(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153387
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】組成物、電解液材料及び電解液
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231005BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137195
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2022503213の分割
【原出願日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2020031795
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 祐介
(72)【発明者】
【氏名】荒川 元博
(72)【発明者】
【氏名】小畠 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小野田 知恵
(57)【要約】
【課題】スルホニルイミド塩を含む組成物において、高温でも優れた保存安定性を有し、電解液材料や電解液に使用可能な組成物を提供する。
【解決手段】電解質、溶媒及びアニオン成分を含む組成物であり、前記電解質はスルホニルイミド塩を含み、前記アニオン成分は酸解離定数pKa(複数電離する酸については第1段階の酸解離定数pKa1)が0以上6.5以下の酸成分を電解質に対して50ppm以上10000ppm以下の濃度で含み、フッ化物イオンの濃度が前記電解質に対して100ppm以下であり、硫酸イオンの濃度が該電解質に対して100ppm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質、溶媒及びアニオン成分を含む組成物であって、
前記電解質は、スルホニルイミド塩を含み、
前記アニオン成分は、酸解離定数pKa(複数電離する酸については第1段階の酸解離定数pKa1)が0以上6.5以下の酸成分を前記電解質に対して50ppm以上10000ppm以下の濃度で含み、
フッ化物イオンの濃度が前記電解質に対して100ppm以下であり、硫酸イオンの濃度が該電解質に対して100ppm以下であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記溶媒は、カーボネート溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カーボネート溶媒は、鎖状カーボネート溶媒であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶媒は、鎖状カーボネート溶媒のみからなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
電解質、溶媒及びアニオン成分を含む組成物であって、
前記電解質は、スルホニルイミド塩を含み、
前記アニオン成分は、酸解離定数pKa(複数電離する酸については第1段階の酸解離定数pKa1)が0以上6.5以下の酸成分を前記電解質に対して50ppm以上10000ppm以下の濃度で含み、
前記溶媒は、カーボネート溶媒を含み、該カーボネート溶媒が鎖状カーボネート溶媒であり、
フッ化物イオンの濃度が前記電解質に対して100ppm以下であり、硫酸イオンの濃度が該電解質に対して100ppm以下であることを特徴とする組成物。
【請求項6】
前記溶媒は、鎖状カーボネート溶媒のみからなることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記電解質は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
水を前記電解質に対して0.1ppm以上1000ppm以下の濃度で含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記スルホニルイミド塩の含有量が組成物全体に対して10質量%以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アニオン成分は、アミド硫酸成分、酢酸成分、炭酸成分及びリン酸成分からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アミド硫酸成分は、アミド硫酸及びその塩、並びにアミド硫酸誘導体及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アミド硫酸誘導体及びその塩は、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【化1】
(式(2)中、R
1、R
2は、H(水素原子)、ヒドロキシル基又は置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、炭素数2~16のアルカノイル基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R
1とR
2で環構造を形成していてもよい。R
1、R
2は、H以外の上記基のとき、同一でもよく、異なっていてもよい(R
1、R
2は、Hのとき、同一ではない(R
1及びR
2は同時にHではない))。Mは、H(水素原子)又は金属原子を表す。)
【請求項12】
前記アミド硫酸成分は、アミド硫酸及びアミド硫酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記アミド硫酸成分は、アミド硫酸アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする電解液材料。
【請求項15】
請求項14に記載の電解液材料を用いて作製された電解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、電解液材料及び電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
電解液等に使用可能な電解液材料や組成物等が種々検討されている。例えば、本出願人は、フルオロスルホニルイミド塩と電解液溶媒を含み、電解液材料中に含まれるフルオロスルホニルイミド塩の濃度が30質量%以上であり、電解液材料中のフルオロスルホニルイミド塩の製造溶媒の残存量が3000ppm以下である電解液材料を提案している(特許文献1)。
【0003】
また、本出願人は、電解質と溶媒とを含み、電解質がフルオロスルホニルイミド塩を含み、溶媒が比誘電率10以下の有機溶媒を含み、さらにアミド硫酸成分を含む組成物を特願2019-103361の出願明細書に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フルオロスルホニルイミド塩等のスルホニルイミド塩と溶媒とを含む液体のスルホニルイミド塩は、粉体のスルホニルイミド塩と比較して、取扱い性に優れるものの、保管中にスルホニルイミド塩の分解反応等が進み、その結果、保存安定性(長期保管した場合でもスルホニルイミド塩の分解反応等が抑制されるという特性)に劣るという問題があった。当該問題に対し、特許文献1に記載の電解液材料や特願2019-103361の出願明細書に開示した組成物では、室温(例えば25℃)での保存安定性が改善されている。しかしながら、液体のスルホニルイミド塩では、室温だけではなく、スルホニルイミド塩の分解が促進される高温(例えば40℃以上)でも長期保管できるようにしたいという要望がある。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スルホニルイミド塩を含む組成物において、高温でも優れた保存安定性を有し、電解液材料や電解液に使用可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アニオン成分として、所定範囲の解離定数pKaを有する酸成分を所定濃度で含むことにより、上述の課題が解決されることを見出した。本開示は、具体的には以下のとおりである。
【0008】
本開示の組成物は、電解質、溶媒及びアニオン成分を含み、前記電解質は、スルホニルイミド塩を含み、前記アニオン成分は、酸解離定数pKa(複数電離する酸については第1段階の酸解離定数pKa1)が0以上6.5以下の酸成分を前記電解質に対して50ppm以上10000ppm以下の濃度で含み、フッ化物イオンの濃度が前記電解質に対して100ppm以下であり、硫酸イオンの濃度が該電解質に対して100ppm以下であることを特徴とする。
【0009】
本開示の電解液材料は、前記組成物を含むことを特徴とする。
【0010】
本開示の電解液は、前記電解液材料を用いて作製される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、スルホニルイミド塩を含む組成物において、高温でも優れた保存安定性を有し、電解液材料や電解液に使用可能な組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0013】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、電解質、溶媒及びアニオン成分を含む。この組成物は、例えば、電解液用として好適に使用できる。電解液用途において、組成物は、電解液の少なくとも一部を構成すればよい。例えば、組成物は、そのまま電解液材料として用いてもよく、電解液として用いてもよい。
【0014】
(電解質)
本実施形態の組成物は、電解質として、スルホニルイミド塩を含む。スルホニルイミド塩は、スルホニルイミドアニオンとカチオンとの塩である。
【0015】
スルホニルイミドアニオン(スルホニルイミドイオン)としては、例えば、下記式(1)で表されるアニオン等が挙げられる。
【0016】
【0017】
(式(1)中、X1及びX2は同一又は異なって(互いに独立して)、F(フッ素原子)又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)
式(1)において、炭素数1~6のフルオロアルキル基は、例えば、炭素数1~6のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたもの等が挙げられる。炭素数1~6のフルオロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。置換基X1及びX2中では、フッ素原子、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基が好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がより好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。
【0018】
カチオンとしては、金属カチオン(金属イオン)[アルカリ金属カチオン(リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン等)、アルカリ土類金属カチオン(ベリリウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン等)、アルミニウムカチオン等];アンモニウムカチオン(テトラエチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン等の第4級アンモニウムカチオン等);ホスホニウムカチオン(テトラメチルホスホニウムカチオン等の第4級ホスホニウムカチオン等);等が挙げられる。なお、カチオンの種類は、組成物の適用対象等に応じて適宜選択してもよい。カチオンの中では、リチウムイオン電池に適用する観点から、リチウムカチオン(リチウムイオン)が好ましい。
【0019】
スルホニルイミド塩の中では、リチウムイオン電池の電池特性を向上させる観点から、前記式(1)で表されるスルホニルイミドアニオンとアルカリ金属カチオンとの塩が好ましく、該式(1)で表されるスルホニルイミドアニオンとリチウムカチオンとの塩がより好ましい。
【0020】
スルホニルイミド塩の具体例としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩[例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド等];ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩等のビス(トリフルオロアルキルスルホニル)イミド塩[例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等];ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド等のビス(フルオロC1-6アルキルスルホニル)イミド塩;(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩等の(フルオロスルホニル)(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩;(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド塩;(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等の(フルオロスルホニル)(フルオロC1-6アルキルスルホニル)イミド塩〔好ましくは(フルオロスルホニル)(パーフルオロC1-6アルキルスルホニル)イミド塩〕;等が挙げられる。スルホニルイミド塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スルホニルイミド塩の中では、電池特性(サイクル特性、レート特性、低温特性等)等の観点から、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩が好ましく、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドがより好ましく、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドがさらに好ましい。
【0021】
スルホニルイミド塩は、市販品を使用してもよく、製造したものを使用してもよい。スルホニルイミド塩を製造する方法としては、例えば、粉体のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を後述する溶媒に溶解させてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液を製造する方法;ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物とを含む混合物を水中で反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩水溶液を調製した後、後述するカーボネート溶媒を用いた揮発操作によって水を除去してビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩溶液を製造する方法;ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物とを含む混合物を該溶媒中で反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩溶液を製造する方法等が挙げられる。
【0022】
ビス(フルオロスルホニル)イミドは公知の方法で合成が可能である。例えば、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドからフッ素化剤を用いてビス(フルオロスルホニル)イミドを合成する方法等が挙げられる。ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドにおけるハロゲンとしては、F以外に、Cl、Br、I、At等が挙げられる。
【0023】
以下に、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドからフッ素化剤を用いてビス(フルオロスルホニル)イミドを合成するフッ素化工程について説明する。フッ素化工程では、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドのフッ素化反応を行う。例えば、CA2527802号公報に記載の方法、Jean’ne M. Shreeveら、Inorg. Chem. 1998, 37 (24), 6295-6303に記載の方法等がある。出発原料となるビス(ハロゲン化スルホニル)イミドは、市販のものを使用してもよく、また、公知の方法で合成したものを用いてもよい。また、特表平8-511274号公報に記載の、尿素とフルオロスルホン酸を用いて、ビス(フルオロスルホニル)イミドを合成する方法等もある。
【0024】
アルカリ金属化合物としては、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O等の酸化物;LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH等の水酸化物;Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3等の炭酸塩、LiHCO3、NaHCO3、KHCO3、RbHCO3、CsHCO3等の炭酸水素塩;LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl等の塩化物;LiF、NaF、KF、RbF、CsF等のフッ化物;CH3OLi、EtOLi等のアルコキシド化合物;EtLi、BuLi及びt-BuLi(なお、Etはエチル基、Buはブチル基を示す)等のアルキルリチウム化合物;等が挙げられる。
【0025】
スルホニルイミド塩(好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)の含有量(2種類以上を併用する場合は含有量の合計)は、組成物を電解液材料として用いる場合に幅広い電解液組成に適用できる観点から、組成物全体に対して(組成物に含まれる成分の総量100質量%に対して)、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに一層好ましくは35質量%以上である。また、当該含有量は、高温でも組成物の保存安定性を向上する観点から、組成物全体に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0026】
また、本実施形態の組成物は、スルホニルイミド塩とは異なる他の電解質塩を含んでいてもよい。他の電解質塩としては、LiFSO3等のフルオロスルホン酸のアルカリ金属塩;LiCF3SO3等のトリフルオロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチドのアルカリ金属塩;LiPFa(CmF2m+1)6-a(0≦a≦6、1≦m≦4)等のフルオロリン酸塩;LiClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩;LiBFb(CnF2n+1)4-b(0≦b≦4、1≦n≦4)等のフルオロホウ酸塩;LiBOB等のオキサラトボレートのアルカリ金属塩;リチウムテトラシアノボレート等のシアノホウ酸塩;LiAsF6、LiI、LiSbF6等が挙げられる。他の電解質塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
(溶媒)
本実施形態の組成物は、溶媒を含み、溶媒組成物ともいえる。なお、溶媒組成物において、スルホニルイミド塩及び/又は後述するアニオン成分は、イオンの形態で存在(含有)していてもよく、溶解していてもよい。
【0028】
溶媒は、組成物(溶媒組成物)の用途等に応じて適宜選択でき、非プロトン性溶媒であればよく、スルホニルイミド塩が溶解可能な溶媒であればよい。
【0029】
溶媒としては、カーボネート溶媒、鎖状エーテル類、環状エーテル類、鎖状エステル類、環状エステル類、リン酸アルキルエステル類、脂肪族ニトリル類、芳香族ニトリル類、スルホン類、スルホラン類、ニトロメタン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン等が挙げられる。これら溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
カーボネート溶媒としては、鎖状カーボネート溶媒、飽和環状カーボネート、不飽和環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネート溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の炭素数1~4のジアルキルカーボネート;炭酸メチルフェニル等の炭素数1~4のアルキルアリールカーボネート、炭酸ジフェニル等のジアリールカーボネート等が挙げられる。飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、2,3-ジメチル炭酸エチレン、炭酸1,2-ブチレン等の炭素数2~6のアルキレンカーボネート;エリスリタンカーボネート等が挙げられる。不飽和環状カーボネートとしては、炭酸ビニレン、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート等のアルケニレンカーボネート;2-ビニル炭酸エチレン等が挙げられる。フッ素含有環状カーボネートとしては、フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0031】
鎖状エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のアルカンジオールジアルキルエーテル;トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ-テル等のポリアルカンジオールジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0032】
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,6-ジメチルテトラヒドロフラン等のテトラヒドロフラン類;テトラヒドロピラン等のテトラヒドロピラン類;1,4-ジオキサン等のジオキサン類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;クラウンエーテル等が挙げられる。
【0033】
鎖状エステル類としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類等が挙げられる。
【0034】
環状エステル類(又はラクトン類)としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のエステル(カルボン酸エステル)等が挙げられる。
【0035】
リン酸アルキルエステル類としては、リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチルグルタロニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等が挙げられる。
【0037】
芳香族ニトリル類としては、ベンゾニトリル、トルニトリル等が挙げられる。
【0038】
スルホン類としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン等が挙げられる。
【0039】
スルホラン類としては、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等のイオウ含有溶媒等が挙げられる。
【0040】
溶媒の中では、高温でも組成物の保存安定性を向上する観点から、カーボネート溶媒が好ましく、鎖状カーボネート溶媒がより好ましく、炭素数1~4のジアルキルカーボネートがより一層好ましく、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)がさらに好ましく、ジメチルカーボネート(DMC)がさらに一層好ましい。
【0041】
より具体的には、溶媒は、カーボネート溶媒を含むことが好ましく、鎖状カーボネート溶媒を含むことがより好ましく、アニオン成分の濃度が比較的低くても(例えば、電解質に対して50ppm以上1000ppm以下の濃度)、高温での組成物の保存安定性が向上する観点から、カーボネート溶媒が鎖状カーボネート溶媒である(換言すると、カーボネート溶媒が鎖状カーボネート溶媒のみからなる)ことがさらに好ましく、溶媒が鎖状カーボネート溶媒のみからなることが特に好ましい。
【0042】
溶媒全体に対するカーボネート溶媒(好ましくは鎖状カーボネート溶媒)の割合は、特に限定されず、10体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、95体積%以上、99体積%以上等でもよく、100体積%(実質的にカーボネート溶媒のみ(好ましくは実質的に鎖状カーボネート溶媒のみ))等でもよい。
【0043】
溶媒組成物を電解液材料として用いる場合、例えば、溶媒組成物にさらに溶媒を混合(溶媒組成物をさらに溶媒で希釈)することで電解液としてもよい。溶媒組成物に混合する溶媒としては、前記カーボネート溶媒や他の溶媒等が挙げられる。溶媒組成物に混合する溶媒は、溶媒組成物を構成する溶媒と同一の溶媒でもよく、異なる溶媒でもよい。
【0044】
(アニオン成分)
本実施形態の組成物は、アニオン成分として、酸解離定数pKa(複数電離する酸については第1段階の酸解離定数pKa1)(温度:室温(25℃)、溶媒:水)が0以上6.5以下の酸成分(以下「特定の酸成分」ともいう)を含む。これにより、当該組成物は、室温で優れた保存安定性を発現する。特に、当該組成物は、高温(例えば40℃以上)でも長期的な(2か月超過)保存安定性に優れる。なお、本明細書において、アニオン成分とは、溶液(溶媒組成物)中でイオン解離することでアニオンとなり得る特定の酸(例えば、後述するアミド硫酸)やその塩(例えば、後述するアミド硫酸リチウム)等の特定の酸成分における部分構造(上記例の場合、アミド硫酸イオン)をいう。
【0045】
特定の酸成分は、スルホニルイミド塩の分解により生じる硫酸(pKa1=-3)成分等よりもpKa(pKa1)が大きい。特定の酸成分としては、アミド硫酸(pKa=1)成分、酢酸(pKa=4.8)成分、炭酸(pKa1=6.1)成分、リン酸(pKa1=1.8)成分等が挙げられる。特定の酸成分は、組成物中に、それぞれ単独で含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、特定の酸成分は、(溶媒)組成物中において、その構造は特に限定されず、イオンの形態で存在(含有)していてもよく(溶解していなくてもよく)、溶解していてもよい。
【0046】
アミド硫酸成分(アミド硫酸化合物、アミド硫酸系化合物、アミド硫酸類)としては、アミド硫酸(スルファミン酸)、アミド硫酸誘導体、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0047】
アミド硫酸成分の構造は、特に限定されず、例えば、中性型(H2NSO2(OH)、HN=SO(OH)2等)でもよく、双性イオン型(H3N+SO3
-、H2N+=SO(OH)O-等)でもよく、これらをいずれも含む構造でもよい。
【0048】
アミド硫酸誘導体としては、N-置換アミド硫酸(N-置換スルファミン酸等)が含まれる。
【0049】
このようなアミド硫酸誘導体(及びその塩)は、下記式(2)で表される化合物(N-置換アミド硫酸及びその塩)でもよい。なお、下記式(2)は、中性型(R1R2NSO2(OM))として表しているが、双性イオン型でもよく、これらをいずれも含んでいてもよい。
【0050】
【0051】
(式(2)中、R1、R2は、H(水素原子)、ヒドロキシル基又は置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、炭素数2~16のアルカノイル基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R1とR2で環構造を形成していてもよい。R1、R2は、H以外の上記基のとき、同一でもよく、異なっていてもよい(R1、R2は、Hのとき、同一ではない(R1及びR2は同時にHではない))。Mは、H(水素原子)又は金属原子を表す。)
式(2)において、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基等が挙げられる。炭素数3~10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基等が挙げられる。炭素数6~16のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7~16のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。炭素数2~16のアルカノイル基としては、ベンゾイル基等挙げられる。
【0052】
これらは、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等)を含む基であってもよい。このような基としては、炭素原子の一部がヘテロ原子に置換した基、チオシクロアルキル基(チエパン、チオカン、チエタン、チアン、ジチアン等のチオシクロアルカンに対応する基)等が挙げられる。
【0053】
また、これらの基に置換する置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基等が挙げられるが特に限定されない。これらは単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい。
【0054】
金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属原子;アルミニウム等が挙げられる。
【0055】
具体的なアミド硫酸誘導体及びその塩[N-置換アミド硫酸及びその塩(又は前記式(2)で表される化合物)]としては、N-ヒドロキシアミド硫酸;N-モノ又はジアルキルアミド硫酸[N-メチルアミド硫酸、N-エチルアミド硫酸、N-(1-メチルプロピル)アミド硫酸、N-(2-メチルブチル)アミド硫酸、N-(2,2-ジメチルプロピル)アミド硫酸、N,N-ジエチルアミド硫酸、N-(3-ヒドロキシプロピル)アミド硫酸、N-メチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アミド硫酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミド硫酸、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アミド硫酸、N-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)アミド硫酸、N-メチル-N-(2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル)アミド硫酸、N-(2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル)アミド硫酸、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル)アミド硫酸等];N-モノ又はジシクロアルキルアミド硫酸(N-シクロヘキシルアミド硫酸、N,N-ジシクロヘキシルアミド硫酸等);N-モノ又はジアリールアミド硫酸[N-フェニルアミド硫酸、N-ナフチルアミド硫酸、N-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)アミド硫酸、N-(4-ブロモフェニル)アミド硫酸等];N-モノ又はジアラルキルアミド硫酸[N-ベンジルアミド硫酸、N-(β-メチルフェネチル)アミド硫酸等];N-アルキル-N-アリールアミド硫酸(N-エチル-N-フェニルアミド硫酸等);N-モノ又はジアシルアミド硫酸[N-ベンゾイルアミド硫酸、N-(3-クロロアラニル)アミド硫酸、N-(3-クロロ-3-メチルアラニル)アミド硫酸等];N-チオシクロアルキルアミド硫酸[N-(チエパン-4-イル)アミド硫酸、N-チオカン-4-イルアミド硫酸、チオカン-5-イルアミド硫酸、N-チエタン-3-イルアミド硫酸、N-1,3-ジチアン-5-イルアミド硫酸、N-(チアン-3-イル)アミド硫酸、N-(チオラン-3-イル)アミド硫酸等];及びこれらの塩等が挙げられる。アミド硫酸誘導体及びその塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
アミド硫酸成分の塩としては、特に限定されず、例えば、アミド硫酸やアミド硫酸誘導体を塩基及び酸のいずれとする塩でもよく、通常、アミド硫酸やアミド硫酸誘導体を酸とする塩(アミド硫酸やアミド硫酸誘導体と塩基との塩)でもよい。
【0057】
具体的な塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の金属塩等が挙げられる。これらの中では、アルカリ金属塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。また、塩は、組み合わせる電解質のカチオンに対応する塩でもよい。例えば、電解質としてリチウム塩を使用する場合、リチウム塩(アミド硫酸リチウム等)を使用してもよい。
【0058】
アミド硫酸成分は、代表的には、アミド硫酸、アミド硫酸誘導体及びこれらのアルカリ金属塩から選択された少なくとも1種、特に、アミド硫酸及びアミド硫酸アルカリ金属塩(例えば、アミド硫酸リチウム等)から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0059】
酢酸成分として代表されるカルボン酸及びその塩は、下記式(3)で表される化合物でもよい。
【0060】
[化3]
R3COOM (3)
(式(3)中、R3はH(水素原子)、置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、炭素数2~16のアルカノイル基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。Mは、前記と同じ。)
式(3)において、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基等が挙げられる。炭素数3~10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基等が挙げられる。炭素数6~16のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7~16のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。炭素数2~16のアルカノイル基としては、ベンゾイル基等挙げられる。
【0061】
これらは、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等)を含む基であってもよい。このような基としては、炭素原子の一部がヘテロ原子に置換した基、チオシクロアルキル基(チエパン、チオカン、チエタン、チアン、ジチアン等のチオシクロアルカンに対応する基)等が挙げられる。
【0062】
また、これらの基に置換する置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基等が挙げられるが特に限定されない。これらは単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい。
【0063】
具体的なカルボン酸及びその塩(又は前記式(3)で表される化合物)としては、飽和脂肪酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等)、不飽和脂肪酸(リノレン酸、リノール酸、オレイン酸等)、ヒドロキシ酸(乳酸、クエン酸、サリチル酸等)、ジカルボン酸(シュウ酸、酒石酸、フタル酸、イタコン酸、マレイン酸等)、アミノ酸(グリシン、アラニン等)、及びこれらの塩等が挙げられる。カルボン酸及びその塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
具体的な塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩等が挙げられる。これらの中では、アルカリ金属塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。また、塩は、組み合わせる電解質のカチオンに対応する塩でもよい。例えば、電解質としてリチウム塩を使用する場合、リチウム塩(酢酸リチウム等)を使用してもよい。
【0065】
炭酸成分としては特に限定されず、炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられる。炭酸成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
具体的な塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等)、アルカリ土類金属塩(ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等)等が挙げられる。これらの中では、アルカリ金属塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。また、塩は、組み合わせる電解質のカチオンに対応する塩でもよい。例えば、電解質としてリチウム塩を使用する場合、リチウム塩(炭酸リチウム等)を使用してもよい。
【0067】
リン酸成分としては特に限定されず、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩等が挙げられる。リン酸成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
具体的な塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等)、アルカリ土類金属塩(ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等)等が挙げられる。これらの中では、アルカリ金属塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。また、塩は、組み合わせる電解質のカチオンに対応する塩でもよい。例えば、電解質としてリチウム塩を使用する場合、リチウム塩(リン酸リチウム等)を使用してもよい。
【0069】
本実施形態の組成物は、特定の酸成分を電解質(スルホニルイミド塩)に対して50ppm以上10000ppm以下の濃度で含む。なお、本明細書において、「ppm」は「質量ppm」を示す。
【0070】
より具体的には、特定の酸成分の濃度(割合)は、高温でも組成物の保存安定性を向上する観点から、50ppm以上、好ましくは60ppm以上であり、また10000ppm以下、好ましくは9000ppm以下、より好ましくは8000ppm以下、より一層好ましくは7000ppm以下、さらに好ましくは6000ppm以下である。なお、溶媒として含むカーボネート溶媒が鎖状カーボネート溶媒のみからなる場合又は溶媒自体が鎖状カーボネート溶媒のみからなる場合、特定の酸成分の濃度が比較的低くても高温での組成物の保存安定性が向上する。この場合、特定の酸成分の濃度における上限値は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0071】
なお、特定の酸成分が塩(酸やその誘導体の塩)である場合、上記割合は塩でない形態(又はフリー体、例えば、酸、酸誘導体)換算での割合でもよい。また、上述の酸やその誘導体の塩は、市販品を使用してもよく、製造したものを使用してもよい。
【0072】
このように、本実施形態の組成物は、スルホニルイミド塩(電解質)及び溶媒を含み、さらに特定の酸成分(アニオン成分)を特定の割合で含む溶媒組成物(溶液)とすることで、室温(例えば25℃)等の低温での保存安定性に優れるのみならず、スルホニルイミド塩の分解が促進される高温(例えば40℃以上)でも優れた保存安定性が発現するものと考えられる。その理由としては、例えば、特定の酸成分を塩の形態で含む場合、スルホニルイミド塩の分解に起因して発生した硫酸成分等の強酸成分と、特定の酸成分の塩との間で、塩交換が行われるものと考えられる。その結果、強酸成分は塩となって析出する(不溶物となる)。一方、塩交換により発生した特定の酸成分は、強酸成分と比較して、pKa(pKa1)が大きい(即ち酸性度が弱い)ため、特定の酸成分に起因するスルホニルイミド塩の分解が抑制されるか、分解速度が遅くなる。より具体的には、スルホニルイミド塩の分解を加速させる強酸成分が塩を形成することで、スルホニルイミド塩の分解が加速することが抑制される。したがって、スルホニルイミド塩の分解により発生した硫酸成分等の強酸成分が、特定の酸成分の塩に捕捉(トラップ)されるため、高温でも溶媒組成物の保存安定性が向上すると考えられる。
【0073】
なお、特定の酸成分は、上述した特定の酸やその塩を溶媒組成物に添加した成分(添加物)でもよく、スルホニルイミド塩の合成中にスルホニルイミド塩の分解から発生した成分でもよい。この特定の酸成分は、上述のとおり、溶媒組成物中において、イオンの形態で存在(含有)していてもよく、溶解していてもよい。
【0074】
以上のように構成される本実施形態の組成物(溶媒組成物)では、スルホニルイミド塩の分解が抑制される結果、フッ化物イオンの濃度が電解質に対して100ppm以下であり、硫酸イオンの濃度が電解質に対して100ppm以下である。溶媒組成物におけるフッ化物イオン及び硫酸イオンの濃度は、好ましくは80ppm以下、60ppm以下、40ppm以下等でもよい。なお、溶媒組成物は、高温でも保存安定性を向上する観点から、フッ化物イオン及び/又は硫酸イオンを実質的に含んでいなくてもよい(0ppm)。一方、フッ化物イオン及び/又は硫酸イオンの濃度が電解質に対して100ppmを超過する場合、溶媒組成物のpHが低下し、その結果、スルホニルイミド塩の分解が加速されるおそれがある。
【0075】
また、本実施形態の組成物(溶媒組成物)は、水を0.1ppm以上1000ppm以下の濃度で含んでいてもよい。溶媒組成物(水を含む溶媒組成物)における水の割合は、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.3ppm以上等でよく、0.5ppm以上、0.7ppm以上、0.8ppm以上、1ppm以上、1.5ppm以上、2ppm以上、3ppm以上、5ppm以上、7ppm以上、10ppm以上等でもよい。溶媒組成物における水の割合の上限値は、特に限定されないが、例えば、3000ppm、1000ppm、900ppm、800ppm、700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、100ppm、50ppm等でもよい。
【0076】
なお、本実施形態の組成物(溶媒組成物)は、必要に応じて、実害のない範囲で他の成分(電解質、溶媒、アニオン成分以外の成分)を含んでいてもよい。他の成分としては、溶媒組成物の用途等に応じて適宜選択でき、例えば、溶媒組成物を電解液材料や電解液として用いる場合、電池特性の改善又は向上を目的とした無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物等の添加剤が挙げられる。他の成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
溶媒組成物が他の成分を含む場合、他の成分の割合は、その種類や目的等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下等である。
【0078】
本実施形態の組成物(溶媒組成物)のpHは、電解質の種類等に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、5以上が好ましい。より具体的には、好ましくは5~12、より好ましくは5~11、さらに好ましくは5~9等である。溶媒組成物のpHが前記範囲であれば、溶媒組成物の構成成分(電解質)の分解や溶媒組成物の保存容器の腐食(さらにはそれに伴う不純物の発生)等を効率よく抑制できる。なお、前記pHは、溶媒組成物の調製時のみならず、所定時間経過後におけるpHでもよい。鎖状カーボネート溶媒を選択することで、経時的なpHの低下を効率よく抑制でき、その結果、長期にわたってpHを前記範囲に維持できる。
【0079】
<電解液材料>
本実施形態に係る電解液材料は、上述した本実施形態の組成物を含む。つまり、この電解液材料は、前記した電解質、溶媒及びアニオン成分を含むため、溶液(液体)である。液体の電解液材料は、組成物のみを含む(組成物のみからなる)ものでもよく、必要に応じて組成物に前記した電解質又は溶媒、実害のない範囲で前記した他の成分などをさらに含むものでもよい。なお、電解液材料は、組成物に適用される全ての構成を好適に適用できる。
【0080】
<電解液>
本実施形態に係る電解液は、上述した本実施形態の電解液材料を用いて作製される(用いられてなる)。この電解液は、電解液材料をそのまま用いてもよく、電解液材料に前記した溶媒を混合して希釈してもよい。なお、電解液は、上述した本実施形態の組成物に適用される全ての構成を好適に適用できる。
【実施例0081】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例を本開示の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本開示の範囲から除外するものではない。
【0082】
《合成例1》
炭酸リチウム214gと酢酸ブチル600gとを混合した後、氷浴で冷却したスラリーに対し、ビス(フルオロスルホニル)イミド(株式会社日本触媒製)1000gを45分間かけて滴下した。得られた白濁液からNo.5Cの桐山ろ紙で不溶物を取り除くことにより、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下「LiFSI」という)の酢酸ブチル溶液を得た。
【0083】
前記で得られた溶液に水500gを加え、室温で10分間撹拌した。攪拌後に酢酸ブチル層(有機層)と分かれた水層を除去することにより、有機層を得た。この有機層に15質量%の水酸化リチウム(LiOH)水溶液100gを加え、室温で10分間攪拌した。その後、反応溶液からさらに水層を除去することにより、LiFSIの酢酸ブチル溶液を得た。
【0084】
ロータリーエバポレーター(「REN-1000」、IWAKI社製)を使用して、減圧下にて、抽出工程で得られたLiFSIの酢酸ブチル溶液から反応溶媒を一部留去した。その後、生じた不溶分を濾別することにより、LiFSIの酢酸ブチル溶液228gを得た(LiFSIの濃度:43質量%)。
【0085】
続いて、滴下ロート、冷却管及び溜出受器を備えた500mLセパラブルフラスコに、前記で得られたLiFSIの酢酸ブチル溶液228gを加えた。真空ポンプを使用して、セパラブルフラスコ内を667Paまで減圧し、55℃に加温したオイルバスにセパラブルフラスコを浸漬させ、セパラブルフラスコ内の酢酸ブチル溶液を攪拌しながらゆっくりと加熱することで、溶媒である酢酸ブチルを溜出させた。溜出が始まってから10分間の間に溜出受器に回収した液の総量と同体積量の1,2,4-トリメチルベンゼンを貧溶媒としてセパラブルフラスコに添加した。その後、10分毎に溜出液と同体積量の1,2,4-トリメチルベンゼンをセパラブルフラスコ内に添加し続けることで、反応溶液を濃縮しつつ、系内の酢酸ブチル(反応溶媒)と1,2,4-トリメチルベンゼンとの配合比率を変化させて、LiFSIの白色結晶を析出させた。セパラブルフラスコ内の上澄み液が透明になるまで上記操作を繰り返した後、セパラブルフラスコ内を室温まで冷却し、得られたLiFSIの白色結晶の懸濁液を濾過し、LiFSIの白色結晶を濾取した。なお、LiFSIの酢酸ブチル溶液の加熱開始から濃縮工程終了するまでの時間は6時間であり、白色結晶の析出開始までに要した時間は2時間であった。
【0086】
最後に、得られたLiFSIの白色結晶を少量のヘキサンで洗浄した後、平底バットに移し、55℃、667Paにて、12時間減圧乾燥を行うことにより、LiFSIの白色結晶を得た(収量:92.3g)。
【0087】
《合成例2》
炭酸リチウム32gと水55gを混合し氷浴で冷却したスラリーに対し、ビス(フルオロスルホニル)イミド(株式会社日本触媒製)139gを45分間かけて滴下し、LiFSIを68.6質量%含む水溶液を209g得た。
【0088】
滴下ロート及び冷却管と溜出受器を備えた500mLセパラブルフラスコにリチウム化工程で得られた反応溶液209gにジメチルカーボネート(以下DMC)を78g加えて50質量%含水LiFSIのDMC溶液を調整した。真空ポンプを使用して、上記セパラブルフラスコ内を5kPaに減圧し、オイルバスで加熱して反応溶媒である水をDMCと共に溜出させた。溜出が始まってから10分間の間に溜出受器に回収した液の総重量と同質量のDMCをセパラブルフラスコに添加した。その後、10分毎に溜出液と同質量のDMCをセパラブルフラスコ内に添加し続けることで、系内の水(反応溶媒)とDMCとの配合比率を変化させて、溶液の脱水を行った。LiFSIのDMC溶液の水分量が53ppmとなるまで上記操作を繰り返したところ、内温は45~60℃で推移し、追加したDMCの総量は3269gであった。得られた懸濁液を濾過し、無色透明な50質量%LiFSIのDMC溶液を得た。
【0089】
《実施例1》
合成例1で得られたLiFSI(電解質)に対して、添加物(特定の酸成分の塩)として5500ppmのアミド硫酸リチウムを添加し、溶媒としてエチルメチルカーボネート(以下「EMC」という)に溶解させることにより、LiFSIの濃度が40質量%である溶液(溶媒組成物)を製造した。
【0090】
《実施例2》
アミド硫酸リチウムの添加量を1300ppmに変更したこと以外は実施例1と同様にして溶液を製造した。
【0091】
《実施例3》
アミド硫酸リチウムの添加量を200ppmとし、溶媒としてDMCに変更したこと以外は実施例1と同様にして溶液を製造した。
【0092】
《実施例4》
アミド硫酸リチウムの添加量を70ppmとし、溶媒としてDMCに変更したこと以外は実施例1と同様にして溶液を製造した。
【0093】
《比較例1》
合成例1によって得られたLiFSIをEMCに溶解させることにより、LiFSIの濃度が40質量%である溶液を製造した。
【0094】
《比較例2》
フッ化物イオン152ppmと硫酸イオン103ppmを含むLiFSIに対して、添加物(特定の酸成分の塩)として100ppmのアミド硫酸リチウムを添加し、DMCに溶解させることにより、LiFSIの濃度が40質量%である溶液を製造した。
【0095】
《参考例1》
合成例1によって得られたLiFSIをEMCに溶解させることにより、LiFSIの濃度が40質量%である溶液を製造した。
【0096】
《組成物の評価》
実施例1~4、比較例1及び2、並びに参考例1で得られた各組成物の製造時(製造直後、保管前)における溶媒の種類、LiFSI濃度、アミド硫酸イオン濃度、フッ化物イオン濃度、硫酸イオン濃度、水分量、pH、及び19F-NMRスペクトルにおけるLiFSIの分解物に由来するピークの有無(表1の「NMRピーク」の欄)を表1に示す。また、表1に示す保管条件にて、PFA(フッ素樹脂)製の密閉容器中で保管した後の各組成物のpH、及び19F-NMRスペクトルにおけるLiFSIの分解物に由来するピークの有無を表1に示す。
【0097】
[19F-NMR測定]
なお、反応溶液や各組成物のLiFSI濃度は、19F-NMRにより測定した。19F-NMRの測定は、Varian社製の「Unity Plus-400」を使用して行った(内部標準物質:トリフルオロトルエン、積算回数:64回)。また、保管前後の各組成物の19F-NMRを測定し、LiFSI(化学シフト55.4ppm)の分解物に由来する2つのピーク〔(1)60.0~61.0ppmの間、(2)39.5~40.5ppmの間〕のいずれか一つが検出されるか否かを判定した。LiFSIの分解物に由来するピークが検出されない組成物は「〇」(ピーク無し)とし、ピークが検出された組成物は「×」(ピーク有り)とした。
【0098】
[pH測定]
各組成物をメタノール(試薬特級;富士フイルム和光純薬株式会社製):超純水(18.2Ω・cm超)=1:8の混合液で10倍に希釈して測定溶液とし、自動滴定装置 COM-1700A(平沼産業株式会社製)を用いて、各組成物のpHを測定した。
【0099】
[水分測定]
カールフィッシャー水分測定装置 AQ-2000(平沼産業株式会社製)を用い、発生液としてアクアライトRS-A(平沼産業株式会社製)、対極液としてアクアライトCN(平沼産業株式会社製)を用いて、各組成物の水分量を測定した。
【0100】
[イオンクロマトグラフィー測定]
各組成物を超純水(18.2Ω・cm超)で100倍に希釈して測定溶液とし、イオンクロマトグラフィーシステム ICS-3000(日本ダイオネクス株式会社製)を用いて、各組成物中に含まれるアミド硫酸イオン、フッ化物イオン及び硫酸イオンの濃度を測定した。測定条件は以下のとおりである。
(イオンクロマトグラフィー測定の測定条件)
分離モード:イオン交換
溶離液:7~18mM KOH水溶液
検出器:電気伝導度検出器
カラム:アニオン分析用カラム Ion PAC AS-17C(日本ダイオネクス株式会社製
【0101】
【0102】
表1の結果から、特定の酸成分の塩としてアミド硫酸リチウムを所定量で添加した実施例1~4の組成物では、いずれも、40℃で4か月以上保管した後の19F-NMRスペクトルでもLiFSIの分解物に由来するピークが見られなかった。一方、比較例1の組成物では、40℃で2か月保管した後の19F-NMRスペクトルでLiFSIの分解物に由来するピークが見られた。なお、比較例1と同様に調製され、各成分の濃度が比較例1と同じ参考例1の組成物では、25℃で11か月以上保管した後の19F-NMRスペクトルでもLiFSIの分解物に由来するピークが見られなかった。
【0103】
したがって、実施例1~4の組成物は、アニオン成分として特定の酸成分(アミド硫酸リチウム)がイオン解離した部分構造(アミド硫酸イオン)を所定濃度(電解質に対して50ppm以上10000ppm以下の濃度)で含むため、アミド硫酸イオンを所定濃度で含まない比較例1の組成物と比較して、LiFSIの分解が抑制されており、高温(例えば40℃)での保存安定性が良好であることが分かった。一方、比較例1の組成物は、室温(例えば25℃)での保存安定性は良好であるものの(参考例1)、高温条件下では保管中にLiFSIの分解反応等が進んでおり、高温での保存安定性に劣ることが分かった。このように、実施例1~4の組成物は、比較例1(参考例1)の組成物と比較して、室温だけではなく、スルホニルイミド塩の分解が促進される高温でも長期保管できる、即ち高温でも保存安定性が良好であることが分かった。
【0104】
また、比較例2の組成物では、アミド硫酸イオンを100ppm含むにもかかわらず、40℃で1か月保管した後の19F-NMRスペクトルでLiFSIの分解物に由来するピークが見られた。したがって、実施例1~4の組成物は、製造時のフッ化物イオン及び/又は硫酸イオンを所定濃度(電解質に対して100ppm以下の濃度)で含むため、製造時のフッ化物イオン及び/又は硫酸イオンを高濃度(電解質に対して100ppmを超過する濃度)で含む比較例2の組成物と比較して、LiFSIの分解が抑制されており、高温でも保存安定性が良好であることが分かった。一方、比較例2の組成物は、保管中にLiFSIの分解反応等が進んでおり、高温での保存安定性に劣ることが分かった。
【0105】
《実施例5》
合成例1で得られたLiFSIに対して、添加物(特定の酸成分の塩)として1500ppmの酢酸リチウムを添加し、EMCに溶解させることにより、LiFSIの濃度が40質量%である溶液(溶媒組成物)を製造した。
【0106】
《実施例6》
添加物として、酢酸リチウムを炭酸リチウムに変更したこと以外は実施例5と同様にして溶液を製造した。
【0107】
《実施例7》
添加物として、酢酸リチウムをリン酸リチウムに変更したこと以外は実施例5と同様に行って、溶液を製造した。
【0108】
《実施例8》
添加物として、酢酸リチウムをアミド硫酸に変更したこと以外は実施例5と同様に行って、溶液を製造した。
【0109】
実施例5~8で得られた各組成物の製造時(製造直後、保管前)における溶媒の種類、LiFSI濃度、添加物の種類及びその添加量、フッ化物イオン濃度、硫酸イオン濃度、水分量、pH及び19F-NMRスペクトルにおけるLiFSIの分解物に由来するピークの有無(表2の「NMRピーク」の欄)を表1に示す。また、PFA製の密閉容器中で表2に示す保管条件にて保管した後の各組成物のpH、及び19F-NMRスペクトルにおけるLiFSIの分解物に由来する19F-NMRのピークの有無を表2に示す。なお、各測定方法及びその条件、評価方法は前記と同じである。また、比較例1を表2に併記する。
【0110】
【0111】
表2の結果から、酢酸リチウム、炭酸リチウム、リン酸リチウム等のリチウム塩、又はアミド硫酸を所定量で添加した実施例5~8の組成物では、いずれも、40℃で4か月以上保管した後の19F-NMRスペクトルでもLiFSIの分解物に由来するピークが見られなかった。したがって、実施例5~8の組成物は、アニオン成分として酢酸成分、炭酸成分、リン酸成分、アミド硫酸成分等の特定の酸成分を所定濃度で含むため、特定の酸成分を含まない比較例1の溶液と比較して、LiFSIの分解が抑制されており、高温でも保存安定性が良好であることが分かった。