及び/またはホウケイ酸ガラスのアモルファス領域124を含み得る。
【0041】
他の例では、中間層118は、トップコート114材料及び/または拡散粒子110材料の粒子を含むように形成することができる。
【0042】
いくつかの特定の例では、非ケイ酸塩酸化物粒子120とゲッタリング粒子108の酸化の反応生成物との間の反応のケイ酸塩生成物は、トップコート114の材料と同じ材料である。例えば、トップコート114はケイ酸ハフニウムであり、非ケイ酸塩酸化物粒子120は二酸化ハフニウムである。二酸化ハフニウムは、ゲッタリング粒子108の酸化のケイ素含有反応生成物と反応してケイ酸ハフニウムを形成する。
【0043】
一般に、非ケイ酸塩酸化物粒子120の表面積が大きいほど、非ケイ酸塩酸化物粒子120が関与する反応が促進される。したがって、非ケイ酸塩酸化物粒子120のサイズは、所望の反応動力学を提供して、上で論じた望ましくない相を消費し、コーティング116の特性を改善するように選択される。非ケイ酸塩酸化物粒子120は、いくつかの例では、約10~約25ミクロン(約0.5~約1ミル)の間の平均直径を有し得る。いくつかの特定の例では、非ケイ酸塩酸化物粒子120は、ゲッタリング粒子108が酸化体と反応する前のゲッタリング粒子108の平均直径とほぼ同じ平均直径を有する。
【0044】
非ケイ酸塩酸化物粒子120は、上述のようにコーティング116の他の成分と反応する前に、中間層118の約25~約50体積%を構成し得る。中間層中の非ケイ酸塩酸化物粒子120の量は、コーティング116の所望の熱的及び機械的特性ならびに上述の所望の反応動力学を考慮して、非ケイ酸塩酸化物粒子120のサイズとバランスが取られる。
【0045】
特定の例では、ゲッタリング粒子108は二ケイ化モリブデン粒子を含む。非ケイ酸塩酸化物粒子120は、二酸化ハフニウム粒子である。トップコート114はケイ酸ハフニウムである。
【0046】
コーティング116は、スラリーベースの方法などの任意の既知の方法によって部品100に塗布することができる。例えば、ボンドコート102成分を含有するスラリーを部品100に塗布し、次いで熱処理などの任意の既知の方法によって硬化または固化させることができる。同様のスラリー塗布及び硬化/固化方法を、中間層118について繰り返すことができる。トップコート114は、同様の方法、またはスプレーコーティングなどの当技術分野で知られている他の方法によって塗布することができる。
【0047】
本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野における典型的な意味を有するが、特定の例では、「約」は、本明細書に記載される値の最大10%の偏差を意味し得る。
【0048】
異なる例が、特定の構成要素を有するものとして説明されているが、本開示の例は、これらの特定の組み合わせに限定されない。実施形態の任意のものからの構成要素または特徴の一部を他の実施形態の任意のものからの特徴または構成要素と組み合わせて用いることが可能である。
【0049】
前述の説明は、例示として解釈されるべきであり、いかなる限定的な意味においても解釈されるべきではない。当業者は、特定の修正が本開示の範囲内に入り得ることを理解するであろう。これらの理由のため、以下の特許請求の範囲は、本開示の真の範囲及び内容を決定するために、検討されるべきである。
図1
図2