(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153400
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】無線通信方法並びにコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/06 20090101AFI20231005BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20231005BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20231005BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20231005BHJP
【FI】
H04W4/06
H04W16/28 130
H04W28/04 110
H04W84/12
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137560
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2022025159の分割
【原出願日】2015-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2014063467
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】弁理士法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板垣 竹識
(72)【発明者】
【氏名】山浦 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅典
(57)【要約】
【課題】無線伝送におけるマルチキャスト伝送において、無線リソースの効率的利用を確保しながら、受領確認応答を利用して信頼性を向上する。
【解決手段】マルチキャスト・グループに含まれる複数の無線通信装置は、マルチキャスト・データ・フレームを受信すると、送信元からの受領確認要求に応じて、空間多重を利用してマルチキャストの受領確認応答を同時に送信する。一方、送信元の無線通信装置は、送信先の各無線通信装置とのチャネル情報に基づく信号処理により、同時受信した受領確認応答を元の個別の受領確認応答に分離、復元する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイント装置が配下にある複数のステーション装置と無線通信する無線通信方法であって、
受領確認を要請するステーション装置から送信される受領確認応答フレームのPHY Preamble部に含むトレーニング信号が互いに直交するように符号化する符号化方法を含む送信方法と、受領確認を要請するステーション装置のAssociation ID(AID)を含めたMulti-User Block Ack Request(MU-BAR)フレームをマルチキャスト送信するステップと、
前記符号化方法に則って符号化が施されたトレーニング信号をPHY Preamble部に含む複数の受領確認応答フレームを各ステーション装置から受信するステップと、
前記トレーニング信号から取得した各ステーション装置との間の伝搬路情報に基づいて複数のステーション装置から同時受信した複数の受領確認応答フレームのPHY Preamble部より後の信号を分離するステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項2】
マルチキャスト・データ・フレームとMU-BARフレームをアグリゲーションして送信する、
請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
マルチキャスト送信したマルチキャスト・グループに参加する複数のステーション装置の中から選択的に受領確認を要請する、
請求項1又は2のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記送信方法の指定は、前記複数の受領確認応答フレームの変調方式と誤り訂正符号化の組み合わせの情報を含む、
請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記送信方法の指定は、前記複数の受領確認応答フレームの送信電力に関する情報を含む、
請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項6】
無線通信機能を備えたコンピュータを配下にある複数のステーション装置と無線通信するアクセスポイント装置として動作させるようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、
受領確認を要請するステーション装置から送信される受領確認応答フレームのPHY Preamble部に含むトレーニング信号が互いに直交するように符号化する符号化方法を含む送信方法と、受領確認を要請するステーション装置のAssociation ID(AID)を含めたMulti-User Block Ack Request(MU-BAR)フレームをマルチキャスト送信するステップと、
前記符号化方法に則って符号化が施されたトレーニング信号をPHY Preamble部に含む複数の受領確認応答フレームを各ステーション装置から受信するステップと、
前記トレーニング信号から取得した各ステーション装置との間の伝搬路情報に基づいて複数のステーション装置から同時受信した複数の受領確認応答フレームのPHY Preamble部より後の信号を分離するステップと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項7】
アクセスポイント装置の配下のステーション装置として無線通信する無線通信方法であって、
前記アクセスポイント装置からマルチキャスト送信されたMulti-User Block Ack Request(MU-BAR)フレームを受信するステップと、
前記MU-BARフレーム内で、自局のAssociation ID(AID)が指定された場合に、前記MU-BARフレームを受信してから所定の時間経過後に、前記MU-BARフレームで指定された、自局と他のステーション装置から送信される受信確認応答フレームのトレーニング信号が互いに直交するように符号化する符号化方法を含む送信方法に則って符号化を施したトレーニング信号をPHY Preamble部に含む受領確認応答フレームを送信するステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項8】
前記MU-BARフレームは、マルチキャスト・データ・フレームとアグリゲーションされている、
請求項7に記載の無線通信方法。
【請求項9】
前記送信方法の指定は、前記受領確認応答フレームの変調方式と誤り訂正符号化の組み合わせの情報を含む、
請求項7又は8のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記送信方法の指定は、前記受領確認応答フレームの送信電力に関する情報を含む、
請求項7乃至9のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項11】
自局と前記アクセスポイント装置間の伝搬路の減衰量の推定結果に基づいて、前記アクセスポイント装置における受信電力が所定の電力となるように送信電力を設定して、前記受領確認応答を送信する、
請求項7乃至10のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項12】
無線通信機能を備えたコンピュータをアクセスポイント装置の配下で無線通信するステーション装置として動作させるようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、
前記アクセスポイント装置からマルチキャスト送信されたMulti-User Block Ack Request(MU-BAR)フレームを受信するステップと、
前記MU-BARフレーム内で、自局のAssociation ID(AID)が指定された場合に、前記MU-BARフレームを受信してから所定の時間経過後に、前記MU-BARフレームで指定された、自局と他のステーション装置から送信される受信確認応答フレームのトレーニング信号が互いに直交するように符号化する符号化方法を含む送信方法に則って符号化を施したトレーニング信号をPHY Preamble部に含む受領確認応答フレームを送信するステップと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、マルチキャスト伝送を行なう無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の無線子局に対して、同一の内容のデータを送信したい場合、使用帯域幅が送信先の数に依存しないマルチキャストの方が、リソース利用効率の面でユニキャストよりも有効である。
【0003】
例えば、IEEE802.11WLAN標準規格「IEEE Standard 802.11-2012」では、マルチキャスト配送の基本プロトコルが定義されている。しかしながら、ここで定義されるプロトコルでは、複数の機器からの受領確認を行なうことが出来ず、受領確認を用いた再送制御による通信品質の改善ができない。
【0004】
また、追加規格「IEEE802.11aa-2012」では、受領確認付きのマルチキャスト拡張が定義されており、受領確認を用いた再送制御による通信品質の改善効果が導入されている。しかしながら、この拡張方式では、マルチキャストの受領確認をグループ・メンバーの一台一台に対して個別に行なう。このため、マルチキャスト伝送する端末台数の増加に伴い通信リソース使用のオーバーヘッドが増加し、マルチキャストの長所であるリソース利用効率を制限してしまうという問題がある。
【0005】
また、複数の装置に予約メッセージを同時にマルチキャストで同時送信し、この予約メッセージに応答して、複数の装置がチャネル上で同時に確認メッセージを送信することで、確認メッセージを多重する、マルチ・ユーザーMIMO通信のための保護メカニズムについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。しかしながら、この保護メカニズムにおいて空間多重が成立しているのは、この確認メッセージの内容が同一であることを利用しているからである。すなわち、マルチキャスト・データの受領確認のような、端末毎に内容の異なる可能性のあるフレームには、この保護メカニズムを適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書で開示する技術の目的は、無線伝送におけるマルチキャスト伝送において、無線リソースの効率的利用を確保しながら、受領確認応答を利用して信頼性を向上することができる、優れた無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の技術は、
配下にある複数の子局と無線通信する通信部と、
前記通信部を介した各子局とのデータ伝送を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記通信部に対し、親局として複数の子局へマルチキャスト送信と、マルチキャスト送信に対する子局への受領確認の要請を行なわせ、
前記通信部は、複数の子局から同時送信された受領確認応答の受信処理を行なう、
無線通信装置である。
【0009】
本願の請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の無線通信装置の前記制御部は、マルチキャスト送信したマルチキャスト・グループに参加する子局の中から選択的に受領確認を要請するように構成されている。
【0010】
本願の請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の無線通信装置の前記制御部は、前記通信部を介して、受領確認応答フレームを送信する子局と、受領確認応答フレームの送信方法のいずれかを指定し、前記通信部は、複数の子局と自局間の伝搬路情報に基づいて複数の子局から同時受信した複数の受領確認応答フレームを分離するように構成されている。
【0011】
本願の請求項4に記載の技術によれば、前記送信方法の指定は、複数の子局が同時送信しても演算によりそれぞれを分離できるフォーマットとするための受領確認応答フレームのトレーニング信号の符号化方法を含んでいる。そして、請求項3に記載の無線通信装置の前記通信部は、前記符号化方法に則って各子局から送信されたトレーニング信号から、各子局との間の伝搬路情報を取得するように構成されている。
【0012】
本願の請求項5に記載の技術によれば、請求項3に記載の無線通信装置において、前記送信方法の指定は、受領確認応答フレームの変調方式と誤り訂正符号化の組み合わせの情報を含んでいる。
【0013】
本願の請求項6に記載の技術によれば、請求項3に記載の無線通信装置において、前記送信方法の指定は、受領確認応答フレームの送信電力の情報を含んでいる。
【0014】
本願の請求項7に記載の技術によれば、請求項3に記載の無線通信装置の前記制御部は、前記制御部は、受領確認を要請する子局をサブグループ化した場合に、サブグループのメンバーであることを通知するサブグループ識別情報を含んだ管理フレーム又はビーコン・フレームで、前記送信方法の指定を通知するように構成されている。
【0015】
本願の請求項8に記載の技術によれば、請求項3に記載の無線通信装置の前記制御部は、前記制御部は、受領確認を要請するフレームで前記送信方法の指定を通知するように構成されている。
【0016】
また、本願の請求項9に記載の技術は、
親局と無線通信する通信部と、
前記通信部を介した親局とのデータ伝送を制御する制御部と、
を具備し、
前記通信部は、自局を含むマルチキャスト・グループにマルチキャスト送信されたフレームを受信し、
前記制御部は、所定の条件を満たしたときに、マルチキャスト送信されたフレームを受信してから所定の時間経過後に、前記通信部から受領確認応答を送信させる、
無線通信装置である。
【0017】
本願の請求項10に記載の技術によれば、請求項9に記載の無線通信装置の前記通信部は、親局から指定された受領確認応答フレームの送信方法を用いて、受領確認応答フレームを送信するように構成されている。
【0018】
本願の請求項11に記載の技術によれば、前記送信方法の指定は、複数の子局が同時送信しても演算によりそれぞれを分離できるフォーマットとするための受領確認応答フレームのトレーニング信号の符号化方法を含んでいる。そして、請求項10に記載の無線通信装置の前記通信部は、前記符号化方法に則ってトレーニング信号に符号化を施して送信するように構成されている。
【0019】
本願の請求項12に記載の技術によれば、前記送信方法の指定は、受領確認応答フレームの変調方式と誤り訂正符号化の組み合わせの情報を含んでいる。そして、請求項10に記載の無線通信装置の前記通信部は、前記送信方法の指定に従って、受領確認応答フレームに使用する変調方式並びに誤り訂正符号化の組み合わせを決定するように構成されている。
【0020】
本願の請求項13に記載の技術によれば、前記送信方法の指定は、受領確認応答フレームの送信電力の情報を含んでいる。そして、請求項10に記載の無線通信装置の前記通信部は、前記送信方法の指定に従って、受領確認応答フレームに使用する送信電力を決定するように構成されている。
【0021】
本願の請求項14に記載の技術によれば、請求項9に記載の無線通信装置の前記制御部は、親局から受信したマルチキャスト・データ・フレーム又は受領確認を要請するフレーム内で、自分の個体識別子又は接続識別子が指定された場合に、前記通信部に受領確認応答フレームを送信させるように構成されている。
【0022】
本願の請求項15に記載の技術によれば、請求項9に記載の無線通信装置の前記制御部は、親局から受信したマルチキャスト・データ・フレーム又は受領確認を要請するフレーム内で、あらかじめ親局から通知されているサブグループ識別情報のうち、対象に自局が含まれるものが指定された場合に、前記通信部に受領確認応答フレームを送信させるように構成されている。
【0023】
本願の請求項16に記載の技術によれば、請求項9に記載の無線通信装置の前記制御部は、受信したマルチキャスト・データ・フレームのシーケンス番号と、あらかじめ親局から通知されているサブグループ識別情報の関係性に基づいて、前記通信部に受領確認応答フレームを送信させるか否かを決定するように構成されている。
【0024】
本願の請求項17に記載の技術によれば、請求項9に記載の無線通信装置の前記通信部は、自局と親局間の伝搬路の減衰量の推定結果に基づいて、親局における受信電力が所定の電力となるように送信電力を設定して、受領確認応答を送信するように構成されている。
【0025】
本願の請求項18に記載の技術によれば、請求項1に記載の無線通信装置は、IEEE802.11規格のアクセスポイント、又は、Wi-Fi Direct規格のGO(Group Owner)として動作するように構成されている。
【0026】
本願の請求項19に記載の技術によれば、請求項9に記載の無線通信装置は、IEEE802.11規格のステーション、又は、Wi-Fi Direct規格のClientとして動作するように構成されている。
【発明の効果】
【0027】
本明細書で開示する技術によれば、無線伝送におけるマルチキャスト伝送において、無線リソースの効率的利用を確保しながら、受領確認応答を利用して信頼性を向上することができる、優れた無線通信装置を提供することができる。
【0028】
本明細書で開示する技術によれば、マルチキャスト・データ・フレームの送信先となる複数の無線通信装置は、空間多重を利用してマルチキャストの受領確認応答を同時に送信し、送信元の無線通信装置は、送信先の各無線通信装置とのチャネル情報に基づく信号処理により、同時受信した受領確認応答を分解し、元の個別の受領確認応答を復元する。すなわち、本明細書で開示する技術によれば、マルチキャスト・データ・フレームの同時送信を許容し、通信リソースの有効利用を図りつつ、受領確認を利用して再送制御を可能として通信品質の向上を実現することができる。
【0029】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまでも例示であり、本発明の効果はこれに限定されるものではない。また、本発明が、上記の効果以外に、さらに付加的な効果を奏する場合もある。
【0030】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1Aは、本明細書で開示する技術を適用したデータ伝送システム100の構成例を模式的に示した図である。
【
図1B】
図1Bは、本明細書で開示する技術を適用したデータ伝送システム100の構成例を模式的に示した図である。
【
図2】
図2は、マルチキャスト配信サーバー130の機能的構成を模試的に示した図である。
【
図3】
図3は、無線親局120の内部構成例を示した図である。
【
図4】
図4は、無線子局110の内部構成例を示した図である。
【
図5】
図5は、実施例1における処理のフローを示した図である。
【
図6】
図6は、同じアクセスポイントに接続しているステーション、マルチキャスト・グループのメンバー、受領確認対象、サブグループの包含関係を例示した図である。
【
図7】
図7は、IEEE802.11無線LANシステムで通常のパケット送信に使用されるフレーム・フォーマットを示した図である
【
図8A】
図8Aは、直交符号化を用いて符号を割り当ててLong Preambleの符号化を行なった場合のPHY Preambleの内容を示した図である。
【
図8B】
図8Bは、時分割送信を用いた符号を割り当ててLong Preambleの符号化を行なった場合のPHY Preambleの内容を示した図である。
【
図9】
図9は、実施例1において、APとSTA#1~#6間でマルチキャスト・データ・フレームの送受信と受領確認を行なう通信シーケンスの一例を示した図である。
【
図10】
図10は、実施例1において、STAがAPからMU-BARフレームを受信したことに応じて実行する処理手順を示したフローチャートである。
【
図11】
図11は、APが指定したサブグループ・メンバーからのMU-BAを受信処理する手順を示したフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施例2における処理のフローを示した図である。
【
図13】
図13は、実施例2において、STAがAPからMU-BARフレームを受信したことに応じて実行する処理手順を示したフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施例3における処理のフローを示した図である。
【
図15】
図15は、実施例3において、APとSTA#1~#6間でマルチキャスト・データ・フレームの送受信と受領確認を行なう通信シーケンスの一例を示した図である。
【
図16】
図16は、実施例4における処理のフローを示した図である。
【
図17】
図17は、実施例4において、STAがAPからマルチキャスト・データ・フレームを受信したことに応じて実行する処理手順を示したフローチャートである。
【
図18】
図18は、実施例5における処理のフローを示した図である。
【
図19】
図19は、実施例5において、APとSTA#1~#6間でマルチキャスト・データ・フレームの送受信と受領確認を行なう通信シーケンスの一例を示した図である。
【
図20】
図20は、実施例5において、STAがAPからMU-BARフレームを受信したことに応じて実行する処理手順を示したフローチャートである。
【
図21】
図21は、APが指定したSTAからのMU-BAを受信処理する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
図1には、本明細書で開示する技術を適用したデータ伝送システム100の構成例を模式的に示している。
【0034】
図示のデータ伝送システム100は、
図1Bに示すように、マルチキャスト配信サーバー130と無線親局120が、バックボーン・ネットワーク140を介して接続されている。また、
図1Aに示すように、無線親局120は、複数の無線子局110-1、110-2、…を配下に持ち、各無線子局110-1、110-2、…と無線にて通信する。このデータ伝送システム100では、マルチキャスト配信サーバー130が送信したマルチキャスト・データは、無線親局120を経由して、無線子局110-1、110-2、…に一斉に配送(マルチキャスト伝送)されるようになっている。
【0035】
図1A中には、6台の無線子局110-1、110-2、…、110-6を描いているが、それぞれ無線親局120と接続を確立している。以下の説明では、便宜上、6台の無線子局110-1、110-2、…、110-6がいずれもマルチキャスト配信サーバー130からのマルチキャスト・データを受信するマルチキャスト・グループに参加しているものとする。
【0036】
但し、本明細書で開示する技術は、無線親局120と接続しているすべての無線子局110がマルチキャスト・グループに参加している必要はなく、マルチキャスト・グループに参加していない他の無線子局(図示を省略)が無線親局120に接続していてもよい。また、無線親局120と接続している無線子局110-1、110-2、…、110-6は、マルチキャスト伝送とは別に、それぞれ無線親局120と個別の通信を行なうこともできる。
【0037】
付言すれば、無線親局は1台に限定されない。別の無線子局(図示しない)を配下に持つ1台以上の別の無線親局がマルチキャスト配信サーバー130に接続されていてもよい。
図1B中では、無線親局120を1台しか描いていないが、複数台の無線親局がバックボーン・ネットワーク140経由でマルチキャスト配信サーバー130に接続されていることも想定される。各無線親局は、マルチキャスト配信サーバー130が送信したマルチキャスト・データを、自分の配下の無線子局にマルチキャスト伝送する。
【0038】
また、
図1Bに示したように、マルチキャスト配信サーバー130と無線親局120が別体である必要はなく、マルチキャスト配信サーバー130がいずれか1つの無線親局と物理的に一体となった1つの装置であってもよい。
【0039】
図2には、マルチキャスト配信サーバー130の機能的構成を模試的に示している。図示のマルチキャスト配信サーバー130は、データ・ソース201と、データ処理部202と、バックボーン通信部203を備えている。データ・ソース201は、配信するためのコンテンツを生成し、エンコードしてデータ処理部202へ渡す。データ処理部202は、データ・ソース201から入力されたデータからパケットを生成する。バックボーン通信部203は、パケットに対してバックボーン・ネットワーク140での通信のためのプロトコル・ヘッダーを付加して、バックボーン・ネットワーク140へ送出する。
【0040】
図3には、無線親局120の内部構成例を示している。図示の無線親局120は、図示の無線親局120は、バックボーン通信部301と、データ処理部302と、変復調部303と、空間信号処理部304と、チャネル推定部305と、無線インターフェース部306と、アンテナ307と、制御部308を備えている。図示の例では、複数本の送受信用アンテナ307-1、…、307-Mと、アンテナ毎の無線インターフェース(IF)部306-1、…、306-Mを備え、マルチ・ユーザーMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行なうものとするものとする。
【0041】
バックボーン通信部301は、バックボーン・ネットワーク140と通信を行なう。マルチキャスト配信サーバー130から送出されたデータは、バックボーン通信部301に到着する。
【0042】
データ処理部302は、バックボーン通信部301からの入力がある、若しくは自身が生成したデータがある送信時の場合に、そのデータから無線送信のためのパケットを、メディア・アクセス制御(MAC)のためのヘッダーの付加や誤り検出符号の付加などの処理を行ない、処理後のデータを変復調部303に提供する。逆に、変復調部303からの入力がある受信時の場合には、データ処理部302は、ヘッダーの解析、パケット誤りの検出、パケットのリオーダー処理などを行ない、自身のプロトコル上位層若しくはバックボーン通信部301へ渡す。
【0043】
変復調部303は、無線送信時には、データ処理部302からの入力データに対し、制御部308によって設定された誤り訂正符号及び変調方式に基づいて、誤り訂正符号化、インターリーブ、並びに変調の処理を行ない、データ・シンボル・ストリームを生成して、空間信号処理部304へ渡す。また、変復調部303は、無線受信時には、空間信号処理部304からの入力に対して送信時とは逆に、復調、デインターリーブ、誤り訂正復号化の処理を行ない、データ処理部302若しくは制御部308へ渡す。
【0044】
空間信号処理部304は、無線送信時には、必要に応じて、入力に対して空間分離に供される信号処理(後述)を行ない、得られた1つ以上の送信シンボル・ストリームをそれぞれの無線インターフェース部306-1、…、306-Mへ提供する。また、空間信号処理部304は、無線受信時には、各無線インターフェース部306-1、…、306-Mから入力された受信シンボル・ストリームに対して空間処理を行ない、必要に応じてストリームの分解を行なって、変復調部303へ渡す。
【0045】
チャネル推定部305は、各無線インターフェース部306-1、…、306-Mからの入力信号のうちの、プリアンブル部分やトレーニング信号部分から伝搬路の複素チャネル利得情報を算出する。算出された複素チャネル利得情報は、制御部308を介して変復調部303での復調や空間信号処理部304での空間処理に利用される。
【0046】
各無線インターフェース部306-1、…、306-Mは、無線送信時には、空間信号処理部304から入力されるディジタル送信信号をアナログ送信信号へとコンバートして、電力増幅して、フィルタリングして、さらに無線周波数帯へ周波数アップコンバートして、それぞれに対応するアンテナ307-1、…、307-Mへ送出する。また、各無線インターフェース部306-1、…、306-Mは、無線受信時には、それぞれに対応するアンテナ307-1、…、307-Mからの入力に対して逆の処理、すなわち周波数ダウンコンバート、フィルタリング、低雑音増幅、ディジタル信号へのコンバージョンを行ない、結果を空間信号処理部304若しくはチャネル推定部305へ提供する。
【0047】
制御部308は、各部301~306間の情報の受け渡しや通信パラメーターの設定、データ処理部302におけるパケットのスケジューリングを行なう。
【0048】
図4は、無線子局110の内部構成例を示している。図示の無線子局110は、データ・シンク401と、データ処理部402と、変復調部403と、空間信号処理部404と、チャネル推定部405と、無線インターフェース部406と、アンテナ407と、制御部408を備えている。図示の例では、M本の送受信用アンテナ407-1、…、407-M´と、アンテナ毎の無線インターフェース部406-1、…、406-M´を備えているが、無線子局110は複数本の送受信系統を備える必要はなく、1本でもよい。
【0049】
データ・シンク401は、受信したデータの提供先であり、マルチキャスト配信サーバー130内のデータ・ソース201にあるデータは、バックボーン・ネットワーク140並びに無線親局120を経由して、データ・シンク401に到着する。
【0050】
データ処理部402は、自身が生成したデータがある送信時の場合に、そのデータから無線送信のためのパケットを、メディア・アクセス制御(MAC)のためのヘッダーの付加や誤り検出符号の付加などの処理を行ない、処理後のデータを変復調部403に提供する。逆に、変復調部403からの入力がある受信時の場合には、データ処理部402は、ヘッダーの解析、パケット誤りの検出、パケットのリオーダー処理などを行ない、自身のプロトコル上位層若しくはデータ・シンク401へ渡す。
【0051】
変復調部403は、無線送信時には、データ処理部402からの入力データに対し、制御部408によって設定された誤り訂正符号及び変調方式に基づいて、誤り訂正符号化、インターリーブ、並びに変調の処理を行ない、データ・シンボル・ストリームを生成して、空間信号処理部404へ渡す。また、変復調部403は、無線受信時には、空間信号処理部404からの入力に対して送信時とは逆に、復調、デインターリーブ、誤り訂正復号化の処理を行ない、データ処理部402若しくは制御部408へ渡す。
【0052】
空間信号処理部404は、無線インターフェース部406-1、…、406-M´へ提供する。また、空間信号処理部404は、無線受信時には、各無線インターフェース部406-1、…、406-M´から入力された受信シンボル・ストリームに対して空間処理を行ない、必要に応じてストリームの分解を行なって、変復調部403へ渡す。
【0053】
チャネル推定部405は、各無線インターフェース部406-1、…、406-M´からの入力信号のうちの、プリアンブル部分やトレーニング信号部分から伝搬路の複素チャネル利得情報を算出する。算出された複素チャネル利得情報は、制御部408を介して変復調部403での復調や空間信号処理部404での空間処理に利用される。
【0054】
各無線インターフェース部406-1、…、406-M´は、無線送信時には、空間信号処理部404から入力されるディジタル送信信号をアナログ送信信号へとコンバートして、電力増幅して、フィルタリングして、さらに無線周波数帯へ周波数アップコンバートして、それぞれに対応するアンテナ407-1、…、407-M´へ送出する。また、各無線インターフェース部406-1、…、406-M´は、無線受信時には、それぞれに対応するアンテナ407-1、…、407-M´からの入力に対して逆の処理、すなわち周波数ダウンコンバート、フィルタリング、低雑音増幅、ディジタル信号へのコンバージョンを行ない、結果を空間信号処理部404若しくはチャネル推定部405へ提供する。
【0055】
制御部408は、各部401~406間の情報の受け渡しや通信パラメーターの設定、データ処理部402におけるパケットのスケジューリングを行なう。
【0056】
本明細書で開示する技術を適用したデータ伝送システム100は、空間多重を利用してマルチキャストの受領確認の同時送信を許容し、通信リソースの有効利用を図りつつ、受領確認を利用して再送制御を可能として通信品質の向上を実現するものである。
【0057】
マルチキャスト・グループに含まれる複数の無線子局110-1…は、マルチキャスト・データ・フレームを受信すると、送信元の無線親局120からの受領確認要求に応じて、空間多重を利用してマルチキャストの受領確認応答を同時に送信する。一方、無線親局120は、各無線子局110-1…とのチャネル情報に基づく信号処理により、同時受信した受領確認応答を元の個別の受領確認応答に分離、復元する。
【0058】
マルチキャスト伝送における受領確認応答を同時に行なう仕組みについて、以下の5つの実施例を挙げて詳解する。
【0059】
実施例1:事前のサブグループ分け有り。受領確認要求はデータ・フレームと別フレーム
実施例2:事前のサブグループ分け無し。受領確認要求はデータ・フレームと別フレーム
実施例3:事前のサブグループ分け無し。受領確認要求はデータ・フレームが兼ね、明示的に指定
実施例4:事前のサブグループ分け有り。受領確認要求はデータ・フレームが兼ね、既存パラメーター値を利用して暗黙的に要請
実施例5:事前にチャネル利得情報を全員から取得。受領確認要求はデータ・フレームと別フレーム
【0060】
以下では、無線親局120と無線子局110間に無線通信には、IEEE802.11無線LAN(Local Area Network)システムが適用されることを想定する。また、無線親局120をアクセスポイント(AP)、無線子局110をステーション(STA)と読み替えて、各実施例について説明する。
【実施例0061】
実施例1では、APは、マルチキャスト・グループに参加するSTAを事前にサブグループ分けする。また、APは、データ・フレームと別フレームで、グループ・メンバーSTAに受領確認要求を送信する。
【0062】
図5には、実施例1における処理のフローを示している。
【0063】
《マルチキャスト・グループの把握》
まず、フローF501として、マルチキャスト・グループに属する各STAは事前に受信したいマルチキャストのグループに参加しているものとする。マルチキャスト・グループへの参加には、IGMP(Internet Group Management Protocol)やIPv6 MLD(Multicast Listener Discovery)などの仕組みを利用する。各STAは、自分が参加しているマルチキャストのグループのマルチキャスト・アドレスを受信する。
【0064】
IGMPやIPv6 MLDなどのマルチキャスト・グループ参加プロトコルはレイヤー3以上であるため、通常は、マルチキャスト・グループ参加の時点ではAPは配下のSTAがどのマルチキャスト・アドレスを受信しているかを知らない。このため、マルチキャスト・グループに参加する各STAは、APにマルチキャスト・グループ参加状況を把握させるために、APの要請を受けて、若しくは自発的に、各STAはマルチキャストの登録状況を別途APに通知しておく。あるいは、APがレイヤー3以上の内容を解析する仕組みを持ち、自ら配下STAのマルチキャスト参加の情報を集めても良い。
【0065】
《受領確認サブグループの作成》
次いで、フローF502として、APは、マルチキャスト・グループ毎に、参加している配下STAを1つ以上の受領確認用サブグループに分類する。後述するように、APは、マルチキャスト送信する度にマルチキャスト・グループ内のすべてのSTAにマルチキャスト送信に対する受領確認を要請するのではなく、サブグループに対してのみ受領確認を要請する。
【0066】
APは、フローF501により配下の各STAのマルチキャスト・グループ参加状況を把握した状態から、まずあるマルチキャスト・グループについて、受信対象のSTA(以後、グループ・メンバーと呼ぶ)を受領確認の対象、非対象に分ける。必ずしもすべてのグループ・メンバーを当該マルチキャスト・フローに対する受領確認の対象となくても良い。判断基準は限定しないが、以下の(a1)、(a2)のいずれかを利用してもよい。
【0067】
(a1)各STAに対しての過去の送受信から得られた通信品質(例として、下りリンクの誤り率並びにその使用変調情報、上りリンクの受信信号強度など)。例えば、通信品質が悪いグループ・メンバー(通信品質が所定値未満、若しくは、通信品質が低い方から所定台数のグループ・メンバーなど)のみを当該マルチキャスト受領確認対象とする。
(a2)各STAから通知される、当該マルチキャストに対して信頼性を要求するかしないかの情報。例えば、信頼性を要求するグループ・メンバーのみ当該マルチキャスト受領確認対象とする。
【0068】
続いて、APは、受領確認対象のグループ・メンバーを1つ以上のサブグループに分類する。このサブグループは、以降で送信するマルチキャスト・データ・フレームの受領確認応答を同時に行なうSTA群の単位となる。当然ながら、この受領確認応答を同時に行なうSTA群はいずれも、マルチキャスト・グループのメンバーから選ばれる。
【0069】
各サブグループに参加できる最大メンバー数は事前に決めておく。本実施例ではサブグループ内メンバー最大数は4とする。なお、一般に、同時に受信した複数の信号を分離するには、信号の数以上の受信アンテナが必要である。このため、本実施例では、APとしての無線親局120は、無線インターフェース部306並びにアンテナ307をそれぞれ4組以上装備するものとする。
【0070】
STAをサブグループに分類するための基準は限定しない。例えば、以下の(b1)、(b2)のいずれかを基準に利用しても良い。
【0071】
(b1)各メンバーからこれまでに受信したパケットから得られた各メンバーとAP間の無線チャネル状態情報(Channel State Information:CSI)から、信号分離を行ない易くなる組み合わせ。
(b2)各メンバーからこれまでに受信したパケットから得られたCSI情報から、APにおける受信レベルの差が少なくなる組み合わせ。
【0072】
図6には、参考として、同じAPに接続しているSTA600、マルチキャスト・グループのメンバー610、マルチキャスト送信の受領確認対象611、サブグループの包含関係について、例示している。なお、STAは複数のマルチキャスト・グループに属することが可能なので、複数のマルチキャスト・グループがある場合にはそれらは互いに重複する可能性がある。
【0073】
図6に示す例では、同じAPに接続しているSTA(配下子局)600は、マルチキャスト・グループのメンバー610と、マルチキャスト・グループに属しないSTA620に2分される。また、マルチキャスト・グループのメンバー610となるSTAは、マルチキャスト・グループ参加状況を把握した状態などに基づいて、マルチキャスト受領確認対象611と、受領確認を行なわないグループ・メンバー612に振り分けられる。そして、マルチキャスト受領確認対象611となった複数のSTAを、無線チャネル状態情報や受信レベルなどの判断基準に基づいて、所定台数以内のサブグループ#0、#1、…に分類される。
【0074】
本実施例で参照しているデータ伝送システム100(
図1Aを参照のこと)では、6台のステーション(無線子局)が存在しており、そのすべてが同一のマルチキャスト・グループに属しているとする。
【0075】
以下の説明では、6台すべてのSTA#1~#6が受領確認対象であり、6台を以下のように3台ずつの2つのサブグループ#0、#1に分類したものとして説明を進める。なお、サブグループを特定するための識別情報を、サブグループ識別子とする。
【0076】
サブグループ#0: STA#1、STA#3、STA#5
サブグループ#1: STA#2、STA#4、STA#6
【0077】
《サブグループ付属情報の生成》
受領確認対象のメンバーをサブグループに分類したら、APはさらにサブグループ内での信号分離のための付属情報を生成する。
【0078】
付属情報を生成する目的は、サブグループのSTA群から同時に送信されることになる受領確認応答フレームから、個々の受領確認を復元するためにはサブグループ内のすべてのSTAからのCSI情報が必要になり、受領確認フレーム自体からこれを得るためである。
【0079】
CSI情報の取得に関して説明する。
図7には、IEEE802.11無線LANシステムで通常のパケット送信に使用されるフレーム・フォーマットを示している。パケット700は、PHY Preamble部710と、PHY Heder部720と、MAC Header部730と、Payload部740で構成される。
【0080】
PHY Preamble部710には、受信側で物理層でのパケット検出と周波数同期などを行なうための固定データ系列(以下、Short Preambleと呼ぶ)711と、受信側でCSIを得るための固定データ系列(以下、Long Preambleと呼ぶ)712が格納されている。この後者のデータ系列をLとする。パケットを受信した無線機は、Lが既知であることから、その部分の受信波形を利用してCSIを知ることができる。このLong Preambleのような、CSIを得るための既知情報はトレーニング信号とも呼ばれる。
【0081】
しかし、そのままのフォーマットで、サブグループ・メンバーのSTAが受領確認を同時送信してしまうと、CSI推定のためのLong Preamble部712の信号まで混信してしまい、APが個々のCSI情報を得ることができない。この問題に対処するため、サブグループ内のメンバー毎に異なるLong Preamble部712の信号の符号化を行なうことを考える。
【0082】
本実施例では、このLong Preambleの部分を拡張し、同時送信されても受信できるフォーマットに符号化し、受領確認応答フレームに使用する。符号化の方法として、例えば以下の(c1)、(c2)のいずれかの方法を利用することができる。
【0083】
(c1)直交符号化
直交符号化の手法では、まずサブグループ最大メンバー数以上の長さを持つWalsh系列を生成する。本実施例では最大数を4としているので、系列長4のWalsh系列を生成する。この場合、以下に示す符号1~4の4つの系列が利用可能である。
【0084】
[ 1, 1, 1, 1](符号1)
[ 1, 1,-1,-1](符号2)
[ 1,-1, 1,-1](符号3)
[ 1,-1,-1, 1](符号4)
【0085】
Walsh系列を用いて、各要素に系列Lを乗算した、Lの4倍の長さを持つ以下に示すような4つの系列を生成することができる。
【0086】
[ L, L, L, L]
[ L, L,-L,-L]
[ L,-L, L,-L]
[ L,-L,-L, L]
【0087】
上記の4系列は互いに直交することになる。したがって、同時に受信したとしても、上記符号1~4のうち取り出したい符号に相当する符号を乗算してLの長さ毎に加算することで、それぞれのCSIを得ることができる。
【0088】
この方法では、サブグループ毎にグループ・メンバーSTAに対して上記符号1~4のいずれかを重複しないように割り当てる。
【0089】
(c2)時分割送信
時分割送信の手法では文字通り、各サブグループ・メンバーからのLの送信が重ならないように送信時刻をずらして送信させる。これは、上記直交符号化における符号を以下の符号11~13に置き換えることと等価である。
【0090】
[ 1, 0, 0](符号11)
[ 0, 1, 0](符号12)
[ 0, 0, 1](符号13)
【0091】
本実施例で参照しているデータ伝送システム100(
図1を参照のこと)では、6台のグループ・メンバーSTA#1~#6を3台ずつの2つのサブグループ#0、#1に分類しているが(前述)、各サブグループにおいて、以下の(d1)、(d2)に示すように、直交符号化又は時分割送信のいずれかの方法により符号を割り当てるものとする。
【0092】
(d1)サブグループ#0
STA#1 … 符号1又は符号11
STA#3 … 符号2又は符号12
STA#5 … 符号3又は符号13
(d2)サブグループ#1
STA#2 … 符号1又は符号11
STA#4 … 符号2又は符号12
STA#6 … 符号3又は符号13
【0093】
図8Aには、サブグループ#0、#1の各々で、グループ・メンバーSTAに重複しないように符号1~3を割り当て、直交符号化を用いて符号を割り当ててLong Preambleの符号化を行なった場合の、PHY Preambleの内容を示している。また、
図8Bには、サブグループ#0、#1の各々で、グループ・メンバーSTAに重複しないように符号11~13を割り当て、時分割送信を用いた符号を割り当ててLong Preambleの符号化を行なった場合、PHY Preambleの内容を示している。
【0094】
《受領確認サブグループ並びに付属情報の事前通知》
そして、フローF503として、APは、上記で決定した各メンバーのサブグループ情報と、サブグループ内での各メンバーが利用するLong Preamble信号の符号化情報を、各グループ・メンバーに対して事前に通知する。通知のためにAPが送信する管理フレームを、以下ではAck Group Assignmentフレームと呼ぶ。APは、Ack Group Assignmentフレームをメンバー毎に個別にユニキャストで送信しても良く、グループ・メンバー全員が受け取れるマルチキャスト・アドレス宛てに送信しても良い。また、APは、専用のAck Group Assignmentフレームを用いず、ビーコンなどの既存のブロードキャスト・フレームの一部として付属情報を送信するようにしても良い。
【0095】
APが各メンバーに事前通知する情報は、以下の内容(e1)、(e2)を含む。
【0096】
(e1)各グループ・メンバーと属するサブグループ識別子を対応付ける情報
(e2)各サブグループ内でのサブグループ・メンバーへの付属情報(Long Preamble符号化方式、最大符号長、並びに割り当て符号の識別子)
【0097】
なお、上記の(e2)付属情報のうち、最大符号長(前述の通り、これはサブグループの最大メンバー数に連動する)、Long Preamble符号化方式はあらかじめ決められて共有されていれば、必ずしもAck Group Assignmentフレームに含める必要はない。
【0098】
また、サブグループ・メンバーが受領確認応答に使用する変調方式並びに誤り訂正符号化や、受領確認応答に使用する送信電力に関する情報を、(後述するMU-BARではなく)Ack Group Assignmentフレームの付属情報に含めるようにしてもよい。
【0099】
サブグループ情報並びに付属情報(e1)、(e2)を事前に受け取ったグループ・メンバーは、それを例えば制御部408内のメモリーに記憶しておき、受領確認応答フレーム(トレーニング信号)を送信時に利用する。
【0100】
APは、このサブグループ割り当て並びに付属情報を、マルチキャスト・フローの配信の途中で追加や変更してもよい。その場合には、再度メンバー全員に対して上記の通知を実行し直す。
【0101】
ここまでの処理F501~F503が、事前のセットアップに関する処理であり、最低1度実行すればよい。
【0102】
以降の処理F504~F508は、マルチキャスト・データの送受信に伴って繰り返し起きる処理である。
図9には、本実施例において、APとSTA#1~#6間でマルチキャスト・データ・フレームの送受信と受領確認を行なう通信シーケンスの一例を示している。
【0103】
《マルチキャスト・データ送受信》
APは、フローF504として、
図9中の参照番号901~903で示すようにマルチキャスト・グループのSTA#1~#6に、マルチキャスト・データDATA#0、DATA#1、DATA#2を順次送信する。これらのマルチキャスト・データのフレームは、前述した符号化を行なわず、
図7に示したような通常のフレーム・フォーマットを利用して送信される。
【0104】
マルチキャスト・グループ・メンバーのSTA#1~#6は、自身が以前に上記Ack Group Assignmentフレーム若しくはビーコン・フレームにおいて自身が受領確認の対象でありサブグループに割り当てられている場合には、個々のマルチキャスト・フレームの受信状態を、マルチキャスト・データ・フレームのシーケンス番号毎に保持しておく。
【0105】
同時に、サブグループのグループ・メンバーのSTA#1~#6は、マルチキャスト・データ・フレームのPHY Preambleを利用して、APに対する基準発振器の周波数オフセットを補正しておく。
【0106】
《受領確認》
本実施例では、APは、1つ以上のマルチキャスト・データ・フレームを送信した後、フローF505として、
図9中の参照番号904、908で示すように、複数ユーザーを対象にした受領確認要求フレーム(以下、Multi-User Block Ack Request(MU-BAR)フレームと呼ぶ)を送信する。
【0107】
本実施例(
図9に示す例)においては、APがMU-BAR単独で1つの無線パケットとして送信する例を想定して記載している。変形例として、APは、マルチキャスト・データとA-MPDU(Aggregated Mac Protocol Data Unit)を用いてMAC層にてアグリゲーションすることにより、無線区間では1つの無線パケットとしてMU-BARを送信するようにしても良い。
【0108】
MU-BARフレームには、以下の内容(f1)~(f5)が含まれる。
【0109】
(f1)受領確認対象のマルチキャスト・フローを特定する情報
(f2)マルチキャスト受領確認応答を期待する対象とするサブグループ識別子
(f3)サブグループ・メンバーからのマルチキャスト受領確認応答の対象とする開始シーケンス番号
(f4)受領確認応答に使用する変調方式並びに誤り訂正符号
(f5)受領確認応答に使用する送信電力に関する情報
【0110】
ここで、受領確認応答に使用する変調方式に関する情報(f4)を、必ずしも明示的に指定しなくても、常に最低のレートを利用する、若しくは、MU-BARフレームと同一のレートを使用するなど、すべての受領確認対象で一意に決まる法則をAPと各STA間で共有していれば、フレーム内に変調方式に関する情報を含めなくてもよい。受領確認応答に使用する変調方式は、2本以上の空間ストリームを使用しない変調に限定してもよい。
【0111】
受領確認応答に使用する送信電力に関する情報(f5)を伝える目的は、APが複数のSTAから同時に受信することになる受領確認応答に大きな受信電力差が生まれないようにすることにある。あまりにも大きな受信電力差がある場合、電力が小さい方の応答フレームを復元できなくなる可能性があるからである。このため、APにおいてそれぞれのサブグループ・メンバーSTAからの応答の受信電力がターゲット電力に揃うように、各メンバーSTAに希望する送信電力の通知を行なう。情報(f5)の内容には、応答の送信に使用して欲しい送信電力の値を直接指定、若しくは、希望電力に近づけるために前回の応答送信に対して上げて欲しい又は下げて欲しい旨を伝える前回送信電力との差分値を指定する。この差分値の計算には、サブグループ・メンバーとの過去のフレーム送受信時の受信電力を参照しても良い。なお、送信電力の要望に関する情報(f5)は必ずしもフレームに含まれなくても良い。その場合には、各STA側でそれぞれ自律的に判断して送信電力を調節する。
【0112】
MU-BARフレームは、受領確認の対象とするマルチキャスト・アドレスに対して送信される。宛先がこのアドレスであることを、上記の受領確認対象のマルチキャスト・フローを特定する情報(f1)として暗黙的に利用してもよい。
【0113】
サブグループ・メンバー#0、#1の各STAは、APからMU-BARフレーム904、908を受信すると、フローF506として、
図9中の参照番号905~907、並びに、参照番号909~911に示すように、該当するマルチキャスト・フローに関する受領確認応答MU-BAフレームをそれぞれ送信する。このとき、APから事前に指定された符号化情報を用いてLong Preambleを符号化(前述)して送信する。
【0114】
図10には、STAがAPからMU-BARフレームを受信したことに応じて実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0115】
STAは、APからのMU-BARフレームを受信すると(ステップS1001のYes)、そのMU-BARフレームに含まれるサブグループ識別子が自分の属するグループのものかどうかをチェックする(ステップS1002)。
【0116】
サブグループ識別子が自分の属するグループのものでない場合には(ステップS1002のNo)、STAは、後続の処理をすべてスキップして、本処理を終了する。
【0117】
一方、サブグループ識別子が自分の属するグループのものである場合には(ステップS1002のYes)、STAは、そのMU-BARフレームで対象としているマルチキャスト・フローの受信成功/失敗記録から、受領確認応答MU-BAを生成する(ステップS1003)。
【0118】
各サブグループ・メンバーSTAは、生成するMU-BAフレームに、対象とするマルチキャスト・フローにおける、シーケンス番号毎の受信成功/失敗の情報を含める。但し、MU-BARフレームを受信する以前にAPより送信されている当該マルチキャスト・フローが対象であるが、MU-BARフレームにおいて通知された開始シーケンス番号より前の情報を含める必要はない。また、STA内において、再送を要求して到着しても、STA上位層にてもう利用価値が無いと判断できるフレームについては、受信されていなくてもSTAの判断で成功として通知してもよい。
【0119】
次いで、STAは、MU-BARフレームにおいて、受領確認応答フレームに使用する送信電力の情報をもらっているかどうかをチェックする(ステップS1004)。
【0120】
MU-BARフレームにおいて、受領確認応答フレームに使用する送信電力の情報をもらっている場合には(ステップS1004のYes)、STAは、MU-BARフレームでの指示の通りに受領確認応答フレームに使用する送信電力を設定する(ステップS1005)。
【0121】
また、MU-BARフレームにおいて、受領確認応答フレームに使用する送信電力の情報をもらっていない場合には(ステップS1004のNo)、STAは、過去の(MU-BARを含む以前のAPからの受信パケットの)受信電力の情報から伝搬損を推定し、AP側での受信電力が所定の値になるように受領確認応答フレームの送信電力を設定する(ステップS1007)。なお、この所定の値は少なくともサブグループ・メンバーのSTAにおいては事前に共有されているものとする。
【0122】
なお、ステップS1005やステップS1007におけるMU-BAの送信に使用する電力の制御は必要に応じて行なえばよい。
【0123】
そして、STAは、Ack Group Assignmentフレーム又はビーコン・フレームで事前に通知されている符号化情報を用いてLong Preambleを符号化したPHY Preambleを付加して、受領確認応答(Multi- User Block Ack:MU-BA)フレームを送信する(ステップS1006)。
【0124】
要約すれば、
図10に示した処理フローによれば、MU-BARを受信したSTAは、内容に記載されているサブグループ識別子が自身の属しているサブグループのものと一致するかを確認し、一致する場合に限り、MU-BAフレームを送信する。
【0125】
STAからのMU-BAの送信タイミングは、STAがMU-BARを受信終了した直後から所定の時間経過後である。この所定の時間の間隔はAPと全STA間で共有されており、通信可能範囲にいる第3者の無線送信が割り込めない間隔であることが望ましい。また、この所定の時間間隔を指定する情報をMU-BARに含め,サブグループ単位で,あるいは同一サブグループであっても別のMU-BARを送信する際に、異なる値をとるようにしても良い。本実施例では、IEEE802.11無線LAN規格で規定されるSIFS(Short Inter Frame Space)を用いることとする。なお、SIFSの代わりにPIFS(PCF Inter Frame Space)を用いることにしてもよい。この送信の際には、各STAはキャリアセンスを行なわなくてもよい。
【0126】
AP側では、MU-BAR送信のSIFS時間後に、指定したサブグループ・メンバーからのMU-BAが同時に受信することになる。そして、APは、フローF507として、同時に受信された複数のSTAからのMU-BAを信号処理により分解、復元する。
【0127】
図11には、APが指定したサブグループ・メンバーからのMU-BAを受信処理する手順をフローチャートの形式で示している。APは、MU-BARを送信した後、サブグループからのMU-BAフレームを待ち受けて、通常の受信動作とは異なる処理を行なう。
【0128】
APは、Short Preambleを検出したとき(ステップS1101のYes)、各無線インターフェース部306-1、…で処理した受信信号はチャネル推定部305に送られ、Short Preamble部にてフレーム開始タイミングの同期、周波数同期、AGC(Auto Gain Control)のセットが行なわれる(ステップS1102)。
【0129】
次いで、APは、MU-BARを送信完了から応答が期待される時間長(SIFS)以内に、グループ・メンバーSTAからのMU-BAを同時受信できたかどうかをチェックする(ステップS1103)。
【0130】
ここで、MU-BARを送信完了から応答が期待される時間長以内に、グループ・メンバーSTAからのMU-BAを同時受信できたときには(ステップS1103のYes)、チャネル推定部305は、Short Preamble部に続く符号化Long Preamble部において、各グループ・メンバーSTAに事前に割り当てたそれぞれの符号から、各サブグループ・メンバーのLong Preamble受信系列を復元し、各STAからのCSI推定値を取得する(ステップS1104)。
【0131】
直交符号化を用いて符号を割り当ててLong Preambleの符号化を行なった場合には、チャネル推定部305は、直交符号のうち取り出したい符号に相当する符号を、系列Lの長さ単位に対して符号の1要素を乗算し、Lの長さ単位で乗算結果を加算する操作を行なって、各サブグループ・メンバーのLong Preamble受信系列を復元する。また、時分割送信を用いた符号を割り当ててLong Preambleの符号化を行なった場合には、チャネル推定部305は、時間シフトして、各サブグループ・メンバーのLong Preamble受信系列を取り出す。
【0132】
このようして得られたLong Preamble受信系列は、それぞれのアンテナ307-1、…、307-M(受信チェイン)で受信された、各STAからのCSIとなる。ここで、受信アンテナの番号をm(m=1~M。但し、MはAPの受信に使えるアンテナ総数)、使用した符号の番号(サブグループ識別子と合わせてこれがSTAを特定する情報となる)をn(n=1~N。但し、Nは使用する符号総数でありサブグループのメンバー数であり、MU-BA多重数に相当する)とすると、受信アンテナと使用した符号の組み合わせからM×Nの要素数を持つ推定チャネル行列Hが得られる。各メンバーSTAの推定CSIをhm,nで表すと、推定チャネル行列Hは下式(1)で表される。
【0133】
【0134】
同時受信されたアンテナ番号mにおける入力信号をymとすると、受信信号ベクトルYは、下式(2)で表される
【0135】
【0136】
推定されたチャネル行列Hと受信信号ベクトルYは空間信号処理部304に入力される。そして、空間信号処理部304は、チャネル行列Hと受信信号ベクトルYを用いて、各サブグループ・メンバーSTAからのMU-BAの復元(分解)を行なう(ステップS1105)。分解処理は、Long Preamble部より後(すなわち、PHY Header部以降)の信号に対して適用される。
【0137】
空間信号処理部304が行なうMU-BAの復元(分解)処理のアルゴリズムは特に限定されない。例えば、最小2乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)等化を用いて複数の信号を分解処理することができる。MMSE等化によれば、受信信号ベクトルYにある重みベクトルWを乗算して、他のSTAからの干渉成分を抑制する処理により、信号を分解することができる。重みベクトルWは、各受信アンテナで発生する雑音ベクトルnmで構成される雑音ベクトルをNとすると、以下の式(3)で表される。但し、下式(3)において、Iは単位行列を表し、HHはチャネル行列のエルミート転置行列を表す
【0138】
【0139】
上記のような処理を行なうことで、APは、MU-BARの対象としたサブグループのすべてのメンバーからのMU-BAを復元して、マルチキャスト・データ・フローの受領確認情報を得ることができる。
【0140】
一方、MU-BARを送信完了から応答が期待される時間長以内に、グループ・メンバーSTAからのMU-BAを同時受信できなかったときには(ステップS1103のNo)、APは、通常の受信動作に戻る。この場合、チャネル推定部305は、1つ分のLong PreambleからCSI推定値を取得する(ステップS1106)。そして、空間信号処理部304は、取得したCSI情報に基づいて、Long Preamble部より後(すなわち、PHY Header部以降)の信号を受信処理する(ステップS1107)
【0141】
なお、APは、ステップS1105においてMU-BAを復元処理した結果、特定の符号に対して優位なフレームを復元できない場合には、当該符号が割り当てられたSTAがMU-BARを正しく受信しておらず、MU-BAを送信していない可能性が考えられる。その場合の処理について
図11では図示を省略したが、APは、MU-BARを再送してもよい。
【0142】
《マルチキャスト・データ再送》
サブグループ・メンバーからの受領確認応答を分離して受領確認情報を取得したAPは、その結果に応じて、必要であればフローF508としてマルチキャスト・データの再送を行なう。
【0143】
APがマルチキャスト・データを再送するタイミングは、受領確認応答を確認した直後であってもよい。
【0144】
また、電子レンジなど、バースト状の電波干渉が検出されている場合には、すぐに再送しても再度失敗する可能性がある。このような場合、APは、一定の遅延を付加した後にマルチキャスト・データを再送するようにしてもよい。当該マルチキャスト・フロー(コンテンツ)において、遅延の要求が規定されている場合には、APは、それを超えない範囲での遅延を付加することとする。
実施例2では、APは、マルチキャスト・グループに参加するSTAを事前にサブグループ分けしない。また、APは、データ・フレームと別フレームで、グループ・メンバーSTAに受領確認要求を送信する。
マルチキャスト・グループに参加する各STAは、APにマルチキャスト・グループ参加状況を把握させるために、APの要請を受けて、若しくは自発的に、各STAはマルチキャストの登録状況を別途APに通知しておく。あるいは、APがレイヤー3以上の内容を解析する仕組みを持ち、自ら配下STAのマルチキャスト参加の情報を集めても良い。
マルチキャスト・グループ・メンバーのSTA#1~#6は、個々のマルチキャスト・フレームの受信状態を、マルチキャスト・データ・フレームのシーケンス番号毎に保持しておく。また、マルチキャスト・グループ・メンバーのSTA#1~#6は、マルチキャスト・データ・フレームのPHY Preambleを利用して、APに対する基準発振器の周波数オフセットを補正しておく。
ここで、STAの識別子として、STAのMACアドレスなど個体識別子や、APにおけるAssociation ID(AID)などの接続識別子を利用することができる。また、Long Preambleの付属情報は、Long Preamble符号化方式、最大符号長、並びに割り当て符号の識別子などである。
STAは、APからのMU-BARフレームを受信すると(ステップS1301のYes)、そのMU-BARフレーム内で自分の個体識別子又は接続識別子が指定されているかどうかをチェックする(ステップS1302)。
一方、自分の個体識別子又は接続識別子が指定されている場合には(ステップS1302のYes)、STAは、そのMU-BARフレームで対象としているマルチキャスト・フローの受信成功/失敗記録から、受領確認応答MU-BAを生成する(ステップS1303)。
STAは、生成するMU-BAフレームに、対象とするマルチキャスト・フローにおける、シーケンス番号毎の受信成功/失敗の情報を含める。但し、MU-BARフレームを受信する以前にAPより送信されている当該マルチキャスト・フローが対象であるが、MU-BARフレームにおいて通知された開始シーケンス番号より前の情報を含める必要はない。また、STA内において、再送を要求して到着しても、STA上位層にてもう利用価値が無いと判断できるフレームについては、受信されていなくてもSTAの判断で成功として通知してもよい。
MU-BARフレームにおいて、受領確認応答フレームに使用する送信電力の情報をもらっている場合には(ステップS1304のYes)、STAは、MU-BARフレームでの指示の通りに受領確認応答フレームに使用する送信電力を設定する(ステップS1305)。
また、MU-BARフレームにおいて、受領確認応答フレームに使用する送信電力の情報をもらっていない場合には(ステップS1304のNo)、STAは、過去の(MU-BARを含む以前のAPからの受信パケットの)受信電力の情報から伝搬損を推定し、AP側での受信電力が所定の値になるように受領確認応答フレームの送信電力を設定する(ステップS1307)。なお、この所定の値は少なくともサブグループ・メンバーのSTAにおいては事前に共有されているものとする。
そして、STAは、MU-BARフレームで指定されている符号化情報を用いてLong Preambleを符号化したPHY Preambleを付加して、MU-BAフレームを送信する(ステップS1306)。
STAからのMU-BAの送信タイミングは、STAがMU-BARを受信終了した直後から所定の時間経過後である。この所定の時間の間隔はAPと全STA間で共有されており、通信可能範囲にいる第3者の無線送信が割り込めない間隔であることが望ましい。本実施例では、IEEE802.11無線LAN規格で規定されるSIFS又はPIFSを用いることにしてもよい。この送信の際には、各STAはキャリアセンスを行なわなくてもよい。
また、電子レンジなど、バースト状の電波干渉が検出されている場合には、すぐに再送しても再度失敗する可能性がある。このような場合、APは、一定の遅延を付加した後にマルチキャスト・データを再送するようにしてもよい。当該マルチキャスト・フロー(コンテンツ)において、遅延の要求が規定されている場合には、APは、それを超えない範囲での遅延を付加することとする。