(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015321
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 1/28 20060101AFI20230124BHJP
E03D 5/01 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E03D1/28
E03D5/01
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183943
(22)【出願日】2022-11-17
(62)【分割の表示】P 2019009265の分割
【原出願日】2019-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
(72)【発明者】
【氏名】原 貴寛
(57)【要約】
【課題】クリティカルラインの高さを下げることができ、水洗大便器の貯水タンクに給水する給水バルブユニットの高さを下げることができ、水洗大便器をローシルエット化することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器は、便器本体2と、洗浄水を貯水する貯水タンク16と、給水源から洗浄水を供給する流路を開閉する給水バルブユニット30と、貯水タンクから便器本体まで延びる洗浄水供給経路22と、貯水タンクの上部から排水トラップ管路内の封水が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びるオーバーフローバイパス流路40と、オーバーフローバイパス流路に設けられると共に臭気の逆流を抑制する臭気逆流抑制部42とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によって洗浄され汚物を排出する水洗大便器であって、
便器本体であって、上記便器本体は、ボウル部と、洗浄水を吐出する吐水口部と、排水トラップ管路とを備え、上記排水トラップ管路は、入口部と、入口部から上昇する上昇部と、封水を形成する頂部と、上記頂部から下降すると共に下流側で排水流路と接続される下降部とを備えた、上記便器本体と、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
給水源から洗浄水を供給する流路を開閉する給水バルブユニットと、
上記貯水タンクから上記便器本体まで延びる洗浄水供給経路と、
上記貯水タンクの上部から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びるオーバーフローバイパス流路と、
上記オーバーフローバイパス流路に設けられると共に臭気の逆流を抑制する臭気逆流抑制部とを備えることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記オーバーフローバイパス流路及び上記臭気逆流抑制部は、上記便器本体の外装部材内に収納される、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記臭気逆流抑制部は、水封トラップである、請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記排水トラップ管路の上記下降部に接続される上記排水流路は排水ソケットにより形成され、
上記オーバーフローバイパス流路は、上記排水ソケットに接続される、請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記排水ソケットは、下流側の排水配管に接続される下流側部材と、
上記下流側部材と上記排水トラップ管路の上記下降部との間に配置される上流側部材とを備え、
上記オーバーフローバイパス流路は、上記排水ソケットの上記上流側部材に接続される、請求項4に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水によって洗浄され汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、局部洗浄装置、貯水タンク及び機能部等をカバー内に一体的に収納した一体型の水洗大便器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すような水洗大便器において、便器本体の排水トラップ管路の上昇部(又は入口部)が詰まった状態且つ給水バルブが開状態のままとなる故障時に、洗浄水が便器本体から貯水タンクに逆流しても、上水(例えば給水バルブユニット側の洗浄水)と下水(例えばボウル部以後の洗浄水)とが混ざらないために構造上要求されるクリティカルラインが設定される。このような水洗大便器をローシルエット化しようとする場合には、給水バルブユニットの高さを下げるため、このクリティカルラインの高さを下げることが必要となるという課題がある。しかしながら、特許文献1に示すような水洗大便器の構成を採用したまま、クリティカルラインを下げることは容易ではないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点と課題を解決するためになされたものであり、クリティカルラインの高さを下げることができ、水洗大便器の貯水タンクに給水する給水バルブユニットの高さを下げることができ、水洗大便器をローシルエット化することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、洗浄水によって洗浄され汚物を排出する水洗大便器であって、便器本体であって、上記便器本体は、ボウル部と、洗浄水を吐出する吐水口部と、排水トラップ管路とを備え、上記排水トラップ管路は、入口部と、入口部から上昇する上昇部と、封水を形成する頂部と、上記頂部から下降すると共に下流側で排水流路と接続される下降部とを備えた、上記便器本体と、洗浄水を貯水する貯水タンクと、給水源から洗浄水を供給する流路を開閉する給水バルブユニットと、上記貯水タンクから上記便器本体まで延びる洗浄水供給経路と、上記貯水タンクの上部から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びるオーバーフローバイパス流路と、上記オーバーフローバイパス流路に設けられると共に臭気の逆流を抑制する臭気逆流抑制部とを備えることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、オーバーフローバイパス流路が上記貯水タンクの上部から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びている。これにより、便器本体の排水トラップ管路の上昇部(又は入口部)が詰まった状態且つ給水バルブが開状態のままとなる故障時に、洗浄水が便器本体から洗浄水供給経路を介して貯水タンクまで逆流する場合においても、洗浄水がオーバーフローバイパス流路から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分に流れることができる。これにより、上述のような故障時に、洗浄水が貯水タンクから給水バルブユニットに上昇することを防ぐことができる。よって、上水(例えば給水バルブユニット側の洗浄水)と下水(例えばボウル部以後の洗浄水)が混ざらないために構造上要求されるクリティカルラインの高さに対し、上記故障時に、洗浄水が貯水タンクから上昇する水位の高さを、オーバーフローバイパス流路の入口までに抑えることができる。よって、故障時に給水バルブユニットに向けて上昇する上記水位の高さを抑えられるため、クリティカルラインに対して猶予が高められ、クリティカルラインの高さを下げることができ、クリティカルラインを決定する構造上の要素のうち給水バルブユニットの高さを下げることができる。したがって、水洗大便器の貯水タンクに給水する給水バルブユニットの高さを下げることができ、水洗大便器をローシルエット化することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記オーバーフローバイパス流路及び上記臭気逆流抑制部は、上記便器本体の外装部材内に収納される。
このように構成された本発明によれば、上記オーバーフローバイパス流路及び上記臭気逆流抑制部が、上記便器本体の外装部材内に収納されるので、仮に臭気が漏出したとしても、臭気の漏出をさらに抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記臭気逆流抑制部は、水封トラップである。
このように構成された本発明によれば、水封トラップによって臭気の逆流を抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記排水トラップ管路の上記下降部に接続される上記排水流路は排水ソケットにより形成され、上記オーバーフローバイパス流路は、上記排水ソケットに接続される。
このように構成された本発明によれば、上記オーバーフローバイパス流路は、上記排水ソケットに接続される。これにより、便器本体の排水トラップ管路への接続や建物側に延びる排水配管への接続等に比べて、比較的容易に排水ソケットにオーバーフローバイパス流路を接続する構造が実現でき、オーバーフローバイパス流路を形成する施工性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記排水ソケットは、下流側の排水配管に接続される下流側部材と、上記下流側部材と上記排水トラップ管路の上記下降部との間に配置される上流側部材とを備え、上記オーバーフローバイパス流路は、上記排水ソケットの上記上流側部材に接続される。
このように構成された本発明によれば、オーバーフローバイパス流路が接続された上流側部材を、排水配管に接続された下流側部材に取付けることで、比較的簡単に且つ確実に排水ソケットを排水配管に接続された状態で完成させることができる。これにより、排水ソケット及びオーバーフローバイパス流路の施工性(例えば施工のしやすさ及び施工効率)を向上させることができる。よって、水洗大便器の施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、クリティカルラインの高さを下げることができ、水洗大便器の貯水タンクに給水する給水バルブユニットの高さを下げることができ、水洗大便器をローシルエット化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器を示す中央断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器の構成を説明する全体構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態による水洗大便器の構成を説明するブロック図である。
【
図4】
図1の水洗大便器の排水ソケットの正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による水洗大便器において、クリティカルラインCLの高さを下げることができ、水洗大便器の高さを抑制してローシルエット化することができる知見について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器を説明する。
先ず、
図1乃至
図3により、本発明の一実施形態による水洗大便器の構造を説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器を示す中央断面図であり、
図2は本発明の一実施形態による水洗大便器の構成を説明する全体構成図であり、
図3は本発明の一実施形態による水洗大便器の構成を説明するブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、洗浄水により洗浄され汚物を排出する水洗大便器である。水洗大便器1は、便器本体2と、便器本体2の上部の外装部材を形成するケーシングカバー4と、便器本体2の下部の外装部材を形成するスカート部6と、を備えている。
ケーシングカバー4は後述する貯水タンク及び給水バルブの上方側を覆うようなカバーを形成している。スカート部6は、貯水タンク及び給水バルブの側方側を覆うようなカバーを形成している。よって、ケーシングカバー4及びスカート部6の内側に、貯水タンク及び給水バルブがともに給水装置として一体的に収納される。
【0015】
便器本体2は陶器製である。便器本体2は床面F上に配置されている。便器本体2は、汚物を受けるボウル部8と、ボウル部8の底部から延びる排水トラップ管路10と、リム吐水を行うように洗浄水を吐出するリム吐水口部12と、ジェット吐水を行うように洗浄水を吐出するジェット吐水口部14と、を備えている。
【0016】
排水トラップ管路10は、入口部10aと、この入口部10aから上昇する上昇部であるトラップ上昇管10bと、このトラップ上昇管10bから下降する下降部であるトラップ下降管10cとからなり、トラップ上昇管10bとトラップ下降管10cとの間が頂部10dとなっている。頂部10dは、待機状態における溜水の封水水位WL0を規定する。洗浄前の待機状態においては、頂部10dまで洗浄水の溜水部9が形成される。
【0017】
リム吐水口部12は、便器本体2の正面から見てボウル部8の左側上部後方に形成されており、ボウル部8の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。また、ジェット吐水口部14は、ボウル部8の底部に形成されており、排水トラップ管路10の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路10に向けて吐出するようになっている。本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する給水源(水道)に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口部12から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、貯水タンク16に貯水された洗浄水をポンプ装置24によって送出して、大流量でジェット吐水口部14から吐出させるようになっている。
【0018】
次に、本実施形態による水洗大便器1のリム吐水口部12及びジェット吐水口部14への給水システムを説明する。
水洗大便器は、さらに、洗浄水を貯水する貯水タンク16と、洗浄水を給水する給水装置18と、給水装置18の給水バルブユニット30から便器本体2のリム吐水口部12まで延びる洗浄水供給経路である第1供給経路20と、貯水タンク16から便器本体2のジェット吐水口部14まで延びる洗浄水供給経路である第2供給経路22と、貯水タンク16から第2供給経路22まで延びるオーバーフロー流路23と、洗浄水供給経路である第2供給経路22上に設けられて貯水タンク16の洗浄水を便器本体2に供給するポンプ装置24とを備えている。
【0019】
貯水タンク16は、便器本体2の後方に配置され、ケーシングカバー4及びスカート部6内に配置されている。貯水タンク16は、便器本体2と一体的にケーシングカバー4及びスカート部6内に収納されるタンクである。
【0020】
給水装置18は、便器本体2の後方に配置され、ケーシングカバー4及びスカート部6内に配置されている。給水装置18は、洗浄水を給水する機能を有する。給水装置18は、止水栓26と、給水源(例えば水道)から洗浄水が供給される給水路28と、給水バルブユニット30とを備えている。給水路28は、止水栓26と給水バルブユニット30との間において給水ホースにより形成されている。
【0021】
給水バルブユニット30は、給水源から洗浄水を供給する流路を開閉する。給水バルブユニット30は、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36等を備えている。
【0022】
給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口部12に洗浄水を供給するための第1供給経路20、及び、貯水タンク16に洗浄水を供給するためのタンク側給水路38が接続されている。
【0023】
電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、リム側の第1供給経路20からリム吐水口部12へ、及び/又は、タンク側のタンク側給水路38から貯水タンク16に供給される。このように、水洗大便器1は、リム吐水に関しては水道の水圧(直圧)を利用して給水して便器を洗浄し、さらに、ジェット吐水に関しては、貯水タンク16に貯水された洗浄水をポンプ装置24によって加圧してジェット吐水口部14から吐出させるようになっているハイブリッド式(水道直圧式+タンク給水式)の給水装置を有するハイブリッド式水洗大便器である。
【0024】
オーバーフロー流路23は、貯水タンク16内の洗浄水がオーバーフロー流路23の入口まで上昇した場合に、洗浄水を第2供給経路22を介してジェット吐水口部14に流すようになっている。
【0025】
ポンプ装置24は、洗浄水を送出するポンプである。ポンプ装置24は、第2供給経路22中に設けられる。ポンプ装置24が、貯水タンク16に貯水された洗浄水を吸引すると共に加圧してジェット吐水口部14まで供給するようになっている。
【0026】
次に、
図1乃至
図5を参照して、オーバーフローバイパス流路、臭気逆流抑制部及び排水ソケットを詳細に説明する。
図4は
図1の水洗大便器の排水ソケットの正面図であり、
図5は
図4のV-V線に沿って見た断面図である。
【0027】
水洗大便器1は、貯水タンク16の上部から排水トラップ管路10内の封水(封水水位WL0)が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びるオーバーフローバイパス流路40と、オーバーフローバイパス流路40に設けられると共に臭気の逆流を抑制する臭気逆流抑制部42とを備えている。オーバーフローバイパス流路40及び臭気逆流抑制部42は、便器本体2のケーシングカバー4及びスカート部6内に収納される。
【0028】
オーバーフローバイパス流路40は、貯水タンク16からのオーバーフローバイパス流路40を溜水部9を迂回させるようにして溜水部9よりも下流側にバイパスさせる。オーバーフローバイパス流路40は、排水トラップ管路の上昇部(又は入口部)が詰まった状態且つ給水バルブが開状態のままとなる故障時に、貯水タンク16内の洗浄水の水位上昇を、オーバーフローバイパス流路40の入口40aより上昇しないように抑制する水位上昇抑制機能を有すると共に、水位の上昇が抑制できることによるクリティカルラインへの安全猶予の増加に伴ってクリティカルラインを低下させるクリティカルライン低下機能を有する。
【0029】
臭気逆流抑制部42は、洗浄水で封水WL1を形成する水封トラップである。臭気逆流抑制部42は、流路が折り返すトラップ構造を形成している。臭気逆流抑制部42は、臭気の逆流や、害虫の侵入を抑制する機能を有する。
【0030】
図1に示すように、水洗大便器1は、さらに、排水トラップ管路10のトラップ下降管10cに接続されると共にトラップ下降管10cの下流側の排水流路を形成する排水ソケット44を備えている。排水ソケット44の下端には床面F以下で建物躯体側に延びる排水配管46が接続されている。排水配管46は、排水ソケット44のさらに下流側に延びる排水流路を形成している。オーバーフローバイパス流路40は、排水ソケット44に接続される。
【0031】
排水ソケット44は、排水配管46に接続される下流側部材48と、下流側部材48と排水トラップ管路10のトラップ下降管10cとの間に配置される上流側部材50とを備えている。オーバーフローバイパス流路40は、排水ソケット44の上流側部材50に接続される。排水ソケット44は、下流側部材48と、上流側部材50とを組み合わせることにより比較的簡単に形成することができる。オーバーフローバイパス流路40が接続された上流側部材50を、排水配管46に接続された下流側部材48に取付けることで、比較的簡単に且つ確実に排水ソケット44が排水配管46に接続された状態で完成させることができ、排水ソケット44及びオーバーフローバイパス流路40の施工性(例えば施工のしやすさ及び施工効率)を向上させることができる。
【0032】
本発明の発明者は、従来技術の課題に対し、鋭意研究を続けた結果、クリティカルラインCL(
図6参照)の高さを下げることができ、水洗大便器1の高さを抑制してローシルエット化することができる知見を見出した。
図6を参照して、この原理について説明する。
図6は本発明の一実施形態による水洗大便器において、クリティカルラインCLの高さを下げることができ、水洗大便器の高さを抑制してローシルエット化することができる知見について説明する図である。
【0033】
クリティカルラインCLは、水洗大便器1においては、上水(例えば給水バルブユニット側の洗浄水)と下水(例えばボウル部以後の洗浄水)が混ざらないために構造上要求される。よって、故障時においても水位がクリティカルラインCLまで上昇しないことが要求される。
図6においてクリティカルラインCLを例示している。当業者はクリティカルラインCLを上水と下水とのクロスコネクションを防ぐための技術用語として理解可能である。クリティカルラインCLは、給水バルブユニット30及び貯水タンク16の構造上の位置関係の影響を受ける。よって、クリティカルラインCLが比較的高い位置に設定される場合、給水バルブユニット30が比較的高い位置に設定されなければならなくなる。
【0034】
本発明の発明者は、便器本体2の排水トラップ管路の上昇部(又は入口部)が詰まった状態且つ給水バルブユニット30が開状態のままとなる故障時に、洗浄水が便器本体2から第2供給経路22を介して貯水タンク16まで逆流する場合に、貯水タンク16側の水位の上昇を抑制することができることを見出した。上記故障時には、貯水タンク16側の水位が下水(汚水)により上昇する課題があったため、クリティカルラインCLの高さを下げるためには、貯水タンク16側の水位の上昇を抑制することが有効であることを見出した。さらに、発明者はこのような効果を実現するために有効な構造についても新たな知見を得た。例えば、発明者は、貯水タンク16側の水位の上昇を便器外漏水させずに排水配管への流出により押さえることができることを見出した。
【0035】
図6を参照して、便器本体2の排水トラップ管路10のトラップ上昇管10b(又は入口部)が詰まった状態且つ給水バルブユニット30が開状態のままとなる故障時の状態を説明する。先ず、給水バルブユニット30が洗浄水をリム吐水口部12及びジェット吐水口部14に供給し、ボウル部8が洗浄される。仮に排水トラップ管路10のトラップ上昇管10b(又は入口部10a)が詰まった状態となるとき、供給される洗浄水が排出されないので、洗浄水がボウル部8に溜まり、矢印F0に示すように、ボウル部8のリム部8aの頂部から溢れるように便器外漏水する。さらに、ボウル部8に洗浄水が供給されるので、矢印F1及びF2に示すように、洗浄水はジェット吐水口部14から第2供給経路22を逆流して貯水タンク16側に逆流する。
【0036】
このとき、貯水タンク16内に逆流した洗浄水により、貯水タンク16内の洗浄水の水位が上昇する。矢印F3に示すように、洗浄水がオーバーフロー流路23の入口まで到達した場合に、洗浄水はオーバーフロー流路23を介して流出するが、第2供給経路22には、ジェット吐水口部14から逆流してきている洗浄水の流れが存在している。よって、貯水タンク16内の洗浄水の水位はさらに、上昇する。矢印F4に示すように、貯水タンク16内の洗浄水の水位が、オーバーフローバイパス流路40の入口40aの水位WL2に到達するとき、洗浄水がオーバーフローバイパス流路40に流入する。よって、矢印F5に示すように、洗浄水がオーバーフローバイパス流路40から封水WL0が形成される部分よりも下流側の流路部分、例えば排水ソケット44に流れることができる。
【0037】
洗浄水がオーバーフローバイパス流路40から排水ソケット44に流れるので、洗浄水が貯水タンク16内で上昇する水位の高さを、オーバーフローバイパス流路40の入口40aまでに抑えることができる。よって、上記故障時に洗浄水の水位の上昇高さを抑えられるため、クリティカルラインCLまで水位が上昇しない構造を形成でき、クリティカルラインCLの高さを下げることができ、クリティカルラインCLを決定する構造上の要素のうち給水バルブ30の高さを下げることができる。したがって、水洗大便器1の給水バルブ30の高さを下げることができ、水洗大便器1の全体の高さをより低くでき、水洗大便器1をローシルエット化することができる。
【0038】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、このように構成された本発明によれば、オーバーフローバイパス流路40が貯水タンク16の上部から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びている。これにより、便器本体2の排水トラップ管路10のトラップ上昇管10b(又は入口部10a)が詰まった状態且つ給水バルブユニット30が開状態のままとなる故障時に、洗浄水が便器本体2から第2供給経路22を介して貯水タンク16まで逆流する場合においても、洗浄水がオーバーフローバイパス流路40から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分に流れることができる。これにより、上述のような故障時に、洗浄水が貯水タンク16から給水バルブユニット30に上昇することを防ぐことができる。よって、上水(例えば給水バルブユニット30側の洗浄水)と下水(例えばボウル部以後の洗浄水)が混ざらないために構造上要求されるクリティカルラインCLの高さに対し、上記故障時に、洗浄水が貯水タンク16から上昇する水位の高さを、オーバーフローバイパス流路40の入口までに抑えることができる。よって、故障時に給水バルブユニット30に向けて上昇する上記水位の高さを抑えられるため、クリティカルラインCLに対して猶予が高められ、クリティカルラインCLの高さを下げることができ、クリティカルラインCLを決定する構造上の要素のうち給水バルブユニット30の高さを下げることができる。したがって、水洗大便器1の貯水タンク16に給水する給水バルブユニット30の高さを下げることができ、水洗大便器1をローシルエット化することができる。
また、オーバーフローバイパス流路40が貯水タンク16の上部から封水が形成される部分よりも下流側の流路部分まで延びている。これにより、例えば排水トラップ管路10のトラップ上昇管10bが詰まった状態となり、洗浄水が貯水タンク16から洗浄水供給経路を介して流れなくなった場合であっても、洗浄水が貯水タンク16からオーバーフローバイパス流路40を介して流れることができる。よって、排水トラップ管路10のトラップ上昇管10bが詰まった故障において、洗浄水が貯水タンク16から排水できなくなる状況が生じることを抑制することができる。
また、オーバーフローバイパス流路40は、封水が形成される部分よりも下流側の流路部分に接続されるので、この接続部分が封水中に位置しないようにできる。よって、この接続部分に詰まりが生じることが抑制される。
また、オーバーフローバイパス流路40は、封水が形成される部分よりも下流側の流路部分に接続されるので、洗浄水がオーバーフローバイパス流路40を介して流れる様子を使用者に視認されにくくすることができ、使用者に不安感を与えることを抑制することができる。
さらに、オーバーフローバイパス流路40は臭気逆流抑制部42を備えているので、封水よりも下流側の流路の臭気がオーバーフローバイパス流路40を介して貯水タンク16側に流れることを抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、オーバーフローバイパス流路40及び臭気逆流抑制部42が、上記便器本体2のケーシングカバー4及び/又はスカート部6内に収納されるので、仮に臭気が漏出したとしても、臭気の漏出をさらに抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、水封トラップによって臭気の逆流を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、オーバーフローバイパス流路40は、排水ソケット44に接続される。これにより、便器本体2の排水トラップ管路10への接続や建物側に延びる排水配管46への接続等に比べて、比較的容易に排水ソケット44にオーバーフローバイパス流路40を接続する構造が実現でき、オーバーフローバイパス流路40を形成する施工性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、オーバーフローバイパス流路40が接続された上流側部材50を、排水配管46に接続された下流側部材48に取付けることで、比較的簡単に且つ確実に排水ソケット44を排水配管46に接続された状態で完成させることができる。これにより、排水ソケット44及びオーバーフローバイパス流路40の施工性(例えば施工のしやすさ及び施工効率)を向上させることができる。よって、水洗大便器1の施工性を向上させることができる。
【0043】
以上に説明した一実施形態において、オーバーフローバイパス流路40の接続先は、封水WL0が形成される部分よりも下流側の流路部分の任意の部分に変更可能である。例えば、オーバーフローバイパス流路40は、排水ソケット44以外に、封水WL0よりも下流側のトラップ上昇管10b、トラップ下降管10c、排水配管46に接続されてもよい。
【0044】
また、上述の一実施形態において、水洗大便器1は、ハイブリッド式(水道直圧式+タンク給水式)の給水システムを有する。例えば、水洗大便器1は、リム吐水及びジェット吐水の両方に関して、貯水タンクに貯水された洗浄水をポンプ装置によって加圧してリム吐水口部12及びジェット吐水口部14から吐出させるようになっているフルポンプ式(タンク給水式)の給水システムを有していてもよい。また、例えば、水洗大便器1は、リム吐水口部12のみを備え、リム吐水に関して、貯水タンクに貯水された洗浄水をポンプ装置によって加圧してリム吐水口部12から吐出させるようになっているポンプ式(タンク給水式)の給水システムを有していてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ケーシングカバー
6 スカート部
8 ボウル部
9 溜水部
10 排水トラップ管路
10a 入口部
10d 頂部
16 貯水タンク
20 第1供給経路
22 第2供給経路
23 オーバーフロー流路
24 ポンプ装置
30 給水バルブユニット
30 給水バルブ
40 オーバーフローバイパス流路
40a 入口
42 臭気逆流抑制部
44 排水ソケット
46 排水配管
48 下流側部材
50 上流側部材
CL クリティカルライン