(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153410
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】固液分離システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/38 20230101AFI20231005BHJP
B04C 5/185 20060101ALI20231005BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C02F1/38
B04C5/185
B04C9/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137822
(22)【出願日】2023-08-28
(62)【分割の表示】P 2019110874の分割
【原出願日】2019-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】川上 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大原 利隆
(57)【要約】
【課題】小さな動力で駆動可能な固液分離システムを提供する。
【解決手段】砂が混入した砂混入水を移送する揚砂ポンプ2と、揚砂ポンプ2によって移送された砂混入水が流入する流入口341と砂混入水から一部の液体成分が取り除かれることで砂の濃度が高まった濃縮水を排出する排出口331とを有する内側容器3と、濃縮水を受け入れる外側槽4と、内側容器3に接続した一端から液体成分を受け入れ、一端よりも下方に配置された他端から放出する送出管6とを備え、外側槽4は、内側容器3の外周側面3bよりも外側に配置されて排出口331よりも上方に延びた側壁41を備えることで、外側槽4が受け入れた濃縮水によって排出口331から排出される濃縮水の排出量を抑制可能なものであり、送出管6は、内部が液体成分で満たされるとサイフォンの原理により液体成分に一端から他端に向かい他端から流れ出ようとする作用を生じさせるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体が混入した固体混入水を移送するポンプと、
前記ポンプによって移送された前記固体混入水が流入する流入口と、該固体混入水から一部の液体成分が取り除かれることで固体の濃度が高まった濃縮水を排出する排出口とを有する内側容器と、
前記濃縮水を受け入れる外側槽と、
前記内側容器に接続した一端から前記液体成分を受け入れ、該一端よりも下方に配置された他端から放出する送出管とを備え、
前記外側槽は、前記内側容器の外周側面よりも外側に配置されて前記排出口よりも上方に延びた側壁を備えることで、該外側槽が受け入れた前記濃縮水によって前記排出口から排出される該濃縮水の排出量を抑制可能なものであり、
前記送出管は、内部が前記液体成分で満たされるとサイフォンの原理により該液体成分に前記一端から前記他端に向かい該他端から流れ出ようとする作用を生じさせるものであることを特徴とする固液分離システム。
【請求項2】
前記排出口は常時開放されたものであることを特徴とする請求項1記載の固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体が混入した固体混入水から液体を分離する固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設には、汚水から砂を除去するための沈砂池や汚水から汚泥を除去するための沈殿池が設けられている。沈砂池では、受け入れた汚水に含まれている砂を池底の集砂ピットに集めた後、固液分離システムによって砂と汚水とに分離している。沈砂池に設けられた固液分離システムでは、集砂ピットに集められた砂を汚水とともに揚砂ポンプによって沈砂池よりも上方に移送し、移送された砂と汚水の混合水から汚水を分離して沈砂池に戻している。また、沈殿池は、受け入れた汚水に含まれている汚泥を池底の汚泥ピットに集めた後、固液分離システムによって砂と汚泥とに分離している。この沈殿池に設けられた固液分離システムにおいても、汚泥ピットに集められた汚泥を汚水とともに汚泥ポンプによって沈殿池よりも上方に移送し、移送された汚泥と汚水の混合水から汚水を分離して沈殿池に戻している。さらに、下水処理施設以外においても、固体が混入した液体を固液分離システムによって固体と液体とを分離することが行われている。例えば、工場排水から水と金属粉等とを分離する固液分離システムや、ダム湖等の貯水池に流入した土砂等を水と分離する固液分離システムなどがある。以下、汚水等に含まれている砂や汚泥やし渣、工業排水に含まれている金属粉、あるいは貯水池に水とともに流入する土砂等を総称して固体と称することがある。また、固体が混入した液体を固体混入水と称することがある。
【0003】
この固液分離システムとして、分離装置本体と、その分離装置本体よりも上方に配置された分離容器とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。分離容器は、揚砂管によって揚砂ポンプと接続されている。揚砂ポンプによって沈砂池から移送された固体混入水は、分離容器に形成された流入口から分離容器内に流入する。分離容器では、固体混入水から一部の液体成分が取り除かれる。一部の液体成分が取り除かれることで固体の濃度が高まった濃縮水は分離容器に形成された排出口から分離装置本体に排出される。分離容器において固体混入水から取り除かれた液体成分は、送出管の一端から送出管内に送り出されて沈砂池に戻される。分離装置本体には、搬出装置が設けられており、濃縮水に含まれている固体は、搬出装置によって水切りされつつ分離装置本体の外部に搬出される。分離容器の流入口と排出口の間には絞り部が形成されている。従来は、この絞り部における絞り量を大きくし、分離容器に流入してくる固体混入水よりも排出口から排出される濃縮水の量を極めて少なくすることで、固体混入水の液体成分を送出管に送り出していた。しかし、絞り量を大きくすると分離容器で生じる圧力損失が大きくなってしまう。特許文献1の固液分離システムは、送出管の他端を沈砂池の池底近傍に配置し、送出管内を汚水で満たしておくことで、サイフォンの原理により分離容器内の固体混入水に沈砂池に流れ出ようとする作用を生じさせている。そして、この作用を利用して絞り部による圧力損失を低減することで、固液分離システムを小さな動力で駆動しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された固液分離システムは、サイフォンの原理を利用することにより小さな動力で駆動することができる。しかしながら、サイフォンの原理を利用するだけで動力を小さくするのには限界があり、近年ではさらに小さな動力で駆動できる固液分離システムが求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、小さな動力で駆動可能な固液分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の固液分離システムは、
固体が混入した固体混入水を移送するポンプと、
前記ポンプによって移送された前記固体混入水が流入する流入口と、該固体混入水から一部の液体成分が取り除かれることで固体の濃度が高まった濃縮水を排出する排出口とを有する内側容器と、
前記濃縮水を受け入れる外側槽と、
前記内側容器に接続した一端から前記液体成分を受け入れ、該一端よりも下方に配置された他端から放出する送出管とを備え、
前記外側槽は、前記内側容器の外周側面よりも外側に配置されて前記排出口よりも上方に延びた側壁を備えることで、該外側槽が受け入れた前記濃縮水によって前記排出口から排出される該濃縮水の排出量を抑制可能なものであり、
前記送出管は、内部が前記液体成分で満たされるとサイフォンの原理により該液体成分に前記一端から前記他端に向かい該他端から流れ出ようとする作用を生じさせるものであることを特徴とする。
【0008】
この固液分離システムにおいて、
前記排出口は常時開放されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小さな動力で駆動可能な固液分離システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に相当する固液分離システムを示す概略構成図である。
【
図2】(a)は、内側容器の平面図であり、(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。
【
図3】(a)は、内側容器と外側槽を示す平面図であり、(b)は、内側容器と外側槽を示す正面図であり、(c)は、同図(b)におけるB-B断面図である。
【
図4】(a)は、固液分離システムの変形例を示す
図3(b)と同様の正面図であり、(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
【
図5】(a)は、第2実施形態の固液分離システムにおける
図3(b)と同様の正面図であり、(b)は、同図(a)におけるD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、沈砂池から砂が混入した汚水を移送し、移送された砂と汚水から、汚水と砂とを分離する固液分離システムに本発明を適用した例を用いる。なお、沈砂池は、下水処理施設の上流側に配置され、下水または雨水などの汚水から砂を取り除くためのものである。沈砂池において砂が取り除かれた汚水は、下流にある沈殿池などに送られる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に相当する固液分離システムを示す概略構成図である。この
図1には沈砂池も示されている。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の沈砂池9は、ポンプ井91と、トラフ92と、集砂ノズル93と、集砂ピット94とを備えた池である。この沈砂池9には、図の右側から汚水が流れ込んでくる。流れ込んだ汚水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく。沈砂池9では、汚水が流れていく間に、汚水に含まれている砂が池底に向かって沈降していく。ポンプ井91は、沈砂池9の最も下流側に配置されている。ポンプ井91は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井91の内部には、揚水ポンプ911が設けられている。この揚水ポンプ911は、ポンプ井91に貯留された汚水を沈砂池9の外部に排出するものである。揚水ポンプ911には揚水管912が接続されている。揚水ポンプ911によって吸引された汚水は、この揚水管912を通して不図示の沈殿池に送られる。なお、
図1には汚水の池水面WL1も示されている。この池水面WL1の位置は、沈砂池9へ流れ込む汚水の量によって、トラフ92の底からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0014】
トラフ92は、ポンプ井91よりも上流の池底であって池幅方向の中央に形成されている。このトラフ92は、沈砂池9における汚水の流れ方向に沿って延在している。トラフ92の池幅方向両側の池底には、トラフ92に向かうに従って下方に傾斜した池底傾斜面95が形成されている。沈砂池9に流れ込んだ汚水に含まれる砂は、池底に向かって沈降し、池底傾斜面95を滑り落ちて或いは直接トラフ92内に堆積する。
【0015】
集砂ノズル93は、トラフ92の上流端に配置されている。集砂ノズル93には、沈殿池から汲み上げられた汚水が供給される。集砂ノズル93に供給された汚水は集砂ノズル93の先端から沈砂池9の下流側に向かって吐出される。トラフ92の下流端は集砂ピット94に接続されている。トラフ92内に堆積した砂は、集砂ノズル93から吐出される水の流れによって集砂ピット94に集められる。集砂ピット94は、ポンプ井91とトラフ92の間に形成されている。集砂ピット94に集められた砂は、固液分離システム1によって、固体(砂)と液体(汚水)とに分離される。
【0016】
固液分離システム1は、揚砂ポンプ2と、内側容器3と、外側槽4と、搬出装置5と、送出管6とを備えている。揚砂ポンプ2は、集砂ピット94の内部であって、集砂ピット94の底近傍に配置されている。この揚砂ポンプ2は、ポンプの一例に相当する。この揚砂ポンプ2には、揚砂管21が接続されている。揚砂ポンプ2は、集砂ピット94の内部に集められた砂を汚水とともに吸引し、砂が混入した汚水を揚砂管21を通して内側容器3に移送する。揚砂ポンプ2によって内側容器3に移送される砂と汚水の割合は、集砂ピット94の内部に集められた砂の量等によって変動するが、砂5%程度に対して汚水95%程度である。この揚砂ポンプ2によって移送された砂が固体の一例に相当し、その砂が混入した汚水は固体混入水の一例に相当する。以下、揚砂ポンプ2によって移送された、砂が混入した汚水を砂混入水と称する。
【0017】
内側容器3と外側槽4と搬出装置5は、地上であって沈砂池9の近傍に配置されている。これら内側容器3と外側槽4と搬出装置5は、固液分離装置の一例に相当する。内側容器3は、外側槽4の槽内に配置されている。内側容器3は、移送された砂混入水のうち、液体成分の一部を送出管6に送出することで取り除き、液体成分の一部が取り除かれることで砂の濃度が高まった濃縮水を外側槽4に排出する。以下、この砂混入水から砂が取り除かれた液体成分を分離水と称する。内側容器3から送出された分離水は、送出管6を通して沈砂池9に戻される。この送出管6は、内側容器3の内に挿入された一端部分61(
図2参照)と、内側容器3よりも上方で水平に延びた水平部分と、水平部分から折れ曲がって下方に延びた垂直部分とを有している。そして、その垂直部分の下端である他端6aは内側容器3よりも下方であって外側槽4の外部である沈砂池9の上部に配置されている。これらの内側容器3と外側槽4については後に詳述する。
【0018】
搬出装置5は、外側槽4の下端に接続され、斜め上方に向かって延在している。この搬出装置5は、スクリューコンベア51と投下口52とを有する。スクリューコンベア51は、搬出装置5内に配置されている。スクリューコンベア51の軸方向は、搬出装置5の延在方向に一致している。外側槽4内に排出された濃縮水に含まれている砂は、外側槽4内を沈降して外側槽4の下端に集まる。外側槽4の下端に集まった砂は、スクリューコンベア51が回転することで、水切りされながら斜め上方に搬送される。投下口52は、スクリューコンベア51の上端近傍に配置されている。スクリューコンベア51によって水切りされた砂は、投下口52から下方に向けて投下される。すなわち、搬出装置5は、外側槽4が受け入れた濃縮水に含まれている砂を外側槽4の外部に搬出するものである。なお、スクリューコンベア51の代わりに、ベルトコンベアなどの他の搬送機構を用いてもよい。
【0019】
図2(a)は、内側容器の平面図であり、
図2(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。
図2(a)および
図2(b)には、送出管の一端部分も示されている。
【0020】
図2(b)に示すように、内側容器3は、流体導入部31と、絞り部32と、排出部33と、流体流入管34と、一対の取付部36とを備えている。この実施形態の内側容器3は、いわゆる流体サイクロン装置である。流体導入部31は、内側容器3の上側部分に設けられている。絞り部32は、その上端が流体導入部31の下端に接続している。また、絞り部32の下端には、排出部33の上端が接続されている。内側容器3の内周面3aは、流体導入部31の内周面31aと絞り部32の内周面32aと排出部33の内周面33aによって構成されている。この内側容器3の内周面3aによって内部空間S1が画定されている。すなわち、これらの流体導入部31、絞り部32、および排出部33によって、内部空間S1を有する中空状のタンクが構成されている。
【0021】
流体導入部31は、内周面31aが円筒状をした円筒部311と、円筒部311の上端を閉塞する蓋312とを備えている。円筒部311は、板厚3.2mmの鋼板を内径500mmの円筒状に加工したものである。また、蓋312は、板厚6.0mmの鋼板を外径が586mmで内径が114mmの環状に加工したものである。なお、円筒部311および蓋312の形状、材質、および厚みは、内部空間S1の大きさ等に応じて適宜選択すればよい。また、円筒部311は、下方に向かうに従って内部空間S1の断面積が増加する、円錐状やドーム状をしたものであってもよい。さらに、円筒部311は、後述する流入口341が形成されている上側部分が下方に向かうに従って内部空間S1の断面積が増加する、円錐状やドーム状をしたもので、下側部分が円筒状をしたものであってもよい。円筒部311の外周面には、一対の取付部36が固定されている。この取付部36は、内側容器3を、
図1に示した外側槽4に固定するためのものである。
【0022】
また、円筒部311の上側部分には、流体流入管34が連結されている。
図1に示した揚砂ポンプ2と流体流入管34とは揚砂管21を介して接続されている。揚砂管21と流体流入管34とは、接続端に設けられたフランジどうしがボルトで締結されることで着脱可能に結合されている。流体流入管34は内径100mmの管である。
図2(b)に示すように、この流体流入管34と円筒部311との連結部には、流入口341が形成されている。
図2(a)に直線の矢印で示すように、揚砂ポンプ2が吸い上げた砂混入水は、円筒部311の内周面31aの接線方向から流入口341を通って内部空間S1に導入される。内部空間S1では、送出管6の一端部分61の外周面と円筒部311の内周面31aの間に砂混入水が導入される。これにより、内部空間S1には砂混入水の旋回流が形成される。
【0023】
絞り部32は、流入口341と排出部33の間に配置されている。この絞り部32では、内部空間S1の断面積が排出部33に向かうに従って減少する。換言すれば、絞り部32は、円筒部311から離れるにつれて漸次縮径する逆円錐状の内周面32aを有している。なお、絞り部32は、内部空間S1の断面積が排出口331に向かって段階的に減少したものであってもよい。すなわち、絞り部32は、内部空間S1の断面積が流入口341側よりも排出口331側の方が小さくなるように形成されたものである。この絞り部32は、板厚3.2mmの鋼板を円錐状に加工したものであり、上端は内径500mm、下端は内径100mmに形成されている。なお、絞り部32の材質や厚みは、内部空間S1の大きさや絞り量等に応じて適宜選択すればよい。また、この実施形態では、絞り部32の下端の断面積を流入口341の断面積と一致させているが、絞り部32の下端の断面積は、流入口341の断面積以上であってもよく、流入口341の断面積より小さくてもよい。ただし、絞り部32の下端の断面積を小さくしすぎると、内側容器3における圧力損失が増大するので、流入口341の断面積以上であることが好ましい。
【0024】
排出部33は、絞り部32の、流体導入部31が設けられた側とは反対側に接続している。すなわち、排出部33は、絞り部32の下端に接続している。排出部33は、下端にフランジが形成された、絞り部32の下端と同径の内径をした円筒状をしている。この排出部33の下端の開口が排出口331になる。なお、排出部33は省略してもよい。省略した場合、絞り部32の下端の開口部が排出口になる。
【0025】
送出管6の一端部分61は、流体導入部31の蓋312を上下方向に貫通している。この一端部分61は、円筒部311の径方向の中心軸に沿って、蓋312の下端よりも下方から蓋312の上端よりも上方まで延在し、溶接によって蓋312に水密状態で結合している。従って、一端部分61の下側部分は、内部空間S1内に突出している。ただし、一端部分61の下側部分は、内部空間S1に突出していなくてもよく、例えば蓋312の下面と一端部分61の下端は同じ平面上にあってもよい。一端部分61は、内径100mmの管状をしている。この一端部分61下端が、送出管6の一端になり、その一端の開口が送出口611になる。従って、一端部分61および送出口611(送出管6の一端)は、内側容器3に接続されている。また、この実施形態の送出口611は、内部空間S1内に配置されている。砂混入水から砂が取り除かれた液体成分である分離水は、この送出口611から送出管6を通して沈砂池9に戻される。送出口611は、流入口341よりも下方に配置されている。送出管6の一端部分61以外の部分と一端部分61とは、ボルトで締結されることで着脱可能に結合している。なお、一端部分61の延在方向の長さは任意であり、例えば一端部分61の下側部分(内部空間S1内にある部分)を流体導入部31よりも長く形成してもよい。このように形成した場合、送出口611は、内部空間S1のうち絞り部32の内周面32aによって画定されている領域に形成される。また、送出口611の断面積は、絞り部32の下端の断面積と一致している例を示したが、送出口611の断面積は、排出口331の断面積以上であることが好ましい。こうすることで、送出口611から排出される分離水の量を増加させ、さらに内側容器3における圧力損失を低減することができる。
【0026】
次に、この内側容器3の作用について主に
図2を用いて説明する。上述したように、揚砂ポンプ2(
図1参照)を駆動することで砂混入水が流入口341から内部空間S1に流入し、内部空間S1には砂混入水の旋回流が形成される。砂混入水に含まれている砂は、汚水よりも比重が大きいため遠心力により内側容器3の内周面3aに押し付けられつつ、その内周面3aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下していく。一方、円筒部311の径方向の中心部分には、砂混入水から砂が取り除かれた分離水が集まる。その分離水は、送出口611から送出される。ただし、本実施形態の内側容器3は、流入口341と排出口331の大きさが同一であるので、流入口341から流入してくる砂混入水の単位時間あたりの量にもよるが、送出口611から送出するためには、後に詳細に説明する外側槽4が設けられている必要がある。
図1に示すように、送出された分離水は、送出管6を通って送出管6の他端6aから沈砂池9に向かって放出される。この送出管6の他端6aは、送出管6の一端に形成された送出口611よりも下方に配置されているので、送出管6内が液体で満たされるとサイフォンの原理により送出口611から沈砂池9に流れ出ようとする力が内部空間S1にある砂混入水(分離水)に生じる。これにより、揚砂ポンプ2の動力が小さくても砂混入水を内側容器3まで移送することができるといった効果が生じる。なお、送出管6の他端6a側を沈砂池9の池水面WL1よりも下方まで延在させて他端6aが水中に没するようにしてもよい。また、内側容器3と沈砂池9との間に中間槽を設置し、送出管6の他端6aをその中間槽の内側に配置してもよい。中間槽を設けることで、分離水の状態を中間槽に溜まった分離水により確認することができる。また、分離水とともに多少の砂が送出口611から送出されてしまった場合でも、その砂を中間槽に沈降させることで、砂が沈砂池9に戻されてしまうことをより抑制できる。
【0027】
図3(a)は、内側容器と外側槽を示す平面図であり、
図3(b)は、内側容器と外側槽を示す正面図であり、
図3(c)は、同図(b)におけるB-B断面図である。
【0028】
図3(a)および
図3(b)に示すように、外側槽4は、内側容器3の外周側面3bよりも外側に配置されて排出口331よりも上方に延在した側壁41を備えている。
図3(c)に示すように、この実施形態では、側壁41は、送出管6の管上端6cよりも上方まで延在している。内側容器3は、側壁41の内周面に一端が固定されて内側に向かって延びた一対のアーム42に、取付部36がボルトで連結されることで着脱自在に外側槽4の槽内に固定されている。
図3(b)および
図3(c)に示すように、送出管6および揚砂管21は、側壁41を貫通している。送出管6および揚砂管21の貫通部分は、側壁41に溶接されており、その貫通部分は水密状態になっている。
【0029】
外側槽4は、下側部分に2つの槽傾斜面41aが形成された平面視で略正方形の角筒をした槽である。外側槽4の下端は、搬出装置5の傾斜角度と同じ角度で斜め上方に向かって切り欠かれている。槽傾斜面41aは、外側槽4の下端から一定の高さに形成されている。この槽傾斜面41aの下端は、搬出装置5に接続されている。内側容器3の排出口331から排出された濃縮水に含まれている砂は、槽傾斜面41aを滑り落ちて外側槽4の下端に接続された搬出装置5に堆積する。上述したように、搬出装置5に堆積した砂はスクリューコンベア51によって固液分離システム1の外部に排出される。
図3(c)に示すように、排出口331よりも上方であって、外側槽4の上端より少し下の部分には、オーバーフロー口43が形成されている。このオーバーフロー口43は、排出口331から濃縮水が多く排出されすぎてしまった場合に、外側槽4から濃縮水の上澄み液を流出させるものである。オーバーフロー口43から流出した上澄み液は、オーバーフロー管7を通して沈砂池9(
図1参照)に戻される。このオーバーフロー口43を設けることで、外側槽4の側壁41上端から濃縮水が溢れ出てしまうことを防止している。
【0030】
次に、この外側槽4の作用について主に
図3を用いて説明する。内側容器3の内部空間S1(
図2参照)および外側槽4の槽内が空の状態で、
図1に示す揚砂ポンプ2と搬出装置5を駆動すると、内部空間S1に砂混入水が供給され始める。そして、内部空間S1に供給された砂混入水の殆どは、排出口331から排出される。排出口331から排出された濃縮水が、外側槽4の槽内に貯留されていくことで、外側槽4に貯留された濃縮水によって形成される水面である槽水面WL2は徐々に上昇していく。槽水面WL2が排出口331に達すると、排出口331が濃縮水で閉塞されるため、排出口331から排出される濃縮水の量が減少する。すなわち、絞り部32における内部空間S1の断面積の減少による抵抗と排出口331に加わる濃縮水の水圧が相まって、排出口331から濃縮水が排出されにくくなり、送出口611から分離水が送出され始める。槽水面WL2が上昇するにつれ、排出口331に加わる濃縮水の水圧が高まるため、排出口331から排出される濃縮水の量は減少し、送出口611から送出される分離水の量は増加する。また、上述したように送出管6内を液体が満たすとサイフォンの原理により送出口611から沈砂池9に流れ出ようとする作用が分離水に生じるので、送出口611から送出される分離水の量はさらに増加し、排出口331から排出される濃縮水の量はさらに減少する。内部空間S1に供給される砂混入水の量が、例えば、1.0m3/minの場合には、槽水面WL2が流入口341(
図2(b)参照)よりも少し下になった時点で排出口331からはほぼ砂しか排出されなくなり、槽水面WL2は上昇しなくなる。
図3(b)および
図3(c)には、この時の槽水面WL2が示されている。排出された砂は、外側槽4の下端部分に堆積し、搬出装置5によって水切りされながら搬出されていく。なお、搬出装置5は、外側槽4の下端部分に砂がある程度堆積してから駆動を開始してもよく、間欠駆動をしてもよい。また、内部空間S1に供給される砂混入水の量を、例えば、1.5m3/minにした場合、送出口611から送出される分離水の量も増加するが、ある程度の割合の汚水を含む濃縮水が排出口331から排出され、槽水面WL2は上昇する。槽水面WL2がオーバーフロー口43に達した後は、砂混入水の上澄み液がオーバーフロー口43から0.3m3/min程度流出する。また、揚砂ポンプ2が駆動する前に、沈殿池に貯留されている汚水や水道水を外側槽4に流入させ、外側槽4を液体で満たしておいてもよい。外側槽4を液体で満たすと、内部空間S1にも外側槽4と同じ高さの液体が充填される。このため、槽水面WL2が送出口611の高さ以上になるように液体を貯留しておけば、揚砂ポンプ2(
図1参照)の駆動とほぼ同時に送出口611から分離水を送出することができる。従って、揚砂ポンプ2の2回目以降の駆動時には、外側槽4に貯留されている液体を抜き取らない限り、揚砂ポンプ2の駆動とほぼ同時に送出口611から分離水を送出することができる。
【0031】
この実施形態によれば、外側槽4に貯留された液体によって排出口331が塞がれるので、外側槽4の槽内に貯留された液体の水圧が排出口331に生じる。この水圧により、排出口331から濃縮水が排出されにくくなるので、送出口611から送出される分離水の量を増加させることができる。すなわち、排出口331から排出される濃縮水に対して、送出口611から送出される分離水の比率が高まるので、内側容器3における分離効率が高まる。また、外側槽4に排出される濃縮水が少ないので、外側槽4を小型化できる。さらに、絞り部32における絞り量(断面積の減少量)を少なくしても、排出口331から排出される濃縮水の量を抑制することができる。絞り部32における絞り量を少なくすることで、内側容器3における圧力損失を低減できるので、揚砂ポンプ2の動力を小さくすることができる。またさらに、排出口331から排出される濃縮液が飛び散ることがなく、濃縮液に含まれている砂が短時間で外側槽4の底に沈降しやすい。加えて、サイフォンの原理により送出口611から沈砂池9に流れ出ようとする作用が分離水に生じるので、揚砂ポンプ2の動力をさらに小さくすることができる。また、外側槽4に搬出装置5が接続され、外側槽4と内側容器3とが高さ方向において重複した位置に配置されているので、固液分離システム1全体の高さを低くできる。そして、内側容器3を地上に近い位置に配置できるので、揚砂ポンプ2に必要な揚程が低くなり、よりさらに小さな動力で固体混入水を内側容器3に移送することができる。
【0032】
また、この実施形態では、外側槽4の側壁41は、内部空間S1の上端よりも上方に延びているので、外側槽4の槽内に内部空間S1の上端より上方まで液体を貯留することができる。内部空間S1の上端まで液体を貯留することで、排出口331に加わる水圧が高まり、内部空間S1にある砂混入液における液体成分が、重力によって排出口331から流出しようとする力を打ち消すことができる。これにより、排出口331から排出される液体成分の量がより抑制され、濃縮水における砂の濃度をさらに高めることができる。また、排出口331から外側槽4に排出される濃縮水の量が減るので、外側槽4の大きさを小さくすることができる。さらに、前記絞り部32の減少量を少なくして圧力損失をより減少させることもできる。また、外側槽4の側壁41の高さを送出管6の管上端6cよりも上方にしているので、絞り部32の絞り量を極端に減らしたとしても、槽水面WL2が管上端6cに達すれば、送出管6内が分離水で満たされるのでサイフォンの原理による効果を得ることができる。
【0033】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略することがある。
【0034】
図4(a)は、固液分離システムの変形例を示す、
図3(b)と同様の正面図であり、
図4(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
【0035】
図4(a)に示すように、この変形例の固液分離システム1は、揚砂管21に微細気泡水供給管8が接続されている点および外側槽4の高さが低い点が、
図1乃至3に示した固液分離システム1と異なる。この変形例では、不図示のナノバブル水発生装置によって発生させたナノバブル水が、微細気泡水供給管8を通して揚砂管21に供給される。ただし、ナノバブル水の代わりにマイクロイバブル水を揚砂管21に供給してもよく、ナノバブル水とマイクロバブル水とを混合したマイクロナノバブル水を揚砂管21に供給しても良い。この微細気泡水供給管8は、微細気泡供給手段の一例に相当する。ナノバブル水は、粒径がナノメートルオーダーの空気の気泡を含む水を意味する。また、マイクロバブル水は、マイクロメートルオーダーの空気の気泡を含む水を意味する。なお、ナノバブル水として、ナノメートルオーダーの酸素の気泡を含む水を用いてもよい。同様にマイクロバブル水として、マイクロメートルオーダーの酸素の気泡を含む水を用いても良い。また、微細気泡水供給管8を内側容器3に直接接続してもよい。すなわち、微細気泡水供給管8は、揚砂ポンプ2(
図1参照)と排出口331の間に接続されていればよい。ナノバブル水およびマイクロバブル水は、洗浄効果を有しているので、砂混入水に加えることで砂混入水に含まれる砂および液体成分を洗浄することができる。揚砂ポンプ2(
図1参照)と排出口331の間で、ナノバブル水またはマイクロバブル水を砂混入水に加えることで、内側容器3の内部空間S1(
図2参照)において砂混入水を高い洗浄効果で洗浄することができる。すなわち、内部空間S1に発生した旋回流によって内部空間S1内においてナノバブルおよびマイクロバブルが砂混入水と混ざり合うので、高い洗浄効果を発揮させることができる。
【0036】
外側槽4の側壁41は、内側容器3の上端よりも上方で、送出管6の管上端6cよりも下方になる高さまで延在している。先の実施形態のように、外側槽4の側壁41を高くすれば、外側槽4の槽水面WL2を送出管6の管上端6cよりも高くすることも可能になる。そして、上述したように、排出口331に加わる水圧は槽水面WL2の高さに応じて高まるので槽水面WL2が高くなることは濃縮水における砂の濃度をさらに高めることや圧力損失を減少させる意味では好ましい。しかし、外側槽4の側壁41を高くしすぎると、固液分離システム1全体の高さも高くなり、外側槽4の製造費用も高価になってしまうので、この意味では外側槽4の側壁41の高さは低い方が好ましい。側壁41は、排出口331よりも上方に延びていれば、外側槽4の槽内に貯留された液体で排出口331を閉塞できるが、この変形例では、固液分離システム1全体の高さと排出口331に加わる水圧のバランスを重視した高さにしている。なお、オーバーフロー口43は、側壁41の高さに応じて適宜配置位置を設定すればよいが、この変形例では、流入口341(
図2(b)参照)と同等の高さにしている。
【0037】
次に、第2実施形態の固液分離システムについて説明する。
【0038】
図5(a)は、第2実施形態の固液分離システムにおける
図3(b)と同様の正面図であり、
図5(b)は、同図(a)におけるD-D断面図である。
【0039】
図5(a)および
図5(b)に示す固液分離システム1は、先の実施形態に示したものとは、内側容器3に絞り部32および排出部33が設けられていない点、外側槽4の高さが低い点、およびオーバーフロー口43の位置が異なる。内側容器3は、流体導入部31で構成されている。したがって、内部空間S1は、流体導入部31の内周面31aのみによって画定されている。内側容器3の下端は、円筒部311の下端であり、その下端の開口が排出口331になる。この排出口331は、直径500mmの開口であり、流入口341(
図2(b)参照)に対して相当程度大きい。このため、第2実施形態では、内側容器3における圧力損失がほとんど生じない。外側槽4は、
図3に示した外側槽4と比較して、絞り部32および排出部33の合計高さ分だけ低く形成されている。また、内側容器3に形成された流入口341は、その合計高さ分、外側槽4の下端に近い位置に配置されている。そして、外側槽4の高さが引くなった分、搬出装置5の長さ(高さ)も低くすることもできる。すなわち、内側容器3の高さを低くすることで、固液分離装置全体の高さを低くし、固液分離装置を小型化することができる。また、流入口341が地上に近い位置に配置されるので、揚砂ポンプ2に必要な揚程が低くなり、よりさらに小さな動力で固体混入水を内側容器3に移送することができる。オーバーフロー口43は、流入口341と同一の高さに配置されている。ただし、オーバーフロー口43は、流入口341よりも高い位置に配置してもよく、送出管6の管上端6cよりも高い位置に配置してもよい。こうすることで、外側槽4に素早く液体を貯留することができ、砂混入水が内部空間S1に供給され始めてから後述するサイフォンの原理による効果が生じるまでの時間を短くすることができる。
【0040】
次に、第2実施形態の作用について説明する。内側容器3の内部空間S1および外側槽4の槽内が空の状態で、
図1に示す揚砂ポンプ2と搬出装置5を駆動すると、内部空間S1に砂混入水が供給され始める。この実施形態では、2.0m3/minの砂混入水が内部空間S1に供給される。円筒部311の内周面31aの接線方向から流入口341(
図2(b)参照)を通って砂混入水が内部空間S1に導入されるので、内部空間S1には砂混入水の旋回流が形成される。砂混入水に含まれている砂は、汚水よりも比重が大きいため遠心力により円筒部311の内周面31aに押し付けられつつ、その内周面31aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下していく。一方、円筒部311の径方向の中心近傍には、砂混入水から砂が取り除かれた分離水が残る。外側槽4に貯留されている液体が少ないうちは、内部空間S1に供給された砂混入水の全てが、濃縮水として排出口331から排出される。排出口331から排出された濃縮水が、外側槽4の槽内に貯留されていくことで、槽水面WL2は徐々に上昇していく。槽水面WL2が排出口331に達すると、排出口331が濃縮水で閉塞され、槽水面WL2が上昇するにつれ、排出口331に加わる濃縮水の水圧が高まる。この第2実施形態では、
図2(b)に示した絞り部32がなく、流入口341に対して排出口331が十分大きいので、排出口331が濃縮水で閉塞された後も槽水面WL2が所定の高さになるまで、内部空間S1に供給された砂混入水の全てが排出口331から排出される。その後、槽水面WL2がオーバーフロー口43に達すると、濃縮水の上澄み液がオーバーフロー口43から流出するが、自然流下によってオーバーフロー口43から流出する上澄み液よりも揚砂ポンプ2によって供給される砂混入水の方が多いため槽水面WL2は上昇を続ける。槽水面WL2が送出管6の管下端6dに達すると、分離水が送出管6を通って送出され始める。槽水面WL2が管上端6cに達すると、送出管6内が液体で満たされ、サイフォンの原理により送出口611から沈砂池9に流れ出ようとする作用が砂混入水に生じるので、送出口611から送出される分離水の量はさらに増加し、槽水面WL2の上昇は停止し、その後下降して一定位置で安定する。
図5(a)および
図5(b)には、この時の槽水面WL2が示されている。槽水面WL2が安定している時にオーバーフロー口43からは、1.2m3/min程度の上澄み液が流出する。排出口331から排出された濃縮液に含まれている砂は、外側槽4の槽内を沈降して外側槽4の下端部分に堆積し、搬出装置5によって水切りされながら搬出されていく。
【0041】
この第2実施形態の固液分離システム1においても、先の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、外側槽4に貯留された液体によって生じた排出口331の水圧により、絞り部32がなくても排出口331から排出される濃縮水の量を抑制することができる。絞り部32がないので内側容器3における圧力損失がほぼゼロになり、揚砂ポンプ2の動力をより小さくすることができる。また、送出管6内に液体がない状態でも揚砂ポンプ2を駆動するだけで、送出管6内を液体で満たすことができるので、容易にサイフォンの原理による作用を生じさせることができる。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、固液分離システム1を沈砂池9に設置した例で説明したが、固液分離システム1は、沈殿池に設けてもよく、ダム湖等の貯水池に設けてもよい。また、工場等で生じた工場排水から水と金属粉等を分離する固液分離システム1として使用してもよい。さらに、絞り部32の代わりに、内部空間S1の断面積が流入口341側よりも排出口331側の方が大きくなるように形成された面積増大部を設けてもよい。また、絞り部32の代わりに、内部空間S1の断面積が流入口341側から排出口331側まで同一の同一面積部を設けてもよい。
【0043】
以上説明した実施形態や変形例によれば、小さな動力で駆動可能な固液分離システムを提供することができる。
【0044】
なお、以上説明した各実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や変形例に適用してもよい。
【0045】
以上説明した固液分離システムは、固体が混入した固体混入水を移送するポンプと、
前記ポンプによって移送された前記固体混入水が流入する流入口と、該固体混入水から一部の液体成分が取り除かれることで固体の濃度が高まった濃縮水を排出する排出口とを有する内側容器と、
前記濃縮水を受け入れる外側槽と、
前記内側容器に接続した一端から前記液体成分を受け入れ、該一端よりも下方に配置された他端から放出する送出管とを備え、
前記外側槽は、前記内側容器の外周側面よりも外側に配置されて前記排出口よりも上方に延びた側壁を備えることで、該外側槽が受け入れた前記濃縮水によって前記排出口から排出される該濃縮水の排出量を抑制可能なものであことを特徴とする。
【0046】
また、固体が混入した固体混入水を移送するポンプと、
前記ポンプによって移送された前記固体混入水が流入する流入口と、該固体混入水から一部の液体成分が取り除かれることで固体の濃度が高まった濃縮水を排出する排出口とを有する内側容器と、
前記濃縮水を受け入れる外側槽と、
前記内側容器に接続した一端から前記液体成分を受け入れ、該一端よりも下方に配置された他端から放出する送出管とを備え、
前記外側槽は、前記内側容器の外周側面よりも外側に配置されて前記排出口よりも上方に延びた側壁を備えたものであることを特徴とする固液分離システムであってもよい。
【0047】
この固液分離システムによれば、前記側壁が前記排出口よりも上方に延びているので、前記外側槽に貯留された液体によって該排出口が塞がれ、該外側槽内に貯留された液体の水圧が該排出口に生じる。この水圧によって、前記濃縮水が前記排出口からより排出されにくくなるので、特許文献1の分離容器のように絞り量の大きな絞り部がなくても、前記送出管に前記液体成分を送出することができる。これにより、前記内側容器における圧力損失を減少させることができるため、小さな動力でこの固液分離システムを駆動することが可能になる。また、前記排出口が液体で塞がれることにより前記送出管に液体成分が送出されて該送出管が液体で満たされやすくなる。前記送出管の前記他端が前記一端よりも下方に配置されているので、該送出管内を液体で満たすことで前記内側容器にある固体混入水に該送出管を通って該内側容器の外に流れ出ようとする力が生じる。これにより、さらに小さな動力でこの固液分離システムを駆動することができる。
【0048】
この固液分離システムにおいて、前記側壁は、前記送出管の上端よりも上方に延びたものであってもよい。
【0049】
特許文献1に開示された固液分離システムは、サイフォンの原理による作用を維持するために、池底まで延在した長い送出管を用いることで送出管の他端を水没させて送出管内を液体で満たしている。しかしながら、一旦送出管内の液体を抜いてしまうと、再度送出管の内部に液体を充填させるために分離装置本体と分離容器の間に設けられた弁の開閉などの煩雑な作業が必要になってしまう。前記側壁を前記送出管の上端よりも上方に延びたものにすることで、前記外側槽の液面が前記送出管の上端よりも上方になるまで該外側槽に液体を貯留することができる。前記送出管の上端よりも上方まで液体を貯留すると該送出管内が液体で満たされる。したがって、前記外側槽に液体を貯留するだけで容易にサイフォンの原理による作用を生じさせることができる。
【0050】
また、この固液分離システムにおいて、前記内側容器は、内周面が円筒状をした円筒部を有するものであり、
前記流入口は、該円筒部に設けられて前記固体混入水を該円筒部の接線方向から導入するものであってもよい。
【0051】
こうすることで、前記円筒部内に旋回流を発生させることができる。前記固体混入水に含まれている固体は、旋回流によって生じる遠心力により前記内周面側に押し付けられつつ下方に移動する。一方、固体が取り除かれた液体成分を前記円筒部の径方向の中心部分に集めることができるので、固体と液体の分離性能が高まる。この液体成分を送出するための送出口が、前記円筒部の径方向の中心に配置されていてもよい。
【0052】
さらに、この固液分離システムにおいて、前記内側容器は、前記流入口と前記排出口の間に、該内側容器の内周面によって画定された内部空間の断面積が該排出口に向かうに従って減少する逆円錐状をした絞り部を有するものであってもよい。
【0053】
前記絞り部により、前記排出口から排出される濃縮水の量を減らして、前記送出管を通って流れ出る液体成分の量を増やすことができる。この液体成分を送出するための送出口が、前記絞り部の径方向の中心に配置されていてもよい。
【0054】
また、この固液分離システムにおいて、前記外側槽に接続され、該外側槽が受け入れた前記濃縮水に含まれている固体を該外側槽の外部に搬出する搬出装置を備えた態様としてもよい。
【0055】
特許文献1に開示された固液分離システムでは、分離容器の下方に離間して、分離槽とスクリューコンベアを有する分離装置本体を設けているため、分離容器と分離装置本体の合計高さが高くなってしまう。上述した態様では、前記外側槽に前記搬出装置が接続されることで、該搬出装置が接続された該外側槽が特許文献1における分離装置本体として機能する。また、前記内側容器が特許文献1における分離容器として機能する。そして、前記外側槽と前記内側容器とが高さ方向において重複した位置に配置されているので、固液分離システム全体の高さを低くできる。また、前記内側容器を地上に近い位置に配置できるので、前記ポンプに必要な揚程が低くなり、小さな動力で固体混入水を該内側容器に流入させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 固液分離システム
2 揚砂ポンプ
3 内側容器
3a 内周面
3b 外周側面
4 外側槽
32 絞り部
41 側壁
331 排出口
341 流入口
S1 内部空間