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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153452
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20231011BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231011BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231011BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H05K9/00 W
C09D7/61
C09D201/00
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062735
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】516218384
【氏名又は名称】ハドラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】池田 正範
(72)【発明者】
【氏名】小田原 玄樹
【テーマコード(参考)】
4J038
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
4J038DL001
4J038DL021
4J038HA026
4J038NA19
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC06
4J038PC07
5E321AA21
5E321BB21
5E321BB23
5E321BB32
5E321BB34
5E321BB57
5E321GG05
5J020EA00
5J020EA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】適用される構造に制限がなく、電磁波の遮蔽性能に優れる電磁波遮蔽構造を提供する。
【解決手段】電磁波遮蔽構造には、コーティング対象となる基材1の表面2に、SiOを主成分としカーボンナノチューブ20を含有する薄膜のコーティング膜15が被覆されている。カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブであり、コーティング膜は、カーボンナノチューブを0.05~0.4質量%含有することとし、コーティング膜は、基材の両面に被覆されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング対象となる基材の表面に、SiOを主成分としカーボンナノチューブを含有する薄膜のコーティング膜が被覆されていることを特徴とする電磁波遮蔽構造。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽構造。
【請求項3】
前記コーティング膜は、前記カーボンナノチューブを0.05~0.4質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波遮蔽構造。
【請求項4】
前記コーティング膜は、前記基材の両面に被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波遮蔽構造。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、前記コーティング膜の厚さ方向に、前記基材側よりも該コーティング膜の表面側が密に分散されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波遮蔽構造。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブは、前記コーティング膜の表面側に一部が露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽構造に関する。
【0002】
電気・電子機器の稼働に伴い機器の外部に放射される不要な電磁波により、周辺の電子機器が影響を受けて誤作動を起こすことがある。このような電磁波の影響を抑制し、電子機器を安定して動作させるために、電気伝導率が高い電磁波遮蔽材料を用いて電子機器から外部への不要な電磁波の放射、或いは電子機器への電磁波の侵入を防止することが行われている。
【0003】
従来の電磁波遮蔽構造として、例えば電子機器等において電磁波の影響を抑制したい部分を電磁波の遮蔽性能に優れる金属ケースで覆うようにしたものがあるが、金属は、比重が大きいだけでなく、加工性にも乏しいという問題がある。
【0004】
特許文献1の電磁波遮蔽構造は、金属等を材料とする導電性フィラーを含有させた樹脂組成物により構成されることにより、電磁波遮蔽構造に導電性フィラーによる電磁波の遮蔽性能と、熱可塑性樹脂による加工性を付与しつつ、軽量化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-167387号公報(第5頁~第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子機器の小型化に伴い電子機器を構成する電子部品は非常に小さな構造体になっている。特許文献1の電磁波遮蔽構造は、樹脂組成物が溶融した溶融物を金型等に射出成形することにより構成されるため、金型から抜けるように形状が制限されるだけでなく、金型が作れないような微細な構造や薄肉の構造に適用することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、適用される構造に制限がなく、電磁波の遮蔽性能に優れる電磁波遮蔽構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の電磁波遮蔽構造は、
コーティング対象となる基材の表面に、SiOを主成分としカーボンナノチューブを含有する薄膜のコーティング膜が被覆されていることを特徴としている。
この特徴によれば、SiOを主成分とすることによりコーティング膜を薄膜に形成することができ、当該コーティング膜に電磁波遮蔽材料であるカーボンナノチューブを高密度で含有させることができるため、適用される構造に制限がなく、電磁波の遮蔽性能に優れる電磁波遮蔽構造を提供できる。
【0009】
前記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブであることを特徴としている。
この特徴によれば、コーティング膜の膜厚に対して繊維長が非常に長い多層カーボンナノチューブを含有することにより、コーティング膜内に分散されるカーボンナノチューブ同士が接触又は近接しやすくなるため、コーティング膜の面方向にカーボンナノチューブによる導電パスを均一に分布させることができる。
【0010】
前記コーティング膜は、前記カーボンナノチューブを0.05~0.4質量%含有することを特徴としている。
この特徴によれば、基材の表面に対するコーティング膜の成膜に影響を与えることなく電磁波の遮蔽性能を高めることができる。
【0011】
前記コーティング膜は、前記基材の両面に被覆されていることを特徴としている。
この特徴によれば、コーティング膜の膜厚を厚くすることなく、電磁波の遮蔽性能を効率的に高めることができる。
【0012】
前記カーボンナノチューブは、前記コーティング膜の厚さ方向に、前記基材側よりも該コーティング膜の表面側が密に分散されていることを特徴としている。
この特徴によれば、少量のカーボンナノチューブを含有させるだけで、コーティング膜の面方向にカーボンナノチューブの導電パスを均一に分布させやすくすることができる。
【0013】
前記カーボンナノチューブは、前記コーティング膜の表面側に一部が露出していることを特徴としている。
この特徴によれば、カーボンナノチューブが電磁波を吸収することにより変換された熱を外部に放射しやすくなるため、コーティング膜の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)~(c)は、実施例における基材にコーティング膜が生成されるメカニズムを時系列で示す断面図である。
図2図1(c)の点線囲い部の拡大図である。
図3】同軸管透過法による電磁波遮蔽性能の評価試験に用いた装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電磁波遮蔽構造を実施するための形態を図1図3を参照して以下に説明する。
【実施例0016】
(コーティング液)
本発明の電磁波遮蔽構造を形成するためのコーティング材としてのコーティング液10は、ベース剤10Aと、このベース剤10Aに添加された添加剤10Bとから主として構成されている。先ずベース剤10Aは、原料として少なくとも無機若しくは有機ポリシラザンと、アルキルシリケート縮合物とを含有しており、本実施例においては、これら無機若しくは有機ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物が不活性溶剤によって希釈されている。
【0017】
ベース剤10Aの原料として無機ポリシラザンを使用する場合、無機ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とは、両者の合計として1~80質量%の範囲の濃度、より好ましくは50~80質量%の範囲の濃度で、本実施例では不活性溶剤としてN-メチルピロリドンによって溶解されている。より詳しくは、無機ポリシラザンは0.1~5質量%で、残りがアルキルシリケート縮合物の割合で含有している。
【0018】
より詳しくは、無機ポリシラザンは、ペルヒドロポリシラザン、すなわちSi-H結合とSi-N結合とN-H結合を有し、例えば下記一般式(1)で表される-(SiH-NH)-ユニットから構成される鎖状構造の無機のポリマーである。
【0019】
【化1】
【0020】
なお、無機ポリシラザンは、鎖状構造のものに限らず、環状構造を有するポリマーであってもよく、これらの構造を複合的に有するポリマーであってもよい。
【0021】
ベース剤10Aの原料として有機ポリシラザンを使用する場合、有機ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とは、両者の合計として10~80質量%の範囲の濃度で、本実施例では不活性溶剤としてN-メチルピロリドンによって溶解されている。より詳しくは、有機ポリシラザンは10~80質量%で、残りがアルキルシリケート縮合物の割合で含有している。
【0022】
より詳しくは、有機ポリシラザンは、Si-N結合と官能基(R~R)を有し下記一般式(2)で表される-(SiR-NR)-ユニットから構成されるポリマーであり、特に、Siと直接結びつく官能基R,Rの少なくともいずれかが炭素(C)を有するアルキル基等の有機官能基から構成される有機のポリマーである。
【0023】
【化2】
【0024】
なお、本実施例における有機ポリシラザンは、官能基(R~R)としてのメチル基(CH)の含有率が50%以上に構成されている。また、有機ポリシラザンは、1種類の-(SiR-NR)-ユニットから構成されるポリマーに限らず、官能基(R~R)の組成が異なる複数種類の-(SiR-NR)-ユニットから構成されるポリマーであってもよい。また、有機ポリシラザンは、鎖状、環状、或いは架橋構造を有するポリマーであってもよく、これらの構造を複合的に有するポリマーであってもよい。
【0025】
より具体的には、本実施例における有機ポリシラザンとして例えば、有機ポリシラザンは、下記一般式(3)で表される-(SiH(CH)-NH)-ユニット、-(Si(CH-NH)-ユニット、-(SiR(CH)-NR)-ユニットを含むポリマーであり、特に、-(SiR(CH)-NR)-ユニットにおける官能基Rは、H又はCHであり、Nと直接結びつく官能基Rが反応を促進させる有機官能基となっている。
【0026】
【化3】
【0027】
更に、有機ポリシラザンは、含有するポリマーの構造が異なる複数種類の有機ポリシラザンが混合されたものであってもよく、例えば上記した一般式(3)で表される複数種類の有機ポリシラザンや他の構造を有する有機ポリシラザンが混合されてもよい。例えば、本実施例においてはヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン又はテトラメチルジシラザンから選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
アルキルシリケート縮合物は、例えばテトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラ-n-プロピルオルトシリケート、テトラ-i-プロピルオルトシリケート、テトラ-n-ブチルオルトシリケート、テトラ-sec-ブチルオルトシリケート、メチルポリシリケート及びエチルポリシリケートの中から選択される1種類又は2種類以上の縮合物である。
【0029】
不活性溶剤は、無機若しくは有機ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物に対して不活性な溶剤であり、好適にはN-メチルピロリドン、酢酸ブチル、ジブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テレピン油、ベンゼン、トルエン等の中から選択される。
【0030】
添加剤10Bは、上記したベース剤10Aに対して添加されるものであり、カーボンナノチューブ20が0.05~0.4質量%の範囲で添加されていればよく、好ましくは0.1~0.35質量%の範囲で添加され、更に好ましくは0.3~0.35質量%の範囲で添加される。
【0031】
なお、カーボンナノチューブ20は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのいずれか、或いはこれらを混合したものであってもよい。以下、本実施例においては、二層カーボンナノチューブを含めた複数層を有するカーボンナノチューブのことを多層カーボンナノチューブと言う。
【0032】
単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブは、コーティング液10への添加量を増やすことにより生成されるコーティング膜15(図1(c)参照)の電磁波の遮蔽性能を高めることができる。特に、多層カーボンナノチューブは、少量(0.1~0.35質量%)添加するだけでコーティング膜15の電磁波の遮蔽性能を効率よく高めることができる。
【0033】
なお、単層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブと比べて透光性が高く、0.05~0.15質量%の添加量において生成されるコーティング膜15の全光線透過率が90%以上となり、後述するようにSiOを主成分とするコーティング膜15本来の無色透明の状態が維持される。
【0034】
また、多層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブと比べて透光性が低く、0.05~0.4質量%の添加量において生成されるコーティング膜15は、無色透明又は黒色透明である。
【0035】
コーティング液10には、ベース剤10Aに対して添加剤10Bとしてのカーボンナノチューブ20が数μm程度の延長を維持した状態でコロイド状態で含有されることから、カーボンナノチューブ20がベース剤10Aと分離したり沈降したり等することなく均一に分散されている。また、上述したようにコーティング液10は、カーボンナノチューブ20が0.4質量%以下の少量のみ添加されていることから、黒色であるカーボンナノチューブ20の色調の影響をほとんど受けることなく、全体に透明性が極めて高く、いわゆる無色透明又は黒色透明の状態である。本実施例において、コーティング液10におけるカーボンナノチューブ20の分散度は0.10~0.60、更に好ましくは0.40~0.60であり、すなわち高い分散度を示している。なお、分散度は、顕微レーザラマン分光測定装置(RENISHAW製 型番InVia Reflex)を用いて評価した。
【0036】
(コーティング膜の被覆手順)
図1に示されるように、コーティング液10を被覆対象となる基材としての物品1の表面2に直接塗布又は散布する。これにより、コーティング液10に含まれる成分が水分と化学反応して単層又は複数層の薄膜のコーティング膜15を形成する。なお、本発明において「薄膜」とは数μm以下(10μm未満)の被膜を意味するものであり、コーティング膜15の膜厚として好ましくは10μm以下、より好適には5nm~5μmの被膜として成層したものである。
【0037】
なお、コーティング膜15の形成よりも前に、前工程として、物品1の表面2に精製水等の水(HO)を不織布若しくは霧吹き等で付着させてもよい。このようにすることで、物品1の表面2に付着させた水分とコーティング液10に含まれる成分との化学反応を促進させ、物品1の表面2に迅速かつ強固にコーティング膜15を形成することができる。
【0038】
(基材)
基材としては、樹脂材や金属材、木材、ゴム材、皮革等の素材から構成される各種の物品が適用可能であり、若しくは電子機器を構成する電子部品であってもよい。
【0039】
(コーティング膜の形成のメカニズム)
次に、本発明に係るコーティング膜15が形成されるメカニズムについて説明する。なお、ここではコーティング液10を構成するベース剤10Aの原料として無機ポリシラザンが使用される場合を例に挙げて説明する。図1(a)に示されるように、被覆対象として例えば樹脂材からなる物品1の表面2には多くの場合、結露や空気中の湿気により例え僅かでも複数の水分6,6,‥(水滴)が付着している。この物品1の表面2にコーティング液10を薄膜状に塗布又は散布して被覆すると、コーティング液10に含まれるベース剤10Aを構成する無機ポリシラザンであるペルヒドロポリシラザンが、空気中の水分(HO)と化学反応することで、物品1の表面2にSiOを主成分とする無機構造を有する被覆層が生成される。なお、上記した化学反応で微量の気体(NH,H)が副次的に生成されるが、これらの気体は当然のことながら物品1の表面2に残らず大気中に揮発する。
【0040】
すなわち、図1(b)に示されるように、コーティング液10は、空気に接する表層面10aにて、空気中に含まれる水分と化学反応することで、コーティング膜15の副生成物である水素やアンモニア等のガスが表層から揮発するとともに、コーティング膜15の表面側の被覆層11が生成される。
【0041】
また、物品1の表面2に被覆されたコーティング液10は、物品1の表面2に接する背層面10bにて、表面2に付着した水分6,6,‥(水滴)又は表面2に終端として存在しているヒドロキシル基-OHと化学反応することで、水素やアンモニア等のガスが被覆層内を上昇し表層から揮発するとともに、コーティング膜15の背面側の被覆層12が生成される。
【0042】
このように、先ずコーティング液10の表層面10a及び背層面10bにてそれぞれ被覆層11,12が生成される。次に、表層側から背層側に向けて被覆層11を拡層するとともに、背層側から表層側に向けて被覆層12を拡層することで、順次中間の被覆層を生成し、最終的に外気に接する表層面14aと、物品1の表面2に接する背層面14bと、に亘るSiOを主成分とするコーティング膜15が生成される。なお、コーティング液10が有機ポリシラザンを主成分とする場合も、シロキサン結合による主鎖の一部に有機官能基が側鎖として結びついた無機有機複合構造を有するコーティング膜となる点以外、コーティング膜15が形成されるメカニズムは略同一である。
【0043】
このように、本発明のコーティング膜15は、無機若しくは有機ポリシラザンを反応させて生成したSiOを主成分とすることで、平面的に広がり易く且つ密度の高い被膜層を形成できるため、ナノレベルの薄膜構造を達成することができる。
【0044】
図1(c)に示されるように、コーティング膜15を被覆する前の物品1の表面2には、鏡面加工等の特段の表層処理を行わない限り、製造工程等で生じる小傷等によりマイクロレベルの微細な多数の凹凸部3が形成されている。コーティング液10は、物品1の表面2を被覆するとともに凹凸部3内に入り込んだ状態で、上記したように硬化することで、これらの凹凸部3内に入り込んで硬化したコーティング膜の一部がアンカー部17(図2参照)として機能するため、コーティング膜15は物品1の表面2に対しより強固に密着する。
【0045】
また、図2に示されるように、このコーティング膜15の層内には、コーティング液10に含まれる添加剤10B、すなわち炭素成分としてのカーボンナノチューブ20が多数混在しており、その一部が後述するように表層面14aに表出している。また、カーボンナノチューブ20の一部は、背層面14bやアンカー部17にも表出しており、物品1の表面2に接触することで、凹凸の多い表面、すなわちその広い比表面積により、物品1の表面2に対するコーティング膜15の密着性を更に高めることができる。
【0046】
また、このコーティング膜15は、ベース剤10Aの原料として無機ポリシラザンが使用されることにより、ナノレベルの薄膜に形成されるものであり、より詳しくは膜厚が5~500nm程度である。また、コーティング膜15は、ベース剤10Aの原料として有機ポリシラザンが使用される場合は、ナノレベルからマイクロレベルの薄膜に形成されるものであり、より詳しくは膜厚が5nm~5μm程度である。よってSiOを主成分とするコーティング膜であるにも関わらず柔軟性に富み、上記したアンカー部17によるアンカー効果とも相俟って、物品1の表面2が例え布材等の変形を生じるものであっても剥離等することなく、表面2の変形に追従してコーティング膜15の被覆性を維持することができる。
【0047】
なお、物品1の表面2が上記した凹凸部3をほとんど有さない平滑面である場合、コーティング膜15を被覆する前処理として、物品1の表面2をやすり等により目粗し処理を行うことによって、物品1の表面2に凹凸部3を積極的に生成してもよく、このようにすることで、コーティング膜15のアンカー効果を得ることができる。
【0048】
この目粗し処理を行うことによって、物品1の表面2に算術平均粗さ0.1~1μm程度の範囲の凹凸部3を形成すると好ましく、このようにすることで、コーティング膜15のアンカー効果を高めることができる。
【0049】
目粗し処理の後、例えばエアガン等の空気噴射手段を用いて、物品1の表面2にやすり掛け等で生じた樹脂粉を吹き飛ばす清浄処理を行う。更にこの清浄処理の後、所定時間を置くことで物品1の表面2に結露等を生じさせ、自然由来の水分を付着させる。
【0050】
また、この場合、物品1の表面2の目粗し処理及び清浄処理の後、目粗しによって凹凸部3が形成された物品1の表面2に、被覆工程よりも前段の前処理工程として、例えば霧吹き等の水分付与手段によって水分を積極的に付着させ、後にコーティング膜15を被覆してもよく、このようにすることで、物品1の表面2に付着させた水分と、この物品1の表面2に接するコーティング液10との化学反応を促進できる。なお、物品1の表面2に、特に目粗し処理を施すことなく、水分付与手段によって水分を付着させてもよい。
【0051】
(コーティング膜の表面の形状)
図1に示されるように、物品1の表面2に被覆されたコーティング膜15の表面は、副生成物であるガスの気泡が揮発した箇所の跡に、コーティング膜15の表層面14a上にナノレベルで凹凸形状を成す凹凸部16が形成される。より詳しくは、上記した化学反応により水素やアンモニア等の気泡が多数生成され、これらの気泡がコーティング膜15の平滑な表層面14aから気中に向け放出される際に、気泡に接するコーティング膜15の表層面14aに生じる表面張力の影響、及び化学反応に伴うこの表層面14aの初期硬化のタイミングの影響が相俟って、当該平滑面にナノレベルの凹部16b及び凸部16aからなる凹凸部16を生成するものと想定される。なお、図1及び図2では凹凸部16の凹凸寸法を実寸よりもデフォルメして示している。
【0052】
また、被覆前の物品1の表面2に当初形成された凹凸部3よりも、コーティング膜15の表面に形成された凹凸部16の方が凹凸の深さ・高さ寸法が小さいため、物品1の表面2にコーティング膜15を被覆することで、被覆前よりも被覆後の方が表面は平滑に生成される。
【0053】
なお言うまでもないが、上記した副生成物であるガスは、コーティング膜15の表面に一様に生成されるものであることから、凹凸部16は、コーティング膜15の単位面積当たりの個数や凹部の深さ、凸部の高さにバラつきを生じることなく均一に形成されるものである。
【0054】
更に、表層面14a上には、コーティング膜15内に混在する添加剤10B、すなわちカーボンナノチューブ20の一部表面が外部に露出した状態で固定されている。なお、本実施例において、カーボンナノチューブ20が単層カーボンナノチューブである場合は、平均外径1.1~2.1nm、かつ繊維長(延長)が1~10μm程度(平均延長略5μm)であり、非常にアスペクト比が高く、且つ枝分かれのない一本毎に独立した繊維状に形成されている。また、カーボンナノチューブ20が多層カーボンナノチューブである場合は、平均外径10nm、かつ繊維長(延長)が100~200μm程度(平均延長略150μm)であり、非常にアスペクト比が高く、且つ枝分かれのない一本毎に独立した繊維状に形成されている。
【0055】
また、カーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の面方向に均一に分散されている。コーティング膜15におけるカーボンナノチューブ20の分散度は0.10~0.60、更に好ましくは0.40~0.60であり、すなわち高い分散度を示している。なお、分散度は、顕微レーザラマン分光測定装置(RENISHAW製 型番InVia Reflex)を用いて評価した。
【0056】
より詳しくは、前述したように、コーティング液10のベース剤10Aを構成するペルヒドロポリシラザンが水分(HO)と化学反応して副次的に気体(NH,H)を生成し、これらの気体がコーティング液10中の周辺のカーボンナノチューブ20を伴いながら上昇する。よって図2に示されるように、コーティング液10中の一部のカーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の表層面14a近傍に寄せ集まり、特に気体の揮発によって表層面14a上に形成される凹凸部16に集まることになる。すなわち、カーボンナノチューブ20は、成膜過程における気体の揮発に起因して、コーティング膜15の厚さ方向に、物品1の表面2側が疎で、この物品1の表面2側よりも該コーティング膜15の表層面14a側が密に分散されている。これにより、コーティング膜15の表層面14a側の機械的強度が効率よく高められるとともに、表層面14aの略全面に多数のカーボンナノチューブ20が互いに接触又は近接しながら細網状に張り巡らされるため、特に表層面14aにおける導電性が向上する。
【0057】
また、カーボンナノチューブ20の延長(単層カーボンナノチューブの場合略5μm、多層カーボンナノチューブの場合略150μm)は、本実施例のコーティング膜15の膜厚(ベース剤10Aの原料が無機ポリシラザンの場合5~500nm、ベース剤10Aの原料が有機ポリシラザンの場合略5nm~5μm)と略同一、或いは長いことから、一部のカーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の厚さ方向に亘って配設され、その一端が物品1の表面2に電気的に接触するとともに、その他端がコーティング膜15の表層面14aに露出する。このようなカーボンナノチューブ20によって、物品1自体とコーティング膜15の表層面14aとの導電性を持たせることができる。
【0058】
また、コーティング膜15の表層面14a側に分散されたカーボンナノチューブ20の一部(端部若しくは端部を除く中間部)は、凸部16aの内部に埋設するように、表層面14aに配設されている。このようにすることで、コーティング後の物品1の使用に伴い、コーティング膜15の表層面14a上で突出形状を成す凸部16aの機械的強度が高まり、凸部16aが削られ難くなる。また、凸部16aが一部削られた場合にも、該凸部16a内に埋設されたカーボンナノチューブ20の一部が表面に露出するため、後述するように放熱性を高めることができる。更に、コーティング膜15の表層面14a側に分散されたカーボンナノチューブ20の一部(端部若しくは端部を除く中間部)は、凹部16bの内部に露出して配設されるため、コーティング膜15の成膜の初期から機械的強度及び放熱性を高めることができる。
【0059】
また、本発明に係るコーティング液10を塗布することで物品1の表面2に形成されたコーティング膜15は、そのベースが無機成分、すなわちSiOからなり、更にコーティング膜15内に混在するカーボンナノチューブ20は安定した性質を有するため、基材や外部に溶出・気化することなく、劣化せずに長期にわたり被膜状態を維持することができる。
【0060】
(電磁波遮蔽性能の評価試験)
アクリル樹脂により形成される円筒形状の測定用治具(基材)の表面に対して、ベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用したコーティング液に多層カーボンナノチューブを添加し、容器を手で振って5分間撹拌することにより分散(後述する通常分散)したものを膜厚5μm以下となるように塗布し、同軸管透過法によりコーティング膜の遠方界での電磁波の遮蔽性能(透過特性)の評価を行った。詳しくは、図3に示されるように、同軸ケーブル30の内導体31と外導体32との間に測定用治具を取り付け、ネットワークアナライザを用いて透過特性の測定を行う。なお、周波数500MHz~18GHzの範囲における遮蔽性能の評価には、外径6.8~13.5mm、内径1.9~3mm、厚さ最大1mmの測定治具を用いる。また、周波数45MHz~3GHzの範囲における遮蔽性能の評価には、外径40~48.5mm、内径6.1~15mm、厚さ最大2mmの測定治具を用いる。
【0061】
まず、下記サンプルA-0~A-4について、同軸管透過法により周波数1GHz、5GHz、10GHz及び18GHzにおける電磁波の遮蔽性能(透過特性)の評価を行った結果を表1に示す。なお、サンプルA-0は、測定用治具の片面(入射側の面)にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを含有しないコーティング液(以下、コーティング液Aと称する)を塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具、サンプルA-1は、測定用治具の片面にコーティング液Aに多層カーボンナノチューブを0.1質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルA-2は、測定用治具の片面にコーティング液Aに多層カーボンナノチューブを0.2質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルA-3は、測定用治具の片面にコーティング液Aに多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルA-4は、測定用治具の片面にコーティング液Aに多層カーボンナノチューブを0.35質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具である。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるように、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを少量0.1~0.35質量%含有させることにより、コーティング膜を被膜しないサンプルと比較して、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有させたサンプルA-1~A-4における電磁波の遮蔽性能の差は、1GHzにおいて最大-1.48dB(約15%遮蔽性能向上)、5GHzにおいて最大-2.16dB(約23%遮蔽性能向上)、10GHzにおいて最大-2.39dB(約32%遮蔽性能向上)、18GHzにおいて最大-3.45dB(約29%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0064】
なお、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有しないサンプルA-0における電磁波の遮蔽性能には、有意差を確認できなかった。
【0065】
次に、下記サンプルB-0~B-4について、同軸管透過法により周波数100MHz、500MHz、1GHz及び3GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表2に示す。なお、サンプルB-0は、測定用治具の片面(入射側の面)にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを含有しないコーティング液(以下、コーティング液Bと称する)を塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具、サンプルB-1は、測定用治具の片面にコーティング液Bに多層カーボンナノチューブを0.1質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルB-2は、測定用治具の片面にコーティング液Bに多層カーボンナノチューブを0.2質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルB-3は、測定用治具の片面にコーティング液Bに多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルB-4は、測定用治具の片面にコーティング液Bに多層カーボンナノチューブを0.35質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具である。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示されるように、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを0.1~0.35質量%含有させることにより、コーティング膜を被膜しないサンプルと比較して、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有させたサンプルB-1~B-4における電磁波の遮蔽性能の差は、100MHzにおいて最大-0.52dB(約6%遮蔽性能向上)、500MHzにおいて最大-0.91dB(約10%遮蔽性能向上)、1GHzにおいて最大-1.10dB(約12%遮蔽性能向上)、3GHzにおいて最大-1.79dB(約16%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0068】
なお、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有しないサンプルB-0における電磁波の遮蔽性能には、有意差を確認できなかった。
【0069】
次に、下記サンプルC-0,C-3,C-4について、同軸管透過法により周波数1GHz、5GHz、10GHz及び18GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表3に示す。なお、サンプルC-0は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを含有しないコーティング液(以下、コーティング液Cと称する)を塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具、サンプルC-3は、測定用治具の両面にコーティング液Cに多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルC-4は、測定用治具の両面にコーティング液Cに多層カーボンナノチューブを0.35質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具である。なお、ここでは、測定用治具の片面にコーティング膜を被膜した結果(表1参照)において、電磁波の遮蔽性能が好適に向上した多層カーボンナノチューブ0.3~0.35質量%添加のものについて評価を行った。
【0070】
【表3】
【0071】
表3に示されるように、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを0.3~0.35質量%含有させることにより、コーティング膜を被膜しないサンプルと比較して、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有させたサンプルC-3,C-4における電磁波の遮蔽性能の差は、1GHzにおいて最大-2.10dB(約21%遮蔽性能向上)、5GHzにおいて最大-4.17dB(約36%遮蔽性能向上)、10GHzにおいて最大-3.93dB(約35%遮蔽性能向上)、18GHzにおいて最大-4.54dB(約37%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0072】
このように、測定用治具の両面に多層カーボンナノチューブを含有させたコーティング膜が被膜されることにより、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。
【0073】
なお、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有しないサンプルC-0における電磁波の遮蔽性能には、有意差を確認できなかった。
【0074】
次に、下記サンプルD-0,D-3,D-4について、同軸管透過法により周波数100MHz、500MHz、1GHz及び3GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表4に示す。なお、サンプルD-0は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを含有しないコーティング液(以下、コーティング液Dと称する)を塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具、サンプルD-3は、測定用治具の両面にコーティング液Dに多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具、サンプルD-4は、測定用治具の両面にコーティング液Dに多層カーボンナノチューブを0.35質量%添加したものを塗布することによりコーティング膜が被覆された測定用治具である。なお、ここでは、測定用治具の片面にコーティング膜を被膜した結果(表2参照)において、電磁波の遮蔽性能が好適に向上した多層カーボンナノチューブ0.3~0.35質量%添加のものについて評価を行った。
【0075】
【表4】
【0076】
表4に示されるように、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを0.3~0.35質量%含有させることにより、コーティング膜を被膜しないサンプルと比較して、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有させたサンプルD-3,D-4における電磁波の遮蔽性能の差は、100MHzにおいて最大-0.79dB(約9%遮蔽性能向上)、500MHzにおいて最大-1.32dB(約14%遮蔽性能向上)、1GHzにおいて最大-1.67dB(約17%遮蔽性能向上)、3GHzにおいて最大-4.72dB(約29%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0077】
このように、測定用治具の両面に多層カーボンナノチューブを含有させたコーティング膜が被膜されることにより、周波数100MHz~3GHzの範囲においてもコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。
【0078】
なお、被膜なしのサンプルと、コーティング膜に多層カーボンナノチューブを含有しないサンプルD-0における電磁波の遮蔽性能には、有意差を確認できなかった。
【0079】
(電磁波遮蔽性能への分散度の影響)
次いで、ベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用したコーティング液に多層カーボンナノチューブを添加し、マグネチックスターラー(アズワン製 型番CT-1AT)を用いて中速(回転数約750rpm)で1日又は3日間撹拌することにより、多層カーボンナノチューブの分散度を高めることによるコーティング膜の遠方界での電磁波の遮蔽性能への影響を調べた。なお、撹拌操作以外は、上記電磁波遮蔽性能の評価試験と同様の測定用治具、装置を用いた同軸管透過法により評価を行った。
【0080】
まず、下記サンプルE-31について、同軸管透過法により周波数1GHz、5GHz、10GHz及び18GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表5に示す。なお、サンプルE-31は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで1日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0081】
【表5】
【0082】
表5に示されるように、サンプルE-31は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルE-31は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し1日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルC-3(表3,表5(再掲)参照)と比べて、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルC-3と、1日間撹拌して分散度を高めたサンプルE-31における電磁波の遮蔽性能の差は、1GHzにおいて-2.44dB(約24%遮蔽性能向上)、5GHzにおいて-2.87dB(約28%遮蔽性能向上)、10GHzにおいて-3.47dB(約33%遮蔽性能向上)、18GHzにおいて-4.34dB(約39%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0083】
次に、下記サンプルF-33について、同軸管透過法により周波数1GHz、5GHz、10GHz及び18GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表6に示す。なお、サンプルF-33は、測定用治具の片面(入射側の面)にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで3日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0084】
【表6】
【0085】
表6に示されるように、サンプルF-33は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルF-33は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し3日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルA-3(表1,表6(再掲)参照)と比べて、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルA-3と、3日間撹拌して分散度を高めたサンプルF-33における電磁波の遮蔽性能の差は、1GHzにおいて-0.74dB(約8%遮蔽性能向上)、5GHzにおいて-0.82dB(約9%遮蔽性能向上)、10GHzにおいて-0.93dB(約10%遮蔽性能向上)、18GHzにおいて-0.72dB(約8%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0086】
次に、下記サンプルG-33について、同軸管透過法により周波数1GHz、5GHz、10GHz及び18GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表7に示す。なお、サンプルG-33は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで3日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0087】
【表7】
【0088】
表7に示されるように、サンプルG-33は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルG-33は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し3日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルC-3(表3,表7(再掲)参照)と比べて、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルC-3と、3日間撹拌して分散度を高めたサンプルG-33における電磁波の遮蔽性能の差は、1GHzにおいて-2.09dB(約21%遮蔽性能向上)、5GHzにおいて-2.93dB(約29%遮蔽性能向上)、10GHzにおいて-3.16dB(約30%遮蔽性能向上)、18GHzにおいて-4.21dB(約38%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0089】
なお、サンプルG-33と、1日間撹拌して分散した点以外は同一条件であるサンプルE-31(表5,表7(再掲)参照)における電磁波の遮蔽性能には、有意差を確認できなかった。すなわち、本実施例においては、コーティング液を1日間撹拌することによりコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が十分に向上することが確認された。
【0090】
このように、多層カーボンナノチューブの分散度を高めることにより、周波数1GHz~18GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。これは、コーティング膜に含有される多層カーボンナノチューブの分散度が高まることにより、導電パスを更に均一に分布させることができ、電磁波の遮蔽性能が向上したものと推察される。
【0091】
次に、下記サンプルH-11,H-31について、同軸管透過法により周波数100MHz、500MHz、1GHz及び3GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表8に示す。なお、H-11は、測定用治具の片面(入射側の面)にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.1質量%添加しマグネチックスターラーで1日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具、サンプルH-31は、測定用治具の片面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで1日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0092】
【表8】
【0093】
表8に示されるように、サンプルH-11は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数100MHz~1GHzの範囲では、コーティング膜の電磁波の遮蔽性能に有意差を確認できなかったが、3GHzにおいてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が低下することが確認された。
【0094】
また、表8に示されるように、サンプルH-31は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルH-31は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し1日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルB-3(表2,表8(再掲)参照)と比べて、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルB-3と、1日間撹拌して分散度を高めたサンプルH-31における電磁波の遮蔽性能の差は、100MHzにおいて-1.36dB(約14%遮蔽性能向上)、500MHzにおいて-1.60dB(約17%遮蔽性能向上)、1GHzにおいて-1.78dB(約19%遮蔽性能向上)、3GHzにおいて-4.10dB(約38%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0095】
次に、下記サンプルI-11,I-31について、同軸管透過法により周波数100MHz、500MHz、1GHz及び3GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表9に示す。なお、サンプルI-11は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.1質量%添加しマグネチックスターラーで1日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具、サンプルI-31は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで1日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0096】
【表9】
【0097】
表9に示されるように、サンプルI-11は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数100MHz~1GHzの範囲では、コーティング膜の電磁波の遮蔽性能に有意差を確認できなかったが、3GHzにおいてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が低下することが確認された。
【0098】
また、表9に示されるように、サンプルI-31は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルI-31は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し1日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルD-3(表4,表9(再掲)参照)と比べて、周波数100MHz~1GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルD-3と、1日間撹拌して分散度を高めたサンプルI-31における電磁波の遮蔽性能の差は、100MHzにおいて-0.88dB(約10%遮蔽性能向上)、500MHzにおいて-1.70dB(約18%遮蔽性能向上)、1GHzにおいて-2.20dB(約22%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0099】
次に、下記サンプルJ-33について、同軸管透過法により周波数100MHz、500MHz、1GHz及び3GHzにおける電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表10に示す。なお、サンプルJ-33は、測定用治具の片面(入射側の面)にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで3日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0100】
【表10】
【0101】
表10に示されるように、サンプルJ-33は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルJ-33は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し3日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルB-3(表2,表10(再掲)参照)と比べて、周波数500MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が概ね向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルB-3と、3日間撹拌して分散度を高めたサンプルJ-33における電磁波の遮蔽性能の差は、500MHzにおいて-0.19dB(約18%遮蔽性能向上)、1GHzにおいて-0.98dB(約11%遮蔽性能向上)、3GHzにおいて-3.60dB(約34%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0102】
なお、サンプルJ-33は、1日間撹拌して分散した点以外は同一条件であるサンプルH-31(表8,表10(再掲)参照)と比べて、電磁波の遮蔽性能の向上は確認されなかった。すなわち、本実施例においては、コーティング液を1日間撹拌することによりコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が十分に向上することが確認された。
【0103】
次に、下記サンプルK-33について、同軸管透過法により周波数100MHz~3GHzの範囲における電磁波の遮蔽性能の評価を行った結果を表11に示す。なお、サンプルK-33は、測定用治具の両面にベース剤の原料として有機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加しマグネチックスターラーで3日間撹拌したものを塗布することによりコーティング膜が被膜された測定用治具である。
【0104】
【表11】
【0105】
表11に示されるように、サンプルK-33は、被膜なしのサンプルと比べて、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。更に、サンプルK-33は、コーティング液に多層カーボンナノチューブを0.3質量%添加し3日間撹拌して分散度を高めることにより、通常分散した点以外は同一条件であるサンプルD-3(表4,表11(再掲)参照)と比べて、周波数500MHz~1GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。詳しくは、通常分散したサンプルD-3と、3日間撹拌して分散度を高めたサンプルK-33における電磁波の遮蔽性能の差は、500MHzにおいて-0.20dB(約2%遮蔽性能向上)、1GHzにおいて-0.91dB(約10%遮蔽性能向上)となることが確認された。
【0106】
なお、サンプルK-33は、1日間撹拌して分散した点以外は同一条件であるサンプルI-31(表9,表11(再掲)参照)と比べて、電磁波の遮蔽性能の向上は確認されなかった。すなわち、本実施例においては、コーティング液を1日間撹拌することによりコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が十分に向上することが確認された。
【0107】
このように、多層カーボンナノチューブの分散度を高めることにより、周波数100MHz~3GHzの範囲においてコーティング膜の電磁波の遮蔽性能が向上することが確認された。これは、コーティング膜に含有される多層カーボンナノチューブの分散度が高まることにより、導電パスを更に均一に分布させることができ、電磁波の遮蔽性能が向上したものと推察される。
【0108】
また、コーティング液におけるカーボンナノチューブの分散度を高めることにより、コーティング膜におけるカーボンナノチューブの分散度も高まり、コーティング膜の測定位置の違いによる測定値のばらつきが抑制されることが確認されている。すなわち、コーティング液におけるカーボンナノチューブの分散度を高めることにより、コーティング膜における電磁波の遮蔽性能のばらつきを抑制することができる。
【0109】
更に、コーティング膜における多層カーボンナノチューブの含有量、分散度、基材としての測定用治具の片面あるいは両面にコーティング膜を形成するか否か、或いは膜厚等の条件によって、特定の範囲の周波数を有する電磁波の遮蔽性能を向上させることが可能であると推察される。
【0110】
また、ベース剤の原料として無機ポリシラザンを使用し多層カーボンナノチューブを含有させたコーティング液を塗布した場合にも、電磁波の遮蔽性能が向上することが確認されている。
【0111】
また、ベース剤の原料として無機若しくは有機ポリシラザンを使用し単層カーボンナノチューブを含有させたコーティング液を塗布した場合にも、電磁波の遮蔽性能が向上することが確認されている。
【0112】
以上説明したように、コーティング対象となる基材の表面に、SiOを主成分としカーボンナノチューブ20を含有する10μm以下の薄膜のコーティング膜15が被覆されることにより、当該コーティング膜15に電磁波遮蔽材料であるカーボンナノチューブ20を高密度で含有させることができるため、基材が微細な構造や薄肉の構造を有していてもカーボンナノチューブ20を高密度で含有させたコーティング膜15を被膜可能となり適用される構造に制限がなく、電磁波の遮蔽性能に優れる電磁波遮蔽構造を提供できる。
【0113】
また、コーティング膜15にカーボンナノチューブ20を高密度で含有させることにより、コーティング膜15の強度を高めることができる。
【0114】
また、コーティング膜15は、10μm以下の薄膜に形成されるため、基材の変形に対する追従性が高い。
【0115】
また、カーボンナノチューブ20として、コーティング膜15の膜厚に対して繊維長が非常に長い多層カーボンナノチューブを含有させることにより、コーティング膜15内に分散されるカーボンナノチューブ20同士が接触又は近接しやすくなるため、コーティング膜15の面方向にカーボンナノチューブ20による導電パスを均一に分布させることができる。また、これにより、カーボンナノチューブ20が分散されたコーティング膜15における電磁波の遮蔽性能のばらつきを抑制できる。
【0116】
また、コーティング膜15は、カーボンナノチューブ20を0.05~0.4質量%と少量を含有することにより、基材の表面に対するコーティング膜の成膜に影響を与えることなく電磁波の遮蔽性能を高めることができる。また、コーティング膜15に含有されるカーボンナノチューブ20は少量であるため、コーティング膜15は無色透明又は黒色透明となり、透明性を維持することができる。
【0117】
また、コーティング膜15は、基材の両面に被覆されることにより、コーティング膜15の膜厚を厚くすることなく、電磁波の遮蔽性能を効率的に高めることができる。なお、本発明において「基材の両面」とは、基材における電磁波の入射側の面と、透過側の面のことである。
【0118】
また、カーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の厚さ方向に、基材側よりも該コーティング膜15の表面側が密に分散されていることにより、少量のカーボンナノチューブ20を含有させるだけで、コーティング膜15の面方向にカーボンナノチューブ20の導電パスを均一に分布させやすくすることができる。
【0119】
また、カーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の面方向に均一に分散されていることにより、コーティング膜15の膜構造を損なうことなく、コーティング膜15の電磁波の遮蔽性能を高めることができる。
【0120】
また、カーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の表面側に一部が露出していることにより、カーボンナノチューブ20が電磁波を吸収することにより変換された熱を外部に放射しやすくなるため、コーティング膜15の温度上昇を抑制することができる。更に、カーボンナノチューブ20は、コーティング膜15の厚さ方向に、基材側よりも該コーティング膜15の表面側が密に分散されていることにより、コーティング膜15の表面側においてカーボンナノチューブ20が電磁波を吸収することにより変換された熱を外部に一層放射しやすくなっている。
【0121】
また、コーティング膜15が10μm以下の厚さの薄膜に成膜されることにより、コーティング液10において、繊維長が1~10μm程度である単層カーボンナノチューブ、或いは繊維長が100~200μm程度である多層カーボンナノチューブがベース剤に0.05~0.4質量%の割合で少量添加されているだけで電磁波の遮蔽性能を高める効果が得られるととともに、カーボンナノチューブ20の添加量が少なく製造コストを低減できる。
【0122】
また、本実施例の電磁波遮蔽構造は、コーティング膜にカーボンナノチューブが含有されているため、カーボンナノチューブに特有のラマンスペクトルを検出することにより、基材に対するコーティング膜の被覆の有無を評価することができるため、製品管理が容易である。
【0123】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0124】
例えば、前記実施例では、コーティング膜はSiOを主成分としているが、これに限らず、微量又はSiOに影響を与えない程度の少量であれば主成分として他の成分を含有してもよい。
【0125】
また、コーティング液は、ベース剤の原料として無機ポリシラザンと有機ポリシラザンが混合して使用されるものであってもよい。
【0126】
また、前記実施例では、電磁波遮蔽構造は、コーティング液を基材の表面に被覆してコーティング膜を成膜することにより構成されるものとして説明したが、これに限らず、例えばコーティング液を基材とは別体のフィルムの表面に被覆してコーティング膜を成膜し、このフィルムを基材の表面に貼り付けることにより構成されてもよい。
【0127】
また、前記実施例では、電磁波遮蔽構造は、添加剤としてカーボンナノチューブ20を含有しているが、カーボンナノチューブに加えて例えば、グラフェン等の他の炭素材料やセルロースナノチューブを含有してもよいし、あるいは抗菌効果を有する添加剤若しくは抗ウイルス効果を有する添加剤を含有してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 物品(基材)
2 表面
3 凹凸部
6 水分
10 コーティング液
10A ベース剤
10B 添加剤
11,12 被覆層
14a 表層面
14b 背層面
15 コーティング膜
16 凹凸部
16a 凸部
16b 凹部
17 アンカー部
20 カーボンナノチューブ
図1
図2
図3