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特開2023-153098自動車の操舵システムのための装置、自動車、自動車の操舵システムを動作させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153098
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】自動車の操舵システムのための装置、自動車、自動車の操舵システムを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20231010BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20231010BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D113:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023059931
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】10 2022 203 329.9
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シュトレッカー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュプリンツル
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC12
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA06
3D232DA15
3D232DB11
3D232DC07
3D232DD07
3D232DD17
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC23
3D232EC29
3D232EC37
3D232GG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動車のユーザにとって特に快適になるように実装することを達成することができる操舵システムに作用する運転支援システムを提供する。
【解決手段】本装置(13)において、計算装置(16)は、運転支援システムによって設定可能な目的量(Z)に依存して操舵ハンドルのための目標手動トルク(HMSoll)を設定し、設定された目標手動トルク(HMSoll)に依存して操舵ハンドルアクチュエータを駆動するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の操舵システムのための装置であって、
前記操舵システム(8)は、操作可能な操舵ハンドル(11)と、少なくとも1つの操舵可能な車輪(3,4)とを有し、
前記操舵ハンドル(11)は、前記操舵ハンドル(11)の操作が前記車輪(3,4)の操舵に依存しないように、前記車輪(3,4)から機械的に分離されており、
前記操舵ハンドル(11)には、前記操舵ハンドル(11)に作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータ(12)が対応付けられており、
前記車輪(3,4)には、前記車輪(3,4)の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータ(10)が対応付けられており、
前記装置は、前記操舵ハンドルアクチュエータ(12)及び前記車輪アクチュエータ(10)を駆動するように構成された計算装置(16)を備える、
装置において、
前記計算装置(16)は、
運転支援システム(15)によって設定可能な目的量(Z)に依存して前記操舵ハンドル(11)のための目標手動トルク(HMSoll)を設定し、
設定された前記目標手動トルク(HMSoll)に依存して前記操舵ハンドルアクチュエータ(12)を駆動する
ように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記計算装置(16)は、
前記目的量(Z)に依存して前記操舵ハンドル(11)のための目標操作位置(BSSoll)を設定し、
前記操舵ハンドル(11)の実際操作位置(BSIst)と前記目標操作位置(BSSoll)との偏差(ΔBS)に依存して前記目標手動トルク(HMSoll)を設定するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記計算装置(16)は、
前記目的量(Z)に依存して、又は、前記運転支援システム(15)によって設定可能なさらなる目的量に依存して、前記車輪(3,4)のための目標車輪操舵角度(RLWSoll)を設定し、
前記目標車輪操舵角度(RLWSoll)に依存して前記車輪アクチュエータ(10)を駆動する
ように構成されている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記計算装置(16)は、前記操舵ハンドル(11)の前記実際操作位置(BSIst)に依存して前記目標車輪操舵角度(RLWSoll)を設定するように構成されている、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記計算装置(16)は、前記目的量(Z)及び/又は前記さらなる目的量を、少なくとも1つの伝達関数によって修正するように構成されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置(13)は、操舵感計算機能を有し、
前記装置(13)は、前記運転支援システム(15)が非アクティブである場合にも前記運転支援システム(15)がアクティブである場合にも、前記操舵感計算機能に従って前記目標手動トルク(HMSoll)を設定するように構成されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記計算装置(16)は、
前記実際操作位置(BSIst)と前記目標操作位置(BSSoll)との前記偏差(ΔBS)に依存して第1の力を特定し、
前記運転支援システム(15)がアクティブである場合に、前記第1の力に依存して前記目標手動トルク(HMSoll)を設定する
ように構成されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記計算装置(16)は、
前記車輪(3,4)に作用する実際復元力に依存して第2の力を特定し、
前記運転支援システム(15)が非アクティブである場合に、前記第2の力に依存して前記目標手動トルク(HMSoll)を設定する
ように構成されている、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記計算装置(16)は、勾配制限モジュールを有し、
前記勾配制限モジュールは、設定された前記目標手動トルク(HMSoll)の変化率を制限するように構成されている、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記計算装置(16)は、付加トルクモジュール(21)を有し、
前記付加トルクモジュール(21)は、目標付加トルク(ZMSoll)を設定し、前記目標手動トルク(HMSoll)に前記目標付加トルク(ZMSoll)を加えるように構成されている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記付加トルクモジュール(21)は、前記実際操作位置(BSIst)と前記目標操作位置(BSSoll)との前記偏差(ΔBS)に依存して、及び/又は、前記自動車(1)の実際軌道と前記自動車(1)の設定された目標軌道との偏差に依存して、前記目標付加トルク(ZMSoll)を設定するように構成されている、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記計算装置(16)は、前記目標車輪操舵角度(RLWSoll)及び前記目標手動トルク(HMSoll)を設定するように構成された1つの計算ユニット(33)を有し、又は、
前記計算装置(16)は、第1の計算ユニット及び第2の計算ユニットを有し、前記第1の計算ユニットは、前記目標手動トルク(HMSoll)を設定するように構成されており、前記第2の計算ユニットは、前記目標車輪操舵角度(RLWSoll)を設定するように構成されている、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記計算装置(16)は、前記目的量(Z)を受信するための、又は、前記目的量(Z)と前記さらなる目的量とを受信するための通信装置(17)を有する、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
操舵システム(8)を備えた自動車であって、
前記操舵システム(8)は、操作可能な操舵ハンドル(11)と、少なくとも1つの操舵可能な車輪(3,4)とを有し、
前記操舵ハンドル(11)は、前記操舵ハンドル(11)の操作が前記車輪(3,4)の操舵に依存しないように、前記車輪(3,4)から機械的に分離されており、
前記操舵ハンドル(11)には、前記操舵ハンドル(11)に作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータ(12)が対応付けられており、
前記車輪(3,4)には、前記車輪(3,4)の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータ(10)が対応付けられている、
自動車において、
前記操舵システム(8)を動作させるための、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の装置(13)が設けられている
ことを特徴とする自動車。
【請求項15】
自動車の操舵システムを動作させるための方法であって、
前記操舵システム(8)は、操作可能な操舵ハンドル(11)と、少なくとも1つの操舵可能な車輪(3,4)とを有し、
前記操舵ハンドル(11)は、前記操舵ハンドル(11)の操作が前記車輪(3,4)の操舵に依存しないように、前記車輪(3,4)から機械的に分離されており、
前記操舵ハンドル(11)には、前記操舵ハンドル(11)に作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータ(12)が対応付けられており、
前記車輪(3,4)には、前記車輪(3,4)の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータ(10)が対応付けられている、
方法において、
運転支援システム(15)によって設定可能な目的量(Z)に依存して前記操舵ハンドル(11)のための目標手動トルク(HMSoll)を設定し、
設定された前記目標手動トルク(HMSoll)に依存して前記操舵ハンドルアクチュエータ(12)を駆動する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の操舵システムのための装置であって、操舵システムは、操作可能な操舵ハンドルと、少なくとも1つの操舵可能な車輪とを有し、操舵ハンドルは、操舵ハンドルの操作が車輪の操舵に依存しないように、車輪から機械的に分離されており、操舵ハンドルには、操舵ハンドルに作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータが対応付けられており、車輪には、車輪の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータが対応付けられており、装置は、操舵ハンドルアクチュエータ及び車輪アクチュエータを駆動するように構成された計算装置を備える、装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、操舵システムを備えた自動車であって、操舵システムは、操作可能な操舵ハンドルと、少なくとも1つの操舵可能な車輪とを有し、操舵ハンドルは、操舵ハンドルの操作が車輪の操舵に依存しないように、車輪から機械的に分離されており、操舵ハンドルには、操舵ハンドルに作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータが対応付けられており、車輪には、車輪の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータが対応付けられている、自動車に関する。
【0003】
本発明はさらに、自動車の操舵システムを動作させるための方法であって、操舵システムは、操作可能な操舵ハンドルと、少なくとも1つの操舵可能な車輪とを有し、操舵ハンドルは、操舵ハンドルの操作が車輪の操舵に依存しないように、車輪から機械的に分離されており、操舵ハンドルには、操舵ハンドルに作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータが対応付けられており、車輪には、車輪の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータが対応付けられている、方法に関する。
【背景技術】
【0004】
従来技術
冒頭で述べた形式の操舵システム及び装置は、従来技術から公知である。
【0005】
操舵システムは、典型的には、操作可能な操舵ハンドルと、少なくとも1つの操舵可能な車輪とを有する。いわゆるステアバイワイヤ式の操舵システムの場合には、操舵ハンドルは、操舵ハンドルの操作が車輪の操舵に依存しないように、車輪から機械的に分離されている。即ち、操舵ハンドルの操作を必然的に車輪の操舵に変換するような機械的な結合は、操舵ハンドルと車輪との間には存在しない。この場合、ステアバイワイヤ式の操舵ハンドルには、操舵ハンドルに作用するトルクを生成するための駆動可能な操舵ハンドルアクチュエータが対応付けられている。さらに、車輪には、車輪の車輪操舵角度に影響を与えるための駆動可能な車輪アクチュエータが対応付けられている。ステアバイワイヤ式の操舵システムを動作させる又は制御するために、装置には、典型的には、操舵ハンドルアクチュエータ及び車輪アクチュエータを駆動するように構成された計算装置が設けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
請求項1の特徴を備えた本発明に係る装置は、操舵システムに作用する運転支援システムを、自動車のユーザにとって特に快適になるように実装することを達成することができるという利点を有する。本発明によれば、このために計算装置は、運転支援システムによって設定可能な目的量に依存して操舵ハンドルのための目標手動トルクを設定し、設定された目標手動トルクに依存して操舵ハンドルアクチュエータを駆動するように構成されている。即ち、本発明によれば、設定可能な又は設定された目的量に依存して操舵ハンドルのための目標手動トルクが設定され、これによって手動トルク制御が実施される。操舵ハンドルとは、この装置を操作することによってユーザが自動車に対する横方向制御要求又は軌道を設定することが可能となるような装置である。例えば、操舵ハンドルは、ステアリングホイール、コントロールスティック、又は、操縦桿として構成されている。手動トルクは、操舵ハンドルの操作位置の変化を手動トルクによって阻止するために、操舵ハンドルのユーザが少なくとも印加しなければならないトルク又は力である。本発明によれば、目的量に依存して目標手動トルクが設定されるので、運転支援システムがアクティブである場合に、ユーザにとって特に心地よい操舵感を生成することができる。さらに、所望の目標手動トルクの設定を、種々異なる車両製造業者の具体的な設定に簡単に適合させることが可能である。本発明によれば、自動車は、少なくとも1つの操舵可能な車輪を有する。しかしながら、複数の操舵可能な車輪が設けられていてもよい。好ましくは、自動車は、2つの操舵可能な車輪を備えた少なくとも1つの車輪軸を有する。2つの操舵可能な車輪を有する車輪軸が設けられている場合には、これら2つの操舵可能な車輪は、例えば、一方の車輪の操舵が他方の車輪の操舵に依存するように、機械的に相互に結合されている。特に、2つの車輪は、操舵システムのラックを介して機械的に相互に結合されている。2つの操舵可能な車輪が機械的に相互に結合されている場合には、好ましくは、これら2つの車輪に対応付けられた単一の駆動可能な車輪アクチュエータが設けられている。しかしながら、2つの操舵可能な車輪は、一方の車輪の操舵が他方の車輪の操舵に依存しないように、機械的に分離されていてもよい。操舵システムがこのように構成されている場合には、好ましくは、それぞれの車輪の車輪操舵角度に影響を与えるためのそれぞれ異なる車輪アクチュエータ又は個別車輪調節器が、操舵可能な車輪の各々に対応付けられている。その場合、装置は、好ましくは両方の車輪アクチュエータを駆動するように構成されている。設定された目的量は、自動車の所望の操舵を表している。この場合、目的量は、基本的に操舵システムの種々異なる要素に関連することができる。例えば、目的量は、目的角度、特に、操舵可能な車輪の目的車輪操舵角度、又は、ステアリングホイールとして構成された操舵ハンドルの目的ステアリングホイール角度である。しかしながら、目的量は、目的位置、例えば上述したラックの目的ラック位置であってもよい。ラック位置は、ある程度の簡略化によって仮想的な車輪操舵角度に換算可能である。運転支援システムは、例えば、車線誘導支援、回避支援、又は、これらに類するものである。好ましくは、運転支援システムは、外部の運転支援システムである。このことはつまり、運転支援システムの運転支援機能が、装置の計算装置によって計算されるのではなく、装置に対して外部のさらなる計算装置によって計算されるということを意味する。これに対して代替的に、運転支援システムは、好ましくは内部の運転支援システムである。このことはつまり、装置の計算装置が運転支援機能を計算するように、運転支援システムが装置の計算装置内に実装されているということを意味する。好ましくは、計算装置は、設定された目標手動トルクに依存して操舵ハンドルアクチュエータのための目標モータトルクを設定し、設定された目標モータトルクに依存して操舵ハンドルアクチュエータを駆動するように構成されている。即ち、モータトルクの制御は、目標手動トルクの設定の特に直近の下流に配置されている。
【0007】
好ましい実施形態によれば、計算装置は、目的量に依存して操舵ハンドルのための目標操作位置を設定し、操舵ハンドルの特定された実際操作位置と目標操作位置との偏差に依存して目標手動トルクを設定するように構成されている。操舵ハンドルが回転可能である場合には、目標操作位置は、目標角度であり、実際操作位置は、実際角度である。即ち、計算装置は、位置制御又は角度制御を実施するように構成されている。しかしながら、位置制御又は角度制御は、位置制御装置又は角度制御装置によって直接的に実現されるのではなく、手動トルク制御によって間接的に実現される。これにより、ハンズオン動作の際に、即ち、ユーザが操舵ハンドルを把持している際に、運転支援システムがアクティブである場合に、ユーザにとって特に直感的な操舵感を生成することができる。例えば、目標手動トルクは、偏差の増加に伴って増加させられ、及び/又は、偏差の減少に伴って減少させられる。
【0008】
好ましくは、計算装置は、目的量に依存して車輪のための目標車輪操舵角度を設定し、目標車輪操舵角度に依存して車輪アクチュエータを駆動するように構成されている。即ち、目的量は、車輪アクチュエータを駆動するための基礎として使用される。目標車輪操舵角度を設定する際に目的量を考慮することにより、運転支援システムの運転支援機能が現実に実現されることが達成される。本装置は、その多方面にわたる使用可能性において優れている。したがって、本装置によれば、種々異なるSAE自動化レベルの運転支援システムを、ハンズオン動作においてもハンズオフ動作においても、即ち、ユーザが操舵ハンドルを把持していない場合であっても、有利に実施することが可能となる。例えば、3以上のSAEレベルに準拠した運転支援システムである場合、操舵ハンドルが自動車の操舵のために適当に連行されることを達成することができる。この場合、操舵ハンドルの位置を、車輪から機械的に分離されていることに基づいて、例えば障害となる振動の分だけ補正することができる。操舵ハンドルが連行されることにより、自動車の横方向制御に対する責任の起こり得るテイクオーバが、ユーザにとって容易になる。3未満のSAEレベルに準拠した運転支援システムである場合には、例えば、ハンズオン動作におけるユーザが、運転支援システムの設定に伴って共に操縦を行うように動かされることを達成することができる。目標手動トルクの制御の動作点が変更されるだけであり、その基礎となる特性は変更されないので、この際にユーザは、特に心地よい操舵感を経験する。代替的な実施形態によれば、好ましくは、計算装置は、運転支援システムによって設定可能なさらなる目的量に依存して目標車輪操舵角度を設定するように構成されている。さらなる目的量は、目的量に関して上述したような目的角度又は目的位置であるものとしてよい。これによっても、その多方面にわたる使用可能性において優れている装置が得られる。特に、計算装置は、設定された目標車輪操舵角度に依存して車輪操舵アクチュエータのための目標モータトルクを設定し、設定された目標モータトルクに依存して車輪操舵アクチュエータを駆動するように構成されている。
【0009】
好ましくは、計算装置は、操舵ハンドルの実際操作位置に依存して目標車輪操舵角度を設定するように構成されている。このことから、自動車のユーザは、運転支援システムがアクティブであるにもかかわらず、操舵ハンドルの操作位置を変更することによって車輪の操舵をコントロールすることができるという利点が得られる。以下においては、このことを、運転支援システムが3未満のSAEレベル3に準拠した回避支援である具体的な例に基づいてより詳細に説明する。この具体的な例においては、回避支援は、自動車の軌道における障害物を検出する。回避支援は、その結果として自動車が障害物の左側を通行すべきであると判断し、計算装置に対して対応する目的量を設定する。しかしながら、自動車のユーザは、障害物の右側を通行することを希望し、そのために、本例においてはステアリングホイールとして構成されている操舵ハンドルを右方向に回転させる。計算装置は、操舵ハンドルの実際操作位置に依存して目標車輪操舵角度を設定するように構成されているので、自動車の回避のために左へ誘導しうる目標車輪操舵角度が設定されるのではなく、自動車の回避のために右へ誘導する目標車輪操舵角度が設定される。好ましくは、計算装置は、操舵ハンドルの実際操作位置と、設定された目的量又は設定されたさらなる目的量との両方に依存して、目標車輪操舵角度を設定するように構成されている。特に好ましくは、このために計算装置は、実際操作位置に依存して操舵変換に従って暫定的な目標車輪操舵角度を設定し、目的量又はさらなる目的量に依存して目標付加角度を特定し、暫定的な目標車輪操舵角度に目標付加角度を加えることによって目標車輪操舵角度を設定するように構成されている。特に、計算装置は、目標付加角度を制限するように構成された制限モジュールを有する。これにより、自動車の現実の操舵挙動と、操舵ハンドルの操作位置とが相互に大きく偏差し過ぎることがなくなる。目標付加角度を制限することは、特に3未満のSAEレベルに準拠した運転支援システムの場合には有利である。好ましくは、制限モジュールを非アクティブ化することが可能である。制限モジュールを非アクティブ化することは、3以上のSAEレベルに準拠した運転支援システムを実装するために有利である。そうでない場合には、アクティブな制限モジュールは、特に、ユーザが操舵ハンドルの操作位置の変化を阻止した場合に、運転支援システムの機能を制限することができる。
【0010】
好ましくは、計算装置は、目的量及び/又はさらなる目的量を、少なくとも1つの伝達関数によって修正するように構成されている。この場合、可能な伝達関数は、例えばオフセット値の適用、係数による乗算、時間的なフィルタリング、及び/又は、信号平滑化である。好ましくは、計算装置は、目的量を少なくとも1つの伝達関数によって修正することにより、目標操作位置を設定するように構成されている。目標操作位置及び目標車輪操舵角度の両方が目的量に依存して設定される場合には、このために目的量が、好ましくはそれぞれ異なる伝達関数によって修正される。目的量及び/又はさらなる目的量を修正することにより、例えば、運転支援システムによって実施される動的な操舵が、操舵ハンドルの同様に動的な運動をもたらすということを回避することができる。特に、目的量は、操舵ハンドルの運動が減衰されるように修正される。例えば、このために目的量に1未満の係数が乗算される。目的量に依存して目標操作位置が設定され、かつ、さらなる目的量に依存して目標車輪操舵角度が設定される場合には、特に、計算装置による目的量及びさらなる目的量の修正が省略される。好ましくは、その場合、目的量及びさらなる目的量は、既に運転支援システムによって修正され、したがって、目的量及びさらなる目的量は、計算装置に対して既に、修正された目的量及び修正されたさらなる目的量として設定される。特に、その場合、目的量が、そのまま目標操作位置に相当する。
【0011】
好ましい実施形態によれば、装置は、操舵感計算機能を有し、装置は、運転支援システムが非アクティブである場合にも運転支援システムがアクティブである場合にも、操舵感計算機能に従って目標手動トルクを設定するように構成されている。操舵感計算機能の利用は、従来技術から基本的に公知である。操舵感計算機能により、自動車のユーザが自動車に適した操舵感を経験することを達成することができる。典型的に、操舵感計算機能は、複数のサブ機能を有し、したがって、目標手動トルクを設定する際に種々異なる量を考慮することができる。運転支援システムがアクティブである場合にも目標手動トルクが操舵感計算機能に従って設定される場合には、運転支援システムがアクティブである場合にも自動車に適した操舵感を生成することができる。したがって、運転支援システムがアクティブである場合にユーザが不適当な総合的な操舵感を経験することが回避される。さらに、運転支援システムが非アクティブである場合にもアクティブである場合にも同一の操舵感計算機能が利用されることに伴って、アプリケーションコストが比較的少なくなる。このことは、アクティブな運転支援システムによる運転のために別個の操舵感計算機能を作成する必要がないことから得られる。運転支援システムが非アクティブである場合には、目標手動トルクは、典型的には操舵感計算機能に従って、操舵ハンドルが設定されたゼロ位置へと誘導されるように設定される。操舵ハンドルが、例えばステアリングホイールである場合には、ゼロ位置は、典型的には0°のステアリングホイール角度である。運転支援システムがアクティブである場合には、目標手動トルクは、設定された目的量に依存して設定される。好ましくは、このためにゼロ位置は、設定された目的量に依存して変更される。即ち、その場合、目標手動トルクは、操舵感計算機能に従って、操舵ハンドルが変更されたゼロ位置へと、例えば0°とは異なるステアリングホイール角度へと誘導されるように設定される。
【0012】
好ましい実施形態によれば、計算装置は、実際操作位置と目標操作位置との偏差に依存して第1の力を特定し、運転支援システムがアクティブである場合に、第1の力に依存して目標手動トルクを設定するように構成されている。偏差に依存して第1の力を特定又は計算するための具体的な好ましい例は、例えば独国特許出願公開第102013110848号明細書に記載されている。この場合、第1の力の特定又は計算に算入される操舵角度は、目標操作位置と実際操作位置との偏差である。
【0013】
好ましくは、計算装置は、車輪に作用する実際復元力に依存して第2の力を特定し、運転支援システムが非アクティブである場合に、第2の力に依存して目標手動トルクを設定するように構成されている。この場合、実際復元力は、例えば計算又は推定される。ラックを介して機械的に相互に結合された2つの操舵可能な車輪が設けられている場合には、実際復元力として、好ましくはラックに作用する実際ラック力が使用される。実際ラック力は、この場合、モデルに基づいて車両レベルで特定されたラック力(RFMC)であるものとしてもよく、又は、モデルに基づいたラック力推定値(RFMD)であるものとしてもよい。運転支援システムが非アクティブである場合には、実際復元力に依存して目標手動トルクを設定することにより、ユーザにとって直感的な操舵感を生成することができる。
【0014】
好ましい実施形態によれば、計算装置は、勾配制限モジュールを有し、勾配制限モジュールは、設定された目標手動トルクの変化率を制限するように構成されている。目標手動トルクの変化率を制限することにより、ユーザにとっての快適性をさらに高めることができる。特に、ユーザが突然の手動トルクピークを知覚することが回避される。このような手動トルクピークは、典型的には邪魔なものとして感じられる。好ましくは、勾配制限モジュールは、少なくとも一方の動作モードから他方の動作モードへの切り替え時における変化率を制限するように構成されている。そうしなければ、動作モード間の切り替え時に、ますます手動トルクピークを覚悟しなければならないであろう。好ましくは、計算装置は、運転支援システムのアクティブ化又は非アクティブ化を検出した場合に、一方の動作モードから他方の動作モードに切り替えるように構成されている。
【0015】
好ましくは、計算装置は、付加トルクモジュールを有し、付加トルクモジュールは、目標付加トルクを設定し、目標手動トルクに目標付加トルクを加えるように構成されている。即ち、まず始めに暫定的な目標手動トルクが設定される。目標手動トルクを設定するために、この暫定的な目標手動トルクに目標付加トルクが加えられる。付加トルクモジュールにより、操舵ハンドルにおける所望の挙動を強化することができる。好ましくは、目標付加トルクを制限する制限モジュールが設けられている。特に、制限モジュールは、付加トルクモジュールの一部である。これに対して代替的に、制限モジュールは、例えば付加トルクモジュールの下流に信号技術的に接続されている。例えば、制限モジュールは、目標付加トルクを±3Nmに制限するように構成されている。
【0016】
好ましい実施形態によれば、付加トルクモジュールは、実際操作位置と目標操作位置との偏差に依存して、及び/又は、自動車の実際軌道と自動車の設定された目標軌道との偏差に依存して、目標付加トルクを設定するように構成されている。好ましくは、実際操作位置と目標操作位置との偏差が設定された閾値を上回っている場合、及び/又は、偏差の増加が設定された閾値を上回っている場合に、目標付加トルクが設定される。その場合、付加トルクによって位置制御を支援することができ、この際、入力量として偏差が使用される。これにより、例えば、運転者が急激に目標操作位置から離れる方向に操舵することを阻止することができる。好ましくは、実際軌道と目標軌道との偏差が設定された閾値を上回っている場合に、目標付加トルクが設定される。即ち、制御量は、その場合、実際操作位置と目標操作位置との偏差とは無関係に検出される値である。例えば、実際軌道と目標軌道との偏差は、周囲センサのセンサ信号に依存して特定される。
【0017】
好ましい実施形態によれば、計算装置は、第1の計算ユニット及び第2の計算ユニットを有し、第1の計算ユニットは、目標手動トルクを設定するように構成されており、第2の計算ユニットは、目標車輪操舵角度を設定するように構成されている。特に、これらの計算ユニットは、装置又は自動車のそれぞれ異なる制御装置内に実装されている。代替的な実施形態によれば、好ましくは、計算装置は、目標手動トルク及び目標車輪操舵角度の両方を設定するように構成された1つの計算ユニットを有する。計算装置のこの構成は、例えば、必要な測定量を単一の計算ユニットに供給するだけでよいので、技術的に特に簡単に実現可能である。
【0018】
好ましくは、計算装置は、目的量を受信するための、又は、目的量とさらなる目的量とを受信するための通信装置を有する。運転支援システムによって目的量だけが設定される場合には、通信装置は、好ましくは目的量を受信するための単一の通信手段を有する。運転支援システムによって目的量及びさらなる目的量の両方が設定される場合には、通信装置は、両方の目的量を受信するための単一の通信手段を有し、又は、目的量を受信するための通信手段と、さらなる目的量を受信するためのさらなる通信手段とを有する。好ましくは、通信手段は、無線通信手段又は通信端子として構成されている。
【0019】
本発明に係る自動車は、請求項14の特徴によれば、本発明に係る装置が設けられていることにおいて優れている。この自動車からも、既に挙げた利点がもたらされる。さらなる好ましい特徴及び特徴の組合せは、上述した説明及び特許請求の範囲によって明らかとなる。好ましくは、自動車は、計算装置に対して目的量を設定するように、又は、目的量とさらなる目的量とを設定するように構成された運転支援システムを有する。特に、運転支援システムは、車線誘導支援又は回避支援である。
【0020】
本発明に係る方法は、請求項15の特徴によれば、運転支援システムによって設定可能な目的量に依存して操舵ハンドルのための目標手動トルクを設定し、設定された目標手動トルクに依存して操舵ハンドルアクチュエータを駆動することにおいて優れている。この方法からも、既に挙げた利点がもたらされる。さらなる好ましい特徴及び特徴の組合せは、上述した説明及び特許請求の範囲によって明らかとなる。
【0021】
以下においては、図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】自動車の概略図である。
図2】自動車の操舵システムを動作させるための装置を示す図である。
図3】自動車を動作させるための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、自動車1の概略図を示す。自動車1は、2つの車輪3,4を備えた前輪車軸2と、2つの車輪6,7を備えた後輪車軸5とを有する。
【0024】
自動車1は、操舵システム8を有する。本実施例においては、前輪車軸2の車輪3及び4は、操舵可能に構成されており、したがって、これらの車輪3及び4は、操舵システム8の一部である。車輪3及び4は、車輪3及び4のうちの一方の車輪の操舵が車輪3及び4のうちの他方の車輪の操舵に依存するように、操舵システム8のラック9を介して機械的に相互に結合されている。即ち、車輪3及び4のうちの一方の車輪の車輪操舵角度が変化すると、ラック8を介した機械的な結合に基づいて、車輪3及び4のうちの他方の車輪の車輪操舵角度も共に変化する。操舵システム8は、駆動可能な車輪アクチュエータ10を有する。車輪アクチュエータ10は、ラック9にトルクを印加し、これによって車輪3及び4の車輪操舵角度に影響を与えるように構成されている。さらなる実施例によれば、車輪3及び4は、車輪3及び4のうちの一方の車輪の操舵が他方の車輪3及び4の操舵に依存しないように、機械的に相互に分離されている。自動車1がこのように構成されている場合には、好ましくは、それぞれの車輪の車輪操舵角度に影響を与えるためのそれぞれ異なる車輪アクチュエータが、それぞれの車輪3及び4に対応付けられている。
【0025】
操舵システム8は、自動車1のユーザによって操作可能な操舵ハンドル11をさらに有する。本実施例においては、操舵ハンドル11は、ステアリングホイール11として構成されている。操舵ハンドル11は、操舵ハンドル11の操作が車輪3及び4の操舵に依存しないように、車輪3及び4から機械的に分離されている。即ち、操舵ハンドル11の操作位置の変化を必然的に車輪3及び4の操舵に変換する機械的な結合は、操舵ハンドル11と車輪3及び4との間には存在しない。したがって、操舵システム8は、ステアバイワイヤ式の操舵システム8として構成されている。操舵システム8は、操舵ハンドルアクチュエータ12をさらに有する。操舵ハンドルアクチュエータ12は、操舵ハンドル11に対応付けられており、操舵ハンドル11に作用するトルクを生成し、これによって操舵ハンドル11の操作位置に影響を与えるように構成されている。
【0026】
自動車1は、操舵システム11を動作させるための装置13をさらに有する。装置13は、図1においては見て取れない計算装置16を有する。計算装置16は、本実施例においては制御装置14に組み込まれている。計算装置16は、車輪アクチュエータ10及び操舵ハンドルアクチュエータ12を駆動するように構成されている。このために計算装置16は、車輪アクチュエータ10及び操舵ハンドルアクチュエータ12に通信技術的に接続されている。
【0027】
自動車1は、運転支援システム15をさらに有する。例えば、運転支援システム15は、車線誘導支援15として構成されている。本実施例においては、運転支援システム15は、装置13に対して外部の運転支援システム15として構成されている。このことはつまり、運転支援システム15の運転支援機能が、装置13の計算装置によって計算されるのではなく、さらなる計算装置によって計算されるということを意味する。さらなる実施例によれば、運転支援システム15は、内部の運転支援システム15として構成されている。このことはつまり、運転支援システム15の運転支援機能が、装置13の計算装置16によって計算されるということを意味する。
【0028】
運転支援システム15は、本実施例においては、装置13の通信端子17を介して計算装置16に通信技術的に接続されている。運転支援システム15は、現在の運転状況に依存して目的量Zを特定し、特定された目的量Zを通信端子17に供給するように構成されている。目的量Zは、自動車1の所望の操舵を表しており、操舵システム8の種々異なる要素に関連することができる。例えば、目的量Zは、ラック9の目的角度又は目的位置である。
【0029】
以下においては、図2を参照しながら計算装置16の実施形態をより詳細に説明する。図2は、このために計算装置16の機能構造を示す。
【0030】
通信端子17の下流には、計算装置16の第1の伝達モジュール18が接続されている。第1の伝達モジュール18は、設定された目的量Zを、少なくとも1つの伝達関数によって修正するように構成されている。例えば、伝達モジュールは、目的量Zの時間的なフィルタリングを実施する。代替的に又は付加的に、第1の伝達モジュール18によって目的量Zに、例えばオフセット値が加えられる。目的量Zの修正により、第1の伝達モジュール18は、操舵ハンドル11のための目標操作位置BSSollを設定する。
【0031】
第1の伝達モジュール18の下流には、計算装置16の第1の差分モジュール19が接続されている。第1の差分モジュール19は、操舵ハンドル11の特定又は検出された実際操作位置BSIstと設定された目標操作位置BSSollとの偏差ΔBSを特定するように構成されている。
【0032】
第1の差分モジュール19の下流には、計算装置16の手動トルク設定モジュール20が接続されている。手動トルク設定モジュール20は、暫定的な目標手動トルクpreHMSollを設定するように構成されている。計算装置16は、第1の動作モード及び第2の動作モードを有し、2つの動作モードの間の切り替えについては後でさらに説明する。手動トルク設定モジュール20は、第1の力及び第2の力を特定するように構成されている。手動トルク設定モジュール20は、目標操作位置BSSollと実際操作位置BSIstとの偏差ΔBSに依存して第1の力を特定する。手動トルク設定モジュール20は、ラック9に作用する特定又は検出された実際ラック力に依存して第2の力を特定する。計算装置16の第1の動作モードがセットされている場合には、手動トルク設定モジュール20は、第1の力に依存して暫定的な目標手動トルクpreHMSollを設定する。計算装置16の第2の動作モードがセットされている場合には、手動トルク設定モジュール20は、第2の力に依存して暫定的な目標手動トルクpreHMSollを設定する。第1の動作モードにおいても第2の動作モードにおいても、手動トルク設定モジュール20は、同一の操舵感計算機能に従って暫定的な目標手動トルクpreHMSollを設定する。この際、第1の動作モードにおいては、入力量として第1の力が操舵感計算機能に算入され、第2の動作モードにおいては、第2の力が算入される。さらに、手動トルク設定モジュール20の、入力量として操舵角度を使用するサブモジュールによって、第1の動作モードにおいては、入力量として偏差ΔBSが使用され、第2の動作モードにおいては、実際操作位置BSIstが使用される。
【0033】
第1の差分モジュール19の下流には、付加トルクモジュール21がさらに接続されており、なお、付加トルクモジュール21を設けることは、任意選択肢である。付加トルクモジュール21は、目標付加トルクZMSollを設定するように構成されている。例えば、付加トルクモジュール21は、偏差ΔBSに依存して目標付加トルクZMSollを設定する。代替的又は付加的に、付加トルクモジュール21は、偏差ΔBSとは無関係に検出することができる目的量に依存して目標付加トルクZMSollを設定する。例えば、付加トルクモジュール21は、自動車1の実際軌道と設定された目標軌道との偏差に依存して目標付加トルクZMSollを設定する。
【0034】
付加トルクモジュール21の下流には、第1の制限モジュール22が接続されている。第1の制限モジュール22は、設定された目標付加トルクZMSollを、例えば±3Nmの値に制限するように構成されている。さらなる実施例によれば、第1の制限モジュール22の機能が、付加トルクモジュール21に組み込まれており、したがって、付加トルクモジュール21は、目標付加トルクZMSollを特定する際に既に目標付加トルクZMSollを制限する。
【0035】
計算装置16は、第1の合計モジュール23をさらに有する。第1の合計モジュール23は、暫定的な目標手動トルクpreHMSollに目標付加トルクZMSollを加えるように構成されている。これにより、目標手動トルクHMSollが設定又は取得される。即ち、少なくとも第1の動作モードにおいては、目的量Zが、目標手動トルクHMSollを設定する際に入力量として考慮され、即ち、上流に配置されたステップにおいて考慮される。例えば、付加トルクモジュール21が非アクティブであるという理由で、目標付加トルクZMSollがゼロである場合には、暫定的な目標手動トルクpreHMSollが、そのまま目標手動トルクHMSollに相当する。付加トルクモジュール21が完全に省略される場合には、好ましくは第1の合計モジュール23も省略され、その場合、手動トルク設定モジュール20は、好ましくは直接的に目標手動トルクHMSollを設定する。
【0036】
好ましくは、計算装置16は、図示されていない勾配制限モジュールを有し、勾配制限モジュールは、目標手動トルクHMSollの変化率を制限するように構成されている。特に、勾配制限モジュールは、一方の動作モードから他方の動作モードへの切り替え時にのみ、目標手動トルクHMSollの変化率を制限するように構成されている。特に、勾配制限モジュールは、暫定的な目標手動トルクpreHMSollの変化率を制限することによって、目標手動トルクHMSollの変化率を制限するように構成されている。
【0037】
第1の合計モジュール23の下流には、計算装置16の第1のモータトルク設定モジュール24が接続されている。モータトルク設定モジュール24は、目標手動トルクHMSollに依存して第1の目標モータトルクを設定し、目標手動トルクHMSollに相当するトルクが操舵ハンドル11に加えられるように、第1の目標モータトルクに依存して操舵ハンドルアクチュエータ12を駆動するように構成されている。
【0038】
計算装置16は、操舵変換モジュール25をさらに有する。操舵変換モジュール25は、操舵ハンドル11の実際操作位置BSIstに依存して車輪3及び4のための暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollを、例えば特性曲線を用いて設定するように構成されており、この特性曲線は、実際操作位置BSIstに依存して暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollを記述する。特に、操舵変換モジュール25を非アクティブ化することが可能である。操舵トルク変換モジュール25を非アクティブ化することは、例えば、運転支援システム15が3以上のSAEレベルに準拠した運転支援システムである場合に有利である。
【0039】
通信端子17の下流には、計算装置16の第2の伝達モジュール26がさらに接続されている。第2の伝達モジュール26は、設定された目的量Zを、少なくとも1つの伝達関数によって修正するように構成されている。この場合、第2の伝達モジュール26によって使用される伝達関数は、第1の伝達モジュール18によって使用される伝達関数とは異なっている。例えば、目的量Zは、第1の伝達モジュール18によって、第2の伝達モジュール26によるよりも強力に平滑化される。目的量Zの修正により、第2の伝達モジュール26は、角度値の形態の修正された目的量ZModを設定する。
【0040】
第2の伝達モジュール26の下流には、計算装置16の第2の差分モジュール27が接続されている。第2の差分モジュール27は、車輪3及び4の特定又は検出された実際車輪操舵角度RLWIstと修正された目的量ZModとの偏差ΔRLWを特定するように構成されている。実際車輪操舵角度RLWIstとして、好ましくは、車輪3の車輪操舵角度と車輪4の車輪操舵角度との平均値が使用される。
【0041】
第2の差分モジュール27の下流には、計算装置16の付加角度設定モジュール28が接続されている。付加角度設定モジュール28は、偏差ΔRLWに依存して目標付加角度ZWSollを設定するように構成されている。好ましくは、目標付加角度ZWSollは、偏差ΔRLWの増加に伴って増加させられる。
【0042】
付加角度設定モジュール28の下流には、第2の制限モジュール29が接続されている。第2の制限モジュール29は、設定された目標付加角度ZWSollを、例えば±5°の値に制限するように構成されている。さらなる実施例によれば、第2の制限モジュール29の機能が、付加角度設定モジュール28に組み込まれており、したがって、付加角度設定モジュール28は、目標付加角度ZWSollを特定する際に既に目標付加角度ZWSollを制限する。特に、第2の制限モジュール29を非アクティブ化することが可能である。第2の制限モジュール29を非アクティブ化することは、例えば、運転支援システム15が3以上のSAEレベルに準拠した運転支援システムである場合に有利である。
【0043】
計算装置16は、第2の合計モジュール31をさらに有する。第2の合計モジュール31は、暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollに目標付加角度ZWSollを加えるように構成されている。これにより、目標車輪操舵角度RLWSollが設定又は取得される。目標付加角度ZWSollがゼロである場合には、暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollが、そのまま目標車輪操舵角度RLWSollに相当する。即ち、目的量Z及び実際操作位置BSIstの両方が、目標車輪操舵角度RLWSollを設定する際に入力量として考慮され、即ち、それぞれ上流に配置されたステップにおいて考慮される。
【0044】
第2の合計モジュール31の下流には、計算装置16の第2のモータトルク設定モジュール30が接続されている。第2のモータトルク設定モジュール30は、目標車輪操舵角度RLWSollに依存して第2の目標モータトルクを設定し、目標車輪操舵角度RLWSollが車輪操舵角度としてセットされるように、第2の目標モータトルクに依存して車輪アクチュエータ10を駆動するように構成されている。
【0045】
装置13は、アクティブ化モジュール32をさらに有する。アクティブ化モジュール32は、手動トルク設定モジュール20と、付加トルクモジュール21と、付加角度設定モジュール28とにアクティブ化信号を供給するように構成されている。例えば、アクティブ化モジュール32は、運転支援システム15のアクティブ化に依存してアクティブ化信号を供給するように構成されている。運転支援システム15がアクティブである場合には、アクティブ化モジュール32は、アクティブ化信号を供給する。しかしながら、運転支援システム15が非アクティブである場合には、アクティブ化信号は供給されない。
【0046】
図2に示されている実施例によれば、計算装置16は、目標手動トルクHMSoll及び目標車輪操舵角度RLWSollの両方を設定するように構成された単一の計算ユニット33を有する。さらなる実施例によれば、これらの機能は、計算装置16の複数の異なる計算ユニットに分割されている。この場合、これら複数の異なる計算ユニットは、同一の制御装置に組み込まれており、又は、それぞれ異なる制御装置に組み込まれている。
【0047】
以下においては、図3を参照しながら操舵システム8を動作させるための有利な方法についてより詳細に説明する。図3は、本方法をフローチャートに基づいて示す。
【0048】
第1のステップS1においては、アクティブ化信号が存在するかどうかがチェックされる。
【0049】
アクティブ化信号が存在しない場合には、第2のステップS2が参照される。次いで、第2のステップS2において、第2の動作モードがセットされる。さらに、付加トルクモジュール21及び付加角度設定モジュール28は、非アクティブ化され又は非アクティブのままである。
【0050】
第3のステップS3においては、目標手動トルクHMSollが設定される。このために手動トルク設定モジュール20は、まず始めに上述したように、第2の力に依存して暫定的な目標手動トルクpreHMSollを設定する。付加トルクモジュール21が非アクティブであるので、目標付加トルクZMSollが設定されず、したがって、暫定的な目標手動トルクpreHMSollが、そのまま目標手動トルクHMSollに相当する。
【0051】
次いで、第4のステップS4においては、ステップS3で設定された目標手動トルクHMSollに依存して操舵ハンドルアクチュエータ12が駆動される。
【0052】
第5のステップS5においては、目標車輪操舵角度RLWSollが特定される。このために、まず始めに操舵変換モジュール25が、暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollを設定する。付加角度設定モジュール28が非アクティブであるので、目標付加角度ZWSollが設定されず、したがって、暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollが、そのまま目標車輪操舵角度RLWSollに相当する。
【0053】
第6のステップS6においては、設定された目標車輪操舵角度RLWSollに依存して車輪アクチュエータ10が駆動される。
【0054】
即ち、要約すると、アクティブ化信号が存在しない場合には、第2の力に依存して目標手動トルクHMSollが設定される。第2の力自体は、上述したようにラック力に依存して設定され、したがって、目標手動トルクHMSollは、ラック力に依存することとなる。手動トルク設定モジュール20の上述したサブモジュールは、入力量として実際操作位置BSIstを使用する。目標車輪操舵角度RLWSollは、実際操作位置BSIstに依存して設定され、したがって、実際車輪操舵角度RLWIstは、最終的に実際操作位置BSIstに追従することとなる。この場合、目的値Zは、目標手動トルクHMSollを設定する際にも、目標車輪操舵角度RLWSollを設定する際にも考慮されないままである。
【0055】
しかしながら、ステップS1においてアクティブ化信号が存在することが確認されると、第7のステップS7が参照される。次いで、第7のステップS7において、第1の動作モードがセットされる。さらに、付加トルクモジュール21及び付加角度設定モジュール28は、アクティブ化され又はアクティブのままである。
【0056】
第8のステップS8においては、目標手動トルクHMSollが設定される。このために手動トルク設定モジュール20は、まず始めに上述したように、第1の力に依存して暫定的な目標手動トルクpreHMSollを設定する。手動トルク設定モジュール20の上述したサブモジュールは、入力量として偏差ΔBSを使用する。即ち、その場合、暫定的な目標手動トルクpreHMSollは、目的量Zに依存して設定される。付加トルクモジュール21がアクティブであるので、付加トルクモジュール21は、目標付加トルクZMSollを設定し、この際、目標付加トルクZMSollは、正であっても、負であっても、又は、ゼロであってもよい。最終的に、目標手動トルクHMSollは、暫定的な目標手動トルクpreHMSollに目標付加トルクZMSollを加えることによって設定される。
【0057】
次いで、第9のステップS9においては、ステップS8で設定された目標手動トルクHMSollに依存して操舵ハンドルアクチュエータ12が駆動される。
【0058】
第10のステップS10においては、目標車輪操舵角度RLWSollが特定される。このために、まず始めに操舵変換モジュール25が、暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollを特定する。付加角度設定モジュール28がアクティブであるので、付加角度設定モジュール28は、目標付加角度ZWSollを設定し、この際、目標付加角度ZWSollは、負であっても、正であっても、又は、ゼロであってもよい。最終的に、目標車輪操舵角度RLWSollは、暫定的な目標車輪操舵角度preRLWSollに目標付加角度ZWSollを加えることによって取得される。即ち、目標車輪操舵角度RLWSollは、実際操作位置BSIstと目的量Zとに依存して設定される。
【0059】
第11のステップS11においては、設定された目標車輪操舵角度RLWSollに依存して車輪アクチュエータ10が駆動される。
【0060】
即ち、要約すると、アクティブ化信号が存在する場合には、目標手動トルクHMSollが目的量Zに依存して設定される。これにより、操舵ハンドル11の操作位置が運転支援システム15の設定に追従することが達成される。この際、手動トルク設定モジュール20の設定と、付加トルクモジュール21の設定との両方が考慮される。この場合、目標車輪操舵角度RLWSollの設定に関する本方法の具体的な実施形態は、運転支援システム15の自動化レベルにも関連している。運転支援システム15が3未満のSAEレベルに準拠した運転支援システムである場合には、目標車輪操舵角度RLWSollは、アクティブ化信号が存在する場合、操舵ハンドル12の実際操作位置BSIstと目的量Zとに依存して特定される。目的量Zを考慮することにより、運転支援システム15の設定が現実に操舵に変換されることが達成される。実際操作位置BSIstを考慮すること、及び目標付加角度ZWSollを制限することにより、ユーザが操舵を容易にコントロールすることができることが達成される。特に、ユーザは、操舵ハンドル11の対応する実際操作位置BSIstを手動でセットすることにより、運転支援システム15の設定を拒否することができる。しかしながら、運転支援システム15が3以上のSAEレベルに準拠した運転支援システムである場合には、第2の制限モジュール29は、アクティブ化信号が存在する場合、好ましくは非アクティブ化され又は非アクティブのままである。その場合には、任意の大きさの目標付加角度ZWSollが可能となる。これにより、ユーザが拒否され、その限りにおいてもはや介入を有さないことを達成することができる。
【0061】
図面を参照しながら説明した実施例においては、運転支援システム15は、目標手動トルクHMSollを設定するためと、目標車輪操舵角度RLWSollを設定するためとの両方の基礎として使用される単一の目的量Zを設定する。さらなる実施例によれば、運転支援システム15は、目的量Zと、さらなる目的量とを設定する。その場合、目的量Zに依存して目標手動トルクHMSollが設定され、さらなる目的量に依存して目標車輪操舵角度RLWSollが設定される。運転支援システム15がこのように構成されている場合には、伝達モジュール18及び26を省略することができる。特に、その場合、運転支援システム15は、伝達関数を実施し、目的量Zとして直接的に目標操作位置BSSollを設定し、さらなる目的量として直接的に角度値を設定し、この角度値が第2の差分モジュール27に供給される。
図1
図2
図3
【外国語明細書】