IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人平成医療学園の特許一覧

特開2023-153482体内温度計測用センサー及び体内温度計測器
<>
  • 特開-体内温度計測用センサー及び体内温度計測器 図1
  • 特開-体内温度計測用センサー及び体内温度計測器 図2
  • 特開-体内温度計測用センサー及び体内温度計測器 図3
  • 特開-体内温度計測用センサー及び体内温度計測器 図4
  • 特開-体内温度計測用センサー及び体内温度計測器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153482
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】体内温度計測用センサー及び体内温度計測器
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20231011BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20231011BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01K13/20 341P
G01K7/02 C
A61B5/01 250
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062786
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】518341839
【氏名又は名称】学校法人平成医療学園
(74)【代理人】
【識別番号】100104639
【弁理士】
【氏名又は名称】早坂 巧
(72)【発明者】
【氏名】中村 辰三
【テーマコード(参考)】
2F056
4C117
【Fターム(参考)】
2F056KC06
2F056KC11
2F056KC12
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC21
4C117XE23
(57)【要約】
【課題】身体の皮膚表面より内方の局所部位の温度を直接に計測することのできる手段の提供
【解決手段】非露出型のシース熱電対と、外径が0.5mm以下の金属製細管とを含んでなり、該金属製細管は、盲端である尖った先端を有して該シース熱電対の先端領域を被覆しており、該シース熱電対の先端部は該金属製細管の管腔内において該盲端の内面と熔接一体化されているものである、体内温度計測用センサー、及びこれに電気的に接続される温度計測器を含んでなる体内温度計測装置。

【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非露出型のシース熱電対と、外径が0.5mm以下の金属製細管とを含んでなり、該金属製細管は、盲端である尖った先端を有して該シース熱電対の先端領域を被覆しており、該シース熱電対の先端部は該金属製細管の管腔内において該盲端の内面と熔接一体化されているものである、体内温度計測用センサー。
【請求項2】
該金属製細管の外径が0.2mm~0.5mmである、請求項1の体内温度計測用センサー。
【請求項3】
該金属製細管の長さが0.5cm~10cmである、請求項1又は2の体内温度計測用センサー。
【請求項4】
該非露出型のシース熱電対が非接地型である、請求項1~3の何れかの体内温度計測用センサー。
【請求項5】
該シース熱電対の各素線と接続されており着脱が可能である前側部分及び後ろ側部分を含んでなる中継電気接続手段を、金属製細管の後方に更に含むものである、請求項1~4の何れかの体内温度計測用センサー。
【請求項6】
請求項1~5の何れかの体内温度計測用センサーとこれに電気的に接続される温度計測器を含んでなる、体内温度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的にアクセス可能な体内部位の温度を直接計測するための、体内温度計測用センサー及びこれを含む体内温度計測器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの身体の温度計測は、一般に腋下の皮膚表面や口腔又は直腸粘膜のように皮膚や粘膜の表面で行われ、これらはいずれも、一つの値で代表するものとしての全身の温度を求めるものであり、より深部各部の温度とは必ずしも一致しない。
【0003】
他方、東洋医学において灸による皮膚表面の特定部位(経穴、ツボ)に加えられた刺激に疲労回復や代謝促進等の効用のあることは古くからよく知られている。特に健康の維持や増進に主眼を置いた予防医学の分野で用いられる。高齢社会の到来や健康寿命に対する認識の深まりという社会的背景も相まって、近年、施術による効果の解明や更なる適用の可能性を求めて生理学等の面からの科学的探求も様々試みられるに至っている。
【0004】
例えば灸は、細かくは幾つかの具体的手法に分類できるが、艾(もぐさ)に着火することで発する熱を皮膚表面の特定部位に加えること(施灸)により、血行の改善や、むくみ、肩こり、筋肉痛、腰痛等の緩和、疲労回復等、身体の健康状態の改善を図るものである。施灸部位直下の皮膚内部温度は施灸時に上昇し、その結果としてこれらの改善効果がもたらされ、また例えば施灸部位の毛細血管における血行増加があれば、当該部位の温度の上昇をもたらす要因となる。
【0005】
このため、施灸において関連部位の局所的な温度情報が容易に収集でき、それらの情報を用いて最適の施灸条件(艾の量や使用する場合の器具等)が目的に応じて把握できることが望ましく、また血行の改善等の変化が定量的指標を以て確認できれば有益である。
【0006】
しかしながら従来、艾の燃焼温度については研究がなされているものの、本発明者の知る限り、施灸時における施灸部位の身体内温度の測定器具に関心が向けられたことはない。またもとより、経皮的に身体内の温度を直接に計測することのできる手段は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の背景において、本発明は、身体の皮膚表面より内方の局所部位の温度を直接に計測することのできる手段の提供を目的とする。
【0008】
本発明者は、皮膚表面より内方の局所部位の温度を直接かつ簡便に計測することを可能にする手段を創り出すことを試み、種々の検討を行った。その結果、次に示す構成になるセンサーに到達し、その効果も確認し、本発明を完成させた。即ち本発明は以下のものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.非露出型のシース熱電対と、外径が0.5mm以下の金属製細管とを含んでなり、該金属製細管は、盲端である尖った先端を有して該シース熱電対の先端領域を被覆しており、該シース熱電対の先端部は該金属製細管の管腔内において該盲端の内面と熔接一体化されているものである、体内温度計測用センサー。
【0010】
2.該金属製細管の外径が0.2mm~0.5mmである、上記1の体内温度計測用センサー。
【0011】
3.該金属製細管の長さが0.5cm~10cmである、上記1又は2の体内温度計測用センサー。
【0012】
4.該非露出型のシース熱電対が非接地型である、上記1~3の何れかの体内温度計測用センサー。
【0013】
5.該シース熱電対の各素線と接続されており着脱が可能である前側部分及び後ろ側部分を含んでなる中継電気接続手段を、金属製細管の後方に更に含むものである、上記1~4の何れかの体内温度計測用センサー。
【0014】
6.上記1~5の何れかの体内温度計測用センサーとこれに電気的に接続される温度計測器を含んでなる、体内温度計測装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ヒト又は他の動物の皮膚表面より内方の部位の局所温度を直接に計測することを可能にし、それにより施灸時の身体内の温度データの収集を可能にする手段を提供するほか、身体表面に加えた各種の刺激による身体局所の血行増加等の生理的反応の検出を可能にする手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の体内温度計測用センサーの作製工程における、シース熱電対を内部に収容した金属製細管の先端領域のレーザー熔接直後の状態を示す図面代用写真。
図2】金属塊の研磨により鋭利な先端へと加工された状態の金属製細管を示す図面代用写真。
図3】本発明の体内温度計測用センサーの先端領域の概念的拡大断面図。
図4】保持用金属管及びスリーブを取り付けた状態の本発明の体内温度計測用センサーの概念図。
図5】実施例2の体内温度計測用センサーの図面代用写真
【発明を実施するための形態】
【0017】
熱電対は、異なる金属同士の接合点に発生する熱起電力を利用した温度センサーであり、広範な様々の種類のものが温度測定を要する製品に広く用いられている。熱電対の基本構成は一端で接合させた2種の異なる金属の線(素線)である。「シース熱電対」とは、接合部位とそこから延びる2本の素線のある程度の長さ部分を、保護のため絶縁体と共にステンレス鋼などの耐熱性材料で作られた鞘(シース)の中に封入した形態のものをいう。また「非露出型」のシース熱電対とは、シース熱電対であって、測定対象物の温度下に置かれる素線の接合部(測温接点)もシース内に完全に封入されており、外部に露出していない形態のものをいう。非露出型のシース熱電対には、接地型(測温接点がシース先端部内壁と接触しているもの)と非接地型(測温接点がシース先端部内壁と非接触のもの)とがあり、本発明において何れも使用できるが、安定性の優れた非接地型の方がより好ましい。
【0018】
非露出型のシース熱電対には、様々のものが市販されている。本発明において採用する熱電対の温度特性は、身体内の温度の計測が可能であればよく、計測可能あるいは適した温度範囲(通常非常に幅広い)その他の特性は、各種製品の仕様書に表示されているから、適宜選択すればよい。市販の熱電対としては、組み合わせた2種の金属により、E、K,J、T,Rの各タイプのものがあり、何れも身体温度よりはるかに広い温度範囲をカバーしているからシースの外径が十分細いものが入手できる限り、適宜選択して採用できる。工業用に普及しているのはKタイプであり、これはクロメル(陽極)とアルメル(陰極)とからなり、本発明において好適に使用できる。また2種の様々金属(純金属や合金)の接合点における温度に応じた起電力その他の膨大なデータが公知であるから、それらを用いて作製することも可能である。
【0019】
本発明の体内温度計測用センサーは、身体への容易な刺入のために、針状に尖った先端のものとして作製される。このために、盲端である鋭利な先端を提供できるステンレス鋼等の金属で形成された細管が用いられ、その管腔に非露出型シース熱電対の先端領域が収納される。この金属製細管は鍼型として患者や被験者の身体に刺入される部分となるから、負担のないよう可能な限り細いものであることが好ましい。
【0020】
金属製細管の外径の細さにより、その管腔の内径も微小なものとなるため、これに挿入される非露出型シース熱電対も可能な限り細い外径のものであることが好ましい。後述の実施例では、非露出型のシース熱電対として市販の外径0.08mmのものが採用されているが、入手できる限り外径に特段の下限はないから、例えば外径0.05mmのものが入手可能であれば採用可能であり、特段の下限はない。
【0021】
金属製細管は、本発明の体内温度計測用センサーに、通常の取り扱い(皮膚への刺入、洗浄、滅菌、保管等)において変形しないよう十分な強度を付与するためのものである。また、中に非露出型のシース熱電対を通せるだけの内径の管腔を有し且つ身体への刺入に際して身体から受ける抵抗で変形することのない十分な強度がある限り、金属製細管の外径に特に下限はない。また金属製細管の内径は、どれだけ細い熱電対を採用するかに依存し特段の下限はない。現在、例えば外径0.08mmのシース熱電対が市販されており、従って、内径が0.08mmより大きい金属製細管はこの点適合する。
【0022】
身体への本発明の体内温度計測用センサーの刺入は、直刺(皮膚表面とほぼ垂直)又は横刺(皮膚表面とほぼ平行)又はこれらの中間と、場合により異なる角度で行うことができる。金属製細管は皮膚に刺入される部分であるから、刺入時に変形しないだけの強度が維持できる限り、また管腔に非露出型のシース熱電対を通せる限り、患者や被験者が痛みを極力感じないよう、外径の小さいものが好ましい。このため, 金属製細管の外径は、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.4mm以下、更に好ましくは0.3mm以下、特に好ましくは0.25mm以下、とりわけ好ましくは約0.20mmである。
【0023】
金属製細管の長さに特段の制限はなく、例えば、0.5cm、1cm、1.5cm、2cm、3cm、5cm、10cm等の範囲に設定することができる。
【0024】
先端の尖った金属製細管を作製するために、例えば医療用注射針のための針管を用いることができ、これは材質面から好ましい。作製は例えば次のようにして行うことができる。即ち、針管の根元側から非露出型シース熱電対の先端を針管の刃面の手前近くまで挿入する。その状態で針先にレーザー照射して針管の素材である金属(ステンレス鋼)を熔融させる。これにより、針先に微小な液滴上の金属隗が形成され、斜めの開放端であった針先は盲端となり、同時に熔融金属に非露出型シース熱電対のシースが接してこれに熔接される。次いで針先の金属塊を研磨し、尖った鍼型先端とする。こうして体内温度計測用センサーが得られ、シースの根元側から延びているコードの先の端子を体温付近の温度の測定に適した熱電対用の適宜の温度計測器と接続することにより、体内温度計測装置を構成することができる。
【0025】
また、金属製細管の長さを短く設定した場合、手で保持するのに便利なように、金属製細管の手元側末端の外周面に、皮膚への刺入が想定される部分ではない保持用金属管を嵌めて接続し一体化(熔接等)させておくこともできる。また更なる取扱いの便のため、保持用金属管の手元側末端に、外径のより大きな管状物からなる適宜のスリーブを設けてもよい。
【0026】
また、本発明の体内温度計測用センサーは、皮膚への刺入時にコードのねじれによる機械的抵抗を生じさせることなしに、手で軸回りに任意に回せるものであることが更に好ましい。これは、そのように回しつつ刺入すると身体から針先が受ける摩擦抵抗が減って滑かな刺入が容易になり、身体側に余分な刺激を生じないからである。
【0027】
このため、本発明の体内温度計測用センサーは、その金属製細管の後方に介在するコネクターとして、容易に着脱可能な2つの部分を含んだ中継電気接続手段を備えた構成のものとし、体内温度計測用センサーの2本の素線が、コードの途中に設けられた同手段を介して温度計測器へと延びてこれに接続されるように構成することが好ましい。同手段は、本発明の体内温度計測用センサーの先端側から延びる2種の素線のそれぞれを、温度計測器に至る同一種の素線と一対一で電気的に接続させるものである限りその具体的構造は任意である。例えば、2本のピン型端子とこれに対応するソケット型端子との組み合わせや、管の内周面及び外周面を各端子とするプラグと、その外周面に接する円筒面及び内周面に接するピンを対応する各端子として備えたソケットとからなる嵌め込み型のものが挙げられるが、これらに限定されない。着脱可能な中継電気接続手段の取り付け位置は、金属製細管の後方であればよい。ここに「金属製細管の後方」とは金属製細管の(保持用金属管又は更にスリーブを設けている場合にはそれらの)後ろ側の近傍をいい、それらの後部に固定されていてもよい。同手段を設けておくことで、センサーの針先を身体に刺入する際には同手段の前後の部分を分離させておけるため、センサーの針先を軸周りに手で自由に回しつつ滑らかに刺入することが可能となる。刺入完了後は同手段の前後の部分を結合させて温度計測が行われる。同手段を設けておくことで、体内温度計測用センサーの先端側の部分がコードから分離できるため、洗浄、滅菌、保管等の管理が容易になる。
【0028】
センサーである熱電対と組み合わせる温度計測器は、熱電対のタイプに応じて種々のものが知られ市販されているから、採用した熱電対のタイプに適合し且つ体温付近の温度の測定に適した温度計測器を本発明の体内温度計測用センサーと組み合わせて、本発明の体内温度計測装置を構成することができる。
【実施例0029】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明が当該実施例に限定されることは意図しない。
【実施例0030】
体内温度計測用センサーの作製
単一の測温接点を備えた外径0.08mmのKタイプのシース熱電対(AEROPAK (登録商標),株式会社岡崎製作所製)を用いた。このシース熱電対は、絶縁体としての酸化マグネシウムと共に測温接点が非接地型(測温接点がシース先端部内壁と非接触)でシース内に封入されたものであり、シース材質はインコネル(登録商標)600(主成分質量%:Ni:76、Cr:15.5、Fe:8.0)相当の合金である。
【0031】
金属製細管としてインスリン製剤注射針用の細い針管(外径0.2mm、内径0.1mm)を用意し、その後端側から上記のシース熱電対を先端が針管の針先に斜めに形成されている刃面の手前近くまで挿入した。その位置で針管の先端部にレーザー熔接を行った。これにより、針管の先端部が熔融し、図1に示したように針管の先端に球状の金属塊が形成され、これにより管腔の先端側が閉鎖されて盲端になると同時に、針管の先端領域近くまで挿入されていたシースの先端がこの盲端と熔接された。針管の先端のこの金属塊を研磨して、図2に示すように非溶接部の針管表面から尖った先端へと先細る鍼型の先端を形成し、本発明の体内温度計測用センサーとした。針管の根本側末端から尖った先端までの長さは約1.5cmであった。センサーの先端領域1の概念的拡大断面図を図3に示す。図3において、2は金属製細管(針管)であり、レーザー照射により管腔は先端において盲端となっている。管腔にはシース熱電対が収容されており、シース熱電対は、シース3の先端において針管の金属と熔接されており、シース3内には、シース3の先端側の内面とは非接触の位置に測温接点があり、測温接点から延びた異なる2種の金属からなるリード線(素線)4a及び4bが端部コネクター(図示せず)まで延びている。
【0032】
取り扱いの便のため、保持用金属管(ステンレス鋼、外径0.88mm、内径0.58mm、長さ7cm)に上記体内温度計測用センサーを一端から挿入し、他端から根本付近まで(約15mm)突出させ、その位置で針管の根本付近と保持用金属管との接触部を熔接して両者を一体化させた。続いて、ステンレス製の管(長さ約3cm、最大外径約4mm)をスリーブとして保持用金属管の手元側に嵌め、保持用金属管とスリーブの接合部を熔接した。これにより、手で扱いやすい鍼型の体内温度計測用センサーが得られた。図4はこれを概念的に示しており、センサーの先端領域1の外面を形成する針管2の根元側には保持用金属管6が結合しており、これにスリーブ7が取り付けられている。スリーブ7から根元側に延びているコード8には熱電対の2本のリード線が通っており、それらは端部コネクター9の端子に接続されている。端部コネクター9は用いた熱電対に対応する市販の温度計測器に接続される。
【実施例0033】
着脱可能な中継電気接続手段として丸型の嵌め込み式コネクター10(レモジャパン株式会社製)を準備した。嵌め込み式コネクター10は、着脱可能に嵌め合わされる前側部分10fと後ろ側部分10bとからなり、前側部分10fは端子であるピンを、後ろ側部分10bは対応する端子であるソケットを、それぞれ備える。実施例1の体内温度計測用センサーにおいて、スリーブ7の後方でコードを切断した。コネクター10を前後に分離し、その前側部分10fの各端子にスリーブ側からの2本の素線のそれぞれを接続した上で、スリーブ7の後端に固定した。次いで、コネクター10の後ろ側部分10bの後部の各端子に、温度計測器へと延びているコードの切断部位の素線の断端を、前側部分10fに接続された各素線の種類と温度計測器に向かうコード側の各素線の種類とが一致するように、それぞれ接続し、体内温度計測用センサーとした(図5)。コネクター10の後ろ側部分10bを前側部分10fから取り外しておけるため、皮膚に針先を刺入する際にはコードに妨げられることなく針先を手で自由に回して円滑に刺入でき、刺入後にコネクター10の前側部分10fを後ろ側部分10bに差し込んで両者を接続して温度計測可能な状態とすることができる。体内温度計測に使用した後は、コネクター10の後ろ側部分10b以降と分離させて、前側部分10fから先端側のみで洗浄、滅菌、保管等の管理がなされる。
【実施例0034】
2.体内温度計測用センサーによる皮下温度の計測
実施例2で作製した鍼型の体内温度計測用センサーを用い、その端子を市販の熱電対用の温度計測器に接続して、人体経穴部への施灸による皮下温度変化の計測を試みた。学校法人平成医療学園 宝塚医療大学の倫理委員会の承認を受けた上で、研究に参加することに同意した宝塚医療大学の教員6名を計測対象者として用いた。施灸部位は右肩井・右腎兪・中かん・関元・右手三里・右足三里の6穴とし、温度計測用センサーをその先端が各経穴の直下に位置することになるように調節して、約5mmまで皮下に横刺した。刺入に際し対象者は殆ど痛みを覚えることがなかった。この状態で各部位の皮下温度のベースラインを計測した。次いでセンサーの先端に位置する皮膚表面(経穴)に半米粒状の艾しゅ(がいしゅ:艾を指でつまんで成形したもの)(1.0 mg:がいしゅ温度約67℃用)を置き、着火することにより施灸し、その状態で施灸後の皮下温度を計測した。
【0035】
各部位の皮下温度は、次の通りであった。右肩井:施灸前32.10 ℃、施灸後46.99 ℃;右腎兪:施灸前31.70 ℃、施灸後50.95 ℃;中かん:施灸前33.10 ℃、施灸後46.84 ℃;関元:施灸前32.17 ℃、施灸後42.73 ℃;右手三里:施灸前30.43 ℃、施灸後43.32 ℃;右足三里:施灸前31.53 ℃、施灸後54.84 ℃。各経穴における施灸前後の温度差の平均値は、16.12±4.57 ℃であった。
【0036】
このように本発明の体内温度計測用センサーを用いることにより、皮下の温度の直接測定を、対象者に痛みを実質上感じさせることなしに、簡便に行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ヒト又は他の動物の皮膚表面より内方の部位の局所温度を直接に簡便に計測する手段を提供し、それにより例えば施灸時の身体内の温度データの収集を可能にする計測手段を提供するほか、身体に加えた各種の物理的又は化学的刺激による身体局所の血行増加等の生理的反応の定量的検出を可能にする手段を提供する。
【符号の説明】
【0038】
1・・体内温度計測用センサーの先端部
2・・金属製細管(針管)
3・・シース
4a、4b・・リード線(素線)
5・・測温接点
6・・保持用金属管
7・・スリーブ
8・・コード
9・・端部コネクター
10f・・嵌め込み式コネクターの前側部分
10b・・嵌め込み式コネクターの後ろ側部分
図1
図2
図3
図4
図5