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特開2023-153352媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153352
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20231005BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20231005BHJP
   B65H 11/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H3/06 350C
B65H3/52 330B
B65H11/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136117
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2020169397の分割
【原出願日】2019-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】安川 亮一
(72)【発明者】
【氏名】熊橋 智史
(57)【要約】
【課題】分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、複数のローラの回転を一つのモータで適切に制御できる媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】媒体搬送装置100は、ブレーキローラ113と、ブレーキローラに対して媒体搬送方向の下流側に配置された搬送ローラ対115、116と、第1モータ151と、分離モードにおいて、第1モータを正回転させて、ブレーキローラにより分離された媒体を搬送ローラ対により搬送させるように制御する制御部171と、を有し、制御部は、非分離モードにおいて、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過するまで、第1モータを逆回転させて、ブレーキローラに給送動作を行わせるとともに搬送ローラ対を逆回転させ、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過した後に、第1モータを正回転させて、搬送ローラ対により媒体を搬送させるように制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送ローラと、
前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと、
媒体搬送方向において前記分離ローラより下流側に配置された搬送ローラと、
第1の方向に回転することにより第1駆動力を発生し、前記第1の方向と反対の第2の方向に回転することにより第2駆動力を発生する第1モータと、
前記第1モータから前記分離ローラ及び前記搬送ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、
分離モードにおいて、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記分離ローラに分離動作を行わせるとともに前記搬送ローラに媒体を搬送させる制御部と、を有し、
前記制御部は、非分離モードにおいて、媒体の給送を開始してから所定時間が経過するまで、前記第1モータに前記第2駆動力を発生させて、前記分離ローラに給送動作を行わせるとともに前記搬送ローラを逆回転させ、媒体の給送を開始してから前記所定時間が経過した後に、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記搬送ローラにより媒体を搬送させる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記給送ローラを回転させる第3駆動力を発生させる第2モータをさらに有する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記駆動力伝達部は、前記非分離モードにおいて、媒体の給送を開始してから前記所定時間が経過した後に、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記搬送ローラにより媒体を搬送させる場合に、前記第1モータから前記分離ローラへの前記第1駆動力の伝達を遮断する駆動力遮断部材をさらに有する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記分離モードと前記非分離モードとで前記分離ローラの回転速度を変更する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、媒体の搬送状態に応じて、前記分離ローラの回転速度を変更する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
給送ローラと、前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと、媒体搬送方向において前記分離ローラより下流側に配置された搬送ローラと、第1の方向に回転することにより第1駆動力を発生し、前記第1の方向と反対の第2の方向に回転することにより第2駆動力を発生する第1モータと、前記第1モータから前記分離ローラ及び前記搬送ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
分離モードにおいて、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記分離ローラに分離動作を行わせるとともに前記搬送ローラに媒体を搬送させ、
非分離モードにおいて、媒体の給送を開始してから所定時間が経過するまで、前記第1モータに前記第2駆動力を発生させて、前記分離ローラに給送動作を行わせるとともに前記搬送ローラを逆回転させ、媒体の給送を開始してから前記所定時間が経過した後に、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記搬送ローラにより媒体を搬送させる、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
給送ローラと、前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと、媒体搬送方向において前記分離ローラより下流側に配置された搬送ローラと、第1の方向に回転することにより第1駆動力を発生し、前記第1の方向と反対の第2の方向に回転することにより第2駆動力を発生する第1モータと、前記第1モータから前記分離ローラ及び前記搬送ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
分離モードにおいて、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記分離ローラに分離動作を行わせるとともに前記搬送ローラに媒体を搬送させ、
非分離モードにおいて、媒体の給送を開始してから所定時間が経過するまで、前記第1モータに前記第2駆動力を発生させて、前記分離ローラに給送動作を行わせるとともに前記搬送ローラを逆回転させ、媒体の給送を開始してから前記所定時間が経過した後に、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記搬送ローラにより媒体を搬送させる、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関し、特に、媒体を分離して搬送する媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナ等の媒体搬送装置では、媒体として用紙だけでなく、プラスチック製のカード、パスポート等も搬送させることが要求されている。様々な種類の媒体の搬送をサポートする媒体搬送装置では、媒体を分離して搬送する分離モードと、媒体を分離させずに搬送する非分離モードとが設けられている。また、このような媒体搬送装置は、媒体を搬送させるために複数のローラを有しており、消費電力の増大を抑制するために、複数のローラを一つのモータで回転させている。しかしながら、一つのモータで複数のローラを回転させる場合、特定のローラを回転させたときに他のローラも同時に回転させてしまうため、用途の異なる複数のローラの回転を一つのモータで適切に制御することは容易でない。
【0003】
シートが積載されるシート積載部と、シート積載部からシートを1枚ずつ分離して給送する分離モードと分離せずにシートを給送する非分離モードとが切り替え可能な給送部とを有するシート給送装置が開示されている(特許文献1を参照)。このシート給送装置は、シート積載部上のシートの移動の検知結果に基づいて給送部によるシートの給送モードの切り替えを行う。
【0004】
複数枚の用紙の先端がずれて捌かれた状態となるように、給送ローラによる給送開始後、分離モードの実行前に、分離ローラを第1回転方向に所定の回転量だけ回転駆動させる媒体給送装置が開示されている(特許文献2を参照)。この媒体給送装置は、この状態から給送ローラの給送方向への回転を維持して、分離ローラを第2回転方向に回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-188279号公報
【特許文献2】特開2019-116383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体搬送装置では、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、複数のローラの回転を一つのモータで適切に制御することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、複数のローラの回転を一つのモータで適切に制御することが可能な媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、ブレーキローラと、ブレーキローラに対して媒体搬送方向の下流側に配置された搬送ローラ対と、第1モータと、第1モータからブレーキローラ及び搬送ローラ対に駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、分離モードにおいて、第1モータを正回転させて、ブレーキローラにより分離された媒体を搬送ローラ対により搬送させるように制御する制御部と、を有し、制御部は、非分離モードにおいて、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過するまで、第1モータを逆回転させて、ブレーキローラに給送動作を行わせるとともに搬送ローラ対を逆回転させ、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過した後に、第1モータを正回転させて、搬送ローラ対により媒体を搬送させるように制御する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御方法は、ブレーキローラと、ブレーキローラに対して媒体搬送方向の下流側に配置された搬送ローラ対と、第1モータと、第1モータからブレーキローラ及び搬送ローラ対に駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、分離モードにおいて、第1モータを正回転させて、ブレーキローラにより分離された媒体を搬送ローラ対により搬送させるように制御し、非分離モードにおいて、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過するまで、第1モータを逆回転させて、ブレーキローラに給送動作を行わせるとともに搬送ローラ対を逆回転させ、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過した後に、第1モータを正回転させて、搬送ローラ対により媒体を搬送させるように制御する。
【0010】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、ブレーキローラと、ブレーキローラに対して媒体搬送方向の下流側に配置された搬送ローラ対と、第1モータと、第1モータからブレーキローラ及び搬送ローラ対に駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、分離モードにおいて、第1モータを正回転させて、ブレーキローラにより分離された媒体を搬送ローラ対により搬送させるように制御し、非分離モードにおいて、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過するまで、第1モータを逆回転させて、ブレーキローラに給送動作を行わせるとともに搬送ローラ対を逆回転させ、媒体の先端がブレーキローラの位置を通過した後に、第1モータを正回転させて、搬送ローラ対により媒体を搬送させるように制御することを媒体搬送装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、複数のローラの回転を一つのモータで適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3】各ローラの駆動機構について説明するための模式図である。
図4】各ローラの駆動機構について説明するための模式図である。
図5】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
図6】記憶装置160及び処理回路170の概略構成を示す図である。
図7】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図8A】各ローラの動作を説明するための模式図である。
図8B】各ローラの動作を説明するための模式図である。
図9A】各ローラの動作を説明するための模式図である。
図9B】各ローラの動作を説明するための模式図である。
図10】他の各ローラの駆動機構について説明するための模式図である。
図11】駆動力遮断時の各ローラの動作を説明するための模式図である。
図12】他の処理回路270の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、又は、厚紙、カード、冊子もしくはパスポート等の厚みのある媒体(例えば2mmを超える厚さを有する媒体)である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0015】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0016】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
【0017】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0018】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0019】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0020】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1センサ111、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第2センサ114、第1搬送ローラ115、第2搬送ローラ116、第1撮像装置117a、第2撮像装置117b、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119等を有している。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。
【0021】
下側筐体101の上面は、媒体の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は、媒体の搬送路の上側ガイド107bを形成する。図2において矢印A1は媒体搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A1の下流のことをいう。
【0022】
第1センサ111は、給送ローラ112及びブレーキローラ113の上流側に配置される。第1センサ111は、接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第1センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。
【0023】
給送ローラ112は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。ブレーキローラ113は、上側筐体102に設けられ、給送ローラ112と対向して配置される。
【0024】
第2センサ114は、媒体搬送方向A1において給送ローラ112及びブレーキローラ113より下流側且つ第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116より上流側に配置される。第2センサ114は、媒体センサの一例であり、その位置に媒体が存在するか否かを検出し、給送ローラ112及びブレーキローラ113と第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116との間を通過する媒体を検知する。第2センサ114は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。第2センサ114の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、第2センサ114の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0025】
第1搬送ローラ115は、下側筐体101に設けられる。第2搬送ローラ116は、上側筐体102に設けられ、第1搬送ローラ115と対向して配置される。第1、第2搬送ローラ115、116は、搬送ローラ対の一例であり、給送ローラ112及びブレーキローラ113に対して媒体搬送方向A1の下流側に配置され、給送ローラ112及びブレーキローラ113により給送された媒体を下流側に搬送する。
【0026】
第1撮像装置117aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置117aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置117aは、後述する処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の表面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0027】
同様に、第2撮像装置117bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置117bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置117bは、後述する処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の裏面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0028】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置117a及び第2撮像装置117bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。以下では、第1撮像装置117a及び第2撮像装置117bを総じて撮像装置117と称する場合がある。
【0029】
第3搬送ローラ118は、下側筐体101に設けられる。第4搬送ローラ119は、上側筐体102に設けられ、第3搬送ローラ118と対向して配置される。第3、第4搬送ローラ118、119は、搬送ローラ対の一例であり、第1、第2搬送ローラ115、116に対して媒体搬送方向A1の下流側に配置され、第1、第2搬送ローラ115、116により搬送された媒体を下流側に搬送する。
【0030】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ112が図2の矢印A2の方向、即ち媒体給送方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体搬送方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ113は、媒体搬送時、矢印A3の方向、即ち媒体給送方向の反対方向に回転する。給送ローラ112及びブレーキローラ113の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ112と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。
【0031】
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ115と第2搬送ローラ116の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116がそれぞれ矢印A4及び矢印A5の方向に回転することによって、第1撮像装置117aと第2撮像装置117bの間に送り込まれる。撮像装置117により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119がそれぞれ矢印A6及び矢印A7の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0032】
図3及び図4は、給送ローラ112、ブレーキローラ113及び第1~第4搬送ローラ115、116、118、119の駆動機構について説明するための模式図である。図3は、搬送路の上方側から各ローラの駆動機構を見た斜視図であり、図4は、搬送路の上流側から各ローラの駆動機構を見た斜視図である。
【0033】
図3及び図4に示すように、ブレーキローラ113及び第1~第4搬送ローラ115、116、118、119の駆動機構は、第1モータ151、第1~第4プーリ121a~d、第1~第2ベルト122a~b、第1~第10ギア123a~j、電磁クラッチ124、第1~第7シャフト125a~g及びトルクリミッタ126等を有する。一方、給送ローラ112の駆動機構は、第2モータ152、第5~第6プーリ121e~f、第3ベルト122c、第11~第14ギア123k~n及び第8~第9シャフト125h~i等を有する。
【0034】
第1モータ151は、後述する処理回路からの制御信号によって、ブレーキローラ113及び第1~第4搬送ローラ115、116、118、119を回転させる駆動力を発生する。第1~第4プーリ121a~d、第1~第2ベルト122a~b、第1~第10ギア123a~j、電磁クラッチ124、第1~第7シャフト125a~g及びトルクリミッタ126は、第1モータ151からブレーキローラ113及び第1~第4搬送ローラ115、116、118、119に駆動力を伝達するための駆動力伝達部の一例である。
【0035】
第1モータ151の回転軸には第1プーリ121aが取り付けられ、第1プーリ121aと第2プーリ121bの外径の大きい方のプーリ部分との間には第1ベルト122aが張架されている。第2プーリ121bの外径の小さい方のプーリ部分と、第3プーリ121cのプーリ部分と、第4プーリ121dのプーリ部分との間には第2ベルト122bが張架されている。
【0036】
第3プーリ121cのギア部分は第1ギア123aと係合される。第1ギア123aは第2ギア123bと係合され、第2ギア123bは第3ギア123cと係合され、第3ギア123cは電磁クラッチ124と係合される。電磁クラッチ124は第1シャフト125aに取り付けられ、第1シャフト125aにはさらに第4ギア123dが取り付けられている。第4ギア123dは第5ギア123eと係合され、第5ギア123eは第6ギア123fと係合される。第6ギア123fは第2シャフト125bに取り付けられ、第2シャフト125bにはさらに第7ギア123gが取り付けられている。第7ギア123gは第8ギア123hと係合され、第8ギア123hは第9ギア123iと係合される。第9ギア123iは第3シャフト125cに取り付けられ、第3シャフト125cにはさらにトルクリミッタ126を介してブレーキローラ113が取り付けられている。
【0037】
また、第3プーリ121cは第4シャフト125dに取り付けられ、第4シャフト125dにはさらに第1搬送ローラ115が取り付けられている。第1ギア123aは第5シャフト125eに取り付けられ、第5シャフト125eにはさらに第2搬送ローラ116が取り付けられている。第4プーリ121dは第6シャフト125fに取り付けられ、第6シャフト125fにはさらに第3搬送ローラ118が取り付けられている。第4プーリ121dのギア部分は第10ギア123jと係合される。第10ギア123jは第7シャフト125gに取り付けられ、第7シャフト125gにはさらに第4搬送ローラ119が取り付けられている。
【0038】
第2モータ152は、後述する処理回路からの制御信号によって、給送ローラ112を回転させる駆動力を発生する。第5~第6プーリ121e~f、第3ベルト122c、第11~第14ギア123k~n及び第8~第9シャフト125h~iは、第2モータ152から給送ローラ112に駆動力を伝達するための第2駆動力伝達部の一例である。
【0039】
第2モータ152の回転軸には第5プーリ121eが取り付けられ、第5プーリ121eと第6プーリ121fのプーリ部分との間には第3ベルト122cが張架されている。第6プーリ121fのギア部分は第11ギア123kと係合され、第11ギア123kは第12ギア123lと係合される。第12ギア123lは第8シャフト125hに取り付けられ、第8シャフト125hにはさらに第13ギア123mが取り付けられている。第13ギア123mは第14ギア123nと係合される。第14ギア123nは第9シャフト125iに取り付けられ、第9シャフト125iにはさらに給送ローラ112が取り付けられている。
【0040】
以下、各ローラ及び各ローラの駆動機構の動作について説明する。
【0041】
第1モータ151は、駆動力として、正回転(第1の方向の回転)によって第1駆動力を発生し、且つ、逆回転(第1の方向とは反対の第2の方向の回転)によって第2駆動力を発生する。正回転は、第1プーリ121aを矢印B1の方向に回転させる回転であり、逆回転は、第1プーリ121aを矢印B1の反対方向に回転させる回転である。
【0042】
第1モータ151が第1駆動力を発生させた場合、第1プーリ121aが矢印B1の方向に回転し、それに伴い第2~第4プーリ121b~dがそれぞれ矢印B1の方向に回転する。また、第1~第3ギア123a~c及び電磁クラッチ124がそれぞれ矢印B2~B5の方向に回転し、第4~第6ギア123d~fがそれぞれ矢印B5~B7の方向に回転し、第7~第9ギア123g~iがそれぞれ矢印B7~B9の方向に回転する。これにより、ブレーキローラ113は、第1モータ151からの第1駆動力によって、媒体給送方向の反対方向A3に回転する。
【0043】
なお、トルクリミッタ126のリミット値は、媒体が1枚の場合はトルクリミッタを介した回転力が絶たれ、媒体が複数枚の場合はトルクリミッタ126を介した回転力が伝達されるように設定される。したがって、媒体が1枚の場合は、ブレーキローラ113は給送ローラ112に従って媒体給送方向に回転する。一方、媒体が複数枚の場合、ブレーキローラ113は媒体給送方向の反対方向A3に回転し、給送ローラ112と接触している用紙とそれ以外の用紙を分離する。
【0044】
また、第3プーリ121cが矢印B1の方向に回転することにより、第1搬送ローラ115は、媒体搬送方向A4に回転する。第1ギア123aが矢印B2の方向に回転することにより、第2搬送ローラ116は、媒体搬送方向A5に回転する。第4プーリ121dが矢印B1の方向に回転することにより、第3搬送ローラ118は、媒体搬送方向A6に回転する。第4プーリ121dが矢印B1の方向に回転することにより、第10ギア123jが矢印B10の方向に回転し、第4搬送ローラ119は、媒体搬送方向A7に回転する。
【0045】
逆に、第1モータ151が第2駆動力を発生させた場合、第1プーリ121aが矢印B1の反対方向に回転し、それに伴い第2~第4プーリ121b~dがそれぞれ矢印B1の反対方向に回転する。また、第1~第3ギア123a~c及び電磁クラッチ124がそれぞれ矢印B2~B5の反対方向に回転し、第4~第6ギア123d~fがそれぞれ矢印B5~B7の反対方向に回転し、第7~第9ギア123g~iがそれぞれ矢印B7~B9の反対方向に回転する。これにより、ブレーキローラ113は、媒体給送方向(矢印A3の反対方向)に回転する。
【0046】
なお、電磁クラッチ124は、駆動力遮断部材の一例であり、後述する処理回路からの制御信号によって、ON又はOFFの何れかに設定される。電磁クラッチ124は、ONに設定された場合、第1モータ151からブレーキローラ113へ駆動力を伝達する。一方、電磁クラッチ124は、OFFに設定された場合、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達を遮断する。電磁クラッチ124により、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達が遮断された場合、第4~第9ギア123d~i及びブレーキローラ113は、第1モータ151からの駆動力によっては回転しない。
【0047】
また、第3プーリ121cが矢印B1の反対方向に回転することにより、第1搬送ローラ115は、媒体搬送方向の反対方向(矢印A4の反対方向)に回転する。第1ギア123aが矢印B2の反対方向に回転することにより、第2搬送ローラ116は、媒体搬送方向の反対方向(矢印A5の反対方向)に回転する。第4プーリ121dが矢印B1の反対方向に回転することにより、第3搬送ローラ118は、媒体搬送方向の反対方向(矢印A6の反対方向)に回転する。第4プーリ121dが矢印B1の反対方向に回転することにより、第10ギア123jが矢印B10の反対方向に回転し、第4搬送ローラ119は、媒体搬送方向の反対方向(矢印A7の反対方向)に回転する。
【0048】
一方、第2モータ152は、駆動力として、正回転によって第3駆動力を発生する。正回転は、第5プーリ121eを矢印B11の方向に回転させる回転である。
【0049】
第2モータ152が第3駆動力を発生させた場合、第5プーリ121eが矢印B11の方向に回転し、それに伴い第6プーリ121f、第11ギア123kがそれぞれ矢印B11、B12の方向に回転する。また、第12~第13ギア123l~mがそれぞれ矢印B13の方向に回転し、第14ギア123nが矢印B14の方向に回転する。これにより、給送ローラ112は、媒体給送方向A2に回転する。
【0050】
図5は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0051】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、インタフェース装置153、記憶装置160及び処理回路170等をさらに有する。
【0052】
インタフェース装置153は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置153の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0053】
記憶装置160は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置160には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置160にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0054】
処理回路170は、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路170として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0055】
処理回路170は、操作装置105、表示装置106、第1センサ111、第2センサ114、撮像装置117、第1モータ151、第2モータ152、インタフェース装置153及び記憶装置160等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路170は、第1モータ151及び第2モータ152の駆動制御、撮像装置117の撮像制御等を行い、媒体の搬送を制御して、入力画像を生成し、インタフェース装置153を介して情報処理装置に送信する。
【0056】
図6は、記憶装置160及び処理回路170の概略構成を示す図である。
【0057】
図6に示すように、記憶装置160には、制御プログラム161及び画像取得プログラム162等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路170は、記憶装置160に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路170は、制御部171及び画像取得部172として機能する。
【0058】
図7は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0059】
以下、図7に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路170により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図7に示す動作のフローは、定期的に実行される。
【0060】
また、媒体搬送装置100は、載置台103に複数の媒体が載置された場合に媒体を分離して給送する分離モードと、媒体を分離せずに給送する非分離モードの二つの動作モードを有している。図7に示す動作のフローが実行される前に、利用者により操作装置105又は不図示の情報処理装置を用いて何れかの動作モードが選択されて設定される。
【0061】
最初に、制御部171は、利用者により操作装置105を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0062】
次に、制御部171は、第1センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。
【0063】
載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部171は、ステップS101へ処理を戻し、操作装置105から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0064】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部171は、媒体搬送装置100に設定されている現在の動作モードが分離モードであるか非分離モードであるかを判定する(ステップS103)。
【0065】
動作モードが分離モードである場合、制御部171は、第1モータ151からの駆動力をブレーキローラ113へ伝達するように、電磁クラッチ124をONに設定する(ステップS104)。
【0066】
次に、制御部171は、第1モータ151及び第2モータ152を駆動し(ステップS105)、処理をステップS111へ移行する。制御部171は、第1モータ151を正回転させて、第1モータ151に第1駆動力を発生させる。これにより、制御部171は、ブレーキローラ113を媒体給送方向の反対方向A3に回転させ、第1~第4搬送ローラ115、116、119を媒体搬送方向A5~A7に回転させる。また、制御部171は、第2モータ152を正回転させて、第2モータ152に第3駆動力を発生させる。これにより、制御部171は、給送ローラ112を媒体給送方向A2に回転させる。このように、制御部171は、分離モードにおいて、第1モータ151を正回転させて、ブレーキローラ113により分離された媒体を第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119により搬送させるように制御する。
【0067】
一方、動作モードが非分離モードである場合、制御部171は、第1モータ151からの駆動力をブレーキローラ113へ伝達するように、電磁クラッチ124をONに設定する(ステップS106)。
【0068】
次に、制御部171は、第1モータ151及び第2モータ152を駆動する(ステップS107)。制御部171は、第1モータ151を逆回転させて、第1モータ151に第2駆動力を発生させる。これにより、制御部171は、ブレーキローラ113を媒体給送方向に回転させ、第1~第4搬送ローラ115、116、119を媒体搬送方向の反対方向に回転させる。また、制御部171は、第2モータ152を正回転させて、第2モータ152に第3駆動力を発生させ、給送ローラ112を媒体給送方向A2に回転させる。
【0069】
次に、制御部171は、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したか否かを判定する(ステップS108)。制御部171は、第2センサ114の検知結果に基づいて、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したか否かを判定する。制御部171は、第2センサ114から定期的に第2媒体信号を取得し、取得した第2媒体信号に基づいて、第2センサ114の位置に媒体が存在するか否かを判定する。制御部171は、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2センサ114の位置を通過し、給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したと判定する。制御部171は、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したと判定するまで待機する。
【0070】
なお、制御部171は、第2センサ114を用いずに、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したか否かを判定してもよい。例えば、制御部171は、媒体の給送(第1モータ151及び第2モータ152の駆動)を開始してから所定時間経過した時に、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したと判定してもよい。所定時間は、事前の実験により、媒体の給送を開始してから媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過するまでに要する時間に設定される。また、制御部171は、第1モータ151及び第2モータ152を所定量回転させた時に、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したと判定してもよい。所定量は、事前の実験により、媒体の給送を開始してから媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過するまでに要する回転量に設定される。
【0071】
一方、制御部171は、媒体の先端が給送ローラ112及びブレーキローラ113の位置を通過したと判定した場合、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達を遮断するように、電磁クラッチ124をOFFに設定する(ステップS109)。
【0072】
次に、制御部171は、第1モータ151を正回転させて、第1モータ151に発生させる駆動力を第2駆動力から第1駆動力に切り替える(ステップS110)。これにより、制御部171は、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達を遮断するとともに、第1~第4搬送ローラ115、116、119を媒体搬送方向に回転させる。また、制御部171は、第2モータ152を正回転させて、第2モータ152に第3駆動力を発生させ、給送ローラ112を媒体給送方向A2に回転させる。
【0073】
このように、制御部171は、非分離モードにおいて、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過するまで、第1モータ151を逆回転させてブレーキローラ113に給送動作を行わせるとともに第1~第4搬送ローラ115、116、119を逆回転させる。また、制御部171は、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後に、第1モータ151を正回転させて第1~第4搬送ローラ115、116、119により媒体を搬送させるように制御する。
【0074】
また、電磁クラッチ124は、非分離モードにおいて、第1モータ151を正回転させて、第1~第4搬送ローラ115、116、119により媒体を搬送させる場合に、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達を遮断する。
【0075】
次に、画像取得部172は、撮像装置117に媒体の撮像を開始させ、撮像装置117から入力画像を取得する(ステップS111)。
【0076】
次に、画像取得部172は、入力画像を、インタフェース装置153を介して情報処理装置へ送信する(ステップS112)。なお、情報処理装置と接続されていない場合、画像取得部172は、入力画像を記憶装置160に記憶しておく。
【0077】
次に、制御部171は、第1センサ111から取得する媒体検出信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS113)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部171は、ステップS111へ処理を戻し、ステップS111~S113の処理を繰り返す。
【0078】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部171は、第1モータ151及び第2モータ152を停止させて(ステップS114)、一連のステップを終了する。
【0079】
図8A図8B図9A及び図9Bは、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116の動作を説明するための模式図である。
【0080】
図8A及び図8Bは、分離モードにおける各ローラの動作を説明するための模式図である。図8Aは、媒体の給送を開始した時の各ローラの動作を説明するための模式図であり、図8Bは、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後の各ローラの動作を説明するための模式図である。通常、分離モードは、載置台103に複数の用紙がまとめて載置されて、搬送される場合に設定される。図8A及び図8Bに示す例では、載置台103に複数の用紙P1~P4がまとめて載置されている。
【0081】
図8A及び図8Bに示すように、分離モードでは、常時、給送ローラ112は媒体給送方向A2に回転し、ブレーキローラ113は媒体給送方向の反対方向A3に回転する。これにより、載置台103に載置された複数の媒体P1~P4のうち給送ローラ112と接触している媒体P1のみが分離されて給送される。また、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116は、それぞれ媒体搬送方向A4及びA5に回転する。これにより、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116は、給送ローラ112及びブレーキローラ113により分離されて給送された媒体P1を下流側に搬送させる。
【0082】
このように、ブレーキローラ113は、分離モードにおいて、媒体の給送を開始した時だけでなく、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後も、媒体給送方向の反対方向A3に回転する。これにより、ブレーキローラ113は、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後に、次の媒体を誤って給送してしまうことを抑制することができる。
【0083】
図9A及び図9Bは、非分離モードにおける各ローラの動作を説明するための模式図である。図9Aは、媒体の給送を開始した時の各ローラの動作を説明するための模式図であり、図9Bは、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後の各ローラの動作を説明するための模式図である。通常、非分離モードは、載置台103にプラスチック製のカード又はパスポート等の厚みのある単数の媒体が載置されて、搬送される場合に設定される。図9A及び図9Bに示す例では、載置台103にパスポートMが載置されている。
【0084】
図9Aに示すように、非分離モードでは、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過するまで、給送ローラ112は媒体給送方向A2に回転し、ブレーキローラ113は媒体給送方向に回転する。給送ローラ112及びブレーキローラ113は、媒体を挟み込みながら給送するため、十分な給送力を発生して、パスポートMのような厚みのある媒体を良好に給送することができる。この時、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116は、それぞれ媒体搬送方向A4及びA5の反対方向に回転しているが、パスポートMは、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116の位置に到達していないため、問題なく給送される。
【0085】
一方、図9Bに示すように、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後は、給送ローラ112は媒体給送方向A2に回転し、第1モータ151からの駆動力はブレーキローラ113に伝達されず遮断される。これにより、パスポートMは、給送ローラ112によって給送され、ブレーキローラ113は、給送されるパスポートMによって連れ回る(従動する)。また、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116は、それぞれ媒体搬送方向A4及びA5に回転する。これにより、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116は、給送ローラ112により給送されたパスポートMを下流側に搬送させる。
【0086】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、ブレーキローラ113と第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119とを1つの第1モータ151で駆動する。媒体搬送装置100は、複数の媒体を分離しながら搬送する分離モードでは、ブレーキローラ113に媒体を分離させつつ第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119に媒体を搬送させる。一方、媒体搬送装置100は、パスポートのような媒体を搬送させる非分離モードでは、媒体が分離部を通過するまではブレーキローラ113に給送させ且つ第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119を逆回転させる。そして、媒体搬送装置100は、媒体が分離部を通過した後はモータを逆回転させて第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119に媒体を搬送させる。これにより、媒体搬送装置100は、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、ブレーキローラ113と第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119の回転を一つの第1モータ151で適切に制御することが可能となった。
【0087】
また、媒体搬送装置100は、複数のローラの回転を一つの第1モータ151で制御することにより、装置の軽量化及び低価格化を図ることが可能となった。また、媒体搬送装置100は、媒体として、用紙だけでなく、プラスチック製のカード又はパスポートのような厚みのある原稿を適切に給送及び搬送させることが可能となった。
【0088】
また、媒体搬送装置100では、第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119の回転を制御する第1モータ151と、給送ローラ112の回転を制御する第2モータ152とが別個に設けられている。これにより、媒体搬送装置100は、複数の媒体を搬送させる場合に、各媒体が前後の媒体との間の距離を適切に保ちながら高速に搬送されるように、給送ローラ112と、第1~第4搬送ローラ115、116、118及び119の回転速度を制御できる。
【0089】
図10は、他の実施形態に係る媒体搬送装置における給送ローラ112、ブレーキローラ113及び第1~第4搬送ローラ115、116、118、119の駆動機構について説明するための模式図である。図10は、搬送路の上方側から各ローラの駆動機構を見た斜視図である。
【0090】
図10に示すように、本実施形態に係る媒体搬送装置は、電磁クラッチ124の代わりに、第1メカニカルクラッチ224a及び第2メカニカルクラッチ224bを有する。第1メカニカルクラッチ224a及び第2メカニカルクラッチ224bは、駆動力遮断部材の一例である。
【0091】
第1メカニカルクラッチ224aは、矢印B5の方向の回転駆動を第1シャフト125aに伝達するように設けられたワンウェイクラッチである。第1メカニカルクラッチ224aは、矢印B5の反対方向に第1量以上回転してから矢印B5の方向に第1量以上回転すると、第1シャフト125aに対して空転し、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達を遮断する。一方、第1メカニカルクラッチ224aは、矢印B5の反対方向に第1量より小さい第2量だけ回転してから矢印B5の方向に第1量以上回転すると、第1シャフト125aとともに回転し、第1モータ151からの駆動力をブレーキローラ113へ伝達する。
【0092】
第2メカニカルクラッチ224bは、矢印B5の反対方向の回転駆動を第1シャフト125aに伝達するように設けられたワンウェイクラッチである。第2メカニカルクラッチ224bは、矢印B5の方向に第1量以上回転してから矢印B5の反対方向に第1量以上回転すると、第1シャフト125aに対して空転し、第1モータ151からブレーキローラ113への駆動力の伝達を遮断する。一方、第2メカニカルクラッチ224bは、矢印B5の方向に第1量より小さい第2量だけ回転してから矢印B5の反対方向に第1量以上回転すると、第1シャフト125aとともに回転し、第1モータ151からの駆動力をブレーキローラ113へ伝達する。
【0093】
動作モードが分離モードである場合、制御部171は、図7のステップS104において、第1メカニカルクラッチ224aに第1モータ151からの駆動力を伝達させつつ、第2メカニカルクラッチ224bに第1モータ151からの駆動力を遮断させる。これにより、制御部171は、ブレーキローラ113を媒体給送方向の反対方向A3に回転させる。
【0094】
一方、動作モードが非分離モードである場合、制御部171は、図7のステップS106において、第2メカニカルクラッチ224bに第1モータ151からの駆動力を伝達させつつ、第1メカニカルクラッチ224aに第1モータ151からの駆動力を遮断させる。これにより、制御部171は、ブレーキローラ113を媒体給送方向(矢印A3の反対方向)に回転させる。また、制御部171は、図7のステップS109において、第1メカニカルクラッチ224a及び第2メカニカルクラッチ224bに第1モータ151からの駆動力を遮断させる。これにより、制御部171は、ブレーキローラ113を、搬送される媒体に従動させる。
【0095】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、駆動力遮断部材としてメカニカルクラッチを用いる場合も、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、ブレーキローラ113と各搬送ローラの回転を一つの第1モータ151で適切に制御することが可能となった。
【0096】
なお、駆動力遮断部材として、電磁クラッチ124又は第1メカニカルクラッチ224a及び第2メカニカルクラッチ224bの代わりにソレノイド等の他の部材が用いられてもよい。
【0097】
また、駆動力遮断部材が省略され、電磁クラッチ124の代わりに単一のギアが用いられてもよい。その場合、図7のステップS104、S106及びS109の処理は省略され、第1モータ151からの駆動力は常にブレーキローラ113へ伝達される。
【0098】
図11は、駆動力遮断部材が省略された場合の給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116の動作を説明するための模式図である。図11は、非分離モードにおいて、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後の各ローラの動作を説明するための模式図である。
【0099】
図11に示すように、駆動力遮断部材が省略された場合、媒体の先端がブレーキローラ113の位置を通過した後も、第1モータ151からの駆動力はブレーキローラ113に伝達され、ブレーキローラ113は媒体給送方向の反対方向A3に回転する。しかしながら、給送される媒体がプラスチック製のカード等である場合、給送される媒体によりブレーキローラ113に加えられる力がトルクリミッタ126のリミット値を超える。この場合、トルクリミッタ126を介した回転力が絶たれ、ブレーキローラ113は、給送される媒体によって連れ回る(従動する)。
【0100】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、駆動力遮断部材を省略する場合も、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、ブレーキローラ113と各搬送ローラの回転を一つの第1モータ151で適切に制御することが可能となった。
【0101】
特に、媒体搬送装置は、プラスチック製のカードを搬送する場合に、十分な給送力を発生して、良好に給送することが可能となる。また、媒体搬送装置は、複数の用紙を搬送する場合、用紙の先端が分離部を通過した後も、ブレーキローラ113を媒体給送方向の反対方向A3に回転させ続ける。そのため、媒体搬送装置は、複数の用紙が分離部を通過してしまった場合でも、媒体を分離し続けて、重送の発生を抑制することが可能となる。
【0102】
図12は、他の実施形態に係る媒体搬送装置における処理回路270の概略構成を示す図である。処理回路270は、媒体搬送装置100の処理回路170の代わりに使用され、処理回路170の代わりに、媒体読取処理を実行する。処理回路270は、制御回路271及び画像取得回路272等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0103】
制御回路271は、制御部の一例であり、制御部171と同様の機能を有する。制御回路271は、操作装置105から操作信号を、第1センサ111から第1媒体信号を、第2センサ114から第2媒体信号を受信する。制御回路271は、受信した各信号に応じて第1モータ151及び第2モータ152を回転させて、各ローラによる媒体の搬送を制御する。
【0104】
画像取得回路272は、画像取得部の一例であり、画像取得部172と同様の機能を有する。画像取得回路272は、撮像装置117から入力画像を受信して、インタフェース装置153を介して情報処理装置へ送信又は記憶装置160に記憶する。
【0105】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路270を用いる場合においても、分離モードと非分離モードのそれぞれにおいて、ブレーキローラ113と各搬送ローラの回転を一つの第1モータ151で適切に制御することが可能となった。
【符号の説明】
【0106】
100 媒体搬送装置、112 給送ローラ、113 ブレーキローラ、114 第2センサ、115 第1搬送ローラ、116 第2搬送ローラ、118 第3搬送ローラ、119 第4搬送ローラ、121a~d 第1~第4プーリ、122a~b 第1~第2ベルト、123a~j 第1~第10ギア、124 電磁クラッチ、125a~g 第1~第7シャフト、126 トルクリミッタ、151 第1モータ、152 第2モータ、171 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送ローラと、
前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと
1の方向に回転することにより第1駆動力を発生し、前記第1の方向と反対の第2の方向に回転することにより第2駆動力を発生する第1モータと、
前記第1モータから前記分離ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、
分離モードにおいて、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記分離ローラに分離動作を行わせ、非分離モードにおいて、前記第1モータに前記第2駆動力を発生させて、前記分離ローラに給送動作を行わせる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記分離モードと前記非分離モードとで前記分離ローラの回転速度を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
媒体搬送方向において前記分離ローラより下流側に配置された搬送ローラをさらに有し、
前記駆動力伝達部は、さらに、前記第1モータから前記搬送ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達し、
前記制御部は、前記分離モード及び前記非分離モードにおいて、前記搬送ローラに媒体を搬送させる、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記給送ローラを回転させる第3駆動力を発生させる第2モータをさらに有する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、媒体の搬送状態に応じて、前記分離ローラの回転速度を変更する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
給送ローラと、前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと、第1の方向に回転することにより第1駆動力を発生し、前記第1の方向と反対の第2の方向に回転することにより第2駆動力を発生する第1モータと、前記第1モータから前記分離ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
分離モードにおいて、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記分離ローラに分離動作を行わせ、
非分離モードにおいて、前記第1モータに前記第2駆動力を発生させて、前記分離ローラに給送動作を行わせ、
前記分離モードと前記非分離モードとで前記分離ローラの回転速度を変更する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
給送ローラと、前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと、第1の方向に回転することにより第1駆動力を発生し、前記第1の方向と反対の第2の方向に回転することにより第2駆動力を発生する第1モータと、前記第1モータから前記分離ローラに前記第1駆動力及び前記第2駆動力を伝達するための駆動力伝達部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
分離モードにおいて、前記第1モータに前記第1駆動力を発生させて、前記分離ローラに分離動作を行わせ、
非分離モードにおいて、前記第1モータに前記第2駆動力を発生させて、前記分離ローラに給送動作を行わせ、
前記分離モードと前記非分離モードとで前記分離ローラの回転速度を変更する、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。