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特開2023-153471システム、方法、製造方法、食品、及び、清酒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153471
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】システム、方法、製造方法、食品、及び、清酒
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/30 20160101AFI20231011BHJP
   C12G 3/022 20190101ALI20231011BHJP
【FI】
A23L5/30
C12G3/022 119Z
C12G3/022 119J
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062770
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 範匡
【テーマコード(参考)】
4B035
4B115
【Fターム(参考)】
4B035LG48
4B035LP59
4B035LT20
4B115CN63
(57)【要約】
【課題】振動させる対象物を、幅広い周波数帯域で振動可能とすること。
【解決手段】システム1は、食品(例えば、清酒)、食品の原材料(例えば、米)、原材料から食品となる間の中間生成物(例えば、もろみ)のいずれかである対象物を振動させるためのものである。システム1は、第1周波数帯域で振動する加振器2と、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で振動する超音波振動子3と、を備える。加振器2、及び、超音波振動子3は、対象物を振動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動させるためのシステムであって、
第1周波数帯域で振動する第1振動部と、
第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で振動する第2振動部と、を備え、
前記第1振動部、及び、前記第2振動部は、対象物を振動させることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第2振動部には、可聴帯域よりも高域の成分を含む楽曲における、可聴帯域よりも高域の成分が入力されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1振動部には、可聴帯域よりも高域の成分を含む楽曲における、可聴帯域の成分が入力されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
対象物は、樽に収容されており、
前記第1振動部と前記第2振動部とは、前記樽の外壁に設置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1振動部は、加振器であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1振動部は、複数の加振器であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2振動部は、超音波振動子であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1振動部、及び、前記第2振動部には、所定の量子化ビット数以上、所定のサンプリング周波数以上であって、可聴帯域よりも高域の成分を含むハイレゾ楽曲の信号が入力されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造システムであって、
前記工程において、
前記第1振動部、及び、前記第2振動部は、対象物であるもろみを振動させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える方法であって、
前記振動工程において、第1周波数帯域、及び、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で対象物を振動させることを特徴とする方法。
【請求項11】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える食品の製造方法であって、
前記振動工程において、第1周波数帯域、及び、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で対象物を振動させることを特徴とする製造方法。
【請求項12】
少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造方法であって、
前記工程は、前記振動工程を備え、
前記振動工程において、第1周波数帯域、及び、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で対象物であるもろみを振動させることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動させるためのシステムであって、
可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で振動する振動部を備え、
前記振動部は、対象物を振動させることを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記振動部には、可聴帯域よりも高域の成分を含む楽曲が入力されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
対象物は、樽に収容されており、
前記振動部は、前記樽の外壁に設置されていることを特徴とする請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記樽は、金属製であることを特徴とする請求項4又は15に記載のシステム。
【請求項17】
対象物は、もろみであることを特徴とする請求項1~8、13~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記振動部は、加振器と、超音波振動子と、を有することを特徴とする請求項13~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記振動部は、加振器と、超音波振動子と、を有する、複数のハイブリッド型加振器から構成されることを特徴とする請求項13~18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記振動部には、所定の量子化ビット数以上、所定のサンプリング周波数以上であって、可聴帯域よりも高域の成分を含むハイレゾ楽曲の信号が入力されることを特徴とする請求項13~19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
請求項1~8、13~20のいずれか1項に記載のシステムにより製造されたことを特徴とする食品。
【請求項22】
少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造システムであって、
前記工程において、
前記振動部は、対象物であるもろみを振動することを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項23】
請求項9又は22に記載のシステムによって製造されたことを特徴とする清酒。
【請求項24】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える方法であって、
前記振動工程において、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で対象物を振動することを特徴とする方法。
【請求項25】
食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える食品の製造方法であって、
前記振動工程において、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で対象物を振動することを特徴とする製造方法。
【請求項26】
請求項11又は25に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする食品。
【請求項27】
少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造方法であって、
前記工程は、前記振動工程を備え、
前記振動工程において、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で対象物であるもろみを振動することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
請求項12又は27に記載の方法によって製造されたことを特徴とする清酒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を振動させるシステム、方法、製造方法、食品、及び、清酒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樽等の容器内の発酵中の酒等を振動させることが行われている。例えば、超音波振動により、酒等の熟成加速、攪拌等が行われてきたが、特定の共振周波数による出力を調整したものであった。そのため、音楽による対象物への振動付与(以下、「振動を付与すること」を「加振」ともいう。)(音楽加振)、超音波による対象物への加振(超音波加振)、又は、音楽加振と超音波加振との双方が行われている。音楽の持つ高域成分を含めると、株式会社シザナックが、低域と高域とを出力するハイブリッド加振器を提唱している。ハイブリッド加振器によれば、ワイドレンジが実現し、ハイブリッド加振器を対象物への加振に用いれば、CD以上の情報量を持つ高音質なハイレゾ音源での加振を実現することができる。
【0003】
特許文献1には、上記のハイブリッド加振器同様、高域アクチュエーターと、高域アクチュエーターよりも低域な帯域に対応するスピーカーと、を備える振動スピーカーの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-228958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加振器単体をワイドレンジ化すると、インピーダンス設計に自由度がない。また、複数の加振器で、樽等の大型容器(大型タンク)を加振する場合、並列接続が困難となるため、加振器の加振に、複数台のアンプを用いる必要がある。なお、加振器を並列接続すると、インピーダンスがアンプの規定を下回ってしまう。また、加振器単体で、特性が揃えられているため、ハイインピーダンス仕様とすることができない。また、出力トランスを使用すると、高域特性が悪化するため、出力トランスを使用することができない。以上述べた課題が存在する。
【0006】
本発明の目的は、振動させる対象物を、幅広い周波数帯域で振動可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のシステムは、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動させるためのシステムであって、第1周波数帯域で振動する第1振動部と、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で振動する第2振動部と、を備え、前記第1振動部、及び、前記第2振動部は、対象物を振動させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1周波数帯域で振動する第1振動部と、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で振動する第2振動部とによって、対象物が振動される。これにより、幅広い周波数帯域で、対象物を振動させることができる。ここで、第1振動部と第2振動部とによって、対象物が振動されるため、対象物を振動させるためのデバイスをワイドレンジ化する必要がない。さらに、第1振動部は、ハイインピーダンス仕様としても良いし、出力トランスを用いても良い。
【0009】
第2の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記第2振動部には、可聴帯域よりも高域の成分を含む楽曲における、可聴帯域よりも高域の成分が入力されることを特徴とする。
【0010】
第3の発明のシステムは、第1又は第2の発明のシステムにおいて、前記第1振動部には、可聴帯域よりも高域の成分を含む楽曲における、可聴帯域の成分が入力されることを特徴とする。
【0011】
第4の発明のシステムは、第1~第3のいずれかの発明のシステムにおいて、対象物は、樽に収容されており、前記第1振動部と前記第2振動部とは、前記樽の外壁に設置されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明のシステムは、第1~第4のいずれかの発明のシステムにおいて、前記第1振動部は、加振器であることを特徴とする。
【0013】
第6の発明のシステムは、第1~第5のいずれかの発明のシステムにおいて、前記第1振動部は、複数の加振器であることを特徴とする。
【0014】
第7の発明のシステムは、第1~第6のいずれかの発明のシステムにおいて、前記第2振動部は、超音波振動子であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明のシステムは、第1~第7のいずれかの発明のシステムにおいて、前記第1振動部、及び、前記第2振動部には、所定の量子化ビット数以上、所定のサンプリング周波数以上であって、可聴帯域よりも高域の成分を含むハイレゾ楽曲の信号が入力されることを特徴とする。
【0016】
第9の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造システムであって、前記工程において、前記第1振動部、及び、前記第2振動部は、対象物であるもろみを振動させることを特徴とする。
【0017】
第10の発明の方法は、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える方法であって、前記振動工程において、第1周波数帯域、及び、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で対象物を振動させることを特徴とする。
【0018】
第11の発明の製造方法は、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える食品の製造方法であって、前記振動工程において、第1周波数帯域、及び、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で対象物を振動させることを特徴とする。
【0019】
第12の発明の方法は、第11の発明の方法において、少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造方法であって、前記工程は、前記振動工程を備え、前記振動工程において、第1周波数帯域、及び、第1周波数帯域よりも高域の第2周波数帯域で対象物であるもろみを振動させることを特徴とする。
【0020】
第13の発明のシステムは、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動させるためのシステムであって、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で振動する振動部を備え、前記振動部は、対象物を振動させることを特徴とする。
【0021】
本発明では、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で振動する振動部によって、対象物が振動される。これにより、幅広い周波数帯域で、対象物を振動させることができる。
【0022】
第14の発明のシステムは、第13の発明のシステムにおいて、前記振動部には、可聴帯域よりも高域の成分を含む楽曲が入力されることを特徴とする。
【0023】
第15の発明のシステムは、第13又は第14の発明のシステムにおいて、対象物は、樽に収容されており、前記振動部は、前記樽の外壁に設置されていることを特徴とする。
【0024】
第16の発明のシステムは、第4又は第15の発明のシステムにおいて、前記樽は、金属製であることを特徴とする。
【0025】
第17の発明のシステムは、第1~第8、第13~第16のいずれかの発明のシステムにおいて、対象物は、もろみであることを特徴とする。
【0026】
第18の発明のシステムは、第13~第17のいずれかの発明のシステムにおいて、前記振動部は、加振器と、超音波振動子と、を有することを特徴とする。
【0027】
第19の発明のシステムは、第13~第18のいずれかの発明のシステムにおいて、前記振動部は、加振器と、超音波振動子と、を有する、複数のハイブリッド型加振器から構成されることを特徴とする。
【0028】
第20の発明のシステムは、第13~第19のいずれかの発明のシステムにおいて、前記振動部には、所定の量子化ビット数以上、所定のサンプリング周波数以上であって、可聴帯域よりも高域の成分を含むハイレゾ楽曲の信号が入力されることを特徴とする。
【0029】
第21の発明の食品は、第1~8、第13~第20のいずれかの発明のシステムにより製造されたことを特徴とする。
【0030】
第22の発明のシステムは、第13の発明のシステムにおいて、少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造システムであって、前記工程において、前記振動部は、対象物であるもろみを振動することを特徴とする。
【0031】
第23の発明の清酒は、第9又は第22の発明のシステムによって製造されたことを特徴とする。
【0032】
第24の発明の方法は、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える方法であって、前記振動工程において、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で対象物を振動することを特徴とする。
【0033】
第25の発明の製造方法は、食品、食品の原材料、原材料から食品となる間の中間生成物のいずれかである対象物を振動する振動工程を備える食品の製造方法であって、前記振動工程において、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で対象物を振動することを特徴とする。
【0034】
第26の発明の食品は、第11又は第25の発明の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0035】
第27の発明の方法は、第24の発明の方法において、少なくとも、対象物であるもろみを発酵させる工程を実行し、清酒を製造する清酒の製造方法であって、前記工程は、前記振動工程を備え、前記振動工程において、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で対象物であるもろみを振動することを特徴とする。
【0036】
第28の発明の清酒は、第12又は第27の発明の方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、幅広い周波数帯域で、対象物を振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態に係るシステムの概要を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るシステムの概要を示す図である。
図3】清酒の製造工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るシステム1の概要を示す図である。システム1は、樽100内のもろみ(醪)(対象物)を振動させる。システム1は、加振器2、超音波振動子3、音源再生機器(以下、「再生装置」という。)4等を備える。
【0041】
加振器2(第1振動部)は、樽100内のもろみ(醪)(対象物)を振動させるためのものである。加振器2は、例えば、樽100の側壁(外壁)に設けられている。加振器2は、信号に基づいて振動し、加振器2が設置された被設置面(ここでは、樽100の側壁)を振動させることで、樽100内のもろみを振動させる。加振器2は、例えば、ハウジングによって規定される内部空間内に、内磁型の磁気回路を備える動電型の加振器である。加振器2は、軸方向に沿って、交流的に変化する駆動力を発生させることで、加振器2が載置される被設置面を振動させる。本実施形態では、複数の加振器2が用いられるが、用いられる加振器2の数は、適宜、変更可能である。
【0042】
超音波振動子3(第2振動部)は、樽100内のもろみ(醪)(対象物)を振動させるためのものである。超音波振動子3は、例えば、樽100の側壁(外壁)に設けられている。超音波振動子3は、信号に基づいて振動し、超音波振動子3が設置された被設置面(ここでは、樽100の側壁)を振動させることで、樽100内のもろみを振動させる。
【0043】
ここで、加振器2は、超音波振動子3よりも低域(第1周波数帯域)で振動し、超音波振動子3は、加振器2よりも高域(第2周波数帯域)で振動する。
【0044】
なお、加振器2、及び、超音波振動子3は、樽100の側壁でなく、樽100の上壁、底壁に設けられていてもよい。また、本実施形態では、樽100は、金属製であるが、金属製でなくてもよい。
【0045】
再生装置4(制御部)は、加振器2を振動させるための信号を、加振器2に出力する。具体的には、再生装置4は、可聴帯域よりも高域の成分(20kHz以上)を含む楽曲(いわゆるハイレゾ楽曲)の、可聴帯域成分(20kHz未満)を加振器2に出力する。そのため、再生装置4は、楽曲を、20kHz以上と20kHz未満とに帯域分割する。再生装置4は、帯域分割した20kHz未満の成分を適宜レベル調整し、加振器2に出力する。また、再生装置4は、超音波振動子3に、超音波振動子3を振動させるための信号を出力する。具体的には、再生装置4は、可聴帯域よりも高域の成分(20kHz以上)を含む楽曲の、可聴帯域よりも高域の成分(20kHz以上)を超音波振動子3に出力する。再生装置4は、帯域分割した20kHz以上の成分を適宜レベル調整し、超音波振動子3に出力する。このように、再生装置4は、低周波と高周波とで個別に加振器2と超音波振動子3とを駆動する。
【0046】
なお、再生装置4から出力された信号は、アンプ(増幅器)によって、増幅され、加振器2、及び、超音波振動子3に出力される。また、上述のハイレゾ楽曲は、所定の量子化ビット数(16ビット)以上、所定のサンプリング周波数(44.1kHz)以上であって、可聴帯域よりも高域の成分を含む。ハイレゾ楽曲は、例えば、96kHz、192kHz等のサンプリング周波数、24ビットで、20kHz以上の帯域が収録されている楽曲である。
【0047】
超音波振動子3としては、ハイパワーの、例えば、洗浄に用いられる超音波振動子を使用可能である。通常、超音波振動子は、共振周波数を用いて、洗浄に使用され、また、高出力を得る。本実施形態では、超音波振動子3には、ハイレゾ楽曲に含まれる、高域成分のみが、必要なレベルで入力される。
【0048】
上田日本無線株式会社のホームページに掲載の技術論文 https://www.jrc.co.jp/jp/about/activities/technical_information/report71/pdf/JRCreview71_15.pdf には、圧電素子の特性が示されている(図2 圧電材の等価回路とインピーダンス特性)。ここで、インピーダンスのディップ部分(fr)が共振、ピーク部分(fa)が反共振である。通常、共振周波数を用いて、超音波振動子により、洗浄などが行われる。本実施形態では、楽曲周波数として、20~100kHz内に共振・反共振を持つ超音波振動子として選定され、振動させるための信号が、超音波振動子3に入力される。正確には、特性にディップピークが生じるが、楽曲では、共振・反共振の周波数は、定常ではなく、一部であるため、ある程度、平均化された振動を与えることができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する前に、背景技術について説明する。従来、超音波振動による、もろみ(醪)の熟成加速、攪拌等が行われてきた。しかしながら、これらは、特定の共振周波数による出力を調整したものであり、例えば、音楽との関連はなかった。また、超音波は、可聴帯域に比べ、単位時間あたりの振動エネルギーが大きく、短時間の加振処理には適していても、長期に渡る熟成工程には不適となっていた。
【0050】
図2は、本発明の第2実施形態に係るシステム101の概要を示す図である。第1実施形態同様、システム101は、樽100内のもろみ(醪)(対象物)を振動させる。システム101は、ハイブリッド型加振器105、音源再生機器(以下、「再生装置」という。)104等を備える。第1実施形態に係るシステム1は、加振器2と、超音波振動子3と、を備えている。第2実施形態に係るシステム101は、加振器2及び超音波振動子に替えて、ハイブリッド型加振器105を備えている。この点が、第1実施形態に係るシステム1と、第2実施形態に係るシステム101と、の主な相違点である。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
ハイブリッド型加振器105(振動部)は、樽100内のもろみ(醪)(対象物)を振動させるためのものである。ハイブリッド型加振器105は、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で振動する。ハイブリッド型加振器105は、例えば、樽100の側壁(外壁)に設けられている。ハイブリッド型加振器105は、信号に基づいて振動し、ハイブリッド型加振器105が設置された被設置面(ここでは、樽100の側壁)を振動させることで、樽100内のもろみを振動させる。
【0052】
ハイブリッド型加振器105は、従来の導電型加振器と、超音波振動子と、を備えたハイブリッド型の加振器である。超音波振動子は、例えば、ピエゾ素子である。ハイブリッド型加振器105は、上述したように、可聴帯域を超える100kHzまでの周波数特性を有する。なお、ハイブリッド型加振器105が複数設置される場合、広帯域アンプが、各ハイブリッド型加振器105に接続されたパワード型で構成されることで、樽100(タンク)サイズに応じた構成とすることができる。
【0053】
なお、ハイブリッド型加振器105は、樽100の側壁でなく、樽100の上壁、底壁に設けられていてもよい。また、本実施形態では、樽100は、金属製であるが、金属製でなくてもよい。
【0054】
再生装置104(制御部)は、第1実施形態の再生装置4と同じ装置である。再生装置104は、ハイブリッド型加振器105を振動させるための信号を、ハイブリッド型加振器105に出力する。具体的には、再生装置104は、可聴帯域よりも高域の成分(20kHz以上)を含む楽曲(いわゆるハイレゾ楽曲)をハイブリッド型加振器105に出力する。なお、第1実施形態では、楽曲の帯域分割が行われるが、第2実施形態では、帯域分割は、行われない。
【0055】
以上説明したシステム1、101は、清酒を製造する清酒製造システムの一部を構成する。ここで、「清酒」とは、米、米麹、及び水を主な原料として酵母により発酵したものであり、日本の酒税法で定める清酒である。清酒製造システムは、図3に示す工程を実行する。なお、図3に示す工程は、従来から行われている工程の一例である。例えば、「生酒」であれば、後述する「火入れ」の工程は、行われないし、「生貯蔵酒」であれば、「火入れ」の工程は、一度となる。
【0056】
「精米」工程は、米(酒米)を精米するする工程である。「洗米」工程は、精米した米を洗い、糠(ぬか)を取る工程である。「浸漬(しんせき)」工程は、洗米の後、適量の水分を米に吸収させるために、米を水に浸す工程である。「蒸米」工程は、水分を含ませた米を蒸す工程である。米は、甑(こしき)と呼ばれるおおきなせいろ、又は、蒸米機によって蒸される。「放冷」工程は、蒸した米を、麹(こうじ)造り、酒母造り、掛米(もろみ)用、それぞれに応じた温度に冷ます工程である。
【0057】
「麹造り」工程は、清酒の素となる麹にする工程で、「製麹(せいきく)」とも呼ばれる。具体的には、麹菌を米に付着させ、米の中で麹菌を繁殖させる。「酒母」とは、アルコール発酵を促す酵母を大量に増殖させたものである。「酒母造り」工程では、麹と水とを合わせたものに、酵母と乳酸菌、さらに蒸米を加える。一般的には、2週間から1か月で酒母が完成する。なお、酒母を手作業で造りあげる製法は、「生(き)もと造り」と呼ばれている。生もと造りの場合、乳酸は添加されず、蔵の空気中の乳酸菌が取り込まれる。
【0058】
「もろみ・仕込み」工程は、酒母をタンクに入れ、麹、蒸米、水を加えて発酵させる工程である。発酵には、約3週間から1か月かかり、清酒の元となる、発酵した状態を「もろみ」と呼ぶ。なお、酒母の中に、麹、蒸米、水を入れる際、全量ではなく、3回に分けて、ゆっくりと発酵させる。これを「三段仕込み」という。なお、「もろみ・仕込み」工程は、もろみを仕込む仕込工程と、もろみを発酵させる発酵工程と、に分けられる場合もある。
【0059】
「上槽」工程は、発酵期間終了後、もろみをしぼって(圧搾)、清酒と酒粕とに分ける工程である。しぼったばかりの清酒には、細かくなった米、酵母等の小さな固形物が残っているため、それを除去するために濾過(ろか)する工程が、「濾過」工程である。その後の加熱処理が、「火入れ」工程である。火入れの後、熟成させるために貯蔵する工程が、「貯蔵」工程である。約半年から1年かけて貯蔵・熟成された清酒は、まろやかな味わいに変化する。熟成した原酒を、ブレンド(調合・割水)する工程が、「調合・割水」工程である。出荷前、調合された清酒にもう一度火入れをし、安定させる工程が、「火入れ」工程である。その後、瓶やパックに詰める工程が、「瓶詰め」工程で、完成する。
【0060】
上述した「もろみ・仕込み」工程の、もろみを熟成させる工程において、もろみが振動される。本実施形態では、もろみを材料とする清酒の製造に、システム1が適用される例を示している。これに限らず、葡萄酒、醤油など、原材料に関わらず、同様の、振動などを適用可能である。
【0061】
本実施形態では、システム1、101により振動させる対象物として、「もろみ」を例示した。システム1により振動させる対象物としては、食品、食品の原材料、原材料から食品となるまでの中間生成物のいずれかであればよい。「もろみ」は、原材料である「米(酒米)」から食品である「清酒」となるまでの中間生成物である。従って、例えば、清酒の場合、原材料の米を振動させてもよいし、食品である清酒を振動させてもよい。醤油で言えば、食品である醤油、醤油の原材料である大豆、大豆から醤油となるまでの中間生成物であるもろみを振動させてもよい。葡萄酒(ワイン)で言えば、食品である葡萄酒、葡萄酒の原材料である葡萄を振動させてもよい。もちろん、醤油、葡萄酒は、一例であり、種々の食品(ウイスキー、焼酎、パン等)、原材料(麦等)、中間生成物(麦汁、麹、中種等)に適用可能である。
【0062】
ここで、対象物を超音波のみで振動させた場合、長時間振動させると、過剰であることが、実験結果として存在する。第1実施形態では、加振器2、第2実施形態では、ハイブリッド型加振器105に含まれる加振器も加えて対象物を振動させるため、過剰となることがない。また、楽曲(音楽)、特に、ハイレゾ楽曲を用いることで、超音波ではなく、ハイレゾ楽曲を用いて対象物を振動させることを、対象物を製品化した製品の顧客に訴求することができる。さらに、楽曲による振動付与(音楽加振)で短時間での長期熟成効果が見込まれ、加えて、ハイレゾ帯域での振動を付加することで、顧客に独自性を訴求することも可能となる。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態では、超音波振動子3よりも低域(第1周波数帯域)で振動する加振器2と、加振器2よりも高域(第2周波数帯域)で振動する超音波振動子3とによって、対象物(もろみ)が振動される。これにより、幅広い周波数帯域で、対象物を振動させることができる。ここで、加振器2と超音波振動子3とによって、対象物が振動されるため、対象物を振動させるためのデバイスをワイドレンジ化する必要がない。さらに、加振力を必要とする第1周波数帯域は、汎用の加振器を用いた複数並列駆動や出力トランスを用いた駆動方式でも良い。
【0064】
また、第2実施形態では、可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で振動するハイブリッド型加振器105によって、対象物(もろみ)が振動される。これにより、幅広い周波数帯域で、対象物を振動させることができる。
【0065】
可聴帯域以上の周波数帯域を含む周波数帯域で振動するハイブリッド型加振器105が用いられることにより、音楽信号を広帯域化し、可聴帯域の周波数まで再生することができる。これにより、超音波帯域を含んだ音楽加振を実施することができる。なお、広帯域の音楽信号(いわゆるハイレゾ)に含まれる可聴帯域周波数は、基本的に音楽に同期しており、定常的な単一周波数の超音波加振とは異なる。そのため、可聴帯域音楽加振に加えて、可聴帯域外周波数の音楽周波数に同期した信号が同時に印加されることで、可聴帯域の音楽加振効果を高めつつ、特定の超音波帯周波数のレベル調整を行った加振とは異なり、時間軸、及び、周波数軸においてもランダムな振動エネルギーを与えることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、対象物を振動させるシステム、方法、製造方法、食品、及び、清酒に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0068】
1、101 システム
2 加振器(第1振動部)
3 超音波振動子(第2振動部)
4、104 再生装置(制御部)
105 ハイブリッド型加振器(振動部)
100 樽
図1
図2
図3