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特開2023-153472サーマルプリントヘッドの製造方法、およびサーマルプリントヘッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153472
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドの製造方法、およびサーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B41J2/335 101H
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062771
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC10
2C065JC12
2C065JH05
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】 グレーズ層の表面をより平坦に形成することが可能なサーマルプリントヘッドの製造方法と、当該製造方法により得られるサーマルプリントヘッドとを提供する。
【解決手段】 サーマルプリントヘッドの製造方法は、第1方向を向く主面811を有する基材81において、主面811の上にグレーズ層を形成する工程と、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を前記グレーズ層の上に形成する工程と、前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程とを備える。主面811は、第1領域811Aおよび第2領域811Bを含む。前記グレーズ層を形成する工程では、流動体であるグレーズ材料82を第1領域811Aおよび第2領域811Bの上に個別に供給した後、グレーズ材料82を焼成する。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向を向く主面を有する基材において、前記主面の上にグレーズ層を形成する工程と、
前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を前記グレーズ層の上に形成する工程と、
前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程と、を備え、
前記主面は、第1領域および第2領域を含み、
前記グレーズ層を形成する工程では、流動体であるグレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給した後、前記グレーズ材料を焼成する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記グレーズ層を形成する工程では、前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給された前記グレーズ材料が互いに離れる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記配線層を形成する工程の後に、前記基材を複数の個片に分割する工程をさらに備え、
前記基材を分割する工程では、前記第1方向に対して直交する方向に延びる複数の切断線が前記基材に設定され、
前記第1方向に視て、前記複数の切断線の少なくともいずれかは、前記グレーズ層から離れる、請求項2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記配線層を形成する工程の後に、前記複数の発熱部を覆う保護層を形成する工程をさらに備える、請求項2または3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記グレーズ層を形成する工程では、前記グレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給する前に、前記主面の上にマスクが配置され、
前記マスクは、前記第1方向に貫通する複数の開口が設けられており、
前記第1方向に視て、前記複数の開口は、前記第1領域および前記第2領域に個別に重なり、
前記グレーズ層を形成する工程では、前記グレーズ材料を前記複数の開口に個別に供給する、請求項2または3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記グレーズ層を形成する工程では、前記グレーズ材料の全体が前記複数の開口に収容される、請求項5に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記グレーズ層を形成する工程では、前記第1方向に対して直交する方向に可動するノズルから前記グレーズ材料を吐出させることにより、前記グレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給する、請求項2または3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記グレーズ層を形成する工程では、前記ノズルは、前記第2方向に可動しつつ前記グレーズ材料を吐出する、請求項7に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記ノズルは、前記グレーズ材料が吐出される吐出口を有し、
前記吐出口の前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向の寸法は、前記第1領域および前記第2領域の各々の前記第3方向の寸法よりも小さい、請求項8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記吐出口は、前記第3方向を長辺とする矩形状である、請求項9に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項11】
第1方向を向く主面を有する基板と、
前記主面の一部を覆うグレーズ層と、
前記第1方向において前記グレーズ層を基準として前記基板とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、を備え、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列されており、
前記第1方向に視て、前記グレーズ層の端縁の少なくとも一部は、前記主面の周縁から離れている、サーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記第1方向に視て、前記グレーズ層の前記端縁の全体が、前記主面の前記周縁から離れている、請求項11に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記グレーズ層は、前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向を向く領域を含む端面を有し、
前記第1方向に視て、前記端面は、前記主面の前記周縁から離れており、
前記端面は、前記主面に対して傾斜している、請求項11または12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記第2方向に視て、前記端面は、凸状である領域を含む、請求項13に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記複数の発熱部を覆う保護層をさらに備える、請求項11または12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線と、を含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線は、前記複数の発熱部に個別に導通している、請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
前記第1方向において前記基板を基準として前記グレーズ層とは反対側に位置する放熱部材をさらに備え、
前記基板は、前記放熱部材に接合されている、請求項16に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドの製造方法と、当該製造方法により得られるサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、感熱紙などの記録媒体に印字するサーマルプリンタの主たる構成要素である。特許文献1には、サーマルプリントヘッドの一例が開示されている。当該サーマルプリントヘッドは、基板と、基板の上に配置された共通電極および複数の個別電極と、共通電極および複数の個別電極に導通する発熱抵抗体とを備える。共通電極および複数の個別電極を介した通電に伴って発熱抵抗体が選択的に発熱することによって、記録媒体にドット印字がされる。
【0003】
特許文献1に開示されているサーマルプリントヘッドは、グレーズ層をさらに備える。発熱抵抗体は、グレーズ層の上に配置されている。発熱抵抗体に隣接する共通電極および複数の個別電極の形成の際、グレーズ層は、基板の表面粗さに起因したこれらの電極に欠損が発生することを防止する。ここで、グレーズ層は、非晶質ガラスを含むグレーズ材料をスクリーン印刷により基板の上に供給した後、当該グレーズ材料を焼成することにより形成される。
【0004】
上記の場合において、グレーズ材料をより広範囲にわたって基板の上に供給する際、当該グレーズ材料の周囲に位置する乳剤等に起因した表面張力が当該グレーズ材料に作用する。これにより、グレーズ材料の表面が凹状になる。さらに、グレーズ材料にコーヒーリング効果が作用することにより、当該グレーズ材料の中央の厚さが、当該グレーズ材料の周縁の厚さよりも著しく薄くなる。これらの現象は、グレーズ層の表面の平坦性が損なわれる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-240641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は上記の事情に鑑み、グレーズ層の表面をより平坦に形成することが可能なサーマルプリントヘッドの製造方法と、当該製造方法により得られるサーマルプリントヘッドとを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、第1方向を向く主面を有する基材において、前記主面の上にグレーズ層を形成する工程と、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を前記グレーズ層の上に形成する工程と、前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程と、を備え、前記主面は、第1領域および第2領域を含み、前記グレーズ層を形成する工程では、流動体であるグレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給した後、前記グレーズ材料を焼成する。
【0008】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、第1方向を向く主面を有する基板と、前記主面の一部を覆うグレーズ層と、前記第1方向において前記グレーズ層を基準として前記基板とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、を備え、前記複数の発熱部は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列されており、前記第1方向に視て、前記グレーズ層の端縁の少なくとも一部は、前記主面の周縁から離れている。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法が具備する構成によれば、グレーズ層の表面をより平坦に形成することが可能となる。
【0010】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、図1の部分拡大図である。
図4図4は、図3の部分拡大図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図5の部分拡大図である。
図8図8は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する平面図である。
図9図9は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する平面図である。
図10図10は、図9のX-X線に沿う断面図である。
図11図11は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する平面図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に沿う断面図である。
図13図13は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する断面図である。
図14図14は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する断面図である。
図15図15は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する断面図である。
図16図16は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する平面図である。
図17図17は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第1実施例)を説明する断面図である。
図18図18は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第2実施例)を説明する平面図である。
図19図19は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第2実施例)を説明する平面図である。
図20図20は、図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程(第2実施例)を説明する断面図である。
図21図21は、本開示の第1実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドの断面図である。
図22図22は、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの平面図である。
図23図23は、図22に示すサーマルプリントヘッドの製造工程を説明する平面図である。
図24図24は、図22に示すサーマルプリントヘッドの製造工程を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1図7に基づき、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA10について説明する。サーマルプリントヘッドA10は、基板1、グレーズ層2、抵抗体層3、配線層4および保護層5を備える。さらにサーマルプリントヘッドA10は、放熱部材72、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、複数の第2ワイヤ75、封止樹脂76およびコネクタ77を備える。ここで、図1図3および図4は、理解の便宜上、保護層5の図示を省略している。
【0014】
これらの図に示すサーマルプリントヘッドA10は、抵抗体層3に含まれる複数の発熱部31(詳細は後述)を選択的に発熱させることによって、感熱紙などの記録媒体に印字を施す電子デバイスである。抵抗体層3および配線層4は、スクリーン印刷および焼成により形成される。したがって、サーマルプリントヘッドA10は、いわゆる厚膜型と呼ばれる。
【0015】
ここで、説明の便宜上、後述する基板1の主面11の法線方向を「第1方向z」と呼ぶ。第1方向zに対して直交する方向を「第2方向x」と呼ぶ。第2方向xは、サーマルプリントヘッドA10の主走査方向に相当する。第1方向zおよび第2方向xの双方に対して直交する方向を「第3方向y」と呼ぶ。第3方向yは、サーマルプリントヘッドA10の副走査方向に相当する。
【0016】
基板1は、図1に示すように、第2方向xに延びている。基板1の組成は、アルミナ(Al23)を含む。基板1は、アルミナおよび樹脂バインダなどを含む材料からなるセラミックスである。基板1の材料は、これらに加えて遮光材料を含めてもよい。当該遮光材料は、たとえば炭素(C)である。
【0017】
図2に示すように、基板1は、主面11および裏面12を有する。主面11および裏面12は、第1方向zにおいて互いに反対側を向く。図5および図6に示すように、主面11は、グレーズ層2に対向している。図1に示すように、主面11は、周縁111を含む。周縁111は、主面11の外縁に相当する。
【0018】
グレーズ層2は、図5および図6に示すように、基板1の主面11の一部を覆っている。グレーズ層2は、非晶質ガラスを含む材料からなる。当該非晶質ガラスは、たとえばSiO2-BaO-Al23-SnO-ZnO系ガラスである。このため、グレーズ層2は、透明または白色を呈する。グレーズ層2のガラス転移点は、約680℃である。
【0019】
図1に示すように、第1方向zに視て、グレーズ層2は、端縁21を有する。端縁21は、グレーズ層2の外縁に相当する。端縁21は、第1端縁211、第2端縁212、第3端縁213および第4端縁214を含む。第1端縁211および第2端縁212は、第2方向xに延びている。第1端縁211および第2端縁212は、第2方向xにおいて互いに離れている。第1端縁211は、第2端縁212よりも抵抗体層3の近くに位置する。第3端縁213および第4端縁214は、第3方向yに延びている。第3端縁213および第4端縁214は、第2方向xにおいて互いに離れている。
【0020】
図1に示すように、第1方向zに視て、端縁21の少なくとも一部は、基板1の主面11の周縁111から離れている。サーマルプリントヘッドA10においては、第1方向zに視て、第1端縁211、第2端縁212、第3端縁213および第4端縁214を含む端縁21の全体が、周縁111から離れている。
【0021】
図5および図6に示すように、グレーズ層2は、第1端面22を有する。第1端面22は、第3方向yを向く領域を含む。第1端面22は、端縁21の第1端縁211を含む。第1方向zに視て、第1端面22は、基板1の主面11の周縁111から離れている。
【0022】
図7に示すように、第1端面22は、主面11に対して傾斜角αで傾斜している。傾斜角αは、第1方向zおよび第3方向yを面内方向とする断面において、主面11と、第1端縁211における接線Tとがなす角に相当する。第2方向xに視て、第1端面22は、凸状である領域を含む。
【0023】
配線層4は、図4および図5に示すように、抵抗体層3に接している。配線層4は、抵抗体層3に通電するための導電経路を構成している。サーマルプリントヘッドA10においては、配線層4は、グレーズ層2に接している。配線層4は、共通配線41および複数の個別配線42を含む。共通配線41は、複数の発熱部31に導通している。複数の個別配線42は、複数の発熱部31に個別に導通している。サーマルプリントヘッドA10においては、共通配線41から複数の発熱部31を経由して複数の個別配線42に向けて電流が流れる。したがって、共通配線41が正極であり、かつ複数の個別配線42が負極である。配線層4の組成は、たとえば金(Au)を含む。配線層4の厚さの範囲の一例は、0.6μm以上1.2μm以下である。
【0024】
図3に示すように、共通配線41は、基部411および複数の延出部412を有する。基部411は、第3方向yにおいて抵抗体層3を基準として第3方向yの一方側に位置する。基部411は、第2方向xに延びており、かつ第3方向yから離れている。
【0025】
図3および図4に示すように、複数の延出部412は、基部411から抵抗体層3に向けて第3方向yに延びている。複数の延出部412は、第2方向x沿って等間隔に配列されている。
【0026】
図3に示すように、複数の個別配線42の各々は、基部421および延出部422を有する。複数の個別配線42は、基板1の上において、複数の駆動素子73の各々に対応した束となって配置されている。複数の個別配線42は、複数の発熱部31に個別に電圧を印加する。
【0027】
図3に示すように、基部421は、第3方向yにおいて抵抗体層3を基準として共通配線41の基部411とは反対側に位置する。複数の個別配線42の各々の基部421は、第3方向yにおいて互いに離れた2つの列をなす。当該2つの列の各々は、第2方向xに沿って配列されている。当該2つの列のうち抵抗体層3から最も近くに位置する列においては、隣り合う2つの基部421の間に延出部422が位置する。
【0028】
図3に示すように、延出部422は、基部421につながっている。さらに延出部422は、第1部422A、第2部422Bおよび第3部422Cを含む。
【0029】
図3および図4に示すように、第1部422Aは、第3方向yに延びている。第1部422Aは、第2方向xに沿って等間隔に配列されている。共通配線41の複数の延出部412のうち、第2方向xにおいて隣り合う2つの延出部412の間に第1部422Aが位置する。
【0030】
図3および図4に示すように、第2部422Bは、第1部422Aにつながっている。複数の個別配線42の各々の延出部422の第2部422Bは、その大半が第3方向yに対して傾斜している。
【0031】
図3および図4に示すように、第3部422Cは、第3方向yにおいて第2部422Bを基準として第1部422Aとは反対側に位置する。第3部422Cは、第2部422Bと基部411とにつながっている。第3部422Cは、第3方向yに延びている。
【0032】
図3に示すように、複数の駆動素子73の各々に対応した複数の個別配線42の1つの束において、第2部422Bと第3部422Cとの境界位置は、第2方向xの楼側で対比すると第3方向yのずれΔLが生じている。
【0033】
抵抗体層3は、図1および図3に示すように、第2方向xに延びている。図4および図5に示すように、抵抗体層3は、グレーズ層2に接している。抵抗体層3は、共通配線41の複数の延出部412と、複数の個別配線42の各々の延出部422の第1部422Aとに交差している。抵抗体層3は、複数の延出部412の各々と、複数の個別配線42の各々の延出部422の第1部422Aとのそれぞれ一部ずつを覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、抵抗体層3は、複数の延出部412と、複数の個別配線42の各々の延出部422の第1部422Aとを跨いでいる。
【0034】
抵抗体層3のうち、複数の延出部412のいずれかを覆う部分と、第2方向xにおいて当該部分の隣に位置する複数の個別配線42の第1部422Aのいずれかを覆う部分とにより挟まれた領域が、複数の発熱部31のいずれかとされている。図3に示すように、複数の発熱部31は、第2方向xに沿って配列されている。複数の発熱部31は、第1方向zにおいてグレーズ層2を基準として基板1とは反対側に位置する。配線層4により選択的に通電されることにより、複数の発熱部31は、選択的に発熱する。これにより、図2に示す記録媒体にドット印字が施される。抵抗体層3の材料は、配線層4よりも電気抵抗率が高い材料が選択される。抵抗体層3の材料の一例は、酸化ルテニウム(RuO2)粒子およびガラスフリットを含む導電性ペーストである。抵抗体層3の最大厚さは、6μm以上10μm以下である。
【0035】
保護層5は、図5および図6に示すように、グレーズ層2に接している。保護層5は、複数の発熱部31を覆っている。さらに保護層5は、配線層4の一部を覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、基部411につながる共通配線41の一部と、複数の個別配線42の各々の基部421とを除く配線層4は、保護層5に覆われている。保護層5は、非晶質ガラスを含む材料からなる。当該非晶質ガラスは、グレーズ層2に含まれる非晶質ガラスと同等の性質を有する。
【0036】
図7に示すように、保護層5は、第3方向yを向く第2端面51を有する。第2端面51は、第3方向yにおいてグレーズ層2の端縁21の第1端縁211から最も近くに位置する。サーマルプリントヘッドA10においては、第1方向zに視て、第2端面51は、基板1の主面11の周縁111に重なる。
【0037】
放熱部材72は、図2に示すように、第1方向zにおいて基板1を基準としてグレーズ層2とは反対側に位置する。基板1の裏面12は、接合材(図示略)を介して放熱部材72に接合されている。放熱部材72の組成は、たとえばアルミニウム(Al)を含む。
【0038】
複数の駆動素子73は、図1および図2に示すように、抵抗体層3に対して第3方向yの他方側に位置する。駆動素子73は、基板1の上に搭載されている。駆動素子73の上面には、複数の電極(図示略)が設けられている。複数の電極のいくつかには、駆動素子73に対応する複数の個別配線42の基部421に導電接合された複数の第1ワイヤ74が導電接合されている。これにより、駆動素子73は、これに対応する複数の個別配線42に導通している。さらに複数の電極のいくつかには、基板1に配置された配線に導電接合された複数の第2ワイヤ75が導電接合されている。駆動素子73は、複数の第1ワイヤ74を介して複数の個別配線42を選択的に通電させる。これにより、複数の発熱部31が選択的に発熱する。この他、駆動素子73は、第3方向yにおいて基板1とは分離され、かつ放熱部材72に支持された配線基板に搭載される構成でもよい。当該配線基板は、たとえばPCB(Printed Circuit Board)である。
【0039】
封止樹脂76は、図2に示すように、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75を覆っている。これらに加え、封止樹脂76は、保護層5に覆われていない複数の個別配線42の一部の領域(複数の基部421など)をさらに覆っている。封止樹脂76は、たとえばアンダーフィルに用いられる黒色かつ軟質の合成樹脂である。この他、封止樹脂76は、黒色かつ硬質の合成樹脂でもよい。
【0040】
コネクタ77は、図1図2に示すように、第3方向yにおいて複数の駆動素子73に対して抵抗体層3とは反対側に位置する。サーマルプリントヘッドA10においては、コネクタ77は、基板1の第3方向yの端部に取り付けられている。コネクタ77は、サーマルプリンタに接続される。コネクタ77は、複数のピン(図示略)を有する。当該複数のピンの一部は、基板1において、複数の第2ワイヤ75が導電接合された配線(図示略)に導通している。さらに、当該複数のピンの別の一部は、基板1において、共通配線41の基部411に導通する配線(図示略)に導通している。これにより、外部からコネクタ77を介して共通配線41に定電圧が印加される。
【0041】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作動について説明する。
【0042】
図2に示すように、サーマルプリントヘッドA10の複数の発熱部31は、サーマルプリンタに組み込まれたプラテンローラ79に保護層5を介して対向している。プラテンローラ79は、記録媒体を送り出すためのローラ状の機構である。複数の発熱部31を覆う保護層5の領域と、プラテンローラ79との間に、記録媒体が挟み込まれている。サーマルプリンタの作動時は、プラテンローラ79が回転することにより、記録媒体が第3方向yに一定速度で送り出される。その際、複数の発熱部31が選択的に発熱すると、熱が保護層5を介して記録媒体に伝わることにより、当該記録媒体に印字が施される。同時に、複数の発熱部31から発生した熱は、グレーズ層2にも伝わる。グレーズ層2に伝わった熱の一部は、グレーズ層2に蓄えられる。その他の熱は、基板1および放熱部材72を介してサーマルプリントヘッドA10の外部に放出される。
【0043】
次に、図8図17に基づき、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の第1実施例について説明する。
【0044】
最初に、図9および図11に示すように、基材81の主面811の上にグレーズ層2を形成する。主面811は、第1方向zを向く。基材81は、複数の基板1が第1方向zに対して直交する方向に連なったものである。
【0045】
グレーズ層2の形成にあたっては、まず、図9および図10に示すように、主面811の上にマスク88を配置する。マスク88には、第1方向zに貫通する複数の開口881が設けられている。マスク88は、金属製である。したがって、マスク88の組成は、金属元素を含む。
【0046】
ここで、図8に示すように、基材81の主面811は、複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bを含む。複数の第1領域811A、および第2領域811Bの各々は、第2方向xを長辺とする矩形状である。複数の第2領域811Bの各々の形状および大きさは、複数の第1領域811Aの各々の形状および大きさに等しい。複数の第1領域811Aは、第3方向yに沿って互いに離れて配列されている。複数の第2領域811Bは、第2方向xにおいて複数の第1領域811Aの隣に個別に対応して位置する。
【0047】
図9に示すように、第1方向zに視て、マスク88の複数の開口881は、複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bに個別に重なる。これにより、複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bの各々は、複数の開口881のいずれかから外部に露出する(図10参照)。
【0048】
次いで、図11および図12に示すように、流動体であるグレーズ材料82を複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bの上に個別に供給した後、グレーズ材料82を焼成する。グレーズ材料82の焼成物が、グレーズ層2となる。グレーズ材料82は、非晶質ガラスを含む。これにより、複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bがグレーズ層2に個別に覆われる。
【0049】
図11に示すように、本実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、グレーズ材料82をマスク88の複数の開口881に個別に供給する。グレーズ材料82の供給には、ディスペンサが用いられる。この場合において、図12に示すように、グレーズ材料82の全体が複数の開口881に収容される。したがって、グレーズ層2を形成する工程では、複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bの上に個別に供給されたグレーズ材料82が互いに離れた状態となる。
【0050】
次いで、図13に示すように、グレーズ層2の上に配線層4を形成する。配線層4の形成にあたっては、金を主成分とするレジネートペーストをグレーズ層2の上にスクリーン印刷した後、当該レジネートペーストを焼成することにより導電体層を形成する。その後、当該導電体層に対してフォトリソグラフィパターニングおよびエッチングを施す。以上により、配線層4が形成される。
【0051】
次いで、図14に示すように、配線層4に導通する複数の発熱部31を含む抵抗体層3をグレーズ層2の上に形成する。抵抗体層3の形成にあたっては、導電性ペーストをx方向に延びる帯状にスクリーン印刷する。導電性ペーストは、酸化ルテニウム粒子およびガラスフリットを含む。導電性ペーストのスクリーン印刷にあたっては、グレーズ層2および配線層4に当該導電性ペーストが接するようにする。その後、導電性ペーストを焼成する。最後に、導電性ペーストの焼成物に対して抵抗値を調整するためのトリミングを適宜行う。以上により、抵抗体層3が形成される。
【0052】
図13に示す配線層4を形成する工程と、図14に示す抵抗体層3を形成する工程との順序は、本実施例に限定されない。したがって、抵抗体層3を形成した後に、配線層4を形成してもよい。
【0053】
次いで、図15に示すように、グレーズ層2に接するとともに、抵抗体層3の複数の発熱部31と、配線層4の一部とを覆う保護層5を形成する。保護層5は、グレーズ層2および抵抗体層3と、配線層4の一部との上に非晶質ガラスを含むペーストをスクリーン印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0054】
次いで、グレーズ層2の上に複数の駆動素子73をダイボンディングにより搭載する。次いで、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75をワイヤボンディングにより形成する。次いで、駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75を覆う封止樹脂76を形成する。
【0055】
次いで、基材81を複数の個片に分割する。基材81を分割する工程では、図16に示すように、第1方向zに対して直交する方向に延びる複数の切断線83が基材81に設定される。複数の切断線83は、複数の第1切断線831、および複数の第2切断線832を含む。複数の第1切断線831は、第2方向xに延びる。複数の第2切断線832は、第3方向yに延びる。複数の第1切断線831、および複数の第2切断線832は、格子状をなす。
【0056】
基材81を分割する工程では、図16および図17に示すように、第1方向zに視て、複数の切断線83の少なくともいずれかは、グレーズ層2から離れる。本実施例においては、第1方向zに視て、複数の切断線83の全てがグレーズ層2から離れる。図17に示すように、複数の切断線83に沿って基材81を分割することにより、複数の個片が得られる。複数の個片の各々が、基板1、グレーズ層2、抵抗体層3、配線層4、保護層5、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、複数の第2ワイヤ75、および封止樹脂76を具備する。
【0057】
最後に、基板1にコネクタ77を取付けた後、基板1を放熱部材72に接合させる。以上の工程を経ることによって、サーマルプリントヘッドA10が得られる。
【0058】
次に、図18図20に基づき、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の第2実施例について説明する。
【0059】
本実施例においては、グレーズ層2を形成する工程のみが、先述したサーマルプリントヘッドA10の製造方法の第1実施例と異なる。したがって、本実施例の説明においては、グレーズ層2を形成する工程のみを対象とし、その他の工程の説明は省略する。
【0060】
図18図20に示すように、本実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、第1方向zに対して直交する方向に可動するノズル89からグレーズ材料82を吐出させる。これにより、グレーズ材料82を基材81の複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bの上に個別に供給する。その後、グレーズ材料82を焼成することにより、グレーズ層2が形成される。
【0061】
グレーズ層2を形成する工程では、ノズル89は、第2方向xに可動しつつグレーズ材料82を吐出する。複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bの各々の上において、ノズル89は、図18および図19に示す各々の矢印の方向に可動する。図20に示すように、ノズル89は、グレーズ材料82が吐出される吐出口891を有する。図18および図19に示すように、吐出口891の第3方向yの寸法は、複数の第1領域811A、および複数の第2領域811Bの各々の第3方向yの寸法よりも小さい。さらに吐出口891は、第3方向yを長辺とする矩形状である。
【0062】
<変形例>
図21に基づき、サーマルプリントヘッドA10の変形例であるサーマルプリントヘッドA11について説明する。サーマルプリントヘッドA11は、保護層5の構成が、サーマルプリントヘッドA10の当該構成と異なる。
【0063】
図21に示すように、第1方向zに視て、保護層5の第2端面51は、基板1の主面11の周縁111から離れて位置する。したがって、サーマルプリントヘッドA11においては、第3方向yにおいて周縁111と第2端面51との間に位置する主面11の領域が外部に露出する。
【0064】
次に、サーマルプリントヘッドA10の製造方法、およびサーマルプリントヘッドA10の作用効果について説明する。
【0065】
サーマルプリントヘッドA10の製造方法においては、基材81の主面811の上にグレーズ層2を形成する工程を備える。主面811は、第1領域811Aおよび第2領域811Bを含む。グレーズ層2を形成する工程では、グレーズ材料82を第1領域811Aおよび第2領域811Bの上に個別に供給した後、グレーズ材料82を焼成する。本構成をとることにより、第1方向zに視て、主面811の上に供給されるグレーズ材料82の面積を、主面811の全体にわたってグレーズ材料82を供給した場合の面積に対して、より小さく設定できる。これにより、グレーズ材料82に作用するコーヒーリング効果が低減されるため、主面811の上に供給されたグレーズ材料82の表面がより平坦なものとなる。したがって、本構成を具備するサーマルプリントヘッドA10の製造方法によれば、グレーズ層2の表面をより平坦に形成することが可能となる。
【0066】
サーマルプリントヘッドA10の製造方法の第1実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、基材81の主面811の上に、複数の開口881が設けられたマスク88が配置される。第1方向zに視て、複数の開口881は、第1領域811Aおよび第2領域811Bに個別に重なる。本実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、グレーズ材料82を複数の開口881に個別に供給する。本構成をとることにより、第1方向zに視て、主面811の上に供給されたグレーズ材料82の面積をできるだけ縮小した場合であっても、グレーズ材料82の面積の調整が容易となる。
【0067】
上記第1実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、グレーズ材料82の全体がマスク88の複数の開口881に収容される。本構成をとることにより、マスク88の第1方向zの寸法をできるだけ小さくするほど、グレーズ層2の第1方向zの寸法をより小さくすることができる。これにより、複数の開口881の各々を規定するマスク88の内周面に対してグレーズ材料82に作用する表面張力が低減される。これにより、主面811の上に供給されたグレーズ材料82の表面がさらに平坦なものとなる。
【0068】
サーマルプリントヘッドA10の製造方法の第2実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、第1方向zに対して直交する方向に可動するノズル89からグレーズ材料82を吐出させる。これにより、グレーズ材料82を第1領域811Aおよび第2領域811Bの上に個別に供給する。本実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、ノズル89は、第2方向xに可動しつつグレーズ材料82を吐出する。ここで、第1領域811Aおよび第2領域811Bは、抵抗体層3の複数の発熱部31が配列される方向である第2方向xを長辺とする矩形状である。したがって、本構成をとることにより、ノズル89の反復移動回数がより少なくなるため、グレーズ材料82の供給効率を向上させることができる。
【0069】
上記第2実施例にかかるグレーズ層2の形成する工程において、グレーズ材料82を吐出するノズル89の吐出口891の第3方向yの寸法は、第1領域811Aおよび第2領域811Bの各々の第3方向yの寸法よりも小さい。本構成をとることにより、グレーズ材料82に作用する第3方向yにおけるコーヒーリング効果がさらに低減されるため、主面811の上に供給されたグレーズ材料82の表面がさらに平坦なものとなる。
【0070】
サーマルプリントヘッドA10の製造方法においては、配線層4を形成する工程の後に、基材81を複数の個片に分割する工程をさらに備える。基材81を分割する工程では、第1方向zに対して直交する方向に延びる複数の切断線83が基材81に設定される。第1方向zに視て、複数の切断線83の少なくともいずれかは、グレーズ層2から離れる。本構成をとることにより、基材81に切断に伴うグレーズ層2の端縁21およびその近傍における欠損を抑制することができる。本構成は、第1領域811Aおよび第2領域811Bに個別に供給されたグレーズ材料82が互いに離れることにより得られる。
【0071】
サーマルプリントヘッドA10は、抵抗体層3の複数の発熱部31を覆う保護層5をさらに備える。本構成をとることにより、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体の摩擦抵抗をより低減できる。
【0072】
サーマルプリントヘッドA10は、第1方向zにおいて基板1を基準としてグレーズ層2とは反対側に位置する放熱部材72をさらに備える。基板1は、放熱部材72に接合されている。本構成をとることにより、グレーズ層2における過度な蓄熱が抑止される。これにより、印字品位の低下が防止される。
【0073】
〔第2実施形態〕
図22に基づき、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA20について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図22は、理解の便宜上、保護層5の図示を省略している。
【0074】
サーマルプリントヘッドA20においては、グレーズ層2の構成が、サーマルプリントヘッドA10の当該構成と異なる。
【0075】
図22に示すように、第1方向zに視て、グレーズ層2の端縁21のうち第3端縁213および第4端縁214は、基板1の主面11の周縁111に重なる。サーマルプリントヘッドA20においては、端縁21のうち第1端縁211および第2端縁212が、周縁111から離れている。
【0076】
次に、図23および図24に基づき、サーマルプリントヘッドA20の製造方法の実施例について説明する。
【0077】
本実施例においては、グレーズ層2を形成する工程と、基材81を分割する工程とが、先述したサーマルプリントヘッドA10の製造方法の第2実施例と異なる。したがって、本実施例の説明においては、グレーズ層2を形成する工程と、基材81を分割する工程とを対象とし、その他の工程の説明は省略する。
【0078】
本実施例にかかるグレーズ層2を形成する工程では、図23に示すように、第1方向zに対して直交する方向に可動するノズル89からグレーズ材料82を吐出させる。これにより、グレーズ材料82を基材81の第1領域811A、第2領域811Bおよび第3領域811Cの上に個別に供給する。第3領域811Cは、第1領域811Aおよび第2領域811Bと同じく基材81の主面811に含まれる。第1領域811A、第2領域811Bおよび第3領域811Cは、第3方向yに沿って配列されている。第1領域811A、第2領域811Bおよび第3領域811Cの各々の第2方向xの寸法は、サーマルプリントヘッドA10の製造にかかる複数の第1領域811Aの各々の第2方向xの寸法よりも大きい。
【0079】
本実施例にかかる基材81を分割する工程では、図24に示すように、第1方向zに視て、複数の切断線83のうち複数の第2切断線832の各々が、グレーズ層2に重なる。
【0080】
次に、サーマルプリントヘッドA20の作用効果について説明する。
【0081】
サーマルプリントヘッドA20の製造方法においては、基材81の主面811の上にグレーズ層2を形成する工程を備える。主面811は、第1領域811Aおよび第2領域811Bを含む。グレーズ層2を形成する工程では、グレーズ材料82を第1領域811Aおよび第2領域811Bの上に個別に供給した後、グレーズ材料82を焼成する。したがって、本構成を具備するサーマルプリントヘッドA20の製造方法によっても、グレーズ層2の表面をより平坦に形成することが可能となる。
【0082】
サーマルプリントヘッドA20のグレーズ層2を形成する工程において、第1領域811Aおよび第2領域811Bの各々の第2方向xの寸法は、サーマルプリントヘッドA10のグレーズ層2を形成する工程におけるこれらの各々の寸法よりも大きい。さらにサーマルプリントヘッドA20の製造方法にかかる基材81を分割する工程では、第1方向zに視て、複数の第2切断線832は、グレーズ層2に重なるように設定される。本構成をとることにより、グレーズ層2の表面をより平坦に形成しつつ、サーマルプリントヘッドA20の製造効率の向上を図ることができる。
【0083】
サーマルプリントヘッドA20においては、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0084】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0085】
本開示は、以下の付記に記載した実施形態を含む。
[付記1]
第1方向を向く主面を有する基材において、前記主面の上にグレーズ層を形成する工程と、
前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を前記グレーズ層の上に形成する工程と、
前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程と、を備え、
前記主面は、第1領域および第2領域を含み、
前記グレーズ層を形成する工程では、流動体であるグレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給した後、前記グレーズ材料を焼成する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記2]
前記グレーズ層を形成する工程では、前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給された前記グレーズ材料が互いに離れる、付記1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記3]
前記配線層を形成する工程の後に、前記基材を複数の個片に分割する工程をさらに備え、
前記基材を分割する工程では、前記第1方向に対して直交する方向に延びる複数の切断線が前記基材に設定され、
前記第1方向に視て、前記複数の切断線の少なくともいずれかは、前記グレーズ層から離れる、付記2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記4]
前記配線層を形成する工程の後に、前記複数の発熱部を覆う保護層を形成する工程をさらに備える、付記2または3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記5]
前記グレーズ層を形成する工程では、前記グレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給する前に、前記主面の上にマスクが配置され、
前記マスクは、前記第1方向に貫通する複数の開口が設けられており、
前記第1方向に視て、前記複数の開口は、前記第1領域および前記第2領域に個別に重なり、
前記グレーズ層を形成する工程では、前記グレーズ材料を前記複数の開口に個別に供給する、付記2または3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記6]
前記グレーズ層を形成する工程では、前記グレーズ材料の全体が前記複数の開口に収容される、付記5に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記7]
前記グレーズ層を形成する工程では、前記第1方向に対して直交する方向に可動するノズルから前記グレーズ材料を吐出させることにより、前記グレーズ材料を前記第1領域および前記第2領域の上に個別に供給する、付記2または3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記8]
前記グレーズ層を形成する工程では、前記ノズルは、前記第2方向に可動しつつ前記グレーズ材料を吐出する、付記7に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記9]
前記ノズルは、前記グレーズ材料が吐出される吐出口を有し、
前記吐出口の前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向の寸法は、前記第1領域および前記第2領域の各々の前記第3方向の寸法よりも小さい、付記8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記10]
前記吐出口は、前記第3方向を長辺とする矩形状である、付記9に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記11]
第1方向を向く主面を有する基板と、
前記主面の一部を覆うグレーズ層と、
前記第1方向において前記グレーズ層を基準として前記基板とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、を備え、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列されており、
前記第1方向に視て、前記グレーズ層の端縁の少なくとも一部は、前記主面の周縁から離れている、サーマルプリントヘッド。
[付記12]
前記第1方向に視て、前記グレーズ層の前記端縁の全体が、前記主面の前記周縁から離れている、付記11に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記13]
前記グレーズ層は、前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向を向く領域を含む端面を有し、
前記第1方向に視て、前記端面は、前記主面の前記周縁から離れており、
前記端面は、前記主面に対して傾斜している、付記11または12に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記14]
前記第2方向に視て、前記端面は、凸状である領域を含む、付記13に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記15]
前記複数の発熱部を覆う保護層をさらに備える、付記11または12に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記16]
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線と、を含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線は、前記複数の発熱部に個別に導通している、付記15に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記17]
前記第1方向において前記基板を基準として前記グレーズ層とは反対側に位置する放熱部材をさらに備え、
前記基板は、前記放熱部材に接合されている、付記16に記載のサーマルプリントヘッド。
【符号の説明】
【0086】
A10,A20:サーマルプリントヘッド
1:基板
11:主面
111:周縁
12:裏面
2:グレーズ層
21:端縁
211:第1端縁
212:第2端縁
213:第3端縁
214:第4端縁
22:第1端面
3:抵抗体層
31:発熱部
4:配線層
41:共通配線
411:基部
412:延出部
42:個別配線
421:基部
422:延出部
422A:第1部
422B:第2部
422C:第3部
5:保護層
51:第2端面
72:放熱部材
73:駆動素子
74:第1ワイヤ
75:第2ワイヤ
76:封止樹脂
77:コネクタ
79:プラテンローラ
81:基材
811:主面
811A:第1領域
811B:第2領域
811C:第3領域
82:グレーズ材料
83:切断線
831:第1切断線
832:第2切断線
88:マスク
881:開口
89:ノズル
891:吐出口
z:第1方向
x:第2方向
y:第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24