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特開2023-153486ランニングフォーム解析システム、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153486
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ランニングフォーム解析システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20231011BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A63B71/06 M
A63B69/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062793
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】514224699
【氏名又は名称】リオモ インク
【氏名又は名称原語表記】LEOMO,Inc.
【住所又は居所原語表記】2000 Central Avenue, Boulder, Colorado 80301 United States of America
【日本における営業所】東京都品川区西五反田7-22-17
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】加地 邦彦
(57)【要約】
【課題】走行フォームの解析に際し、ユーザー毎に個々に相異する運動指標の特性を考慮し、絶対的な評価を可能とする。
【解決手段】装着者1に装着され三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出可能な腰部体動センサー40aと、腰部体動センサー40aによる検出結果に基づいて装着者の脚の接地状態又は非接地状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出部117eと、接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出部117fと、上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部117gと、指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力インターフェース111とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者のランニングフォームを解析するシステムであって、
前記装着者に装着され、三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出可能な体動センサーと、
前記体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の接地状態又は非接地状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、
前記接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出部と、
前記上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイスと
を備えることを特徴とするランニングフォーム解析システム。
【請求項2】
前記装着者の歩幅を検出する歩幅検出部をさらに備え、
前記指標算出部は、上下動の前記比率と、前記歩幅検出部が検出した歩幅とに基づいて前記指標を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のランニングフォーム解析システム。
【請求項3】
前記歩幅検出部は、前記装着者の位置情報に基づく変位と、前記上下動検出部が検出した上下動の周期とに基づいて、前記装着者の歩幅を検出することを特徴とする請求項2に記載のランニングフォーム解析システム。
【請求項4】
装着者のランニングフォームを解析するプログラムであって、コンピューターを、
前記装着者に装着されて三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出可能な体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の接地状態又は非接地状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、
前記接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出部と、
前記上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイス
として機能させることを特徴とするランニングフォーム解析プログラム。
【請求項5】
前記コンピューターを、さらに、前記装着者の歩幅を検出する歩幅検出部として機能させ、
前記指標算出部は、上下動の前記比率と、前記歩幅検出部が検出した歩幅とに基づいて前記指標を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載のランニングフォーム解析プログラム。
【請求項6】
前記歩幅検出部は、前記装着者の位置情報に基づく変位と、前記上下動検出部が検出した上下動の周期とに基づいて、前記装着者の歩幅を検出することを特徴とする請求項5に記載のランニングフォーム解析プログラム。
【請求項7】
装着者のランニングフォームを解析する方法であって、
前記装着者に装着され体動センサーが、三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出する体動検出ステップと、
前記体動検出ステップにおける体動センサーによる検出結果に基づいて、接地状態検出部が、前記装着者の脚の接地状態又は非接地状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出ステップと、
上下動検出部が、前記接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出ステップと、
前記上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいて、指標算出部が前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出ステップと、
前記指標算出部が算出した指標を出力デバイスが表示又は出力する出力ステップと
を含むことを特徴とするランニングフォーム解析方法。
【請求項8】
歩幅検出部が、前記装着者の歩幅を検出する歩幅検出ステップをさらに含み、
前記指標算出ステップにおいて前記指標算出部は、上下動の前記比率と、前記歩幅検出部が検出した歩幅とに基づいて前記指標を算出する
ことを特徴とする請求項7に記載のランニングフォーム解析方法。
【請求項9】
前記歩幅検出部は、前記装着者の位置情報に基づく変位と、前記上下動検出部が検出した上下動の周期とに基づいて、前記装着者の歩幅を検出することを特徴とする請求項8に記載のランニングフォーム解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者のランニングフォームを解析するためのシステム、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にランニング競技において、効率的に速く走るために、頭部、上半身の上下動は小さい方がよいといわれており、現場のトレーニングでは上下動が小さく、脚の接地時間が短い走りを目指すように指導されている。この上下動や接地時間は走行スピードに依存することも認知されている。
【0003】
また、従来では、例えば、ケイデンス(ピッチ)やストライド(歩幅)などの運動指標に注目し、これらの目標値を基準として、運動中のユーザーの指標と、目標値との差分に基づいて、接地時間又は滞空時間のタイミングを報知する運動支援方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-34480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユーザーの実際の走行フォームと、理想的な走行フォームとを比較するにも、ユーザー毎にケイデンスとストライドの特性が個々に相異し、同条件で対比できないことから、上述した特許文献1のように、単に接地時間又は滞空時間のタイミングを報知するのみでは、絶対的な評価が難しいという問題がある。このことは、同一人物であっても、走行開始時や時間経過後とで運動指標の特性が変化したり、ユーザーの体調も大きく影響したりするため、同条件での比較は難しく、正しく評価ができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、走行フォームの解析に際し、ユーザー毎に個々に相異する運動指標の特性を考慮し、絶対的な評価を可能とするシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、装着者のランニングフォームを解析するシステムであって、装着者のランニングフォームを解析するシステムであって、装着者に装着され、三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出可能な体動センサーと、体動センサーによる検出結果に基づいて装着者の脚の接地状態又は非接地(離地)状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出部と、上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイスとを備える。
【0008】
また、本発明は、装着者のランニングフォームを解析する方法であって、
装着者のランニングフォームを解析する方法であって、装着者に装着され体動センサーが、三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出する体動検出ステップと、
装着者に装着され体動センサーが、三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出する体動検出ステップと、
体動検出ステップにおける体動センサーによる検出結果に基づいて、接地状態検出部が、装着者の脚の接地状態又は非接地状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出ステップと、
上下動検出部が、接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出ステップと、
上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいて、指標算出部がランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出ステップと、
指標算出部が算出した指標を出力デバイスが表示又は出力する出力ステップと
を含む。
【0009】
なお、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。
【0010】
すなわち、本発明は、装着者のランニングフォームを解析するプログラムであって、コンピューターを、装着者に装着されて三次元的な変位、速度、加速度又は回転を検出可能な体動センサーによる検出結果に基づいて装着者の脚の接地状態又は非接地状態を検出し、検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、接地状態データに基づいて、接地中の上下動、及び全体の上下動を検出する上下動検出部と、上下動検出部が検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイスとして機能させる。
【0011】
このような本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、タブレットPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【0012】
上記発明において、装着者の歩幅を検出する歩幅検出部をさらに備え、指標算出部は、上下動の比率と、歩幅検出部が検出した歩幅とに基づいて指標を算出することが好ましい。
【0013】
上記発明において、体動センサーは、装着者の両脚のそれぞれに装着される少なくとも一対のセンサー装置であり、歩幅検出部は、一対のセンサー装置の相対位置に基づいて装着者の歩幅を検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、この発明では、体動センサーによる検出結果に基づいて、接地中の上下動及び全体の上下動を検出し、接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する。この結果、本発明によれば、走行フォームの解析に際し、ユーザー毎に個々に相異する運動指標の特性を考慮し、絶対的な評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るランニングフォーム解析システムの使用態様を示す説明図である。
図2】実施形態に係る各装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るランニングフォーム解析方法を示すシーケンス図である。
図4】実施形態に係る動作解析処理を示すフロー図である。
図5】実施形態で取得される体動再現データの一部を示す説明図である。
図6】実施形態で取得される体動再現データの一部を示す説明図である。
図7】変更例に係るランニングフォーム解析システムの使用態様を示す説明図である。
図8】変更例に係る各装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、情報処理端末100を用いて、ランニング競技の動作解析に本発明を適用し、ランニング競技のトレーニングについてコーチングを可能とするランニングフォーム解析システムを提供する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置などを例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
(ランニングフォーム解析システムの構成)
図1に本実施形態に係る情報処理端末100を用いたランニングフォーム解析システムの使用態様を示す。また、図2は各装置の内部構成を示すブロック図である。本実施形態に係るランニングフォーム解析システムは、装着者1が使用する情報処理端末100と、図1に示すように、装着者1の腰部に装着され情報処理端末100に対して無線接続される腰部体動センサー40aとから構成されている。なお、本実施形態において体動センサーを装着者の腰部に装着した場合を例示するが、本発明はこれに限定されるものではなく、体軸の上下動を取得できる可能性のある部位であれば、腰の他、胸、腹部、頭、腕若しくは脚などに装着することができ、これらの装着部位に単一の体動センサーとして装着されてもよく、腕や脚のおように左右対象部位に一対となるように装着するようにしてもよい。
【0018】
そして、本システムでは、腰部体動センサー40aを用い、ランニング競技における動作解析を実行し、脚の地面に対する接地時間と浮遊時間とを検出し、そのうえで接地中の上下同(VO)と浮遊中の上下同(VO)を分離し、その比率を新たなスコアとすることで、スピード(ケイデンス・ストライド)への依存を排除することで、ランニングフォームを評価する指標を提供する。
【0019】
(各装置の構成)
以下に、本システムを構成する各装置の具体的な内部構成について説明する。なお、本実施形態では、体動センサーと情報端末とを別体とし、リアルタイムに相互に通信させて協動させる形態を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、体動センサーに記憶デバイスや演算処理デバイスを内蔵させランニングフォーム解析に関するモジュールを体動センサーに一体的に備えさせるようにしてもよい。また、本実施形態のようにリアルタイムに通信させるのではなく、体動センサーに記憶デバイスを備えさせてセンサーの検出値を記録しておき、後処理により情報端末側で収集して解析を行うようにしてもよい。
(1)体動センサー
腰部体動センサー40aは、装着者1の腰部の背中側に装着され、腰部における三次元的な変位又は回転を検出するセンサーである。この腰部体動センサー40aは、物体の加速度を計測する3軸加速度計と、物体の角速度を検出する3軸ジャイロスコープ、磁場の大きさ・方向を計測する3軸磁気センサーが搭載され、9軸の動きが検知可能となっている。なお、腰部体動センサー40aは、クリップ等の部材などによって装着者のベルトや衣服などに着脱可能であり、容易にセンサーを着脱して測定を行うことができ、装着者に負担を与えずに継続的な測定を行うことができる。
【0020】
そして、この腰部体動センサー40aは、図2に示すように、無線通信部を有している。この無線通信部は、内部にアンテナを有し、BTLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy,Bluetooth(登録商標) 4.0)等による近距離無線通信のデータ通信用プロトコルを実行する機能によって、情報処理端末100と通信処理が可能となっている。なお、本実施形態において、腰部体動センサー40aの無線通信部は、低消費電力通信用のプロトコルとしてBTLEを採用したが、例えば、ANT、ANT+等を採用することもできる。また、通常のBluetooth(登録商標)を採用することもできる。
【0021】
なお、本実施形態では、基本的に情報処理端末100と腰部体動センサー40aとの間における近距離無線通信によって構築される範囲でシステムが構築可能となっており、通信ネットワーク上のサーバー等とは実際の測定時には接続されず、いわゆるオフラインでのスタンドアローンとして、システムの運用が可能となっている。
【0022】
(2)情報端末装置
図2に本実施形態に係る情報処理端末100の内部構成を示す。本実施形態に係る情報処理端末100は、例えばスマートフォンなどの小型の端末装置であり、一般的な矩形状の端末装置でもよく、腕時計型などのウェアラブル端末や、据え置きタイプ、自転車のハンドル部分等に取付けられるマウント型など、種々の形態を採用することができる。なお、この情報端末装置は、走行中に体動データの記録のみを行うときにはバッグなどの収納具にしまっておいてもよい。
【0023】
具体的に情報処理端末100は、図2に示すように、通信インターフェース113と、制御部117と、メモリ114と、出力インターフェース111と、入力インターフェース112と、制御部117と、位置情報取得部115とを備えている。詳述すると、本実施形態に係る情報処理端末100は、腰部体動センサー40aによって検出された検出結果を収集する機能を有し、通信インターフェース113によって腰部体動センサー40aと相互に通信処理を行い、腰部体動センサー40aによる検出結果を情報処理端末100に集約するようになっている。
【0024】
メモリ114は、腰部体動センサー40aによる検出結果を体動データとして記録する体動記録部としての機能を果たしている。ここで、体動データとは、各種センサーが検出した一次データであり、この体動データを記録し解析し、必要な情報を抽出したり、加工或いは補正した二次データが体動再現データである。
【0025】
なお、腰部体動センサー40aから送信される検出結果には、腰部体動センサー40aを識別するセンサー識別情報が付加されており、情報処理端末100のメモリ114には、当該識別情報が蓄積され、制御部117では通信インターフェース113から取得した際、いずれの腰部体動センサー40aから取得した検出結果であるかを判別可能となっている。なお、この識別情報には、各センサーの装着部位を特定する装着部位情報が含まれており、この装着部位情報に基づいて、体動再現データの算出が可能となっている。ここでは、装着者腰部の背中側が装着部位となっている。さらに体動データ内には、腰部体動センサー40aから検出結果を取得した際の時刻情報も含まれている。
【0026】
通信インターフェース113は、通信ネットワークを介した各種情報の送受信や、wifiやBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を制御するモジュールであり、種々のプロトコルにより、腰部体動センサー40aと通信をしたり、3G~5G通信により上記サーバー装置等との間でデータの送受信を行う。さらに、情報処理端末100は、出力インターフェース111と入力インターフェース112とを備えている。入力インターフェース112は、操作ボタンやタッチパネルなどユーザー操作を入力するデバイスである。また、出力インターフェース111には、ディスプレイやスピーカーなど、映像や音響を出力するデバイスが含まれる。特に、この出力インターフェース111には、液晶ディスプレイなどの表示部が含まれるとともに、この表示部は入力インターフェースであるタッチパネルに重畳されている。
【0027】
出力インターフェース111に接続された表示部は、体動再現データに対する解析結果を表示又は出力する出力デバイスであり、表示情報生成部117cによって生成された表示情報を、出力インターフェース111を通じて表示する。この表示部に掌は、情報処理端末100に内蔵されたディスプレイや、外部に接続された外部ディスプレイに表示される。
【0028】
一方、入力インターフェース112には動画取得部を設けてもよい。この動画取得部は、装着者の体動を撮影し記録した動画データを取得するデバイスであり、例えばスマートフォンなどに内蔵された一般的なカメラで実現され、装着者が自身を撮影したりすることによってフォームのチェックなどを行える他、各センサーが取得した体動データと、カメラが撮影した動画との同期処理を行うためにも用いられる。ここで取得される動画データには、映像が記録された映像データと、その映像とともに録音された音声データ、撮影時刻、終了時刻、時間経過などのタイムスタンプ等のメタデータが含まれる。
【0029】
また、入力インターフェース112には、情報処理端末100に内蔵された内蔵カメラや、外部の外部カメラが接続可能となっており、これらの撮影手段で撮影された動画データが取得され、メモリ114に蓄積されたり、制御部117における処理に供される。なお、外部カメラから取得される動画データには、撮影時に逐次リアルタイムで取得されるストリーミングデータの他、外部カメラで撮影され蓄積されたファイル形式の動画データを撮影後にダウンロードして取得されるものも含まれる。
【0030】
位置情報取得部115は、情報処理端末100の現在位置を計測或いは算出するモジュールであり、GPSやジャイロセンサーによって取得された緯度・経度や方角から、自機の現在位置及び向いている方向を取得したり、通信インターフェース113を通じて取得される通信基地局、アクセスポイント、周囲の各周波数帯の電波信号の種類及び強度等から、自機が在圏する通信エリアを取得したりすることにより、自機の現在位置を特定する。この位置情報取得部115により取得された位置情報は解析部117dに入力される。
【0031】
また、情報処理端末100は、CPU等の演算処理装置である制御部117を備えており、各センサーから取得した体動データに基づいて、装着者の体動を解析し、体動再現データを生成する機能を有している。なお、情報処理端末100の各機能は、この制御部117において、本発明のランニングフォーム解析プログラムを実行することにより、制御部117上に仮想的に構築される。詳述すると、制御部117は、ランニングフォーム解析アプリケーションが実行されることによって、体動データ取得部117aと、体動算出部117bと、解析部117dと、表示情報生成部117cとが仮想的に構築される。
【0032】
体動データ取得部117aは、通信インターフェース113を介して、腰部体動センサー40aから体動データを取得して記録するモジュールであり、本実施形態では、腰部体動センサー40aと無線通信を行って、これらの検出結果である体動データを取得する。この体動データ取得部117aは、体動データ記録部としての機能を果たし、腰部体動センサー40aによる各検出結果を、体動データを一時的にメモリ114内に蓄積したり、体動算出部117bに送出したりする。
【0033】
体動算出部117bは、体動記録部であるメモリ114に蓄積された腰部体動センサー40aによる各検出結果である体動データ、例えば腰部体動センサー40aの変位や回転、それらの加速度、角速度、角加速度等に基づいて、装着者の体動を体動再現データとして算出するモジュールである。ここで、腰部体動センサー40aによる各検出結果である体動データとしては、いわゆる9軸センサーで測定される値であり、本実施形態では、物体に作用する加速度(重力加速度を含む。)の方向と大きさ、物体の角速度(大きさ、方向、中心位置)、磁場の大きさ・方向(方角)である。
【0034】
ここで算出される体動としては、ランニング時における腰部(背中側中央)の装着部位を中心とする回転、上下・左右・前後方向の移動や加速度、回転の角速度、この角速度の時間的変化が含まれる。
【0035】
本実施形態において体動算出部117bは、腰部体動センサー40aによる各検出結果である体動データと、この腰部体動センサー40aの基準値からの乖離量に基づいて、装着者の体動を体動再現データとして算出する。このとき体動算出部117bは、具体的には腰部体動センサー40aの三次元的な座標、速度及び加速度に基づいて、腰部体動センサー40a間における相対的な変位や速度、加速度及び回転(角運動量)に基づいて、身体各部位の変位(体動)の軌跡に基づいて体動再現データを算出する。
【0036】
詳述すると、体動算出部117bは、先ず腰部体動センサー40aの検出結果である体動データを用いて、装着者のランニングにおける特徴点を検出する処理を行う。装着者のランニングにおける特徴点は、体動センサーによる検出結果が特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に対応するデータの部分であり、例えば、着地、踏込、離地等の装着者の特徴的な体動に基づく加速度の変化などが挙げられる。また、体動算出部117bは、検出された特徴点のタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する処理を行う。具体的には、特徴点を含む演算データから、特徴点を検出したタイミングを基準として、その値が継続した時間長や、一定の単位時間内における変化率に基づいて、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する。
【0037】
そして、本実施形態において体動算出部117bは、装着者の脚の接地状態又は離地(非接地)状態を接地状態データとして抽出する接地状態検出部117eと、装着者の接地中の上下動及び全体の上下動を検出する上下動検出部117fとを備えている。
【0038】
接地状態検出部117eは、体動算出部117bで検出された特徴点に基づいて、装着者の脚の接地状態或いは離地状態を検出し、検出された接地状態に係る各検出結果と、離地状態に係る検出結果とを分離し、それらを接地状態データとして抽出するモジュールである。詳述すると本実施形態における接地状態検出部117eは、例えば体動センサーを構成する加速度センサー及び角速度センサーの検出値(体動データ)などに基づいて特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に基づいて検出された特徴点を用い、そのタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間、それらの変化率、周期性に応じて接地している状態若しくは接地していない状態の時間的範囲を特定するとともに、接地状態或いは離地状態として分離された各々の範囲に含まれる時間長分のデータにフラグを設定する。このフラグが設定されたデータを接地状態データとして抽出し、解析部117dはこれらの接地状態データを含めて、体動再現データとして生成する。
【0039】
上述した体動算出部117bで取得された体動データは、解析部117dへ入力され、相対的な変位や速度、加速度、角速度等に基づいて、装着者1の腰部における瞬間的な相対的変位(距離や回転)、腰部の立体的な周期運動から体動再現データが生成される。そして、解析部117dは、これらの体動データや接地状態データ等の一次データと、体動再現データなどの二次データとを用いて体動のタイミング、姿勢の崩れ等によってランニングフォームが評価する。
【0040】
詳述すると、解析部117dは、体動データや接地状態データ、体動再現データに基づいて、装着者1の体動の各要素を項目毎に解析するモジュールである。本実施形態では、解析部117dは、基準値からの乖離量を算出して体動の再現性を解析するとともに、体動算出部117bが抽出した腰部の角速度変化や揺動の振幅やゆらぎの特性を解析し、ここで解析された特性は、例えば、振幅-時間で定義されるタイムライン上に波形として表現され、動作時に装着者を録画したビデオデータと同期すなどの処理がなされたうえで、表示情報生成部117cを介して出力デバイスで表示又は出力することができる。
【0041】
なお、この解析部117dによる他の解析方法としては、装着者1を3次元的に表示させた立体的なデータを生成するものであってもよく、また、XY平面に投影した2次元的なデータを生成するものであってもよい。また、例えば、模範となる体動データが蓄積されたメモリ114から、模範となる体動データを抽出し、装着者の体動再現データと比較することで、正常な体動とのズレなどを示した改善データを生成してもよい。さらには、予め、性別、身長、体重、年齢などユーザー情報を登録しておくことで、各ユーザー情報に基づいた解析を行ってもよい。そして、解析部117dは、この立体画像データや改善データなどの解析結果が表示情報生成部117cを介して出力される。
【0042】
解析部117dは、ランニングフォーム解析処理に係るモジュールとして、指標算出部117gと歩幅検出部117hとを備えている。なお、本実施形態において解析部117dは、安定性算出機能を備えており、この安定性算出機能は、安定基準値を算出し、その安定基準値からの乖離量に基づいて体動の再現性を評価するようになっている。
【0043】
本実施形態において歩幅検出部117hは、腰部体動センサー40aによって検出される周期的な上下動からケイデンス(ピッチ)を算出する機能を備えているとともに、位置情報取得部115が取得した装着者の位置情報の変位から所定時間当たりの移動距離を算出し、その移動距離と所定時間内のピッチ数とからストライド(歩幅)を算出する機能を備えている。この歩幅検出部117hで算出されたケイデンス(ピッチ)及びストライド(歩幅)は、体動再現データとして指標算出部117gに入力される。
【0044】
指標算出部117gは、体動データから取得される基準値或いは閾値に基づいて指標データを参照しランニングフォームを評価する指標を算出するモジュールである。特に本実施形態において解析部117dは、上下動検出部117fが検出した接地中の上下動と全体の上下動との比率(接地中上下動比率(SVOR))に基づいてランニングフォームを評価する各種指標を算出し、優秀者や理想値の指標と比較して評価を行うことができる。
【0045】
例えば、指標算出部117gは、図5及び図6に示すように、接地状態検出部117e及び上下動検出部117fが抽出した接地状態データ及び体動データに基づいて、接地・離地を判定するとともに、加速度を用いて上下動を検出し、全体・接地中・浮遊中の上下動を算出し、接地中の上下動/全体の上下動から比率である接地中上下動比率SVORを計算する。このとき、接地中上下動比率SVORとともに、体動データに基づいて、上下動(VO)、スタンス変位(SD)、その他のパラメーターの値や、それらの変化率も算出し、ランニングフォームを評価する指標を算出する。
【0046】
特に、接地中上下動比率SVORでは、全体の上下動に対してどれくらい接地中に沈み込んでいるかの比率として評価することができる。具体的に国内のトップ選手・アマチュア選手を見ると、接地中上下動比率SVORのスピードに対する依存は比較的小さく、アマチュア選手とエリート選手との差もスピードに関わらず明確であり、接地中上下動比率SVORに注目することにより有効な選手評価が可能となる。
【0047】
なお、指標算出部117gにおいて優秀者や理想値と比較するにあたり、比較対象となるパラメーターは、装着者による設定操作に基づいて、所定期間内における、平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択するなど、用途に応じた値を比較対象として設定することができる。
【0048】
また、解析部117dの安定性算出機能は、体動再現データや基準値を用いて、装着者の運動を解析し、装着者のランニングフォームの再現性・持続性を評価するために、算出したランニングフォームの変化点を検出する処理を行う。特に、本実施形態において解析部117dの安定性算出機能は、体動再現データを用いて、装着者自身や他者の過去のランニングフォームを分析し、分析結果である全体分析情報を生成する処理を行うことができる。
【0049】
このとき解析部117dの安定性算出機能は、装着者が選択した日付や、特徴点が類似する過去の走行記録を検索し、その走行における各種の運動情報の一部又は全部について、平均値の算出処理、走行終了時の最終値の選択処理、これらの値が基準値よりも良いか否か(或いは悪いか否か)や改善率が基準値よりも高いか否か(或いは低いか否か)の判定処理等を行う。また、解析部117dは、予め決められた所定の項目や装着者が選択した項目について、走行した日付毎の平均値(或いは最終値)を算出(或いは選択)して時系列順の指標を生成する。
【0050】
指標算出部117gは、装着者が選択した日付の走行における走行成績を評価し、評価結果の情報や、走り方の改善方法、タイムの短縮方法、トレーニング指導などのコーチングに関する指標を生成する。指標算出部117gは、メモリ114に記憶されている各種の運動情報を用いて、装着者の過去複数回にわたる走行結果を比較して分析し、或いは、装着者の過去の走行結果を他の装着者の走行結果と比較して分析し、分析結果の情報である比較分析情報を指標に含めることができる。具体的には、指標算出部117gは、装着者が選択した複数の日付の各々の走行について、それぞれ詳細分析情報と同様の比較分析情報を生成し、或いは、装着者が選択した日付の走行と他の装着者の過去の走行とについて、それぞれ詳細分析情報と同様の比較分析の情報を生成する。
【0051】
なお、本実施形態において解析部117dには、装着者1による設定操作に基づいて、指標算出部117gに対し、所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を基準値として設定する機能が備えられている。この基準値の設定操作では、例えば、所定時間間隔をおいて同一の動作を数回繰り返し、その平均値や最小値、最大値の他、装着者1がベストだと思った時点の値を理想値としたりすることができる。また、本実施形態では、他者(多数の他ユーザーや上級者、プロ等)の基準値と、体動再現データとを紐付けて蓄積したデータベースを備えており、上級者やプロの理想値など任意の数値をデータベースから呼び出して設定することもでき、また、入力された体動再現データに類似する体動再現データを検索し、その体動再現データに紐付けられた基準値を呼び出して指標算出部117gに設定することができる。
【0052】
このとき、呼び出された基準値にはその基礎となった他者の体動再現データが時系列順に蓄積されており、現ユーザーの体動再現データに類似する体動再現データを検索することで、類似する特性や傾向のランニングフォームに対する基準値を設定することができる。この設定に用いられた他者の体動再現データの変化の経過を追跡することにより、その基準値を用いてランニングフォームの矯正を行った結果についてシミュレーションや予測をすることができる。
【0053】
上記表示情報生成部117cは、出力インターフェース111で表示される表示情報を生成するモジュールであり、解析部117dが解析した体動再現データを動画に対応させて表示又は出力する表示情報を生成する。この表示情報は、本実施形態では、内蔵カメラや外部カメラ等で撮影した動画を画面上に表示するとともに、これと、解析部117dが解析した体動再現データとタイムラインとを対比可能に同期させて表示する。なお、この表示情報には表示データとともに、音響信号やその他の出力制御信号が含まれる。
【0054】
また、表示画面には、タッチ操作のためのGUI(Graphical User Interface)が含まれ、このGUIが表示されるタッチパネルに対する操作は、入力インターフェース112に入力され表示情報生成部117cによる表示を切り替えることができる。例えば、体動再現データに含まれる各運動パラメーターを個別的に表示でき、表示モードを切り替えることにより、タイムラインに体動再現データに含まれる各運動パラメーターを重ね合わせて表示することもできる。
【0055】
前記メモリ114は、各種のデータを記録する記憶装置であり、各情報処理端末100を識別する識別情報や、腰部体動センサー40aの装着部位情報、各部位に装着された腰部体動センサー40aの相対位置関係、及び上述したユーザー情報や模範となる体動データなどが蓄積されている。メモリ114は、指標データ記憶する記憶部としての機能を果たしており、指標データは、解析部117dが算出した接地中上下動比率SVORその他の指標や、それらの安定期間、安定期間以降の乖離量、或いは安定化能力を評価する指標との相関を保持するテーブルデータである。
【0056】
(ランニングフォーム解析方法)
以上の構成を有するランニングフォーム解析システムを動作させることによって、本実施形態に係るランニングフォーム解析方法を実施することができる。図3にランニングフォーム解析システムの記録動作を示し、図4に動作解析時における処理を示す。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0057】
(1)記録動作
先ず、装着者1は、腰部に腰部体動センサー40aを装着する。そして、情報処理端末100側で本発明のプログラムであるランニングフォーム解析アプリケーションを起動し、腰部体動センサー40aから検出結果を取得すべくアプリケーションに対して計測開始操作を入力する(S201)。この計測開始操作を受けて、情報処理端末100の制御部117は、腰部体動センサー40aと接続処理を行う(S101)。接続処理された後、腰部体動センサー40aでは、装着者1の動作の検出を開始する(S102)。具体的には、装着者の腰部に取り付けられた腰部体動センサー40aにより各部位の三次元的な変位、回転又は加速度を検出する。
【0058】
次いで、取得された各検出結果は、腰部体動センサー40aの無線通信部を介して、微弱電波により情報処理端末100の通信インターフェース113へと送信される(S103)。情報処理端末100の通信インターフェース113が各検出結果の取得が開始されると(S202)、体動記録部であるメモリ114に、腰部体動センサー40aによる検出結果を体動データとして記録を開始し、継続して腰部体動センサー40aから送信されてくる検出信号を順次記録してゆく(S203)。
【0059】
次いで、ランニングを開始し、ランニング中は継続して腰部体動センサー40aの検出値の取得し、及び録画処理が継続して実行され、計測が終了しない限り(S206における「N」)、メモリ114等に体動データとして記録される。このとき情報処理端末100に内蔵された内蔵カメラや、外部に接続された外部カメラで撮影された動画データを取得してもよく、その動画データがメモリ114に蓄積されたり、制御部117における処理に供される。この間、腰部体動センサー40aによる検出データを、リアルタイムで解析して、接地状態データ及び上下動その他のパラメーターを抽出しつつ(S204)、情報処理端末100の表示部に表示する。この解析の1つとして、記録された体動データに基づいてランニングフォームの評価処理が行われる(S205)。
【0060】
その後、例えば、一定時間以上の静止状態を検出したり、装着者の終了操作を検出することによって、競技の終了を検知し、計測を終了するとともに(S206における「Y」)、必要に応じて録画処理を停止する(S207)。その後、各センサーとの通信を切断する(S104)。
【0061】
(2)ランニングフォーム解析処理
上記ステップS205におけるランニングフォーム解析処理について詳述する。に示すように、体動データ取得部117aにより体動データが収集されるとともに、ステップS204で抽出された接地状態及び上下動を含む各種パラメーターが収集される(S301)。このとき、各センサーから取得された検出値である体動データは、一次データとして表示情報生成部117cに入力され直接出力処理(S306)することができるとともに、体動算出部117bに入力されて必要な情報が抽出され、解析部117dにおいて解析されたり補正されたりして体動再現データである二次データとして表示情報生成部117cに入力され出力処理されることとなる。
【0062】
ステップS301において、体動算出部117bに入力された一次データについては、接地状態検出部117eにおいて装着者の脚の接地状態・離地状態が検出され、検出された離地状態に係る各検出結果が、接地側の状態を示す接地状態データとして取得される。本実施形態における接地状態検出部117eは、例えば体動センサーを構成する加速度センサー及び角速度センサーの検出値(体動データ)などに基づいて特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に基づいて特徴点が検出され、そのタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間、それらの変化率、周期性に応じて接地している状態若しくは接地していない状態の時間的範囲を特定するとともに、離地状態として特定された範囲に含まれる時間長分のデータにフラグを設定する。このフラグが設定されたデータを、接地側の状態を示す接地状態データとして解析部117dで取得される。
【0063】
そして、体動算出部117b及び解析部117dによって、メモリ114に蓄積された腰部体動センサー40aによる各検出結果及び接地状態データの一次データに基づく評価・解析を行うとともに、これらの一次データと腰部体動センサー40aの相対位置関係に基づいて算出された二次データである体動再現データとに基づく各種解析を行うランニング動作解析ステップを実行する。
【0064】
詳述すると、体動算出部117bが、先ず腰部体動センサー40aの検出結果である体動データを用いて、装着者のランニングにおける特徴点を検出する処理を行う。装着者のランニングにおける特徴点は、体動センサーによる検出結果が特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に対応するデータの部分であり、例えば、着地、踏込、離地等の装着者の特徴的な体動に基づく加速度の変化などが挙げられる。また、体動算出部117bは、検出された特徴点のタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する処理を行う。具体的には、特徴点を含む演算データから、特徴点を検出したタイミングを基準として、その値が継続した時間長や、一定の単位時間内における変化率に基づいて、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する。
【0065】
ここでは特に、メモリ114に記録された体動データ及びに基づいて、指標算出部117gにより、接地状態検出部117e及び上下動検出部117fが抽出した接地状態データ及び体動データに基づいて、接地・離地を判定するとともに、加速度を用いて上下動を検出し、上下動を全体・接地中・浮遊中に分離するとともに(S302)、接地中の上下動/全体の上下動から比率である接地中上下動比率SVORを算出する(S303)。このとき、接地中上下動比率SVORとともに、体動データに基づいて、上下動(VO)、スタンス変位(SD)、その他のパラメーターの値や、それらの変化率も算出し、ランニングフォームを評価する指標を算出する(S304)。
【0066】
なお、このランニング動作解析ステップでは、ユーザーが操作によって設定した基準値を安定性基準値として用いることができ、その安定性基準値からの乖離量を比較することにより再現性を評価してもよく、複数回反復される動作であるときには、その反復運動に関するパラメーターの所定期間(若しくは所定回数)にわたる平均値を安定基準値として算出してもよい。
【0067】
この基準値の設定については、装着者1の操作に応じ、メモリ114に蓄積された体動再現データに基づいて、体動の再現性を評価するための安定基準値を設定する。具体的には、装着者1による設定操作に基づいて所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を基準値として設定する。例えば、この基準値の設定操作では、例えば、所定時間間隔をおいて同一の動作を数回繰り返し、その平均値や最小値、最大値の他、装着者1がベストだと思った回の値を理想値としたり、上級者やプロの理想値など任意の数値を入力して設定することもできる。
【0068】
そして、ランニング動作解析の結果に基づいて指標データを参照し、ランニングフォームに関する評価及びその安定化能力等の評価する指標を、指標算出部117gによって算出する指標算出ステップを実行する(S304)。この指標算出ステップでは、安定基準値からの乖離量が所定の閾値内に収まっているかを随時監視し、これら体動のパラメーターが安定状態を維持していた安定期間を算出するようにしてもよい。例えば、競技開始からの平均値を順次算出し、その平均値が所定の変化量内に収まっている間の平均値を安定基準値とする。安定基準値は、随時に更新され、現在値がこの安定基準値から離れた量を乖離量として随時監視する。
【0069】
その後、算出された指標に基づいて評価処理及び所定の診断処理を行い(S305)、その診断処理の結果及び指標を、これらと対比可能に同期された動画及び体動再現データとともに、情報処理端末100のディスプレイやスピーカーによる音響等によって表示又は出力する(S306)。
【0070】
(ランニングフォーム解析プログラム)
なお、上述した本実施形態に係るランニングフォーム解析システム及びランニングフォーム解析方法は、上述したランニングフォーム解析アプリケーションのように、所定の言語で記述された本発明のランニングフォーム解析プログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築してランニングフォーム解析方法を実施することができる。
【0071】
(変更例)
なお、以上説明した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、腰部に体動センサーを装着する場合を例示したが、図7及び図8に示すように、腰部の体動センサー(ここでは「腰部体動センサー40a」)に加えて、両脚1b,1cの甲部分にそれぞれ右脚・左脚体動センサー40b及び40cを装着し、両脚相互の動きをキャプチャーするようにしてもよい。この場合、図8に示すように、体動センサー40a~40cを体動センサー群40として取扱い、各体動センサー40a~40cからの検出データをそれぞれ、通信インターフェース113により取得する。
なお、本変更例においても体動センサー40aを装着者の腰部に装着した場合を例示するが、本発明はこれに限定されるものではなく、体軸の上下動を取得できる可能性のある部位であれば、体動センサーを装着の腰の他、胸、腹部、頭、腕若しくは脚などに装着することができる。
【0073】
この右脚・左脚体動センサー40b及び40cも、上述した腰部体動センサー40aと同様に、各装着部における三次元的な変位又は回転を検出するセンサーであり、物体の加速度を計測する3軸加速度計と、物体の角速度を検出する3軸ジャイロスコープ、磁場の大きさ・方向を計測する3軸磁気センサーが搭載され、9軸の動きが検知可能となっている。なお、右脚・左脚体動センサー40b及び40cも、クリップ等の部材などによって装着者の靴などに着脱可能であり、容易にセンサーを着脱して測定を行うことができ、装着者に負担を与えずに継続的な測定を行うことができる。
【0074】
そして、本変更例に係る歩幅検出部117hは、右脚・左脚体動センサー40b及び40cがそれぞれ検出した変位や回転に基づいて、右脚・左脚体動センサー40b及び40c相互の相対的な位置関係の変位を算出する機能を備えており、これにより装着者のより正確なストライド(歩幅)を算出することができる。この歩幅検出部117hにより算出されたストライド(歩幅)は解析部117d及び指標算出部117gに入力され、各指標の算出に用いられる。
【0075】
なお、本変更例では、体動センサーを装着者の腰部と、両脚とに装着したが、腰部の体動センサーを省略して、左右の両脚それぞれに一対の体動センサーのみを装着することもできる。また、本変更例のように、右脚・左脚体動センサー40b及び40c相互の相対的な位置関係の変位を算出して装着者のストライド(歩幅)を算出する場合には、GPS等の位置情報取得部115のような、装着者の移動距離を計測するデバイスや機能を省略、或いは機能を不使用とすることができる。
【0076】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、センサーの位置を腰部とし、体動センサーによる検出結果に基づいて、接地中の上下動及び全体の上下動を検出し、接地中の上下動と全体の上下動との比率に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する。この結果、本発明によれば、走行フォームの解析に際し、ユーザー毎に個々に相異する運動指標の特性を考慮し、絶対的な評価が可能となる。
【0077】
また、本実施形態に係るランニングフォーム解析プログラムでは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。この記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0078】
なお、本発明は、上記した実施形態及びその変更例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…装着者
40a…腰部体動センサー
40b,40c…右脚・左脚体動センサー
100…情報処理端末
111…出力インターフェース
112…入力インターフェース
113…通信インターフェース
114…メモリ
115…位置情報取得部
117…制御部
117a…体動データ取得部
117b…体動算出部
117c…表示情報生成部
117d…解析部
117e…接地状態検出部
117f…上下動検出部
117g…指標算出部
117h…歩幅検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8