(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153485
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置及び電力制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20231011BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J13/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062792
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】593055074
【氏名又は名称】オーナンバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】内海 一徳
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC11
5G064BA07
5G064CA12
5G064CB06
5G064CB10
5G064DA01
5G064DA05
5G066AA03
5G066AA09
5G066AE03
5G066AE09
5G066HA10
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G066KA06
5G066KB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄う自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置及び電力制御方法を提供する。
【解決手段】太陽光発電システムにおいて、電力制御装置は、受電電力値を3秒以下の周期で取得できるデータ取得部と、取得した受電電力値のデータ結果に基づいて発電電力を変更できる制御部とを含む。制御部は、データ取得部が取得したデータに基づいて、(直前の受電電力値(kW)-最新の受電電力値(kW))≧閾値A(但し、閾値Aは0より大きく、直前の受電電力値(kW)の5~30%の値が好ましい)の式を満たすかどうかを判定し、式を満たす場合、発電電力を低下させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄う自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置であって、前記電力制御装置が、受電電力値を3秒以下の周期で取得することができるデータ取得部と、取得した受電電力値のデータ結果に基づいて発電電力を変更することができる制御部とを含み、前記制御部は、前記データ取得部が取得したデータに基づいて、(直前の受電電力値(kW)-最新の受電電力値(kW))≧閾値A(但し、閾値Aは0より大きい)の式(i)を満たすかどうかを判定し、式(i)を満たす場合には、発電電力を低下させるように構成したことを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
データ取得部が、発電電力値を受電電力値と同じ周期で取得することができるように構成されており、式(i)を満たす場合には、最新の発電電力値(kW)と0~0.90の範囲の値から選択される制御率αとの積の値まで発電電力を低下させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
閾値Aが、直前の受電電力値(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
式(i)を満たさない場合には、制御部が、データ取得部が取得したデータに基づいて、最新の受電電力値(kW)≧閾値B(但し、閾値Bは0より大きい)の式(ii)を満たすかどうかを判定し、式(ii)を満たさない場合には、最新の発電電力値(kW)と制御率αより大きいが1.0未満の値の制御率βとの積の値まで発電電力を低下させるように構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
閾値Bが、太陽光発電設備の定格発電量(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする請求項4に記載の電力制御装置。
【請求項6】
制御率βが、データ取得部が取得したデータに基づいて、以下の式(iii)に従って計算された値であることを特徴とする請求項4又は5に記載の電力制御装置。
制御率β=[(最新の発電電力値(kW)+最新の受電電力値(kW))-マージン量(kW)]/定格発電量(kW)…式(iii)
【請求項7】
マージン量が、最新の発電電力値(kW)の5~40%の範囲から選択される値であることを特徴とする請求項6に記載の電力制御装置。
【請求項8】
式(ii)を満たす場合は、データ取得部の次のデータ取得後に、式(i)を満たすかどうかの判定を再び繰り返すように構成したことを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の電力制御装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の電力制御装置を含むことを特徴とする自家消費型太陽光発電システム。
【請求項10】
太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄う自家消費型太陽光発電システムにおいて電力制御装置によって発電電力を制御する方法であって、前記電力制御装置が、受電電力値を3秒以下の周期で取得することができるデータ取得部と、取得した受電電力値のデータ結果に基づいて発電電力を変更することができる制御部とを含み、前記制御部によって、前記データ取得部が取得したデータに基づいて、(直前の受電電力値(kW)-最新の受電電力値(kW))≧閾値A(但し、閾値Aは0より大きい)の式(i)を満たすかどうかを判定し、式(i)を満たす場合には、発電電力を低下させることを特徴とする方法。
【請求項11】
データ取得部が、発電電力値を受電電力値と同じ周期で取得することができるように構成されており、式(i)を満たす場合には、最新の発電電力値(kW)と0~0.90の範囲の値から選択される制御率αとの積の値まで発電電力を低下させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
閾値Aが、直前の受電電力値(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
式(i)を満たさない場合には、制御部が、データ取得部が取得したデータに基づいて、最新の受電電力値(kW)≧閾値B(但し、閾値Bは0より大きい)の式(ii)を満たすかどうかを判定し、式(ii)を満たさない場合には、最新の発電電力値(kW)と制御率αより大きいが1.0未満の値の制御率βとの積の値まで発電電力を低下させることを特徴とする請求項11又は12に記載の電力制御装置。
【請求項14】
閾値Bが、太陽光発電設備の定格発電量(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
制御率βが、データ取得部が取得したデータに基づいて、以下の式(iii)に従って計算された値であることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
制御率β=[(最新の発電電力値(kW)+最新の受電電力値(kW))-マージン量(kW)]/定格発電量(kW)…式(iii)
【請求項16】
マージン量が、最新の発電電力値(kW)の5~40%の範囲から選択される値であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式(ii)を満たす場合は、データ取得部の次のデータ取得後に、式(i)を満たすかどうかの判定を再び繰り返すことを特徴とする請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄う自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置及び電力制御方法に関するものである。特に、本発明は、発電電力量を常時あまり抑制せずに消費電力値が急激に低下する場合も逆潮流を迅速に防止することができる自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置及び電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電は、国による固定価格買取制度(FIT)により20年間固定の高い単価で電気を売ることができるため、FIT施行以降非常に高い人気が続いていた。
【0003】
しかしながら、電力会社の買取価格の低下により、新規設置では買取価格は電気料金とほぼ同額、あるいはそれより低下するため、太陽光発電設備に対する投資妙味がなくなりつつある。また、電力会社の出力制御要請により発電した設備からの売電を抑制せざるをえない環境も生じている。
【0004】
かかる環境の下、太陽光発電設備は、発電した電力を電力会社に売るより自家消費することを目的とした設計が増えつつある。このような自家消費型の設計では、太陽光発電システムから電力会社への電力の逆潮流を防止するように制御することが必要である。
【0005】
逆潮流を防止した太陽光発電システムとしては、例えば特許文献1~3が挙げられる。特許文献1では、消費電力量と発電電力量の差(つまり、受電電力値)が設定閾値以下となった場合に太陽光発電装置から供給される電力量を所定値まで低減することが開示され、特許文献2では、負荷による消費電力量に対する発電電力量の不足分が閾値以下になった場合に太陽光発電装置から供給される電力量を抑制することが開示されている。また、特許文献3では、発電電力の上限値を、発電電力の上限値と消費電力との差が消費電力の一次関数となるように設定して、発電電力がこの上限値以下となるように制御することが開示されている。
【0006】
これらの太陽光発電システムでは、いずれも、一定の時間間隔で発電電力量や消費電力量の計測を行ない、得られた発電電力量や消費電力量のデータから各時点での消費電力量と発電電力量の差(つまり、受電電力値)を計算し、この各時点での受電電力値に基づいて、発電電力の制御を行なっている。
【0007】
消費電力値の経時変化が緩慢である場合は、このような各時点での受電電力値に基づく電力制御で十分対応することができる。しかしながら、消費電力値の経時変化が急速である場合、例えば工場などで昼休みの開始時に一斉に稼働を停止することにより消費電力が短時間で急速に低下する場合などには、各時点での受電電力値に基づく電力制御では迅速に対応することができず、その結果、消費電力が低下したにもかかわらず発電電力が大きいままで発電電力が消費電力を上回ってしまい、電力会社への電力の逆潮流が発生してしまう問題があった。
【0008】
このような逆潮流の発生の問題を未然に防止するために、従来は、発電電力量の上限値を太陽光発電設備の定格発電量よりも敢えて大幅に低くすること、つまり安全のためのマージン量を大きくとることが一般的に行なわれている。この場合、逆潮流の発生は防止することができるが、大幅なマージン量のために発電電力量を常時低く抑制することになり、太陽光発電システムの発電能力を有効に活用できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-93127号公報
【特許文献2】特開2012-175858号公報
【特許文献3】特許第6364567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、その目的は、逆潮流防止のための発電電力の抑制量を最小限にしながら、消費電力の急激な低下時であっても逆潮流を迅速に防止することができる自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置及び電力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、最新の受電電力値とその直前の受電電力値とを3秒以下の短い周期で取得し、両受電電力値の間で急激な低下の問題があるかどうかを特定の式で判定し、その式により問題があると認められる場合には発電電力を低下させて逆潮流を防止すること、さらに必要により上記の判定で問題が認められなくても最新の受電電力値が特定の値より低い場合には逆潮流の発生の傾向が認められるとして同じく発電電力を低下させて逆潮流を防止することにより、逆潮流防止のための発電電力の抑制のマージン量を最小限にしながら、逆潮流が急激に発生しうる場合に逆潮流を迅速に防止することができ、また逆潮流の傾向を少しでも示した場合にも逆潮流を確実に防止することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の[1]~[17]の構成を有するものである。
[1]太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄う自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置であって、前記電力制御装置が、受電電力値を3秒以下の周期で取得することができるデータ取得部と、取得した受電電力値のデータ結果に基づいて発電電力を変更することができる制御部とを含み、前記制御部は、前記データ取得部が取得したデータに基づいて、(直前の受電電力値(kW)-最新の受電電力値(kW))≧閾値A(但し、閾値Aは0より大きい)の式(i)を満たすかどうかを判定し、式(i)を満たす場合には、発電電力を低下させるように構成したことを特徴とする電力制御装置。
[2]データ取得部が、発電電力値を受電電力値と同じ周期で取得することができるように構成されており、式(i)を満たす場合には、最新の発電電力値(kW)と0~0.90の範囲の値から選択される制御率αとの積の値まで発電電力を低下させるように構成したことを特徴とする[1]に記載の電力制御装置。
[3]閾値Aが、直前の受電電力値(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電力制御装置。
[4]式(i)を満たさない場合には、制御部が、データ取得部が取得したデータに基づいて、最新の受電電力値(kW)≧閾値B(但し、閾値Bは0より大きい)の式(ii)を満たすかどうかを判定し、式(ii)を満たさない場合には、最新の発電電力値(kW)と制御率αより大きいが1.0未満の値の制御率βとの積の値まで発電電力を低下させるように構成したことを特徴とする[2]又は[3]に記載の電力制御装置。
[5]閾値Bが、太陽光発電設備の定格発電量(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする[4]に記載の電力制御装置。
[6]制御率βが、データ取得部が取得したデータに基づいて、以下の式(iii)に従って計算された値であることを特徴とする[4]又は[5]に記載の電力制御装置。
制御率β=[(最新の発電電力値(kW)+最新の受電電力値(kW))-マージン量(kW)]/定格発電量(kW)…式(iii)
[7]マージン量が、最新の発電電力値(kW)の5~40%の範囲から選択される値であることを特徴とする[6]に記載の電力制御装置。
[8]式(ii)を満たす場合は、データ取得部の次のデータ取得後に、式(i)を満たすかどうかの判定を再び繰り返すように構成したことを特徴とする[4]~[7]のいずれかに記載の電力制御装置。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の電力制御装置を含むことを特徴とする自家消費型太陽光発電システム。
[10]太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄う自家消費型太陽光発電システムにおいて電力制御装置によって発電電力を制御する方法であって、前記電力制御装置が、受電電力値を3秒以下の周期で取得することができるデータ取得部と、取得した受電電力値のデータ結果に基づいて発電電力を変更することができる制御部とを含み、前記制御部によって、前記データ取得部が取得したデータに基づいて、(直前の受電電力値(kW)-最新の受電電力値(kW))≧閾値A(但し、閾値Aは0より大きい)の式(i)を満たすかどうかを判定し、式(i)を満たす場合には、発電電力を低下させることを特徴とする方法。
[11]データ取得部が、発電電力値を受電電力値と同じ周期で取得することができるように構成されており、式(i)を満たす場合には、最新の発電電力値(kW)と0~0.90の範囲の値から選択される制御率αとの積の値まで発電電力を低下させることを特徴とする[10]に記載の方法。
[12]閾値Aが、直前の受電電力値(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする[10]又は[11]に記載の方法。
[13]式(i)を満たさない場合には、制御部が、データ取得部が取得したデータに基づいて、最新の受電電力値(kW)≧閾値B(但し、閾値Bは0より大きい)の式(ii)を満たすかどうかを判定し、式(ii)を満たさない場合には、最新の発電電力値(kW)と制御率αより大きいが1.0未満の値の制御率βとの積の値まで発電電力を低下させることを特徴とする[11]又は[12]に記載の電力制御装置。
[14]閾値Bが、太陽光発電設備の定格発電量(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることを特徴とする[13]に記載の方法。
[15]制御率βが、データ取得部が取得したデータに基づいて、以下の式(iii)に従って計算された値であることを特徴とする[13]又は[14]に記載の方法。
制御率β=[(最新の発電電力値(kW)+最新の受電電力値(kW))-マージン量(kW)]/定格発電量(kW)…式(iii)
[16]マージン量が、最新の発電電力値(kW)の5~40%の範囲から選択される値であることを特徴とする[15]に記載の方法。
[17]式(ii)を満たす場合は、データ取得部の次のデータ取得後に、式(i)を満たすかどうかの判定を再び繰り返すことを特徴とする[13]~[16]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最新の受電電力値とその直前の受電電力値とを3秒以下の短い周期で取得し、両受電電力値の間で急激な低下の問題があるかどうかを特定の式で判定し、その式により問題があると認められる場合には発電電力を低下させているので、逆潮流防止のための発電電力の抑制のマージン量を最小限にしながら、逆潮流が急激に発生しうる場合に逆潮流を迅速に防止することができる。また、さらに必要により上記の判定で問題が認められなくても最新の受電電力値が特定の値より低い場合には逆潮流の発生の傾向が認められるとして同じく発電電力を低下させているので、逆潮流の傾向を少しでも示した場合にも逆潮流を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の電力制御装置を含む自家消費型太陽光発電システムの一例の概略説明図である。
【0015】
【
図2】
図2は、従来技術の電力制御装置を使用した場合の発電電力の制御方法のフローチャートの一例である。
【0016】
【
図3】
図3は、本発明の電力制御装置を使用した場合の発電電力の制御方法のフローチャートの一例である。
【0017】
【
図4】
図4は、従来技術の電力制御装置を使用した場合の逆潮流防止効果シミュレーションの一例を表わすグラフである。
【0018】
【
図5】
図5は、従来技術の電力制御装置を使用した場合の逆潮流防止効果シミュレーションの別の一例を表わすグラフである。
【0019】
【
図6】
図6は、本発明の電力制御装置を使用した場合の逆潮流防止効果シミュレーションの一例を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の電力制御装置、電力制御方法、及びそれらを使用した太陽光発電システムの実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の電力制御装置は、発電電力の抑制のマージン量を最小限にしながら、消費電力の急激な低下による逆潮流を迅速に防止することができる新規な制御方法を使用することに特徴があり、それ以外は従来公知のものと基本的に同じ装置を適宜採用することができる。また、本発明の電力制御装置を使用して制御される太陽光発電システム本体は、それ自体、基本的に従来公知のものを採用することができる。
【0022】
本発明の自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置は、太陽光発電設備からの発電電力と電力会社からの受電電力とによって負荷による消費電力を賄うものである。本発明の電力制御装置は、受電電力値を3秒以下の短い周期で取得することができるデータ取得部と、取得した受電電力値のデータ結果に基づいて発電電力を変更することができる制御部とを含み、制御部において、短い周期で特定の式(i)で急激な受電電力値の低下のおそれがあるかどうかを判定し、そのおそれが認められる場合に発電電力を低下させて逆潮流を迅速に防止することを特徴とするものである。
【0023】
図1は、本発明の電力制御装置を使用した自家消費型太陽光発電システムの一例を概略的に示したものである。
図1に示されるように、本発明の太陽光発電システム1は、太陽光発電設備2からの発電電力2Aと、電力会社3からの受電電力3Aと、任意選択的に蓄電池からの供給電力(図示せず)とによって負荷4による消費電力4Aを賄う自家消費型太陽光発電システムである。本発明の太陽光発電システム1は、本発明の電力制御装置を使用して前述の各電力を制御することができるように構成されている。
図1の太陽光発電システム1では、建造物の屋上に太陽光発電設備2が設置され、消費電力4Aを要求するものとして建造物内の空調設備5を含む負荷4が示されている。
【0024】
太陽光発電システム1では、電力会社3の系統電力網から電力3Aが受電されて分電盤9に送られる。このときの受電電力3Aは、例えばスマートメーター8によって計測される。また、太陽光発電設備2で発電した電力は、直流電力で出力され、パワーコンディショナー(図示せず)によって交流電力に変換され、発電電力2Aとして分電盤9に送られる。分電盤9に集められた受電電力3A及び発電電力2Aは、合わせて負荷4に送られ、消費電力4Aとして使用される。
【0025】
本発明の電力制御装置は、電力会社3からの受電電力3Aの計測データ、つまり受電力値、及び必要により発電電力値をそれぞれ特定の周期で取得することができるデータ取得部6と、それらのデータ結果に基づいて発電電力2Aを変更することができる制御部7とを含む。データ取得部6は、それ自体、各電力を計測するものでなくてもよく、各電力の計測データを取得することができれば十分である。データ取得部6で取得されたデータは、例えばインターネット10を介してクラウドサーバー11に送ることができ、制御部7は、そこからデータを与えられることもできる。制御部7は、データ取得部6と一体的に設けられてもよいし、データ取得部6から離れて設けられてもよい。また、制御部7は、パワーコンディショナーの中に一体的に設けられてもよいし、パワーコンディショナーとは別に設けられてもよい。
【0026】
次に、本発明の電力制御装置における発電電力の制御方法について説明する。理解の容易のため、まず従来技術の電力制御装置を使用した場合の発電電力の制御方法の一例として、
図2のフローチャートを参照して説明し、次にその対比として、本発明の電力制御装置を使用した場合の発電電力の制御方法の一例として、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
図2は、従来技術の電力制御装置を使用した場合の発電電力の制御方法のフローチャートの一例である。上述の通り、従来技術の発電電力の制御方法は、
図2に示すように各時点での受電電力値に基づくものであり、基本的に受電電力値の各時点での一時的な低下に基づく制御しか行なうことができないものである。
【0028】
図2の従来技術の発電電力の制御のフローチャートでは、制御が開始されると、データ取得部において、受電電力値が特定の周期(例えば、6秒間隔)で取得される。そして、制御部において、その取得した時点の受電電力値に基づいて受電電力値が低下して逆潮流のおそれがあるかどうかを判定する。具体的には、受電電力値≧閾値の式を満たすかどうかにより発電電力の低下の要否が判定される。この閾値は、0以上の値であり、大きいほど逆潮流の防止のマージン量が大きくなる。受電電力値がこの閾値以上である場合(
図2中の「はい」)は、受電電力(消費電力)は低下していないか、又は低下していても逆潮流が発生するおそれのある危険域にはまだ到達していないとみなされ、発電電力の低下は行なわれない。一方、受電電力値がこの閾値よりも小さい場合(
図2中の「いいえ」)は、逆潮流が発生するおそれのある危険域まで受電電力(消費電力)が低下しているとみなされ、制御部が発電電力を低下させるように制御する。このようなデータ取得、判定、及びそれに基づく発電電力の制御は、データ取得に合わせた特定の周期で繰り返される。
【0029】
図2の従来技術の制御方法では、取得した各時点での受電電力値のみに基づいて発電電力を制御しているので、受電電力(消費電力)の各時点での一時的な低下に基づく制御しか行なうことができず、本発明の制御方法のように、受電電力(消費電力)の急激な低下に基づく制御を迅速に行なうことができない。従って、
図2の従来技術の制御方法では、受電電力(消費電力)の急激な低下を含めて逆潮流を確実に防止するために上述の判定式の閾値を大きくとらざるをえない。そのため、発電電力の抑制のマージン量が大きく、結果として太陽光発電設備の能力が抑制されることが多く、本来の能力を十分に活用できていない。
【0030】
次に、本発明の電力制御装置を使用した場合の発電電力の制御方法の一例として、
図3のフローチャートを参照して説明する。本発明の発電電力の制御方法は、
図3に示すように、最初に、ある最新の計測時点での受電電力値とその直前の計測時点での受電電力値を3秒以下の短い周期で取得し、これらの短い周期の間の受電電力値の差が特定の値以上の場合に受電電力値の急速な経時変化があると判定して逆潮流を迅速に防止するために発電電力の低下の制御を行なうものである。また、さらに必要により、前記の判定の受電電力値の急激な経時変化が認められなくても最新の受電電力値が特定の値より低い場合には逆潮流の発生の傾向が認められると判定して同じく発電電力の低下の制御を行ない、逆潮流を確実に防止しようとするものである。
図3では、上記の二つの判定方法のそれぞれが上下に時系列で示されている。
【0031】
図3の本発明の発電電力の制御方法のフローチャートでは、制御が開始されると、データ取得部において、受電電力値、及び所望により発電電力値が3秒以下の特定の周期(例えば、2秒間隔)で取得される。そして、制御部において、その取得した受電電力値に基づいて発電電力が急激に低下して逆潮流のおそれがあるかどうかを判定する。判定は、直前の受電電力値と最新の受電電力値との差を計算し、この差が特定の閾値A以上であるかどうかで行なわれる。具体的には、(直前の受電電力値-最新の受電電力値)≧閾値Aの式を満たすかどうかにより発電電力の低下の要否が判定される。この閾値Aは、0より大きい値であり、直前の受電電力値がこの短い周期の間にどれくらいの割合で下がると逆潮流の危険が生じるかに基づいて適宜決定される。この閾値Aは、直前の受電電力値(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることが好ましい。
【0032】
受電電力値の差がこの閾値A以上である場合(
図3中の上側の長方形中の「はい」)は、受電電力(消費電力)が急激に低下しており、逆潮流が発生するおそれのある危険域に到達しているとみなされ、制御部が発電電力を低下させるように制御する。この場合の発電電力の低下量は特に限定されないが、最新の発電電力値(kW)から10%以上、さらには20%以上、発電電力を低下させるように制御することが好ましい。即ち、最新の発電電力値(kW)と0~0.90(好ましくは0~0.80)の範囲の値から選択される制御率αとの積の値まで発電電力を低下させるように制御することが好ましい。
【0033】
一方、受電電力値の差がこの閾値Aよりも小さい場合(
図3中の上側の長方形中の「いいえ」)は、受電電力(消費電力)が急激に低下していないとみなされる。この場合、さらに必要により、受電電力(消費電力)自体の低下があるかどうかを判定するために、
図3の下側の長方形の部分に進む。この部分は、上述した
図2に示される従来の各時点での受電電力値のみに基づく発電電力の制御と実質的に同じである。ここでの判定は、各時点での受電電力値自体が特定の閾値Bより低下して逆潮流のおそれがあるかどうかで行なわれる。具体的には、受電電力値≧閾値Bの式を満たすかどうかにより発電電力の低下の要否が判定される。この閾値Bは、0より大きい値であり、大きいほど逆潮流の防止のマージン量が大きくなるが、急激な受電電力の低下がないと既に判断されているので、従来の
図2の方法のように大きくする必要がない。閾値Bは、太陽光発電設備の定格発電量(kW)の5~30%の範囲から選択される値であることが好ましい。受電電力値がこの閾値B以上である場合(
図3中の下側の長方形中の「はい」)は、受電電力(消費電力)は低下していないか、又は低下していても逆潮流が発生するおそれのある危険域にはまだ到達していないとみなされ、発電電力の低下は行なわれない。一方、受電電力値がこの閾値Bよりも小さい場合(
図3中の下側の長方形中の「いいえ」)は、逆潮流が発生するおそれのある危険域まで受電電力(消費電力)が低下しているとみなされ、制御部が発電電力を低下させるように制御する。具体的には、最新の発電電力値(kW)と制御率αより大きいが1.0未満の値の制御率βとの積の値まで発電電力を低下させるように制御部が制御する。ここで制御率βは、データ取得部が取得した最新の発電電力値及び最新の受電電力値に基づいて、制御率β=[(最新の発電電力値(kW)+最新の受電電力値(kW))-マージン量(kW)]/定格発電量(kW)の式に従って計算されることができる値であり、マージン量は0以上の値、特に最新の発電電力値(kW)の5~40%の範囲から選択される値であることが好ましい。このようなデータ取得、判定、及びそれに基づく二種類の発電電力の制御が、データ取得に合わせた特定の周期で繰り返される。
【0034】
図3の本発明の制御方法では、まず最新の受電電力値とその直前の受電電力値を短い周期で取得し、これらの受電電力値の差が特定の閾値以上であるかに基づいて受電電力値の急激な低下を判断するようにしているので、受電電力(消費電力)の急激な低下によって逆潮流が生じるおそれがある場合でも迅速に防止することができる。次に、さらに必要により、取得した最新の受電電力値が特定の閾値以上であるかに基づいて受電電力値自体の低下も判断するようにしているので、逆潮流が生じる傾向がある場合も確実に防止することができる。このように、
図3の本発明の制御方法では、受電電力(消費電力)の急激な低下による逆潮流に迅速に対応することができているので、安全のための発電電力の抑制のマージン量を従来のように大きくとる必要はなく、従って発電電力の抑制量は最小限で済み、発電電力を有効に活用することができる。また、受電電力値の取得周期を短く設定しているので、受電電力値の急激な低下に対してパワーコンディショナー(PCS)への発電電力の低下の指示も迅速に反映することができる。
【0035】
本発明の制御方法では、データ取得部における受電電力値、及び所望により発電電力値の取得の周期は、受電電力(消費電力)の急激な低下を迅速に検出してPCSの指示に素早く反映するため、従来より短く、3秒以下、好ましくは2.5秒以下、より好ましくは2秒以下である。なお、本発明の制御方法では、最新の受電電力値の急激な変化の有無と、任意選択的に最新の受電電力値自体の大きさの減少の有無に基づいて逆潮流の発生のおそれがあるかどうかを判断して発電電力の低下を行なうが、前者については、上記の短い受電電力値の取得の周期で判断することが好ましく、後者については、前者と同じ周期で判断してもよいが、それより長い周期(即ち、例えば前者の周期の2倍以上の整数倍の長い周期)で判断することで十分である。
【実施例0036】
次に、図面を使用して従来の制御方法と比べた本発明の制御方法の効果を具体的に示すが、本発明は、図面に示した方法に限定されるものではない。
【0037】
図4及び
図5はいずれも、
図2の従来技術の制御方法のフローチャートに基づいた発電電力の制御の逆潮流防止効果シミュレーションの一例である。
図4と
図5は、発電電力の常時抑制のマージン量が異なる以外は、同一条件(受電電力値の測定周期:6秒)でのシミュレーション結果を示しており、
図4ではマージン量は50kWであるのに対して、
図5ではマージン量は100kWと大きくとっている。
図4及び
図5のグラフ中、一番上のラインは消費電力を示し、上から二番目に二つ重なっているラインのうち、色の薄い方はパワーコンディショナー(PCS)への指示を示し、色の濃い方はその指示に追従した発電電力を示し、一番下のラインは受電電力を示す。なお、受電電力は、消費電力から発電電力を引いた差に相当する。
図4及び
図5からわかるように、いずれの場合も各測定周期の間のうち2箇所で受電電力(消費電力)の急激な低下が起こっている。
【0038】
図4の方法では、発電電力の常時抑制のマージン量を50kWと小さくとっているため、これらの2箇所の受電電力(消費電力)の急激な低下に対していずれも迅速に対応することができず、発電電力が受電電力(消費電力)を上回ってしまい、逆潮流(
図4のグラフにおいて、受電電力が負の値になる現象)が発生している。これに対して、
図5の方法では、発電電力の常時抑制のマージン量を100kWと大きくとっているため、受電電力はいずれの箇所も負の値にはなっておらず、逆潮流の発生をギリギリ免れている。この場合、受電電力(消費電力)の急激の低下があっても逆潮流の発生を防止することができているが、発電電力の常時抑制のマージン量が大きいため、発電電力量を常時大幅に低く抑制することになり、太陽光発電システムの発電能力を有効に活用できていない。また、いずれの場合も受電電力の測定周期が6秒と長いため、PCSへの発電電力の低下の指示の反映が遅くなっており、受電電力(消費電力)の低下に迅速に対応できていない。
【0039】
一方、
図6は、
図3の本発明の制御方法のフローチャートに基づいた発電電力の制御の逆潮流防止効果シミュレーションの一例である。
図6の方法では、発電電力の常時抑制のマージン量は、
図4,
図5の従来の方法に比べて15kWと小さく抑制されている。また、受電電力値の測定周期は、
図4、
図5の従来の方法に比べて2秒と短く設定されている。
図6のグラフ中、一番上のラインは消費電力を示し、上から二番目に二つ重なっているラインのうち、色の薄い方はPCSへの指示を示し、色の濃い方はその指示に追従した発電電力を示し、一番下のラインは受電電力を示す。なお、受電電力は、消費電力から発電電力を引いた差に相当する。
【0040】
図6の方法では、最初に、最新の計測時点での受電電力値とその直前の計測時点での受電電力値を取得し、これらの受電電力値の差の大きさに基づいて受電電力値の急速な低下があるかどうかを判断して発電電力の制御を行ない、次いでその最新の計測時点での受電電力自体の大きさに基づいて受電電力値の低下の傾向があるかどうかを判断して発電電力の制御を行なっている。
【0041】
図6の方法では、上記の制御を行なっているため、発電電力の低下が頻繁に行なわれているが、いずれの消費電力の急激な低下に対しても迅速に対応することができている。即ち、
図6のシミュレーション中、発電電力が消費電力を常に下回っており、受電電力は常に正の値であり、逆潮流は全く発生していない。また、
図6の方法では、安全のための発電電力の常時抑制のマージン量が15kWと小さいため、発電電力量の常時抑制は最小限で済み、太陽光発電システムの発電能力を有効に活用できている。また、受電電力値の測定周期が2秒と短いため、PCSへの発電電力の低下の指示の反映が早く、受電電力(消費電力)の低下に迅速に対応できている。
本発明の自家消費型太陽光発電システムの電力制御装置及び電力制御方法によれば、逆潮流防止のための発電電力の抑制量を最小限にしながら、消費電力の急激な低下時であっても逆潮流を迅速に防止することができる。従って、当業者において本発明は、極めて有用である。