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特開2023-153364情報処理装置、作業時間調整方法および作業時間調整プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153364
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、作業時間調整方法および作業時間調整プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20231005BHJP
G06Q 10/063 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q10/063
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136409
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2019058195の分割
【原出願日】2019-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】598057291
【氏名又は名称】株式会社富士通エフサス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 大
(72)【発明者】
【氏名】飯野 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】野溝 篤史
(57)【要約】
【課題】保守作業に要する時間を精度よく見積もること。
【解決手段】サーバ200は、作業員が所定の作業を開始してから終了するまでに要した作業時間と、作業を行った作業員の属性とを含む報告情報を作業員毎にそれぞれ受信する。サーバ200は、複数の報告情報に含まれる属性を基にして、複数の報告情報にそれぞれ含まれる作業時間を補正する。サーバ200は、補正した複数の作業時間を基にして、所定の作業に対して予め設定された標準作業時間を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業項目を含む所定の作業を作業員が開始してから終了するまでに要した作業時間と、前記所定の作業に対する作業を開始してから終了するまでに作業員が発話した内容のテキスト情報とを含む報告書情報を作業員毎にそれぞれ受信する受信部と、
前記テキスト情報に含まれる所定のキーワードの出現回数を特定し、前記所定の作業に対して予め設定された標準作業時間と前記作業時間との差分時間と、前記出現回数とを基にして、前記所定のキーワードを1回発話する毎に発生する単位超過時間を算出し、算出した単位超過時間を基にして、前記標準作業時間を補正する補正部と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
コンピュータが、
複数の作業項目を含む所定の作業を作業員が開始してから終了するまでに要した作業時間と、前記所定の作業に対する作業を開始してから終了するまでに作業員が発話した内容のテキスト情報とを含む報告書情報を作業員毎にそれぞれ受信し、
前記テキスト情報に含まれる所定のキーワードの出現回数を特定し、前記所定の作業に対して予め設定された標準作業時間と前記作業時間との差分時間と、前記出現回数とを基にして、前記所定のキーワードを1回発話する毎に発生する単位超過時間を算出し、算出した単位超過時間を基にして、前記標準作業時間を補正する
処理を実行することを特徴とする作業時間調整方法。
【請求項3】
コンピュータに、
複数の作業項目を含む所定の作業を作業員が開始してから終了するまでに要した作業時間と、前記所定の作業に対する作業を開始してから終了するまでに作業員が発話した内容のテキスト情報とを含む報告書情報を作業員毎にそれぞれ受信し、
前記テキスト情報に含まれる所定のキーワードの出現回数を特定し、前記所定の作業に対して予め設定された標準作業時間と前記作業時間との差分時間と、前記出現回数とを基にして、前記所定のキーワードを1回発話する毎に発生する単位超過時間を算出し、算出した単位超過時間を基にして、前記標準作業時間を補正する
処理を実行させることを特徴とする作業時間調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
CE(Customer Engineer)による保守作業を最適な作業時間で安全に実行させるために、作業現場で発生した情報を、サポート部門等にフィードバックすることが行われている。たとえば、CEは、作業中に気がついたことや、改善要望等をまとめたレポートを作成し、上司の承認を得た後に、レポートを投稿している。
【0003】
サポート部門では、投稿されたレポートの内容を検討し、保守作業の見積時間等を修正している。たとえば、ある作業項目に設定した見積時間に対する実際の作業時間が、想定した見積時間より多くの時間を要する場合がある、この場合には、見積時間をもとの見積時間よりも長く設定して、保守作業のスケジューリングを更新することで、CEに係る負担を軽減し、ミス等を未然に防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-235674号公報
【特許文献2】特開平11-232339号公報
【特許文献3】特開2003-233687号公報
【特許文献4】特開平6-016354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、保守作業に要する時間を精度よく見積もることができないという問題がある。
【0006】
現在では、作業現場で発生した情報を、フィードバックするまでの時間に制限がなく、CEは日々作業に追われているため、レポートを作成する作業を後回しにしてしまう場合があり、作業現場で発生した情報を効率的にフィードバックスすることができていない。また、上司の承認を得るために、レポートの内容が、形式的な記載内容にとどまり、CEの真意をつかめず、保守作業のスケジューリングに反映されないことがある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、保守作業に要する時間を精度よく見積もることができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の案では、情報処理装置は、受信部と、補正部とを有する。受信部は、複数の作業項目を含む所定の作業を作業員が開始してから終了するまでに要した作業時間と、前記所定の作業に対する作業を開始してから終了するまでに作業員が発話した内容のテキスト情報とを含む報告書情報を作業員毎にそれぞれ受信する。補正部は、前記テキスト情報に含まれる所定のキーワードの出現回数を特定し、前記所定の作業に対して予め設定された標準作業時間と前記作業時間との差分時間と、前記出現回数とを基にして、前記所定のキーワードを1回発話する毎に発生する単位超過時間を算出し、算出した単位超過時間を基にして、前記標準作業時間を補正する。
【発明の効果】
【0009】
保守作業に要する時間を精度よく見積もることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施例1に係るシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施例1に係る作業員端末の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、作業マニュアル情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施例1に係る作業報告情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施例1に係るサーバの構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施例1に係る作業員DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施例1に係る保守DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施例1に係る保守DBの保守作業情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施例1の補正部の処理を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本実施例1に係る作業員端末の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本実施例1に係るサーバの処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、本実施例2に係るシステムの構成を示す図である。
【
図13】
図13は、本実施例2に係る作業員端末の構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、本実施例2に係る作業報告情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、テキストデータのデータ構造の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、本実施例2に係るサーバの構成を示す機能ブロック図である。
【
図17】
図17は、本実施例2に係る保守DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、本実施例2に係る保守DBの保守作業情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、本実施例2に係るキーワードテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、本実施例2に係る補正部の処理を説明するための図である。
【
図21】
図21は、本実施例2に係る作業員端末の処理手順を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、本実施例2に係るサーバの処理手順を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、本実施例に係るサーバと同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する(発明の名称)の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例0012】
図1は、本実施例1に係るシステムの構成を示す図である。
図1に示すように、このシステムは、作業員端末100と、サーバ200とを有する。作業員端末100と、サーバ200とは、ネットワーク50を介して相互に接続される。作業員端末100は、保守作業を行う作業員(CE)10によって、持ち運び可能な携帯端末である。
【0013】
作業員10は、保守対象機器15が配置された保守作業現場に到着すると、作業員端末100を操作して、保守作業開始時における各種の情報を入力する。作業員端末100は、作業員10に入力された情報を基にした作業対象情報をサーバ200に送信することで、サーバ200から作業マニュアル情報を受信し、表示する。作業員10は、作業マニュアル情報を参照しつつ、保守対象機器15のメンテナンス等を行う。作業マニュアル情報には、作業項目の作業順や、各作業項目に要する標準的な作業時間の情報が含まれる。
【0014】
作業員10は、メンテナンス中において、作業マニュアル情報に示される作業項目を選択し、作業項目に対する作業が終了する度に、作業終了を、作業員端末100に入力する処理を繰り返し実行する。作業員端末100は、作業員10によるメンテナンスが終了したことを受け付けると、各作業項目の作業時間を含んだ作業報告情報を生成し、サーバ200に送信する。
【0015】
サーバ200は、作業員端末100から作業対象情報を受信すると、作業対象情報に対応する作業マニュアル情報を、作業員端末100に送信する。また、サーバ200は、作業員端末100から、作業報告情報を受信すると、作業報告情報を基にして、各作業項目に対して予め設定された標準作業時間を更新する。
【0016】
図示を省略するが、作業員10以外の利用者も、作業員端末100あるいは図示しない他の作業員端末を保守作業現場に持ち運び、上記作業を行う。
【0017】
次に、
図1に示した作業員端末100の構成について説明する。
図2は、本実施例1に係る作業員端末の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、作業員端末100は、通信部101、入力部102、表示部103、タイマ104、記憶部140、制御部150を有する。
【0018】
通信部101は、ネットワーク50を介して、サーバ200とデータ通信を実行する処理部である。通信部101は、通信装置の一例である。後述する制御部150は、通信部101を介して、サーバ200とデータをやり取りする。通信部101は、無線通信によって、ネットワーク50に接続してもよい。
【0019】
入力部102は、作業員端末100に各種の情報を入力するための入力装置である。入力部102は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。
【0020】
表示部103は、制御部150から出力される各種の情報を表示する表示装置である。表示部103は、液晶ディスプレイや、タッチパネル等に対応する。たとえば、表示部103は、作業マニュアル情報等を表示する。
【0021】
タイマ104は、現在の日時情報を生成する装置である。タイマ104は、日時情報を、制御部150に出力する。
【0022】
記憶部140は、作業対象情報140a、作業マニュアル情報140b、作業報告情報140cを有する。記憶部140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子や、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に対応する。
【0023】
作業対象情報140aは、保守作業を実際に行う作業員を一意に識別する作業員ID(Identification)と、保守作業の対象となる保守対象機器の部品を一意に識別する保守対象IDとを含む。
【0024】
作業マニュアル情報140bは、保守対象機器の部品に対する保守作業手順の情報を含む。
図3は、作業マニュアル情報のデータ構造の一例を示す図である。
図3に示すように、作業マニュアル情報は、作業順と、作業項目と、標準作業時間とを対応付ける。作業順は、作業の順番を示すものである。作業項目は、作業の項目を示すものである。標準作業時間は、一般的な作業員が該当する作業項目を作業する場合に要する時間を示すものである。標準作業合計時間は、各標準作業時間を合計した時間である。
【0025】
たとえば、
図3に示す作業マニュアル情報では、作業を、作業項目「部品の取り出し」、「部品の測定」、「部品の交換」、「部品の取り付け」、「動作確認」の順に行うことが示され、各作業項目の標準作業時間は、「3」、「4」、「8」、「5」、「10」となる。標準作業合計時間は「30」となる。
【0026】
作業報告情報140cは、作業員により実際に行われた各作業項目の作業時間の情報を有する。
図4は、作業報告情報のデータ構造の一例を示す図である。
図4に示すように、この作業報告情報140cには、作業順、作業項目、作業時間を対応付けたテーブルを有する。作業順、作業項目は、作業マニュアル情報140bに含まれる作業順、作業項目に対応する。作業時間は、作業員が実際に作業項目に対する作業を行う場合に要した時間を示す。
【0027】
また、作業報告情報には、作業員ID、保守対象ID、開始日時、終了日時を有する。作業員IDは、作業員を一意に識別する情報である。保守対象IDは、保守作業の対象となる保守対象機器の部品を一意に識別する情報である。開始日時は、保守作業の開始日時を示す。終了日時は、保守作業の終了日時を示す。
【0028】
図2の説明に戻る。制御部150は、作業対象情報生成部150aと、要求部150bと、作業報告情報生成部150cと、送信部150dとを有する。制御部150は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などによって実現できる。また、制御部150は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
【0029】
作業対象情報生成部150aは、作業員10が入力部102を操作することで入力される作業開始時における各種の情報を基にして、作業対象情報140aを生成する処理部である。作業開始時における各種の情報には、利用者ID、保守対象IDが含まれる。作業対象情報生成部150aは、利用者IDおよび保守対象IDを、作業対象情報140aとして生成し、記憶部140に登録する。
【0030】
作業対象情報生成部150aは、作業開始時における各種の情報の入力を受け付けた際に、タイマ104から出力される日時を開始日時として特定する。作業対象情報生成部150aは、開始日時の情報を、作業報告情報140cに登録する。また、作業対象情報生成部150aは、作業員ID、保守対象IDを、作業報告情報140cに登録する。
【0031】
要求部150bは、作業対象情報140aを、サーバ200に送信することで、作業マニュアル情報140bを要求する処理部である。要求部150bは、サーバ200から作業マニュアル情報140bを受信し、受信した作業マニュアル情報140bを記憶部140に登録する。
【0032】
作業報告情報生成部150cは、作業マニュアル情報140bを表示部103に出力して、表示させる。作業報告情報生成部150cは、作業員10が入力部102を操作することで入力される各作業項目の作業時間を受け付け、作業報告情報140cに登録する。
【0033】
作業報告情報生成部150cは、作業が終了した旨の情報を入力部102から受け付けた際に、タイマ104から出力される日時を終了日時として特定する。作業報告情報生成部150cは、終了日時の情報を、作業報告情報140cに登録する。
【0034】
送信部150dは、作業報告情報140cを、サーバ200に送信する処理部である。
【0035】
次に、
図1に示したサーバ200の構成について説明する。
図5は、本実施例1に係るサーバの構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、このサーバ200は、通信部210と、入力部220と、表示部230と、記憶部240と、制御部250とを有する。
【0036】
通信部210は、ネットワーク50を介して、作業員端末100とデータ通信を実行する処理部である。通信部210は、通信装置の一例である。後述する制御部250は、通信部210を介して、作業員端末100とデータをやり取りする。
【0037】
入力部220は、サーバ200に各種の情報を入力するための入力装置である。入力部220は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。
【0038】
表示部230は、制御部250から出力される各種の情報を表示する表示装置である。表示部230は、液晶ディスプレイや、タッチパネル等に対応する。
【0039】
記憶部240は、作業員DB(Data Base)240a、保守DB240b、作業報告情報テーブル240cを有する。記憶部240は、RAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、HDDなどの記憶装置に対応する。
【0040】
作業員DB240aは、各作業員に関する属性情報を記憶するデータベースである。
図6は、本実施例1に係る作業員DBのデータ構造の一例を示す図である。
図6に示すように、この作業員DB240aは、作業員IDと、作業員名と、保持スキルと、経験年数と、補正値とを対応付ける。
【0041】
作業員IDは、作業員を一意に識別する情報である。作業員名は、作業員の氏名である。保持スキルは、作業員が有するスキル(資格)の情報である。経験年数は、作業員の保守作業に関する経験年数である。補正値は、作業員の作業時間を補正する場合に利用する補正値である。たとえば、補正値は、経験年数が多いほど、または、保持スキルのランクが高いほど、大きくなる。たとえば、各保持スキルを、ランクの高い順に並べると、「スキルA、スキルB、スキルC、スキルD」となり、スキルAのランクが最も高い。
【0042】
保守DB240bは、保守作業に関する各種の情報を記憶するデータベースである。
図7は、本実施例1に係る保守DBのデータ構造の一例を示す図である。
図7に示すように、保守DB240bは、保守対象IDと、保守作業情報と、作業マニュアル情報とを対応付ける。
【0043】
図7において、保守対象IDは、保守作業の対象となる保守対象機器の部品を一意に識別する情報である。保守作業情報は、作業マニュアル情報の各作業項目の標準作業時間を算出する場合に使用する各種の情報を有する。作業マニュアル情報は、保守対象IDに識別される保守対象機器の部品をメンテナンスする場合に参照される作業マニュアル情報であり、たとえば、
図3で説明したものに対応する。
【0044】
図8は、本実施例1に係る保守DBの保守作業情報のデータ構造の一例を示す図である。
図8では、保守対象ID「D1001」に対応する保守作業情報を示す。
図8に示すように、保守作業時間は、作業順、作業項目、標準作業時間、補正後作業時間、個別作業時間、標準作業合計時間、補正後作業合計時間を有する。
図8において、作業順、作業項目、標準作業時間、標準作業合計時間に関する説明は、
図3で説明したものと同様である。
【0045】
個別作業時間は、該当する作業項目を作業員が作業を行う場合に、実際に要した作業時間を、作業員の属性により特定される補正値によって補正された時間を示すものである。以下の説明では、補正値によって補正された時間を「補正時間」と表記する。1つの作業項目に対応する個別作業時間には、各作業員の補正時間がそれぞれ登録される。
【0046】
補正後作業時間は、個別作業時間に含まれる複数の補正時間を平均した時間である。
【0047】
補正後作業合計時間は、各作業項目の補正後作業時間を合計した時間である。
【0048】
図5の説明に戻る。作業報告情報テーブル240cは、各作業員の作業員端末100(または、図示しない他の作業員端末)から受信した、各作業報告情報を保持するテーブルである。図示を省略するが、作業報告情報テーブル240cは、保守対象IDと、作業報告情報とを対応付けた情報を保持する。
【0049】
制御部250は、応答部250aと、受信部250bと、補正部250cと、更新部250dとを有する。制御部250は、CPUやMPUなどによって実現できる。また、制御部250は、ASICやFPGAなどのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
【0050】
応答部250aは、作業員端末100から作業対象情報140aを受信した場合、以下の応答を行う処理部である。応答部250aは、作業対象情報140aの保守対象IDに対応する作業マニュアル情報を、保守DB240bから抽出する。応答部250aは、抽出した作業マニュアル情報を、作業員端末100に送信する。
【0051】
受信部250bは、作業員端末100から作業報告情報140cを受信する処理部である。受信部250bは、受信した作業報告情報140cを、作業報告情報テーブル240cに登録する。
【0052】
補正部250cは、作業報告情報テーブル240cに登録された作業報告情報を基にして、保守DB240bの情報を補正する処理部である。
【0053】
補正部250cは、作業報告情報テーブル240cに登録された作業報告情報を取得し、作業報告情報に含まれる作業員IDと、作業員DB240aとを比較して、作業員IDの属性に対応する補正値を特定する。
図6を用いて説明すると、作業員IDが「U101」である場合、属性は、保持スキル「スキルA」、経験年数「30」であり、補正値は「1.2」となる。
【0054】
補正部250cは、作業報告情報に含まれる各作業項目の作業時間を、補正値で除算することで、作業時間を補正する(補正時間を算出する)。
図9は、本実施例1の補正部の処理を説明するための図である。たとえば、作業報告情報に含まれる各作業項目の作業時間を「3」、「3」、「10」、「5」、「10」とし、補正値をCとする。そうすると、各補正時間は「3/C」、「3/C」、「10/C」、「5/C」、「10/C」となる。
【0055】
ベテランの作業員は、技術力が高いため、作業時間が短くなる傾向にある。このため、ベテランの作業員の比較的大きな補正値によって、作業時間を除算することで、ベテランの作業員の作業時間を、一般的な作業員の作業時間に近づける補正を行う。これに対して、新人の作業員は、技術力が低いため、作業時間が長くなる傾向にある。このため、新人の作業員の比較的小さな補正値によって、作業時間を除算することで、新人の作業員の作業時間を、一般的な作業員の作業時間に近づける補正を行う。
【0056】
補正部250cは、算出した各補正時間を、各個別作業時間に追加する。たとえば、作業報告情報に含まれる保守対象IDが「D1001」であり、各補正作業時間を、
図9で説明した補正作業時間であるとする。この場合、補正部250cは、
図8の各作業項目「部品の切り出し」、「部品の測定」、「部品の交換」、「部品の取り付け」、「動作確認」の各個別作業時間に、補正時間「3/C」、「3/C」、「10/C」、「5/C」、「10/C」をそれぞれ追加する。
【0057】
補正部250cは、作業報告情報テーブル240cに登録された各作業報告情報について、上記処理を繰り返し実行することで、保守DB240bの各個別時間情報に、補正時間を登録する。
【0058】
続いて、補正部250cは、
図8で説明した個別作業時間を平均することで、補正後作業時間を算出する。たとえば、補正部250cは、作業項目「部品の切り出し」に対応する個別作業時間の各値を平均することで、作業項目「部品の切り出し」に対応する補正作業時間を算出し、保守DB240bに登録する。補正部250cは、他の作業項目についても同様に、個別作業時間を平均することで、補正後作業時間を登録する。補正部250cは、各補正後作業時間を合計することで、補正後作業合成時間を算出し、保守DB240bに登録する。
【0059】
更新部250dは、補正部250cにより補正後作業時間が算出された場合、作業マニュアル情報の標準作業時間を更新する処理部である。たとえば、保守対象ID「D1001」に対応する各補正後作業時間が、補正部250cにより算出された場合、更新部250dは、保守対象ID「D1001」に対応する各補正後作業時間によって、保守対象ID「D1001」に対応する作業マニュアル情報の各標準作業時間を更新する。また、更新部250dは、作業マニュアル情報の標準作業合計時間を、補正後作業合計時間によって更新する。
【0060】
次に、本実施例1に係る作業員端末100の処理手順の一例について説明する。
図10は、本実施例1に係る作業員端末の処理手順を示すフローチャートである。
図10に示すように、作業員端末100の作業対象情報生成部150aは、入力部102から、作業員IDおよび保守対象IDの情報の入力を受け付け、作業対象情報140aを生成する(ステップS101)。
【0061】
作業対象情報生成部150aは、保守作業の開始日時を、作業報告情報140cに記録する(ステップS102)。作業員端末100の要求部150bは、作業対象情報140aをサーバ200に送信する(ステップS103)。要求部150bは、サーバ200から、作業対象情報140aに対応する作業マニュアル情報140bを受信し、記憶部140に登録する(ステップS104)。
【0062】
作業報告情報生成部150cは、作業マニュアル情報140bを表示部103に出力して表示させる(ステップS105)。作業報告情報生成部150cは、作業項目の選択を受け付け(ステップS106)、現在時刻を記録する(ステップS107)。
【0063】
作業報告情報生成部150cは、作業項目の終了を受け付けた場合、作業時間を作業報告情報140cに登録する(ステップS108)。作業報告情報生成部150cは、全ての作業項目が終了していない場合には(ステップS109,No)、ステップS106に移行する。
【0064】
一方、作業報告情報生成部150cは、全ての作業項目が終了した場合には(ステップS109,Yes)、保守作業の終了日時を作業報告情報140cに記録する(ステップS110)。送信部150dは、作業報告情報140cを、サーバ200に送信する(ステップS111)。
【0065】
次に、本実施例1に係るサーバ200の処理手順の一例について説明する。
図11は、本実施例1に係るサーバの処理手順を示すフローチャートである。
図11に示すように、サーバ200の受信部250bは、作業報告情報140cを作業員端末100から受信し(ステップS201)、作業報告情報140cを、作業報告情報テーブル240cに登録する(ステップS202)。
【0066】
サーバ200の補正部250cは、作業報告情報の作業員IDと、作業員DB240aとを基にして、補正値を特定する(ステップS203)。補正部250cは、作業報告情報の各作業項目の作業時間と補正値とを基にして補正時間を算出する(ステップS204)。
【0067】
補正部250cは、保守DB240bの個別作業時間に、各補正時間を登録する(ステップS205)。補正部250cは、個別作業時間に登録された各補正時間の平均を、補正後作業時間として算出する(ステップS206)。サーバ200の更新部250dは、作業マニュアル情報の各作業項目の作業時間を、補正後作業時間によって更新する(ステップS207)。
【0068】
次に、本実施例1に係るシステムの効果について説明する。作業員端末100は、サーバ200から受信した作業マニュアル情報を表示し、作業員10は、作業マニュアル情報を参照しつつ、保守対象機器15のメンテナンス等を行う。作業員10は、メンテナンス中において、作業マニュアル情報に示される作業項目を選択し、作業項目に対する作業が終了する度に、作業終了を、作業員端末100に入力する処理を繰り返し実行する。作業員端末100は、作業員10によるメンテナンスが終了したことを受け付けると、各作業項目の作業時間を含んだ作業報告情報を生成し、サーバ200に送信する。
【0069】
サーバ200は、作業員報告情報を基にして、作業員の属性に対応する補正値を特定し、作業員が要した各作業項目の作業時間を、補正値によって補正する。サーバ200は、補正した各作業項目の補正時間を基にして、各作業項目に対して設定された標準作業時間を更新する処理を実行する。これによって、保守作業に要する時間を精度よく見積もることができる。
【0070】
たとえば、ベテランの作業員は、技術力が高いため、作業時間が短くなる傾向にある。このため、ベテランの作業員の比較的大きな補正値(1以上の補正値)によって、作業時間を除算することで、ベテランの作業員の作業時間を、一般的な作業員の作業時間に近づける補正を行う。これに対して、新人の作業員は、技術力が低いため、作業時間が長くなる傾向にある。このため、新人の作業員の比較的小さな補正値(1未満の補正値)によって、作業時間を除算することで、新人の作業員の作業時間を、一般的な作業員の作業時間に近づける補正を行う。これによって、一般的な作業員が行う作業時間を精度よく特定できる。
【0071】
なお、本実施例1では一例として、サーバ200の補正部250cが、作業報告情報に含まれる作業員IDと、作業員DB240aとを比較して、作業員IDの属性に対応する補正値を特定していたが、これに限定されるものでない。たとえば、作業員端末100が、作業員の属性に対応する補正値を、作業報告情報に設定し、サーバ200に送信してもよい。この場合には、受信部250bは、作業員の属性に対応する補正値を含んだ作業報告情報を受信し、作業員の属性に対応する補正値を、補正部250cに出力する。
【実施例0072】
図12は、本実施例2に係るシステムの構成を示す図である。
図12に示すように、このシステムは、作業員端末300と、サーバ400とを有する。作業員端末300と、サーバ400とは、ネットワーク50を介して相互に接続される。作業員端末300は、保守作業を行う作業員10によって、持ち運び可能な携帯端末である。
【0073】
作業員10は、保守対象機器15が配置された保守作業現場に到着すると、作業員端末300を操作して、保守作業開始時における各種の情報を入力する。また、作業員10は、マイク10aを装備し、マイク10aと、作業員端末300とを接続する。
【0074】
作業員端末300は、作業員10に入力された情報を基にした作業対象情報をサーバ400に送信することで、サーバ400から作業マニュアル情報を受信し、表示する。作業員10は、作業マニュアル情報を参照しつつ、保守対象機器15のメンテナンス等を行う。また、作業員端末300は、メンテナンス中において、マイク10aから入力される音声データをテキストデータに変換する。作業員端末300は、音声データをテキストデータに変換する際に、保守作業の開始日時からの経過時間を示すタイムスタンプを記録する。
【0075】
作業員端末300は、作業員10によるメンテナンスが終了したことを受け付けると、作業報告情報を生成し、サーバ400に送信する。作業報告情報には、実作業合計時間と、タイムスタンプが付与されたテキストデータが含まれる。
【0076】
サーバ400は、作業員端末300から作業対象情報を受信すると、作業対象情報に対応するマニュアル情報を、作業員端末300に送信する。また、サーバ400は、作業員端末300から、作業報告情報を受信すると、作業報告情報を基にして、各作業項目に対して予め設定された標準作業時間を更新する。
【0077】
たとえば、サーバ400は、各作業項目の標準作業時間を合計した「標準作業合計時間」を算出し、実作業合計時間から、標準作業合計時間を減算した「超過時間」を算出する。サーバ400は、タイムスタンプが付与されたテキストデータを走査して、テキストデータに含まれるネガティブキーワードの出現回数を計数する。ネガティブキーワードは、予め設定された否定的な意味の文字列である。サーバ400は、超過時間をネガティブキーワードの出現回数で除算することで、ネガティブキーワード1つ当たりの超過時間を算出する。以下の説明において、ネガティブキーワード1つ当たりの超過時間を「単位超過時間」と表記する。
【0078】
また、サーバ400は、テキストデータに付与されたタイムスタンプを基にして、作業員が、どの作業項目の作業中において、ネガティブキーワードを何回発話したかを特定し、作業項目と、ネガティブキーワードの出現回数とを対応付ける。サーバ400は、ネガティブキーワードの出現回数と、単位超過時間とを乗算することで「追加時間」を算出する。サーバ400は、作業項目の標準作業時間に、追加時間を加算することで、標準作業時間を更新する。
【0079】
次に、
図12に示した作業員端末300の構成について説明する。
図13は、本実施例2に係る作業員端末の構成を示す機能ブロック図である。
図13に示すように、作業員端末300は、マイク10aに接続される。また、作業員端末300は、通信部301、入力部302、表示部303、タイマ304、記憶部340、制御部350を有する。
【0080】
通信部301は、ネットワーク50を介して、サーバ400とデータ通信を実行する処理部である。通信部301は、通信装置の一例である。後述する制御部350は、通信部301を介して、サーバ400とデータをやり取りする。通信部301は、無線通信によって、ネットワーク50に接続してもよい。
【0081】
入力部302は、作業員端末300に各種の情報を入力するための入力装置である。入力部302は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。
【0082】
表示部303は、制御部350から出力される各種の情報を表示する表示装置である。表示部303は、液晶ディスプレイや、タッチパネル等に対応する。たとえば、表示部303は、作業マニュアル情報等を表示する。
【0083】
タイマ304は、現在の日時情報を生成する装置である。タイマ304は、日時情報を、制御部350に出力する。
【0084】
記憶部340は、作業対象情報340aと、作業マニュアル情報340bと、作業報告情報340cとを有する。記憶部340は、RAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、HDDなどの記憶装置に対応する。
【0085】
作業対象情報340aは、保守作業を実際に行う作業員を一意に識別する作業員IDと、保守作業の対象となる保守対象機器の部品を一意に識別する保守対象IDとを含む。
【0086】
作業マニュアル情報340bは、保守対象機器の部品に対する保守作業手順の情報を含む。作業マニュアル情報340bに関する説明は、実施例1で説明した作業マニュアル情報140bに関する説明と同様である。
【0087】
作業報告情報340cは、作業員により実際行われた作業の作業時間、テキストデータを含む。
図14は、本実施例2に係る作業報告情報のデータ構造の一例を示す図である。
図14に示すように、作業報告情報340cは、作業員ID、保守対象ID、開始日時、終了日時、テキストデータを有する。作業員IDは、作業員を一意に識別する情報である。保守対象IDは、保守対象機器の部品を一意に識別する情報である。開始日時は、保守作業の開始日時を示す。終了日時は、保守作業の終了日時を示す。
【0088】
テキストデータは、作業員の音声データをテキストに変換したデータであり、タイムスタンプと対応付けられる。
図15は、テキストデータのデータ構造の一例を示す図である。
図15に示すように、タイムスタンプと、テキストとが対応付けられる。すなわち、テキストデータは、タイムスタンプによって、所定時間毎(たとえば、1分毎)のテキストに分割される。
【0089】
図13の説明に戻る。作業対象情報生成部350aは、作業員10が入力部302を操作することで入力される作業開始時における各種の情報を基にして、作業対象情報340aを生成する処理部である。作業開始時における各種の情報には、利用者ID、保守対象IDが含まれる。作業対象情報生成部350aは、利用者IDおよび保守対象IDを、作業対象情報340aとして生成し、記憶部340に登録する。
【0090】
作業対象情報生成部350aは、作業開始時における各種の情報の入力を受け付けた際に、タイマ304から出力される日時を開始日時として特定する。作業対象情報生成部350aは、開始日時の情報を、作業報告情報340cに登録する。また、作業対象情報生成部350aは、作業員ID、保守対象IDを、作業報告情報340cに登録する。
【0091】
要求部350bは、作業対象情報340aを、サーバ400に送信することで、作業マニュアル情報340bを要求する処理部である。要求部350bは、サーバ400から作業マニュアル情報340bを受信し、受信した作業マニュアル情報340bを記憶部340に登録する。
【0092】
作業報告情報生成部350cは、作業マニュアル情報340bを表示部303に出力して、表示させる。作業報告情報生成部150cは、作業員10に装備されたマイク10aから入力される音声データを、テキストデータに変換し、テキストデータを、作業報告情報340cに登録する。作業報告情報生成部350cは、テキストデータを作業報告情報340cに登録する場合、タイマ304から出力される日時情報を基にして、1分毎のタイムスタンプを、テキストデータに付与する。
【0093】
図15を用いて説明すると、作業報告情報生成部350cは、開始日時から1分後までの間に作業員10が「よし、始めよう・・・」と発話した場合には、タイムスタンプ「1」と、テキスト「よし、始めよう・・・」とを対応付けて作業報告情報340cに登録する。作業報告情報生成部350cは、開始日時を基準として、2分後~3分後までの間に作業員10が「・・・かたい・・・」と発話した場合には、タイムスタンプ「3」と、テキスト「・・・かたい・・・」とを対応付けて作業報告情報340cに登録する。
【0094】
作業報告情報生成部350cは、作業が終了した旨の情報を入力部302から受け付けるまで、タイムスタンプとテキストとを対応付けて登録する処理を繰り返し実行する。作業報告情報生成部350cは、作業が終了した旨の情報を入力部302から受け付けた際に、タイマ304から出力される日時を終了日時として特定する。作業報告情報生成部350cは、終了日時の情報を、作業報告情報340cに登録する。
【0095】
送信部350dは、作業報告情報340cを、サーバ400に送信する処理部である。
【0096】
次に、
図12に示したサーバ400の構成について説明する。
図16は、本実施例2に係るサーバの構成を示す機能ブロック図である。
図16に示すように、このサーバ400は、通信部410と、入力部420と、表示部430と、記憶部440と、制御部450とを有する。
【0097】
通信部410は、ネットワーク50を介して、作業員端末300とデータ通信を実行する処理部である。通信部410は、通信装置の一例である。後述する制御部450は、通信部410を介して、作業員端末300とデータをやり取りする。
【0098】
入力部420は、サーバ400に各種の情報を入力するための入力装置である。入力部420は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。
【0099】
表示部430は、制御部450から出力される各種の情報を表示する表示装置である。表示部430は、液晶ディスプレイや、タッチパネル等に対応する。
【0100】
記憶部440は、保守DB440a、作業報告情報テーブル440b、キーワードテーブル440cを有する。記憶部240は、RAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、HDDなどの記憶装置に対応する。
【0101】
保守DB440aは、保守作業に関する各種の情報を記憶するデータベースである。
図17は、本実施例2に係る保守DBのデータ構造の一例を示す図である。
図17に示すように、保守DB440aは、保守対象IDと、保守作業情報と、作業マニュアル情報とを対応付ける。
【0102】
図17において、保守対象IDは、保守作業の対象となる保守対象機器の部品を一意に識別する情報である。保守作業情報は、作業マニュアル情報の各作業項目の標準作業時間を算出する場合に使用する各種の情報を有する。作業マニュアル情報は、保守対象IDに識別される保守対象機器の部品をメンテナンスする場合に参照される作業マニュアル情報であり、たとえば、
図3で説明したものに対応する。
【0103】
図18は、本実施例2に係る保守DBの保守作業情報のデータ構造の一例を示す図である。
図18では、保守対象ID「D1001」に対応する保守作業情報を示す。
図18に示すように、保守作業時間は、作業順、作業項目、標準作業時間、作業時間比率、標準作業合計時間を有する。
図18において、作業順、作業項目、標準作業時間、標準作業合計時間に関する説明は、
図3で説明したものと同様である。
【0104】
作業時間比率は、「標準作業合計時間」に対する、該当作業項目の「標準作業時間」の比率を示す。たとえば、作業項目「部品取り出し」の作業時間比率は「10」となる。作業項目「部品の測定」の作業時間比率は「13」となる。作業項目「部品の交換」の作業時間比率は「27」となる。作業項目「部品の取り付け」の作業時間比率は「17」となる。作業項目「動作確認」の作業時間比率は「33」となる。
【0105】
キーワードテーブル440cは、ネガティブキーワードを定義した情報を保持するテーブルである。
図19は、本実施例2に係るキーワードテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
図19に示すように、このキーワードテーブル440cは、番号に対応付けて、複数のネガティブキーワードが定義されている。
【0106】
図16の説明に戻る。制御部450は、応答部450aと、受信部450bと、補正部450cと、更新部450dとを有する。制御部450は、CPUやMPUなどによって実現できる。また、制御部450は、ASICやFPGAなどのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
【0107】
応答部450aは、作業員端末300から作業対象情報340aを受信した場合、以下の応答を行う処理部である。応答部450aは、作業対象情報340aの保守対象IDに対応する作業マニュアル情報を、保守DB440aから抽出する。応答部450aは、抽出した作業マニュアル情報を、作業員端末300に送信する。
【0108】
受信部450bは、作業員端末300から作業報告情報340cを受信する処理部である。受信部450bは、受信した作業報告情報340cを、作業報告情報テーブル440cに登録する。
【0109】
補正部450cは、作業報告情報テーブル440bに登録された作業報告情報を基にして、保守DB440aの情報を補正する処理部である。
【0110】
補正部450cは、作業報告情報テーブル440bに登録された作業報告情報を取得し、作業報告情報の開始日時から終了日時までの「実作業合計時間」を算出する。また、補正部450cは、作業報告情報に含まれる保守対象IDの作業マニュアル情報から、「標準作業合計時間」を特定する。補正部450cは、実作業合計時間が、標準作業合計時間よりも大きくない場合には、補正処理をスキップする。一方、補正部450cは、実作業合計時間が、標準作業合計時間よりも大きい場合には、続く補正処理を実行する。
【0111】
補正部450cは、作業報告情報に含まれるテキストデータを抽出する。補正部450cは、抽出したテキストデータ(タイムスタンプ毎のテキスト)と、キーワードテーブル440cとを比較して、タイムスタンプ毎のテキストから、ネガティブキーワードの出現回数を特定する。ネガティブキーワードの出現回数を合計した回数を、「合計出現回数」と表記する。
【0112】
補正部450cは、実作業合計時間から、標準作業合計時間を減算した「超過時間」を算出する。また、補正部450cは、「超過時間」を「合計出現回数」で除算することで、ネガティブキーワード1つ当たりの「単位超過時間」を算出する。
【0113】
補正部450cは、タイムスタンプと、タイムスタンプに対応するテキストから検出したネガティブキーワードの出現回数とを対応付ける。また、補正部450cは、開始のタイムスタンプから終了のタイムスタンプまでの各タイムスタンプを、作業時間比率に合わせて分類する。
【0114】
図20は、本実施例2に係る補正部の処理を説明するための図である。補正部450cは、タイムスタンプの開始「1」から終了「N
end」までの時間幅をタイムスタンプ全体「100%」と仮定し、作業時間比率に合わせて、タイムスタンプを分類し、各作業項目に割り当てる。
【0115】
たとえば、タイムスタンプ「1~N1」の時間幅は、タイムスタンプ全体の「10%」である。タイムスタンプ「N1+1~N2」の時間幅は、タイムスタンプ全体の「13%」である。タイムスタンプ「N2+1~N3」の時間幅は、タイムスタンプ全体の「27%」である。タイムスタンプ「N3+1~N4」の時間幅は、タイムスタンプ全体の「17%」である。タイムスタンプ「N4+1~Nend」の時間幅は、タイムスタンプ全体の「33%」である。
【0116】
補正部450cは、タイムスタンプ「1~N1」を、作業項目「部品の取り出し」に対応付ける。補正部450cは、タイムスタンプ「N1+1~N2」を、作業項目「部品の測定」に対応付ける。補正部450cは、タイムスタンプ「N2+1~N3」を、作業項目「部品の交換」に対応付ける。補正部450cは、タイムスタンプ「N3+1~N4」を、作業項目「部品の取り付け」に対応付ける。補正部450cは、タイムスタンプ「N4+1~Nend」を、作業項目「動作確認」に対応付ける。
【0117】
続いて、補正部450cが、作業項目「部品の取り出し」に対応する標準作業時間を補正する処理の一例について説明する。補正部450cは、タイムスタンプ「1~N1」に対応するテキストから検出したネガティブキーワードの出現回数を特定する。補正部450cは、特定した出現回数に、単位超過時間を乗算することで、追加時間を算出する。補正部450cは、作業項目「部品の取り出し」に対応する標準作業時間に追加時間を加算することで、標準作業時間を補正する。
【0118】
たとえば、作業項目「部品の取り出し」に対応する標準作業時間を「3」とする。タイムスタンプ「1~N1」に対応するテキストから検出したネガティブキーワードの出現回数を「1」とする。また、単位超過時間を「1.7」とする。そうすると、追加時間は「1×1.7=1.7」となり、補正後の標準作業時間は、「3+1.7=4.7」となる。補正部450cは、他の作業項目についても上記処理を繰り返し実行することで、各標準作業時間を補正する。
【0119】
更新部450dは、補正部450cにより標準作業時間が補正された場合、作業マニュアル情報の標準作業時間を更新する処理部である。たとえば、保守対象ID「D1001」に対応する各標準作業時間が、補正部450cにより補正された場合、保守対象ID「D1001」に対応する作業マニュアル情報の各標準作業時間を更新する。
【0120】
次に、本実施例2に係る作業員端末300の処理手順の一例について説明する。
図21は、本実施例2に係る作業員端末の処理手順を示すフローチャートである。
図21に示すように、作業員端末300の作業対象情報生成部350aは、入力部302から、作業員IDおよび保守対象IDの情報の入力を受け付け、作業対象情報340aを生成する(ステップS301)。
【0121】
作業対象情報生成部350aは、保守作業の開始日時を、作業報告情報340cに記録する(ステップS302)。作業員端末300の要求部350bは、作業対象情報340aをサーバ400に送信する(ステップS303)。要求部350bは、サーバ400から、作業対象情報340aに対応する作業マニュアル情報340bを受信し、記憶部340に登録する(ステップS304)。
【0122】
作業報告情報生成部350cは、作業マニュアル情報140bを表示部303に出力して表示させる(ステップS305)。作業報告情報生成部350cは、作業中の音声データを取得し、テキストデータに変換する処理を開始する(ステップS306)。作業報告情報生成部350cは、テキストデータにタイムスタンプを記録する処理を開始する(ステップS307)。
【0123】
作業報告情報生成部350cは、作業が終了していない場合には(ステップS308,No)、ステップS306に移行する。作業報告情報生成部350cは、作業が終了した場合には(ステップS308,Yes)、保守作業の終了日時を作業報告情報340cに記録する(ステップS309)。
【0124】
作業報告情報生成部350cは、テキストデータに変換する処理、タイムスタンプを記録する処理を終了する(ステップS310)。送信部350dは、作業報告情報340cを、サーバ400に送信する(ステップS311)。
【0125】
次に、本実施例2に係るサーバ400の処理手順の一例について説明する。
図22は、本実施例2に係るサーバの処理手順を示すフローチャートである。
図22に示すように、サーバ400の受信部450bは、作業報告情報340cを作業員端末300から受信し(ステップS401)、作業報告情報340cを、作業報告情報テーブル440bに登録する(ステップS402)。
【0126】
サーバ400の補正部450cは、実作業合計情報が、標準作業合計時間よりも大きくない場合には(ステップS403,No)、処理を終了する。サーバ400の補正部450cは、実作業合計情報が、標準作業合計時間よりも大きい場合には(ステップS403,Yes)、各作業項目の作業時間比率を特定する(ステップS404)。
【0127】
補正部450cは、超過時間を算出する(ステップS405)。補正部450cは、タイムスタンプに対するテキストに含まれるネガティブキーワードの出現回数をそれぞれ検出する(ステップS406)。補正部450cは、ネガティブキーワード1つ当たりの単位超過時間を算出する(ステップS407)。
【0128】
補正部450cは、各作業項目の作業時間比率を基にして、作業項目毎にネガティブキーワードの出現回数を対応付ける(ステップS408)。補正部450cは、各作業項目の追加時間を算出し、標準作業時間を補正する(ステップS409)。サーバ400の更新部450dは、作業マニュアル情報の各作業項目の標準作業時間を更新する(ステップS410)。
【0129】
次に、本実施例2に係るシステムの効果について説明する。作業員端末300は、サーバ400から受信した作業マニュアル情報を表示し、作業員10は、作業マニュアル情報を参照しつつ、保守対象機器15のメンテナンス等を行い、音声を入力する。作業員10は、作業員端末300は、作業員10による音声をテキストデータに変換し、タイムスタンプとテキストデータとを対応付けた情報を含む作業報告情報を生成し、サーバ400に送信する。
【0130】
サーバ400は、作業員報告情報のテキストデータを基にして特定し、ネガティブキーワードの出現回数を、作業項目毎に特定し、出現回数を基にして、作業項目の標準作業時間を補正する。これによって、作業中の作業員10のつぶやきにより、保守作業に要する時間を精度よく見積もることができる。
【0131】
なお、本実施例1のサーバ200と、実施例2のサーバ400との機能を組み合わせたサーバを構築することも可能である。たとえば、このサーバは、
図5に示した制御部250と、
図16に示した制御部450とを有し、作業員の属性に応じた補正値によって作業時間を補正すると共に、ネガティブキーワードの出現回数を基にして、作業時間を補正する処理を行う。
【0132】
次に、本実施例に示したサーバ200(400)と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例について説明する。
図23は、本実施例に係るサーバと同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0133】
図23に示すように、コンピュータ500は、各種演算処理を実行するCPU501と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置502と、ディスプレイ503とを有する。また、コンピュータ500は、記憶媒体からプログラム等を読み取る読み取り装置504と、有線または無線ネットワークを介して、外部装置等との間でデータの授受を行うインタフェース装置505とを有する。コンピュータ500は、各種情報を一時記憶するRAM506と、ハードディスク装置507とを有する。そして、各装置501~507は、バス508に接続される。
【0134】
ハードディスク装置507は、応答プログラム507a、受信プログラム507b、補正プログラム507c、更新プログラム507dを有する。CPU501は、応答プログラム507a、受信プログラム507b、補正プログラム507c、更新プログラム507dを詠み出してRAM506に展開する。
【0135】
応答プログラム507aは、応答プロセス506aとして機能する。受信プログラム507bは、受信プロセス506bとして機能する。補正プログラム507cは、補正プロセス506cとして機能する。更新プログラム507dは、更新プロセス506dとして機能する。
【0136】
応答プロセス506aの処理は、応答部250a,450aの処理に対応する。受信プロセス506bの処理は、受信部250b,450bの処理に対応する。補正プロセス506cの処理は、補正部250c,450cの処理に対応する。更新プロセス506dの処理は、更新部250d,450dの処理に対応する。
【0137】
なお、各プログラム507a~507dついては、必ずしも最初からハードディスク装置507に記憶させておかなくてもよい。例えば、コンピュータ500に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ500が各プログラム507a~507dを読み出して実行するようにしてもよい。